(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
B60H1/00 102F
B60H1/00 102P
B60H1/00 102L
(21)【出願番号】P 2021568471
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2020048360
(87)【国際公開番号】W WO2021137296
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2020000002
(32)【優先日】2020-01-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(72)【発明者】
【氏名】長野 秀樹
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-001820(JP,A)
【文献】特開2008-081029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空気流路(33)が設けられているハウジング(31)と、車室(11)内及び/又は前記車室(11)の外側から導入した空気を前記空気流路(33)へ送風する第1ファン(32)と、前記空気流路(33)に設けられたエバポレータ(41)と、前記エバポレータ(41)の下流に設けられたヒータコア(42)と、前記エバポレータ(41)と前記ヒータコア(42)との間に設けられて前記ヒータコア(42)へ向かう空気と前記ヒータコア(42)を迂回する空気との比率を調整する温度調整ドア(43)と、を備えた空調装置本体部(30)と、
前記ハウジング(31)のうち前記ヒータコア(42)の下流側に接続されて、前記空調装置本体部(30)により温度が調整された調和空気を前記車室(11)の後席へと導く後席用ダクトユニット(50)であって、前記調和空気を吸い込み吐出する第2ファン(52)と、後席向けダクト(51)とを有する後席用ダクトユニット(50)と、を含み、
前記後席用ダクトユニット(50)は、前記第2ファン(52)のファンケース(71)に収納された遠心ファン(72)を回転軸(81)によって直接に駆動する第2ファン駆動用モータ(80)を有する、車両用空調装置(20)において、
前記空気流路(33)のうち、前記第1ファン(32)の下流で且つ前記温度調整ドア(43)の上流からモータ冷却のための空気を導入するように、前記ハウジング(31)に開口した空気導入口(106)と、
前記空気導入口(106)から導入した前記モータ冷却のための空気を前記第2ファン駆動用モータ(80)へ導く導入路(107)と、
前記第2ファン駆動用モータ(80)を通過した後の前記モータ冷却のための空気を前記車室(11)へ放出する放出路(108)と、
を備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記空気導入口(106)は、前記エバポレータ(41)の下流に位置している、ことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記空気導入口(106)は、前記ハウジング(31)のなかの、底板(111)に設けられている、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記導入路(107)の少なくとも一部(107a)は、前記ハウジング(31)に一体に構成されている、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記第2ファン駆動用モータ(80)は、前記回転軸(81)に沿って延びる筒状のモータケース(84)を有し、
前記モータケース(84)は、前記回転軸(81)の軸線方向の一方側に設けられた空気流入孔(101)と、前記回転軸(81)の軸線方向の他方側に設けられた空気流出孔(102)と、を有し、
前記後席用ダクトユニット(50)は、前記モータケース(84)の少なくとも外周面を全周にわたって覆うカバー(90)を有し、
前記カバー(90)は、前記導入路(107)と前記空気流入孔(101)との間を連通可能な第1開口(104)と、空気流出孔(102)と前記放出路(108)との間を連通可能な第2開口(105)と、を有している、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室の内気や外気を取り込んで温度を調節するための、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用自動車等の車両は、車室の内気や外気の温度を調節(調和)する車両用空調装置を搭載している。一般的な車両用空調装置の空調装置本体部は、車両の前部に搭載されている。この空調装置本体部において温度が調節された(温度が調和された)空気は、ダクトによって、前席向け領域や後席向け領域といった、車室の複数の領域に空調風を吹き出すことが可能である。ところが、後席向けダクトは、前席向けダクトよりも長いので、通路抵抗が大きい。前席向けダクトからの吹き出し量と、後席向けダクトからの吹き出し量と、に差がでてしまう。
