(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】有機発光素子の封止材用熱硬化性液状組成物
(51)【国際特許分類】
H10K 50/842 20230101AFI20240229BHJP
C08G 59/32 20060101ALI20240229BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240229BHJP
H10K 50/844 20230101ALI20240229BHJP
【FI】
H10K50/842 426
C08G59/32
H10K50/10
H10K50/844
(21)【出願番号】P 2022123753
(22)【出願日】2022-08-03
【審査請求日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】10-2021-0103653
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519204054
【氏名又は名称】イノックス・アドバンスト・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】INNOX Advanced Materials Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】171,Asanvalley-ro,Dunpo-myeon,Asan-si,Chungcheongnam-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ヨン ミン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジョン ジョル
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ミョン スプ
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/118509(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/230725(WO,A1)
【文献】特開2014-037326(JP,A)
【文献】特開2016-079360(JP,A)
【文献】国際公開第2011/004873(WO,A1)
【文献】特開2012-121760(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103636286(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0176706(US,A1)
【文献】国際公開第2021/067693(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/064410(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/069562(WO,A1)
【文献】特開2020-037702(JP,A)
【文献】特開2018-145430(JP,A)
【文献】特開2013-091676(JP,A)
【文献】国際公開第2019/117298(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/005441(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/020688(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/052710(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/842
C08G 59/32
H10K 50/10
H10K 50/844
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機発光素子の封止材用熱硬化性液状組成物の熱硬化物である有機発光素子の封止材であって、
前記封止材用熱硬化性液状組成物が、
脂肪族四官能エポキシ系化合物
と脂環族二官能エポキシ系化合物とを含むバインダー物質;及び
カチオン性熱硬化開始剤;
を含み、
前記脂肪族四官能エポキシ系化合物は、
下記の化学式構造を有するペンタエリトリトー
ルグリシジルエーテルであり、
【化1】
前記脂環族二官能エポキシ系化合物は、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートであり、
前記カチオン性熱硬化開始剤は、テトラキス(ペンタフルオロフェニルボラート)をアニオンとして有する4級アンモニウム塩であり、
前記バインダー物質の100重量部に対し、前記脂肪族四官能エポキシ系化合物は、60重量部以上で含
み、前記脂環族二官能エポキシ系化合物は、40重量部以下で含み、
前記バインダー物質100重量部に対し、前記カチオン性熱硬化開始剤は、2.0~2.5重量部で含み、
前記封止材の光透過率が99.0%以上であり、ヘイズが0.10%以下であることを特徴とする、
