(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】放出システムからの活性物質の放出に関する分析的及び官能的判定を行うための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/00 20060101AFI20240229BHJP
C11B 9/00 20060101ALI20240229BHJP
B01J 13/02 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G01N33/00 C
C11B9/00 Z
B01J13/02
(21)【出願番号】P 2022531359
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(86)【国際出願番号】 EP2019082811
(87)【国際公開番号】W WO2021104624
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】511008850
【氏名又は名称】シムライズ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100134636
【氏名又は名称】金高 寿裕
(74)【代理人】
【識別番号】100114904
【氏名又は名称】小磯 貴子
(72)【発明者】
【氏名】ディアス,エディソン
(72)【発明者】
【氏名】ランファーマン,イザベル
(72)【発明者】
【氏名】ミヒェルス,カタリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ジンガー,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】オスターマン,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】シューマン,アーヒム
(72)【発明者】
【氏名】ウーデ,ファビアン
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-178018(JP,A)
【文献】特開2002-371191(JP,A)
【文献】特表2015-535731(JP,A)
【文献】特開2014-115240(JP,A)
【文献】特開平09-327506(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0224403(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0153445(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放出システム(6)からの活性物質又は複数の活性物質の放出の分析的及び/又は官能的判定、及び/又は、試料担体(7)又は支持面(8)上に配置される放出システム(6)の特性の判定に適した装置(1)であって、前記放出システム(6)がカプセル(6)又は前駆体(6)であり、
前記装置(1)は、
(a)ベースフレーム(2)と、
(b)前記ベースフレーム(2)に接続され、前記放出システム(6)を開放又は活性化させて、前記活性物質を放出するように配置された活性化装置(3)であって、
Z位置決めユニット(32)に接続され、前記Z位置決めユニット(32)を介して前記支持面(8)に垂直に移動でき、前記試料担体(7)上の前記放出システム(6)に物理的又は化学的刺激を与えて前記活性物質又は前記複数の活性物質を放出させるよう構成されるとともに、回収容器(34)を有する活性化部(31)であって、前記回収容器(34)は、前記試料担体(7)又は前記支持面(8)に支持されているときに前記放出システム(6)と前記活性化部(31)を封入する、活性化部(31)
を備えた活性化装置(3)と、
(c)前記放出された活性物質又は複数の活性物質の分析的判定のために設定された検出装置(5)であって、前記放出された活性物質又は複数の活性物質が検出装置(5)に供給可能となるように構成された検出装置(5)と、を備える装置(1)。
【請求項2】
前記活性化装置(3)がさらに、
前記放出された活性物質又は複数の放出された活性物質を回収して前記検出装置(5)に導くように配置した検出ライン(35)を備える、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記カプセル(6)への前記物理的又は化学的刺激が、圧力、摩擦、温度、pHの変化、紫外線放射、マイクロ波及び超音波からなる群から選択され、又は前記前駆体(6)への前記物理的又は化学的刺激が、化学反応、温度、湿度、pHの変化、酸素、光、酵素及び微生物からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記活性化部(31)が粗表面を有する、請求項1から3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記活性化装置(3)が、前記活性化部(31)での同心円運動、偏心運動又は等距離運動を誘発する回転ユニット(38)を備える、請求項1から4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記ベースフレーム(2)に接続され、前記活性化装置(3)を前記試料担体に対して相対的に移動させるように配置した、少なくとも1つのX位置決めユニット及び/又はY位置決めユニット(41、42)をさらに備える、請求項1から5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記位置決めユニット(41、42)は、位置決めレーザ(43)を備える、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
放出システム(6)からの一以上の活性物質の放出についての分析的及び/又は官能的判定のための方法であって、前記放出システム(6)がカプセル(6)又は前駆体(6)であり、
前記方法は、
(i)試料担体(7)又は支持面(8)上に、一以上の活性物質を備える放出システム(6)を提供する工程と、
(ii)活性化部(31)を有する活性化装置(3)を、前記放出システム(6)の上で位置決めする工程と、
(iii)前記活性化装置(3)を降下させる工程と、
(iv)前記活性化部(31)により、前記放出システム(6)から前記活性物質又は複数の活性物質を放出させる工程と、
(v)前記放出された活性物質又は複数の放出された活性物質を回収して検出装置(5)に送出する工程と、
(vi)放出された活性物質(複数の活性物質)を分析的及び/又は官能的に判定、及び/又は
放出システム(6)の特性を判定、及び/又は
放出システム(6)の、基材上の分布及び付着を分析、及び/又は
前記放出システム(6)から基板上に放出した後の一以上の活性物質の持続性を分析、及び/又は
放出システム(6)の機械的安定性及び破壊強度及び/又は放出システム(6)からの活性物質又は複数の活性物質の放出について、物理的又は化学的要因の影響を分析、及び/又は
放出システム(6)の開発及び製造の間に、活性物質又は複数の活性物質の放出の分析的判定、及び放出システム(6)の特性を判定する工程と、を備える方法。
【請求項9】
工程(vi)の後に、
前記
活性化装置
(3)をリセットする工程を備え、前記リセット工程が前記活性化装置(3)を上昇させる工程を備える、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記活性化部(31)による前記活性物質又は複数の活性物質の放出の後に物理的刺激又は化学的刺激が続く、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記カプセル(6)への前記物理的又は化学的刺激は、圧力、摩擦、温度、pHの変化、紫外線放射、マイクロ波、及び超音波からなる群から選択され、又は前記前駆体(6)への前記物理的又は化学的刺激は、化学反応、温度、湿度、pHの変化、酸素、光、酵素及び微生物からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記活性化部(31)による前記活性物質又は複数の活性物質の放出が、0Paから始まる圧
力で行われる、請求項8から11に記載の方法。
【請求項13】
前記活性化部(31)による前記活性物質又は複数の活性物質の放出が、前記放出システム(6)及び/又は前記試料担体(7)と接する前記活性化部(31)の0rpmから始まる回転速
度で行われる、請求項8から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記放出システム(6)は、ハードシェルカプセル、ソフトシェルカプセル、マクロカプセル、マイクロカプセル、カプセルスラリー及びカプセルエマルジョンからなる群から選択される、請求項8から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記活性物質が、匂い物質、香料、香油、匂い物質混合物、香料混合物、アロマ、植物エキス、精油、化粧品有効物質、冷却有効物質、医薬有効物質からなる群から選択される、請求項8から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
請求項1から7のいずれかに記載の装置及び請求項8から15のいずれかに記載の方法の使用であって、
- 活性物質又は複数の活性物質の放出の分析的及び/又は官能的な決定のため、及び/又は
- 放出システム(6)の特性を判定するため、及び/又は
- 放出システム(6)の、基材上の分布及び接着を分析するため、及び/又は
- 前記放出システム(6)から基板上に放出した後の一以上の活性物質の持続性を分析するため、及び/又は
- 放出システム(6)の機械的安定性及び破壊強度及び/又は放出システム(6)からの活性物質又は複数の活性物質の放出について、物理的又は化学的要因の影響を分析するため、及び/又は
- 放出システム(6)の開発及び製造の間に、活性物質又は複数の活性物質の放出の分析的判定、及び放出システム(6)の特性を判定するための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放出システムからの活性物質又は複数の活性物質の放出を分析的及び/又は官能的に判定するための装置及び方法に関する。特に、本発明は、カプセル又は前駆体からの活性成分又は複数の活性成分、特に匂い物質又は香料又は匂い物質又は香料の混合物の放出について判定するための装置及び方法に関する。さらに、本発明は、放出システム、特にカプセル又は前駆体の特性を判定するための装置及び方法に関する。最終的に、本発明は、放出システムからの一以上の活性成分の放出を分析的及び/又は官能的に判定するための、本発明に係る装置及び方法の使用に関する。
【0002】
本発明の意味での放出システムは、一以上の活性成分を含む、例えば粒子又はカプセルのような固体製剤である。
【0003】
このような放出システムの別の例として、いわゆる前駆体又は前駆体物質が挙げられる。このような前駆体又は前駆体物質において、薬剤との化学反応、温度、湿度、pHの変化、酸素(酸化)、紫外線等の光、酵素、微生物などの化学的又は物理的刺激(impulse)によって、一以上の活性成分を放出させる。たとえば、フレグランスの製造において、前駆体は、弱い固有の臭いを持つ分子であって、温度、酸素(酸化)、光、酵素、微生物、化学反応(たとえば、加水分解)、pHの変化、水分などの外部要因が作用すると、少なくとも1つの新しいフレグランス分子を放出する。その結果、このようなフレグランス前駆体の寿命が尽きるまで新しいフレグランスが何度も放出され、わずかに匂いが変化する。
【0004】
「カプセル化」という用語によって、当業者は通常、微細分散した固体、液体又は気体物質、例えば活性成分が、高分子及び/又は無機壁材料の皮膜形成シェルによって覆われて固定化された技術であると解釈する。
【0005】
カプセル内に封入された物質又は活性成分は、一般にコア材と呼ばれる。
【0006】
壁材又はクラッド材及び架橋の程度に応じて、マイクロカプセルの個々の特性を達成することができる。
【0007】
ここでの目的は、活性成分として知られる活性材料を、水分や酸化等の環境だけでなく、他の物質との反応からも保護すること、及び/又は、定められた時間に目標とする方法でこれらの成分を放出できるようにすることである。
【0008】
カプセル化では、相の形態に応じて、マトリクス型とコア/シェル型とにカプセルを区別する。マトリクス型カプセル化では、活性成分(複数の活性成分)がシェル材料(「マトリクス」)と均質に混合され、その結果、活性成分(複数の活性成分)が均一に分散した粒子が得られる。マトリクスシステムは、微粒子とも呼ばれる。一般に、環境中への活性成分(複数の活性成分)の拡散又はマトリクスの分解のいずれかによって、活性成分(複数の活性成分)が放出される。
【0009】
コア/シェル型カプセル化では、コアを形成する活性成分(複数の活性成分)をシェル材料でカプセル化する。一以上のシェルを有する、まさしくカプセルが作成される。通常、圧力やせん断などの機械的応力によって、コア材は完全に放出される。ただし、温度、pHの変化、紫外線、マイクロ波、超音波など、別の開放機構によってコア材や活性成分(複数の活性成分)を選択的に放出することも可能である。
【0010】
直径が1cmにまで及ぶ肉眼で見える粒子に加えて、マイクロカプセルが特に注目されている。マイクロカプセルは、約0.0001mm~約5mm、好ましくは0.005mm~0.5mmの範囲の直径を有する球状粒子を意味すると当業者は理解する。
【0011】
本発明によれば、「マイクロカプセル」という用語は、固体、ゲル化、液体又は気体状媒体で満たされた内部空間又はコアを含み、皮膜形成高分子の連続したシェルによって封入(カプセル化)された粒子及び凝集物を指す。さらに、微小(microscopic)カプセルは、一以上の層からなる連続したカプセル化材料中に分散する一以上のコアを含んでもよい。
【0012】
