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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】多層基板の表面処理層構造
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/18 20060101AFI20240229BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20240229BHJP
   H05K 3/24 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H05K1/18 L
H05K3/34 501E
H05K3/24 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022131684
(22)【出願日】2022-08-22
(65)【公開番号】P2023110828
(43)【公開日】2023-08-09
【審査請求日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】111104172
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】513311619
【氏名又は名称】巨擘科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】PRINCO CORP.
【住所又は居所原語表記】No.6, CREATION 4TH Rd.,HSINCHU SCIENCE-BASED INDUSTRY PARK,HSINCHU CITY 300,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】110002181
【氏名又は名称】弁理士法人IP-FOCUS
(72)【発明者】
【氏名】邱 丕良
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-270346(JP,A)
【文献】特開2008-124339(JP,A)
【文献】国際公開第2014/024754(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0096177(US,A1)
【文献】特開平10-242327(JP,A)
【文献】特開2006-245465(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0291273(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102945836(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110970389(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12―23/15
H05K 1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層と、 前記誘電体層の中に形成された少なくとも一つのパッド層と、 前記少なくとも一つのパッド層の上に形成され、前記パッド層に接合される少なくとも一つの保護金属層と、を含む多層基板の表面処理層構造であって、 前記少なくとも一つの保護金属層は主に、前記少なくとも一つのパッド層の上表面のみを被覆し、前記少なくとも一つの保護金属層は、ダイの金属露出表面と接触する区域として、前記少なくとも一つの保護金属層の上表面と前記誘電体層の上表面との間に段差はなく、 前記多層基板の表面処理層構造の表面と前記ダイの前記金属露出表面とが隙間なく完全に密着している多層基板の表面処理層構造。
【請求項2】
前記誘電体層の材質は、ポリイミドである請求項1に記載の多層基板の表面処理層構造。
【請求項3】
前記少なくとも一つのパッド層の材質は、銅である請求項1に記載の多層基板の表面処理層構造。
【請求項4】
前記少なくとも一つの保護金属層の材質は、クロム、ニッケル、パラジウム及び金からなる群から選ばれた1つである請求項1に記載の多層基板の表面処理層構造。
【請求項5】
