(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】抗CDH6抗体及び抗CDH6抗体-薬物コンジュゲート
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240229BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
(21)【出願番号】P 2022070921
(22)【出願日】2022-04-22
(62)【分割の表示】P 2021002874の分割
【原出願日】2018-05-14
【審査請求日】2022-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2017096749
(32)【優先日】2017-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】307010166
【氏名又は名称】第一三共株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146581
【氏名又は名称】石橋 公樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113583
【氏名又は名称】北野 範子
(74)【代理人】
【識別番号】100161160
【氏名又は名称】竹元 利泰
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 敦子
(72)【発明者】
【氏名】平田 剛之
(72)【発明者】
【氏名】中村 健介
【審査官】鳥居 敬司
(56)【参考文献】
【文献】特許第6827534(JP,B2)
【文献】国際公開第2016/024195(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/057687(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00-16/46
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号4に記載のアミノ酸配列に特異的に結合し、細胞内に取り込まれる内在化能を有する、抗体又は当該抗体の抗原結合断片であって、当該抗体又は当該抗体の抗原結合断片は、
配列番号12に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号13に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号14に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3、及び、配列番号17に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号60に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号19に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3を含み、配列番号63に記載のアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域及び配列番号75に記載のアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む、抗体又は当該抗体の抗原結合断片(ただし、当該抗体又は当該抗体の抗原結合断片が、配列番号63に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域及び配列番号75に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む場合を除く。)。
【請求項2】
配列番号4に記載のアミノ酸配列に特異的に結合し、細胞内に取り込まれる内在化能を有する、抗体又は当該抗体の抗原結合断片であって、当該抗体又は当該抗体の抗原結合断片は、配列番号12に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号13に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号14に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3、及び、配列番号17に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号60に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号19に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3を含み、配列番号61の21~233番目のアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号73の20~471番目のアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖を含む、抗体又は当該抗体の抗原結合断片(ただし、当該抗体又は当該抗体の抗原結合断片が、配列番号61の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号73の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖を含む場合を除く。)。
【請求項3】
抗原結合断片がFab、F(ab’)2、Fab’及びFvからなる群から選択される請求項1又は2に記載の抗体の抗原結合断片。
【請求項4】
配列番号4に記載のアミノ酸配列に特異的に結合し、細胞内に取り込まれる内在化能を有する抗体であって、当該抗体は、
配列番号12に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号13に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号14に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3、及び、配列番号17に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号60に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号19に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3を含み、配列番号63に記載のアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域及び配列番号75に記載のアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む、抗体(ただし、当該抗体が、配列番号63に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域及び配列番号75に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む場合を除く。)。
【請求項5】
配列番号4に記載のアミノ酸配列に特異的に結合し、細胞内に取り込まれる内在化能を有する抗体であって、当該抗体は、配列番号12に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号13に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号14に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3、及び、配列番号17に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号60に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号19に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3を含み、配列番号61の21~233番目のアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号73の20~471番目のアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖を含む、抗体(ただし、当該抗体が、配列番号61の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号73の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖を含む場合を除く。)。
【請求項6】
重鎖又は軽鎖が、N-結合への糖鎖付加、O-結合への糖鎖付加、N末のプロセッシング、C末のプロセッシング、脱アミド化、アスパラギン酸の異性化、メチオニンの酸化、N末にメチオニン残基の付加、プロリン残基のアミド化、N末グルタミンもしくはN末グルタミン酸のピログルタミン酸化、及びカルボキシル末端における1つ又は2つのアミノ酸欠失からなる群より選択される1又は2以上の修飾をうけた、請求項1~5のいずれか1項に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合断片。
【請求項7】
重鎖のカルボキシル末端において1つ又は2つのアミノ酸が欠失している請求項
6に記載の抗体。
【請求項8】
2本の重鎖の双方でカルボキシル末端において1つのアミノ酸が欠失している請求項
7に記載の抗体。
【請求項9】
重鎖のカルボキシル末端のプロリン残基が更にアミド化されている請求項
6~
8のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項10】
抗体依存性細胞傷害活性を増強させるために糖鎖修飾が調節されている請求項1~
9のいずれか1項に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合断片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CDH6に結合し、内在化作用を有する抗CDH6抗体、該抗CDH6抗体の製造方法、ならびに該抗体を含む抗体-薬物コンジュゲート、該抗体-薬物コンジュゲートを含む抗腫瘍剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
カドヘリン(Cadherin)は、細胞膜表面に存在する糖タンパク質で、カルシウムイオン依存的にN末端側の細胞外ドメイン同士が結合することで、細胞間接着分子として、また細胞間相互作用を担うシグナル分子として機能する。カドヘリンスーパーファミリーの内、クラシックカドヘリンに分類される分子群は、5個の細胞外ドメイン(extracellular domain、ECドメイン)と1個の膜貫通領域、及び細胞内ドメインから構成される1回膜貫通タンパク質である。クラシックカドヘリンはアミノ酸配列の相同性から、E-カドヘリンやN-カドヘリンに代表されるタイプIファミリーと、タイプIIファミリーに分類される。
【0003】
カドヘリン6(Cadherin-6、CDH6)は、タイプIIカドヘリンファミリーに分類される、790アミノ酸からなる1回膜貫通タンパク質であり、N末端側を細胞外、C末端側を細胞内に持つ。ヒトCDH6遺伝子は1995年に初めてクローニングされ(非特許文献1)、NM_004932、NP_004923(NCBI)等のアクセッション番号により参照可能である。
【0004】
CDH6は発生期において脳や腎臓で特異的に発現しており、中枢神経系の回路形成(非特許文献2、非特許文献3)や腎臓のネフロン発生時(非特許文献4、非特許文献5)に重要な役割を担うことが報告されている。成人の正常組織では、CDH6の発現は腎尿細管や胆管上皮細胞などに限局されている。
【0005】
一方で、成人のいくつかの癌種において、腫瘍部で特異的にCDH6の発現が亢進することが知られており、ヒト腎細胞癌、特に腎淡明細胞癌では、CDH6発現と予後不良との相関や、腫瘍マーカーとしての利用可能性が報告されている(非特許文献6、非特許文献7)。ヒト卵巣癌でもCDH6の高発現が報告されている(非特許文献8)、ヒト甲状腺癌の上皮間葉変換と転移にCDH6が関与するとの報告もある(非特許文献9)。また、CDH6は、ヒト胆管癌およびヒト小細胞肺癌でも発現していることが報告されている(非特許文献12、13)。
【0006】
がんは死亡原因の上位を占め、その罹患数は人口の高齢化と共に増加することが予想されているが、未だ治療ニーズは充分に満たされていない。従来の化学療法剤は、その選択性の低さから腫瘍細胞だけでなく正常細胞に対しても傷害性を持つことによる副作用や、充分な薬剤量を投与できないことで薬剤の効果を充分に得ることが出来ないことが問題となっている。このため近年では、がん細胞に特徴的な変異や高発現を示す分子、細胞のがん化に関与する特定の分子を標的としたより選択性の高い分子標的薬や抗体医薬の開発が行われている。
【0007】
抗体は血中安定性が高く、標的抗原に特異的に結合することから副作用の軽減が期待されており、がん細胞表面に高発現している分子に対する抗体医薬が多数開発されている。抗体の抗原特異的な結合能を利用した技術の一つとして、抗体-薬物コンジュゲート(Antibody-Drug Conjugate;ADC)が挙げられる。ADCは、がん細胞表面に発現している抗原に結合し、その結合によって抗原を細胞内に内在化できる
抗体に、細胞傷害活性を有する薬物を結合させたものである。ADCは、がん細胞に効率的に薬物を送達できることによって、がん細胞内に薬物を蓄積させ、がん細胞を死滅させることが期待できる(非特許文献10、特許文献1及び2)。ADCとして例えば、抗CD30モノクローナル抗体にモノメチルアウリスタチンEを結合させたアドセトリス(商標)(ブレンツキシマブ ベドチン)がホジキンリンパ腫と未分化大細胞リンパ腫の治療薬として認可されている。また、抗HER2モノクローナル抗体にエムタンシンを結合させたカドサイラ(商標)(トラスツズマブ エムタンシン)がHER2陽性の進行、再発乳癌の治療に用いられている。
【0008】
抗腫瘍薬としてのADCに適した標的抗原の特徴としては、がん細胞表面で特異的に高発現し、正常細胞では低発現又は発現していないこと、細胞内に内在化できること、抗原が細胞表面から分泌されないことなどが挙げられる。また、ADCに適した抗体の重要な特徴としては、標的となる抗原に特異的に結合することに加えて、高い内在化能を有することが挙げられる。抗体の内在化能は標的抗原と抗体の両方の性質に依存するものであり、標的の分子構造から内在化に適した抗原結合部位を推定したり、抗体の結合強度や物性等から容易に内在化能の高い抗体を推測したりすることは困難である。このため、標的抗原に対して高い内在化能を有する抗体を取得することは、有効性の高いADCを開発する上で重要な課題となっている(非特許文献11)。
【0009】
CDH6を標的としたADCとしては、CDH6のECドメイン5(EC5)に特異的に結合する抗CDH6抗体にDM4を結合させたADCが知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】WO2014/057687
【文献】US2016/0297890
【文献】WO2016/024195
【非特許文献】
【0011】
【文献】Shimoyama Y,et al.,Cancer Research,2206-2211,55,May 15,1995
【文献】Inoue T,et al.,Developmental Biology,183-194,1997
【文献】Osterhout J A,et al.,Neuron,632-639,71,Aug 25,2011
【文献】Cho E A,et al.,Development,803-812,125,1998
【文献】Mah S P,et al.,Developmental Biology,38-53,223,2000
【文献】Paul R,et al.,Cancer Research,2741-2748,July 1,57,1997
【文献】Shimazui T,et al.,Cancer,963-968,101(5),Sep.1,2004
【文献】Koebel M,et al.,PLoS Medicine,1749-1760,5(12),e232,Dec.2008
【文献】Gugnoni M,et al.,Oncogene,667-677,36,2017
【文献】Polakis P.,Pharmacological Reviews,3-19,68,2016
【文献】Peters C,et al.,Bioscience Reports,1-20,35,2015
【文献】Goeppert B,et al.,Epigenetics,780-790,11(11),2016
【文献】Yokoi S, et al.,American Journal of Pathology,207-216,161,1,2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、CDH6に対して特異的に結合する高い内在化活性を有する抗体、該抗体を含む高い抗腫瘍活性を有する抗体-薬物コンジュゲート、該抗体-薬物コンジュゲートを用いた腫瘍に対する治療効果を有する医薬品、及び、当該抗体、抗体-薬物コンジュゲート又は医薬品を用いた腫瘍の治療方法等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討したところ、驚くべきことにCDH6の細胞外ドメイン3(本明細書中、EC3とも称する)に特異的に結合する抗体が、CDH6を発現する細胞において極めて高い内在化活性を有しADC抗体として有用であることを見出した。更に、当該抗CDH6抗体に、細胞内で毒性を発揮する薬剤を特定の構造のリンカーを介して結合させた抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートは、従来のCDH6薬物複合体よりも強い抗腫瘍活性を示すことを見出した。
【0014】
本願発明は以下の発明を包含する;
[1]配列番号4に記載のアミノ酸配列に特異的に結合し、細胞内に取り込まれる内在化能を有する、抗体又は当該抗体の機能性断片;
[2]配列番号4に記載のアミノ酸配列への結合に対して、以下の(1)~(5):
(1)配列番号53の21~233番目に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号56の20~471番目に記載のアミノ酸配列からなる重鎖を有する抗体、
(2)配列番号61の21~233番目に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号69の20~471番目に記載のアミノ酸配列からなる重鎖を有する抗体、
(3)配列番号61の21~233番目に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号73の20~471番目に記載のアミノ酸配列からなる重鎖を有する抗体、
(4)配列番号65の21~233番目に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号73の20~471番目に記載のアミノ酸配列からなる重鎖を有する抗体、及び
(5)配列番号61の21~233番目に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号77の20~471番目に記載のアミノ酸配列からなる重鎖を有する抗体、
からなる群から選択される抗体のうち少なくともいずれか1つと競合阻害活性を有する[1]に記載の抗体又は当該抗体の機能性断片;
[3]以下の(1)~(4):
(1)配列番号12に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号13に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号14に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3、
(2)配列番号22に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号23に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号24に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3、
(3)配列番号32に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号33に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号34に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3、及び
(4)配列番号42に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号43に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号44に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3、
からなる群から選択されるいずれか1つに記載のCDRL1、CDRL2及びCDRL3、並びに、
以下の(5)~(9):
(5)配列番号17に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号18に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号19に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、
(6)配列番号27に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号28に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号29に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、
(7)配列番号37に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号38に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号39に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、
(8)配列番号47に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号48に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号49に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、及び
(9)配列番号17に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号60に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号19に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、
からなる群から選択されるいずれか1つに記載のCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む、
[1]又は[2]のいずれか1項に記載の抗体又は当該抗体の機能性断片;
[4]以下の(1)~(5):
(1)配列番号12に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号13に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号14に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3、及び、配列番号17に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号18に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号19に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、
(2)配列番号22に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号23に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号24に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3、及び、配列番号27に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号28に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号29に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、
(3)配列番号32に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号33に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号34に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3、及び、配列番号37に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号38に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号39に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、
(4)配列番号42に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号43に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号44に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3、及び、配列番号47に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号48に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号49に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、及び
(5)配列番号12に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号13に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号14に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3、及び、配列番号17に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号60に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号19に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、
からなる群から選択されるCDRL1、CDRL2及びCDRL3、並びに、CDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む、
[1]~[3]のいずれか1項に記載の抗体又は当該抗体の機能性断片;
[5]ヒト化されている[1]~[4]のいずれか1項に記載の抗体又は当該抗体の機能性断片;
[6]以下の(1)~(4):
(1)配列番号63に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(2)配列番号67に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(3)(1)~(2)のアミノ酸配列において各CDR配列以外のフレームワーク領域の配列に対して少なくとも95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列、及び
(4)(1)~(3)のアミノ酸配列において各CDR配列以外のフレームワーク領域の配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列
からなる群から選択されるいずれか1つに記載の軽鎖可変領域、並びに、
以下の(5)~(9):
(5)配列番号71に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
(6)配列番号75に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
(7)配列番号79に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
(8)(5)~(7)のアミノ酸配列において各CDR配列以外のフレームワーク領域の配列に対して少なくとも95%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列、及び
(9)(5)~(8)のアミノ酸配列において各CDR配列以外のフレームワーク領域の配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列
からなる群から選択されるいずれか1つに記載の重鎖可変領域、
を有する[1]~[5]のいずれか1項に記載の抗体又は当該抗体の機能性断片;
[7]以下の(1)~(4):
(1)配列番号63に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域及び配列番号71に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
(2)配列番号63に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域及び配列番号75に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
(3)配列番号67に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域及び配列番号75に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、又は
(4)配列番号63に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域及び配列番号79に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
のいずれかの軽鎖可変領域及び重鎖可変領域、
を含む[1]~[6]のいずれか1項に記載の抗体又は当該抗体の機能性断片;
[8]以下の(1)~(4):
(1)配列番号61の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号69の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖、
(2)配列番号61の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号73の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖、
(3)配列番号65の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号73の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖、又は
(4)配列番号61の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号77の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖、
のいずれかを有する[1]~[7]のいずれか1項に記載の抗体又は当該抗体の機能性断片;
[9]配列番号61の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号69の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖を有する[8]に記載の抗体又は当該抗体の機能性断片;
[10]配列番号61の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号73の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖を有する[8]に記載の抗体又は当該抗体の機能性断片;