このようなマイクロカプセルのシェルは、天然、半合成又は合成材料からなるものであってよい。天然シェル材料は、例えば、アラビアゴム、寒天、アガロース、マルトデキストリン、アルギン酸又はその塩(例えばアルギン酸ナトリウム又はカルシウム)、脂肪及び脂肪酸、セチルアルコール、コラーゲン、キトサン、レシチン、ゼラチン、アルブミン、シェラック、多糖類(例えばデンプン又はデキストラン)、ポリペプチド、タンパク質加水分解物、スクロース及び蝋などである。半合成コーティング材料としては、化学修飾セルロース、特にセルロースエステル及びエーテル(例えば酢酸セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びカルボキシメチルセルロース)ならびにデンプン誘導体、特にデンプンエーテル及びエステル類が含まれる。合成シェル材料は、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリビニルアルコール、アミノプラスト、フェノプラスト又はポリビニルピロリドンなどの重合体等である。
【0013】
様々な壁材やコア材の使用により、多くの可能な用途がある。
【0014】
マイクロカプセルの作成は、先行技術文献に詳細に記載されており、溶媒蒸発、沈殿プロセス、液滴形成、界面重縮合、高圧カプセル化プロセスなどの既知の反応性及び非反応性プロセスを利用可能である。
【0015】
先行技術のマイクロカプセルの例としては、以下の市販品が挙げられる(各例について、シェル材料を括弧書きで示す)。Hallcrest Microcapsules(ゼラチン、アラビアゴム)、Coletica Thalaspheres(海洋コラーゲン)、Lipotec Millicapsules(アルギン酸、寒天)、Induchem Unispheres(ラクトース、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、Unicerin C30(ラクトース、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、Kobo Glycospheres(加工デンプン、脂肪酸エステル、リン脂質)、Softspheres(加工寒天)、Kuhs Probiol Nanospheres(リン脂質)、さらにはPrimaspheresやPrimasponges(キトサン、アルギネート)やPrimasys(リン脂質)。合成ポリマー製のカプセルとして、Micronal(登録商標)(BASF)、Microcapsules 500及び560(Koehler SE)、Folco Smart-caps(登録商標)、Enfinit(登録商標) Ensensa(登録商標)。
【0016】
その特性により、一以上の活性成分を含むカプセル、特にマイクロカプセルは、印刷産業(例えば、香り付き塗装膜)、食品産業(例えば、ビタミン、香味料、植物エキス、酵素、微生物)、農薬産業(例えば、肥料、作物保護剤)、飼料産業(例えば、ミネラル、ビタミン、酵素、医薬品、微生物)、医薬産業、洗剤産業及び化粧品産業などにおいて使用されている。
【0017】
日常的に使用する多くの物品、例えば洗剤、柔軟剤、洗濯用粉末、液体洗剤、シャワージェル、シャンプー、デオドラント、ボディローションなどは、カプセル化した匂い物質又は匂い物質混合物で香りをつけている。
【0018】
特に、カプセル、好ましくはマイクロカプセルは、例えば、香水抽出物、オードパルファン、オードトワレ、シェービングウォータ、オーデコロン、プレシェーブ製品、スプラッシュコロン、床クリーナー、窓ガラスクリーナー、食器洗い洗剤、浴室及び衛生クリーナーなどの酸性、アルカリ性、中性洗浄剤、研磨用ミルク、固体及び液体トイレクリーナー、粉末及び発泡カーペットクリーナー、液体洗濯洗剤、粉末洗濯洗剤、漂白剤、軟化剤及び染み抜き剤等の洗濯前処理剤、柔軟剤、洗濯石鹸、洗濯錠剤、消毒剤、表面消毒剤、ならびに液体、ゲル、又は固体の消臭剤、エアゾールスプレー、家具用艶出し剤、フロアワックス、靴クリームなどのワックスや艶出し剤、ならびにパーソナルケア製品、例えば、固体及び液体石鹸、シャワージェル、シャンプー、シェービング石鹸、シェービングフォーム、バスオイル、水中油(OW)型、油中水(WO)型及び水中油中水(WOW)型の化粧用エマルジョン(例えば、スキンクリーム及びローション、フェイスクリーム及びローション、日焼け止めクリーム及びローション、アフターサンクリーム及びローション、ハンドクリーム及びローション、フットクリーム及びローション、脱毛クリーム及びローション、アフターシェーブクリーム及びローション、日焼けクリーム及びローション)、ヘアケア商品(例えばヘアスプレー、ヘアジェル、セット用ヘアローション、ヘアコンディショナー、永久・半永久染毛剤、ヘア成形商品(例えば、コールドパーマや縮毛矯正剤)、ヘアトニック、ヘアクリーム及びローション)、消臭剤及び制汗剤(例えば腋下スプレー、ロールオン、消臭スティック、消臭クリーム)、装飾化粧品(例えばアイシャドウ、マニキュア、メークアップ用品、口紅、マスカラ)、ケアワイプ、ベビー用ケアワイプ、デリケートゾーン用ケアワイプ、リフレッシュワイプ、ならびに蝋燭、ランプ用オイル、お香、殺虫剤、防虫剤、噴射剤などの製品に使用される。
【0019】
適切なコーティング材料を用いた活性成分(複数の活性成分)のカプセル化は、次のような理由で行う。
- 液体を扱いやすい粉末に変換すること(例えば、植物油、脂をカプセル化する)。
- 物質を時間制御すなわち遅延放出させること(投与量制御、薬物、殺虫剤、肥料のデポ効果)。
- 味、匂い、色を多層化すること(例えば、苦味や辛味の香料など)。
- 光、酸化、熱、酸又は塩基から保護すること(例、ビタミン、香料など)
- 吸湿性塩類や鉱物などを防湿すること。
- 揮発性成分(香料など)の蒸発速度を遅らせること。
- 他の混合成分との早期化学反応を防止すること。
- 加工前又は加工中の管理性を向上させること(例、流動特性の最適化、微細な粉塵形成の回避)。
- 有害又は不快な物質(化学物質、濃縮アロマ)から人員を保護すること、又は
- 分散性を向上させること。
【0020】
マイクロカプセルの特定の用途の一つとして、洗剤及び洗浄剤において繊維表面上での匂い物質の放出を制御する又は遅延させる用途がある。洗濯の際、匂い物質や香油を含んだマイクロカプセルが洗濯物に広がり、布に付着する。衣類を着用すると、摩擦や圧力でカプセルが破裂し、匂い物質や香油が放出される。
【0021】
マイクロカプセルの内容物は、様々な方法で放出することができる。代表的な機構として、次の4つが考えられる。
- カプセルの壁を、破砕やせん断によって機械的に破壊する。この仕組みは、例えば反応型ノーカーボン紙で使われている。
- 壁材を(熱で)溶かしてカプセル壁を破壊する。この仕組みによれば、例えばパン焼成用ミックスでは、焼成時にのみ焼成剤や香りなどの成分が放出される。
- 壁材を溶解させてカプセル壁を破壊する。この仕組みは、例えば粉末洗剤に利用されており、酵素などのカプセル化された成分を洗浄時にのみ放出させる。
- カプセルはそのままで、カプセルの中身がカプセル壁から拡散して徐々に放出される。この仕組みによれば、例えば、薬物成分を体内でゆっくりと均一に放出させることができる。
【0022】
このような活性成分放出システム、特にカプセル又は前駆体を開発、製造及び使用する際に適切な措置を講じることができるようにするには、活性成分の放出(例えば、活性成分又は複数の活性成分の濃度、放出速度、活性成分又は複数の活性成分の放出特性)ならびにカプセルシェルの機械的安定性、破壊強度、遅延挙動などの様々な特性を意識することが重要である。
【0023】
現在、カプセル、特にマイクロカプセルからの活性成分又は複数の活性成分、特に匂い物質又は香料の放出については、種々の方法を用いた官能分析評価によって判定されている。この目的のために、特別な訓練を受けた試験員/識者集団(panel)が採用されている。
【0024】
記述的官能分析、すなわち記述的官能分析法は、その多様性と複雑性から、最も高度な官能手法と考えられている。従来、これらの手法は、適切な資格を持つ人の知覚に基づいて詳細な製品特性を生み出すことができたが、時間とコストがかかっていた。客観的に知覚できる製品特性についての同定、記述、定量化など、古典的な記述分析の範囲内の作業について、特別な訓練を受けた試験員が採用されてきた。これらの処理の目的は、他の製品との比較や、さらには製品の作り方に変換できるような、詳細な製品説明を得ることである。多段階の官能評価手順に加え、古典的な特性分析では、試験員の資格取得のためのトレーニング手順に時間がかかることが、特に大きな批判の対象となっている。
【0025】
技術革新のためのコストや時間のプレッシャー、そして製品ライフサイクルの短縮化により、判定に関連する情報をより迅速に入手することがますます求められている。短期的な手法、いわゆる記述的迅速法(descriptive rapid method)は、訓練を受けていない被験者を使うこともできるため、この点では代替手段となり得るが、情報損失を伴ってしまう。
【0026】
官能評価は、手法の改善や被験者のトレーニングの充実により標準化される傾向にあるが、依然として主観的な評価であり、特定の基準に基づく客観的・標準的な分析方法と同列に扱うことはできない。
【0027】
官能分析において、放出システム、特にカプセルからの活性成分の放出は、通常、放出システム、特にカプセルへの圧力(例えば圧力強度)について標準化することなく手動摩擦によって行われるため、活性成分又は複数の活性成分の放出結果は、大きな変動の影響を受けてしまう。
【0028】
そこで、本発明の主要な課題は、上記の問題を克服し、客観的かつ標準化した、すなわち標準化した分析方法を実施する装置及び方法を提供することであって、活性物質又は複数の活性物質の放出についての再現性のある定性的及び/又は定量的な記述、特に放出された活性物質又は複数の活性物質及び/又は活性物質放出システム、特にカプセルの特性についての定性的及び/又は定量的な記述を可能とすることである。
【0029】
特に、本発明の課題は、放出システムからの一以上の活性成分の放出、特にカプセル又は前駆体からの一以上の活性成分の放出について、分析的及び/又は官能的に判定するための標準的方法を提供することである。
【0030】
さらに、本発明の課題は、装置の設計が単純で、方法が使いやすいだけでなく、様々な放出システム又は活性物質に対して可変とすることである。
【0031】
最終的に、本発明は、この装置を標準的な分析機器と組み合わせて、測定値の同定や定量ができるようにすることを目指している。
【0032】
驚くべきことに、物理的又は化学的刺激(例えば圧力及び/又は摩擦)によって一以上の活性成分が放出システム6、好ましくはカプセル6又は前駆体6から放出され、放出された活性成分(複数の活性成分)を検出装置に供給し、放出された活性成分を最終的に分析により判定する装置及び/又は方法によって前述の課題を解決できることがわかった。
【0033】
手順上の利点として、本発明による装置及び/又は方法によって、正規化されたすなわち標準化された条件下での客観的分析方法が提供され、これにより例えば様々な放出システムからの分析値同士を比較することができ、活性物質の放出をオンラインで連続的に測定できることが挙げられる。
【0034】
特に、本発明による装置及び方法によれば、放出された活性成分(複数の活性成分)の濃度の判定、活性成分(複数の活性成分)の放出速度の判定、又は一以上の活性成分の放出特性の判定が可能となる。
【0035】
一方、本発明による装置及び方法によれば、放出システム、特にカプセルの特性(例えばカプセルの機械的安定性及び破壊強度、又は例えば一定期間貯蔵後のカプセルの遅滞挙動)の判定が可能となる。
【0036】
本発明による装置及び方法によれば、さらに、基材上での放出システム、特にカプセル(6)又は前駆体(6)の分布及び付着について試験し、及び/又は基材上での放出システム(6)、特にカプセル(6)又は前駆体(6)からの放出後の活性物質又は複数の活性物質の持続性(substantivity)を分析し、及び/又は放出システムの機械的安定性及び破壊強度についての物理的又は化学的要因(例えば温度、光、紫外線、pH値)の影響を分析し、及び/又は放出システムからの活性物質又は複数の活性物質の放出を分析し、及び/又は放出システムの開発及び製造の間に活性物質又は複数の活性物質の放出及び放出システムの特性を確認することが可能である。
【発明の概要】
【0037】
第1の態様において、本発明は、放出システム6からの一以上の活性成分の放出、特にカプセル6又は前駆体6からの一以上の活性成分の放出を分析的及び/又は官能的に判定するため、及び/又は試料担体7上、支持面8上に位置する放出システム6、特にカプセル6又は前駆体6の特性を判定するために適した装置1に関し、
(a)ベースフレーム2と、
(b)ベースフレーム2に接続され、放出システム6、特にカプセル6又は前駆体6を開放又は活性化させて、そこに含まれる活性物質又は複数の活性物質を放出するように配置した活性化装置3と、
(c)放出された活性物質(複数の活性物質)の分析的判定のために設定され、放出された活性物質(複数の活性物質)を検出装置5に供給できるよう設計された、検出装置5と、を備える。
【0038】
さらなる態様において、本発明は、放出システム6、特にカプセル6又は前駆体6からの一以上の活性成分の放出を分析的及び/又は官能的に判定するため、及び/又は放出システム6、特にカプセル6又は前駆体6の特性を判定するための方法に関し、
(i)試料担体7又は支持面8上に、一以上の活性物質を備える放出システム6、特にカプセル6又は前駆体6を提供する工程と、
(ii)活性化部31を有する活性化装置3を、放出システム6、特にカプセル6又は前駆体6の上で位置決めする工程と、
(iii)活性化装置3を降下させる工程と、
(iv)活性化部31により、放出システム6、特にカプセル6又は前駆体6から活性物質又は複数の活性物質を放出させる工程と、
(v)放出された活性物質又は複数の活性物質を回収して検出装置5に送出する工程と、
(vi)放出された活性物質又は複数の活性物質を分析的に判定する工程と、を備える。
