(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】可変圧縮クッションを有し水分管理が改善されたアイウェア
(51)【国際特許分類】
G02C 7/16 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
G02C7/16
(21)【出願番号】P 2022522614
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 US2020052454
(87)【国際公開番号】W WO2021076293
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-04-22
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500291315
【氏名又は名称】オークリー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムニエ,ベンジャミン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】オキーン,デューガン
(72)【発明者】
【氏名】セイラー,ライアン ニール
(72)【発明者】
【氏名】バーンズ,キャメロン スコット
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-107098(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0115761(US,A1)
【文献】特開2011-83539(JP,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2010-0008720(KR,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/02
G02C 1/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴーグルであって、
第1の表面と、前記第1の表面とは反対側の第2の表面とを含むクッションであって、前記クッションの前記第1の表面とは反対側の前記第2の表面は、前記ゴーグルが着用されている時にユーザの顔の輪郭に沿うように構成されている、クッションを備え、
前記クッションは、連続した途切れのない格子構造を含み、
前記クッションは、第1の圧縮性を有する第1のゾーンを含み、
前記クッションは、前記第1の圧縮性よりも大きい第2の圧縮性を有する第2のゾーンを含み、
前記クッションは、前記第1のゾーンの前記第1の圧縮性と前記第2のゾーンの前記第2の圧縮性との間で遷移するように構成されている、
ゴーグル。
【請求項2】
前記第1のゾーンは、前記ゴーグルが着用されている時にユーザの額に接触するように構成された前記クッションの額領域に位置し、前記第2のゾーンは、前記ゴーグルが着用されている時にユーザの頬に接触するように構成された前記クッションの頬領域に位置する、請求項1に記載のゴーグル。
【請求項3】
前記クッションは、前記第2の圧縮性よりも大きい第3の圧縮性を有する第3のゾーンを含み、前記第3のゾーンは、前記ゴーグルが着用されている時にユーザの鼻に接触するように構成された前記クッションの鼻領域に位置する、請求項1または2に記載のゴーグル。
【請求項4】
前記第2の表面に垂直な方向で測定された前記クッションのばね力定数が圧縮深さによって変化する、請求項1~3のいずれか一項に記載のゴーグル。
【請求項5】
前記第2のゾーンと前記第3のゾーンとは互いに隣接し、前記クッションは、前記第2のゾーンの
前記第2の
圧縮性と前記第3のゾーンの
前記第3の
圧縮性との間で遷移するように構成されている、請求項3に記載のゴーグル。
【請求項6】
レンズを更に備え、前記第1の表面は前記レンズに直接取り付けられるように構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のゴーグル。
【請求項7】
レンズを支持するように構成されたフレームを更に備え、前記第2の表面は前記フレームに取り付けられるように構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のゴーグル。
【請求項8】
前記クッションは、前記クッションによって形成されるループの外側から前記クッションによって形成される前記ループの内側へと空気流を誘導するように構成された通気チャネルを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のゴーグル。
【請求項9】
前記クッションの前記第2の表面に取り付けられた顔層を更に備え、
前記第2の表面は、前記第2の表面の両側を流体接続するように構成された孔を含み、
前記格子構造は、前記孔から前記格子構造を通して水分を輸送して前記水分を除去するように構成された水分管理チャネルを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のゴーグル。
【請求項10】
前記クッションのベースライン
ばね力定数は、前記
クッションの平均ばね力定数であり、
前記第2のゾーン内の
第2のばね力定数は、前記ベースライン
ばね力定数の
80%~
150%である、請求項1~9のいずれか一項に記載のゴーグル。
【請求項11】
前記クッションのベースライン
ばね力定数は、前記
クッションの平均ばね力定数であり、
前記第2のゾーン内の
第2のばね力定数は、前記ベースライン
ばね力定数の
80%~
150%であり、
前記第3のゾーン内の
第3のばね力定数は、
前記ベースラインばね力定数の60%~
130%である、請求項3に記載のゴーグル。
【請求項12】
前記格子構造は積層造形されている、請求項1に記載のゴーグル。
【請求項13】
ゴーグル用のクッションであって、
複数の格子セルを含む連続した途切れのない格子構造と、
前記ゴーグルの一部分と嵌合するように構成された第1の表面と、
前記第1の表面とは反対側の第2の表面であって、前記第2の表面上の第1の位置及び第2の位置のそれぞれにおける第1のばね力定数と第2のばね力定数とが異なり、前記第1のばね力定数及び前記第2のばね力定数は、前記第1の表面と前記第2の表面との間に延びる方向で測定される、第2の表面と、
孔から前記格子構造を通して水分を輸送して前記水分を除去するように構成された、前記格子構造内の複数の水分管理チャネルと、
を備える、クッション。
【請求項14】
前記第1のばね力定数及び前記第2のばね力定数とは異なる、前記第2の表面上の第3の位置における第3のばね力定数を更に有する、請求項
13に記載のクッション。
【請求項15】
前記第1の位置は前記クッションの額領域内に位置し、前記第2の位置は前記クッションの頬領域内に位置し、前記第3の位置は前記クッションの鼻領域内に位置する、請求項
