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特許7445763船舶の液化ガスの供給システム及び液化ガスの供給方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】船舶の液化ガスの供給システム及び液化ガスの供給方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20240229BHJP
   B63B 27/34 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
F17C13/00 302A
B63B27/34
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022537257
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-06
(86)【国際出願番号】 KR2020017962
(87)【国際公開番号】W WO2021132955
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】10-2019-0174337
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0117442
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0117443
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0117444
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517430897
【氏名又は名称】ハンファ オーシャン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジン ヨン
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1847021(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0115337(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1767555(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0052937(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0017997(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/00
B63B 27/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の複数の液化ガスタンクに、液化ガス供給船から液化ガスを供給する、船舶の液化ガスの供給システムにおいて、
前記複数の液化ガスタンクに液化ガスを供給するリキッドライン;と、
前記複数の液化ガスタンクから蒸発ガスを排出するガスライン;と、
前記複数の液化ガスタンクが第1貯蔵タンクと第2貯蔵タンクとを含み、
前記リキッドラインから分岐して、前記第1貯蔵タンクに接続される第1リキッド分岐ライン;と、
前記リキッドラインから分岐して、前記第2貯蔵タンクに接続される第2リキッド分岐ライン;と、
前記ガスラインから分岐して、前記第1貯蔵タンクに接続される第1ガス分岐ライン;と、
前記ガスラインから分岐して、前記第2貯蔵タンクに接続される第2ガス分岐ライン;とを備え、
前記リキッドライン上で前記第2リキッド分岐ラインの分岐点を挟んで前記第1リキッド分岐ラインの分岐点の反対側のリキッドラインの部分から分岐して、前記第2リキッド分岐ラインに接続される第1コネクトライン;と
前記リキッドラインの前記第1コネクトラインの分岐点と前記第2リキッド分岐ラインの分岐点との間に設けられて、前記リキッドラインを遮断する隔離バルブ;とをさらに備え
前記リキッドラインは、前記隔離バルブにより、前記第2リキッド分岐ラインの分岐点が位置する一方の部分と前記第1コネクトラインの分岐点が位置する他方の部分とに隔離されて、
前記第2貯蔵タンクからの不活性ガスを、前記リキッドラインの他方の部分を介して排出する船舶の液化ガスの供給システム。
【請求項2】
前記第1ガス分岐ラインを介して排出される蒸発ガスを加熱する加熱器をさらに備え、
前記加熱器で加熱された蒸発ガスは、前記第2ガス分岐ラインを介し第2貯蔵タンクに供給される、請求項1記載の船舶液化ガスの供給システム。
【請求項3】
前記液化ガス供給船と接続されるマニホールドをさらに備え、前記マニホールドと前記リキッドラインとが接続され、
前記隔離バルブは、前記リキッドラインの前記マニホールドとの接続点と前記第1コネクトラインの分岐点との間に設けられる、請求項記載の船舶液化ガスの供給システム。
【請求項4】
前記液化ガス供給船に接続されるマニホールドをさらに備え、前記マニホールドと前記リキッドラインとが接続され、
前記隔離バルブは、前記リキッドラインの前記マニホールドとの接続点に設けられる、3方向バルブである、請求項記載の船舶液化ガスの供給システム。
【請求項5】
ントマスト;と
前記リキッドラインと前記ベントマスト接続する第2コネクトライン;とをさらに備え、
前記第2貯蔵タンクから排出される気体が不活性ガスであり、
前記不活性ガスが、前記第2貯蔵タンクからベントマストへ移送される、請求項記載の船舶における液化ガスの供給システム。
【請求項6】
液化ガス供給船か、第1貯蔵タンク及び第2貯蔵タンク含む複数の液化ガスタンクを備える船舶に、液化ガスを供給する液化ガスの供給方法において、
液化ガス供給船から、第1貯蔵タンクに液化ガスを供給する液化ガス供給ステップ;と
前記液化ガス供給ステップによって、第1貯蔵タンクで発生した蒸発ガスを第1貯蔵タンクから排出させる蒸発ガス排出ステップ;と
前記蒸発ガス排出ステップで第1貯蔵タンクから排出され蒸発ガスを、第2貯蔵タンクへ供給する置換用ガス供給ステップ;と
前記置換用ガス供給ステップによって、第2貯蔵タンクに満たされていた不活性ガスを排出させる、不活性ガス排出ステップ;とを含み、
前記第1貯蔵タンクに供給される液化ガスは、液化ガス供給船と第1貯蔵タンク及び第2貯蔵タンクを備える船舶とを接続するリキッドラインに設けられた隔離バルブで隔離されるリキッドラインの一方の部分と、リキッドラインの一方の部分から分岐して前記第1貯蔵タンクに接続される第1リキッド分岐ラインとを介して供給され、
前記第1貯蔵タンクから排出される蒸発ガスは、ガスラインとガスラインから分岐して第1貯蔵タンクに接続される第1ガス分岐ラインを介して排出され、
前記第2貯蔵タンクに供給される蒸発ガスは、ガスラインとガスラインから分岐して第2貯蔵タンクに接続される第2ガス分岐ラインを介して供給され、
前記第2貯蔵タンクから排出される不活性ガスは、隔離バルブで隔離されるリキッドラインの一方の部分から分岐して前記第2貯蔵タンクに接続される第2リキッド分岐ラインと、第2リキッド分岐ラインから分岐して隔離バルブで隔離されるリキッドラインの他方の部分に接続される第1コネクトラインと、隔離バルブで隔離されるリキッドラインの他方の部分とを介して排出され、液化ガスの供給方法。
【請求項7】
前記蒸発ガス排出ステップで前記第1貯蔵タンクから排出され蒸発ガスを加熱した後、前記第2貯蔵タンクに供給する、請求項記載の液化ガスの供給方法。
【請求項8】
前記不活性ガス排出ステップは、
前記隔離バルブを閉じて、前記リキッドラインを、液化ガスが前記第1貯蔵タンクに流通する一方の部分と不活性ガスが前記第2貯蔵タンクから流通する他方の部分とに隔離する隔離ステップ;を含む、請求項記載の液化ガスの供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の液化ガス貯蔵タンクに液化ガスを供給する際に発生する蒸発ガスを外部に返送することなく、船内で処理する、船舶における液化ガスの供給システム及びその方法に関するものである。
【0002】
また、本発明は、船舶の液化ガス燃料タンクに液化ガス燃料を供給する際に発生する蒸発ガスを外部に返送することなく、船内で処理する、船舶における液化ガス燃料の供給システムに関するものである。
【背景技術】
【0003】
一般に、天然ガスは、生産地で液化天然ガス(LNG;Liquefied Natural Gas)の状態で製造された後、LNG運搬船によって陸上のガスターミナルまで輸送される。
【0004】
船舶に備えられる空の液化ガス貯蔵タンク等の液化ガスタンクには、一般に、ガス爆発を防止するために、不活性ガスが満たされる。したがって、LNG運搬船を運航する前の試運転段階又はLNG運搬船のLNG貯蔵タンクにLNGを貯蔵する前にLNG貯蔵タンクに満たされている不活性ガスを天然ガスで置換する置換工程(gassing up)を実施する。
【0005】
置換工程後には、LNG貯蔵タンクの内部温度を下げるクールダウン工程(cooling down)を実施した後、LNGをLNG貯蔵タンクに供給する。
【0006】
