(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】電気加熱式担体、排気ガス浄化装置及びセラミックス-金属接合体
(51)【国際特許分類】
C04B 41/88 20060101AFI20240229BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20240229BHJP
B01J 27/224 20060101ALI20240229BHJP
B01J 32/00 20060101ALI20240229BHJP
B01J 35/50 20240101ALI20240229BHJP
B01J 35/57 20240101ALI20240229BHJP
C04B 35/577 20060101ALI20240229BHJP
C04B 38/06 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C04B41/88 Q
C04B41/88 C
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01J27/224 A
B01J32/00
B01J35/50 311
B01J35/57 F
C04B35/577 ZAB
C04B38/06 E
(21)【出願番号】P 2021551121
(86)(22)【出願日】2020-04-14
(86)【国際出願番号】 JP2020016475
(87)【国際公開番号】W WO2021065059
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-10-15
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2019179137
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 尚哉
【合議体】
【審判長】河本 充雄
【審判官】金 公彦
【審判官】立木 林
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-30215(JP,A)
【文献】特開2016-74586(JP,A)
【文献】特開2016-74587(JP,A)
【文献】特開2018-172258(JP,A)
【文献】特開2020-79189(JP,A)
【文献】特開平5-286776(JP,A)
【文献】国際公開第2011/105567(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 37/00-37/04
B01D 53/64
B01J 35/02
B01J 35/04
F01N 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで貫通して流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁と、を有する導電性セラミックス製の柱状ハニカム構造体と、
前記柱状ハニカム構造体の外周壁の表面に配設されている電極層と、
前記電極層上に配設された、金属粒子及びセラミックスで構成されている下地層と、
前記下地層を介して前記電極層と接続されている金属電極と、
を備え、
前記下地層は、少なくとも、第1の層と、前記第1の層に隣接する第2の層と、を有し、
前記第2の層は前記第1の層との間に境界面を有し、
前記第1の層における金属粒子の含有量、及び、前記第2の層における金属粒子の含有量が、30体積%以上80体積%以下であり、
前記下地層の厚み方向の断面において、前記第1の層における金属粒子の個数が、前記第2の層における金属粒子の個数に対して、単位面積当たり、1.2倍以上である電気加熱式担体。
【請求項2】
前記第1の層は、前記第2の層に対し、前記電極層側に設けられている請求項1に記載の電気加熱式担体。
【請求項3】
前記第1の層は、前記第2の層に対し、前記金属電極側に設けられている請求項1に記載の電気加熱式担体。
【請求項4】
前記第1の層の幅が、前記金属電極の幅以下である請求項3に記載の電気加熱式担体。
【請求項5】
前記下地層が、前記第2の層の前記電極層側に、第3の層を有し、
前記第3の層は前記第1の層と境界面を有して隣接し、または、前記第3の層は前記第2の層と境界面を有して隣接し、
前記第3の層における金属粒子の含有量が30体積%以上80体積%以下である請求項3または4に記載の電気加熱式担体。
【請求項6】
前記第1の層における金属粒子の含有量と前記第2の層における金属粒子の含有量との差が、30体積%以下である請求項1~5のいずれか一項に記載の電気加熱式担体。
【請求項7】
前記下地層の厚み方向の断面において、前記第1の層における金属粒子の個数が、前記第2の層における金属粒子の個数に対して、単位面積当たり、1.2倍以上5.0倍以下である請求項1~6のいずれか一項に記載の電気加熱式担体。
【請求項8】
前記第1の層における金属粒子の個数平均粒径が5~100μmであり、前記第2の層における金属粒子の個数平均粒径が1~50μmである請求項1~7のいずれか一項に記載の電気加熱式担体。
【請求項9】
前記第1の層の厚みが、前記第2の層の厚みより大きい請求項1~8のいずれか一項に記載の電気加熱式担体。
【請求項10】
前記下地層と前記金属電極とが、1つ又は複数のスポット状の接合部位で接合されている請求項1~9のいずれか一項に記載の電気加熱式担体。
【請求項11】
前記下地層と前記金属電極とが面状の接合部位で接合されている請求項1~9のいずれか一項に記載の電気加熱式担体。
【請求項12】
前記柱状ハニカム構造体の外周壁の表面に配設された電極層が、前記柱状ハニカム構造体の外周壁の表面に、前記柱状ハニカム構造体の中心軸を挟んで対向するように配設された一対の電極層である請求項1~11のいずれか一項に記載の電気加熱式担体。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の電気加熱式担体と、
前記電気加熱式担体を保持するための金属製の筒状部材と、
を有する排気ガス浄化装置。
【請求項14】
導電性セラミックスで構成された本体と、
前記本体上に配設された、金属粒子及びセラミックスで構成された下地層と、
前記下地層を介して、前記本体と接続されている金属部材と、
を備えたセラミックス-金属接合体であって、
前記下地層は、少なくとも、第1の層と、前記第1の層に隣接する第2の層と、を有し、
前記第2の層は前記第1の層との間に境界面を有し、
前記第1の層における金属粒子の含有量、および前記第2の層における金属粒子の含有量が、30体積%以上80体積%以下であり、
前記下地層の厚み方向の断面において、前記第1の層における金属粒子の個数が、前記第2の層における金属粒子の個数に対して、単位面積当たり、1.2倍以上であるセラミックス-金属接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気加熱式担体、排気ガス浄化装置及びセラミックス-金属接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジン始動直後の排気ガス浄化性能の低下を改善するため、電気加熱触媒(EHC)が提案されている。EHCは、導電性セラミックスからなる柱状のハニカム構造体に金属電極を接続し、通電によりハニカム構造体自体を発熱させることで、エンジン始動前に活性温度まで昇温できるようにした触媒である。EHCにおいては、触媒効果を十分に得られるようにするために、ハニカム構造体内での温度ムラを少なくして均一な温度分布にすることが望まれている。
