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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】オレフィン重合用触媒の調製方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/654 20060101AFI20240229BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C08F4/654
C08F10/00 510
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022153428
(22)【出願日】2022-09-27
(65)【公開番号】P2023048157
(43)【公開日】2023-04-06
【審査請求日】2022-09-27
(31)【優先権主張番号】202121043762
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】518386656
【氏名又は名称】インディアン オイル コーポレイション リミテッド
【氏名又は名称原語表記】INDIAN OIL CORPORATION LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】シン、グルミート
(72)【発明者】
【氏名】ラニ、ラシュミ
(72)【発明者】
【氏名】カウル、スクディープ
(72)【発明者】
【氏名】ビシュワース、ヤジナセニ
(72)【発明者】
【氏名】チョプラ、アンジュ
(72)【発明者】
【氏名】カプール、グルプリート シン
(72)【発明者】
【氏名】ラマクマール、サンカラ スリ ベンカタ
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-534540(JP,A)
【文献】特表2015-527359(JP,A)
【文献】特開2016-164251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/654
C08F 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)0~25℃の温度範囲で1~10時間、液体マグネシウム複合体、電子供与体化合物およびハロゲン化チタン化合物を接触させて溶液を形成する工程と、
(b)下記(i)~(vi)の工程によって、前記溶液を沈殿させて触媒粒子を得る工程と、
(i)5~25℃の温度範囲で0.1~10℃/分での1番目の昇温を行う工程、
(ii)少なくとも15分間保持する工程、
(iii)25~45℃の温度範囲で0.1~10℃/分での2番目の昇温を行う工程、
(iv)少なくとも30分間保持する工程、
(v)45~110℃の温度範囲で0.1~10℃/分での3番目の昇温を行う工程、
(vi)100℃の温度で少なくとも60分間保持する工程、
(c)固体の均一な触媒を得るために前記触媒粒子を不活性溶媒で洗浄する工程と、
を含む、
ことを特徴とするオレフィン重合用触媒の調製方法。
【請求項2】
前記液体マグネシウム複合体は、{Mg(OR’)X}.a{MgX}.b{Mg(OR’)}.c{R’OH}であり、
R’は炭化水素基から選択され、R’OHは2-エチル-1-ヘキサノールであり、Xは塩素であり、a:b:cは0.1~99.8:0.1~99.8:0.1~99.8である、
ことを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合用触媒の調製方法。
【請求項3】
前記電子供与化合物は、アルコール、カルボン酸、アルデヒド、アミン、エーテル、およびエステルからなる群から選択される、
ことを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合用触媒の調製方法。
【請求項4】
前記ハロゲン化チタン化合物が、テトラハロゲン化チタン、トリハロゲン化アルコキシチタン、ジハロゲン化ジアルコキシチタンおよびモノハロゲン化トリアルコキシチタンからなる群から選択される、
ことを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合用触媒の調製方法。
【請求項5】
前記不活性溶媒が、トルエン、イソペンタン、イソオクタン、ヘキサン、ヘプタン、ペンタンおよびイソヘキサンからなる群から選択される、
ことを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合用触媒の調製方法。
【請求項6】
前記触媒の粒子サイズが5~30ミクロンである、
ことを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合用触媒の調製方法。
【請求項7】
前記触媒の活性が、触媒1g当たり(コ)ポリマー3~4kgである、
ことを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合用触媒の調製方法。
【請求項8】
10~200℃の温度範囲で不活性炭化水素媒体の存在下で、請求項1に記載の触媒をオレフィンおよび共触媒と接触させる工程を含む、
ことを特徴とするオレフィンの重合方法。
【請求項9】
前記共触媒が有機アルミニウム化合物を含み、
前記不活性炭化水素媒体は、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、および芳香族炭化水素からなる群から選択される、
ことを特徴とする請求項8に記載のオレフィンの重合方法。
【請求項10】
オレフィンの重合中に、前記触媒が3~10重量%の範囲の微粒子を生成する、