【0039】
最終的に、本発明は、本発明の装置及び方法の使用に関し、
- 放出システム6、特にカプセル6又は前駆体6から活性物質又は複数の活性物質の放出、特に濃度、放出速度又は放出特性の分析的及び/又は官能的な決定のため、
- 放出システム6、特にカプセル6又は前駆体6の特性、例えば、機械的安定性、破壊強度及び遅延挙動、特に、異なるカプセル材料及び異なる活性成分から形成された各カプセル6の機械的安定性、破壊強度又は遅延挙動を判定するため、
- 放出システム6、特にカプセル6又は前駆体6の、基材上、特に繊維製品上での洗浄及び乾燥後の分布及び付着を分析するため、
- 放出システム6、特にカプセル6又は前駆体6から基板上に放出した後の一以上の活性物質の持続性を分析するため、
- 放出システム、特にカプセル又は前駆体6の機械的安定性及び破壊強度及び/又は放出システム6、特にカプセル6又は前駆体6からの活性物質又は複数の活性物質の放出について、物理的又は化学的要因(例えば温度、光、UV放射、pH値)の影響を分析するため、
- 放出システム6の開発及び製造の間に、活性物質又は複数の活性物質の放出の分析的判定、及び放出システム6、特にカプセル6又は前駆体6の特性を判定するため、の使用に関する。
【0040】
本発明のこれらの及び他の態様、特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び請求項の検討から当業者には明らかとなるであろう。なお、本発明の任意の態様の任意の特徴は、原則として、本発明の他の任意の態様において使用してもよい。さらに、本明細書の実施例は、本発明を説明及び例示することを意図しているが、本発明を限定するものではなく、特に、本発明はこれらの実施例に限定されないことを理解されたい。
【0041】
本明細書の文脈で用いられる「少なくとも1つ」という表現は、一以上、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又はそれ以上を意味する。したがって、例えば、「少なくとも1つの位置決めユニット」という表現は、少なくとも1つの位置決めユニットを備えることを意味するが、2つ以上の位置決めユニットが備わっている場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明による装置の好ましい変形例を示す概略上面図である。
【0043】
【
図2】本発明による装置の活性化装置の好ましい変形例の概略断面図である。
【0044】
【
図3】本発明による装置の好ましい変形例の詳細斜視図である。
【0045】
【
図4】本発明による検出システム及び供給ラインを備えた装置の好ましい変形例の全体斜視図である。
【0046】
【
図5】本発明による解析手順の各工程を示す模式図である。
【0047】
【
図6】香油入りカプセルの破砕を連続的に測定した例を示す図である。
【0048】
【
図7】厚みが異なるメチルホルムアミド系コア/シェル香油各カプセルからのフレグランス放出の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明の装置、その変形例、さらに好ましい実施形態について、添付の
図1~
図4を参照して以下により詳細に説明する。
【0050】
分析的及び/又は官能的判定のための装置1は、カプセルからの一以上の活性成分の放出を分析的に判定するためのものと単に理解されるべきではなく、一般に、活性成分を含む放出システムからの一以上の活性成分の放出を分析的及び/又は官能的に判定するために構成される。
【0051】
本発明の文脈における放出システムは、一以上の活性成分を含む、例えば粒子又はカプセルのような固体製剤であると理解されたい。好ましい放出システムは、マトリクス型又はコア/シェル型のカプセルであって、好ましくは、マイクロカプセルである。マトリクス型カプセル化では、活性成分(複数の活性成分)がシェル成分(「マトリクス」)と均質に混合され、活性成分(複数の活性成分)が均一に分散した粒子が形成される。一般に、この種のカプセルからは、環境中への活性成分(複数の活性成分)の拡散又はマトリクスの分解のいずれかによって活性成分(複数の活性成分)が放出される。コア/シェル型カプセル化では、コアを形成する活性成分(複数の活性成分)をシェル材料でカプセル化する。一以上のシェルを有する、まさしくカプセルが形成される。通常、圧力やせん断などの機械的応力によって、コア材は完全に放出される。ただし、温度、pHの作用、紫外線光、マイクロ波、超音波など、別の開放機構によってコア材を選択的に放出させることも可能である。
【0052】
本発明の文脈において、例えばハードシェルカプセル、ソフトシェルカプセル、マクロカプセル、マイクロカプセル、カプセルスラリー、カプセルエマルジョン等のカプセルからの活性成分の放出の分析的な判定に関して、本発明の装置1は特に適している。
【0053】
本発明の文脈における放出システムはさらに、前駆体又は前駆体物質を指す。このような前駆体又は前駆体物質において、温度、酸素(酸化)、光、酵素、微生物、化学反応(例えば加水分解)、pHの変化、水分等の化学的又は物理的刺激によって、一以上の活性成分を放出させる。本発明で使用する前駆体は、例えば、光、水又は酸素などの外的要因と接触したときに少なくとも1つの新しいフレグランス分子を放出する弱い固有の匂いを有する匂い物質である。その結果、新しいフレグランスノートがフレグランスの寿命が尽きるまで繰り返し放出され、匂いにわずかな変化が生じる。
【0054】
本発明の文脈において、「放出システム」という用語は、好ましくは、カプセル、特にマイクロカプセル、ならびに前駆体又は前駆体物質を含む。「放出システム」、「カプセル」、「マイクロカプセル」、「前駆体又は前駆体物質」という用語はそれぞれ、以下の説明において、一つの用語が別の用語を含むように互いに等しく及び交換可能に使用され、逆もまた然りである。「カプセル」及び「マイクロカプセル」という用語には、マトリクス型カプセルとコア/シェル型カプセルの両方が含まれる。
【0055】
第1の態様において、本発明は結果的に、放出システム6からの一以上の活性成分、好ましくはカプセル6又は前駆体からの一以上の活性成分の放出を分析的及び/又は官能的に判定するための装置1に関する。
【0056】
放出とは、製剤から、すなわち放出システム6から、好ましくはカプセル6又は前駆体6からの活性成分の放出又は生成を意味する。
【0057】
分析的判定は一般に、放出システム6から放出される活性成分又は複数の活性成分、特にカプセル6又は前駆体6から放出される一以上の活性成分を定性的(活性成分の同定)及び/又は定量的(活性成分の量)に分析することを意味すると理解されたい。分析的判定によって、放出された活性成分又は複数の活性成分の濃度だけでなく、その放出速度、すなわち経時的な活性成分又は複数の活性成分の放出についても判定することができる。
【0058】
放出速度を判定するには、活性成分又は複数の活性成分が、どのように、すなわちどのような強度で及び/又はどのような濃度で、経時的にカプセルから放出されていくかを測定する。
【0059】
さらに、分析的判定を用いて、活性成分又は複数の活性成分の放出特性、すなわち急速放出か遅延放出かを、定性的かつ定量的に判定することも可能である。放出特性の判定は、活性成分の混合物、例えば香油の混合物、匂い物質の混合物又は香料の混合物に対して特に重要である。放出特性によって、匂い物質混合物又は香料混合物の個々の成分が、放出システムから、特にカプセル6又は前駆体6から、どのようにすなわちどのような強度で及び/又はどのような濃度で経時的に放出されるかを判定することができる。
【0060】
さらに、装置1は、放出システム6、特にカプセル6の特性を判定するよう構成する。放出システムの特性の判定とは、特に一定期間にわたる保存後等に、放出システム又はカプセルの機械的安定性、破壊強度又は遅延挙動等の機能的特性の分析を行うことを意味する。
【0061】
放出された活性成分(複数の活性成分)を分析することにより、放出された活性成分の濃度、活性成分の放出速度(急速放出であるか持続的な放出であるか)、活性成分混合物等の放出特性、又は例えば放出システムを一定期間保存した後等に、カプセルシェルがどの程度安定しているか、カプセルシェルがどのような破裂挙動(破砕挙動)を示すか、カプセルシェルがどの遅延特性を持つか、等の情報を得ることができる。
【0062】
放出システム6、好ましくはカプセル6中のマトリクス内で分布する材料すなわち含有されるコア物質すなわち活性物質は、固体、液体又は気体状物質である。好ましくは、放出システム6のコア材は、室温で揮発する揮発性物質である。
【0063】
上述の放出システムで使用する活性成分の選択は、その放出システムの意図された用途に基本的に基づく。
【0064】
好ましくは、放出システム6、好ましくはカプセル6において、洗剤及び洗浄剤、接着剤、塗料及びワニスなどの塗料組成物、結合剤、プラスチック、紙、繊維などの材料、潤滑剤、建築材料、染料、有機及び無機の粉末、顔料分散物、相転移材料、難燃剤、農薬の分野から活性成分を使用するが、化粧品及び医薬品の分野の活性成分でもよい。
【0065】
好ましくは、放出システム6、好ましくはカプセル6は、匂い物質、香料、香油、匂い物質混合物、アロマ、ビタミン、鉱物、抗酸化剤、アントシアニン、コエンザイムlO、接着剤、鉱油、蝋及び油脂、殺生物剤、殺菌剤、除草剤、農薬、殺虫剤、肥料、分散染料及び染料溶液又はプラスチック合成用モノマーからなる群から選ばれた少なくとも一つの活性成分を含有する。
【0066】
好ましくは、一以上の活性成分は、匂い物質、香料、香油、匂い物質混合物又はアロマである。これらの活性成分は、主に室温で揮発する揮発性物質である。
【0067】
好適に使用する匂い物質又は香料、又は2つ、3つ、4つ、5つ又はさらにそれ以上のさらなる匂い成分又は香料成分を含む匂い物質混合物又は香料混合物は、以下の物質からなる群から選択される(1)炭化水素類、(2)脂肪族アルコール類、(3)脂肪族アルデヒド類及びそのアセタール類、(4)脂肪族ケトン類及びそのオキシム類、(5)脂肪族含硫化合物、(6)脂肪族ニトリル類、(7)脂肪族カルボン酸エステル類、(8)非環状テルペンアルコール類、(9)非環状テルペンアルデヒド及びケトン類、(10)環状テルペンアルコール類、(11)環状テルペンアルデヒド及びケトン類、(12)環状アルコール類、(13)脂環式アルコール類、(14)環状及び脂環式エーテル類、(15)環状及び大環状ケトン類、(16)脂環式アルデヒド類、(17)脂環式ケトン類、(18)環状アルコールのエステル類、(19)脂環式アルコールのエステル類、(20)脂環式カルボン酸エステル類、(21)芳香脂肪族アルコール類、(22)芳香脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸のエステル類、(23)芳香脂肪族エーテル類、(24)芳香族及び芳香脂肪属アルデヒド類、(25)芳香族及び芳香脂肪族ケトン類、(26)芳香族及び芳香脂肪族カルボン酸及びそのエステル類、(27)窒素含有芳香族化合物、(28)フェノール、フェニルエーテル、フェニルエステル類、(29)複素環化合物、(30)ラクトン類、及びこれらの任意の混合物。
【0068】
この点に関して、匂い物質又は香料の選択は非常に包括的であり、例えば、“S. Arctander, Perfume and Flavor Chemicals, Volumes I and II, Montclair, N. J., 1969, self-published”又は“H. Surburg and J. Panten, Common Fragrance and Flavor Materials, 6th edition, Wiley-VCH, Weinheim, 2016”に対応する物質が記載されている。
【0069】
詳細には、以下のものを挙げることができる。
【0070】
天然原料からの抽出物
このグループは、精油、コンクリート、アブソリュート、樹脂、レジノイド、バルサム、チンキ剤であって、例えば、アンバーグリスチンキ、アミリス油、アンジェリカ種油、アンジェリカ根油、アニス油、バレリアン油、バジル油、トリーモスアブソリュート、ベイ油、ヨモギ油、ベンゾ樹脂、ベルガモット油、蜜蝋アブソリュート、バーチタール油、ビターアーモンド油、セイボリー油、ブッコリーフ油、カブルバ油、ケイド油、カラマス油、カンフル油、カナンガ油、カルダモン油、カスカリラ油、カシア油、カッシーアブソリュート、カストリウムアブソリュート、シダーリーフ油、シダーウッド油、シスタス油、シトロネラ油、シトロン油、コパイババルサム、コパイババルサム油、コリアンダー油、コスツス根油、クミン油、ヒノキ油、ダバナ油、ディルハーブ油、ディル種油、オードブルートアブソリュート、オークモスアブソリュート、エレミ油、タラゴン油、レモンユーカリ油、ユーカリ油、フェンネル油、スプルースニードル油、ガルバナム油、ガルバナム樹脂、ゼラニウム油、グレープフルーツ油、グアヤクウッド油、ガージュンバルサム、ガージュンバルサム油、ヘリクリサムアブソリュート、ヘリクリサム油、ジンジャー油、アイリス根アブソリュート、アイリス根油、ジャスミンアブソリュート、カラマス油、カモミール油ブルー、カモミール油ローマン、ニンジン種油、カスカリラ油、松葉油、カーリーミント油、キャラウェイ種油、ラブダナム油、ラブダナムアブソリュート、ラブダナム樹脂、ラバンディンアブソリュート、ラバンディン油、ラベンダーアブソリュート、ラベンダー油、レモングラス油、ラベッジ油、ライム蒸留油、ライム搾油、リナロエ油、リツェアクベバ油、ベイリーフ油、メース油、マジョラム油、マンダリン油、マッソ樹皮油、ミモザアブソリュート、ムスクグレイン油、ムスクチンキ、マスカット油、ミルラアブソリュート、ミルラ油、マートル油、クローブ葉油、クローブ花油、ネロリ油、オリバナムアブソリュート、オリバナム油、オポパナクス油、オレンジ花アブソリュート、オレンジ油、オリガナム油、パルマローザ油、パチョリ油、エゴマ油、ペルーバルサム油、パセリ葉油、パセリ種油、プチグレン油、ペパーミント油、コショウ油、オールスパイス油、パイン油、ポーリー油、ローズアブソリュート、ローズウッド油、ローズ油、ローズマリー油、セージ油ダルメシアン、セージ油スパニッシュ、サンダルウッド油、セロリ種油、スパイシーラベンダー油、スターアニス油、スタイラックス油、タゲテス油、ファニードル油、ティーツリー油、テレピン油、タイム油、トルバルサム、トンカアブソリュート、チュベローズアブソリュート、バニラエキス、バイオレットリーフアブソリュート、バーベナ油、ベチバー油、ジュニパーベリー油、ワイン酵母油、ヨモギ油、ウィンターグリーン油、イラン油、ヒソップ油、シベアブソリュート、シナモン葉油、シナモン皮油、及びその留分、又はそれらから分離された成分である。
