(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症を処置するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/54 20060101AFI20240229BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240229BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240229BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240229BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240229BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240229BHJP
C12N 9/10 20060101ALI20240229BHJP
A61K 38/43 20060101ALI20240229BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240229BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240229BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C12N15/54 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/19
C12N1/15
C12N1/21
C12N5/10
C12N9/10
A61K38/43
A61K48/00
A61P3/00
A61P7/00
(21)【出願番号】P 2021531945
(86)(22)【出願日】2019-12-05
(86)【国際出願番号】 US2019064786
(87)【国際公開番号】W WO2020118115
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-12-02
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513269893
【氏名又は名称】アークトゥラス・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Arcturus Therapeutics,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】ペレス-ガルシア,カルロス ジー
(72)【発明者】
【氏名】立川 清
(72)【発明者】
【氏名】松田 大輝
(72)【発明者】
【氏名】チブクラ,パドマナブ
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/218524(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/138348(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/017519(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/118697(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/170896(WO,A2)
【文献】国際公開第2018/127382(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号4のアミノ酸配列を含み、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)酵素活性を有するOTCタンパク質。
【請求項2】
請求項1に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項3】
配列番号4をコードする最適化コード領域を含む、請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
DNAである、請求項3に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
mRNAである、請求項3に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
(a)非ヒト5’非翻訳領域(5’UTR);または
(b)シロイヌナズナによって発現される遺伝子に由来する5’UTR;または
(c)配列番号6、配列番号125~127、または配列番号230~250の配列を含む5’UTR;または
(d)配列番号6の配列を含む5’UTR;または
(e)マウスベータグロビン、ヒトIL-6、アラニンアミノトランスフェラーゼ1、ヒトアポリポタンパク質E、ヒトフィブリノーゲンアルファ鎖、ヒトトランスサイレチン、ヒトハプトグロビン、ヒトアルファ-1-アンチキモトリプシン、ヒトアンチトロンビン、ヒトアルファ-1-アンチトリプシン、ヒトアルブミン、ヒトベータグロビン、ヒト補体C3、ヒト補体C5、SynK(シアノバクテリア、シネコシスティス属の種(Synechocystis sp.)由来のチラコイドカリウムチャネルタンパク質)、マウスアルブミン、またはタバコエッチウイルスの5’UTR配列から選択される配列を含む5’UTR;または
(f)マウスベータグロビンの5’UTR配列を含む5’UTR;または
(g)3’ポリAテール;または
(h)約60個の連続アデニンヌクレオチドから約125個の連続アデニンヌクレオチドを含む3’ポリAテール;または
(i)約100個の連続アデニンヌクレオチドから約125個の連続アデニンヌクレオチドを含む3’ポリAテール、
を含む、請求項5に記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
(a)3’UTR;または
(b)配列番号21、16、17、18、19、20または22の配列を含む、3’UTR;または
(c)配列番号23のコザック配列または配列番号24の部分的コザック配列;または
(d)5’キャップ;または
(e)以下の構造:
【化1】
を有するm7GpppGmである5’キャップ、
を含む、請求項5に記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
最適化コード領域が配列番号221を含む、請求項4に記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
(a)配列番号119の配列;または
(b)配列番号221の配列、ここで、TはUに置換されており、ポリヌクレオチドが任意にさらに配列番号6の配列および/または配列番号21の配列を含む;または
(c)配列番号251または252の配列、
を含む、請求項5に記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
(a)ポリヌクレオチドのコード領域におけるウラシル核酸塩基のパーセンテージが、野生型OTC核酸配列におけるウラシル核酸塩基のパーセンテージに対して低減されている;または
(b)ウリジンの1~100%が修飾ウリジ
ンである;または
(c)ウリジンヌクレオチドの100%が5-メトキシウリジンである;または
(d)ウリジンヌクレオチドの100%がN
1-メチルシュードウリジンである、
請求項5に記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
(a)ウリジンの1~100%が修飾ウリジ
ンである;または
(b)ウリジンヌクレオチドの100%が5-メトキシウリジンである;または
(c)ウリジンヌクレオチドの100%がN
1-メチルシュードウリジンである、
請求項9に記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
請求項9または11に記載のポリヌクレオチドを含む医薬組成物。
【請求項13】
薬学的に許容される担体を含み、薬学的に許容される担体が脂質製剤である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
OTC欠損症に罹患していると同定された患者におけるOTC欠損症を処置する方法において使用するための、請求項2~11のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項12または13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
請求項4に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項16】
請求項15に記載のベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項17】
配列番号4のアミノ酸配列を有するOTCタンパク質をコードするmRNAであって、mRNAが配列番号119、配列番号251または配列番号252のポリヌクレオチド配列を有し、コードされたタンパク質がOTC酵素活性を有する、mRNA。
【請求項18】
(a)ウリジンの1~100%が修飾ウリジ
ンである;または
(b)ウリジンヌクレオチドの100%が5-メトキシウリジンである;または
(c)ウリジンヌクレオチドの100%がN
1-メチルシュードウリジンである、
請求項17に記載のmRNA。
【請求項19】
請求項17または18に記載のmRNAを含む医薬組成物。
【請求項20】
薬学的に許容される担体を含み、薬学的に許容される担体が脂質製剤である、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
OTC欠損症に罹患していると同定された患者におけるOTC欠損症を処置する方法に使用される、請求項
19に記載の
医薬組成物であって、mRNAが患者において配列番号4のタンパク質を発現する
ものである、
医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年12月6日に出願された米国仮出願第62/776,302号の優先権を主張するものである。この出願の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を含んでおり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2019年11月25日に作成された前記ASCIIコピーの名称は049386_523001WO_SL.txtであり、363キロバイトのサイズである。
【背景技術】
【0003】
オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)は、哺乳類に存在するミトコンドリア酵素であり、これは有毒アンモニアから生物を解毒する際に不可欠な役割を果たす。OTC mRNAは、新生プレペプチドをサイトゾルからミトコンドリアに向け直すのに重要なミトコンドリアシグナル伝達ペプチド(MSP)を有する。OTCタンパク質は、サイトゾルにおいて前駆体として存在しており、MSPの存在によってプロペプチドがミトコンドリアに再指示され、そこでシグナルペプチドの除去および機能性タンパク質のミトコンドリアマトリックスへのデリバリーが行われる。OTCは、肝細胞で生じる代謝プロセスであり、尿素サイクルとして公知のプロセスである、タンパク質の分解および体外へのアンモニアの排出を担う6つの酵素のうちの1つである。OTCは、カルバモイルリン酸とオルニチンをシトルリンに変換することに関与している。
【0004】
OTC酵素の欠損により、血液中に窒素がアンモニアの形態で過剰に蓄積する(高アンモニア血症)。神経毒素である過剰アンモニアは、中枢神経系に血液を介して移動し、OTC欠損症に関連する症状および身体所見をもたらす。これらの症状には、嘔吐、食欲不振、進行性無気力、または昏睡が含まれる。処置せずに放置した場合、高アンモニア血症のエピソードが昏睡および生命にかかわる合併症に進行する可能性がある。
【0005】
OTC欠損症の重症度および発症年齢は、同じ家族内であっても人によって異なる。この障害の重度の形態は、生後まもない(新生児期)一部の乳児、典型的には男性に影響を及ぼす。より軽度の障害が乳児期以降の一部の子供に影響を及ぼす。男性および女性の両方とも、幼年期にOTC欠損症の症状を発症し得る。現在、OTC欠損症の処置は、過剰アンモニアが生成されるのを防ぐこと、または高アンモニア血症のエピソード中に過剰アンモニアを除去することを目的としている。OTC欠損症の長期療法は、食事制限と、窒素を体内から変換および排出する代替方法(代替経路療法)の促進を組み合わせている。
【0006】
OTC欠損症の人の食事制限は、過剰アンモニアの発生を回避するために、タンパク質の摂取量を制限することを目的としている。しかし、罹患した乳児が確実に適切な成長を遂げるには、十分なタンパク質を摂取する必要がある。OTC欠損症の乳児には、必須アミノ酸が補充された低タンパク質、高カロリーの食事が与えられる。
【0007】
OTC欠損症の人は、食事制限に加えて、体内からの窒素の排出を刺激する医薬によって処置される。これらの医薬は、尿素サイクルの代替方法を提供し、窒素廃棄物を変換および除去する。これらの医薬は、多くの患者が口にすることができず、多くの場合、腹壁から胃に入れるチューブ(胃瘻チューブ)、または鼻から胃に達する細いチューブ(経鼻胃チューブ)を介して投与される。
【0008】
改善がない場合または高アンモニア血性昏睡が発生した場合は、罹患した個体の血液を機械によって濾過して老廃物を除去すること(血液透析)が必要になり得る。血液透析はまた、高アンモニア血症性昏睡中に初めてOTC欠損症と診断された乳児、小児、成人の処置にも使用される。
【0009】
いくつかの場合には、肝移植が適切な処置の選択肢となることがある。肝移植は、OTC欠損症における高アンモニア血症を治すことができる。しかし、この手術はリスクが高く、術後に合併症が起こり得る。また、肝移植後、患者は生涯にわたって、免疫抑制のために投薬レジメンを受ける必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
OTC酵素欠損症の処置には、依存として新規のアプローチおよび治療法が必要とされている。例えば、遺伝子治療に関連した課題および制限を克服する戦略が必要とされている。不十分な安定性、ミトコンドリア内での十分なOTCの確保、標的細胞への効率的なデリバリーは、依然として課題である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、患者におけるOTC欠損症を処置するための改善された特性を有する配列番号4の修飾ヒトOTCタンパク質を提供する。配列番号4は、1つまたは複数の予測されるユビキチン化部位を除去してユビキチン化およびユビキチンリガーゼによる分解を受けにくいタンパク質が得られるように野生型OTCから修飾されている。しかし、配列番号4の修飾OTCタンパク質は、ヒト野生型OTCの触媒酵素活性を維持する。予測されるユビキチン化部位の除去は、好ましくは、アスパラギン、アルギニン、ロイシン、リジン、またはフェニルアラニンなどのユビキチン化をサポートすることが判明しているN末端残基を、アラニン、グリシン、メチオニン、セリン、スレオニン、バリン、プロリンなどのユビキチン化に対して安定化することが判明しているN末端残基で置き換えることを含む。この方法において配列番号4の修飾OTCタンパク質を安定化することは、サイトゾルから酵素活性を発揮するミトコンドリアへの輸送の間、修飾OTCタンパク質の安定性を維持するために特に有利である。
【0012】
好ましくは、本明細書に記載した配列番号4のタンパク質は、配列番号4のタンパク質をコードする核酸から生成される。核酸は、配列番号4のタンパク質をコードするRNAまたはDNAであり得る。好ましくは、核酸は、配列番号4の修飾タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含む異種mRNAコンストラクトである。好ましくは、オープンリーディングフレームは、コドン最適化オープンリーディングフレームである。好ましくは、オープンリーディングフレーム配列は、修飾タンパク質をコードすることが可能な理論的に最小のウリジンを有するように最適化される。好ましくは、異種mRNAコンストラクトは、5’キャップ、5’UTR、3’UTR、配列番号4の修飾タンパク質をコードするオープンリーディングフレーム、および3’ポリAテールを含む。好ましくは、5’UTRは、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)によって発現される遺伝子に由来する。好ましくは、シロイヌナズナによって発現される遺伝子に由来する5’UTRは、表2で確認される。
【0013】
本開示はまた、配列番号3の野生型ヒトオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)タンパク質をコードする最適化コード領域、または配列番号3の完全長に対して少なくとも95%同一であり、OTCタンパク質の酵素活性を有するOTCタンパク質配列を含むmRNA(本明細書ではmRNAコンストラクトまたはmRNA配列とも称する)であって、mRNA配列がシロイヌナズナによって発現される遺伝子に由来する5’UTRを含む、mRNAも提供する。
【0014】
本明細書に記載したmRNAコンストラクトは、本明細書に記載したOTCタンパク質の高効率発現を提供する。発現は、インビトロ(in vitro)、エキソビボ(ex vivo)、またはインビボ(in vivo)であり得る。
【0015】
本開示はまた、本明細書に記載したmRNA配列を含む医薬組成物、および本明細書に記載したmRNA配列を含む医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することによってオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症を処置する方法であって、配列番号3または配列番号4のOTCタンパク質が患者において発現される、方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1A~Bは、肝細胞株Hepa1,6(マウス)およびHep3B(ヒト)における24時間(
図1A)および48時間(