ことを特徴とする請求項8に記載のオレフィンの重合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒およびその調製方法に関する。より具体的には、本発明は、オレフィン重合用触媒の調製方法およびオレフィン重合方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
チーグラー・ナッタ(ZN)触媒系は、オレフィンの重合能があることでよく知られている。それらは概ね、大部分が、内部電子供与体として知られる有機化合物とともにチタン成分が加えられたマグネシウムベースの担体からなる。この触媒は、共触媒および/または外部供与体と組み合わせると、完全なZN触媒系を構成する。
【0003】
特に、高密度ポリエチレン(HDPE)を高い重合活性で製造するためのエチレン重合用のZN触媒系が開発され、商品化されている。これらの触媒は、嵩密度の高いポリマーを生成し、スラリー重合および気相重合に使用できる。一般に、非常に望ましいポリエチレン(PE)触媒は、狭い粒子サイズ分布、高い活性、優れた水素応答性、良好なコモノマー分布、高い嵩密度、および、低微粒子を備えている必要がある。
【0004】
特許文献1は、高温でデカンおよび2-エチルヘキサノールにMgClを溶解することによって調製されるマグネシウム溶液を使用して、エチレンの重合および共重合用触媒を提供する。この溶液は、典型的には、水酸基を有するエステル、およびアルコキシホウ素化合物と反応し、続いてハロアルカン化合物の存在下でマグネシウム組成物溶液をチタン化合物の混合物と反応させることによる再結晶によって固体チタン触媒を生成する。特許請求された触媒は、良好な活性および水素応答性を示す。
【0005】
特許文献2は、ポリエチレン重合用触媒系および触媒系/担体の製造方法を開示している。この方法は、マグネシウム化合物、アルキルシリケート、およびモノエステルから作られた触媒担体の使用に基づいている。アルキルシリケートとモノエステルの両方が均一で比較的大きな粒子サイズを提供し、微粒子は最小限である。
【0006】
特許文献3は、チタン化合物、マグネシウム化合物、アルコール、アルミニウムアルコキシド、シロキサン混合物およびマレエート誘導体を反応させることによる触媒の調製を開示している。この触媒の調製中に、マレエート誘導体が沈殿剤として添加され、溶液からの触媒粒子の沈殿を助ける。
【0007】
特許文献4は、マグネシウム金属を有機ハロゲン化物RXと接触させて可溶性生成物(I)を形成し、続いて生成物(I)にアルコキシ基を含むケイ素化合物を添加して、固体生成物(II)を形成し、続いて四塩化チタンおよび電子供与体化合物を用いて生成物(II)を処理する、オレフィン重合用触媒を製造する方法を開示している。工程(c)におけるTiCl/Mgのモル比は、10~100、好ましくは10~50である。電子供与化合物対マグネシウムのモル比は、0.05~0.75、好ましくは0.1~0.4である。触媒は、得られたポリプロピレン粉末の高い嵩密度と狭い粒子サイズ分布(SPAN=(d90-d10)/d50=0.2-0.6)を提供し、非常に高い活性と立体特異性を持っている。工程(c)における反応温度は50~150℃、好ましくは60~120℃である。低温または高温では、触媒の活性が低下する。
【0008】
特許文献5は、エチレン重合用の触媒成分の調製方法を開示しており、これは工程(1)~(3)を含む。工程(1):固体Aの調製:マグネシウム化合物を有機エポキシ化合物と有機リン化合物に溶解して均一溶液とし、これにチタンを有するハロゲン化物を混合する。ハロゲン化チタンは、マグネシウム化合物1モル当たり0.5~120モル含まれる。工程(2):溶液Bの調製:少なくとも1つの無機チタン化合物および少なくとも1つの有機チタン化合物を電子供与体化合物に溶解し、B溶液を形成する。マグネシウム化合物1モル当たり、有機チタン化合物は0.1~10モル含まれ、電子供与化合物は1~50モル含まれる。工程(3):この工程では、工程(2)の溶液に活性化剤を添加して触媒成分を得る。この発明によって得られる触媒成分には、チタンが1~10%、アルミニウムが0.1~2%、電子供与体が1~40%含まれる。
【0009】
S.シバラム等は、チタンベースの高効率なオレフィン重合の方法を開示している。それは、無水MgClを電子供与体(典型的にはEB)と共粉砕し、続いて液相にてTiClで処理することを含む。場合によっては、TiClとの反応の前に、粉砕されたMgCl.EB複合体もまた、第2の電子供与体と有機アルミニウム化合物で処理される。
【0010】
特許文献6は、式{Mg(OR’)X}・a{MgX2}・b{Mg(OR’)2}・c{R’OH}を有する固体有機マグネシウム前駆体の調製方法を開示し、ここでR’は炭化水素基から選択され、Xはハライド基から選択される。この発明はまた、有機マグネシウム前駆体を使用した触媒系の調製方法、およびオレフィンの重合のためのその触媒の使用を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第6,881,696号明細書
【文献】米国特許第7,153,803号明細書
【文献】米国特許第9,562,119号明細書
【文献】ロシア国特許第2674440号明細書
【文献】中国特許第104974283号明細書
【文献】米国特許第9587041号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
マグネシウム、チタン、および内部電子供与体を用いて、高活性触媒を形成する、ポリエチレン触媒を製造するためのさまざまなプロセスと説明がある。しかし、得られた触媒が要求されるすべての特性を示す、利用可能な触媒プロセスは限られている。
【0013】
