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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】直接車両エンゲージメントシステム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/123 20060101AFI20240229BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20240229BHJP
   G16Y 40/60 20200101ALI20240229BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G08G1/123 A
G16Y10/40
G16Y40/60
G08G1/00 Z
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021568640
(86)(22)【出願日】2020-01-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-22
(86)【国際出願番号】 US2020014922
(87)【国際公開番号】W WO2020236228
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-01-14
(31)【優先権主張番号】62/849,520
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519397541
【氏名又は名称】チェイス,アーノルド
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェイス,アーノルド
【審査官】宮本 礼子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/077638(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0357898(US,A1)
【文献】特開2017-151494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G06Q 10/00-99/00
G16Y 10/40
G16Y 40/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接車両エンゲージメントシステムであって、
車両と関連付けられたビーコンと、
モバイル機器と、
を備え、
前記ビーコンは、利用可否状態信号を送信するように構成され、前記利用可否状態信号は、前記車両が有料で利用可能かどうかを示し、
前記モバイル機器は、前記ビーコンから前記利用可否状態信号を直接受信し、前記直接車両エンゲージメントシステムが利用可能な車両に直接エンゲージするように構成され、
前記モバイル機器は、カメラと、ディスプレイと、を備え、前記モバイル機器は、前記カメラによる検出結果に基づいて、前記ディスプレイ上に動画を動的に表示するように構成され、
前記モバイル機器は、前記利用可否状態信号に基づいて、前記ディスプレイ内の前記車両を強調表示および/または注釈表示するように構成される、
直接車両エンゲージメントシステム。
【請求項2】
前記ディスプレイは、タッチスクリーンであり、前記モバイル機器は、ユーザが前記タッチスクリーン上の前記車両を選択したときに、有料の前記車両と予備的にエンゲージするように構成される、
請求項1に記載の直接車両エンゲージメントシステム。
【請求項3】
前記車両と関連付けられたレシーバをさらに含み、前記レシーバは、正式なエンゲージメントのために確認用コードを受信するように構成される、
請求項2に記載の直接車両エンゲージメントシステム。
【請求項4】
前記レシーバは、無線通信を介して前記モバイル機器から、または光学的認識を介して前記モバイル機器から、または前記車両上または前記車両内のインタフェースを介した手動入力によって前記ユーザから、前記確認用コードを受信するように構成される、
請求項3に記載の直接車両エンゲージメントシステム。
【請求項5】
前記ビーコンは、前記車両の所属会社を送信するように構成され、前記モバイル機器は、前記所属会社を、前記ディスプレイ上の前記車両に注釈表示するように構成される、
請求項1に記載の直接車両エンゲージメントシステム。
【請求項6】
前記モバイル機器は、フィルタパラメータを保存するように構成され、前記モバイル機器は、前記フィルタパラメータに基づいて、前記ディスプレイ上の前記車両をグレーアウトまたは対象外にするようにさらに構成される、
請求項1に記載の直接車両エンゲージメントシステム。
【請求項7】
前記フィルタパラメータは、目的地の住所を含む、
請求項6に記載の直接車両エンゲージメントシステム。
【請求項8】
前記フィルタパラメータは、前記車両の車種、前記車両のカテゴリ、前記車両のサイズ、前記車両の乗車定員、前記車両の座席構成、前記車両の利用可能な稼働範囲、前記車両の充電レベル、前記車両のガソリンレベル、または特別な対応の有無を含む、
請求項6に記載の直接車両エンゲージメントシステム。
【請求項9】
前記ビーコンは、前記利用可否状態信号を、デジタル変調された赤外線および/または視覚的信号として送信するように構成される、
請求項1に記載の直接車両エンゲージメントシステム。
【請求項10】
前記利用可否状態信号が、前記車両が有料で利用可能であることを示している場合、前記モバイル機器は、無線周波数送信を介して前記車両にエンゲージメント信号を送信して、前記車両を呼び出すように構成される、
請求項1に記載の直接車両エンゲージメントシステム。
【請求項11】
前記ビーコンは、前記モバイル機器が送信した前記エンゲージメント信号を受信すると、前記車両が利用不可であることを示すように前記利用可否状態信号を変更し、所定の時間内に送迎の手配が確認されなかった場合、前記車両が有料で利用可能であることを示すように前記利用可否状態信号を変更するように構成される、
請求項10に記載の直接車両エンゲージメントシステム。
【請求項12】
複数のビーコンをさらに備え、
前記ビーコンの各々は、車両に関連付けられ、
前記ビーコンは、前記複数のビーコンのうちの1つであり、
前記ビーコンの各々は、前記利用可否状態信号を送信するように構成され、前記利用可否状態信号は、関連付けられた前記車両がそれぞれ有料で利用可能かどうかを示し、
前記モバイル機器は、特定の範囲において前記利用可否状態信号の各々を受信するように構成される、
請求項1に記載の直接車両エンゲージメントシステム。
【請求項13】
所望の車両と関連付けられた前記ビーコンによって送信された前記利用可否状態信号が、前記所望の車両が有料で利用可能であることを示している場合、前記モバイル機器は、ユーザの選択に基づいて、前記複数のビーコンに関連付けられた前記所望の車両と直接エンゲージするように構成される、
請求項12に記載の直接車両エンゲージメントシステム。
【請求項14】
前記モバイル機器は、前記車両に対する送迎の割り当てのために中央オペレーションセンターやサードパーティの仲介業者と通信することなく、有料の前記車両とエンゲージするように構成される、
請求項1に記載の直接車両エンゲージメントシステム。