[11]配列番号65の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号73の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖を有する[8]に記載の抗体又は当該抗
体の機能性断片;
[12]配列番号61の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号77の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖を有する[8]に記載の抗体又は当該抗体の機能性断片;
[13]機能性断片がFab、F(ab’)2、Fab’及びFvからなる群から選択される[1]~[12]のいずれか1項に記載の抗体の機能性断片;
[14][1]~[13]のいずれか1項に記載の抗体又は当該抗体の機能性断片をコードするポリヌクレオチド;
[15]以下の(1)~(5):
(1)配列番号12に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号13に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号14に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチド、及び、配列番号17に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号18に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号19に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチド、
(2)配列番号22に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号23に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号24に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチド、及び、配列番号27に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号28に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号29に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチド、
(3)配列番号32に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号33に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号34に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチド、及び、配列番号37に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号38に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号39に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチド、
(4)配列番号42に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号43に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号44に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチド、及び、配列番号47に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号48に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号49に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチド、並びに
(5)配列番号12に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号13に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号14に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチド、及び、配列番号17に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号60に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号19に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチド、
からなる群から選択されるいずれか1つに記載のポリヌクレオチドを含む[14]に記載のポリヌクレオチド;
[16]配列番号61の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖をコードするポリヌクレオチド及び配列番号69の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖をコードするポリヌクレオチドを含む[14]又は[15]に記載のポリヌクレオチド;
[17]配列番号61の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖をコードするポリヌクレオチド及び配列番号73の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖をコードするポリヌクレオチドを含む[14]又は[15]に記載のポリヌクレオチド;
[18]配列番号65の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖をコードするポリヌクレオチド及び配列番号73の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖をコードするポリヌクレオチドを含む[14]又は[15]に記載のポリヌクレオチド;
[19]配列番号61の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖をコードするポリヌクレオチド及び配列番号77の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖をコードするポリヌクレオチドを含む[14]又は[15]に記載のポリヌクレオチド;
[20][14]~[19]のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含有する発現ベクター;
[21][20]に記載の発現ベクターにより形質転換された宿主細胞;
[22]宿主細胞が真核細胞である[21]に記載の宿主細胞;
[23][21]又は[22]に記載の宿主細胞を培養する工程、及び当該工程で得られた培養物から目的の抗体又は当該抗体の機能性断片を採取する工程を含むことを特徴とする当該抗体又は当該抗体の機能性断片の製造方法;
[24]重鎖又は軽鎖が、N-結合への糖鎖付加、O-結合への糖鎖付加、N末のプロセッシング、C末のプロセッシング、脱アミド化、アスパラギン酸の異性化、メチオニンの酸化、N末にメチオニン残基の付加、プロリン残基のアミド化、N末グルタミンもしくはN末グルタミン酸のピログルタミン酸化、及びカルボキシル末端における1つ又は2つのアミノ酸欠失からなる群より選択される1又は2以上の修飾をうけた、[1]~[13]のいずれか1項に記載の抗体又は当該抗体の機能性断片;
[25]重鎖のカルボキシル末端において1つ又は2つのアミノ酸が欠失している[24]に記載の抗体;
[26]2本の重鎖の双方でカルボキシル末端において1つのアミノ酸が欠失している[25]に記載の抗体;
[27]重鎖のカルボキシル末端のプロリン残基が更にアミド化されている[24]~[26]のいずれか1項に記載の抗体;
[28]抗体依存性細胞傷害活性を増強させるために糖鎖修飾が調節されている[1]~[13]及び[24]~[27]からなる群から選択されるいずれか1項に記載の抗体又は当該抗体の機能性断片;
[29][1]~[13]及び[24]~[28]からなる群から選択されるいずれか1項に記載の抗体又は当該抗体の機能性断片に薬物が結合している抗体-薬物コンジュゲート;
[30]薬物が抗腫瘍性化合物である、[29]に記載の抗体-薬物コンジュゲート;
[31]抗腫瘍性化合物が次式:
【0015】
【0016】
で示される抗腫瘍性化合物である[30]に記載の抗体-薬物コンジュゲート;
[32]抗体と薬物が、次式(a)~(f):
(a)-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-、
(b)-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-、
(c)-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-、
(d)-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-、
(e)-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2O-CH2CH2O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-、及び
(f)-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2O-CH2CH2O-CH2CH2O-CH2CH2O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-、
からなる群から選択されるいずれかの構造のリンカーを介して結合している、[29]~[31]のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
(ここで、抗体は、-(Succinimid-3-yl-N)の末端において結合する。抗腫瘍性化合物は、1位のアミノ基の窒素原子を結合部位として、(a)、(b)、(e)又は(f)の-CH2CH2CH2-C(=O)-部分、(c)のCH2-O-CH2-C(=O)-部分又は(d)のCH2CH2-O-CH2-C(=O)-部分のカルボニル基に結合する。上記式中GGFGは、グリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシンからなるペプチド結合でつながっているアミノ酸配列を示す。
-(Succinimid-3-yl-N)-は次式:
【0017】
【0018】
で示される構造であり、このものの3位で抗体と結合し、1位の窒素原子上でこれを含むリンカー構造内のメチレン基と結合する。);
[33]リンカーが以下の(c)、(d)及び(e)からなる群から選択されるいずれかの式で示される[29]~[32]のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲート:(c)-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-、
(d)-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-、
(e)-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2O-CH2CH2O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-;
[34]リンカーが以下の(c)又は(e)の式で示される[29]~[33]のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲート:
(c)-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-、
(e)-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2O-CH2CH2O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-;
[35]以下の式:
【0019】
【0020】
で示される構造を有する、[29]~[34]のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲート:
ここで、ABは抗体又は該抗体の機能性断片を示す。nは抗体と結合している薬物-リンカー構造の1抗体あたりの平均結合数を示す。抗体とリンカーは抗体由来のスルフヒドリル基を介して結合している;
[36]以下の式:
【0021】
【0022】
で示される構造を有する、[29]~[34]のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲート:
ここで、ABは抗体又は該抗体の機能性断片を示す。nは抗体と結合している薬物-リンカー構造の1抗体あたりの平均結合数を示す。抗体とリンカーは抗体由来のスルフヒドリル基を介して結合している;
[37]抗体が以下の(1)~(4):
(1)配列番号61の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号69の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖、
(2)配列番号61の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号73の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖、
(3)配列番号65の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号73の
20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖、又は
(4)配列番号61の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号77の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖、
からなる群から選択されるいずれか1つに記載の軽鎖及び重鎖を含む抗体又は当該抗体の機能性断片である、[29]~[36]のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲート;
[38]抗体が、配列番号61の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号69の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖を含む抗体又は当該抗体の機能性断片である、[37]に記載の抗体-薬物コンジュゲート;
[39]抗体が、配列番号61の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号77の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖を含む抗体又は当該抗体の機能性断片である、[37]に記載の抗体-薬物コンジュゲート;
[40]重鎖又は軽鎖が、N-結合への糖鎖付加、O-結合への糖鎖付加、N末のプロセッシング、C末のプロセッシング、脱アミド化、アスパラギン酸の異性化、メチオニンの酸化、N末にメチオニン残基の付加、プロリン残基のアミド化、N末グルタミンもしくはN末グルタミン酸のピログルタミン酸化及びカルボキシル末端における1つ又は2つのアミノ酸欠失からなる群から選択される1又は2以上の修飾をうけた、[29]~[39]のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲート;
[41]選択された1種の薬物-リンカー構造の1抗体あたりの平均結合数が1~10個の範囲である[29]~[40]のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲート;
[42]選択された1種の薬物-リンカー構造の1抗体あたりの平均結合数が2~8個の範囲である[41]に記載の抗体-薬物コンジュゲート;
[43]選択された1種の薬物-リンカー構造の1抗体あたりの平均結合数が5~8個の範囲である[42]に記載の抗体-薬物コンジュゲート;
[44]選択された1種の薬物-リンカー構造の1抗体あたりの平均結合数が7~8個である[43]に記載の抗体-薬物コンジュゲート;
[45][29]~[44]のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲート、その塩、又はそれらの水和物を含むことを特徴とする医薬組成物;
[46]抗腫瘍薬であることを特徴とする、[45]に記載の医薬組成物;
[47]腫瘍がCDH6を発現する腫瘍であることを特徴とする、[46]に記載の医薬組成物;
[48]腫瘍が、腎細胞癌、腎淡明細胞癌、乳頭状腎細胞癌、卵巣癌、卵巣漿液性腺癌、甲状腺癌、胆管癌、肺癌、小細胞肺癌、神経膠芽腫、中皮腫、子宮癌、膵臓癌、ウィルムス腫瘍又は神経芽腫であることを特徴とする、[46]又は[47]に記載の医薬組成物;
[49][29]~[44]のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲート、その塩、又はそれらの水和物から選択されるいずれかを個体に投与することを特徴とする腫瘍の治療方法;
[50]腫瘍がCDH6が発現している腫瘍であることを特徴とする、[49]に記載の治療方法;
[51]腫瘍が、腎細胞癌、腎淡明細胞癌、乳頭状腎細胞癌、卵巣癌、卵巣漿液性腺癌、甲状腺癌、胆管癌、肺癌、小細胞肺癌、神経膠芽腫、中皮腫、子宮癌、膵臓癌、ウィルムス腫瘍又は神経芽腫であることを特徴とする、[49]又は[50]に記載の治療方法;[52][29]~[44]のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲート、その塩、又はそれらの水和物から選択される少なくとも一つを含む医薬組成物及び少なくとも一つの抗腫瘍薬を、同時に、別々に又は連続して個体に投与することを特徴とする腫瘍の治療方法;
[53][1]~[13]及び[24]~[28]からなる群から選択されるいずれか1項に記載の抗体又は当該抗体の機能性断片或いは[23]に記載の製造方法で得られる抗体又は当該抗体の機能性断片と、薬物-リンカー中間化合物を反応させる工程を含むこと
を特徴とする、抗体-薬物コンジュゲートの製造方法;又は
[54][21]又は[22]に記載の宿主細胞を培養する工程、当該工程で得られた培養物から目的の抗体又は当該抗体の機能性断片を採取する工程、及び当該工程で得られた抗体又は当該抗体の機能性断片と薬物-リンカー中間化合物を反応させる工程を含むことを特徴とする、抗体-薬物コンジュゲートの製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明の抗CDH6抗体は、CDH6のECドメイン3(EC3)を特異的に認識し、高い内在化活性を有することを特徴とする。本発明の抗CDH6抗体に、細胞内で毒性を発揮する薬剤を特定の構造のリンカーを介して結合させた抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートは、CDH6を発現するがん細胞を有する患者に投与することによって、優れた抗腫瘍効果及び安全性を達成することが期待できる。即ち、本発明の抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートは、抗腫瘍剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、ラット抗CDH6モノクローナル抗体4種(クローン番号は、rG019、rG055、rG056及びrG061)又はラットIgGコントロールの、コントロール細胞又はhCDH6導入293T細胞に対する結合を調べたフローサイトメトリーの結果を示す。横軸は抗体結合量を表すFITCの蛍光強度、縦軸は細胞数を示す。
【
図2-1】
図2-1は、ラット抗CDH6モノクローナル抗体4種(rG019、rG055、rG056及びrG061)又は陰性コントロール抗体RatIgG2bの、コントロール細胞又は全長hCDH6導入293細胞に対する結合性を示す。横軸は抗体結合量を表すFITCの蛍光強度、縦軸は細胞数を示す。
【
図2-2】
図2-2は、ラット抗CDH6モノクローナル抗体4種(rG019、rG055、rG056及びrG061)又はラットIgGコントロールの、コントロール細胞又はEC1欠失hCDH6導入293細胞に対する結合性を示す。横軸は抗体結合量を表すFITCの蛍光強度、縦軸は細胞数を示す。
【
図2-3】
図2-3は、ラット抗CDH6モノクローナル抗体4種(rG019、rG055、rG056及びrG061)又はラットIgGコントロールの、コントロール細胞又はEC2欠失hCDH6導入293細胞に対する結合性を示す。横軸は抗体結合量を表すFITCの蛍光強度、縦軸は細胞数を示す。
【
図2-4】
図2-4は、ラット抗CDH6モノクローナル抗体4種(rG019、rG055、rG056及びrG061)又はラットIgGコントロールの、コントロール細胞又はEC3欠失hCDH6導入293細胞に対する結合性を示す。横軸は抗体結合量を表すFITCの蛍光強度、縦軸は細胞数を示す。
【
図2-5】
図2-5は、ラット抗CDH6モノクローナル抗体4種(rG019、rG055、rG056及びrG061)又はラットIgGコントロールの、コントロール細胞又はEC4欠失hCDH6導入293細胞に対する結合性を示す。横軸は抗体結合量を表すFITCの蛍光強度、縦軸は細胞数を示す。
【
図2-6】
図2-6は、ラット抗CDH6モノクローナル抗体4種(rG019、rG055、rG056及びrG061)又はラットIgGコントロールの、コントロール細胞又はEC5欠失hCDH6導入293細胞に対する結合性を示す。横軸は抗体結合量を表すFITCの蛍光強度、縦軸は細胞数を示す。
【
図3】
図3は、4種類のヒト腫瘍細胞株(ヒト卵巣腫瘍細胞株NIH:OVCAR-3,PA-1,ES-2及びヒト腎細胞腫瘍細胞株786-O)の細胞膜表面でのCDH6の発現を評価したフローサイトメトリーの結果を示す。横軸は抗体結合量を表すFITCの蛍光強度、縦軸は細胞数を示す。
【
図4】
図4は、4種類のラット抗CDH6抗体(rG019、rG055、rG056及びrG061)又はラットIgGコントロールの内在化活性を、タンパク質合成を阻害する毒素(サポリン)を結合させた抗ラットIgG試薬Rat-ZAP又は陰性コントロールとして毒素を結合していないGoat Anti-Rat IgG,Fc(gamma) Fragment Specificを用いて、NIH:OVCAR-3細胞及び786-O細胞において評価したグラフを示す。グラフの縦軸は、ATP活性(RLU)を示す。各グラフの下に、Rat-ZAPの代わりに陰性コントロールを添加したウェルの生存細胞数を100%とした相対生存率として算出された細胞生存率(%)を示す。
【
図5】
図5は、ヒトキメラ抗CDH6抗体chG019のヒトCDH6及びサルCDH6に対する結合を示す。横軸は抗体濃度を示し、縦軸は結合量をMeanFluorescent Intensity(平均蛍光強度)で示す。
【
図6-1】
図6-1及び
図6-2は、ヒト化hG019抗体4種(H01L02、H02L02、H02L03及びH04L02)又は陰性コントロール抗体ヒトIgG1の、ヒトCDH6、サルCDH6、マウスCDH6、ラットCDH6に対する結合性を示す。横軸は抗体濃度を示し、縦軸は結合量をMeanFluorescent Intensity(平均蛍光強度)で示す。
【
図6-2】
図6-1及び
図6-2は、ヒト化hG019抗体4種(H01L02、H02L02、H02L03及びH04L02)又は陰性コントロール抗体ヒトIgG1の、ヒトCDH6、サルCDH6、マウスCDH6、ラットCDH6に対する結合性を示す。横軸は抗体濃度を示し、縦軸は結合量をMeanFluorescent Intensity(平均蛍光強度)で示す。
【
図7-1】
図7-1は、ヒト化hG019抗体4種(H01L02、H02L02、H02L03及びH04L02)、抗CDH6抗体NOV0712又は陰性コントロール抗体hIgG1の、コントロール細胞又は全長hCDH6導入293α細胞に対する結合性を示す。横軸は抗体結合量を表すAPCの蛍光強度、縦軸は細胞数を示す。
【
図7-2】
図7-2は、ヒト化hG019抗体4種(H01L02、H02L02、H02L03及びH04L02)、抗CDH6抗体NOV0712又は陰性コントロール抗体hIgG1の、コントロール細胞又はEC1欠失hCDH6導入293α細胞に対する結合性を示す。横軸は抗体結合量を表すAPCの蛍光強度、縦軸は細胞数を示す。
【
図7-3】
図7-3は、ヒト化hG019抗体4種(H01L02、H02L02、H02L03及びH04L02)、抗CDH6抗体NOV0712又は陰性コントロール抗体hIgG1の、コントロール細胞又はEC2欠失hCDH6導入293α細胞に対する結合性を示す。横軸は抗体結合量を表すAPCの蛍光強度、縦軸は細胞数を示す。
【
図7-4】
図7-4は、ヒト化hG019抗体4種(H01L02、H02L02、H02L03及びH04L02)、抗CDH6抗体NOV0712又は陰性コントロール抗体hIgG1の、コントロール細胞又はEC3欠失hCDH6導入293α細胞に対する結合性を示す。横軸は抗体結合量を表すAPCの蛍光強度、縦軸は細胞数を示す。
【
図7-5】
図7-5は、ヒト化hG019抗体4種(H01L02、H02L02、H02L03及びH04L02)、抗CDH6抗体NOV0712又は陰性コントロールのhIgG1の、コントロール細胞又はEC4欠失hCDH6導入293α細胞に対する結合性を示す。横軸は抗体結合量を表すAPCの蛍光強度、縦軸は細胞数を示す。
【
図7-6】
図7-6は、ヒト化hG019抗体4種(H01L02、H02L02、H02L03及びH04L02)、抗CDH6抗体NOV0712又は陰性コントロールのhIgG1の、コントロール細胞又はEC5欠失hCDH6導入293α細胞に対する結合性を示す。横軸は抗体結合量を表すAPCの蛍光強度、縦軸は細胞数を示す。
【
図8】
図8は、786-O/hCDH6安定発現細胞株及び親細胞株786-OにおけるヒトCDH6の発現を調べたフローサイトメトリーの結果を示す。横軸は抗体結合量を表すAlexa Fluor 647の蛍光強度、縦軸は細胞数を示す。
【
図9】
図9は、(a)ラベル化NOV0712又は(b)ラベル化H01L02を用いた、ラベル化していないヒト化hG019抗体4種(H01L02、H02L02、H02L03及びH04L02)、抗CDH6抗体NOV0712又は陰性コントロールのhIgG1との結合競合アッセイを示す。横軸はラベル化していない抗体の添加時の終濃度を示し、縦軸は結合量をMeanFluorescent Intensity(平均蛍光強度)で示す。
【
図10-1】
図10-1は、ヒト化hG019抗体4種(H01L02、H02L02、H02L03及びH04L02)、抗CDH6抗体NOV0712及び陰性コントロール抗体の内在化活性を、タンパク質合成を阻害する毒素(サポリン)を結合させた抗ヒトIgG試薬Hum-ZAP又は陰性コントロールとして毒素を結合していないF(ab’)2 Fragment Goat Anti-human IgG,Fc(gamma) Fragment Specificを用いて、NIH:OVCAR-3細胞において評価したグラフを示す。グラフの縦軸は、ATP活性(RLU)を示す。各グラフの下に、Hum-ZAPの代わりに陰性コントロールを添加したウェルの生存細胞数を100%とした相対生存率として算出された細胞生存率(%)を示す。
【
図10-2】
図10-2は、ヒト化hG019抗体4種(H01L02、H02L02、H02L03及びH04L02)、抗CDH6抗体NOV0712及び陰性コントロール抗体の内在化活性を、タンパク質合成を阻害する毒素(サポリン)を結合させた抗ヒトIgG試薬Hum-ZAP又は陰性コントロールとして毒素を結合していないF(ab’)2 Fragment Goat Anti-human IgG,Fc(gamma) Fragment Specificを用いて、786-O細胞において評価したグラフを示す。グラフの縦軸は、ATP活性(RLU)を示す。各グラフの下に、Hum-ZAPの代わりに陰性コントロールを添加したウェルの生存細胞数を100%とした相対生存率として算出された細胞生存率(%)を示す。
【
図10-3】
図10-3は、ヒト化hG019抗体4種(H01L02、H02L02、H02L03及びH04L02)、抗CDH6抗体NOV0712及び陰性コントロール抗体の内在化活性を、タンパク質合成を阻害する毒素(サポリン)を結合させた抗ヒトIgG試薬Hum-ZAP又は陰性コントロールとして毒素を結合していないF(ab’)2 Fragment Goat Anti-human IgG,Fc(gamma) Fragment Specificを用いて、PA-1細胞において評価したグラフを示す。グラフの縦軸は、ATP活性(RLU)を示す。各グラフの下に、Hum-ZAPの代わりに陰性コントロールを添加したウェルの生存細胞数を100%とした相対生存率として算出された細胞生存率(%)を示す。
【
図11】
図11は、ヒト化hG019-薬物コンジュゲート4種(H01L02-DXd、H02L02-DXd、H02L03-DXd及びH04L02-DXd)、又はNOV0712-DM4のPA-1細胞に対するin vitro細胞増殖抑制活性評価を示す。横軸は抗体-薬物コンジュゲートの濃度を示し、縦軸は細胞生存率(%)を示す。
【
図12】
図12は、ヒト化hG019-薬物コンジュゲート4種(H01L02-DXd、H02L02-DXd、H02L03-DXd及びH04L02-DXd)、又はNOV0712-DM4のin vivo抗腫瘍効果を示す。CDH6陽性ヒト腎細胞腫瘍細胞株786-Oを免疫不全マウスに移植した動物モデルを用いて評価した。横軸は日数、縦軸は腫瘍体積、誤差範囲は標準誤差(SE)値を示す。
【
図13】
図13は、ヒト化hG019-薬物コンジュゲートH01L02-DXd又はNOV0712-DM4又はNOV0712-DXdのin vivo抗腫瘍効果を示す。CDH6陽性ヒト卵巣腫瘍細胞株PA-1を免疫不全マウスに移植した動物モデルを用いて評価した。横軸は日数、縦軸は腫瘍体積、誤差範囲はSE値を示す。
【
図14】
図14は、ヒト化hG019-薬物コンジュゲートH01L02-DXd又はNOV0712-DM4のin vivo抗腫瘍効果を示す。CDH6陽性ヒト卵巣腫瘍細胞株NIH:OVCAR-3を免疫不全マウスに移植した動物モデルを用いて評価した。横軸は日数、縦軸は腫瘍体積、誤差範囲はSE値を示す。
【
図15】
図15は、ヒト化hG019-薬物コンジュゲートH01L02-DXd又はNOV0712-DM4のin vivo抗腫瘍効果を示す。CDH6陽性ヒト腎細胞腫瘍細胞株786-Oを免疫不全マウスに移植した動物モデルを用いて評価した。横軸は日数、縦軸は腫瘍体積、誤差範囲はSE値を示す。
【
図16】
図16は、ヒト化hG019-薬物コンジュゲートH01L02-DXd又はNOV0712-DM4のin vivo抗腫瘍効果を示す。CDH6陰性ヒト卵巣腫瘍細胞株ES-2を免疫不全マウスに移植した動物モデルを用いて評価した。横軸は日数、縦軸は腫瘍体積、誤差範囲はSE値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0026】
本明細書中、「がん」と「腫瘍」は同じ意味に用いられる。
【0027】
本明細書中、「遺伝子」という語には、DNAのみならずそのmRNA、cDNA及びそのcRNAも含まれる。
【0028】
本明細書中、「ポリヌクレオチド」又は「ヌクレオチド」は、核酸と同じ意味で用いており、DNA、RNA、プローブ、オリゴヌクレオチド、及びプライマーも含まれる。本明細書中、「ポリヌクレオチド」と「ヌクレオチド」は、特に指定されない限り、交換可能に使用され得る。
【0029】
本明細書中、「ポリペプチド」と「タンパク質」は交換可能に使用され得る。
【0030】
本明細書中、「細胞」には、動物個体内の細胞、培養細胞も含む。
【0031】
本明細書中、「CDH6」は、CDH6タンパク質と同じ意味で使用され得る。本明細書中、ヒトCDH6を「hCDH6」と記載する場合がある。
【0032】
本明細書中、「細胞傷害活性」とは、何らかの形で、細胞に病理的な変化を引き起こすことをいい、直接的な外傷にとどまらず、DNAの切断や塩基の二量体の形成、染色体の切断、細胞分裂装置の損傷、各種酵素活性の低下などあらゆる細胞の構造や機能上の損傷を引き起こすことをいう。
【0033】
本明細書中、「細胞内で毒性を発揮する」とは、何らかの形で、細胞内で毒性を示すことをいい、直接的な外傷にとどまらず、DNAの切断や塩基の二量体の形成、染色体の切断、細胞分裂装置の損傷、各種酵素活性の低下、細胞増殖因子の作用の抑制などあらゆる細胞の構造や機能、代謝に影響をもたらすことをいう。
【0034】