【0003】
金属電極は、セラミックス製のハニカム構造体とは材質が異なる。このため、自動車の排気管内等のように高温酸化雰囲気で使用される用途においては、高温環境下でのハニカム構造体と金属端子の機械的及び電気的接合信頼性の確保が要求される。
【0004】
このような問題に対し、特許文献1には、金属端子(金属電極)側から熱エネルギーを加えて、ハニカム構造体の電極層上に、溶接によって金属電極を接合する技術が開示されている。そして、このような構成によれば、金属電極との接合信頼性を向上させた導電性ハニカム構造体を提供することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、熱エネルギーを加えて、セラミックス製のハニカム構造体に金属電極を接合させているが、セラミックス側に含まれる金属量が少ないと、溶接時に金属電極と溶融し合う面が少ないため、接続強度が低下する。このため、セラミックス側に含まれる金属量を多くする必要があった。
【0007】
しかしながら、ハニカム構造体のセラミックスの金属量を多くすると、当該金属とセラミックスとの熱膨張差が拡大し、クラックが発生する問題が生じる。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みて創作されたものであり、金属電極とハニカム構造体のセラミックスとの熱膨張差に起因するクラックの発生を良好に抑制することが可能な電気加熱式担体及び排気ガス浄化装置を提供することを課題とする。また、本発明は、金属部材と本体のセラミックスとの熱膨張差に起因するクラックの発生を良好に抑制することが可能なセラミックス-金属接合体を提供することを別の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意検討したところ、柱状ハニカム構造体の外周壁の表面に配設された電極層上に、下地層を介して金属電極を設け、下地層が、少なくとも、第1の層と、第1の層に隣接する第2の層とを有し、第1の層及び第2の層における金属粒子の含有量を所定範囲に制御し、第2の層における金属粒子に対する第1の層における金属粒子の個数を所定値以上に制御することで、上記課題が解決されることを見出した。すなわち、本発明は以下のように特定される。
(1)外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで貫通して流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁と、を有する導電性セラミックス製の柱状ハニカム構造体と、
前記柱状ハニカム構造体の外周壁の表面に配設されている電極層と、
前記電極層上に配設された、金属粒子及びセラミックスで構成されている下地層と、
前記下地層を介して前記電極層と接続されている金属電極と、
を備え、
前記下地層は、少なくとも、第1の層と、前記第1の層に隣接する第2の層と、を有し、
前記第1の層における金属粒子の含有量、及び、前記第2の層における金属粒子の含有量が、30体積%以上80体積%以下であり、
前記下地層の厚み方向の断面において、前記第1の層における金属粒子の個数が、前記第2の層における金属粒子の個数に対して、単位面積当たり、1.2倍以上である電気加熱式担体。
(2)(1)に記載の電気加熱式担体と、
前記電気加熱式担体を保持するための金属製の筒状部材と、
を有する排気ガス浄化装置。
(3)導電性セラミックスで構成された本体と、
前記本体上に配設された、金属粒子及びセラミックスで構成された下地層と、
前記下地層を介して、前記本体と接続されている金属部材と、
を備えたセラミックス-金属接合体であって、
前記下地層は、少なくとも、第1の層と、前記第1の層に隣接する第2の層と、を有し、
前記第1の層における金属粒子の含有量、および前記第2の層における金属粒子の含有量が、30体積%以上80体積%以下であり、
前記下地層の厚み方向の断面において、前記第1の層における金属粒子の個数が、前記第2の層における金属粒子の個数に対して、単位面積当たり、1.2倍以上であるセラミックス-金属接合体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、金属電極とハニカム構造体のセラミックスとの熱膨張差に起因するクラックの発生を良好に抑制することが可能な電気加熱式担体及び排気ガス浄化装置を提供することができる。また、本発明によれば、金属部材と本体のセラミックスとの熱膨張差に起因するクラックの発生を良好に抑制することが可能なセラミックス-金属接合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態1における電気加熱式担体のセルの延伸方向に垂直な断面模式図である。
【
図2】本発明の実施形態1における柱状ハニカム構造体及び電極層の外観模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態における柱状ハニカム構造体、電極層、下地層及び金属電極の断面模式図である。
【
図4】本発明の別の実施形態における柱状ハニカム構造体、電極層、下地層及び金属電極の断面模式図である。
【
図5】本発明の更に別の実施形態における柱状ハニカム構造体、電極層、下地層及び金属電極の断面模式図である。
【
図6】本発明の実施形態における電気加熱式担体の下地層の配置例を示す平面模式図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るセラミックス-金属接合体20の断面模式図である。
【
図8】実施例1に係るサンプルの顕微鏡による断面観察写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0013】
(1.電気加熱式担体)
図1は、本発明の実施形態1における電気加熱式担体10のセルの延伸方向に垂直な断面模式図である。電気加熱式担体10は、柱状ハニカム構造体11と、柱状ハニカム構造体11の外周壁12の表面に配設された電極層13a、13bと、電極層13a、13b上に設けられた下地層16と、金属電極14a、14bとを備える。
【0014】
(1-1.柱状ハニカム構造体)
図2は本発明の実施形態1における柱状ハニカム構造体11及び電極層13a、13bの外観模式図を示すものである。柱状ハニカム構造体11は、外周壁12と、外周壁12の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで貫通して流路を形成する複数のセル18を区画形成する隔壁19とを有する。
【0015】
柱状ハニカム構造体11の外形は柱状である限り特に限定されず、例えば、底面が円形の柱状(円柱形状)、底面がオーバル形状の柱状、底面が多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の柱状等の形状とすることができる。また、柱状ハニカム構造体11の大きさは、耐熱性を高める(外周壁の周方向に入るクラックを抑制する)という理由により、底面の面積が2000~20000mm2であることが好ましく、5000~15000mm2であることが更に好ましい。
【0016】