【0003】
これに対し、前席向けダクトからの吹き出し量と、後席向けダクトからの吹き出し量との均等を図る技術が、例えば特許文献1によって知られている。特許文献1で知られている車両用空調装置は、主ファン(第1ファン)の他に、空調装置本体部と後席向けダクトとの間に補助ファン(第2ファン)を介在したというものである。補助ファンによって後席向けダクトに送風する空気量を増大させることにより、後席向け領域への空調不足を解消することができる。
【0004】
空調装置本体部によって温度が調節された空気は、補助ファンに導入される。このため、補助ファンを駆動するモータは、空調装置本体部から流れてきた温風の温度の影響を受ける。特に、冬季は車両用空調装置を車室内の暖房として使用する。空調装置本体部のヒータコアによって高温になった温風が、補助ファンに導入される。高温の温風がモータの近傍を流れるので、モータは熱影響を受けやすい。モータの耐久性を高めるには、改良の余地がある。
【0005】
車両用空調装置において、ファン駆動用モータを空冷する技術としては、例えば特許文献2によって知られている。特許文献2で知られている車両用空調装置は、空調装置本体部に外気を導入するファンを有し、このファンを駆動するためのモータを、空冷するというものである。外気は、ファンの吸引力によって、ファンケース内に導入される。導入された外気の一部は、モータケースの外周面に誘導されることによって、モータを空冷する。モータを空冷した後の外気は、導入された外気の残りと共にファンに吸引され、空調装置本体部のヒータコアやエバポレータへ吐出される。ヒータコアやエバポレータによって温度が調節された空調風は、車室の複数の領域に吹き出す。
【0006】
特許文献2のファンは、特許文献1の主ファンに相当する。つまり、特許文献2で知られている車両用空調装置は、特許文献1で知られている車両用空調装置の補助ファンを、備えていない。
【0007】
特許文献1の補助ファンを駆動するモータが、空調装置本体部のヒータコアによって高温になった温風の熱影響を受けないようにするためには、前記特許文献2の技術を採用することが考えられる。その場合には、空調装置本体部からの温風と空冷用の外気との、両方を補助ファンによって吸引するとともに、空冷用の外気によって補助ファン駆動用のモータを空冷することに、なってしまう。ここで、モータを冷却するために導入した空気は、モータを通り、補助ファンの吹出流路に流出する。すなわち、モータを冷却するために導入した空気は、空調装置本体部で温調された空気と混合して、温調された空気の温度の変動が懸念される。これでは、補助ファンにより吹き出される調和空気の温度を適正に制御することができず、現実的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2004-161059号公報
【文献】特開2006-177289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、第1ファン(主ファン)を備えた空調装置本体部と、後席向けダクトと、この後席向けダクトを通流する調和空気の風量を確保するために後席向けダクトに連結される第2ファン(補助ファン)とを有する車両用空調装置において、第2ファンを駆動するモータの冷却を行うことができる技術を、提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下の説明では、本発明の理解を容易にするために添付図面中の参照符号を括弧書きで付記するが、それによって本発明は図示の形態に限定されるものではない。
【0011】
本発明によれば、
内部に空気流路(33)が設けられているハウジング(31)と、車室(11)内及び/又は前記車室(11)の外側から導入した空気を前記空気流路(33)へ送風する第1ファン(32)と、前記空気流路(33)に設けられたエバポレータ(41)と、前記エバポレータ(41)の下流に設けられたヒータコア(42)と、前記エバポレータ(41)と前記ヒータコア(42)との間に設けられて前記ヒータコア(42)へ向かう空気と前記ヒータコア(42)を迂回する空気との比率を調整する温度調整ドア(43)と、を備えた空調装置本体部(30)と、
