(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】コンタクトレンズ
(51)【国際特許分類】
G02C 7/06 20060101AFI20240229BHJP
G02C 7/04 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G02C7/06
G02C7/04
(21)【出願番号】P 2022079342
(22)【出願日】2022-05-13
【審査請求日】2022-08-26
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】517113716
【氏名又は名称】永勝光学股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】蔡宗旻
(72)【発明者】
【氏名】王▲ジェ▼凱
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-051180(JP,A)
【文献】特開2017-173826(JP,A)
【文献】米国特許第06685315(US,B1)
【文献】米国特許第05574518(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトレンズの幾何中心を覆う、略円形をなす光学領域と、
前記
略円形をなす光学領域を包囲する非光学領域を含み、
前記
略円形をなす光学領域の異なる位置のジオプトリは、その位置とレンズの中心点との距離に応じて連続的に変化
し、
前記略円形をなす光学領域は、
ジオプトリの極小値D
1
を有する中心領域と、
前記中心領域を包囲し、且つジオプトリの極大値D
2
を有する第1外周領域と、
前記第1外周領域を包囲し、且つジオプトリの極大値D
3
を有する第2外周領域と、を含み、D
2
>D
1
>D
3
であることを特徴とする、コンタクトレンズ。
【請求項2】
前記連続的な変化は2つの波頂C
1及びC
3を含み、前記波頂C
1はジオプトリ
の極大値D
2に対応しており、前記波頂C
3はジオプトリ
の極大値D
3に対応して
おり、波底T
2
は2つの波頂C
1
及びC
3
の間に存在する、請求項
1に記載の
コンタクトレンズ。
【請求項3】
コンタクトレンズの幾何中心を覆う、略円形をなす光学領域と、
前記光学領域を包囲する非光学領域を含み、
前記
略円形をなす光学領域は、
ジオプトリ
の極小値D
1を有する
幾何中心を覆う中心領域と、
前記中心領域を包囲し、且つジオプトリ
の極大値D
2を有する第1外周領域と、
前記第1外周領域を包囲し、且つジオプトリ
の極大値D
3を有する第2外周領域、を含み、
D
2>D
1>D
3である
略円形をなすコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記中心領域の範囲は、前記
コンタクトレンズの中心点から外側に向かって0.15~0.45mm
の半径を有している請求項
3に記載の
コンタクトレンズ。
【請求項5】
前記第1外周領域の範囲は、前記中心領域の辺縁から外側に向かって0.3~2.1mm
の半径を有している請求項
3に記載の
コンタクトレンズ。
【請求項6】
前記第2外周領域の範囲は、前記第1外周領域の辺縁から外側に向かって0.15~3.75mm
の半径を有している請求項
3に記載の
コンタクトレンズ。
【請求項7】
コンタクトレンズの幾何中心を覆う、略円形をなす光学領域と、
前記
略円形をなす光学領域を包囲する非光学領域を含み、
前記光学領域は、
ジオプトリ
の極小値D
1を有する
幾何中心を覆うA領域と、
前記A領域を包囲し、且つジオプトリ
の極大値D
2を有するB領域と、
前記B領域を包囲し、且つジオプトリ
の極大値D
3を有するC領域と、
前記C領域を包囲し、且つジオプトリ
の極大値D
4を有するD領域、を含み、
D
1、D
2、D
3及びD
4は、D
2>D
1≧D
3>D
4、D
2>D
3>D
1>D
4、又はD
3>D
2>D
1>D
4のうちのいずれかの関係を有する
略円形をなすコンタクトレンズ。
【請求項8】
前記光学領域の異なる位置のジオプトリは、その位置とレンズの中心点との距離に応じて連続的に変化する請求項
