(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】感圧性粘着フィルム、及びこれを含む有機電子装置
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20240229BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20240229BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240229BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240229BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240229BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240229BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240229BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240229BHJP
B32B 27/26 20060101ALI20240229BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240229BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240229BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20240229BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/04
C09J11/04
C09J11/06
C09J11/08
B32B27/00 M
B32B7/023
B32B27/18 A
B32B27/26
B32B27/30 A
B32B27/20 A
B32B27/00 L
B32B7/06
(21)【出願番号】P 2022174355
(22)【出願日】2022-10-31
【審査請求日】2022-10-31
(31)【優先権主張番号】10-2021-0148928
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519204054
【氏名又は名称】イノックス・アドバンスト・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】INNOX Advanced Materials Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】171,Asanvalley-ro,Dunpo-myeon,Asan-si,Chungcheongnam-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】イ、 サン ウ
(72)【発明者】
【氏名】オー、 ジョン ソプ
(72)【発明者】
【氏名】イ、 ジョン ジョル
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、 ミョン スプ
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-019903(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2017-0114409(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
360~380nm領域の紫外線透過率が、3%以下である第1粘着層;及び可視光領域の全光透過率が、95%以上である第2粘着層;を含み、
可視光領域の全光透過率は、40~95%であ
り、
前記第1粘着層は、アクリル系樹脂100重量部に対し、遮光性粒子を0.1~1.1重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を14.0~17.5重量部、及び硬化剤を0.07~0.20重量部で含む、溶媒型(solvent type)第1粘着組成物で形成されることを特徴とする、
感圧性粘着フィルム。
【請求項2】
可視光領域の全光透過率が40~80%であり、ヘーズ(haze)は、1%以下であることを特徴とする、
請求項1に記載の感圧性粘着フィルム。
【請求項3】
前記第1粘着組成物は、酸化防止剤をさらに含むことを特徴とする、
請求項
1に記載の感圧性粘着フィルム。
【請求項4】
前記遮光性粒子は、黒色有機顔料の粒子、黒色無機顔料の粒子及び黒色染料からなる群より選択される1種以上を含むことを特徴とする、