柱状ハニカム構造体11は、セラミックス製であり、導電性を有する。導電性の柱状ハニカム構造体11が通電してジュール熱により発熱可能である限り、当該セラミックスの電気抵抗率については特に制限はないが、1~200Ωcmであることが好ましく、10~100Ωcmであることが更に好ましい。本発明において、柱状ハニカム構造体11の電気抵抗率は、四端子法により400℃で測定した値とする。
【0017】
柱状ハニカム構造体11の材質としては、限定的ではないが、アルミナ、ムライト、ジルコニア及びコージェライト等の酸化物系セラミックス、炭化珪素、窒化珪素及び窒化アルミ等の非酸化物系セラミックスからなる群から選択することができる。また、炭化珪素-金属珪素複合材や炭化珪素/グラファイト複合材等を用いることもできる。これらの中でも、耐熱性と導電性の両立の観点から、柱状ハニカム構造体11の材質は、珪素-炭化珪素複合材又は炭化珪素を主成分とするセラミックスを含有していることが好ましい。柱状ハニカム構造体11の材質が、珪素-炭化珪素複合材を主成分とするものであるというときは、柱状ハニカム構造体11が、珪素-炭化珪素複合材(合計質量)を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。ここで、珪素-炭化珪素複合材は、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するものであり、複数の炭化珪素粒子が、炭化珪素粒子間に細孔を形成するようにして、珪素によって結合されていることが好ましい。柱状ハニカム構造体11の材質が、炭化珪素を主成分とするものであるというときは、柱状ハニカム構造体11が、炭化珪素(合計質量)を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。
【0018】
柱状ハニカム構造体11が、珪素-炭化珪素複合材を含んでいる場合、柱状ハニカム構造体11に含有される「骨材としての炭化珪素粒子の質量」と、柱状ハニカム構造体11に含有される「結合材としての珪素の質量」との合計に対する、柱状ハニカム構造体11に含有される「結合材としての珪素の質量」の比率が、10~40質量%であることが好ましく、15~35質量%であることが更に好ましい。10質量%以上であると、柱状ハニカム構造体11の強度が十分に維持される。40質量%以下であると、焼成時に形状を保持しやすくなる。
【0019】
セル18の延伸方向に垂直な断面におけるセルの形状に制限はないが、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。これ等のなかでも、四角形及び六角形が好ましい。セル形状をこのようにすることにより、柱状ハニカム構造体11に排気ガスを流したときの圧力損失が小さくなり、触媒の浄化性能が優れたものとなる。構造強度及び加熱均一性を両立させやすいという観点からは、四角形が特に好ましい。
【0020】
セル18を区画形成する隔壁19の厚みは、0.1~0.3mmであることが好ましく、0.15~0.25mmであることがより好ましい。隔壁19の厚みが0.1mm以上であることで、ハニカム構造体の強度が低下するのを抑制可能である。隔壁19の厚みが0.3mm以下であることで、ハニカム構造体を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排気ガスを流したときの圧力損失が大きくなるのを抑制できる。本発明において、隔壁19の厚みは、セル18の延伸方向に垂直な断面において、隣接するセル18の重心同士を結ぶ線分のうち、隔壁19を通過する部分の長さとして定義される。
【0021】
柱状ハニカム構造体11は、セル18の流路方向に垂直な断面において、セル密度が40~150セル/cm2であることが好ましく、70~100セル/cm2であることが更に好ましい。セル密度をこのような範囲にすることにより、排気ガスを流したときの圧力損失を小さくした状態で、触媒の浄化性能を高くすることができる。セル密度が40セル/cm2以上であると、触媒担持面積が十分に確保される。セル密度が150セル/cm2以下であると柱状ハニカム構造体11を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排気ガスを流したときの圧力損失が大きくなりすぎることが抑制される。セル密度は、外側壁12部分を除く柱状ハニカム構造体11の一つの底面部分の面積でセル数を除して得られる値である。
【0022】
柱状ハニカム構造体11の外周壁12を設けることは、柱状ハニカム構造体11の構造強度を確保し、また、セル18を流れる流体が外周壁12から漏洩するのを抑制する観点で有用である。具体的には、外周壁12の厚みは好ましくは0.1mm以上であり、より好ましくは0.15mm以上、更により好ましくは0.2mm以上である。但し、外周壁12を厚くしすぎると高強度になりすぎてしまい、隔壁19との強度バランスが崩れて耐熱衝撃性が低下することから、外周壁12の厚みは好ましくは1.0mm以下であり、より好ましくは0.7mm以下であり、更により好ましくは0.5mm以下である。ここで、外周壁12の厚みは、厚みを測定しようとする外周壁12の箇所をセルの延伸方向に垂直な断面で観察したときに、当該測定箇所における外周壁12の接線に対する法線方向の厚みとして定義される。
【0023】
隔壁19は多孔質とすることができる。隔壁19の気孔率は、35~60%であることが好ましく、35~45%であることが更に好ましい。気孔率が35%以上であると、焼成時の変形をより抑制しやすくなる。気孔率が60%以下であるとハニカム構造体の強度が十分に維持される。気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0024】
柱状ハニカム構造体11の隔壁19の平均細孔径は、2~15μmであることが好ましく、4~8μmであることが更に好ましい。平均細孔径が2μm以上であると、電気抵抗率が大きくなりすぎることが抑制される。平均細孔径が15μm以下であると、電気抵抗率が小さくなりすぎることが抑制される。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0025】
柱状ハニカム構造体11の外周壁12の表面に、電極層13a、13bが配設されている。電極層13a、13bは、柱状ハニカム構造体11の中心軸を挟んで対向するように配設された一対の電極層13a、13bであってもよい。
【0026】
電極層13a、13bの形成領域に特段の制約はないが、柱状ハニカム構造体11の均一発熱性を高めるという観点からは、各電極層13a、13bは外周壁12の外面上で外周壁12の周方向及びセルの延伸方向に帯状に延設することが好ましい。具体的には、各電極層13a、13bは、柱状ハニカム構造体11の両底面間の80%以上の長さに亘って、好ましくは90%以上の長さに亘って、より好ましくは全長に亘って延びていることが、電極層13a、13bの軸方向へ電流が広がりやすいという観点から望ましい。
【0027】
各電極層13a、13bの厚みは、0.01~5mmであることが好ましく、0.01~3mmであることが更に好ましい。このような範囲とすることにより均一発熱性を高めることができる。各電極層13a、13bの厚みが0.01mm以上であると、電気抵抗が適切に制御され、より均一に発熱することができる。5mm以下であると、キャニング時に破損する恐れが低減される。各電極層13a、13bの厚みは、厚みを測定しようとする電極層の箇所をセルの延伸方向に垂直な断面で観察したときに、各電極層13a、13bの外面の当該測定箇所における接線に対する法線方向の厚みとして定義される。