14に記載のクッション。
【請求項16】
前記第1のばね力定数は、前記クッション全体の平均ベースラインばね力定数の100%~200%であり、前記第2のばね力定数は、前記平均ベースラインばね力定数の80%~150%であり、前記第3のばね力定数は、前記平均ベースラインばね力定数の60
%~130%である、請求項
15に記載のクッション。
【請求項17】
前記第2の表面に取り付けられた顔層であって、前記第2の表面全体を覆う顔層を更に備える、請求項
13~
16のいずれか一項に記載のクッション。
【請求項18】
前記格子構造は、厚さが前記顔層の少なくとも2倍である、請求項
17に記載のクッション。
【請求項19】
前記格子構造は、前記クッションによって形成されるループの外側から前記クッションによって形成された前記ループの内側へと空気流を誘導するように構成された空気流チャネルを更に含む、請求項
13~
18のいずれか一項に記載のクッション。
【請求項20】
ゴーグルであって、
レンズと、
前記レンズを支持するように構成されたフレームと、
前記フレームの内面に取り付けられた、請求項
13~
19のいずれか一項に記載のクッションと、
を備える、ゴーグル。
【請求項21】
ゴーグルであって、
レンズと、
前記レンズの内面に取り付けられた、請求項
13~
19のいずれか一項に記載のクッションと、
を備える、ゴーグル。
【請求項22】
前記クッションは、前記ゴーグルの内面上に閉ループを形成する、請求項20または21に記載のゴーグル。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
アイウェアは、特に、飛散する破片や悪天候から目を保護しなければならない状況下で長時間にわたって着用されることが多い。アイウェアは、通常、ユーザの顔と接触して着用され、特にアイウェアが長時間にわたって着用される場合には、顔に快適にフィットしなければならない。これは、顔との接触の度合いがより大きいか、又はより安全にフィットすることを必要とするアイウェアにとって特に重要である。例えば、多くのゴーグルは、顔に接触し、ゴーグルの内面上に完全なループを形成するクッションをゴーグルの内側に使用する。ゴーグルのクッションは、典型的には、ユーザの顔のかなりの領域に接触する。
【0002】
ゴーグルは、通常、ユーザの後頭部に巻き付けられる柔軟なストラップを使用して固定される。ストラップは、ゴーグルを後方に引っ張ってユーザの顔に当て、ユーザはこれをクッションに沿った圧力として経験する。ゴーグルストラップが締め付けられてよりしっかりとフィットすると、ユーザが感じる圧力が増加する。特にゴーグルを長時間着用する必要がある場合、ある時点を超えると、圧力は不快なポイントに達する。既存のゴーグルクッションは通常、ユーザの顔に押し付けられると圧縮し、ゴーグルストラップを締め付ける際の快適性を高める発泡体材料で作製される。ユーザが快適と考える顔圧は、接触位置によって異なり得る。例えば、額への快適な顔圧は、頬への快適な圧力とは異なり得る。快適なフィット性の別の局面は、水分管理である。水分を吸収して湿ったままのクッションは、ユーザにとって不快であり得る。また、アイウェアレンズと顔との間の捕捉された空間内のより暖かく湿った空気は、この空間が適切な通気性を欠く場合、レンズの曇りを悪化させるおそれがある。アイウェアを着用している間のユーザの快適性を高めるために、顔圧及び水分管理の更なる改善が必要である。
【発明の概要】
【0003】
本開示によるアイウェアクッションの実施形態は、クッション内の異なる点で顔圧を変化させることを可能にする可変圧縮性特徴を含む。これにより、クッションの感触をユーザ向けに最適化することができる。アイウェアの水分管理を改善して快適性及び性能を向上させるクッションも開示される。本開示のいくつかの実施形態は、第1の表面と、第1の表面とは反対側の第2の表面とを有するクッションを含むゴーグルであり、クッションの第1の表面とは反対側の第2の表面は、ゴーグルが着用されている時にユーザの顔の輪郭に沿うように構成されている。クッションは、第1の圧縮性を有する第1のゾーンと、第1の圧縮性よりも小さい第2の圧縮性を有する第2のゾーンとを有する。
【0004】
本開示の更なる実施形態は、第1の表面と、第1の表面とは反対側にあり、ゴーグルが着用されている時にユーザの顔の輪郭に沿うように構成された第2の表面と、を有するクッションを含むゴーグルである。クッションは、積層造形された連続した途切れのない格子構造を含むことができる。クッションは、ゴーグルが着用されている時に第1のゾーン内でユーザの顔への第1の圧力を生成し、ゴーグルが着用されている時に第1のゾーンとは別個の第2のゾーン内でユーザの顔への第2の圧力を生成するように構成されている。第2の圧力は、第1の圧力とは異なってもよい。
【0005】
ゴーグル用のクッションの更なる実施形態は、複数の格子セルを含む連続した途切れのない格子構造と、ゴーグルの一部分と嵌合するように構成された第1の表面と、第1の表面とは反対側の第2の表面と、を含む。第2の表面上の第1の点及び第2の点でそれぞれ同じ距離だけ格子構造を圧縮するのに必要な第1の圧縮力と第2の圧縮力とが異なってもよく、第1の圧縮力及び第2の圧縮力は、第1の表面と第2の表面との間に延びる方向で
測定される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態によるゴーグルクッションを含むゴーグルの斜視図である。
【
図2】実施形態による
図1のゴーグルの背面図である。
【
図3】実施形態による
図1のゴーグルの上面図である。
【
図4】実施形態による
図1のゴーグルの底面図である。
【
図5】実施形態による
図1のゴーグルクッションの一部分の上面図である。
【
図5a】実施形態による
図5のゴーグルクッションの詳細図である。
【
図6】
図5の線6-6に沿ったゴーグルクッションの断面図である。
【
図7】実施形態による
図1のゴーグルの背面図である。
【
図7a】実施形態によるゴーグルの一部分の略上面図である。
【
図8】実施形態による
図1のゴーグルクッションの概略図である。
【
図11】実施形態による
図2の線11-11に沿ったゴーグルの断面図である。
【
図12】実施形態による
図1のゴーグルクッションの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ここで、本発明の実施形態を添付図面に詳細に説明する。「1つの実施形態」、「一実施形態」、「例示的な実施形態」などの言及は、記載された実施形態が特定の特徴、構造、又は特性を含み得るが、全ての実施形態が特定の特徴、構造、又は特性を必ずしも含むわけではないことを示す。更に、このような句は、必ずしも同じ実施形態を言及するものではない。更に、特定の特徴、構造、又は特性が実施形態と関連して記載される場合、明確に記載されているかどうかに関わりなく、他の実施形態と関連するこのような特徴、構造、又は特性への影響は、当業者の知見内であるものとする。