【請求項15】
前記モバイル機器の位置から前記車両をユーザが視認できないときに、前記モバイル機器は、前記利用可否状態信号を受信するように構成される、
請求項1に記載の直接車両エンゲージメントシステム。
【請求項16】
前記モバイル機器の位置から前記車両を視認できないときに、前記モバイル機器は、前記車両と予備的にエンゲージするように構成される、
請求項15に記載の直接車両エンゲージメントシステム。
【請求項17】
カメラおよびディスプレイを含むモバイル機器を備える直接車両エンゲージメント装置であって、
前記モバイル機器は、車両のビーコンが送信した利用可否状態信号を直接受信し、前記直接車両エンゲージメント装置が利用可能な車両に直接エンゲージするように構成され、
前記モバイル機器は、前記カメラによる検出結果に基づいて、前記ディスプレイ上に動画を動的に表示するように構成され、
前記モバイル機器は、前記利用可否状態信号に基づいて、前記ディスプレイ上の前記車両を強調表示および/または注釈表示するように構成される、
直接車両エンゲージメント装置。
【請求項18】
前記利用可否状態信号が、前記車両が有料で利用可能であることを示している場合、前記モバイル機器は、前記ディスプレイ上の前記車両を緑色で強調表示するように構成され、および/または前記利用可否状態信号が、前記車両が利用不可であることを示している場合、前記モバイル機器は、前記ディスプレイ上の前記車両を赤色で強調表示するように構成される、
請求項17に記載の直接車両エンゲージメント装置。
【請求項19】
前記利用可否状態信号が、前記車両が有料で利用可能であることを示している場合、前記モバイル機器は、前記ディスプレイ上の前記車両をチェックマークで注釈表示するように構成され、および/または前記利用可否状態信号が、前記車両が利用不可であることを示している場合、前記モバイル機器は、前記ディスプレイ上の前記車両を「X」印で注釈表示するように構成される、
請求項17に記載の直接車両エンゲージメント装置。
【請求項20】
前記モバイル機器は、前記ディスプレイ上の前記車両を、前記車両の所属会社および/または前記車両のカテゴリで注釈表示するように構成される、
請求項17に記載の直接車両エンゲージメント装置。
【請求項21】
直接車両エンゲージメントシステムにおいて車両と直接エンゲージする方法であって、
前記車両にそれぞれ関連付けられた複数のビーコンが利用可否状態信号を送信するステップであって、前記利用可否状態信号の各々は、対応する前記車両が有料で利用可能かどうかを示す、利用可否状態信号を送信するステップと、
カメラおよびディスプレイを含むモバイル機器が前記複数のビーコンのそれぞれのビーコンからそれぞれの前記利用可否状態信号を直接受信し、前記直接車両エンゲージメントシステムが利用可能な車両に直接エンゲージするステップと、
前記カメラによる検出に基づいて、前記モバイル機器により、前記ディスプレイ上に動画を表示するステップであって、前記動画は、それぞれの前記利用可否状態信号に基づく前記ディスプレイ上の各車両と関連付けられた強調表示および/または注釈表示を有するステップと、
所望の前記車両の前記ビーコンが送信した前記利用可否状態信号によって有料で利用可能であることが示されている所望の前記車両を、前記モバイル機器のユーザが選択するステップと、
前記モバイル機器が、有料の前記所望の車両と予備的にエンゲージするステップと、
を含む、
方法。
【請求項22】
前記予備的にエンゲージするステップの後に、前記所望の車両の前記ビーコンが、利用不可であることを示す利用可否状態信号を送信するステップをさらに含む、
請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年5月17日に出願された米国仮特許出願第62/849,520号の優先権を主張する。その全文は、参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般的に、直接車両エンゲージメント(direct vehicle engagement)システム、装置および方法に関し、より詳細には、エンドユーザのために車両を割り当てるまたは手配する仲介業者を必要とすることなく、地理的エリア内にある利用可能なライドヘイリング(ride-hail)またはライドシェアリング(ride-share)車両をリアルタイムで選択してその車両とエンゲージするための直接車両エンゲージメントシステム、装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、「Uber」、「Lyft」や多くの配車サービスなどの、料金を払えば利用できる「有料(for-hire)」のライドヘイリングまたはライドシェアリング事業者の事業は、ユーザがライドヘイリングサービスに連絡して送迎(trip)を手配し、その結果、将来の指定された時間で、ユーザが要求した乗車場所に、会社選択の車両が派遣されるという「事前手配済み」の送迎を中心としてきた。ユーザの乗車後、派遣された車両は、ライドヘイリングサービスを介してユーザが送迎を手配したときに予め選択した、予め指定された目的地への送迎を続ける。このように、送迎依頼、車両マッチングおよび指定場所への派遣は最終的に達成されるが、効率とタイミングの両方の観点から、理想的でないことが多い。多くの場合、送迎依頼時にライドヘイリング要求を完全に満たすことができる利用可能な車両は、依頼者を通り過ぎながら、特定の会社から、または別の会社やサービスから利用可能であることが識別されていないか、利用可能な車両が依頼された送迎を満たすことに関心がないかその能力がないか、のいずれかの場合がある。
【0004】
乗客がスポーツイベントやコンサートなどからの帰りの便が必要な場合などでは、特にイベントの終了時刻が予測できないか不明であると、そのような送迎を適切に予め設定することは現実的ではなく、不可能である。例えば、上記の例では、ユーザは、いつそのような車両が乗車場所に到着する必要があるかを正確に知ることができないため、帰りの便を手配することは困難である。その結果、所定の場所からの「帰り」の送迎は、イベントが実際に終了するか、終了しそうになるまで、ライドヘイリングサービスを介して手配することができない場合が多い。これは、ライドヘイリングの到着を遅延させるだけでなく、何百台または何千台もの車両を実質的に同時に利用する必要があるため、混沌とした非効率的な乗車状況となり、物流処理の遅延、利用可能な車両の不足や特定の乗車場所に「群がる」車両の発生などの問題を生じさせる。さらに、スポーツイベントやコンサートなどの大勢の人が参加するイベントでは、「特定」のライドヘイリングサービスや有料のサービスを介した利用可能な車両が不足する恐れがあり、特定のライドヘイリングサービスで車両が利用可能になるまで待つのに長い時間がかかる。これらの問題は、通常、ユーザにとって非常に難しく、非効率的であり、苛立たしい予約体験をもたらす。さらに、多数の車両が同時に、またはほぼ同時に乗車場所に集結し、乗客がそれぞれ多数の依頼車両の中から自分の車両を特定しようとする努力が続くと、ユーザはさらに苛立つことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既存のライドヘイリングサービスおよび方法では、将来の送迎依頼のための車両に依頼をしてその車両とエンゲージすることに限界があるため、エンドユーザが中央オペレーションセンターや他のサードパーティの仲介業者を介してそのような送迎を最初に設定する必要性(それに伴って将来の正確な乗車時間を指定する必要性)を回避することができ、且つユーザが特定の地理的エリア内にある複数の利用可能な未割り当ての車両の中から特定の車両を選択してその車両とエンゲージし、選択された車両と直接且つ即座に送迎を設定することができるシステムおよび方法が必要とされている。