【0028】
各電極層13a、13bの電気抵抗率を柱状ハニカム構造体11の電気抵抗率より低くすることにより、電極層に優先的に電気が流れやすくなり、通電時に電気がセルの流路方向及び周方向に広がりやすくなる。電極層13a、13bの電気抵抗率は、柱状ハニカム構造体11の電気抵抗率の1/10以下であることが好ましく、1/20以下であることがより好ましく、1/30以下であることが更により好ましい。但し、両者の電気抵抗率の差が大きくなりすぎると対向する電極層の端部間に電流が集中して柱状ハニカム構造部の発熱が偏ることから、電極層13a、13bの電気抵抗率は、柱状ハニカム構造体11の電気抵抗率の1/200以上であることが好ましく、1/150以上であることがより好ましく、1/100以上であることが更により好ましい。本発明において、電極層13a、13bの電気抵抗率は、四端子法により400℃で測定した値とする。
【0029】
各電極層13a、13bの材質は、金属及び導電性セラミックスとの複合材(サーメット)を使用することができる。金属としては、例えばCr、Fe、Co、Ni、Si又はTiの単体金属又はこれらの金属よりなる群から選択される少なくとも一種の金属を含有する合金が挙げられる。導電性セラミックスとしては、限定的ではないが、炭化珪素(SiC)が挙げられ、珪化タンタル(TaSi2)及び珪化クロム(CrSi2)等の金属珪化物等の金属化合物が挙げられる。金属及び導電性セラミックスとの複合材(サーメット)の具体例としては、金属珪素と炭化珪素の複合材、珪化タンタルや珪化クロム等の金属珪化物と金属珪素と炭化珪素の複合材、更には上記の一種又は二種以上の金属に熱膨張低減の観点から、アルミナ、ムライト、ジルコニア、コージェライト、窒化珪素及び窒化アルミ等の絶縁性セラミックスを一種又は二種以上添加した複合材が挙げられる。電極層13a、13bの材質としては、上記の各種金属及び導電性セラミックスの中でも、珪化タンタルや珪化クロム等の金属珪化物と金属珪素と炭化珪素の複合材との組合せとすることが、柱状ハニカム構造部と同時に焼成できるので製造工程の簡素化に資するという理由により好ましい。
【0030】
(1-2.下地層)
図3に、本発明の実施形態1における柱状ハニカム構造体11、電極層13a、13b、下地層16及び金属電極14a、14bの断面模式図を示す。
【0031】
本発明の実施形態1における電気加熱式担体10は、電極層13a、13b上に、下地層16が設けられている。下地層16は、電極層13a、13bの表面上に形成でき、略平板状(具体的には、電極層13a、13bの外側表面に沿うように湾曲状)に形成されている。下地層16は、金属粒子及びセラミックスで構成されており、電極層13a、13bの熱膨張率(電極層13a、13bの線膨張係数は比較的小さい。)と金属電極14a、14bの熱膨張率(金属電極14a、14bの線膨張係数は比較的大きい。)との間の熱膨張率を有し、電極層13a、13bと金属電極14a、14bとの間に生じる熱膨張差を吸収する機能を有している。
【0032】
下地層16は、第1の層16aと、第1の層16aに隣接する第2の層16bとを有している。詳細は後述するが、下地層16は、このように2層に限られず、3層以上で構成されていてもよい。第1の層16aにおける金属粒子の含有量、及び、第2の層16bにおける金属粒子の含有量は、30体積%以上80体積%以下である。第1の層16aにおける金属粒子の含有量、及び、第2の層16bにおける金属粒子の含有量は、30体積%以上80体積%以下であることで、柱状ハニカム構造体11のセラミックスと、金属電極14a、14bとの接合が可能となる。第1の層16aにおける金属粒子の含有量、及び、第2の層16bにおける金属粒子の含有量は、30体積%以上80体積%以下であるのが好ましく、40体積%以上70体積%以下であるのがより好ましい。
【0033】
下地層16の厚み方向の断面において、第1の層16aにおける金属粒子の個数は、第2の層16bにおける金属粒子の個数に対して、単位面積当たり、1.2倍以上である。すなわち、下地層16は、一方の層が他方の層に比べて金属粒子の個数が1.2倍以上と異なる2層構成となっている。このような構成によれば、一方の、金属粒子の個数が1.2倍以上と異なる層(第1の層16a)が、他方の層(第2の層16b)に隣接しているため、下地層16と金属電極14a、14bとの間に温度差によってクラックが発生したとしても、当該クラックの進展が当該2層の境界面で止まり、クラックの拡大が抑制される。また、当該境界面が存在することで、クラックが発生し難くなる。下地層16の厚み方向の断面において、第1の層16aにおける金属粒子の個数が、第2の層16bにおける金属粒子の個数に対して、単位面積当たり、1.2倍以上5.0倍以下であるのが好ましく、1.5倍以上3.0倍以下であるのがより好ましい。下地層16の厚み方向の断面において、第1の層16aにおける金属粒子の個数が、第2の層16bにおける金属粒子の個数に対して、5.0倍以下であると、応力集中によるクラックが抑制されるという効果が得られる。
【0034】
第1の層16aは、第2の層16bに対し、
図3に示すように、電極層13a、13b側に設けられていてもよく、
図4に示すように、金属電極14a、14b側に設けられていてもよい。このような構成によれば、いずれの場合であっても、上述の金属粒子の個数が異なる層同士の境界面が存在するため、下地層16と金属電極14a、14bとの間に温度差によってクラックが発生したとしても、当該クラックの進展が当該2層の境界面で止まり、クラックの拡大が抑制される。
【0035】
第1の層16aが、第2の層16bに対し、金属電極14a、14b側に設けられている場合、第1の層16aの幅は、金属電極14a、14bの幅以下であってもよい。後述のように、下地層16と金属電極14a、14bとを、超音波接合によって接合する場合に、このような形態の下地層16を形成することができる。
【0036】
第1の層16aにおける金属粒子の含有量と第2の層16bにおける金属粒子の含有量との差が、30体積%以下であるのが好ましい。なお、当該「30体積%」は絶対値を示す。ここで、上述の通り、下地層16の厚み方向の断面において、第1の層16aにおける金属粒子の個数は、第2の層16bにおける金属粒子の個数に対して、単位面積当たり、1.2倍以上である。このため、第1の層16aにおける金属粒子の含有量と第2の層16bにおける金属粒子の含有量との差が、20体積%以下であると、第1の層16aにおける金属粒子の個数が第2の層16bにおける金属粒子の個数より大きく、且つ、それら金属粒子の含有量が小さいことになる。その結果、第1の層16aにおける金属粒子の個数平均粒径が、第2の層16bにおける金属粒子の個数平均粒径より小さいことを意味する。ここで、下地層16において、金属粒子の個数平均粒径が小さいと、下地層16内に分散されたセラミックス粒子の粒径も相対的に小さくなる。そうすると、下地層16と金属電極14a、14bとの間に温度差によってクラックが発生したとしても、第1の層16aと第2の層16bとの間で、セラミックス粒子の連続性が消滅しているため、当該クラックの進展が止められ、クラックの拡大がより良好に抑制される。第1の層16aにおける金属粒子の含有量と第2の層16bにおける金属粒子の含有量との差は、20体積%以上50体積%以下であってもよい。