請求項
1に記載の感圧性粘着フィルム。
【請求項5】
前記遮光性粒子は、カーボンブラックを含むことを特徴とする、
請求項
1に記載の感圧性粘着フィルム。
【請求項6】
前記カーボンブラックは、平均粒子の大きさが0.1~2μmであることを特徴とする、
請求項
5に記載の感圧性粘着フィルム。
【請求項7】
前記第1粘着層の厚さは、1~50μmであることを特徴とする、
請求項1に記載の感圧性粘着フィルム。
【請求項8】
前記第2粘着層は、アクリル系樹脂及びウレタンアクリル系樹脂のうち1種以上を含む主剤樹脂を含み、無溶媒型(non-solvent type)第2粘着組成物で形成されることを特徴とする、
請求項1に記載の感圧性粘着フィルム。
【請求項9】
前記第2粘着組成物は、光開始剤をさらに含むことを特徴とする、
請求項
8に記載の感圧性粘着フィルム。
【請求項10】
前記第2粘着層は、厚さが1~250μmであることを特徴とする、
請求項1に記載の感圧性粘着フィルム。
【請求項11】
下記の測定方法に従って測定された黄変指数(YI)は、2以下であることを特徴とする、
請求項1に記載の感圧性粘着フィルム:
[測定方法]
COH-300A分光色差計を用いて黄変指数(YI)を測定し、測定波長は、550nmであり、23℃及び50%RHの環境で測定した。
【請求項12】
前記黄変指数(YI)は、1以下であることを特徴とする、
請求項1
1に記載の感圧性粘着フィルム。
【請求項13】
総厚は、50~300μmであることを特徴とする、
請求項1に記載の感圧性粘着フィルム。
【請求項14】
前記第1粘着層及び第2粘着層は、接触した面ではない、一面又は両面に配置された離型フィルムをさらに含むことを特徴とする、
請求項1に記載の感圧性粘着フィルム。
【請求項15】
請求項1~1
4のうちいずれか一項による感圧性粘着フィルムを含むディスプレイパネル(display panel)。
【請求項16】
請求項1
5に記載のディスプレイパネルを備える有機電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧性粘着フィルム、及びこれを含む有機電子装置に関し、具体的には、光透過率を調節することができるように遮光性を有し、かつ、薄型化して可撓性を有する有機電子装置にも適用できる感圧性粘着フィルム、及びこれを含む有機電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電子装置を始め、ディスプレイを製造するためのパネル部材を組み立てるために使用される部材である粘着フィルムには、感圧性粘着フィルム(PSA)を用い、特に、カバーウィンドウ(cover window)と偏光板を接着させる場合には、ディスプレイモジュールが発光する際、これを透過させるように、粘着フィルムの中でも光学用透明接着(OCA)フィルムが用いられる。
【0003】
ディスプレイパネルにおける偏光板は、反射防止の目的で日光、照明光等が、パネルの内部に入って反射する光を遮って、低い外部視認性を改善させる役割を担うため必要な部材である。
【0004】
しかし、偏光板は、有機電子装置の発光層から放出する光の40~50%も共に濾すことから、発光効率を大きく低下させることになるため、所望の明るさに到逹するためには、有機電子装置で消耗する電流が上昇して、寿命が低下する問題点を引き起こし得る。一方、有機電子装置は、ますます薄型化しつつ、ディスプレイパネルに可撓性及び曲げ性が要求される最近の流れによって、偏光板にも薄型化及び可撓性が要求されているが、従来の偏光板ではこれらの要求を達成するには限界点がある。
【0005】
よって、有機電子装置に偏光板が存在しなくても、光反射を防止して、視認性を確保することができるように、偏光機能を行う素材をカバーウィンドウやタッチフィルム等にコーティングする方式等の技術が提案されている。
【0006】
このように、偏光板のないディスプレイパネルにおいても、視認性を改善することができる遮光性に対する要求、有機電子装置の薄型化、およびディスプレイパネルに対する可撓性の要求を満たし得る有機電子装置用の感圧性粘着フィルムを開発することが必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した技術的問題点に着目して、本発明は、光透過率を調節することができるように、遮光性を有する感圧性粘着フィルム、及びこれを含む有機電子装置を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、薄型化して可撓性を有するディスプレイパネルにも適用することができる感圧性粘着フィルム、及びこれを含む有機電子装置を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の目的は、以上で言及した目的に制限されず、言及していない本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解することができ、本発明の実施例によってより明らかに理解することができる。