誘電体層と、 一部が前記誘電体層の中に形成された少なくとも一つのパッド層と、 前記少なくとも一つのパッド層の上に形成され、前記パッド層に接合される少なくとも一つの保護金属層とを含み、 前記少なくとも一つの保護金属層は主に、前記少なくとも一つのパッド層の上表面のみを被覆し、前記少なくとも一つの保護金属層は、ダイの金属露出表面と接触する区域として、前記少なくとも一つの保護金属層の上表面と前記誘電体層の上表面との間に段差はなく、 前記少なくとも一つのパッド層の上表面、及び主に前記少なくとも一つのパッド層の上表面のみを被覆する前記少なくとも一つの保護金属層の上表面、これらの上表面は、いずれも平面ではない多層基板の表面処理層構造。
【請求項6】
前記誘電体層の材質は、ポリイミドである請求項5に記載の多層基板の表面処理層構造。
【請求項7】
前記少なくとも一つのパッド層の材質は、銅である請求項5に記載の多層基板の表面処理層構造。
【請求項8】
前記少なくとも一つの保護金属層の材質は、クロム、ニッケル、パラジウム及び金からなる群から選ばれた1つである請求項5に記載の多層基板の表面処理層構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多層基板の技術分野に関し、特に多層基板の表面処理層構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示すように、図1は、従来の多層基板の表面処理層構造を示す図である。
【0003】
前記多層基板の表面処理層構造は、誘電体層100と、導電シード層102と、パッド層(pad layer)104と、保護金属層106と、ソルダーマスク層(solder mask layer)108とを含む。
【0004】
前記多層基板の表面処理層構造を製作する場合、まず、フォトレジスト層(図示せず)を利用して前記誘電体層100上方に凹溝110を形成し、さらにスパッタリング又は蒸着等の乾式方法により前記導電シード層102を前記凹溝110底部に形成し、且つ前記誘電体層100と接合し、前記導電シード層102は、前記パッド層104のシード(seed)として、次いで、前記フォトレジスト層(図示せず)を除去し、電気めっき(electroplating)又は化学めっき(electroless plating)を利用して前記導電シード層102を中心として上向き及び側方に前記パッド層104を延出し、さらに電気めっき又は化学めっきを利用して、前記パッド層104上方及び側方に前記保護金属層106を形成して、前記パッド層104を完全に被覆し、最後に前記ソルダーマスク層108を形成し、前記保護金属層106を一部又は全部露出させる。
【0005】
外部部品を銅材質のパッド層104に溶接する場合、錫又はその他の溶接剤を使用して前記外部部品と前記パッド層104とを接着するが、前記保護金属層106の目的は、すなわち、錫又はその他の溶接剤と前記パッド層104の銅との接触により相互溶融を起こして金属間化合物(Inter Metallic Compound、IMC)を形成し、その結果、前記多層基板の表面処理層構造が脆弱になり、製品信頼度が低下するのを防ぐことにある。
【0006】
図2に示すように、図2は、別の従来の多層基板の表面処理層構造を示す図である。
【0007】
図2多層基板の表面処理層構造と図1多層基板の表面処理層構造との差は、前記導電シード層102を形成した後、前記フォトレジスト層(図示せず)を除去せず、電気めっき又は化学めっきを利用して前記導電シード層102の上に前記パッド層104を形成してから前記フォトレジスト層(図示せず)を除去することにある。
【0008】
図1及び図2多層基板の表面処理層構造において、まず前記ソルダーマスク層108を形成し、前記ソルダーマスク層108に凹溝110を形成してから、前記凹溝110中に前記導電シード層102、前記パッド層104及び前記保護金属層106を形成してよい。あるいは、まずパッド層104及び保護金属層106を完成してから、ソルダーマスク層108を形成し、ソルダーマスク層108に開口を形成し、保護金属層106を露出させてもよい。
【0009】
