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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】混合フリート対応潤滑組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 163/00 20060101AFI20240229BHJP
   C10M 159/24 20060101ALN20240229BHJP
   C10M 159/22 20060101ALN20240229BHJP
   C10M 137/10 20060101ALN20240229BHJP
   C10M 135/10 20060101ALN20240229BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20240229BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20240229BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20240229BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20240229BHJP
【FI】
C10M163/00
C10M159/24
C10M159/22
C10M137/10 A
C10M135/10
C10N10:04
C10N30:00 Z
C10N30:06
C10N40:25
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022201915
(22)【出願日】2022-12-19
(65)【公開番号】P2023092504
(43)【公開日】2023-07-03
【審査請求日】2023-01-31
(31)【優先権主張番号】17/557,828
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391007091
【氏名又は名称】アフトン・ケミカル・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス、ジルス
(72)【発明者】
【氏名】アバイゲアル、リッツェンターラー
(72)【発明者】
【氏名】レア、ドンハム
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-527750(JP,A)
【文献】特開2000-063876(JP,A)
【文献】国際公開第2016/152995(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/021559(WO,A1)
【文献】特開2020-164688(JP,A)
【文献】特開2015-218331(JP,A)
【文献】特開2010-254767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼル及びガソリンエンジンに好適な潤滑組成物であって、前記潤滑組成物が、
スルホネート、フェネート、サリチレート、又はそれらの混合物のうちの1つ以上からカルシウム及びマグネシウムの両方を提供する洗剤系であって、前記洗剤系によって提供されるカルシウム対マグネシウムの重量比は、1.5:1~2:1である、洗剤系と、
一級アルコール及び二級アルコールから誘導された2つ以上の金属ジアルキルジチオホスフェートを含む耐摩耗及び摩擦系であって、第1の金属ジアルキルジチオホスフェートは、一級アルコールから誘導され、第2の金属ジアルキルジチオホスフェートは、一級アルコールと二級アルコールとの混合物から誘導され、前記耐摩耗及び摩擦系において組み合わされた前記2つ以上の金属ジアルキルジチオホスフェートからの一級アルコール対二級アルコールの重量比は、少なくとも3:1~5.5:1である、耐摩耗及び摩擦系と、を含み、
前記洗剤系からのマグネシウムの量が、前記潤滑組成物に基づいて少なくとも500ppmのマグネシウムであり、
前記耐摩耗及び摩擦系からのリンの量が、前記潤滑組成物に基づいて1200ppm未満のリンであり、前記耐摩耗及び摩擦系からの亜鉛の量が、前記潤滑組成物に基づいて1000ppm未満の亜鉛である、潤滑組成物。
【請求項2】
前記洗剤系によって提供される前記カルシウムが、石炭酸カルシウム、スルホン酸カルシウム、若しくはそれらの混合物のうちの1つ以上によって、900~1500ppmのカルシウムを提供する量で、提供されるか、又は前記洗剤系が、50~70重量パーセントの石炭酸カルシウム、30~40重量パーセントのスルホン酸マグネシウム、及び0~10重量パーセントのスルホン酸カルシウムを含むか、又は前記洗剤系が、20~80のニートの全アルカリ価を有するスルホン酸カルシウムを含むか、又は前記洗剤系が、300~450のニートの全アルカリ価を有する石炭酸カルシウム、及び500~700のニートの全アルカリ価を有するスルホン酸マグネシウムを含むか、又は前記潤滑組成物が、2回の反復を使用するASTMD8291-21aに準拠したシーケンスIX低速プレイグニッション試験に準拠して、5回以下の平均イベント数を示す、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項3】
前記洗剤系が、60~70重量パーセントの前記石炭酸カルシウム、32~38重量パーセントの前記スルホン酸マグネシウム、及び1~4重量パーセントの前記スルホン酸カルシウムを含む、請求項2に記載の潤滑組成物。
【請求項4】
前記スルホン酸カルシウムが、50未満の全アルカリ価を有する、請求項3に記載の潤滑組成物。
【請求項5】
前記耐摩耗及び摩擦系が、2つの亜鉛ジアルキルジチオホスフェートを含むか、又は前記耐摩耗及び摩擦系が、過半量の一級アルコールから誘導された1つ以上の亜鉛ジアルキルジチオホスフェート添加剤を含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項6】
前記耐摩耗及び摩擦系が、一級アルコールから誘導された第1の亜鉛ジアルキルジチオホスフェート及び一級アルコールと二級アルコールとの混合物から誘導された第2の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートを含む、請求項5に記載の潤滑組成物。
【請求項7】
前記耐摩耗及び摩擦系が、一級アルコールから誘導された最大60重量パーセントの前記第1の亜鉛ジアルキルジチオホスフェート、及び一級アルコールと二級アルコールとの混合物から誘導された40~50重量パーセントの前記第2の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートを含む、請求項6に記載の潤滑組成物。
【請求項8】
一級アルコールと二級アルコールとの混合物から誘導された前記第2の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートが、50~70重量パーセントの一級アルコール及び30~50重量パーセントの二級アルコールから誘導されたものである、請求項7に記載の潤滑組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、混合フリート使用のために構成された添加剤系及び当該添加剤系を含む潤滑組成物、特に、圧縮点火ヘビーデューティー用途及び火花点火乗用車用途の両方の性能基準を満たすことができる潤滑組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車メーカーは、効率及び燃費の向上を求め続けており、そのため、エンジン、潤滑油、及びそれらの構成成分に対する需要は増加し続けている。今日の火花点火乗用車エンジンは、多くの場合、燃費、性能、及び出力を向上させるように設計された技術によって、より小型化、より軽量化、及びより効率化されている。一方、圧縮点火ヘビーデューティー用途のためのエンジンは、多くの場合、より重い負荷、ピーク出力時又はその近傍での運転、極端な条件、及び/又はより循環型の運転のために設計されているが、そのようなエンジンは、効率及び燃費を改善させるための厳しい基準を満たす必要がある。これらの要件はまた、エンジンオイルの性能が、そのような現代のエンジンのより高い要求と、それらのユニークな使用及び用途に関連付けられたそれらの対応する性能基準と、を満たすように進化しなければならないことも意味している。エンジンオイルに対するそのような厳しい要求により、潤滑剤メーカーは、多くの場合、ユニークな各用途のために、特定の性能要件を満たすように、圧縮点火ヘビーデューティーエンジンのために構成された流体又は乗用車のために構成された流体などの潤滑剤及びそれらの添加剤を調整する。典型的には、各用途には特異的な性能基準が必要であるため、ある用途のために設計された潤滑剤が、異なる用途の全ての性能仕様を満たすわけではない。
【0003】
例えば、米国石油協会(American Petroleum Institute、API)は、様々な乗用自動車メーカーのニーズ及び性能特性を満たすように設計された乗用車モーターオイルに関する基準を設定している。API基準の最近の更新には、所望の点火の前に燃焼室において空燃混合気の点火をもたらす燃焼の形態であると考えられる低速プレイグニッション(又はlow-speed pre-ignition、LSPI)として典型的に特徴付けられる望ましくない現象に関する性能試験が含まれている。多くの場合、ターボチャージャー付き又はスーパーチャージャー付きのエンジンは、高圧スパイク、早期燃焼、及び/又はノックを含み得るプレイグニッションイベントであるLSPIを起こしやすい傾向がある。スパークプラグが発火する前に燃焼室において時期尚早な点火が発生すると、異常燃焼及び高いシリンダー圧を引き起こす場合がある。LSPIイベントは、シリンダー中の制御されていない圧力上昇から、ノッキング音又は他の異常な特徴を引き起こす可能性がある。LSPIイベントは、望ましくなく、最近のAPI仕様は、乗用車モーターオイルのLSPI性能基準を設定している。
【0004】
一方、ヘビーデューティーディーゼルエンジンなどの圧縮点火ヘビーデューティーエンジン用途のために設計された潤滑剤は、トラックエンジン、フリートオペレータ、採掘施設、及び建設機械エンジンに関する適合性に重点を置いて、いくつかの用途外の用途を提案する傾向がある。したがって、そのような用途のための流体は、多くの場合、典型的な乗用車とは異なる性能特性に重点を置いている。例えば、ヘビーデューティーな使用のための潤滑剤は、多くの場合、ディーゼルエンジンでよく使用され、よりヘビーデューティー用途に固有であり得るスス及び/又はスラッジ制御によって摩擦及び粘度性能を維持するように構成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、火花点火乗用車のモーターオイルには、圧縮点火ヘビーデューティー用途と比較して、ユニークな独自の性能要件があるため、1つの用途のために設計された流体は、他の用途のための性能基準を必ずしも満たすとは限らない。例えば、火花点火乗用車基準のために設計された潤滑剤は、圧縮点火ヘビーデューティー用途のための摩擦要件を必ずしも満たすとは限らず、また圧縮点火ヘビーデューティー用途のための流体は、火花点火乗用車用途のためのLSPI性能基準を必ずしも満たさない。
【0006】
1つのアプローチ又は実施形態において、圧縮点火のヘビーデューティー用途及び火花点火エンジンに好適な潤滑組成物。一態様では、潤滑組成物は、スルホネート、フェネート、サリチレート、又はそれらの混合物のうちの1つ以上からカルシウム及びマグネシウムの両方を提供する洗剤系と、一級及び二級アルコールに誘導された1つ以上の金属ジアルキルジチオホスフェートを含む耐摩耗及び摩擦系と、を含み、耐摩耗及び摩擦系における一級アルコール対二級アルコールの重量比は、少なくとも約3:1であり、洗剤系からのマグネシウムの量は、潤滑組成物に基づいて少なくとも500ppmのマグネシウムであり、耐摩耗及び摩擦系からのリンの量は、潤滑組成物に基づいて1200ppm未満のリン(他のアプローチ又は実施形態では、1000ppm未満のリン又は800ppm未満のリン)であり、耐摩耗及び摩擦系からの亜鉛の量は、潤滑組成物に基づいて、1000ppm未満の亜鉛である。