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示した手段及びその組み合わせによって実現できることが分かりやすい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記技術的課題を解決するための観点で、本発明の一態様によれば、360~380nm領域の紫外線透過率が、3%以下である第1粘着層;及び可視光領域の全光透過率が、95%以上である第2粘着層;を含み、可視光領域の全光透過率が、40~95%である感圧性粘着フィルムを提供することができる。
【0011】
前記感圧性粘着フィルムは、可視光領域の全光透過率が40~80%であり、ヘーズは、1%以下であってもよい。
【0012】
前記第1粘着層は、アクリル系樹脂、遮光性粒子、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、および硬化剤を含む溶媒型(solvent-type)第1粘着組成物で形成することができ、前記アクリル系樹脂100重量部に対し、前記遮光性粒子を0.1~1.1重量部、前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を14.0~17.5重量部、および硬化剤を0.07~0.20重量部で含むことができる。
【0013】
前記第1粘着組成物は、酸化防止剤をさらに含むことができる。
【0014】
前記遮光性粒子は、黒色有機顔料の粒子、黒色無機顔料の粒子及び黒色染料からなる群より選択される1種以上を含むことができる。
【0015】
前記遮光性粒子は、カーボンブラックの粒子を含むことができる。
【0016】
前記カーボンブラックの粒子は、平均粒子の大きさが0.1~2μmであってもよい。
【0017】
前記第1粘着層の厚さは、1~50μmであってもよい。
【0018】
前記第2粘着層は、アクリル系樹脂及びウレタンアクリル系樹脂のうち1種以上を含み、溶媒を含んでいない無溶媒型(solvent-less type)第2粘着組成物で形成されてもよい。
【0019】
前記第2粘着組成物は、光開始剤をさらに含むことができる。
【0020】
前記第2粘着層は、厚さが1~250μmであってもよい。
【0021】
前記感圧性粘着フィルムは、下記の測定方法に従って測定された黄変指数(YI)が、2.0以下であってもよい。
【0022】
[測定方法]
COH-300A分光色差計を用いて黄変指数(YI)を測定し、測定波長は、550nmであり、23℃及び50%RHの環境で測定した。
【0023】
前記黄変指数(YI)は、1.0以下であってもよい。
【0024】
前記感圧性粘着フィルムの総厚は、50~300μmであってもよい。
【0025】
前記第1粘着層及び第2粘着層は、接触した面ではない、一面又は両面に配置された離型フィルムをさらに含むことができる。
【0026】
本発明の他の一態様によれば、本発明の一態様による感圧性粘着フィルムを含むディスプレイパネル(display panel)を提供することができる。
【0027】
本発明のさらに他の一態様によれば、本発明の一態様による感圧性粘着フィルムを含むディスプレイパネルを備える有機電子装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の感圧性粘着フィルムは、光透過率を調節することができるような遮光性を有することから、光反射及び光漏れの問題を防止して、視認性を向上させる効果も共に奏することができる。
【0029】
また、本発明の感圧性粘着フィルムは、光透過率の調節特性に優れるだけでなく、黄変指数(YI)及びヘーズを同時に低くすることができる。
【0030】
また、本発明の感圧性粘着フィルムは、基材のない構造で提供されてもよいため、薄型化して可撓性を有するディスプレイパネルへの適用性に優れている。
【0031】
上述した効果並びに本発明の具体的な効果は、以下の発明を実施するための形態を説明すると共に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の一態様による感圧性粘着フィルムの断面図を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
前述した目的、特徴及び長所は、添付の図面を参照して詳細に後述され、これによって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術思想を容易に実施することができる。本発明を説明することにおいて、本発明に係る公知の技術に対する具体的な説明が、本発明の要旨を曖昧にすると判断される場合には詳細な説明を省略する。以下では、添付の図面を参照して、本発明による好ましい実施例を詳説することとする。図面における同じ参照符号は、同一又は類似の構成要素を示すために使われる。