図1B)でのオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)タンパク質発現を、細胞内ウエスタン(ICW)アッセイを使用して示した散布図である。
【0017】
【
図2】
図2A~Bは、ラウンド1の24時間でHepa1,6細胞(
図2A)およびHep3B細胞(
図2B)においてスクリーニングされたタンパク質安定性化合物の相関を示す散布図を示す。
【0018】
【
図3】
図3A~Bは、
図3Aおよび
図3Bに示したように、ラウンド2の24時間および48時間でヒト初代肝細胞においてスクリーニングされたタンパク質安定性化合物(ラウンド1に基づいて新たに最適化された化合物)の相関を示す散布図を示す。
【0019】
【
図4】
図4A~Bは、
図4Aおよび
図4Bに示したように、ラウンド3の24時間および48時間でヒト初代肝細胞においてスクリーニングされたタンパク質安定性化合物(ラウンド1および2に基づいて新たに最適化された化合物)の相関を示す散布図を示す。
【0020】
【
図5】
図5は、リードOTC mRNAをトランスフェクトしたヒト初代肝細胞におけるOTCタンパク質の発現レベルを示すプロットである。1799.1は、配列番号175の配列を有するmRNAであり、配列番号175のウリジンの100%はN
1-メチルシュードウリジン(N1MPU)である。
【0021】
【
図6】
図6A~Bは、ヒト特異的OTC-mRNAエピトープ(
図6A)またはマウス特異的OTC-mRNAエピトープ(
図6B)を10mg/kgで投与したspf/ashマウスにおける時間経過によるOTC発現レベルを示す棒グラフを示す。
【0022】
【
図7】
図7は、ウリジンの100%がN
1-メチルシュードウリジン(N1MPU)であり、ウリジンの100%が5-メトキシウリジン(5MeOU)である、2つの異なる化学物質を使用し、OTCmRNAを3mg/kgで投与したspf/ashマウスにおけるOTC発現レベルを示す棒グラフである。
【0023】
【
図8】
図8は、2つの異なる化学物質(N1MPUおよび5MeOU)を使用し、OTC-mRNAを3つの異なる用量で投与したBalb/cマウスにおけるOTC発現レベルを示すグラフである。
【0024】
【
図9】
図9は、OTC-mRNA1799.7を3つの異なる用量:0.3mg/kg、1mg/kgおよび3mg/kgで投与したspf/ashマウスにおいて測定された尿中オロト酸塩レベルを示すグラフである。1799.1は配列番号175の配列を有するmRNAであり、配列番号175のウリジンの100%は5MeOUである。
【0025】
【
図10】
図10は、2つの異なる化学物質(N1MPUおよび5MeOU)を使用し、OTC-mRNAを1mg/kgおよび3mg/kgで投与したspf/ashマウスにおける96時間のヒトOTC発現レベルと尿中オロト酸塩を比較する散布図である。
【0026】
【
図11】
図11は、リードOTC-mRNAを1mg/kgおよび3mg/kgで投与したspf/ashマウスにおけるOTC-mRNAのタンパク質発現レベルを示すウエスタンブロットである。
【0027】
【
図12】
図12は、リードOTC-mRNAで処置したspf/ashマウスのミトコンドリア画分対サイトゾル画分におけるタンパク質発現レベルを示すウエスタンブロットである。
【0028】
【
図13】
図13は、リードOTC-mRNAで処置したspf/ashマウスにおける時間経過による尿中オロト酸塩レベルの発現を示すプロットである。
【0029】
【
図14】
図14は、3つの異なる用量のOTC-mRNA1799.7による処置の際の高タンパク質食におけるOTC欠損マウス(spf/ash)の生存を示すプロットである。
【0030】
【
図15】
図15は、異なる修飾を有するOTC-mRNA(2262)を投与したオスC57BL/6マウスにおけるhOTC発現レベルを示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
定義:
【0032】
「OTC」または「hOTC」または「OTC_HUMAN」と本明細書において互換的に使用される用語「オルニチントランスカルバミラーゼ」とは、一般に、UniPRotKB-P00480に関連するヒトタンパク質を指す。野生型ヒトOTCタンパク質のアミノ酸配列は、本明細書においては配列番号3によって表される。
【0033】
用語「核酸」とは、その最も広い意味において、ヌクレオチドのポリマーを含む任意の化合物および/または物質を含む。これらのポリマーは、多くの場合、ポリヌクレオチドと呼ばれる。本明細書に記載した例示的な核酸またはポリヌクレオチドとしては、限定するものではないが、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、トレオース核酸(TNA)、グリコール核酸(GNA)、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA、β-D-リボ配置を有するLNA、α-L-リボ配置を有するα-LNA(LNAのジアステレオマー)、2’-アミノ官能基化を有する2’-アミノLNA、および2’-アミノ官能基化を有する2’-アミノ-α-LNAを含む)またはそのハイブリッドが挙げられる。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」とは、一般に、核酸(例えばDNAまたはRNA)を指すために使用される。mRNAなどのRNAが具体的に言及されている場合、用語ポリリボヌクレオチドが使用され得る。用語のポリヌクレオチド、ポリリボヌクレオチド、核酸、リボ核酸、DNA、RNA、mRNAなどには、標準残基または非修飾残基;非標準残基または修飾残基(例えば類似体);標準残基および非標準(例えば類似体)残基の混合物で構成され得るそのような分子が含まれる。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドまたはポリリボヌクレオチドは、修飾ポリヌクレオチドまたは修飾ポリリボヌクレオチドである。本開示の文脈では、本明細書に挙げたそれぞれのRNA(ポリリボヌクレオチド)配列について、対応するDNA(ポリデオキシリボヌクレオチドまたはポリヌクレオチド)配列が考えられ、また逆も同様である。「ポリヌクレオチド」は、「オリゴマー」と互換的に使用することができる。本明細書に示したポリヌクレオチド配列は、特に明記のない限り、左から右へ、5’から3’へである。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「メッセンジャーRNA」(mRNA)とは、目的のタンパク質またはポリペプチドをコードしており、翻訳され、コードされた目的のタンパク質またはポリペプチドをインビトロ、インビボ、インサイチュ(in situ)またはエキソビボで生成することを可能にする、任意のポリヌクレオチドを指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「翻訳」とは、リボソームがポリペプチドを作製するプロセスである。翻訳では、メッセンジャーRNA(mRNA)は、リボソーム複合体の転移RNA(tRNA)によって解読され、特定のアミノ酸鎖、またはポリペプチドを生成する。コード配列またはCDSとしても知られているポリヌクレオチド配列(DNAまたはRNA)のコード領域は、翻訳のプロセスによってタンパク質またはその断片に変換することが可能である。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「コドン最適化」とは、コードされたタンパク質のアミノ酸配列を変化させることなく異なるコドンを選択することにより再設計された天然の(または意図的に設計された天然の変異体)コード配列を意味する。コドン最適化配列は、他の利点を提供する中でもコード化されたタンパク質のタンパク質発現レベルを増加させることができる(Gustafsson et al. Codon bias and heterologous protein expression. 2004, Trends Biotechnol 22: 346-53)。高コドン適応指数(CAI)、LowU法、mRNA二次構造、シス制御配列、GC含量などの変数および他の多くの同様の変数は、タンパク質発現レベルとある程度の相関関係があることが示されている(Villalobos et al., Gene Designer: a synthetic biology tool for constructing artificial DNA segments. 2006, BMC Bioinformatics 7:285)。高CAI(コドン適応指数)法では、タンパク質コード配列全体に対して最も頻繁に使用される同義コドン(synonymous codon)をピックアップする。それぞれのアミノ酸に対して最も頻繁に使用されるコドンは、ヒトゲノム由来の74,218個のタンパク質コード遺伝子から推定される。LowU法は、U部分が少ない同義コドンに置き換えることができるU含有コドンのみを標的とする。置換に関していくつかの選択肢がある場合には、使用頻度が高いコドンが選択される。配列内の残りのコドンは、LowU法によって変化されない。この方法は、開示したmRNAと組み合わせて使用し、例えば5-メトキシウリジンまたはN1-メチルシュードウリジンを用いて合成されるコード配列を設計することができる。
【0038】
本明細書で使用される場合、「修飾された」とは、本明細書に開示した分子の状態または構造における変化を指す。分子は、化学的、構造的、または官能基的などの多くの方法において変化させることができる。好ましくは、本開示のポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、ポリヌクレオチドもしくはポリペプチドの天然型と比較して、または参照ポリヌクレオチド配列もしくはポリヌクレオチド配列と比較して修飾されている。例えば、本明細書に開示したmRNAは、コドン最適化によって、または非天然のヌクレオシドもしくはヌクレオチドの挿入によって修飾することができる。ポリペプチドは、例えば、部位特異的アミノ酸欠失または置換によって修飾され、ポリペプチドの特性が変化され得る。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「相同性」とは、ポリマー分子間、例えば、核酸分子(例えば、DNA分子および/またはRNA分子)間、ならびに/あるいはポリペプチド分子間の全体的な関連性を指す。いくつかの実施形態では、ポリマー分子は、それらの配列が少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一または類似である場合、相互に「相同」であると考えられる。用語「相同」とは、必然的に、少なくとも2つの配列(ポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列)間の比較を指す。本開示によれば、2つのポリヌクレオチド配列は、それらがコードするポリペプチドが少なくとも約20アミノ酸の少なくとも1つのストレッチに対して少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはさらには99%である場合、相同であると考えられる。いくつかの実施形態では、相同ポリヌクレオチド配列は、少なくとも4~5個の固有に特定されたアミノ酸のストレッチをコードする能力を特徴とする。60ヌクレオチド未満の長さのポリヌクレオチド配列の場合、相同性は、少なくとも4~5個の固有に特定されたアミノ酸のストレッチをコードする能力を特徴とする。本開示によれば、タンパク質が少なくとも約20アミノ酸の少なくとも1つのストレッチに対して少なくとも約50%、60%、70%、80%、または90%同一である場合、2つのタンパク質配列は相同であると考えられる。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「同一性」とは、ポリマー分子間、例えばオリゴヌクレオチド分子(例えばDNA分子および/またはRNA分子)間、ならびに/あるいはポリペプチド分子間の全体的な関連性を指す。例えば、2つのポリヌクレオチド配列の同一性パーセントの計算は、最適な比較目的において2つの配列をアラインさせることによって実施することができる。ある特定の実施形態では、比較目的においてアラインされた配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%である。次いで、対応するヌクレオチド位置のヌクレオチドが比較される。第1の配列内の位置が第2の配列内の対応する位置が同じヌクレオチドで占められている場合、分子はその位置で同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、配列によって共有される同一の位置の数の関数であり、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数とそれぞれのギャップの長さを考慮する。配列の比較と、2つの配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。配列間の同一性パーセントを決定するために一般的に用いられる方法には、限定するものではないが、参照により本明細書に組み込まれる、Carillo, H., and Lipman, D., SIAM J Applied Math., 48:1073 (1988)において開示されているものが含まれる。同一性を決定する技術は、公的に利用可能なコンピュータプログラムに体系化されている。2つの配列間の相同性を決定するための例示的なコンピュータソフトウェアには、限定するものではないが、GCGプログラムパッケージ、Devereux, J., et al., Nucleic Acids Research, 12(1), 387 (1984)、BLASTP、BLASTN、およびFASTA、Altschul, S. F. et al., J. Molec. Biol., 215, 403 (1990)が含まれる。
【0041】
オープンリーディングフレーム(ORF)タンパク質またはその対応する組成物をコードするmRNA配列の「有効量」とは、一般に、細胞において効率的なORFタンパク質の生産を提供するmRNAの量である。好ましくは、本明細書に記載したmRNA組成物を使用するタンパク質の生産は、ORFタンパク質をコードする対応する野生型mRNAを含む組成物よりも効率的である。効率の向上は、細胞トランスフェクションの増加(すなわち、核酸でトランスフェクトされた細胞のパーセンテージ)、核酸からのタンパク質翻訳の増加、核酸分解の減少(例えば、修飾された核酸からのタンパク質翻訳の持続時間の増加によって示される)、または宿主細胞の自然免疫応答の低下によって示され得る。本明細書に記載したORFタンパク質に言及する場合、有効量は、細胞におけるORFタンパク質欠損を克服するORFタンパク質の量である。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「インビトロ」とは、生物(例えば、動物、植物、または微生物)内ではなく、人工的環境、例えば、試験管または反応容器、細胞培養、ペトリ皿などにおいて起こる事象を指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「インビボ」とは、生物(例えば、動物、植物、もしくは微生物、またはそれらの細胞もしくは組織)内で起こる事象を指す。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「単離された」とは、関連していた(自然界または実験な環境であるかを問わず)成分の少なくとも一部から分離された物質または実体を指す。単離された物質は、関連していた物質と比較して、様々なレベルの純度を有し得る。単離された物質および/または実体は、それらが最初に関連していた他の成分の少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、またはそれ以上から分離され得る。いくつかの実施形態では、単離された薬剤は、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%超の純度を有する。本明細書で使用される場合、物質は、他の成分を実質的に含まない場合、「純粋」である。実質的に単離された:「実質的に単離された」とは、化合物が形成または検出された環境から実質的に分離されていることを意味する。部分的分離は、例えば、本明細書に記載した化合物に富む組成物を含み得る。実質的分離は、本明細書に記載した化合物またはその塩の少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約97重量%、または少なくとも約99重量%を含有する組成物を含み得る。化合物およびそれらの塩を単離する方法は、当技術分野においては日常的である。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「対象」または「患者」とは、本開示による組成物が、例えば実験、診断、予防および/または治療の目的で投与され得る任意の生物を指す。典型的な対象には、動物(例えば哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、およびヒト)ならびに/あるいは植物が含まれる。好ましくは、「患者」は、処置を求めているかもしくは必要としている可能性がある、処置を必要とする、処置を受けている、処置を受ける予定であるヒト対象、または特定の疾患もしくは状態について訓練を受けた専門家によるケアを受けている対象を指す。
【0046】
本明細書で使用される句「薬学的に許容される」とは、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症がなく、妥当なベネフィット/リスク比に見合った、ヒトおよび動物の組織と接触して使用するのに適した化合物、材料、組成物、および/または剤形を指すために使用される。
【0047】
本明細書で使用される場合、用語「予防する」とは、感染、疾患、障害および/または状態の発症を部分的または完全に遅延させること;特定の感染、疾患、障害、および/または状態の1つまたは複数の症状、特徴、または臨床徴候の発症を部分的または完全に遅延させること;特定の感染、疾患、障害、および/または状態の1つまたは複数の症状、特徴、または徴候の発症を部分的または完全に遅延させること;感染、特定の疾患、障害および/または状態からの進行を部分的または完全に遅延させること;ならびに/あるいは感染、疾患、障害、および/または状態に関連する病態を発症するリスクを低減すること、を指す。