【0008】
背景技術で説明したように、クッションは、アイウェア、特にゴーグルで使用され、アイウェアがユーザの顔に接触する領域におけるユーザの快適性を高める。アイウェア用のクッションを設計するには、いくつかの異なる設計要件のバランスを取る必要がある。クッションは、アイウェアを快適に着用できるように十分に変形しなければならない。しかしながら、クッションはまた、「水漏れ」しない程度に、又はアイウェアの硬い部分が顔に当たっていることをユーザが感じられる程度に十分に弾力性を有するか、又は硬くなければならない。クッションはまた、着用されている時にアイウェアを顔から所望の距離に保つように設計されなければならない。
【0009】
クッションがユーザの顔のかなりの領域に接触するゴーグル用クッションに関しては、ゴーグルの快適なフィット性を達成すると、顔の異なる領域での可変顔圧が実現される。ストラップによってゴーグルに加えられる後方への圧力が一定であると仮定すると、クッションの圧縮性を変化させて可変顔圧を達成することができる。一般に、例えば、圧縮性が比較的高いなどの比較的柔らかいクッションが所与の距離だけ変形すると、顔圧は小さくなる。例えば、圧縮性が比較的低いなどの比較的硬いクッションが同じ所与の距離だけ変形すると、顔圧は大きくなる。しかしながら、既知のクッションは、一定の圧縮性を有する。着用中、ゴーグルクッションのいくつかの領域は他の領域よりも圧縮され、一定の圧縮性を有するクッションと結合されると、ゴーグル着用者の顔により大きな圧縮力を加える。これにより、既知のクッションは、圧縮性がより大きい領域では顔圧がより高くなるために、着け心地が悪くなってしまう場合がある。しかしながら、可変圧縮クッションでは、ユーザが受ける顔圧を所望の圧力プロファイルに調整することが可能である。したがって、可変圧縮クッションゴーグルは、着用者の顔の接触面全体にわたって、同程度の
快適さでよりしっかりとフィットさせることができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、可変圧縮クッションは、単一の連続した部分から作製されてもよい。他の実施形態では、可変圧縮クッションは、互いに接合され、圧縮性が相対的に異なる複数のクッション部分から作製されてもよい。例えば、クッションの審美性への配慮が必要である場合があり、既存のクッション部分を互いに接合するだけでは、クッション部分間の視覚的な違いのために審美的に許容されない場合がある。更に、既存のクッション部分の水分管理は、状況によっては困難であり得る。
【0011】
本開示の一実施形態は、クッション取り付け領域及び、第1の表面と、第1の表面とは反対側の第2の表面とを有するクッションを有するゴーグルである。第1の表面とは反対側のクッションの第2の表面は、ユーザの顔の輪郭に沿うように構成されている。クッションは、第1の圧縮性を有する第1のゾーンと、第1の圧縮性よりも大きい第2の圧縮性を有する第2のゾーンとを有する。
【0012】
この実施形態及び他の実施形態の利点としては、例えば、設計目標に応じて、第1、第2、及び更なるゾーンにおいて異なる圧縮性を有するクッションを設計することによって、ユーザが受ける顔圧を最適な量に調整する能力が挙げられる。顔圧の最適量は、以下で説明するように、ユーザの異なる点で、又は異なるゾーンで異なってもよい。この実施形態及び他の実施形態の更なる利点も、以下で説明する。
【0013】
図1~
図4に示すように、ゴーグル1は、レンズ4と、レンズ4の左端及び右端に取り付けられたストラップ2とを含む。ストラップ2は、ユーザの頭部を取り囲むように構成されたループを形成するように、レンズ4に取り付けられている。ストラップ2は、柔軟な弾性材料から構成されてもよく、ストラップ2の長さを調整するための調整要素を含んでもよい。レンズ4は、ユーザがレンズ4を通して見ることができるように構成されており、プラスチック材料又はガラス材料などの実質的に透明な任意の適切な材料から構成されてもよい。
図1~
図4に示す実施形態では、ゴーグル1はフレームを含まず、したがって、レンズ4は、ゴーグル1の主構造支持体として機能するのに十分な構造剛性を有するように設計されている。更に、フレームがないことは、レンズ4がストラップ2のための取り付け点を含んでもよいことを意味する。しかしながら、クッション100は、フレームを含むゴーグル1の実施形態で使用されてもよい。
【0014】
ゴーグル1のフレームなしの実施形態では、クッション100がレンズ4の内面に取り付けられている。
図2に最もよく示されているように、実施形態では、クッション100は、レンズ4の周囲を取り囲むことによって、レンズ4の内側に密閉ループを形成してもよい。クッション100はまた、不連続であってもよく、例えば、クッション100は、レンズ4の周囲に沿って部分的にのみ延在してもよい。不連続なクッションを有するそのような実施形態では、クッション100は、ゴーグルの一方の側部からレンズの上部周囲又は下部周囲に沿って横方向に対向する側部まで延在してもよい。したがって、クッション100は、ゴーグルの頂部額領域に沿って、又はゴーグルの底部頬領域に沿ってのみ配置することができる。クッション100は、ゴーグル1が着用されている時にユーザの顔の形状に沿うような輪郭を有する。クッション100は、格子要素120によって画定された格子セル110を含む連続した途切れのない格子構造を含む。単一の格子セル100及び対応する格子要素120を有するクッション100の一部分の拡大図を
図5aに示す。格子セル110は、例えば開口部などの、クッション100を構成するセルである。格子要素120は、例えば壁などの、格子セル110の形状を画定する要素である。したがって、
図5aでは、単一の格子セル110は六角形のセルとして示されており、格子要素120は目に見え、例示的な格子セル110の六辺を形成している。格子要素120は、弾性変形可能な材料で作製されている。いくつかの実施形態では、格子要素120は、格
子要素120の軸に垂直な平面で見た時に円形断面を有してもよい(すなわち、格子要素120は円筒形状であってもよい)。
【0015】
実施形態では、クッション100は、クッション100の第1の表面102に対向するクッション100の第2の表面104に取り付けられた顔層130を含んでもよい。顔層130は、接着剤を含む任意の好適な方法を使用して取り付けられてもよい。第1の表面102は、ゴーグル1に取り付けられるように構成され、したがって、第2の表面104は、ユーザの顔により近いクッション100の表面である。顔層130は、クッション100が着用されている時にユーザの快適性を高めるように構成された材料の薄層であってもよい。
図3~