前記ハウジング(31)のうち前記ヒータコア(42)の下流側に接続されて、前記空調装置本体部(30)により温度が調整された調和空気を前記車室(11)の後席へと導く後席用ダクトユニット(50)であって、前記調和空気を吸い込み吐出する第2ファン(52)と、後席向けダクト(51)とを有する後席用ダクトユニット(50)と、を含み、
前記後席用ダクトユニット(50)は、前記第2ファン(52)のファンケース(71)に収納された遠心ファン(72)を回転軸(81)によって直接に駆動する第2ファン駆動用モータ(80)を有する、
車両用空調装置(20)において、
前記空気流路(33)のうち、前記第1ファン(32)の下流で且つ前記温度調整ドア(43)の上流からモータ冷却のための空気を導入するように、前記ハウジング(31)に開口した空気導入口(106)と、
前記空気導入口(106)から導入した前記モータ冷却のための空気を前記第2ファン駆動用モータ(80)へ導く導入路(107)と、
前記第2ファン駆動用モータ(80)を通過した後の前記モータ冷却のための空気を前記車室(11)へ放出する放出路(108)と、
を備えることを特徴とする車両用空調装置が提供される。
【0012】
好ましくは、前記空気導入口(106)は、前記エバポレータ(41)の下流に位置している。
【0013】
好ましくは、 前記空気導入口(106)は、前記ハウジング(31)のなかの、底板(111)に設けられている。
【0014】
好ましくは、前記導入路(107)の少なくとも一部(107a)は、前記ハウジング(31)に一体に構成されている。
【0015】
好ましくは、
前記第2ファン駆動用モータ(80)は、前記回転軸(81)に沿って延びる筒状のモータケース(84)を有し、
前記モータケース(84)は、前記回転軸(81)の軸線方向の一方側に設けられた空気流入孔(101)と、前記回転軸(81)の軸線方向の他方側に設けられた空気流出孔(102)と、を有し、
前記後席用ダクトユニット(50)は、前記モータケース(84)の少なくとも外周面を全周にわたって覆うカバー(90)を有し、
前記カバー(90)は、前記導入路(107)と前記空気流入孔(101)との間を連通可能な第1開口(104)と、空気流出孔(102)と前記放出路(108)との間を連通可能な第2開口(105)と、を有している。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、第1ファンを備えた空調装置本体部と、後席向けダクトと、この後席向けダクトを通流する調和空気の風量を確保するために後席向けダクトに連結される第2ファンとを有する車両用空調装置において、第2ファンを駆動するモータの冷却を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例1による車両用空調装置が搭載された車両を模式的に表した図である。
【
図2】
図1に示される空調装置本体部の断面構成を示し、第2ファン駆動用モータの内蔵物を省略した断面図である。
【
図3】
図2に示される第2ファンと第2ファン駆動用モータと空冷装置の断面図である。
【
図5】
図4に示される第2ファン駆動用モータ及び空冷装置の拡大図である。
【
図7】
図6に示されるハウジング及び第1導入路の断面図である。
【
図8】実施例2による車両用空調装置の第2ファン及び空冷装置の断面図(
図4の断面位置に相当)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、添付図に示した形態は本発明の一例であり、本発明は当該形態に限定されない。説明中、左右とは車両に乗車した乗員を基準として左右、前後とは車両の進行方向を基準として前後を指す。また、図中Frは前、Rrは後、Leは乗員から見て左、Riは乗員から見て右、Upは上、Dnは下を示している。
<実施例1>
【0019】
図1~
図7を参照しつつ、実施例1の車両用空調装置20を説明する。
図1に示されるように、乗用自動車等の車両10は、車室11内の空気の温度を調節(調和)する車両用空調装置20を搭載している。この車両用空調装置20は、空調装置本体部30と後席用ダクトユニット50とを含む。空調装置本体部30は、第1ファン32から送風された空気の温度を調節(調和)して、複数の吹出口(吐出部)から車室11へ供給することが可能である。後席用ダクトユニット50は、空調装置本体部30によって温度が調節された空気の一部を、後席12へ向かって送ることが可能である。以下、車両用空調装置20について詳しく説明する。
【0020】
図2に示されるように、空調装置本体部30は、車両10の前部に配置されており、ハウジング31と第1ファン32とエバポレータ41とヒータコア42と温度調整ドア43とを備える。ハウジング31の内部には、空気流路33が設けられている。
【0021】
第1ファン32は、ハウジング31の上流側に位置した主ファン(上流側ブロア)であって、車室11の内側及び/又は外側から導入した空気を、ハウジング31の空気流路33へ送風するものである。