【0037】
第1の層16aの個数平均粒径が、第2の層16bの個数平均粒径より小さく、且つ、第1の層16aが、第2の層16bに対し、電極層13a、13b側に設けられていてもよい。このような構成であっても、上述の通り、下地層16と金属電極14a、14bとの間に温度差によってクラックが発生したとしても、第1の層16aと第2の層16bとの間で、セラミックス粒子の連続性が消滅しているため、当該クラックの進展が止められ、クラックの拡大がより良好に抑制される。
【0038】
また、第1の層16aの個数平均粒径が、第2の層16bの個数平均粒径より小さく、且つ、第1の層16aが、第2の層16bに対し、金属電極14a、14b側に設けられていてもよい。下地層16において、金属粒子はセラミックス粒子で覆われており、セラミックス粒子の粒径が大きいと、熱膨張率はセラミックス粒子が支配的となり、低くなる。一方、セラミックス粒子の粒径が小さいと金属粒子の熱膨張の寄与度も大きくなり、粒径が大きい場所に比べて、層としての熱膨張率は高くなる。このため、第1の層16aの個数平均粒径が、第2の層16bの個数平均粒径より小さく、且つ、第1の層16aが、第2の層16bに対し、金属電極14a、14b側に設けられていると、電極層13a、13b側から金属電極14a、14bに向かって、熱膨張率が段階的に高くなる構造となり、熱応力がより良好に分散される。このため、クラックの発生をより良好に抑制することができる。
【0039】
第1の層16aにおける金属粒子の個数平均粒径が5~100μmであり、第2の層16bにおける金属粒子の個数平均粒径が1~50μmであるのが好ましい。このような構成によれば、下地層16において、金属粒子が細かく分散することによって、相対的にセラミックス粒子も細かく分散することとなり、金属電極14a、14bとの熱応力による下地層16に発生するクラックの進展をより良好に抑制することができる。第1の層16aにおける金属粒子の個数平均粒径が5~50μmであり、第2の層16bにおける金属粒子の個数平均粒径が1~30μmであるのがより好ましく、第1の層16aにおける金属粒子の個数平均粒径が5~30μmであり、第2の層16bにおける金属粒子の個数平均粒径が1~10μmであるのが更により好ましい。
【0040】
第1の層16aの厚みは、第2の層16bの厚みより大きくてもよい。特に、第1の層16aの金属粒子の個数平均粒径が、第2の層16bの金属粒子の個数平均粒径より小さい場合、第1の層16aの厚みが、第2の層16bの厚みより大きいと、クラックの発生を抑制する効果のある微粒子のセラミックス粒子が分散する層が厚くなり、より良好にクラックの発生を抑制することができる。
【0041】
下地層16は、金属粒子及びセラミックスで構成されている。下地層16を構成するセラミックスとしては、限定的ではないが、炭化珪素(SiC)が挙げられ、珪化タンタル(TaSi2)及び珪化クロム(CrSi2)等の金属珪化物等の金属化合物が挙げられ、更には、セラミックスの一種以上と金属の一種以上の組み合わせからなる複合材(サーメット)を挙げることができる。サーメットの具体例としては、金属珪素と炭化珪素の複合材、珪化タンタルや珪化クロム等の金属珪化物と金属珪素と炭化珪素の複合材、更には上記の一種又は二種以上の金属に熱膨張低減の観点から、アルミナ、ムライト、ジルコニア、コージェライト、窒化珪素及び窒化アルミ等の絶縁性セラミックスを一種又は二種以上添加した複合材が挙げられる。下地層16を構成する金属粒子としては、限定的ではないが、Fe、Co、Ni、Ti、Ta等の単一金属、または、Cr、Fe、Co、Ni及びTiよりなる群から選択される少なくとも一種を含む合金等が挙げられる。
【0042】
下地層16と金属電極14a、14bとは、1つ又は複数のスポット状の接合部位で接合されていてもよい。また、下地層16と金属電極14a、14bとは、面状の接合部位で接合されていてもよい。ここで、上記「スポット状の接合部位」は、下地層16の上面の面積に対して50%以下の面積率を有する接合部位を示し、上記「面状の接合部位」は、下地層16の上面の面積に対して50%超の面積率を有する接合部位を示す。
【0043】
第1の層16aが、第2の層16bに対し、金属電極14a、14b側に設けられている場合、下地層16は、
図5に示すように、第2の層16bの電極層13a、13b側に、第3の層16cを有し、第3の層16cにおける金属粒子の含有量が30体積%以上80体積%以下であってもよい。このような構成によれば、クラックの発生をより良好に抑制することができる。また、第3の層16cの電極層13a、13b側に、さらに金属粒子の含有量が30体積%以上80体積%以下の層を設けてもよく、さらにその電極層13a、13b側に、別の複数の層を段階的に配置してもよい。また、第1の層16aの金属電極14a、14b側に、さらに金属粒子の含有量が30体積%以上100体積%以下の層を設けてもよく、さらにその金属電極14a、14b側に、別の複数の層を段階的に配置してもよい。
【0044】
電極層13a、13b側から金属電極14a、14bに向かって、熱膨張率がより段階的に高くなる構造とする場合、下地層16を構成する各層(第1の層16a、第2の層16b、第3の層16c等)における金属粒子の粒径を段階的に、電極層13a、13b側から金属電極14a、14bに向かって小さくする。しかしながら、当該熱膨張率がより段階的に高くなる構造としない場合であれば、下地層16を構成する層はどのように配置してもよい。例えば、下地層16は、電極層13a、13b側から金属電極14a、14bに向かって、第1の層16a、第2の層16b、第3の層16cの順に設けてもよく、第1の層16a、第3の層16c、第2の層16bの順に設けてもよく、第2の層16b、第1の層16a、第3の層16cの順に設けてもよく、第2の層16b、第3の層16c、第1の層16aの順に設けてもよく、第3の層16c、第1の層16a、第2の層16bの順に設けてもよい。また、下地層16は、このように互いに金属粒子の含有量が異なる2層構成または3層構成に限られず、4層構成、5層構成またはそれ以上の層で構成されていてもよい。
【0045】
下地層16の数及び配置の仕方は制限されず、金属電極14a、14bを固定するのに必要な範囲内で適宜設定できる。また、下地層16の形状は、平面視で円形状、楕円形状、多角形状など、任意の形状に形成することができる。なお、下地層16の形状は、生産性及び実用性の観点から、円形又は矩形であることが好ましい。
【0046】
(1-3.金属電極)
金属電極14a、14bは、2つ以上の導電性を有する下地層を介して設けられており、電気的に接合されている。金属電極14a、14bは、一方の金属電極14aが、他方の金属電極14bに対して、柱状ハニカム構造体11の中心軸を挟んで対向するように配設される一対の金属電極であってもよい。金属電極14a、14bは、電極層13a、13bを介して電圧を印加すると通電してジュール熱により柱状ハニカム構造体11を発熱させることが可能である。このため、電気加熱式担体10はヒーターとしても好適に用いることができる。印加する電圧は12~900Vが好ましく、64~600Vが更に好ましいが、印加する電圧は適宜変更可能である。
【0047】