【0048】
本明細書で使用される場合、用語「実質的に」とは、対象の特徴または特性の完全なまたはほぼ完全な範囲または程度を示す定性的状態を指す。生物学的分野の当業者には、生物学的現象および化学的現象は、完結に至ること、および/または完全に進むこと、または絶対的な結果を達成もしくは回避することはほとんどないことが理解されよう。したがって、用語「実質的に」は、本明細書では、多くの生物学的現象および化学的現象における本来的な完全性の欠如の可能性を表現するために使用される。
【0049】
本明細書で使用される場合、用語「治療有効量」とは、感染、疾患、障害、および/または状態に罹患しているか、あるいはそれらに罹患しやすい対象に対して投与された場合に、感染、疾患、障害、および/または状態の処置、症状の改善、診断、予防、および/または発症の遅延に十分な量のデリバリーされる薬剤(例えば、核酸、タンパク質またはペプチド、薬物、治療薬、診断薬、予防薬など)の量を意味する。
【0050】
本明細書で使用される場合、「総一日量」は、24時間に投与または処方される量である。それは、単回単位用量として投与され得る。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「処置する」とは、OTC欠損症の1つまたは複数の症状または特徴の部分的または完全な緩和、回復、改善、軽減、発症の遅延、進行の抑制、重症度の軽減、および/または発生の低下を指す。処置は、疾患、障害、および/または状態に関連する病態を発症するリスクを軽減する目的で、OTC欠損症の徴候を示さない対象および/またはOTC欠損症の初期徴候のみを示す対象に施すことができる。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「トランスフェクトする」または「トランスフェクション」とは、細胞への、好ましくは標的細胞への、核酸の細胞内導入を意味する。導入された核酸は、標的細胞において、安定的にまたは一過的に維持され得る。用語「トランスフェクション効率」とは、トランスフェクションに供される標的細胞によって取り込まれる核酸の相対量を指す。実際には、トランスフェクション効率は、トランスフェクション後に標的細胞によって発現されるレポーター核酸産物の量によって推定される。高いトランスフェクション効率の組成物、特に非標的細胞および組織のトランスフェクションによって媒介される副作用を最小限にする組成物が好ましい。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「標的細胞」とは、本開示の組成物が向けられるか、または標的とされる細胞または組織を指す。いくつかの実施形態では、標的細胞は、目的のタンパク質または酵素が欠損している。例えば、核酸を肝細胞にデリバリーすることが望まれる場合、肝細胞は標的細胞を表す。いくつかの実施形態では、本開示の核酸および組成物は、差異的根拠に基づき標的細胞をトランスフェクトする(すなわち、非標的細胞をトランスフェクトしない)。本開示の組成物および方法は、限定するものではないが、肝細胞、上皮細胞、造血細胞、上皮細胞、内皮細胞、肺細胞、骨細胞、幹細胞、間葉細胞、神経細胞(例えば、髄膜、星状膠細胞、運動ニューロン、後根神経節および前角運動ニューロンの細胞)、光受容細胞(例えば桿状体および錘状体)、網膜色素上皮細胞、分泌細胞、心臓細胞、脂肪細胞、血管平滑筋細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、ベータ細胞、下垂体細胞、滑膜管壁細胞、卵巣細胞、精巣細胞、繊維芽細胞、B細胞、T細胞、網状赤血球、白血球、顆粒球および腫瘍細胞を含む、様々な標的細胞を優先的に標的とするように調製され得る。
【0054】
本明細書に記載した組成物および核酸による1つまたは複数の標的細胞のトランスフェクションの後、そのような核酸によってコードされるタンパク質の発現は、好ましくは刺激され得、目的のタンパク質を発現するそのような標的細胞の能力が増強される。例えば、OTC mRNAを用いた標的細胞のトランスフェクションは、核酸の翻訳後、OTCタンパク質産物を発現させることができる。本明細書で提供した組成物および/または方法の核酸は、好ましくは、産物(例えば、タンパク質、酵素、ポリペプチド、ペプチド、機能性RNA、および/またはアンチセンス分子)をコードし、好ましくは、インビボ生成が望まれる産物をコードする。
【0055】
本明細書で使用される場合、「OTCタンパク質酵素活性」は、カルバモイルリン酸とオルニチンとの間の反応を触媒して、哺乳動物における尿素回路の一部としてのシトルリンを形成する酵素活性を指す。
【0056】
本明細書で使用される場合、目的の1つまたは複数の値に適用される用語「約」または「およそ」とは、記載した参照値に類似した値を指す。特定の実施形態では、用語の「およそ」または「約」とは、別段の記載のある場合または文脈から明らかな場合を除き、記載された参照値のいずれかの方向(より大きい方向またはより小さい方向)の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ未満に収まる値の範囲を指す(ただし、そのような数値が可能な値の100%を超える場合を除く)。
【0057】
ポリヌクレオチド配列
本開示は、例えば、mRNA療法を使用するオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症を処置するための改善された方法および組成物を提供する。本開示は、ヒトオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)タンパク質、修飾型のヒトOTCタンパク質またはOTCタンパク質の活性断片をコードする本明細書に記載したmRNA配列を含む組成物を、処置を必要とする対象に、OTC欠損症の少なくとも1つの症状または特徴が強度、重症度、もしくは頻度において低減されるか、または発症が遅延されるような有効量および投与間隔で投与することを含む、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症を処置する方法を提供する。本開示はまた、野生型ヒトOTCタンパク質と比較して、改善された特性、例えば、安定性およびタンパク質分解に対する耐性および半減期の増強などを有する、mRNA配列によってコードされている修飾OTCタンパク質も提供する。
【0058】
好ましくは、本明細書に記載したmRNA組成物の投与は、対照レベルと比較して、対象のOTCタンパク質の発現または活性の増加をもたらす。好ましくは、対照レベルは、処置前の対象におけるベースライン血清OTCタンパク質の発現または活性レベルであり、および/または対照レベルは、処置していないOTC患者における平均の血清OTCタンパク質の発現または活性レベルを示す。
【0059】
好ましくは、本明細書に記載したmRNA組成物の投与は、対照オロト酸レベルと比較して、対象における尿中オロト酸レベルの低下をもたらす。好ましくは、対照オロト酸レベルは、処置前の対象におけるベースライン尿中オロト酸レベルであり、および/または対照オロト酸レベルは、処置していないOTC患者における平均の尿中オロト酸レベルを示す基準レベルである。
【0060】
好ましくは、本明細書に記載したmRNAによってコードされるOTCタンパク質は、本明細書ではOTCタンパク質をコードする「コード配列」(CDS)とも呼ばれるオープンリーディングフレーム(ORF)を含む異種mRNAコンストラクトから生成される。好ましくは、コード配列は、コドン最適化されている。好ましくは、コード配列は、OTCタンパク質をコードすることが可能な理論上最小のウリジンを有するように最適化される。好ましくは、本明細書に記載したmRNAコンストラクトは、以下の1つまたは複数の特徴を含む:5’キャップ;5’UTR、5’UTRエンハンサー配列、コザック配列または部分的コザック配列、3’UTR、OTCタンパク質をコードするオープンリーディングフレーム、およびポリAテール。好ましくは、本明細書に記載したmRNAコンストラクトは、OTCタンパク質の高効率発現を提供することができる。発現は、インビトロ、エキソビボ、またはインビボであり得る。
【0061】
好ましくは、本明細書に記載したmRNAによってコードされるヒトOTCタンパク質は、表1に示す配列番号4の修飾ヒトOTCタンパク質を含む。配列番号4は、配列番号3(表1)の野生型OTCから修飾されており、1つまたは複数の予測されるユビキチン化部位が除去され、それによりユビキチン化およびユビキチンリガーゼによる分解の影響を受けにくいタンパク質が得られる。予測されるユビキチン化部位の除去は、好ましくは、ユビキチン化をサポートすることが確認されているN末端残基、例えばアスパラギン、アルギニン、ロイシン、リジン、またはフェニルアラニンを、ユビキチン化に対して安定化していることが確認されているN末端残基、例えばアラニン、グリシン、メチオニン、セリン、スレオニン、バリン、プロリンで置き換えることを含む。配列番号4の修飾OTCタンパク質をこの方法で安定化させることは、修飾OTCタンパク質がサイトゾルからミトコンドリアに輸送され、そこで酵素活性を発揮する間の安定性を維持するのに特に有利である。
【0062】
好ましくは、本明細書に記載したmRNAによってコードされるOTCタンパク質は、は表1に示す配列番号3のヒト野生型OTCタンパク質と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、また100%同一であるタンパク質配列を含み、一方、カルバミルリン酸およびオルニチンからのシトルリンの(肝臓および小腸での)合成を触媒するOTCタンパク質活性を保持している。
【表1-1】
【表1-2】
* OTCタンパク質は、翻訳され、ミトコンドリアへの転座に関与するシグナルペプチドを含む。このシグナルペプチドは、配列番号3および配列番号4において下線を付けた最初の32アミノ酸によって表される。配列番号4のシグナル配列はまた、配列番号3と比較して修飾されている。アミノ酸のバリンが配列番号4の3位に挿入されている。この修飾は、配列番号3の野生型ヒトOTCと比較して、配列番号4の修飾OTCのより良好なミトコンドリア局在を提供する。
【0063】
好ましくは、本明細書に記載したmRNA配列のオープンリーディングフレーム(ORF)またはコード配列(CDS)は、配列番号4の修飾OTCタンパク質と実質的に同一のアミノ酸配列をコードする。
【0064】
好ましくは、本明細書に記載したmRNA配列のオープンリーディングフレーム(ORF)またはコード配列(CDS)は、配列番号3の野生型ヒトOTCタンパク質と実質的に同一のアミノ酸配列をコードする。好ましくは、本明細書に記載したmRNAによってコードされるOTCタンパク質は、表1に示す配列番号3の修飾ヒトOTCタンパク質と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるタンパク質配列を含み、一方、カルバミルリン酸およびオルニチンからのシトルリンの(肝臓および小腸における)合成を触媒するOTCタンパク質活性を保持している。
【0065】
好ましくは、本明細書に記載したmRNAのORFまたはCDSは、配列番号4の修飾ヒトOTCタンパク質と実質的に同一のアミノ酸配列をコードする。
【0066】
好ましくは、ヒトOTCタンパク質をコードする本明細書に記載したmRNAのORFまたはCDSは、表1の配列番号1のmRNAコード配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のコドン最適化ポリヌクレオチド配列を含む。
【0067】
好ましくは、本明細書に記載したmRNAは、トリプル終止コドンを作製するCDSのすぐ下流(すなわち、CDSから3’方向)の配列をさらに含む。トリプル終止コドンは、翻訳効率を増強するために組み込まれ得る。いくつかの実施形態では、翻訳可能なオリゴマーは、本明細書に記載したmRNA配列のOTC CDSのすぐ下流の配列AUAAGUGAA(配列番号25)を含み得る。
【0068】
好ましくは、本明細書に記載したmRNAは、5'非翻訳領域(UTR)配列をさらに含む。当技術分野において理解されているように、5’UTRおよび/または3’UTRは、mRNAの安定性または翻訳効率に影響し得る。5’UTRは、翻訳可能なオリゴマーの安定性を高めるために、比較的安定していることが当技術分野において知られているmRNA分子(例えば、ヒストン、チューブリン、グロビン、グリセルアルデヒド1-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、アクチン、またはクエン酸回路酵素)に由来し得る。他の実施形態では、5’UTR配列は、サイトメガロウイルス(CMV)最初期1(IE1)遺伝子の部分配列を含んでいてもよい。
【0069】
好ましくは、5’UTRは、ヒトIL-6、アラニンアミノトランスフェラーゼ1、ヒトアポリポタンパク質E、ヒトフィブリノーゲンアルファ鎖、ヒトトランスサイレチン(transthyretin)、ヒトハプトグロビン、ヒトアルファ-1-アンチキモトリプシン、ヒトアンチトロンビン、ヒトアルファ-1-アンチトリプシン、ヒトアルブミン、ヒトベータグロビン、ヒト補体C3、ヒト補体C5、SynK(シアノバクテリア、シネコシスティス属の種(Synechocystis sp.)由来のチラコイドカリウムチャネルタンパク質)、マウスベータグロビン、マウスアルブミン、およびタバコエッチウイルス、または前述のいずれかの断片の5’UTRから選択される配列を含む。好ましくは、5’UTRは、タバコエッチウイルス(TEV)に由来する。好ましくは、本明細書に記載したmRNAは、シロイヌナズナによって発現される遺伝子に由来する5’UTR配列を含む。好ましくは、シロイヌナズナによって発現される遺伝子の5’UTR配列は、AT1G58420である。好ましい5’UTR配列は、表2に示すような配列番号5~10、125~127および2
30~2
50を含む。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0070】
好ましくは、5’UTR配列は、配列番号6(AT1G58420)を含む。
【0071】
好ましくは、本明細書に記載したmRNAは、翻訳エンハンサー配列を含む。翻訳エンハンサー配列は、本明細書に記載したmRNAの翻訳効率を増大し、それによりmRNAによってコードされているタンパク質の生成の増加を提供する。翻訳エンハンサー領域は、mRNA配列の5’UTRまたは3’UTRに位置することができる。翻訳エンハンサー領域の例としては、TEV 5’UTRおよびアフリカツメガエル(Xenopus)ベータ-グロビン3’UTR由来の天然起源のエンハンサー領域が挙げられる。好ましい5’UTRエンハンサー配列には、限定するものではないが、HSP70-P2、HSP70-M1、HSP72-M2、HSP17.9およびHSP70-P1を含む、ヒト熱ショックタンパク質(HSP)をコードするmRNAに由来する配列が挙げられる。本開示の実施形態によって使用される好ましい翻訳エンハンサー配列は、表3に示す配列番号11~15によって表される。
【表3】
【0072】
好ましくは、本明細書に記載したmRNAは、コザック配列を含む。当技術分野において理解されているように、コザック配列は、mRNAの翻訳の効率的に開始することができる、真核生物mRNAの翻訳開始部位を中心とした短いコンセンサス配列である。リボソーム翻訳機構は、コザック配列のコンテキストでAUG開始コドンを認識する。コザック配列は、OTCのコード配列の上流、5’UTRの下流に挿入され得るか、またはOTCのコード配列の上流および5’UTRの下流に挿入され得る。好ましくは、本明細書に記載したmRNAは、アミノ酸配列GCCACC(配列番号23)を有するコザック配列を含む。好ましくは、本明細書に記載したmRNAは、アミノ酸配列GCCA(配列番号24)を有する部分的コザック配列「p」を含む。
【0073】
好ましくは、本明細書に記載したmRNAは、3’UTRを含む。好ましくは、3’UTRは、アラニンアミノトランスフェラーゼ1、ヒトアポリポタンパク質E、ヒトフィブリノーゲンアルファ鎖、ヒトハプトグロビン、ヒト抗トロンビン、ヒトアルファグロビン、ヒトベータグロビン、ヒト補体C3、ヒト増殖因子、ヒトヘプシジン、MALAT-1、マウスベータグロビン、マウスアルブミン、アフリカツメガエルベータグロビン、または前述のいずれかの断片の3’UTRから選択される配列を含む。好ましくは、3’UTRは、アフリカツメガエルのベータグロビンに由来する。好ましい3’UTR配列としては、表4に示す配列番号16~22が挙げられる。
【表4】
【0074】
好ましくは、本明細書に記載したmRNAは、エキソヌクレアーゼ分解からmRNAを保護するのに有用であり得る3’テール領域を含む。テール領域は、3’ポリ(A)領域および/または3’ポリ(C)領域であり得る。好ましくは、テール領域は、3’ポリ(A)テールである。本明細書で使用される場合、「3’ポリ(A)テール」は、連続するアデニンヌクレオチドのポリマーであり、例えば、10~250個の連続アデニンヌクレオチド;60~125個の連続アデニンヌクレオチド、90~125個の連続アデニンヌクレオチド、95~125個の連続アデニンヌクレオチド、95~121個の連続アデニンヌクレオチド、100~121個の連続アデニンヌクレオチド、110~121個の連続アデニンヌクレオチド;連続アデニンヌクレオチド、112~121個の連続アデニンヌクレオチド;114~121個のアデニン連続ヌクレオチド;および115~121個の連続アデニンヌクレオチドのサイズに及び得る。好ましくは、本明細書に記載した3’ポリAテールは、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、または125個の連続アデニンヌクレオチドを含む。3’ポリ(A)テールは、当技術分野において公知である様々な方法を使用して、例えば、合成またはインビトロ転写されたRNAにテールを付加するためにポリ(A)ポリメラーゼを使用して付加され得る。他の方法としては、ポリAテールをコードするための転写ベクターの使用、あるいはリガーゼの使用(例えば、T4 RNAリガーゼおよび/またはT4 DNAリガーゼを使用するスプリントライゲーションを介した)が挙げられ、ポリ(A)は、センスRNAの3’末端に連結され得る。好ましくは、上記の方法のいずれかの組合せが用いられる。
【0075】