【0007】
他の実施形態又はアプローチでは、組成物は、任意の組成物中に、任意選択の実施形態又は特徴を含み得る。そのような任意選択の特徴又は実施形態は、洗剤系によって提供されるカルシウムは、石炭酸カルシウム、スルホン酸カルシウム、若しくはそれらの混合物のうちの1つ以上によって、約900~約1500ppmのカルシウムを提供する量で、提供され、並びに/又は洗剤系によって提供されるカルシウム対マグネシウムの重量比は、約1.5:1~約2:1であり、並びに/又は洗剤系は、約50~約70重量パーセントの石炭酸カルシウム、約30~約40重量パーセントのスルホン酸マグネシウム、及び0~約10重量パーセントのスルホン酸カルシウムを含み、並びに/又は洗剤系は、約60~約70重量パーセントの石炭酸カルシウム、約32~約38重量パーセントのスルホン酸マグネシウム、及び約1~約4重量パーセントのスルホン酸カルシウムを含み、並びに/又はスルホン酸カルシウムは、50未満の全アルカリ価を有し、並びに/又は耐摩耗及び摩擦系は、2つの亜鉛ジアルキルジチオホスフェートを含み、並びに/又は耐摩耗及び摩擦系は、一級アルコールから誘導された第1の亜鉛ジアルキルジチオホスフェート及び一級アルコールと二級アルコールとの混合物から誘導された第2の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートを含み、並びに/又は耐摩耗及び摩擦系は、過半量の一級アルコールから誘導された1つ以上の亜鉛ジアルキルジチオホスフェート添加剤を含み、並びに/又は耐摩耗及び摩擦系は、一級アルコールから誘導された最大約60重量パーセントの第1の亜鉛ジアルキルジチオホスフェート、及び一級アルコールと二級アルコールとの混合物から誘導された約40~約50重量パーセントの第2の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートを含み、並びに/又は一級アルコールと二級アルコールとの混合物から誘導された第2の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートは、約50~約70重量パーセントの一級アルコール及び約30~約50重量パーセントの二級アルコールから誘導されたものであり、並びに/又は洗剤系は20~80のニートの全アルカリ価を有するスルホン酸カルシウムを含み、並びに/又は洗剤系は、300~450のニートの全アルカリ価を有する石炭酸カルシウム、及び約500~約700のニートの全アルカリ価を有するスルホン酸マグネシウムを含み、並びに/又は潤滑組成物の全アルカリ価は、約15未満(他のアプローチでは、約12未満、若しくは更には約10未満)であり、並びに/又はポリオレフィン、オレフィンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン-イソプレンポリマー、スチレン/マレイン酸エステルコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンコポリマー、水素化イソプレンポリマー、アルファ-オレフィン無水マレイン酸コポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、水素化アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、若しくはそれらの混合物から選択される粘度調整剤添加剤を更に含み、並びに/又は潤滑組成物は約9重量パーセント以下の粘度調整剤添加剤を含み、並びに/又は潤滑組成物は、2回の反復を使用するASTM D8291-21aに準拠したシーケンスIX低速プレイグニッション試験に準拠して、5回以下の平均イベント数を示し、並びに/又は潤滑組成物は、アリソン・トランスミッション摩擦試験TES-439(2010年11月)に準拠をして、約10パーセント以下の、初期スリップ時間からの絶対値パーセント変化、及びアリソン・トランスミッション摩擦試験TES-439(2010年11月)に準拠して、10パーセント以下の、初期摩擦係数(中央値)からの絶対値パーセント変化を有する、のうちの1つ以上を含む。
【0008】
別の実施形態では、API SP、API CK-4、及びAPI FA-4 認定に適合する潤滑組成物でエンジンを潤滑する方法。いくつかの態様では、この方法は、潤滑組成物でエンジンを潤滑することを含み、その潤滑組成物は、スルホネート、フェネート、サリチレート、又はそれらの混合物のうちの1つ以上からのカルシウム及びマグネシウムの両方を提供する洗剤系と、一級アルコール及び二級アルコールから誘導された1つ以上の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートを含む耐摩耗及び摩擦系とを含み、耐摩耗及び摩擦系における一級アルコール対二級アルコールの重量比は少なくとも約3:1であり、洗剤系からのマグネシウムの量は、潤滑組成物に基づいて500ppm超のマグネシウムであり、耐摩耗及び摩擦系からのリンの量は、潤滑組成物に基づいて1200ppm未満のリン(他の実施形態では、1000ppm未満のリン又は800ppm未満のリン)であり、耐摩耗系からの亜鉛の量は、潤滑組成物に基づいて、1000ppm未満の亜鉛であり、潤滑組成物は、2回の反復を使用するASTM D8291-21aに準拠したシーケンスIX低速プレイグニッション試験に準拠して、5回以下の平均イベント数を示し、潤滑組成物は、アリソン・トランスミッション摩擦試験TES-439(2010年11月)に準拠して、約10パーセント以下の、初期スリップ時間からの絶対値パーセント変化、及びアリソン・トランスミッション摩擦試験TES-439(2010年11月)に準拠して、10パーセント以下の、初期摩擦係数(中央値)からの絶対値パーセント変化を有する。
【0009】
他の実施形態又はアプローチでは、方法は、任意の組成物において、任意選択の実施形態、ステップ、又は特徴を含み得る。そのような任意選択の特徴、ステップ、又は実施形態は、洗剤系によって提供されるカルシウムは、石炭酸カルシウム、スルホン酸カルシウム、若しくはそれらの混合物のうちの1つ以上によって、約900~約1500ppmのカルシウムを提供する量で、提供され、並びに/又は洗剤系によって提供されるカルシウム対マグネシウムの重量比は、約1.5:1~約2:1であり、並びに/又は洗剤系は、約50~約70重量パーセントの石炭酸カルシウム、約30~約40重量パーセントのスルホン酸マグネシウム、及び約0~約10重量パーセントのスルホン酸カルシウムを含み、並びに/又は洗剤系は、約60~約70重量パーセントの石炭酸カルシウム、約32~約38重量パーセントのスルホン酸マグネシウム、及び約1~約4重量パーセントのスルホン酸カルシウムを含み、並びに/又はスルホン酸カルシウムは、50未満の全アルカリ価を有し、並びに/又は耐摩耗及び摩擦系は、一級アルコールから誘導された第1の亜鉛ジアルキルジチオホスフェート及び一級アルコールと二級アルコールとの混合物から誘導された第2の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートを含み、並びに/又は耐摩耗及び摩擦系は、過半量の一級アルコールから誘導された1つ以上の亜鉛ジアルキルジチオホスフェート添加剤を含み、並びに/又は耐摩耗及び摩擦系は、一級アルコールから誘導された最大約60重量パーセントの第1の亜鉛ジアルキルジチオホスフェート、及び一級アルコールと二級アルコールとの混合物から誘導された約40~約50重量パーセントの第2の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートを含み、並びに/又は一級アルコールと二級アルコールとの混合物から誘導された第2の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートは、約50~約70重量パーセントの一級アルコール及び約30~約50重量パーセントの二級アルコールから誘導され、並びに/又は洗剤系は20~80のニートの全アルカリ価を有するスルホン酸カルシウムを含み、並びに/又は洗剤系は、300~450のニートの全アルカリ価を有する石炭酸カルシウム、及び約500~約700のニートの全アルカリ価を有するスルホン酸マグネシウムを含む、のうちの1つ以上を含む。
【0010】
更に他の実施形態では、本開示は、API SP、API CK-4、及びAPI FA-4 認定のためのこの発明の概要の潤滑組成物の任意の実施形態を使用すること、特に、2回の反復を使用するASTM D8291-21aに準拠したシーケンスIX低速プレイグニッション試験に準拠して、5回を超える平均イベント数を達成すること、並びにアリソン・トランスミッション摩擦試験TES-439(2010年11月)に準拠して、約10パーセント以下の、初期スリップ時間からの絶対値パーセント変化、及びアリソン・トランスミッション摩擦試験TES-439(2010年11月)に準拠して、10パーセント以下の、初期摩擦係数(中央値)からの絶対値パーセント変化を達成することを提供する。
【0011】
本開示の他の実施形態は、本明細書に開示した発明の明細書及び発明の実施を考慮すれば、当業者には明らかであろう。以下の用語の定義は、本明細書で使用される特定の用語の意味を明確にするために提供する。
【0012】
「潤滑油」、「潤滑剤組成物」、「潤滑組成物」、「潤滑剤」、及び「潤滑流体」という用語は、過半量の基油と半量未満の添加剤組成物とを含む最終潤滑製品を指している。
【0013】
本明細書で使用される場合、「添加剤パッケージ」、「添加剤濃縮物」、又は「添加剤組成物」という用語は、過半量の基油を除いた潤滑油組成物の部分を指している。
【0014】
本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビル置換基」又は「ヒドロカルビル基」という用語は、その通常の意味で使用され、当業者には既知である。具体的には、それは、分子の残りの部分に直接結合した炭素原子を有し、かつ主に炭化水素の特徴を有する基を指す。各ヒドロカルビル基は、炭化水素置換基と、ハロ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ピリジル基、フリル基、イミダゾリル基、酸素、及び窒素のうちの1つ以上を含有する置換炭化水素置換基と、から独立して選択され、2個以下の非炭化水素置換基は、ヒドロカルビル基中の炭素原子10個ごとに存在する。
【0015】
本明細書で使用する場合、「重量パーセント」又は「重量%」という用語は、別段の断りがない限り、列挙した成分の組成物全体の重量に対して表す百分率を意味している。本明細書の全てのパーセント数は、別段の指定がない限り、重量パーセントである。
【0016】
本明細書で使用される「可溶性」、「油溶性」、又は「分散性」という用語は、化合物又は添加剤が、全ての割合で油中に可溶性、溶解性、混和性、又は懸濁可能であることを示し得るが、必ずしもそうではない。しかしながら、前述の用語は、それらが、例えば、油が用いられる環境においてそれらの意図された効果を発揮するのに十分な程度まで油中に可溶性、懸濁性、溶解性、又は安定して分散性であることを意味している。更に、所望ならば、他の添加剤を更に組み込むと、より高いレベルの特有な添加剤を組み込むことも可能になり得る。
【0017】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、約1~約200個の炭素原子の直鎖、分岐鎖、環状、及び/又は置換飽和鎖部分を指している。本明細書で使用される場合、「アルケニル」という用語は、約3~約30個の炭素原子の直鎖、分岐鎖、環状、及び/又は置換飽和鎖部分を指している。本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキルアリール、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロ置換基、及び/又はヘテロ原子、例えば、限定するものではないが窒素及び酸素を含み得る単環及び多環芳香族化合物を指している。
【0018】