本発明で対処する主な問題は、触媒の水素応答性である。スラリー相プロセスの最初の反応器では、目標とする高メルトフローインデックス(MFI)や低分子量ポリエチレンの製造を可能にするために、非常に高濃度の水素が必要である。市販の触媒が反応器内で非常に高い濃度の水素にさらされると、モノマーの利用性が低下するため、触媒の活性が大幅に低下し、スループットにも悪影響を及ぼす。さらに、バイモーダルまたは広い分子量のポリエチレンを製造するために、水素応答収率が低い市販の触媒を使用すると、製造できる生成物が制限される。本発明の触媒は、この問題を解決する。本発明で対処する第2の問題は、重合中に微粒子が生成されることに妥協することなく、触媒の所望の粒子サイズおよび高い活性を達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、液体マグネシウム複合体、電子供与化合物、およびハロゲン化チタン化合物を含む触媒であって、触媒の粒子サイズが5~30ミクロンの範囲であり、活性が触媒1g当たり(コ)ポリマー3~4kgの範囲であり、水素応答性(hydrogen response)に優れる触媒を記載する。触媒を調製するプロセスは、a)液体マグネシウム複合体、電子供与体、およびハロゲン化チタン化合物を接触させて溶液を形成する工程、b)沈殿により触媒粒子を得る工程、及び、c)固体の均一な触媒を得るために触媒粒子を洗浄する工程を含み、3~10重量%の微粒子を有する、エチレンと他のオレフィンとの(コ)ポリマーを製造する。
【0015】
<発明の効果>
先行技術文献に対する本発明の触媒の利点は以下の通りである。
(a)ポリエチレン触媒は、5~30ミクロンの粒子サイズを有する、
(b)触媒は、2.0未満のSPAN、良好な水素応答性、モノマー挿入の向上、高活性および改良された形態を含む、
(c)触媒は、微粒子が3~10重量%の、エチレンと他のオレフィンとの(コ)ポリマーを生成する、
(d)触媒はバイモーダルポリマーを生成する能力を有する、および、
(e)触媒の調製プロセスは、高温または長時間を必要とせず、また、遷移金属に基づく刺激の強い化学物質の使用は比較的少量である。
【0016】
<発明の目的>
本発明の主な目的は、オレフィン重合用触媒の調製方法を提供することであり、この方法は、
(a)液体マグネシウム複合体、電子供与化合物およびハロゲン化チタン化合物を接触させて溶液を形成させる工程、
(b)昇温を行うこと、及び、溶液を特定の温度に保持することにより、溶液を沈殿させて触媒粒子を得る工程、及び、
(c)触媒粒子を不活性溶媒で洗浄して固体の均一な触媒を得る工程、
を含む。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、不活性炭化水素媒体の存在下で触媒をオレフィンおよび共触媒と接触させることを含む、オレフィンの重合方法を提供することである。
【0018】
<略語>
ZN:チーグラー・ナッタ
HDPE:高密度ポリエチレン
PE:ポリエチレン
MFI:メルトフローインデックス
FRR:フローレートレシオ
LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン
VLDPE:超低密度ポリエチレン
ULDPE:超低密度ポリエチレン
【発明を実施するための形態】
【0019】
当業者は、本開示が具体的に記載されたもの以外の変形および修正を受けることを認識するであろう。本開示は、そのようなすべての変形および修正を含むことを理解されたい。本開示はまた、本明細書において個別にまたは集合的に参照または示されるプロセスのすべてのステップ、システムの特徴、およびそのようなステップまたは特徴のいずれかまたは複数のすべての組み合わせを含む。
【0020】
<定義>
便宜のため、本開示の更なる説明の前に、本明細書で使用される特定の用語および例をここにまとめる。これらの定義は、開示の残りの部分を踏まえて読まれるべきであり、当業者によって理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、当業者に認識され知られている意味を有するが、便宜上および完全を期すために、特定の用語およびそれらの意味を以下に記載する。
【0021】
冠詞「a」、「an」および「the」は、冠詞の文法的目的語の1つまたは複数(つまり、少なくとも1つ)を指すために使用される。
【0022】
用語「含む(comprise)」および「含む(comprising)」は、追加の要素が含まれる場合があることを意味し、包括的、開放的に使用される。「のみからなる(consists of only)」と解釈されることを意図したものではない。
【0023】
本明細書全体を通して、文脈が別段の要求をしない限り、用語「含む(comprise)」、および「含む(comprises)」および「含む(comprising)」などの変形は、記載された構成要素若しくは工程または構成要素もしくは工程の群を含むことを意味するが、他の構成要素もしくは工程、または構成要素もしくは工程の群を除外することを意味しないと理解される。
【0024】
用語「含む(including)」は、「含むが限定されない(including but not limited to)」という意味で使用される。「含む(Including)」および「含むが限定されない(including but not limited to)」は、同じ意味で使用される。
【0025】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様または同等の任意の方法および材料を本開示の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料をここで説明する。本明細書で言及されたすべての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
本開示は、本明細書に記載された特定の実施形態によって範囲が限定されるものではなく、例示のみを目的とするものである。本明細書に記載されているように、機能的に同等の製品およびプロセスは明らかに本開示の範囲内である。