本明細書中、「抗体の機能性断片」とは、「抗体の抗原結合断片」とも呼ばれ、抗原との結合活性を有する抗体の部分断片を意味しており、Fab、F(ab’)2、Fv、scFv、diabody、線状抗体及び抗体断片より形成された多特異性抗体等を含む。また、F(ab’)2を還元条件下で処理した抗体の可変領域の一価の断片であるFab’も抗体の抗原結合断片に含まれる。但し、抗原との結合能を有している限りこれらの分子に限定されない。また、これらの抗原結合断片には、抗体蛋白質の全長分子を適当な酵素で処理したもののみならず、遺伝子工学的に改変された抗体遺伝子を用いて適当な宿主細胞において産生された蛋白質も含まれる。
【0035】
本明細書中、「エピトープ」とは、特定の抗CDH6抗体の結合するCDH6の部分ペプチド又は部分立体構造を意味する。前記のCDH6の部分ペプチドであるエピトープは免疫アッセイ法等当業者にはよく知られている方法によって、決定することができる。ま
ず、抗原の様々な部分構造を作製する。部分構造の作製にあたっては、公知のオリゴヌクレオチド合成技術を用いることができる。例えば、CDH6のC末端又はN末端から適当な長さで順次短くした一連のポリペプチドを当業者に周知の遺伝子組み換え技術を用いて作製した後、それらに対する抗体の反応性を検討し、大まかな認識部位を決定した後に、更に短いペプチドを合成してそれらのペプチドとの反応性を検討することによって、エピトープを決定することができる。また、複数の細胞外ドメインからなる膜タンパク質に結合する抗体が、複数のドメインからなる立体構造をエピトープとしている場合は、特定の細胞外ドメインのアミノ酸配列を改変することによって、立体構造を改変することによってどのドメインと結合するかを決定することができる。特定の抗体の結合する抗原の部分立体構造であるエピトープは、X線構造解析によって抗体と隣接する抗原のアミノ酸残基を特定することによっても決定することができる。
【0036】
本明細書中、「同一のエピトープに結合する」とは、共通のエピトープに結合する抗体を意味している。第一の抗体の結合する部分ペプチド又は部分立体構造に第二の抗体が結合すれば、第一の抗体と第二の抗体が同一のエピトープに結合すると判定することができる。あるいは、第一の抗体の抗原に対する結合に第二の抗体が競合する(即ち、第二の抗体が第一の抗体と抗原の結合を妨げる)ことを確認することによって、具体的なエピトープの配列又は構造が決定されていなくても、第一の抗体と第二の抗体の同一のエピトープに結合すると判定することができる。本明細書中、「同一のエピトープに結合する」とは、第一の抗体と第二の抗体が、当該判定方法のいずれか一方又は両方により、共通のエピトープに結合すると判定された場合をいう。第一の抗体と第二の抗体が同一のエピトープに結合し、かつ第一の抗体が抗腫瘍活性や内在化活性等の特殊な効果を有する場合、第二の抗体も同様の活性を有することが期待できる。
【0037】
本明細書中、「CDR」とは、相補性決定領域(CDR;Complementarity Determining Region)を意味する。抗体分子の重鎖及び軽鎖にはそれぞれ3箇所のCDRがあることが知られている。CDRは、超可変領域(hypervariable region)とも呼ばれ、抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域内にあって、一次構造の変異性が特に高い部位であり、重鎖及び軽鎖のポリペプチド鎖の一次構造上において、それぞれ3ヶ所に分離している。本明細書中においては、抗体のCDRについて、重鎖のCDRを重鎖アミノ酸配列のアミノ末端側からCDRH1、CDRH2、CDRH3と表記し、軽鎖のCDRを軽鎖アミノ酸配列のアミノ末端側からCDRL1、CDRL2、CDRL3と表記する。これらの部位は立体構造の上で相互に近接し、結合する抗原に対する特異性を決定している。
【0038】
本明細書中、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」とは、市販のハイブリダイゼーション溶液ExpressHyb Hybridization Solution(クロンテック社)中、68℃でハイブリダイズすること、又はDNAを固定したフィルターを用いて0.7~1.0MのNaCl存在下68℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1~2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度SSCとは150mM NaCl、15mMクエン酸ナトリウムからなる)を用い、68℃で洗浄することによって同定することができる条件又はそれと同等の条件でハイブリダイズすることをいう。
【0039】
本明細書中、「1~数個」とは、1~10個、1~9個、1~8個、1~7個、1~6個、1~5個、1~4個、1~3個又は1~2個を意味する。
【0040】
1.CDH6
カドヘリンは、細胞膜表面に存在する糖タンパク質で、カルシウムイオン依存的にN末端側の細胞外ドメイン同士が結合することで、細胞間接着分子として、また細胞間相互作用を担うシグナル分子として機能する。カドヘリンスーパーファミリーの内、クラシック
カドヘリンに分類される分子群は、細胞外に5個の細胞外ドメイン(ECドメイン)と1個の膜貫通領域、及び細胞内ドメインから構成される1回膜貫通タンパク質である。
【0041】
CDH6(Cadherin-6) は、タイプIIカドヘリンファミリーに分類される、790アミノ酸からなる1回膜貫通タンパク質であり、N末端側を細胞外、C末端側を細胞内に持つ。ヒトCDH6遺伝子は1995年に初めてクローニングされ(非特許文献1)、NM_004932、NP_004923(NCBI)等のアクセッション番号により参照可能である。
【0042】
本発明で用いるCDH6タンパク質は、ヒト、非ヒト哺乳動物(ラット、マウス、サル等)のCDH6発現細胞から直接精製して使用するか、あるいは当該細胞の細胞膜画分を調製して使用することができ、また、CDH6をin vitroにて合成する、あるいは遺伝子操作によって宿主細胞に産生させることによって得ることができる。遺伝子操作では、具体的には、CDH6 cDNAを発現可能なベクターに組み込んだ後、転写と翻訳に必要な酵素、基質及びエネルギー物質を含む溶液中で合成する、あるいは他の原核生物、又は真核生物の宿主細胞を形質転換させることによってCDH6を発現させることによって、該タンパク質を得ることが出来る。また、前記の遺伝子操作によるCDH6発現細胞、あるいはCDH6を発現している細胞株をCDH6タンパク質として使用することも可能である。また、CDH6のcDNAを組み込んだ発現ベクターを直接被免疫動物に投与し被免疫動物の体内でCDH6を発現させることもできる。
【0043】
また、上記CDH6のアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、当該タンパク質と同等の生物活性を有するタンパク質もCDH6に含まれる。
【0044】
ヒトCDH6タンパク質は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する。ヒトCDH6タンパク質の細胞外領域は、配列番号1に記載のアミノ酸配列の54~159番目のアミノ酸配列を有する細胞外ドメイン1(本明細書中、EC1とも称する)、配列番号1に記載のアミノ酸配列の160~268番目のアミノ酸配列を有する細胞外ドメイン2(本明細書中、EC2とも称する。)、配列番号1に記載のアミノ酸配列の269~383番目のアミノ酸配列を有する細胞外ドメイン3(本明細書中、EC3とも称する。)、配列番号1に記載のアミノ酸配列の384~486番目のアミノ酸配列を有する細胞外ドメイン4(本明細書中、EC4とも称する。)、及び配列番号1に記載のアミノ酸配列の487~608番目のアミノ酸配列を有する細胞外ドメイン5(本明細書中、EC5とも称する。)から構成される。EC1~EC5のアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号2~6とする(表1)。
【0045】
2.抗CDH6抗体の製造
本発明の抗CDH6抗体の一例として、配列番号4に示すアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を認識し、かつ内在化活性を有する抗CDH6抗体を挙げることができる。本発明の抗CDH6抗体の一例として、配列番号4に示すアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を特異的に認識し、かつ内在化活性を有する抗CDH6抗体を挙げることができる。本発明の抗CDH6抗体の一例として、配列番号4に示すアミノ酸配列からなるアミノ酸配列を認識し、かつ内在化活性を有する抗CDH6抗体を挙げることができる。本発明の抗CDH6抗体の一例として、配列番号4に示すアミノ酸配列からなるアミノ酸配列を特異的に認識し、かつ内在化活性を有する抗CDH6抗体を挙げることができる。抗体が「配列番号4に示すアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を特異的に認識」する又は「EC3ドメインを特異的に認識」するとは、抗体が、CDH6のEC3ドメインをCDH6の他の細胞外ドメインと比較して強く認識する又は強く結合することをいう。
【0046】
本発明の抗CDH6抗体は、いずれの種に由来してもよいが、好ましくは、ヒト、サル、ラット、マウス又はウサギを例示できる。ヒト以外の種に由来する場合は、周知の技術を用いて、キメラ化又はヒト化することが好ましい。本発明の抗体は、ポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよいが、モノクローナル抗体が好ましい。
【0047】
本発明の抗CDH6抗体は腫瘍細胞を標的にできる抗体であり、すなわち腫瘍細胞を認識できる特性、腫瘍細胞に結合できる特性、及び/又は腫瘍細胞内に取り込まれて内在化する特性等を備えている。したがって、本発明の抗CDH6抗体と抗腫瘍活性を有する化合物を、リンカーを介して結合させて抗体-薬物コンジュゲートとすることができる。
【0048】
抗体の腫瘍細胞への結合性は、フローサイトメトリーを用いて確認できる。腫瘍細胞内への抗体の取り込みは、(1)治療抗体に結合する二次抗体(蛍光標識)を用いて細胞内に取り込まれた抗体を蛍光顕微鏡で可視化するアッセイ(Cell Death and
Differentiation,2008,15,751-761)、(2)治療抗体に結合する二次抗体(蛍光標識)を用いて細胞内に取り込まれた蛍光量を測定するアッセイ(Molecular Biology of the Cell Vol.15,5268-5282,December 2004)又は(3)治療抗体に結合するイムノトキシンを用いて、細胞内に取り込まれると毒素が放出されて細胞増殖が抑制されるというMab-ZAPアッセイ(Bio Techniques 28:162-165,January 2000)を用いて確認できる。イムノトキシンとしては、ジフテテリア毒素の触媒領域とプロテインGとのリコンビナント複合タンパク質タンパク質も使用可能である。
【0049】
本明細書で言う「高い内在化能」とは、当該抗体とサポリン標識抗ラットIgG抗体を投与したCDH6発現細胞の生存率(抗体未添加時の細胞生存率を100%とした相対率で表したもの)が、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下であることを意味する。
【0050】
抗体-薬物コンジュゲートは抗腫瘍効果を発揮する化合物を結合させてあるので、抗体自体が抗腫瘍効果を有することは、好ましいが、必須ではない。抗腫瘍性化合物の細胞傷害性を腫瘍細胞において特異的及び/又は選択的に発揮させる目的からは、抗体が内在化して腫瘍細胞内に移行する性質のあることが重要であり、好ましい。
【0051】
抗CDH6抗体は、この分野で通常実施される方法を用いて、抗原となるポリペプチドを動物に免疫し、生体内に産生される抗体を採取、精製することによって得ることができるが、好ましくは、立体構造を保持したCDH6を抗原として用いることが好ましい。そのような方法として、DNA免疫法を挙げることができる。
【0052】
抗原の由来はヒトに限定されず、マウス、ラット等のヒト以外の動物に由来する抗原を動物に免疫することもできる。この場合には、取得された異種抗原に結合する抗体とヒト抗原との交差性を試験することによって、ヒトの疾患に適用可能な抗体を選別できる。
【0053】
また、公知の方法(例えば、Kohler and Milstein, Nature(1975)256,495-497、Kennet,R.ed.,Monoclonal Antibodies,365-367,Plenum Press,N.Y.(1980))に従って、抗原に対する抗体を産生する抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させることによってハイブリドーマを樹立し、モノクローナル抗体を得ることもできる。
【0054】
以下、具体的にCDH6に対する抗体の取得方法を説明する。
【0055】
(1)抗原の調製
抗原は抗原タンパク質をコードする遺伝子を遺伝子操作によって宿主細胞に産生させることによって得ることができる。具体的には、抗原遺伝子を発現可能なベクターを作製し、これを宿主細胞に導入して該遺伝子を発現させ、発現した抗原を精製すればよい。上記の遺伝子操作による抗原発現細胞、あるいは抗原を発現している細胞株を動物に免疫する方法を用いることによっても抗体を取得できる。
【0056】
また、抗原タンパク質を用いずに、抗原タンパク質のcDNAを発現ベクターに組み込んで被免疫動物に投与し、被免疫動物の体内で抗原タンパク質を発現させ、抗原タンパク質に対する抗体を産生させることによっても抗体を取得することができる。
【0057】
(2)抗CDH6モノクローナル抗体の製造
本発明で使用される抗CDH6抗体は、特に制限はないが、例えば、本願の配列表で示されたアミノ酸配列で特定される抗体を好適に使用することができる。本発明において使用される抗CDH6抗体としては、以下の特性を有するものが望ましい。
(1)以下の特性を有することを特徴とする抗体;
(a)CDH6に特異的に結合する
(b)CDH6と結合することによってCDH6発現細胞に内在化する活性を有する
(2)CDH6がヒトCDH6である上記(1)に記載の抗体又は当該抗体。
(3)ヒトCDH6のEC3を特異的に認識し、かつ内在化活性を有する
本発明のCDH6に対する抗体の取得方法は、抗CDH6抗体を取得できる限りにおいて、特に制限されないが、高次構造を保持したCDH6を抗原として用いることが好ましい。
【0058】
好ましい抗体の取得方法の一例としてDNA免疫法を挙げることができる。DNA免疫法とは、抗原発現プラスミドをマウスやラットなどの動物個体に遺伝子導入し、抗原を個体内で発現させることによって、抗原に対する免疫を誘導する手法である。遺伝子導入の手法には、直接プラスミドを筋肉に注射する方法や、リポソームやポリエチレンイミンなどの導入試薬を静脈注射する方法、ウイルスベクターを用いる手法、プラスミドを付着させた金粒子をGene Gunにより射ち込む手法、急速に大量のプラスミド溶液を静脈注射するHydrodynamic法などが存在する。発現プラスミドの筋注による遺伝子導入法に関して、発現量を向上させる手法として、プラスミドを筋注後、同部位にエレクトロポレーションを加えるin vivo electroporationという技術が知られている(Aihara H,Miyazaki J.Nat Biotechnol.1998 Sep;16(9):867-70又はMir LM,Bureau
MF,Gehl J,Rangara R,Rouy D,Caillaud JM,Delaere P,Branellec D,Schwartz B,Scherman D.Proc Natl Acad Sci USA.1999 Apr 13;96(8):4262-7.)。本手法はプラスミドの筋注前にヒアルロニダーゼで筋肉を処理することにより、さらに発現量が向上する(McMahon JM1, Signori E,Wells KE,Fazio VM,Wells DJ.Gene Ther.2001 Aug;8(16):1264-70)。また、ハイブリドーマの作製は公知の方法によって行うことができ、例えば、Hybrimune Hybridoma Production System(Cyto Pulse Sciences社)を用いて行うこともできる。
【0059】
具体的なモノクローナル抗体取得の例としては、以下を挙げることができる。
(a)CDH6のcDNAを発現ベクター(例えば、pcDNA3.1:Thermo Fisher Scientific)に組み込み、エレクトロポレーションや遺伝子銃
等の方法によって、そのベクターを直接被免疫動物(例えば、ラットやマウス)に投与することによって、動物体内においてCDH6を発現させることによって、免疫反応を誘起させることができる。エレクトロポレーション等によるベクターの投与は抗体価を上げるために必要であれば、1回でも複数回でもよく、好ましくは複数回である;
(b)免疫反応を誘起された上述の動物より、抗体産生細胞を含む組織(例えばリンパ節)を採取する;
(c)骨髄腫細胞(以下「ミエローマ」という)(例えば、マウスミエローマSP2/0-ag14細胞)の調製;
(d)抗体産生細胞とミエローマとの細胞融合;
(e)目的とする抗体を産生するハイブリドーマ群の選別;
(f)単一細胞クローンへの分割(クローニング);
(g)場合によっては、モノクローナル抗体を大量に製造するためのハイブリドーマの培養、又はハイブリドーマを移植した動物の飼育;及び/又は
(h)このようにして製造されたモノクローナル抗体の生理活性(内在化活性)、及びその結合特異性の検討、あるいは標識試薬としての特性の検定。
【0060】
ここで用いられる抗体価の測定法としては、例えば、フローサイトメトリー又はCell-ELISA法を挙げることができるがこれらの方法に制限されない。
【0061】
このようにして樹立されたハイブリドーマ株の例としては、抗CDH6抗体産生ハイブリドーマrG019、rG055、rG056及びrG061を挙げることができる。なお、本明細書中においては、抗CDH6抗体産生ハイブリドーマrG019が産生する抗体を、「rG019抗体」又は単に「rG019」と記載し、ハイブリドーマrG055が産生する抗体を、「rG055抗体」又は単に「rG055」と記載し、ハイブリドーマrG056が産生する抗体を、「rG056抗体」又は単に「rG056」と記載し、ハイブリドーマrG061が産生する抗体を、「rG061抗体」又は単に「rG061」とする。
【0062】
rG019抗体の軽鎖可変領域は、配列番号10に示されるアミノ酸配列からなる。該rG019抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号11に示されるヌクレオチド配列でコードされる。rG019抗体の軽鎖可変領域は、配列番号12に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号13に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号14に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を有する。rG019抗体の重鎖可変領域は、配列番号15に示されるアミノ酸配列からなる。該rG019抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号16に示されるヌクレオチド配列でコードされる。rG019抗体の重鎖可変領域は、配列番号17に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号18に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号19に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を有する。rG019抗体の配列を表1に示す。
【0063】
rG055抗体の軽鎖可変領域は、配列番号20に示されるアミノ酸配列からなる。該rG055抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号21に示されるヌクレオチド配列でコードされる。rG055抗体の軽鎖可変領域は、配列番号22に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号23に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号24に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を有する。rG055抗体の重鎖可変領域は、配列番号25に示されるアミノ酸配列からなる。該rG055抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号26に示されるヌクレオチド配列でコードされる。rG055抗体の重鎖可変領域は、配列番号27に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号28に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号29に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を有する。rG055抗体の配列を表1に示す。
【0064】
rG056抗体の軽鎖可変領域は、配列番号30に示されるアミノ酸配列からなる。該rG056抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号31に示されるヌクレオチド配列でコードされる。rG056抗体の軽鎖可変領域は、配列番号32に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号33に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号34に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を有する。rG056抗体の重鎖可変領域は、配列番号35に示されるアミノ酸配列からなる。該rG056抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号36に示されるヌクレオチド配列でコードされる。rG056抗体の重鎖可変領域は、配列番号37に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号38に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号39に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を有する。rG056抗体の配列を表1に示す。
【0065】
rG061抗体の軽鎖可変領域は、配列番号40に示されるアミノ酸配列からなる。該rG061抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号41に示されるヌクレオチド配列でコードされる。rG061抗体の軽鎖可変領域は、配列番号42に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号43に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号44に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を有する。rG061抗体の重鎖可変領域は、配列番号45に示されるアミノ酸配列からなる。該rG061抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号46に示されるヌクレオチド配列でコードされる。rG061抗体の重鎖可変領域は、配列番号47に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号48に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号49に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を有する。rG061抗体の配列を表1に示す。
【0066】
さらに、「2.抗CDH6抗体の製造」(a)乃至(h)の工程を再度実施して別途に独立してモノクローナル抗体を取得した場合や他の方法によって別途にモノクローナル抗体を取得した場合においても、rG019抗体、rG055抗体、rG056抗体又はrG061抗体と同等の内在化活性を有する抗体を取得することが可能である。このような抗体の一例として、rG019抗体、rG055抗体、rG056抗体又はrG061抗体と同一のエピトープに結合する抗体を挙げることができる。新たに作製されたモノクローナル抗体が、rG019抗体、rG055抗体、rG056抗体又はrG061抗体の結合する部分ペプチド又は部分立体構造に結合すれば、該モノクローナル抗体がrG019抗体、rG055抗体、rG056抗体又はrG061抗体と同一のエピトープに結合すると判定することができる。また、rG019抗体、rG055抗体、rG056抗体又はrG061抗体のCDH6に対する結合に対して該モノクローナル抗体が競合する(即ち、該モノクローナル抗体が、rG019抗体、rG055抗体、rG056抗体又はrG061抗体とCDH6の結合を妨げる)ことを確認することによって、具体的なエピトープの配列又は構造が決定されていなくても、該モノクローナル抗体が抗CDH6抗体と同一のエピトープに結合すると判定することができる。エピトープが同一であることが確認された場合、該モノクローナル抗体がrG019抗体、rG055抗体、rG056抗体又はrG061抗体と同等の抗原結合能、生物活性及び/又は内在化活性を有していることが強く期待される。
【0067】
(3)その他の抗体
本発明の抗体には、上記CDH6に対するモノクローナル抗体に加え、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ(Chimeric)抗体、ヒト化(Humanized)抗体又はヒト抗体等も含まれる。これらの抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
【0068】
キメラ抗体としては、抗体の可変領域と定常領域が互いに異種である抗体、例えばマウス又はラット由来抗体の可変領域をヒト由来の定常領域に接合したキメラ抗体を挙げることができる(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,81,6851-
6855,(1984)参照)。
【0069】
ラット抗ヒトCDH6抗体由来のキメラ抗体の例としては、例えば、本明細書に記載のラット抗ヒトCDH6抗体(例えば、rG019抗体、rG055抗体、rG056抗体又はrG061抗体)の各軽鎖可変領域とヒト由来の定常領域を含む軽鎖、及び、各重鎖可変領域とヒト由来の定常領域を含む重鎖からなる抗体が挙げられる。
【0070】
ラット抗ヒトCDH6抗体由来のキメラ抗体の別の例としては、例えば、本明細書に記載のラット抗ヒトCDH6抗体(例えば、rG019抗体、rG055抗体、rG056抗体又はrG061抗体)の各軽鎖可変領域中の1~数残基、1~3残基、1~2残基、好ましくは1残基のアミノ酸を別のアミノ酸残基に置換した軽鎖可変領域を含む軽鎖、及び、各重鎖可変領域中の1~数残基、1~3残基、1~2残基、好ましくは1残基のアミノ酸を別のアミノ酸残基に置換した重鎖可変領域を含む重鎖からなる抗体が挙げられ、当該抗体は任意のヒト由来の定常領域を有していてよい。
【0071】
ラット抗ヒトCDH6抗体由来のキメラ抗体の別の例としては、例えば、本明細書に記載のラット抗ヒトCDH6抗体(例えば、rG019抗体、rG055抗体、rG056抗体又はrG061抗体)の各軽鎖可変領域中のいずれか1~3個のCDR中の1~2残基、好ましくは1残基のアミノ酸を別のアミノ酸残基に置換した軽鎖可変領域を含む軽鎖、及び、各重鎖可変領域中のいずれか1~3個のCDR中の1~2残基、好ましくは1残基のアミノ酸を別のアミノ酸残基に置換した重鎖可変領域を含む重鎖からなる抗体が挙げられ、当該抗体は任意のヒト由来の定常領域を有していてよい。
【0072】
rG019抗体由来のキメラ抗体としては、例えば、配列番号10に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖、及び、配列番号15に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖からなる抗体が挙げられ、当該抗体は任意のヒト由来の定常領域を有していてよい。
【0073】
rG019抗体由来のキメラ抗体の別の例としては、例えば、配列番号10に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域中の1~数残基、1~3残基、1~2残基、好ましくは1残基のアミノ酸を別のアミノ酸残基に置換した軽鎖可変領域を含む軽鎖、及び、配列番号15に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域中の1~数残基、1~3残基、1~2残基、好ましくは1残基のアミノ酸を別のアミノ酸残基に置換した重鎖可変領域を含む重鎖からなる抗体が挙げられ、当該抗体は任意のヒト由来の定常領域を有していてよい。
【0074】
rG019抗体由来のキメラ抗体の別の例としては、例えば、配列番号10に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域中のいずれか1~3個のCDR中の1又は2残基(好ましくは1残基)のアミノ酸を別のアミノ酸残基に置換した軽鎖可変領域を含む軽鎖、及び、配列番号15に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域中のいずれか1~3個のCDR中の1又は2残基(好ましくは1残基)のアミノ酸を別のアミノ酸残基に置換した重鎖可変領域を含む重鎖からなる抗体が挙げられ、当該抗体は任意のヒト由来の定常領域を有していてよい。
【0075】
rG019抗体由来のキメラ抗体の別の例としては、例えば、配列番号10に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖、及び、配列番号58に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖からなる抗体が挙げられ、当該抗体は任意のヒト由来の定常領域を有していてよい。配列番号58に示されるアミノ酸配列は、配列番号15に示されるアミノ酸配列中のCDRH2中のシステイン残基をプロリン残基に置換した配列である。
【0076】
rG019抗体由来のキメラ抗体の具体例としては、配列番号53に示される軽鎖全長アミノ酸配列からなる軽鎖、及び、配列番号56に示される重鎖全長アミノ酸配列からなる重鎖からなる抗体が挙げられ、当該キメラ抗ヒトCDH6抗体を本明細書中、「キメラG019抗体」、「chG019抗体」又は「chG019」と称する。chG019抗体の軽鎖全長アミノ酸配列は配列番号54に示されるヌクレオチド配列でコードされ、chG019抗体の重鎖全長アミノ酸配列は配列番号57に示されるヌクレオチド配列でコードされる。
【0077】
chG019抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列は、rG019抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列と同一であり、配列番号10に示されるアミノ酸配列からなる。chG019抗体の軽鎖は、配列番号12に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号13に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号14に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を有し、それぞれ、rG019の軽鎖のCDRL1、CDRL2及びCDRL3と同一である。chG019抗体の軽鎖可変領域アミノ酸は、配列番号55に示されるヌクレオチド配列でコードされる。
【0078】
chG019抗体の重鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号58に示されるアミノ酸配列からなる。chG019抗体の重鎖は、配列番号17に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号60に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号19に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を有する。配列番号58に示されるアミノ酸配列は、配列番号15に示されるアミノ酸配列中のCDRH2中のシステイン残基をプロリン残基に置換した配列である。配列番号60に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2は、配列番号18に示されるrG019 CDRH2中のシステイン残基をプロリン残基に置換した配列である。chG019抗体の重鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号59に示されるヌクレオチド配列でコードされる。
【0079】