一方、クールダウン工程とLNGの供給時には、多量の蒸発ガス(BOG、ボイルオフガス)が発生するため、蒸発ガスをガスターミナルに搬送することによってLNG貯蔵タンクの内部圧力を維持する。
【0007】
一例として、クールダウン工程では約4~7MT/hrの蒸発ガスが発生し、LNGの供給工程では約7~9MT/hrの蒸発ガスが発生する。このように、ガスターミナルでは、LNGをLNG貯蔵タンクに供給する際、上記の各工程で約4~9MT/hrの蒸発ガスが船舶から返送され、返送された蒸発ガスは、再液化して回収されるか、GCU(Gas Combustion Unit)で燃焼処理される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、環境汚染問題を解決するための方策として、LNGを燃料とするLNG燃料船舶が普及するのに伴い、LNGバンカーリング(Bunkering)船舶の運航が活発化している。LNGバンカーリング船舶とは、LNG燃料船舶が停泊している場所に行き、海上でLNGバンカーリング船舶からLNG燃料船舶へLNGを供給する船舶である。
【0009】
LNGバンカーリング船舶からLNG燃料船舶へLNGを供給する際にも、LNG燃料船舶の中では多量の蒸発ガスが発生する。
【0010】
LNG燃料船舶には貨物が載せられるため、蒸発ガスを回収するための配管を設置するのが容易ではなく、また、蒸発ガスは可燃性物質であり、火災や爆発の危険性があるため、LNGの供給時に発生する蒸発ガスをLNG燃料船舶から回収してLNGバンカーリング船舶で処理することが好ましい。
【0011】
LNGが供給される前の空のLNG燃料タンクには、上記の通り、ガス爆発を防ぐため、不活性ガスが満たされている。すなわち、LNG燃料船舶が運航を開始する前の試運転段階又は運航中では、空のLNG燃料タンクには、LNGを貯蔵する前に、LNG燃料タンクに満たされている不活性ガスを天然ガスで置換する置換工程が必要である。
【0012】
また、置換工程の後、LNG燃料タンクの内部温度を下げるクールダウン工程(cooling down)を実施した後にLNGをLNG燃料タンクに供給する必要がある。
【0013】
一方、クールダウン工程とLNGの供給時には、多量の蒸発ガス(BOG)が発生するため、蒸発ガスをガスターミナルに返送することによってLNG燃料タンクの内部圧力を維持することができる。
【0014】
そこで、LNGバンカーリング船舶を利用し、海上でLNG燃料船舶にLNGを供給することはもちろん、LNGバンカーリング船舶を利用してLNG燃料タンク、LNG貯蔵タンクなどが設けられる様々なLNG燃料船舶、LNG運搬船などに、試運転用のLNGを供給する技術に関する活発な議論が行われている。
【0015】
上述したように、試運転対象のLNG運搬船における空のLNG貯蔵タンクにLNGを供給するためには、置換工程とクールダウン工程を前もって実施する必要がある。すなわち、LNGバンカーリング船舶を利用してLNG運搬船に試運転用のLNGを供給する際には、LNG運搬船から各工程で回収される約4~9MT/hrの蒸発ガスをLNGバンカーリング船舶で直接処理しなければならない。
【0016】
しかし、LNGバンカーリング船舶のGCUでは蒸発ガスの処理容量が限られている。実際、LNGバンカーリング機能を適用して韓国で建造が行われているLNGバンカーリング船舶と、実際に韓国の造船会社で建造されて欧州の港湾で運航しているLNGバンカーリング船舶とのGCUにおける蒸発ガスの処理容量は1ton未満でしかない。
【0017】
また、試運転段階のLNG運搬船では、蒸発ガスを処理することができるGCUや再液化装置は、運転が準備されていない状態にあるため、LNG運搬船自体で蒸発ガスを処理することは不可能である。
【0018】
したがって、蒸発ガスを大気中へ排出しなければ、クールダウン工程とLNGの供給時に発生する蒸発ガスの全量を処理することができないのが現実である。
【0019】
そこで、本発明は、上述した問題を解決することを目的とし、例えば、LNG運搬船の貯蔵タンクにLNG又は試運転用のLNGを供給する際に発生する蒸発ガスをLNGバンカーリング船舶に回収することなく、LNG運搬船自体で処理することができる、船舶における液化ガスの供給システム及びの方法を提供する。
【0020】
また、例えば、LNG燃料船舶のLNG燃料タンクにLNGを供給する際に発生する蒸発ガスをLNGバンカーリング船舶に回収することなく、LNG燃料船舶自体で処理することができる、船舶における液化ガス燃料の供給システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述した目的を達成するため、本発明の一実施形態は、液化ガス供給船舶から複数の液化ガス貯蔵タンクを備えた船舶まで液化ガスを供給する船舶における液化ガスの供給システムにおいて、前記液化ガス供給船舶から前記複数の液化ガス貯蔵タンクの中でいずれか一つの液化ガス貯蔵タンクまで液化ガスを供給する液化ガスラインと、前記いずれか一つの液化ガス貯蔵タンクまで液化ガスを供給することにより生成される蒸発ガスを排出するガス排出ラインと、前記蒸発ガスを一つ以上の他の液化ガス貯蔵タンクまで供給するガス供給ラインとを備える、船舶における液化ガスの供給システムを提供する。
【0022】
好ましくは、前記ガス排出ラインに沿って排出される蒸発ガスを加熱する加熱器をさらに備え、前記加熱器で加熱された蒸発ガスは前記ガス供給ラインを介して一つ以上の他の液化ガス貯蔵タンクに供給される。
【0023】
好ましくは、前記いずれか一つの液化ガス貯蔵タンクまで液化ガスを供給する際に生成される蒸発ガスは他の一つの液化ガス貯蔵タンクに供給される。
【0024】
好ましくは、前記いずれか一つの液化ガス貯蔵タンクまで液化ガスを供給する際に生成される蒸発ガスは、その他のすべての液化ガス貯蔵タンクに供給される。
【0025】
好ましくは、前記液化ガスラインは、前記液化ガス供給船舶と液化ガス貯蔵タンクを連結し、前記液化ガス供給船舶から液化ガスが移送されるリキッドクロスオーバーラインと、前記リキッドクロスオーバーラインを介して供給された液化ガスを各液化ガス貯蔵タンクに分岐させて供給するためのリキッドラインを備える。
【0026】
好ましくは、前記リキッドラインは、前記リキッドクロスオーバーラインを介して液化ガスが供給される時、一つ以上の他の液化ガス貯蔵タンクまで液化ガスが供給されないように、前記リキッドラインを隔離するため一つ以上の隔離バルブをさらに備える。
【0027】
好ましくは、前記隔離バルブは、前記リキッドクロスオーバーラインが前記リキッドラインに接続する地点と、この地点から最初に接続する液化ガス貯蔵タンクに分岐する地点との間で設置される。
【0028】
上述した目的を達成するため、本発明の他の一実施形態は、液化ガス供給船舶から複数の液化ガス貯蔵タンクを備えた船舶まで液化ガスを供給する船舶における液化ガスの供給方法において、液化ガス供給船舶から前記複数の液化ガス貯蔵タンクの中でいずれか一つの液化ガス貯蔵タンクまで液化ガスを供給する液化ガス供給ステップと、前記いずれか一つの液化ガス貯蔵タンクまで液化ガスを供給することにより生成される蒸発ガスを排出する蒸発ガス排出ステップと、前記いずれか一つの液化ガス貯蔵タンクから排出される蒸発ガスを前記複数の液化ガス貯蔵タンクの中で一つ以上の他の液化ガス貯蔵タンクまで供給する置換用ガス供給ステップとを備える、液化ガス供給方法を提供する。
【0029】
好ましくは、前記蒸発ガス排出ステップで排出された蒸発ガスを加熱し、加熱された蒸発ガスを一つ以上の他の液化ガス貯蔵タンクに供給する。
【0030】
好ましくは、前記いずれか一つの液化ガス貯蔵タンクまで液化ガスを供給する際に生成される蒸発ガスを他の一つの液化ガス貯蔵タンクに供給する。
【0031】
好ましくは、前記いずれか一つの液化ガス貯蔵タンクまで液化ガスを供給する際に生成される蒸発ガスを、その他のすべての液化ガス貯蔵タンクに供給する。
【0032】
好ましくは、液化ガス貯蔵タンクのいずれか一つの液化ガス貯蔵タンクまで液化ガスを供給する時、一つ以上の他の液化ガス貯蔵タンクまで液化ガスが供給されないように遮断する。
【0033】
上述した目的を達成するため、本発明のさらに他の一実施形態は、液化ガス供給船舶から複数の液化ガス貯蔵タンクを備えた液化ガス運搬船まで試運転用の液化ガスを供給する船舶における試運転用液化ガスの供給方法において、前記液化ガス供給船舶から前記液化ガスを、前記液化ガス貯蔵タンクに噴射するために設けられるストリッピングラインを利用して、前記複数の液化ガス貯蔵タンク中でクールダウン工程を実施する準備がされたクールダウン用貯蔵タンクまで供給するクールダウン用液化ガスの供給ステップと、前記クールダウン用貯蔵タンクまで液化ガスを供給することにより前記クールダウン用貯蔵タンクで生成された蒸発ガスを、前記液化ガス貯蔵タンクからガスを排出させるために設けられたガスラインを介して排出するクールダウン蒸発ガスの排出ステップと、前記クールダウン用貯蔵タンクから排出される蒸発ガスを前記複数の液化ガス貯蔵タンクの中で置換工程を実施する準備がされた第1置換用貯蔵タンクに供給する第1置換用ガスの供給ステップとを備える、船舶における試運転用液化ガスの供給方法を提供する。
【0034】