【0027】
本発明は、オレフィン重合用触媒を開示し、この触媒は、(a)液体マグネシウム複合体、(b)電子供与化合物、及び、(c)ハロゲン化チタン化合物を含み、ここで、液体マグネシウム複合体は{Mg(OR’)X}.a{MgX}.b{Mg(OR’)}.c{R’OH}であり、R’は炭化水素基から選択され、R’OHは2-エチル-1-ヘキサノールであり、Xは塩素であり、a:b:cは0.1~99.8:0.1~99.8:0.1~99.8であり、ハロゲン化チタン化合物は、マグネシウム1モル当たり1~50モルの量で含まれ、電子供与化合物は、マグネシウム1モル当たり0.05~10モルの量で含まれる。
【0028】
本発明は、5ミクロンから30ミクロンの間の粒子サイズを有し、触媒1g当たり3~4kgの(コ)ポリマーの活性および優れた水素応答性を有する触媒を調製するプロセスを開示する。
【0029】
触媒の調製方法は、3~10重量%の微粒子を有する、エチレンと他のオレフィンとの(コ)ポリマーを製造するために、a)液体マグネシウム複合体、電子供与体、ハロゲン化チタン化合物を接触させて、マグネシウム1モルあたりハロゲン化チタン化合物および液体マグネシウム複合体を約1~約10モルで含む溶液を形成する工程、b)昇温を行うこと、および、溶液を特定の温度に保持することにより、溶液を沈殿させて触媒粒子を得る工程、c)触媒粒子を不活性溶媒で洗浄して、固体の均一な触媒を得る工程を含む。
【0030】
このプロセスの工程(b)は、昇温を行うこと、及び、特定の温度で溶液を保持することによって、溶液を沈殿して触媒粒子を得ることを含む。
(i)5~25℃の温度範囲で0.1~10℃/分での1番目の昇温を行う工程、
(ii)少なくとも15分間保持する工程
(iii)25~45℃の温度範囲で0.1~10℃/分での2番目の昇温を行う工程
(iv)少なくとも30分間保持する工程
(v)45~110℃の温度範囲で0.1~10℃/分での3番目の昇温を行う工程
(vi)75℃の温度で少なくとも15分間保持する工程
【0031】
他の実施形態では、触媒の粒子サイズは非常に重要であり、そして、分子量、嵩密度、MFI、改善された流動性などに関して、得られるポリマーが特徴的な特性を得るため、最適な粒子サイズを有することが非常に望ましい。これは、あらゆる商業的な重合プラントにおいて、「ドロップイン」触媒として機能する触媒の重要な特徴の1つである。
【0032】
触媒粒子サイズ(直径として定義される)が5~30μm(D50)であることは、本発明の実施形態である。他の実施形態では、触媒粒子サイズは、触媒を調製する方法/プロセス、具体的には沈殿プロセス、すなわちステップ(b)によって達成され、ステップ(b)は、昇温を行うこと、および、溶液を特定の温度に保持することによって、溶液を沈殿させて触媒粒子を得る工程を含む。
【0033】
別の実施形態では、発明者らは、マグネシウムベースの前駆体の性質の選択が、調製された触媒の活性(1時間当たりの触媒1グラム当たりのkg値のポリマー重量として定義される)に重要な役割を果たすことを見出した。一実施形態では、触媒の活性は、触媒1g当たり(コ)ポリマー3~4kgである。液体マグネシウム複合体は{Mg(OR’)X}.a{MgX}.b{Mg(OR’)}.c{R’OH}で、R’は炭化水素基から選択され、R’OHは2-エチル-1-ヘキサノールであり、Xは塩素であり、a:b:cは0.1~99.8:0.1~99.8:0.1~99.8である。使用されるこのマグネシウムベースの前駆体は、国際公開第2014/045259号に記載されたプロセスによって調製される。本発明によれば、液体マグネシウム複合体はマグネシウムを含み、トルエンの存在下でマグネシウム源をハロゲン化ベンジルおよび2-エチルヘキサノールと接触させることによる、一つの工程で調製される。
【0034】
さらに別の実施形態では、触媒を調製するために適した電子供与体は、アルコール、カルボン酸、アルデヒド、アミン、エーテル、およびエステルからなる群から選択される。別の実施形態では、特に適した電子供与体は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、tert-ブタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、ギ酸メチル、ギ酸ブチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸オクチル、テトラオルトシリケート、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸イソブチル、吉草酸エチル、ステアリン酸エチル、クロロ酢酸メチル、ジクロロ酢酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、クロトン酸エチル、シクロヘキサンカルボン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸フェニル、安息香酸ベンジル、p-メトキシ安息香酸エチル、p-メチル安息香酸メチル、p-t-ブチル安息香酸エチル、ナフトエ酸エチル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、トルイル酸アミル、エチル安息香酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル、エトキシ安息香酸エチルおよびそれらの混合物である。
【0035】
別の実施形態において、ハロゲン化チタン化合物の具体例としては、四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン等の四ハロゲン化チタン、三塩化メトキシチタン、三塩化エトキシチタン、三塩化ブトキシチタン、三塩化フェノキシチタン等の三ハロゲン化アルコキシチタン、二塩化ジエトキシチタンなどの二ハロゲン化アルコキシチタン、塩化トリエトキシチタン等のモノハロゲン化トリアルコキシチタン、およびそれらの混合物であり、四塩化チタンが好ましい。これらのチタン化合物は、単独で、または混合して使用されてもよい。
