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特許7445682可撓な基材上に電気部品を製造するための方法および装置
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  • 特許-可撓な基材上に電気部品を製造するための方法および装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】可撓な基材上に電気部品を製造するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/12 20060101AFI20240229BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20240229BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240229BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20240229BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20240229BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20240229BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20240229BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240229BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H05K3/12 630Z
B05D7/00 K
B05D7/24 301E
B05D3/02 E
B05D3/00 D
H05K3/00 R
H01M4/04 Z
H01M4/66 A
H01M4/88 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021571747
(86)(22)【出願日】2020-05-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-05
(86)【国際出願番号】 EP2020064055
(87)【国際公開番号】W WO2020244926
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-01-17
(31)【優先権主張番号】102019114806.5
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521069238
【氏名又は名称】バリュー アンド インテレクチュアル プロパティーズ マネージメント ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】VALUE & INTELLECTUAL PROPERTIES MANAGEMENT GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベーア、カイ
(72)【発明者】
【氏名】ガイトナー、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ディエンツ、ミヒャエル
【審査官】原田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-522581(JP,A)
【文献】特開2015-131928(JP,A)
【文献】特表2016-518579(JP,A)
【文献】特開2010-087176(JP,A)
【文献】国際公開第2013/108696(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/12
B05D 7/00
B05D 7/24
B05D 3/02
B05D 3/00
H05K 3/00
H01M 4/04
H01M 4/66
H01M 4/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓であり、平坦であり、または三次元である基材上で、構造化または非構造化の電気または電子機能層のための液体またはペースト状の出発材料を塗布し、次いで前記出発材料を乾燥させるとともに、前記出発材料を焼結かつ/または硬化させることにより、前記基材上に電気または電子部品または回路を製造するための方法であって、
