(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】無方向性電磁鋼板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20240229BHJP
C21D 8/12 20060101ALI20240229BHJP
C21D 9/46 20060101ALI20240229BHJP
C22C 38/06 20060101ALI20240229BHJP
C22C 38/14 20060101ALI20240229BHJP
H01F 1/147 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C22C38/00 303U
C21D8/12 A
C21D9/46 501A
C22C38/06
C22C38/14
H01F1/147 175
(21)【出願番号】P 2021517326
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(86)【国際出願番号】 KR2019012630
(87)【国際公開番号】W WO2020067794
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】10-2018-0115276
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジェ-フン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン-ス
(72)【発明者】
【氏名】シン,ス-ヨン
【審査官】鈴木 葉子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/115657(WO,A1)
【文献】特開2018-066033(JP,A)
【文献】特開2017-119897(JP,A)
【文献】特開2014-185365(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1728028(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0044641(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00-38/60
C21D 8/12, 9/46
H01F 1/12- 1/38, 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、Si:2.5~3.8%、Al:0.5~2.5%、Mn:0.2~4.5%、As:0.0005~0.02%、Bi:0.0005~0.01%、および残部はFeおよび不可避な不純物からなり、下記[数1]を満た
し、
厚さの10%以内の極表面層に平均結晶粒径の25%未満の粒径を有する微細な表面微細結晶粒が存在する、ことを特徴とする無方向性電磁鋼板。
[数1]
0.3≦[表面微細結晶粒径]×[微細粒形成厚さ]×([As]/[Bi])≦5.0
([数1]中、[表面微細結晶粒径]は電磁鋼板極表面層の微細な
表面微細結晶粒の平均粒径(μm)であり、15~20μmを満たすことを意味し、[微細粒形成厚さ]は微細な
表面微細結晶粒が形成される極表面層の厚さ(mm)を意味し、[As]は前記Asの組成(重量%)、[Bi]は前記Biの組成(重量%)を意味する。)
【請求項2】
前記Asと前記Biの合計は、0.0005~0.025%である、ことを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項3】
下記[数2]を満たす、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無方向性電磁鋼板。
[
数2]
1≦[As]/[Bi]≦10
(
[数2
]中、[As]は無方向性電磁鋼板内のAsの組成(重量%)、[Bi]は無方向性電磁鋼板内のBiの組成(重量%)を意味する。)
【請求項4】
N:0.0040%以下(0%を除く。)、C:0.0040%以下(0%を除く。)、S:0.0040%以下(0%を除く。)、Ti:0.0040%以下(0%を除く。)、Nb:0.0040%以下(0%を除く。)、V:0.0040%以下(0%を除く。)のうちの1種以上をさらに含む、ことを特徴とする請求項1乃至請求項
3のいずれか一項に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項5】
比抵抗が45μΩ・cm以上である、ことを特徴とする請求項1乃至請求項
4のいずれか一項に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項6】
鉄損(W0.5/100000)が10W/kg以下である、ことを特徴とする請求項1乃至請求項