好ましくは、前記第1置換用貯蔵タンクには不活性ガスが満たされていて、前記第1置換用貯蔵タンクに前記蒸発ガスを供給することで前記第1置換用貯蔵タンクから排出される不活性ガスを、前記液化ガスを前記液化ガス貯蔵タンクに貯蔵するか又は前記液化ガス貯蔵タンクから排出させるために設けられるリキッドライン及び前記リキッドラインとベントマストを連結する第2コネクトラインを用いて、前記ベントマストに供給する第1不活性ガスの排出ステップをさらに備える。
【0035】
好ましくは、前記第1置換用ガスの供給ステップは、前記クールダウン用貯蔵タンクから排出される蒸発ガスを前記第1置換用貯蔵タンクに供給する前に圧縮し、加熱する蒸発ガス処理ステップを備える。
【0036】
好ましくは、前記クールダウン用貯蔵タンクから排出される蒸発ガスの量は、第1置換用貯蔵タンクの置換工程で必要な蒸発ガス量と同一又はそれ以上であり、前記クールダウン用貯蔵タンクのクールダウンが完了すると、前記第1置換用貯蔵タンクの置換工程が完了する。
【0037】
好ましくは、前記クールダウン用貯蔵タンクのクールダウンが完了すると、前記クールダウン用貯蔵タンクは液化ガスを貯蔵する準備がされ、前記液化ガスを貯蔵する準備がされた供給用貯蔵タンクに、液化ガスを前記液化ガス貯蔵タンクに貯蔵するか又は前記液化ガス貯蔵タンクから排出させるために設けられるリキッドラインを用いて、前記液化ガスを供給する液化ガス供給ステップと、前記供給用貯蔵タンクまで液化ガスを供給することにより前記供給用貯蔵タンクで生成された蒸発ガスを、前記ガスラインを介して排出する蒸発ガス排出ステップと、前記蒸発ガス排出ステップで排出される蒸発ガスを、前記複数の液化ガス貯蔵タンクの置換工程を実施する準備がされた第2置換用貯蔵タンクに供給する第2置換用ガス供給ステップとをさらに備える。
【0038】
好ましくは、前記第2置換用貯蔵タンクには不活性ガスが満たされていて、前記第2置換用貯蔵タンクまで前記蒸発ガスを供給することにより前記第2置換用貯蔵タンクから排出される不活性ガスを、前記リキッドライン及び前記リキッドラインとベントマストを連結する第2コネクトラインを用いて、前記ベントマストに供給する第2不活性ガスの排出ステップをさらに備える。
【0039】
好ましくは、前記リキッドラインと前記供給用貯蔵タンクは第1リキッドラインによって連結され、前記リキッドラインと前記第2置換用貯蔵タンクは第3リキッドラインによって連結され、前記リキッドラインから前記第1リキッドラインが分岐する地点と前記第3リキッドラインが分岐する地点との間には隔離バルブが設けられ、前記第2不活性ガスの排出ステップでは前記隔離バルブを閉鎖する。
【0040】
好ましくは、第2置換用ガス供給ステップは、前記供給用貯蔵タンクから排出される蒸発ガスを前記第2置換用貯蔵タンクまで供給する前に圧縮し、加熱する第2蒸発ガス処理ステップを備える。
【0041】
上述した目的を達成するため、本発明のさらに他の一実施形態は、液化ガス供給船舶から複数の液化ガス貯蔵タンクを備えた液化ガス運搬船まで試運転用の液化ガスを供給する船舶における試運転用液化ガスの供給システムにおいて、前記液化ガス供給船舶から前記液化ガスを前記液化ガス貯蔵タンクに噴射するために設けられ、前記複数の液化ガス貯蔵タンクの中でクールダウン工程を実施する準備がされたクールダウン用貯蔵タンクまでクールダウン用液化ガスが移送されるストリッピングラインと、前記液化ガスを前記液化ガス貯蔵タンクに貯蔵するか又は前記液化ガス貯蔵タンクから排出させるために設けられ、前記クールダウンが完了して液化ガスを貯蔵する準備がされた供給用貯蔵タンクまで試運転用液化ガスが移送されるリキッドラインと、前記液化ガス貯蔵タンクからガスを排出させるために設けられ、前記クールダウン用貯蔵タンク又は供給用貯蔵タンクに液化ガスを供給することにより前記クールダウン用貯蔵タンク又は供給用貯蔵タンクで生成される蒸発ガスが排出されるガスラインとを備え、前記ガスラインを介して前記クールダウン用貯蔵タンクと供給用貯蔵タンクから排出される蒸発ガスが前記複数の液化ガス貯蔵タンクの中で置換工程を実施する準備がされた置換用貯蔵タンクに移送される、船舶における試運転用液化ガスの供給システムを提供する。
【0042】
好ましくは、前記リキッドラインとベントマストを連結する第2コネクトラインをさらに備え、前記置換用貯蔵タンクには不活性ガスが満たされ、前記置換用貯蔵タンクに蒸発ガスを供給することにより前記置換用貯蔵タンクから排出される不活性ガスが前記リキッドラインと第2コネクトラインを介して前記ベントマストに移送される。
【0043】
好ましくは、前記リキッドラインと前記クールダウン用貯蔵タンク又は供給用貯蔵タンクを連結する供給用リキッド分岐ライン及び前記リキッドラインと前記置換用貯蔵タンクを連結する置換用リキッド分岐ラインと、前記リキッドラインから供給用リキッド分岐ラインが分岐する地点と前記置換用リキッド分岐ラインが分岐する地点との間に設置され、開閉の制御により前記クールダウン用貯蔵タンク又は供給用貯蔵タンクに移送される液化ガスが流動するリキッドラインの経路と前記置換用貯蔵タンクから排出される不活性ガスが流動するリキッドラインの経路を互い隔離させるための隔離バルブとをさらに備える。
【0044】
上述した目的を達成するため、本発明の一実施形態は、液化ガス供給船舶から複数の液化ガス貯蔵タンクを備えた船舶まで液化ガスを供給する船舶における液化ガスの供給システムにおいて、前記液化ガス供給船舶から前記複数の液化ガス貯蔵タンクの中でいずれか一つの液化ガス貯蔵タンクまで液化ガスを供給する液化ガスラインと、前記いずれか一つの液化ガス貯蔵タンクまで液化ガスを供給することにより生成される蒸発ガスを排出して前記一つ以上の他の液化ガス貯蔵タンクに供給するガス供給ラインとを備え、前記蒸発ガスが供給される液化ガス貯蔵タンクから排出される気体は前記液化ガスラインを利用して排出され、前記液化ガスラインを介して液化ガスが供給される液化ガス貯蔵タンクと、前記蒸発ガスが供給される液化ガス貯蔵タンクとの間の液化ガスラインに設けられ、前記液化ガスラインに沿って流動する液化ガスと蒸発ガスの流れが混合されないように遮断する隔離バルブとをさらに備える、船舶における液化ガスの供給システムを提供する。
【0045】
好ましくは、マニホールドと、前記マニホールドと液化ガスラインを連結するクロスオーバーラインとをさらに備え、前記隔離バルブは前記クロスオーバーラインと液化ガスラインが接続する地点に設けられる3方向バルブであり得る。
【0046】
好ましくは、前記ガス排出ラインに沿って排出される蒸発ガスを加熱する加熱器をさらに備え、前記加熱器で加熱された蒸発ガスは前記ガス供給ラインを介して一つ以上の他の液化ガス貯蔵タンクに供給される。
【0047】
好ましくは、前記蒸発ガスが供給される液化ガス貯蔵タンクから排出される気体は不活性ガスであり、前記液化ガスラインとベントマストを連結するコネクトラインをさらに備え、前記不活性ガスは液化ガス貯蔵タンクからベントマストに移送される。
【0048】
上述した目的を達成するため、本発明の他の一実施形態は、液化ガス供給船舶から複数の液化ガス貯蔵タンクを備えた船舶まで液化ガスを供給する船舶における液化ガスの供給方法において、液化ガス供給船舶から前記複数の液化ガス貯蔵タンクの中でいずれか一つの液化ガス貯蔵タンクまで液化ガスを供給する液化ガス供給ステップと、前記いずれか一つの液化ガス貯蔵タンクまで液化ガスを供給することにより生成される蒸発ガスを排出する蒸発ガス排出ステップと、前記いずれか一つの液化ガス貯蔵タンクから排出される蒸発ガスを前記複数の液化ガス貯蔵タンクの一つ以上の他の液化ガス貯蔵タンクまで供給する置換用ガス供給ステップと、前記蒸発ガスが供給されることにより前記蒸発ガスが供給される液化ガス貯蔵タンクで満たされていた不活性ガスを排出する不活性ガス排出ステップとを備え、前記不活性ガスは前記液化ガスを前記液化ガス貯蔵タンクに供給ラインを介して排出される、船舶における液化ガスの供給方法を提供する。
【0049】
好ましくは、前記不活性ガス排出ステップは、前記液化ガスを前記液化ガス貯蔵タンクまで供給するラインの中で液化ガスが前記液化ガス貯蔵タンクに流動する部分と、前記不活性ガスが流動する部分を互い隔離する隔離ステップを備える。
【0050】
好ましくは、前記蒸発ガス排出ステップで排出された蒸発ガスを加熱し、加熱された蒸発ガスは一つ以上の他の液化ガス貯蔵タンクに供給される。
【0051】
上述した目的を達成するため本発明のさらに他の一実施形態は、液化ガス供給船舶から複数の液化ガス貯蔵タンクを備えた液化ガス運搬船まで試運転用液化ガスを供給する船舶における試運転用液化ガスの供給システムにおいて、前記複数の液化ガス貯蔵タンクにはそれぞれ、液化ガス移送用のリキッド分岐ラインと、液化ガス噴射用のストリッピング分岐ライン及び蒸発ガス移送用のガス分岐ラインとが設けられ、前記各ガス分岐ラインを連結するガスラインと前記各リキッド分岐ラインを連結するリキッドラインとを備えるとともに、前記複数の液化ガス貯蔵タンクには不活性ガスで満たされ、置換工程を実施する対象である置換用貯蔵タンクと、前記置換工程が完了して液化ガスが供給される準備がされた貯蔵タンクとを備え、前記液化ガス供給船舶から前記液化ガスが供給される準備がされた貯蔵タンクに連結されたリキッド分岐ライン又はストリッピング分岐ラインを利用して液化ガスが供給されるとともに、前記液化ガスが供給される準備がされた貯蔵タンクから排出される蒸発ガスが前記ガスラインを介して前記置換用貯蔵タンクに移送され、前記置換用貯蔵タンクに満たされていた不活性ガスは、前記置換用貯蔵タンクに設けられたリキッド分岐ラインを介して排出されるようにその経路を制御する隔離バルブをさらに備える、船舶における試運転用液化ガスの供給システムを提供する。