前記乾燥させるステップと、焼結かつ/または硬化させるステップは、800~1,500nmの間の波長範囲に振幅最大値を有し、前記基材の表面におけるパワー密度が50kW/m~1,000kW/mの間である近赤外の範囲のハロゲンスポットライト又はIR LEDの放射線を、コーティングされた前記基材の表面に短時間適用することにより行われ、
前記方法は、電池の電極または燃料電池の電極を製造するための方法として構成され、前記基材として、75μm~200μmの間の範囲内の厚さを有するポリマー膜または3μm~10μmの間の範囲内の金属膜が使用され、前記コーティングとして、10~1,000μmの間の範囲内の初期厚さと、40%~80%の間の範囲内の固形分とを有する水性または有機溶媒系の粘性ペーストが使用され、前記乾燥、焼結、かつ/または硬化のために、50~200kW/mの間の範囲内のパワー密度を有する近赤外の放射線が使用される、方法。
【請求項2】
請求項に記載の方法を実行するための装置であって、
・前記装置を通って前記可撓な基材を搬送するための搬送手段と、
・前記平坦な基材を前記出発材料でコーティングするためのコーティング手段と、
・800nm~1,500nmの間の波長範囲に振幅最大値を有し、前記基材の表面におけるパワー密度が50kW/m~1,000kW/mの間の範囲内となるように設定可能である近赤外の範囲の放射のための少なくとも1つのハロゲンスポットライト又はIR LEDを含んでおり、前記基材上の前記出発材料の層を乾燥させ、焼結し、かつ/または硬化させるための手段と
を備える装置。
【請求項3】
前記乾燥させ、焼結し、かつ/または硬化させるための手段は、NIR放射ゾーンにおいて前記出発材料の層の表面に均一でないパワー密度の所定のプロファイルを生成できるように、前記NIR放射ゾーンに配置され、かつ/または制御可能である複数のNIR放射源を含む、請求項に記載の装置。
【請求項4】
前記乾燥させ、焼結し、かつ/または硬化させるための手段は、処理温度維持ゾーンをさらに有する、請求項またはに記載の装置。
【請求項5】
NIR照射ゾーンに、空気の流れを供給するための手段が割り当てられている、請求項またはに記載の装置。
【請求項6】
空気の流れを供給するための手段および/または処理温度維持ゾーンは、前記空気の流れまたは処理温度維持ゾーンにおける温度を制御するための制御手段を有する、請求項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓であり、平坦であり、または三次元である基材上で、構造化または非構造化の電気または電子機能層のための液体またはペースト状の出発材料を塗布し、次いで出発材料を乾燥させ、焼結し、かつ/または硬化させることにより、基材上に電気または電子部品または回路を製造するための方法、ならびにこの方法を実行するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気装置またはエネルギー貯蔵システムの構成要素上、あるいは電子部品もしくはアセンブリ内で、元々は液体またはペースト状の出発材料を焼結し、あるいは硬化させることを含む機能層の製造は、長きにわたって技術水準の一部である。
【0003】
一方では、現代の電池技術の技術的および経済的重要性が劇的に増しており、この種の印刷による電子回路(いわゆる「プリンテッドエレクトロニクス」)も急速に普及してきているために、このような方法は、技術的および商業的重要性を増している。この場合に、ますます重要になる因子は、好ましくは容易に入手可能であって費用効率が高く、さらにはリサイクル可能である基材材料の使用であり、他方では、これらの新規な基材材料に適合し、好ましくは高品質の最終製品の高い歩留まりを有する処置の方法である。
【0004】
例えば電動モビリティに関して必要とされ、エネルギー生成の分野における高性能貯蔵システムの観点からも必要とされる新規な電池構造において、金属の基材膜の他に、PE、PVC、PET、もしくはPP、または紙などに基づくポリマー膜が使用される。さらに、環境および産業の安全上の理由から、水溶性コーティングを可能な限り広く使用する努力がなされてきている。同様の構成が、例えば燃料電池によって駆動される車両において将来見られるであろう燃料電池の電極について提案されている。
【0005】