7に記載の
コンタクトレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視力矯正者に対し異なる視力矯正領域を提供することで、矯正者が一般的に眼用レンズを使用する際、或いは、遠距離物と近距離物を交互に見る際のいずれにおいても良好な視覚体験が得られる多焦点眼用レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の多焦点眼用レンズの設計では、
図7に示すように、レンズの中心部位に1つのジオプトリの数値を使用し、レンズの中心からレンズの周辺に向かって徐々にジオプトリの数値を小さくしている(B
0領域)。即ち、近視の矯正度合が次第に上昇している。しかし、この設計では、遠距離物を見る際に、眼はA
0領域(ジオプトリの数値が大きい領域)とC
0領域(ジオプトリの数値が小さい領域)を同時に見ることになる。即ち、遠距離物を見る際に、周辺には鮮明な映像を有するが、レンズの中心はぼやけることから、装着時に不快感を伴う。これは、従来の多焦点眼用レンズにおける盲点であり、本発明の多焦点眼用レンズが解決しようとする課題でもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の一の目的は、光学領域と、前記光学領域を包囲する非光学領域を含み、前記光学領域の異なる位置のジオプトリが、その位置とレンズの中心点との距離に応じて連続的に変化する多焦点眼用レンズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記光学領域は、ジオプトリD1を有する中心領域と、前記中心領域を包囲し、且つジオプトリD2を有する第1外周領域と、前記第1外周領域を包囲し、且つジオプトリD3を有する第2外周領域、を含み得る。また、D2>D1>D3である。このほか、前記連続的な変化は2つの波頂C1及びC3を含み得る。前記波頂C1は前記ジオプトリD2に対応しており、前記波頂C3は前記ジオプトリD3に対応している。
【0005】
本発明のもう一つの目的は、光学領域と、前記光学領域を包囲する非光学領域を含み、前記光学領域が、ジオプトリD1を有する中心領域と、前記中心領域を包囲し、且つジオプトリD2を有する第1外周領域と、前記第1外周領域を包囲し、且つジオプトリD3を有する第2外周領域、を含み、D2>D1>D3である多焦点眼用レンズを提供することである。好ましくは、前記光学領域の異なる位置のジオプトリが、その位置とレンズの中心点との距離に応じて連続的に変化する。
【0006】
本発明の更なる目的は、光学領域と、前記光学領域を包囲する非光学領域を含み、前記光学領域が、ジオプトリD1を有するA領域と、前記A領域を包囲し、且つジオプトリD2を有するB領域と、前記B領域を包囲し、且つジオプトリD3を有するC領域と、前記C領域を包囲し、且つジオプトリD4を有するD領域、を含み、D1、D2、D3及びD4が、D2>D1≧D3>D4、D2>D3>D1>D4、又はD3>D2>D1>D4のうちのいずれかの関係を有する多焦点眼用レンズを提供することである。好ましくは、前記光学領域の異なる位置のジオプトリが、その位置とレンズの中心点との距離に応じて連続的に変化する。
【0007】
一般的に、前記中心領域又は前記A領域は、前記多焦点眼用レンズの中心点、例えば幾何中心を覆っている。
【0008】
本発明によれば、前記光学領域の範囲は、前記中心点から外側に向かって約3~4.5mm延伸している。また、前記光学領域は略円形をなし得る。
【0009】
本発明の多焦点眼用レンズは、コンタクトレンズ、人工水晶体、及び角膜インレー又はアンレーを含むが、これらに限らない。
【0010】
具体的実施例において、前記中心領域の範囲は、前記中心点から外側に向かって0.15~0.45mm延伸している。また、前記中心領域は略円形をなし得る。
【0011】
一部の具体的実施例において、前記第1外周領域の範囲は、前記中心領域の辺縁から外側に向かって0.3~2.1mm延伸している。また、前記第2外周領域の範囲は、前記第1外周領域の辺縁から外側に向かって0.75~2.55mm延伸している。前記第1外周領域及び第2外周領域は、それぞれ略環状をなし得る。
【0012】