図6に示すように、顔層130は、ユーザの顔に接触するように構成されており、クッション100の第2の表面104を完全に覆ってもよい。いくつかの実施形態では、クッション100の格子構造は、厚さが顔層130の少なくとも2倍である。顔層130は、発泡体、フェルト布、又は他の布地などの任意の好適な軟質材料で作製されてもよい。
【0016】
図5及び
図6に最もよく示すように、格子セル110及び格子要素120は、クッション100全体にわたって延在する。格子セル110は、任意の所望の構成で設計されてもよい。例えば、格子セル110は、体心立方構造、面心立方構造、六方晶構造、単斜晶構造、又は正方晶構造などの規則的な繰り返し結晶構造で構成されてもよい。あるいは、格子セル110は、球、円錐、円柱、角錐、角柱、又は任意の他の円形、多角形、もしくは不規則な形状などの任意の所望の繰り返し構造であってもよく、又はクッション100全体にわたって変化する、もしくはランダムな構造で構成されてもよい。格子セル110は、クッション100全体に延在し、かつ途切れのない、又は不連続な材料から作製されていない連続構造の一部分であってもよい(すなわち、クッション100全体が格子セル100から形成されている)。例えば、クッション100は、互いに接着された、溶接された、又は取り付けられた異なる材料からは製造されない。代わりに、クッション100は、単一の連続した格子構造からなることができる。
【0017】
格子セル110及び格子要素120の寸法は、以下で更に詳細に説明するように、必要に応じて変更されてもよい。例えば、
図5aに示すように、格子セル110は、一辺当たり約8mmのサイズsを有する六角形構造で構成されてもよく、格子要素120は、約0.60mm~約0.80mmの厚さtを有する。他の実施形態では、格子セル110は、約5mmのおおよそのセルサイズsを有する確率的(すなわちランダム)パターンで構成されてもよく、格子要素120は、約0.70mm~約1.0mmの厚さtを有する。クッション100の格子構造は、いかなる適切な製造技術を使用して作製されてもよい。例えば、クッション100は、「3D印刷」技術と称されることの多い積層造形技術を使用して作製されてもよい。格子要素120に任意の好適な弾性変形可能な材料が選択されてもよい。選択される材料は、積層造形プロセスに容易に適合し、天候、温度、又はUV曝露からの環境劣化への耐性があることが好ましい。好適な材料としては、例えば、限定されないが、プラスチック(例えば、高い弾力性を必要とする格子に特に適したエラストマなど)及びゴム材料が挙げられる。いくつかの実施形態では、クッション100、具体的には格子要素120は、ポリウレタン、EVA、又はネオプレン発泡体などの標準的な発泡クッションに従来使用されている材料では作製されていない。
【0018】
圧縮性は、材料を設定距離だけ圧縮するのに必要な力として表すことができ、フックの法則で定義される「ばね力定数」:F=k
*xで説明することができ、式中、「F」は必要な力であり、「x」は設定距離であり、「k」はばね定数である。本出願の目的のために、クッション100の圧縮性は、
図6の矢印で示す方向によって最もよく示されるように、第2の表面104に垂直に力を加えることによって測定される。圧縮力が加えられる位置を説明するために、矢印がクッション100と交わる第1の位置140が示されてい
る。圧縮性は、例えばクッション100の1cm
2又は1in
2にわたって力を加えて特定の距離だけ圧縮するなど、第1の位置140の既知の領域にわたって分布する力を使用して測定され得ることを理解されたい。第1の位置140での圧縮性は、位置140の一点で測定されてもよい。本出願の目的のために、圧縮性は、1つのクッションの異なるゾーン間又は異なるクッション間の相対的な圧縮性として、そのようなクッション又はゾーンを同じ設定距離だけ圧縮するのに必要な力、すなわち、そのような設定距離だけクッションを圧縮するのがどれだけ困難であるかに関して表現されてもよい。したがって、より圧縮性の高いゾーンとは、同じ設定距離だけ圧縮することがクッション100のより圧縮性の低い別のゾーンよりも容易なクッション100のゾーンを指す。設定距離は同じであり、相対的な圧縮性の測定中に変化しないため、ばね力定数は、圧縮性と同じ現象を数値的に反対の方法で表し、すなわち、ばね力定数のより高いクッション100は、例えばより圧縮しにくいか、又はより硬いなど、より低い圧縮性を有する。「圧縮性」と「ばね力」又は「ばね力定数」とは双方とも、本明細書全体を通して、クッション100を所与の設定距離だけ圧縮するのに要する力の量を指すために使用される。
【0019】
例えば、格子セル110の構成、格子セル110の寸法、格子要素120の寸法、及び格子要素120用に選択された材料を含むクッション100の格子構造の設計を、クッション100の所望の圧縮性を達成するために変更してもよい。例えば、他の全てのパラメータを一定に保つ場合、より大きい厚さtを有する格子要素120を使用すると、一般にクッション100の圧縮性は低くなるが、より小さい厚さtを有する格子要素120を使用すると、圧縮性は高くなる。同様に、より小さいサイズsを有する格子セル110を選択すると、格子セル110がより緊密となり、その結果、一般には圧縮性が低くなる。材料の選択も圧縮性に影響を及ぼし、一般には材料の強度が高いほど、圧縮性はより低くなる。この圧縮性の変動は、当技術分野で知られている標準的な発泡体クッションとは異なるが、その理由は、一定の公称圧縮性を有する(すなわち、可変圧縮性を有さない)標準的な発泡体クッションは、発泡体クッションが別の領域と比較して1つの領域でより圧縮される(すなわち、より大きな距離だけ変形する)ことによって、異なる領域で異なる顔圧を加えるためである。
【0020】
クッション100は、クッション100上の2つ以上の位置で、異なる圧縮性、又はばね力定数を有するように構成されてもよい。例えば、
図7に示すように、第1の位置140が第1のばね力定数を有してもよく、第2の位置142が、第1のばね力定数とは異なる第2のばね力定数を有してもよい。
図7に示すように、第1の位置140は、クッション100の額領域に沿って位置してもよく、第2の位置142は、クッション100の頬領域に沿って位置してもよい。クッション100の異なる実施形態は、必要に応じて、異なるばね力定数(すなわち、異なる圧縮性)を有する任意の数の異なる位置を有してもよい。例えば、第1の位置140は、約0.50N/mm~約1.05N/mmのばね力を有してもよく、第2の位置142は、約0.15N/mm~約0.50N/mmのばね力定数を有してもよい。いくつかの実施形態では、クッション100は、約0.25N/mm~約0.75N/mmのばね力定数を有する第3の位置144を有してもよい。いくつかの実施形態では、第3の位置144は、クッション100の鼻領域に位置してもよい。
【0021】