さらに、利用可能な未割り当ての車両を迅速に識別し、そのような車両との直接且つリアルタイムのエンゲージメントを許容するシステムおよび方法が必要とされている。さらに、車種(セダン/SUV)、車両のカテゴリ(タクシー/Uber/Lyft/個人)、車両のサイズ、車両の乗車定員、車両の座席構成、車両の利用可能な稼働範囲、車両の充電/ガソリンのレベル、送迎の料金、または特別な対応(身体障害者対応など)の有無などの、1つまたは複数の送迎設定を追加的に満たす、利用可能な未割り当ての車両をフィルタリングして識別するシステムおよび方法が必要とされている。したがって、本発明は、従来のライドシェアリングサービスおよび方法を改善し、そのような従来のライドヘイリングサービスに関連する課題および欠点を克服する、直接的な「ユーザから車両への」リアルタイムのライドヘイリングエンゲージメントシステムおよび方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、直接車両エンゲージメントシステム(DVES)、装置および方法を提供する。DVESは、近くにある有料で利用可能な未割り当ての車両からの「リアルタイム」のライドヘイリング車両識別およびエンゲージメントをユーザに直接提供することにより、従来のライドヘイリングサービスを独自に改善し、このようなサービスに一般的に関連する課題および欠点を克服する。さらに、本発明によるDVESは、基本的なライドヘイリングサービスおよび車両への依頼方法について、「アドホック」方式と「キュー」方式の2つのバリエーションを提供する。
【0007】
本発明のDVESにおいて、ユーザがライドヘイリングサービスに連絡をして、特定の車両を選択してもらい、受け入れてもらい、その場所まで送ってもらうことを含む事前手配の必要がなく、その後、ユーザから近い同じ地理的エリア内にある多数の同様の車両の中から特定の車両を検索して識別することを試みる必要もない。DVESを用いることで、ユーザから一定の範囲内にある利用可能な未割り当てのすべての車両を、利用希望の乗客がリアルタイムでその場で直接且つ遠隔から容易に識別および選択することができ、ユーザが送迎を設定するために中央オペレーションセンターや企業のコールセンターなどの「サードパーティ」の中央/現地外の制御システムと通信する必要がない。DVESを用いることで、送迎エンゲージメントに関わるすべてのプロセスを、ユーザと、そのユーザが選択した車両との間で行うことができる。DVESは、本発明によるDVES指定の機器または互換性のある機器を具備する、有料の手動運転車または自律走行車と同様に機能し得る。
【0008】
本発明による「アドホック」モードにおいて、ライドヘイリングサービスによる送迎をまだ手配していない個人(またはエンドユーザ)は、DVESを利用して、その個人に対する地理的エリア内に位置する利用可能な未割り当ての車両を識別してその車両とエンゲージすることができる。上述したように、車両のエンゲージメントはリアルタイムで行われ、ユーザは、特定の送迎依頼について車両とエンゲージして割り当ててもらうために中央オペレーションセンターやサードパーティの仲介業者を予め経由する必要がない。
【0009】
好ましい実施形態において、個人は、送迎のために利用可能な車両を識別するのを支援し、且つ利用可能な車両とのエンゲージメントを容易にする、好ましくはDVESアプリケーションが設けられたユーザモバイル機器を利用する。このようなDVESの「アドホック」な実施形態において、ユーザは、未割り当て/利用可能な「有料」の車両が向かっている領域、予め配車されている領域、または乗客の近くで走行しているおよび/または待機している領域にいるだけでよい。
【0010】
このような「有料」の車両は、「スタンドアロン」(例えば独立して)で運営されてもよく、有料のライドヘイリングサービスと関連していてもよく、会場からの移動のために車両を利用しようとしている大規模な群衆がいる会場の近くで他のライドヘイリング車両と一緒に並んでいてもよい。本発明によれば、ユーザは、もはや「有料」の車両を見つけるために特定の集積場所(すなわち、正式な指定乗車エリア)に行く必要がなく、代わりに、ユーザの現在の場所に接近しているか、その近くを通過しているか、またはその近くにある利用可能な未割り当ての車両を単に識別してその車両とエンゲージすることができる。
【0011】
一部の実施形態において、DVESは、デジタル変調された赤外線エミッタ(またはビーコンまたはシグナリングビーコン)を含み、これにより、携帯端末やその他の装置で個々の車両を区別することができるようになる。エミッタは、個別に変調された周波数で動作し、データストリームが埋め込まれているため、一般的な車両の特性(例えばタクシー、個人サービスなど)のような条件やパラメータの情報を様々に同時に送信することができる。
【0012】
本発明の一部の実施形態において、利用可能な有料のライドヘイリングまたはその他の有料の車両は、変調された赤外線(IR)または可視光ビーコンを介して信号を送信し、車両の利用可否状態、所属会社(ある場合)、車両のカテゴリや乗車定員などの特定の特徴を近くのモバイル機器に示す。さらに、ユーザが利用可能な車両を識別するために、ユーザモバイル機器に提供される様々な拡張グラフィックスを利用する。これは、ユーザモバイル機器から視覚的に近い場所にある車両の利用可否状態、および既存のライドシェアリング、ライドヘイリングまたはタクシー会社との関連性も容易に示すことができる。
【0013】
エミッタは、通常、車両の屋根に取り付けられるが、さらに高さを増すために短いマストに取り付けられてもよい。また、前方または側方に向けられた補助的なエミッタも、主ビーコンと並行して利用されてもよい。これにより、携帯端末に対する車両の送信プレゼンスと範囲を強化することができる。
【0014】
エミッタは、任意選択で様々な光学素子やシールド素子を利用してもよい。これにより、送信範囲をさらに最適化することができ、また、雪などの冬場の環境における動作を強化するために内部ヒータを組み込むことができる。他の通信/シグナリング装置を使用して、利用可能な車両とユーザモバイル機器との間で情報を送信してもよい。
【0015】
「キュー」モードにおいて、個人は、DVESを利用して、一般に指定された静的なキューエリア内の他の未割り当ての利用可能な車両群の中またはその近くにある、予め配置された利用可能な未割り当ての車両をリアルタイムで表示、選択および確認して、その車両と直接エンゲージすることができる。また、従来のタクシー乗り場や「待ち列」に類似する正式な「次の車両」の列に集結するまたはその一部である未割り当ての車両は、DVESを使用する携帯端末から直接ランダムに選択、確認およびエンゲージされ得る。DVESの「キュー」モードの動作中には、車両は、携帯端末のアプリケーション(「アプリ」)を介して利用可能な車両を容易に識別するために、利用希望ユーザの携帯端末に非可視の赤外線利用可否信号を送信することができ、また、車両は、その利用可否状態を示す視覚的なディスプレイを含むことができる。赤外線送信と視覚的送信の両方を用いることで、ユーザがユーザモバイル機器上でDVESアプリケーションを使用して車両とエンゲージすることができ、または、視覚的に利用可能であることを示している待ち列にある車両に近づいて乗車する人が車両と直接物理的にエンゲージすることができる。このように、ユーザは、サードパーティやライドヘイリング会社を利用することなく、受信したIR信号または視覚的なディスプレイのいずれかに基づいて、あるいは両方に基づいて、利用可能な車両と直接エンゲージすることができる。