【0071】
単一匂い物質
単一匂い物質は、以下のような様々な種類に分けることができる。
炭化水素類(例えば、3-カレン、α-ピネン、β-ピネン、α-テルピネン、β-テルピネン、p-シメン、ビサボレン、カンフェン、カリオフィレン、セドレン、ファルネセン、リモネン、ロンジフォレン、ミルセン、オシメン、バレンセン、(E,Z)-1,3,5-ウンデカトレン、スチレン、ジフェニールメタン)
脂肪族アルコール類(例えば、ヘキサノール、オクタノール、3-オクタノール、2,6-ジメチルヘプタノール、2-メチル-2-ヘプタノール、2-メチル-2-オクタノール、(E)-2-ヘキセノール、(E)-及び(Z)-3-ヘキセノール、1-オクテン-3-オール、3,4,5,6,6-ペンタメチル3/4-ヘプタン-2-オール及び3,5,6,6-テトラメチル4-メチルヘプタン-2-オールの混合物、(E,Z)-2,6-ノナジエノール、3,7-ジメチル7-メトキシオクタン・2-オール、9-デセノール、10-ウンデセノール、4-メチル3-デセン5-オール)
脂肪族アルデヒド及びそれらのアセタール類(例えば、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、ウンデカナール、ドデカナール、トリデカナール、2-メチルオクタナール、2-メチルノナナール、(E)-2-ヘキセナール、(Z)-4-ヘプテナール、2,6-ジメチル-5-ヘプテナール、10-ウンデセナール、(E)-4-デセナール、2-ドデセナール、2,6,10-トリメチル-9-ウンデセナール、2,6,10-トリメチル-5,9-ウンデカジエナール、ヘプタナールジエチルアセタール、1,1-ジメトキシ-2,2,5-トリメチル-4-ヘキセン、シトロネリルオキシアセトアルデヒド、1-(1-メトキシ-プロポキシ)-(E、Z)-3-ヘキセン)
脂肪族ケトン類及びそのオキシム類(例えば、2-ヘプタノン、2-オクタノン、3-オクタノン、2-ノナノン、5-メチル-3-ヘプタノン、5-メチル-3-ヘプタノンオキシム、2,4,4,7-テトラメチル-6-オクテン-3-オン、6-メチル-5-ヘプテン-2-オン)
脂肪族含硫化合物(例えば、3-メチルチオヘキサノール、3-メチルチオヘキシルアセテート、3-メルカプトヘキサノール、3-メルカプトヘキシルアセテート、3-メルカプトヘキシルブチレート、3-アセチルチオヘキシルアセテート、1-メンテン-8-チオール)
脂肪族ニトリル類(例えば、2-ノネン酸ニトリル、2-ウンデセン酸ニトリル、2-トリデセン酸ニトリル、3,12-トリデカジエン酸ニトリル、3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン酸ニトリル、3,7-ジメチル-6-オクテン酸ニトリル)
脂肪族カルボン酸のエステル類(例えば、(E)-及び(Z)-3-ヘキセニルホルメート、アセト酢酸エチル、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、3,5,5-トリメチルヘキシルアセテート、3-メチル-2-ブテニルアセテート、(E)-2-ヘキセニルアセテート、(E)-及び(Z)-3-ヘキセニルアセテート、酢酸オクチル、3-オクチルアセテート、1-オクテン-3-イルアセテート、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸イソアミル、酪酸ヘキシル、(E)-及び(Z)-3-ヘキセニルイソブチレート、クロトン酸ヘキシル、イソ吉草酸エチル、2-メチルペンタン酸エチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸アリル、ヘプタン酸エチル、ヘプタン酸アリル、オクタン酸エチル、(E、Z)-2,4-デカジエノエートエチル、2-オクチネートメチル、2-ノニネートメチル、2-イソアミルオキシアセテートアリル、3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン酸メチル、4-メチル-2-ペンチルクロトネート)
非環状テルペンアルコール類(例えば、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、リナロール、ラバンジュロール、ネロリドール、ファルネソール、テトラヒドロリナロール、テトラヒドロゲラニオール、2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール、2,6-ジメチルオクタン-2-オール、2-メチル-6-メチレン-7-オクテン-2-オール、2,6-ジメチル-5,7-オクタジエン-2-オール、2,6-ジメチル-3,5-オクタジエン-2-オール、3,7-ジメチル-4,6-オクタジエン-3-オール、3,7-ジメチル-1,5,7-オクタトリエン-3-オール、2,6-ジメチル-2,5,7-オクタトリエン-1-オール、及びそれらのギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、イソ酪酸塩、酪酸塩、イソ吉草酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、クロトン酸塩、チグリネート及び3-メチル-2-ブテノエート)
非環状テルペンアルデヒド及びケトン類(例えば、ゲラニアール、ネラル、シトロネラール、7-ヒドロキシ-3,7-ジメチルオクタナール、7-メトキシ-3,7-ジメチルオクタナール、2,6,10-トリメチル-9-ウンデセナール、ゲラニルアセトン、及びゲラニアール、ネラル、7-ヒドロキシ-3,7-ジメチルオクタナールのジメチル及びジエチルアセタル)
環状テルペン系アルコール類(例えば、メントール、イソプレゴール、α-テルピネオール、テルピネノール-4、メンタン-8-オール、メンタン-1-オール、メンタン-7-オール、ボルネオール、イソボルネオール、リナロールオキシド、ノポール、セドロール、アンブリノール、ベチベロール、ゲオール、及びそれらのギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、イソ酪酸塩、酪酸塩、イソ吉草酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、クロトン酸塩、チグリネート及び3-メチル-2-ブテノエート)
環状テルペンアルデヒド及びケトン類(例えば、メントン、イソメントン、8-メルカプトメンタン-3-オン、カルボン、樟脳、フェンコン、アルファ-イオノン、ベータ-イオノン、アルファ-n-メチルイオノン、ベータ-n-メチルイオノン、アルファ-イソメチルイオノン、ベータイソメチルイオノン、アルファ-イロン、アルファダマスコン、ベータ-ダマスコン、ベータ-ダマセノン、デルタ-ダマスコン、ガンマ-ダマスコン、1-(2,4,4-トリメチル-2-シクロヘキセノン-1-イル)-2-ブテン-1-オン、1,3,4,6,7,8a-ヘキサヒドロ-1,1,5,5-テトラメチル-2H-2,4a-メタノナフタレン-8(5H)-オン、2-メチル-4-(2,6、6-トリメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテナール、ノートカトン、ジヒドロネオトカトン、4,6,8-メガスティグマトリエン-3-オン、アルファ-シネンサル、ベータシネンサル、アセチル化セダーウッド油(メチルセドリルケトン))
環状アルコール類(例えば、4-ターシャリ-ブチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、3-イソカンフィルシクロヘキサノール、2,6,9-トリメチル-Z2,Z5,E9-シクロドデカトリアン-1-オール、2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-オール)
脂環式アルコール類(例えば、アルファ、3,3-トリメチルシクロヘキシルメタノール、1-(4-イソプロピルシクロヘキシル)エタノール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペント-1-イル)ブタノール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペント-1-イル)-2-ブテン-1-オール、2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペント-1-イル)-2-ブテン-1-オール、3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペント-1-イル)-ペンタン-2-オール、3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペント-1-イル)-4-ペンテン-2-オール、3,3-ジメチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペント-1-イル)-4-ペンテン-2-オール、1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)ペンタン-3-オール、1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)ヘキサン-3-オール)
環状及び脂環式エーテル類(例えば、シネオール、セドリルメチルエーテル、シクロドデシルメチルエーテル、1,1-ジメトキシシクロドデカン、(エトキシメトキシ)シクロドデカン、アルファ-セドレンエポキシド、3a、6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン、3a-エチル-6,6,9a-トリメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン、1,5,9-トリメチル-13-オキサビシクロ[10.1.0]トリデカ-4,8-ジエン、ローズオキシド、2-(2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-イル)-5-メチル-5-(1-メチルプロピル)-1,3-ジオキサン)
環状及び大環状ケトン類(例えば、4-ターシャリ-ブチルシクロヘキサノン、2,2,5-トリメチル-5-ペンチルシクロペンタノン、2-ヘプチルシクロペンタノン、2-ペンチルシクロペンタノン、2-ヒドロキシ-3-メチル-2-シクロペンテン-1-オン、3-メチル-シス-2-ペンテン-1-イル-2-シクロペンテン-1-オン、3-メチル-2-ペンチル-2-シクロペンテン-1-オン、3-メチル-4-シクロペンタデセノン、3-メチル-5-シクロペンタデセノン、3-メチルシクロペンタデカノン、4-(1-エトキシビニル)-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサノン、4-ターシャリ-ペンチルシクロヘキサノン、5-シクロヘキサデセン-1-オン、6,7-ジヒドロ-1,1,2,3,3-ペンタメチル-4(5H)-インダノン、8-シクロヘキサデセン-1-オン、9-シクロヘプタデセン-1-オン、シクロペンタデカノン、シクロヘキサデカノン)
脂環式アルデヒド類(例えば、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセンカルバルデヒド、2-メチル-4-(2,2,6-トリメチル-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテナール、4-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセンカルバルデヒド、4-(4-メチル-3-ペンテン-1-イル)-3-シクロヘキセンカルバルデヒド)
脂環式ケトン類(例えば、1-(3,3-ジメチルシクロヘキシル)-4-ペンテン-1-オン、2,2-ジメチル-1-(2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-イル)-1-プロパノン、1-(5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オン、2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-2-ナフタレニルメチルケトン、メチル2,6,10-トリメチル2,5,9-シクロドデカトリエニルケトン、ターシャリ-ブチル-(2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-イル)ケトン)
環状アルコールのエステル類(例えば、酢酸2-ターシャリ-ブチルシクロヘキシル、酢酸4-ターシャリ-ブチルシクロヘキシル、酢酸2-ターシャリ-ペンチルシクロヘキシル、酢酸4-ターシャリ-ペンチルシクロヘキシル、酢酸3,3,5-トリメチルシクロヘキシル、酢酸デカヒドロ2-ナフチル、クロトン酸2-シクロペンチルシクロペンチル、酢酸3ペンチルテトラヒドロ2Hピラン4-イル、酢酸デカヒドロ-2,5,5,8a-テトラメチル-2-ナフチル、酢酸4,7メタノ3a,4,5,6,7,7aヘキサヒドロ5、6-インデニル、プロピオン酸4,7-メタノ-3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-5、又は6-インデニル、イソ酪酸4,7-メタノ-3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-5、又は6-インデニル、酢酸4,7-メタノオクタヒドロ-5、又は6-インデニル)