【0034】
本明細書で記載していない内容のうち、この技術分野の通常の技術者にとって技術的に十分類推できることは、その説明を省略することとする。
【0035】
本明細書における構成要素の「上部(又は下部)」又は構成要素の「上(又は下)」に任意の構成が配されるということは、任意の構成が、上記構成要素の上面(又は下面)に接して配されるだけでなく、上記構成要素と、上記構成要素上に(又は下に)配された任意の構成との間に他の構成が介在し得ることを意味する。
【0036】
本明細書で使われる単数の表現は、文脈上明白に他に意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書における「含有する」、「有する(持つ)」又は「含む」等の用語は、明細書上に記載の様々な構成要素を必ずしも全て含むと解釈されてはならず、そのうち一部の構成要素は、含まれなくてもよく、若しくはさらなる構成要素をさらに含んでいてもよいと解釈しなければならない。
【0037】
本明細書で使われる透過率、ヘーズ等の光学的特性の数値は、「平均値」を意味すると解釈しなければならない。
【0038】
本明細書において、単位「重量部」は、各成分間の重量割合を意味し得る。
【0039】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0040】
本発明の一態様による感圧性粘着フィルムは、360~380nm領域(いわゆる、UVA領域)の紫外線透過率が、3%以下である第1粘着層;及び可視光領域の全光透過率が、95%以上である第2粘着層;を含み、可視光領域の全光透過率が、40~95%であることを特徴とし、以下では、本発明による感圧性粘着フィルムについて詳説することとする。
【0041】
<第1粘着層>
上述したように、本発明の感圧性粘着フィルムの第1粘着層は、360~380nm領域の紫外線透過率が、3%以下であるのが好ましく、1%以下であるのがより好ましい。もし、360~380nm領域の紫外線透過率が、3%を超えると、紫外線によりディスプレイ(display)性能を具現する有機物質の寿命を低下させる問題点があり得る。
【0042】
前記第1粘着層を形成するための第1粘着組成物は、溶媒を含有し得る溶媒型(solvent-type)粘着組成物でありながら、熱硬化性粘着組成物であるのが好ましい。前記第1粘着組成物は、アクリル系樹脂、遮光性粒子、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、および硬化剤を含むことができる。このとき、前記アクリル系樹脂100重量部に対し、前記遮光性粒子を0.1~1.1重量部、前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を14.0~17.5重量部、及び硬化剤を0.07~0.20重量部で含むことができる。
【0043】
前記第1粘着組成物は、安定性を向上させるために酸化防止剤をさらに含むことができる。このとき、前記アクリル系樹脂100重量部に対し、前記酸化防止剤を0.2~5.5重量部で含むのが好ましく、0.8~3.0重量部で含むのがさらに好ましい。
【0044】
前記第1粘着組成物は、主剤樹脂としてアクリル系樹脂を含み、当業界において、溶媒型(solvent type)粘着組成物における粘着樹脂として用いられるものであれば、特に制限されるものではない。例えば、単官能性(メタ)アクリレート樹脂、多官能性(メタ)アクリレート樹脂、又はこれらの組み合わせを含むことができ、アクリル系樹脂を重合し得る様々なアクリルモノマーの重合体樹脂であってもよい。
【0045】
例えば、第1粘着組成物のアクリル系樹脂は、アルキル基含有(メタ)アクリレート樹脂を含むことができ、前記アルキル基含有(メタ)アクリレート樹脂としては、ブチルアクリレート(BA)モノマー、2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)モノマー、及びβ-カルボキシエチルアクリレートモノマーからなる群より選択される1種以上のアクリルモノマーの重合体樹脂であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0046】
本発明の第1粘着層は、360~380nm領域の紫外線透過率が、3%以下になれるように、第1粘着組成物は、遮光性粒子及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有することを特徴とする。
【0047】