有機発光素子の封止
材。
【請求項2】
前記封止材用熱硬化性液状組成物が、界面活性剤をさらに含むことを特徴とする、
請求項1に記載の有機発光素子の封止
材。
【請求項3】
前記界面活性剤は、ポリエーテル-シロキサンの共重合体であることを特徴とする、
請求項
2に記載の有機発光素子の封止
材。
【請求項4】
前記封止材用熱硬化性液状組成物が、経時安定剤をさらに含むことを特徴とする、
請求項1に記載の有機発光素子の封止
材。
【請求項5】
前記封止材用熱硬化性液状組成物が、ダムアンドフィル封止(dam and fill encapsulation)用フィル(fill)材料として使用されることを特徴とする、
請求項1に記載の有機発光素子の封止
材。
【請求項6】
前記熱硬化物が、熱硬化によって光学透明樹
脂で形成されることを特徴とする、
請求項1に記載の有機発光素子の封止
材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子の封止材用熱硬化性液状組成物に関し、より具体的に、物理的・化学的吸湿剤(getter)は含まないで、高吸湿性エポキシバインダー(epoxy binder)物質を含む、有機発光素子の封止材用熱硬化性液状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子(OLED:Organic Light Emitting Diode)は、対向電極の間に配置される発光層が薄膜の有機化合物からなる発光素子であって、一方の電極から注入される電子と、他方の電極から注入される正孔とが、発光層内で再結合するとき、発光層の蛍光性又は燐光性有機化合物に電流が通過しながら光を発生させる電界発光が発生する。
【0003】
有機発光素子は、他の電子装置に比べて水分に影響されやすく、有機発光素子内に浸透した水分、不純物等により電極の酸化や有機物の変性等が発生することによって、発光特性が顕著に低下する問題点があった。よって、上記問題を解決するために、防湿性(吸湿性)にも優れ、かつ、光学特性にも優れる材料を封止材用組成物で有機発光素子を封止する技術が適用されている。
【0004】
一方、有機発光素子は、発光する方向によって背面発光(bottom emission)方式及び前面発光(top emission)方式の二種類に区別される。背面発光方式の有機電子発光素子の構造では、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;TFT)回路の占める面積により開口率(aperture ratio;単位画素で光が出られる面積)が低くなる短所はあるものの、金属負極を選択可能であり、吸湿剤(getter)が透明でなくてもかまわない長所がある。
【0005】
一方、前面発光方式の有機発光素子の構造は、背面発光方式の構造に比べて開口率が高くて、高解像度のディスプレイ具現が可能であるが、透明な負極が必要であり、光学特性を阻害する吸湿剤を使用しない封止材の技術が必要であることから、適用できる材料には制約がある。よって、前面発光方式の有機電子発光素子に使用される封止材組成物としては、いわゆる、ダムアンドフィル封止(dam and fill encapsulation)工法により適用される液状封止組成物を使用することになるが、有機電子発光素子の縁部分にダム(dam)材料を提供してバリアー(barrier)を形成し、その内部をフィル(fill)材料で封止する方式の工法を採用している。
【0006】
最近、有機電子発光素子が使用される用途及び環境が多様化することによって、封止材用組成物の吸湿性、光学特性(透明性)、及び貯蔵安定性をさらに向上させて、さらには、封止材として適用するとき、低温で、早い硬化速度で製造できる工程技術の開発に対する要求も存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、物理的かつ化学的吸湿剤を含まないながらも、従来に比べて吸湿性及び貯蔵安定性に優れるとともに、光学特性にも優れ、かつ、低温で、早い硬化速度で製造できる有機発光素子の封止材として使用される熱硬化性液状組成物を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の目的は、以上に言及した目的に制限されず、言及していない本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解することができ、本発明の実施例によってより明らかに理解することができる。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示した手段及びその組み合わせによって実現できることが分かりやすい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した技術的課題を解決するため本発明の一態様によれば、脂肪族四官能エポキシ系化合物を含むバインダー物質;及びカチオン開始剤を含む有機発光素子の封止材用熱硬化性液状組成物を提供することができる。
【0010】