脂環式アルコールのエステル類(例えば、クロトン酸1-シクロヘキシルエチル)
脂環式カルボン酸のエステル類(例えば、プロピオン酸アリル3-シクロヘキシル、アリルシクロヘキシルオキシアセテート、シス及びトランスメチルジヒドロジャスモネート、シス及びトランスジャスモン酸メチル、2-ヘキシル-3-オキソシクロペンタンカルボキシレートメチル、2-エチル-6,6-ジメチル-2-シクロヘキセンカルボキシレートエチル、2,3,6,6-テトラメチル-2-シクロヘキセンカルボキシレートエチル、2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-アセテートエチル)
芳香脂肪族アルコール類(例えば、ベンジルアルコール、1-フェニルエチルアルコール、2-フェニルエチルアルコール、3-フェニルプロパノール、2-フェニルプロパノール、2-フェノキシエタノール、2,2-ジメチル-3-フェニルプロパノール、2,2-ジメチル-3-(3-メチルフェニル)プロパノール、1,1-ジメチル-2-フェニルエチルアルコール、1,1-ジメチル-3-フェニルプロパノール、1-エチル-1-メチル-3-フェニルプロパノール、2-メチル-5-フェニルペンタノール、3-メチル-5-フェニルペンタノール、3-フェニル-2-プロペン-1-オール、4-メトキシベンジルアルコール、1-(4-イソプロピルフェニル)エタノール)
芳香脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸のエステル類(例えば、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、イソ酪酸ベンジル、イソ吉草酸ベンジル、2-フェニルエチルアセテート、プロピオン酸2-フェニルエチル、2-フェニルエチルイソブチレート、2-フェニルエチルイソ吉草酸、1-フェニルエチルアセテート、アルファ-トリクロメチルベンジルアセテート、アルファ、アルファ-ジメチルフェニルエチルアセテート、アルファ、アルファ-ジメチルフェニルエチルブチレート、酢酸シンナミル、2-フェノキシエチルイソブチレート、4-メトキシベンジルアセテート)
芳香脂肪族エーテル類(例えば、2-フェニルエチルメチルエーテル、2-フェニルエチルイソアミルエーテル、2-フェニルエチル-1-エトキシエチルエーテル、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドジエチルアセタール、ヒドラトロパルアルデヒドジメチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドグリセロールアセタール、2,4,6-トリメチル-4-フェニル-1,3-ジオキサン、4,4a,5,9b-テトラヒドロインデノ[1,2-d]-m-ダイオキシン、4,4a,5,9b-テトラヒドロ-2,4-ジメチルインデノ[1,2-d]-m-ダイオキシン)
芳香族及び芳香脂肪族アルデヒド類(例えば、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、3-フェニルプロパナール、ヒドラトロパアルデヒド、4-メチルベンズアルデヒド、4-メチルフェニルアセトアルデヒド、3-(4-エチルフェニル)-2,2-ジメチルプロパナール、2-メチル-3-(4-イソプロピルフェニル)プロパナール、2-メチル-3-(4-ターシャリ-ブチルフェニル)プロパナール、2-メチル-3-(4-イソブチルフェニル)プロパナール、3-(4-ターシャリ-ブチルフェニル)プロパナール、シンナムアルデヒド、アルファ-ブチルシンナムアルデヒド、アルファ-アミルシンナムアルデヒド、アルファ-ヘキシルシンナムアルデヒド、3-メチル-5-フェニルペンタナール、4-メトキシベンズアルデヒド、4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド、4-ヒドロキシ-3-エトキシベンズアルデヒド、3,4-メチレンジオキシベンズアルデヒド、3,4-ジメトキシベンズアルデヒド、2-メチル-3-(4-メトキシフェニル)プロパナール、2-メチル-3-(4-メチレンジオキシフェニル)プロパナール)
芳香族及び芳香脂肪族ケトン類(例えば、アセトフェノン、4-メチルアセトフェノン、4-メトキシアセトフェノン、4-ターシャリ-ブチル-2,6-ジメチルアセトフェノン、4-フェニル-2-ブタノン、4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、1-(2-ナフタレニル)エタノン、2-ベンゾフラニルエタノン、(3-メチル-2-ベンゾフラニル)エタノン、ベンゾフェノン、1,1,2,3,6-ヘキサメチル-5-インダニルメチルケトン、6-ターシャリ-ブチル-1,1-ジメチル-4-インダニルメチルケトン、1-[2,3-ジヒドロ-1,1,2,6-テトラメチル-3-(1-メチルエチル)-1H-5-インデニル]エタノン、5’、6’、7’、8’-テトラヒドロ-3’、5’、5’、6’、8’、8’-ヘキサメチル-2-アセトナフトン)
芳香族及び芳香脂肪族カルボン酸及びそれらのエステル類(例えば、安息香酸、フェニル酢酸、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ヘキシル、安息香酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、エチルフェニルアセテート、ゲラニルフェニルアセテート、フェニルエチルフェニルアセテート、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸エチル、ケイ皮酸ベンジル、ケイ皮酸フェニルエチル、ケイ皮酸シンナミル、アリルフェノキシアセテート、サリチル酸メチル、サリチル酸イソアミル、サリチル酸ヘキシル、サリチル酸シクロヘキシル、サリチル酸シス-3-ヘキセニル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸フェニルエチル、2,4-ジヒドロキシ-3,6-ジメチル安息香酸メチル、エチル3-フェニルグリシデート、エチル3-メチル-3-フェニルグリシデート)
窒素含有芳香族化合物(例えば、2,4,6-トリニトロ-1,3-ジメチル-5-ターシャリ-ブチルベンゼン、3,5-ジニトロ-2,6-ジメチル-4-ターシャリブチルアセトフェノン、桂皮酸ニトリル、3-メチル-5-フェニル-2-ペンテン酸ニトリル、3-メチル-5-フェニルペンタン酸ニトリル、アントラニル酸メチル、N-メチルアントラニル酸メチル、7-ヒドロキシ-3,7-ジメチルオクタナール、2-メチル-3-(4-ターシャリ-ブチルフェニル)プロパナール又は2,4-ジメチル-3-シクロヘキセンカルバルデヒドを含むアントラニル酸メチルのシッフ塩基、6-イソプロピルキノリン、6-イソブチルキノリン、6-セカンダリー-ブチルキノリン、2-(3-フェニルプロピル)ピリジン、インドール、スカトール、2-メトキシ-3-イソプロピルピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン)
フェノール、フェニルエーテル及びフェニルエステル類(例えば、タラゴール、アネトール、オイゲノール、オイゲニルメチルエーテル、イソオイゲノール、イソオイゲニルメチルエーテル、チモール、カルバクロール、ジフェニルエーテル、ベータナフチルメチルエーテル、ベータナフチルエチルエーテル、ベータナフチルイソブチルエーテル、1,4-ジメトキシベンゼン、オイゲニル酢酸、2-メトキシ-4-メチルフェノール、2-エトキシ-5-(1-プロペニル)フェノール、フェニル酢酸pクレジル)
複素環化合物(例えば、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-2H-フラン-3-オン、2-エチル-4-ヒドロキシ-5-メチル-2H-フラン-3-オン、3-ヒドロキシ-2-メチル-4H-ピラン-4-オン、2-エチル-3-ヒドロキシ-4H-ピラン-4-オン)
ラクトン類(例えば、1,4-オクタノリド、3-メチル-1,4-オクタノリド、1,4-ノナノリド、1,4-デカノリド、8-デセン-1,4-オリド、1,4-ウンデカノリド、1,4-ドデカノリド、1,5-デカノリド、1,5-ドデカノリド、4-メチル-1,4-デカノリド、1,15-ペンタデカノリド、シス及びトランス-11-ペンタデセン-1,15-オリド、シス及びトランス12-ペンタデセン-1,15-オリド、1,16-ヘキサデカノリド、9-ヘキサデセン-1,16-オリド、10-オキサ-1,16-ヘキサデカノリド、11-オキサ-1,16-ヘキサデカノリド、12-オキサ-1,16-ヘキサデカノリド、エチレン-1,12-ドデカンジオエート、エチレン-1,13-トリデカンジオエート、クマリン、2,3-ジヒドロクマリン、オクタヒドロクマリン)
ならびに、前述の匂い物質や香料の混合物。
【0072】
また、活性成分として適切かつ好適であるものは、いわゆる前駆体化合物又は前駆体であり、好ましくは臭気性前駆体化合物又は臭気性前駆体である。この種類の化合物は、例えば化学反応、温度、水分、pHの変化、酸素(酸化)、光、特に紫外線、酵素、又は微生物によって化学結合を切断することによって、所望の臭気及び/又はフレグランス分子を放出する化合物に関する。典型的には、臭気性前駆体を形成するために、所望の臭気性原料を、担体、好ましくはわずかに揮発性又は適度に揮発性の担体と化学的に組み合わせる。この組み合わせにより、揮発性が低く疎水性の高い臭気性物質前駆体が得られ、布地上での持続性が改善される。その後、例えば、保管時や物干し竿での乾燥時に、pH変化(着用時の発汗など)、湿度、熱、及び/又は日光などにより、臭気性原料と担体の結合が切れることで、匂い物質が放出される。
【0073】
このような臭気性前駆体は、例えば、Herrmann, Andreas, Controlled Release of volatiles under mild reaction conditions: From nature to everyday products, Angew. Chem., Int. Ed.,2007,46,2~30頁に記載されており、その開示内容は、参照によりその全体が本願に組み込まれる。
【0074】
好ましくは、本発明の装置1は、ベースフレーム2を備える。このベースフレームは、活性化装置(3)を受け入れるよう構成した任意の形状及び構造を有してよい。
【0075】
本発明の装置の好ましい変形例では、ベースフレームは、少なくとも1つのX軸21と1つのY軸22とを備える。さらに好ましい変形例では、ベースフレーム2は、互いに平行に延びる2本の脚部を備える。X軸21は、好ましくは90°の角度でベースフレームに支持され、支持面8又は分析される試料が横たわる平面に対して水平かつX方向に活性化装置3を移動させるよう配置する。好ましくは、本発明による装置は、ベースフレーム上に間隔をあけて互いに平行に配置した2つのX軸21を有する。
【0076】
次に、2つのX軸22上には、好ましくは90°の角度でY軸22が支持されており、支持面8又は分析される試料が横たわる平面に対して水平かつY方向に活性化装置3を移動させるよう設定する。
【0077】
このY軸22と2つのX軸21とによって、試料担体7又は直接試料が横たわる支持面8の所定の座標に活性化装置3を設定したり、活性化装置3を分析試料6に向かう方向に移動させて試料の真上に配置したりできる。
【0078】
本発明の第1の態様による、放出システム6、特にカプセル6又は前駆体6からの一以上の活性成分の分析的及び/又は官能的判定のための装置1はさらに、活性化装置3を備える。この活性化装置3は、活性成分又は複数の活性成分を放出システムから放出させるために、放出システム6、特にカプセル6又は前駆体6を開く(例えば破って開く)すなわち活性化する機能を有する。本発明による装置の活性化装置は、好ましくは、ベースフレーム2上、特にY軸22上に配置されてこれに接続される。試料6に対する移動と位置決めのために、活性化装置3は、自由に特に三次元的に移動できるようベースフレーム2に取り付ける。
【0079】
試料担体7又は分析試料6、すなわち放出システム6が横たわる支持面8に対する活性化装置3の水平方向及びX/Y位置での移動及び位置決めは、X/Y位置決めユニット(41、42)によって行う。位置決めユニットは、駆動装置であり、これによって活性化装置3の座標を手動で設定、又は、EDPによって制御される電気モータによって設定することができる。好ましくは、位置決めユニットは、EDP制御によって分析試料6の座標を制御し、分析試料6の上方に活性化装置3を位置決めする電気モータである。
【0080】
分析的及び/又は官能的な判定の際、試料6、すなわち分析する活性物質放出システム6、好ましくは分析するカプセル6又は分析する前駆体6は、試料担体7上に位置し、この担体は支持表面8上に位置することが好ましい。支持面8は通常、本発明による装置1がその上に位置する面でもある。代替的な変形例では、試料6、すなわち分析する活性物質放出システム、好ましくは分析するカプセル6又は前駆体6を、支持面8上に直接配置することも可能である。また、試料担体7と支持面8の両方が装置1の一部であってもよい。
【0081】
分析する試料6が位置する試料担体7又は支持面8は、好ましくは、本発明による装置のベースフレーム2内に配置される。
【0082】
支持面8は、好ましくはプラスチック製の滑らかな表面を有するマットである。好ましくは、支持面8は、分析プロセス中の試料担体7の滑りを防止するゴムマットである。
【0083】
例えば、特定の基材上での活性成分放出システムの分布又は付着を試験するために、試料担体7は、例えば綿、麻、ウール、ビスコース、ポリアクリル、ポリアミド、ポリエステルからなる衣類等の布、又は別の有機又は無機の基材又はその表面(例えばタイル、リノリウム、木材、ガラス、金属、毛髪等)であってもよく、又は繊維ブランケットであってもよい。
【0084】