【0016】
DVESアプリによって利用可能な有料の車両がエンゲージされると、その車両の利用可否状態は(赤外線と視覚的な表示の両方で)「利用不可」に変更されるため、他のユーザが同じ車両に対して重複してエンゲージしようとするのを防ぐことができる。この利用可否状態の変更は、DVESによって自動的および/または即座に実行され得る。
【0017】
DVESを介した車両との直接エンゲージメントは、リアルタイムで行われ、ライドヘイリングサービスを介することなく、また、ユーザが送迎依頼に応じて車両を割り当ててもらうために中央オペレーションセンターまたはサードパーティの仲介業者を介して最初に送迎を手配することなく、実現することができる。
【0018】
本発明によるDVESは、自律走行車との使用に最適化され得る。ここで、好ましくは、ユーザは、ユーザモバイル機器を使用してそのような自律走行車とインタラクトすることができる。より好ましくは、ユーザモバイル機器は、利用可能な車両を識別し、利用可能な車両を選択し、ユーザモバイル機器を使用して選択された車両とエンゲージするためのDVESアプリケーションを具備する。ただし、DVESは、本発明の精神と原理から逸脱することなく、同様に手動運転車との直接的且つ即座のエンゲージメントプロセスに容易に対応することができる。
【0019】
システムや運行管理者が要求された送迎のためにサービスによって選択された車両を予め割り当てる「Uber」や「Lyft」のような「従来の」ライドヘイリングシステムや配車サービスとは異なり、本発明によるDVESは、特定の車両の選択とエンゲージメントプロセスを、サードパーティのサービス特有の遅延や複雑さなしに、完全にユーザの手に委ねることができる。任意選択で、選択された利用可能な車両による自動受け入れにより、運転者による受け入れリスクに起因する遅延を回避することができる。
【0020】
通常、所有車両または契約車両を含む自社の車両群(fleet)内からの車両のみを利用する「従来の」ライドヘイリングシステムとは異なり、本発明によるDVESは、特定の車両の所有者または特定のライドヘイリングサービスによる配置に関する制限なしに、エンゲージメントプロセスにおいて同じ物理的且つ地理的エリア内で別々に所有される車両、別々に運営される車両または独立して所有される車両を無限に受け入れることができる。特に注目すべきは、DVES機器を具備するタクシーを、多くの状況でライドヘイリングサービスと機能的に同等にすることで、「従来の」タクシーサービスを大幅に強化することができるDVESの能力である。
【0021】
DVESを用いることで、対応するタクシーや「ブラックカー(無線タクシー)」の各々は、呼び出し側の依頼能力を向上させることができ(例えば、より迅速且つ安全な呼び出し)、また、呼び出し側にとっては、複数の呼び出し人の間で物理的に呼び出しを行う際に発生することが多い曖昧さや対立なしに、近くの「利用可能」なタクシーを判断して「確保」することがより容易になる。例えば、DVESでは、確認用コードが必要なため、最初にタクシーとエンゲージした正当な呼び出し人のみが、そのタクシーを利用することができる。
【0022】
本発明の実施形態による直接車両エンゲージメントシステムは、車両と関連付けられたビーコンと、モバイル機器と、を含む。ビーコンは、利用可否状態信号を送信するように構成される。利用可否状態信号は、有料の車両が利用可能かどうかを示す。モバイル機器は、利用可否状態信号を受信するように構成される。
【0023】
本発明の実施形態による直接車両エンゲージメント装置は、ディスプレイを有するモバイル機器を含む。モバイル機器は、車両のビーコンが送信した利用可否状態信号を受信するように構成される。
【0024】
本発明の実施形態による直接車両エンゲージメントシステムにおいて車両と直接エンゲージする方法は、複数の車両が利用可否状態信号を送信するステップを含む。各利用可否状態信号は、複数の有料の車両が利用可能であるかどうかを示す。また、当該方法は、モバイル機器が複数の車両の各利用可否状態信号を受信するステップと、所望の車両によって送信された利用可否状態信号が利用可能であることを示している所望の車両を、モバイル機器のユーザが選択するステップと、モバイル機器が、所望の有料の車両と予備的にエンゲージするステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
上述した目的ならびにその他の目的、特徴および利点は、図面を参照して記載した実施形態の詳細な説明からより明確になるであろう。
【0026】
上述した概要および以下の詳細な説明は、添付の図面を参照しながら読むことでよりよく理解される。本出願には、本発明を説明する目的で例示的な実施形態が図に示されているが、本出願は、図に示された特定の実施形態に限定されるものではないことに留意されたい。
図1】本発明による例示的な直接車両エンゲージメントシステム(DVES)を示す図である。
図2】本発明によるDVESの使用法を示す、ユーザモバイル機器の画面を例示的に示す図である。
図3】本発明によるDVESの追加の使用法を示す、ユーザモバイル機器の画面を例示的に示す図である。
図4】本発明による「アドホック」モードにおけるDVESの動作を説明する例示的なフロー図である。
図5】本発明によるDVESの代替的な設定を示す図である。
図6】本発明による「キュー」モードにおけるDVESの動作を説明する例示的なフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の様々な例示的な実施形態を詳細に説明する前に、本発明が本明細書に記載する特定の実施形態に限定されるものではないことに留意されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためだけに使用されるものであり、本発明の特許請求の範囲を限定するものではないことにも留意されたい。
【0028】
図において、本発明のシステムおよび方法における同様の特徴には、同様の参照符号が付されている。したがって、特定の説明が特定の図および参照番号を参照する場合があるが、これらの説明は、他の図の類似の参照番号にも等しく適用できることに留意されたい。
【0029】