本発明の特定の具体的実施例によれば、前記光学領域の異なる位置のジオプトリは、その位置とレンズの中心点との距離に応じて連続的に変化し、且つ、3つの波頂C1、C2、C3及び2つの波底T1、T2を含む。これらの位置は、前記多焦点眼用レンズの中心点から外側に向かって、順に、前記波頂C1、前記波底T1、前記波頂C2、前記波底T2及び前記波頂C3となっている。
【0013】
具体的実施例において、前記第1外周領域105は、更に、B領域及びC領域に分けることができる。B領域は、前記中心領域104(即ち、A領域)を包囲し、C領域はB領域を包囲する。前記波頂C1はB領域に位置し、前記波頂C2はC領域に位置し、前記波頂C3は前記第2外周領域106(即ち、D領域)に位置する。
【0014】
本発明の一部の具体的実施例によれば、前記中心領域はジオプトリD1を有する。前記波頂C1は目標ジオプトリD2に対応しており、前記波頂C2は目標ジオプトリD3に対応しており、前記波頂C3は目標ジオプトリD4に対応している。本発明の一部の具体的実施例において、前記光学領域のジオプトリの曲線変化は、(1)D2>D1≧D3>D4、(2)D2>D3>D1>D4、又は(3)D3>D2>D1>D4との関係を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の具体的実施例に基づき記載した多焦点眼用レンズの概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の具体的実施例に基づき記載した光学領域のジオプトリの曲線変化の概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の具体的実施例に基づき記載した多焦点眼用レンズの概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の具体的実施例に基づき記載した光学領域のジオプトリの曲線変化の概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の具体的実施例に基づき記載した光学領域のジオプトリの曲線変化の概略図である。
【
図6】
図6は、本発明の具体的実施例に基づき記載した製造方法のフローチャートである。
【
図7】
図7は、従来の多焦点眼用レンズのジオプトリ設定の概略図である。
【
図8】
図8は、本発明の具体的実施例に基づき記載した光学領域のジオプトリの曲線変化の概略図である。
【
図9】
図9は、本発明の他の具体的実施例に基づき記載した光学領域のジオプトリの曲線変化の概略図である。
【
図10】
図10は、本発明の更なる具体的実施例に基づき記載した光学領域のジオプトリの曲線変化の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1及び
図2を合わせて参照する。多焦点眼用レンズ100は、光学領域102と、光学領域102を包囲する非光学領域108を含む。
図2に示すように、光学領域102のジオプトリは連続的に変化している。また、
図3を合わせて参照する。光学領域102は、ジオプトリD
1を有する中心領域104と、中心領域104を包囲し、且つジオプトリD
2を有する第1外周領域105と、第1外周領域105を包囲し、且つジオプトリD
3を有する第2外周領域106、を含み得る。また、D
2>D
1>D
3である。
図4を合わせて参照すると、特定の事例において、ジオプトリの変化曲線は、波頂C
1、C
3及び波底T
2を含み得る。前記波頂及び波底の位置は、多焦点眼用レンズ100の中心点101(例えば、幾何中心)から外側(多焦点眼用レンズ100の辺縁)に向かって、順に、C
1、T
2及びC
3となっている。中心点101に近接するレンズ領域はジオプトリD
1を有し得る。波頂C
1は目標ジオプトリD
2に対応しており、前記波頂C
3は目標ジオプトリD
3に対応している。光学領域102のジオプトリの曲線変化は、D
2>D
1>D
3との関係を満たしている。ジオプトリの数値が大きいほど近視の矯正度合が低いことを意味する。反対に、ジオプトリの数値が小さいほど近視の矯正度合が高いことを意味する。光学領域102の範囲は、前記中心点から外側に向かって約3mm延伸し得る。瞳孔の平均的な大きさに対応して、例えば、光学領域102は半径3mmの略円形をなし得る。