【0036】
本発明の一実施形態において、電子供与体は、マグネシウム1モル当たり0.05~10モル、好ましくは0.1~5モルの量が添加され、電子供与体は0~40℃の温度で0.5~5時間、好ましくは0~20℃の温度で0.5~2時間、液体マグネシウム複合体に添加される。
【0037】
本発明の一実施形態において、チタン化合物は、マグネシウム1モル当たり、通常少なくとも1~50モル、好ましくは1~20モル、より好ましくは1モル~10モルの量で添加される。
【0038】
本発明の一実施形態では、液体マグネシウム複合体、電子供与体およびハロゲン化チタン化合物を、0~90℃の温度で1~10時間、好ましくは0~50℃で1~6時間接触させる。液体マグネシウム複合体、電子供与体、およびハロゲン化チタン化合物を接触させる方法にはいくつかの例/方法がある。本発明の一実施形態において、得られる触媒の望ましい特性は、好ましくは、液体マグネシウム複合体をチタン化合物に添加することによって達成される。別の実施形態では、この添加は、ワンショットまたは滴下のいずれかで行われる。
【0039】
本発明の一実施形態において、液体マグネシウム複合体、電子供与体およびハロゲン化チタン化合物を接触させて、溶液を形成する。液体マグネシウム複合体、電子供与体およびハロゲン化チタン化合物を接触させる手順は、必要に応じて、1回、2回、3回またはそれ以上繰り返してもよい。好ましい実施形態では、接触手順は1回行われる。
【0040】
さらに、別の実施形態では、チーグラー・ナッタ触媒の知識を有する者は皆、望ましい触媒粒子サイズを得ることが非常に重要であり、且つ、難題であることを知っている。これには、前駆体または担体として知られるマグネシウムベースの化合物の粒子サイズを制御する概念を使用するものもあれば、シリカなどの不活性担体への前駆体の化学的導入の概念を使用するものもあるなど、さまざまな側面がある。別の概念は、一般に、前駆体の溶液を形成し、チタン化後に触媒成分を沈殿させることに基づく沈殿であり、チタン化は、チタン酸塩の形成、すなわちチタンを化合物に導入する作用またはプロセスを指す。これは、前駆体の化学的性質以外にも多くの制御因子があるため、最も困難なプロセスである。
【0041】
さらに別の実施形態では、ハロゲン化チタン化合物の目的は、ハロゲン化剤として作用し、触媒表面に分散および担持されることにより、非晶質MgClの形成を助けることである。さらに、それは溶液からのアルコールの除去にも役立ち、特定の望ましい表面特性と粒子形状を有する固体成分の沈殿をもたらす。さらに重要なことは、粒子の形状が均一であることである。本発明者らは、溶液からの均一な固体触媒粒子の沈殿が特定の温度範囲で起こることを発見した。
【0042】
本発明の一実施形態では、固体の均一な触媒粒子の沈殿は、溶液を特定の温度に保持するとともに昇温を行うことによって行われる。第1の温度上昇は、5~25℃の温度で0.1℃/分~10℃/分に規定され、少なくとも15分間保持し、第2の温度上昇は、25~45℃の温度で0.1℃/分で10℃/分に規定され、少なくとも30分間保持し、そして、3番目の温度上昇が45~110℃の温度で0.1℃/分~10℃/分で規定され、75℃で少なくとも15分以上保持される。
【0043】
さらに、別の実施形態では、触媒のSPANは、SPAN=(D90-D10)/D50として定義される。別の実施形態において、沈殿プロセスは、SPANが0.8~2.0の粒子サイズ分布の狭い触媒粒子を提供する。
【0044】
さらに、別の実施形態では、マグネシウム、チタン、ハロゲン、アルコール、および電子供与体を含む得られた固体触媒を、濾過またはデカンテーションによって反応混合物から分離し、最後に不活性溶媒で洗浄して、未反応のチタン成分および他の副生物を除去することができる。通常、固体触媒は不活性溶媒で1回以上洗浄される。一実施形態では、固体触媒はトルエンで1回洗浄される。別の実施形態において、固体触媒は、不活性溶媒で1回以上さらに洗浄され、不活性溶媒は、典型的には炭化水素であり、イソペンタン、イソオクタン、ヘキサン、ヘプタン、ペンタンまたはイソヘキサンのような脂肪族炭化水素を含むがこれらに限定されない。
【0045】
さらに別の実施形態では、本発明に記載の触媒合成プロセスは、遷移金属に基づく刺激の強い化学物質が比較的少量で使用される単純なプロセスである。このプロセスのもう1つの利点は、触媒合成に高温と長時間を必要としないことである。
【0046】
本発明の別の実施形態では、触媒は優れた粒状形態を有する。分子量とメルトフローレートが制御されたポリエチレン(コ)ポリマーを生成することは、このプロセスによって調製された触媒のもう1つの特徴である。
【0047】
本発明の別の実施形態において、本発明は、エチレンの(共)重合のための触媒を提供する。別の実施形態では、本発明の触媒は、微粒子が10%未満の、エチレンと他のオレフィンとのバイモーダル(コ)ポリマーを提供する。エチレンの(共)重合中において、非常に高い活性を有するにもかかわらず、ポリマー中に生成される微粒子は3~10重量%である。これは、ホットスポットの減少、流動性の増加、特に後段の設備での操作の容易さなど、微粒子関連の問題を最小限に抑えながら、重合操作中に高いスループットを提供できる点で有利である。
【0048】