本発明は、参照符号10で示す直接車両エンゲージメントシステム(DVES)を提供する。当該システム10によって、DVESアプリケーションを実行している携帯端末のユーザが、特定のエリア内に単独で、または他の有料の車両のグループの中に共に存在する任意の利用可能な「有料」の車両をランダムに選択し(または任意に選択し)、ライドヘイリングサービスとエンゲージすることなく、対象の利用可能な車両と即座にエンゲージして送迎を設定して、送迎を実行することができる。「特定のエリア」は、視覚的に認識可能なエリアであってもよく、ユーザに対して選択された物理的距離内のエリアであってもよく、ユーザに対して選択された装置の通信距離内のエリアであってもよい。DVES10および方法は、「アドホック」モードと「キュー」モードの2つの一般的なバリエーションを提供する。全体として図1に示す「アドホック」モードを用いることで、ライドヘイリング車両14のサービスとエンゲージすることを望むユーザ12は、DVES10を利用して、ユーザ12から特定のエリア内または範囲内に位置する利用可能な未割り当ての車両14を自己識別して、その車両と自己エンゲージすることができる。図5に示す「キュー」モードを用いることで、ユーザ12は、DVES10を利用して、指定されたエリア内または従来のタクシー乗り場または「キュー」に類似する正式な「次の車両」列内に予め配置されている所望の利用可能な未割り当ての車両14を識別、選択および確認し、その車両とエンゲージすることができる。いずれのモードでも、車両14とのエンゲージメントはリアルタイムで行われ、ユーザ12は、送迎依頼について車両14を割り当ててもらうために中央オペレーションセンターやサードパーティの仲介業者を経由する必要がない。
【0030】
図1を参照すると、DVES10の例示的な実施形態が示されている。本実施形態の図において、ユーザ12から一般的に視覚的に近い利用可能な未割り当ての車両14を識別して、その車両とエンゲージするためにモバイル機器16を使用する、街角にいるユーザ12が示されている。図に示すように、ユーザ12は、一般に、携帯電話、スマートフォンやタブレット端末などのユーザモバイル機器16を有する。ユーザは、ユーザモバイル機器16を使用して、DVESアプリケーション18にアクセスし、ユーザ12から視覚的に地理的に近い利用可能な未割り当ての車両14を識別することができる。説明のために、図1は、車両14a、14bおよび14cを示す。ここで、車両14aおよび14bは、現在利用可能(チェックマークで示されている)且つ未割り当てであり、車両14cは利用不可(「X」で示されている)である。
【0031】
図4のフロー図に示す例示的な実施形態である、システム10の「アドホック」モードにおいて、ユーザ12は、まず、ユーザモバイル機器16上のDVESアプリケーション18にアクセスする(ブロック100)。好ましい実施形態において、ユーザモバイル機器16のカメラが起動され、アプリケーションの「検索」モード(ブロック110)で近くにある車両14の概要を動画で提供する。好ましい実施形態において、DVESアプリケーション18は即座に実行され、すべてのユーザ12から近い地理的エリア内に位置する利用可能な未割り当ての車両14を検索し、それらを視覚的に強調表示および/または注釈表示する(ブロック120)。DVESアプリケーション18の実施形態において、ユーザ12は、ユーザモバイル機器16を様々な方向に向けて、視覚的範囲内で検索対象の地理的エリアを選択することができる。DVESアプリケーション18の「検索」モードにおいて、カメラは、ユーザの位置から地理的に近い範囲にあるすべての利用可能な未割り当ての車両14を探して識別する。すべての「利用可能」な有料の車両14は、ユーザモバイル機器16の画面またはディスプレイ20に表示されて区別される(ブロック120)。モバイル機器16は、カメラによる検出結果に基づいて、ディスプレイ20に動画を動的に表示するように構成され得る。このように、モバイル機器16は、利用可否状態信号に基づいて、ディスプレイ20上の車両14を強調表示および/または注釈表示するように構成され得る。
【0032】
車両14に関する追加の情報の詳細が、例えば、利用可否信号と共に車両14が提供したそのような車両情報に従って、画面20上で提供される。このように提供された追加の情報に基づいて、ユーザ12は、条件付きの送迎パラメータを入力することができ、DVESアプリケーション18は、所望の特性を満たさない車両を「グレーアウト」する(または対象外にする)か、または、「利用可能」であると元々指定されていた車両14の中で、事前に選択されたパラメータに一致する車両を強調表示または視覚的な拡張効果で表示する。既に特定の基準でフィルタリングされた画面内で、利用可能な車両の上に「$」、「$$」、「$$$」などの記号が表示され、最初のフィルタリングが(例えば範囲で)選択されていたいとしても、これらの記号によって、ユーザは、選択プロセスで個々の料金などをさらに考慮して、表示された車両を「さらに絞り込む」ことができる。さらに、強調表示の色を変えることで、ユーザは、例えばUber、Lyftやタクシーなどの車両サービスの種類に基づいた選択をすることができる。
【0033】
本発明の実施形態によれば、各車両14は、利用可否状態信号を送信するDVESビーコン22(またはエミッタまたはシグナリングビーコン)を含む。ビーコン22の各々は、ハウジング、レンズ、エミッタ、シールド、ヒータ、レシーバ、および信号を送受信するために必要な回路を含んでいてもよい。一部の実施形態において、ビーコン22は、レシーバを備える。一部の実施形態において、レシーバは、ビーコン22に対してスタンドアロンであるか、別個のものである。ビーコン22が送信した信号は、車両14が利用可能であるかどうかや未割り当てかどうかに関わらず、常に(または実質的に常に)送信されてもよい。好ましくは、このような信号は、デジタル変調された赤外線または他のスペクトル放射によって、および任意選択で、固定された視覚的な表示(定常的に点灯しているように見えるが、実際には、視認できないほど高速にデジタル変調されている赤色または緑色の光)によって送信される。DVESアプリケーション18は、デジタル変調された赤外線または視覚的な「利用可能」信号を積極的に送信しているすべての車両14を検索する。DVESアプリケーション18がこの信号を有する1つまたは複数の車両14を感知(または検出)すると、アプリケーション18は、ユーザモバイル機器16の画面20上でそれらの車両を強調表示してもよく、且つ/またはこの信号状態(すなわち「利用可能」な車両)を送信しているすべての車両14を注釈表示してもよく、且つ/またはこの利用可否コードを送信していない車両14(すなわち「利用不可」の車両)をグレーアウトしてもよい。また、DVESアプリケーション18は、ユーザ12から地理的に近い車両14のそれぞれの利用可否状態を示す追加の視覚的、聴覚的および/または触覚的なアラートを提供することができる(例えば、この信号を送信しており、且つ選択および送迎エンゲージメントについて「利用可能」な車両14の各々を指し示す視覚的に拡張された矢印24などの視覚的グラフィックスを、画面20上に重ねる)。この識別プロセスは、好ましくは動的であり、この信号を有する新しい車両14が利用可能になると、これらの車両14は、即座に(または実質的に即座に)ユーザモバイル機器の画面20または拡張ディスプレイに自動的に追加され、任意選択で、音声信号が鳴る。その一方で、割り当てられるか、「利用可否」コードの送信を停止する車両14の各々は、その利用可否状態が変更され、検索/識別表示プロセスからその拡張効果のグラフィック処理が削除される。
【0034】