5のいずれか一項に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項7】
無方向性電磁鋼板の製造方法であって、
重量%で、Si:2.5~3.8%、Al:0.5~2.5%、Mn:0.2~4.5%、As:0.0005~0.02%、Bi:0.0005~0.01%、および残部はFeおよび不可避な不純物からなるスラブを準備する段階と、
前記スラブを加熱する段階と、
前記加熱されたスラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階と、
前記熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階と、
前記冷延板を最終焼鈍して電磁鋼板を製造する段階と、
を含み、
前記冷延板を最終焼鈍する段階で、700℃までの加熱速度を10℃/s以上とし、
前記電磁鋼板
の厚さの10%以内の極表面層に平均結晶粒径の25%未満の粒径を有する微細な表面微細結晶粒が存在し、
下記[
数1]を満たすことを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
[
数1]
0.3≦[表面微細結晶粒径]×[微細粒形成厚さ]×([As]/[Bi])≦5.0
(
[数1
]中、[表面微細結晶粒径]は電磁鋼板極表面層の微細な
表面微細結晶粒の平均粒径(μm)であり、15~20μmを満たすことを意味し、[微細粒形成厚さ]は微細な
表面微細結晶粒が形成される極表面層の厚さ(mm)を意味し、[As]は
前記Asの組成(重量%)、[Bi]は
前記Biの組成(重量%)を意味する。)
【請求項8】
前記スラブの前記Asと前記Biの合計は、0.0005~0.025%である、ことを特徴とする請求項
7に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項9】
前記スラブは[数2]を満たす、ことを特徴とする請求項
7または請求項
8に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
[数2]
1≦[As]/[Bi]≦10
([数2]中、[As]は前記スラブ内の前記Asの組成(重量%)、[Bi]は前記スラブ内の前記Biの組成(重量%)を意味する。)
【請求項10】
前記スラブは、N:0.0040%以下(0%を除く。)、C:0.0040%以下(0%を除く。)、S:0.0040%以下(0%を除く。)、Ti:0.0040%以下(0%を除く。)、Nb:0.0040%以下(0%を除く。)、V:0.0040%以下(0%を除く。)のうちの1種以上をさらに含む、ことを特徴とする請求項
7乃至請求項
9のいずれか一項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項11】
前記熱延板を製造する段階の後、
前記熱延板を熱延板焼鈍する段階をさらに含む、ことを特徴とする請求項
7乃至請求項
10のいずれか一項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無方向性電磁鋼板およびその製造方法に係る。より具体的に、モータの鉄心に使用される無方向性電磁鋼板およびその製造方法であって、高周波鉄損が低く、磁束密度が高い無方向性電磁鋼板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー節約、微細ホコリ発生低減および温室効果ガス低減など地球環境改善のために電気エネルギーの効率的な使用が大きく注目されている。現在発電される電気エネルギー全体の50%以上が電動機で消費されているため、電気の効率的な使用のためには電動機の高効率化が必ず必要であるのが実情である。最近、環境にやさしい自動車(ハイブリッド、プラグインハイブリッド、電気自動車、燃料電池自動車)分野が急激に発展することに伴い、高効率駆動モーターに対する関心が急増しており、同時に家電用高効率モータ、重電機用スーパープレミアムモータなど高効率化に対する認識および政府規制が持続しており、効率的な電気エネルギー使用のための要求がどの時より高いと言える。
【0003】
一方、電動機の高効率化のためには、素材の選択から設計、組立、制御に至るまで全ての領域で最適化が非常に重要である。特に素材の側面では電磁鋼板の磁性特性が最も重要であるため、低鉄損および高磁束密度に対する要求が高い。鉄損は、特定の磁束密度と周波数で発生するエネルギー損失を意味し、磁束密度は、特定の磁場下で得られる磁化の程度を意味する。鉄損が低いほど同一の条件でエネルギー効率が高いモータを製造することができ、磁束密度が高いほどモータを小型化させたり銅損を減少させることができる。この時、商用周波数領域だけでなく、高周波領域でも駆動しなければならない自動車駆動モーターやエアコンコンプレッサ用モータは、高周波低鉄損特性が極めて重要である。
【0004】