好ましくは、本明細書に記載したmRNAは、5’キャップを含む。様々な基でキャップされた5’末端およびそれらの類似体が当技術分野において公知である。5’キャップは、m7GpppA、m7GpppC;非メチル化キャップ類似体(例えば、GpppG);ジメチル化キャップ類似体(例えば、m2,7GpppG)、トリメチル化キャップ類似体(例えば、m2,2,7GpppG)、ジメチル化対称キャップ類似体(例えば、m7Gpppm7G)、またはアンチリバースキャップ類似体(例えば、ARCA;m7,2’OmeGpppG、m72’dGpppG、m7,3’OmeGpppG、m7,3’dGpppGおよびそれらの四リン酸塩誘導体)[例えば、Jemielity, J. et al., RNA 9: 1108-1122 (2003)を参照されたい]から選択することができる。5’キャップは、ARCAキャップ(3’-OMe-m7G(5’)pppG)であり得る。5’キャップは、mCAP[m7G(5’)ppp(5’)G、N
7-メチル-グアノシン-5’-三リン酸-5’-グアノシン]であり得る。5’キャップは、加水分解に対して耐性であり得る。好ましい5’キャップは、本明細書では「m7GpppGmキャップ」と呼ばれ、また本明細書では「Cap1」とも呼ばれるが、以下のコア構造を有する:
【化1】
【0076】
好ましくは、本明細書に記載したmRNAは、1つまたは複数の化学修飾されたヌクレオチドを含む。核酸モノマーの例としては、非天然の、修飾された、および化学修飾されたヌクレオチドが挙げられ、当技術分野において公知である任意のそのようなヌクレオチドが含まれる。化学修飾されたヌクレオチドを含むmRNA配列は、mRNA発現、発現率、半減期および/または発現タンパク質濃度を改善することが示されている。化学修飾されたヌクレオチドを含むmRNA配列はまた、タンパク質局在化を最適化し、それにより有害な生体応答、例えば、免疫応答および/または分解経路を回避するのにも有用であった。
【0077】
修飾または化学修飾されたヌクレオチドの例としては、5-ヒドロキシシチジン、5-アルキルシチジン、5-ヒドロキシアルキルシチジン、5-カルボキシシチジン、5-ホルミルシチジン、5-アルコキシシチジン、5-アルキニルシチジン、5-ハロシチジン、2-チオシチジン、N4-アルキルシチジン、N4-アミノシチジン、N4-アセチルシチジン、およびN4,N4-ジアルキルシチジンが挙げられる。
【0078】
修飾または化学修飾されたヌクレオチドの例としては、5-ヒドロキシシチジン、5-メチルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、5-カルボキシシチジン、5-ホルミルシチジン、5-メトキシシチジン、5-プロピニルシチジン、5-ブロモシチジン、5-ヨードシチジン、2-チオシチジン;N4-メチルシチジン、N4-アミノシチジン、N4-アセチルシチジン、およびN4,N4-ジメチルシチジンが挙げられる。
【0079】
修飾または化学修飾ヌクレオチドの例としては、5-ヒドロキシウリジン、5-アルキルウリジン、5-ヒドロキシアルキルウリジン、5-カルボキシウリジン、5-カルボキシアルキルエステルウリジン、5-ホルミルウリジン、5-アルコキシウリジン、5-アルキニルウリジン、5-ハロウリジン、2-チオウリジン、および6-アルキルウリジンが挙げられる。
【0080】
修飾または化学修飾ヌクレオチドの例には、5-ヒドロキシウリジン、5-メチルウリジン、5-ヒドロキシメチルウリジン、5-カルボキシウリジン、5-カルボキシメチルエステルウリジン、5-ホルミルウリジン、5-メトキシウリジン(本明細書では「5MeOU」とも呼ばれる)、5-プロピニルウリジン、5-ブロモウリジン、5-フルオロウリジン、5-ヨードウリジン、2-チオウリジン、および6-メチルウリジンが挙げられる。
【0081】
修飾または化学修飾されたヌクレオチドの例としては、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン、5-メチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルバモイルメチルウリジン、5-カルバモイルメチル-2’-O-メチルウリジン、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)シュードウリジン、5-メチルアミノメチル-2-セレノウリジン、5-カルボキシメチルウリジン、5-メチルジヒドロウリジン、5-タウリノメチルウリジン、5-タウリノメチル-2-チオウリジン、5-(イソペンテニルアミノメチル)ウリジン、2’-O-メチルシュードウリジン、2-チオ-2’O-メチルウリジン、および3,2’-O-ジメチルウリジンが挙げられる。
【0082】
修飾または化学修飾されたヌクレオチドの例としては、N6-メチルアデノシン、2-アミノアデノシン、3-メチルアデノシン、8-アザアデノシン、7-デアザアデノシン、8-オキソアデノシン、8-ブロモアデノシン、2-メチルチオ-N6-メチルアデノシン、N6-イソペンテニルアデノシン、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデノシン、N6-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、2-メチルチオ-N6-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、N6-グリシニルカルバモイルアデノシン、N6-スレオニルカルバモイル-アデノシン、N6-メチル-N6-スレオニルカルバモイル-アデノシン、2-メチルチオ-N6-スレオニルカルバモイル-アデノシン、N6,N6-ジメチルアデノシン、N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン、2-メチルチオ-N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイル-アデノシン、N6-アセチル-アデノシン、7-メチル-アデニン、2-メチルチオ-アデニン、2-メトキシ-アデニン、アルファ-チオ-アデノシン、2’-O-メチル-アデノシン、N6,2’-O-ジメチル-アデノシン、N6,N6,2’-O-トリメチル-アデノシン、1,2’-O-ジメチル-アデノシン、2’-O-リボシルアデノシン、2-アミノ-N6-メチル-プリン、1-チオ-アデノシン、2’-F-ara-アデノシン、2’-F-アデノシン、2’-OH-ara-アデノシン、およびN6-(19-アミノ-ペンタオキサノナデシル)-アデノシンが挙げられる。
【0083】
修飾または化学修飾されたヌクレオチドの例としては、N1-アルキルグアノシン、N2-アルキルグアノシン、チエノグアノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソグアノシン、8-ブロモグアノシン、O6-アルキルグアノシン、キサントシン、イノシン、およびN1-アルキノシンが挙げられる。
【0084】
修飾または化学修飾されたヌクレオチドの例としては、N1-メチルグアノシン、N2-メチルグアノシン、チエノグアノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソグアノシン、8-ブロモグアノシン、O6-メチルグアノシン、キサントシン、イノシン、およびN1-メチルイノシンが挙げられる。
【0085】
修飾または化学修飾されたヌクレオチドの例としては、シュードウリジンが挙げられる。シュードウリジンの例としては、N1-アルキルシュードウリジン、N1-シクロアルキルシュードウリジン、N1-ヒドロキシシュードウリジン、N1-ヒドロキシアルキルシュードウリジン、N1-フェニルシュードウリジン、N1-フェニルアルキルシュードウリジン、N1-アミノアルキルシュードウリジン、N3-アルキルシュードウリジン、N6-アルキルシュードウリジン、N6-アルコキシシュードウリジン、N6-ヒドロキシシュードウリジン、N6-ヒドロキシアルキルシュードウリジン、N6-モルホリノシュードウリジン、N6-フェニルシュードウリジン、およびN6-ハロシュードウリジンが挙げられる。シュードウリジンの例としては、N1-アルキル-N6-アルキルシュードウリジン、N1-アルキル-N6-アルコキシシュードウリジン、N1-アルキル-N6-ヒドロキシシュードウリジン、N1-アルキル-N6-ヒドロキシアルキルシュードウリジン、N1-アルキル-N6-モルホリノシュードウリジン、N1-アルキル-N6-フェニルシュードウリジン、およびN1-アルキル-N6-ハロシュードウリジンが挙げられる。これらの例において、アルキル、シクロアルキル、およびフェニル置換基は、非置換であり得るか、またはアルキル、ハロ、ハロアルキル、アミノ、もしくはニトロ置換基でさらに置換されていてもよい。
【0086】
シュードウリジンの例としては、N1-メチルシュードウリジン(本明細書では「N1MPU」とも呼ばれる)、N1-エチルシュードウリジン、N1-プロピルシュードウリジン、N1-シクロプロピルシュードウリジン、N1-フェニルシュードウリジン、N1-アミノメチルシュードウリジン、N3-メチルシュードウリジン、N1-ヒドロキシシュードウリジン、およびN1-ヒドロキシメチルシュードウリジンが挙げられる。
【0087】
核酸モノマーの例としては、当技術分野において公知である任意のそのようなヌクレオチドを含む、修飾および化学修飾ヌクレオチドが挙げられる。
【0088】
修飾および化学修飾されたヌクレオチドモノマーの例としては、当技術分野において公知である任意のそのようなヌクレオチド、例えば、2’-O-メチルリボヌクレオチド、2’-O-メチルプリンヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-フルオロリボヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-フルオロピリミジンヌクレオチド、2’-デオキシリボヌクレオチド、2’-デオキシプリンヌクレオチド、ユニバーサル塩基ヌクレオチド、5-C-メチル-ヌクレオチド、および逆方向デオキシ脱塩基モノマー残基(inverted deoxyabasic monomer residues)が挙げられる。
【0089】
修飾および化学修飾されたヌクレオチドモノマーの例としては、3’-末端安定化ヌクレオチド、3’-グリセリルヌクレオチド、3’-逆方向脱塩基ヌクレオチド、および3’-逆方向チミジンが挙げられる。
【0090】
修飾および化学修飾されたヌクレオチドモノマーの例としては、ロックド核酸ヌクレオチド(LNA)、2’-O,4’-C-メチレン-(D-リボフラノシル)ヌクレオチド、2’-メトキシエトキシ(MOE)ヌクレオチド、2’-メチル-チオ-エチル、2’-デオキシ-2’-フルオロヌクレオチド、および2’-O-メチルヌクレオチドが挙げられる。例示的な実施形態では、修飾されたモノマーは、ロックド核酸ヌクレオチド(LNA)である。
【0091】
修飾および化学修飾されたヌクレオチドモノマーの例としては、2’,4’-拘束2’-O-メトキシエチル(2’,4’-constrained 2’-O-methoxyethyl、cMOE)および2’-O-エチル(cEt)修飾DNAが挙げられる。
【0092】
修飾および化学修飾されたヌクレオチドモノマーの例としては、2’-アミノヌクレオチド、2’-O-アミノヌクレオチド、2’-C-アリルヌクレオチド、および2’-O-アリルヌクレオチドが挙げられる。
【0093】
修飾および化学修飾されたヌクレオチドモノマーの例としては、N6-メチルアデノシンヌクレオチドが挙げられる。
【0094】
修飾および化学修飾ヌクレオチドモノマーの例としては、修飾塩基の5-(3-アミノ)プロピルウリジン、5-(2-メルカプト)エチルウリジン、5-ブロモウリジン;8-ブロモグアノシン、または7-デアザアデノシンを有するヌクレオチドモノマーが挙げられる。
【0095】
修飾および化学修飾ヌクレオチドモノマーの例としては、2’-O-アミノプロピル置換ヌクレオチドが挙げられる。
【0096】
修飾および化学修飾ヌクレオチドモノマーの例は、ヌクレオチドの2’-OH基を2’-R、2’-OR、2’-ハロゲン、2’-SR、または2’-アミノで置き換えることを含み、式中、Rは、H、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり得る。
【0097】
上記の塩基修飾の例は、糖修飾および結合修飾を含む、ヌクレオシドまたはヌクレオチド構造のさらなる修飾と組み合わせることができる。ある特定の修飾または化学修飾ヌクレオチドモノマーは、天然に見出され得る。
【0098】
好ましいヌクレオチド修飾としては、N
1-メチルシュードウリジンおよび5-メトキシウリジンが挙げられる。
好ましいmRNA配列のコンストラクトを表5に示す。
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【表5-5】
*コザック配列は、GCCACC(配列番号23)として定義されている。部分的(P)コザックは、GCCA(配列番号24)として定義されている。
**コンストラクトは、配列番号4の修飾ヒトOTCタンパク質をコードしている。
【0099】
好ましいmRNA配列には、表5に挙げられているすべてのmRNA配列が含まれる。好ましいmRNA配列には、mRNA配列のウラシルヌクレオチドの0%~100%、好ましくは1%~100%、好ましくは25%~100%、好ましくは50%~100%、好ましくは75%~100%が修飾されている、列挙されているすべてのmRNA配列が含まれる。好ましくは、ウラシルヌクレオチドの1%~100%は、N1-メチルシュードウリジンまたは5-メトキシウリジンである。好ましくは、ウラシルヌクレオチドの100%はN1-メチルシュードウリジンである。好ましくは、ウラシルヌクレオチドの100%は5-メトキシウリジンである。
【0100】
好ましいmRNA配列は、5’キャップ、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)によって発現される遺伝子に由来する5’UTR、任意の翻訳エンハンサー配列、任意のコザック配列または部分的コザック配列、OTCタンパク質をコードするコドン最適化コード配列(CDS/ORF)、3’UTRおよびポリAテールを含む。好ましくは、コドン最適化CDSは、配列番号3または配列番号4のタンパク質をコードする。好ましくは、シロイヌナズナによって発現される遺伝子に由来する5’UTRは、表5で確認されるものから選択される。好ましくは、シロイヌナズナによって発現される遺伝子に由来する5’UTRは、配列番号6、配列番号125~127、および配列番号227~247からなる群から選択される。好ましくは、5’UTR配列は、配列番号6の配列を有するAT1G58420である。好ましくは、コドン最適化配列のウラシル含有量は、配列番号1のウラシル含有量のパーセンテージに対して減少している。好ましくは、mRNA配列のウラシルヌクレオチドの0%~100%は修飾されている。好ましくは、ウラシルヌクレオチドの0%~100%は、N1-メチルシュードウリジンまたは5-メトキシウリジンである。好ましくは、ウラシルヌクレオチドの100%は、N1-メチルシュードウリジンである。好ましくは、ウラシルヌクレオチドの100%は、5-メトキシウリジンである。
【0101】
好ましいmRNAコンストラクトは、コドン最適化されたコード配列およびシロイヌナズナによって発現される遺伝子由来の5’UTRを含み、配列番号62、67、68、69、73、113~119、121~127から選択される。
【0102】
本開示の好ましいmRNAコンストラクトは、配列番号4の修飾ヒトOTCタンパク質をコードする最適化ORFを有し、121ヌクレオチドの3’ポリAテールを含むmRNAコンストラクト1921(配列番号119)を含む。別の好ましいmRNAコンストラクトは、配列番号4の修飾ヒトOTCタンパク質をコードし、100ヌクレオチドの3’ポリAテールを含むコンストラクト2260(配列番号251)を含む。別の好ましいmRNAコンストラクトは、配列番号4の修飾ヒトOTCタンパク質をコードし、100ヌクレオチドの3’ポリAテールを含むコンストラクト2262(配列番号252)を含む。
【0103】
本開示の好ましいmRNA配列には、配列番号3の野生型ヒトOTCをコードするコドン最適化ORFを有し、121ヌクレオチドの3’ポリAテールを有するmRNAコンストラクト1799(配列番号73)が含まれる。本開示の別の好ましいmRNAコンストラクトには、配列番号3の野生型ヒトOTCをコードするコドン最適化ORFを有し、100ヌクレオチドの3’ポリAテールを含むmRNAコンストラクト2016(配列番号253)が含まれる。
【0104】
好ましくは、mRNAコンストラクト1799、2016、1921、2260および2262のウリジンヌクレオチドの100%は、N1-メチルシュードウリジンである。好ましくは、mRNAコンストラクト1799、2016、1921、2260および2262のウラシルヌクレオチドの100%は、5-メトキシウリジンである。
【0105】
本開示による使用のためのmRNAは、増大した翻訳効率を示し得る。本明細書で使用される場合、翻訳効率とは、本開示によるmRNAの翻訳によるタンパク質またはポリペプチドの生成の尺度を指す。好ましくは、本開示のmRNAは、本開示によってコドン最適化されていない、および/または本開示の好ましいUTRを含まない、配列番号3または配列番号4をコードするmRNAと比較して、インビボで少なくとも2倍、3倍、5倍、または10倍増大した翻訳効率を示し得る。好ましくは、本開示のmRNAは、コドン最適化されていない、および/または本開示の好ましいUTRを含まない、配列番号3または配列番号4をコードするmRNAと比較して、インビボで少なくとも2倍、3倍、5倍、または10倍増大したポリペプチドまたはタンパク質レベルを提供し得る。好ましくは、本開示のmRNAは、本開示によってコドン最適化されていない、および/または本開示の好ましいUTRを含んでいない、配列番号3または配列番号4をコードするmRNAと比較して、インビボでポリペプチドまたはタンパク質の増大したレベルを提供し得る。例えば、ポリペプチドまたはタンパク質のレベルは、10%、または20%、または30%、または40%、または50%、またはそれ以上増大され得る。
【0106】