【0052】
好ましくは、前記リキッドラインと前記液化ガス運搬船のマニホールドを連結するリキッドクロスオーバーラインをさらに備え、前記隔離バルブは、前記リキッドラインとリキッドクロスオーバーラインが連結される地点に設けられる3方向バルブであり得る。
【0053】
好ましくは、前記隔離バルブは、前記液化ガスが供給される準備がされた貯蔵タンクのリキッド分岐ラインが前記リキッドラインに連結される地点と、前記置換用貯蔵タンクのリキッド分岐ラインが前記リキッドラインに連結される地点との間に設けられる。
【0054】
好ましくは、前記ガスラインには、前記蒸発ガスを圧縮する圧縮機と、前記圧縮機によって圧縮された蒸発ガスを加熱する加熱器とが設けられ、前記液化ガスが供給される準備がされた貯蔵タンクから置換用貯蔵タンクに移送される蒸発ガスを圧縮し、加熱して供給する。
【0055】
好ましくは、前記液化ガスの供給を受ける準備がされた貯蔵タンクは、前記置換工程が完了したクールダウン工程の対象であるクールダウン用貯蔵タンクと、前記クールダウン工程が完了した試運転用液化ガス供給工程の対象である供給用貯蔵タンクとを備え、前記クールダウン用貯蔵タンクは前記ストリッピング分岐ラインを介して液化ガスを供給され、前記供給用貯蔵タンクは前記リキッド分岐ラインを介して液化ガスが供給される。
【0056】
好ましくは、前記置換用貯蔵タンクは、前記クールダウン用貯蔵タンクから蒸発ガスが供給される第1置換用貯蔵タンクと、前記供給用貯蔵タンクから蒸発ガスが供給される第2置換用貯蔵タンクとを備える。
【0057】
上述した目的を達成するため本発明の一実施形態は、液化ガス供給船舶から二つ以上の液化ガス燃料タンクを備えた液化ガス燃料船舶まで液化ガス燃料を供給する船舶における液化ガス燃料の供給システムにおいて、液化ガス燃料を貯蔵する第1燃料タンクと、液化ガス燃料を貯蔵する第2燃料タンクとを備え、前記液化ガス供給船舶から前記第1燃料タンクと連結されたリキッド分岐ライン又はストリッピング分岐ラインを利用して液化ガス燃料を供給するとともに、前記第1燃料タンクから排出される蒸発ガスをガスラインを介し前記第2燃料タンクの置換用ガスとして供給する、船舶における液化ガス燃料の供給システムを提供する。
【0058】
好ましくは、前記ガスラインには、前記蒸発ガスを圧縮する圧縮機と、前記圧縮機によって圧縮された蒸発ガスを加熱する加熱器とが設けられ、前記第1燃料タンクから第2燃料タンクに移送される蒸発ガスを圧縮し、加熱して供給する。
【0059】
好ましくは、前記各リキッド分岐ラインを連結するリキッドラインと、前記リキッドラインから前記第1燃料タンクのリキッド分岐ラインが分岐する地点と前記リキッドラインから前記第2燃料タンクのリキッド分岐ラインが分岐する地点との間に設けられる隔離バルブとをさらに備える。
【0060】
好ましくは、前記リキッド分岐ラインを利用して前記第1燃料タンクまで液化ガスを供給する時、前記第2燃料タンクから排出される気体は前記第2燃料タンクに連結されたリキッド分岐ラインを介して排出され、前記隔離バルブは閉鎖される。
【0061】
好ましくは、前記第2燃料タンクのリキッド分岐ラインと前記隔離バルブの後端を連結する第1コネクトラインをさらに備える。
【0062】
好ましくは、前記液化ガスが前記リキッド分岐ラインを介して第1燃料タンクに供給される時、前記第2燃料タンクから排出される気体は前記リキッドラインと第1コネクトラインを介してベントマストで排出される。
【発明の効果】
【0063】
本発明に係る船舶における液化ガスの供給システム及び方法、並びに液化ガス燃料の供給システムは、例えば、LNG運搬船又はLNG燃料船舶のLNG貯蔵タンク又はLNG燃料タンクにLNGを供給する際、LNG貯蔵タンク又はLNG燃料タンクで発生する蒸発ガスをLNGの供給源に回収することなく、LNG運搬船等自体の内部で処理することができる。
【0064】
特に、LNG運搬船又はLNG燃料船舶の試運転段階、又はLNG貯蔵タンク若しくはLNG燃料タンクが空になっている状態でLNGを供給する際、LNGのクールダウン工程及びLNGの供給工程時に発生する蒸発ガスをLNGバンカーリング船舶に回収することなく、LNG運搬船又はLNG燃料船舶自体で処理することができる。
【0065】
したがって、海上でLNGバンカーリング船舶を利用し、LNG運搬船又はLNG燃料船舶の試運転用のLNGを供給することができる。また、置換工程のためにLNGを強制的に気化させる必要がなくなる。さらに、LNGを供給する船舶で蒸発ガスの処理とLNGの供給を同時に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】本発明の一実施形態に係る船舶における液化ガスの供給システムを簡単に示す概念図である。
図2】本発明の一実施形態に係る船舶における液化ガスの供給システムにおいて、第4貯蔵タンクのクールダウン時の流体の流通状態を示す図面である。
図3】本発明の一実施形態に係る船舶における液化ガスの供給システムにおいて、第4貯蔵タンクのクールダウン時の流体の流通状態を示す図面である。
図4】本発明の一実施形態に係る船舶における液化ガスの供給システムにおいて、第4貯蔵タンクにLNGを供給する時の流体の流通状態を示す図面である。
図5】本発明の一実施形態に係る船舶における液化ガスの供給システムにおいて、第4貯蔵タンクにLNGを供給する時の流体の流通状態を示す図面である。
図6】本発明の他の実施形態に係る船舶における液化ガス燃料の供給システムを簡単に示した概念図である。
図7】本発明の他の実施形態に係る船舶における液化ガス燃料の供給システムにおいて、第1燃料タンクのクールダウン時の流体の流通状態を示す図面である。
図8】本発明の他の実施形態に係る船舶における液化ガス燃料の供給システムにおいて、第1燃料タンクのクールダウン時の流体の流通状態を示す図面である。
図9】本発明の他の実施形態に係る船舶における液化ガス燃料の供給システムにおいて、第1燃料タンクにLNGを供給する時の流体の流通状態を示す図面である。
図10】本発明の他の実施形態に係る船舶における液化ガス燃料の供給システムにおいて、第1燃料タンクにLNGを供給する時の流体の流通状態を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本発明の動作上の利点及び本発明の実施によって達成される目的を十分に理解するため、本発明の好ましい実施形態を示す図面の記載内容を参照する必要がある。
【0068】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態に係る構成及び作用を詳細に説明する。ここで、各図面に記載の構成要素に付す符号については、同一の構成要素には、他の図面においても可能な限り同一の符号で表記している。なお、後述するの実施形態は様々な他の形態に変更することができ、本発明の範囲は、後述する実施形態に限定されない。
【0069】
後述する実施形態において、液化ガスは、ガスを低温で液化して輸送することができるものなどであり、LNG(Liquefied Natural Gas)、LEG(Liquefied Ethane Gas)、LPG(Liquefied Petroleum Gas)、液化エチレンガス(Liquefied Ethylene Gas)、液化プロピレンガス(Liquefied Propylene Gas)などが例示される。また、液化ガスは、液化二酸化炭素、液化水素、液化アンモニアなどであってもよい。ただし、後述する実施形態では、代表的な液化ガスである液化天然ガス(LNG)の適用について説明する。
【0070】
また、後述する実施形態における船舶については、液化天然ガスを貨物として輸送する液化天然ガス運搬船(LNG Carrier)を例にして説明するが、本発明は、液化天然ガスを貯蔵する貯蔵タンクを備えたLNG FSRU(Floating Storage Regasification Unit)、LNG FPSO(Floating Production Storage Offloading)、LNG RV(Regasification Vessel)などの液化ガス貯蔵タンクを備える船舶、液化ガスが燃料としてエンジンに供給されるLNG燃料船舶などの船舶に適用することができる。
【0071】
さらに、後述する実施形態における貯蔵タンクは、液化ガスを貯蔵することができる液化ガスタンクであれば、名称は問わず、すべての貨物タンク、燃料タンクなどを含む。
【0072】
以下、図1ないし図10を参照して、本発明の一実施形態に係る船舶における液化ガスの供給システム及びその方法と、船舶における液化ガス燃料の供給システムとを説明する。
【0073】