金属電極14a、14bの材質としては、金属であれば特段の制約はなく、単体金属及び合金等を採用することもできるが、耐食性、電気抵抗率及び線膨張率の観点から例えば、Cr、Fe、Co、Ni及びTiよりなる群から選択される少なくとも一種を含む合金とすることが好ましく、ステンレス鋼及びFe-Ni合金がより好ましい。金属電極14a、14bの形状及び大きさは、特に限定されず、電気加熱式担体10の大きさや通電性能等に応じて、適宜設計することができる。
【0048】
金属電極14a、14bは2つ以上の電極部15を有していてもよい。各電極部15は、下地層16の外表面に固定される。ここで、電極部15は、溶接により下地層16に固定されてもよく、溶射により形成される固定層で下地層16に固定されてもよい。
【0049】
図6に示される実施形態では、金属電極14a、14bはそれぞれ3つの櫛状電極部15を有し、それぞれの電極部15は2つの下地層16に固定されている。このように、櫛状電極部15と電極層13a、13bとの電気的接続は、互いに離間した2つ以上の下地層16により実現されていてもよい。
【0050】
なお、電極部15は、
図6では櫛状に成形されているが、下地層16に固定され電極層13a、13bと電気的に接続し得る限り、いかなる形状も採用できる。
【0051】
電気加熱式担体10に触媒を担持することにより、電気加熱式担体10を触媒体として使用することができる。複数のセル18の流路には、例えば、自動車排気ガス等の流体を流すことができる。触媒としては、例えば、貴金属系触媒又はこれら以外の触媒が挙げられる。貴金属系触媒としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)といった貴金属をアルミナ細孔表面に担持し、セリア、ジルコニア等の助触媒を含む三元触媒や酸化触媒、又は、アルカリ土類金属と白金を窒素酸化物(NOx)の吸蔵成分として含むNOx吸蔵還元触媒(LNT触媒)が例示される。貴金属を用いない触媒として、銅置換又は鉄置換ゼオライトを含むNOx選択還元触媒(SCR触媒)等が例示される。また、これらの触媒からなる群から選択される2種以上の触媒を用いてもよい。なお、触媒の担持方法についても特に制限はなく、従来、ハニカム構造体に触媒を担持する担持方法に準じて行うことができる。
【0052】
(2.電気加熱式担体の製造方法)
次に、本発明に係る電気加熱式担体10を製造する方法について例示的に説明する。本発明の電気加熱式担体10の製造方法は一実施形態において、電極層形成ペースト付き未焼成ハニカム構造部を得る工程A1と、電極層形成ペースト付き未焼成ハニカム構造部を焼成して柱状ハニカム構造体を得る工程A2と、柱状ハニカム構造体に金属電極を溶接する工程A3とを含む。
【0053】
工程A1は、ハニカム構造部の前駆体であるハニカム成形体を作製し、ハニカム成形体の側面に電極層形成ペーストを塗布して、電極層形成ペースト付き未焼成ハニカム構造部を得る工程である。ハニカム成形体の作製は、公知のハニカム構造部の製造方法におけるハニカム成形体の作製方法に準じて行うことができる。例えば、まず、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素粉末(金属珪素)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して成形原料を作製する。炭化珪素粉末の質量と金属珪素の質量との合計に対して、金属珪素の質量が10~40質量%となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、3~50μmが好ましく、3~40μmが更に好ましい。金属珪素(金属珪素粉末)の平均粒子径は、2~35μmであることが好ましい。炭化珪素粒子及び金属珪素(金属珪素粒子)の平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子であり、金属珪素粒子は、金属珪素粉末を構成する金属珪素の微粒子である。なお、これは、ハニカム構造部の材質を、珪素-炭化珪素系複合材とする場合の成形原料の配合であり、ハニカム構造部の材質を炭化珪素とする場合には、金属珪素は添加しない。
【0054】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、2.0~10.0質量部であることが好ましい。
【0055】
水の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、20~60質量部であることが好ましい。
【0056】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1~2.0質量部であることが好ましい。
【0057】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.5~10.0質量部であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10~30μmであることが好ましい。10μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。30μmより大きいと、成形時に口金に詰まることがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。造孔材が吸水性樹脂の場合には、造孔材の平均粒子径は吸水後の平均粒子径のことである。
【0058】
次に、得られた成形原料を混練して坏土を形成した後、坏土を押出成形してハニカム成形体を作製する。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚み、セル密度等を有する口金を用いることができる。次に、得られたハニカム成形体について、乾燥を行うことが好ましい。ハニカム成形体の中心軸方向長さが、所望の長さではない場合は、ハニカム成形体の両底部を切断して所望の長さとすることができる。乾燥後のハニカム成形体をハニカム乾燥体と呼ぶ。
【0059】
次に、電極層を形成するための電極層形成ペーストを調合する。電極層形成ペーストは、電極層の要求特性に応じて配合した原料粉(金属粉末、及び、セラミックス粉末等)に各種添加剤を適宜添加して混練することで形成することができる。電極層を積層構造とする場合、第一の電極層用のペースト中の金属粉末の平均粒子径に比べて、第二の電極層用のペースト中の金属粉末の平均粒子径を大きくすることにより、金属端子と電極層の接合強度が向上する傾向にある。金属粉末の平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。
【0060】
次に、得られた電極層形成ペーストを、ハニカム成形体(典型的にはハニカム乾燥体)の側面に塗布し、電極層形成ペースト付き未焼成ハニカム構造部を得る。電極層形成ペーストを調合する方法、及び電極層形成ペーストをハニカム成形体に塗布する方法については、公知のハニカム構造体の製造方法に準じて行うことができるが、電極層をハニカム構造部に比べて低い電気抵抗率にするために、ハニカム構造部よりも金属の含有比率を高めたり、金属粒子の粒径を小さくしたりすることができる。
【0061】
柱状ハニカム構造体の製造方法の変更例として、工程A1において、電極層形成ペーストを塗布する前に、ハニカム成形体を一旦焼成してもよい。すなわち、この変更例では、ハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を作製し、当該ハニカム焼成体に、電極層形成ペーストを塗布する。
【0062】