好ましくは、本開示のmRNAは、本開示によってコドン最適化されていない、および/または本開示の好ましいUTRを含んでいない、配列番号3または配列番号4をコードするmRNAよりも、哺乳動物細胞の細胞質における増大した機能的半減期を提供し得る。本発明の翻訳可能な分子は、本開示によってコドン最適化されていない、および/または本開示の好ましいUTRを含んでいない、配列番号3または配列番号4をコードするmRNAと比較して、増大した活性の半減期を有し得る。
【0107】
好ましくは、本開示のmRNAは、本開示によってコドン最適化されていない、および/または本開示の好ましいUTRを含んでいない、配列番号3または配列番号4をコードするmRNAと比較して、細胞の自然免疫応答を低減することができる。
【0108】
好ましくは、本開示のmRNAは、本開示によってコドン最適化されていない、および/または本開示の好ましいUTRを含んでいない、配列番号3または配列番号4をコードするmRNAと比較して、有効な治療に必要な用量レベルを低減することができる。
【0109】
mRNA配列の設計および合成
本開示によって使用するためのmRNAは、限定するものではないが、化学合成、インビトロ転写(IVT)、またはより長い前駆体の酵素的切断または化学的切断などを含む、任意の利用可能な技術によって調製することができる。RNAを合成する方法は、当技術分野において公知である。
【0110】
いくつかの実施形態では、mRNAは、一次相補的DNA(cDNA)コンストラクトから生成される。本明細書に記載した一次cDNAコンストラクトの設計および合成のプロセスは、一般に、遺伝子コンストラクション、mRNA生成(修飾の有無にかかわらず)および精製のステップを含む。IVT法においては、OTCタンパク質をコードする標的ポリヌクレオチド配列がベクターに組み込むために最初に選択され、これが増幅されてcDNA鋳型が生成される。標的ポリヌクレオチド配列および/または任意の隣接配列は、コドン最適化されていてもよい。次いで、cDNA鋳型を使用して、インビトロ転写(IVT)を介してmRNAを生成する。生成後、mRNAは、精製およびクリーンアップのプロセスを受けることができる。そのステップは、以下でより詳細に説明する。
【0111】
遺伝子コンストラクションのステップには、限定するものではないが、遺伝子合成、ベクター増幅、プラスミド精製、プラスミド線状化およびクリーンアップ、ならびにcDNA鋳型合成およびクリーンアップが含まれる。ヒトOTCタンパク質(例えば、配列番号3または配列番号4)が生成のために選択されると、一次コンストラクトが設計される。一次コンストラクト内で、目的のポリペプチドをコードする連結されたヌクレオシドの第1の領域は、選択された核酸(DNAまたはRNA)転写物のオープンリーディングフレーム(ORF)を使用してコンストラクトされ得る。ORFは、野生型ORF、そのアイソフォーム、変異体またはその断片を含み得る。本明細書で使用される場合、「オープンリーディングフレーム」または「ORF」とは、目的のポリペプチドをコードすることが可能な核酸配列(DNAまたはRNA)を指すことを意味する。ORFは、多くの場合、開始コドンATGで始まり、ナンセンスまたは終止のコドンまたはシグナルで終わる。
【0112】
さらに、mRNA鋳型またはDNA鋳型の任意の領域のヌクレオチド配列をコドン最適化することができる。コドン最適化方法は当技術分野において公知であり、いくつかの目標のうちの1つまたは複数を達成するための取り組みにも有用であり得る。これらの目標には、標的生物と宿主生物におけるコドン頻度をマッチさせて適切なフォールディングを確実にすること、GC含有量にバイアスをかけてmRNA安定性を高めるか、または二次構造を低減すること、遺伝子の構築または発現を損い得るタンデムリピートコドンまたはベースランを最小限に抑えること、転写制御領域および翻訳制御領域をカスタマイズすること、タンパク質輸送配列を挿入または除去すること、コードされたタンパク質内の翻訳後修飾部位(例えばグリコシル化部位)を除去/付加すること、タンパク質ドメインを付加、除去またはシャッフルすること、制限部位を挿入または削除すること、リボソーム結合部位およびmRNA分解部位を修飾すること、タンパク質の様々なドメインが適切に折りたたまれ得るように翻訳速度を調節すること、あるいはmRNA内の問題の二次構造を低減または排除することが含まれる。適切なコドン最適化ツール、アルゴリズムおよびサービスは、当技術分野において公知である。
【0113】
好ましくは、一次cDNA鋳型は、鋳型鎖における特定のヌクレオチドの存在または出現頻度を低減することを含み得る。例えば、鋳型におけるヌクレオチドの存在は、鋳型におけるヌクレオチドの25%未満のレベルまで低減され得る。さらなる例では、鋳型におけるヌクレオチドの存在は、鋳型におけるヌクレオチドの20%未満のレベルまで低減され得る。いくつかの例では、鋳型におけるヌクレオチドの存在は、鋳型におけるヌクレオチドの16%未満のレベルまで低減され得る。好ましくは、鋳型におけるヌクレオチドの存在は、鋳型におけるヌクレオチドの15%未満のレベルまで低減され、好ましくは12%未満のレベルまで低減され得る。
【0114】
例えば、本開示は、ウラシル含有量が改変され(altered)、野生型配列における少なくとも1つのコドンが代替コドンで置き換えられウラシル改変配列が生じた核酸を提供する。改変されたウラシル配列は、以下の特性の少なくとも1つを有することができる:
(i)全体的なウラシル含有量の増加または減少(すなわち、核酸のセクション、例えばオープンリーディングフレームの核酸における総ヌクレオチド含有量のウラシルのパーセンテージ);または、
(ii)局所的なウラシル含有量の増加または減少(すなわち、ウラシル含有量の変化は特定のサブ配列に限定される);または、
(iii)全体的なウラシル含有量において変化を伴わないウラシル分布における変化;または、
(iv)ウラシルクラスター形成における変化(例えば、クラスターの数、クラスターの位置、もしくはクラスター間の距離);または、
(v)それらの組合せ。
【0115】
好ましくは、核酸配列におけるウラシル核酸塩基のパーセンテージは、野生型核酸配列におけるウラシル核酸塩基のパーセンテージに対して低減される。例えば、核酸塩基の30%は野生型配列中のウラシルであり得るが、ウラシルである核酸塩基は開示の核酸配列中の核酸塩基の好ましくは15%未満、好ましくは12%未満、好ましくは10%未満である。ウラシル含有量のパーセンテージは、配列中のウラシルの数をヌクレオチドの総数で割り、100を掛けることによって決定することができる。
【0116】
好ましくは、核酸配列のサブ配列中のウラシル核酸塩基のパーセンテージは、野生型配列の対応するサブ配列中のウラシル核酸塩基のパーセンテージに対して低減される。例えば、野生型配列は、局所的なウラシル含有量が30%の5’末端領域(例えば30コドン)を有することができ、その同じ領域中のウラシル含有量は、本開示の核酸配列において、好ましくは15%以下、好ましくは12%以下、好ましくは10%以下まで低減され得る。
【0117】
好ましくは、本発明の核酸配列中のコドンは、例えば、タンパク質翻訳に悪影響を及ぼし得るウラシルクラスターの数、サイズ、位置、または分布を低減または変更する。より低いウラシル含有量が望まれるが、ある特定の態様では、野生型配列のいくつかのサブ配列のウラシル含有量、特に局所的なウラシル含有量は、野生型配列よりも多くなる可能性があり、有益な特徴(例えば、増加した発現)を依然として維持する。
【0118】
好ましくは、ウラシル修飾配列は、野生型配列と比較した場合、より低いToll様受容体(TLR)応答を誘導する。いくつかのTLRは、核酸を認識し、応答する。頻出するウイルス成分である二本鎖(ds)RNAは、TLR3を活性化することが示されている。一本鎖(ss)RNAは、TLR7を活性化する。RNAオリゴヌクレオチド、例えば、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を有するRNAは、ヒトTLR8のリガンドである。細菌DNAおよびウイルスDNAの特徴である、非メチル化CpGモチーフを含有するDNAは、TLR9を活性化する。
【0119】
本明細書で使用される場合、用語「TLR応答」とは、TLR7受容体による一本鎖RNAの認識として定義され、好ましくは、RNAの分解および/または受容体による一本鎖RNAの認識によって起こる生理学的応答を含む。RNAのTLR7への結合を判定および定量する方法は、当技術分野においては公知である。同様に、RNAがTLR7媒介性生理学的応答(例えばサイトカイン分泌)を引き起こしたかどうかを判定する方法は、当技術分野において周知である。好ましくは、TLR応答は、TLR7の代わりに、TLR3、TLR8またはTLR9によって媒介され得る。TLR7媒介性応答の抑制は、ヌクレオシド修飾を介して達成され得る。RNAは、自然界において100を超える異なるヌクレオシド修飾を受ける。ヒトrRNAは、例えば、細菌rRNAよりも10倍多くのシュードウラシル(’R)と25倍多くの2’-O-メチル化ヌクレオシドを有する。細菌mRNAはヌクレオシド修飾を含んでいないが、哺乳動物mRNAは、ヌクレオシドが修飾、例えば、N7-メチルグアノシン(m7G)に加えて、5-メチルシチジン(m5C)、N6-メチルアデノシン(m6A)、イノシン、および多くの2’-O-メチル化ヌクレオシドを有する。
【0120】
好ましくは、本明細書に開示したポリヌクレオチド、好ましくは配列番号4の修飾OTCタンパク質をコードするポリヌクレオチドのウラシル含有量は、基準配列の配列中の全核酸塩基の50%、49%、48%、47%、46%、45%、44%、43%、42%、41%、40%、39%、38%、37%、36%、35%、34%、33%、32%、31%、30%、29%、28%、27%、26%、25%、24%、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、90%、80%、70%、60%、5%、4%、3%、2%、または1%未満である。好ましくは、本明細書に開示したポリヌクレオチド、好ましくは配列番号4の修飾OTCタンパク質をコードするポリヌクレオチドのウラシル含有量は、約5%~約25%である。好ましくは、本明細書に開示したポリヌクレオチド、好ましくは配列番号4の修飾OTCタンパク質をコードするポリヌクレオチドのウラシル含有量は、約15%~約25%である。
【0121】
cDNA鋳型は、インビトロ転写(IVT)システムを使用して、転写して本明細書に記載したmRNA配列を生成することができる。このシステムは、典型的には、転写バッファー、ヌクレオチド三リン酸(NTP)、RNase阻害剤、およびポリメラーゼを含む。NTPは、限定するものではないが、天然および非天然の(修飾)NTPを含む本明細書に記載されているものから選択され得る。ポリメラーゼは、限定するものではないが、T7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼ、および突然変異体ポリメラーゼ、例えば、限定するものではないが、修飾核酸を組み込むことができるポリメラーゼから選択することができる。
【0122】
一次cDNA鋳型または転写されたmRNA配列はまた、キャッピング反応および/またはテーリング反応を受け得る。キャッピング反応は、一次コンストラクトの5’末端に5’キャップを付加するための当技術分野において公知の方法によって実施することができる。キャッピングの方法としては、限定するものではないが、ワクシニアキャッピング酵素(New England Biolabs、マサチューセッツ州イプスウィッチ)またはCLEANCAP(登録商標)技術(TriLink Biotechnologies)の使用が挙げられる。ポリ-Aテーリング反応は、当技術分野において公知の方法、例えば、限定するものではないが、2’O-メチルトランスフェラーゼによって、および本明細書に記載した方法によって実施することができる。cDNAから生成された一次コンストラクトがポリ-Tを含まない場合、一次コンストラクトを洗浄する前に、ポリ-Aテーリング反応を実施することが有益であり得る。
【0123】
オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)タンパク質をコードするコドン最適化cDNAコンストラクトは、本明細書に記載したmRNA配列の生成に特に適している。例えば、そのようなcDNAコンストラクトは、インビトロで、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)タンパク質をコードするポリリボヌクレオチドを転写するための基礎として使用することができる。表6は、表5に挙げたmRNA配列のインビトロ転写に使用される例示的なcDNA ORF鋳型のリストを提供する。
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【表6-4】
*配列番号3は、野生型ヒトOTCのアミノ酸配列である。
**配列番号4は、修飾ヒトOTCのアミノ酸配列である。
***プラスミド配列全体は含まれていない。
【0124】
好ましいcDNA鋳型配列には、配列番号3の野生型ヒトOTCをコードする最適化コード配列を有する配列番号175のDNA配列(p1779)が含まれる。好ましいcDNA鋳型配列にはまた、配列番号4の修飾OTCタンパク質をコードする最適化コード配列を有する配列番号221のcDNA配列(p1921)も含まれる。
【0125】
本開示はまた、発現コンストラクト、例えばベクターまたはプラスミド中の1つまたは複数の制御ヌクレオチド配列に作動可能に連結され得るヒトOTCタンパク質をコードするポリヌクレオチド(例えば、DNA、RNA、cDNA、mRNA)も提供する。特定の実施形態では、そのようなコンストラクトは、DNAコンストラクトである。制御ヌクレオチド配列は、一般には、発現に使用される宿主細胞に適している。多くのタイプの適切な発現ベクターおよび適切な制御配列が様々な宿主細胞に関して当技術分野において公知である。
【0126】
典型的には、前記の1つまたは複数の制御ヌクレオチド配列には、限定するものではないが、プロモーター配列、リーダー配列またはシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始配列および終結配列、翻訳開始配列および終結配列、ならびにエンハンサー配列またはアクチベーター配列が含まれ得る。当技術分野において公知の構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターは、本開示の実施形態で検討されている。プロモーターは、天然に存在するプロモーター、または複数のプロモーターのエレメントを組み合わせたハイブリッドプロモーターのいずれかであり得る。
【0127】
発現コンストラクトは、エピソーム上の細胞、例えばプラスミドに存在していてもよいし、または発現コンストラクトは染色体に挿入されていてもよい。好ましくは、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞を選択することができる選択可能マーカー遺伝子を含有する。選択可能マーカー遺伝子は当技術分野において周知であり、使用される宿主細胞によって変わる。
【0128】
本開示はまた、好ましくは少なくとも1つの制御配列に作動可能に連結されているオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを提供する。制御配列は技術認識されており、コードされたポリペプチドの発現を導くように選択される。
【0129】
したがって、用語の制御配列には、プロモーター、エンハンサー、および他の発現制御エレメントが含まれる。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択および/または発現が所望されるタンパク質のタイプなどの要因に依存し得る。
【0130】
本開示はまた、本明細書に記載したオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)ポリペプチドをコードする本明細書に記載したmRNAまたはDNAでトランスフェクトされている宿主細胞を提供する。好ましくは、ヒトOTCポリペプチドは、配列番号4の配列を有する。宿主細胞は、任意の原核細胞または真核細胞であり得る。例えば、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)ポリペプチドは、細菌細胞、例えば大腸菌(E.coli)、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス発現系の使用)、酵母細胞、または哺乳動物細胞で発現され得る。他の適切な宿主細胞は、当業者には公知である。
【0131】
本開示はまた、配列番号26~229のいずれか1つのmRNA配列をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0132】
本開示はまた、配列番号3のヒト野生型OTCタンパク質または修飾ヒトOTCタンパク質配列番号4を生成する方法も提供する。好ましくは、OTCタンパク質は配列番号4であり、配列番号119のmRNAによってコードされている。例えば、OTCタンパク質をコードする発現ベクターでトランスフェクトした宿主細胞は、ポリペプチドの発現を生じさせることができる適切な条件下で培養され得る。ポリペプチドは分泌され、細胞とポリペプチド含有培地との混合物から単離され得る。あるいは、ポリペプチドは、細胞質または膜画分に保持されていてもよく、細胞を回収し、溶解させ、タンパク質を単離することができる。細胞培養物には、宿主細胞、培地、および他の副産物が含まれる。細胞培養に適した培地は、当技術分野においては周知である。
【0133】
本明細書に記載した発現されたOTCタンパク質は、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過、電気泳動、およびOTCポリペプチドの特定のエピトープに特異的な抗体による免疫親和性精製を含む、タンパク質を精製するための当技術分野において公知の技術を使用して、細胞培養培地、宿主細胞、またはその両方から単離することができる。
【0134】
脂質ベースの製剤
脂質ベースの製剤は、それらの生体適合性と大規模生産の容易さから、RNAの最も有望なデリバリーシステム(本明細書ではデリバリー媒体または担体とも呼ばれる)の1つとして次第に認識されてきた。カチオン性脂質は、RNAデリバリーのための合成材料として広く研究されてきた。一緒に混合した後、核酸はカチオン性脂質によって凝縮され、リポプレックスとして公知である脂質/核酸複合体を形成する。これらの脂質複合体は、遺伝物質をヌクレアーゼの作用から保護し、負に帯電した細胞膜と相互作用することにより、細胞に遺伝物質をデリバリーすることができる。リポプレックスは、生理学的pHで正に荷電した脂質と負に荷電した核酸とを直接混合することによって調製することができる。