【0022】
第1ファン32の吸い込み側には、インテーク部34が設けられている。このインテーク部34は、内気導入口35と外気導入口36と内外切り替えドア37とフィルタ38とを備えている。内気導入口35は、車室11の内側から空気を導入可能である。外気導入口36は、車室11の外側から空気を導入可能である。内外切り替えドア37は、内気導入口35と外気導入口36との開閉を切り替える。フィルタ38は、内気導入口35や外気導入口36から導入された空気を清浄化する。
【0023】
第1ファン32の吐出側は、ダクト39によって、ハウジング31の空気流路33のなかの、上流部に接続されている。なお、
図2では第1ファン32は、説明の理解を容易にするために、ハウジング31に対して車両前方に配置された状態を示している。実際には、第1ファン32は、ハウジング31に対して車幅方向に配置されている。
【0024】
エバポレータ41(冷却用熱交換器41)とヒータコア42(加熱用熱交換器42)と温度調整ドア43とはハウジング31に内蔵、つまり空気流路33に設けられている。エバポレータ41とヒータコア42とは、この順に空気流路33の上流側から下流側へ向かって直列に配置されている。つまり、ヒータコア42は、エバポレータ41の下流に設けられている。
【0025】
温度調整ドア43は、空気流路33のなかの、エバポレータ41とヒータコア42との間に設けられており、ヒータコア42へ向かう空気と、このヒータコア42を迂回する空気と、の比率を調整する。ハウジング31の空気流路33は、3つの流路44~46に区分けされている。温度調整ドア43は、3つの流路44~46を切り替え可能であって、例えば第1ドア43aと第2ドア43bによって構成される。
【0026】
以下、3つの流路44~46のことを、第1流路44と第2流路45と第3流路46とに区別して、説明する。第1流路44は、エバポレータ41を通過して冷却された空気を、ヒータコア42によって加熱する流路(ヒータコア42へ向かう流路)である。第2流路45は、第1流路44を迂回して、ハウジング31の上方へ向かう流路である。第3流路46は、第1流路44を迂回して、ハウジング31の下方へ向かう流路である。デフロスタ吐出部47は、第1流路44及び/又は第2流路45からの空気をフロントガラスへ向かって送風可能である。サイドベント吐出部48とセンタベント吐出部49とは、第1流路44及び/又は第2流路45からの空気を前席13に着座している乗員の上半身に向かって送風可能である。
【0027】
さらに、ハウジング31は、前席13(
図1参照)に着座している乗員の脚部に向かって送風可能な、フロントフット吐出口(図示せず)を備えている。
【0028】
後席用ダクトユニット50は、ハウジング31のなかの(ハウジング31のうち)、ヒータコア42の下流側に接続されており、空調装置本体部30により温度が調整された調和空気を車室11の後席12へと導く。この後席用ダクトユニット50は、2つの後席向けダクト51(一方のみを示す)と、ハウジング31からの調和空気を吸い込み吐出する第2ファン52と、この第2ファン52のファンケース71に収納された遠心ファン72を回転軸81(モータ軸81)によって直接に駆動する第2ファン駆動用モータ80と、を有する。第2ファン52は、例えば、ハウジング31から調和空気を吸い込んで後席向けダクト51へ吐出する。
【0029】
図1及び
図2に示されるように、2つの後席向けダクト51は、車両10の車幅中央に位置するとともに、第2ファン52の吐出口52aから後席12へ向かって延びている。
【0030】
図3及び
図4に示されるように、第2ファン52は、ハウジング31の下流側に位置した補助ファン(下流側ブロア)である。この第2ファン52は、車幅中央に位置する吸引ケース60(中央ケース60)と、この吸引ケース60に対して車幅方向の両端に設けられた2つのファン部70A,70Bと、からなる。
【0031】
吸引ケース60は、車幅方向に延びる概ね円筒状の部材であって、中央に吸引口61を有するとともに、両端に隔壁62A,62Bを有している。吸引口61は、ハウジング31の後席用吐出口63に、フランジ64,65によって接続されている。各隔壁62A,62Bは、略中央にファン吸込口66,66を有している。以下、2つの隔壁62A,62Bの一方を「第1隔壁62A」といい、他方を「第2隔壁62B」という。
【0032】
2つのファン部70A,70B同士は、吸引ケース60を介して互いに向かい合う、いわゆる左右対称の構成である。以下、2つのファン部70A,70Bの一方を「第1ファン部70A」といい、他方を「第2ファン部70B」という。
【0033】