また、前記バインダー物質は、脂環族二官能エポキシ系化合物をさらに含むことができ、このとき、前記バインダー物質100重量部に対し、前記脂肪族四官能エポキシ系化合物は、60重量部以上で含み、前記脂環族二官能エポキシ系化合物は、40重量部以下で含むことができる。
【0011】
本発明の他の一態様によれば、本発明の有機発光素子の封止材用熱硬化性液状組成物を熱硬化して形成された有機発光素子の封止材を提供することができる。また、前記有機発光素子の封止材は、光透過率が99.0%以上であり、ヘイズが0.10%以下であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の有機発光素子の封止材用熱硬化性液状組成物は、物理的かつ化学的吸湿剤を含まないのに、吸湿性にも優れるため、有機発光素子の封止材として適用したとき、水分を遮断するとともに、透湿する水分を効果的に抑制して、有機発光素子の寿命及び耐久性を顕著に向上させることができる。
【0013】
また、本発明の有機発光素子の封止材用熱硬化性液状組成物は、貯蔵安定性に優れるため、長期間保管する際にも粘度変化率が低いとともにヘイズが低く、光透過率は高くて、有機発光素子に適用されるのに優れた光学的特性(透明性)を有し得る。
【0014】
また、本発明の有機発光素子の封止材用熱硬化性液状組成物は、低温で、早い速度で熱によって硬化されて、有機発光素子の封止材として形成することができる。
【0015】
本明細書の効果は、以上に言及した効果に制限されず、言及していないさらに他の効果は、下記の記載から当業者にとって明確に理解することができる。上述した効果並びに本発明の具体的な効果は、以下の発明を実施するための具体的な事項を説明すると共に記述する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
前述した目的、特徴及び長所は、以下に詳細に後述され、これによって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術思想を容易に実施することができる。本発明を説明することにおいて、本発明に係る公知技術に対する具体的な説明が、本発明の要旨を曖昧にすると判断される場合には詳細な説明を省略する。
【0017】
本明細書を説明することにおいて、関連する公知技術に対する具体的な説明が、本明細書の要旨を曖昧にすると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0018】
以下における構成要素を「含む」、「有する」、「なる」、「配置する」などと使う場合、「のみ」が使われていない限り、他の部分が加えられてもよい。構成要素を単数で表現した場合、別途明示的な記載事項がない限り、複数を含む場合も含む。
【0019】
以下における構成要素を解釈することにおいて、別途明示的な記載がなくても、誤差範囲を含むものと解釈する。
【0020】
以下における構成要素の「上部(又は下部)」又は構成要素の「上(又は下)」に任意の構成が配されるということは、任意の構成が上記構成要素の上面(又は下面)に接して配されるだけでなく、上記構成要素と、上記構成要素上に(又は下に)配された任意の構成との間に他の構成が介在し得ることを意味する。
【0021】
本発明の一態様による有機発光素子の封止材用熱硬化性液状組成物は、脂肪族四官能エポキシ系化合物を含むバインダー物質;カチオン開始剤を含むことを技術的特徴とする。本発明における前記バインダー物質は、吸湿性を示す物質であるとともに、熱硬化反応挙動に参加するエポキシ樹脂物質であって、全体組成物における最も多い含量を占める主剤樹脂に該当し得る。
【0022】
このように、本発明の前記バインダー物質には、有機電子素子用封止材に一般的に使用される物理的・化学的吸湿剤が含まれていないにもかかわらず、高吸湿性特性を有する脂肪族四官能エポキシ系化合物を含むことで、有機発光素子の封止材として適用したとき、水分を遮断するとともに、透湿する水分を効果的に抑制することができ、吸湿率及び非可逆吸湿率にいずれも優れるという利点を有し得る。
【0023】
また、本発明の有機発光素子の封止材用熱硬化性液状組成物は、従来に使用する無機物質等の吸湿剤物質を含まないため、光透過率及びヘイズのような光学特性にも優れて、有機発光素子に適用することができ、特に、優れた透明性が求められる前面発光方式の有機発光素子の構造における封止材として好適に使用することができる。
【0024】
本発明の一態様による有機発光素子の封止材用熱硬化性液状組成物のバインダー物質は、高吸湿性を有する脂肪族四官能エポキシ系化合物を含むことを特徴とし、さらには、脂環族二官能エポキシ系化合物をさらに混合することができる。前記脂環族二官能エポキシ系化合物の含量が高くなるほど、吸湿性が減少する傾向を示すため、優れた吸湿性を具現するために、バインダー物質の総和を100重量部とするとき、前記脂肪族四官能エポキシ系化合物は、60重量部以上で含むのが好ましく、前記脂環族二官能エポキシ系化合物は、40重量部以下で含むのが好ましい。
【0025】
本発明で使用され得る脂肪族四官能エポキシ系化合物は、高吸湿性を示し、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル;ポリグリセロールポリグリシジルエーテル;及びペンタエリトリトールグリシジルエーテルからなる群より選択される一種以上であってもよく、好ましくは、下記の化学式構造を有するペンタエリトリトールグリシジルエーテル(PETG)であってもよい。