しかしながら、電気めっき又は化学めっきを利用して前記パッド層104及び前記保護金属層106を形成する場合、図1に示すように、前記導電シード層102の側方に向かって拡充し、前記パッド層104及び前記保護金属層106を広くすることになる。一般的に、前記パッド層104の厚さが10マイクロメートル(micrometer、μm)である場合、前記パッド層104片側の幅は、前記導電シード層102より外側に約2~4マイクロメートル拡張する。つまり、前記パッド層104全体(両側)の幅は、前記導電シード層102より外側に約4~8マイクロメートル拡張する。前記保護金属層106全体(両側)の幅は、前記導電シード層102より外側に約6~10マイクロメートル拡張する。
【0010】
図2多層基板の表面処理層構造においても、前記保護金属層106全体(両側)の幅は、前記導電シード層102より外側に約6~10マイクロメートル拡張する。
【0011】
さらに、電気めっき又は化学めっきを利用して前記パッド層104及び前記保護金属層106を形成する際、いずれも溶液中で行う必要がある場合、濃度、温度、材質等を含む多くの要素が、前記パッド層104及び前記保護金属層106の外側への拡張範囲に影響を及ぼし、最終的に保護金属層を含むパッド層の大きさが制御しにくくなる。
【0012】
また、集積回路配線距離が急速に縮小する時代において、超急速の集積回路ウエハーの縮小速度に合わせて、隣接パッド層の横方向ピッチ(pad pitch)がますます小さくなっている。縮小速度は、4年前には約10ナノメーター(nanometer、nm)であったが、現在は、約5ナノメーターになり、西暦2026年以降には2ナノメーター、さらには1ナノメーターまで推し進められることが予想される。ウエハーの縮小に合わせるため、ダイ(die)セルの隣接電気的接点のピッチも急速に縮小され、現在の80~100マイクロメートルから5年後には30マイクロメートル以下になると見込まれる。隣接パッド層(ダイセルの電気的接点との電気的接続に用いられる)ピッチが30マイクロメートル以下である場合、パッド層の幅は、18マイクロメートル未満になり、電気めっき又は化学めっきの予測不能な拡張は、必ず図1及び図2のパッド層104並びに保護金属層106の精密化の妨げになるであろう。
【0013】
また、従来技術において、パッド層及び保護金属層は、一般的に、ともに誘電体層の上表面より部分的に高いか又は低いため、誘電体層とパッド層との間には明確な段差があり、この多層基板をダイの金属露出表面との当接に用いる場合、気泡が発生し、ダイを封止する付着力を損なう。
【0014】
このため、上記従来技術の問題について解決策を打ち出す必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本開示は、従来技術における問題を解決することのできる多層基板の表面処理層構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本開示の多層基板の表面処理層構造は、誘電体層と、前記誘電体層の中に形成された少なくとも一つのパッド層と、前記少なくとも一つのパッド層の上に形成され、前記パッド層に接合される少なくとも一つの保護金属層とを含み、前記少なくとも一つの保護金属層は主に、前記少なくとも一つのパッド層の上表面のみを被覆し、前記少なくとも一つの保護金属層は、外部部品と溶接又は接触する区域として、前記少なくとも一つの保護金属層の上表面と前記誘電体層の上表面との間に段差はない。
【0017】
本開示の多層基板の表面処理層構造は、誘電体層と、一部が前記誘電体層の中に形成された少なくとも一つのパッド層と、前記少なくとも一つのパッド層の上に形成され、前記パッド層に接合される少なくとも一つの保護金属層とを含み、前記少なくとも一つの保護金属層は主に、前記少なくとも一つのパッド層の上表面のみを被覆し、前記少なくとも一つの保護金属層は、外部部品と溶接又は接触する区域として、前記少なくとも一つの保護金属層の上表面と前記誘電体層の上表面との間に段差はない。
【発明の効果】
【0018】