第1ファン部70Aは、一端が閉鎖されたファンケース71(スクロールケース71)と、このファンケース71の内部に回転可能に収納されている遠心ファン72とを有する。ファンケース71は、開口した端を第1隔壁62Aに被せた状態で、吸引ケース60に取り付けられている。以上の説明から明らかなように、第2ファン(52)のファンケース(71)に遠心ファン(72)が収納されている。第2ファン部70Bは、第1ファン部Aと同様の構成であり、同一符号を付して、説明を省略する。第2ファン部70Bのファンケース71は、開口した端を第2隔壁62Bに被せた状態で、吸引ケース60に取り付けられている。
【0034】
空調装置本体部30(
図2参照)によって温度が調整された調和空気は、後席用吐出口63から吸引口61を通って吸引ケース60に入り、この吸引ケース60から第1ファン部A及び第2ファン部70Bに吸引される。
【0035】
2つのファン部70A,70Bは、1つの第2ファン駆動用モータ80によって直接に駆動される。この第2ファン駆動用モータ80は、1つの回転軸81(モータ軸81)がモータケース84の両端から車幅方向へ突き出ている、いわゆる両軸モータの構成であって、吸引ケース60に収納且つ支持されている。この回転軸81の両端部には、2つのファン部70A,70Bの各遠心ファン72,72が、直接に取り付けられている。
【0036】
より詳しく説明すると、
図5に示されるように、第2ファン駆動用モータ80は、回転軸81と、この回転軸81に設けられたロータ82と、このロータ82の外周囲を包囲するように位置しているステータ83と、ロータ82及びステータ83を収納しているモータケース84と、を主要な構成要素とした、いわゆるインナロータ型ブラシ付きモータの構成である。
【0037】
回転軸81は、モータケース84に軸受85,85によって回転可能に支持されている。モータケース84は、回転軸81に沿って延びる筒状の部材である。具体的には、このモータケース84は、一端に底板86aを有した円筒状(カップ状)のケース本体86と、このケース本体86の開放端を塞ぐキャップ87とによって構成されている。このモータケース84には、第2ファン駆動用モータ80の回転を制御する回路やブラシ88を備えた、基盤89が収納されている。この基盤89は、モータケース84内において、回転軸81の軸線方向の一方側、例えばキャップ87側に位置している。
【0038】
モータケース84の少なくとも外周面は、全周にわたってカバー90により覆われている。このカバー90は、円筒状のカバー本体91と、このカバー本体91の一端に有した底板92と、からなるカップ状の部材である。円筒状を呈しているモータケース84の外周面と、円筒状を呈しているカバー本体91の内周面と、の間には、隙間が無いことが好ましい。隙間から逃げる空気を、極力少なくすることができるからである。
【0039】
図2に示されるように、前記車両用空調装置20は、第2ファン駆動用モータ80を空冷するための空冷装置100を備えている。この空冷装置100は、ハウジング31の空気流路33を流れ、且つ温度が調和される前の空気の一部によって、第2ファン駆動用モータ80を冷却するものである。以下、空冷装置100について詳しく説明する。
【0040】
図5に示されるように、モータケース84は内外貫通した、それぞれ少なくとも1つずつの、空気流入孔101と空気流出孔102とを有する。空気流入孔101は、モータケース84の円筒部分(ケース本体86の円筒部分)のなかの、回転軸81の軸線方向の一方側、例えばキャップ87側に設けられている。空気流出孔102は、モータケース84のなかの、回転軸81の軸線方向の他方側、例えば底板86aに設けられている。好ましくは、
図3に示されるように、空気流入孔101及び空気流出孔102は、それぞれ複数個であって、回転軸81を中心として放射状に等ピッチで配列される。
【0041】
図3及び
図5に示されるように、カバー90のカバー本体91には、モータケース84の複数の空気流入孔101を囲うように、カバー本体91から径外方へ膨出した膨出部103が設けられている。この膨出部103の内部には、第1空間部104が形成されている。この第1空間部104は、複数の空気流入孔101を介して、モータケース84の内部と連通しており、複数の空気流入孔101へ空気を分配するための、分配ヘッダの役割を果たすことが可能である。以下、この第1空間部104のことを、適宜「第1開口104」と言い換える。
【0042】
図5に示されるように、モータケース84の底板86aと、カバー90の底板92との間には、一定間隔の第2空間部105を有する。この第2空間部105は、モータケース84の複数の空気流出孔102を介して、モータケース84の内部と連通しており、複数の空気流出孔102から流出してきた空気を集合するための、集合ヘッダの役割を果たすことが可能である。以下、この第2空間部105のことを、適宜「第2開口105」と言い換える。