【0017】
続いて、
図3を参照する。光学領域102は、中心領域104、第1外周領域105及び第2外周領域106を含み得る。中心領域104は中心点101の周辺領域を覆っている。また、第1外周領域105は中心領域104を包囲しており、第2外周領域106は第1外周領域105を包囲している。注意すべき点として、
図3では各領域を同心円として記載しているが、これに限らず、例えば楕円形としてもよい。中心領域104の範囲は、中心点101から多焦点眼用レンズ100の辺縁方向に向かって0.15~0.45mm延伸し得る。例えば、中心領域104は、半径約0.25~0.3mmの略円形をなし得る。
【0018】
ここで、
図4を合わせて参照する。好ましくは、光学領域102の異なる位置のジオプトリは、その位置と中心点101との距離に応じて連続的に変化する。中心領域104はジオプトリD
1を有し、第1外周領域105はジオプトリD
2を有し、第2外周領域106はジオプトリD
3を有する。光学領域102のジオプトリの曲線変化は、D
2>D
1>D
3との関係を有する。特定の事例において、ジオプトリの変化曲線は、波頂C
1、C
3及び波底T
2を含む。波頂C
1は第1外周領域105に位置し、波頂C
3は第2外周領域106に位置する。ただし、本発明はこれに限らず、ジオプトリの変化曲線は何らの波頂又は波底を含まなくともよく(例えば、なだらかな段差形状をなす)、D
2>D
1>D
3との関係を満たしていればよい。第1外周領域105の範囲は、中心領域104の辺縁から外側に向かって約0.3~2.1mm延伸してもよいし、中心領域104の辺縁から外側に向かって、中心点101から1.50±0.75mmの位置まで延伸してもよい。また、第2外周領域106の範囲は、第1外周領域105の辺縁から外側に向かって約0.15~3.75mm延伸してもよいし(光学領域102の辺縁まで延伸)、第1外周領域105の辺縁から外側に向かって、中心点101から3.00±1.50mmの位置まで延伸してもよい(光学領域102の辺縁まで延伸)。
【0019】
ここで、
図5を合わせて参照する。その他の具体的実施例において、光学領域102の異なる位置のジオプトリは、その位置とレンズの中心点との距離に応じて連続的に変化し、且つ、波頂C
1、C
2、C
3及び波底T
1、T
2を含む。この場合、第1外周領域105は、更に、B領域及びC領域に分けることができ、B領域が中心領域104(即ち、A領域)を包囲し、C領域がB領域を包囲する。波頂C
1は、B領域に位置し、且つ目標ジオプトリD
2に対応している。波頂C
2は、C領域に位置し、且つ目標ジオプトリD
3に対応している。また、前記波頂C
3は、前記第2外周領域106(即ち、D領域)に位置し、且つ目標ジオプトリD
4に対応している。好ましくは、光学領域102のジオプトリの曲線変化は、(1)D
2>D
1≧D
3>D
4、(2)D
2>D
3>D
1>D
4、又は(3)D
3>D
2>D
1>D
4のうちのいずれかの関係を満たす。B領域の範囲は、中心領域104の辺縁から外側に向かって約0.15~1.2mm延伸してもよいし、中心領域104の辺縁から外側に向かって、中心点101から0.90±0.45mmの位置まで延伸してもよい。また、C領域の範囲は、B領域の辺縁から外側に向かって約0.15~1.8mm延伸してもよいし(第1外周領域105の辺縁まで延伸)、B領域の辺縁から外側に向かって、中心点101から1.50±0.75mmの位置まで延伸してもよい(第1外周領域105の辺縁まで延伸)。
【0020】
図1及び
図5を合わせて参照する。本発明における多焦点眼用レンズ100の光学領域102は、中心点101の周辺領域を覆い、且つジオプトリD
1を有するA領域、前記A領域を包囲し、且つジオプトリD
2を有するB領域、前記B領域を包囲し、且つジオプトリD
3を有するC領域、前記C領域を包囲し、且つジオプトリD
4を有するD領域、という4つの領域を含むか、これら4つの領域からなるよう設計してもよい。また、D
1、D
2、D
3及びD
4は、D
2>D
1≧D
3>D
4、D
2>D
3>D
1>D
4、又はD
3>D
2>D
1>D
4のうちのいずれかの関係を有する。