前記第1粘着組成物のアクリル系樹脂100重量部を基準とするとき、例えば、前記遮光性粒子は、0.1~1.1重量部で含むのが好ましく、0.5~0.8重量部で含むのがより好ましいのの、これに限定されるものではなく、用いる遮光性粒子の特性によって含量を適宜調節することができる。
【0048】
例えば、前記遮光性粒子は、黒色有機顔料の粒子、黒色無機顔料の粒子及び黒色染料からなる群より選択される1種以上を含むことができる。好ましくは、遮光性粒子としてカーボンブラックの粒子を含むことができる。前記カーボンブラックの粒子は、適宜な光遮断性及び粘着組成物内での分散性をいずれも達成することができるように、平均粒子の大きさは、0.1~2μmであるのが好ましく、0.1~1.5μmであるのがさらに好ましく、0.1~1.0μmであるのが最も好ましい。
【0049】
本発明の第1粘着層は、360~380nm領域の紫外線透過率の吸収率に優れており、光安定性及び熱安定性を示すように、第1粘着組成物にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含むことができる。
【0050】
本発明の第1粘着組成物のアクリル系樹脂100重量部を基準とするとき、例えば、前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、14.0~17.5重量部で含むのが好ましく、15.0~16.8重量部で含むのがより好ましいものの、これに限定されるものではない。
【0051】
本発明の第1粘着組成物は、溶媒を含有する溶媒型粘着組成物であって、通常に粘着層を形成する粘着組成物に用いられる溶媒であれば、制限なく用いることができる。好ましくは、水系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミン系溶媒、エステル系溶媒、アセテート系溶媒、アミド系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、およびフラン系溶媒からなる群より選択された1種以上を含むことができ、より好ましくは、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミン系溶媒、エステル系溶媒、アセテート系溶媒、およびエーテル系溶媒からなる群より選択された1種以上を含むことができる。最も好ましくは、メチルエチルケトンであってもよい。前記溶媒は、アクリル系樹脂100重量部に対して20~60重量部、好ましくは、25~55重量部で含まれてもよいものの、これに制限されるものではない。
【0052】
本発明の第1粘着層を形成するための第1粘着組成物は、溶媒型粘着組成物であるため、遮光性粒子を良く分散させることができる点で有利であり、一般に厚さは、1~50μmの範囲で形成することができる。
【0053】
以下、表2に記載した本発明の参考例1及び2から分かるように、第1粘着層の厚さが50μmを超えると、ヘーズが1%よりも高くなるため、光学的特性を満たすことができなくなるからである。
【0054】
もし、感圧性粘着フィルムに要求される全厚さが、50μm以下である場合、前記第1粘着層のみでも製造することができるが、一般には、50μmを超える厚さが要求されるため、これら限界点は、以下で説明する第2粘着層を貼り合わせることで解決することができる。
【0055】
本発明の第1粘着組成物は、熱硬化性粘着組成物であるため、本発明の効果を達成することができる範囲内で、必要に応じて、添加剤として当業界における一般に添加する熱開始剤、硬化促進剤、粘着付与剤等をさらに含むことができるものの、これに限定されるものではない。
【0056】
<第2粘着層>
本発明の感圧性粘着フィルムの第2粘着層は、溶媒を含有していない無溶媒型(non-solvent type)でありながら、紫外線硬化性である第2粘着組成物で形成されることを特徴とする。
【0057】
前記第1粘着層は、溶媒型粘着組成物で形成されるため、遮光性粒子を分散させるためには有利であったが、50μmを超える厚さで形成するには問題点があった。
【0058】
これを解決するために、本発明者らは、厚い厚さの粘着フィルムを要求する様々なディスプレイ装置に適用することができるように、第2粘着層を第1粘着層に貼り合わせることで、本発明の感圧性粘着フィルムを完成した。
【0059】
具体的に、本発明の第2粘着層を形成するための剤2粘着組成物は、無溶媒型であって、高い厚さを具現することが容易であり、光学透明粘着剤(OCA)フィルムの特性を有するように、優れた光学的特性を具現することもできる。
【0060】
よって、本発明の第2粘着層は、光学透明粘着剤(OCA)フィルムとして機能することができるように、可視光領域の全光透過率は、95%以上であるのが好ましく、98%以上であるのがより好ましく、第2粘着層は、厚さが1~250μmであるのが好ましい。
【0061】