本開示の多層基板の表面処理層構造において、保護金属層は主に、パッド層の上表面のみを被覆し、パッド層の両側から外側へ拡張することはなく、このため、従来技術におけるパッド層及び保護金属層の拡張が予測不能で、精密化することができないという問題を解決することができる。さらに、保護金属層の上表面と誘電体層の上表面との間に段差がないため、多層基板の表面処理層構造とダイの金属露出表面が完全に当接する場合、前記多層基板の誘電体層と保護金属層との間に気泡が発生することはなく、このため、ダイを封止する付着力を弱めることはなく、多層基板の表面と外部部品との電気的接触の不具合を防ぎ、それに対応する技術的効果を果たすことができる。また、本開示の多層基板の表面処理層構造において、保護金属層の上表面と誘電体層の上表面との間に段差がないため、多層基板の表面処理層構造とダイの金属露出表面とが完全に当接した場合、たとえ多層基板の表面処理層構造とダイの金属露出表面とが完全に密着し且つ隙間がなかったとしても、誘電体層と保護金属層との間に気泡が発生することはなく、これは、多階層半導体封止において極めて重要な技術的効果であり、多層基板とダイとが完全に密接した際に気泡が発生すると、前記気泡は、ダイが動作する際に熱量を発散するにつれて膨張し、このとき、当接したダイの電気的接続点と回路板のパッド部分とを接触から引き離し、つまり、短絡(short circuit)から開回路(open circuit)に変える可能性が極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】従来の多層基板の表面処理層構造を示す概略図。
図2】別の従来の多層基板の表面処理層構造を示す概略図。
図3】本開示一実施例による多層基板の表面処理層構造を示す概略図。
図4A】本開示一実施例による多層基板の表面処理層構造の製造を示すフローチャート。
図4B】本開示一実施例による多層基板の表面処理層構造の製造を示すフローチャート。
図4C】本開示一実施例による多層基板の表面処理層構造の製造を示すフローチャート。
図5】本開示の別の実施例による多層基板の表面処理層構造を示す概略図。
図6図5多層基板の表面処理層構造とダイ表面との当接の概略図。
図7A】本開示の別の実施例による多層基板の表面処理層構造の製造を示すフローチャート。
図7B】本開示の別の実施例による多層基板の表面処理層構造の製造を示すフローチャート。
図7C】本開示の別の実施例による多層基板の表面処理層構造の製造を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示の目的、技術手段及び効果をより明らかに、明確にするため、以下では図面を参照し、実施例を挙げて、本開示をさらに詳細に説明する。ここで記述する具体的実施例は、本開示を解釈するためのものにすぎず、本開示明細書に使用する用語「実施例」は、実例、例示又は例証として用いることを意味するのであり、本開示を限定するためのものではない。また、本開示明細書及び添付の特許請求の範囲中に使用する冠詞「一つ」は、他に特定されない限り、又は前後の文脈から単数の形を明確に確定することができない限り、一般的に「1つ又は複数」を意味すると解釈されることができる。また、添付の図面において、構造、機能が類似し又は同一の構成要素は、同一構成要素の符号により示す。
【0021】
図3に示すように、図3は、本開示一実施例による多層基板の表面処理層構造30を示す概略図である。
【0022】
前記多層基板の表面処理層構造30は、誘電体層300と、少なくとも一つのパッド層(本実施例は、一つのパッド層302を含む)と、少なくとも一つの保護金属層(本実施例は、1層の保護金属層304を含む)とを含む。
【0023】
前記誘電体層300の材質は、ポリイミド(Polyimide、PI)である。
【0024】
前記少なくとも一つのパッド層302は、前記誘電体層300に形成される。より具体的には、前記少なくとも一つのパッド層302は、前記誘電体層300に完全に内嵌される。前記パッド層302の材質は、銅である。
【0025】
前記少なくとも一つの保護金属層304は、前記少なくとも一つのパッド層302の上に形成され、且つ前記少なくとも一つのパッド層302と接合され、前記少なくとも一つの保護金属層304は主に、前記少なくとも一つのパッド層302の上表面のみを被覆し、前記少なくとも一つの保護金属層304は、外部部品と溶接又は接触する区域とする。より具体的には、前記少なくとも一つの保護金属層304は、前記少なくとも一つのパッド層302の両側から外側に拡張することはなく、且つ前記少なくとも一つのパッド層302及び前記少なくとも一つの保護金属層304の本来の機能に影響を及ぼさず、且つ前記少なくとも一つの保護金属層304の上表面と前記誘電体層300の上表面との間に段差はない。
【0026】