これら3つの異なる位置のばね力は、ベースラインばね力定数のパーセンテージとして表されてもよい。ベースラインばね力定数は、クッション100の領域、例えば、額領域におけるばね力定数であってもよく、又はベースラインとして選択される他の公称定数であってもよい。クッション100の領域内のベースライン定数は、クッション100の選択された領域の第2の表面上の1つ以上の異なる位置で垂直方向(
図6の矢印で示す)のばね力定数を測定し、次いで、必要に応じて、それらの測定値を平均化することによって計算されてもよい。本明細書で使用される場合、クッション100のベースラインばね力定数は、100%のばね力定数として設定される。例えば、いくつかの実施形態では、第
1の位置140のばね力定数は、ベースラインばね力定数の約100%~約200%であってもよく、第2の位置142のばね力定数は、ベースラインばね力定数の約80%~約150%であってもよく、第3の位置144のばね力は、ベースラインばね力定数の約60%~約130%であってもよい。いくつかの実施形態では、第1の位置140のばね力定数は、例えば、ベースラインばね力定数の約140%~約160%など、ベースラインばね力定数の約120%~約180%であってもよい。第2の位置142のばね力定数は、例えば、ベースラインばね力定数の約100%~約130%など、ベースラインばね力定数の約90%~約140%であってもよい。第3の位置144のばね力は、例えば、ベースラインばね力定数の約80%~約110%など、ベースラインばね力定数の約70%~約120%であってもよい。
【0022】
したがって、圧縮性は、クッション100の周囲の離間した任意の位置で異なってもよい。いくつかの実施形態では、圧縮性は、圧縮深さにかかわらず一定である。深さ方向又は厚さ方向は、
図6に矢印で示す方向であり、これはクッション100の表面104に垂直な方向である。例えば、クッション100のある位置での圧縮の最初の5ミリメートルは、クッション100の同じ位置での最後の5ミリメートルの圧縮と同じ力を要する。圧縮力は加法的であり、最初の5ミリメートルは、例えば合計1ニュートンの力が印加されることを必要とし、次の5ミリメートルは追加の1ニュートンを必要とし、合計2ニュートンの力が印加されるが、深さ方向の圧縮性が一定であることは、増分力が同じままであることを意味する。これは、クッション100の深さ方向又は厚さ方向における一定の圧縮性である。
【0023】
しかしながら、いくつかの実施形態では、厚さ方向の圧縮性を変化させることが望ましくてもよい。厚さ方向の圧縮性を変化させることが、例えば、クッション100の複数の部分により高い初期圧縮性を付与することで、ユーザに「より柔らかい」と感じさせるために望ましくてもよい。そのような可変圧縮を伴うクッション100の実施形態では、クッションを設定距離だけ圧縮するのに必要な増分力は、クッションが圧縮されるのに伴って変化する。例えば、最初の5ミリメートルを圧縮するのに合計1ニュートンを必要とする一方で、クッション100の次の5ミリメートルを圧縮するのに合計3ニュートンの力を必要としてもよく、これは、クッション100のこの第2の5ミリメートルを圧縮するための増分力が1ニュートンから2ニュートンに倍増したことを意味する。この例は、クッション100及びレンズ4の一部分の略上面図である
図7aに示されている。この概略図は、異なるばね力定数R1、R2、R3、及びR4を有するクッション100の異なる部分を表す左セクション180、中央セクション182、及び右セクション184を有するブロック状のクッション100を示す。中央セクション182に示すように、クッション100のレンズに最も近い部分は定数R3を有する一方で、クッション100のレンズから最も遠い部分は定数R3とは異なる定数R2を有してもよい。したがって、概略図のクッション100の中央セクション182が圧縮される時に、圧縮性は、最初はR2に対応する1つの値である。
図7aに示すクッション100の中央セクション182が特定の距離だけ圧縮されると、圧縮性はR3に対応する値に変化する。
【0024】
クッション100のいくつかの実施形態は、(位置140及び位置142に関して上述したように)クッション100の横方向又は周囲方向と厚さ方向との両方に可変圧縮性を有してもよいが、他の実施形態は、横方向又は厚さ方向のいずれかに可変圧縮性を有するのみであってもよい。厚さ方向に様々な圧縮性を有するクッション100の部分において、クッション100の圧縮性は、クッション100が圧縮されるにつれて低下してもよく(クッション100がより硬くなる)、これにより、クッションがユーザをよりしっかりと支持することが可能になり、またクッション100が完全に圧縮された時にクッション100が水漏れするのを防止することができる。
【0025】
更に、クッション100のいくつかの実施形態は、いくつかの位置は厚さ方向に可変圧縮性を有する一方で、他の位置は厚さ方向に一定の圧縮性を有する構成とすることができる。このことは、例えば、クッション100のR1及びR4とラベル付けされたセクションが、一定の深さ方向の圧縮性を有してもよいが、クッション100の中央セクション(すなわち、R2及びR3)などの隣接するセクションのいずれの部分とも異なる圧縮性を有する
図7aに示されている。
【0026】
いくつかの実施形態では、異なる圧縮性は、
図8の概略的なクッションに最もよく示されているように、クッション100の別個のゾーンに分散されていてもよい。例えば、クッション100は、
図8に示すように、右額ゾーン170、中央額ゾーン171、左額ゾーン172、右外側頬ゾーン176、右内側頬ゾーン173、鼻ゾーン174、左内側頬ゾーン175、及び左外側頬ゾーン177に区分することができる。クッション100のこれらのゾーンはそれぞれ、ゾーン全体を通して一定の圧縮性を有してもよい。各ゾーンの圧縮性は、他のゾーンのいずれか又は全ての圧縮性と異なっていてもよいが、他のゾーンの1つ以上とほぼ同じとすることもできる。本明細書で説明され、
図8に示されるゾーンは、例示的なものに過ぎず、クッション100の任意の部分を覆うように構成されたいかなる数のゾーンが存在してもよい。あるゾーンから別のゾーンへの圧縮性の遷移は、漸進的であっても不連続であってもよい。漸進的な遷移の場合、圧縮性は、ゾーン間の境界に隣接する一方又は両方のゾーンの一部分全体にわたって徐々に変化する。遷移領域の全長は、圧縮性の所望の遷移が得られるように必要に応じて構成されてもよく、隣接するゾーンの両方で同じ距離にわたっても、又は異なる距離にわたってもよい。不連続な遷移の場合、一方の圧縮性から他方の定数への変化は、非常に短い距離にわたって起こり、いくつかの実施形態では、2つの隣接する格子セル110間で起こる。
【0027】
可変圧縮クッションの異なる圧縮性は、ベースライン圧縮性又はばね力定数のパーセンテージで表されてもよい。上述のように、ばね力定数は、異なる圧縮性を達成するために、クッション100の別個のゾーン(例えば、