【0135】
従来のリポソームは、カチオン性、アニオン性、または中性の(リン)脂質とコレステロールから構成され得る脂質二重層で構成されており、水性コアを封入している。脂質二重層と水性空間の両方に、それぞれ疎水性化合物または親水性化合物を組み込むことができる。インビボにおけるリポソームの特性および挙動は、親水性ポリマーコーティング、例えばポリエチレングリコール(PEG)をリポソーム表面に加えることによって修飾し、立体安定化を付与することができる。さらに、リポソームは、リガンド(抗体、ペプチド、炭水化物など)をその表面に、または結合したPEG鎖の末端に結合させることにより、特定の標的化に使用することができる(Front Pharmacol. 2015 Dec 1;6:286)。
【0136】
リポソームは、水性区画を囲むリン脂質二重層で構成されるコロイド状脂質ベースのおよび界面活性剤ベースのデリバリーシステムである。それらは球状の小胞として存在していてもよく、サイズは20nm~数ミクロンの範囲となり得る。カチオン性脂質ベースのリポソームは、静電相互作用を介して負に帯電した核酸と複合体を形成することができ、生体適合性、低毒性、およびインビボでの臨床応用に必要とされる大規模生産の可能性を提供する複合体をもたらす。リポソームは、取り込みのために細胞膜と融合することができる;細胞内に入ると、リポソームはエンドサイトーシス経路を介して処理され、次いで遺伝物質はエンドソーム/担体から細胞質に放出される。リポソームは基本的に生体膜の類似体であり、天然および合成リン脂質の両方から調製することができるということが考慮され、リポソームの優れた生体適合性のため、リポソームは薬物デリバリー媒体として長い間認められてきた(Int J Nanomedicine. 2014; 9: 1833-1843)。
【0137】
カチオン性リポソームは、プラスミドDNA、アンチセンスオリゴ、およびsiRNA/スモールヘアピンR A-shRNAを含むオリゴヌクレオチドのための伝統的に最も一般的に使用される非ウイルスデリバリーシステムであった。カチオン性脂質、例えば、DOTAP、(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン)、DOTMA(N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムメチルサルフェート)は、負に帯電した核酸と複合体またはリポプレックスを形成し、静電相互作用によりナノ粒子を形成し、高いインビトロでのトランスフェクション効率を提供する。さらに、例えば中性1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DOPC)ベースのナノリポソームとしてのRNAデリバリーのための中性脂質ベースのナノリポソームが開発された(Adv Drug Deliv. Rev. 2014 Feb; 66: 110-116.)。
【0138】
好ましくは、本明細書に記載したmRNAコンストラクトは、脂質製剤化されている。脂質製剤は、好ましくは、限定するものではないが、リポソーム、リポプレックス、コポリマー、例えばPLGA、および脂質ナノ粒子から選択される。好ましくは、脂質ナノ粒子(LNP)は、以下を含む:
(a)核酸、
(b)カチオン性脂質、
(c)凝集低減剤(例えばポリエチレングリコール(PEG)脂質またはPEG修飾脂質)、
(d)適宜、非カチオン性脂質(例えば中性脂質)、および
(e)適宜、ステロール。
好ましくは、脂質ナノ粒子製剤は、約20~60%のカチオン性脂質:5~25%の中性脂質:25~55%のステロール;0.5~15%のPEG-脂質のモル比で、(i)少なくとも1つのカチオン性脂質;(ii)中性脂質;(iii)ステロール、例えばコレステロール;および、(iv)PEG-脂質からなる。
【0139】
本開示の活性分子のデリバリーのための脂質および脂質組成物のいくつかの例は、WO2015/074085、U.S.2018/0169268、WO2018/119163、WO20185/118102、U.S.2018/0222863、WO2016/081029、WO2017/023817、WO2017/117530に示されており、これらはそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ある特定の実施形態では、脂質は、以下の式Iの化合物:
【化2】
(式中、
R
1およびR
2は両方とも、1~14個の炭素からなる直鎖アルキル、または2~14個の炭素からなるアルケニルまたはアルキニルからなり;
L
1およびL
2は両方とも、5~18個の炭素からなるか、またはNと複素環を形成する、直鎖アルキレンまたはアルケニレンからなり;
XはSであり;
L
3は、結合、または1~6個の炭素からなるか、もしくはNと複素環を形成する、直鎖アルキレンからなり;
R
3は、1~6個の炭素からなる直鎖または分岐アルキレンからなり;
R
4およびR
5は同一であるかまたは異なり、それぞれ水素、または1~6個の炭素からなる直鎖または分岐アルキルからなる)
あるいは、その薬学的に許容される塩
である。
【0140】
脂質製剤は、以下の中から選択される1つまたは複数のイオン化可能なカチオン性脂質(本明細書では「ATX脂質」とも呼ばれる)を含み得る:
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【0141】
脂質ナノ粒子は、好ましくは、脂質ナノ粒子を形成するのに適したカチオン性脂質を含む。好ましくは、カチオン性脂質は、ほぼ生理学的pHで正味の正電荷を保有する。カチオン性脂質は、例えば、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、1,2-ジオレオイルトリメチルアンモニウムプロパンクロリド(DOTAP)[またN-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリドおよびl,2-ジオレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩としても公知である]、N-(l-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N,N-ジメチル-2,3-ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、l,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、l,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、l,2-ジ-y-リノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(γ-DLenDMA)、1,2-ジリノレイルカルバモイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-C-DAP)、l,2-ジリノレイオキシ-3-(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin-DAC)、l,2-ジリノレイオキシ-3-モルホリノプロパン(DLin-MA)、l,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、l,2-ジリノレイルチオ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-S-DMA)、l-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、l,2-ジリノレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TMA.CI)、l,2-ジリノレオイル-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TAP.CI)、l,2-ジリノレイルオキシ-3-(N-メチルピペラジノ)プロパン(DLin-MPZ)、または3-(N,N-ジリノレイルアミノ)-l,2-プロパンジオール(DLinAP)、3-(N,N-ジオレイルアミノ)-l,2-プロパンジオ(DOAP)、l,2-ジリノレイルオキソ-3-(2-N,N-ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin-EG-DM A)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[l,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、またはその類似体、(3aR,5s,6aS)-N,N-ジメチル-2,2-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)テトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][l,3]ジオキソール-5-アミン、(6Z,9Z,28Z,31Z)-へプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(MC3)、l,l’-(2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-l-イル)エチルアザネジイル)ジドデカン-2-オール(C12-200)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[l,3]-ジオキソラン(DLin-K-C2-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[l,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28 31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-M-C3-DMA)、3-((6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イルオキシ)-N,N-ジメチルプロパン-l-アミン(MC3エーテル)、4-((6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イルオキシ)-N,N-ジメチルブタン-l-アミン(MC4エーテル)、または前述のいずれかの任意の組合せであり得る。他のカチオン性脂質としては、限定するものではないが、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、3P-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(DC-Choi)、N-(l-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N-2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(DOGS)、l,2-ジレオイル-sn-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、l,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、N-(l,2-ジミリスチルオキシプロパ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、および2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[l,3]-ジオキソラン(XTC)が挙げられる。さらに、例えば、リポフェクチン(GIBCO/BRLから入手可能なDOTMAおよびDOPEを含む)、ならびにリポフェクタミン(GIBCO/BRLから入手可能なDOSPAおよびDOPEを含む)などのカチオン性脂質の市販製品を使用することができる。
【0142】
他の適したカチオン性脂質は、国際公開第WO09/086558号、同第WO09/127060号、同第WO10/048536号、同第WO10/054406号、同第WO10/088537号、同第WO10/129709号、および同第WO2011/153493号;米国特許公開第2011/0256175号、同第2012/0128760号、および同第2012/0027803号;米国特許第8,158,601号;ならびにLove et al., PNAS, 107(5), 1864-69, 2010に開示されている。
【0143】
他の適切なアミノ脂質には、アルキル置換基が異なるもの(例えば、N-エチル-N-メチルアミノ-、およびN-プロピル-N-エチルアミノ-)を含む、代替脂肪酸基および他のジアルキルアミノ基を有するものが含まれる。一般に、飽和度のより低いアシル鎖を有するアミノ脂質は、特にフィルター滅菌の目的で複合体を約0.3ミクロン未満のサイズにする必要がある場合、より容易にサイズ区分される。C14~C22の範囲の炭素鎖長を有する不飽和脂肪酸を含有するアミノ脂質を使用することができる。他の足場を使用して、アミノ基とアミノ脂質の脂肪酸または脂肪族アルキル部分とを分離することもできる。
【0144】
好ましくは、LNPは、特許出願PCT/EP2017/064066に記載の式(III)のカチオン性脂質を含む。この文脈において、PCT/EP2017/064066の開示もまた、参照により本明細書に組み込まれる。
【0145】
好ましくは、本開示のアミノまたはカチオン性脂質は、少なくとも1つのプロトン化可能な基または脱プロトン化可能な基を有しており、その結果、脂質は生理学的pH(例えばpH7.4)以下のpHで正に荷電し、第2のpH、好ましくは生理学的pH以上では中性である。もちろん、pHの関数としてのプロトンの付加または除去は平衡プロセスであること、荷電脂質または中性脂質への言及は主要な種の性質を指し、すべて脂質が荷電形態または中性形態で存在することを必要としないことは理解されよう。複数のプロトン化可能な基または脱プロトン化可能な基を有する脂質、または両性イオン性である脂質は、本開示における使用から除外されない。ある特定の実施形態では、プロトン化可能な脂質は、約4~約11の範囲のプロトン化可能な基のpKa、例えば約5~約7のpKaを有する。
【0146】
カチオン性脂質は、粒子中に存在する総脂質の約20mol%~約70もしくは75mol%、または約45~約65mol%、または約20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、もしくは約70mol%を含む。別の実施形態では、脂質ナノ粒子は、カチオン性脂質のモル基準で約25%~約75%、例えば、モル基準で(脂質ナノ粒子中の脂質の総モル100%に基づく)約20~約70%、約35~約65%、約45~約65%、約60%、約57.5%、約57.1%、約50%、または約40%を含む。一実施形態では、カチオン性脂質の核酸に対する比は、約3~約15、例えば、約5~約13または約7~約11である。
【0147】
医薬組成物
好ましくは、本開示は、配列番号3または配列番号4のヒトOTCタンパク質をコードするコドン最適化mRNAを含んでおり、好ましくは、脂質デリバリーシステムまたは脂質担体中で製剤化され、好ましくは、薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物を提供する。本明細書に開示した医薬組成物は、好ましくは、インビボでのmRNAの発現を促進する。
【0148】
適切な投与経路には、例えば、経口投与、直腸内投与、膣内投与、口腔粘膜投与、気管内投与もしくは吸入を含む肺投与、または腸内投与;皮内注射、経皮(局所)注射、筋肉内注射、皮下注射、髄内注射、ならびに髄腔内注射、脳室内直接注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻腔内注射を含む非経口デリバリーが含まれる。
【0149】
好ましくは、筋肉内投与は、骨格筋、平滑筋および心筋からなる群から選択される筋肉に対するものである。いくつかの実施形態では、投与は、mRNAの筋細胞へのデリバリーをもたらす。いくつかの実施形態では、投与は、mRNAの肝細胞(すなわち肝臓細胞)へのデリバリーをもたらす。特定の実施形態では、筋肉内投与は、mRNAの筋肉細胞へのデリバリーをもたらす。
【0150】
好ましくは、mRNAおよびその脂質製剤は、全身ではなく局所的に、例えば、医薬組成物を標的組織に直接的に、好ましくは徐放性製剤で注射することによって投与することができる。局所デリバリーは、様々な形で、標的にされる組織に応じて、影響され得る。例えば、本開示の組成物を含むエアロゾルは、吸入することができる(鼻腔、気管または気管支デリバリーのため);胃または腸に投与するために液体、錠剤、またはカプセルの剤形で供給することができ、直腸または膣に適用するために坐剤の剤形で供給することができる;あるいは、クリーム、点眼剤、さらには注射を使用することによって眼にデリバリーすることもできる。治療用分子またはリガンドと複合体形成した、提供された組成物を含む製剤は、例えば、移植の部位から周囲細胞に組成物を拡散させることを可能にするポリマーまたは他の構造もしくは物質と組み合わせて、外科的に投与することさえできる。あるいは、それらは、ポリマーまたは支持体を使用することなく外科的に適用することができる。
【0151】
医薬組成物は、任意の所望する組織に投与され得る。いくつかの実施形態では、提供されたリポソームまたは組成物によってデリバリーされるOTC mRNAは、リポソームおよび/または組成物が投与された組織において発現される。いくつかの実施形態では、デリバリーされるmRNAは、リポソームおよび/または組成物が投与された組織とは異なる組織において発現される。デリバリーされたmRNAがデリバリーおよび/または発現され得る例示的な組織には、限定するものではないが、肝臓、腎臓、心臓、脾臓、血清、脳、骨格筋、リンパ節、皮膚、および/または脳脊髄液が含まれる。
【0152】
好ましくは、医薬組成物は、本明細書に記載したポリヌクレオチド、例えば、本明細書に記載した一次DNAコンストラクトまたはmRNAをウイルスベクターまたは細菌ベクター内に含むことができる。
【0153】