前記少なくとも一つの保護金属層304の上表面と前記誘電体層300の上表面との間に段差がないため、前記多層基板の表面処理層構造30とダイ表面とが完全に当接する場合、前記誘電体層300と前記少なくとも一つの保護金属層304との間に気泡が発生することはなく、このため、ダイを封止する付着力を弱めることはなく、多層基板の表面と外部部品との電気的接触の不具合を防ぐことができ、これは、本開示のもう1つの技術的効果である。
【0027】
前記少なくとも一つの保護金属層304の材質は、クロム、ニッケル、パラジウム及び金からなる群から選ばれた1つである。
【0028】
図4A~4Cに示すように、図4A~4Cは、本開示一実施例による多層基板の表面処理層構造製造のフローチャートを示している。
【0029】
まず、図4Aにおいて、平坦な基板306の表面にソルダーマスク層308を形成し、前記ソルダーマスク層308の上に少なくとも一つの保護金属層304(本実施例は、複数の保護金属層304を含む)を形成し、次いで、前記少なくとも一つの保護金属層304の上に少なくとも一つのパッド層302(本実施例は、複数のパッド層302を含む)を形成する。
【0030】
一実施例において、表面平坦度の高いシリコンウエハーを前記基板306として利用し、塗布方式で前記ソルダーマスク層308を前記基板306の上に形成し、次いで、エッチング、電気めっき又はフォトリソグラフィ等の方式により順次前記ソルダーマスク層308表面の上に前記少なくとも一つの保護金属層304及び前記少なくとも一つのパッド層302を形成してよい。
【0031】
図4Bにおいて、前記ソルダーマスク層308及び前記少なくとも一つのパッド層302の上に誘電体層300を形成し、前記誘電体層300は、前記少なくとも一つのパッド層302、前記少なくとも一つの保護金属層304及び前記ソルダーマスク層308を被覆し、より具体的には、前記少なくとも一つの保護金属層304及び前記少なくとも一つのパッド層302は、ともに前記誘電体層300に完全に内嵌され(図4Cを参照)、前記誘電体層300を形成した後、さらに多層板設計の必要に応じて、後続製造手順を行って、全体の多層基板を完成してよい。
【0032】
図4Cにおいて、ソルダーマスク層308を前記誘電体層300と分離し、前記誘電体層300と前記誘電体層300中に内嵌された前記少なくとも一つの保護金属層304及び前記少なくとも一つのパッド層302とを反転させて、前記少なくとも一つの保護金属層304の上表面と前記誘電体層300の上表面との間に段差のない多層基板を得る。
【0033】
一実施例において、本開示の多層基板(前記誘電体層300と、前記少なくとも一つのパッド層302と、前記少なくとも一つの保護金属層304とを含む)を前記ソルダーマスク層308表面から分離する方法は、犠牲層法又は載置板表面付着強度弱化法等であってよい。
【0034】
前記少なくとも一つの保護金属層304と前記少なくとも一つのパッド層302とは接合され、前記少なくとも一つの保護金属層304は主に、前記少なくとも一つのパッド層302の上表面のみを被覆し、前記少なくとも一つの保護金属層304は、外部部品と溶接又は接触する区域とする
【0035】
本開示の多層基板の表面処理層構造において、保護金属層は主に、パッド層の上表面のみを被覆し、パッド層の両側から外側へ拡張することはなく、このため、従来技術におけるパッド層及び保護金属層の拡張が予測不能で、精密化することができないという問題を解決することができる。さらに、保護金属層の上表面と誘電体層の上表面との間に段差がないため、多層基板の表面処理層構造とダイの金属露出表面とが完全に当接した場合、誘電体層と保護金属層との間に気泡が発生することはなく、このため、ダイを封止する付着力を弱めることはなく、多層基板の表面と外部部品との電気的接触の不具合を防ぐことができ、これは、本開示の技術的効果である。
【0036】
図5に示すように、図5は、本開示の別の実施例による多層基板の表面処理層構造50を示す概略図である。
【0037】
前記多層基板の表面処理層構造50は、誘電体層500と、少なくとも一つのパッド層502と、少なくとも一つの保護金属層504とを含む。
【0038】
前記誘電体層500の材質は、ポリイミド(Polyimide、PI)である。
【0039】