本実施形態に係る船舶は、複数のLNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4など)と、複数のLNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4など)にLNGを供給するために、LNGバンカーリング船舶などのLNGを供給する船舶又はターミナルに連結されるマニホールド(L)と、複数のLNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4など)とマニホールド(L)を連結する流体移送配管とを備える。
【0074】
流体移送配管は、LNGを供給する船舶から複数のLNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4など)の内、いずれか一つのLNG貯蔵タンクにLNGを供給する液化ガスラインと、いずれか一つのLNG貯蔵タンクにLNGを供給する際に発生する蒸発ガスを排出するガス排出ラインと、発生した蒸発ガスを一つ以上の他のLNG貯蔵タンクに供給するガス供給ラインとを含む。
【0075】
後述する本実施形態における液化ガスラインは、リキッドライン(LL)及びリキッド分岐ライン(LL1、LL2、LL3、LL4など)、並びにストリッピングライン(SL)及びストリッピング分岐ライン(SL1、SL2、SL3、SL4など)から構成される。
【0076】
また、ガス排出ラインは、ガスライン(GL)及びガス分岐ライン(GL1、GL2、GL3、GL4など)、並びに第1コネクトライン(CL1)及び第2コネクトライン(CL2)から構成され、リキッドライン(LL)及びリキッド分岐ライン(LL1、LL2、LL3、LL4など)を通じてガスが流通する際のガス排出ラインは、リキッドライン(LL)及びリキッド分岐ライン(LL1、LL2、LL3、LL4など)、並びに第1コネクトライン(CL1)及び第2コネクトライン(CL2)から構成される。
【0077】
さらに、ガス供給ラインは、ガスライン(GL)及びガス分岐ライン(GL1、GL2、GL3、GL4など)から構成される。
【0078】
本実施形態の船舶における液化ガスの供給システム及びその方法について、LNGバンカーリング船舶と連結されてLNGバンカーリング船舶からマニホールド(L)を介してLNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4など)にLNGが供給されることを例に挙げて説明する。
【0079】
また、本実施形態では、船舶の試運転を目的に、LNGバンカーリング船舶からLNG貯蔵タンクに初期クールダウン用のLNGと試運転用のLNGを供給することを例に挙げて説明する。しかし、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、LNG燃料船舶のLNG燃料タンクにLNGを供給する場合やLNG貯蔵タンクにLNGを供給する場合、二つ以上のLNG燃料タンクが設けられたLNG燃料船舶においてLNG燃料タンクにLNGを供給する場合などでは、様々な態様が可能である。
【0080】
さらに、図示していないが、本実施形態における船舶は、LNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4など)に貯蔵されたLNGを燃料として使用し、推進エネルギーを発生するメインエンジンと、LNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4など)に貯蔵されたLNGを燃料として使用し、電気エネルギーを発生する発電エンジンと、LNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4など)に貯蔵されたLNGが自然気化して生成する蒸発ガスをメインエンジンと、発電エンジンの燃料として供給する燃料供給部と、蒸発ガスを再液化してLNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4など)に回収する再液化部と、蒸発ガス又はエンジンからトリップした蒸発ガスを処理する蒸発ガス処理部(100、200など)とを備える。
【0081】
さらにまた、LNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4など)は複数個を設置することができ、本実施形態では、図1ないし図5に示すように、4個のLNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4)が設置されている。なお、LNG貯蔵タンクの個数は4個に限定されない。そして、本実施形態では、船首部から船尾部まで順に設置されている各LNG貯蔵タンクを第1貯蔵タンク(T1)、第2貯蔵タンク(T2)、第3貯蔵タンク(T3)及び第4貯蔵タンク(T4)と命名する。
【0082】
マニホールド(L)には、液体状態の流体が流通するリキッド(liquid)用と、気体状態の流体が流通するベーパー(vapor)用とを別々に設けることができるが、図1ないし図5には、本実施形態を説明するために必要なリキッド用のマニホールド(L)のみを示した。
【0083】
流体移送配管は、マニホールド(L)とLNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4)との間で液体状態のLNGを移送するリキッドライン(LL)及びストリッピングライン(SL)、並びに気体状態の天然ガスを移送するガスライン(GL)を含む。
【0084】
リキッドライン(LL)及びストリッピングライン(SL)は、リキッドクロスオーバーライン(LC)を介してマニホールド(L)に連結される。
【0085】
LNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4)からマニホールド(L)を介してLNGを積み下ろす(unloading)時と、マニホールド(L)を介してLNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4)にLNGを供給する(loading)時には、LNGがリキッドライン(LL)を通じて移送される。
【0086】
また、マニホールド(L)を介してLNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4)にLNGを噴出させる目的、及びLNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4)内のLNGをストリッピングする目的でLNGを移送する時には、ストリッピングライン(SL)を通じてLNGが流通する。
【0087】
本実施形態における船舶は、リキッドライン(LL)から各LNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4)へと分岐するラインを備えている。このラインが、リキッドライン(LL)から第1貯蔵タンク(T1)へと分岐する第1リキッドライン(LL1)、リキッドライン(LL)から第2貯蔵タンク(T2)へと分岐する第2リキッドライン(LL2)、リキッドライン(LL)から第3貯蔵タンク(T3)へと分岐する第3リキッドライン(LL3)、及びリキッドライン(LL)から第4貯蔵タンク(T4)へと分岐する第4リキッドライン(LL4)である。
【0088】
第1ないし第4リキッドライン(LL1、LL2、LL3、LL4)は、それぞれ、LNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4)の内部で底面に向かってのびている。
【0089】
また、本実施形態における船舶は、ストリッピングライン(SL)から各LNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4)へと分岐するラインを備えている。このラインは、ストリッピングライン(SL)から第1貯蔵タンク(T1)へと分岐する第1ストリッピングライン(SL1)、ストリッピングライン(SL)から第2貯蔵タンク(T2)へと分岐する第2ストリッピングライン(SL2)、ストリッピングライン(SL)から第3貯蔵タンク(T3)へと分岐する第3ストリッピングライン(SL3)、及びストリッピングライン(SL)から第4貯蔵タンク(T4)へと分岐する第4ストリッピングライン(SL4)である。
【0090】
第1ないし第4ストリッピングライン(SL1、SL2、SL3、SL4)は、それぞれ、LNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4)のリキッドドーム又はガスドームに連結され、具体的には、LNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4)の上部に設置されている噴射ノズルに連結されている。したがって、第1ないし第4ストリッピングライン(SL1、SL2、SL3、SL4)を通じてLNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4)に移送されるLNGは、LNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4)にその上部から下部に向かって噴出して供給される。
【0091】