図1を参照すると、ユーザ12は、車両14aおよび14bが選択およびエンゲージメントに利用可能であることを示す信号を車両14aおよび14bから受け取る。しかしながら、車両14cは、車両14cが現在利用不可であることを示す信号をユーザに送信する。この情報は、図2に示すように、ユーザモバイル機器16の画面20に表示され得る。車両14cが利用可能になると(例えばエンゲージしていた乗客が目的地に到着して車両14cから降車すると)、ユーザ12に送信される信号は、「利用可能」という信号に即座に(または実質的に即座に)変わる。同様に、別のユーザ12bが車両14bを選択してその車両とエンゲージすると、車両14bから送信される信号が即座に(または実質的に即座に)「利用不可」信号に変わり、ユーザモバイル機器16にはその変化が通知され、ユーザ12は、割り当て済みの車両14bを選択することができなくなる。
【0035】
「検索」モードの基本的な実施形態において、ユーザ12には、すべての利用可能な車両14を示す検索画面20が提供され得る(ブロック120)。上述したように、一部の実施形態において、ユーザ12は、異なる「フィルタリング済み」の送迎条件またはパラメータを選択して、画面20上の表示を絞り込むことができる。これにより、例えば、所望の選択された送迎条件やパラメータを満たす強調表示または注釈表示された車両14のみを表示することができる。例えば、ユーザ12は、「検索」を絞り込んで、「x」マイルを超える利用可能な移動範囲能力を有する近くにある車両14だけを表示したり、「x」個の座席数を有する車両14だけを表示したり、特定の座席レイアウトを有する車両14だけを表示したり、身体障害者用などの特別な機器を有する車両14だけを表示したり、特定のカテゴリの車両(すなわち、タクシーや個人の車両など)だけを表示したりすることができる。使用時には、ユーザ12は、検索画面とエンゲージする前に、ユーザモバイル機器16を介して、所望のフィルタパラメータを選択する。車両14は、通常、DVESビーコン22を介して、利用可否信号と共にそのようなデータを送信する。各車両14の条件および/またはパラメータは、車両の運転者(または車両が自律走行車の場合は管理者/操作者)によって事前に設定されてもよい。これは、車両14のビーコン22が送信したデータストリームに反映される。例えば、運転者、管理者または操作者は、車両14に対して、許容される最大乗客数、可能な最大/最小の送迎距離または半径、最小料金、喫煙/禁煙などの車内ポリシーなどを設定することができる。DVESアプリケーション18によって、ユーザ12は、1つまたは複数のフィルタ(例えば送迎条件またはパラメータ)を選択することができる。これは、利用可能な車両14の識別を、フィルタ要件を満たす車両14のみに制限することができる。選択された条件およびパラメータを満たす車両14のみが、選択およびエンゲージメントに利用可能であるとして、ユーザ12に表示される。
【0036】
図1に示すように、通常、車両14の各々は、DVESビーコン22を具備する。より詳細には、DVESビーコン22は、ビーコン信号の送信範囲を最大化するために、各車両14の屋根、ショートマスト、または他の高所に取り付けられ得る。内部ビーコン加熱システムを使用することで、凍り付くような気象条件下でも、品質を損なうことなくビーコン送信を行うことができる。また、DVESビーコン22は、モバイル機器16のカメラまたはレシーバによって読み取ることができる追加の変調されたデータフィールドを介して、様々な他の状態、ID、データ、料金情報または他の表示をデジタル送信するために使用されてもよい。例えば、送迎条件およびパラメータは、利用可否信号と共にDVESビーコン22から送信することができる。これにより、ユーザ12は、特定の送迎ニーズに応じて車両14を識別および選択することができる。その結果、本発明によるDVES10は、各送信サイクル中に複数のシーケンシャルデータフィールドを送信する能力を有することができる。
【0037】
DVES10の「アドホック」モードの好ましい実施形態において、ユーザ12が関心のある特定の車両14と予備的にエンゲージするために必要なことは、例えば図2に示すように、アプリケーションの「検索」モード中に画面20に表示された対象の車両14の画像で、ユーザ12がユーザモバイル機器16の携帯タッチスクリーン20をタップすることである(ブロック130)。このような選択は、所望の車両14の画像の上でのシングルタップや押下、ダブルタップか押下、または一定時間長押しなどの他の選択ジェスチャーを使用して、すなわち、任意の所望のタイプのユーザ入力を介して、実現することができる。任意の適切な選択ジェスチャーが実行されると、DVESアプリケーション18は、「検索」モードから「エンゲージメント」モードに変化し(ブロック140)、携帯用画面のグラフィック処理は、選択された車両14のみを強調表示するように変化する。ここで、例えば図3に示すように、ユーザモバイル機器16上、例えば、モバイル機器のディスプレイ画面20上の車両の画像の隣に、車両14のための固有のIDコード26が表示される。同時に、モバイル機器16の画面20に表示されている他のすべての車両14は、エンゲージメントのために選択されていないとして「グレーアウト」されることになる。
【0038】
DVES10の好ましい実施形態において、ユーザは、ユーザモバイル機器16を使用して固有の車両IDコード26を確認することで、選択された車両14と正式にエンゲージすることができる(ブロック155)。例えば、ユーザモバイル機器16は、固有の車両IDコード26の受け入れを、確認として車両14に返送することができる。代替的に、選択された車両14は、ユーザモバイル機器16に関連付けられた光学的手段を使用して直接エンゲージすることができる。これにより、モバイル機器16のディスプレイに表示された例えばバーコードやQRコードなどの画像を光学的に認識するために選択された車両14の車内または車外にある光学スキャナとやり取りすることができる。さらに、選択された車両14は、選択された車両14のRFレシーバとやり取りするように、ユーザモバイル機器16に関連付けられた任意のタイプの既知の無線周波数(RF)送信手段を使用してエンゲージされ得る。選択された車両14の光学スキャナまたはRFレシーバとのやり取りは、車両のエンゲージメントを確認するための固有の車両IDコード26を提供することを含むことができる。このように、選択された車両14は、無線通信を介してモバイル機器16から、および/または光学的認識を介してモバイル機器16から、および/または車両14上または車両14内のインタフェースを介した手動入力によってユーザ12から、固有の車両IDコード(または確認用コード)26を受信するように構成されてもよい。
【0039】