このような高周波低鉄損特性を得るために鋼板の製造過程では、Si、Al、Mnのような比抵抗元素を多量添加しなければならず、鋼板内部に存在する介在物および微細析出物を積極的に制御してこれらが磁壁移動を妨害できないようにしなければならない。しかし、介在物および微細析出物の制御のために不純物元素であるC、S、N、Ti、Nb、Vなどの元素を製鋼で極低くく精製するためには高級原料を使用しなければならず、また二次精練に多くの時間がかかって生産性が落ちるという問題点がある。
【0005】
したがって、Si、Al、Mnのような比抵抗元素の多量添加方法および不純物元素の極低制御のための研究が行われているが、これに対する実質的な適用結果は微々たる水準である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、無方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供することにある。より具体的に、モータの鉄心に使用される無方向性電磁鋼板およびその製造方法に関し、高周波鉄損が低く、磁束密度が高い無方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態による無方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:2.5~3.8%、Al:0.5~2.5%、Mn:0.2~4.5%、As:0.0005~0.02%、Bi:0.0005~0.01%、および残部はFeおよび不可避な不純物からなり、下記[数1]を満たす。
[数1]
0.3≦[表面微細結晶粒径]×[微細粒形成厚さ]×([As]/[Bi])≦5.0
[数1]中、[表面微細結晶粒径]は電磁鋼板極表面層の微細な結晶粒の平均粒径(μm)を意味し、[微細粒形成厚さ]は微細な結晶粒が形成される極表面層の厚さ(mm)を意味し、[As]は前記Asの組成(重量%)、[Bi]は前記Biの組成(重量%)を意味する。
【0008】
本発明の一実施形態による無方向性電磁鋼板は、AsとBiの合計は、0.0005~0.025%であり得る。
本発明の一実施形態による無方向性電磁鋼板は、[数2]を満たすことができる。
[数2]
1≦[As]/[Bi]≦10
[数2]中、[As]は前記スラブ内の前記Asの組成(重量%)、[Bi]は前記スラブ内の前記Biの組成(重量%)を意味する。
【0009】
無方向性電磁鋼板の厚さの10%以内の極表面層に平均結晶粒径の25%未満の微細な結晶粒が存在することができる。
【0010】
無方向性電磁鋼板は、N:0.0040%以下(0%を除く。)、C:0.0040%以下(0%を除く。)、S:0.0040%以下(0%を除く。)、Ti:0.0040%以下(0%を除く。)、Nb:0.0040%以下(0%を除く。)、V:0.0040%以下(0%を除く。)のうちの1種以上をさらに含むことができる。
【0011】
無方向性電磁鋼板は、比抵抗が45μΩ・cm以上であり得る。
【0012】
無方向性電磁鋼板は、鉄損(W0.5/10000)が10W/kg以下であり得る。
【0013】
一方、本発明の一実施形態による無方向性電磁鋼板の製造方法は、重量%で、Si:2.5~3.8%、Al:0.5~2.5%、Mn:0.2~4.5%、As:0.0005~0.02%、Bi:0.0005~0.01%、および残部はFeおよび不可避な不純物からなるスラブを加熱する段階と、スラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階と、熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階と、冷延板を最終焼鈍して電磁鋼板を製造する段階と、を含む。
【0014】
前記スラブは、AsとBiの合計は、0.0005~0.025%であり得る。
前記スラブは、[数2]を満たすことができる。
[数2]
1≦[As]/[Bi]≦10
[数2]中、[As]は前記スラブ内の前記Asの組成(重量%)、[Bi]は前記スラブ内の前記Biの組成(重量%)を意味する。
【0015】
冷延板を最終焼鈍する段階で、700℃までの加熱速度を10℃/s以上とすることができる。
【0016】
本発明の一実施形態による製造方法で製造された冷間圧延鋼板は、[数1]を満たすことができる。
[数1]
0.3≦[表面微細結晶粒径]×[微細粒形成厚さ]×([As]/[Bi])≦5.0
[数1]中、[表面微細結晶粒径]は電磁鋼板極表面層の微細な結晶粒の平均粒径(μm)を意味し、[微細粒形成厚さ]は微細な結晶粒が形成される極表面層の厚さ(mm)を意味し、[As]は前記スラブ内の前記Asの組成(重量%)、[Bi]は前記スラブ内の前記Biの組成(重量%)を意味する。
【0017】
前記スラブは、N:0.0040%以下(0%を除く。)、C:0.0040%以下(0%を除く。)、S:0.0040%以下(0%を除く。)、Ti:0.0040%以下(0%を除く。)、Nb:0.0040%以下(0%を除く。)、V:0.0040%以下(0%を除く。)のうちの1種以上をさらに含むことができる。