図8の概略図に示すゾーンなど)で異なっていてもよい。ベースライン圧縮性は、クッションを既知の距離だけ圧縮するのに必要な任意の所望の力であってもよい。いくつかの例では、ベースライン圧縮性は、既知の一定の圧縮性の(ばね力定数がクッション全体で同じ)顔クッションの圧縮性として、又はユーザが顔クッションを着用した時に達成される公称の均一な顔圧に対応する圧縮性として選択されてもよい。例えば、クッション100のいくつかの実施形態では、5mmの圧縮深さに対して0.5psiを必要とするばね力定数をベースライン(100%に相当する)として設定してもよい。いくつかの実施形態による非限定的な例として、
図8の概略図を参照すると、クッション100の異なるゾーンの(このベースラインと比較した)ばね定数は、以下の表1に示す通りであってもよい。
【表1】
【0028】
クッション100の様々なゾーンにおける異なる圧縮性(又はばね力定数)は、選択さ
れたゾーンの圧縮性(又はばね力定数)に対して正規化されたパーセンテージとして示されてもよい。いくつかの実施形態による非限定的な例として、表2は、ベースライン(100%に対応する)としての中央額ゾーン171のばね力定数に対するクッション100のゾーンの異なるばね力定数(したがって圧縮性)を示す。したがって、これらの実施形態では、クッション100は、頬ゾーン173、175、176、177よりも約30~40%硬い(又はより圧縮性が低い)額ゾーン170、171、172を有することができ、鼻ゾーン174は、頬ゾーンの約半分の硬さ(又は約2倍の圧縮性)を有することができる。
【表2】
【0029】
いくつかの実施形態による別の非限定的な例として、表3は、ベースライン(100%に対応する)としての中央額ゾーン171のばね力定数に対するクッション100のゾーンの異なるばね力定数(したがって圧縮性)を示す。いくつかの実施形態では、このベースライン(例えば、表3の実施形態における中央額ゾーン171)は、約5mmの圧縮深さで約3.4psiに対応してもよい。したがって、これらの実施形態では、クッション100は、鼻ゾーン174よりも約15~35%硬くてもよい(又はより圧縮性が低くてもよい)頬ゾーン173、175、176、177よりも約30~55%硬い(又はより圧縮性が低い)額ゾーン170、171、172を有することができる。更に、いくつかの実施形態では、クッション100の側部領域178及び179は、額の低い圧縮性から頬及び鼻の高い圧縮性への遷移のためのゾーンとすることができる。例えば、クッション100の側部領域178及び179の下部は、例えば、額ゾーンの約70%の硬さであるなど、頬ゾーンにより近い圧縮性で高度に圧縮可能であってもよい。いくつかの実施形態では、側部領域178及び179の上部は、例えば、額ゾーンの約85~95%の硬さであるなど、額ゾーンにより近い圧縮性を有してもよい。
【表3】
【0030】
いずれのゾーンのばね定数を、ゾーン間の相対的なばね定数パーセントに到達するためのベースラインとしてもよいことを理解されたい。したがって、表3を参照すると、クッ
ション100の様々なゾーンにおける相対的な圧縮性は、ベースラインとしての額ゾーン170又は172の圧縮性に対して正規化されたパーセンテージとして表されてもよい。そのような場合、ベースラインと比較した相対的なばね定数は、外側頬ゾーン176、177で約70%とすることができ、内側頬ゾーン173、175で約60%とすることができ、中央額ゾーン171で約85%とすることができ、鼻ゾーン174で約45%とすることができる。クッション100の更に別の実施形態では、
図8のゾーンを参照し、例えば、額ゾーン170又は172をベースラインとした場合、外側頬ゾーン176、177の相対的なばね定数は、ベースラインの例えば約50%~約90%、例えば約60%~約80%、約70%、又は約75%など、約40%~約100%であってもよい。内側頬ゾーン173、175は、ベースラインの例えば約40%~約80%、例えば約50%~約70%、約60%、又は約65%など、約30%~約90%であってもよい。鼻ゾーン174は、ベースラインの例えば約25%~約65%、例えば約35%~約55%、約45%、約50%、又は約55%など、約15%~約75%であってもよい。したがって、可変圧縮のいくつかの実施形態(例えば、クッション100)では、額ゾーン170又は172は、約5mmの圧縮深さに対して約3.5psiを必要としてもよく、一方、同じ圧縮深に対して、外側頬ゾーン176、177は約2.6psiを必要としてもよく、内側頬ゾーン173、175は約2.3psiを必要としてもよく、鼻ゾーン174は約1.8psiを必要としてもよい。上述のように、相対的なばね力定数(又は圧縮性)は、クッション100のゾーン間の相対的な顔圧に対応することができる。したがって、前述のように、異なるゾーンでばね力定数(又は圧縮性)を変化させることで、それぞれのゾーンにおける快適な顔圧とゴーグルの快適なフィット性とを達成することができる。
【0031】
可変圧縮クッションの圧縮性が様々に異なるゾーンは、クッション100が顔に接触している時にユーザが受ける異なる顔圧に対応してもよい。顔の幾何学的形状及びゴーグル設計は、クッション100がクッション100の異なる点又は異なるゾーンで異なる深さに圧縮されることを意味する。一定の圧縮性を有するゴーグルクッションの場合、他の領域よりも圧縮深さの大きい領域ではクッションが着用者の顔により大きな圧縮力を加え、着け心地が悪くなってしまうおそれがある。しかしながら、本開示の可変圧縮クッションの実施形態は、これらのような領域におけるより高い圧縮性を、圧縮深さが比較的大きいにもかかわらず顔への圧縮力がさほど大きくならないように有する設計とすることができる。例えば、表4は、可変圧縮クッション100を有するゴーグル1のいくつかの実施形態を着用している間にユーザが受けた顔圧を示す。
【表4】
【0032】
ばね力定数及び圧縮性に関する上記の説明と同様に、可変圧縮クッションの異なるゾーンに対応する顔圧は、ベースライン顔圧のパーセンテージとして表されてもよい。いくつかの実施形態では、ベースライン顔圧は、フレームとクッションとの組み合わせを有する従来のシャーシゴーグルシステムを着用することによって生じる公称の均一な圧力として選択されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、ベースライン顔圧は、0.50p
si~0.90psiであってもよい。
【0033】