本発明の第2粘着組成物は、主剤樹脂として、アクリル系樹脂及びウレタンアクリル系樹脂のうち1種以上を含むことができ、本発明における第2粘着組成物に含まれてもよい主剤樹脂は、当業界において、無溶媒型粘着組成物における粘着樹脂として用いられるものであれば、特に制限されるものではない。
【0062】
例えば、前記第2粘着組成物のアクリル系樹脂は、(メタ)アクリレートモノマー、アルキル基含有(メタ)アクリレートモノマー、作用基(カルボキシ基又はヒドロキシ基)含有(メタ)アクリレートモノマーからなる群より選択される1種以上のアクリルモノマーの重合体樹脂であってもよく、好ましくは、アルキル基含有(メタ)アクリレートモノマー及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートモノマーの重合体樹脂であってもよい。
【0063】
また、前記アルキル基含有(メタ)アクリレートモノマーは、ブチルアクリレート(BA)モノマー、2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)モノマー、イソボルニルメタクリレート(IBOA)モノマー等であってもよく、これに限定されるものではない。
【0064】
また、前記作用基含有(メタ)アクリレートモノマーは、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)モノマー、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4-HBA)モノマー、β-カルボキシエチルアクリレートモノマー等であってもよく、これに限定されるものではない。
【0065】
また、第2粘着組成物のウレタンアクリル系樹脂は、当業界における有機電子装置用の感圧性粘着フィルムの粘着樹脂として用いられるものであれば、特に制限されるものではない。例えば、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、1、2-ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、1、4-ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、これら各々の親水性基置換物、これら各々の水素添加物、又はこれらの組み合わせを含むことができる。前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、ポリイソシアネート、ポリオール及び(メタ)アクリル酸を反応させて製造されたものであってもよい。
【0066】
本発明の第2粘着組成物は、紫外線硬化型粘着組成物であるため、本発明の効果を達成することができる範囲内で、必要に応じて、添加剤として、当業界における一般に添加する硬化剤、光開始剤、硬化促進剤、粘着付与剤等をさらに含むことができるものの、これに限定されるものではない。
【0067】
例えば、本発明の第2粘着組成物は、光硬化型粘着組成物であって、光開始剤を含むのが好ましく、前記光開始剤は、第2粘着組成物の主剤樹脂100重量部を基準に、0.01~5.0重量部で含むことができる。
【0068】
<感圧性粘着フィルム>
図1に示されたように、本発明の感圧性粘着フィルム100は、溶媒型である第1粘着層10と、前記第1粘着層10の一面に積層された無溶媒型である第2粘着層20と、を含む2層構造であってもよい。また、前記第1粘着層10及び前記第2粘着層20は、接触した面ではない、一面又は両面に配置された離型フィルム30をさらに含むことができる。
【0069】
このように、溶媒型第1粘着層及び無溶媒型第2粘着層を混合して適用することにより、従来技術のように、単層粘着層を含む感圧性粘着フィルムが有していた限界を克服することができた。言い換えれば、溶媒型第1粘着層及び無溶媒型第2粘着層の各長所を保持し、かつ、各短所は補う効果を期待することができる。
【0070】
具体的に、本発明の感圧性粘着フィルムは、ディスプレイパネルの光学的特性に優れるように具現しつつ、光反射防止性能を付与するための観点で、可視光領域の全光透過率は、40~95%であるのが好ましく、40~80%であるのがより好ましく、ヘーズは、1%以下であってもよい。
【0071】
また、本発明の感圧性粘着フィルムは、フィルムの黄色度合いが高い場合、有機電子装置のディスプレイパネルにおけるtrue blackの色感を具現し難いという問題点がある。よって、本発明の感圧性粘着フィルムは、優れた色感を具現することができように、ASTM D1925に基づいて測定される黄変指数(又は黄色指数)(YI)の値を特定した。黄変指数(YI)は、陽(+)の値に大きくなるほど、黄色度合いが高くなることを意味する。
【0072】