さらに別の実施形態では、水素を反応器から排出することによってバイモーダル重合プロセスにおける水素濃度を調整する一般的な方法を防止/克服するために、優れた水素応答性を有する触媒を有することが非常に望ましい。このアプローチは、モノマーなどの反応物を浪費するだけでなく、運用コストの増加にもつながる。本発明は、優れた水素応答性を有する触媒を製造するためのプロセスを提供し、バイモーダル重合プロセスで使用される場合、触媒は無駄な水素の排出を実質的に減少させる。典型的なスラリー相の2つまたは3つの反応器構成では、最初の反応器で水素濃度が非常に高く保たれ、低分子量または非常に高いMFIポリエチレンの製造が可能になる。水素の分圧が高いため、エチレンの利用可能性が制限され、触媒の活性が低下するだけでなく、スループットも低下する。次いで、水素及びエチレンを洗い流しながら、このポリマーを次の反応器に移す。第1反応器の水素量が多いほど、水素の効率的な除去の課題が大きくなる。ポリマーとともに水素が持ち越されると、低MFIまたは非常に高分子量のポリエチレンを生成するための、後続の反応器の管理がさらに困難になり、したがって、低濃度の水素が本質的に必要とされる。さらに、PE100を含む特殊グレードでは、広い分子量分布またはバイモーダル分布が必須である。高い水素応答性を有する触媒では、上記の課題が軽減され、低水素濃度でも同じMFIを達成できるので、第1反応器での高い水素要件に関連する問題が軽減される。これらの触媒は、広い分子量ポリエチレンの効率的な製造も可能にする。
【0049】
別の実施形態では、重合1時間当たりにおける触媒1g当たりのkgポリマーとして定義される触媒効率は、水素の量の増加とともに減少する。
【0050】
一実施形態では、前記触媒によって生成されるポリエチレンは、ASTM規格D1238に従って測定されたメルトフローインデックス(M1)が、0.001~3,000dg/分、好ましくは0.005~1,000dg/分、より好ましくは0.02~100dg/分である。
【0051】
さらに別の実施形態において、フローレートレシオ(FRR)または21.6/5.0は、ASTM規格D1238によって決定され、ここで、21.6は、21.6kgの荷重下で190℃で測定されたポリマーのメルトインデックスであり、5.0は、190℃、5.0kgの荷重下で測定したポリマーのメルトインデックスである。FRRが高いほど、分子量分布が広いことを示す。別の実施形態では、前記記載の触媒によって生成されたポリエチレンは、より高いFRRを示す。
【0052】
さらに、エチレン/オレフィンの重合方法は、典型的には水素の存在下、重合条件下で触媒をエチレンと接触させることを含む。重合条件には、触媒、有機アルミニウム化合物および/または外部電子供与体が含まれる。共触媒は、水素化物、有機アルミニウム、リチウム、亜鉛、スズ、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム、およびそれらの組み合わせを含むことができる。一実施形態では、好ましい共触媒は有機アルミニウム化合物である。
【0053】
一実施形態では、有機アルミニウム化合物には、トリアルキルアルミニウムなどのアルキルアルミニウム、好ましくはトリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウムトリイソプレニルアルミニウム等のトリアルケニルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、塩化ジブチルアルミニウム、塩化ジイソブチルアルミニウム、臭化ジエチルアルミニウム等のジアルキルアルミニウムハロゲン化物、セスキ塩化エチルアルミニウム、セスキ塩化ブチルアルミニウム、セスキ臭化エチルアルミニウム等のアルキルアルミニウムセスキハロゲン化物、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジブチルアルミニウム等のジアルキルアルミニウム水素化物、ニ水素化エチルアルミニウム、二水素化プロピルアルミニウム等のアルキルアルミニウム部分水素化物、メチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、テトラエチルアルミノキサン、テトライソブチルアルミノキサン等のアルミノキサン、ジエチルアルミニウムエトキシドなどが含まれるが、これらに限定されない。アルミニウム対チタンのモル比は、約1:1~約150:1または約1:1~約100:1である。
【0054】
別の実施形態では、エチレンは、不活性炭化水素媒体中で穏やかな条件下で重合される。別の実施形態では、不活性炭化水素媒体には、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ケロシンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、液体オレフィン、およびそれらの混合物が含まれる。
【0055】
さらに別の実施形態では、重合プロセスは、希釈剤として不活性炭化水素溶媒を使用するスラリー重合、または反応媒体として液体モノマーを使用するバルク重合などによって行うことができ、気相で操作する1つ以上の流動式または機械式の攪拌床反応器にて行うことができる。別の実施形態では、共重合は、少なくとも2つの重合ゾーンを使用して実施される。オレフィンの重合方法は、請求項1に記載の触媒とオレフィンおよび共触媒とを、不活性炭化水素媒体の存在下で、10~200℃の温度で接触させることを含む。
【0056】
特に、前記触媒は、以下の生成物、エチレンホモポリマー、エチレンおよび炭素数3~12のα-オレフィンのコポリマーを含む0.940g/cmよりも高い密度を有する高密度ポリエチレン(HDPE)、密度が0.940g/cm未満の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレンと炭素数3~12の1つ以上のα-オレフィンとのコポリマーからなり、エチレン由来のユニットが80%よりも高いモル含有量であって密度が0.920g/cm未満で0.880g/cm程度の超低密度および超低密度ポリエチレン(VLDPEおよびULDPE)、エチレン由来のユニットの重量含有量が30%~70%であるエチレンとプロピレンの弾性コポリマー、エチレン、プロピレン、ブテン-1および少量のジオレフィンの弾性ターポリマーを製造するために使用することができる。