本明細書で使用される場合、分子量は、市販のポリスチレン標準(較正基準として約180~約18,000のMnを有する)を使用してゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)によって測定される。本明細書の任意の実施形態の数平均分子量(number average molecular weight、Mn)は、Watersから入手したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)機器又は同様の機器及びWaters Empower Software又は同様のソフトウェアで処理されたデータによって決定され得る。GPC機器には、ウォーターズ分離モジュール及びウォーターズ屈折率検出器(又は同様の任意選択的な機器)を設けることができる。GPC操作条件は、ガードカラム、4つのAgilent PLgelカラム(長さ300×7.5mm、粒子サイズ5μ、及び細孔サイズの範囲100~10000Å)、カラム温度は約40℃であり得る。非安定化HPLCグレードのテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)は、1.0mL/分の流量で溶媒として使用され得る。GPC機器は、500~380,000g/molの範囲の狭い分子量分布を有する市販のポリスチレン(polystyrene、PS)標準で較正され得る。較正曲線は、500g/mol未満の質量を有する試料について外挿することができる。試料及びPS標準は、THFに溶解し、0.1~0.5重量パーセントの濃度で調製することができ、濾過せずに使用することができる。GPC測定は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,266,223号にも記載されている。GPC法は、更に分子量分布情報を提供する。例えば、参照により本明細書に組み込まれるW.W.Yau,J.J.Kirkland and D.D.Bly,「Modern Size Exclusion Liquid Chromatography」,John Wiley and Sons,New York,1979も参照されたい。
【0019】
本開示全体を通して、用語「含む(comprises)」、「含む(includes)」、「含有する(contains)」などは、オープンエンドであると考えられ、明示的に列挙されていない任意の要素、ステップ、又は配合成分を含むことを理解すべきである。「から本質的になる」という句は、任意の明示的に列挙された要素、ステップ、又は配合成分、及び本発明の基本的及び新規の態様に実質的に影響を及ぼさない任意の追加の要素、ステップ、又は配合成分を含むことを意味している。本開示はまた、用語「含む(comprises)」、「含む(includes)」、「含有する(contains)」を使用して記載される任意の組成物は、具体的に列挙されたその成分「から本質的になる(consisting essentially of)」又は「からなる(consisting of)」同じ組成物の開示を含むものとして解釈されるべきであることも企図している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
一態様では、本開示は、混合フリート使用に好適な、及び/又は混合フリート使用のために構成されたそのような添加剤を含む潤滑添加剤及び潤滑剤、例えば、典型的な火花点火乗用車潤滑剤に関する性能基準、並びに典型的な圧縮点火ヘビーデューティーエンジン用途に好適な潤滑剤に関する性能基準を満たすユニークな添加剤及び潤滑剤を記載する。したがって、本明細書の流体は、状況に応じて必要とされる一方若しくは両方の用途に対応できるように構成された、及び/又は一方若しくは両方の用途において使用できる混合フリートである。
【0021】
他のアプローチにおいて、本明細書に記載の潤滑組成物は、ディーゼル及びガソリンエンジン用途において好適である。潤滑組成物は、少なくとも、潤滑粘度の基油と、例えば、火花点火乗用車のために設計されたLSPI性能基準及び圧縮点火ヘビーデューティーエンジン用途のための摩擦性能の両方を達成する特徴的な耐摩耗及び摩擦系と組み合わせたユニークな洗剤系と、を含む。以前は、LSPI要件を満たすように設計された流体は、ヘビーデューティーエンジンの摩擦要件を必ずしも満たさず、ヘビーデューティー摩擦要件のために設計された流体は、乗用車に関するLSPI要件を必ずしも満たさなかった。本明細書の流体は、両方の特性を満たす。
【0022】
1つのアプローチでは、本明細書の潤滑組成物は、基油又は基油のブレンドと、(i)スルホネート、フェネート、サリチレート、又はそれらの混合物のうちの1つ以上からカルシウム及びマグネシウムを提供し、かつ石炭酸カルシウム及びスルホン酸マグネシウム並びに任意選択的にスルホン酸カルシウムを含み得る又はそれらから本質的になり得る、複数の添加剤を有する洗剤系と、(ii)一級アルコールと二級アルコールとのブレンドから誘導された、1つ以上の金属ジアルキルジチオホスフェート、好ましくは金属ジアルキルジチオホスフェートの混合物、好ましくは亜鉛ジアルキルチオホスフェートの混合物を含む又はそれらから本質的になる、また複数のアプローチ手法では、一級から二級アルコールから誘導された全混合物内に金属ジアルキルジチオホスフェートの特異的なブレンドを含む耐摩耗及び摩擦系であって、耐摩耗及び摩擦系において、金属ジアルキルジチオホスフェートを形成するために使用される一級アルコール対二級アルコールの重量比は少なくとも3:1である、耐摩耗及び摩擦系と、を含む。
【0023】
他のアプローチでは、潤滑組成物は、混合フリート用途に好適な性能を達成するために、最終流体中に、特定量のマグネシウム、リン、及び金属(好ましくは、亜鉛)を更に含む。例えば、いくつかのアプローチでは、潤滑組成物は、潤滑組成物に基づいて500ppm超のマグネシウムである、洗剤系からのマグネシウムの量、潤滑組成物に基づいて1200ppm未満のリン(好ましくは1000ppm未満のリン、更により好ましくは800ppm未満のリン)である、耐摩耗及び摩擦系からのリンの量、及び潤滑組成物に基づいて約1000ppm未満の金属(亜鉛など)である、耐摩耗及び摩擦系からの金属(亜鉛など)の量を有する。更に他の実施形態では、本明細書の潤滑組成物はまた、洗剤系によって提供されるカルシウムを含むこともできるが、約1500ppm以下のカルシウムを含むこともでき、更に他の任意選択の実施形態では、本明細書の流体は、約1.5:1~約4:1の範囲の洗剤系によって提供されるカルシウム対マグネシウムの重量比を有する。そのような特徴を有する潤滑組成物は、驚くべきことに、乗用車のためのLSPI要件、及び同時に、ヘビーデューティーエンジン用途のための摩擦性能要件を満たし、したがって、本明細書の流体が、所望の使用及び状況に応じていずれかの用途において使用することができるいわゆる混合フリート対応流体であることが認められる。
【0024】
洗剤系
本明細書の潤滑剤組成物は、フェネート及びスルホネート、特に石炭酸カルシウム及びスルホン酸マグネシウム、並びに任意選択でスルホン酸カルシウム(含まれる場合、好ましくは中性の石炭酸カルシウムに基づいて低い)などの洗剤添加剤から送達される、選択量のマグネシウム、いくつかの実施形態では、選択量のカルシウムも提供するユニークな洗剤系を含む。好適な洗剤及びそれらの調製方法は、米国特許第7,732,390号及びその中で引用されている参考文献を含む多数の特許公報においてより詳細に記載されており、それらは参照により本明細書に組み込まれる。本明細書の潤滑剤組成物は、約1~約5重量%、他のアプローチでは、約1.5~約3重量パーセントの洗剤系を含み得る。
【0025】
上記したように、いくつかのアプローチでは、洗剤系は、選択量のマグネシウムを提供し、いくつかのアプローチでは、選択量のカルシウムも提供する。例えば、洗剤系は、全潤滑組成物に基づいて、約500ppmを超えるマグネシウム、他のアプローチでは、約500ppm~約1000ppmのマグネシウム、約600ppm~約800ppmのマグネシウム、又は約700~約800ppmのマグネシウムであるマグネシウムの量を提供する。同時に、流体はまた、洗剤系によって提供される限られた量のカルシウムも有し得る。実施形態において、洗剤系は、任意選択的に、約1500ppm以下のカルシウム、約1400ppm以下のカルシウム、約1300ppm以下のカルシウム、又は約900~約1500ppmのカルシウム若しくは約1000ppm~約1300ppmのカルシウムを提供する。アプローチにおいて、カルシウム及びマグネシウムは、フェネート及び/又はスルホネートによって提供され、好ましくは、カルシウムは、フェネートと任意選択のスルホネートとの組み合わせによって提供されるが、マグネシウムはスルホネートによって提供される。
【0026】
いくつかのアプローチでは、洗剤系からのカルシウムとマグネシウムとの間の正しいバランスは、混合フリート対応流体を維持するのを助ける1つのファクターである。それは、バランスが適切に設定されていない場合、流体は、火花点火乗用車並びに圧縮点火ヘビーデューティー用途のための両方の性能上の利点を満たせず、混合フリート使用に適格とならないためである。いくつかの実施形態では、洗剤系は、約1.5:1~約4:1、約1.6:1~約3:1、約1.6:1~約2:1、又は約1.7:1~約2:1の、洗剤系によって提供されるカルシウム対マグネシウムの重量比を有する。カルシウムの大部分は、石炭酸カルシウムによって提供され得、残りは任意選択のスルホン酸カルシウムによって提供され得る。マグネシウムは、スルホン酸マグネシウムによって提供され得る。例えば、洗剤系は、約50~約70重量パーセントの石炭酸カルシウム、約30~約40重量パーセントのスルホン酸マグネシウム、及び約0~約10重量パーセントのスルホン酸カルシウムを含み得る。
【0027】
洗剤系はまた、上記したマグネシウムとカルシウムとの重量比が満たされる限り、状況に応じて必要とされる他の任意選択の洗剤も含み得る。一般に、洗剤基材は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属、例えば、限定するものではないが、上記したカルシウム及びマグネシウムと塩形成し得るが、他の任意選択の洗剤もまた、洗剤系が、本明細書に記載したカルシウム及びマグネシウム要件を満たす限り、カリウム、ナトリウム、リチウム、バリウム、亜鉛、又はそれらの混合物とも塩形成し得る。
【0028】
1つのアプローチでは、系中の好適な洗剤は、石油スルホン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、例えばカルシウム塩又はマグネシウム塩、及び長鎖モノ-又はジ-アルキルアリールスルホン酸を含むことができ、そのアリール基は、ベンジル、トリル、及びキシリル、並びに/又は様々なフェネート又はフェネートの誘導体を含むことができる。好適な洗剤の例としては、以下の洗剤:石炭酸カルシウム、カルシウム硫黄含有フェネート、スルホン酸カルシウム、カルシウムカリキサレート(calcium calixarates)、サリキサル酸カルシウム、サリチル酸カルシウム、カルボン酸カルシウム、リン酸カルシウム、カルシウムモノ-及び/若しくはジ-チオリン酸、カルシウムアルキルフェノール、カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、カルシウムメチレン架橋フェノール、石炭酸マグネシウム、マグネシウム硫黄含有フェネート、スルホン酸マグネシウム、マグネシウムカリキサレート(magnesium calixarates)、サリキサル酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、カルボン酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、マグネシウムモノ-及び/若しくはジ-チオリン酸、マグネシウムアルキルフェノール、マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、マグネシウムメチレン架橋フェノール、石炭酸ナトリウム、ナトリウム硫黄含有フェネート、スルホン酸ナトリウム、ナトリウムカリキサレート、サリキサル酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、カルボン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ナトリウムモノ-及び/若しくはジ-チオリン酸、ナトリウムアルキルフェノール、ナトリウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、又はナトリウムメチレン架橋フェノールの低塩基性/中性及び過塩基性のバリエーションが挙げられるが、それらに限定されない。