また、第1ないし第4ストリッピングライン(SL1、SL2、SL3、SL4)については、それぞれ、LNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4)の内部の下部までのばすこともできる。
【0092】
本実施形態におけるガスライン(GL)は、蒸発ガス処理部(100、200など)を介してLNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4)を連結している。図1ないし図5には、LNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4)から排出された蒸発ガスが流通するガスライン(GL)のみ示しているが、流体移送管は、ガスライン(GL)に加え、気体状態の天然ガスが、LNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4)とマニホールド(L)及び蒸発ガス処理部(100、200など)との間を流通するベーパーラインをさらに備えることができる。
【0093】
ガスライン(GL)は、各LNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4)のガスドームから蒸発ガス処理部(100、200など)に連結される分岐ラインを備えている。この分岐ラインは、ガスライン(GL)から第1貯蔵タンク(T1)へと分岐する第1ガスライン(GL1)、ガスライン(GL)から第2貯蔵タンク(T2)へと分岐する第2ガスライン(GL2)、ガスライン(GL)から第3貯蔵タンク(T3)へと分岐する第3ガスライン(GL3)、及びガスライン(GL)から第4貯蔵タンク(T4)へと分岐する第4ガスライン(GL4)である。
【0094】
また、図示していないが、蒸発ガス処理部(100、200など)は、LNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4)で発生した蒸発ガスを圧縮し、エンジンの燃料として供給する蒸発ガス燃料供給部と、蒸発ガスを再液化してLNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4)に回収する再液化部と、蒸発ガスを燃焼処理するGCU(Gas Combustion Unit)を備えることができる。
【0095】
なお、蒸発ガス処理部(100、200など)の内、符号100は、LNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4)で発生した蒸発ガスを加圧する圧縮機であり、符号200は、圧縮機(100)によって圧縮された蒸発ガスを加熱する加熱器である。
【0096】
さらに、図示していないが、第1ないし第4ガス分岐ライン(GL1、GL2、GL3、GL4)は、それぞれ、蒸発ガスを大気中に放出させるベントマスト(VM)に連結することができる。こうすることによって、必要に応じて、ベントマスト(VM)を介して蒸発ガスをベント(vent)処理することもできる。
【0097】
本実施形態では、第2コネクトライン(CL2)は、リキッドライン(LL)とベントマスト(VM)を連結している。
【0098】
なお、第2コネクトライン(CL2)は、リキッドライン(LL)とベントマスト(VM)を連結するばかりでなく、リキッドライン(LL)と第1貯蔵タンク(T1)のガスドームを連結することもできる。
【0099】
上述した構成は、LNG運搬船に適用される基本構成であり、本実施形態は、この基本構成を踏襲して、LNGバンカーリング船舶から本実施形態における船舶にLNGを供給する際に発生する蒸発ガスをLNGバンカーリング船舶に返送することなく、船舶内で処理するシステム及び方法を提案する。
【0100】
後述する実施形態では、第4貯蔵タンク(T4)にLNGを供給する場合について説明するが、本発明は、上記の場合に限定されない。例えば、他のクールダウン工程又は他のLNG貯蔵タンク(T1、T2、T3)にLNGを供給する場合にも同様に適用可能である。
【0101】
本実施形態によれば、複数のLNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4など)のクールダウン工程と置換工程、また、供給工程と置換工程を同時に実施することができる。
【0102】
例えば、置換工程を終えたいずれか一つの貯蔵タンクをクールダウンし、貯蔵タンクをクールダウンしながら発生する蒸発ガスを加熱して、他の一つの貯蔵タンクの置換用ガスとして供給することができる。
【0103】
また、クールダウン工程を終えた貯蔵タンクにLNGを供給し、LNGを供給しながら発生する蒸発ガスを加熱して、他の一つの貯蔵タンクの置換用ガスとして供給することもできる。
【0104】
まず、図2及び図3を参照して、LNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4など)の初期クールダウン方法を説明する。本実施形態では、クールダウン対象の貯蔵タンクを第4貯蔵タンク(T4)にしている。
【0105】
本実施形態における船舶は、マニホールド(L)を介してLNGバンカーリング船舶に連結される。LNGバンカーリング船舶から第4貯蔵タンク(T4)をクールダウンするLNGが、リキッドクロスオーバーライン(LC)、ストリッピングライン(SL)及び第4ストリッピングライン(SL4)を流通し、第4貯蔵タンク(T4)に噴出して供給される。
【0106】
第4貯蔵タンク(T4)にクールダウン用のLNGが供給されると、第4貯蔵タンク(T4)内では多量の蒸発ガスが発生する。この時、第4貯蔵タンク(T4)で発生した蒸発ガスは、第4ガスライン(GL4)、ガスライン(GL)及び第3ガスライン(GL3)を通じて置換工程の対象である第3貯蔵タンク(T3)に置換用ガスとして供給される。こうして、第4貯蔵タンク(T4)のクールダウン工程の実施と同時に、第3貯蔵タンク(T3)の置換工程が実施される。
【0107】
第4貯蔵タンク(T4)から排出された蒸発ガスは、圧縮機(100)で圧縮され、加熱器(200)で加熱された後、第3貯蔵タンク(T3)に置換用ガスとして供給される。
【0108】
一例として、173,400m級のLNG運搬船では、約6~8MT/hrのガスを利用する場合、置換工程には、一つの貯蔵タンクあたり約6時間がかかる。本実施形態では、クールダウン工程を実施するクールダウン用のLNG貯蔵タンクから排出される蒸発ガスが、船舶に設置される基本的な構成要素の一つである加熱器(200)によって加熱され、置換工程を実施する置換用のLNG貯蔵タンクに置換用ガスとして供給される。
【0109】
すなわち、本実施形態では、第4貯蔵タンク(T4)のクールダウン工程を実施するとともに、第4貯蔵タンク(T4)に隣接して配置された第3貯蔵タンク(T3)の置換工程を実施する。
【0110】
上述したように、空のタンクにはタンクの建造と安全上の問題のため不活性ガスが満たされているが、第3貯蔵タンク(T3)に置換用ガスを供給すると、第3貯蔵タンク(T3)の内部に満たされていた不活性ガスが押し出され、第3リキッドライン(LL3)を通じて排出される。
【0111】
すなわち、第4貯蔵タンク(T4)のクールダウン工程と同時に、第3貯蔵タンク(T3)の置換工程を実施する時、第3貯蔵タンク(T3)から不活性ガスが第3リキッドライン(LL3)を通じて排出される。
【0112】
第3リキッドライン(LL3)を通じて排出される不活性ガスは、リキッドライン(LL)及び第2コネクトライン(CL2)を通じてベントマスト(VM)に移送される。
【0113】
すなわち、スリッピングライン(SL)を通じて第4貯蔵タンク(T4)にクールダウン用のLNGを供給するのと同時に、リキッドライン(LL)を通じて不活性ガスがベントマスト(VM)へ移送される。
【0114】
一方、図2及び図3に示すように、上述した基本構成に後述する追加構成を付加し、LNGバンカーリング船舶から本実施形態における船舶へLNGを供給する時に発生する蒸発ガスをLNGバンカーリング船舶に返送することなく、船舶内で処理することもできる。
【0115】
すなわち、本実施形態は、追加構成として、リキッドライン(LL)を遮断する隔離バルブ(IV)と、リキッドライン(LL)から分岐して各LNG貯蔵タンク(T1、T2、T3、T4)に連結される各リキッド分岐ライン(LL1、LL2、LL3、LL4)に、隔離バルブ(IV)を迂回して連結される第1コネクトライン(CL1)とをさらに備え、隔離バルブ(IV)が、リキッドライン(LL)において、リキッドクロスオーバーライン(LC)の連結箇所と、リキッドクロスオーバーライン(LC)の連結箇所よりも船首部側に最初に分岐して第2貯蔵タンク(T2)に連結される第2リキッドライン(LL2)の分岐箇所との間に設けられている。
【0116】
この場合、第3リキッドライン(LL3)を通じて排出される不活性ガスは、第1コネクトライン(CL1)、リキッドライン(LL)及び第2コネクトライン(CL2)を通じてベントマスト(VM)へ移送される。
【0117】
一方、第1コネクトライン(CL1)及び第2コネクトライン(CL2)をリキッドライン(LL)に連結せず、第3リキッドライン(LL3)とベントマスト(VM)を直接連結することもできる。この場合の第1及び第2コネクトライン(CL1、CL2)の長さの合計は、173km級の船舶を基準にし、200A規格の配管を用いると、最大で50mである。