前記少なくとも一つのパッド層502の一部は、前記誘電体層500中に形成され、より具体的には、前記少なくとも一つのパッド層502の両側(すなわち、周囲)は、前記誘電体層500に完全に内嵌され、前記少なくとも一つのパッド層502の中間部分は、突起状を呈し、より具体的には、前記少なくとも一つのパッド層502の中間部分は、前記誘電体層500の近くの両側(すなわち、周囲)より高く、前記パッド層502の材質は、銅である。
【0040】
前記少なくとも一つの保護金属層504は、前記少なくとも一つのパッド層502の上に形成され、且つ前記少なくとも一つのパッド層502と接合され、前記少なくとも一つの保護金属層504は主に、前記少なくとも一つのパッド層502の上表面のみを被覆し、前記少なくとも一つの保護金属層504は、外部部品と溶接又は接触する区域とする。より具体的には、前記少なくとも一つの保護金属層504は、前記少なくとも一つのパッド層502の両側から外側へ拡張することはなく、且つ前記少なくとも一つのパッド層502及び前記少なくとも一つの保護金属層504の本来の機能に影響を及ぼさず、且つ前記少なくとも一つの保護金属層504の上表面と前記誘電体層500の上表面との間に段差はない。前記少なくとも一つの保護金属層504の材質は、クロム、ニッケル、パラジウム及び金からなる群から選ばれた1つである。
【0041】
図5からわかるように、前記少なくとも一つの保護金属層504の一部は、前記誘電体層500中に形成され、より具体的には、前記少なくとも一つの保護金属層504の両側(すなわち、周囲)は、前記誘電体層500に完全に内嵌され、前記少なくとも一つの保護金属層504の中間部分は、突起状を呈し、より具体的には、前記少なくとも一つの保護金属層504の中間部分は、前記誘電体層500の近くの両側(すなわち、周囲)より高い。前記多層基板の表面処理層構造50は、ダイとの当接に用いられ、ダイ表面は、必ずしも平面でないため、前記少なくとも一つの保護金属層504の中間部分は、ダイの外観に合わせ、且つダイ表面と緊密接着するために突起状を呈する。
【0042】
前記少なくとも一つの保護金属層504の前記誘電体層500の近くの両側(すなわち、周囲)の上表面と前記誘電体層500の上表面との間に段差がないため、前記多層基板の表面処理層構造50とダイ表面とが完全に当接すると、前記誘電体層500と前記少なくとも一つの保護金属層504との間に気泡が発生することはなく、このため、ダイを封止する付着力を弱めることはなく、多層基板の表面と外部部品との電気的接触の不具合を防ぐことができ、これは、本発明のもう1つの技術的効果である。
【0043】
図5の少なくとも一つのパッド層502及び少なくとも一つの保護金属層504の形状は、当接されるダイの表面形状に応じて設計され、ダイの金属露出表面及びその付近の形状がダイ表面形状を決定し、これによって完全な当接を図る。
【0044】
図6に示すように、ダイ600並びにダイ600の金属露出表面602及び付近の絶縁層604の形状、多層基板の表面処理層構造50の少なくとも一つのパッド層502及び少なくとも一つの保護金属層504の形状は、当接されるダイ600の金属露出表面602及び付近の絶縁層604の形状に合わせて設計され、その目的は、完全な当接状態を図ることである。
【0045】
このほか、図6の実施例において、前記ダイ600の金属露出表面602は、前記絶縁層604の中に内凹し、前記多層基板の表面処理層構造50の少なくとも一つのパッド層502及び少なくとも一つの保護金属層504は、それに対応して突起の形状になることにより、完全な当接を図る。もう一つの実施例において、ダイの金属露出表面が絶縁層から突出する場合、多層基板の表面処理層構造の少なくとも一つのパッド層及び少なくとも一つの保護金属層は、それに対応して内凹の形状になることにより、完全な当接を図る(図示せず)。
【0046】
図7A~7Cに示すように、図7A~7Cは、本開示の別の実施例による多層基板の表面処理層構造の製造を示すフローチャートである。
【0047】
まず、図7Aにおいて、基板506の表面にソルダーマスク層508を形成し、前記ソルダーマスク層508の上に少なくとも一つの保護金属層504(本実施例は、複数の保護金属層504を含む)を形成し、次いで、前記少なくとも一つの保護金属層504の上に少なくとも一つのパッド層502(本実施例は、複数のパッド層502を含む)を形成する。
【0048】