【0043】
このように、カバー90は、第1開口104と第2開口105とを有している。
【0044】
図2に示されるように、さらに空冷装置100は、空気導入口106と導入路107と放出路108とを備える。
【0045】
空気導入口106は、空気流路33のうち、第1ファン32の下流で且つ温度調整ドア43の上流からモータ冷却のための空気を導入するように、ハウジング31に開口している。好ましくは、この空気導入口106は、エバポレータ41の下流に位置している。より好ましくは、この空気導入口106は、ハウジング31の底板111に設けられている。一例を挙げると、空気導入口106は、底板111が下方へ膨出することにより、この底板111に形成された窪み部分によって構成される。
【0046】
図3に示されるように、導入路107は、空気導入口106から導入したモータ冷却のための空気を、第2ファン駆動用モータ80へ導く。カバー90に有している第1開口104は、導入路107と空気流入孔101との間を連通可能である。第2ファン駆動用モータ80は、ハウジング31の後方に位置するとともに、このハウジング31の底板111よりも下位に位置している。このため、導入路107は、空気導入口106から第1開口104へ向かって後下方へ傾斜しつつ直線状に延びている。
【0047】
図3及び
図6に示されるように、この導入路107の少なくとも一部107a(第1導入路107a)は、ハウジング31に一体に構成されている。このため、導入路107の構成を簡単にすることができる。導入路107の残りの部分107b(第2導入路107b)は、カバー90に一体に構成されている。
【0048】
この導入路107は、導入管112によって構成された内部通路である。導入管112は、第1導入路107aを構成する第1導入管112aと、第2導入路107bを構成する第2導入管112bと、からなる。
【0049】
詳しく述べると、第1導入路107a及び第1導入管112aは、ハウジング31の底板111に沿って、ハウジング31の後席用吐出口63のフランジ64(第1フランジ64)まで延びている。そして、第1導入管112aの先端部は、第1フランジ64の貫通孔64aとなっている。
【0050】
図7に示されるように、ハウジング31は、少なくとも車幅方向に二分割された分割品の組み合わせ構造からなる。第1導入管112aは、ハウジング31の分割面113,114に位置することによって、車幅方向に二分割されている。一方の分割面113は、他方の分割面114へ向かって突出した凸状部115を有する。他方の分割面114は、凸状部115が嵌合可能な凹状溝116を有する。凸状部115は凹状溝116に嵌合している。凸状部115の先端と凹状溝116の底との間には、シール部材117が圧縮状態で収容されている。この結果、ハウジング31と第1導入路107aの、各分割部分はシールされる。
【0051】
図3に示されるように、第2導入路107bは、カバー90の第1開口104から、吸引ケース60の吸引口61のフランジ65(第2フランジ65)まで延びている。つまり、第2導入管112bは、カバー90の膨出部103から第2フランジ65まで延びている。第2導入管112bの先端部は、第2フランジ65の貫通孔65aに挿入されている。
【0052】
このような構成としたので、第1フランジ64と第2フランジ65とを面接合するだけで、各導入管112a,112b同士を容易に接続することができる。
【0053】
第1フランジ64と第2フランジ65との接合面は、シート状のパッキン118によってシールされている。このため、第1導入路107aと第2導入路107bとの合わせ面もパッキン118によってシールされる。
【0054】
図5に示されるように、放出路108は、第2ファン駆動用モータ80を通過した後のモータ冷却のための空気を車室11へ放出する。この放出路108は、放出管119によって構成された内部通路であって、例えばカバー90に一体に設けられる。カバー90に有している第2開口105は、空気流出孔102と放出路108との間を連通可能である。
【0055】
次に、
図2及び
図4を参照しつつ、空冷装置100の作用を説明する。空気流路33のうち、第1ファン32の下流で且つ温度調整ドア43の上流を流れている空気の一部は、空気導入口106から導入路107を通って、第1開口104に入る。第1開口104に入った空気は、モータケース84の空気流入孔101へ入り、先に基盤89周りを冷却しつつ、ロータ82とステータ83とブラシ88を冷却する。冷却した後に、モータケース84の空気流出孔102から出て、第2開口105に入る。第2開口105に入った空気は、放出路108から車室11へ放出される。
【0056】