図5に示すジオプトリの変化曲線は、具体的に、D
2>D
3>D
1>D
4を満たしている。A~D領域は、
図3に記載した同心円と類似した配置をなし得るが、これに限らず、例えば楕円形としてもよい。A領域の範囲は、中心点101から多焦点眼用レンズ100の辺縁方向に向かって0.15~0.45mm延伸し得る。例えば、A領域は、半径約0.25~0.3mmの略円形をなし得る。B領域の範囲は、A領域の辺縁から外側に向かって約0.15~1.2mm延伸してもよいし、A領域の辺縁から外側に向かって、中心点101から0.90±0.45mmの位置まで延伸してもよい。C領域の範囲は、B領域の辺縁から外側に向かって約0.15~1.8mm延伸してもよいし、B領域の辺縁から外側に向かって、中心点101から1.50±0.75mmの位置まで延伸してもよい。また、D領域の範囲は、C領域の辺縁から外側に向かって約0.15~3.75mm延伸してもよいし(光学領域102の辺縁まで延伸)、C領域の辺縁から外側に向かって、中心点101から3.00±1.50mmの位置まで延伸してもよい(光学領域102の辺縁まで延伸)。
【0021】
一部の具体的実施例において、上記ジオプトリの変化曲線は、波頂C1、C2、C3及び波底T1、T2を含む。波頂C1は、B領域に位置し、且つ目標ジオプトリD2に対応している。波頂C2は、C領域に位置し、且つ目標ジオプトリD3に対応している。波頂C3は、D領域に位置し、且つ目標ジオプトリD4に対応している。
【0022】
本発明の具体的実施例に基づき記載した製造方法のフローチャートである
図6を参照する。本発明における多焦点眼用レンズは、前記技術分野において周知の方法で製造可能であり、例えば、次のステップを含む方法で製造可能である。即ち、眼用レンズ成形金型を準備する。前記眼用レンズ成形金型は、複数のジオプトリ設計を有している(ステップS1)。次に、レンズ成形材料を前記レンズ成形金型に注入し(ステップS2)、前記レンズ成形材料を重合して、多焦点眼用レンズを製造する(ステップS3)。
【0023】
事例1:多焦点眼用レンズ(1)(D
2>D
1≧D
3>D
4)
本事例において、実際の状況では、D
2>D
1>D
3>D
4となった。
図8を参照して、多焦点眼用レンズ(1)の光学領域を、A
I領域(中心領域)、B
I領域、C
I領域及びD
I領域を含むように設計した。A
I領域の範囲は、レンズの中心点から、レンズの中心点と0.25mm離れた位置までとした。B
I領域の範囲は、A
I領域の辺縁から、レンズの中心点と0.90mm離れた位置までとした。C
I領域の範囲は、B
I領域の辺縁から、レンズの中心点と1.40mm離れた位置までとした。D
I領域の範囲は、C
I領域の辺縁から、レンズの中心点と3.00mm離れた位置(即ち、第2外周領域106の辺縁)までとした。また、D
I領域の目標ジオプトリD
4を-2.50、A
I領域の目標ジオプトリD
1を-2.00、B
I領域の目標ジオプトリD
2を-1.75、C
I領域の目標ジオプトリD
3を-2.25とした。多焦点眼用レンズ(1)の光学領域におけるジオプトリの変化曲線は
図8に示す通りである。
【0024】
事例2:多焦点眼用レンズ(2)(D
2>D
3>D
1>D
4)
図9を参照して、多焦点眼用レンズ(2)の光学領域を、A
II領域(中心領域)、B
II領域、C
II領域及びD
II領域を含むように設計した。A
II領域の範囲は、レンズの中心点から、レンズの中心点と0.25mm離れた位置までとした。B
II領域の範囲は、A
II領域の辺縁から、レンズの中心点と0.90mm離れた位置までとした。C
II領域の範囲は、B
II領域の辺縁から、レンズの中心点と1.40mm離れた位置までとした。D
II領域の範囲は、C
II領域の辺縁から、レンズの中心点と3.00mm離れた位置(即ち、第2外周領域106の辺縁)までとした。また、D
II領域の目標ジオプトリD
4を-4.00、A
II領域の目標ジオプトリD
1を-3.80、B
II領域の目標ジオプトリD
2を-3.30、C
II領域の目標ジオプトリD
3を-3.50とした。多焦点眼用レンズ(2)の光学領域におけるジオプトリの変化曲線は
図9に示す通りである。
【0025】
事例3:多焦点眼用レンズ(3)(D
3>D
2>D