【0026】
【0027】
<ペンタエリトリトールグリシジルエーテル;PETG>
本発明で使用され得る脂環族二官能エポキシ系化合物は、例えば、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)オキサレート;ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート;ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート;3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート;3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(6-メチル-3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート;3,4-エポキシ-2-メチルシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ-2-メチル)シクロヘキサンカルボキシレート;3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ-3-メチル)シクロヘキサンカルボキシレート;3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ-5-メチル)シクロヘキサンカルボキシレート;3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート変形されたイプシロン-カプロラクトン(epoxycyclohexanecarboxylate modified epsilon-caprolactone);及び(3’,4’-エポキシシクロヘキサン)メチル3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレートからなる群より選択された一種以上であってもよい。
【0028】
また、本発明の有機発光素子の封止材用熱硬化性液状組成物は、前記脂肪族四官能エポキシ系化合物及び脂環族二官能エポキシ系化合物を含むバインダー物質のほか、カチオン性熱硬化開始剤をさらに含むことができる。
【0029】
また、本発明の有機発光素子の封止材用熱硬化性液状組成物は、経時安定剤をさらに含むことができる。
【0030】
また、本発明の有機発光素子の封止材用熱硬化性液状組成物は、界面活性剤をさらに含むことができる。
【0031】
以下では、本発明の有機発光素子の封止材用熱硬化性液状組成物に含まれる成分として、上述したエポキシバインダー以外の成分について説明する。
【0032】
<カチオン性熱硬化開始剤>
本発明のカチオン性熱硬化開始剤は、エポキシバインダー物質の重合反応を促進し、また、硬化条件下での完全硬化及び貯蔵安定性を向上させるための添加剤である。
【0033】
本発明のカチオン性熱硬化開始剤は、4級アンモニウム塩カチオン化合物を含むことができる。具体的には、前記カチオン性熱硬化開始剤のカチオン部は、4級アンモニウム塩であってもよく、アニオン部は、フォスフェート、アンチモナート、ボラート、スルホナート等になってもよい。例えば、前記カチオン性熱硬化開始剤は、ジメチルフェニル(4-メトキシベンジル)アンモニウムヘキサフルオロフォスフェート;ジメチルフェニル(4-メトキシベンジル)アンモニウムヘキサフルオロアンチモナート;ジメチルフェニル(4-メトキシベンジル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート;ジメチルフェニル(4-メチルベンジル)アンモニウムヘキサフルオロヘキサフルオロフォスフェート;ジメチルフェニル(4-メチルベンジル)アンモニウムヘキサフルオロアンチモナート;ジメチルフェニル(4-メチルベンジル)アンモニウムヘキサフルオロテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート;メチルフェニルジベンジルアンモニウム;メチルフェニルジベンジルアンモニウムヘキサフルオロアンチモナートヘキサフルオロフォスフェート;メチルフェニルジベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート;フェニルトリベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート;ジメチルフェニル(3,4-ジメチルベンジル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート;N,N-ジエチル-N-ベンジルアニリニウム四フッ化ホウ素;及びN,N-ジエチル-N-ベンジルピリジニウムトリフルオロメタンスルホン酸からなる群より選択された一種以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0034】
