(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】血管アクセスシステムおよびその方法
(51)【国際特許分類】
A61M 39/02 20060101AFI20240229BHJP
A61M 5/158 20060101ALI20240229BHJP
A61M 5/162 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
A61M39/02 110
A61M39/02 100
A61M5/158 500G
A61M5/162 500N
(21)【出願番号】P 2022518355
(86)(22)【出願日】2019-09-23
(86)【国際出願番号】 US2019052477
(87)【国際公開番号】W WO2021061095
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】521442637
【氏名又は名称】バード・ペリフェラル・バスキュラー・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116322
【氏名又は名称】桑垣 衛
(72)【発明者】
【氏名】グーチ、ネイサン
(72)【発明者】
【氏名】フォーサイス、ブラッドリー
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0078751(US,A1)
【文献】特開昭62-240069(JP,A)
【文献】特表2010-533558(JP,A)
【文献】国際公開第2018/200333(WO,A1)
【文献】特表2011-507555(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0143890(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/02
A61M 5/158
A61M 5/162
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮下埋め込み用に構成されるポートであって、
アクセス漏斗と、一対のポートハブルーメンを画定する隔壁と、を有するポートハブ
であって、前記一対のポートハブルーメンの各々が第1の部分と第2の部分とを有し、前記第1の部分が前記アクセス漏斗から前記ポートハブの底部と平行な前記第2の部分まで30度の角度で延在する、ポートハブと、
前記一対のポートハブルーメンに流体的に接続される一対のカテーテルチューブルーメンを画定する隔壁を有するカテーテルチューブと、を含むポートと、
使い捨てのアクセス装置であって、
一対のアクセス装置ハブルーメンを含む二股のハブと、
前記一対のアクセス装置ハブルーメンに流体的に接続される一対のカニューレルーメンを画定する
、単一の分割カニューレから生じる一対のカニューレであって、同時に前記アクセス漏斗
および前記一対のポートハブルーメンに挿入されるように構成され、かつ、前記一対のカニューレが完全に前記ポートハブに固定されると、前記一対のカニューレルーメンを前記一対のカテーテルチューブルーメンに流体的に接続するように構成される、一対のカニューレと、を含むアクセス装置と、
を備える血管アクセスシステム。
【請求項2】
前記一対のカニューレは、皮膚の下に埋め込まれる際、前記一対のカニューレを前記ポートの前記アクセス漏斗に挿入する前に、患者の皮膚を貫通するように構成される、請求項1に記載の血管アクセスシステム。
【請求項3】
前記使い捨てのアクセス装置は、前記一対のアクセス装置ハブルーメンに流体的に接続される一対の延長脚部ルーメンを画定する一対の延長脚部を含む、請求項1または2に記載の血管アクセスシステム。
【請求項4】
前記ポートハブは、前記アクセス漏斗の先端部に位置する一対のバルブを有し、前記一対のバルブは前記一対のカニューレが前記一対のバルブに挿入される際に開くように構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の血管アクセスシステム。
【請求項5】
前記ポートハブは、前記一対のカテーテルチューブルーメンに挿入されるように構成される、前記ポートハブから延びる二股の胴部を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の血管アクセスシステム。
【請求項6】
前記ポートは、前記二股の胴部上の前記カテーテルチューブの上に、カテーテルロックを含み、前記カテーテルロックは、前記カテーテルチューブを前記二股の胴部に固定するように構成される、請求項5に記載の血管アクセスシステム。
【請求項7】