コーティングの乾燥または硬化において、一方では、基材材料の温度感受性を考慮に入れなければならず、対応する乾燥プラントを通過する可能な限り高いスループット速度で、定性的に完全な(乾燥によって引き起こされる欠陥のない)コーティングを得るための努力がなされなければならない。また、乾燥プラントの製造および運転コストも、ますます大規模に使用されるようになるにつれてどんどん低くならなければならない最終製品のコストに関して、重要な役割を果たすことは言うまでもない。トンネル炉形式の既知の乾燥プラントは、これらの要件を限られた様相で満たすにすぎず、多くのスペースを必要とし、製造および運転に費用がかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、上述の要件を満たす一般的な種類の改善された方法および対応する装置を提供するという課題に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1に記載の特徴を有する方法、および請求項11に記載の特徴を有する装置によって解決される。本発明の概念の適切なさらなる発展が、それぞれの従属請求項の主題である。
【0008】
本発明は、少なくとも厚さに起因し、多くの場合には材料にも起因して温度安定性が低い基材上で出発材料を焼結し、かつ/または硬化させるために必要なエネルギーを、実質的にコーティング内で効果を生じ、基材の熱総負荷は(乾燥プロセスの時間範囲にわたって)できるだけ低いままであるようなやり方で供給するという考え方を含む。典型的なコーティング材料、とりわけ水性のコーティング材料について、振幅最大値が800nm~1,500nmの間の波長範囲にある近赤外範囲の放射が、上首尾であることが明らかになっている。この放射は、主に水性(または、溶媒含有)の溶液、乳液、およびペーストにおいて、きわめて効果的なやり方で実施される。
【0009】
さらに、本発明は、この放射を、基材に伝わるエネルギーの量、したがって基材の熱総負荷が限定的であり続けるような短時間に、基材内の所望の焼結および/または硬化が生じ得るような高いパワー密度で作用させるという考え方を含む。塗布、基材、およびコーティングの具体的事例に応じて、コーティング表面における50kW/m~1,000kW/mの間の範囲内、とくには1,000kW/mで120kW/mのエネルギー密度が、現時点において適切であると思われる。
【0010】
本発明者らの知見によれば、近赤外の放射線の曝露時間を、現在の塗布の多くについて、1秒~3秒の間、とくには2秒~20秒の間の範囲に抑えることができる。実際のところ、具体的な処理時間は、コーティングの厚さおよび性質、ならびに具体的に選択されたパワー密度に依存する。
【0011】
現時点においてきわめて有望な塗布において、基材は、ポリマー膜または紙などの温度感受性の基材であり、近赤外の放射線のパワー密度および曝露時間は、温度が材料の臨界温度を上回って上昇することがなく、とくには100℃~200℃の間の範囲内の温度を上回って上昇することがないように設定される。限界温度の具体的な値は、当然ながら材料に依存し、この限界値を保つためのパワー密度および乾燥プラントを通る基材のスループット速度の設定は、限られた回数の単純な試行によって専門家によって決定されなければならない。
【0012】
この構成における方法は、視点に富んだ応用範囲としての「プリンテッドエレクトロニクス」のさらなる発展の可能性を有する。この場合、液体の出発材料は、印刷プロセスによって基材上に選択的または点状に塗布される。これは、インクジェット印刷プロセスによってきわめて正確、迅速、かつ効率的な様相で行われる。近赤外の放射線のパワー密度および曝露時間は、選択的なコーティングにおいて、材料固有の焼結または硬化温度を上回り、とくには50~200℃の間の範囲内の温度を上回る温度が、短時間で達成されるように設定される。
【0013】
さらなる潜在的に重要な塗布においては、ペースト状の出発材料が、とくにはローラまたはブレード塗布プロセスによって、基材へと表面全体にわたって塗布され、その後に、必要に応じて(例えば、レーザによるエッチングプロセスによって)構造化される。ここでも、近赤外の放射線のパワー密度および曝露時間は、選択的なコーティングの範囲内において、材料固有の焼結または硬化温度を上回る温度が、短い時間で達成されるように設定される。この構成は、電動モビリティおよびエネルギー技術のための電池の電極、ならびに燃料電池の電極の製造の分野において、とくに重要となり得る。
【0014】