前記バインダー物質100重量部に対し、前記カチオン性熱硬化開始剤は、2.0~2.5重量部で含むのが好ましく、2.0重量部未満で添加時、硬化条件下での硬化が十分行われず、硬化していない部分が発生し得るし、2.5重量部超えて添加時、貯蔵安定性が却って低下する問題点があり得る。
【0035】
<経時安定剤>
本発明の経時安定剤は、硬化温度未満の環境(25~40℃)で、液状組成物の経時変化を抑制(粘度上昇を防止)して、貯蔵安定性を向上させるための添加剤である。
【0036】
本発明の経時安定剤は、エポキシバインダー物質に使用されて、粘度の上昇を抑制できる効果を有するものであれば、制限なく使用することができ、例えば、アミドカルボキシレート、トリメチルボラート、トリエチルボラート、トリn-プロピルボラート、トリイソプロピルボラート、トリn-ブチルボラート、トリオクタデシルボラート、トリス(2-エチルヘキシルオキシ)ボラン、ビス(1,4,7,10-テトラオキサウンデシル)(1,4,7,10,13-ペンタオキサテトラデシル)(1,4,7-トリオキサウンデシル)ボラン、トリベンジルボラート、リン酸エチル、リン酸ブチル、リン酸-ジ(2-エチルヘキシル)、及びリン酸エチルジエチルからなる群より選択された一種以上であってもよいが、これに限定されるのではない。
【0037】
前記エポキシ系バインダー物質100重量部に対し、前記経時安定剤を0.1~1.0重量部で含むのが好ましく、0.1重量部未満で添加時、貯蔵安定性が十分確保されないし、1.0重量部超えて添加時、硬化条件下での硬化が十分行われず、硬化していない部分が発生し得る。
【0038】
<界面活性剤>
本発明の界面活性剤は、有機発光素子のガラス上に封止材を適用するとき、封止用組成物が硬化して形成される樹脂の広がり性及び表面張力を調節するための添加剤である。
【0039】
本発明の界面活性剤は、シリコンを含有する界面活性剤であるのが好ましいし、ポリエーテルシロキサンの共重合体であるのが好ましい。例えば、Evonik社のWET-270、WET-500、Rad-2100、Rad-2011、Glide-100、Glide-410、Glide-450、Flow-425、BYK社のBYK-306、BYK-307、BYK-310、BYK-320、BYK-330、BYK-331、BYK-333、BYK-342、BYK-350、BYK-354、BYK-355、BYK-3550、BYK-356、BYK-358N、BYK-359、BYK-361N、BYK-381、BYK-370、BYK-371、BYK-378、BYK-388、BYK-392、BYK-394、BYK-399、BYK-3440、BYK-3441からなる群より選択される一種以上であってもよい。
【0040】
前記エポキシ系バインダー物質100重量部に対し、前記界面活性剤を0.1~1.0重量部で含むのが好ましいし、0.1重量部未満で添加時、表面張力が上昇しすぎて、封止材として適用されるとき、樹脂の広がり性が低下し、1.0重量部超えて添加時、表面張力が減少しすぎて、樹脂のオーバーフロー(overflow)現象が発生し、問題があり得る。
【0041】
本発明による一態様によれば、有機発光素子の封止材用熱硬化性液状組成物を熱硬化して、有機発光素子の封止材として形成することができ、このとき、光透過率が99.0%以上であり、ヘイズが0.10%以下と達成されて、優れた光学的特性を有し得る。
【0042】
上述した本発明の有機発光素子の封止材用熱硬化性液状組成物は、ダムアンドフィル封止(dam and fill encapsulation)にフィル(fill)材料として使用することができ、熱硬化によって光学透明樹脂(OCR)として使用することができる。
【0043】
以下では、本発明の好ましい実施例によって本発明の構成及び作用をさらに詳説することとする。ただし、これは本発明の好ましい例示として提示されたものであり、どの意味でも、これによって本発明が制限されるものと解釈されてはならない。ここに記載されていない内容は、この技術分野における通常の技術者であれば、技術的に十分類推することができるため、その説明を省略する。
【0044】
〔実施例1〕
下記の表1に記載したように、エポキシバインダーとしてのPETG100重量部を基準に、カチオン性熱硬化開始剤を2.0重量部で混合して、硬化していない液状混合組成物を準備した。
【0045】
〔実施例2~5〕
実施例1と同様に実施するものの、実施例2~5は、PETGのほか、脂環族二官能エポキシ系化合物をさらに混合して、経時安定剤と界面活性剤をさらに使用しており、実施例4~5は、カチオン性熱硬化開始剤の含量を2.1重量部に変更して実施した。実施例1~5の液状混合組成物の組成及び含量は、下記の表1に示した。
【0046】
〔比較例1~5〕
比較例1は、実施例2と同様に実施するものの、PETGを40重量部で含み、脂環族二官能エポキシ系化合物を60重量部で含めた点で相違する。
【0047】
比較例2は、PETGを除いて、脂環族二官能エポキシ系化合物のみを使用した。
【0048】
比較例3~5は、PETGを除いて、脂環族二官能エポキシ系化合物を使用しており、これと共に、吸湿剤物質として酸化マグネシウム(MgO、平均粒径20nm)、多孔性二酸化ケイ素、ゼオライト(平均粒径50nm)をそれぞれ使用した。また、比較例3及び4は、分散性向上のため分散添加剤も少量混合した。