前記血管アクセスシステムは、少なくとも毎分300~500mLの流量で連続的に流れるように構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の血管アクセスシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、血管アクセスシステムおよびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非カフ型血液透析カテーテルは、患者が腎不全によって迅速な血液透析を必要とする際に、緊急的にまたは比較的短期間(例えば3週間未満)の間、使用されることが多い。同様に、カフ型血液透析カテーテルも、患者が迅速な血液透析を必要とする際に使用されることが多いが、カフ型血液透析カテーテルは、比較的長期間(例えば3週間以上)使用され得る。どちらの種類の血液透析カテーテルも、典型的には、動静脈(AV)ろうまたは動静脈グラフトによって永続的な血管アクセスが確立されるまで使用され、いずれも手術および回復時間を必要とする。そのような血液透析カテーテルは、一度留置されると、凝血および感染を防止するために定期的なメンテナンスを必要とする、体外部分を有する。加えて、患者等がそのような血液透析カテーテルの体外部分に干渉することによって、空気塞栓症を引き起こす危険性がある。以上のことを考慮すると、定期的なメンテナンスおよび既存の血液透析カテーテルが有するタンパリングの危険性を回避する、血管アクセスおよびその方法が必要である。
【0003】
本明細書において、少なくとも上記の必要性に対処する、血管アクセスシステムおよびその方法が開示される。
【発明の概要】
【0004】
本明細書において、いくつかの実施形態における、ポートおよび使い捨てのアクセス装置を含む、血管アクセスシステムが開示される。ポートは、皮下埋め込み用に構成される。ポートは、ポートハブおよびカテーテルチューブを含む。ポートハブは、アクセス漏斗および、一対のポートハブルーメンを画定する隔壁を有する。カテーテルチューブは、一対のポートハブルーメンに流体的に接続される一対のカテーテルチューブルーメンを画定する隔壁を有する。アクセス装置は、二股のハブおよび一対のカニューレを含む。二股のハブは、一対のアクセス装置ハブルーメンを含む。一対のカニューレは、一対のアクセス装置ハブルーメンに流体的に接続される一対のカニューレルーメンを画定する。一対のカニューレは、同時にアクセス漏斗に挿入されるように構成され、かつ、一対のカニューレが完全にポートハブに固定されると、一対のカニューレルーメンを一対のカテーテルチューブルーメンに流体的に接続するように構成される。
【0005】
いくつかの実施形態において、一対のカニューレは、皮膚の下に埋め込まれる際、一対のカニューレをポートのアクセス漏斗に挿入する前に、患者の皮膚を貫通するように構成される。
【0006】
いくつかの実施形態において、使い捨てのアクセス装置は、一対のアクセス装置ハブルーメンに流体的に接続される一対の延長脚部ルーメンを画定する、一対の延長脚部を含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、ポートハブは、アクセス漏斗の先端部に位置する一対のバルブを有し、一対のバルブは、一対のカニューレが一対のバルブに挿入される際に開くように構成される。
【0008】
いくつかの実施形態において、ポートハブは、一対のカテーテルチューブルーメンに挿入されるように構成される、ポートハブから延びる二股の胴部を有する。
いくつかの実施形態において、ポートは、二股の胴部上のカテーテルチューブの上に、カテーテルロックを含む。カテーテルロックは、カテーテルチューブを二股の胴部に固定するように構成される。
【0009】
いくつかの実施形態において、血管アクセスシステムは、少なくとも毎分300~500mLの流量で連続的に流れるように構成される。
本明細書において、いくつかの実施形態における、ポートハブおよびカテーテルチューブを含む、皮下埋め込み用に構成されるポートも開示される。ポートハブは、アクセス漏斗および、一対のポートハブルーメンを画定する隔壁を有する。カテーテルチューブは、一対のポートハブルーメンに流体的に接続される一対のカテーテルチューブルーメンを画定する隔壁を有する。
【0010】
いくつかの実施形態において、ポートハブは、アクセス漏斗の先端部に位置する一対のバルブを有し、一対のバルブは、使い捨てのアクセス装置の一対のカニューレが一対のバルブに挿入される際に開くように構成される。
【0011】
いくつかの実施形態において、ポートハブは、一対のカテーテルチューブルーメンに挿入されるように構成される、ポートハブから延びる二股の胴部を有する。