実施例1の車両用空調装置20の説明をまとめると、次の通りである。
図2に示されるように、第1ファン32の下流で且つ温度調整ドア43の上流から導入した、モータ冷却のための空気(モータ冷却用空気)によって、第2ファン駆動用モータ80を冷却するとともに、この第2ファン駆動用モータ80を冷却した後の空気を大気に放出する。このため、第2ファン駆動用モータ80は、ヒータコア42によって高温になった温風の熱影響を受けない。第1ファン32を備えた空調装置本体部30と、後席向けダクト51と、この後席向けダクト51を通流する調和空気の風量を確保するために後席向けダクト51に連結される第2ファン52とを有する車両用空調装置20において、モータ冷却用空気によって、第2ファン駆動用モータ80を効率よく冷却することができる。しかも、モータ冷却用空気は車室11に直接放出されることから、後席向けダクト51を通流する調和空気と混合されないため、車両用空調装置20のシステム全体に影響を及ぼすことはない。また、放出路108は、
図2や
図4から理解されるように、前席近傍の空間にてモータ冷却空気を車室11に放出するから、特に後席近傍の空間の温度に影響を及ぼすことがない。
【0057】
さらには、空気導入口106は、エバポレータ41の下流に位置している。このため、エバポレータ41により冷却された内気や外気(モータ冷却用空気)によって、第2ファン駆動用モータ80を効率よく冷却することができる。
【0058】
さらには、第2ファン駆動用モータ80は、カバー90によって覆われている。このため、第2ファン駆動用モータ80は、ヒータコア42によって高温になった温風に、直接には晒されない。第2ファン駆動用モータ80は、ヒータコア42によって高温になった温風の熱影響を、より一層回避することができる。
【0059】
しかも、
図5に示されるように、モータ冷却用空気は、導入路107と、カバー90の第1開口104とを通り、空気流入孔101からモータケース84の内部へ流入して、第2ファン駆動用モータ80の内部を冷却する。第2ファン駆動用モータ80の内部を冷却した後のモータ冷却用空気は、モータケース84の空気流出孔102から、カバー90の第2開口105と、放出路とを通って、大気に放出される。このため、モータ冷却用空気によって、第2ファン駆動用モータ80の内部の全体を、きめ細かく且つ効率よく冷却することができる。第2ファン駆動用モータ80の耐久性を、十分に高めることができる。
【0060】
ここで、空気導入口106をハウジング31のなかの、底板111に設けた理由について説明する。
【0061】
図1に示されるように、空調装置本体部30は車両10の前部、例えばインストルメントパネル14の内部に配置されている。このインストルメントパネル14の下方には、車室11の前席13に着座する乗員の足元スペースを確保することが好ましい。このため、空調装置本体部30の底面、特にハウジング31の底板111は、車室11の床面15よりも高く設定される。一方、後席向けダクト51は、運転席と助手席との間を車両前後方向に延びている。乗員の足元スペースを確保するために、後席向けダクト51の下面51aは、車室11の床面15に概ね接する高さに設定される。このため、第2ファン52はハウジング31の後下方に位置している。第2ファン駆動用モータ80は、ハウジング31の底板111よりも下位に位置している。
【0062】
このような空調装置本体部30及び後席用ダクトユニット50の配置において、基本的には、
図2に示される空気導入口106はモータ冷却のための空気を導入するものであるから、ハウジング31のなかの、底板111以外に設けることは可能である。
【0063】
しかし、
図1及び
図2に示されるように、ハウジング31を含む空調装置本体部30は、車両10の前部のなかの限られた狭いスペースに、配置することが求められる。しかも、この空調装置本体部30は、第1ファン32から送風された空気の温度を調節(調和)して、複数の吹出口(吐出部)から車室11内に供給する機能を十分に備える必要がある。従って、空調装置本体部30の設計の自由度は、限定されたものにならざるを得ない。このような厳しい条件下において、ハウジング31の側面や上面に空気導入口106を設けたのでは、現状でも狭いスペースのなかに、空気導入口106から第2ファン駆動用モータ80まで、導入路107を通すことは、省スペースの観点やコストの観点からも、得策ではない。なぜなら、他の部材と干渉することなく導入路107を通すには、この導入路107を複雑な構成にせざるを得ないからである。
【0064】
これに対し、本発明の発明者は、上記の課題を解決するためには、