ユーザが特定の車両を最初に選択した時点(すなわち、予備的エンゲージメント)では、いくつかの関連するアクションが引き起こされてもよい。まず、選択する側の画面に表示されている車両のビーコン送信状態は、「利用可能」という信号を示す状態から、車両の確認用IDコード26を示す状態に即座に(または実質的に即座に)変わり、同時に(または実質的に同時に)、DVESの検索モードで機能している可能性のある他の携帯端末画面20に「利用可能」と表示されていた車両14を削除する(ブロック160)。また、ユーザ12によるこの最初の選択プロセスは、利用のために選択された任意の走行中の車両14を、乗客を乗せるための最も近い適切な場所で即座に(または実質的に即座に)停車させ(または停車の指示を提供し)(ブロック165)、所定の時間内に車両14と正式にエンゲージするために、ユーザが適切な確認を入力するためのタイマーを開始させてもよい(ブロック175)。好ましい実施形態において、タイマーは、例えば120秒など、事前に設定することができる。すなわち、タイマーが開始されると、ユーザは、120秒以内に、確認用コードを入力するか、(例えば光学スキャンまたはRF送信によって)送迎の手配の確認のために車両14と正式にエンゲージする必要がある(ブロック180)。適切な手段によって確認用コードが入力されると、送迎を開始することができる(ブロック190)。このような確認がないままタイマーが120秒を超えると、車両ビーコン22は、車両14が「利用可能」であることを再び示す状態に戻る(ブロック185)。手動運転車の場合、DVES10は、タクシーが物理的に呼び止められる場合と同様に、運転者が最寄りの安全な場所に車両を停車できるように、音声によるおよび視覚的な「車両エンゲージ中」のアラートを生じさせる。自律走行車の場合、車両は、同様に車を停め、乗客が物理的に車両を見つけて乗車するまでの間、四方向の点滅装置(four-way flashers)を作動させることができる。
【0040】
選択された車両14が適切な乗車場所に既に駐車されている場合、車両14が「利用可能」な状態に戻る前に、所定の時間だけ待機して、例えば乗客が車両14に乗車し、および/または固有の車両IDコード26を電子的または手動で提供し、および/または光学スキャナとやり取りし、および/またはRFレシーバとやり取りするなどして、エンゲージメントを成立させることができる(または車両と正式にエンゲージすることができる)(ブロック185)。
【0041】
DVESの選択/エンゲージメントプロセスにおける実際の送迎情報のデータ入力は、いくつかの形態をとることができる。その中でも好ましい最速の方法では、DVESアプリケーション18を実行しているユーザモバイル機器16に既に保存されている事前にロードされた目的地を選択するだけで、保存されているユーザ情報および支払い情報と共にその選択内容が、選択された車両14に送信される。代替的に、ユーザ12は、最初に車両を選択した後に、手動で目的地の情報を入力することができる。保存されたリストから、または手動でアプリケーション18に入力して、所望の目的地が選択されると、ユーザモバイル機器16は、選択された車両の固有のIDコード26を確認するため、および所望の送迎を実現するために必要となる適切な送迎情報および支払い情報をすべて送信するために、車両14にバースト送信を行う(ブロック150)。次いで、ユーザ12は、選択された車両14に近づき、車両14の車内および/または車外のいずれかに取り付けられた光学リーダの前で、ユーザモバイル機器の(QRコードまたは他の情報コードの表示を開始している)画面20をスキャンする。任意選択で、ユーザは、車両14上または車両14内に位置するキーパッドを用いて、固有の車両IDコード26を手動で入力することができる。任意選択で、音声入力などの他の方法を使用して、ユーザモバイル機器16が故障した場合、または所望の場合に、ユーザIDコード26および目的地を入力することで、車両14のエンゲージメントを有効にすることができる。
【0042】
選択された車両14がユーザ12にとって望ましい地理的に近い範囲内にある場合、且つユーザ12が即座に認識できない場合、DVESアプリケーション18は、選択された車両14に、ユーザ12を支援して誘導させる車両ロケータモードを含むことができ(ブロック170)、「検索モード」画面と同様の注釈表示画面では、エンゲージされた車両が強調表示または注釈表示される。
【0043】
本発明による実施形態において、最初にまたは予備的に車両とエンゲージするため、または送迎依頼を設定するために、ユーザ12と、中央または現地外の割り当てシステムとが通信する必要がない。代わりに、ユーザ12は、利用可能な未割り当ての車両14と直接やり取りをする。より好ましくは、ユーザ12は、ユーザモバイル機器16上でDVESアプリケーション18を使用して、利用可能な車両14を識別し、利用可能な車両14のグループの中から特定の車両14を選択し、送迎のために選択された車両14とエンゲージすることができる。一部の実施形態において、ユーザ12は、車種、車両のサイズ、車両の乗車定員、車両の座席構成、車両の利用可能な稼働範囲、車両の充電/ガソリンのレベル、および特別な対応(身体障害者対応など)の有無を含むがこれらに限定されない、特定の所望の送迎パラメータ(またはフィルタパラメータ)を識別し、本発明によるDVES10を使用して、そのように選択された送迎条件やパラメータをも満たす利用可能な未割り当ての車両14を識別することができる。
【0044】
DVES10を用いることで、ユーザ12の近くにある利用可能な未割り当ての車両14をリアルタイム且つその場で直接選択することができ、ユーザ12が送迎エンゲージメントを設定するためおよび有効にするために中央オペレーションセンターなどの「サードパーティ」の中央/現地外の制御システムと通信する必要がない。支払いなど、送迎のとり引きを最終的に成立させるためのサードパーティとの通信は、DVES10の使用によって妨げられない。DVES10を用いることで、送迎エンゲージメントに関わるすべてのプロセスを、ユーザ12と、そのユーザ12が選択した車両14との間で行うことができる。特定の車両がユーザの位置まで来るように、ユーザ12が特定のライドヘイリングサービスに事前手配する必要がなく、その後、多数の同様の車両の中から特定の車両を検索して識別することを試みる必要もない。
【0045】
DVES10の代替的な実施形態において、図6に示す例示的なフロー図に従って動作する図5に示す「キュー」モードを、車両エンゲージメントのために用いることができる。「キュー」モードを用いることで、DVESを具備する車両14が従来のタクシー乗り場に類似する正式な列に予め配置されているかどうかに関わらず、または利用可能な車両14の待機グループの一部として集結しているかどうかに関わらず、エンドユーザ12は、列に並んでいる最初の車両を選択することに制限されることなく、キューに待機する所望の車両14と直接且つ自発的にエンゲージしてもよい。
【0046】
「キュー」モードにおける好ましい動作によれば、ユーザ12は、DVESアプリケーション18にアクセスし、選択/エンゲージメントプロセスを開始する(ブロック200)。ユーザ12は、DVESアプリケーション18に送迎情報および/または支払い情報を入力する(ブロック210)。次いで、上述した「アドホック」モードのように利用可能な未割り当ての車両14を検索する代わりに、ユーザ12は、空港、バス停、電車の駅、スポーツイベント、コンサート、ショッピングモール、またはその他の人の出入りが多い場所の外にある待ち列などの、予め指定された場所で利用可能な車両14を見つけることができる。アプリケーション18は、ユーザ12を支援して、キューにおける車両14の利用可否状態を確認することができる。これにより、別のユーザ12が特定の車両14を確保していないことを確認することができる。確認後に、ユーザ12は、様々な手段を介して、利用可能な車両14とエンゲージすることができる。
【0047】