【0018】
前記熱延板を製造する段階の後、前記熱延板を熱延板焼鈍する段階をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一実施形態による無方向性電磁鋼板は、AsとBiを一定比率で添加して最終焼鈍時に昇温速度を最適化すると表面微細結晶粒を助長して表皮効果による高周波領域の鉄損を改善することができる。
したがって、本発明の一実施形態による無方向性電磁鋼板は、高速回転に適合する。
【0020】
このような無方向性電磁鋼板を製造することができる技術を提供して、環境にやさしい自動車用モータ、高効率家電用モータ、スーパープレミアム級電動機が製造可能に寄与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書で、第1、第2および第3などの用語は、多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるが、これらに限定されない。これら用語は、ある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためだけに使用される。したがって、以下で叙述する第1部分、成分、領域、層またはセクションは、本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションと言及され得る。
【0022】
本明細書で、ある部分がある構成要素を「含む」という時、これは特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除外せず、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
本明細書で、使用される専門用語は、単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数の形態は、文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数の形態も含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるものではない。
【0023】
本明細書で、マーカッシュ形式の表現に含まれている「これらの組み合わせ」の用語は、マーカッシュ形式の表現に記載された構成要素からなる群より選択される一つ以上の混合または組み合わせを意味するものであって、前記構成要素からなる群より選択される一つ以上を含むことを意味する。
【0024】
本明細書で、ある部分が他の部分の「上に」あると言及する場合、これは他の部分の「直上に」にあるか、またはその間にまた他の部分が介され得る。対照的に、ある部分が他の部分の「直上に」あると言及する場合、その間にまた他の部分が介されない。
【0025】
特に定義しなかったが、ここで使用する技術用語および科学用語を含む全ての用語は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が一般的に理解する意味と同一の意味を有する。通常使用される辞書に定義された用語は、関連技術文献と現在開示された内容に符合する意味を有すると追加解釈され、定義されない限り、理想的または非常に公式的な意味に解釈されない。
【0026】
また、特に言及しない限り、%は重量%を意味し、1ppmは0.0001重量%である。
本発明の一実施形態で追加元素をさらに含むことの意味は、追加元素の追加量の分、残部である鉄(Fe)を代替して含むことを意味する。
【0027】
以下、本発明の実施形態について本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳細に説明する。しかし、本発明は多様な異なる形態に実現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0028】
無方向性電磁鋼板の高周波鉄損を改善するためには、結晶粒径を小さく作り、また表皮効果によって表面層の結晶粒をより微細にする必要がある。しかし、鋼板内で結晶粒径を二元化させることは析出物の導入などにより磁性劣化をもたらすことがある。本発明では、特殊元素であるAs、Biを利用して表面に微細な結晶粒を製造して生産性に優れるだけでなく、高周波鉄損に優れた電磁鋼板をより容易に製造することができるようにすることを目的とする。以下、前記目的を達成するための条件を説明する。
【0029】
本発明の一実施形態による無方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:2.5~3.8%、Al:0.5~2.5%、Mn:0.2~4.5%、As:0.0005~0.02%、Bi:0.0005~0.01%、および残部はFeおよび不可避な不純物からなり、下記[数1]を満たす。
[数1]
0.3≦[表面微細結晶粒径]×[微細粒形成厚さ]×([As]/[Bi])≦5.0