この分野において特別に提案される方法論的処置は、基材として、75μm~200μmの間の範囲内の厚さを有するポリマー膜または3μm~10μmの間の範囲内の金属膜が使用され、コーティングとして、10~1,000μmの間の範囲内の初期厚さと、40%~80%の間の範囲内の固形分とを有する水性または有機溶媒系の粘性ペーストが使用されるという事実に基づく。この場合、乾燥、焼結、および/または硬化のために、50~200、とくには70~150kW/mの間の範囲内のパワー密度を有する近赤外の放射線を使用することが意図される。「厚膜塗布」と呼ぶことができるこの塗布においては、放射の衝突を、基材およびコーティングのパラメータの関数として、時間的にも精密に制御することが好ましい。とくには、細長い平坦な基材の開始部分および終了部分において、時間的制御が、最終製品の品質およびプロセスの歩留まりにとって大いに重要である。
【0015】
「薄膜塗布」と呼ぶことができ、例えば「プリンテッドエレクトロニクス」において重要であるさらなる塗布において、コーティングは、おおむね1~20μmの間の範囲内の厚さを有するにすぎず、印刷またはスプレー(「ジェット技術」)によって基材上に塗布される。この塗布においては、必要に応じてNIR放射のパワー密度を固定的に設定して作業することが可能であり、これらは上述の値を超えてもよい。
【0016】
本発明による方法のさらなる構成において、近赤外の放射線との接触は、均一でないパワー密度の所定のプロファイルで、NIR照射ゾーン内で行われる。この場合、パワー密度プロファイルは、とくには、基材および/または出発材料の材料特性に応じて設定可能であってよい。
【0017】
このような方法論的処置によって、特定の機能層の特定の要件、および温度感受性の基材の特定の要件も、分化された様相で考慮に入れることができる。したがって、予熱段階および温度維持段階を、高いパワー密度の主乾燥段階の前または後に設定することができる。
【0018】
なお、温度維持ゾーンを、下流のプラント構成要素、とくには熱風乾燥機において、近赤外の放射線の使用とは独立して実現することもできる。
【0019】
さらなる潜在的に有利な方法論的処置において、近赤外の放射線との接触は、基材の両面から行われる。この方法論的処置は、比較的温度安定性の基材(金属膜など)が使用される場合に適すると思われる。温度感受性の基材を有する製品に使用されるように意図される場合、とくには、一方、すなわちコーティングの表面、および他方、すなわち基材の表面(裏側)について、異なるパワー密度を設定することが妥当であると思われる。
【0020】
さらなる特別な方法論的処置において、近赤外の放射線との接触は、少なくとも基材の一表面への空気の流れの接触と組み合わせられる。そのような高温の空気の流れは、とくにはコーティングの蒸発した液体成分を(例えば、適切なフィルタへと)容易かつ狙った様相で排出することを可能にする。他方で、高いパワー密度を比較的長い時間にわたって作用させる必要がある場合に、基材材料の過剰な加熱を防止することもできる。これは、比較的厚く、または物質的に要求の厳しいコーティングを充分に温めるために必要となり得る。
【0021】
とりわけ基材の両面への照射ゾーンにおける暖かい空気の供給および/または随意により設けられる熱風乾燥機における高温の空気の供給が、提供されてよく、とくには設定可能であってよい。
【0022】
本発明の装置の態様は、上記で説明した方法の態様から大部分が得られる。したがって、装置を考慮した上記の説明の繰り返しは、大部分を省略することができる。
【0023】
上記に従い、本発明による装置は、少なくとも、装置を通って可撓で平坦な基材を搬送するための搬送手段と、とくには基材の搬送の最中に、平坦な基材を出発材料でコーティングするためのコーティング手段と、800nm~1,500nmの間の波長範囲に振幅最大値を有し、基材の表面におけるパワー密度が50kW/m~1,000kW/mの間の範囲内となるように作られ、構成され、または設定可能である近赤外の範囲の放射のための少なくとも1つの放射源を含んでおり、とくには基材の搬送の最中に、基材上の出発材料の層を乾燥させ、焼結し、かつ/または硬化させるための手段とを備える。
【0024】
乾燥させ、焼結し、かつ/または硬化させるための手段は、とくには、NIR放射ゾーンにおいて、放射ゾーンにおいて均一でないパワー密度の所定のプロファイルを生成できるように配置され、かつ/または制御可能である複数のNIR放射源を含む。これを、とくには、NIR放射器が照射ゾーンの長さにわたって異なる距離および異なる反射器形状を有し、さらには/もしくはコーティングされた基材の表面の上方の異なる距離に配置され、または異なる出力の放射源であるように構成することができる。