よって、本発明の感圧性粘着フィルムは、下記の測定方法に従って測定された黄変指数(YI)が、好ましくは、2以下であってもよく、より好ましくは、1以下であってもよいことを特徴とする。
【0073】
[測定方法]
COH-300A分光色差計を用いて黄変指数(YI)を測定し、測定波長は、550nmであり、23℃及び50%RHの環境で測定した。
【0074】
本発明の感圧性粘着フィルムは、適用される対象ディスプレイパネルによって厚さを調節することができる。もし、感圧性粘着フィルムに要求される全厚さが、50μm以下である場合、前記第1粘着層のみでも製造することができるが、一般に、50μm以上の厚さが要求されるところ、例えば、本発明の感圧性粘着フィルムの厚さは、好ましくは、50~300μm、さらに好ましくは、100~250μm、最も好ましくは、150~250μmであってもよい。
【0075】
以下では、本発明の好ましい実施例によって本発明の構成及び作用をより詳説することとする。ただし、これは、本発明の好ましい例示として提示されたものであり、どの意味でもこれによって本発明が制限されると解釈されてはならない。
【0076】
[製造例]
製造例1-第1粘着層の製造
第1粘着組成物の第1主剤樹脂として、重量平均分子量が380,000g/molであるポリブチルメタクリレート樹脂(愛敬化学、P-180)を準備した。
【0077】
前記第1主剤樹脂100重量部に対して、カーボンブラック分散液(WOOKSUNG化学、CBK-1713H;平均粒子の大きさ0.461μm)を0.75重量部、エポキシ硬化剤としてN,N,N,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン(愛敬化学、X-500)を0.11重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASF、T-99-2)を16.5重量部、酸化防止剤としてIrganox 1010(BASF)を1.4重量部、および溶媒としてメチルエチルケトンを32重量部で混合して、第1粘着組成物を製造した。
【0078】
PET基材にシリコン離型処理された中剥離(middle-release)離型フィルム上に、前記第1粘着組成物を塗布した後、完全硬化させて(熱硬化)、目的とする厚さに第1粘着層を製造した。
【0079】
製造例2-第2粘着層の製造
第2粘着組成物の第2主剤樹脂として、2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)モノマー、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)モノマー、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4-HBA)モノマー、イソボルニルメタクリレート(IBOA)をランダム共重合して得ており、構成された重量平均分子量が400,000g/molのアクリレート樹脂(愛敬化学、LHS)を準備した。
【0080】
前記第2主剤樹脂100重量部に対して、光開始剤1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(1-Hydroxy-cyclohexyl-phenyl-ketone)(LSケム、Irggacure 184)を0.5重量部で混合して、第2粘着組成物を製造した。
【0081】
PET基材にシリコン離型処理された軽剥離(light-release)離型フィルム上に、前記第2粘着組成物を塗布した後、中剥離(middle-release)離型フィルムで覆った後、完全硬化させて(紫外線硬化)、目的とする厚さに第1粘着層を製造した。
【0082】
[実施例1及び2]-第1粘着層及び第2粘着層の2層構造の感圧粘着フィルムを製造
実施例1
前記第1粘着層の軽剥離離型フィルム及び第2粘着層の軽剥離離型フィルムをそれぞれ除去した後、前記第1粘着層(厚さ:26μm)及び第2粘着層(厚さ:175μm)を互いに接して配置し、常温で、ロールラミネートで貼り合わせて、実施例1による感圧性粘着フィルム(総厚:201μm)を製造した。
【0083】
実施例2
上記実施例1と同様、感圧性粘着フィルムを製造するものの、前記第1粘着層の厚さを49μmとし、前記第2粘着層の厚さを152μmとして製造したことだけ異なっている。
【0084】
[参考例1及び2、比較例1~3]-第1粘着層のみ用いて感圧性粘着フィルムを製造
製造例1で製造した第1粘着層のみを用いるものの、下記表2のように、第1粘着層の厚さ及び積層する層数を異にして、参考例1及び2と比較例1~3の感圧性粘着フィルムをそれぞれ製造した。
【0085】
[比較例4~10]-第2粘着層のみ用いて感圧粘着性フィルムを製造
製造例2で製造した第2粘着層のみを用いるものの、下記表3及び4のように、第2粘着層の厚さ及び第2粘着組成物の組成を異にして、比較例4~10の感圧性粘着フィルムをそれぞれ製造した。