[数1]中、[表面微細結晶粒径]は電磁鋼板極表面層の微細な結晶粒の平均粒径(μm)を意味し、[微細粒形成厚さ]は微細な結晶粒が形成される極表面層の厚さ(mm)を意味し、[As]はAsの組成(重量%)、[Bi]はBiの組成(重量%)を意味する。
【0030】
より具体的には、N:0.0040%以下(0%を除く。)、C:0.0040%以下(0%を除く。)、S:0.0040%以下(0%を除く。)、Ti:0.0040%以下(0%を除く。)、Nb:0.0040%以下(0%を除く。)、V:0.0040%以下(0%を除く。)のうちの1種以上をさらに含むことができる。
【0031】
より具体的には、AsとBiの合計は、0.0005~0.025%であり得る。
より具体的には、[数2]を満たすことができる。
[数2]
1≦[As]/[Bi]≦10
[数2]中、[As]はスラブ内のAsの組成(重量%)、[Bi]はスラブ内のBiの組成(重量%)を意味する。
【0032】
まず、無方向性電磁鋼板の成分を限定した理由を説明する。
【0033】
Si:2.5~3.8重量%
Siは、材料の比抵抗を高めて鉄損を低める役割を果たし、過度に少なく添加される場合、高周波鉄損改善効果が足りないことがある。逆に過度に多く添加される場合、材料の硬度が上昇して冷間圧延性が極度に悪化して生産性および打抜性が劣位になることがある。したがって、前述した範囲でSiを添加することができる。より具体的に、Siを2.7~3.5重量%含むことができる。
【0034】
Al:0.5~2.5重量%
Alは、材料の比抵抗を高めて鉄損を低める役割を果たし、過度に少なく添加されると、高周波鉄損低減に効果がなく、窒化物が微細に形成されて磁性を劣化させることがある。逆に過度に多く添加される場合、製鋼と連続鋳造などの全ての工程上に問題を発生させて生産性を大幅に低下させることがある。したがって、前述した範囲でAlを添加することができる。より具体的にAlを0.5~2.0重量%含むことができる。さらに具体的にAlを0.5~1.5重量%含むことができる。
【0035】
Mn:0.2~4.5重量%
Mnは、材料の比抵抗を高めて鉄損を改善し、硫化物を形成させる役割を果たし、過度に少なく添加されると、MnSが微細に析出されて磁性を劣化させる。逆に過度に多く添加されると、磁性に不利な[111]集合組織の形成を助長して磁束密度が急激に減少することがある。したがって、前述した範囲でMnを添加することができる。より具体的にMnを0.3~4.0重量%含むことができる。さらに具体的にMnを0.4~3.0重量%含むことができる。
【0036】
As:0.0005~0.02重量%
Asは、表面層に偏析して結晶粒成長性を調節する役割を果たす。基本的に本発明の一実施形態では従来技術の問題点を解決するために主要添加成分であるSi、AlおよびMnの範囲を最適化するだけでなく、特殊添加元素であるAsおよびBiを一定比率で少量添加する。また後で製造方法の説明で言及する最終焼鈍時の昇温速度まで制御して、表面に微細粒を形成させて磁性が優れた範囲を限定した。この時、Asが過度に少なく添加されると、十分に偏析なれず、結晶粒成長性を助長する役割を果たせないこともある。逆に過度に多く添加されると、鋼板全体の結晶粒成長性を抑制して磁性が劣位になることがある。したがって、前述した範囲でAsを添加することができる。より具体的にAsを0.001~0.02重量%含むことができる。
【0037】
Bi:0.0005~0.01重量%
Biは、Asの表面偏析を助ける添加剤の役割を果たす。過度に少なく添加されると、Asの表面偏析を助けて焼鈍工程で極表面層に結晶粒微細化を促進させる役割を果たすことができる。逆に過度に多く添加されると、微細な析出物の形成を助長して鉄損を劣化させることがある。したがって、前述した範囲でBiを添加することができる。より具体的にBiを0.0007~0.01重量%含むことができる。
【0038】
その他不純物元素C、S、N、Ti、Nb、V:各0.004重量%以下
Nは、Ti、Nb、Vと結合して窒化物あるいは炭化物を形成する。このような窒化物または炭化物は、その大きさが微細なほど結晶粒成長性を低下させるが、各窒化物または炭化物はその程度および役割が異なるため、これを考慮してその含有量は前述した範囲で添加することができる。
Cは、N、Ti、Nb、Vなどと反応して微細な炭化物を作って結晶粒成長性および磁区移動を妨害する役割を果たし、磁気時効を起こすため、前述した範囲で添加することができる。
Sは、硫化物を形成して結晶粒成長性を劣位にさせるため、前述した範囲で添加することができる。より具体的にC、S、N、Ti、NbおよびVをそれぞれ0.003重量%以下含むことができる。
【0039】
前記成分以外に本発明は、Feおよび不可避な不純物からなる。前記成分以外に有効な成分の添加を排除するのではない。
【0040】
次に、無方向性電磁鋼板の成分元素間の添加比率を限定した理由を説明する。
【0041】