【0025】
照射ゾーンの長さにわたって均一でないパワー密度の上述のプロファイルは、例えば、一部もしくはすべてのNIR放射源の出力を制御するための手段、または放射源の高さを可変に設定するための機械的設定手段が基材の上方に設けられることで、制御可能であってもよい。このようにして、照射ゾーンを、とくには、予熱範囲および主乾燥範囲ならびに/または主乾燥範囲および温度維持範囲へと柔軟に構成することができる。
【0026】
上述の処理温度維持ゾーンを実現するために、とくには熱風乾燥機またはトンネル炉として構成される別個の処理部を乾燥装置に設けることもできる。
【0027】
さらに、NIR照射源に、とくには関連の導気手段を有する1つ以上の換気装置など、空気の流れを供給するための手段を割り当てることができる。さらなる構成においては、これらを、空気の流れが、コーティングの表面を横切って流れた後に、コーティングの有害な溶媒成分を除去するためのろ過装置に進入し、かつ/またはエネルギー回収のための熱交換器に進入するように構成することができる。したがって、対応するろ過装置または熱交換器装置も、提案される装置の一体の一部分である。
【0028】
さらに、空気の流れを供給するための手段および/または処理温度維持ゾーンは、空気の流れまたは処理温度維持ゾーンにおける温度を制御するための制御手段を有することができる。これにより、乾燥プロセスを、さまざまな基材およびコーティングに柔軟に適応できるやり方で制御することができ、したがって複雑な構造的変換を必要とせずに、1つの同じ乾燥装置で、電気的または電子的用途のための異なる基材/コーティングの構成を処理することができる。
【0029】
本発明の利点および便宜が、部分的には図に基づいて、例示的な実施形態および態様の以下の説明に付随して生じる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明による装置の一実施形態の概略図を、縦断面の様相で示している。
図2図1によるNIR乾燥機1Aの一実施形態の概略図を示している。
図3】本発明による装置のNIR乾燥機のさらなる実施形態の概略図を、さらなるプラント構成要素と共に示している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、完成状態において電池または燃料電池の電極として機能するように意図された機能的にコーティングされた基材2のための乾燥プラント1の概念を示している。基材は、コート機(ここでは図示せず)においてブレードシステムまたはワイドスロットノズルによって50%~70%の間の典型的な固形分を有する水性または有機溶媒系の粘性ペースト2aでコーティングされた実質的に無端のAl膜またはCu膜であってよい。
【0032】
基材膜の厚さは、5~150μmの範囲内であってよく、粘性ペーストの湿潤層の厚さは、10~1,000μmの範囲内であってよい。図示の実現形態において、コーティングは、基材の表面へと片面に塗布されるが、両面がコーティングされた電池構成要素を、連続的なコーティングおよび乾燥段階にてもたらしてもよい。金属膜に代えて、大幅に大きい厚さ(例えば、100~150μmの間)を有するポリマー膜(例えば、PETフィルム)を、基材として使用してもよい。
【0033】
上述の基材を乾燥させるために、乾燥プラント1は、基材2の両側に設けられたNIR放射器(ここでは図示せず)と、矢印ViおよびVoによって象徴的に表される一体型の熱風換気とを有するNIR乾燥機1Aを備える。NIR乾燥機1Aは、さまざまに設定することができる温度プロファイルを有し、これは、NIR乾燥機の対応するパワーコントローラによって実現され、さらに熱風の流れも設定可能である。基材2の搬送方向におけるNIR乾燥機1Aの下流において、熱風乾燥機1BがNIR乾燥機1Aに直接接続され、熱風乾燥機1Bも、空気の量をさまざまに設定することができる熱風換気Vi/Voを有する。
【0034】
スペースの理由で好都合であると考えられる数メートルのプラント全長において、反射器が割り当てられた市販のNIR放射器を備えるNIR乾燥機で、乾燥プロセスの品質要件を考慮して、
既知の乾燥プラントと比較してスペースの要件およびスループットに関して大幅な利点を提供する1~2m/分の範囲のスループット速度、したがって乾燥プロセスを実現することができる。
【0035】