chG019抗体の配列を表1に示す。
【0080】
ラット抗ヒトCDH6抗体rG055抗体由来のキメラ抗体としては、例えば、配列番号20に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖、及び、配列番号25に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖からなるキメラ抗体が挙げられ、当該抗体は任意のヒト由来の定常領域を有していてよい。
【0081】
ラット抗ヒトCDH6抗体rG056抗体由来のキメラ抗体としては、例えば、配列番号30に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖、及び、配列番号35に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖からなるキメラ抗体が挙げられ、当該抗体は任意のヒト由来の定常領域を有していてよい。
【0082】
ラット抗ヒトCDH6抗体rG061抗体由来のキメラ抗体としては、例えば、配列番号40に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖、及び、配列番号45に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖からなるキメラ抗体が挙げられ、当該抗体は任意のヒト由来の定常領域を有していてよい。
【0083】
ヒト化抗体としては、相補性決定領域(CDR;Complementarity Determining Region)のみをヒト由来の抗体に組み込んだ抗体(Nature(1986)321,p.522-525参照)、CDR移植法によって、CDRの配列に加え一部のフレームワークのアミノ酸残基もヒト抗体に移植した抗体(国際公開第90/07861号)、更に、抗原に対する結合能を維持しつつ、一部のCDRのアミノ酸配列を改変した抗体を挙げることができる。
【0084】
本明細書において、rG019抗体、rG055抗体、rG056抗体、rG061抗体又はchG019抗体由来のヒト化抗体とは、rG019抗体、rG055抗体、rG056抗体、rG061抗体又はchG019抗体のいずれかについて、各々に固有の6つのCDR配列を全て保持し、かつ、内在化活性を有するヒト化抗体であればよく、特定のヒト化抗体に限定されない。当該ヒト化抗体は、内在化活性を有する限り、更に一部のCDRの一部のアミノ酸配列が改変されていてもよい。
【0085】
chG019抗体のヒト化抗体の実例としては、(1)配列番号63又は67に記載のアミノ酸配列、(2)上記(1)のアミノ酸配列に対して少なくとも95%以上の同一性を有するアミノ酸配列(好ましくは、各CDR配列以外のフレームワーク領域の配列に対して少なくとも95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列)、及び(3)上記(1)のアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなる群から選択されるいずれか1つに記載の軽鎖可変領域を含む軽鎖、並びに(4)配列番号71、75又は79に記載のアミノ酸配列、(5)上記(4)のアミノ酸配列に対して少なくとも95%以上の同一性を有するアミノ酸配列(好ましくは、各CDR配列以外のフレームワーク領域の配列に対して少なくとも95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列)、及び(6)上記(4)のアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなる群から選択されるいずれか1つに記載の重鎖可変領域を含む重鎖の任意の組合せを挙げることができる。
【0086】
また、重鎖又は軽鎖の一方をヒト化し、他方をラット抗体やキメラ抗体の軽鎖又は重鎖とした抗体も用いることができる。そのような抗体の例としては、(1)配列番号63又は67に記載のアミノ酸配列、(2)上記(1)のアミノ酸配列に対して少なくとも95%以上の同一性を有するアミノ酸配列(好ましくは、各CDR配列以外のフレームワーク領域の配列に対して少なくとも95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列)、及び(3)上記(1)のアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなる群から選択されるいずれか1つに記載の軽鎖可変領域を含む軽鎖、並びに(4)配列番号15、25、35、45又は58に記載のアミノ酸配列、(5)上記(4)のアミノ酸配列に対して少なくとも95%以上の同一性を有するアミノ酸配列(好ましくは、各CDR配列以外のフレームワーク領域の配列に対して少なくとも95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列)、及び(6)上記(4)のアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなる群から選択されるいずれか1つに記載の重鎖可変領域を含む重鎖の任意の組合せを挙げることができる。他の例としては、(1)配列番号10、20、30又は40に記載のアミノ酸配列、(2)上記(1)のアミノ酸配列に対して少なくとも95%以上の同一性を有するアミノ酸配列(好ましくは、各CDR配列以外のフレームワーク領域の配列に対して少なくとも95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列)、及び(3)上記(1)のアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなる群から選択されるいずれか1つに記載の軽鎖可変領域を含む軽鎖、並びに(4)配列番号71、75又は79に記載のアミノ酸配列、(5)上記(4)のアミノ酸配列に対して少なくとも95%以上の同一性を有するアミノ酸配列(好ましくは、各CDR配列以外のフレームワーク領域の配列に対して少なくとも95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列)、及び(6)上記(4)のアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなる群から選択されるいずれか1つに記載の重鎖可変領域を含む重鎖の任意の組合せを挙げることができる。
【0087】
また、本明細書中におけるアミノ酸の置換としては保存的アミノ酸置換が好ましい。保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸側鎖に関連のあるアミノ酸グループ内で生じる置換である。好適なアミノ酸グループは、以下のとおりである:酸性グループ=アスパギン酸、グ
ルタミン酸;塩基性グループ=リシン、アルギニン、ヒスチジン;非極性グループ=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;及び非帯電極性ファミリー=グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン。他の好適なアミノ酸グループは次のとおりである:脂肪族ヒドロキシグループ=セリン及びスレオニン;アミド含有グループ=アスパラギン及びグルタミン;脂肪族グループ=アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン;並びに芳香族グループ=フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシン。かかるアミノ酸置換は元のアミノ酸配列を有する物質の特性を低下させない範囲で行うのが好ましい。
【0088】
上記軽鎖及び重鎖の好適な組合せの抗体としては、配列番号63に示される軽鎖可変領域アミノ酸配列(本明細書中、hL02軽鎖可変領域アミノ酸配列とも称する)を有する軽鎖又は配列番号67に示される軽鎖可変領域アミノ酸配列(本明細書中、hL03軽鎖可変領域アミノ酸配列とも称する)を有する軽鎖、及び、配列番号71に示される重鎖可変領域アミノ酸配列(本明細書中、hH01重鎖可変領域アミノ酸配列とも称する)を有する重鎖、配列番号75に示される重鎖可変領域アミノ酸配列(本明細書中、hH02重鎖可変領域アミノ酸配列とも称する)を有する重鎖又は配列番号79に示される重鎖可変領域アミノ酸配列(本明細書中、hH04重鎖可変領域アミノ酸配列とも称する)を有する重鎖からなる抗体が挙げられる。好ましい例としては、配列番号63に示される軽鎖可変領域アミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号71に示される重鎖可変領域アミノ酸配列を有する重鎖からなる抗体;配列番号63に示される軽鎖可変領域アミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号75に示される重鎖可変領域アミノ酸配列を有する重鎖からなる抗体;配列番号63に示される軽鎖可変領域アミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号79に示される重鎖可変領域アミノ酸配列を有する重鎖からなる抗体;配列番号67に示される軽鎖可変領域アミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号71に示される重鎖可変領域アミノ酸配列を有する重鎖からなる抗体;配列番号67に示される軽鎖可変領域アミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号75に示される重鎖可変領域アミノ酸配列を有する重鎖からなる抗体;又は、配列番号67に示される軽鎖可変領域アミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号79に示される重鎖可変領域アミノ酸配列を有する重鎖からなる抗体が挙げられる。より好ましい例としては、配列番号63に示される軽鎖可変領域アミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号71に示される重鎖可変領域アミノ酸配列を有する重鎖からなる抗体;配列番号63に示される軽鎖可変領域アミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号75に示される重鎖可変領域アミノ酸配列を有する重鎖からなる抗体;配列番号63に示される軽鎖可変領域アミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号79に示される重鎖可変領域アミノ酸配列を有する重鎖からなる抗体;又は、配列番号67に示される軽鎖可変領域アミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号75に示される重鎖可変領域アミノ酸配列を有する重鎖からなる抗体が挙げられる。
【0089】
上記軽鎖及び重鎖の好適な組合せの抗体の別の例としては、配列番号61に示される軽鎖全長アミノ酸配列(本明細書中、hL02軽鎖全長アミノ酸配列とも称する)の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖又は配列番号65に示される軽鎖全長アミノ酸配列(本明細書中、hL03軽鎖全長アミノ酸配列とも称する)の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖、及び、配列番号69に示される重鎖全長アミノ酸配列(本明細書中、hH01重鎖全長アミノ酸配列とも称する)の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖、配列番号73に示される重鎖全長アミノ酸配列(本明細書中、hH02重鎖全長アミノ酸配列とも称する)の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖又は配列番号77に示される重鎖全長アミノ酸配列(本明細書中、hH04重鎖全長アミノ酸配列とも称する)の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖からなる抗体が挙げられる。好ましい例としては、配列番号61に示される軽鎖全長アミノ酸配列の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号69に示される重鎖全長アミノ酸配列の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖からなる抗体;配列番号61に示される軽鎖全長
アミノ酸配列の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号73に示される重鎖全長アミノ酸配列の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖からなる抗体;配列番号61に示される軽鎖全長アミノ酸配列の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号77に示される重鎖全長アミノ酸配列の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖からなる抗体;配列番号65に示される軽鎖全長アミノ酸配列の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号69に示される重鎖全長アミノ酸配列の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖からなる抗体;配列番号65に示される軽鎖全長アミノ酸配列の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号73に示される重鎖全長アミノ酸配列の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖からなる抗体;又は、配列番号65に示される軽鎖全長アミノ酸配列の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号77に示される重鎖全長アミノ酸配列の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖からなる抗体が挙げられる。より好ましい例としては、配列番号61に示される軽鎖全長アミノ酸配列の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号69に示される重鎖全長アミノ酸配列の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖からなる抗体(本明細書中、「H01L02抗体」又は「H01L02」とも称する);配列番号61に示される軽鎖全長アミノ酸配列の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号73に示される重鎖全長アミノ酸配列の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖からなる抗体(本明細書中、「H02L02抗体」又は「H02L02」とも称する);配列番号61に示される軽鎖全長アミノ酸配列の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号77に示される重鎖全長アミノ酸配列の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖からなる抗体(本明細書中、「H04L02抗体」又は「H04L02」とも称する);又は、配列番号65に示される軽鎖全長アミノ酸配列の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号73に示される重鎖全長アミノ酸配列の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖からなる抗体(本明細書中、「H02L03抗体」又は「H02L03」とも称する)が挙げられる。H01L02抗体、H02L02抗体、H02L03抗体又はH04L02抗体の配列を表1に示す。
【0090】
上記の重鎖アミノ酸配列及び軽鎖アミノ酸配列と高い同一性を示す配列を組み合わせることによって、上記の各抗体と同等の生物活性を有する抗体を選択することが可能である。このような同一性は、一般的には80%以上の同一性であり、好ましくは90%以上の同一性であり、より好ましくは95%以上の同一性であり、最も好ましくは99%以上の同一性である。また、重鎖又は軽鎖のアミノ酸配列に1乃至数個のアミノ酸残基が置換、欠失又は付加されたアミノ酸配列を組み合わせることによっても、上記の各抗体と同等の生物活性を有する抗体を選択することが可能である。
【0091】
二種類のアミノ酸配列間の同一性は、ClustalW version2 (Larkin MA, Blackshields G, Brown NP, Chenna
R, McGettigan PA, McWilliam H, Valentin
F, Wallace IM, Wilm A, Lopez R, Thompson JD, Gibson TJ and Higgins DG(2007),「Clustal W and Clustal X version 2.0」, Bioinformatics.23(21):2947-2948)のデフォルトパラメーターを使用して配列を整列させることによって決定することができる。
【0092】
なお、配列番号61に示されるhL02軽鎖全長アミノ酸配列中、1~20番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列はシグナル配列であり、21~128番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列は可変領域であり、129~233番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列は定常領域である。配列番号62に示されるhL02軽鎖全長ヌクレオチド配列中、1~60番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列はシグナル配列をコードし
、61~384番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列は可変領域をコードし、385~699番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列は定常領域をコードしている。
【0093】
配列番号65に示されるhL03軽鎖全長アミノ酸配列中、1~20番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列はシグナル配列であり、21~128番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列は可変領域であり、129~233番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列は定常領域である。配列番号66に示されるhL03軽鎖全長ヌクレオチド配列中、1~60番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列はシグナル配列をコードし、61~384番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列は可変領域をコードし、385~699番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列は定常領域をコードしている。
【0094】
配列番号69に示されるhH01重鎖全長アミノ酸配列中、1~19番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列はシグナル配列であり、20~141番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列は可変領域であり、142~471番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列は定常領域である。配列番号70に示されるhH01重鎖全長ヌクレオチド配列中、1~57番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列はシグナル配列をコードし、58~423番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列は可変領域をコードし、424~1413番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列は定常領域をコードしている。
【0095】
配列番号73に示されるhH02重鎖全長アミノ酸配列中、1~19番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列はシグナル配列であり、20~141番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列は可変領域であり、142~471番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列は定常領域である。配列番号74に示されるhH02重鎖全長ヌクレオチド配列中、1~57番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列はシグナル配列をコードし、58~423番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列は可変領域をコードし、424~1413番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列は定常領域をコードしている。
【0096】
配列番号77に示されるhH04重鎖全長アミノ酸配列中、1~19番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列はシグナル配列であり、20~141番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列は可変領域であり、142~471番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列は定常領域である。配列番号78に示されるhL04重鎖全長ヌクレオチド配列で、1~57番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列はシグナル配列であり、58~423番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列は可変領域をコードしており、424~1413番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列は定常領域をコードしている。
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
(本明細書中、表1-1~表1-15を表1と総称する場合がある。)
本発明の抗体としては、さらに、CDH6に結合する、ヒト抗体を挙げることができる。抗CDH6ヒト抗体とは、ヒト染色体由来の抗体の遺伝子配列のみを有するヒト抗体を意味する。抗CDH6ヒト抗体は、ヒト抗体の重鎖と軽鎖の遺伝子を含むヒト染色体断片を有するヒト抗体産生マウスを用いた方法(Tomizuka,K.et al.,Nature Genetics(1997)16,p.133-143,;Kuroiwa,Y.et.al.,Nucl.Acids Res.(1998)26,p.3447-3448;Yoshida,H.et.al.,Animal Cell Technology:Basic and Applied Aspects vol.10,p.69-73(Kitagawa,Y.,Matsuda,T.and Iijima,S.eds.),Kluwer Academic Publishers,1999.;Tomizuka,K.et.al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2000)97,p.722-727等を参照。)によって取得することができる。
【0113】
このようなヒト抗体産生マウスは、具体的には、内在性免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の遺伝子座が破壊され、代わりに酵母人工染色体(Yeast artificial chromosome,YAC)ベクター等を介してヒト免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の遺伝子座が導入された遺伝子組み換え動物として、ノックアウト動物及びトランスジェニック動物の作製及びこれらの動物同士を掛け合わせることによって作り出すことができる。
【0114】
また、遺伝子組換え技術によって、そのようなヒト抗体の重鎖及び軽鎖の各々をコードするcDNA、好ましくは該cDNAを含むベクターによって真核細胞を形質転換し、遺伝子組換えヒトモノクローナル抗体を産生する形質転換細胞を培養することによって、こ
の抗体を培養上清中から得ることもできる。
【0115】
ここで、宿主としては例えば真核細胞、好ましくはCHO細胞、リンパ球やミエローマ等の哺乳動物細胞を用いることができる。
【0116】
また、ヒト抗体ライブラリーより選別したファージディスプレイ由来のヒト抗体を取得する方法(Wormstone,I.M.et.al,Investigative Ophthalmology & Visual Science.(2002)43(7),p.2301-2308;Carmen,S.et.al.,Briefings in Functional Genomics and Proteomics(2002),1(2),p.189-203;Siriwardena,D.et.al.,Ophthalmology(2002)109(3),p.427-431等参照。)も知られている。
【0117】
例えば、ヒト抗体の可変領域を一本鎖抗体(scFv)としてファージ表面に発現させて、抗原に結合するファージを選択するファージディスプレイ法(Nature Biotechnology(2005),23,(9),p.1105-1116)を用いることができる。
【0118】
抗原に結合することで選択されたファージの遺伝子を解析することによって、抗原に結合するヒト抗体の可変領域をコードするDNA配列を決定することができる。
【0119】
抗原に結合するscFvのDNA配列が明らかになれば、当該配列を有する発現ベクターを作製し、適当な宿主に導入して発現させることによってヒト抗体を取得することができる(国際公開第92/01047号、同92/20791号、同93/06213号、同93/11236号、同93/19172号、同95/01438号、同95/15388号、Annu.Rev.Immunol(1994)12,p.433-455、Nature Biotechnology(2005)23(9),p.1105-1116)。
【0120】
新たに作製されたヒト抗体が、本明細書に記載のラット抗ヒトCDH6抗体、キメラ抗ヒトCDH6抗体又はヒト化抗ヒトCDH6抗体(例えば、rG019抗体、rG055抗体、rG056抗体、rG061抗体、chG019抗体、H01L02抗体、H02L02抗体、H02L03抗体又はH04L02抗体)のいずれか1つが結合する部分ペプチド又は部分立体構造に結合すれば、該ヒト抗体が当該ラット抗ヒトCDH6抗体、キメラ抗ヒトCDH6抗体又はヒト化抗ヒトCDH6抗体と同一のエピトープに結合すると判定することができる。あるいは、本明細書に記載のラット抗ヒトCDH6抗体、キメラ抗ヒトCDH6抗体又はヒト化抗ヒトCDH6抗体(例えば、rG019抗体、rG055抗体、rG056抗体、rG061抗体、chG019抗体、H01L02抗体、H02L02抗体、H02L03抗体又はH04L02抗体)のCDH6に対する結合に対して該ヒト抗体が競合する(例えば、該ヒト抗体が、rG019抗体、rG055抗体、rG056抗体、rG061抗体、chG019抗体、H01L02抗体、H02L02抗体、H02L03抗体又はH04L02抗体とCDH6、好ましくは、CDH6のEC3への結合を妨げる)ことを確認することによって、具体的なエピトープの配列又は構造が決定されていなくても、該ヒト抗体が本明細書に記載のラット抗ヒトCDH6抗体、キメラ抗ヒトCDH6抗体又はヒト化抗ヒトCDH6抗体と同一のエピトープに結合すると判定することができる。本明細書において、当該判定方法の少なくともいずれか一方の方法により「同一のエピトープに結合する」と判定された場合、新たに作製されたヒト抗体が、本明細書に記載のラット抗ヒトCDH6抗体、キメラ抗ヒトCDH6抗体又はヒト化抗ヒトCDH6抗体と「同一のエピトープに結合する」といえる。エピトープが同一であることが確認された場合、該ヒト抗体がラット抗ヒトCDH6抗体、キメラ抗ヒトCDH6抗体又はヒト化抗ヒトCDH6抗体(例えば、rG019抗体、rG055抗体、rG056抗体、rG061抗体、chG019抗体、H01L02抗体、H02L02抗体、H02L03抗体又はH04L02抗体)と同等の生物活性を有していることが期待される。
【0121】
以上の方法によって得られたキメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体は、公知の方法等によって抗原に対する結合性を評価し、好適な抗体を選抜することができる。
【0122】
抗体の性質を比較する際の別の指標の一例としては、抗体の安定性を挙げることができる。示差走査カロリメトリー(DSC)は、蛋白の相対的構造安定性のよい指標となる熱変性中点(Tm)を素早く、また正確に測定することができる装置である。DSCを用いてTm値を測定し、その値を比較することによって、熱安定性の違いを比較することができる。抗体の保存安定性は、抗体の熱安定性とある程度の相関を示すことが知られており(Lori Burton,et.al.,Pharmaceutical Development and Technology(2007)12,p.265-273)、熱安定性を指標に、好適な抗体を選抜することができる。抗体を選抜するための他の指標としては、適切な宿主細胞における収量が高いこと、及び水溶液中での凝集性が低いことを挙げることができる。例えば収量の最も高い抗体が最も高い熱安定性を示すとは限らないので、以上に述べた指標に基づいて総合的に判断して、ヒトへの投与に最も適した抗体を選抜する必要がある。
【0123】
本発明の抗体には抗体の修飾体も含まれる。当該修飾体とは、本発明の抗体に化学的又は生物学的な修飾が施されてなるものを意味する。化学的な修飾体には、アミノ酸骨格への化学部分の結合、N-結合又はO-結合炭水化物鎖の化学修飾体等が含まれる。生物学的な修飾体には、翻訳後修飾(例えば、N-結合又はO-結合への糖鎖付加、N末又はC末のプロセッシング、脱アミド化、アスパラギン酸の異性化、メチオニンの酸化、又はN末グルタミンもしくはN末グルタミン酸のピログルタミン酸化)されたもの、原核生物宿主細胞を用いて発現させることによってN末にメチオニン残基が付加したもの等が含まれる。また、本発明の抗体又は抗原の検出又は単離を可能にするために標識されたもの、例えば、酵素標識体、蛍光標識体、アフィニティ標識体もかかる修飾物の意味に含まれる。このような本発明の抗体の修飾物は、抗体の安定性及び血中滞留性の改善、抗原性の低減、抗体又は抗原の検出又は単離等に有用である。
【0124】
また、本発明の抗体に結合している糖鎖修飾を調節すること(グリコシル化、脱フコース化等)によって、抗体依存性細胞傷害活性を増強することが可能である。抗体の糖鎖修飾の調節技術としては、国際公開第1999/54342号、同2000/61739号、同2002/31140号等が知られているが、これらに限定されるものではない。本発明の抗体には当該糖鎖修飾を調節された抗体も含まれる。
【0125】
抗体遺伝子を一旦単離した後、適当な宿主に導入して抗体を作製する場合には、適当な宿主と発現ベクターの組み合わせを使用することができる。抗体遺伝子の具体例としては、本明細書に記載された抗体の重鎖配列をコードする遺伝子、及び軽鎖配列をコードする遺伝子を組み合わせたものを挙げることができる。宿主細胞を形質転換する際には、重鎖配列遺伝子と軽鎖配列遺伝子は、同一の発現ベクターに挿入されていることが可能であり、又別々の発現ベクターに挿入されていることも可能である。
【0126】
真核細胞を宿主として使用する場合、動物細胞、植物細胞、真核微生物を用いることができる。特に動物細胞としては、哺乳類細胞、例えば、サルの細胞であるCOS細胞(Gluzman,Y.Cell(1981)23,p.175-182、ATCC CRL
-1650)、マウス線維芽細胞NIH3T3(ATCC No.CRL-1658)やチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO細胞、ATCC CCL-61)のジヒドロ葉酸還元酵素欠損株(Urlaub,G.and Chasin,L.A.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1980)77,p.4126-4220)、FreeStyle 293F細胞(Invitrogen社)を挙げることができる。
【0127】
原核細胞を使用する場合は、例えば、大腸菌、枯草菌を挙げることができる。