[As]+[Bi]:0.0005~0.025、[As]/[Bi]:1~10
[As]+[Bi]は、一定量以上存在して極表面層に偏析すればよいため、AsあるいはBiのうちの1種だけ存在すればよく、その合計が過度に多ければ微細な析出物の形成で結晶粒成長性が極めて劣位になることがある。また[As]/[Bi]比を限定する理由は、過度に小さい範囲では極表面偏析が十分に発生せず、結晶粒助長が難しいことがある。逆に過度に大きい範囲ではBiの触媒の役割がないので表面微細結晶粒径をほとんど生成することができないため、その比率を限定することができる。
【0042】
0.3≦[表面微細結晶粒径(μm)]×[微細粒形成厚さ(mm)]×([As]/[Bi])≦5.0
焼鈍時に形成される表面微細結晶粒径と微細粒形成厚さは、[As]/[Bi]の比率で依存することを発見して数式化した。過度に小さい範囲では微細粒がほとんど形成されない。逆に過度に大きい範囲では、表面微細結晶粒が粗大化されて平均結晶粒とほとんど同一になるため、それ以内の範囲で管理されなければならない。ここで、[表面微細結晶粒径]は電磁鋼板極表面層の微細な結晶粒の平均粒径(μm)を意味し、[微細粒形成厚さ]は微細な結晶粒が形成される極表面層の厚さ(mm)を意味し、[As]はAsの組成(重量%)、[Bi]はBiの組成(重量%)を意味する。
【0043】
より具体的に、[表面微細結晶粒径]は電磁鋼板極表面層に存在する平均結晶粒径の25%未満の大きさである微細結晶粒の大きさを意味し得る。より具体的に、[表面微細結晶粒径]は13μm以上であり得る。より具体的に、15μm~20μmであり得る。
【0044】
より具体的に、[微細粒形成厚さ]は電磁鋼板厚さの10%以内の微細結晶粒が存在する極表面層を意味し得る。より具体的に、[微細粒形成厚さ]は11μm以上であり得る。さらに具体的に、15μm~30μmであり得る。
【0045】
したがって、本発明の一実施形態による無方向性電磁鋼板は、電磁鋼板厚さの10%以内の極表面層に平均結晶粒径の25%未満の粒径を有する微細な結晶粒が存在することができる。
【0046】
本発明の一実施形態による無方向性電磁鋼板は、比抵抗が45μΩ・cm以上であり得る。より具体的には、53μΩ・cm以上であり得る。さらに具体的には、64μΩ・cm以上であり得る。上限は特に制限されないが、100μΩ・cm以下であり得る。
【0047】
本発明の一実施形態による無方向性電磁鋼板は、高周波鉄損(W0.5/10000)が10W/kg以下であり得る。より具体的には、9W/kg以下であり得る。さらに具体的には、8.5W/kg以下であり得る。下限は特に制限されないが、7.0W/kg以上であり得る。本発明の一実施形態で高周波鉄損が非常に低いため、特に自動車モータとして使用時に高速走行で燃費に優れている。
【0048】
本発明の一実施形態による無方向性電磁鋼板は、鉄損(W10/400)が15.5W/kg以下であり得る。より具体的には、14.8W/kg以下であり得る。
【0049】
本発明の一実施形態による無方向性電磁鋼板は、磁束密度(B50)が1.63T以上であり得る。磁束密度が1.63Tである場合は、自動車モータとして使用時に出発および加速時にトルクに優れた特徴がある。
【0050】
本発明の一実施形態による無方向性電磁鋼板の製造方法は、重量%で、Si:2.5~3.8%、Al:0.5~2.5%、Mn:0.2~4.5%、As:0.0005~0.02%、Bi:0.0005~0.01%、および残部はFeおよび不可避な不純物からなるスラブを準備する段階と、スラブを加熱する段階と、加熱されたスラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階と、熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階と、冷延板を最終焼鈍して電磁鋼板を製造する段階と、を含み、冷延板を最終焼鈍する段階で、700℃までの加熱速度を10℃/s以上とする。以下、各段階別に具体的に説明する。
【0051】
まず、前述した組成を満たすスラブを準備する。スラブ内の各組成の添加比率を限定した理由は前述した無方向性電磁鋼板の組成限定理由と同一であるため、反復説明を省略する。後述する熱間圧延、熱延板焼鈍、冷間圧延、最終焼鈍などの製造過程でスラブの組成は実質的に変動しないため、スラブの組成と無方向性電磁鋼板の組成は実質的に同一である。
【0052】
このような製鋼段階で溶鋼内に合金元素を添加する時には、Si、AlおよびMnを先に添加した後、AsまたはBiのうちの1種以上を投入した後、Arガスなどを利用して5分以上の十分なバブリング(Bubbling)を実施してAsとBiが反応することができるようにする。その後、制御された溶鋼を連続鋳造工程で凝固させてスラブを製造することができる。
【0053】