工程A2では、電極層形成ペースト付き未焼成ハニカム構造部を焼成して、柱状ハニカム構造体を得る。焼成を行う前に、電極層形成ペースト付き未焼成ハニカム構造部を乾燥してもよい。また、焼成の前に、バインダ等を除去するため、脱脂を行ってもよい。焼成条件としては、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気において、1400~1500℃で、1~20時間加熱することが好ましい。また、焼成後、耐久性向上のために、1200~1350℃で、1~10時間、酸化処理を行うことが好ましい。脱脂及び焼成の方法は特に限定されず、電気炉、ガス炉等を用いて焼成することができる。
【0063】
工程A3では、柱状ハニカム構造体上の電極層の表面に、導電性材料のペーストを塗布する。ここで、下地層を形成するための上述の導電性材料のペーストは、第1の層及び第2の層、或いは、第3の層など、複数の層で下地層を形成するため、各層の材料が所望の金属粒子含有量または所望の個数平均粒径となるように調製する。
【0064】
このように調製した各導電性材料のペーストを曲面印刷機などで所定の配置となるように順に積層するように塗布し、これを乾燥した後、焼成することで、複数の層で構成された下地層を形成する。導電性材料のペーストとしては、まず始めに、金属粉(NiCr系材料、ステンレス等の金属粉)と酸化物粉(Cd、アルミナ、ムライト等の酸化物粉)を体積割合で金属比率20~85体積%、酸化物粉を15~80体積%で混合し、セラミック原料を調製する。次いで、このセラミック原料に対してバインダを1質量%、界面活性剤を1質量%、水を20~40質量%加えることにより、下地層形成ペーストを調製することができる。また、下地層は、導電性材料を溶射によって、所定の配置、形状となるように形成してもよい。
【0065】
また、後述のように、金属電極の下地層への溶接を、超音波溶接で実施するのであれば、下地層を形成するための導電性材料のペーストは一種類のものを塗布するのみでよい。超音波溶接によれば、金属電極側の下地層の金属粒子が微粒化されて溶接され、金属電極側に第1の層と電極層側に第2の層とに界面を分けた下地層を形成しやすくなる。
【0066】
次に、下地層上に、金属電極を溶接または溶射により固定する。溶接及び溶射の方法については、以下に詳細に説明する。溶接方法としては、超音波溶接またはレーザー溶接が溶接面積の制御及び生産効率の観点から好ましい。
【0067】
溶射による固定方法としては、例えば、下地層が形成された柱状ハニカム構造体上に櫛状電極を配置し、各下地層の位置に合わせて、穴を開けた溶射マスクをハニカム構造体上に乗せ、下地層上にのみ溶射されるように表面を覆うようにして、溶射マスク上から溶射材を溶射して溶射材を堆積させて、固定層を形成する方法が挙げられる。この固定層によって、櫛状電極の各電極層を下地層の外表面に固定する。なお、各電極部は下地層と電気的に接続されるため、固定層は、各電極と下地層と直接接触させなくてもよい。溶射材としては、例えば、NiCrAlYとムライトの混合溶射材が挙げられる。
溶接による固定方法としては、例えば、下地層が形成された各ハニカム構造体上に櫛状電極を配置し、各櫛状電極と下地層が重なった部分について、超音波溶接またはレーザー溶接する方法が挙げられる。超音波溶接によれば、金属電極と下地層とを摩擦力によって面で接合することができ、また、上述の下地層を形成するための導電性材料のペーストが一種類であっても、当該摩擦によって、下地層の上部の金属粒子が細かくなり、金属粒子の粒径が小さい上層と、相対的に大きい下層との2層構造(第1の層と第2の層)に形成されやすい。超音波溶接を行う際の静荷重は、ハニカム構造体の強度の90%以下とすることが好ましい。超音波溶接を行う際の静荷重が、ハニカム構造体の強度の90%以下であると、超音波振動時にハニカム構造体に加わる応力による破損を抑制することができる。また、レーザー溶接を行う際のレーザースポット径としては、0.5~3.0mmの範囲が挙げられる。
【0068】
(3.排気ガス浄化装置)
上述した本発明の実施形態に係る電気加熱式担体は、排気ガス浄化装置に用いることができる。当該排気ガス浄化装置は、電気加熱式担体と、当該電気加熱式担体を保持する缶体とを有する。排気ガス浄化装置において、電気加熱式担体は、エンジンからの排気ガスを流すための排気ガス流路の途中に設置される。缶体としては、電気加熱式担体を収容する金属製の筒状部材等を用いることができる。
【0069】
(4.セラミックス-金属接合体)
図7に、本発明の実施形態に係るセラミックス-金属接合体20の断面模式図を示す。セラミックス-金属接合体20は、導電性セラミックスで構成された本体21と、本体上に配設された、金属粒子及びセラミックスで構成された下地層26と、下地層26を介して、本体と接続されている金属部材24とを備える。下地層26は、少なくとも、第1の層26aと、第1の層26aに隣接する第2の層26bとを有する。第1の層26aにおける金属粒子の含有量、および第2の層26bにおける金属粒子の含有量は、30体積%以上80体積%以下であり、下地層26の厚み方向の断面において、第1の層26aにおける金属粒子の個数が、第2の層26bにおける金属粒子の個数に対して、単位面積当たり、1.2倍以上である。
【0070】
セラミックス-金属接合体20は、セラミックスと金属とが上述のように下地層26によって接合された構造物であれば、特に限定されず、どのような形態であってもよい。また、下地層26を構成する第1の層26aと、第1の層26aに隣接する第2の層26bとは、それぞれ本発明の実施形態で示した電気加熱式担体10の第1の層16a、第2の層16bと同様の構成を有し、下地層26の厚み方向の断面において、第1の層26aにおける金属粒子の個数は、第2の層26bにおける金属粒子の個数に対して、単位面積当たり、1.2倍以上である。すなわち、下地層26は、一方の層が他方の層に比べて金属粒子の個数が1.2倍以上と異なる2層構成となっている。このような構成によれば、一方の、金属粒子の個数が1.2倍以上と異なる層(第1の層26a)が、他方の層(第2の層26b)に隣接しているため、下地層26と金属部材24との間に温度差によってクラックが発生したとしても、当該クラックの進展が当該2層の境界面で止まり、クラックの拡大が抑制される。また、当該境界面が存在することで、クラックが発生し難くなる。
【0071】
セラミックス-金属接合体20の下地層26は、本発明の実施形態で示した電気加熱式担体10の下地層16と同様に、さらに第3の層を有してもよく、さらに第4の層など、複数の層を有してもよい。
【実施例】
【0072】
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を例示するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0073】
(1.円柱状の坏土の作製)
炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを80:20の質量割合で混合してセラミックス原料を調製した。そして、セラミックス原料に、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材として吸水性樹脂を添加すると共に、水を添加して成形原料とした。そして、成形原料を真空土練機により混練し、円柱状の坏土を作製した。バインダの含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに7質量部とした。造孔材の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに3質量部とした。水の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに42質量部とした。炭化珪素粉末の平均粒子径は20μmであり、金属珪素粉末の平均粒子径は6μmであった。また、造孔材の平均粒子径は20μmであった。炭化珪素粉末、金属珪素粉末及び造孔材の平均粒子径は、レーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。
【0074】
(2.ハニカム乾燥体の作製)
得られた円柱状の坏土を碁盤目状の口金構造を有する押出成形機を用いて成形し、セルの流路方向に垂直な断面における各セル形状が正方形である円柱状ハニカム成形体を得た。このハニカム成形体を高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥し、両底面を所定量切断して、ハニカム乾燥体を作製した。
【0075】
(3.電極層形成ペーストの調製)
金属珪素(Si)粉末、炭化珪素(SiC)粉末、メチルセルロース、グリセリン、及び水を、自転公転攪拌機で混合して、電極層形成ペーストを調製した。Si粉末、及びSiC粉末は体積比で、Si粉末:SiC粉末=40:60となるように配合した。また、TaSi2粉末、Si粉末、及びSiC粉末の合計を100質量部としたときに、メチルセルロースは0.5質量部であり、グリセリンは10質量部であり、水は38質量部であった。金属珪素粉末の平均粒子径は6μmであった。炭化珪素粉末の平均粒子径は35μmであった。これらの平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。
【0076】
(4.電極層形成ペーストの塗布及び焼成)
次に、この電極層形成ペーストを曲面印刷機によって、ハニカム乾燥体に対して適切な面積及び膜厚で塗布し、さらに熱風乾燥機で120℃、30分乾燥した後、ハニカム乾燥体と共にAr雰囲気にて1400℃で3時間焼成し、柱状ハニカム構造体とした。
【0077】
(5.下地層形成ペーストの調製)
金属粉(NiCr系材料、ステンレス等の金属粉)と酸化物粉(Cd、アルミナ、ムライト等の酸化物粉)を体積割合で金属比率20~85%、酸化物粉を15~80%で混合し、セラミック原料を作製した。このセラミック原料に対してバインダを1質量%、界面活性剤を1質量%、水を20~40質量%加えてペースト原料を作製した。
【0078】
(6.下地層形成ペーストの塗布及び焼成)
上記の下地層形成ペーストを、曲面印刷機によって、柱状ハニカム構造体の電極層上に塗布した。続いて、熱風乾燥機で120℃、30分乾燥した後、Ar雰囲気にて1100℃で1時間焼成した。
【0079】
ハニカム構造体は、底面が直径100mmの円形であり、高さ(セルの流路方向における長さ)が100mmであった。セル密度は93セル/cm2であり、隔壁の厚みは101.6μmであり、隔壁の気孔率は45%であり、隔壁の平均細孔径は8.6μmであった。電極層の厚みは0.3mmであり、各下地層の厚みは0.2mmであった。ハニカム構造部、電極層及び下地層と同一材質の試験片を用いて400℃における電気抵抗率を四端子法により測定したところ、それぞれ5Ωcm、0.01Ωcm、0.001Ωcmであった。
【0080】
(7.電極の固定)
溶接による固定方法:
実施例1、3、5、6については、下地層が形成された各ハニカム構造体上に櫛状電極(金属電極)を配置し、各櫛状電極と下地層が重なった部分について、超音波溶接を行った。これらの実施例に係るサンプルの顕微鏡による断面観察の結果、電極層側から櫛状電極側に向かって順に、表1に示すようなA層(第2の層)及びB層(第1の層)が形成されていた。
図8に、実施例1に係るサンプルの顕微鏡による断面観察写真を示す。
実施例2、4については、電極層側から櫛状電極側に向かって順に、表1に示すようなA層(第2の層)及びB層(第1の層)を形成した各ハニカム構造体上に櫛状電極を配置し、φ0.5mmの径でレーザー溶接した。
実施例9については、電極層側から櫛状電極側に向かって順に、表1に示すようなA層(第2の層)、B層(第1の層)及びC層(第3の層)を形成した各ハニカム構造体上に櫛状電極を配置し、φ0.5mmの径でレーザー溶接した。
実施例7については、金属比率が30体積%、金属粒子数が20個/mm
2、平均金属粒径が50μmの下地層と、その上に形成された金属比率が30体積%、金属粒子数が40個/mm
2、平均金属粒径が20μmの下地層とを形成したハニカム構造体を作製し、このハニカム構造体上に櫛状電極を配置し、各櫛状電極と下地層が重なった部分に超音波溶接を行った。実施例7に係るサンプルの顕微鏡による断面観察の結果、表1に示すようなA層(第3の層)、B層(第2の層)及びC層(第1の層)が形成されていた。
実施例8については、金属比率が30体積%、金属粒子数が30個/mm
2、平均金属粒径が20μmの下地層と、その上に形成された金属比率が30体積%、金属粒子数が40個/mm
2、平均金属粒径が20μmの下地層とを形成したハニカム構造体を作製し、このハニカム構造体上に櫛状電極を配置し、各櫛状電極と下地層が重なった部分に超音波溶接を行った。実施例8に係るサンプルの顕微鏡による断面観察の結果、表1に示すようなA層(第3の層)、B層(第2の層)及びC層(第1の層)が形成されていた。
比較例1~3では、表1に示すようなA層を形成したハニカム構造体を作製し、このハニカム構造体上に櫛状電極を配置し、φ0.5mmの径でレーザー溶接した。
【0081】
(8.金属電極固定試験)
上記の方法にて1対の金属電極を固定したハニカム構造体に対して金属電極固定試験を行った。金属電極固定試験は一対の櫛状電極間に50Vの電圧を印加して60秒行った。下地層-櫛状電極間(20箇所)のクラック・破壊の有無を目視で確認し、クラック・破壊がない場合は「接合OK」とした。
また、通電時の金属電極及び下地層部分の温度を測定し、金属電極及び下地層の熱膨張率からひずみ量を計算することで、金属電極及び下地層それぞれに発生する応力値を算出し、これらを用いて「金属電極-下地層発生応力差(MPa)」を算出した。
【0082】
【0083】
(9.考察)
表1の結果から、下地層を1層のみ形成した比較例1~3では、金属電極-下地層発生応力差が大きく、クラックが20箇所の評価において16個以上も発生していた。
一方、実施例1~9は、A層における金属粒子の含有量、及び、B層における金属粒子の含有量が、30体積%以上80体積%以下であり、下地層の厚み方向の断面において、一方の層における金属粒子の個数が、他方の層における金属粒子の個数に対して、単位面積当たり、1.2倍以上であった。このため、金属電極-下地層発生応力差が抑制され、クラック発生数が少なかった。また、実施例1から、実施例7、8及び9まで番号順に、クラック発生数がより良好に抑制されていることがわかった。
【符号の説明】
【0084】
10 電気加熱式担体
11 柱状ハニカム構造体
12 外周壁
13a、13b 電極層
14a、14b 金属電極
15 電極部
16 下地層
16a、26a 第1の層
16b、26b 第2の層
16c 第3の層
18 セル
19 隔壁
20 セラミックス-金属接合体
21 本体
24 金属部材
26 下地層