いくつかの実施形態において、ポートは、二股の胴部上のカテーテルチューブの上に、カテーテルロックを含む。カテーテルロックは、カテーテルチューブを二股の胴部に固定するように構成される。
【0012】
いくつかの実施形態において、カテーテルチューブは、放射線不透過性ポリウレタンカテーテルチューブである。
いくつかの実施形態において、アクセス漏斗は、チタンまたはその合金である。アクセス漏斗は、使い捨てのアクセス装置による、比較的小さい角度のアプローチ用に構成される。
【0013】
いくつかの実施形態において、アクセス漏斗は、ポートハブのシリコーンボディ内に配置される。
本明細書において、いくつかの実施形態における、二股のハブおよび一対のカニューレを含む、使い捨てのアクセス装置も開示される。二股のハブは、一対のアクセス装置ハブルーメンを含む。一対のカニューレは、一対のアクセス装置ハブルーメンに流体的に接続される一対のカニューレルーメンを画定する。一対のカニューレは、埋め込み式ポートのアクセス漏斗に同時に挿入されるように構成され、かつ、一対のカニューレが完全に埋め込み式ポートに固定されると、一対のカニューレルーメンを一対のカテーテルチューブルーメンに流体的に接続するように構成される。
【0014】
いくつかの実施形態において、一対のカニューレは、皮膚の下に埋め込まれる際、一対のカニューレをポートのアクセス漏斗に挿入する前に、患者の皮膚を貫通するように構成される。
【0015】
いくつかの実施形態において、アクセス装置はさらに、一対のアクセス装置ハブルーメンに流体的に接続される一対の延長脚部ルーメンを画定する、一対の延長脚部を含む。
いくつかの実施形態において、アクセス装置はさらに、一対のルアーコネクタを含む。各々のルアーコネクタは、一対の延長脚部の各々に接続される。
【0016】
本明細書において、いくつかの実施形態における、アクセス部位を特定し、患者の触診によって、アクセス部位において患者に埋め込まれた埋め込み式ポートを確認するステップを含む、血管アクセスシステムの方法も開示される。ポートは、ポートハブおよびカテーテルチューブを含む。ポートハブは、アクセス漏斗および、一対のポートハブルーメンを画定する隔壁を有する。カテーテルチューブは、一対のポートハブルーメンに流体的に接続される一対のカテーテルチューブルーメンを画定する隔壁を有する。方法はまた、皮膚消毒のために、アクセス部位を消毒薬で洗浄および消毒するステップを含む。方法はまた、アクセス装置に生理食塩水を入れることを含む、使い捨てのアクセス装置を準備するステップを含む。アクセス装置は、二股のハブおよび一対のカニューレを含む。二股のハブは、一対のアクセス装置ハブルーメンを含む。一対のカニューレは、一対のアクセス装置ハブルーメンに流体的に接続される一対のカニューレルーメンを画定する。方法はまた、滅菌手袋をはめた非利き手で、埋め込み式ポートを固定するステップを含む。方法はまた、一対のカニューレが完全にポートハブに固定されるまで、一対のカニューレを同時にアクセス漏斗に挿入し、それによって、一対のカニューレルーメンを一対のカテーテルチューブルーメンに流体的に接続するステップを含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、一対のカニューレをアクセス漏斗に挿入することは、患者の皮膚を貫通することおよび、一対のカニューレを、患者と一対のカニューレとの間のアプローチ角度が約30度以下の浅い状態でアクセス漏斗に挿入することを含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、方法はさらに、血流のために血管アクセスシステムを吸引するステップを含む。方法はまた、アクセス部位を創傷被覆材でしっかりと覆うステップを含む。
【0019】
本明細書においてで提供されるコンセプトのこれら及びその他の特徴は、そのようなコンセプトの特定の実施形態をより詳細に説明する添付された図面及び以下の説明を考慮すると、当業者にとってより明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、いくつかの実施形態に係る、ポートおよびポートに配置されたアクセス装置を含む、血管アクセスシステムを示す。
【
図2】
図2は、いくつかの実施形態に係る、アクセス装置がポートから分離された、
図1の血管アクセスシステムを示す。
【
図3】
図3は、いくつかの実施形態に係る、ポートのポートハブの断面を示す。
【
図4】
図4は、いくつかの実施形態に係る、ポートハブの分解図を示す。
【
図5】
図5は、いくつかの実施形態に係る、ポートハブの先端部の拡大図を示す。
【
図6】