図2は、図1による例示的なNIR乾燥機1Aの主要な構成要素を、一例として、機能ブロック図の様相で示している。この図は、概略図として理解されるべきであり、NIR乾燥機の実際の機械的構造を示すことを意図していない。簡略化の目的で、基材2の上方の機能構成要素だけが示されている。対応する構成要素を基材の下方にも設けることができるが、対応する手段が基材の片側(コーティングされた側)だけに設けられる本発明による装置の実現形態も可能である。
【0036】
NIR乾燥機1Aは、いくつかのNIR放射器11を備え、各々のNIR放射器11は、割り当てられた反射器12を有し、パワー制御ユニット13の1つの制御出力に個別に接続されている。したがって、個々のNIR放射器11の照射パワーをパワー制御ユニット13によって別々に設定することができ、したがってNIR放射の所定のパワー密度プロファイルを、NIR乾燥機1Aの全長にわたって基材2上に実現することができる。
【0037】
空気量制御ユニット15によって制御可能な量の空気が、空気供給部14を介してNIR乾燥機1Aの入力部に進入し、コーティング2aの溶媒成分を吸着した加熱された排気が、排気出力部16を介して熱交換およびろ過ユニット17に進入する。熱交換およびろ過ユニット17において、NIR乾燥機の排気から余分な熱が抽出されて、外部での使用のために供給され、溶媒成分は、必要に応じて、環境に優しい方法でろ過され、リサイクルされる。
【0038】
図3は、本発明による方法を実施するための装置1’の一例を示しており、この装置を通って基材2を搬送するための搬送手段としての2つの搬送ローラ1C、1Eと、コーティング装置としてのブレード装置1Dとが、概略的に示されている。基材2上に塗布されたコーティング2aの焼結/硬化のために、NIR照射ゾーン1A’が、反射器12a~12gがそれぞれ取り付けられた複数のNIR放射器11a~11gによって実現される。
【0039】
NIR放射器の数および実現形態を、ここでは単に考え方を表すものとして理解すべきであることを、指摘しておく。異なる距離にある異なる反射器形状の放射器の組により、予熱ゾーン1.1、主乾燥ゾーン1.2、および温度維持ゾーン1.3が、NIR照射ゾーン1A’内に実現される。これは、基本的に同一の構造のNIR放射器の図2の文脈においてさらに上述した個別のパワー設定の代案を表す。
【0040】
本発明による装置において、長時間にわたる乾燥作業に上首尾であることが明らかになっている費用対効果に優れる棒状ハロゲンスポットライトが、NIR放射器として考えられる。しかしながら、基本的に、NIR照射ゾーンを、他の形状の放射器によって実現すること、または相応に高出力のIR LEDを有しているLEDアレイによって実現することも可能である。両方の実現形態は、当業者によく知られており、したがって、ここではさらなる説明を必要としない。
【0041】
反射器として、各々が放射器に構造的に組み合わされた個別の反射器、およびいくつかの放射器に割り当てられた一体型の反射器装置の両方が考えられる。このようなコヒーレントな反射器アセンブリにおいても、それぞれの放射器について異なる反射器形状を(図3に略図の様相で示されているように)実現することができる。
【0042】
図示されている種類の装置は、必要に応じて、用途ごとのやり方で変更されて、「プリンテッドエレクトロニクス」の分野からの製品を製造するためにも使用可能である。この場合に、基材は、例えば、材料特性に応じて約80℃~140℃の間の範囲内の限界温度を超えて加熱することが許されない紙またはプラスチック膜であり、基材は、対応する構成要素の機能に応じて、導電性インク、ペースト、または粉末であってよい。結果として、熱処理は、水または溶媒の蒸発、ペーストの焼結、ならびに粉末の溶融、および必要であれば焼結を目的とし、必要に応じて、コーティングにおいて熱化学的反応および相変態を引き起こすことも目的とする。
【0043】
実現形態は、上記で説明した例および強調された態様に限定されず、添付の特許請求の範囲の技術的範囲内に含まれる複数の変更形態でも同様に可能である。
[付記1]
可撓であり、平坦であり、または三次元である基材上で、構造化または非構造化の電気または電子機能層のための液体またはペースト状の出発材料を塗布し、次いで前記出発材料を乾燥させ、焼結し、かつ/または硬化させることにより、前記基材上に電気または電子部品または回路を製造するための方法であって、
前記乾燥させ、焼結し、かつ/または硬化させるステップは、800~1,500nmの間の波長範囲に振幅最大値を有し、前記基材の表面におけるパワー密度が50kW/m ~1,000kW/m の間である近赤外の範囲の放射線を、コーティングされた前記基材の表面に短時間適用することを含む、方法。
[付記2]