【0128】
これらの細胞に目的とする抗体遺伝子を形質転換によって導入し、形質転換された細胞をin vitroで培養することによって抗体が得られる。当該培養においては抗体の配列によって収量が異なる場合があり、同等な結合活性を持つ抗体の中から収量を指標に医薬としての生産が容易なものを選別することが可能である。よって、本発明の抗体には、上記形質転換された宿主細胞を培養する工程、及び当該工程で得られた培養物から目的の抗体又は当該抗体の機能性断片を採取する工程を含むことを特徴とする当該抗体の製造方法によって得られる抗体も含まれる。
【0129】
なお、哺乳類培養細胞で生産される抗体の重鎖のカルボキシル末端のリシン残基が欠失することが知られており(Journal of Chromatography A,705:129-134(1995))、また、同じく重鎖カルボキシル末端のグリシン、リシンの2アミノ酸残基が欠失し、新たにカルボキシル末端に位置するプロリン残基がアミド化されることが知られている(Analytical Biochemistry,360:75-83(2007))。しかし、これらの重鎖配列の欠失及び修飾は、抗体の抗原結合能及びエフェクター機能(補体の活性化や抗体依存性細胞傷害作用等)には影響を及ぼさない。従って、本発明に係る抗体には、当該修飾を受けた抗体及び当該抗体の機能性断片も含まれ、重鎖カルボキシル末端において1又は2つのアミノ酸が欠失した欠失体、及びアミド化された当該欠失体(例えば、カルボキシル末端部位のプロリン残基がアミド化された重鎖)等も包含される。但し、抗原結合能及びエフェクター機能が保たれている限り、本発明に係る抗体の重鎖のカルボキシル末端の欠失体は上記の種類に限定されない。本発明に係る抗体を構成する2本の重鎖は、完全長及び上記の欠失体からなる群から選択される重鎖のいずれか一種であってもよいし、いずれか二種を組み合わせたものであってもよい。各欠失体の量比は本発明に係る抗体を産生する哺乳類培養細胞の種類及び培養条件に影響を受け得るが、本発明に係る抗体の主成分としては2本の重鎖の双方でカルボキシル末端の1つのアミノ酸残基が欠失している場合を挙げることができる。
【0130】
本発明の抗体のアイソタイプとしては、例えばIgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)等を挙げることができるが、好ましくはIgG1又はIgG4を挙げることができる。
【0131】
抗体の生物活性としては、一般的には抗原結合活性、抗原と結合することによって該抗原を発現する細胞に内在化する活性、抗原の活性を中和する活性、抗原の活性を増強する活性、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性、補体依存性細胞傷害(CDC)活性及び抗体依存性細胞媒介食作用(ADCP)を挙げることができるが、本発明に係る抗体が有する機能は、CDH6に対する結合活性であり、好ましくはCDH6と結合することによってCDH6発現細胞に内在化する活性である。さらに、本発明の抗体は、細胞内在化活性に加えて、ADCC活性、CDC活性及び/又はADCP活性を併せ持っていても良い。
【0132】
得られた抗体は、均一にまで精製することができる。抗体の分離、精製は通常のタンパク質で使用されている分離、精製方法を使用すればよい。例えばカラムクロマトグラフィー、フィルター濾過、限外濾過、塩析、透析、調製用ポリアクリルアミドゲル電気泳動、
等電点電気泳動等を適宜選択、組み合わせれば、抗体を分離、精製することができる(Strategies for Protein Purification and Characterization:A Laboratory Course Manual,Daniel R.Marshak et al.eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1996);Antibodies:A Laboratory Manual.Ed Harlow and David Lane,Cold Spring Harbor Laboratory(1988))が、これらに限定されるものではない。
【0133】
クロマトグラフィーとしては、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー等を挙げることができる。
【0134】
これらのクロマトグラフィーは、HPLCやFPLC等の液体クロマトグラフィーを用いて行うことができる。
【0135】
アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、プロテインAカラム、プロテインGカラムを挙げることができる。例えばプロテインAカラムを用いたカラムとして、Hyper D,POROS,Sepharose F.F.(ファルマシア)等を挙げることができる。
【0136】
また抗原を固定化した担体を用いて、抗原への結合性を利用して抗体を精製することも可能である。
【0137】
3.抗CDH6抗体-薬物コンジュゲート
(1)薬物
上記「2.抗CDH6抗体の製造」にて取得された抗CDH6抗体はリンカー構造部分を介して薬物を結合させることによって、抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートとすることができる。薬物としては、リンカー構造に結合できる置換基、部分構造を有するものであれば特に制限はない。抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートは結合する薬物に応じて種々の用途に用いることができる。そのような薬物の例としては、抗腫瘍活性を有する物質、血液疾患に対する効果を有する物質、自己免疫疾患に対する効果を有する物質、抗炎症物質、抗菌物質、抗真菌物質、抗寄生虫物質、抗ウイルス物質、抗麻酔物質等を挙げることができる。
【0138】
(1)-1 抗腫瘍化合物
本発明の抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートに結合される化合物として抗腫瘍性化合物を用いる例について以下に述べる。抗腫瘍性化合物としては、抗腫瘍効果を有する化合物であって、リンカー構造に結合できる置換基、部分構造を有するものであれば特に制限はない。抗腫瘍性化合物は、リンカーの一部又は全部が腫瘍細胞内で切断されて抗腫瘍性化合物部分が遊離されて抗腫瘍効果が発現される。リンカーが薬物との結合部分で切断されれば抗腫瘍性化合物が本来の構造で遊離され、その本来の抗腫瘍効果が発揮される。
【0139】
上記「2.抗CDH6抗体の製造」にて取得された抗CDH6抗体はリンカー構造部分を介して抗腫瘍性化合物を結合させることによって、抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートとすることができる。
【0140】
本発明で使用される抗腫瘍性化合物の一つの例として、カンプトテシン誘導体であるエキサテカン((1S,9S)-1-アミノ-9-エチル-5-フルオロ-2,3-ジヒドロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:
6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-10,13(9H,15H)-ジオン;次式:)
【0141】
【0142】
を好適に使用することができる。同化合物は、例えば、米国特許公開公報US2016/0297890号に記載の方法やその他の公知の方法で容易に取得でき、1位のアミノ基をリンカー構造への結合部位として好適に使用することができる。また、エキサテカンはリンカーの一部が結合した状態で腫瘍細胞内で遊離される場合もあるが、この様な状態でも優れた抗腫瘍効果が発揮される化合物である。
【0143】
エキサテカンはカンプトテシン構造を有するので、酸性水性媒体中(例えばpH3程度)ではラクトン環が形成された構造(閉環体)に平衡が偏り、一方、塩基性水性媒体中(例えばpH10程度)ではラクトン環が開環した構造(開環体)に平衡が偏ることが知られている。このような閉環構造及び開環構造に対応するエキサテカン残基を導入した薬物コンジュゲートであっても同等の抗腫瘍効果が期待され、いずれのものも本発明の範囲に包含されることはいうまでもない。
【0144】
他の抗腫瘍性化合物として例えば、文献(Pharmacological Reviews, 68,p3-19,2016)記載の抗腫瘍化合物を挙げることができ、その一例として、ドキソルビシン(Doxorubicin)、カルケマイシン(Calicheamicine)、ドラスタチン(Dorastatin)10、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)等のアウリスタチン類(Auristatins)、DM1、DM4等のメイタンシノイド類(Maytansinoids)、ピロロベンゾジアゼピン(Pyrrolobenzodiazepine)二量体のSG2000(SJG-136)、カンプトテシンの誘導体であるSN-38、CC-1065等のデュオカルマイシン類(Duocarmycins)、アマニチン(Amanitin)、ダウノルビシン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、シクロシチジン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メトトレキセート、白金系抗腫瘍剤(シスプラチン若しくはその誘導体)、タキソール若しくはその誘導体等を挙げることができる。
【0145】
抗体-薬物コンジュゲートにおいて、抗体1分子への薬物の結合数は、その有効性、安全性に影響する重要因子である。抗体-薬物コンジュゲートの製造は、薬物の結合数が一定の数となるよう、反応させる原料・試薬の使用量等の反応条件を規定して実施されるが、低分子化合物の化学反応とは異なり、異なる数の薬物が結合した混合物として得られるのが通常である。抗体1分子への薬物の結合数は平均値、すなわち、平均薬物結合数として特定され、表記される。本発明でも原則として断りのない限り、すなわち、異なる薬物結合数をもつ抗体-薬物コンジュゲート混合物に含まれる特定の薬物結合数をもつ抗体-薬物コンジュゲートを示す場合を除き、薬物の結合数は平均値を意味する。抗体分子へのエキサテカンの結合数はコントロール可能であり、1抗体あたりの薬物平均結合数として、1~10個程度のエキサテカンを結合させることができるが、好ましくは2~8個、3~8個、4~8個、5~8個、6~8個、7~8個であり、より好ましくは5~8個であり、更に好ましくは7~8個であり、更により好ましくは8個である。なお、当業者であれば本願の実施例の記載から抗体に必要な数の薬物を結合させる反応を設計することができ、エキサテカンの結合数をコントロールした抗体-薬物コンジュゲートを取得することができる。
【0146】
(2)リンカー構造
本発明の抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートにおいて薬物を抗CDH6抗体に結合させるリンカー構造について述べる。
【0147】
本願の抗体-薬物コンジュゲートにおいて、抗CDH6抗体と薬物とを結合するリンカー構造は、抗体-薬物コンジュゲートとして用いることができる限りにおいて特に制限されず、使用目的に応じて適宜選択して用いることもできる。リンカー構造の一例としては、公知文献(Pharmacol Rev 68:3-19, January 2016、Protein Cell DOI 10.1007/s13238-016-0323-0等)に記載のリンカーを挙げることができ、更に具体的な例としては、VC(バリン-シトルリン:valine-citrulline)、MC(マレインアミドカプロイル:maleimidocaproyl)、SMCC(スクシニミジル 4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート:succinimidyl 4-(N-maleimidomethyl) cyclohexane-1-carboxylate)、SPP(N-スクシニミジル 4-(2-ピリジルジチオ)ペンタン酸:N-succinimidyl 4-(2-pyridyldithio)pentanoate、SS(ジスルフィド:disulfide)、SPDB(N-スクシミジル 4-(2-ピリジルジチオ)ブチラート)N-succinimidyl 4-(2-pyridyldithio)butyrate、SS/ヒドラゾン、ヒドラゾン、カルボネートを挙げることができる。
【0148】
他の一例としては、例えば、米国特許公開公報US2016/0297890に記載のリンカー構造(一例として、段落[0260]~[0289]に記載のもの)を挙げることができ、以下の構造のものを好適に使用することができる。なお以下に示す構造の左端が抗体との結合部位であり、右端が薬物との結合部位である。また、下記のリンカー構造中のGGFGは、グリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシン(GGFG)からなるペプチド結合でつながっているアミノ酸配列を示す。
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2O-CH2CH2O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2O-CH2CH2O-CH2CH2O-CH2CH2O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-。
【0149】
より好ましくは、次のものを挙げることができる。
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2O-CH2CH2O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-。
さらにより好ましくは、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2O-CH2CH2O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-。
を挙げることができる。
【0150】
抗体は-(Succinimid-3-yl-N)の末端、(例えば、『-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-』においては、(-CH2CH2CH2CH2CH2-)が結合するのとは反対側の末端(左末端))で結合し、抗腫瘍性化合物は-(Succinimid-3-yl-N)とは反対側の末端(上記例では右末端の、CH2-O-CH2-C(=O)-のカルボニル基で結合する。『-(Succinimid-3-yl-N)-』は、次式:
【0151】
【0152】
で示される構造を有する。この部分構造における3位が抗CDH6抗体への結合部位である。この3位での該抗体との結合は、チオエーテルを形成して結合することが特徴である。この構造部分の1位の窒素原子は、この構造が含まれるリンカー内に存在するメチレンの炭素原子と結合する。
【0153】
薬物をエキサテカンとする本発明の抗体-薬物コンジュゲートにおいては、下記の構造の薬物-リンカー構造部分を抗体に結合させたものが好ましい。これらの薬物-リンカー構造部分は、1抗体あたりの平均結合数として、1から10を結合させればよいが、好ましくは2から8であり、より好ましくは5から8であり、更に好ましくは7から8であり、更により好ましくは8である。
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=
O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2O-CH2CH2O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2O-CH2CH2O-CH2CH2O-CH2CH2O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)。
【0154】
より、好ましくは、次のものである。
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2O-CH2CH2O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)。
【0155】
さらに、より好ましくは、次のものを挙げることができる。
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2O-CH2CH2O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)。
【0156】
また、-(NH-DX)は次式:
【0157】
【0158】
で示される構造であり、エキサテカンの1位のアミノ基の水素原子1個が除かれて生成する基を示す。
【0159】
(3)抗体-薬物コンジュゲートの製造方法
本発明の抗体ー薬物コンジュゲートに用いることができる抗体は、上記「2.抗CDH6抗体の製造」の項及び実施例に記載の内在化活性を有する抗CDH6抗体及び該抗体の機能性断片であれば特に制限がない。
【0160】
次に、本発明の抗体-薬物コンジュゲートの代表的な製造方法について説明する。なお、以下において、化合物を示すために、各反応式中に示される化合物の番号を用いる。すなわち、『式(1)の化合物』、『化合物(1)』等と称する。また、これ以外の番号の化合物についても同様に記載する。
【0161】
(3)-1 製造方法1
下記式(1)で示される抗体-薬物コンジュゲートのうち、チオエーテルを介して抗CDH6抗体とリンカー構造が結合しているものは抗CDH6抗体を還元してジスルフィド結合をスルヒドリル基に変換した抗体に対して、既知の方法によって入手しうる化合物(2)(例えば、US2016/297890号公開特許公報に記載の方法(例えば段落[0336]~[0374]に記載の方法)で入手可能)を反応させることによって製造することができる。例えば下記の方法によって製造することができる。
【0162】
【0163】
[式中、ABは、スルフヒドリル基を有する抗体を示す。
ここで、L1は、
-(Succinimid-3-yl-N)-の構造で示される。
L1’は次式で示される、マレイミジル基を示す。]
【0164】
【0165】
-L1-LXは、以下の式で示されるいずれかの構造を有する。
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2O-CH2CH2O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2O-CH2CH2O-CH2CH2O-CH2CH2O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-。
【0166】
これらのうちでより好ましくは、次のものである。
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2O-CH2CH2O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-。
【0167】
さらに、好ましくは、次のものを挙げることができる。
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2O-CH2CH2O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-。
【0168】
また、上記の反応式において抗体-薬物コンジュゲート(1)では、薬物からリンカー末端までの構造部分1個が1個の抗体に対して結合した構造として記載されているが、これは説明のための便宜的な記載であって、実際には当該構造部分が1個の抗体分子に対して複数個が結合している場合が多い。この状況は以下の製造方法の説明においても同様である。
【0169】
すなわち、既知の方法によって入手しうる化合物(2)(例えば、US2016/297890号公開特許公報に記載の方法(例えば段落[0336]~[0374]に記載の方法)で入手可能)で入手可能)と、スルフヒドリル基を有する抗体(3a)を反応させることによって、抗体-薬物コンジュゲート(1)を製造することができる。
【0170】
スルフヒドリル基を有する抗体(3a)は、当業者周知の方法で得ることができる(Hermanson,G.T、Bioconjugate Techniques、pp.56-136、pp.456-493、Academic Press(1996))。例えば、Traut’s試薬を抗体のアミノ基に作用させる;N-サクシンイミジルS-アセチルチオアルカノエート類を抗体のアミノ基に作用させた後、ヒドロキシルアミンを作用させる;N-サクシンイミジル3-(ピリジルジチオ)プロピオネートを作用させた後、還元剤を作用させる;ジチオトレイトール、2-メルカプトエタノール、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)等の還元剤を抗体に作用させて抗体内鎖間部のジスルフィド結合を還元しスルフヒドリル基を生成させる;等の方法を挙げることができるがこれらに限定されることはない。
【0171】
具体的には、還元剤としてTCEPを、抗体内鎖間部ジスルフィド一個当たりに対して0.3乃至3モル当量用い、キレート剤を含む緩衝液中で、抗体と反応させることで、抗体内鎖間部ジスルフィドが部分的もしくは完全に還元された抗体を得ることができる。キレート剤としては、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)やジエチレントリアミン5酢酸(DTPA)等を挙げることができる。これ等を1mM乃至20mMの濃度で用いればよい。緩衝液としては、リン酸ナトリウムやホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム溶液等を用いることができる。具体的な例において、抗体は4℃乃至37℃にて1乃至4時間TCEPと反応させることで部分的もしくは完全に還元されたスルフヒドリル基を有する抗体(3a)を得ることが出来る。
【0172】
なお、ここでスルフヒドリル基を薬物-リンカー部分に付加させる反応を実施させることでチオエーテル結合によって薬物-リンカー部分を結合させることができる。
【0173】
次に、スルフヒドリル基を有する抗体(3a)一個あたり、2乃至20モル当量の化合物(2)を使用して、抗体1個当たり2個乃至8個の薬物が結合した抗体―薬物コンジュゲート(1)を製造することができる。具体的には、スルフヒドリル基を有する抗体(3a)を含む緩衝液に、化合物(2)を溶解させた溶液を加えて反応させればよい。ここで、緩衝液としては、酢酸ナトリウム溶液、リン酸ナトリウムやホウ酸ナトリウム、等を用いればよい。反応時のpHは5乃至9であり、より好適にはpH7付近で反応させればよい。化合物(2)を溶解させる溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチル-2-ピリドン(NMP)等の有機溶媒を用いることができる。化合物(2)を溶解させた有機溶媒溶液を、スルフヒドリル基を有する抗体(3a)を含む緩衝液に1乃至20%v/vを加えて反応させればよい。反応温度は、0乃至37℃、より好適には10乃至25℃であり、反応時間は、0.5乃至2時間である。反応は、未反応の化合物(2)の反応性をチオール含有試薬によって失活させることによって終了できる。チオール含有試薬は例えば、システイン又はN-アセチル-L-システイン(NAC)である。より具体的には、NACを、用いた化合物(2)に対して、1乃至2モル当量加え、室温で10乃至30分インキュベートすることにより反応を終了できる。
【0174】
(4)抗体―薬物コンジュゲートの同定
製造した抗体-薬物コンジュゲート(1)は、以下の共通操作によって濃縮、バッファー交換、精製、抗体濃度及び抗体一分子あたりの薬物平均結合数の測定を行い、抗体-薬物コンジュゲート(1)の同定を行うことができる。
【0175】
(4)-1 共通操作A:抗体もしくは抗体-薬物コンジュゲート水溶液の濃縮
Amicon Ultra(50,000 MWCO,Millipore Corporation)の容器内に抗体もしくは抗体-薬物コンジュゲート溶液を入れ、遠心機(Allegra X-15R,Beckman Coulter,Inc.)を用いた遠心操作(2000G乃至3800Gにて5乃至20分間遠心)にて、抗体もしくは抗体-薬物コンジュゲート溶液を濃縮した。
【0176】
(4)-2 共通操作B:抗体の濃度測定
UV測定器(Nanodrop 1000,Thermo Fisher Scientific Inc.)を用いて、メーカー規定の方法に従い、抗体濃度の測定を行った。その際に、抗体ごとに異なる280nm吸光係数(1.3mLmg-1cm-1乃至1.8mLmg-1cm-1)を用いた。
【0177】
(4)-3 共通操作C:抗体のバッファー交換
Sephadex G-25担体を使用したNAP-25カラム(Cat.No.17-0852-02,GE Healthcare Japan Corporation)を、メーカー規定の方法に従い、塩化ナトリウム(50mM)及びEDTA(2mM)を含むリン酸緩衝液(50mM,pH6.0)(本明細書でPBS6.0/EDTAと称する。)にて平衡化させた。このNAP-25カラム一本につき、抗体水溶液2.5mLをのせたのち、PBS6.0/EDTA3.5mLで溶出させた画分(3.5mL)を分取した。この画分を共通操作Aによって濃縮し、共通操作Bを用いて抗体濃度の測定を行ったのちに、PBS6.0/EDTAを用いて20mg/mLに抗体濃度を調整した。
【0178】
(4)-4 共通操作D:抗体-薬物コンジュゲートの精製
市販のSorbitol(5%)を含む酢酸緩衝液(10mM,pH5.5;本明細書でABSと称する。)のいずれかの緩衝液でNAP-25カラムを平衡化させた。このNAP-25カラムに、抗体-薬物コンジュゲート反応水溶液(約2.5mL)をのせ、メーカー規定の量の緩衝液で溶出させることで、抗体画分を分取した。この分取画分を再びNAP-25カラムにのせ緩衝液で溶出させるゲルろ過精製操作を計2乃至3回繰り返すことで、未結合の薬物リンカーや低分子化合物(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP),N-アセチル-L-システイン(NAC),ジメチルスルホキシド)を除いた抗体-薬物コンジュゲートを得た。
【0179】
(4)-5 共通操作E:抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体濃度及び抗体一分子あたりの薬物平均結合数の測定
抗体-薬物コンジュゲートにおける結合薬物濃度は、抗体-薬物コンジュゲート水溶液の280nm及び370nmの二波長におけるUV吸光度を測定したのちに下記の計算を行うことで、算出することができる。
【0180】
ある波長における全吸光度は系内に存在する全ての吸収化学種の吸光度の和に等しい[吸光度の加成性]ことから、抗体と薬物のコンジュゲーション前後において、抗体及び薬物のモル吸光係数に変化がないと仮定すると、抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体濃度及び薬物濃度は、下記の関係式で示される。
A280=AD,280+AA,280=εD,280CD+εA,280CA 式(1)
A370=AD,370+AA,370=εD,370CD+εA,370CA 式(2)
ここで、A280は280nmにおける抗体-薬物コンジュゲート水溶液の吸光度を示し、A370は370nmにおける抗体-薬物コンジュゲート水溶液の吸光度を示し、AA,280は280nmにおける抗体の吸光度を示し、AA,370は370nmにおける抗体の吸光度を示し、AD,280は280nmにおけるコンジュゲート前駆体の吸光度を示し、AD,370は370nmにおけるコンジュゲート前駆体の吸光度を示し、εA,280は280nmにおける抗体のモル吸光係数を示し、εA,370は370nmにおける抗体のモル吸光係数を示し、εD,280は280nmにおけるコンジュゲート前駆体のモル吸光係数を示し、εD,370は370nmにおけるコンジュゲート前駆体のモル吸光係数を示し、CAは抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体濃度を示し、CDは抗体-薬物コンジュゲートにおける薬物濃度を示す。
【0181】
ここで、εA,280、εA,370、εD,280、εD,370は、事前に用意した値(計算推定値もしくは化合物のUV測定から得られた実測値)が用いられる。例えば、εA,280は、抗体のアミノ酸配列から、既知の計算方法(Protein Science,1995,vol.4,2411-2423)によって推定することが出来る。εA,370は、通常、ゼロである。εD,280及びεD,370は、用いるコンジュゲート前駆体をあるモル濃度に溶解させた溶液の吸光度を測定することで、ランベルト・ベールの法則(吸光度=モル濃度×モル吸光係数×セル光路長)によって、得ることができる。抗体-薬物コンジュゲート水溶液のA280及びA370を測定し、これらの値を式(1)及び(2)に代入して連立方程式を解くことによって、CA及びCDを求めることができる。さらにCDをCAで除することで1抗体あたりの薬物平均結合数が求めることができる。
【0182】
(4)-6 共通操作F:抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体一分子あたりの薬物平均結合数の測定(2)
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体一分子あたりの薬物平均結合数は、前述の「(4)-5 共通操作E」に加え、以下の方法を用いる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によっても求めることができる。以下に、抗体と薬物リンカーがジスルフィド結合している場合のHPLCによる薬物平均結合数の測定方法を記載する。当業者は、この方法を参照して、抗体と薬物リンカーとの結合様式に依存して適宜、HPLCにより薬物平均結合数を測定し得る。
【0183】
F-1.HPLC分析用サンプルの調製(抗体-薬物コンジュゲートの還元)
抗体-薬物コンジュゲート溶液(約1mg/mL、60μL)をジチオトレイトール(DTT)水溶液(100mM、15μL)と混合する。混合物を37℃で30分インキュベートすることで、抗体-薬物コンジュゲートの軽鎖及び重鎖間のジスルフィド結合を切断したサンプルを、HPLC分析に用いる。
【0184】
F-2.HPLC分析
HPLC分析を、下記の測定条件にて行う。
【0185】
HPLCシステム:Agilent 1290 HPLCシステム(Agilent Technologies)
検出器:紫外吸光度計(測定波長:280nm)
カラム:ACQUITY UPLC BEH Phenyl(2.1×50mm、1.7μm、130Å;Waters、P/N 186002884)
カラム温度:80℃
移動相A:0.10%トリフルオロ酢酸(TFA)、15%2-プロパノールを含む水溶液
移動相B:0.075%TFA、15%2-プロパノールを含むアセトニトリル溶液
グラジエントプログラム:14%-36%(0分-15分)、36%-80%(15分-17分)、80%-14%(17分―17.01分)、14%(17.01分―25分)
サンプル注入量:10μL
F-3.データ解析
F-3-1 薬物の結合していない抗体の軽鎖(L0)及び重鎖(H0)に対して、薬物の結合した軽鎖(薬物がi個結合した軽鎖:Li)及び重鎖(薬物がi個結合した重鎖:Hi)は、結合した薬物の数に比例して疎水性が増し保持時間が大きくなることから、例えば、L0、L1、H0、H1、H2、H3の順に溶出される。L0及びH0との保持時間比較により検出ピークをL0、L1、H0、H1、H2、H3のいずれかに割り当てることができる。薬物結合数は、当業者によって定義され得るが、好ましくは、L0、L1、H0、H1、H2、H3である。
【0186】
F-3-2 薬物リンカーにUV吸収があるため、薬物リンカーの結合数に応じて、軽鎖、重鎖及び薬物リンカーのモル吸光係数を用いて下式に従ってピーク面積値の補正を行う。
【0187】
【0188】
【0189】
ここで、各抗体における軽鎖及び重鎖のモル吸光係数(280nm)は、既知の計算方法(Protein Science, 1995, vol.4, 2411-2423)によって、各抗体の軽鎖及び重鎖のアミノ酸配列から推定される値を用いることができる。H01L02の場合、そのアミノ酸配列に従って、軽鎖のモル吸光係数として31710を、重鎖のモル吸光係数として79990を推定値として用いた。また、薬物リンカーのモル吸光係数(280nm)は、各薬物リンカーをメルカプトエタノール又はN-アセチルシステインで反応させ、マレイミド基をサクシニイミドチオエーテルに変換した化合物の実測のモル吸光係数(280nm)を用いた。吸光度を測定する波長は、当業者によって適宜設定され得るが、好ましくは、抗体のピークが測定され得る波長であり、より好ましくは280nmである。
【0190】
F-3-3 ピーク面積補正値合計に対する各鎖ピーク面積比(%)を下式に従って計算する。
【0191】
【0192】
F-3-4 抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体一分子あたりの薬物平均結合数を、下式に従って計算する。