好ましくは、本明細書に記載したmRNAの一次DNAコンストラクトまたは本明細書に記載したmRNAは、(1)安定性を高める;(2)細胞トランスフェクションを増大させる;(3)持続放出または遅延放出を可能にする(例えば、ポリヌクレオチド、一次コンストラクト、またはmRNAのデポー製剤から);(4)体内分布を変える(例えば、ポリヌクレオチド、一次コンストラクト、またはmRNAを特定の組織または細胞型に標的化する);(5)コードされたタンパク質のインビボでの翻訳を増加させる;ならびに/あるいは、(6)コードされたタンパク質のインビボでの放出プロファイルを変える、ために、1つまたは複数の賦形剤を使用して製剤化することができる。
【0154】
従来の賦形剤、例えば任意のおよびすべての溶媒、分散媒、希釈剤、または他の液体媒体に加えて、本開示の分散剤または懸濁助剤、界面活性剤、等張化剤、増粘剤または乳化剤、保存剤、賦形剤は、限定するものではないが、リポソーム、脂質ナノ粒子、ポリマー、リポプレックス、コアシェルナノ粒子、ペプチド、タンパク質、一次DNAコンストラクトでトランスフェクトされた細胞、またはmRNA(例えば対象に移植するため)、ヒアルロニダーゼ、ナノ粒子模倣物、およびそれらの組合せを含むことができる。
【0155】
したがって、本明細書に記載した製剤は、一緒に、一次DNAコンストラクトもしくはmRNAの安定性を高め、一次コンストラクトまたはmRNAによる細胞トランスフェクションを増加させ、ポリヌクレオチド、一次コンストラクトもしくはmRNAコードされたタンパク質の発現を増加させ、および/またはポリヌクレオチド、一次コンストラクト、もしくはmRNAコードされたタンパク質の放出プロファイルを変化させるそれぞれの量の1つまたは複数の賦形剤を含むことができる。さらに、本開示の一次コンストラクトおよびmRNAは、自己組織化核酸ナノ粒子を使用して製剤化することができる。
【0156】
本明細書に記載した医薬組成物の製剤は、薬理学の分野において公知の任意の方法または今後開発される任意の方法によって調製することができる。一般に、そのような調製方法は、活性成分を賦形剤および/または1つもしくは複数の他の副成分と組み合わせる工程を含む。
【0157】
本開示による医薬組成物は、単一の単位用量として、および/または複数の単一の単位用量として、大量に調製、包装および/または販売され得る。本明細書で使用される場合、「単位用量」とは、所定量の活性成分を含む医薬組成物の個別の量を指す。活性成分の量は、一般に、対象に投与される活性成分の投与量および/またはそのような投与量の都合のよい一部分、限定するものではないが、そのような用量の2分の1もしくは3分の1を含む量と等しくあり得る。
【0158】
本開示による医薬組成物中の活性成分、薬学的に許容される賦形剤、および/または任意の追加成分の相対量は、処置される対象の個性、サイズ、および/または状態に応じて、さらには組成物が投与される経路に応じて変わり得る。例えば、組成物は、0.1%~99%(w/w)の活性成分を含み得る。
【0159】
医薬製剤は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含むことができ、本明細書で使用される場合、限定するものではないが、所望する特定の剤形に適切な、任意のおよびすべての溶媒、分散媒体、希釈剤、または他の液体媒体、分散または懸濁補助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、防腐剤などを含む。
【0160】
医薬組成物を製剤化するための様々な賦形剤および組成物を調製するための技術は、当技術分野において公知である(参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition, A. R. Gennaro, Lippincott, Williams & Wilkins, Baltimore, Md., 2006を参照されたい)。従来の賦形剤媒体の使用は、任意の望ましくない生物学的影響が生じることにより、または医薬組成物の任意の他の成分(複数可)と有害性のある方法で相互作用することにより、任意の従来の賦形剤媒体が物質またはその誘導体と不適合であり得る場合を除き、本開示の実施形態の範囲内であると考えられ得る。
【0161】
治療上の使用
【0162】
mRNA配列、本明細書に記載したmRNA配列を転写する一次DNAコンストラクト、およびそれらの医薬組成物は、多数のインビボおよびインビトロ方法を提供し、OTC欠損症を処置するのに有用である。処置は、OTC欠損症のヒト患者を処置することを含み得る。同様に、本明細書に記載した組成物は、細胞または動物に基づくモデルにおけるOTC欠損症を研究するためにインビトロまたはエキソビボ(ex vivo)で使用することができる。例えば、OTC発現を欠損した細胞を使用して、OTC発現および/または活性を回復する能力、ならびに発現および/または活性が持続する期間を分析することができる。そのような細胞および動物モデルはまた、同じ生化学経路における結合パートナーまたは因子であるかどうかにかかわらず、経路に関与している他の因子を同定するのに適切である。他の実施形態では、本明細書に記載した組成物を使用して、ミトコンドリアデリバリーを研究または追跡することができる。
【0163】
本明細書に記載したポリヌクレオチド、例えば、本明細書に記載したDNAコンストラクトもしくは鋳型またはmRNA配列は、OTC欠損症に罹患している患者または細胞にデリバリーすることができる。好ましくは、mRNA配列は、配列番号4の修飾OTCタンパク質をコードする配列番号119を含む。好ましくは、DNA配列は、配列番号4の修飾OTCタンパク質をコードする配列番号221を含む。
【0164】
投与後、OTCは、細胞または対象において発現される。好ましくは、本明細書に記載した組成物は、ミトコンドリアにデリバリーされる。好ましくは、本明細書に記載した組成物は、肝細胞にデリバリーされる。
【0165】
好ましくは、本明細書に記載した治療方法は、例えばOTC欠損症を有する対象などの、それを必要とする対象の血漿および/または尿あるいは培養の細胞におけるアンモニアレベルを低下させる。好ましくは、本明細書に記載した治療方法は、それを必要とする対象の血漿および/または尿あるいは培養の細胞におけるオロト酸レベルを低下させる。好ましくは、本明細書に記載した治療方法は、それを必要とする対象の血漿および/または尿あるいは培養の細胞におけるシトルリンを増加させる。好ましくは、アンモニアレベル、オロト酸レベル、および/またはシトルリンレベルをバイオマーカーとして使用して、(i)処置を必要とする対象を特定し、および/または、(ii)本明細書に記載したmRNAまたはDNA鋳型を使用する処置の有効性を評価する。
【0166】
これらの方法を用いて使用するためのmRNA配列の例には、表5に挙げたものが含まれる。好ましくは、本明細書に記載したmRNA配列の転写に使用されるcDNA鋳型は、表6に挙げられている。OTC欠損症を処置するために患者に投与する好ましいmRNA配列は、配列番号1799および配列番号1921である。好ましくは、配列番号1799および配列番号1921のmRNA配列が好ましい。
【0167】
投与
【0168】
本開示のmRNA、タンパク質またはその医薬製剤の有効用量は、細胞および/または患者におけるORFタンパク質欠損症を処置するのに十分な量であり得る。治療有効用量は、治療効果をもたらすのに十分な薬剤または製剤の量であり得る。治療有効用量は、1回または複数回の別々の投与で、異なる経路により投与することができる。一般に、治療有効用量は、対象に有意な利益を達成するのに十分である(例えば、フェニルケトン尿症を処置、調節、治癒、予防、および/または改善する)。例えば、治療有効量は、所望の治療効果および/または予防効果を達成するのに十分な量であり得る。一般に、それを必要とする対象に投与される治療剤の量は、対象の特徴に依存する。そのような特徴には、対象の状態、疾患の重症度、全体的健康状態、年齢、性別および体重が含まれる。当業者は、これらのおよび他の関連要因に応じて適切な用量を容易に決定することができる。さらに、客観的アッセイおよび主観的アッセイの両方を、最適な用量範囲を特定するために使用してもよい。
【0169】
本明細書で提供した方法は、本明細書に記載したmRNA配列の治療有効量の単回投与および複数回の投与を意図する。本明細書に記載したORFタンパク質をコードするmRNA配列を含む医薬組成物は、対象の状態の性質、重症度および程度に応じて、規則的な間隔で投与され得る。好ましくは、本開示のmRNA配列の治療有効量は、規則的な間隔で(例えば、1年に1回、6か月に1回、4か月に1回、3か月に1回、2か月に1回、1か月に1回)、隔週、毎週、毎日、1日2回、1日3回、1日4回、1日5回、1日6回、または連続的に、定期的に投与され得る。
【0170】
好ましくは、本開示のmRNAの医薬組成物は、そこに含まれる本明細書に記載した修飾タンパク質をコードする翻訳可能な化合物の徐放に適するように製剤化される。そのような徐放組成物は、延長された投与間隔で対象に都合よく投与され得る。例えば、一実施形態では、本開示の医薬組成物は、対象に1日2回、毎日、または1日おきに投与される。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、対象に、週に2回、週に1回、10日ごと、2週間ごと、28日ごと、毎月、6週間ごと、8週間ごと、隔月ごと、3か月ごと、4か月ごと、6か月ごと、9か月ごと、または年に1回、投与される。また本明細書では、長期にわたって、本明細書に記載したOTCタンパク質をコードするmRNA配列をデリバリーまたは放出するデポー投与(例えば、皮下、筋肉内)のために製剤化された医薬組成物も意図している。好ましくは、用いられる徐放手段は、安定性を高めるために、本明細書に記載したOTCタンパク質をコードする翻訳可能な化合物に作製された修飾と組み合わされる。
【0171】
治療有効用量は、投与時に、1~1000pg/ml、または1~1000ng/ml、または1~1000μg/ml、またはそれ以上のOTCの血清レベルまたは血漿レベルをもたらし得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載したmRNA配列を含む組成物の治療有効用量を投与すると、処置対象における肝臓修飾タンパク質レベルの増加がもたらされ得る。好ましくは、本明細書に記載したmRNAを含む組成物を投与すると、処置前の対象におけるベースライン修飾タンパク質レベルに対して、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%の肝臓修飾タンパク質レベルにおける増加がもたらされる。好ましくは、本明細書に記載したmRNAを含む組成物の治療有効用量を投与すると、処置前の対象におけるベースライン肝臓OTCレベルに対して、肝臓OTCレベルの増加がもたらされる。いくつかの実施形態では、ベースライン肝臓OTCレベルに対する肝臓OTCレベルの増加は、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、100%、200%、またはそれ以上である。
【0172】
好ましくは、治療有効用量は、規則的に投与される場合、処置前のベースラインレベルと比較して、肝臓におけるOTCの発現の増加をもたらす。好ましくは、本明細書に記載したmRNA配列を含む組成物の治療有効用量を投与すると、処置対象の肝臓の総タンパク質の約10ng/mg、約20ng/mg、約50ng/mg、約100ng/mg、約150ng/mg、約200ng/mg、約250ng/mg、約300ng/mg、約350ng/mg、約400ng/mg、約450ng/mg、約500ng/mg、約600ng/mg、約700ng/mg、約800ng/mg、約900ng/mg、約1000ng/mg、約1200ng/mg、または約1500ng/mg以上の修飾タンパク質レベルの発現がもたらされる。
【0173】
好ましくは、治療有効用量は、規則的に投与された場合、生体サンプル中のオロト酸レベルの低下をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載したmRNAを含む組成物の治療有効用量を投与すると、処置前のベースラインのオロト酸レベルと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%、生体サンプル(例えば、尿、血漿または血清サンプル)中のオロト酸レベルの低下がもたらされる。好ましくは、生体サンプルは、血漿、血清、全血、尿、または脳脊髄液から選択される。好ましくは、本明細書に記載したmRNAを含む組成物の治療有効用量を投与すると、血清または血漿中のオロト酸レベルを約1000μmol/L以下、約900μmol/L以下、約800μmol/L以下、約μmol/L以下、約600μmol/L以下、約500μmol/L以下、約400μmol/L以下、約300μmol/L以下、約200μmol/L以下、約100μmol/L以下、または約50μmol/L以下に低下させる。好ましくは、治療有効用量は、規則的に投与された場合、血清または血漿中のオロト酸レベルを約600μmol/L以下に低下させる。別の例示的な実施形態では、治療有効用量は、規則的に投与された場合、血清または血漿中のオロト酸レベルを約360μmol/L以下に低下させる。好ましくは、治療有効用量は、規則的に投与された場合、血清または血漿中のオロト酸レベルを約120μmol/L以下に低下させる。
【0174】
インビボでの本明細書に記載したmRNAの治療有効用量は、約0.001~約500mg/kg体重の用量であり得る。例えば、治療有効用量は、約0.001~0.01mg/kg体重、または0.01~0.1mg/kg、または0.1~1mg/kg、または1~10mg/kg、または10~100mg/kgであってもよい。好ましくは、本明細書に記載したOTCタンパク質をコードする、脂質有効化および非固定化核モノマー剤修飾RNA(LUNAR)-mRNA(WO2015/074085および米国特許公開第2018/0169268号を参照されたい)は、約0.1~約10mg/kg体重の範囲の用量で提供される。
【0175】
組合せ
【0176】
本明細書に記載したcDNA一次コンストラクト、mRNAまたはコードされたOTCタンパク質は、1つまたは複数の他の治療剤、予防剤、診断剤、または画像化剤と組み合わせて使用することができる。「と組み合わせて」とは、これらのデリバリーの方法は本開示の範囲内であるが、薬剤が同時に投与され、および/またはデリバリーのために一緒に製剤化されなければならないことを意味することを意図しない。組成物は、1つまたは複数の他の所望する治療手順または医療手順と同時に、その前に、またはその後に投与され得る。一般に、それぞれの薬剤は、その薬剤に対して決定された用量および/または時間スケジュールで投与される。好ましくは、本開示の処置の方法は、バイオアベイラビリティを改善し、代謝を低下および/または修正し、排出を抑制し、および/または体内分布の修正し得る薬剤と組み合わせた、医薬組成物、予防組成物、診断組成物、または画像化組成物のデリバリーを包含する。非限定的な例として、本明細書に記載したmRNA、好ましくは配列番号4の修飾OTCタンパク質をコードする配列番号119を含むmRNA配列は、OTC欠損症を処置するための薬剤と組み合わせて使用することができる。薬剤には、限定するものではないが、フェニル酪酸ナトリウム、フェニル酪酸グリセロール、フェニル酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、アルギニン、シトルリン、マルチビタミン、カルシウムサプリメント、または低タンパク質/高カロリー食と組み合わせたものの1つまたは複数が含まれる。一般に、組み合わせて用いられる薬剤は、個別に使用されるレベルを超えないレベルで使用されることが期待される。いくつかの実施形態では、組み合わせて用いられるレベルは、個別に使用されるレベルよりも低くなる。一実施形態では、組合せは、それぞれまたは一緒に、当技術分野において公知の分割投与レジメンによって投与され得る。
【実施例】
【0177】
実施例1:材料および方法
インビトロ転写プロトコル
mRNAは、T7RNAポリメラーゼ媒介型DNA依存性RNA転写を使用してインビトロで合成し、ウリジン三リン酸(UTP)を、それぞれのUTRの組合せにごとに直鎖状の鋳型を使用して、修飾UTP、例えば5メトキシUTP(5MeOU)、N1-メトキシメチルシュードUTP(N1-MOM)、5-ヒドロキシメチルUTP、5-カルボキシUTP、および修飾の混合物で置換および非置換した。mRNAはカラムクロマトグラフィーを使用して精製し、酵素反応を使用してDNAおよびすべてのmRNAの二本鎖mRNA混入を除去し、mRNAを濃縮し、バッファー交換した。
【0178】
脂質カプセル化mRNAの調製
脂質カプセル化mRNA粒子は、エタノール中の脂質(ATX脂質:DSPC:コレステロール:PEG-DMG)を、クエン酸バッファーに溶解したOTC mRNAと混合することにより調製した。この混合材料をリン酸バッファーで瞬間的に希釈した。エタノールを、再生セルロース膜(100kD MWCO)を使用したリン酸バッファーで透析するか、または変性ポリエーテルスルホン(mPES)中空糸膜(100kD MWCO)を使用したタンジェンシャルフロー濾過(tangential flow filtration、TFF)によって除去した。エタノールを完全に除去した後、緩衝液を、50mMのNaClおよび9%のスクロースを含有するHEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)緩衝液、pH7.3と交換した。この製剤を濃縮し、続いてPESフィルターを使用して0.2μm濾過を行った。次いで、この製剤中のmRNA濃度をRibogreen蛍光アッセイによって測定した後、グリセロールを含有する、50mMのNaCl、9%スクロース含むHEPESバッファー、pH7.3で希釈することにより、濃度を所望する最終濃度に調整した。次いで、最終製剤を0.2μmフィルターで濾過し、ガラス製バイアルに充填して栓をし、蓋をして-70±5℃に置いた。この凍結製剤を、RibogreenアッセイによるmRNA含有量およびカプセル化率、フラグメントアナライザーによるmRNA完全性、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による脂質含有量、Malvern Zetasizer Nano ZSでの動的光散乱による粒子サイズ、pHおよびオスモラリティに関して特徴付けた。