図6は、いくつかの実施形態に係る、ポートのカテーテルチューブの断面を示す。
【
図7】
図7は、いくつかの実施形態に係る、アクセス装置の一対のカニューレの詳細図を示す。
【
図8】
図8は、いくつかの実施形態に係る、患者に埋め込まれたポートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
いくつかの特定の実施形態についてより詳細に開示される前に、本明細書において開示されている特定の実施形態は、本明細書において提供されているコンセプトの範囲を限定しないことが理解されるべきである。本明細書において開示されている特定の実施形態は、特定の実施形態から容易に分離でき、本明細書において開示されている他のいくつかの実施形態のいずれかと任意に組み合わせるまたは置き換えることができる特徴を有し得ることも理解されるべきである。
【0022】
本明細書において用いられている用語に関して、用語はいくつかの特定の実施形態を説明することを目的とするものであり、用語は本明細書において提供されているコンセプトの範囲を限定しないことも理解されるべきである。序数(例えば第1、第2、第3など)は一般的に、特徴や段階のグループ内の異なる特徴や段階を区別もしくは識別するために用いられ、連続性や数値による制限を提供しない。例えば、「第1」、「第2」、および「第3」の特徴や段階はその順序で現れる必要はなく、そのような特徴や段階を含む特定の実施形態がその3つの特徴や段階に制限される必要もない。「左」、「右」、「頂」、「底」、「前」、「後」等の表記やそれらに似た語句は便宜上用いられ、例えば、特定の決められた位置、方角、方向等を意味することは意図していない。むしろ、そのような表記は、例えば、相対的な位置、方角、方向等を反映させるために用いられる。「a」、「an」、および「the」の単数形は、文脈が単数であることを明確に示していなければ、複数への参照を含む。
【0023】
例えば、本明細書において開示されているカテーテルの「近位の」、「近位部」、または「基端部」に関しては、カテーテルが患者に対して使用される際に、臨床医の近くに位置することを意図されたカテーテルの部分を含む。同様に、例えば、カテーテルの「近位の長さ」は、カテーテルが患者に対して使用される際に、臨床医の近くに位置することを意図されたカテーテルの長さを含む。例えば、カテーテルの「近位端」は、カテーテルが患者に対して使用される際に、臨床医の近くに位置することを意図されたカテーテルの端部を含む。カテーテルの、近位部、基端部、または近位の長さは、カテーテルの近位端を含み得る。しかしながら、カテーテルの、近位部、基端部、または近位の長さは、カテーテルの近位端を含む必要はない。すなわち、文脈が別のことを示唆しない限り、カテーテルの、近位部、基端部、または近位の長さは、カテーテルの、末端部、または末端の長さではない。
【0024】
例えば、本明細書において開示されているカテーテルの「遠位の」、「遠位部」、または「先端部」に関しては、カテーテルが患者に対して使用される際に、患者の近くまたは患者の体内に位置することを意図されたカテーテルの部分を含む。同様に、例えば、カテーテルの「遠位の長さ」は、カテーテルが患者に対して使用される際に、患者の近くまたは患者の体内に位置することを意図されたカテーテルの長さを含む。例えば、カテーテルの「遠位端」は、カテーテルが患者に対して使用される際に、患者の近くまたは患者の体内に位置することを意図されたカテーテルの端部を含む。カテーテルの、遠位部、先端部、または遠位の長さは、カテーテルの遠位端を含み得る。しかしながら、カテーテルの、遠位部、先端部、または遠位の長さは、カテーテルの遠位端を含む必要はない。すなわち、文脈が別のことを示唆しない限り、カテーテルの、遠位部、先端部、または遠位の長さは、カテーテルの、末端部、または末端の長さではない。
【0025】
その他の意味に定義されていなければ、本明細書において用いられる全ての技術的もしくは科学的な用語は、その分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。
【0026】
上述の通り、定期的なメンテナンスおよび既存の血液透析カテーテルが有するタンパリングの危険性を回避する、血管アクセスおよびその方法が必要である。本明細書において、少なくとも上記の必要性に対処する、血管アクセスシステムおよびその方法が開示される。
【0027】
血管アクセスシステム
図1は、いくつかの実施形態に係る、ポート102およびポート102に配置されたアクセス装置104を含む、血管アクセスシステム100を示す。
図2は、いくつかの実施形態に係る、アクセス装置104がポート102から分離された、血管アクセスシステム100を示す。
【0028】