【0057】
さらに別の実施形態では、重合が気相で行われる場合、操作圧力は、通常、5~100バール、好ましくは10~50バールの範囲である。バルク重合における操作圧力は、通常、10~150バール、好ましくは15~50バールの範囲である。スラリー重合における操作圧力は、通常、1~10バール、好ましくは2~7バールの範囲である。水素は、ポリマーの分子量を制御するために使用される。
【0058】
さらに別の実施形態では、本発明に記載の触媒は、優れた粒子サイズ分布、優れた嵩密度およびより広い分子量分布を有するポリエチレンを提供する。本発明において、記載された触媒は、重合のために反応器に直接添加することができ、または予備重合、即ち、重合反応器に添加される前に、触媒は、より低い転換度での重合にかけることができる。予備重合はエチレン重合で行うことができ、転換は触媒1グラムあたりポリマー0.2~500グラムの範囲に制御される。
【0059】
本発明は、触媒系も提供する。この触媒系は、エチレンを重合すると、少なくとも0.40cc/gの嵩密度(BD)を有するポリエチレンを提供する。
【実施例
【0060】
本発明の基本的な態様を説明してきたが、以下の非限定的な例は、その特定の実施形態を説明するものである。当業者は、本発明の本質を変更することなく、本発明に多くの変更を加えることができることを理解するであろう。
【0061】
<液体マグネシウム複合体の調製>
25℃に維持された500mlのガラス製反応器に、計算量のマグネシウム(粉末または削りくず)を秤量して反応器に加え、続いて計算量の塩化ベンジルを加え、続いてトルエン中の2-エチル-1-ヘキサノールを加えた。この混合物を攪拌し、90℃±3まで徐々に昇温した。反応が活性化した後、混合物を同じ温度で6時間維持した。得られた均一な溶液は性質がわずかに粘性があり、放置しても分離は見られなかった。測定したマグネシウム含有量は、1.8重量%であった。
【0062】
<本発明の触媒(A)の調製>
10℃に維持された30mlのTiCl溶液に、液体マグネシウム複合体100mlを、電子供与体としての安息香酸エチル(4ml)(10℃で1時間維持)とともに15分間かけて添加し、透明な溶液を得た。この添加は、一定速度で撹拌しながら行った。系が所望の温度に達した後、得られた溶液を同じ温度で15分間維持した。反応温度を20℃、40℃、70℃に上げ、各点で温度を15分、30分、15分保持した。最終到達温度は100℃で、1時間維持した。沈降およびデカンテーションの後、不活性溶媒としてトルエン130mlで浮遊固体を再び処理し、混合物を撹拌しながら100℃で1分間維持した。再度、沈降およびデカンテーションの後、固体触媒をそれぞれ70℃でヘキサンで十分に洗浄し、さらに熱窒素下で自由流動するまで乾燥させた。得られた触媒の粒子サイズとSPANは、それぞれ9.5ミクロンと0.9であり、得られた触媒の形状は均一であった。
【0063】
<本発明の触媒(B)の調製>
不活性溶媒としてテトラオルトシリケートを用いて、実施例Aと同様に行った。得られた触媒の粒子サイズとSPANは、それぞれ10.0ミクロンと0.9であり、得られた触媒の形状は均一であった。
【0064】
<本発明の触媒(C)の調製>
反応温度を15℃、50℃、80℃に上昇させて、各点で温度を15分、30分、および15分間保持した以外、実施例Aと同様に行った。得られた触媒の粒子サイズとSPANは、それぞれ8.6ミクロンと0.8であり、得られた触媒の形状は均一であった。
【0065】
<本発明の触媒(D)の調製>
反応温度の上昇を20℃、40℃、70℃のままにして、各点で温度を30分、60分、および25分間保持して、実施例Aと同様に行った。得られた触媒の粒子サイズとSPANは、それぞれ16.3ミクロンと1.1であり、得られた触媒の形状は均一であった。
【0066】
<本発明の触媒(E)の調製>
反応温度の上昇を20℃、60℃、90℃のままにして、各点で温度を30分、60分、および25分間保持して、実施例Aと同様に行った。得られた触媒の粒子サイズとSPANは、それぞれ28.6ミクロンと1.3であり、得られた触媒の形状は均一であった。
【0067】
<本発明の触媒(F)の調製>
TiClの量を75mlに変更したことを除いて、実施例Aと同様に行った。得られた触媒の粒子サイズとSPANは、それぞれ12.8ミクロンと1.0であり、得られた触媒の形状は均一であった。
【0068】
<本発明の触媒(G)の調製>
得られた固体触媒を濾過により反応混合物から分離したことを除いて、実施例Aと同様に行った。得られた触媒の粒子サイズとSPANは、それぞれ8.2ミクロンと0.8であり、得られた触媒の形状は均一であった。
【0069】
<比較触媒(CA1)の調製>
温度を60分間で20℃から100℃に直線的に上昇させたことを除いて、実施例Aと同様に行った。得られた触媒の粒子サイズとSPANは、それぞれ46.3ミクロンと1.6であり、得られた触媒の形状は不均一であった。
【0070】
<比較触媒(CA2)の調製>
マグネシウム複合体の調製に使用されるアルコールがエタノールであることを除いて、実施例Aと同様に行った。得られた触媒の粒子サイズとSPANは、それぞれ36.5ミクロンと1.4であり、得られた触媒の形状は不均一であった。
【0071】
<比較触媒(CB)の調製>
温度を40分間で20℃から100℃に直接上昇させたことを除いて、実施例Bと同様に行った。得られた触媒の粒子サイズとSPANはそれぞれ38.2ミクロンと1.5であり、得られた触媒の形状は不均一であった。
【0072】
<比較触媒(CC)の調製>
反応温度を60分で15℃から80℃に直接上昇させる以外、実施例Cと同様に行った。得られた触媒の粒子サイズとSPANは、それぞれ42.9ミクロンと1.6であり、得られた触媒の形状は不均一であった。