【0179】
In-Cell Western(ICW)
96ウェルのコラーゲンプレートを使用して、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)/ウシ胎児血清(FBS)培地に適切な密度で細胞を播種した。最適なコンフルエンスで、細胞を、トランスフェクション試薬ミックス(MessengerMaxおよびOpti-MEM)で希釈した標的mRNAでトランスフェクトした。細胞をCO2インキュベーター内も置き、増殖させた。所望する時点で、培地を除去し、細胞を4%の新鮮なパラホルムアルデヒド(PFA)で20分間固定した。その後、固定液を除去し、細胞を、TWEENを入れたトリスバッファー生理食塩水(TBST)で5分間にわたり数回、透過処理した。透過処理洗浄が完了したら、細胞をブロッキングバッファー[ODYSSEY(登録商標)ブロッキングバッファー(PBS)(Li-Cor, Lincoln, NE)]と共に45分間インキュベートした。次いで、一次抗体を添加し、室温で1時間インキュベートした。次いで、細胞をTBSTで数回洗浄し、ブロッキングバッファーで希釈し、CellTag700染色剤を含む二次抗体と1時間インキュベートした。最後に、細胞をTBSTで数回洗浄し、続いてトリス緩衝生理食塩水(TBS)で最終洗浄を実施した。プレートはLicor検出システムを使用して画像化し、データはCellTag700で標識した細胞の総数に対して正規化した。
【0180】
実施例2:Hepa1,6およびHep3BにおけるUTRスクリーニング-24時間および48時間での相関。
UTRライブラリーは、配列番号34の配列をCDS(コード配列)として含むmRNAコンストラクト#571を使用して、インビトロでスクリーニングした。実施例1に記載したIn-Cell Westernアッセイを使用して、市販のトランスフェクション試薬を使用し、異なるmRNAをHepa1,6およびHep3Bにトランスフェクトした。OTCタンパク質の発現レベルは、近赤外蛍光イメージングシステムによって測定した。市販のOTC用抗体を検出に使用した。トランスフェクトされていない配列および参照配列を内部対照として使用した。
図1のパネルAは、24時間でのHepa1,6細胞およびHep3B細胞において確認されたOTCタンパク質の発現レベルの散布図である。
図1のパネルBは、48時間でのHepa1,6細胞およびHep3B細胞において確認されたOTCタンパク質の発現レベルの散布図である。スクリーニングの目的は、ヒト(Hep3B)およびマウス(Hepa1,6)肝細胞株においてOTC発現レベルに対するUTR固有の影響を判定することであり、どのUTRが両モデルにおいて最も有益であり得るのか、特にマウスからヒトへの翻訳可能性を判断する上で有益である。高発現UTRをさらなるプロファイリング試験において使用した。
【0181】
実施例3:24時間でHepa1,6およびHep3Bにおいてスクリーニングされたタンパク質安定性化合物のラウンド1-相関。
タンパク質安定性のアプローチに基づいて設計された表5の特定のmRNAコンストラクトのインビトロスクリーニングを実施した。mRNAコンストラクトは、2つの異なる化学物質N
1-メチルシュードウリジン(N1MPU)および5-メトキシウリジン(5MeOU)で試験したが、このことは、各mRNA中のウリジンの100%がN1MPUのみであったか、または5MeOUのみであった(5MeOUまたはN1MPUの組み合わせではない)ことを意味する。実施例1に記載したIn-Cell Western(ICW)アッセイを使用して、市販のトランスフェクション試薬を使用し、異なるmRNAをHepa1,6およびHep3Bにトランスフェクトした。OTCタンパク質の発現レベルは、近赤外蛍光イメージングシステムによって測定した。市販のOTC用抗体を検出に使用した。トランスフェクトされていない配列および参照配列を内部対照として使用した。
図2のパネルAは、N1MPUおよび5MeOU化学物質で試験したmRNAの関数として、24時間でのHepa1,6細胞におけるOTCタンパク質の発現レベルの相関を示す散布図である。
図2、パネルBは、N1MPUおよび5MeOU化学物質で試験したmRNAの関数として、24時間でのHep3B細胞におけるOTCタンパク質の発現レベルの相関を示す散布図である。これらの図は、2つの異なる化学物質からのmRNAをマウス肝細胞株およびヒト肝細胞株において試験した場合の発現レベルの変動の程度を示す。この実験においては、N1MPU化学物質をmRNAで使用した場合、ほとんどの化合物がより良好に発現することが明らかであり得る。
【0182】
実施例4:24時間および48時間でヒト初代肝細胞においてスクリーニングされたタンパク質安定性化合物のラウンド2-相関。
タンパク質安定性アプローチに基づいて設計された表5のある特定のmRNAコンストラクトのインビトロスクリーニングを実施した。ウリジンの100%がmRNAコンストラクトの名称の後に続いて「.1」が示されたN1MPUであり、ウリジンの100%がmRNAコンストラクトの名称の後に続いて「.7」で示された5MeOUである、2つの異なる化学物質でmRNAを試験した。実施例1に記載したIn-Cell Western(ICW)アッセイを使用して、市販のトランスフェクション試薬を使用し、異なるmRNAをヒト初代肝細胞にトランスフェクトした。OTCタンパク質の発現レベルは、近赤外蛍光イメージングシステムによって測定した。市販のOTC用抗体を検出に使用した。トランスフェクトされていない配列および参照配列を内部対照として使用した。(
図3、パネルAおよびB)。結果は、がん細胞株で実施された実験(Hepa1,6;Hep3B;実施例3)とは対照的に、両方の化学物質がヒト初代肝細胞において同様に発現することを示唆している。
【0183】
実施例5:24時間および48時間でのヒト初代肝細胞におけるタンパク質安定性化合物スクリーニングのラウンド3-相関。
タンパク質安定性アプローチに基づいて設計した新規化合物のインビトロスクリーニングを実施した。mRNAコンストラクトの名称の後に続いて「.1」が示されたN1MPUと、mRNAコンストラクトの名称の後に続いて「.7」で示された5MeOUである、2つの異なる化学物質でmRNAを試験した。実施例1に記載したIn-Cell Western(ICW)アッセイを使用して、市販のトランスフェクション試薬を使用し、異なるmRNAをヒト初代肝細胞にトランスフェクトした。OTCタンパク質の発現レベルは、近赤外蛍光イメージングシステムによって測定した。市販のOTCタンパク質用抗体を検出に使用した。トランスフェクトされていない配列および参照配列を内部対照として使用した。(
図4、パネルAおよびB)。結果は、がん細胞株で実施された実験(Hepa1,6;Hep3B;実施例3)とは対照的に、両方の化学物質がヒト初代肝細胞において同様に発現することを示唆している。
【0184】
実施例6:配列番号3のOTCタンパク質をコードするOTC mRNAコンストラクト1799.7(5MeOU化学物質)および配列番号4の修飾OTCタンパク質をコードする1921.7(5MeOU化学物質)をトランスフェクトしたヒト初代細胞におけるOTCタンパク質の発現レベル。
実施例1に記載したIn-Cell Western(ICW)アッセイを使用して、市販のトランスフェクション試薬を使用し、OTC mRNAをヒト初代肝細胞にトランスフェクトした。OTCタンパク質の発現レベルは、96時間までの経時的試験の間、近赤外蛍光イメージングシステムによって測定した。市販のOTC用抗体を検出に使用した。トランスフェクトされていない配列を内部対照として使用した。プロットは、トランスフェクトされていない対照に対して正規化したOTCタンパク質レベルを示している。(
図5)。この試験の目的は、トランスフェクトされたヒト初代肝細胞におけるインビトロ条件下での未修飾タンパク質配列と修飾タンパク質配列(それぞれ、コンストラクト1799.7、1921.7によってコードされている)との半減期を評価することであった。結果は、1921.7が1799.7よりもより安定した発現を示したことを示唆している。
実施例7:10mg/kgで投与されたspf/ashマウスにおける多重反応モニタリング(MRM)質量分析法によって測定されたOTC発現レベル。Spf/ashマウスに、PBSまたは脂質製剤化(実施例1に記載)OTC-mRNAのいずれかを10mg/kg用量でIV注射した。WTマウスを内部対照として使用して、内因性レベルを決定した。時間経過(6時間、24時間、48時間)を実施し、発現レベルをOTCのヒトおよびマウス特異的エピトープを使用してMRMによって測定した。ヒトOTC(
図6、パネルA)またはマウス(
図6、パネルB)に特異的なMRMによって検出されたタンパク質の量(ng/組織mg)を示すグラフを作成した。ヒト特異的およびマウス特異的重ペプチドは、両種におけるOTCの総レベルを測定するように設計された。このデータセットは、デリバリーされたmRNAの翻訳に由来するヒト特異的OTCの定量的レベルが検出されたことを示唆している。この発現は、48時間まで高レベルの安定性を維持する。
【0185】
実施例8:3mg/kgで投与されたWTマウスにおけるウエスタンブロットによって測定したOTC発現レベル。
Spf/ashマウスに、2つの異なる化学物質(N1MPUおよび5MeOU)を使用して、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)または脂質製剤化OTC-mRNAのいずれかを3mg/kgの用量でIV注射した。WTマウスを内部対照として使用して、内因性レベルを決定した。動物は、投与の24時間後に安楽死させた。OTC発現レベルは、OTC特異的抗体を使用したウエスタンブロット(WB)によって測定した。
図7に提供した結果において、棒はWTレベル(100%)に対する発現のパーセンテージを示す。この図で作成されたデータは、マウスバックグラウンドでの総OTCのWTレベルがいくつかのコドン最適化配列において達成されたことを明らかにしている。
【0186】
実施例9:用量範囲設定試験においてMRMにより測定されたOTC発現レベル。
Balb/cマウスに、PBSまたは脂質製剤化OTC-mRNAのいずれかを3つの異なる用量:0.3mg/kg、1mg/kgおよび3mg/kgで、2つの異なる化学物質(N1MPUおよび5MeOU)を使用して、IV注射した。投与の24時間後に動物を安楽死させ、OTCのヒト特異的およびマウス特異的エピトープを使用し、MRMによって発現レベルを測定した。
図8のグラフは、Balb/cマウスにおける肝臓組織1mg当たりのヒトOTCの発現のパーセンテージ(ng)を示す。水平の点線は、Balb/cマウスにおける相対的なマウスOTCレベルを示す。(
図8)。mRNAコンストラクト713 5MeOUおよびmRNAコンストラクト571 N1MPUに関するhOTCタンパク質の発現レベルは、
図8において矢印によって示されている。この図では、MRMを使用して、ヒト選択的およびマウス選択的OTCタンパク質レベルを定量的に測定した。この図で作成したデータは、用量依存的に、マウスのバックグラウンドでのヒトOTCのWTレベルが本明細書に開示したコドン最適化配列で達成されることを明らかにしている。
【0187】
実施例10:PBSおよび処置したspf/ashマウスにおいて測定された尿中オロト酸塩レベル。
Spf/ashマウスに、PBSまたは脂質製剤化OTC-mRNAコンストラクト1799.7(5MeOU化学物質)のいずれかを3つの異なる用量:0.3mg/kg、1mg/kgおよび3mg/kgでIV注射した。WTおよびspf/ashマウスを使用して、ベースラインおよび高尿中オロト酸塩レベルをそれぞれ決定した。spf/ashの時間経過が決定され、尿中オロト酸塩レベルが各時点で測定された。結果は
図9で見ることができる。尿中オロト酸塩はクレアチニンに対して正規化され、これは時間経過を通じてY軸のグラフに示され、また注射後のOTC活性の機能回復の概念実証として有用である。3mg/kgで、最大14日間まで尿中オロト酸塩レベルの持続的減少が観察された。
【0188】
実施例11:96時間でのヒトOTC発現レベルおよび尿中オロト酸塩を比較する薬物動態/薬力学(PK/PD)分析。
Spf/ashマウスに、PBSまたは表5の特定の脂質製剤化OTC-mRNAを1mg/kgおよび3mg/kgで、2つの異なる化学物質(N1MPUおよび5MeOU)を使用して、IV注射した。WTマウスを内部対照として使用した。ヒト特異的OTCレベルはMRMによって測定し、尿中オロト酸塩は各サンプルで測定し、クレアチニンに対して正規化した。PK/PDが
図10にプロットされている。PK/PD分析は、タンパク質発現レベルと尿中オロト酸塩の減少との相関関係を化合物特異的な方法で示している。コンストラクト1799.7は、高いPK/PD相関を示している。
【0189】
実施例12:選択したmRNAで処置したインビボサンプルにおけるspf/ashマウスの分画。
spf/ashマウスに、PBSまたは脂質製剤化(実施例1に記載)OTC-mRNAのいずれかを1mg/kgおよび3mg/kgでIV注射した。WTマウスを内部対照として使用した。サンプル分画は、肝臓サンプルで、サイトゾル分画とミトコンドリア分画を分離して実施した。OTCレベルは、ヒト特異的(hOTC)抗体および交差反応性(crOTC)抗体を使用して、WBによって測定した(
図11)。シクロオキシゲナーゼIV(CoxIV)をミトコンドリア対照として使用した。OTCタンパク質の発現レベルは、近赤外蛍光イメージングシステムによって測定し、総タンパク質に対して正規化した。WBは、2016mRNAおよび2260mRNAがspf/ashマウスに送られた場合のミトコンドリア分画およびサイトゾル分画内のOTC発現レベルの差異を示している。これらの結果は、両化合物がミトコンドリアを効率的に標的化することができることを示唆している。
【0190】
実施例13:mRNAコンストラクト2016および2260で処置したspf/ashマウスサンプルのミトコンドリア分画およびサイトゾル分画のプロット。
Spf/ashマウスに、PBSまたは脂質製剤化OTC-mRNAのいずれかを3mg/kgでIV注射した。WTマウスを内部対照として使用した。サンプル分画は、肝臓サンプルで、サイトゾル分画とミトコンドリア分画を分離して実施した。OTCレベルは、ヒト特異的抗体を使用して、ウエスタンブロットによって測定した。OTCタンパク質の発現レベルは、近赤外蛍光イメージングシステムによって測定し、総タンパク質に対して正規化された両方の分画をプロットした(
図12)。
図11(実施例12)に示したタンパク質発現レベルのプロットは、2016と2260の両化合物がサイトゾルで同様のタンパク質レベルをデリバリーするにもかかわらず、2260が2016よりも多くのヒトOTCをデリバリーするのはミトコンドリアにおいてであることを示唆している。2260は、本発明の修飾ミトコンドリアシグナル伝達ペプチド配列を含む。
【0191】
実施例14:mRNAコンストラクト2260で処置したspf/ashマウスにおける尿中オロト酸塩レベル。
Spf/ashマウスに、PBSまたは脂質製剤化(実施例1に記載)OTC-mRNAのいずれかを1mg/kgおよび3mg/kgでIV注射した。WTマウスを内部対照として使用した。尿中オロト酸塩レベルを0、1、3、7および14日目に測定し、レベルをクレアチニンに対して標準化した(
図13)。このアッセイの機能的読み出しは、尿中オロト酸塩レベルが化合物2260により最大14日間まで用量依存的に減少することを示している。
【0192】
実施例15:OTC-mRNAコンストラクト1799.7(5MeOU化学物質)による処置期間の高タンパク質食でのspf/ahマウスの生存。
Spf/ashマウスに、PBSまたは脂質製剤化OTC-mRNA(1799.7)のいずれかを3つの用量:0.3mg/kg、1mg/kgおよび3mg/kgでIV注射した。マウスに0日目から試験終了まで高タンパク食を与えた。処置した動物に、0、7、14、21および28日目に静脈内注射した(矢印)。生存率を毎週決定した。
図14のプロットには、試験全体のタイムラインと異なる群で観察された生存率がまとめられている。結果からは、本明細書に記載したヒトOTC mRNAで処置した動物が高アンモニア血症の発症期間中、生存する確率が高いことが明らかであり、動物を有毒アンモニアから解毒するにあたって本明細書に記載したOTC mRNAの保護的役割を示唆している。この生存率は用量依存的であり、3mg/kgの用量で処置した動物は、1mg/kgまたは0.3mg/kgで処置した動物よりも高い生存率を有した。
【0193】
実施例16:異なる修飾によるhOTC発現レベルの比較。
脂質製剤化OTC-mRNAコンストラクト2262投与は、8週齢のオスC57BL/6マウスに1mg/kgの用量でIV注射した。
図15に提供したチャートの下軸に示したように、異なる化学物質をこの試験では使用した。マウス肝臓をIV投与の24時間後に採取し、hOTC特異的抗体を使用してウエスタンブロットを実施した。レベルを総タンパク質に対して正規化した(
図15)。それぞれのコンストラクトは、実施例1に記載したようにATX脂質を含む脂質ナノ粒子として製剤化した。このデータセットは、本発明者らのコドン最適化mRNAの発現レベルに対する異なるウリジン化学物質の効果を示している。
【0194】
本明細書で言及されている特許および科学文献は、当業者が利用可能な知識を確立している。本明細書に引用されているすべての米国特許および公開または未公開の米国特許出願は、参照により組み込まれる。本明細書に引用されているすべての公開された外国特許および特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に引用されているすべての他の公開された参考文献、文書、原稿、および科学文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0195】
本開示は、その好ましい実施形態を参照して詳細に示され、説明されてきたが、当業者には、添付の特許請求の範囲に包含される開示の範囲から逸脱することなく、形態および詳細に様々な変更を行うことができることは理解されよう。また、本明細書に記載した実施形態は相互に排他的なものではなく、本開示に従って様々な実施形態の特徴を全体的または部分的に組み合わせることができることも理解されたい。
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