【0118】
一例として、第1コネクトライン(CL1)は、リキッドライン(LL)に設けられた隔離バルブ(IV)よりも船尾部側に位置する第3リキッドライン(L3)の部分に連結される。
【0119】
また、隔離バルブ(IV)は、リキッドクロスオーバーライン(LC)がリキッドライン(LL)に連結する連結箇所よりも船首部側に最初に分岐して第2貯蔵タンク(T2)に連結される第2リキッドライン(LL2)の分岐箇所までのリキッドライン(LL)の部分に設置される。
【0120】
また、隔離バルブ(IV)は、第1コネクトライン(CL1)がリキッドライン(LL)に連結される連結箇所と、リキッドクロスオーバーライン(LC)がリキッドライン(LL)に連結される連結箇所の間に設置される。
【0121】
第1コネクトライン(CL1)を備える場合、ストリッピングライン(SL)を通じて第4貯蔵タンク(T4)にクールダウン用のLNGを供給するのと同時に、第1コネクトライン(CL1)及びリキッドライン(LL)を通じて不活性ガスがベントマスト(VM)へ移送される。この時、隔離バルブ(IV)は閉鎖状態にし、隔離バルブ(IV)が位置する側のリキッドライン(LL)の部分を遮断する。
【0122】
一方、隔離バルブ(IV)は、図3に示すように、リキッドクロスオーバーライン(LC)とリキッドライン(LL)の連結箇所に設けることもでき、この場合の隔離バルブ(IV)には、3方向バルブを採用することができる。
【0123】
図3に示すように、隔離バルブ(IV)が3方向バルブである場合、上述したように、第4貯蔵タンク(T4)のクールダウン工程を実施するとともに、第3貯蔵タンク(T3)の置換工程を実施する時、隔離バルブ(IV)では、第3貯蔵タンク(T3)とベントマスト(VM)が連通する側が開放され、リキッドクロスオーバーライン(LC)と連通する側は閉鎖される。
【0124】
このように、第4貯蔵タンク(T4)のクールダウン工程の実施と同時に、第3貯蔵タンク(T3)の置換工程を実施する時、隔離バルブ(IV)を制御し、リキッドクロスオーバーライン(LC)とストリッピングライン(SL)を連通させる一方、リキッドクロスオーバーライン(LC)とリキッドライン(LL)を非連通にする。
【0125】
次に、図4及び図5を参照して、本実施形態における船舶にLNGを供給する方法を説明する。本実施形態では、第4貯蔵タンク(T4)にLNGを供給する方法を代表例に挙げて説明する。
【0126】
例えば、クールダウン工程と置換工程を終えてLNGが供給される準備が整ったいずれか一つの貯蔵タンクにLNGを供給し、LNGを供給しながらLNG貯蔵タンクから発生する蒸発ガスを加熱し、他の一つのLNG貯蔵タンクに置換用ガスとして供給することもできる。
【0127】
第4貯蔵タンク(T4)のクールダウン工程を実施しながら発生する蒸発ガスの量は、約120ton/hrであり、この量は、第3貯蔵タンク(T3)の置換工程を完了するのに十分な量である。また、第3貯蔵タンク(T3)の置換工程を終えた後、続いてさらに他の貯蔵タンク、例えば、第2貯蔵タンク(T2)の置換工程の一部を実施するのにも十分な量である。
【0128】
そこで、クールダウン工程を完了した後の第4貯蔵タンク(T4)にLNGを供給する時、第4貯蔵タンク(T4)で発生した蒸発ガスで第2貯蔵タンク(T2)の置換工程を実施することを例に挙げて説明する。
【0129】
すなわち、前述の通り、第4貯蔵タンク(T4)のクールダウン工程を実施する時、第3貯蔵タンク(T3)の置換工程が完了する。その後、クールダウン工程が完了した第4貯蔵タンク(T4)で発生した蒸発ガスを、第2貯蔵タンク(T2)及び/又は第1貯蔵タンク(T1)、すなわち、さらに他の貯蔵タンクの置換工程を実施するために使用することができる。
【0130】
この場合、隔離バルブ(IV)は、クールダウン工程が完了した第4貯蔵タンク(T4)にLNGを供給する時、第4貯蔵タンク(T4)から排出される蒸発ガスを第2貯蔵タンク(T2)又は第1貯蔵タンク(T1)の置換用ガスとして供給するために、リキッドライン(LL)において、LNGが流通する部分と置換用ガスが流通する部分とを互いに遮断する。
【0131】
本実施形態における船舶は、マニホールド(L)を介してLNGバンカーリング船舶に連結される。LNGバンカーリング船舶から第4貯蔵タンク(T4)に供給する試運転用のLNGがリキッドクロスオーバーライン(LC)、リキッドライン(LL)及び第4リキッドライン(LL4)を通じて第4貯蔵タンク(T4)に供給される。
【0132】
第4貯蔵タンク(T4)にLNGが供給されると、第4貯蔵タンク(T4)内では多量の蒸発ガスが発生する。この時、第4貯蔵タンク(T4)で発生した蒸発ガスは、第4ガスライン(GL4)、ガスライン(GL)及び第2ガスライン(GL2)を通じて第2貯蔵タンク(T2)に置換用ガスとして供給され、第4貯蔵タンク(T4)にLNGを供給する工程の実施と同時に、第2貯蔵タンク(T2)の置換工程を実施することができる。
【0133】
第4貯蔵タンク(T4)から排出された蒸発ガスは、圧縮機(100)で圧縮され、加熱器(200)で加熱された後、第2貯蔵タンク(T2)に置換用ガスとして供給することができる。
【0134】
すなわち、本発明の一実施形態によれば、いずれか一つの供給用のLNG貯蔵タンク(T4)にLNGを供給すると、供給用のLNG貯蔵タンク(T4)のクールダウン工程の実施と同時に、置換工程が既に完了したLNG貯蔵タンク(T3)以外のさらに他の置換用のLNG貯蔵タンク(T2、T1)の置換工程を実施することができる。
【0135】
上述したように、空のLNG貯蔵タンクにはLNG貯蔵タンクの建造と安全上の問題で不活性ガスが満たされているが、第2貯蔵タンク(T2)に置換用ガスを供給すると、内部に満たされていた不活性ガスが押し出され、第2リキッドライン(LL2)を通じて排出される。
【0136】
本実施形態によれば、第4貯蔵タンク(T4)にLNGを供給するのと同時に、第2貯蔵タンク(T2)の置換工程を実施する時、第2貯蔵タンク(T2)から不活性ガスが第2リキッドライン(LL2)を通じて排出される。
【0137】
第2リキッドライン(LL2)を通じて排出される不活性ガスは、リキッドライン(LL)及び第2コネクトライン(CL2)を通じてベントマスト(VM)へ移送される。
【0138】
すなわち、リキッドライン(LL)を利用して、船尾部側に位置する貯蔵タンクである第4貯蔵タンク(T4)にLNGを供給するのと同時に、隔離バルブ(IV)を挟んで船首部側に位置するリキッドライン(LL)の部分を通じて、不活性ガスが、ベントマスト(VM)へ移送される。
【0139】
この時、隔離バルブ(IV)を閉鎖状態にし、隔離バルブ(IV)を挟んで船尾部側に位置するリキッドライン(LL)の部分と、船首部側に位置するリキッドライン(LL)の部分とを互いに遮断する。
【0140】
なお、隔離バルブ(IV)は、図5に示すように、リキッドクロスオーバーライン(LC)がリキッドライン(LL)に連結される連結箇所に設置可能である。この場合の隔離バルブ(IV)には、例えば3方向バルブが採用可能である。
【0141】
図5に示すように、隔離バルブ(IV)が3方向バルブである場合、上述の通り、第4貯蔵タンク(T4)にLNGを供給するのと同時に、第2貯蔵タンク(T2)の置換工程を実施する時、隔離バルブ(IV)は、リキッドクロスオーバーライン(LC)とリキッドライン(LL)において隔離バルブ(IV)を挟んで船尾部側に位置する部分を連通させ、リキッドクロスオーバーライン(LC)とストリッピングライン(SL)を非連通にするように制御される。
【0142】
隔離バルブ(IV)の上記制御によって、リキッドクロスオーバーライン(LC)とリキッドライン(LL)は、第4貯蔵タンク(T4)側にのみ連通し、第2貯蔵タンク(T2)側には連通しない。
【0143】
すなわち、第4貯蔵タンク(T4)にLNGを供給するのと同時に、第2貯蔵タンク(T2)の置換工程を実施する時、第4貯蔵タンク(T4)へのLNG供給と第2貯蔵タンク(T2)からの不活性ガスの排出は、全てリキッドライン(LL)を通じて行われるが、隔離バルブ(IV)は、隔離バルブ(IV)を挟んで、LNGがマニホールド(L)から第4貯蔵タンク(T4)に流通する経路と、不活性ガスが第2貯蔵タンク(T2)からベントマスト(VM)に流通する経路とを互いに隔離させる。
【0144】
次に、図6ないし図10を参照し、本発明の他の実施形態に係る船舶における液化ガス燃料供給システムを説明する。
【0145】
本発明の他の実施形態における船舶は、二つ以上のLNG燃料タンク(T1、T2など)と、LNG燃料タンク(T1、T2など)にLNGを供給するために、LNGバンカーリング船舶などのLNGを供給する船舶又はターミナルに連結されるマニホールド(L)と、LNG燃料タンク(T1、T2など)とマニホールド(L)を連結する流体移送配管とを備える。
【0146】
流体移送配管は、LNGを供給する船舶などから二つ以上のLNG燃料タンク(T1、T2など)の内、いずれか一つのLNG燃料タンク(T1、T2など)にLNGを供給する液化ガスラインと、いずれか一つのLNG燃料タンク(T1、T2など)にLNGを供給する際に発生する蒸発ガスを排出するガス排出ラインと、蒸発ガスを一つ以上の他のLNG貯蔵タンク(T1、T2など)に供給するガス供給ラインとを備える。