ベースライン顔圧はまた、クッション100が顔に接触する単一のゾーンにおける顔圧として設定されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、ベースライン顔圧は、中央額ゾーン171の顔圧として設定されてもよい。これらの実施形態では、右額ゾーン170又は左額ゾーン172の顔圧は、ベースライン顔圧の2~3倍であってもよい。これらの実施形態では、例えば、鼻ゾーン174の顔圧は、ベースライン顔圧の1~2倍であってもよい。これらの実施形態では、例えば、右内側頬ゾーン173又は左内側頬ゾーン175の顔圧は、ベースライン顔圧の1~2倍であってもよい。これらの実施形態では、例えば、右外側頬ゾーン176又は左外側頬ゾーン177の顔圧は、ベースライン顔圧の1~2倍であってもよい。
【0034】
表4に示すゾーン圧力のいずれかを、ベースラインに対するパーセンテージで表されるゾーン間の相対的な顔圧に到達するためのベースライン顔圧としてもよいことを理解されたい。例えば、表4を参照すると、右側額ゾーン170又は左側額ゾーン172を顔圧1.0PSIのベースラインとした場合、外側頬ゾーン176、177の相対的な顔圧は、約75%~110%であってもよい。内側頬ゾーン173、175の相対的な顔圧は、約60%~約101%であり得る。鼻ゾーン174の相対的な顔圧は、約55%~約71%であり得る。別の非限定的な例として、左額ゾーン170又は右額ゾーン172が顔圧2.05psiのベースラインとして選択した場合、中央額ゾーン171は、約25%~約35%であり得る。外側頬ゾーン176及び177の相対的な顔圧は、約35%~約55%であり得る。内側頬ゾーン173及び175の相対的な顔圧は、約30%~約50%であり得る。鼻ゾーン174の相対的な顔圧は、約25%~約35%であり得る。相対的な顔圧は、クッション100のゾーン間の相対的な圧縮性に対応し得る。したがって、前述のように、異なるゾーンで圧縮性を変化させることで、それぞれのゾーンにおける快適な顔圧とゴーグルの快適なフィット性とを達成することができる。
【0035】
別の例として、表5は、可変圧縮クッション100を有するゴーグル1の一実施形態を着用している間にユーザが受けた顔圧を、左右の額ゾーン171、172のいずれかをベースラインとして示す。非限定的な例として、いくつかの実施形態では、このベースラインは、約2.4psiに対応してもよい。
【表5】
【0036】
本開示の実施形態の別の利点は、クッション100の厚さを独立して設計しつつ、圧縮を変化させることが可能である点である。クッション100の厚さは、レンズ4の内側とユーザの顔との間の距離(一般にスタンドオフ距離として知られており、
図3に示す測定値dによって示されるように、レンズからクッション100の縁まで測定される)に直接影響を及ぼすため、重要な設計パラメータである。このスタンドオフ距離は、審美的理由及びレンズの性能上の理由から、近すぎても遠すぎてもならない。したがって、クッショ
ン100の様々な部分でクッション100の目標厚さを維持することが望ましい。クッション100の圧縮性を変化させることは、クッション100全体の厚さではなく、クッション100の格子構造のパラメータの関数であるため、例えば右額ゾーン170及び中央額ゾーン171などのクッション100の隣接する領域は、異なる圧縮性を有しながら同じ厚さを有してもよい。これにより、ユーザの顔へのより良好なフィットが可能となり、クッション100の全周にわたって、クッション100とユーザの顔との間の理想的かつ連続的な接触が保証される。これにより、設計者がクッション100の圧縮性を調整することができる一方で、設計者がクッション100の厚さを広範囲に選択することもできるため、クッション100及びゴーグル1のフィット性及び快適性が更に向上する。
【0037】
クッション100は、様々な種類のゴーグルで使用することができる。例えば、
図1~
図4のゴーグル1は、クッション100及びストラップ2の両方がレンズ4に直接取り付けられたフレームレスゴーグルを示している。クッション100はまた、例えば、
図9及び
図10に示すように、フレーム6を含むゴーグル1と共に使用されてもよい。
図9は、レンズ4の周りにフレーム6が配置されたゴーグル1の斜視図を示す。
図10は、レンズ4の内側にフレーム6が配置された「リムレス」タイプのゴーグル1の斜視図を示す。これらのタイプのゴーグル1のいずれにおいても、レンズ4の代わりにクッション100をフレーム6に直接取り付けてもよい。クッション100は、他の点では上述のクッション100の実施形態と同じであり、上述のいずれか又は全ての特徴を含んでもよい。クッション100はまた、ユーザの顔への接触のためにクッションを用いる任意の他の種類のアイウェアと共に使用するように適合されてもよい。
【0038】
クッション100の設計の別の局面は、通気性である。レンズ4の内面の通気性は、より一般的にはレンズ4の「曇り」として知られているレンズ4上の結露を最小限に抑えるために重要である。通気性は、クッション100がレンズ4、ユーザの顔、及びクッション100で囲まれた密閉領域を形成することから、
図1~
図4に示すようなクッション100の「閉ループ」実施形態において特に重要である。適切な通気がなされないと、この領域の温度及び湿度が上昇し、ユーザのレンズの曇り及び不快感につながるおそれがある。
【0039】
従来のゴーグルクッションは、クッションを通過する空気流を最小限にする発泡体材料から作製される。
図13に示すように、従来のゴーグル200のレンズの通気は、典型的には、レンズを保持するフレーム202内の開口部又はギャップ206を使用して達成される。これらの開口部206は、典型的には、通気を可能にする多孔質発泡体材料で覆われている。この手法では、フレームの設計を更に複雑化させることが必要であり、また、従来のクッション204の構造のために、レンズとユーザの顔との間の領域全体にわたる通気は不可能である。更に、この手法は、孔又は他の通気構造を収容するフレームがないため、フレームレスゴーグルを使用して実施することが困難である。
【0040】
クッション100の格子構造では、空気が格子セル110、ひいてはクッション100を通って流れることを可能にする格子セル110の開放性のために、空気がクッション100を通過することができる。したがって、クッション100は、通気性が最小限(場合によっては事実上ゼロ)の発泡体材料で通常構成される従来のクッション(すなわち従来のクッション204)よりもはるかに高い効率でレンズ4への通気を行うことができる。これは、格子セル110のサイズ範囲がはるかに広いためである。
【0041】
したがって、いくつかの実施形態では、クッション100によって提供される通気面積は、標準的な発泡体クッションを有する同様に構成されたゴーグル1の通気面積よりも大きい。いくつかの実施形態では、クッション100によって提供される通気面積は、標準的な発泡体クッションを有する同様に構成されたゴーグル1の通気面積よりも2倍以上、