【0086】
[実験例]
上記実施例1及び2、参考例1及び2、比較例1~10それぞれの感圧性粘着フィルムに対して、次のような実験例1~5に従って測定・観察し、下記表1~4に結果を示した。
【0087】
実験例1-ヘーズの測定
感圧性粘着フィルムの表面を無アルカリガラス(「Non-Akali Glass」、LCDテック)の厚さ0.5mmに積層し、温度23℃及び湿度50%RHの環境下で、30分間放置して、試験片を製作した。
【0088】
その後、無アルカリガラス(Airベース設定後の測定透過率:93.0%、Haze:0.1%)をReferenceと設定した後、試片の離型フィルムを除去して測定した。試験片のヘーズは、ヘーズメーター(装備名「NDH-7000」;NIPPON DENSHOKU製)を用いて、23℃及び50%RHの環境で測定した。ヘーズは、ASTM D1003に基づいて測定した。
【0089】
実験例2-可視光透過率の測定
実験例1と同様、感圧性粘着フィルムの試験片を製作した。
【0090】
その後、無アルカリガラス(Airベース設定後の360~740nm平均透過率:92.0%)をReferenceと設定した後、試片の離型フィルムを除去して測定した。試験片の透過率は、UV/VIS/NIR Spectrometer(装備名「Lambda 1050+」;PerkinElmer製)を用いて、23℃及び50%RHの環境で測定した。測定範囲は、360~740nm範囲に設定した後、interval 1nmとして測定し、平均数値を示した。
【0091】
実験例3-UVA透過率の測定
実験例1と同様、感圧性粘着フィルムの試験片を製作した。
【0092】
その後、無アルカリガラス(Airベース設定後の360~380nm平均透過率:91.0%)をReferenceと設定した後、試片の離型フィルムを除去して測定した。試験片の透過率は、UV/VIS/NIR Spectrometer(装備名「Lambda 1050+」、PerkinElmer製)を用いて、23℃及び50%RHの環境で測定した。測定範囲は、360~740nm範囲に設定した後、interval 1nmとして測定し、平均数値を示した。
【0093】
実験例4-黄変指数(Yellow Index;YI)の測定
実験例1と同様、感圧性粘着フィルムの試験片を製作した。
【0094】
試験片の黄変指数(YI)は、COH-300A分光色差計を用いて、23℃及び50%RHの環境で測定した。測定波長は、550nmであり、光源C、視野角を2度に設定した後、測定した。
【0095】
実験例5
上記実験例1~4のほか、製造された感圧性粘着フィルムに対して残留気泡の発生又は未反応モノマー(monomer)の残留有無を観察して、下記表1~4にその他事項に示した。
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
上記表1に示したように、本発明のように、溶媒型第1粘着層及び無溶媒型第2粘着層を貼り合わせて製造した実施例1及び2の感圧性粘着フィルムは、可視光透過率及びUVA領域の透過率が、本発明で目的とする範囲を満たしており、黄色指数及びヘーズがいずれも低くて、優れた効果を奏した。
【0101】
上記表2に記載したように、第1粘着層のみで形成された参考例1及び2は、本発明で目的とする可視光透過率、UVA領域の透過率、黄色指数、およびヘーズの値をいずれも満たしている。よって、50μm未満の厚さを目標として、感圧性粘着フィルムを製造する場合には、第1粘着層だけでも目的とする物性を具現することができることが分かった。しかし、比較例1~3から分かるように、第1粘着層の厚さを50μm超で形成するか、第1粘着層を複数の層に積層して製造する場合、ヘーズが1%を超えて、光学特性が低下し、残留気泡が生じる問題点が発生したが、第1粘着層のみでは厚さを増加させるのに限界点があった。
【0102】
上記表3及び4に示したように、第2粘着層のみで形成された比較例4~10の感圧性粘着フィルムは、可視光透過率又はUVA領域透過率が高過ぎるか、ヘーズが高くて、光学特性が低下するか、黄色指数が高い値を有し、本発明の目的とする特性を具現し難いことが確認できた。
【0103】
以上のように、本発明について例示した図面を参照して説明したが、本発明は、本明細書で開示の実施例と図面によって限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で通常の技術者によって様々な変形が行われることは自明である。さらに、本発明の実施例を前述しつつ、本発明の構成による作用効果を明示的に記載して説明しなかったとしても、該構成によって予測可能な効果も認めるべきであることは当然である。
【符号の説明】
【0104】
100 感圧性粘着フィルム
10 第1粘着層
20 第2粘着層
30 離型フィルム