【0193】
薬物平均結合数=(L0ピーク面積比x0+L1ピーク面積比x1+H0ピーク面積比x0+H1ピーク面積比x1+H2ピーク面積比x2+H3ピーク面積比x3)/100x2
なお、抗体-薬物コンジュゲートの量を確保するために、同様な条件で作製して得られた平均薬物数が同程度の複数の抗体-薬物コンジュゲート(例えば±1程度)を混合して新たなロットにすることができる。その場合、平均薬物数は混合前の平均薬物数の間に収まる。
【0194】
本発明の抗体-薬物コンジュゲートの一つの具体例としては次式:
【0195】
【0196】
又は次式:
【0197】
【0198】
で示される構造を有するものを挙げることができる。
【0199】
ここで、ABは本明細書で開示される抗CDH6抗体を示し、抗体由来のスルフヒドリル基を介して結合リンカーと結合している。ここで、nはいわゆるDAR(Drug-to-Antibody Ratio)と同義であり、1抗体あたりの薬物抗体比を示す。すなわち、抗体1分子への薬物の結合数を示すが、これは平均値、すなわち、平均薬物結合数として特定され、表記される数値である。本発明の[化9]及び[化10]で示される抗体-薬物コンジュゲートの場合、共通操作Fによる測定で、nは、2から8であればよく、好ましくは5から8であり、更に好ましくは7から8であり、更により好ましく8である。
【0200】
本発明の抗体薬物-コンジュゲートの一例として、上記式[化9]又は[化10]に示される構造において、ABで示される抗体が、以下の(a)乃至(g)からなる群から選択されるいずれか1項に記載の重鎖及び軽鎖の抗体又はその機能性断片を含む、抗体-薬物コンジュゲート又はその薬理学上許容される塩を挙げることができる:
(a)配列番号61に示される軽鎖全長アミノ酸配列の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号69に示される重鎖全長アミノ酸配列の20~471番目のア
ミノ酸配列からなる重鎖からなる抗体;
(b)配列番号61に示される軽鎖全長アミノ酸配列の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号73に示される重鎖全長アミノ酸配列の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖からなる抗体;
(c)配列番号61に示される軽鎖全長アミノ酸配列の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号77に示される重鎖全長アミノ酸配列の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖からなる抗体;
(d)配列番号65に示される軽鎖全長アミノ酸配列の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号69に示される重鎖全長アミノ酸配列の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖からなる抗体;
(e)配列番号65に示される軽鎖全長アミノ酸配列の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号73に示される重鎖全長アミノ酸配列の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖からなる抗体;
(f)配列番号65に示される軽鎖全長アミノ酸配列の21~233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖及び配列番号77に示される重鎖全長アミノ酸配列の20~471番目のアミノ酸配列からなる重鎖からなる抗体;又は
(g)重鎖又は軽鎖がN-結合への糖鎖付加、O-結合への糖鎖付加、N末のプロセッシング、C末のプロセッシング、脱アミド化、アスパラギン酸の異性化、メチオニンの酸化、N末にメチオニン残基の付加、プロリン残基のアミド化、N末グルタミンやN末グルタミン酸のピログルタミン酸化などに代表される翻訳後修飾、及びカルボキシル末端における1つ又は2つのアミノ酸欠失からなる群より選択される1又は2以上の修飾を含む、(a)~(f)からなる群から選択されるいずれか1つに記載の抗体。
【0201】
4.医薬
上記、「2.抗CDH6抗体の製造」の項及び実施例に記載された本発明の抗CDH6抗体及び当該抗体の機能性断片は、腫瘍細胞表面のCDH6に結合し、内在化活性を有することから、単独であるいは他の薬剤と組み合わせて、医薬として、腎細胞腫瘍及び卵巣腫瘍等のがん、例えば、腎細胞癌、腎淡明細胞癌、乳頭状腎細胞癌、卵巣癌、卵巣漿液性腺癌、甲状腺癌、胆管癌、肺癌(例えば、小細胞肺癌又は非小細胞肺癌)、神経膠芽腫、中皮腫、子宮癌、膵臓癌、ウィルムス腫瘍又は神経芽腫の治療剤として用いることができる。
【0202】
また、CDH6を発現している細胞の検出に用いることができる。
【0203】
更に、本発明の抗CDH6抗体及び当該抗体の機能性断片は、内在化活性を有することから、抗体-薬物コンジュゲートに用いる抗体として供することができる。
【0204】
上記「3.抗CDH6抗体-薬物コンジュゲート」の項及び実施例に記載の本発明の抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートのうちで薬物として細胞傷害活性等の抗腫瘍活性を有する薬物が用いられているものは、内在化活性を有する抗CDH6抗体及び/又は当該抗体の機能性断片と細胞傷害活性等の抗腫瘍活性を有する薬物のコンジュゲートであり、CDH6を発現しているがん細胞に対して抗腫瘍活性を示すことから、医薬として、特にがんに対する治療剤及び/又は予防剤として使用することができる。
【0205】
本発明の抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートは、大気中に放置したり、又は再結晶や精製操作をしたりすることにより、水分を吸収し、あるいは吸着水が付着するなどして、水和物になる場合があり、そのような水を含む化合物又は薬理学的に許容され得る塩も本発明に包含される。
【0206】
本発明の抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートが、アミノ基などの塩基性基を有する場
合、所望により薬理学的に許容され得る酸付加塩を形成することができる。そのような酸付加塩としては、例えばフッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩などのハロゲン化水素酸塩;硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、燐酸塩などの無機酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩などの低級アルカンスルホン酸塩;ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩などのアリ-ルスルホン酸塩;蟻酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、りんご酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩などの有機酸塩;又はオルニチン酸塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩などのアミノ酸塩などを挙げることができる。
【0207】
本発明の抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートが、カルボキシ基などの酸性基を有する場合、所望により薬理学的に許容され得る塩基付加塩を形成することができる。そのような塩基付加塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩などの無機塩;ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、N-メチルグルカミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩、ジエタノールアミン塩、N-ベンジル-N-(2-フェニルエトキシ)アミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニウム塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩などの有機アミン塩などを挙げることができる。
【0208】
本発明はまた、抗体-薬物コンジュゲートを構成する原子の1以上が、その原子の同位体で置換された抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートを包含し得る。同位体には放射性同位体及び安定同位体の2種類が存在し、同位体の例としては、例えば、水素の同位体(2H及び3H)、炭素の同位体(11C、13C及び14C)、窒素の同位体(13N及び15N)、酸素の同位体(15O、17O及び18O)、フッ素の同位体(18F)などを挙げることができる。同位体で標識された抗体-薬物コンジュゲートを含む組成物は、例えば、治療剤、予防剤、研究試薬、アッセイ試薬、診断剤、インビボ画像診断剤などとして有用である。同位体で標識された抗体-薬物コンジュゲート、及び、同位体で標識された抗体-薬物コンジュゲートの任意の割合の混合物もすべて本発明に包含される。同位体で標識された抗体-薬物コンジュゲートは、当該分野で公知の方法により、例えば、後述する本発明の製造方法における原料の代わりに同位体で標識された原料を用いることにより、製造することができる。
【0209】
in vitroでの殺細胞活性は例えば、細胞の増殖抑制活性で測定することができる。例えば、CDH6を過剰発現している癌細胞株を培養し、培養系に種々の濃度で抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートを添加し、フォーカス活性、コロニー形成及びスフェロイド増殖に対する抑制活性を測定することができる。ここで、例えば、腎細胞腫瘍及び卵巣腫瘍由来がん細胞株等を用いることで、腎細胞腫瘍及び卵巣腫瘍に対する細胞増殖抑制活性を調べることができる。
【0210】
in vivoでの実験動物を用いたがんに対する治療効果は、例えば、CDH6を高発現している腫瘍細胞株を移植したヌードマウスに抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートを投与し、がん細胞の変化を測定することができる。ここで、例えば、腎細胞癌、腎淡明細胞癌、乳頭状腎細胞癌、卵巣癌、卵巣漿液性腺癌又は甲状腺癌由来の細胞を免疫不全マウスに移植した動物モデルを用いることで、腎細胞癌、腎淡明細胞癌、乳頭状腎細胞癌、卵巣癌、卵巣漿液性腺癌又は甲状腺癌に対する治療効果を測定することができる。
【0211】
本発明の抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートが適用されるがんの種類としては、治療対象となるがん細胞においてCDH6を発現しているがんであれば特に制限されないが、例えば、腎細胞癌(例えば、腎淡明細胞癌又は乳頭状腎細胞癌)、卵巣癌、卵巣漿液性腺
癌、甲状腺癌、胆管癌、肺癌(例えば、小細胞肺癌又は非小細胞肺癌)、神経膠芽腫、中皮腫、子宮癌、膵臓癌、ウィルムス腫瘍又は神経芽腫を挙げることができるが、CDH6を発現している限りこれらに制限されない。より好ましいがんの例としては、腎細胞癌(例えば、腎淡明細胞癌、乳頭状腎細胞癌)又は卵巣癌を挙げることができる。
【0212】
本発明の抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートは、哺乳動物に対して好適に投与することができるが、より好ましくはヒトである。
【0213】
本発明の抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートが含まれる医薬組成物において使用される物質としては、投与量や投与濃度において、この分野において通常使用される製剤添加物その他から適宜選択して適用することができる。
【0214】
本発明の抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートは、1種以上の薬学的に適合性の成分を含む薬学的組成物として投与され得る。例えば、上記薬学的組成物は、代表的には、1種以上の薬学的キャリア(例えば、滅菌した液体(例えば、水及び油(石油、動物、植物、又は合成起源の油(例えば、ラッカセイ油、大豆油、鉱油、ごま油など)を含む))を含む。水は、上記薬学的組成物が静脈内投与される場合に、より代表的なキャリアである。食塩水溶液、ならびにデキストロース水溶液及びグリセロール水溶液もまた、液体キャリアとして、特に、注射用溶液のために使用され得る。適切な薬学的賦形剤は、当該分野で公知である。上記組成物はまた、所望であれば、微量の湿潤剤もしくは乳化剤、又はpH緩衝化剤を含み得る。適切な薬学的キャリアの例は、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載される。その処方は、投与の態様に対応する。
【0215】
種々の送達システムが公知であり、本発明の抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートを投与するために使用され得る。導入方法としては、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、及び皮下の経路が挙げられるが、これらに限定されない。投与は、例えば、注入又はボーラス注射によるものであり得る。特定の好ましい実施形態において、上記抗体-薬物コンジュゲートの投与は、注入によるものである。非経口的投与は、好ましい投与経路である。
【0216】
代表的実施形態において、上記薬学的組成物は、ヒトへの静脈内投与に適合した薬学的組成物として、常習的手順に従って処方される。代表的には、静脈内投与のための組成物は、滅菌の等張性の水性緩衝液中の溶液である。必要である場合、上記医薬はまた、可溶化剤及び注射部位での疼痛を和らげるための局所麻酔剤(例えば、リグノカイン)を含み得る。一般に、上記成分は、(例えば、活性剤の量を示すアンプル又はサシェなどに密封してシールされた容器中の乾燥凍結乾燥粉末又は無水の濃縮物として、別個に、又は単位剤形中で一緒に混合して、のいずれかで供給される。上記医薬が注入によって投与される予定である場合、それは、例えば、滅菌の製薬グレードの水又は食塩水を含む注入ボトルで投薬され得る。上記医薬が注射によって投与される場合、注射用滅菌水又は食塩水のアンプルは、例えば、上記成分が投与前に混合され得るように、提供され得る。
【0217】
本発明の医薬組成物には本願の抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートのみを含む医薬組成物であってもよいし、抗CDH6抗体-薬物コンジュゲート及び少なくとも一つのこれ以外のがん治療剤を含む医薬組成物であってもよい。本発明の抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートは、他のがん治療剤と共に投与することもでき、これによって抗がん効果を増強させることができる。このような目的で使用される他の抗がん剤は、抗体-薬物コンジュゲートと同時に、別々に、あるいは連続して個体に投与されてもよいし、それぞれの投与間隔を変えて投与してもよい。このようながん治療剤として、Imatinib、Sunitinib、Regorafenibなどを含むチロシンキナーゼ阻害剤、Palbociclibなどを含むCDK4/6阻害剤、TAS-116などを含むHSP90阻害剤、MEK162などを含むMEK阻害剤、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、イピリムマブなどを含む免疫チェックポイント阻害剤等を挙げることができるが、抗腫瘍活性を有する薬剤であれば限定されることはない。
【0218】
このような医薬組成物は、選択された組成と必要な純度を持つ製剤として、凍結乾燥製剤あるいは液状製剤として製剤化すればよい。凍結乾燥製剤として製剤化する際には、この分野において使用される適当な製剤添加物が含まれる製剤であってもよい。また液剤においても同様にして、この分野において使用される各種の製剤添加物を含む液状製剤として製剤化することができる。
【0219】
医薬組成物の組成及び濃度は投与方法によっても変化するが、本発明の医薬組成物に含まれる抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートは、抗体-薬物コンジュゲートの抗原に対する親和性、すなわち、抗原に対する解離定数(Kd値)の点において、親和性が高い(Kd値が低い)ほど、少量の投与量であっても薬効を発揮させことができる。したがって、抗体-薬物コンジュゲートの投与量の決定に当たっては、抗体-薬物コンジュゲートと抗原との親和性の状況に基づいて投与量を設定することもできる。本発明の抗体-薬物コンジュゲートをヒトに対して投与する際には、例えば、約0.001~100mg/kgを1回あるいは1~180日間に1回の間隔で複数回投与すればよい。好適には、0.1~50mg/kgを、さらに好適には、1~50mg/kg、1~30mg/kg、1~20mg/kg、1~15mg/kg、2~50mg/kg、2~30mg/kg、2~20mg/kg又は2~15mg/kgを1~4週間に1回、好ましくは2~3週間に1回の間隔で複数回投与すればよい。
【実施例】
【0220】
以下に示す実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、これらはいかなる意味においても限定的に解釈されるものではない。なお、下記実施例において遺伝子操作に関する各操作は特に明示がない限り、「モレキュラークローニング(Molecular Cloning)」(Sambrook,J.,Fritsch,E.F.及びManiatis,T.著,Cold SpringHarbor Laboratory Pressより1989年発刊)に記載の方法及びその他の当業者が使用する実験書に記載の方法により行うか、又は、市販の試薬やキットを用いる場合には市販品の指示書に従って行った。また、本明細書において、特に記載のない試薬、溶媒及び出発材料は、市販の供給源から容易に入手可能である。
【0221】
[実施例1:内在化活性を有するラット抗ヒトCDH6抗体の取得]
1)-1 ヒト、マウス、ラットおよびカニクイザルCDH6発現ベクターの構築
ヒトCDH6タンパク質(NP_004923)をコードするcDNA発現ベクター(OriGene社、RC217889)を用いて、当業者に公知な方法に従い哺乳動物発現用ベクターに組み込むことによってヒトCDH6発現ベクターpcDNA3.1-hCDH6が作製された。ヒトCDH6 ORF(Open Reading Frame)のアミノ酸配列を配列番号1に示す。
【0222】
マウスCDH6タンパク質(NP_031692)をコードするcDNA発現ベクター(OriGene社、MC221619)を用いて、当業者に公知な方法に従い哺乳動物発現用ベクターに組み込むことによってマウスCDH6発現ベクターpcDNA3.1-mCDH6、及びp3xFLAG-CMV-9-mCDH6が作製された。マウスCDH6 ORFのアミノ酸配列を配列番号7に示す。
【0223】
ラットCDH6タンパク質(NP_037059)をコードするcDNA発現ベクター(OriGene社、RN211850)の各cDNA部分を用いて、当業者に公知な方
法に従い哺乳動物発現用ベクターに組み込むことによってヒトCDH6発現ベクターpcDNA3.1-rCDH6、及びp3xFLAG-CMV-9-rCDH6が作製された。ラットCDH6 ORFのアミノ酸配列を配列番号8に示す。
【0224】
カニクイザルCDH6タンパク質をコードするcDNAは、カニクイザル腎臓のtotal RNAより合成したcDNAを鋳型にprimer 1 (5’-CACCATGAGAACTTACCGCTACTTCTTGCTGCTC-3’)(配列番号85)及びprimer 2 (5’-TTAGGAGTCTTTGTCACTGTCCACTCCTCC-3’)(配列番号86)を用いてクローニングを行った。得られた配列が、カニクイザルCDH6(NCBI,XP_005556691.1)の細胞外領域と一致することを確認した。また、EMBLで登録されたカニクイザルCDH6(EHH54180.1)と全長配列が一致することを確認した。当業者に公知な方法に従い哺乳動物発現用ベクターに組み込むことによってカニクイザルCDH6発現ベクターpcDNA3.1-cynoCDH6が作製された。カニクイザルCDH6 ORFのアミノ酸配列を配列番号9に示す。
【0225】
作製したプラスミドDNAの大量調製は、EndoFree Plasmid Giga Kit(QIAGEN)を用いて行った。
【0226】
1)-2 免疫
免疫にはWKY/Izmラットの雌(日本エスエルシー社)を使用した。まずラット両足下腿部をHyaluronidase(SIGMA-ALDRICH社)にて前処理後、同部位に実施例1)- 1で作製したヒトCDH6発現ベクターpcDNA3.1-hCDH6を筋肉内注射した。続けて、ECM830(BTX社)を使用し、2ニードル電極を用いて、同部位にインビボエレクトロポレーションを実施した。約二週間に一度、同様のインビボエレクトロポーレーションを繰り返した後、ラットのリンパ節又は脾臓を採取しハイブリドーマ作製に用いた。
【0227】
1)-3 ハイブリドーマ作製
リンパ節細胞あるいは脾臓細胞とマウスミエローマSP2/0-ag14細胞(ATCC, No.CRL-1 581)とをLF301 Cell Fusion Unit(BEX社)を用いて電気細胞融合した後、ClonaCell-HY Selection Medium D(StemCell Technologies社)に懸濁し、希釈して37℃、5% CO2の条件下で培養した。出現した各々のハイブリドーマコロニーは、モノクローンとして回収され、ClonaCell-HY Selection
Medium E(StemCell Technologies社)に懸濁して37℃、5% CO2の条件下で培養した。適度に細胞が増殖した後、各々のハイブリドーマ細胞の凍結ストックを作製すると共に、得られたハイブリドーマ培養上清を抗ヒトCDH6抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングに用いた。
【0228】
1)-4 Cell-ELISA法による抗体産生ハイブリドーマのスクリーニング
1)-4-1 Cell-ELISA用抗原遺伝子発現細胞の調製
293α細胞(インテグリンαv及びインテグリンβ3を発現するHEK293由来の安定発現細胞株)を10% FBS含有DMEM培地中5x105細胞/mLになるよう調製した。Lipofectamine 2000(Thermo Fisher Scienftific社)を用いた形質移入手順に従って、この293α細胞に対して、pcDNA3.1-hCDH6もしくはpcDNA3.1-cynoCDH6または、陰性コントロールとしてpcDNA3.1のDNAを導入し、96-well plate(Corning社)に100μLずつ分注後、10% FBS含有DMEM培地中で37℃、5% CO2の条件下で24から27時間培養した。得られた形質移入細胞を接着状態のまま、Cell-ELISAに使用した。
【0229】
1)-4-2 Cell-ELISA
実施例1)-4-1で調製した発現ベクター導入293α細胞の培養上清を除去後、pcDNA3.1-hCDH6もしくはpcDNA3.1-cynoCDH6またはpcDNA3.1導入293α細胞の各々に対しハイブリドーマ培養上清を添加し、4℃で1時間静置した。well中の細胞を5% FBS含有PBS(+)で1回洗浄後、5% FBS含有PBS(+)で500倍に希釈したAnti-Rat IgG-Peroxidase antibody produced in rabbit(SIGMA社)を加えて、4℃で1時間静置した。well中の細胞を5% FBS含有PBS(+)で3回洗浄した後、OPD発色液(OPD溶解液(0.05 M クエン酸3ナトリウム、0.1M リン酸水素2ナトリウム・12水 pH4.5)にo-フェニレンジアミン二塩酸塩(和光純薬社)、H2O2をそれぞれ0.4mg/mL、0.6%(v/v)になるように溶解)を100μL/wellで添加した。時々攪拌しながら発色反応を行い、1M HClを100μL/wellで添加して発色反応を停止させた後、プレートリーダー(ENVISION:PerkinElmer社)で490nmの吸光度を測定した。コントロールのpcDNA3.1導入293α細胞と比較し、pcDNA3.1-hCDH6ならびにpcDNA3.1-cynoCDH6発現ベクター導入293α細胞の方でより高い吸光度を示す培養上清を産生するハイブリドーマをヒト、かつ、カニクイサルCDH6に結合する抗体産生ハイブリドーマとして選択した。
【0230】
1)-5 フローサイトメトリーによるカニクイサルCDH6への選択的結合抗体のスクリーニング
1)-5-1 フローサイトメトリー解析用抗原遺伝子発現細胞の調製
293T細胞を5×104細胞/cm2になるよう225cm2フラスコ(住友ベークライト社)に播種し、10% FBS含有DMEM培地中で37℃、5% CO2の条件下で一晩培養した。この293T細胞に、pcDNA3.1-cynoCDH6または、陰性コントロールとしてpcDNA3.1をLipofectamine 2000を用いて導入し、37℃、5% CO2の条件下でさらに一晩培養した。各ベクターを導入した293T細胞をTrypLE Express(Thermo Fisher Scienftific社)で処理し、10% FBS含有DMEMで細胞を洗浄した後、5%
FBS含有PBSに懸濁した。得られた細胞懸濁液をフローサイトメトリー解析に使用した。
【0231】
1)-5-2 フローサイトメトリー解析
実施例1)-4のCell-ELISAで選択されたヒト、かつ、カニクイサルCDH6に結合する抗体産生ハイブリドーマが産生する抗体のカニクイサルCDH6に対する結合特異性をフローサイトメトリー法によりさらに確認した。実施例1)-5-1で調製した一過性発現293T細胞の懸濁液を遠心し、上清を除去した後、各々に対しハイブリドーマ培養上清を加えて懸濁し、4℃で1時間静置した。5% FBS含有PBSで2回洗浄した後、5% FBS含有PBSで500倍に希釈したAnti-Rat IgG FITC conjugate(SIGMA社)を加えて懸濁し、4℃で1時間静置した。5% FBS含有PBSで2回洗浄した後、2μg/mL 7-aminoactinomycin D(Molecular Probes社)を含む5% FBS含有PBSに再懸濁し、フローサイトメーター(FC500:BeckmanCoulter社)で検出した。データ解析はFlowJo(TreeStar社)で行った。7-aminoactinomycin D陽性の死細胞をゲートで除外した後、生細胞のFITC蛍光強度のヒストグラムを作成した。コントロールであるpcDNA3.1導入293T細胞の蛍光強度ヒストグラムに対しpcDNA3.1-cynoCDH6導入293T細胞のヒストグラムが強蛍光強度側にシフトしている抗体を産生するハイブリドーマを細胞膜表面上に発現するカニクイサルCDH6に特異的に結合する抗体産生ハイブリドーマとして選択した。
【0232】
1)-6 ラットモノクローナル抗体のアイソタイプの決定
実施例1)- 5で選択したラット抗CDH6抗体産生ハイブリドーマの中から、ヒトならびにサルCDH6に強く特異的に結合することが示唆されたクローンrG019、rG055、rG056、rG061を選抜し、各抗体のアイソタイプを同定した。抗体の重鎖のサブクラス、軽鎖のタイプは、RAT MONOCLONAL ANTIBODY
ISOTYPING TEST KIT(DSファーマバイオメディカル社)により決定された。その結果、rG019、rG055、rG056、rG061の4クローンともサブクラスは、IgG2b、タイプはκ鎖であることが確認された。
【0233】
1)-7 ラット抗CDH6抗体の調製
1)-7-1 培養上清作製
ラット抗ヒトCDH6モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培養上清から精製した。まず、ラット抗CDH6モノクローナル抗体産生ハイブリドーマをClonaCell-HY Selection Medium E(StemCell Technologies社)で充分量まで増殖させた後、Ultra Low IgG FBS(Thermo Fisher Scienftific社)を20%添加したHybridoma
SFM(Thermo Fisher Scienftific社)に培地交換し、4-5日間培養した。本培養上清を回収し、0.8μmのフィルターに通した後、さらに0.2μmのフィルターに通して不溶物を除去した。
【0234】
1)-7-2 ラット抗CDH6抗体の精製
実施例1)-7-1で作製したハイブリドーマの培養上清から抗体(ラット抗CDH6抗体(rG019,rG055,rG056,rG061))をProtein Gアフィニティークロマトグラフィーで精製した。Protein Gカラム(GE Healthcare Bioscience社)に抗体を吸着させ、PBSでカラムを洗浄後に0.1M グリシン/塩酸水溶液(pH2.7)で溶出した。溶出液に1M Tris-HCl(pH9.0)を加えてpH7.0~7.5に調整した後に、Centrifugal UF Filter Device VIVASPIN20(分画分子量UF30K、Sartorius社)にてHBSor(25mM ヒスチジン/5% ソルビトール、pH6.0)へのバッファー置換を行うとともに抗体の濃縮を行い、抗体濃度を1mg/mLに調製した。最後にMinisart-Plus filter(Sartorius社)でろ過し、精製サンプルとした。
【0235】
[実施例2:ラット抗CDH6抗体のin vitro評価]
2)-1 フローサイトメトリーによるラット抗CDH6抗体の結合能評価
実施例1)-7で作製したラット抗CDH6抗体のヒトCDH6結合性をフローサイトメトリー法により評価した。実施例1)-1で作製したpcDNA3.1-hCDH6を293T細胞(ATCC)にLipofectamine 2000(Thermo Fisher Scientific)を用いて一過性に導入し、37℃、5% CO
2の条件下で一晩培養した後、細胞懸濁液を調製した。遺伝子導入した293T細胞懸濁液を遠心し、上清を除去した後、実施例1)-7で調製したラット抗CDH6モノクローナル抗体4種(クローン番号は、rG019、rG055、rG056及びrG061)又はラットIgGコントロール(R&D Systems)を終濃度10ng/mL加えて懸濁し、4℃で1時間静置した。5% FBS含有PBSで2回洗浄した後、5% FBS含有PBSで50倍に希釈したAnti-Rat IgG(whole molecule)-FITC antibody produced in rabbit(SIGMA)を加えて懸濁し、4℃で1時間静置した。5% FBS含有PBSで2回洗浄した後
、フローサイトメーター(FC500:Beckman Coulter)で検出を行った。データ解析はFlowJo(TreeStar)で行った。その結果を
図1に示す。
図1のヒストグラムにおいて、横軸は抗体結合量を表すFITCの蛍光強度、縦軸は細胞数を示す。網掛けで示すヒストグラムはhCDH6を導入していない陰性コントロール293T細胞を用いた場合を示し、白抜き実線で示すヒストグラムは、hCDH6導入293T細胞を用いた場合を示す。細胞表面のhCDH6に抗体が結合したことによって蛍光強度が増強したことを示す。ラットIgGコントロールはいずれの細胞にも結合しない。この結果、作製したラット抗CDH6モノクローナル抗体4種はpcDNA3.1-hCDH6導入293T細胞に結合することを確認した。
【0236】
2)-2 フローサイトメトリーによるラット抗CDH6抗体のCDH6結合部位の解析
2)-2-1 ヒトCDH6各ドメイン欠失体発現ベクターの構築
ヒトCDH6の細胞外全長には5つの細胞外ドメイン、EC1(配列番号2)、EC2(配列番号3)、EC3(配列番号4)、EC4(配列番号5)、EC5(配列番号6)が存在する。ヒトCDH6全長から、5つのECドメインを各一箇所ずつ欠失発現した遺伝子をGeneArt社で合成し、当業者に公知な方法に従い哺乳動物発現用ベクターp3xFLAG-CMV-9ベクター(SIGMA-ALDRICH社)へ組み込み、EC1からEC5をそれぞれ欠失した、各ドメイン欠失体発現ベクターを作製した。
【0237】
2)-2-2 フローサイトメトリーによるドメイン欠失体を用いたラット抗CDH6抗体のエピトープ解析
各ECドメイン欠失ベクターを導入した293α細胞株を用いたフローサイトメトリー解析により、ラット抗ヒトCDH6抗体の結合エピトープを同定した。インテグリンαvおよびインテグリンβ3発現ベクターをHEK293細胞内に安定形質移入した細胞株293α細胞株に対して、実施例2)-2-1で作成した各ドメイン欠失体発現ベクター、及び全長ヒトCDH6を発現するpcDNA3.1-hCDH6をLipofectamine 2000(Thermo Fisher Scientific)を用いて一過性に導入し、37℃、5% CO