次に、製造されたスラブを加熱する。加熱することによって後続する熱間圧延工程を円滑に行い、スラブを均質化処理することができる。より具体的に、加熱は再加熱を意味し得る。この時、スラブ加熱温度は1100~1250℃であり得る。スラブの加熱温度が過度に高ければ析出物が再溶解されて熱間圧延後に微細に析出され得る。
【0054】
次に、加熱されたスラブを熱間圧延して熱延板を製造する。熱間圧延の仕上げ圧延温度は800℃以上であり得る。
熱延板を製造する段階の後、熱延板を熱延板焼鈍する段階をさらに含むことができる。この時、熱延板焼鈍温度は、850~1150℃であり得る。熱延板焼鈍温度が過度に低ければ組織が成長しないか、または微細に成長して磁束密度の上昇効果が少なく、逆に熱延板焼鈍温度が過度に高ければ磁気特性がむしろ劣化し、板形状の変形により圧延作業性が悪くなることがある。より具体的に温度範囲は950~1125℃であり得る。さらに具体的に熱延板の焼鈍温度は900~1100℃であり得る。熱延板焼鈍は、必要に応じて磁性に有利な方位を増加させるために行われるものであり、省略も可能である。
【0055】
次に、熱延板を酸洗し、所定の板厚さになるように冷間圧延して冷延板を製造する。熱延板厚さにより異に適用され得るが、70~95%の圧下率を適用して最終厚さが0.2~0.65mmになるように冷間圧延して冷延板を製造することができる。
【0056】
次に、冷延板を最終焼鈍して電磁鋼板を製造する。最終焼鈍温度は800~1050℃になり得る。最終焼鈍温度が過度に低ければ再結晶が十分に発生することができず、最終焼鈍温度が過度に高ければ結晶粒の急激な成長が発生して磁束密度と高周波鉄損が劣位になることがある。より具体的に900~1000℃の温度で最終焼鈍することができる。最終焼鈍過程で、前段階である冷間圧延段階で形成された加工組織が全て(つまり、99%以上)再結晶され得る。
【0057】
冷延板を最終焼鈍する段階で、700℃までの加熱速度を10℃/s以上で制御することができる。これは特殊添加元素の表面偏析を通じて極表面微細粒を助長するためのものである。極表面層は、鋼板厚さの10%以内を意味し、微細粒は平均結晶粒径の25%未満の大きさの微細な結晶粒径を意味する。より具体的に13~35℃/s以上で制御することができる。
【0058】
その後、700℃超過乃至前述した最終焼鈍温度までは10~30℃/sの速度で加熱することができる。
この時の極表面微細粒の結晶粒径の確認は、光学顕微鏡を利用することができ、観察面は圧延垂直方向の断面(TD面)である。
【0059】
以下、実施例を通じて本発明をより具体的に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明を例示してより詳細に説明するためのものに過ぎず、本発明の権利範囲を限定するためのものでないという点に留意する必要がある。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載した事項とこれから合理的に類推される事項によって決定されるためである。
【0060】
実施例
下記表1のように組成され、残部Feおよび不可避な不純物からなるスラブを製造した。スラブの不純物C、S、NおよびTiは全て0.003%に制御した。スラブを1150℃で加熱し、850℃の熱間仕上げ温度で熱間圧延して、板厚さ2.0mmの熱延板を製造した。熱間圧延された熱延板は、1100℃で4分間熱延板焼鈍後、酸洗および冷間圧延して厚さを0.25mmに作り、表2の温度範囲および昇温速度で最終焼鈍を施した。したがって、表2に記載された通り、80~100μmの平均結晶粒径の焼鈍板を製作した。この時の極表面微細粒の結晶粒径の確認は、光学顕微鏡を利用することができ、観察面は圧延垂直方向の断面(TD)である。
【0061】
各試片に対する比抵抗、磁束密度(B50)、鉄損(W10/400)および高周波鉄損(W0.5/100000)を下記表3に示した。このような磁気的性質は、Single Sheet testerを利用して圧延方向および垂直方向の平均値で決定した。この時、B50は5000A/mの磁場で誘導される磁束密度であり、W10/400は400Hzの周波数で1.0Tの磁束密度を誘起した時の鉄損を意味し、W0.5/100000は100000Hzの周波数で0.05Tの磁束密度を誘起した時の鉄損を意味する。
【0062】
発明の範囲に属する鋼種の場合、厚さ約15μm以上の微細表面層が形成され、表面微細粒の直径も約15μm以上になった。この場合、高周波鉄損に優れている。
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
本発明は、前記実施例に限定されるのではなく、互いに異なる多様な形態に製造可能であり、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態に実施可能であることを理解できるはずである。したがって、以上で記述した実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならない。