(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】超音波センサシステムのためのコンピュータによるノイズ補償
(51)【国際特許分類】
G01S 7/526 20060101AFI20240229BHJP
G01S 15/931 20200101ALI20240229BHJP
【FI】
G01S7/526 M
G01S15/931
(21)【出願番号】P 2022514855
(86)(22)【出願日】2020-09-07
(86)【国際出願番号】 EP2020074905
(87)【国際公開番号】W WO2021044048
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-05-06
(31)【優先権主張番号】102019123822.6
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508108903
【氏名又は名称】ヴァレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217836
【氏名又は名称】合田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】シルビオ、サロモン
(72)【発明者】
【氏名】マリアン、ロージャー
(72)【発明者】
【氏名】ウベ、クプフェルナゲル
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-173141(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102017104148(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0149923(US,A1)
【文献】特開2009-020086(JP,A)
【文献】特開2019-086407(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102004031310(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102008016558(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102013204910(DE,A1)
【文献】米国特許第5124954(US,A)
【文献】国際公開第2007/012958(WO,A2)
【文献】国際公開第2019/137784(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0012608(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0157940(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/52- 7/64
G01S15/00-15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁材(2)を有する車両に対して隠蔽または非隠蔽態様で前記壁材(2)に取り付けられた超音波センサシステム(1)のためのコンピュータによるノイズ補償方法であって、
-前記壁材(2)に関するノイズ信号情報(3)および/または空気伝搬音信号情報(4)を含む基準周囲情報を、前記超音波センサシステム(1)の超音波センサ(5)を使用して検出するステップ(100)と、
-前記基準周囲情報を記憶するステップ(200)と、
-前記壁材(2)に関するノイズ信号情報(3)および/または空気伝搬音信号情報(4)を含むリアルタイム周囲情報を、前記超音波センサ(5)を使用して検出するステップ(300)と、
基準周囲情報およびリアルタイム周囲情報の前記周囲情報ピース間の差分信号を、コンピュータユニット(6)を使用して形成するステップ(400)と、
を有し、
前記基準周囲情報の検出ステップ(100)は、
外的要因によって開始されることを特徴とする、コンピュータによるノイズ補償方法。
【請求項2】
前記車両の前記壁材(2)は、少なくとも1.0ミリメートルの材料厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載のコンピュータによるノイズ補償方法。
【請求項3】
前記車両の前記壁材(2)は、3.0ミリメートルを含む最大で3.0ミリメートルの材料厚さを有することを特徴とする、請求項1または2に記載のコンピュータによるノイズ補償方法。
【請求項4】
前記差分信号の平滑化および/またはフィルタリングを特徴とする、請求項1~3の一項に記載のコンピュータによるノイズ補償方法。
【請求項5】
前記超音波センサ(5)は、少なくとも40kHzを含む40kHz~80kHzを含む80kHzまでの周波数を有することを特徴とする、請求項1~4の一項に記載のコンピュータによるノイズ補償方法。
【請求項6】
前記周囲情報ピース間の前記差分信号(400)は、生データ、エンベロープ、および/または他のフィルタリングされた受信信号、例えば前記超音波センサ(5)の送信信号との相関に基づいて形成されることを特徴とする、請求項1~5の一項に記載のコンピュータによるノイズ補償方法。
【請求項7】
前記基準周囲情報の検出ステップ(100)は、所定の時間間隔で繰り返されることを特徴とする、請求項1~6の一項に記載のコンピュータによるノイズ補償方法。
【請求項8】
前記所定の時間間隔は、1分未満であることを特徴とする、請求項7に記載のコンピュータによるノイズ補償方法。
【請求項9】
温度変化および/または湿度変化
によって、前記基準周囲情報
の検出ステップ(100)
が開始されることを特徴とする、請求項1~8の一項に記載のコンピュータによるノイズ補償方法。
【請求項10】
前記基準周囲情報において空気伝搬音信号情報(4)により検出された少なくとも1つの物体の信号成分が、その物体の位置が前記差分信号に応じて変化した場合、負の信号を生成することを特徴とする、請求項1~9の一項に記載のコンピュータによるノイズ補償方法。
【請求項11】
物体追跡のための前記リアルタイム周囲情報において、前記負の信号は、その逆を正の信号として利用されることを特徴とする、請求項10に記載のコンピュータによるノイズ補償方法。
【請求項12】
前記コンピュータユニット(6)は、前記超音波センサシステム
(1)に内蔵される特定用途向け回路であることを特徴とする、請求項1~11の一項に記載のコンピュータによるノイズ補償方法。
【請求項13】
前記
コンピュータによるノイズ補償方法は、コンピュータによる固体伝搬音補償方法であり、前記ノイズ信号情報(3)は、固体伝搬音信号情報であることを特徴とする、請求項1~12の一項に記載のコンピュータによるノイズ補償方法。
【請求項14】
請求項1~13の一項に記載の方法のステップを実施するための手段を有し、
前記手段は、隠蔽態様で取り付けられた超音波センサシステムに対してコンピュータによりノイズを補償する
、コンピュータによる超音波補償システム。
【請求項15】
請求項14に記載のコンピュータによる超音波補償システムを有する車両。
【請求項16】
コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムがコンピュータにより実行されると、前記コンピュータに請求項1~13の一項に記載の方法を実施させるコマンドを備える、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に車両に対して隠蔽または非隠蔽態様で取り付けられた超音波センサシステムのためのコンピュータによるノイズ補償方法に関する。
【0002】
また、本発明は、本方法のステップを実施するための手段を有するコンピュータによるノイズ補償システムに関する。
【0003】
さらに、本発明は、コンピュータによるノイズ補償システムを有する車両に関する。
【0004】
さらにまた、本発明は、コンピュータプログラムであって、コンピュータプログラムがコンピュータにより実行されると、コンピュータに本方法のステップを実施させるコマンドを備えるコンピュータプログラムに関する。
【0005】
さらにまた、本発明は、コンピュータプログラムを送信するデータキャリア信号に関する。
【0006】
さらにまた、本発明は、コンピュータにより実行されると、コンピュータに本方法のステップを実施させるコマンドを備えるコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0007】
周囲監視用の超音波トランスデューサまたは超音波センサシステムは、通常、車両に非隠蔽態様で取り付けられる。すなわち、車両の壁材における開口が、超音波トランスデューサの領域に存在する。
【0008】
超音波トランスデューサまたは超音波センサシステムを隠蔽態様で、したがって外部から見えないように取り付けることは視覚的に好適であるが、あまり大規模に主張されていない。なぜならば、すぐ隣接する車両構造、特にその壁材における寄生的な固体伝搬音の振幅が、超音波信号の送信動作中に結果として生じ、さらなる対策がなければゆっくりとしか減衰せず、エコーの形態で空中経路を介して結合する超音波信号の確実な検出を著しく妨害するからである。
【0009】
この点に関して、例えば車両のケースに隠蔽態様で取り付けられた超音波センサシステムとは、単数の超音波センサまたは複数の超音波センサが外部から見えないということを意味する。超音波センサシステムが発する超音波信号は、センサが配置された壁材を通過する。このプロセスの間に、超音波信号は、超音波検出のために壁材を2回通過する。具体的には、隠蔽態様で取り付けられた超音波センサシステムによる超音波信号の送信中および受信中に通過する。このプロセスにおいて、壁材は振動させられる。この振動は、エコーの飛行時間測定を妨害するほど長時間に亘って共振し続ける。
【0010】
固体伝搬音とも称されるこのような振動を機械的手段を使用して抑制することが、先行技術から知られている。
【0011】
隠蔽態様の周囲検知用の超音波トランスデューサを使用するために、最新の先行技術は、前記超音波トランスデューサのすぐ隣接する周囲に固体伝搬音の振幅を減衰させるための材料を設けることを開示している。換言すれば、それぞれの超音波トランスデューサの隣接領域における構造体を、的を絞って減衰させる。超音波トランスデューサには、空気伝搬超音波を送信および受信するように超音波トランスデューサ膜が機械的に結合されている。
【0012】
出願公開DE 10 2017 127 587 A1は、減衰効果を高めるために繊維を混合したブチルゴム製の減衰マットであって、より大きな温度範囲で減衰効果を実現する減衰マットを開示している。
【0013】
出願公開DE 10 2015 116 442 A1は、異なる温度で機能する2つの異なる減衰要素を有する減衰装置を開示している。
【0014】
このような減衰手段の使用は、いくつかの問題を伴う。具体的には、温度依存性の高い減衰特性、複雑な設置プロセス、トランスデューサを配置するためにスペースが非常に制限されること、減衰材料による質量の増加、車両毎に個別の解決策が必要であるため、開発面で支出が増大すること、そして、追加コストという問題がある。
【0015】
先行技術による不所望の固体伝搬音を低減するために、超音波トランスデューサまたは超音波センサシステムの直近に補強要素を使用することがさらに考えられる。これにより、固体伝搬音波は、その伝播が顕著に妨げられる。
【0016】
出願公開DE 10 2012 106 700 A1は、壁の振動を低減することが意図された補強要素を開示している。
【0017】
この方法には、これまで解決策がなかった問題、具体的には、目立ちやすさ、設置費用の増大、超音波センサシステムの設置スペースに関する制約、補強材による質量の増加、および追加コストという問題が付随する。
【0018】
研究の1つのさらなる発展形では、壁材を伝播する近隣のセンサからの超音波信号超音波信号を遮断することが考えられている。これは、例えば閾値を調整したり、近隣のセンサからの干渉信号が到達する時間ウィンドウを遮断したりすることによる信号処理の一部として行われる。しかしながら、このプロセスは、多大な支出を伴うにもかかわらず、不正確な結果をもたらすため、事故の起きる可能性が否定できないことが分かっている。
【0019】
先行技術からの上述の例は、特に固体伝搬音、および一般的なノイズの補償がまだ解決されるべき問題であることを示している。
【発明の概要】
【0020】
上述の先行技術から進んで、本発明は、上述の欠点を克服する、選択的に隠蔽または非隠蔽態様で取り付けられた超音波センサシステムのためのコンピュータによるノイズ補償方法、コンピュータによる超音波補償システム、車両、コンピュータプログラム、データキャリア信号、およびコンピュータ可読媒体を特定するという目的に基づいている。
【0021】
この目的は、本発明によれば、独立請求項の特徴により達成される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項に特定される。
【0022】
本発明によれば、特に壁材を有する車両に対して隠蔽または非隠蔽態様で取り付けられた超音波センサシステムのためのコンピュータによるノイズ補償方法が特定される。前記コンピュータによるノイズ補償方法は、
前記壁材に関するノイズ信号情報および/または空気伝搬音信号情報を含む基準周囲情報を、前記超音波センサシステムの超音波センサを使用して検出するステップと、
前記基準周囲情報を記憶するステップと、
前記壁材に関するノイズ信号情報および/または空気伝搬音信号情報を含むリアルタイム周囲情報を、前記超音波センサを使用して検出するステップと、
基準周囲情報およびリアルタイム周囲情報の前記周囲情報ピース間の差分信号を、コンピュータユニットを使用して形成するステップと、
を有する。
【0023】
コンピュータによるノイズ補償方法は、好適には、コンピュータによる固体伝搬音補償方法である。好適には、本発明による方法の最後のステップは、車両内で実施される。
【0024】
また、本発明は、本方法のステップを実施するための手段を有するコンピュータによる超音波補償システムを特定する。コンピュータによる超音波補償システムは、自律型又は半自律型車両の対応する自律運転又は半自律運転を支援するための運転支援システム、又は様々な運転状況において車両のドライバーを支援するためのドライバー支援システムの一部であり得る。
【0025】
さらに、本発明は、コンピュータによる超音波補償システムを有する車両を特定する。車両は、好適には、ドライバーの自車両である。
【0026】
さらに、本発明は、コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムがコンピュータにより実行されると、前記コンピュータに本方法のステップを実施させるコマンドを備えるコンピュータプログラムを特定する。コンピュータプログラムとは、特定のクラスの問題を解決するために設計された、特定のタスクを実施するための命令の集合である。プログラムの命令は、コンピュータにより実行されるように設計されている。コンピュータが機能するためには、コンピュータがプログラムを実行可能であることが必要である。
【0027】
さらに、本発明は、前記コンピュータプログラムを送信するデータキャリア信号を特定する。
【0028】
さらに、本発明は、コンピュータにより実行されると、前記コンピュータに本方法のステップを実施させるコマンドを備えるコンピュータ可読媒体を特定する。
【0029】
したがって、本発明の基本的なコンセプトは、例えば、壁材の振動やノイズ、特に固体伝播音を機械的に減衰させるのではなく、振動を信号処理操作の一部として考慮してフィルタリングすることである。コンピュータによるノイズ補償の際に、ノイズにおける温度依存性の変化を考慮することも可能である。したがって、本方法によれば、超音波センサシステムによる信頼性の高い検出が可能となる。例えば壁材の下に取り付けられた超音波センサシステムは、継続的に正確な検出結果を達成するように同時かつ永続的に検出可能である多数の超音波センサを有し得る。ここで紹介される方法により、設計および材料の両方に関して支出を大幅に削減することができるため、隠蔽態様の超音波検出システムの同等、さらには向上した性能を、大幅に削減されたコストと重量において実現することができる。本固体伝播音補正方法は、非隠蔽態様で取り付けられた超音波検出システムにおいても使用され得る。この場合、膜の残響により発生するそれぞれの信号であって、同様に固体伝播音として解釈され得る信号が、測定毎にコンピュータ操作により除去される。本例における膜は、例えば壁材を形成する。超音波トランスデューサの非隠蔽構造では、例えば10cm前後の短距離での検出による検出結果の質が向上する。
【0030】
原則として、特にノイズ信号情報に関して予め記憶された基準周囲情報が利用可能とされ得る。これらの検出は、例えば、対応して構成された音声スタジオにて吸音材を使用することにより実施され得る。
【0031】
超音波とは、人間の可聴周波数範囲を超える周波数の音を意味すると理解される。したがって、超音波は、好適には16kHzからの周波数を含む。おおよそ1GHzを超える周波数の音は、ハイパーサウンドとも称される。これに対し、人間の可聴周波数帯以下の周波数はインフラサウンドと称される。
【0032】
気体および液体では、超音波は縦波の形態で伝播する。固体では、せん断応力により横波も伝播する。空気伝搬音から固体への移行、またはその逆への移行は、効率上の理由から、特に適合した音響インピーダンスおよび特定の厚さを有する連結媒体を使用して実施され得る。
【0033】
障害物の材料に応じて、超音波は、材料により反射する、吸収される、散乱する、または透過する。他の波と同様に、屈折、回折、干渉も発生するため、超音波システムは高感度な設計を有する。
【0034】
空気は、周波数が強力に増大する超音波に対して減衰を呈する。これに対して、液体では、超音波は低い減衰で伝播する。ただし、一般に、減衰は、温度変動および/または湿度変化にも基づき得る。
【0035】
したがって、本方法の第1ステップは、基準周囲情報を検出することである。
【0036】
本発明では、単一の情報ピースまたは複数の情報ピースを区別する必要がない。なぜならば、このようにしても発明の進歩性に寄与しないからである。また、基準周囲情報は、壁材に関するノイズ信号情報および/または空気伝搬音信号情報のみを含み得る。
【0037】
ここで使用される壁材は、例えば車体部材等の車両の外壁、またはスライドルーフに使用されるゴリラガラスである。
【0038】
ノイズ信号情報とは、所望の音検出に追加的に発生し、場合によりこれを妨害する信号情報のことである。補償が意図されているのは、まさにこの信号情報である。
【0039】
空気伝搬音信号情報とは、壁材の外部にある超音波である。
【0040】
次に、基準周囲情報は保存される。このステップは、所定の条件にしたがって、一回のみ実施しても、繰り返してもよい。本方法を実施するには、先行するステップで検出された基準周囲情報が、後で検索可能であることが必須である。
【0041】
基準周囲情報が検索可能なものとして保存された場合、壁材のノイズ信号情報、特に固体伝搬音信号情報および/または空気伝搬音信号情報を含むリアルタイム周囲情報の検出が、超音波センサを使用して実施される。このようにして、既存の基準周囲情報に加えてさらなるリアルタイム情報が検出される。異なる検出の時点間に検出した物体の距離に変化があった場合、これも検出される。
【0042】
最後に、基準周囲情報およびリアルタイム周囲情報の前記周囲情報ピース間の差分信号が、コンピュータユニットを使用して形成される。このようにして、基準測定値が、時間領域において、後のリアルタイム測定値から減算される。本例において、基準周囲情報をリアルタイム周囲情報から減算してもよいし、リアルタイム周囲情報を基準周囲情報から減算してもよい。ここで、演算アルゴリズムが一様に設定されていることに留意されたい。
【0043】
以降のステップは、先行技術にしたがって、換言すれば、外部に取り付けられた超音波センサの場合と同様に実施される。例えば閾値を超える事態をチェックするように、例えば信号が典型的に使用される。本例においては、差分信号が使用される。
【0044】
本発明の有利な実施形態によれば、前記車両の前記壁材は、少なくとも1.0ミリメートルの材料厚さを有する。
【0045】
本発明の有利な実施形態によれば、前記車両の前記壁材は、3.0ミリメートルを含む最大で3.0ミリメートルの材料厚さを有する。
【0046】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記差分信号の平滑化および/またはフィルタリングを特徴とする。後続の演算プロセスのために準備された差分信号により、車両周囲のより信頼性の高い検出、またはより誤差の少ない検出が可能となる。
【0047】
本発明の有利な実施形態によれば、前記超音波センサは、少なくとも40kHzを含む40kHz~80kHzを含む80kHzまでの周波数を有する。この周波数帯域におけるノイズ、特に固体伝搬音は、容易に補償することができるため、車両周囲のより信頼性の高い検出、またはより誤差の少ない検出が可能となることが分かっている。
【0048】
本発明の有利な実施形態によれば、前記周囲情報ピース間の前記差分信号は、生データ、エンベロープ、および/または他のフィルタリングされた受信信号、例えば前記超音波センサの送信信号との相関に基づいて形成される。生データには低い演算能力しか必要ないため、データ利用が促進される。
【0049】
本発明の有利な実施形態によれば、前記基準周囲情報の検出ステップは、所定の時間間隔で繰り返される。原則として、検出された基本周囲情報は、検出された物体も含み得る。最も確実かつ正確な検出を可能とするように、基準周囲情報の検出は、一実施形態において、定期的な時間間隔で実施される。
【0050】
上述の実施形態の有利な実施形態によれば、前記所定の時間間隔は、1分未満である。最も確実かつ正確な検出を可能とするための好適な時間間隔は、特に少なくとも10ミリ秒である。
【0051】
本発明の有利な実施形態によれば、前記基準周囲情報の検出ステップは、イベントベースで繰り返される。これは、イベントとしての外的要因が、基準周囲情報の検出を開始するということを意味する。これにより、演算処理の回数が少なくなる。
【0052】
上述の実施形態の有利な実施形態によれば、温度変化および/または湿度変化が、前記基準周囲情報の繰り返される検出ステップのトリガとなるように、前記基準周囲情報の検出ステップは、イベントベースで繰り返される。温度および/または湿度の変化が所定の大きさを超えた場合、確実な検出を可能とするように、イベントとしてのこれらの影響は、新たな検出を繰り返し実施するのに適していることが分かっている。
【0053】
本発明の有利な実施形態によれば、前記基準周囲情報において空気伝搬音信号情報により検出された少なくとも1つの物体の信号成分が、その物体が車両に対する位置、またはそれぞれの超音波トランスデューサに対する位置を変化させた場合、前記差分信号において負の信号を生成する。この構成により、検出結果の正確性および信頼性を向上させるように使用可能なさらなるデータを入手することができる。負の信号または物体は、特に振幅変化および/または位相変化に基づいて捕捉され得る。
【0054】
上述の実施形態の有利な実施形態によれば、物体追跡のための前記リアルタイム周囲情報において、前記負の信号はその逆を正の信号として利用される。前記負の信号は、既知の基準信号に対する正の信号として、負の信号の特性データに基づいて物体を追跡するように使用され得る。
【0055】
本発明の有利な実施形態によれば、前記コンピュータユニットは、前記超音波センサシステムに内蔵される特定用途向け回路である。これにより、費用対効果の高い構造ユニットでの信頼性のあるデータ処理が可能となる。特定用途向け集積回路、すなわちASICは、集積回路の形態で実現された電子回路である。ASICの機能は変更できないが、製造コストは低く、一度限りのコストは大きい。
【0056】
本発明の有利な実施形態によれば、ここで紹介されたコンピュータによる音補償方法は、非隠蔽態様の超音波トランスデューサとの使用も見いだされる。この目的は、膜の形態にある壁材の残響により発生する信号であって、同様に固体伝播音として解釈され得る信号を、測定毎に演算することによって、超音波トランスデューサの近距離における物体検出を向上可能とすることである。
【0057】
本発明の有利な実施形態によれば、前記方法は、コンピュータによる固体伝搬音補償方法であり、前記ノイズ信号情報は、固体伝搬音信号情報である。固体伝搬音信号情報は、ノイズ信号情報の一種であり、超音波センサにより検出される固体伝搬音は、固体伝搬音信号情報と考えられ、これは壁材の振動に対応する。このような応用は、例えば車両に隠蔽態様で取り付けられた超音波トランスデューサに特に適している。
【0058】
本発明の有利な実施形態によれば、ここで紹介されたコンピュータによる音補償方法は、隠蔽および/または非隠蔽態様の超音波トランスデューサとの利用が見いだされる。この目的は、例えばトレーラーの連結部や自転車運搬金具からの単数または複数の不所望の空気伝搬音信号を的を絞って遮断すること、また、例えば車両の下方の物体を車両底部の領域に配置された超音波トランスデューサにより検出するために、特定の場合に複雑であり得る周囲のエコー状況における非常にわずかな変化を検出すること、および/または、例えば温度変化、汚れ、変形、および/または損傷による固体伝搬音パターンにおける変化を検出することである。損傷とは、例えば損傷したガラス窓枠と考えることができる。ここで、少なくとも1つの超音波トランスデューサをガラス窓枠に取り付けて、その固体伝搬音を測定することができる。ガラス窓枠が破損すると、検出される固体伝搬音が変化する。つまり、ガラスの損傷が推定され得る。この結果、最初のノイズ信号と比較して同一のままであるノイズ信号が、壊れていないガラス窓枠に対する信号として機能する。
【0059】
以下、添付図面を参照しつつ好適な実施形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。図示の特徴は、別個でも組み合わせても本発明の態様を表し得る。異なる例示的な実施形態の特徴は、1つの例示的な実施形態から別の実施形態に移行し得る。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】
図1は、本発明の好適な実施形態による超音波センサシステムの概略図を示す。
【
図2】
図2は、隠蔽態様で取り付けられた超音波センサシステムのコンピュータによるノイズ補償方法のフローチャートを示す。
【
図3】
図3は、取り付けられた超音波センサシステムのコンピュータによるノイズ補法方法の例示的な時間領域信号を示す。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1は、隠蔽態様で取り付けられた超音波センサシステム1を示す。超音波センサシステム1は、車両の壁材2に配置された超音波センサ5であって、ノイズ信号情報3、特に固体伝搬音信号情報、および空気伝搬音信号情報4を検出するための超音波センサ5を有している。特定の好適な例示的実施形態の一部として、以下のテキストでは、ノイズ信号情報3は固体伝搬音情報であると仮定するものとする。特定の問題を解決するために例示的な実施形態において、隠蔽態様で取り付けられた超音波センサ5が例として用いられているが、本発明は隠蔽態様で取り付けられた超音波センサ5に限定されない。
【0062】
隠蔽態様で取り付けられるとは、超音波センサシステム1が、視覚的に外部から見えないような態様で、送信機および/または受信機を車両の内部に有していることを意味する。
【0063】
固体伝搬音信号情報および空気伝搬音信号情報4の処理は、コンピュータユニット6で実施される。
【0064】
図1において、検出され得る物体は存在しない。しかしながら、このような物体は、
図3a、
図3cおよび
図3dによる超音波画像の場合に存在する。
【0065】
図2は、特に壁材2を有する車両に隠蔽態様で取り付けられた超音波センサシステム1のためのコンピュータによるノイズまたは固体伝搬音補償方法のフローチャートを示す。本発明は、少なくとも以下のステップを含む。
壁材2に関するノイズ信号情報または固体伝搬音信号情報3および/または空気伝搬音信号情報4を含む基準周囲情報を、超音波センサシステム1の超音波センサ5を使用して検出するステップ100。
基準周囲情報を記憶するステップ200。
壁材2に関するノイズ信号情報または固体伝搬音信号情報3および/または空気伝搬音信号情報4を含むリアルタイム周囲情報を、超音波センサ5を使用して検出するステップ300。
基準周囲情報およびリアルタイム周囲情報の周囲情報ピース間の差分信号を、コンピュータユニット6を使用して形成するステップ400。
【0066】
図1による有利な実施形態によれば、コンピュータユニット6は、超音波センサシステム1に内蔵される特定用途向け回路である。
【0067】
図3aは、先行技術から知られている非隠蔽態様の超音波センサシステム1または非隠蔽態様の超音波センサ5の送受信信号を示す。ここでは、図示された空気伝搬音信号情報4を発する物体が、検出領域に配置されている。超音波センサ5は非隠蔽態様であるため、ノイズまたは固体伝搬音信号情報を検出しない。
【0068】
図3bは、本発明の好適な実施形態による隠蔽態様の超音波センサシステム1または隠蔽態様の超音波センサ5の送受信信号を示す。本例では、検出領域に物体が配置されていないため、空気伝搬音信号情報4は信号スパイクを発生させないことになる。超音波センサ5は隠蔽態様であるため、ノイズまたは固体伝搬音情報3を検出する。この結果、物体のない状態での基準周囲情報の検出ステップ100が行われる。
【0069】
図3cは、本発明の好適な実施形態による隠蔽態様の超音波センサシステム1または隠蔽態様の超音波センサ5の送受信信号を示す。本例では、
図3bと異なり、検出領域に物体が配置されているため、空気伝搬音信号情報4は信号スパイクを発生することになる。超音波センサ5は隠蔽態様であるため、ノイズまたは固体伝搬音情報3をさらに検出する。しかしながら、これらは重畳する。これは、この検出のみでは、おそらく物体を特定できないことを意味する。換言すれば、物体に関する信号は、固体伝搬音または壁材に関する信号でカバーされてしまう。
【0070】
図3dは、基準周囲情報およびリアルタイム周囲情報の周囲情報間の差分信号400を模式的に簡略化して示している。
【0071】
物体が検出領域内にあった状態で基準測定が実施された場合、前記物体は、超音波トランスデューサに対するその位置が変化するやいなや、差分信号において視認可能となる。本例において、物体が超音波トランスデューサに対してサブリミメータ範囲でもその位置が変化すれば十分である。
【0072】
本発明の有利な実施形態によれば、車両の壁材2は、少なくとも0.1ミリメートルの材料厚さを有している。一実施形態によれば、車両の壁材2は、3.0ミリメートルを含む最大で3.0ミリメートルの材料厚さを有していることも好適である。この範囲にある固体伝搬音を、例として
図3bに示す。
【0073】
本発明の有利な実施形態によれば、差分信号の平滑化および/またはフィルタリングが実施される。
【0074】
本発明の有利な実施形態によれば、超音波センサ5は、少なくとも40kHzを含む40kHz~80kHzを含む80kHzまでの周波数を有している。このような周波数で実施される超音波検出は、
図3aおよび
図3dに例として示すような音信号を生成する。
【0075】
本発明の有利な実施形態によれば、周囲情報ピース間の差分信号400は、生データ、エンベロープ、および/または他のフィルタリングされた受信信号、例えば超音波センサ5の送信信号との相関に基づいて形成される。
図3は、一例としてエンベロープを象徴的に示している。これは、超音波信号がエンベロープにより表され処理されることを意味する。
【0076】
本発明の有利な実施形態によれば、基準周囲情報の検出ステップ100は、所定の時間間隔で繰り返される。
【0077】
上述の実施形態の1つの有利な実施形態によれば、所定の時間間隔は、1分未満、特に少なくとも10ミリ秒である。
【0078】
本発明の有利な実施形態によれば、基準周囲情報の検出ステップ100は、イベントベースで繰り返される。
【0079】
上述の実施形態の1つの有利な実施形態によれば、温度変化および/または湿度変化が、基準周囲情報の繰り返される検出ステップ100のトリガとなるように、基準周囲情報の検出ステップ100は、イベントベースで繰り返される。
【0080】
本発明の有利な実施形態によれば、基準周囲情報において空気伝搬音信号情報4により検出された少なくとも1つの物体の信号成分が、その物体が車両に対する位置、またはそれぞれの超音波トランスデューサに対する位置を変化させた場合、差分信号において負の信号を生成する。
【0081】
上述の実施形態の1つの有利な実施形態によれば、物体追跡のためのリアルタイム周囲情報において、負の信号はその逆を正の信号として利用される。
【0082】
1 超音波センサシステム
2 車両の壁材
3 ノイズ信号情報
4 空気伝搬音信号情報
5 超音波センサ
6 コンピュータユニット
100 基準周囲情報の検出ステップ
200 基準周囲情報の記憶ステップ
300 リアルタイム周囲情報の検出ステップ
400 周囲情報ピース間の差分信号形成ステップ