【0049】
比較例1~5の液状混合組成物の組成及び含量は、下記の表2に示した。
【0050】
<実験例1:吸湿率の評価>
吸湿率は、実施例1で得た液状混合組成物に水分を加えたとき、重さ変化率として評価し、高温及び高湿条件での信頼性評価後、重さ変化率及び前記信頼性評価に続いて、高温熱処理後の重さ変化率を計算した。具体的な方法及び重さ変化率の計算方法は、次のとおりである。
【0051】
下段に配置させるbare glass(以下、「下段ガラス」)を準備して、重さを測定した(「重さ[1]」と記録する)。準備した下段ガラスの中央に実施例1で得た液状混合組成物を0.5g塗布した後、下段ガラスの4面端部分に段差を形成するための離型フィルムを2枚重ねて配置しており、その上に離型フィルム付きガラス(以下、「上段ガラス」)を貼り合わせた。貼り合わせた状態で、高温オーブンで、100℃/1hrの条件で、1時間熱硬化を行った。
【0052】
熱硬化完了後、前記上段ガラス及び段差を形成するための離型フィルムを除去し、下段ガラス及びその上に硬化した樹脂が形成されているサンプルを製作して、サンプルの重さを測定した(「重さ[2]」と記録する)。
【0053】
高温高湿信頼性を評価するため、85℃/85%RH条件のチャンバに前記サンプルを投入した後、100時間経過後に取り出した後、常温(約25℃)で1時間放置した後、信頼性評価後のサンプルの重さを測定した(「重さ[3]」と記録する)。
【0054】
信頼性評価後のサンプルを90℃に加熱したホットプレート(hot plate)に1時間載せて、常温(約25℃)で1時間放置した後、サンプルの重さを測定した(「重さ[4]」と記録する)。
【0055】
(式1)信頼性評価後の重さ変化率=[([3]-[1])-([2]-[1])]/([2]-[1])×100%
(式2)信頼性評価及び高温処理後の重さ変化率=[([4]-[1])-([2]-[1])]/([2]-[1])×100%
【0056】
上記式1による重さ変化率は、3%以上であり、式2による重さ変化率は、3%以上であるとき、吸湿率に優れると評価した。
【0057】
前記実験例1の方法及び計算を、実施例2~5、比較例1~5に対して繰り返し、その結果を下記の表1及び表2に示した。
【0058】
<実験例2:透過率及びヘイズの測定>
無アルカリガラスを準備して、その上に前記実施例1で得た液状混合組成物を0.1g塗布した後、他の無アルカリガラスをその上に貼り合わせた。貼り合わせた状態で、高温オーブンで、100℃/1hrの条件で、1時間熱硬化を行って、サンプルを製作した。前記サンプルをヘイズメーター(Haze Meter)装備(NDH-7000)に位置させて、ASTM D 1003測定方法により光透過率及びヘイズを同時に測定した。
【0059】
前記実験例2の測定を、実施例2~5、比較例1~5に対して繰り返し、その結果を下記の表1及び表2に示した。
【0060】
<実験例3:貯蔵安定性の測定>
貯蔵安定性は、初期粘度に対し、40℃で保管後、毎日粘度変化率を評価した。粘度測定方法では、前記実施例1で得た液状混合組成物をBrookfield社のCone&plate粘度計装備を下記の条件に設定した後、sample cupに塗布した後、粘度を確認して記録した。
【0061】
〔粘度測定条件〕
-温度:25℃
-速度:10rpm
-試料投入量:0.5ml(トルク:30~60%)
【0062】
粘度変化率は、下記の式3に従って計算した。
【0063】
(式3)粘度変化率(%)=(7日後の粘度-初期粘度)/初期粘度×100%
【0064】
上記式3による粘度変化率が10%以内である場合、優れた貯蔵安定性を有するものと評価した。
【0065】
上記実験例3の測定及び計算を、実施例2~5、比較例1~5に対して繰り返し、その結果を下記の表1及び表2に示した。
【0066】
【0067】
【0068】
上記表1及び表2に記載した成分は、次のとおりである。
【0069】
-A:ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート
-B:3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート変形されたイプシロン-カプロラクトン
-C:テトラキス(ペンタフルオロフェニルボラート)をアニオンとして有する4級アンモニウム塩(キングインダストリー社、CXC-1821)
-D:アミドカルボキシレート
-WET-270:下記構造のポリエーテル-シロキサン共重合体
-D510:ルーブリゾール社、Solplus
TM
【0070】
以上のように本発明について説明したが、本発明は、本明細書に開示の実施例によって限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内における通常の技術者によって様々な変形が行われることは自明である。また、本発明の実施例を前述しつつ本発明の構成による作用効果を明示的に記載して説明しなかったとしても、該構成によって予測可能な効果も認めるべきであることは当然である。