「キュー」モードを用いることで、車両14がビーコン22を介して、または車両14の別の部分を介して情報信号を発信することに加えて、車両14は、利用可能状態を示す緑色の光、または利用不可状態を示す赤色の光などの視覚的な表示28を表示することができる。これに関して、ユーザ12は、DVESアプリケーション18を使用することなく、さらにユーザモバイル機器16を必要とすることなく、車両14を有料で利用することができる。実質的に、ユーザ12が車両14とエンゲージするために必要なことは、ユーザ12が緑色の光/利用可能なビーコン状態を示している任意の車両14に近づいてそのドアを開けることだけである(ブロック220)。待機/利用可能な車両14が、その車両14のドアが開いたことおよび/または1人または複数の人が車両14に乗車したことを乗員センサが感知(または検出)すると、車両14は、その利用可否状態および色表示を即座に「利用不可」に変更して、タイマー開始後から一定期間、別のユーザ12が重複してエンゲージしようとするのを防ぐことができる(ブロック225)。
【0048】
代替的なアプローチによる車両エンゲージメントを有効にするために、ユーザ12は、車両14上または車両14内の「近距離」アンテナにユーザモバイル機器16をかざすだけで、DVESアプリケーション18から車両14にバースト送信を行う。車両14は、車両14が向かう所望の目的地の住所などの顕著な送迎情報、および送迎エンゲージメント要求を実行するために必要または望ましい他の関連情報を送信する(ブロック240)。
【0049】
任意選択で、送迎情報は、車両14に関連付けられたRFレシーバによって拾われるRF送信を介して、ユーザモバイル機器16から提供され得る。または、ユーザ12は、車両14上のタッチスクリーンを介して、または音声入力などによって、適切な送迎情報や支払いデータなどの他の任意の情報を単に手動で入力することができる。さらに、ユーザ12は、車両14上の光学リーダまたはスキャナの下にユーザモバイル機器16を保持し、これにより、QRコードまたは他の一般的に使用される視覚的コードを介して、顕著な送迎情報をDVES10に即座に入力することができる(ブロック230)。
【0050】
キューにおける車両14が選択され、予備的にエンゲージされると、選択された車両14は、ビーコンの利用可否信号を調整してその状態を自動的に「利用不可」に変更し、また、タイマーの開始後に、設定された期間だけ、その視覚的な表示を(例えば緑色から赤色へ)変更する(ブロック235)。その後、ユーザ12は、車両14と送迎情報を確認し(ブロック260)、送迎が開始される(ブロック270)。
【0051】
「有料」の車両の採用の増加により、個人の車両のための従来の駐車場の必要性が低くなるため、利用客が使用するためにますます大きな領域が設計および指定されることが想定される。これにより、利用可能な車両がより効率的に待機および/または列に並ぶことができる。キューの「列」またはエリアを適切に設計して、図5に示すように斜めまたは垂直の駐車スペースを使用することで、キュー、列、または近くの他の車両の移動性の状態における位置に関わらず、新たにエンゲージした車両14が即座に発進することができる。
【0052】
車両14は、その「利用可能」な状態を電子的に宣伝することに加えて、ビーコン22は、色の変化または他の視覚的変化を介してその「利用可否」状態を示す視覚的な表示を含むこともできる。ユーザ12が稼働しているユーザモバイル機器16にアクセスできず、DVESアプリケーション18に即座にアクセスできない場合、DVES10は、車両14上および/または車両14内のタッチスクリーンまたはキーパッドを介して手動で入力されたすべての情報を受け入れるように構成され、支払いの目的のためにクレジットカードリーダーを具備することができる。「事前予約なしの」送迎依頼に対応するために、ユーザ12が利用可能な車両のドアハンドルに触れたり引いたりすることで、車両14が予め設定された期間だけ、一時的にエンゲージ中状態になってもよい。車両14のドアが開かれない場合、および/または車両の座席の乗員センサが乗員を検出しない場合、車両14は、自動的に「利用可能」な状態に戻り、それに応じてそのような利用可否情報を送信する。
【0053】
複数の連続した送迎終了地を希望する複数人から構成される集団の場合、送迎は、アドホックに予め一括して設定することもできるし、複数の保存された場所をアドレス帳から選択して追加したり、正式なエンゲージメントの前に交互に入力して車両14に送信したりすることができる。本発明によるDVES10は、複数の乗客の間で運賃額を均等に分割すること、または複数の降車地の場合に送迎区間の費用を比例分割すること、または目的地の数に関わらず、主要なユーザ12に全額請求されることも可能である。その決定は、効率を最大化するために、車両14との正式なエンゲージメントの前に予め決定され得る。
【0054】
また、送迎の待機中に追加の降車地が動的に追加されてもよい。
【0055】
任意選択で、気象条件や他の地域的要因で携帯端末の視覚的範囲が制限される場合、DVESアプリケーション18は、携帯端末からまだ視覚的範囲内にない車両について、選択可能な近くの利用可能な車両(フィルタリング許可)のリストを表示してもよい。この場合、リストから車両を選択することで、選択を行うことができる。リストは、上述したように、フィルタパラメータに基づいて、リスト上の車両を強調表示および/または注釈表示することができる。特定の車両の予備的な選択は、車両が呼び出し側の直近の範囲(または視覚的に認識可能なエリア)の外にある間に行われてもよい。これにより、エンゲージしているユーザ以外のすべてのユーザに対して「有料で利用可能」な状態をさらに示す車両が取り除かれる。しかしながら、実際のエンゲージメントは、選択された車両が視覚的範囲内にあるときにのみ行われる。車両を最初に選択すると、「手動運転」車両の場合は選択された車両の運転者に、自律走行車の場合は車両のナビゲーションシステムに、エンゲージ側(ユーザ)の地理的座標が送信される。光通信および/または短距離無線通信の範囲を超える状況では、車両と、DVESアプリケーションを実行しているモバイル機器との両方が、セルラーまたは他の既知の通信ネットワークを利用してデータを転送し、GPSまたは他の一般に使用される位置データと共に、瞬時の位置データ(すなわち、リアルタイム位置データ)を交換することができる。
【0056】
本明細書に記載されているシステムおよび装置は、本明細書に記載されている機能を提供したり、結果を達成したりするために、必要な電子機器、コンピュータ処理能力、インタフェース、メモリ、ハードウエア、ソフトウエア、ファームウエア、論理/状態マシン、データベース、マイクロプロセッサ、通信リンク、ディスプレイ、または他の視覚的または聴覚的インタフェースを有する、コンピュータ制御されるシステムおよび装置であってもよい。
【0057】
以上、本発明の実施形態を例示および詳述する目的で説明した。上記の説明は、本発明を網羅するものでも開示された形態に限定するものでもない。上述した開示に基づいて、明らかな変形例およびバリエーションが可能である。本明細書に記載された実施形態は、本発明の原理および応用を最もよく説明するために選択され、当業者は、特定の用途に適した様々な実施形態および様々な変形例において本発明を利用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6