図2に示されるように、ハウジング31の底板111の下方に唯一余裕のあるスペースを有効利用すればよいことを、知見した。このため、空気導入口106を、ハウジング31の底板111に設けることにした。従って、底板111の下方に、短い導入路107を通すことができるので、省スペースの観点やコストの観点から極めて有利である。これが、空気導入口106をハウジング31の底板111に設けた理由である。
【0065】
次に、
図8を参照しつつ、実施例2の車両用空調装置220を説明する。
<実施例2>
【0066】
図8は、実施例2による車両用空調装置220の後席用ダクトユニット250周りの断面構成を示し、上記
図4の断面位置に相当する。
【0067】
実施例2の車両用空調装置220は、上記
図1~
図7に示される実施例1の後席用ダクトユニット50を、
図8に示される後席用ダクトユニット250に変更したことを特徴とする。その他の基本的な構成については、上記実施例1による車両用空調装置20と共通する。実施例1による車両用空調装置20と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0068】
実施例2の後席用ダクトユニット250の第2ファン252は、
図4に示される第1ファン部70Aと第2ファン部70Bのいずれか一方のみ、例えば第2ファン部70Bを有している。つまり、この第2ファン252は、吸引ケース260と、この吸引ケース260に対して車幅方向の一端に設けられた1つのファン部70Bと、からなる。このため、後席向けダクト51も1つのみである。
【0069】
吸引ケース260は、上記実施例1の吸引ケース60(
図4参照)の代わりに用いる部材であって、吸引口61を有するとともに、車幅方向の一端にのみ隔壁62B(第2隔壁62B)を有している。
【0070】
第2ファン駆動用モータ80は、1つのファン部70Bのみを駆動する。実施例2では、第2ファン駆動用モータ80は吸引ケース260に収納される必要がない。つまり、第2ファン駆動用モータ80は、吸引ケース260の外部に配置されるとともに、例えばファンケース71に支持される。このため、第2ファン駆動用モータ80は、ヒータコア42(
図2参照)によって高温になった温風に晒されることはなく、従って、この温風の熱影響を直接に受けることはない。第2ファン駆動用モータ80の耐久性を高める上で、有利である。
【0071】
実施例2による車両用空調装置220は、上記実施例1の車両用空調装置20と同様の効果を発揮することができる。
【0072】
なお、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、各実施例に限定されるものではない。
例えば、第1ファン32は、エバポレータ41の上流側に位置する構成に限定されるものではなく、エバポレータ41の下流側に位置する構成であってもよい。
また、第2ファン52,252は、ハウジング31からの調和空気を吸い込み吐出する構成であればよい。つまり、第2ファン52,252は、ハウジング31から調和空気を吸い込んで後席向けダクト51へ吐出する構成に限定されるものではなく、例えば、後席向けダクト51の下流側に接続する構成を含む。
また、第2ファン駆動用モータ80は、インナロータ型ブラシ付きモータの構成に限定されるものではなく、例えばアウタロータ型モータやブラシレスモータの構成であってもよい。
また、空気流入孔101及び空気流出孔102は、モータケース84に設けられていればよく、モータケース84のなかの特定の位置に限定されるものではない。
また、第1開口104は、導入路107と空気流入孔101との間を連通可能であればよい。第2開口105は、空気流出孔102と放出路108との間を連通可能であればよい。
また、この車両用空調装置20,220は、
図1に示すような前席と後席とからなる、いわゆる2列シートの車両だけでなく、前席、第2列席、第3列席とからなる、いわゆる3列シートの車両に搭載されてもよい。このとき、後席用ダクトユニット50は、第2列席の空間に調和空気を供給するように設けられる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の車両用空調装置20,220は、乗用自動車等の車両10に搭載するのに好適である。
【符号の説明】
【0074】
10 車両
11 車室
12 後席
20 車両用空調装置
30 空調装置本体部
31 ハウジング
32 第1ファン
33 空気流路
41 エバポレータ
42 ヒータコア
43 温度調整ドア
50 後席用ダクトユニット
51 後席向けダクト
52 第2ファン
80 第2ファン駆動用モータ
81 回転軸(モータ軸)
84 モータケース
90 カバー
101 空気流入孔
102 空気流出孔
104 第1開口(第1空間部)
105 第2開口(第2空間部)
106 空気導入口
107 導入路
108 放出路
220 車両用空調装置
250 後席用ダクトユニット
252 第2ファン