前記基材は、ポリマー膜または紙などの温度感受性の基材であり、前記近赤外の放射線のパワー密度および曝露時間は、温度が材料の臨界温度を上回って上昇することがなく、とくには100℃~200℃の間の範囲内の温度を上回って上昇することがないように設定される、付記1に記載の方法。
[付記3]
液体の出発材料が、印刷プロセスによって前記基材へと選択的に塗布され、前記近赤外の放射線のパワー密度および曝露時間は、前記選択的なコーティングの範囲内において、材料固有の焼結または硬化温度を上回り、とくには50~200℃の間の範囲内の温度を上回る温度が、短い時間で達成されるように設定される、付記1または2に記載の方法。
[付記4]
ペースト状の出発材料が、とくにはローラまたはブレード塗布プロセスによって、前記基材へと表面全体に塗布され、前記近赤外の放射線のパワー密度および曝露時間は、前記選択的なコーティングの範囲内において、材料固有の焼結または硬化温度を上回る温度が、短い時間で達成されるように設定される、付記1または2に記載の方法。
[付記5]
前記近赤外の放射線の曝露時間は、1秒~30秒の間、とくには2秒~20秒の間の範囲にあるように選択される、付記1~4のいずれか一項に記載の方法。
[付記6]
近赤外の放射線による接触は、均一でないパワー密度の所定のプロファイルにあるNIR照射ゾーンにおいて実行され、とくには、前記照射ゾーンのパワー密度のプロファイルは、前記基材および/または前記出発材料の材料特性に応じて設定可能である、付記1~5のいずれか一項に記載の方法。
[付記7]
前記近赤外の放射線による接触は、少なくとも前記基材の一表面への空気の流れの接触と組み合わせられる、付記1~6のいずれか一項に記載の方法。
[付記8]
前記基材の両面への前記照射ゾーンにおける暖かい空気の供給および/または随意により設けられる熱風乾燥機における高温の空気の供給が、提供され、とくには設定可能である、付記7に記載の方法。
[付記9]
前記近赤外の放射線による接触の後に、前記コーティングされた基材は、処理温度維持ゾーン、とくには熱風乾燥機を通って搬送される、付記1~8のいずれか一項に記載の方法。
[付記10]
電池の電極または燃料電池の電極を製造するための方法として構成され、前記基材として、75μm~200μmの間の範囲内の厚さを有するポリマー膜または3μm~10μmの間の範囲内の金属膜が使用され、前記コーティングとして、10~1,000μmの間の範囲内の初期厚さと、40%~80%の間の範囲内の固形分とを有する水性または有機溶媒系の粘性ペーストが使用され、前記乾燥、焼結、かつ/または硬化のために、50~200kW/m 、とくには70~150kW/m の間の範囲内のパワー密度を有する近赤外の放射線が使用される、付記1、2、または4~9のいずれか一項に記載の方法。
[付記11]
付記1~10のいずれか一項に記載の方法を実行するための装置であって、
・前記装置を通って前記可撓な基材を搬送するための搬送手段と、
・とくには前記基材の搬送の最中に、前記平坦な基材を前記出発材料でコーティングするためのコーティング手段と、
・800nm~1,500nmの間の波長範囲に振幅最大値を有し、前記基材の表面におけるパワー密度が50kW/m ~1,000kW/m の間の範囲内となるように設定可能である近赤外の範囲の放射のための少なくとも1つの放射源を含んでおり、とくには前記基材の搬送の最中に、前記基材上の前記出発材料の層を乾燥させ、焼結し、かつ/または硬化させるための手段と
を備える装置。
[付記12]
前記乾燥させ、焼結し、かつ/または硬化させるための手段は、NIR放射ゾーンにおいて、前記放射ゾーンにおいて前記出発材料の層の表面に均一でないパワー密度の所定のプロファイルを生成できるように配置され、かつ/または制御可能である複数のNIR放射源を含む、付記11に記載の装置。
[付記13]
前記乾燥させ、焼結し、かつ/または硬化させるための手段は、とくには熱風乾燥機として構成される処理温度維持ゾーンをさらに有する、付記11または12に記載の装置。
[付記14]
前記NIR照射ゾーンに、空気の流れを供給するための手段が割り当てられている、付記12または13に記載の装置。
[付記15]
空気の流れを供給するための手段および/または前記処理温度維持ゾーンは、前記空気の流れまたは前記処理温度維持ゾーンにおける温度を制御するための制御手段を有する、付記14に記載の装置。
【0044】
実現形態は、上記で説明した例および強調された態様に限定されず、添付の特許請求の範囲の技術的範囲内に含まれる複数の変更形態でも同様に可能である。
図1
図2
図3