2の条件下で一晩培養した後、細胞懸濁液を調製した。導入293α細胞懸濁液を遠心し、上清を除去した後、実施例1)-7で調製したラット抗CDH6モノクローナル抗体4種(クローン番号は、rG019、rG055、rG056及びrG061)又はラットIgGコントロール(R&D Systems)を終濃度20nMで加えて懸濁し、4℃で1時間静置した。5% FBS含有PBSで2回洗浄した後、5% FBS含有PBSで50倍に希釈したAnti-Rat IgG(whole molecule)-FITC antibody produced in rabbit(SIGMA)を加えて懸濁し、4℃で1時間静置した。5% FBS含有PBSで2回洗浄した後、フローサイトメーター(CantoII:BD Biosciences)で検出を行った。データ解析はFlowJo(TreeStar)で行った。その結果を
図2-1~
図2-6に示す。
図2-1~
図2-6のヒストグラムにおいて、横軸は抗体結合量を表すFITCの蛍光強度、縦軸は細胞数を示す。網掛けで示すヒストグラムは遺伝子を導入していない陰性コントロール293α細胞を用いた場合を示し、白抜き実線で示すヒストグラムは、全長hCDH6又は各ECドメイン欠失293細胞を用いた場合を示す。細胞表面の全長hCDH6又は各ECドメイン欠失体に抗体が結合した場合は、蛍光強度が増強する。ラットIgGコントロールはいずれの導入細胞にも結合しない。作製したラット抗CDH6モノクローナル抗体4種は、全長hCDH6、EC1欠失体、EC2欠失体、EC4欠失体、及びEC5欠失体には結合するが、EC3欠失体には結合しない。この結果から、ラット抗CDH6モノクローナル抗体4種はhCDH6のEC3をエピトープとして特異的に結合することが示された。
【0238】
2)-3 ラット抗CDH6抗体の内在化活性
2)-3-1 ヒト腫瘍細胞株におけるCDH6の発現確認
取得抗体の評価に用いるCDH6陽性ヒト腫瘍細胞株を選抜するため、公知データベースからCDH6発現情報を検索し、フローサイトメトリー法により細胞膜表面でのCDH6の発現を評価した。ヒト卵巣腫瘍細胞株NIH:OVCAR-3,PA-1,ES-2及びヒト腎細胞腫瘍細胞株786-O(全てATCCから入手)を37℃、5% CO
2の条件下で培養した後、細胞懸濁液を調製した。細胞を遠心し、上清を除去した後、市販抗ヒトCDH6抗体(MABU2715,R&D Systems)又は陰性コントロールとしてマウスIgG1(BD Pharmingen)を終濃度50ug/mL加えて懸濁し、4℃で1時間静置した。5% FBS含有PBSで2回洗浄した後、5% FBS含有PBSで50倍に希釈したF(ab’)2 Fragment of FITC-conjugated Goat Anti-mouse immunoglobulins(Dako)を加えて懸濁し、4℃で1時間静置した。5% FBS含有PBSで2回洗浄した後、フローサイトメーター(CantoII:BD Biosciences)で検出を行った。データ解析はFlowJo(TreeStar)で行った。その結果を
図3に示す。
図3のヒストグラムにおいて、横軸は抗体結合量を表すFITCの蛍光強度、縦軸は細胞数を示す。網掛けで示すヒストグラムは陰性コントロールmIgG1で染色した場合を示し、白抜き実線で示すヒストグラムは抗ヒトCDH6抗体で染色した場合を示す。細胞表面のhCDH6に抗体が結合したことによって蛍光強度が増強したことを示す。mIgG1コントロールはいずれの細胞にも結合しない。この結果、NIH:OVCAR-3,PA-1及び786-O細胞株は、内在的にCDH6を細胞表面上に発現することが示された。一方、ES-2細胞株はCDH6を全く発現しないことが示された。
【0239】
2)-3-2 ラット抗CDH6抗体の内在化活性評価
ラット抗CDH6抗体の内在化活性は、タンパク質合成を阻害する毒素(サポリン)を結合させた抗ラットIgG試薬Rat-ZAP(ADVANCED TARGETING SYSTEMS)を用いて評価した。すなわち、ヒトCDH6陽性卵巣腫瘍細胞株NIH:OVCAR-3(ATCC)を4x10
3 cells/wellで96wellプレートに播種して37℃、5% CO2の条件下で一晩培養した。ヒトCDH6陽性腎細胞腫瘍細胞株786-O(ATCC)は1x10
3 cells/wellで96wellプレートに播種して一晩培養した。翌日、ラット抗CDH6抗体(終濃度:1nM)又は、陰性コントロール抗体としてラットIgG2b抗体(R&D Systems)を添加した。さらに、Rat-ZAP(終濃度:0.5nM)または、陰性コントロールとして毒素を結合していないGoat Anti-Rat IgG, Fc(gamma) Fragment Specific(JACKSON IMMUNORESEARCH)(終濃度:0.5nM)を添加し、3日間37℃、5%CO2条件下で培養した。生存細胞数は、CellTiter-Glo
TM Luminescent Cell Viability Assay(Promega)によるATP活性(RLU)の定量で測定した。この評価では、ラット抗CDH6抗体の内在化活性に依存してRat-ZAPが細胞内に取り込まれ、タンパク合成を阻害するサポリンが細胞内に放出されることで、細胞増殖が抑制される。抗CDH6抗体添加による細胞増殖抑制作用は、Rat-ZAPの代わりに陰性コントロールを添加したウェルの生存細胞数を100%とした相対生存率で表記した。
図4にグラフおよび細胞生存率の表を示す。この結果、ラット抗CDH6抗体はCDH6に結合して内在化を引き起こすことが示された。
【0240】
[実施例3:ラット抗CDH6抗体の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列の決定]
3)-1 rG019重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の遺伝子断片の増幅および配列決定
3)-1-1 G019からのtotal RNAの調製
rG019の可変領域を含むcDNAを増幅するためG019よりTRIzol Re
agent(Ambion社)を用いてtotal RNAを調製した。
【0241】
3)-1-2 5’-RACE PCRによるrG019の重鎖可変領域を含むcDNAの増幅とヌクレオチド配列の決定
重鎖可変領域を含むcDNAの増幅は、実施例3)-1-1で調製したtotal RNAの約1μgとSMARTer RACE cDNA Amplification Kit(Clontech社)を用いて実施した。rG019の重鎖遺伝子の可変領域のcDNAをPCRで増幅するためのプライマーとして、UPM (Universal Primer A Mix:SMARTer RACE cDNA Amplification Kitに付属)、及び公知のラット重鎖の定常領域の配列から設計したプライマーを用いた。
【0242】
5’-RACE PCRで増幅した重鎖の可変領域を含むcDNAをプラスミドにクローニングし、次に重鎖の可変領域のcDNAのヌクレオチド配列のシークエンス解析を実施した。
【0243】
決定されたrG019の重鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を配列番号16に示し、アミノ酸配列を配列番号15に示した。
【0244】
3)-1-3 5’-RACE PCRによるrG019の軽鎖可変領域を含むcDNAの増幅とヌクレオチド配列の決定
実施例3)-1-2と同様の方法で実施した。ただし、rG019の軽鎖遺伝子の可変領域のcDNAをPCRで増幅するためのプライマーとして、UPM (Universal Primer A Mix:SMARTer RACE cDNA Amplification Kitに付属)、及び公知のラット軽鎖の定常領域の配列から設計したプライマーを用いた。
【0245】
決定されたrG019の軽鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を配列番号11に示し、アミノ酸配列を配列番号10に示した。
【0246】
3)-2 rG055重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の遺伝子断片の増幅および配列決定
実施例3)-1と同様の方法で配列を決定した。
【0247】
決定されたrG055の重鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を配列番号26に示し、アミノ酸配列を配列番号25に示した。軽鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を配列番号21に示し、アミノ酸配列を配列番号20に示した。
【0248】
3)-3 rG056重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の遺伝子断片の増幅および配列決定
実施例3)-1と同様の方法で配列を決定した。
【0249】
決定されたrG056の重鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を配列番号36に示し、アミノ酸配列を配列番号35に示した。軽鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を配列番号31に示し、アミノ酸配列を配列番号30に示した。
【0250】
3)-4 rG061重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の遺伝子断片の増幅および配列決定
実施例3)-1と同様の方法で配列を決定した。
【0251】
決定されたrG061の重鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を配列番号46に示し、アミノ酸配列を配列番号45に示した。軽鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を配列番号41に示し、アミノ酸配列を配列番号40に示した。
【0252】
[実施例4:ヒトキメラ化抗CDH6抗体chG019の作製]
4)-1 ヒトキメラ化抗CDH6抗体chG019の発現ベクターの構築
4)-1-1 キメラ及びヒト化軽鎖発現ベクターpCMA-LKの構築
プラスミドpcDNA3.3-TOPO/LacZ(Invitrogen社)を制限酵素XbaI及びPmeIで消化して得られる約5.4kbのフラグメントと、配列番号50に示すヒト軽鎖シグナル配列及びヒトκ鎖定常領域をコードするDNA配列を含むDNA断片をIn-Fusion Advantage PCRクローニングキット(Clontech社)を用いて結合して、pcDNA3.3/LKを作製した。
【0253】
pcDNA3.3/LKからネオマイシン発現ユニットを除去することによりpCMA-LKを構築した。
【0254】
4)-1-2 キメラ及びヒト化IgG1タイプ重鎖発現ベクターpCMA-G1の構築
pCMA-LKをXbaI及びPmeIで消化して軽鎖シグナル配列及びヒトκ鎖定常領域を取り除いたDNA断片と、配列番号51で示されるヒト重鎖シグナル配列及びヒトIgG1定常領域をコードするDNA配列を含むDNA断片をIn-Fusion Advantage PCRクローニングキット(Clontech社)を用いて結合して、pCMA-G1を構築した。
【0255】
4)-1-3 chG019重鎖発現ベクターの構築
配列番号57に示すchG019重鎖のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号36乃至440に示されるDNA断片を合成した(GENEART社)。In-Fusion HD PCRクローニングキット(Clontech社)を用いて、pCMA-G1を制限酵素BlpIで切断した箇所に合成したDNA断片を挿入することによりchG019重鎖発現ベクターを構築した。なお、chG019重鎖は予期せぬジスルフィド結合を防ぐため、CDR中のシステインをプロリンに置換した配列を用いた。
【0256】
4)-1-4 chG019軽鎖発現ベクターの構築
配列番号52に示すchG019軽鎖をコードするDNA配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社)。In-Fusion HD PCRクローニングキット(Clontech社)を用いて、合成したDNA断片とpCMA-LKをXbaI及びPmeIで消化して軽鎖シグナル配列及びヒトκ鎖定常領域を取り除いたDNA断片を結合することにより、chG019軽鎖発現ベクターを構築した。
【0257】
4)-2 ヒトキメラ化抗CDH6抗体chG019の生産及び精製
4)-2-1 chG019の生産
FreeStyle 293F細胞(Invitrogen社)はマニュアルに従い、継代、培養をおこなった。対数増殖期の1.2×109個のFreeStyle 293F細胞(Invitrogen社)を3L Fernbach Erlenmeyer Flask(CORNING社)に播種し、FreeStyle293 expression medium(Invitrogen社)で希釈して2.0×106細胞/mlに調製した。40mlのOpti-Pro SFM培地(Invitrogen社)に0
.24mgの重鎖発現ベクターと0.36mgの軽鎖発現ベクターと1.8mgのPolyethyleneimine(Polyscience #24765)を加えて穏やかに攪拌し、さらに5分間放置した後にFreeStyle 293F細胞に添加した。37℃、8%CO2インキュベーターで4時間、90rpmで振とう培養後に600mlのEX-CELL VPRO培地(SAFC Biosciences社)、18mlのGlutaMAX I(GIBCO社)、及び30mlのYeastolate Ultrafiltrate(GIBCO社)を添加し、37℃、8%CO2インキュベーターで7日間、90rpmで振とう培養して得られた培養上清をDisposable Capsule Filter (Advantec #CCS-045-E1H)でろ過した。
【0258】
4)-2-2 chG019の精製
実施例4)-2-1で得られた培養上清をrProtein Aアフィニティークロマトグラフィーの1段階工程で精製した。培養上清をPBSで平衡化したMabSelectSuReが充填されたカラム(GE Healthcare Bioscience社製)にアプライしたのちに、カラム容量の2倍以上のPBSでカラムを洗浄した。次に2Mアルギニン塩酸塩溶液(pH4.0)で溶出し、抗体の含まれる画分を集めた。その画分を透析(Thermo Scientific社、Slide-A-Lyzer Dialysis Cassette)によりHBSor(25mM ヒスチジン/5% ソルビトール、pH6.0)へのバッファー置換を行った。Centrifugal UF
Filter Device VIVASPIN20(分画分子量UF10K,Sartorius社)で抗体を濃縮し、IgG濃度を5mg/ml以上に調製した。最後にMinisart-Plus filter(Sartorius社)でろ過し、精製サンプルとした。
【0259】
4)-3 ヒトキメラ化抗CDH6抗体chG019の結合性評価
4)-2で精製したヒトキメラ化抗CDH6抗体chG019のCDH6結合性をフローサイトメトリー法により確認した。実施例1)-1で作製したpcDNA3.1-hCDH6、又はpcDNA3.1-cynoCDH6、又はpcDNA3.1をそれぞれ293α細胞にLipofectamine 2000を用いて一過性に導入し、37℃、5% CO
2の条件下で一晩培養した後、細胞懸濁液を調製した。これらの細胞懸濁液にchG019を加えて4℃で1時間静置した後、5% FBS含有PBSで2回洗浄し、5% FBS含有PBSで500倍に希釈したPE標識F(ab’)2 Fragment抗ヒトIgG,Fcγ抗体(JACKSON IMMUNORESEARCH)を加えて懸濁し、4℃で1時間静置した。5% FBS含有PBSで2回洗浄した後、5% FBS含有PBSに再懸濁し、フローサイトメーター(CantoII:BD Biosciences)で検出を行った。データ解析はFlowJo(TreeStar)で行った。
図5に示すとおり、chG019は陰性コントロールであるpcDNA3.1導入293T細胞には結合せず、pcDNA3.1-hCDH6及びpcDNA3.1-cynoCDH6導入293T細胞に抗体濃度依存的に結合した。
図5において横軸は抗体濃度を示し、縦軸は結合量をMeanFluorescent Intensity(平均蛍光強度)で示す。この結果から、chG019が、ヒトおよびカニクイザルCDH6に対して特異的に結合し、結合活性はほぼ同等であることがわかる。
【0260】
[実施例5:ヒト化抗CDH6抗体の作製]
5)-1 抗CDH6抗体のヒト化体デザイン
5)-1-1 chG019の可変領域の分子モデリング
chG019の可変領域の分子モデリングは、ホモロジーモデリングとして公知の方法(Methods in Enzymology,203,121-153,(1991))を利用した。chG019の重鎖と軽鎖の可変領域に対して高い配列同一性を有するProtein Data Bank(Nuc.Acid Res.35,D301-D303(2007))に登録されている構造(PDB ID:2I9L)を鋳型に、市販のタンパク質立体構造解析プログラムBioLuminate(Schrodinger社製)を用いて行った。
【0261】
5)-1-2 ヒト化hG019に対するアミノ酸配列の設計
chG019は、CDRグラフティング(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,10029-10033(1989))によりヒト化した。KABAT et al.(Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))において既定されるヒトのgamma鎖サブグループ1およびkappa鎖サブグループ1のコンセンサス配列が、chG019のフレームワーク領域に対して高い同一性を有することから、それぞれ、重鎖と軽鎖のアクセプターとして選択された。アクセプター上に移入すべきドナー残基は、Queen et al.(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,10029-10033(1989))によって与えられる基準などを参考に三次元モデルを分析することで選択された。
【0262】
5)-2 chG019重鎖のヒト化
設計された3種の重鎖をhH01、hH02及びhH04と命名した。hH01の重鎖全長アミノ酸配列を、配列番号69に記載する。配列番号69のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を、配列番号70に記載する。hH02の重鎖全長アミノ酸配列を、配列番号73に記載する。配列番号73のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を、配列番号74に記載する。hH04の重鎖全長アミノ酸配列を、配列番号77に記載する。配列番号77のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を、配列番号78に記載する。
【0263】
5)-3 chG019軽鎖のヒト化
設計された2種の軽鎖をhL02およびhL03と命名した。hL02の軽鎖全長アミノ酸配列を、配列番号61に記載する。配列番号61のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を、配列番号62に記載する。hL03の軽鎖全長アミノ酸配列を、配列番号65に記載する。配列番号65のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列番号66に記載する。
【0264】
5)-4 重鎖及び軽鎖の組み合わせによるヒト化hG019の設計
hH01及びhL02からなる抗体を「H01L02抗体」又は「H01L02」と称する。hH02及びhL02からなる抗体を「H02L02抗体」又は「H02L02」と称する。hH02及びhL03からなる抗体を「H02L03抗体」又は「H02L03」と称する。hH04及びhL02からなる抗体を「H04L02抗体」又は「H04L02」と称する。
【0265】
5)-5 ヒト化抗CDH6抗体の発現
5)-5-1 ヒト化hG019の重鎖発現ベクターの構築
5)-5-1-1 ヒト化hG019-H01タイプ重鎖発現ベクターの構築
配列番号70に示すヒト化hG019-H01タイプ重鎖のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号36乃至440に示されるDNA断片を合成した(GENEART社)。実施例4)-1-3と同様の方法でヒト化hG019-H01タイプ重鎖発現ベクターを構築した。
【0266】
5)-5-1-2 ヒト化hG019-H02タイプ重鎖発現ベクターの構築
配列番号74に示すヒト化hG019-H02タイプ重鎖のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号36乃至440に示されるDNA断片を合成した(GENEART社)。実施例4)-1-3と同様の方法でヒト化hG019-H02タイプ重鎖発現ベクターを構築した。
【0267】
5)-5-1-3 ヒト化hG019-H04タイプ重鎖発現ベクターの構築
配列番号78に示すヒト化hG019-H04タイプ重鎖のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号36乃至440に示されるDNA断片を合成した(GENEART社)。実施例4)-1-3と同様の方法でヒト化hG019-H04タイプ重鎖発現ベクターを構築した。
【0268】
5)-5-2 ヒト化hG019の軽鎖発現ベクターの構築
5)-5-2-1 ヒト化hG019-L02タイプ軽鎖発現ベクターの構築
配列番号62に示すヒト化hG019-L02タイプ軽鎖のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号37乃至399に示されるヒト化hG019-L02タイプ軽鎖の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社)。In-Fusion HD PCRクローニングキット(Clontech社)を用いて、pCMA-LKを制限酵素BsiWIで切断した箇所に合成したDNA断片を挿入することによりヒト化hG019-L02タイプ軽鎖発現ベクターを構築した。
【0269】
5)-5-2-2 ヒト化hG019-L03タイプ軽鎖発現ベクターの構築
配列番号66に示すヒト化hG019-L03タイプ軽鎖のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号37乃至399に示されるヒト化hG019-L03タイプ軽鎖の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社)。実施例5)-5-2-1と同様の方法でヒト化hG019-L03タイプ軽鎖発現ベクターを構築した。
【0270】
5)-5-3 ヒト化hG019の調製
5)-5-3-1 H01L02、H02L02、H02L03、H04L02の生産
実施例4)-2-1と同様の方法で生産した。実施例5)-4に示した重鎖と軽鎖の組み合わせにより、H01L02、H02L02、H02L03、H04L02を生産した。
【0271】
5)-5-3-2 H01L02、H02L02、H02L03、H04L02の2step精製
実施例5)-5-3-1で得られた培養上清をrProtein Aアフィニティークロマトグラフィーとセラミックハイドロキシアパタイトの2段階工程で精製した。培養上清をPBSで平衡化したMabSelectSuReが充填されたカラム(GE Healthcare Bioscience社製)にアプライした後に、カラム容量の2倍以上のPBSでカラムを洗浄した。次に2Mアルギニン塩酸塩溶液(pH4.0)で抗体を溶出した。抗体の含まれる画分を透析(Thermo Scientific社、Slide-A-Lyzer Dialysis Cassette)によりPBSへのバッファー置換を行い、5mMリン酸ナトリウム/50mM MES/pH7.0のバッファーで5倍希釈した後に、5mM NaPi/50mM MES/30mM NaCl/pH7.0のバッファーで平衡化したセラミックハイドロキシアパタイトカラム(日本バイオラッド、Bio-Scale CHT Type―1 Hydroxyapatite Column)にアプライした。塩化ナトリウムによる直線的濃度勾配溶出を実施し、抗体の含まれる画分を集めた。その画分を透析(Thermo Scientific社、Slide-A-Lyzer Dialysis Cassette)によりHBSor(25mM ヒスチジン/5% ソルビトール、pH6.0)へのバッファー置換を行った。Centrifugal UF Filter Device VIVASPIN20(分画分子量UF10K,Sartorius社)にて抗体を濃縮し、IgG濃度を20mg/mlに調製した。最後にMinisart-Plus filter(Sartorius社)でろ過し、精製サンプルとした。
【0272】
[参考例1:抗CDH6抗体NOV0712の作製]
実施例で用いた抗CDH6抗体NOV0712は、国際公開第2016/024195号に記載のNOV0712の軽鎖全長、及び重鎖全長のアミノ酸配列(それぞれ、国際公開第2016/024195の配列番号235及び配列番号234)を参照して作製した。
【0273】
参考例1)-1抗CDH6抗体NOV0712
参考例1)-1-1 抗CDH6抗体NOV0712の重鎖発現ベクターの構築
配列番号84に示すNOV0712の重鎖のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号36乃至428に示されるNOV0712の重鎖の可変領域を含むDNA断片を合成した(GENEART社)。実施例4)-1-3と同様の方法でNOV0712の重鎖発現ベクターを構築した。当該NOV0712の重鎖発現ベクターにより発現するNOV0712の重鎖のアミノ酸配列を、配列番号83に示す。配列番号83に示されるアミノ酸配列中、1~19番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列はシグナル配列である。
【0274】
参考例1)-1-2 抗CDH6抗体NOV0712の軽鎖発現ベクターの構築
配列番号82に示すNOV0712の軽鎖のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号37乃至405に示されるNOV0712の軽鎖の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社)。実施例5)-5-2-1と同様の方法でNOV0712の軽鎖発現ベクターを構築した。当該NOV0712の軽鎖発現ベクターにより発現するNOV0712の軽鎖のアミノ酸配列を、配列番号81に示す。配列番号81に示されるアミノ酸配列中、1~20番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列はシグナル配列である。
【0275】
参考例1)-2 抗CDH6抗体NOV0712の調製
参考例1)-2-1 抗CDH6抗体NOV0712の生産
実施例4)-2-1と同様の方法でNOV0712を生産した。
【0276】
参考例1)-2-2 抗CDH6抗体NOV0712の1step精製
参考例1)-2-1で得られた培養上清から実施例4)-2-2と同様の方法で抗CDH6抗体NOV0712を精製した(抗体濃度HBSorで5mg/l)。
【0277】
[実施例6:ヒト化hG019およびNOV0712のin vitro評価]
6)-1 ヒト化hG019の結合性評価
6)-1-1 ヒト化hG019のヒトCDH6抗原結合能
抗体と抗原(Recombinant Human CDH6 Fc His chimera, R&D Systems)との解離定数測定は、Biacore T200(GEヘルスケアバイオサイエンス)を使用し、固定化した抗His抗体に抗原をリガンドとして捕捉(キャプチャー)し、抗体をアナライトとして測定するキャプチャー法にて行った。抗ヒスチジン抗体(His capture kit、GEヘルスケアバイオサイエンス)は、センサーチップCM5(GEヘルスケアバイオサイエンス)へ、アミンカップリング法にて約1000RU共有結合させた。リファレンスセルにも同様に固定化した。ランニングバッファーとして1mM CaCl2を添加したHBS-P+(10mM HEPES pH7.4、0.15M NaCl、0.05% Surfactant P20)を用いた。抗ヒスチジン抗体を固定化したチップ上に、抗原を60秒間添加した後、抗体の希釈系列溶液(0.391-100nM)を流速30μl/分で300秒間添加し、引き続き600秒間の解離相をモニターした。再生溶液として、5M MgCl2を添加したGlycine溶液pH1.5を流速10μl/分で30秒間、2回添加した。データの解析は、分析ソフトウェア(BIAevaluation software, version 4.1)のSteady State Affinityモデルを用いて、解離定数(KD)を算出した。結果を表2に示す。
【0278】
【0279】
6)-1-2 ヒト、サル、マウス、ラットCDH6に対する結合性
実施例1)-1で作製したpcDNA3.1-hCDH6、pcDNA3.1-cynoCDH6、p3xFLAG-CMV-9-mCDH6、p3xFLAG-CMV-9-rCDH6を、293α細胞にLipofectamine 2000を用いて一過性に導入し、37℃、5% CO
2の条件下で一晩培養した後、細胞懸濁液を調製した。陰性コントロールとして、遺伝子導入していない293α細胞を用いた。上記にて作製した293α細胞懸濁液を遠心し、上清を除去した後、実施例5)-5-3で調製したヒト化hG019抗体4種(クローン番号は、H01L02、H02L02、H02L03およびH04L02)、又は、ヒトIgG1コントロール(Calbiochem)を加えて懸濁し、4℃で1時間静置した。5% FBS含有PBSで2回洗浄した後、5% FBS含有PBSで500倍に希釈したanti-human Fcg PE goat F(ab’)(Jackson laboratory)を加えて懸濁し、4℃で1時間静置した。5% FBS含有PBSで2回洗浄した後、フローサイトメーター(CantoII:BD Biosciences)で検出を行った。データ解析はFlowJo(TreeStar)で行った。
図6-1及び
図6-2において横軸は抗体濃度を示し、縦軸は結合量をMeanFluorescent Intensity(平均蛍光強度)で示す。
図6-1及び
図6-2に示すとおり、陰性コントロールであるヒトIgG1コントロールは、いずれのCDH6遺伝子導入細胞に対しても結合しない。ヒト化hG019抗体4種(クローン番号は、H01L02、H02L02、H02L03およびH04L02)はヒト及びカニクイザルCDH6に結合するが、マウス及びラットCDH6には結合しない。いずれの抗体も、陰性コントロールである空ベクターpcDNA3.1導入細胞には結合しない。一方、NOV0712抗体はヒト、カニクイザル、マウス、及びラットCDH6全てに結合活性を示すことが国際公開第2016/024195号に示されている。この結果、本明細書で取得したヒト化hG019抗体4種は、NOV0712抗体と異なる結合性質を示す抗CDH6抗体であることが示された。
【0280】
6)-2 ヒト化hG019およびNOV0712のCDH6結合部位の解析
6)-2-1 ドメイン欠失体を用いたエピトープ解析
実施例2)-2-1で作成した各ドメイン欠失体発現ベクター、及び全長hCDH6を発現するpcDNA3.1-hCDH6をLipofectamine 2000(Th
ermo Fisher Scientific)を用いて一過性に導入し、37℃、5% CO
2の条件下で一晩培養した後、細胞懸濁液を調製した。遺伝子導入した293α細胞懸濁液を遠心し、上清を除去した後、実施例5)-5-3で調製したヒト化hG019抗体4種(クローン番号は、H01L02、H02L02、H02L03およびH04L02)、又は、参考例1で調製した抗CDH6抗体NOV0712、又は、陰性コントロールとしてヒトIgG1(Calbiochem)を加えて懸濁し、4℃で1時間静置した。5% FBS含有PBSで2回洗浄した後、5% FBS含有PBSで500倍に希釈したAPC-anti-human IgG goat F(ab’)2(Jackson laboratory)を加えて懸濁し、4℃で1時間静置した。5% FBS含有PBSで2回洗浄した後、フローサイトメーター(CantoII:BD Biosciences)で検出を行った。データ解析はFlowJo(TreeStar)で行った。その結果を
図7-1~
図7-6に示す。
図7-1~
図7-6のヒストグラムにおいて、横軸は抗体結合量を表すAPCの蛍光強度、縦軸は細胞数を示す。網掛けで示すヒストグラムは遺伝子を導入していない陰性コントロール293α細胞を用いた場合を示し、白抜き実線で示すヒストグラムは、全長hCDH6又は各ECドメイン欠失293α細胞を用いた場合を示す。細胞表面の全長hCDH6又は各ECドメイン欠失体に抗体が結合した場合は、蛍光強度が増強する。ヒトIgG1コントロールはいずれの導入細胞にも結合しない。ヒト化hG019抗体4種(クローン番号は、H01L02、H02L02、H02L03およびH04L02)は、全長hCDH6、EC1欠失体、EC2欠失体、EC4欠失体、及びEC5欠失体には結合するが、EC3欠失体には結合しない。すなわち、ヒト化hG019抗体4種はhCDH6のEC3をエピトープとして特異的に結合することが示された。一方、抗CDH6抗体NOV0712は、全長hCDH6、EC1欠失体、EC2欠失体、EC3欠失体、及びEC4欠失体には結合するが、EC5欠失体には結合しない。すなわち、抗CDH6抗体NOV0712抗体はhCDH6のEC5をエピトープとして特異的に結合することが示され、国際公開第2016/024195号に記載されているNOV0712のエピトープ情報と一致する。この結果から、NOV0712と本明細書で取得したヒト化hG019抗体4種は、異なる性質を示す抗CDH6抗体であることが示された。