試料6が支持面8上に直接置かれる代替変形例において、例えばカプセル化された活性成分6又は前駆体6を有する床洗浄組成物の場合、活性成分を分析するための本発明による装置を支持面の真上で位置決めすることができ、支持面8の表面で分析を実施することが可能である。この場合、支持面8は、綿、麻、ウール、ビスコース、ポリアクリル、ポリアミド、ポリエステルからなる衣類等の布、又は別の有機又は無機の基材又はその表面(例えばタイル、リノリウム、木材、ガラス、金属、毛髪等)であってもよく、又は繊維ブランケットであってもよい。
【0085】
さらに、本発明の第1の態様によれば、放出システム、特にカプセル6又は前駆体6からの一以上の活性成分の分析的及び/又は官能的判定のための装置は、放出された活性成分又は複数の活性成分の分析的判定のための検出装置又は分析装置5を備える。この検出装置又は分析装置5は、放出された活性剤又は複数の活性剤が検出ライン35を介して検出装置5に供給され得るように構成する。
【0086】
検出装置又は分析システム5は、放出された活性物質又は複数の物質の定性及び/又は定量分析を可能にする測定装置である。
【0087】
検出装置又は分析装置5は、ガスクロマトグラフ(GC)、ガスクロマトグラフ/質量分析計(GC/MS)、イオン移動度分光分析(IMS)、FAIMS(高磁場非対称波形イオン移動度分光分析)、GC-FAIMS及びGC-MS-FAIMS、又はこれら測定装置の組み合わせからなる群から選択されることが好ましい。
【0088】
好ましくは、検出装置又は分析装置5について、IMS(イオン移動度分光分析)、FAIMS(高磁場非対称波形イオン移動度分光分析)、GC-FAIMS及びGC-MS-FAIMS又は前述の測定装置の組み合わせを用いて分析が行われる。
【0089】
最も好ましい検出装置又は分析装置は、FAIMS(高磁場非対称波形イオン移動度分光分析)である。FAIMSは、ガス流から又は液体や固体試料上の気相から揮発性化学種を直接検出/分析可能である。FAIMSユニットに試料を届ける仕組みとして、単一サンプリングと連続サンプリングの2つがある。単一サンプリングでは、一定量のガス状の分析対象、すなわち放出された薬物を上流工程で回収又は吸着濃縮し、FAIMSに供給する。連続サンプリングでは、ガス状の分析対象、すなわち放出された活性成分を、搬送ガスによってFAIMSに連続的に供給する。サンプリングは連続的に行うのが好ましく、放出された活性成分(複数の活性成分)の分析的判定をリアルタイムで行うことができる。これにより、リアルタイムの放出を分析的に判定することができ、匂い物質又は香料混合物の放出を判定する際に特に有利である。
【0090】
さらに、本発明による装置1では、放出された活性成分又は複数の活性成分を吸着剤(例えばテナックス(Tenax)管)に結合させて濃縮し、その後GC-MS(ダイナミックヘッドスペース法)により測定することが可能である。ダイナミックヘッドスペース法では、例えばFAIMSで生成される、又は外部ポンプを追加使用して生成される連続気流、あるいは不活性ガスを経由して、例えばテナックス管内での適切な吸着材又はコールドトラップ内へと測定中に放出された活性成分を送る。このために、吸着剤含有ガラス管をCBAからの空気流に直接組み込むか、又は(直接法には空気流が強すぎる場合)、活性成分(複数の活性成分)を最初に閉鎖容器(例えば、ビニール袋(plastic bag))に通し、次に弱い空気流を用いて活性成分(複数の活性成分)を吸着剤上へと送ることができる。その後、テナックス管(吸着剤)又は捕集装置(trap)を加熱し、例えばFAIMS又はガスクロマトグラフ分析用の円柱部(column)へと濃縮された分析対象を送る。
【0091】
好ましい変形例では、検出装置又は分析装置5は、嗅覚計及び/又は嗅覚検出ポート(ODP)(匂い探知ポート(sniffing port)システム)52への代替出力を有し、これによって、放出された活性物質又は複数の活性物質の官能判定が同時に可能となり、定性及び/又は定量分析に加えて、活性物質の官能分析が実施され得る。このような組み合わせにより、分析的な判定と官能的な判定の相関関係を確立することができる。
【0092】
本発明による装置において、匂い探知ポートシステムは、検出装置5の前と検出装置5の後ろの両方に配置することができる。検出装置5の後に匂い探知ポートシステムを配置する構成は、検出装置5がFAIMS又はIMSである場合に特に有利である。FAIMS又はIMSは分析対象を破壊せず、FAIMS又はIMSの出力でも分析対象が依然として利用可能だからである。このような配置により、放出された活性物質の測定データと官能評価との相関を特に良好に確立することができる。
【0093】
本発明による装置の最も好ましい実施形態では、FAIMSは、ガスクロマトグラフ(GC)及び/又は質量分析計(MS)及び/又は嗅覚計及び/又は嗅覚検出ポート(ODP)(匂い探知ポートシステム)(52)と組み合わされる。
【0094】
本発明の第1の態様に係る装置の活性化装置3は、活性化部31を備える。活性化部31は、好ましくは穿孔器(punch)の形式であり、活性化装置3の軸の下端に、支持面8平面に対して垂直に配置される。活性化部31は、Z位置決めユニット32に接続される。このZ位置決めユニット32は、試料担体7又は支持面8に対して垂直に、活性化部を昇降可能である。Z位置決めユニット32によって、試料担体7又は支持面8に対して垂直に、したがって試料6、すなわち分析する活性物質放出システム、好ましくは分析すべきカプセル又は前駆体6に対して垂直に、活性化部31が試料担体7又は支持面8上で移動及び位置決めされる。
【0095】
Z位置決めユニット32は、活性化部31を手動で降下させる位置決めユニットか、又はEDPを介して制御される電気駆動装置/モータによって分析する試料の上方に降下させることができる位置決めユニットのいずれかである。好ましくは、位置決めユニットは、EDP制御によって分析する試料の座標を制御し、分析試料の上に活性化部31を降下させる電気モータである。
【0096】
活性化部31は、分析試料6、すなわち放出システム6、好ましくはカプセル6又は前駆体6に物理的及び/又は化学的刺激を加え、放出システムがカプセルの場合にはカプセルを開き、放出システムが前駆体の場合には前駆体を活性化して、そこに含まれる活性成分を放出させるよう構成する。
【0097】
物理的及び/又は化学的刺激は、圧力、摩擦、温度、pHの変化、紫外線、超音波、マイクロ波又は化学反応による放出システムへの作用であり、これによってカプセルが開いたり、前駆体が活性化される。このために、活性化部31は、例えば、摩擦ヘッド、UVランプ、ピペットモジュール等として適切に設計される。
【0098】
放出システムがカプセルである場合、様々な開放機構によって開放することができ、カプセルの内容物すなわち活性成分(複数の活性成分)を放出させることができる。多くの場合、放出システム又はカプセルは、例えば圧力やせん断などの機械的応力によって開放される。活性成分(複数の活性成分)を放出システム又はカプセルから放出することができる代替的な開放機構として、温度、pHの変化、マイクロ波、光エネルギー(例えばUV放射)、又は超音波が挙げられる。
【0099】
好ましくは、放出システム、好ましくはカプセルを破って開放し、そこに含まれる活性成分又は複数の活性成分を放出させるために、活性化部31によって機械的圧力及び/又は摩擦が試料6に垂直に加わる。機械的な圧力は、圧力センサ33で発生させる。圧力センサ33は、活性成分放出システム、好ましくはカプセルを開放するため、すなわちカプセルを破裂又は破損させるために加える圧力の調整のために使用可能である。
【0100】
活性物質放出システムを破壊又は破損させる摩擦を発生させるために、活性化装置は回転ユニット38を備える。活性化部31は、電気モータによって駆動される回転ユニット38と直結している。この回転ユニット38は、活性化部31に例えば、同心円運動、偏心運動又は等距離運動をさせる。同心円運動の場合、活性化部は、分析試料6に対して回転円運動を行い、円運動の円は様々な半径を持つ。偏心運動の場合、活性化部は、分析試料6に対して、円の中心から外れた位置にある回転円運動を行う。等距離運動の場合、活性化部が分析試料6上をX、Y方向に車両(carriage)のように往復運動する。
【0101】
上記のいずれかの運動により、活性化部31は、分析試料6上を移動して摩擦を生じさせ、活性成分放出システム、好ましくはカプセルから活性成分を放出させる。
【0102】
活性化装置3の代替的な変形例において、回転ユニットは、活性化部31を振動させる発振器ユニット38である。分析試料6の上方で活性化部が振動することにより摩擦が生じ、活性成分放出システム、好ましくはカプセルから活性成分が放出される。
【0103】
好ましくは、活性化部31は、分析試料6に対して、同心円運動、偏心運動又は等距離運動を行う。
【0104】
分析試料6に面する活性化部31の表面は、滑らかでも粗くてもよい。好ましい変形例では、活性化部31は、粗表面を有する。粗表面により、放出システム、好ましくはカプセルへの活性化部31の摩擦が増加する。活性化部31の表面材料は、テフロン(登録商標)、フェルト、スポンジ、タオル地などの繊維、メルトン(molleton)、ガラス、金属、プレキシガラスからなる群から選択される。活性化部31の好ましい表面材料は、テフロン(登録商標)である。大きな摩擦が得られるので、フェルトが最も好ましい。
【0105】
代替実施形態では、放出システム、好ましくはカプセルを開放するための他の開放機構を生成するために活性化部31を使用するよう構成する。例えば、活性化部31は、温度、UV放射、磁気放射、超音波、又はマイクロ波を発生させるために使用するよう構成し、これが放出システムに作用すると、放出システム、好ましくはカプセルが開き、カプセルの内容物が放出される。
【0106】
放出システムが前駆体又は前駆体物質である場合、温度、酸素(酸化)、光、酵素、微生物、化学反応(例えば、加水分解)、pH又は水分の変化などの化学的又は物理的刺激を誘発することによって、活性化部31によって活性化でき、それによって活性成分、好ましくは匂い物質を放出させる。
【0107】
好ましい実施形態において、放出される活性成分又は複数の活性成分は、揮発性物質である。
【0108】
活性化装置3は、さらに検出ライン35を備える。放出された活性成分又は複数の活性成分は、好ましくは気相として存在し、検出ライン35によって捕捉され、検出装置5へと供給される。好ましい変形例では、活性化装置は、放出システムから放出された活性成分又は複数の活性成分が一体化された吸引機構によって吸い込まれ、検出装置5に供給されるよう配置する。
【0109】
代替的かつ好ましい実施形態において、活性化装置3はさらに、その下端に回収容器34を備え、この回収容器は、試料支持体7又は支持面8上に配置すると、分析試料6及び活性化部31を封入するようになっている。回収容器34は、放出された活性剤を回収するための検出ライン35と、パージ(purge)ライン36とを有する。
【0110】
放出された活性成分、特にガス状又は揮発性の活性成分(例えば匂い物質又は香料)が検出装置又は分析装置5に到達せずに回収容器34によって覆われた試料担体7の表面又は支持面8の領域から漏れることを防止するために、回収容器34は、横方向及びその上端部が閉じられ、下端部及び分析試料に面した端部が開いているように設計することが好ましい。分析試料の上で活性化装置3を降下させて試料担体7又は支持面8の上に載せると、回収容器は、覆った表面を気密に閉鎖する。
【0111】
好ましい実施形態では、回収容器34は、釣鐘(ベル)形状を有する。
【0112】
放出された活性物質が、回収容器又はベル部34によって覆われた試料担体7の表面又は支持表面8の領域から検出装置又は分析装置5に到達することなく漏れることをさらに防止するために、回収容器又はベル部34は、下にある支持面と同一平面になり得る丸縁部、又はベル部が被覆領域に締まり嵌め可能となるようにする密封構成を備えてもよい。この結果、放出された分析する活性物質は、検出ライン35だけを介して逃れ、必然的に分析装置である検出装置に供給され得る。例えば、回収容器は、密封リングを備えてもよく、この密封リングはフッ素エラストマで形成してもよい。
【0113】
回収容器又はベル部34は、ガラス又はプラスチックなどの透明な材料で形成されてもよい。回収容器又はベル部34が透明性を有すると、放出システム、好ましくはカプセル6又は前駆体6の開放すなわち活性化、活性成分又は複数の活性成分の放出及びその分析の実行中に、回収容器又はベル部34で覆われた表面を見ることができるという利点を有する。
【0114】
回収容器又はベル部34は、試料担体8又は支持面8に対して垂直なZ位置決めユニット32によって活性化部31と共に昇降可能であるように、活性化装置3上に配置される。
【0115】
透明な回収容器34はさらに、代替的に、放出システム、好ましくはカプセル6又は前駆体6の開放すなわち活性化と、活性化部の代わりに光又は紫外線照射による一以上の活性成分の放出とが、回収容器34を通じて分析試料への直接照射によって行われうるという利点も有する。
【0116】
本発明による装置の更なる実施形態において、回収容器又はベル部34は、活性化部31のZ位置決めとは独立して、試料担体8又は支持面8に対して垂直に昇降可能である。
【0117】
代替的かつ好ましい実施形態では、活性化装置3は、回収容器又はベル部34に接続する検出ライン35を備える。この検出ライン35は、放出システムから放出された活性剤又は複数の活性剤を検出装置5に送るよう構成する。検出ラインは、金属又はプラスチックポリマーでできていることが好ましい。
【0118】
好ましくは、放出された分析する活性物質は、揮発性物質、例えば揮発性付臭剤もしくは香料、又は揮発性付臭剤又は香料の混合物で、検出装置5へ直接供給されて分析される。好ましい実施形態では、揮発性物質(複数の揮発性物質)は、検出ライン35によって吸引される一体化した吸引機構を介して検出装置5へ送られる。あるいは、代替の変形例では、放出された活性物質は、不活性ガス(例えば窒素又はヘリウム)を介した排出によって、検出装置又は分析装置5に到達する。このために、回収容器又はベル部34に接続されたラインを介して不活性ガスが回収容器内に導入され、それによって揮発性物質又は複数の揮発性物質が排出されて検出装置5に到達する。
【0119】
任意で、活性化装置3は、回収容器又はベル部34に接続されるパージライン36を備える。このパージライン36は、回収容器又はベル部34及び又は検出ライン35をパージするために、開放、放出、及び分析プロセスの完了後にシステムにパージガス又はパージ液体を供給するよう構成する。パージにより、微量の薬剤を除去し、次の分析手順に備えてシステムを汚染されていない状態にする。パージガスは、空気、窒素、ヘリウムから選択することが好ましい。パージ液は、好ましくは水又は極性もしくは非極性溶媒、好ましくはエタノール、アセトン、イソプロパノール、ヘプタン、又は洗剤水溶液であり、後者は必要に応じて、最後のさらなるすすぎ工程と組み合わせて使用する。あるいは、揮発性活性物質の残留物が蒸発するまでの間、2回の分析工程間に待機時間を設ける。
【0120】
活性化装置3の任意選択の構成要素であるファン39を使用して、活性化装置3から、好ましくは回収容器34及び/又は活性化部31から、残留リンスガス又はリンス液、カプセル化された活性成分の残留成分及び他の試料残渣を吹き飛ばすことができる。
【0121】
本発明の第1の態様に係る装置はさらに、装置1の制御及び位置決め並びに測定結果の評価及び保存のために、適切なソフトウェアを備えたコンピュータシステム51を備える。
【0122】
好ましい変形例では、本発明の第1の態様に係る装置のX/Y位置決めユニット(4)は、位置決めレーザ(43)を備える。この位置決めレーザ(43)は、コンピュータシステム又はコンピュータ51の位置決めユニットの一部であり、これを介して、X軸21、X軸22及び活性化装置3の移動が制御される。
【0123】
試料担体7は、好ましくは、均一な試料野の格子を作成する等間隔の水平線と垂直線の格子を有する。試料野は、分析試料が塗布される又は置かれる面を形成する。
【0124】
試料担体7上方での活性化装置3の位置決め及び移動について、試料野の開始及び終了測定点、ならびに試料担体7上の水平及び垂直試料野の数が、装置1の調整(教育)のために必要である。これらの位置は、位置レーザ41によって決定され、コンピュータシステムを介して装置1に記憶される。位置レーザによって定義された試料野についての決定及び記憶された開始測定点及び終了測定点に基づいて、活性化装置3は、分析試料野上で正確に位置決めされ、試料野を横断可能である。
【0125】
測定又は一連の測定を開始するため、又は破砕、放出及び解析プロセスの開始前に、X軸21、Y軸22及び活性化装置3をそれぞれ、ベースフレーム2の「ゼロ点」、すなわち開始点に移動させる。「ゼロ点」に到達すると、コンピュータに信号が送られる。これらのゼロ点をもとに、位置決めユニットの移動と組み合わせて、始点と終点とをそれぞれ座標に割り当てることができる。これらの座標と水平・垂直方向の測定回数とを組み合わせることで、測定点ごとに座標を算出し、自動で各座標にアプローチすることができる。
【0126】
本発明の第1の態様による放出システム及び/又はカプセル化活性物質の分析的及び/又は官能的判定のための装置1により、客観的かつ標準的な分析方法を実施可能なシステムが提供される。これにより、活性成分又は複数の活性成分の放出、例えば放出された活性成分の濃度、放出速度又は放出特性について客観的な定性的及び/又は定量的な記述を行うこと、及び/又は活性成分放出システム、好ましくはカプセル又は前駆体の特性、例えば一定期間にわたる貯蔵後のカプセルの機械安定性、破壊強度又は遅滞挙動について記述を行うことができるようになる。
【0127】
さらに、本発明の第1の態様によれば、装置1は全自動で動作する。全自動装置1は、例えば、圧力、無圧測定の時間の長さ、摩擦のない圧力の放棄、摩擦プロセス及び摩擦なしの検出時間、回転速度、回転時間又はパージ時間といった分析パラメータを正確に設定できる利点を有する。本発明による装置1により、分析的及び/又は官能的な判定を同時に行うことができ、得られた測定結果の相関をとることができる。さらに、本発明による装置1は、本発明に従って使用される放出システムからの一以上の活性物質の放出をリアルタイムで分析することを可能にする。
【0128】
さらに、本発明による装置1は、カプセル化された活性成分、例えば匂い物質又は香料の破裂挙動を、再現可能に客観的に分析的及び/又は官能的に判定することを初めて可能にするものである。これにより、時間や人員をあまりかけずに、また官能識者集団の主観に影響されることなく、新しいカプセル技術のふるい分けや最高の破裂挙動を持つカプセルの開発が可能となる。
【0129】
したがって、第2の態様において、本発明は、放出システムから、好ましくはカプセル又は前駆体からの一以上の活性成分の放出を分析的及び/又は官能的に判定するための方法に関する。
【0130】
本発明の文脈における放出システム6は、先に述べたような、一以上の活性成分を含む粒子やカプセル6、又は前駆体6又は前駆体物質等の固体製剤を意味すると理解されたい。
【0131】
本発明の方法によって分析されるカプセル6は、ハードシェルカプセル、ソフトシェルカプセル、マクロカプセル、マイクロカプセル、カプセルスラリー及びカプセルエマルジョンからなる群から選択されるものであることが好ましい。
【0132】
放出システムに含まれる活性成分、好ましくはカプセルに含まれる活性成分又は前駆体から放出される活性成分は、固体、液体又は気体物質である。
【0133】
好ましくは、放出システムの活性成分は、室温で揮発性の揮発性物質であり、匂い物質、香料、香油、匂い物質混合物、香料混合物、芳香物質、植物エキス、精油、化粧品有効成分、冷却有効成分及び医薬有効成分からなる群から選択されることが好ましい。個々の活性成分に関しては、上記の説明を参照されたい。
【0134】
本発明による方法の第1工程において、試料6、すなわち一以上の活性成分を含む分析する放出システム6を、支持面8上に位置する試料担体7上に提供する。
【0135】
例えば、特定の基材上の活性成分放出システムの分布又は付着を試験するために、試料担体7は、例えば綿、麻、ウール、ビスコース、ポリアクリル、ポリアミド、ポリエステルからなる衣類等の布、又は別の有機又は無機の基材又はその表面、例えばタイル、リノリウム、木材、ガラス、金属、毛髪などでもよく、繊維ブランケットであってもよい。
【0136】
あるいは、本発明によるプロセスにおいて、放出システム6、好ましくはカプセル6又は前駆体6は、支持面8上に直接配置される。
【0137】
代替変形例では、試料6が支持面8上に直接置かれており、例えばカプセル化された活性成分6又は前駆体6を備えた床洗浄剤の場合、本発明による装置を支持面の真上に位置決めし、支持面8の表面で直接分析を実施する。
【0138】
試料担体7上の放出システム6、好ましくはカプセル6又は前駆体6の適用量は可変であり、摩擦ヘッドの材料及び直径、カプセル又は前駆体の用途(application)、ならびにカプセル又は前駆体中の活性物質含有量に応じて決定される。試料担体への塗布は、カプセルスラリーの形態が好ましく、例えば、洗濯機における標準的な洗濯液中の濃度を考慮するとともに、洗濯工程における洗濯物へのカプセルの平均付着量を考慮して、用途に近い濃度で塗布することが望ましい。適用量は、試料担体上の測定野又は試料野当たり、0.1mg~2.0mgのカプセル又は前駆体、さらに好ましくは0.3~1.8mg、最も好ましくは試料担体上の測定野又は試料野当たり0.5~1.0mgのカプセル又は前駆体である。
【0139】
あるいは、例えば、洗濯機で洗った後の布地への放出システムの付着を判定する場合、放出システムの量を用途に応じて調整する。
【0140】
試料担体7は、好ましくは、等間隔の水平線と垂直線の格子を有し、等間隔の測定野又は試料野の格子を作成する。分析する試料6、すなわち分析する放出システム6、好ましくはカプセル6又は前駆体6は、個々の座標を有する特定の測定野又は試料野内で試料担体7に塗布する。本発明による装置を(レーザを介して)教育し、測定開始前に行と列を指定することで、格子座標が独立して計算され、EDPによって制御される。これにより、分析対象の試料が塗布又は配置されている対応する試料野へと、活性化装置3が制御可能である。
【0141】
本発明による方法の次の工程において、活性化部31を有する活性化装置3は、放出システム6、特にカプセル6又は前駆体6の上方で位置決めされる。活性化部31を備える活性化装置3の移動及び位置決めは、X軸21及びY軸22を介して、又はX位置決めユニット/駆動部41及びY位置決めユニット/駆動装置を介して、分析する試料がある試料担体7又は支持面8に対して水平にX方向及びY方向に行われる。
【0142】
本発明の第2の態様による方法のさらなる工程において、放出システム6からの、特にカプセル又は前駆体からのある距離を活性化部31が維持するか、放出システム6にわずかに接触するように、活性化装置3を降下させる。この工程は、放出システムを開放すなわち活性化するために使用する刺激に応じて行われる。圧力及び/又は摩擦による開放又は活性化の場合、活性化部31は放出システムに触れるが、紫外線放射による開放又は活性化の場合、放出システムとの距離を維持することができる。
【0143】
次に、本発明によるこのプロセスにおいて、活性化部により、活性成分又は複数の活性成分が、放出システム6から、好ましくはカプセル6又は前駆体6から放出される。活性成分又は複数の活性成分の放出は、物理的及び/又は化学的な刺激によってもたらされる。放出システムがカプセルの場合、圧力、摩擦、温度、pHの変化、紫外線放射、マイクロ波、超音波などの手段でカプセルを開放することで活性成分の放出が行われる。放出システム6が前駆体6の場合、化学反応、温度、湿度、pHの変化、酸素(酸化)、光(例えば紫外線照射)、酵素、微生物によって、前駆体物質からの活性成分の放出が起こる。
【0144】
本方法の好ましい変形例では、活性化部によるカプセルからの活性成分又は複数の活性成分の放出は、分析する試料6への圧力及び/又は分析する試料6の摩擦によってもたらされる。カプセルの材質によっては、例えば、カプセルの壁が薄い場合、又はカプセルの材質が不安定な場合、本発明による方法の代替変形例では、圧力を加えることによってのみであって摩擦なしでカプセルが破断される。
【0145】
機械的圧力は、圧力センサ33を介して発生させる。圧力センサ33は、活性物質放出システム、好ましくはカプセルを破裂又は破損させるために加える圧力を設定するために使用可能である。本発明によるプロセスにおいて、活性物質放出システム、好ましくはカプセルを破り、活性物質を放出するために加えられる圧力は、≧0Paである。0Paの圧力、すなわち、分析する試料6に活性化部31を単に接近させることで、最初のカプセルを破壊するのにすでに十分であることが実証されている。好ましくは、活性物質放出システム、好ましくはカプセル、又は試料担体7に対して、1000Pa~30000Paの範囲の圧力で、さらに好ましくは2500Pa~25000Paの範囲の圧力でこのプロセスが実施される。これらの値は、好ましくは半径2cmのものを指す。活性化部の半径を変えたり、摩擦ヘッドの材質を選択したりすることで、上記の最小圧力と最大圧力を調整することができる。
【0146】
活性物質放出システムの破壊又は破損にもつながる摩擦を発生させるために、活性化装置は回転ユニット38を備える。活性化部31は、電気モータによって駆動される回転ユニット38と直結している。この回転ユニット38は、活性化部31に例えば、同心円運動、偏心運動又は等距離運動をさせる。同心円運動の場合、活性化部は、分析試料6に対して回転円運動を行い、円運動の円は様々な半径を持つ。偏心運動の場合、活性化部は、分析試料6に対して、円の中心から外れた位置にある回転円運動を行う。等距離運動の場合、活性化部が分析試料6上をX、Y方向に車両のように往復運動する。
【0147】
上記のいずれかの運動により、活性化部31は、分析試料6上を移動して摩擦を生じさせ、活性成分放出システム、好ましくはカプセルから活性成分を放出させる。
【0148】
代替実施形態では、活性化部31は、活性化部31を発振させる発振器ユニット38である。分析試料6の上方で活性化装置が振動することにより摩擦が生じ、放出システム、好ましくはカプセルから活性成分が放出される。
【0149】
別の代替実施形態では、測定中に短い間隔で活性化部の回転方向を変え、活性成分放出システム、好ましくはカプセルから活性成分を放出させることができる。
【0150】
本発明によるプロセスにおける活性化部31によれば、放出システム6、特にカプセル6からの活性成分の放出は、カプセル化された活性成分6及び/又は試料担体7と接触する活性化部31の回転速度が0rpmから、好ましくは50rpm~1000rpm、更に好ましくは200rpm~1000rpmの回転速度で実施される。
【0151】
本発明によるプロセスにおける摩擦時間は可変である。好ましくは0~30秒である。
【0152】
プロセスパラメータのうち、圧力と摩擦はカプセルの破壊に最も大きな影響を与える。有利なことに、これら2つのプロセスパラメータは、本発明による自動化プロセスで正確に設定することができる。また、プロセスパラメータの調整により、大きさの異なるカプセルや厚みの異なるカプセルの破壊も可能である。さらに、圧力の増加によって、例えば、放出システムからの活性成分又は複数の活性成分のより速い放出が可能となり、それによって、その後の分析及び/又は官能的な判定の際に、より強い強度での測定が可能となる。逆に、カプセルを破裂させるために加える圧力は、破壊強度、したがってカプセルの安定性のパラメータとみなすことができる。
【0153】
好ましい実施形態では、放出される活性成分又は複数の活性成分は、揮発性物質である。
【0154】
本発明によるプロセスのさらなる工程において、好ましくは気相中に存在する放出された活性成分(複数の活性成分)は、検出ライン35によって捕捉され、検出装置5に供給される。好ましい変形例では、本発明によるプロセスにおいて、一体化した吸引機構、好ましくはFAIMSのポンプによって、放出システムから放出された活性成分(複数の活性成分)が吸い込まれ、検出装置5に供給される。