【0073】
<比較触媒(CD)の調製>
反応温度を115分で20℃から70℃に直接上昇させる以外、実施例Dと同様に行った。得られた触媒の粒子サイズとSPANは、それぞれ76.8ミクロンと1.9であり、得られた触媒の形状は不均一であった。
【0074】
<比較触媒(CE)の調製>
反応温度を115分間で20℃から90℃に直接上昇させる以外、実施例Eと同様に行った。得られた触媒の粒子サイズとSPANはそれぞれ62.6ミクロンと1.7であり、得られた触媒の形状は不均一であった。
【0075】
<重合プロセス>
エチレンの重合は、事前に窒素雰囲気下で調節された500mlのBuchi圧力反応器内で実施された。反応器に、10重量%トリエチルアルミニウムの溶液を含有する乾燥ヘキサン350mlおよび計算量の固体触媒を入れた。反応器を水素で0.9バールに加圧し、次いで、毎分750回転(rpm)で撹拌しながら5バールに達するまでエチレンを入れた。反応器を加熱し、80℃で1時間保持した。最後に、エチレンの供給を停止し、反応器を冷却し、室温条件でヘキサンからポリマーを回収し、真空下で乾燥させた。
【0076】
【表1】
【0077】
本発明に記載の方法を用いて調製されたすべての触媒(触媒A~G)は、活性が3Kg PE/g触媒より高く、0.4g/ccより大きい嵩密度を示す。ポリマーは、10重量%未満の微粒子含有量を有していた。
【0078】
【表2】
【0079】
本発明に記載の方法を用いて調製された触媒の1つは、水素濃度の増加とともに触媒の活性が低下するという場合であっても、優れた水素応答性を示す。高い水素濃度であるにもかかわらず、触媒は3kg PE/g触媒より大きい活性を示し、得られたポリマー中の微粒子は10重量%より大きかった。
【0080】
本発明の触媒は、エチレンと1-ヘキセンとの共重合について評価された。表3に、重合条件とポリマー分析データを示す。モノマーの添加のトレンドは、1-ヘキセン、水素、エチレンの順であった。水素は0.9バールに保たれた。触媒は、嵩密度が0.4g/ccより大きく、3Kg PE/g触媒より高い活性を示した。ポリマーの微粒子含有量は5重量%未満であった。
【0081】
【表3】
【0082】
本発明の触媒は、エチレンと1-ヘキセンとの共重合中の水素応答性について評価された。表4に、重合条件とポリマー分析データを示す。モノマーの添加のトレンドは、1-ヘキセン、水素、エチレンの順であった。1-ヘキセンは1.1mlに保たれた。
【0083】
【表4】
【0084】
触媒は、嵩密度が0.4g/ccより大きく、3Kg PE/g触媒より高い活性を示した。ポリマーの微粒子含有量は、7重量%未満であった。
【0085】
(付記)
(付記1)
(a)0~25℃の温度範囲で1~10時間、液体マグネシウム複合体、電子供与体化合物およびハロゲン化チタン化合物を接触させて溶液を形成する工程と、
(b)下記(i)~(vi)の工程によって、前記溶液を沈殿させて触媒粒子を得る工程と、
(i)5~25℃の温度範囲で0.1~10℃/分での1番目の昇温を行う工程、
(ii)少なくとも15分間保持する工程、
(iii)25~45℃の温度範囲で0.1~10℃/分での2番目の昇温を行う工程、
(iv)少なくとも30分間保持する工程、
(v)45~110℃の温度範囲で0.1~10℃/分での3番目の昇温を行う工程、
(vi)75℃の温度で少なくとも15分間保持する工程、
(c)固体の均一な触媒を得るために前記触媒粒子を不活性溶媒で洗浄する工程と、
を含む、
ことを特徴とするオレフィン重合用触媒の調製方法。
【0086】
(付記2)
前記液体マグネシウム複合体は、{Mg(OR’)X}.a{MgX}.b{Mg(OR’)}.c{R’OH}であり、
R’は炭化水素基から選択され、R’OHは2-エチル-1-ヘキサノールであり、Xは塩素であり、a:b:cは0.1~99.8:0.1~99.8:0.1~99.8である、
ことを特徴とする付記1に記載のオレフィン重合用触媒の調製方法。
【0087】
(付記3)
前記電子供与化合物は、アルコール、カルボン酸、アルデヒド、アミン、エーテル、およびエステルからなる群から選択される、
ことを特徴とする付記1に記載のオレフィン重合用触媒の調製方法。
【0088】
(付記4)
前記ハロゲン化チタン化合物が、テトラハロゲン化チタン、トリハロゲン化アルコキシチタン、ジハロゲン化ジアルコキシチタンおよびモノハロゲン化トリアルコキシチタンからなる群から選択される、
ことを特徴とする付記1に記載のオレフィン重合用触媒の調製方法。
【0089】
(付記5)
前記不活性溶媒が、トルエン、イソペンタン、イソオクタン、ヘキサン、ヘプタン、ペンタンおよびイソヘキサンからなる群から選択される、
ことを特徴とする付記1に記載のオレフィン重合用触媒の調製方法。
【0090】
(付記6)
前記触媒の粒子サイズが5~30ミクロンである、
ことを特徴とする付記1に記載のオレフィン重合用触媒の調製方法。
【0091】
(付記7)
前記触媒の活性が、触媒1g当たり(コ)ポリマー3~4kgである、
ことを特徴とする付記1に記載のオレフィン重合用触媒の調製方法。
【0092】
(付記8)
10~200℃の温度範囲で不活性炭化水素媒体の存在下で、請求項1に記載の触媒をオレフィンおよび共触媒と接触させる工程を含む、
ことを特徴とするオレフィンの重合方法。
【0093】
(付記9)
前記共触媒が有機アルミニウム化合物を含み、
前記不活性炭化水素媒体は、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、および芳香族炭化水素からなる群から選択される、
ことを特徴とする付記8に記載のオレフィンの重合方法。
【0094】
(付記10)
オレフィンの重合中に、前記触媒が3~10重量%の範囲の微粒子を生成する、
ことを特徴とする付記8に記載のオレフィンの重合方法。