【0029】
洗剤はまた、中性/低塩基性又は過塩基性でもあり得る。過塩基性洗剤添加剤は、当技術分野において既知であり、アルカリ金属又はアルカリ土類金属過塩基性洗剤添加剤であり得る。そのような洗剤添加剤は、金属酸化物又は金属水酸化物を基材及び二酸化炭素ガスと反応させることによって、調製することができる。基材は、典型的には、酸、例えば、脂肪族置換スルホン酸、脂肪族置換カルボン酸、又は脂肪族置換フェノールのような酸である。
【0030】
「過塩基性」という用語は、存在する金属の量が化学量論量を超えている、金属塩、例えば、スルホネート、カルボキシレート、サリシレート、及び/又はフェネートの金属塩に関する。そのような塩は、100%を超える変換レベルを有し得る(すなわち、それらは、酸をその「正塩」、「中性塩」に変換するのに必要とされる金属の理論量の100%超を含み得る)。多くの場合、MR(metal ratio)と略される表現「金属比」は、既知の化学反応性及び化学量論に従って、過塩基性塩中の金属の総化学当量と中性塩中の金属の化学当量との比率を示すために使用される。正塩又は中性塩では、MRは1であり、過塩基性塩では、MRは1より大きい。それらは、一般に、過塩基性、高塩基性、又は超塩基性塩と称され、有機硫黄酸、カルボン酸、又はフェノールの塩であり得る。
【0031】
本明細書で使用されるとき、「TBN(Total Base Number)」という用語は、ASTM D2896の方法によって測定される単位mg KOH/gの全アルカリ価を表すために使用される。潤滑油組成物の過塩基性洗剤は、約200mg KOH/グラム以上、又は約250mg KOH/グラム以上、又は約350mg KOH/グラム以上、又は約375mg KOH/グラム以上、又は約400mg KOH/グラム以上の全アルカリ価(TBN)を有し得る。過塩基性洗剤は、1.1:1から、又は2:1から、又は4:1から、又は5:1から、又は7:1から、又は10:1からの金属対基材比を有し得る。
【0032】
好適な過塩基性洗剤の例としては、過塩基性石炭酸カルシウム、過塩基性カルシウム硫黄含有フェネート、過塩基性スルホン酸カルシウム、過塩基性カルシウムカリキサレート、過塩基性カルシウムサリキサレート、過塩基性サリチル酸カルシウム、過塩基性カルシウムカルボン酸、過塩基性リン酸カルシウム、過塩基性モノ-及び/若しくはジ-チオリン酸カルシウム、過塩基性カルシウムアルキルフェノール、過塩基性カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、過塩基性カルシウムメチレン架橋フェノール、過塩基性石炭酸マグネシウム、過塩基性マグネシウム硫黄含有フェネート、過塩基性スルホン酸マグネシウム、過塩基性マグネシウムカリキサレート、過塩基性サリチル酸キサレート、過塩基性サリチル酸マグネシウム、過塩基性カルボン酸マグネシウム、過塩基性マグネシウムサリキサレート、過塩基性マグネシウムモノ及び/若しくはジ-チオリン酸、過塩基性マグネシウムアルキルフェノール、過塩基性マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、又は過塩基性マグネシウムメチレン架橋フェノールが挙げられるが、それらに限定されない。
【0033】
低塩基性又は中性洗剤が洗剤系に組み込まれるとき、それは、一般に、最大175mg KOH/g、最大150mg KOH/g、最大100mg KOH/g、又は最大50mg KOH/gのTBNを有する。低塩基性/中性洗剤は、カルシウム又はマグネシウム含有洗剤を含み得る。好適な低塩基性/中性洗剤の例としては、スルホン酸カルシウム、石炭酸カルシウム、サリチル酸カルシウム、スルホン酸マグネシウム、石炭酸マグネシウム、及び/又はサリチル酸マグネシウムが挙げられるが、それらに限定されない。
【0034】
いくつかの実施形態では、任意選択のスルホン酸カルシウムが本明細書の洗剤系に組み込まれるとき、それは、中性又は低塩基性洗剤であることができ、アプローチでは、約0~約100の全アルカリ価を有し、他のアプローチでは約0~約50の全アルカリ価を有する。石炭酸カルシウムが洗剤系に組み込まれるとき、それは、150~400、他のアプローチでは、約200~約350の全アルカリ価を有する過塩基性洗剤であることができる。スルホン酸マグネシウムが洗剤系に組み込まれるとき、それは、300~500、他のアプローチでは、約350~約450の全アルカリ価を有する過塩基性洗剤であることができる。いくつかのアプローチでは、本明細書の洗剤系及び潤滑剤はまた、過塩基性スルホン酸カルシウムを含まない、又は200以上、好ましくは300以上のTBNを有するスルホン酸カルシウム添加剤を含まない。本明細書で使用する場合、「含まない」とは、一般的に、特定の成分が0.5重量%未満、0.1重量%未満、0.05重量%未満であるか、又は全くないことを意味している。上記のTBN値は、基油中で希釈された最終洗剤のTBN値を反映している。
【0035】
他の実施形態では、洗剤のTBNは、洗剤成分のニート又は非希釈バージョンを反映し得る。例えば、ニート(又は非希釈)添加剤としてのスルホン酸カルシウムは、0~約80、他のアプローチでは約20~約80のTBNを有し得る。ニートの添加剤としての石炭酸カルシウムは、約300~約450、他のアプローチでは約380~約420のTBNを有し得る。ニートの添加剤としてのスルホン酸マグネシウムは、約500~約700、他のアプローチでは約600~約700のTBNを有し得る。更に他の実施形態では、本明細書の洗剤系及び潤滑剤は、約600以上のニートのTBNを有する過塩基性スルホン酸カルシウムを含まなくてもよい。
【0036】
耐摩耗及び摩擦系
本明細書の潤滑組成物はまた、上記した洗剤系と組み合わせて、耐摩耗及び摩擦系も含む。耐摩耗及び摩擦系は、他の特徴の中でも、摩擦性能を達成するのに有効な金属及びリンを含有する化合物の混合物を提供する。実施形態では、本明細書の潤滑剤組成物は、約0.7~約2重量パーセント、他のアプローチでは約0.9~約1.5重量パーセントの耐摩耗及び摩擦系を含み得る。
【0037】
アプローチでは、耐摩耗及び摩擦系は、1つ以上の金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物を含み、いくつかのアプローチでは、2つ以上の金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物の混合物、例えば、限定するものではないが、亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物(複数可)(zinc dihydrocarbyl dithiophosphate compound(s)、ZDDP)の混合物を含む。ZDDPなどの好適な金属ジチオホスフェートは、5~約12重量パーセントの金属(他のアプローチでは、金属が好ましくは亜鉛である場合、約6~約10重量パーセントの金属)と、約8~約20重量パーセントの硫黄(他のアプローチでは、約11~約19重量パーセントの硫黄)とを含み得る。ZDDPなどの金属ジチオホスフェートはまた、約5~約10重量パーセントのリンも含み得る。好適な金属ジヒドロカルビルジチオリン酸金属は、ジヒドロカルビルジチオリン酸金属塩のいずれかであり得、その金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅、チタン、ジルコニウム、亜鉛、又はそれらの組み合わせであり得る。しかしながら、金属は、好ましくは亜鉛である。
【0038】
耐摩耗及び摩擦系のリン含有化合物がZDDPであるとき、ZDDP上のアルキル基は、一級アルコール、二級アルコール、及び/又はそれらの混合物から誘導され得る。例えば、ZDDPのアルキル基を形成するのに好適な一級アルコールとしては、エチルヘキシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、アミルアルコール、及び/又はC6以上の一級アルコールが挙げられるが、それらに限定されない。ZDDPのアルキル基を形成するのに好適な二級アルコールとしては、メチルイソブチルカルビノール、イソプロピルアルコール、又はそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。場合によっては、ZDDPのアルキル基は、2-エチルヘキサノール(一級)、イソブタノール(一級)、及びイソプロパノール(二級)などの一級アルコールと二級アルコールとの混合物から誘導され得る。例えば、一実施形態では、耐摩耗及び摩擦系中のZDDP添加剤のうちの1つは、2-エチルヘキサノールから誘導された約20%のアルキル基、イソブタノールから誘導された約40%のアルキル基、及びイソプロパノールから誘導された約40%のアルキル基を含む。他の実施形態では、耐摩耗及び摩擦系中の第2のZDDPは、2-エチルヘキサノールなどの一級アルコールから誘導された全てのアルキル基を含む。1つのアプローチでは、本明細書の耐摩耗及び摩擦系は、一級アルコール及び二級アルコールから誘導された金属ジアルキルジチオホスフェート(好ましくは亜鉛ジアルキルジチオホスフェート)の混合物を含む。実施形態では、耐摩耗及び摩擦系において組み合わされた2つのZDDP添加剤からの一級アルコール対二級アルコールの重量比は、以下で更に考察するように、少なくとも3:1である。
【0039】
好適なZDDPの例としては、金属O,O-ジ(C1~14-アルキル)ジチオホスフェート;(混合O,O-ビス(sec-ブチル及びイソオクチル))ジチオホスフェート;亜鉛-O,O-ビス(分岐鎖及び直鎖C3~8-アルキル)ジチオホスフェート;亜鉛O,O-ビス(2-エチルヘキシル)ジチオホスフェート;亜鉛O,O-ビス(混合イソブチル及びペンチル)ジチオホスフェート;亜鉛混合O,O-ビス(1,3-ジメチルブチル及びイソプロピル)ジチオホスフェート;亜鉛O,O-ジイソオクチルジチオホスフェート;亜鉛O,O-ジブチルジチオホスフェート;亜鉛混合O,O-ビス(2-エチルヘキシル及びイソブチル及びイソプロピル)ジチオホスフェート;亜鉛O,O-ビス(ドデシルフェニル)ジチオホスフェート;亜鉛O,O-ジイソデシルジチオホスフェート;亜鉛O-(6-メチルヘプチル)-O-(1-メチルプロピル)ジチオホスフェート;亜鉛O-(2-エチルヘキシル)-O-(イソブチル)ジチオホスフェート;亜鉛O,O-ジイソプロピルジチオホスフェート;亜鉛(混合ヘキシル及びイソプロピル)ジチオホスフェート;亜鉛(混合O-(2-エチルヘキシル)及びO-イソプロピル)ジチオホスフェート;亜鉛O,O-ジオクチルジチオホスフェート;亜鉛O,O-ジペンチルジチオホスフェート;亜鉛O-(2-メチルブチル)-O-(2-メチルプロピル)ジチオホスフェート;及び亜鉛O-(3-メチルブチル)-O-(2-メチルプロピル)ジチオホスフェートが挙げられるが、それらに限定されない。
【0040】
更に他のアプローチでは、本明細書の耐摩耗系中のリン含有化合物の各々は、式Iの構造をそれぞれ有し得る。
【0041】
【化1】
式Iにおいて、Rは、独立して、1~18個の炭素原子、又は2~12個の炭素原子、又は約3~8個の炭素原子を含有する。耐摩耗及び摩擦系は、式Iの構造の2つの化合物を含有し得る。各化合物において、Rは、耐摩耗系において上記した一級アルコール対二級アルコールの選択比を満たすために必要に応じて、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、アミル、n-ヘキシル、i-ヘキシル、n-オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、2-エチルヘキシル、フェニル、ブチルフェニル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、プロペニル、ブテニルであり得る。いくつかの実施形態では、上記の式I中の各R基中の炭素原子の数は、一般に、約3以上、約4以上、約6以上、又は約8以上である。各R基は、平均3~8個の炭素を有し得る。R基中の炭素原子の総数は、5~約72、又は12~約32であり得る。式Iにおいて、Aは、金属、例えば、アルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅、チタン、ジルコニウム、亜鉛、又はそれらの組み合わせである。好ましくは、Aは亜鉛である。
【0042】
更に他のアプローチでは、耐摩耗及び摩擦系の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートは、式IIの化学構造の下に示される耐摩耗系中のリン化合物の硫黄-亜鉛配位配列を有し、それは、上に示した式Iと交換可能に使用され得る。式I及びIIに示した構造は、モノマー、ダイマー、トリマー、又はオリゴマー(例えば、テトラマー)として存在し得ることも理解される。
【0043】
【化2】
【0044】
いくつかの実施形態では、耐摩耗及び摩擦系の各リン含有化合物は、式Iの構造を有し、式中、Aは亜鉛であり、耐摩耗及び摩擦系内の化合物の合計は、約600~約900ppm(他のアプローチでは、約700~約800ppm)のリンを潤滑剤組成物に提供する。いくつかの場合では、耐摩耗及び摩擦系は、一級及び二級アルコールの混合物から誘導された亜鉛ジアルキルジチオホスフェートを含む。他の場合例では、耐摩耗及び摩擦系は、少なくとも2つの亜鉛ジアルキルジチオホスフェートを含み、第1の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートは一級アルコールのみから誘導され、第2の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートは一級アルコールと二級アルコールとの混合物から誘導されたものである。好ましくは、耐摩耗及び摩擦系は、1つ以上の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートを含み、アルキル基の大部分は、一級アルコールから誘導され、例えば、耐摩耗及び摩擦系(すなわち、耐摩耗性混合物の全ての化合物)内のZDDPを形成する一級アルコール対二級アルコールの重量比は、少なくとも3:1である(すなわち、耐摩耗及び摩擦系に含有されるZDDP中の全てのアルキル基の約75~約85%は一級アルコール由来であり、アルキル基の約15~約25%は二級アルコール由来である)。他のアプローチでは、耐摩耗及び摩擦系内でZDDPを形成する一級アルコール対二級アルコールの比は、少なくとも約4.1又は約3:1~約5.5:1である。
【0045】
他の実施形態では、耐摩耗及び摩擦系は、一級アルコールからのみ誘導された最大約60重量パーセントの第1の亜鉛ジアルキルジチオホスフェート、及び一級アルコールと二級アルコールとの混合物から誘導された約40~約50重量パーセントの第2の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートを含み得る。第2の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートは、約50~約70重量%の一級アルコール及び約30~約50重量パーセントの二級アルコールを含む、一級アルコールと二級アルコールとの混合物から誘導され得る。
【0046】
通常は、圧縮点火ヘビーデューティー用途のために設計された潤滑組成物は、最大1200ppmのリン、いくつかの場合では、約1000~約1200ppmのリンを必要とした。一方、本明細書の潤滑組成物は、1200ppm以下のリン、1000ppm以下のリン、又は更に800ppm以下のリンを有する。他のアプローチでは、本明細書の潤滑組成物は、少なくとも約100ppmのリン、少なくとも約200ppmのリン、少なくとも約300ppmのリン、少なくとも約400ppmのリン、少なくとも約500ppmのリン、少なくとも約600ppmのリン、又は更に少なくとも約700ppmのリンを含む。しかしながら、そのような低レベルのリンであっても、本明細書の流体は、驚くべきことに、乗用車用途及び圧縮点火ヘビーデューティーエンジン用途の両方に関する本明細書に記載の性能要件を満たす。
【0047】
ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩は、通常は、1つ以上のアルコール又はフェノールとPとを反応させて、ジヒドロカルビルジチオリン酸(dihydrocarbyl dithiophosphoric acid、DDPA)を最初に形成し、次いで形成されたDDPAを酸化亜鉛などの金属化合物で中和することによって、既知の技術に従って調製することができる。例えば、DDPAは、一級アルコールと二級アルコールとの混合物を、Pと反応させることによって、作製することができる。この場合、DDPAは、一級アルコール及び二級アルコールの両方から誘導されたアルキル基を含む。あるいは、複数のDDPAを調製することができ、1つのDDPA上のアルキル基は二級アルコールから完全に誘導され、別のDDPA上のアルキル基は一級アルコールから完全に誘導される。次いで、DDPAを一緒にブレンドして、一級アルコール及び二級アルコールの両方から誘導されたアルキル基を有するDDPAの混合物を形成する。
【0048】
基油
本明細書の潤滑油組成物において使用される基油は、潤滑粘度の油であってもよく、米国石油協会(American Petroleum Institute、API)基油互換性ガイドライン(Base Oil Interchangeability Guidelines)に規定されているグループI~Vの基油のいずれかから選択することができる。5つの基油グループは以下の通りである:
【0049】
【表1】
【0050】
グループI、II、及びIIIは、鉱油プロセス原料である。グループIVの基油は、オレフィン性不飽和炭化水素の重合によって生成される真の合成分子種を含有している。多くのグループVの基油もまた真の合成生成物であり、ジエステル、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、アルキル化芳香族、ポリリン酸エステル、ポリビニルエーテル、及び/又はポリフェニルエーテルなどを含み得るが、植物油などの天然油であってもよい。グループIIIの基油は、鉱油から誘導されたものであるが、これらの流体が受ける厳密な処理により、それらの物理的特性は、PAOなどのいくつかの真の合成油に非常に類似するものとなることに留意すべきである。したがって、グループIIIの基油から誘導された油は、当該産業において合成流体と称され得る。グループII+は、高粘度指数グループIIを含み得る。
【0051】
開示の潤滑油組成物において使用される基油又は基油ブレンドは、鉱油、動物油、植物油、合成油、合成油ブレンド、又はそれらの混合物であり得る。好適な油は、水素化分解、水素化、水素化仕上げ、未精製油、精製油、及び再精製油、並びにそれらの混合物から誘導され得る。
【0052】
未精製油は、更なる精製処理を伴わない又はほとんど伴わない、天然、鉱物、又は合成の供給源に由来するものである。精製油は、1つ以上の特性の改善をもたらし得る1つ以上の精製ステップで処理されていることを除いて未精製油と同様である。好適な精製技術の例は、溶媒抽出、二次蒸留、酸又は塩基抽出、濾過、パーコレーションなどである。食用に適する品質まで精製された油は、有用であり得る、又は有用であり得ない。食用油はまた、ホワイト油とも称され得る。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、食用油又はホワイト油を含まない。
【0053】
再精製油は、再生油又は再処理油としても知られている。これらの油は、同じ又は類似のプロセスを使用して精製油と同様に得られる。多くの場合、これらの油は、使用済み添加剤及び油分解生成物の除去を目的とする技術によって更に処理される。
【0054】
鉱油は、掘削によって、又は植物及び動物から、又はそれらの任意の混合物から得られる油を含み得る。例えば、そのような油としては、ヒマシ油、ラード油、オリーブ油、ピーナツ油、トウモロコシ油、ダイズ油、及び亜麻仁油、並びに鉱物潤滑油、例えば、液体石油、及びパラフィン系、ナフテン系、若しくは混合されたパラフィン系-ナフテン系タイプの溶媒処理又は酸処理された鉱物系潤滑油が挙げられ得るが、それらに限定されない。そのような油は、所望であれば、部分的又は完全に水素化され得る。石炭又は頁岩から誘導された油も有用であり得る。
【0055】
有用な合成潤滑油としては、炭化水素油、例えば、重合化、オリゴマー化、又はインターポリマー化オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー);ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、1-デセンのトリマー又はオリゴマー、例えば、ポリ(1-デセン)(そのような材料はしばしばα-オレフィンと称される)、及びそれらの混合物;アルキル-ベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ-(2-エチルヘキシル)-ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニル);ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド、並びにそれらの誘導体、類似体、及び同族体、又はそれらの混合物を挙げることができる。ポリアルファオレフィンは、典型的には水素化された材料である。
【0056】
他の合成潤滑油としては、ポリオールエステル、ジエステル、リン含有酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、及びデカンホスホン酸のジエチルエステル)、又はポリマーテトラヒドロフランが挙げられる。合成油は、フィッシャー・トロプシュ反応によって製造することができ、典型的には、水素異性化フィッシャー・トロプシュ炭化水素又はワックスであり得る。一実施形態では、油は、フィッシャー・トロプシュ気液合成手順、並びに他の気液油によって調製することができる。
【0057】
潤滑組成物中に含まれる過半量の基油は、グループI、グループII、グループIII、グループIV、グループV、及び前述のものの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得、過半量の基油は、組成物中の添加剤成分又は粘度指数向上剤の提供から生じる基油以外のものである。別の実施形態では、潤滑組成物中に含まれる過半量の基油は、グループI、グループII、グループIII、グループIV、グループV、及び前述のものの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得、過半量の基油は、組成物中の添加剤成分又は粘度指数向上剤の提供から生じる基油以外のものである。
【0058】
存在する潤滑粘度の油の量は、100重量%から、粘度指数向上剤(複数可)及び/又は流動点降下剤(複数可)及び/又は他のトップ処理添加剤を含む性能添加剤の量の合計を減算した後に残る残部であり得る。例えば、最終流体中に存在し得る潤滑粘度の油は、「過半量」、例えば、約50重量%超、約60重量%超、約70重量%超、約80重量%超、約85重量%超、又は約90重量%超であり得る。
【0059】
任意選択の添加剤
本明細書に記載の潤滑組成物はまた、上記の洗剤系及び耐摩耗系成分に加えて、他の添加剤も含み得る。そのような添加剤としては、他の添加剤が、混合フリート対応流体に好適な上述した組成的特徴及び関係に影響を与えない限り、酸化防止剤(複数可)、粘度調整剤(複数可)、他のリン含有成分、他の洗剤(複数可)、腐食防止剤(複数可)、防錆剤、消泡剤(複数可)、解乳化剤(複数可)、流動点降下剤(複数可)、シール膨潤剤(複数可)、追加の分散剤(複数可)、摩擦調整剤(複数可)、及び/又は追加の硫黄含有成分(複数可)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0060】
酸化防止剤
酸化防止剤は、原材料(base stock)が使用中に劣化する傾向を減少させる。そのような劣化は、金属表面上に堆積するスラッジ及びワニスなどの酸化生成物によって明示され得る。そのような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、芳香族アミン酸化防止剤、及び硫黄含有酸化防止剤が挙げられる。
【0061】
フェノール系酸化防止剤の例としては、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、三級ブチル化フェノールの液体混合物、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-ter-t-ブチルフェノール)、及び混合メチレン架橋ポリアルキルフェノール、及び4,4’-チオビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、N,N’-ジ-sec-ブチル-フェニレンジアミン、4-イソプロピルアミノジフェニルアミン、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、並びに環アルキル化ジフェニルアミンが挙げられる。例としては、立体障害三級ブチル化フェノール、ビスフェノール及び桂皮酸誘導体、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0062】
芳香族アミン酸化防止剤としては、以下の式:
【0063】
【化3】
(式中、R’及びR’’は、それぞれ独立して、6~30個の炭素原子を有する置換又は無置換アリール基を表しているす)を有するジアリールアミンが挙げられるが、それらに限定されない。アリール基の置換基の例示としては、1~30個の炭素原子を有するアルキルなどの脂肪族炭化水素基、ヒドロキシ基、ハロゲンラジカル、カルボン酸若しくはエステル基、又はニトロ基が挙げられる。
【0064】
アリール基は、好ましくは置換又は非置換フェニル又はナフチルであり、特に、アリール基の一方又は両方が、4~30個の炭素原子、好ましくは4~18個の炭素原子、最も好ましくは4~9個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキルで置換されている。一方又は両方のアリール基が置換されていることが好ましく、例えば、モノアルキル化ジフェニルアミン、ジ-アルキル化ジフェニルアミン、又はモノ-及びジ-アルキル化ジフェニルアミンの混合物である。
【0065】
使用され得るジアリールアミンの例としては、ジフェニルアミン;様々なアルキル化ジフェニルアミン、3-ヒドロキシジフェニルアミン、N-フェニル-1,2-フェニレンジアミン、N-フェニル-1,4-フェニレンジアミン、モノブチルジフェニル-アミン、ジブチルジフェニルアミン、モノオクチルジフェニルアミン、ジオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、モノテトラデシルジフェニルアミン、ジテトラデシルジフェニルアミン、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、モノオクチルフェニル-アルファ-ナフチルアミン、フェニル-ベータ-ナフチルアミン、モノヘプチルジフェニルアミン、ジヘプチル-ジフェニルアミン、p-配向スチレン化ジフェニルアミン、混合ブチルオクチルジ-フェニルアミン、及び混合オクチルスチリルジフェニルアミンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0066】
硫黄含有酸化防止剤としては、硫化ヒンダードフェノール、硫化オレフィン、金属チオカルバメート、及び無灰ジアルキルジチオカルバメートが挙げられるが、それらに限定されない。硫化オレフィンは、それらの製造において使用されるオレフィンのタイプ及び酸化防止剤の最終の硫黄含有量によって特徴付けられる。高分子量オレフィン、すなわち、168~351g/moleの平均分子量を有する高分子量オレフィンが好ましい。使用され得るオレフィンの例としては、アルファ-オレフィン、異性化アルファ-オレフィン、分岐鎖オレフィン、環状オレフィン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0067】
アルファ-オレフィンとしては、任意のC4~C25アルファ-オレフィンが挙げられるが、それらに限定されない。アルファ-オレフィンは、硫化反応前又は硫化反応中に異性化され得る。内部二重結合及び/又は分枝を含有するアルファオレフィンの構造異性体及び/又は配座異性体も使用され得る。例えば、イソブチレンは、アルファ-オレフィン1-ブテンの分岐鎖オレフィン対応物である。
【0068】
オレフィンの硫化反応において使用され得る硫黄源としては、元素硫黄、硫黄一塩化物、硫黄二塩化物、硫化ナトリウム、多硫化ナトリウム、及び一緒に添加されるか又は硫化プロセスの異なる段階で添加されるこれらの混合物が挙げられる。
【0069】
不飽和油はまた、それらの不飽和のために、硫化され、酸化防止剤としても使用され得る。使用され得る油又は脂肪の例としては、トウモロコシ油、キャノーラ油、綿実油、ブドウ種子油、オリーブ油、パーム油、落花生油、ヤシ油、ナタネ油、ベニバナ種子油、ゴマ種子油、ダイズ油、ヒマワリ種子油、獣脂、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0070】
酸化防止添加剤として使用され得る無灰ジアルキルジチオカルバメートとしては、添加剤パッケージ中に可溶性又は分散性である化合物が挙げられる。無灰ジアルキルジチオカルバメートが低揮発性であり、好ましくは250ダルトンより大きい分子量を有し、最も好ましくは400ダルトンより大きい分子量を有することも好ましい。使用され得るジアルキルジチオカルバメートの例は、次の特許、米国特許第5,693,598号、同第4,876,375号、同第4,927,552号、同第4,957,643号、同第4,885,365号、同第5,789,357号、同第5,686,397号、同第5,902,776号、同第2,786,866号、同第2,710,872号、同第2,384,577号、同第2,897,152号、同第3,407,222号、同第3,867,359号、及び同第4,758,362号において開示されている。
【0071】
本明細書の潤滑組成物中の酸化防止剤の総量は、最大約200ppmの窒素、又は最大約100ppmの窒素、又は最大約150ppmの窒素、又は最大約100~約150ppmの窒素を送達する量で存在し得る。
【0072】
摩擦調整剤
いくつかの実施形態では、本明細書の潤滑組成物は、摩擦調整剤を含有し得る。好適な追加の摩擦調整剤は、金属含有及び金属フリー摩擦調整剤を含むことができ、好適な摩擦調整剤としては、イミダゾリン、アミド、アミン、スクシンイミド、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、アミンオキシド、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、四級アミン、イミン、アミン塩、アミノグアニジン、アルカノールアミド、ホスホネート、金属含有化合物、グリセロールエステル、硫化脂肪化合物及びオレフィン、ヒマワリ油、他の天然に存在する植物油又は動物油、ジカルボン酸エステル、ポリオールのエステル又は部分エステル、並びに1つ以上の脂肪族又は芳香族カルボン酸などを挙げることができるが、それらに限定されない。
【0073】
好適な摩擦調整剤は、直鎖、分岐鎖、若しくは芳香族ヒドロカルビル基、又はそれらの混合物から選択されるヒドロカルビル基を含有することができ、そのようなヒドロカルビル基は飽和又は不飽和であり得る。ヒドロカルビル基は、炭素及び水素又はヘテロ原子、例えば、硫黄又は酸素から構成され得る。ヒドロカルビル基は、炭素原子12~25個の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、摩擦調整剤は長鎖脂肪酸エステルであり得る。別の実施形態では、長鎖脂肪酸エステルは、モノエステル、又はジエステル、又は(トリ)グリセリドであり得る。摩擦調整剤は、長鎖脂肪アミド、長鎖脂肪エステル、長鎖脂肪エポキシド誘導体、又は長鎖イミダゾリンであり得る。
【0074】
他の好適な摩擦調整剤としては、有機、無灰(金属を含まない)、窒素を含まない有機摩擦調整剤を挙げることができる。そのような摩擦調整剤は、カルボン酸及び無水物をアルカノールと反応させることによって形成されるエステルを含むことができ、一般に、親油性炭化水素鎖に共有結合した極性末端基(例えば、カルボキシル又はヒドロキシル)を含む。有機無灰窒素非含有摩擦調整剤の例は、オレイン酸のモノ-、ジ-、及びトリ-エステルを含有し得るグリセロールモノオレエート(glycerol monooleate、GMO)として一般に知られている。他の好適な摩擦調整剤は、米国特許第6,723,685号に記載されている。
【0075】
アミン系摩擦調整剤としては、アミン又はポリアミンを挙げることができる。そのような化合物は、直鎖、飽和若しくは不飽和のいずれか又はそれらの混合物であるヒドロカルビル基を有することができ、12~25個の炭素原子を含有し得る。好適な摩擦調整剤の更なる例としては、アルコキシル化アミン及びアルコキシル化エーテルアミンが挙げられる。そのような化合物は、直鎖、飽和若しくは不飽和のいずれか又はそれらの混合物であるヒドロカルビル基を有することができる。それらは約12~約25個の炭素原子を含有し得る。例としては、エトキシル化アミン及びエトキシル化エーテルアミンが挙げられる。
【0076】
アミン及びアミドは、それ自体で、又は酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、メタボレート、ホウ酸又はモノ-、ジ-、又はトリ-アルキルボレートなどのホウ素化合物との付加物又は反応生成物の形態で使用され得る。他の好適な摩擦調整剤は、米国特許第6,300,291号に記載されている。
【0077】
摩擦調整剤が窒素を含有する場合、そのような摩擦調整剤は、最大約200ppmの窒素、又は最大約150ppmの窒素、又は約100~約150ppmの窒素を送達する量で、本明細書の潤滑組成物中に存在し得る。
【0078】
腐食防止剤
防錆剤又は腐食防止剤もまた、本明細書に記載の潤滑組成物中に含まれ得る。そのような材料としては、モノカルボン酸及びポリカルボン酸が挙げられる。好適なモノカルボン酸の例は、オクタン酸、デカン酸、及びドデカン酸である。好適なポリカルボン酸としては、トール油脂肪酸、オレイン酸、リノール酸などの酸から生成されるダイマー酸及びトリマー酸が挙げられる。
【0079】
別の有用な種類の防錆剤は、アルケニルコハク酸及びアルケニル無水コハク酸腐食防止剤、例えば、テトラプロペニルコハク酸、テトラプロペニルコハク酸無水物、テトラデセニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸無水物、ヘキサデセニルコハク酸、ヘキサデセニルコハク酸無水物などであり得る。アルケニル基中に8~24個の炭素原子を有するアルケニルコハク酸と、ポリグリコールなどのアルコールとの半エステルも有用である。他の好適な防錆剤又は腐食防止剤としては、エーテルアミン、酸性ホスフェート、アミン、ポリエトキシル化化合物、例えば、エトキシル化アミン、エトキシル化フェノール、及びエトキシル化アルコール、イミダゾリン、アミノコハク酸、又はそれらの誘導体などが挙げられる。そのような防錆剤又は腐食防止剤の混合物を使用され得る。腐食防止剤の総量は、本明細書に記載される潤滑組成物中に存在するとき、潤滑組成物の総重量に基づいて最大2.0重量%又は0.01~1.0重量%の範囲であり得る。
【0080】
粘度調整剤
本明細書の潤滑組成物は、1つ以上の粘度調整剤を任意選択的に含有してもよく、流体内に含まれる場合、粘度調整剤は、好ましくは、以下で更に考察するようなオレフィンコポリマー粘度調整剤であってもよく、及び/又は組成物は、約4~約10、若しくは約6~約9重量パーセントを含有し得る。