【0155】
本発明による方法の好ましい変形例では、放出された活性成分、特にガス状又は揮発性の活性成分、例えば匂い物質又は香料が、分析及び/又は官能判定中に漏れるのを防ぐために、試料が位置する試料担体7又は支持面8の表面は、好ましくは釣鐘形状を有し活性化部31の下端部に配置される回収容器34で覆われる。このために、回収容器34は、好ましくは、横方向及びその上端部で閉じられ、下端部及び分析試料に面する端部で開いているように設計される。分析試料の上方で活性化装置3を降下させて試料担体7又は支持面8の上に載せると、回収容器は、覆った表面を気密に閉鎖する。これにより、放出された活性成分特に揮発性の活性成分(例えば匂い物質又は香料)が検出装置又は分析装置5に到達せずに回収容器34によって覆われた試料担体7の表面又は支持面8の領域から漏れることを防止する。
【0156】
任意の変形例において、放出された活性成分は、ポンプによって回収容器又はベル状の瓶から検出装置又は分析装置5に吸引可能である。この場合、放出された活性物質をわずか数秒で検出できるという利点がある。
【0157】
放出システム、好ましくはカプセル又は前駆体から放出された活性成分は、本発明によるプロセスのさらなる工程において、放出された活性成分の分析的及び/又は官能的決定のために検出装置又は分析装置5へ供給される。
【0158】
検出装置又は分析装置5により、本発明による方法のさらなる工程で、放出システムから放出された活性物質の分析的及び/又は官能的な判定が実施される。
【0159】
分析的調査及び/又は判定とは、放出システム6、特にカプセル6又は前駆体6から放出される活性成分を官能により、定性的(活性成分の同定)及び/又は定量的(活性成分の量)に分析することを意味すると理解されたい。有利なことに、本発明による方法は、放出システムの活性成分又は複数の活性成分、例えばカプセル化された活性成分又はカプセル化された複数の活性成分を、種類及び量に応じて分析するために使用可能である。
【0160】
検出装置又は分析装置5は、放出された活性物質の定性及び/又は定量分析が可能な測定装置である。
【0161】
放出された活性成分(複数の活性成分)の定性的及び/又は定量的な分析のために、好ましくは検出装置又は分析装置5が使用されるが、好ましくは、ガスクロマトグラフ(GC)、ガスクロマトグラフ/質量分析計(GC/MS)、イオン移動度分光分析(IMS)、FAIMS(高磁場非対称波形イオン移動度分光分析)、GC-FAIMS及びGC-MS-FAIMS、又はこれら測定装置の組み合わせからなる群から選択されることが好ましい。
【0162】
好ましくは、検出装置又は分析装置5について、IMS(イオン移動度分光分析)、FAIMS(高磁場非対称波形イオン移動度分光分析)、GC-FAIMS及びGC-MS-FAIMS又は前述の測定装置の組み合わせを用いて分析が行われる。
【0163】
最も好ましくは、本発明による方法において、放出された活性成分の分析的決定は、FAIMS(高磁場非対称波形イオン移動度分光分析)により行われる。FAIMSは、ガス流から又は液体や固体試料上の気相から揮発性化学種を直接検出・分析可能である。FAIMSユニットに試料を届ける仕組みとして、単一サンプリングと連続サンプリングの2つがある。単一サンプリングでは、一定量のガス状の分析対象、すなわち放出された活性成分(複数の活性成分)を上流工程で回収又は吸着濃縮し、FAIMSに供給する。連続サンプリングでは、ガス状の分析対象、すなわち放出された活性成分を、搬送ガス(例えば精製空気又はアルゴン)によってFAIMSに連続的に供給する。サンプリングは連続的に行うのが好ましく、放出された活性成分(複数の活性成分)の分析的判定をリアルタイムで行うことができる。これにより、リアルタイムの放出を分析的に判定することができ、匂い物質又は香料混合物の放出を判定する際に特に有利である。
【0164】
本発明による方法の別の変形例では、放出された活性成分(複数の活性成分)を例えばテナックス管中の吸着剤に結合させて濃縮し、その後GC-MS(ダイナミックヘッドスペース法)によって測定する。ダイナミックヘッドスペース法では、例えばFAIMSで生成される、又は外部ポンプを追加使用して生成される連続気流、あるいは不活性ガスを経由して、例えばテナックス管内で適切な吸着材又はコールドトラップ内へと測定中に放出された活性成分を送る。このために、吸着剤含有ガラス管をCBAからの空気流に直接組み込むか、又は(直接法には空気流が強すぎる場合)、活性成分(複数の活性成分)を最初に閉鎖容器(例えば、ビニール袋)に通し、次に弱い空気流を用いて活性成分(複数の活性成分)を吸着剤上へと送ることができる。その後、テナックス管(吸着剤)又は捕集装置を加熱し、例えばFAIMS又はガスクロマトグラフ分析用の円柱部へと濃縮された分析対象を送る。
【0165】
本発明による方法の好ましい変形例では、放出された活性成分の定性及び定量的判定に加えて、嗅覚計及び/又は嗅覚検出ポート(ODP)(匂い探知ポートシステム)(52)により、放出された活性成分の官能判定が同時に行われ、このポートは代替出力を介して検出装置又は分析装置5と接続される。このような組み合わせにより、分析的な判定と官能的な判定の相関関係を確立することができる。
【0166】
本発明による装置において、匂い探知ポートシステムは、検出装置5の前と検出装置5の後ろの両方に配置することができる。検出装置5の後に匂い探知ポートシステムを配置する構成は、検出装置5がFAIMS又はIMSである場合に特に有利である。FAIMS又はIMSは分析対象を破壊せず、FAIMS又はIMSの出力でも分析対象が依然として利用可能だからである。このような配置により、放出された活性物質の測定データと官能評価との相関を特に良好に確立することができる。
【0167】
得られた測定結果は、適切なソフトウェアを備えたEDPシステム51に供給され、このソフトウェアによって評価及び保存される。
【0168】
本発明による方法の最終工程において、装置1のリセットが実行され、装置1のリセットは以下のステップを備える。まず、Z位置決めユニット32により、活性化装置3を上昇させる。
【0169】
任意で、本発明による方法は、開放、放出及び分析工程の完了後に、活性化部31及び/又は検出ライン35及び/又は検出装置にパージガス又はパージ液体を流す工程を備える。このパージにより、放出された活性成分の残留物等の試料残留物を除去し、次の分析手順に備えてシステムを汚染されていない状態にする。パージガスは、空気、窒素、ヘリウムから選択することが好ましい。パージ液は、好ましくは水又は極性もしくは非極性溶媒、好ましくはエタノール、アセトン、イソプロパノール、ヘプタン、又は洗剤水溶液であり、後者は必要に応じて、最後のさらなるすすぎ工程と組み合わせて使用する。あるいは、放出された活性物質の残留物が蒸発するまでの間、2回の分析工程間に待機時間を設ける。
【0170】
活性化装置3の任意選択の構成要素であるファン39を使用して、本発明のプロセスにおいて、活性化装置3から、好ましくは活性化部31及び/又は回収容器34から、パージガス又はパージ液の残留物、カプセル化された活性成分の残留活性成分及び他の試料残渣を吹き飛ばすことができる。
【0171】
本発明によるプロセスの各工程の概略を、
図5に示す。
【0172】
本発明の第2の態様による方法により、放出システム、好ましくはカプセル又は前駆体からの活性成分を、客観的で標準化された条件下、すなわち定義されたプロセスパラメータを設定して分析することが可能である。本発明による分析方法では、活性成分放出システム、好ましくはカプセル又は前駆体を、明確に定義された条件(例えば圧力)下で、すなわち標準化され制御された方法で破壊して開放することができ、同時にカプセルの内容物を定量的及び/又は定性的に分析することが可能である。これにより、標準化された再現性のある分析手順が可能となり、その適用条件や手順が、同じ条件下で同じ結果が期待できるように定義された規範によって統一される。また、異なるカプセル試料や前駆体の測定結果を比較することも可能となる。このような再現性のある放出条件下での分析的・官能的な判定は、未だ知られていなかった。
【0173】
また、本発明の方法に従ってカプセル化された活性成分の破裂挙動を再現可能で客観的な分析的及び/又は官能的に判定することにより、時間及び人員をあまりかけず、官能識者集団の主観による影響を受けずに、新しいカプセル技術のふるい分け及び最高の破裂挙動を有するカプセルを得るためのさらなる開発を行うことが可能となる。
【0174】
本発明による方法はさらに、カプセル又は前駆体からの一以上の活性成分の放出の連続的なオンライン測定を初めて可能にし、それによって放出の時系列を直接、すなわち放出と並行して記録することができる。このようなオンライン測定の一例を
図6に示す。
【0175】
図6は、香油入りカプセルの破裂を連続測定した経過を示す図である。カプセルは、液状の香油をコアにした多層構造のカプセルである。測定パラメータは、60rpm、1.0Nで10秒間の摩擦、30秒間の摩擦後時間である。
【0176】
格子ヘッドを持ち上げた後に、カプセルの破裂(カプセル破断)と香油の放出が特に観察される。放出曲線の最大値は再現性があり、異なるカプセルの比較に使用可能である。
【0177】
本発明による方法はさらに、例えば、同じプロセスパラメータの下で複数の試料を連続して分析することができる連続運転も可能とする。そのため、これらの解析値を直接比較することができる。さらに、嗅覚計及び/又は嗅覚検出ポート(ODP)(匂い探知ポートシステム)52用の代替出力を有する検出装置5の組み合わせを介することができる。
【0178】
再現性のある放出方法によって、異なる試料の官能評価や比較について改善することができる。また、このようにして得られた分析結果と官能測定の結果を相互に関連付けることができる。
【0179】
上述の利点に基づき、本発明による装置及び方法は、放出システム6、好ましくはカプセル6又は前駆体6からの活性成分の放出について、分析的及び/又は官能的に判定することに適しており、活性成分の組成を種類及び量に応じて分析することが可能である。
【0180】
本発明による方法は、特に新しいカプセルの開発及び製造において、様々なカプセル材料の機械的安定性及び破砕挙動を分析するために使用することも可能である。さらに、本発明の方法によれば、好ましくは一定期間カプセルを保存した後に、分析するカプセルの遅延挙動を判定することができる。
【0181】
本発明による方法は、放出システム、好ましくはカプセル又は前駆体からの、異なる活性成分、例えば異なる付臭剤又は香料又は付臭剤又は香料混合物の放出挙動を比較することも可能にする。
【0182】
本発明による方法によれば、繊維製品の洗濯及び乾燥後に、表面上のマイクロカプセルの分布及び付着、例えば、匂い物質を含むマイクロカプセルの分布及び付着を分析することもできる。
【0183】
本発明による方法によればさらに、放出システム6、特にカプセル6又は前駆体6から基材上に放出した後の一以上の活性成分の持続性の分析が可能となる。
【0184】
さらに、本発明による方法は、放出システム、特にカプセル又は前駆体6の機械的安定性及び破壊強度及び/又は放出システム6、特にカプセル6又は前駆体6からの活性物質又は複数の活性物質の放出について、物理的又は化学的要因(例えば温度、光、UV放射、pH)の影響を分析するために使用することができる。
【0185】
さらに、活性成分又は複数の活性成分の放出の分析的判定及び放出システム6、特にカプセル6又は前駆体6の特性の判定のために、放出システム6の開発及び製造中に本発明による方法を使用することができる。
【0186】
したがって、最終的な態様において、本発明は、本発明による装置及び方法を以下の目的で使用することに関する。
- 放出システム(6)、特にカプセル(6)又は前駆体(6)からの活性物質又は複数の活性物質の放出について、特に濃度、放出速度又は放出特性を分析的及び/又は官能的に判定するため、
- 放出システム(6)、特にカプセル(6)又は前駆体(6)の特性、特に機械的安定性、破壊強度及び遅延挙動、特に、異なるカプセル材料及び異なる活性成分から形成された各カプセル(6)の機械的安定性、破壊強度又は遅延挙動を判定するため、
- 放出システム(6)、特にカプセル(6)又は前駆体(6)の、基材上、特に繊維製品の洗浄及び乾燥後の、分布及び付着を分析するため、
- 放出システム6、特にカプセル6又は前駆体6から放出された後の活性物質又は複数の活性物質の基材上での持続性を分析するため、
- 放出システム、特にカプセル又は前駆体6の機械的安定性及び破壊強度及び/又は放出システム6、特にカプセル6又は前駆体6からの活性物質又は複数の活性物質の放出について、物理的又は化学的要因(例えば温度、光、UV放射、pH)の影響を分析するため、及び
- 放出システム6の開発及び製造の間に、活性物質又は複数の活性物質の放出の分析的判定、及び放出システム6、特にカプセル6又は前駆体6の特性を判定するため、の使用である。
【0187】
実施例1 異なるカプセル技術を用いたフレグランスの放出の比較
【0188】
異なるタイプのカプセルについて破砕挙動の分析的比較を行う。タイプA~Dはメチルホルムアミド系コア/シェル型の香油カプセルであって、壁厚が異なる(AからDの順で壁厚が薄くなる)。すべてのカプセルタイプに同じ香油を同じ用量で充填した。測定は、2.5N、15秒、摩擦100rpmで行った。
最大破砕強度の結果を
図7に示す。破砕強度は、最も薄いタイプDのカプセルが最も高い。
【符号の説明】
【0189】
1 装置
2 ベースフレーム
21 X軸
22 Y軸
3 活性化装置
31 活性化部
32 Z位置決めユニット
33 圧力センサ
34 回収容器/ベル部
35 検出ライン
36 パージライン
37 パージポンプ
38 回転ユニット
39 ファン
4 X/Y位置決めユニット
41 X位置決めユニット/X位置決め駆動部
42 Y位置決めユニット/Y位置決め駆動部
43 位置決めレーザ
5 検出装置/分析装置
51 EDPシステム
52 匂い探知ポートシステム
6 試料/放出システム/カプセル/前駆体
7 試料担体
8 支持面