1>D
4)
図10を参照して、多焦点眼用レンズ(3)の光学領域を、A
III領域(中心領域)、B
III領域、C
III領域及びD
III領域を含むように設計した。A
III領域の範囲は、レンズの中心点から、レンズの中心点と0.25mm離れた位置までとした。B
III領域の範囲は、A
III領域の辺縁から、レンズの中心点と0.90mm離れた位置までとした。C
III領域の範囲は、B
III領域の辺縁から、レンズの中心点と1.40mm離れた位置までとした。D
III領域の範囲は、C
III領域の辺縁から、レンズの中心点と3.00mm離れた位置(即ち、第2外周領域106の辺縁)までとした。また、D
III領域の目標ジオプトリD
4を-4.00、A
III領域の目標ジオプトリD
1を-3.80、B
III領域の目標ジオプトリD
2を-3.50、C
III領域の目標ジオプトリD
3を-3.30とした。多焦点眼用レンズ(3)の光学領域におけるジオプトリの変化曲線は
図10に示す通りである。
【0026】
事例4:装着試験
テストレンズには、
図7のような従来の多焦点レンズ(対照群)と、上述した本発明の多焦点眼用レンズ(1)~(3)が含まれていた。また、テストレンズのジオプトリの数値は下記のように設定した。
【0027】
1.対照群レンズのジオプトリの数値は、A0領域>B0領域>C0領域と設定した。
2.多焦点眼用レンズ(1)のジオプトリの数値は、BI領域>AI領域≧CI領域>DI領域と設定した。
3.多焦点眼用レンズ(2)のジオプトリの数値は、BII領域>CII領域>AII領域>DII領域と設定した。
4.多焦点眼用レンズ(3)のジオプトリの数値は、CIII領域>BIII領域>AIII領域>DIII領域と設定した。
【0028】
20人の装着者について測定及び観察を行った。対照群及び各実施例群で製造した異なるテストレンズを装着したあと、装着者が近距離物を見た際の視力値(VAnear)及び遠距離物を見た際の視力値(VAfar)を測定した。視力値は、視力良好から視力不良の順に、それぞれ、1.5、1.2、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1で表した。装着結果は下記の表1の通りとなった。
【0029】
【0030】
装着試験の結果より、近距離物を見る近距離視力値(VAnear)試験において、対照群及び本発明の多焦点眼用レンズ(1)~(3)の平均視力値はいずれも1.0以上に達し得た。即ち、近距離物を見る際には物をはっきりと見ることができ、且つ双方の差は小さかった。
【0031】
しかし、遠距離物を見る遠距離視力(VAfar)試験では、対照群の平均視力値が0.9程度であり、遠距離物を見る際にぼやけが存在したのに対し、本発明の多焦点眼用レンズ(1)~(3)では、平均視力値が1.0以上に達することが明らかに示された。このことは、多焦点眼用レンズ(1)~(3)を使用して遠距離物を見る際にニーズを満たし得ることを示している。
【0032】
上記の結果から明らかなように、本発明で提供する多焦点眼用レンズは、従来技術のレンズの場合には、遠くと近くを交互に見る際に遠くがはっきり見えず、装着時に不快感を伴うとの課題を効果的に解決可能である。
【0033】
以上の記載は本発明の好ましい具体的実施例にすぎず、本発明の実施範囲を限定するものではない。即ち、本発明の特許請求の範囲で記載する形状、構造、特徴及び精神に基づきなされる均等な変形及び補足は、いずれも本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0034】
100 多焦点眼用レンズ
101 中心点
102 光学領域
104 中心領域
105 第1外周領域
106 第2外周領域
108 非光学領域
D1~D4 ジオプトリ
C1~C3 波頂
T1~T2 波底
A領域、B領域、C領域、D領域 光学領域
S1~S3 ステップ
A0領域、B0領域、C0領域 従来の多焦点眼用レンズの光学領域
AI領域、BI領域、CI領域、DI領域 事例1の多焦点眼用レンズの光学領域
AII領域、BII領域、CII領域、DII領域 事例2の多焦点眼用レンズの光学領域
AIII領域、BIII領域、CIII領域、DIII領域 事例3の多焦点眼用レンズの光学領域