【0081】
好適な粘度調整剤としては、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン-イソプレンポリマー、スチレン/マレイン酸エステルコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンコポリマー、水素化イソプレンポリマー、アルファ-オレフィン無水マレイン酸コポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、水素化アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、又はそれらの混合物を挙げることができる。粘度調整剤はスターポリマーを含んでいてもよく、好適な例は、米国特許出願公開第2012/0101017(A1)号に記載されている。
【0082】
本明細書に記載の潤滑組成物はまた、任意選択的に、粘度調整剤に加えて、又は粘度調整剤の代わりに、1つ以上の分散剤粘度調整剤も含有し得る。好適な分散剤粘度調整剤としては、官能化ポリオレフィン、例えば、アシル化剤(無水マレイン酸など)とアミンとの反応生成物で官能化されたエチレン-プロピレンコポリマー、アミンで官能化されたポリメタクリレート、又はアミンと反応させたエステル化無水マレイン酸-スチレンコポリマーを挙げることができる。
【0083】
解乳化剤
解乳化剤としては、トリアルキルホスフェートと、エチレングリコール、エチレンオキシド、プロピレンオキシドの様々なポリマー及びコポリマー、又はそれらの混合物、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド及び(エチレンオキシド-プロピレンオキシド)ポリマーと、が挙げられる。存在する場合、本明細書の潤滑組成物中の解乳化剤の量は、潤滑及び冷却流体の総重量に基づいて、最大約0.05重量%、又は最大約0.02重量%、又は約0.015重量%未満であり得る。
【0084】
消泡剤
安定な泡の形成を低減又は防止するために使用される消泡剤としては、シリコーン、ポリアクリレート、又は有機ポリマーが挙げられる。開示される発明の組成物において有用であり得る消泡剤としては、ポリシロキサン、エチルアクリレートと2-エチルヘキシルアクリレートとのコポリマー、及び任意選択的に酢酸ビニルが挙げられる。存在する場合、本明細書の潤滑組成物中の消泡剤の量は、潤滑及び冷却流体の総重量に基づいて、最大約0.1重量%、又は最大約0.08重量%、又は約0.07重量%未満であり得る。
【0085】
流動点降下剤
潤滑及び冷却流体は、任意選択的に、1つ以上の流動点降下剤を含有し得る。好適な流動点降下剤としては、無水マレイン酸-スチレンのエステル、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート若しくはポリアクリルアミド、又はそれらの混合物を挙げることができる。流動点降下剤は、存在する場合、潤滑及び冷却流体の総重量に基づいて、約0.001重量%~約0.04重量%の量で存在し得る。
【0086】
モリブデン含有化合物
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上のモリブデン含有化合物を含有し得る。油溶性モリブデン化合物は、耐摩耗剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、又はそれらの混合物の機能的性能を有し得る。
【0087】
例示的なモリブデン含有成分としては、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、ジチオホスフィン酸モリブデン、モリブデン化合物のアミン塩、キサントゲン酸モリブデン、チオキサントゲン酸モリブデン、硫化モリブデン、カルボン酸モリブデン、モリブデンアルコキシド、三核有機モリブデン化合物、及び/又はそれらの混合物を挙げることができる。あるいは、油溶性モリブデン化合物としては、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、ジチオホスフィン酸モリブデン、モリブデン化合物のアミン塩、キサントゲン酸モリブデン、チオキサントンモリブデン、モリブデン硫化物、カルボン酸モリブデン、モリブデンアルコキシド、三核有機モリブデン化合物、及び/又はそれらの混合物を挙げることができる。硫化モリブデンとしては、二硫化モリブデンが挙げられる。二硫化モリブデンは、安定な分散液の形態であり得る。一実施形態では、油溶性モリブデン化合物は、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、モリブデン化合物のアミン塩、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。一実施形態では、油溶性モリブデン化合物は、ジチオカルバミン酸モリブデンであり得る。
【0088】
使用され得るモリブデン化合物の好適な例としては、R.T.Vanderbilt Co.,Ltd.からのMolyvan(登録商標)822、Molyvan(登録商標)A、Molyvan(登録商標)2000、及びMolyvan(登録商標)855など、並びにAdeka Corporationから入手可能なSakura-Lube(商標)S-165、S-200、S-300、S-310G、S-525、S-600、S-700、及びS-710などの商品名で販売されている市販の材料、及びそれらの混合物が挙げられる。好適なモリブデン成分は、米国特許第5,650,381号、米国再発行特許第37,363(E1)号、同第38,929(E1)号、及び同第40,595(E1)号に記載されており、参照によりそれらの全体は本明細書に組み込まれる。
【0089】
更に、モリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物であり得る。モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、並びに他のモリブデン酸アルカリ金属及び他のモリブデン塩、例えば、モリブデン酸水素ナトリウム、MoOCl、MoOBr、MoCl、三酸化モリブデン又は同様の酸性モリブデン化合物が含まれる。あるいは、組成物は、例えば、米国特許第4,263,152号、同第4,285,822号、同第4,283,295号、同第4,272,387号、同第4,265,773号、同第4,261,843号、同第4,259,195号及び同第4,259,194号、並びに国際公開第94/06897号に記載されているように、塩基性窒素化合物のモリブデン/硫黄錯体によってモリブデンを提供することができ、前述の特許文献は、参照によりそれらの全体は本明細書に組み込まれる。
【0090】
別のクラスの好適な有機モリブデン化合物は、三核モリブデン化合物、例えば、式Moの化合物及びそれらの混合物であり、式中、Sは、硫黄を表し、Lは、化合物を油に可溶性又は分散性にするのに十分な数の炭素原子を有する有機基を有する独立して選択された配位子を表し、nは、1~4であり、kは、4~7で変化し、Qは、中性電子供与性化合物、例えば、水、アミン、アルコール、ホスフィン、及びエーテルの群から選択され、zは、0~5の範囲であり、非化学量論値を含む。少なくとも21個の総炭素原子、例えば、少なくとも25個、少なくとも30個、又は少なくとも35個の炭素原子が、全ての配位子の有機基の間に存在し得る。追加の好適なモリブデン化合物は、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,723,685号に記載されている。
【0091】
含まれる場合、油溶性モリブデン化合物は、約10ppm~約1000ppm、約20ppm~約700ppm、約20ppm~約550ppm、約20ppm~約300ppm、又は約20ppm~約150ppmのモリブデンを提供するのに十分な量で存在し得る。
【0092】
一般論として、本明細書に記載の混合フリート潤滑組成物は、以下の表2に列挙した範囲の添加剤成分を含み得る。
【0093】
【表2】
【0094】
上記の各成分の百分率は、全最終潤滑油組成物の重量に基づく各成分の重量%を表している。潤滑油組成物の残部は、1つ以上の基油からなる。本明細書に記載の組成物を配合する際に使用される添加剤は、個々に又は様々な部分的な組み合わせで基油にブレンドすることができる。しかしながら、添加剤濃縮物(すなわち、添加剤プラス炭化水素溶媒のような希釈剤)を使用して、成分の全てを同時に混合することが好適であり得る。
【0095】
完全に配合された潤滑剤は、従来は、多くの場合、分散剤/阻害剤パッケージ又はDIパッケージと称される添加剤パッケージを含有し、典型的には、配合物において必要とされる特定の性能及び/又は特徴を付与する。好適なDIパッケージは、例えば、米国特許第5,204,012号及び同第6,034,040号に記載されている。添加剤パッケージに含まれる添加剤の種類には、分散剤、シール膨潤剤、酸化防止剤、消泡剤、潤滑剤、防錆剤、腐食防止剤、解乳化剤、粘度指数向上剤などがあり得る。これらの成分のいくつかは当業者に周知であり、一般に、本明細書に記載の添加剤及び組成物と共に従来の量で使用される。
【0096】
本説明の潤滑剤、成分の組み合わせ、又は個々の成分は、様々な種類の内燃エンジンにおいて潤滑剤としての使用に好適であり得る。好適なエンジンの種類としては、ヘビーデューティーディーゼル、乗用車、ライトデューティーディーゼル、中速ディーゼル、又は船舶用エンジンが含まれ得るが、それらに限定されない。内燃エンジンは、ディーゼル燃料エンジン、ガソリン燃料エンジン、天然ガス燃料エンジン、バイオ燃料エンジン、混合ディーゼル/バイオ燃料燃料エンジン、混合ガソリン/バイオ燃料燃料エンジン、アルコール燃料エンジン、混合ガソリン/アルコール燃料エンジン、圧縮天然ガス(CNG)燃料エンジン、又はそれらの混合物であり得る。ディーゼルエンジンは、圧縮点火エンジンであり得る。ガソリンエンジンは、火花点火エンジンであり得る。内燃エンジンは、電力の電源又はバッテリー電源と組み合わせても使用され得る。そのように構成されたエンジンは、通常は、ハイブリッドエンジンとして知られている。内燃エンジンは、2ストローク、4ストローク、又はロータリーエンジンであり得る。好適な内燃エンジンとしては、船舶用ディーゼルエンジン(内陸用船舶など)、航空ピストンエンジン、低負荷ディーゼルエンジン、並びにオートバイ、自動車、エンジン車、及びトラックのエンジンが挙げられる。
【0097】
内燃エンジンのための潤滑油組成物は、硫黄、リン、又は硫酸塩灰分(ASTM D-874)含有量に関係なく、任意のエンジン潤滑剤に好適であり得る。本明細書のエンジンオイル潤滑剤の硫黄含有量は、約1重量パーセント以下、又は約0.8重量パーセント以下、又は約0.5重量パーセント以下、又は約0.3重量パーセント以下、又は約0.2重量パーセント以下であり得る。一実施形態では、硫黄含有量は、約0.001重量パーセント~約0.5重量パーセント、又は約0.01重量パーセント~約0.3重量パーセントの範囲であり得る。本明細書のエンジンオイル潤滑剤の全硫酸塩灰分は、約2重量パーセント以下、又は約1.5重量パーセント以下、又は約1.1重量パーセント以下、又は約1重量パーセント以下、又は約0.8重量パーセント以下、又は約0.5重量パーセント以下であり得る。一実施形態では、硫酸塩灰分は、約0.1重量パーセント~約0.9重量パーセント、又は約0.1重量パーセント又は約0.2重量パーセント~約0.8重量パーセントであり得る。
【0098】