もう一つの実施例において、予め成形したガラス、金属又はセラミックを前記基板506として利用し、塗布方式で前記ソルダーマスク層508を前記基板506の上に形成し、次いで、エッチング、電気めっき又はフォトリソグラフィ等の方式により順次前記ソルダーマスク層508表面の上に前記少なくとも一つの保護金属層504及び前記少なくとも一つのパッド層502を形成してよい。
【0049】
図7Bにおいて、前記ソルダーマスク層508及び前記少なくとも一つのパッド層502の上に誘電体層500を形成し、前記誘電体層500は、前記少なくとも一つのパッド層502、前記少なくとも一つの保護金属層504及び前記ソルダーマスク層508を被覆し、より具体的には、前記少なくとも一つの保護金属層504の一部、すなわち両側及び前記少なくとも一つのパッド層502の両側は、すべて前記誘電体層500に完全に内嵌され(図7Cに示すように)、前記誘電体層500を形成した後、さらに多層板設計の必要に応じて、さらに後続製造手順を行って、全体の多層基板を完成してよい。
【0050】
図7Cにおいて、ソルダーマスク層508を前記誘電体層500と分離し、前記誘電体層500と両側がすべて前記誘電体層500中に内嵌した前記少なくとも一つの保護金属層504及び前記少なくとも一つのパッド層502を反転して、前記少なくとも一つの保護金属層504の上表面と前記誘電体層500の上表面との間に段差のない多層基板を得る。
【0051】
もう一つの実施例において、本開示の多層基板(前記誘電体層500と、前記少なくとも一つのパッド層502と、前記少なくとも一つの保護金属層504とを含む)を前記ソルダーマスク層508表面から分離する方法は、犠牲層法又は載置板表面付着強度弱化法等であってよい。
【0052】
前記少なくとも一つの保護金属層504と前記少なくとも一つのパッド層502とは接合され、前記少なくとも一つの保護金属層504は主に、前記少なくとも一つのパッド層502の上表面のみを被覆し、前記少なくとも一つの保護金属層504は、外部部品と溶接又は接触する区域とする
【0053】
本開示の多層基板の表面処理層構造において、保護金属層は主に、パッド層の上表面のみを被覆し、パッド層の両側から外側へ拡張することはなく、このため、従来技術におけるパッド層及び保護金属層の拡張が予測不能で、精密化することができないという問題を解決することができる。さらに、保護金属層の上表面と誘電体層の上表面との間に段差がないため、多層基板の表面処理層構造とダイの金属露出表面とが完全に当接した場合、誘電体層と保護金属層との間に気泡が発生することはなく、このため、ダイを封止する付着力を弱めることはなく、多層基板の表面と外部部品との電気的接触の不具合を防ぐことができ、これは、本開示の技術的効果である。
【0054】
このほか、本開示の多層基板の表面処理層構造において、保護金属層の上表面と誘電体層の上表面との間に段差がないため、多層基板の表面処理層構造とダイの金属露出表面とが完全に当接した場合、たとえ多層基板の表面処理層構造とダイの金属露出表面とが完全に密着し且つ隙間がなかったとしても、誘電体層と保護金属層との間に気泡が発生することはなく、これは、多階層半導体封止において極めて重要な技術的効果であり、多層基板とダイとが完全に密接した際に気泡が発生した場合、前記気泡は、ダイが動作する際に熱量を発散するにつれて膨張し、このとき、当接したダイの電気的接点と回路板のパッド部分とを接触から引き離し、つまり、短絡(short circuit)から開回路(open circuit)に変える可能性が極めて高い。
【0055】
本開示について好適実施例を用いて上記のように開示したが、本開示を限定するためのものではなく、本開示が属する技術分野において通常の知識を有する者なら、本開示の精神及び範囲内を逸脱せずに、各種変更及び修飾を行うことができるはずであり、このため、本開示の保護範囲は、後に添付する特許請求の範囲が画定するものを基準とみなすべきである。
【符号の説明】
【0056】
30、50…多層基板の表面処理層構造 100、300、500…誘電体層 102…導電シード層 104、302、502…パッド層 106、304、504…保護金属層 108、308、508…ソルダーマスク層 110…凹溝 306、506…基板 600…ダイ 602…金属露出表面 604…絶縁層
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7A
図7B
図7C