図示されているように、血管アクセスシステム100は、ポート102およびアクセス装置104を含む。血管アクセスシステム100は、アクセス装置104が何回にもわたって、ポート102に抜き差しされるように構成される。しかしながら、アクセス装置104は、ポート102が患者に埋め込まれている間は、アクセス装置104がポート102に挿入されるたびに未使用のアクセス装置104が使用されるべきであるという点で、使い捨てのアクセス装置である。
【0029】
血管アクセスシステム100は、ポート102およびアクセス装置104の各々の構成要素が、それを通る2つの流体通路を含む点で、2つのルーメンを有する。特に、血管アクセスシステム100は、アクセス装置104のポート102への1回の挿入において、ポート102の2つの流体通路とアクセス装置104の2つの流体通路とが流体的に接続されて、血管アクセスシステム100を通る2つの流体通路を形成するように構成される。2つの流体通路のうちの第1の流体通路は、患者の心臓から血液を運び出す動脈ルーメンとして構成される。2つの流体通路のうちの第2の流体通路は、患者の心臓へ血液を運び入れる静脈ルーメンとして構成される。
【0030】
血管アクセスシステム100は、血液透析に必要な少なくとも毎分約300~500mLの流量で連続的に流れるように構成される。
血管アクセスシステム100についての追加の説明が、ポート102およびアクセス装置104に関して以下に記載される。
【0031】
ポート
図3は、いくつかの実施形態に係る、ポート102のポートハブ306の断面を示す。
図4は、いくつかの実施形態に係る、ポートハブ306の分解図を示す。
図5は、いくつかの実施形態に係る、ポートハブの先端部の拡大図を示す。
図6は、いくつかの実施形態に係る、ポートのカテーテルチューブ308の断面を示す。
図8は、いくつかの実施形態に係る、患者に埋め込まれたポート102を示す。
【0032】
図示されているように、ポート102は、ポートハブ306およびカテーテルチューブ308を含む。
ポートハブ306は、シリコーン等の比較的低いデュロメータ硬さを有する、医学的に許容されるポリマのボディ310を含む。そのようなポリマのボディ310は、ポート102が患者の皮下に埋め込まれた際に、患者に快適さを提供する。
【0033】
ポートハブ306は、ボディ310内に配置され、アクセス装置104の、患者とアクセス装置104の一対のカニューレ226との間の、約30度未満の浅い角度でのアプローチまたは挿入のために構成される、アクセス漏斗312を含む(アクセス装置104の一対のカニューレ226に関しては
図7参照)。アクセス漏斗312の基端部における比較的広い開口314は、一対のカニューレ226を受け取り、一対のカニューレ226を、アクセス漏斗312の先端部416に向けて、アクセス漏斗312の比較的狭い通路内に導くように構成される。アクセス漏斗312は、アクセス装置104がポート102に挿入されることが予想される多数回への耐久性をアクセス漏斗312に持たせる、チタンまたはその合金であり得る。
【0034】
ポートハブ306は、アクセス漏斗312の先端部に配置される一対のバルブ418を含み、一対のバルブ418は、使い捨てのアクセス装置104の一対のカニューレ226が一対のバルブ418に挿入される際に開くように構成される。一対のバルブ418の各々は、穴あき隔壁420およびスリット入り隔壁422等の、共に挟み込まれる2つの隔壁(例えばシリコーン隔壁)を含み得る。
【0035】
ポートハブ306は、一対のカテーテルチューブルーメン628に挿入されるように構成される、ポートハブ306から延びる二股の胴部424を有する(カテーテルチューブ308の一対のカテーテルチューブルーメン628に関しては
図6参照)。図示されていないが、二股の胴部424の分岐に沿って、二股の胴部424から近位方向に延びる隔壁は、流体の流れを、一対のカニューレ226の一対のカニューレルーメン(以下の説明を参照)から一対のカテーテルチューブルーメン628に導くように構成される、一対のポートハブルーメンを画定するポートハブ306の隔壁525に当接する。
【0036】
カテーテルチューブ308は、カテーテルチューブ308が二股の胴部424に配置される際に、一対のポートハブルーメンに流体的に接続される一対のカテーテルチューブルーメン628を画定する、隔壁626を含む。カテーテルチューブ308は、鎖骨下のアクセス部位から右心房へカテーテルチューブ308を通すのに適した長さを有し得る。カテーテルチューブ308は、約10Fr(フレンチ)以下の、例えば9Frまたはその間のカテーテルサイズ(例えば9.6Fr)の、放射線不透過性ポリウレタンカテーテルチューブであり得る。