更に、本説明の潤滑剤は、1つ以上の業界仕様要件、例えば、ILSAC GF-3、GF-4、GF-5、GF-6、CK-4、FA-4、CJ-4、CI-4 Plus、CI-4、ACEA A1/B1、A2/B2、A3/B3、A3/B4、A5/B5、A7/B7、C1、C2、C3、C4、C5、C6、E4/E6/E7/E9、Euro 5/6、JASO DL-1、低SAPS、中SAPS、又は相手先商標製造会社の仕様、例えば、DexosTM 1、DexosTM 2、MB-Approval 229.51/229.31、VW 502.00、503.00/503.01、504.00、505.00、506.00/506.01、507.00、508.00、509.00、BMW Longlife-04、Porsche C30、Peugeot Citroen Automobiles B71 2290、B71 2296、B71 2297、B71 2300、B71 2302、B71 2312、B71 2007、B71 2008、Ford WSS-M2C153-H、WSS-M2C930-A、WSS-M2C945-A、WSS-M2C913A、WSS-M2C913-B、WSS-M2C913-C、GM 6094-M、Chrysler MS-6395、又は本明細書に記載されていない過去若しくは将来の乗用車用モーターオイル仕様又はヘビーデューティーディーゼルオイル仕様を満たすのに好適であり得る。乗用車モーターオイル用途のためのいくつかの実施形態では、最終流体におけるリンの量は、驚くべきことに、わずか約800ppm以下又は600ppm以下である。ヘビーデューティーディーゼル用途のためのいくつかの実施形態では、最終流体中のリンの量はまた、驚くべきことに約800ppm以下である。
【0099】
特定の用途では、本開示の潤滑剤はまた、自動変速機用流体、無段変速機用流体、手動変速機用流体、ギアオイル、パワートレイン部品に関連する他の流体、オフロード用流体、パワーステアリング用流体、風力タービンで使用される流体、コンプレッサ、作動流体、スライドウェイ流体(slideway fluid)、及び他の工業用流体にも好適であり得る。特定の用途では、これらの潤滑用途は、ギアボックス、パワーテイクオフ及びクラッチ(複数可)、リアアクスル、リダクションギア、湿式ブレーキ、及び油圧アクセサリの潤滑を含み得る。
【実施例
【0100】
以下の実施例は、本開示の例示的な実施形態を説明するものである。これらの実施例並びに本出願の他の箇所において、全ての比率、部、及び百分率は、別段の指示がない限り重量基準である。これらの実施例は、例示のみを目的として提示されており、本明細書で開示される発明の範囲を限定することを目的としない、ことを意図している。
【0101】
比較例1
比較潤滑組成物C-1、C-2、及びC-3を、アリソン摩擦試験TES-439(Allison Transmissionから入手可能、2010年11月リリース)及び修正ASTM D8291-21aのシーケンスIX低速プレイグニッション(LSPI)試験に供した。2回の反復のみが報告されるように、LSPI試験をわずかに修正した。以下の表3は、分散剤、酸化防止剤、有機モリブデン添加剤、消泡剤、無灰耐摩耗添加剤、オレフィンコポリマー粘度調整剤、及び基油ブレンドを含む他の添加剤を同じ量で使用して、15W-40流体としてグループIIの基油を使用して配合された比較潤滑組成物に含まれた洗剤系並びに耐摩耗及び摩擦系を示している。アリソン摩擦及びLSPI特性の結果を表4及び5に示す。合格/不合格基準は、TES試験ガイドラインに記載されており、またAllison Transmissionから受け取った摩擦プレートの設定に従うように記載されており、及び/又は上述のASTM試験ガイドラインに提供されている。
【0102】
【表3】
【0103】
表3の洗剤系では、石炭酸カルシウムは、250のTBN及び9.3重量パーセントのカルシウム(413のニートTBN)を有し、スルホン酸カルシウム1は、300のTBN及び11.9重量パーセントのカルシウム(605のニートTBN)を有し、スルホン酸マグネシウムは、400のTBN及び9.6重量パーセントのマグネシウム(680のニートTBN)を有し、スルホン酸カルシウム2は、28のTBN及び2.6重量パーセントのカルシウム(69のニートTBN)を有していた。耐摩耗及び摩擦系では、ZDDP Aは、亜鉛ジアルキルジチオホスフェートであり、アルキル基の約40%はC3であって、二級アルコール(イソプロパノール)から誘導され、アルキル基の約40%はC4であって、一級アルコール(イソブタノール)から誘導され、アルキル基の約20%はC8であって、一級アルコール(2-エチルヘキサノール)から誘導されている混合アルキル基を含んでいた。ZDDP Aは、約8.4重量%のリン、17.8重量%の硫黄、及び約9.2重量%の亜鉛を含有していた。この実施例で使用したZDDP Bは、亜鉛ジアルキルジチオホスフェートであり、アルキル基の100%は、C8であり、一級アルコール(2-エチルヘキサノール)から誘導された。ZDDP Bは、約6.1重量%のリン、約12.7重量%の硫黄、及び約6.75重量%の亜鉛を含有していた。
【0104】
【表4】
注:合格/不合格基準は、特定の摩擦プレートを供給する際にAllison Transmissionによって提供されるスリップ時間及び摩擦係数の最小値及び最大値に基づいている。
【0105】
【表5】
【0106】
表4及び5に示したように、比較潤滑剤C-1、C-2、又はC-3のいずれも、乗用車モーターオイルに関するシーケンスIX LSPI要件及びヘビーデューティーエンジン用途に関するアリソン摩擦要件の両方に合格することができなかった。流体C-1及びC-3は、アリソン摩擦試験に合格したが、これらの流体はLSPI試験に不合格であった。流体C-2は、洗剤からのマグネシウムを含んでおり、良好なLSPI特性を有していたが、アリソン摩擦特性に関しては不合格であった。したがって、比較潤滑組成物C1、C2、又はC3のいずれも、圧縮点火ヘビーデューティー用途及びスパーク点火乗用車用途の両方に対応する混合フリートではない。
【0107】
実施例1
本開示と一致する本発明の潤滑組成物を、LSPI及びアリソン摩擦に関して評価した。以下の表6は、分散剤、酸化防止剤、有機モリブデン添加剤、消泡剤、無灰耐摩耗添加剤、オレフィンコポリマー粘度調整剤、及び基油ブレンドを含む、比較例1の比較流体において使用される他の添加剤の同じ量を使用して15W-40流体としても配合された本発明の流体に含まれた洗剤並びに耐摩耗及び摩擦系を示している。本発明の組成物I-1はグループIIIの基油を使用し、本発明の組成物I-2はグループIIの基油を使用して、最終流体を得た。一方、その他の添加剤及び添加量は比較例1と同じである。LSPI及びアリソン摩擦試験の結果を以下の表7及び8に示す。
【0108】
【表6】
【0109】
表6の洗剤系では、添加剤は比較例1の洗剤系と同じであった。耐摩耗及び摩擦系では、ZDDP Aも比較例1~3で使用したものと同じであり、ZDDP Bは比較例3で使用したものと同じであった。性能試験を以下の表7及び8に示す。
【0110】
【表7】
注:合格/不合格基準は、特定の摩擦プレートを供給する際にAllison Transmissionによって提供されるスリップ時間及び摩擦係数の最小値及び最大値に基づいている。
【0111】
【表8】
【0112】
上記の表7及び8に示したように、発明の潤滑組成物I-1及びI-2は、火花点火乗用車モーターオイルに関するLSPI特性試験及びまた圧縮点火ヘビーデューティーエンジン用途に関するアリソン摩擦試験の両方に合格した。これらの組成物は、本明細書に記載のユニークな洗剤系並びに耐摩耗及び摩擦系を含む。したがって、潤滑組成物I-1及びI-2は両方とも、混合フリート用途又は使用に好適であった。
【0113】
本明細書の実施形態では、潤滑組成物は、2回の反復を使用するASTM D8291-21aに準拠したシーケンスIX低速プレイグニッション試験に準拠して、5回以下の平均イベント数を示し、潤滑組成物は、アリソン・トランスミッション摩擦試験TES-439(2010年11月)に準拠すると、約10パーセント以下(好ましくは、5パーセント以下、又は更には2パーセント以下)の、初期スリップ時間からの絶対値パーセント変化を有し、アリソン・トランスミッション摩擦試験TES-439(2010年11月)に準拠すると、10パーセント以下(好ましくは、5パーセント以下、又は更には2パーセント以下)の、初期摩擦係数(中央値)からの絶対値パーセント変化を有する。
【0114】
上記の実施例において特に明記しない限り、カルシウム、マグネシウム、リン、及び亜鉛の量は、個々の添加剤によって提供された各元素の処理率及び処理量に基づいて計算される。
【0115】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、明示的かつ明白に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「酸化防止剤(an antioxidant)」への言及は、2つ以上の異なる酸化防止剤を含む。本明細書で使用される場合、「含む(include)」という用語及びその文法上の変形は、非限定的であることが意図されており、リスト内の項目の列挙は、列挙された項目に置換又は追加することができる他の同様の項目を排除するものではない。
【0116】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的のために、別段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用される量、パーセンテージ又は割合、及び他の数値を表す全ての数は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されるものと理解されるべきである。したがって、そうでないと示されない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本開示によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数を考慮して、通常の丸め手法を適用することによって解釈されるべきである。
【0117】
本明細書に開示される各成分、化合物、置換基又はパラメータは、単独で、又は本明細書に開示されるありとあらゆる他の成分、化合物、置換基又はパラメータのうちの1つ以上と組み合わせて使用するために開示されていると解釈されるべきであることを理解されたい。
【0118】
本明細書に開示される各範囲は、同じ有効数字を有する開示範囲内の各特定の値の開示として解釈されるべきであることが更に理解される。したがって、例えば、1~4の範囲は、値1、2、3及び4並びにそのような値の任意の範囲の明示的な開示として解釈されるべきである。
【0119】
本明細書に開示される各範囲の各下限は、同じ成分、化合物、置換基又はパラメータについて本明細書に開示される各範囲の各上限及び各範囲内の各特定の値と組み合わせて開示されるものとして解釈されるべきであることが更に理解される。したがって、本開示は、各範囲の各下限を各範囲の各上限若しくは各範囲内の各特定の値と組み合わせることによって、又は各範囲の各上限を各範囲内の各特定の値と組み合わせることによって導出される全ての範囲の開示として解釈されるべきである。すなわち、広い範囲内の終点値の間の任意の範囲も本明細書で論じられることも更に理解される。したがって、1~4の範囲は、1~3、1~2、2~4、2~3などの範囲も意味する。
【0120】
更に、説明又は実施例に開示される成分、化合物、置換基又はパラメータの特定の量/値は、範囲の下限又は上限のいずれかの開示として解釈されるべきであり、したがって、その成分、化合物、置換基又はパラメータについての範囲を形成するために、本出願の他の場所に開示される同じ成分、化合物、置換基又はパラメータについての範囲又は特定の量/値の任意の他の下限若しくは上限と組み合わせることができる。
【0121】
特定の実施形態を説明してきたが、現在予見されていないか又は予見することができない代替、修正、変形、改善、及び実質的な均等物が、出願人又は他の当業者に思い浮かぶ可能性がある。したがって、出願され、補正され得る添付の特許請求の範囲は、全てのそのような代替、修正、変形、改善、及び実質的な均等物を包含することが意図される。
【0122】
以下の実施例は、本開示の方法及び組成物を例示するが、限定するものではない。当該分野において通常遭遇し、当業者に明らかである様々な条件及びパラメータの他の好適な改変及び適応は、本開示の趣旨及び範囲内である。本明細書で引用される全ての特許及び刊行物は、参照によりその全体が本明細書に完全に組み込まれる。実施例1~6は、マクロモノマーアルコールに反応したエチレン単位及びプロピレン単位を含む粘度指数向上剤を含む異なる潤滑組成物と、それらを製造するための方法とを例示している。