【0281】
6)-2-2 抗体の結合競合アッセイ
6)-2-2-1 786-O/hCDH6安定発現細胞株の作製
786-O/hCDH6安定発現細胞株は、786-O細胞(ATCC)にヒトCDH6全長発現用組換えレトロウイルスを感染させることにより作製した。ヒトCDH6発現レトロウイルスベクター(pQCXIN-hCDH6)は、ヒトCDH6タンパク質(NP_004923)をコードするcDNA発現ベクター(OriGene社RC217889)を用いて、当業者に公知な方法に従いレトロウイルスベクターpQCXIN(CLONTECH)に組み込むことにより作製された。FuGene HD(Promega)を用いてレトロウイルスパッケージング細胞RetroPack PT67(CLONTECH)にpQCXIN-hCDH6を一過性に導入し、48時間後に組換えレトロウイルスを含む培養上清を回収し、786-O細胞培養系に添加することで同細胞に感染させた。感染3日後から、G418(Gibco)を終濃度50mg/mLで添加した培地で37℃、5% CO2の条件下で培養を行い感染細胞の薬剤選抜を行うことで、ヒトCDH6を安定的に発現する細胞株786-O/hCDH6を樹立した。実施例2)-3-1と同様にフローサイトメトリーにて安定発現株でのヒトCDH6の高発現を確認した(
図8)。検出用抗体には5% FBS含有PBSで500倍に希釈したGoat anti-Mouse IgG1 Secondary Antibody Alexa Fluor 647(Thermo Fisher Scientific)を使用した。その結果を
図8に示す。
図8のヒストグラムにおいて、横軸は抗体結合量を表すAlexa Fluor 647の蛍光強度、縦軸は細胞数を示す。網掛けで示すヒストグラムは陰性コントロールmIgG1で染色した場合を示し、白抜き実線で示すヒストグラムは抗ヒトCDH6抗体で染色した場合を示す。細胞表面のhCDH6に抗体が結合したことによって蛍光強度が増強したことを示す。mIgG1コントロールはいずれの細胞にも結合しない。この結果、786-O/hCDH6安定発現細胞株では親株786-O細胞と比較して、ヒトCDH6を高発現することが示された。
【0282】
6)-2-2-2 ラベル化H01L02及びラベル化NOV0712を用いた結合競合アッセイ
Alexa Fluor 488 Monoclonal Antibody Labeling Kit(Thermo Fisher)を用いて、ラベル化H01L02及びラベル化NOV0712を作製した。7)-2-2-1で作製した786-O/hCDH6安定発現細胞株の細胞懸濁液を遠心し、上清を除去した後、ラベル化NOV0712又はラベル化H01L02を終濃度5nMで添加し、さらに実施例5)-5-3で調製したヒト化hG019抗体4種(クローン番号は、H01L02、H02L02、H02L03およびH04L02)、又は、参考例1で調製した抗CDH6抗体NOV0712、又は、陰性コントロールとしてヒトIgG1(Calbiochem)を
図9の横軸で示す終濃度で添加して懸濁し、4℃で1時間静置した。5% FBS含有PBSで2回洗浄した後、フローサイトメーター(CantoII:BD Biosciences)で検出を行った。データ解析はFlowJo(TreeStar)で行った。その結果を
図9に示す。横軸はラベル化していない抗体の添加時の終濃度を示し、縦軸は結合量をMeanFluorescent Intensity(平均蛍光強度)で示す。ラベル化NOV0712を添加した細胞にラベル化していないNOV0712を添加した場合は、同じエピトープを持ち結合が競合するため、添加濃度依存的にラベル化していない抗体に置き換わりラベル化抗体の結合量が減少する。一方、ラベル化NOV0712を添加した細胞にヒト化hG019抗体4種、又は陰性コントロールとしてヒトIgG1を添加しても、ラベル化抗体の結合量に変化は無いことから、これらの抗体はエピトープが異なり結合が競合しないことが示される。同様に、ラベル化H01L02を添加した細胞にラベル化していないヒト化hG019抗体4種を添加した場合は、同じエピトープを持ち結合が競合するため、添加濃度依存的にラベル化していない抗体に置き換わりラベル化抗体の結合量が減少する。一方、ラベル化H01L02を添加した細胞にNOV0712、又は陰性コントロールとしてヒトIgG1を添加しても、ラベル化抗体の結合量に変化は無いことから、これらの抗体はエピトープが異なり結合が競合しないことが示される。
【0283】
6)-3 ヒト化hG019およびNOV0712の内在化活性評価
ヒト化hG019およびNOV0712の内在化活性は、タンパク質合成を阻害する毒素(サポリン)を結合させた抗ヒトIgG試薬Hum-ZAP(ADVANCED TARGETING SYSTEMS)を用いて評価した。すなわち、ヒトCDH6陽性卵巣腫瘍細胞株NIH:OVCAR-3(ATCC)を4x10
3 cells/wellで96wellプレートに播種して37℃、5% CO2の条件下で一晩培養した。ヒトCDH6陽性腎細胞腫瘍細胞株786-O(ATCC)は1x10
3 cells/wellで96wellプレートに播種して一晩培養した。ヒトCDH6陽性卵巣腫瘍細胞株PA-1(ATCC)を1x10
3 cells/wellで96wellプレートに播種して37℃、5% CO2の条件下で一晩培養した。翌日、抗CDH6抗体(終濃度:1nM)、又は、陰性コントロール抗体としてヒトIgG1抗体(Calbiochem)を添加した。さらにHum-ZAP(終濃度:0.5nM)または、陰性コントロールとして毒素を結合していないF(ab’)2 Fragment Goat Anti-human IgG,Fc(gamma) Fragment Specific(JACKSON IMMUNORESEARCH)(終濃度:0.5nM)を添加し、3日間37℃、5%CO2条件下で培養した。生存細胞数は、CellTiter-Glo
TM Luminescent Cell Viability AssayによるATP活性(RLU)の定量で測定した。この評価では、ヒト化抗CDH6抗体の内在化活性に依存してHum-ZAPが細胞内に取り込まれ、タンパク合成を阻害するサポリンが細胞内に放出されることで、細胞増殖が抑制される。抗CDH6抗体添加による細胞増殖抑制作用は、Hum-ZAPの代わりに陰性コントロールを添加したウェルの生存細胞数を100%とした相対生存率で表記した。
図10-1~
図10-3にグラフおよび細胞生存率の表を示す。本実験において内在化活性が強い抗体は低い細胞生存率を示すと考えられる。この結果、NOV0712はヒト化hG019抗体4種は3種の細胞株いずれにおいても細胞生存率から予測される内在化率は約50~75%であり、非常に高い内在化活性を示し、NOV0712と比較して、さらに高い内在活性を示す。ADCの薬効メカニズムから、高い内在化活性を有する抗体は、ADC化抗体をして、より適していると考えられる。
【0284】
[実施例7:ヒト化hG019-薬物コンジュゲートの作製]
7)-1 抗体-薬物コンジュゲートの作製 H01L02-DXd
工程1:抗体-薬物コンジュゲート(1)
【0285】
【0286】
抗体の還元:実施例5にて作製したH01L02を、製造方法1に記載した共通操作B(280nm吸光係数として1.53mLmg-1cm-1を使用)及びCを用いて、PBS6.0/EDTAにて9.85mg/mLに調製した。本溶液(5.7mL)に10mM TCEP(東京化成工業株式会社)水溶液(0.231mL;抗体一分子に対して6.0当量)及び1Mリン酸水素二カリウム水溶液(Nacalai Tesque,Inc.;0.0855mL)を加えた。本溶液のpHが7.0±0.1内であることを確認した後に、37℃で2時間インキュベートすることによって、抗体内鎖間部のジスルフィド結合を還元した。
【0287】
抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション:上記溶液を15℃で10分間インキュベートした。次いでN-[6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサノイル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-[(2-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-2-オキソエトキシ)メチル]グリシンアミドの10mM ジメチルスルホキシド溶液(0.386mL;抗体一分子に対して10当量)を加え、15℃で1時間インキュベートし、薬物リンカーを抗体へ結合させた。次に、100mM NAC(Sigma-Aldrich Co.LLC)水溶液(0.0347mL;抗体一分子に対して9当量)を加え、さらに室温にて20分間撹拌し、薬物リンカーの反応を停止させた。
【0288】
精製:上記溶液を、製造方法1に記載した共通操作Dによる精製を行い、標記抗体-薬物コンジュゲート「H01L02-ADC」を含有する溶液を19mL得た。
【0289】
特性評価:製造方法1に記載した共通操作E(εD,280=5440、εD,370=21240を使用)を使用して、下記の特性値を得た。
抗体濃度:2.26mg/mL,抗体収量:42.9mg(76%),共通操作Eにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):5.9;共通操作Fにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):7.7。
【0290】
7)-2 抗体-薬物コンジュゲートの作製 H02L02-DXd
工程1:抗体-薬物コンジュゲート(2)
【0291】
【0292】
抗体の還元:実施例5にて作製したH02L02を、製造方法1に記載した共通操作B(280nm吸光係数として1.51mLmg-1cm-1を使用)及びCを用いて、PBS6.0/EDTAにて9.95mg/mLに調製した。本溶液(5.7mL)に10mM TCEP(東京化成工業株式会社)水溶液(0.234mL;抗体一分子に対して6.0当量)及び1Mリン酸水素二カリウム水溶液(Nacalai Tesque,Inc.;0.0855mL)を加えた。本溶液のpHが7.0±0.1内であることを確認した後に、37℃で2時間インキュベートすることによって、抗体内鎖間部のジスルフィド結合を還元した。
【0293】
抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション:上記溶液を15℃で10分間インキュベートした。次いでN-[6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1
-イル)ヘキサノイル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-[(2-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-2-オキソエトキシ)メチル]グリシンアミドの10mM ジメチルスルホキシド溶液(0.389mL;抗体一分子に対して10当量)を加え、15℃で1時間インキュベートし、薬物リンカーを抗体へ結合させた。次に、100mM NAC(Sigma-Aldrich Co.LLC)水溶液(0.0350mL;抗体一分子に対して9当量)を加え、さらに室温にて20分間撹拌し、薬物リンカーの反応を停止させた。
【0294】
精製:上記溶液を、製造方法1に記載した共通操作Dによる精製を行い、標記抗体-薬物コンジュゲート「H02L02-ADC」を含有する溶液を19mL得た。
【0295】
特性評価:製造方法1に記載した共通操作E(εD,280=5440、εD,370=21240を使用)を使用して、下記の特性値を得た。
抗体濃度:2.61mg/mL,抗体収量:49.6mg(87%),共通操作Eにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):5.9;共通操作Fにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):7.6。
【0296】
7)-3 抗体-薬物コンジュゲートの作製 H02L03-DXd
工程1:抗体-薬物コンジュゲート(3)
【0297】
【0298】
抗体の還元:実施例5にて作製したH02L03を、製造方法1に記載した共通操作B(280nm吸光係数として1.53mLmg-1cm-1を使用)及びCを用いて、PBS6.0/EDTAにて9.86mg/mLに調製した。本溶液(5.7mL)に10mM TCEP(東京化成工業株式会社)水溶液(0.270mL;抗体一分子に対して7.0当量)及び1Mリン酸水素二カリウム水溶液(Nacalai Tesque,Inc.;0.0855mL)を加えた。本溶液のpHが7.0±0.1内であることを確認した後に、37℃で2時間インキュベートすることによって、抗体内鎖間部のジスルフ
ィド結合を還元した。
【0299】
抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション:上記溶液を15℃で10分間インキュベートした。次いでN-[6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサノイル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-[(2-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-2-オキソエトキシ)メチル]グリシンアミドの10mM ジメチルスルホキシド溶液(0.386mL;抗体一分子に対して10当量)を加え、15℃で1時間インキュベートし、薬物リンカーを抗体へ結合させた。次に、100mM NAC(Sigma-Aldrich Co.LLC)水溶液(0.0347mL;抗体一分子に対して9当量)を加え、さらに室温にて20分間撹拌し、薬物リンカーの反応を停止させた。
【0300】
精製:上記溶液を、製造方法1に記載した共通操作Dによる精製を行い、標記抗体-薬物コンジュゲート「H01L02-ADC」を含有する溶液を19mL得た。
【0301】
特性評価:製造方法1に記載した共通操作E(εD,280=5440、εD,370=21240を使用)を使用して、下記の特性値を得た。
抗体濃度:2.71mg/mL,抗体収量:51.4mg(91%),共通操作Eにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):5.7;共通操作Fにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):7.6。
【0302】
7)-4 抗体-薬物コンジュゲートの作製 H04L02-DXd
工程1:抗体-薬物コンジュゲート(4)
【0303】
【0304】
抗体の還元:実施例5にて作製したH04L02を、製造方法1に記載した共通操作B(280nm吸光係数として1.53mLmg-1cm-1を使用)及びCを用いて、PBS6.0/EDTAにて9.86mg/mLに調製した。本溶液(5.7mL)に10
mM TCEP(東京化成工業株式会社)水溶液(0.232mL;抗体一分子に対して6.0当量)及び1Mリン酸水素二カリウム水溶液(Nacalai Tesque,Inc.;0.0855mL)を加えた。本溶液のpHが7.0±0.1内であることを確認した後に、37℃で2時間インキュベートすることによって、抗体内鎖間部のジスルフィド結合を還元した。
【0305】
抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション:上記溶液を15℃で10分間インキュベートした。次いでN-[6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサノイル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-[(2-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-2-オキソエトキシ)メチル]グリシンアミドの10mM ジメチルスルホキシド溶液(0.386mL;抗体一分子に対して10当量)を加え、15℃で1時間インキュベートし、薬物リンカーを抗体へ結合させた。次に、100mM NAC(Sigma-Aldrich Co.LLC)水溶液(0.0347mL;抗体一分子に対して9当量)を加え、さらに室温にて20分間撹拌し、薬物リンカーの反応を停止させた。
【0306】
精製:上記溶液を、製造方法1に記載した共通操作Dによる精製を行い、標記抗体-薬物コンジュゲート「H04L02-ADC」を含有する溶液を19mL得た。
【0307】
特性評価:製造方法1に記載した共通操作E(εD,280=5440、εD,370=21240を使用)を使用して、下記の特性値を得た。
抗体濃度:2.56mg/mL,抗体収量:48.7mg(87%),共通操作Eにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):5.8;共通操作Fにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):7.6。
【0308】
[参考例2:NOV0712-薬物コンジュゲートの作製]
参考例2)-1 抗体-薬物コンジュゲートの作製 NOV0712-DM4
抗体-薬物コンジュゲート(5)
抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション:参考例1にて作製したNOV0712を、
製造方法1に記載した共通操作B(280nm吸光係数として1.51mLmg-1cm-1を使用)及びCを用いて、20mM HEPES8.1(LIFE TECHNOLOGIES社製 HEPES, 1M Buffer Solution(20mL)を1M水酸化ナトリウムでpH8.1とした後、蒸留水にて1Lとした)にて9.7mg/mLに調製し、20℃で10分間インキュベートした。次いでWO2016/024195号公開特許公報に記載の10mM 1-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イルオキシ)-1-オキソ-4-(ピリジン-2-イルジスルファニル)ブタン-2-スルフォン酸のDMA溶液(0.366mL;抗体一分子に対して5.2当量)、10mM N2-デアセチル-デアセチル-N2-(4-メチル-4-メルカプト-1-オキソペンチル)-メイタンシン(DM4)のDMA溶液(0.366mL;抗体一分子に対して6.8当量)、及び0.243mLのDMAを加え、20℃で16時間インキュベートし、薬物リンカーを抗体へ結合させた。次に、1M 酢酸水溶液を加えpH5.0とし、さらに室温にて20分間撹拌し、薬物リンカーの反応を停止させた。
【0309】
精製:上記溶液を、製造方法1に記載した共通操作Dによる精製を行い、標記抗体-薬物コンジュゲート「NOV0712-DM4」を含有する溶液を28mL得た。
【0310】
特性評価:製造方法1に記載した共通操作E(εA,280=200500、εA,252=76295、εD,280=43170、及びεD,252=23224を使用)
を使用して、下記の特性値を得た。
抗体濃度:2.58mg/mL,抗体収量:72.2mg(93%),共通操作Eにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):3.0。
【0311】
参考例2)-2 抗体-薬物コンジュゲートの作製 NOV0712-DXd
工程1:抗体-薬物コンジュゲート(6)
【0312】
【0313】
抗体の還元:参考例1にて作製したNOV0712を、製造方法1に記載した共通操作B(280nm吸光係数として1.51mLmg-1cm-1を使用)及びCを用いて、PBS6.0/EDTAにて9.26mg/mLに調製した。本溶液(6.6mL)に10mM TCEP(東京化成工業株式会社)水溶液(0.254mL;抗体一分子に対して6.0当量)及び1Mリン酸水素二カリウム水溶液(Nacalai Tesque,Inc.;0.0990mL)を加えた。本溶液のpHが7.0±0.1内であることを確認した後に、37℃で2時間インキュベートすることによって、抗体内鎖間部のジスルフィド結合を還元した。
【0314】
抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション:上記溶液を15℃で10分間インキュベートした。次いでN-[6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサノイル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-[(2-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-2-オキソエトキシ)メチル]グリシンアミドの10mM ジメチルスルホキシド溶液(0.381mL;抗体一分子に対して9当量)を加え、15℃で1時間インキュベートし、薬物リンカーを抗体へ結合させた。次に、100mM NAC(Sigma-Aldrich Co.LLC)水溶液(0.0381mL;抗体一分子に対して9当量)を加え、さらに室温にて20分間撹拌し、薬物リンカーの反応を停止させた。
【0315】
精製:上記溶液を、製造方法1に記載した共通操作Dによる精製を行い、標記抗体-薬物コンジュゲート「NOV0712-ADC」を含有する溶液を23.5mL得た。
【0316】
特性評価:製造方法1に記載した共通操作E(εD,280=5440、εD,370=21240を使用)を使用して、下記の特性値を得た。
抗体濃度:2.26mg/mL,抗体収量:56.4mg(92%),共通操作Eにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):6.4;共通操作Fにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):7.8。
【0317】
[参考例3:H01L02-DM4の作製]
参考例3)-1 抗体-薬物コンジュゲートの作製 H01L02-DM4
抗体-薬物コンジュゲート(7)
抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション:実施例5にて作製したH01L02を、製造方法1に記載した共通操作B(280nm吸光係数として1.53mLmg-1cm-1を使用)及びCを用いて、20mM HEPES8.1(LIFE TECHNOLOGIES社製 HEPES, 1M Buffer Solution(20mL)を1M水酸化ナトリウムでpH8.1とした後、蒸留水にて1Lとした)にて9.8mg/mLに調製し、20℃で10分間インキュベートした。次いでWO2016/024195号公開特許公報に記載の10mM 1-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イルオキシ)-1-オキソ-4-(ピリジン-2-イルジスルファニル)ブタン-2-スルフォン酸のDMA溶液(0.062mL;抗体一分子に対して11.5当量)、10mM N2-デアセチル-N2-(4-メチル-4-メルカプト-1-オキソペンチル)-メイタンシン(DM4)のDMA溶液(0.082mL;抗体一分子に対して15.1当量)を加え、20℃で18時間インキュベートし、薬物リンカーを抗体へ結合させた。次に、1M 酢酸水溶液を加えpH5.0とし、さらに室温にて20分間撹拌し、薬物リンカーの反応を停止させた。
【0318】
精製:上記溶液を、製造方法1に記載した共通操作Dによる精製を行い、標記抗体-薬物コンジュゲート「H01L02-DM4」を含有する溶液を3.5mL得た。
【0319】
特性評価:製造方法1に記載した共通操作E(εA,280=223400、εA,252=85646、εD,280=4317、及びεD,252=23224を使用)を使用して、下記の特性値を得た。
抗体濃度:1.97mg/mL,抗体収量:6.90mg(88%),共通操作Eにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):3.6。
【0320】
[実施例8:抗体-薬物コンジュゲートのin vitro活性評価]
8)-1 CDH6陽性ヒト腫瘍細胞株に対する抗体-薬物コンジュゲートのin vitro細胞増殖抑制活性評価
CDH6陽性ヒト卵巣腫瘍細胞株PA-1を10% FBS含有MEM培地中2x10
3細胞/100μL/wellになるよう96ウェルプレートに播種し、37℃、5% CO
2の条件下で一晩培養した。翌日、実施例7で作製したヒト化hG019-薬物コンジュゲート4種(クローン名は、H01L02-DXd、H02L02-DXd、H02L03-DXd及びH04L02-DXd)、又は参考例2で作製したNOV0712-薬物コンジュゲート(NOV0712-DM4)を終濃度0.0001(nM)から100(nM)となるように添加した。4日間培養後に生存細胞数をCellTiter-Glo
TM Luminescent Cell Viability Assay(Promega)によるATPの定量で測定した。
図11に抗体-薬物コンジュゲートを各々添加した際の濃度依存的な細胞増殖抑制活性を示す。この結果、ヒト化hG019-薬物コンジュゲート4種は、NOV0712-薬物コンジュゲートと比較して、より低い添加濃度から腫瘍細胞の増殖抑制活性を示し、抗腫瘍活性が高いことが示される。
【0321】
[実施例9:抗体-薬物コンジュゲートのin vivo抗腫瘍効果]
抗体-薬物コンジュゲートの抗腫瘍効果は、CDH6陽性ヒト腫瘍細胞株の細胞を免疫不全マウスに移植した動物モデルを用いて評価した。4-5週齢のBALB/c ヌードマウス(CAnN.Cg-Foxnl[nu]/CrlCrlj[Foxnlnu/Foxnlnu]、日本チャールス・リバー)及び、SCIDマウス(CB17/Icr-Prkdc[scid]/CrlCrlj、日本チャールス・リバー)を実験使用前にSPF条件化で3日間以上馴化した。マウスには滅菌した固形飼料(FR-2,Funabashi Farms Co.,Ltd)を給餌し、滅菌した水道水(5-15ppm次亜塩素酸ナトリウム溶液を添加して調製)を与えた。移植した腫瘍の長径及び短径を電子式デジタルノギス(CD-15CX,Mitutoyo Corp.)で1週間に2回測定し、以下に示す計算式により腫瘍体積を算出した。
腫瘍体積(mm3)=1/2×長径(mm)×[短径(mm)]2
抗体-薬物コンジュゲートは全てABS緩衝液(10mM-Acetate Buffer, 5% Sorbitol, pH5.5)(NACALAI)で希釈し、各実施例に示す用量にて尾静脈内投与した。また、コントロール群(Vehicle群)としてABS緩衝液を同様に投与した。1群あたり6匹のマウスを実験に用いた。
【0322】
9)-1 抗腫瘍効果(1)
実施例2)-3-1にてCDH6発現を確認した、CDH6陽性ヒト腎細胞腫瘍細胞株786-O(ATCC)をマトリゲル(コーニング社)に懸濁し、5×10
6cellsを雄SCIDマウスの右側腹部に皮下移植し(Day0)、Day18に無作為に群分けを実施した。群分け実施日に、実施例7で作製した抗体-薬物コンジュゲート4種(クローン名は、H01L02-DXd、H02L02-DXd、H02L03-DXd及びH04L02-DXd)、又は参考例2で作製したNOV0712-DM4を3mg/kgの用量で尾静脈内投与した。結果を
図12に示す。横軸は日数、縦軸は腫瘍体積、誤差範囲はSE値を示す。
【0323】
NOV0712-DM4は本腫瘍モデルにおいて顕著な抗腫瘍効果を示さなかった。実施例7で作成した抗体-薬物コンジュゲート4種はいずれも投与後腫瘍体積が減少し、顕著な腫瘍の退縮が認められ、投与後24日の間、腫瘍退縮効果が持続した(
図12)。
【0324】
9)-2 抗腫瘍効果(2)
実施例2)-3-1にてCDH6発現を確認した、CDH6陽性ヒト卵巣腫瘍細胞株PA-1(ATCC)をマトリゲル(コーニング社)に懸濁し、8.5×10
6cellsを雌ヌードマウスの右側腹部に皮下移植し(Day0)、Day11に無作為に群分けを実施した。群分け実施日に、実施例7で作製した抗体-薬物コンジュゲートH01L02-DXd又は参考例2で作製したNOV0712-DM4もしくはNOV0712-DXdを、1及び3mg/kgの用量で尾静脈内投与した。結果を
図13に示す。横軸は日数、縦軸は腫瘍体積、誤差範囲はSE値を示す。
【0325】
NOV0712-DM4は本腫瘍モデルにおいて1及び3mg/kgいずれの用量でも抗腫瘍効果を示さなかった。一方、H01L02-DXdは1及び3mg/kgいずれの用量でも投与後腫瘍体積が著しく減少し、腫瘍を縮退させる効果を発揮した(
図13)。また、本明細書で取得したH01L02抗体もしくはNOV0712抗体に同じ薬物DXdをコンジュゲートした検体の薬効を比較したところ、H01L02-DXdは、1及び3mg/kgいずれの用量でもNOV0712-DXdに比べて強い抗腫瘍効果を発揮した。すなわち、本発明のH01L02抗体は、NOV0712抗体に比べて、抗腫瘍剤としての抗体-薬物コンジュゲートの抗体としてより優れた抗体であることが示された(
図13)。
【0326】
9)-3 抗腫瘍効果(3)
実施例2)-3-1にてCDH6発現を確認した、CDH6陽性ヒト卵巣腫瘍細胞株NIH:OVCAR-3(ATCC)をマトリゲル(コーニング社)に懸濁し、1×10
7cellsを雌ヌードマウスの右側腹部に皮下移植し(Day0)、Day22に無作為に群分けを実施した。群分け実施日に、実施例7で作製した抗体-薬物コンジュゲートH01L02-DXd又は参考例2で作製したNOV0712-DM4を、1及び3mg/kgの用量で尾静脈内投与した。結果を
図14に示す。横軸は日数、縦軸は腫瘍体積、誤差範囲はSE値を示す。
【0327】
NOV0712-DM4は、1mg/kgでは全く抗腫瘍効果を示さず、3mg/kgでは抗腫瘍効果を示すものの、投与2週間後から腫瘍の再増殖が認められた。一方、H01L02-DXdは1及び3mg/kgいずれの用量でも、投与後腫瘍体積の増加を著しく抑制し、特に3mg/kgでは投与後31日間の長期にわたって腫瘍増殖抑制効果が持続した。(
図14)。
【0328】
また、PA-1細胞を用いて同様に、参考例2で作製したNOV0712-DM4もしくは参考例3で作成したH01L02-DM4の腫瘍増殖抑制効果を評価した。H01L02-DM4はNOV0712-DM4よりも腫瘍体積を縮退させ、本発明のH01L02抗体は、NOV0712抗体に比べて、抗腫瘍剤としての抗体-薬物コンジュゲートの抗体としてより優れた抗体であった。
【0329】
9)-4 抗腫瘍効果(4)
実施例2)-3-1にてCDH6発現を確認した、CDH6陽性ヒト腎細胞腫瘍細胞株786-O(ATCC)をマトリゲル(コーニング社)に懸濁し、5×10
6cellsを雄SCIDマウスの右側腹部に皮下移植し(Day0)、Day20に無作為に群分けを実施した。群分け実施日に、実施例7で作製した抗体-薬物コンジュゲートH01L02-DXd又は参考例2で作製したNOV0712-DM4を、1及び3mg/kgの用量で尾静脈内投与した。結果を
図15に示す。横軸は日数、縦軸は腫瘍体積、誤差範囲はSE値を示す。
【0330】
NOV0712-DM4は本腫瘍モデルにおいて1及び3mg/kgいずれの用量でも顕著な抗腫瘍効果を示さなかった。一方、H01L02-DXdは1及び3mg/kgいずれの用量でも投与後腫瘍体積が減少し、特に3mg/kgでは顕著な腫瘍の退縮が認められ、投与後20日の間、腫瘍退縮効果が持続した(
図15)。
【0331】
9)-5 抗腫瘍効果(5)
実施例2)-3-1にてCDH6を発現しないことを確認した、CDH6陰性ヒト卵巣腫瘍細胞株ES-2(ATCC)を生理食塩水に懸濁し、1×10
6cellsを雌ヌードマウスの右側腹部に皮下移植し(Day0)、Day7に無作為に群分けを実施した。群分け実施日に、実施例7で作成した抗体-薬物コンジュゲートH01L02-DXd又は参考例2で作製したNOV0712-DM4を、1及び3mg/kgの用量で尾静脈内投与した。結果を
図16に示す。横軸は日数、縦軸は腫瘍体積、誤差範囲はSE値を示す。
【0332】
CDH6を発現しない本腫瘍モデルでは、H01L02-DXd及びNOV0712-DM4はいずれの用量でも抗腫瘍効果を全く示さなかった。この結果から、実施例9)-1、9)-2、9)-3、9)-4で示されたCDH6陽性腫瘍モデルでの抗体-薬物コンジュゲートの抗腫瘍効果は、腫瘍細胞のCDH6発現に依存して起こる効果であり、CDH6陽性の腫瘍に特異的に抗腫瘍効果を示し、CDH6陰性の正常組織には細胞障害を起こさない選択的で安全な抗腫瘍薬剤と考えられる(
図16)。
【産業上の利用可能性】
【0333】
本発明により、内在化活性を有する抗CDH6抗体及び該抗体を含む抗体-薬物コンジュゲートが提供された。該抗体-薬物コンジュゲートは癌に対する治療薬等として用いることができる。
【配列表】