【0037】
ポート102はさらに、カテーテルチューブ308を二股の胴部424に固定するように構成されるカテーテルロック330を含む。
アクセス装置
図2は、いくつかの実施形態に係る、アクセス装置104がポート102から分離された、血管アクセスシステム100を示す。
図7は、いくつかの実施形態に係る、アクセス装置104の一対のカニューレ226の詳細図を示す。
【0038】
図示されているように、アクセス装置104は、以上の順序で動作可能に接続される、一対のカニューレ226、二股のハブ228、一対の延長脚部230、および一対のルアーコネクタ232を含む。
【0039】
一対のカニューレ226は、一対のカニューレルーメンを画定する。上述の通り、一対のカニューレ226は、同時にポートハブ306のアクセス漏斗312に挿入されるように構成され、かつ、一対のカニューレ226が完全にポートハブ306に固定されると、一対のカニューレルーメンを一対のカテーテルチューブルーメンに流体的に接続するように構成される。ポート102が患者の皮下に埋め込まれる際に、一対のカニューレ226はまた、アクセス漏斗312への挿入の前に、患者の皮膚を貫通するように構成される。したがって、一対のカニューレ226の各カニューレは、患者の皮膚を貫通するための傾斜した先端を有するように構成される。一対のカニューレ226は、患者の皮膚を貫通し、アクセス漏斗312に挿入されるのに十分な剛性を一対のカニューレ226に提供する、ステンレス鋼等の金属または合金であり得る。
【0040】
二股のハブ228は、一対のカニューレ226の一対のカニューレルーメンに流体的に接続される一対のアクセス装置ハブルーメンを含む。
一対の延長脚部230は、二股のハブ228の一対のアクセス装置ハブルーメンに流体的に接続される一対の延長脚部ルーメンを画定する。
【0041】
一対のルアーコネクタ232は、延長脚部230の一対の延長脚部ルーメンに流体的に接続される一対のルアーコネクタルーメンを画定する。
方法
血管アクセスシステムの方法は、アクセス部位を特定し、患者の触診によって、アクセス部位において患者に埋め込まれた、ポート102等の埋め込み式ポートを確認するステップを含む。方法はまた、皮膚消毒のために、アクセス部位を消毒薬(例えばポビドンヨード)で洗浄および消毒するステップを含む。方法はまた、アクセス装置104に生理食塩水を入れることを含む、アクセス装置104を準備するステップを含む。方法はまた、滅菌手袋をはめた非利き手で、埋め込み式ポート102を固定するステップを含む。方法はまた、一対のカニューレ226が完全にポートハブ306に固定されるまで、一対のカニューレ226を同時にアクセス漏斗312に挿入し、それによって、一対のカニューレルーメンを一対のカテーテルチューブルーメン628に流体的に接続するステップを含む。一対のカニューレ226をアクセス漏斗312に挿入することは、患者の皮膚を貫通することおよび、一対のカニューレ226を、患者と一対のカニューレ226との間のアプローチ角度が約30度以下の浅い状態でアクセス漏斗312に挿入することを含む。方法はまた、血流のために血管アクセスシステム100を吸引するステップと、アクセス部位を創傷被覆材でしっかりと覆うステップと、を含む。
【0042】
血管アクセスシステム100は、患者に不便を感じさせることなく、また患者のポートに悪影響を及ぼすことなく、患者が入浴またはシャワーを浴びることを可能にする、完全に皮下に位置するポートの利点を活用する。実際に、ポート102のどの部分も、アクセス装置104が使用される際の血液透析処置の間を除いて、露出されない。完全に皮下に位置するポートであることは、美容面を改善し、凝血および感染を防止するために必要とされる定期的なメンテナンスを不要にする。
【0043】
血管アクセスシステム100はまた、アクセス装置104がポート102に固定されると、標準的な血液透析カテーテルと同様に見え、動作する、というアクセス装置104の利点を活用する。例えば、一対の延長脚部230は、臨床医にとって馴染みのあるものに見えるはずであり、その他の血液透析装置に接続するために、ほとんどまたは全く訓練を必要としないはずである。
【0044】
いくつかの特定の実施形態が本明細書において開示され、特定の実施形態はある程度詳細に開示されているが、特定の実施形態が本明細書において提供されているコンセプトの範囲を制限することは意図されていない。追加の改良及び/または修正は当業者にとって明らかであり得て、より広い態様では、これらの改良及び/または修正も同様に包含される。したがって、本明細書において提供されているコンセプトの範囲から逸脱せずに、本明細書において開示されている特定の実施形態から逸脱してもよい。