2~3倍以上、又は3倍以上であってもよい。通気面積のこの増加により、全体的な空気流が同様に2倍以上に増加する。この改善は、クッション100がフレームレスゴーグルで使用される場合にも、フレームを有するゴーグルで使用される場合にももたらされる。クッション100がレンズ4に直接取り付けられているフレームレスゴーグルでは、クッション100がフレームに取り付けられている実施形態と比較してクッション100がより厚いため、通気面積のこの改善は上述の結果よりも更に大きくなり得る。例えば、一定の圧縮性のクッション204がフレーム202に取り付けられている標準的なゴーグル200は、約1500mm
2の通気面積を有してもよいが、一方、この既知のゴーグルと概ね同じレンズが所与の位置に顔スタンドオフ距離d(例えば、
図3に示すように、レンズ4の背面上かつレンズ4の中心線上の位置からユーザの顔までの距離d)を隔てて面するように設計された、クッション100を有する同じゴーグルは、約4500mm
2の通気面積を有してもよい。クッション面積のこの実質的な増加により、ゴーグル1が同じクッション厚さ、したがってユーザの顔からの距離に対してはるかに多くの通気面積を有することが可能である。あるいは、従来の発泡体クッションを使用する従来のゴーグルと同じ通気面積を、より薄いクッション100で達成することができ、これにより、ゴーグル1をユーザの顔のより近くでフィットさせることが可能となる。フレームレスゴーグルの場合、着用者の顔とレンズ4との間のクッション100の面積全体での通気が可能であるため、通気性がより改善され得る。
【0042】
更に、いくつかの実施形態では、クッション100は、レンズ4及びクッション100によって形成された密閉空間の通気を促進するように構成されてもよい。具体的には、
図11に最もよく示されるように、クッション100は、クッション100の格子構造内に組み込まれた通気チャネル150を含んでもよい。通気チャネル150は、クッション100の外部からクッション100の内部への空気流を改善するための、クッション100を貫通する開口部であってもよい。
図11に示すように、通気チャネル150の実施形態は、実質的に垂直方向に延在してもよい。2つ以上の通気チャネル150が、クッション100全体にわたって均等に又は不規則に間隔を隔てて配置されていてもよい。いくつかの実施形態では、通気チャネル150は、レンズ4を横切って所望の方向に空気流を誘導するように構成されてもよい。例えば、通気チャネル150は、
図11の矢印で示すように、クッション100の鼻領域及び頬領域からの空気流をレンズ4を横切って上方に誘導し、額領域を通して排出するように配置されてもよい。この空気流は、より冷たい乾燥した空気をレンズ4の背面を横切って導入することによって、レンズ4を曇りにくくすることができる。通気チャネル150はまた、例えば、レンズ4及びクッション100によって形成された密閉空間内の空気をより多く入れ換えることで、密閉空間内の空気の温度を低下させることによって、ユーザの快適性を高めるように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、通気チャネル150は、空気流をユーザの顔から遠ざけながら、レンズ4の表面を横切って誘導するように構成されている。例えば、通気チャネル150は、空気流をレンズに向け、かつユーザの顔から遠ざけて誘導するように傾斜していてもよい。この誘導は、上記のように曇りを抑えることによってレンズ4の性能を高めながら、(例えば空気流が非常に冷たい場合に)ユーザの顔を横切る空気流を最小限に抑えることによって、ユーザの快適性を向上させてもよい。他の実施形態では、通気チャネル150をレンズ4に近い領域に集中させることで、レンズ4の背面に至近かつユーザの顔から最遠の通気を増加させてもよい。通気チャネル150の特定の寸法、配向、及び分布は、空気流及び通気を促進する任意の所望の様式で実施することができる。
【0043】
いくつかの実施形態の更なる局面は、水分管理に関する。ゴーグル1のユーザは、汗をかく可能性がある。従来のゴーグルクッションは、一般に、ユーザの汗を吸収し、水分がゆっくりと蒸発する間、湿ったまま又は濡れたままである。これは、ユーザにとって不快であるおそれがあり、またレンズ4の内側の湿度を上げてレンズ曇りを悪化させるおそれがある。いくつかの実施形態では、クッション100は、ユーザの顔から水分を遠ざける
ことによって、また水分の蒸発を改善することによって水分管理を改善するための構造を含むことができる。
図12に示すように、クッション100の実施形態は、第2の表面104に孔160を含むことができる。これらの孔160は、水分管理チャネル162に流体接続されている。
図12に示すように、顔層130は、表面104及び孔160を覆っている。ゴーグル1のこれらの実施形態では、顔層130は、顔層130を通して水分を迅速に輸送するように構成されている。水分は、第2の表面104に到達すると、孔160を通って水分管理チャネル162内に移動する。水分管理チャネル162は、クッション100を通る空気流に少なくとも部分的に露出されるように構成されている。したがって、水分は、孔160を通って輸送され、次いで、水分管理チャネル162によってクッション100内の空気流に曝される。クッション100を通る空気流は、水分管理チャネル162内の水分の蒸発を改善する。孔160及び水分管理チャネル162は、任意の所望の寸法で設計され、必要に応じてクッション100全体にわたって分散されてもよい。いくつかの実施形態では、孔160及び水分管理チャネル162は、例えば額に沿った水分の多い領域に集中していてもよい。
【0044】
「発明の概要」及び「要約書」の項ではなく、「発明を実施するための形態」の項は、特許請求の範囲を解釈するために使用されることが意図されていることを理解されたい。「発明の概要」及び「要約書」の項は、本発明者によって考えられるように、本発明の1つ以上であるが全てではない例示的な実施形態を示し得るが、決して本発明及び添付の特許請求の範囲を限定するものではない。
【0045】
特定の実施形態の前述の説明は、当業者が知識を適用することにより、他の人にも可能である、そのような特定の実施形態を様々な用途に容易に変更及び/又は適合させ、過度の実験をすることなく、本発明の一般的な概念から逸脱することなく、本発明の一般的な性質を完全に明らかにするであろう。したがって、そのような適合及び修正は、本明細書で提示した教示及び指導に基づいて、開示された実施形態の等価物の意味及び範囲内にあることが意図される。値の範囲又は特定の値のいずれかが使用される場合、範囲又は特定の値は近似値である。具体的には、上記の表のいずれかで使用される値及び範囲は近似していると理解されるべきである。本明細書の表現法又は用語法は、説明を目的とするものであって、限定するものではないことを理解されたく、その結果、本明細書の用語法又は表現法は、教示及び指導の観点から当業者によって解釈されるべきである。
【0046】
本発明の広がり及び範囲は、上記の例示的な実施形態のいずれによっても制限されるべきではないが、特許請求の範囲及びそれらの等価物に従ってのみ規定されるべきである。