【0147】
後述する本実施形態における液化ガスラインは、リキッドライン(LL)及びリキッド分岐ライン(LL1、LL2など)、並びにストリッピングライン(SL)及びストリッピング分岐ライン(SL1、SL2など)から構成される。
【0148】
ガス排出ラインは、ガスライン(GL)及びガス分岐ライン(GL1、GL2など)、並びにコネクトライン(CL)から構成され、リキッドライン(LL)及びリキッド分岐ライン(LL1、LL2など)を通じてガスが流通する際のガス排出ラインは、リキッドライン(LL)及びリキッド分岐ライン(LL1、LL2など)、並びにコネクトライン(CL)から構成される。
【0149】
ガス供給ラインは、ガスライン(GL)及びガス分岐ライン(GL1、GL2など)から構成される。
【0150】
本実施形態における船舶は、二つ以上の複数のLNG燃料タンク(T1、T2など)を備えることができ、また、船舶がLNG運搬船である場合には、一つ以上のLNG貨物タンクなどを備えることができる。
【0151】
本実施形態における船舶は、LNGバンカーリング船舶に連結され、LNGが、LNGバンカーリング船舶からマニホールド(L)を介してLNG燃料タンク(T1、T2など)に供給される場合、すなわち、LNGバンカーリング時に蒸発ガスを処理する場合を例に挙げて説明する。
【0152】
また、本実施形態については、船舶のバンカーリングを目的としてLNGバンカーリング船舶からLNG燃料タンクに初期クールダウン用のLNG又は試運転用のLNGを供給する時、又はLNG燃料を供給(充填)する時を例に挙げて説明する。しかし、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、二つ以上のLNG燃料タンクが設けられたLNG燃料船舶において、LNG燃料タンクにLNGを供給する場合などに適用が可能である。
【0153】
また、図示していないが、本実施形態における船舶は、LNG燃料タンク(T1、T2など)に貯蔵されたLNGを燃料として使用し、推進エネルギーを発生するメインエンジンと、LNG燃料タンク(T1、T2など)に貯蔵されたLNGを燃料として使用し、電気エネルギーを発生する発電エンジンと、LNG燃料タンク(T1、T2など)に貯蔵されたLNGが自然気化して発生した蒸発ガスをメインエンジンと発電エンジンの燃料として供給する燃料供給部と、蒸発ガスを再液化してLNG燃料タンク(T1、T2など)に回収する再液化部と、蒸発ガス又はエンジンからトリップした蒸発ガスを処理するガス処理部(100、200など)とを備えることができる。
【0154】
また、本実施形態は、図6ないし図10で示すように、二つのLNG燃料タンク(T1、T2)が設けられる場合を例に挙げている。しかし、本発明は、この場合に限定されない。
【0155】
本実施形態では、船尾部に設置されているLNG燃料タンク、船首部に設置されているLNG燃料タンクを、それぞれ、第1燃料タンク(T1)、第2燃料タンク(T2)と命名する。
【0156】
マニホールド(L)は、液体状態の流体が流通するリキッド用と、気体状態の流体が流通するベーパー用が別々に設けられるが、図6ないし図10には、本実施形態を説明するために必要なリキッド用のマニホールド(L)のみを示している。
【0157】
流体移送配管は、マニホールド(L)とLNG燃料タンク(T1、T2)の間で液体状態のLNGを移送するリキッドライン(LL)及びストリッピングライン(SL)、また、気体状態の天然ガスを移送するガスライン(GL)を含む。
【0158】
リキッドライン(LL)とストリッピングライン(SL)は、リキッドクロスオーバーライン(LC)を介してマニホールド(L)に連結される。
【0159】
LNG燃料タンク(T1、T2)からマニホールド(L)を介してLNGを積み下ろす(unloading)時と、マニホールド(L)を介してLNG燃料タンク(T1、T2)にLNGを供給(loading)する時は、LNGがリキッドライン(LL)を介して移送される。
【0160】
また、マニホールド(L)を介してLNG燃料タンク(T1、T2)にLNGを供給する目的とLNG燃料タンク(T1、T2)内のLNGをストリッピングする目的でLNGを移送する時には、LNGはストリッピングライン(SL)を流通する。
【0161】
本実施形態における船舶は、リキッドライン(LL)から各LNG燃料タンク(T1、T2)に向かって分岐するリキッド分岐ライン(LL1,LL2)をさらに備えている。すなわち、リキッドライン(LL)から第1燃料タンク(T1)へと分岐する第1リキッドライン(LL1)と、リキッドライン(LL)から第2燃料タンク(T2)へと分岐する第2リキッドライン(LL2)を備えている。
【0162】
第1及び第2リキッドライン(LL1、LL2)は、それぞれ、LNG燃料タンク(T1、T2)の内部で底面に向かってのばすことができる。
【0163】
また、本実施形態における船舶は、ストリッピングライン(SL)から各LNG燃料タンク(T1、T2)へと分岐するストリッピング分岐ライン(SL1、SL2)をさらに備えている。すなわち、ストリッピングライン(SL)から第1燃料タンク(T1)へと分岐する第1ストリッピングライン(SL1)と、ストリッピングライン(SL)から第2燃料タンク(T2)へと分岐する第2ストリッピングライン(SL2)とを備えている。
【0164】
第1及び第2ストリッピングライン(SL1、SL2)は、それぞれ、LNG燃料タンク(T1、T2)のリキッドドーム又はガスドームに連結され、LNG燃料タンク(T1、T2)の上部に設置されている噴射ノズルに連結されている。
【0165】
すなわち、第1及び第2ストリッピングライン(SL1、SL2)を通じて第1及び第2LNG燃料タンク(T1、T2)へと移送されるLNGは、第1及び第2LNG燃料タンク(T1、T2)にそれぞれの上部から下部に向かって噴出して供給される。
【0166】
また、第1及び第2ストリッピングライン(SL1、SL2)は、それぞれ、第1及び第2LNG燃料タンク(T1、T2)の内部の下部までのばすことができる。
【0167】
本実施形態におけるガスライン(GL)には、蒸発ガス処理部(100、200など)が設けられている。なお、図6ないし図10には、第1及び第2LNG燃料タンク(T1、T2)から排出された蒸発ガスが流通するガスライン(GL)のみ示されているが、気体状態の天然ガスを第1及び第2LNG燃料タンク(T1、T2)とマニホールド(L)及び蒸発ガス処理部(100、200など)との間で流通させるベーパーラインをさらに備えることもできる。
【0168】
ガスライン(GL)は、第1及び第2LNG燃料タンク(T1、T2)のそれぞれのガスドームから蒸発ガス処理部(100、200など)に連結されるガス分岐ライン(GL1、GL2)を含む。より具体的には、ガスライン(GL)から第1燃料タンク(T1)へと分岐する第1ガスライン(GL1)と、ガスライン(GL)から第2燃料タンク(T2)へと分岐する第2ガスライン(GL2)とを含む。
【0169】
また、図示していないが、蒸発ガス処理部(100、200など)は、第1及び第2LNG燃料タンク(T1、T2)で発生する蒸発ガスを圧縮し、エンジンの燃料として供給する蒸発ガス燃料供給部と、蒸発ガスを再液化してLNGを第1及び第2LNG燃料タンク(T1、T2)に回収する再液化部と、蒸発ガスを燃焼処理するGCU(Gas Combustion Unit)を備えることができる。
【0170】
蒸発ガス処理部(100、200など)は、第1及び第2LNG燃料タンク(T1、T2)で発生する蒸発ガスを加圧する圧縮機(100)及び圧縮機(100)によって圧縮された蒸発ガスを加熱する加熱器(200)をさらに備えることができる。
【0171】
また、図示していないが、第1及び第2ガスライン(GL1、GL2)は、それぞれ、蒸発ガスを大気中に放出するベントマスト(VM)に連結することができる。この場合、必要に応じて、ベントマスト(VM)を介して蒸発ガスをベント処理することができる。
【0172】
本実施形態の船舶における液化ガス燃料の供給システムは、リキッドライン(LL)とベントマスト(VM)を連結するコネクトライン(CL)をさらに備えている。
【0173】
コネクトライン(CL)は、リキッドライン(LL)とベントマスト(VM)を連結している。なお、コネクトライン(CL)は、リキッドライン(LL)と第1燃料タンク(T1)のガスドームを連結することもできる。
【0174】
上述した構成は基本構成であり、本実施形態は、この基本構成を踏襲して、LNGバンカーリング船舶から本実施形態における船舶にLNGを供給する時に発生する蒸発ガスをLNGバンカーリング船舶に返送することなく、船舶内で処理することができるシステムである。
【0175】
本実施形態については、第1燃料タンク(T1)にLNGを供給することを例に挙げて説明するが、本発明は、上記実施形態に限定されることはなく、他のクールダウン工程又は第1及び第2LNG燃料タンク(T1、T2)にLNGを供給する時にも、同様に適用することができる。
【0176】
本実施形態によれば、二つ以上のLNG燃料タンク(T1、T2など)のクールダウン工程と置換工程、そして、供給工程と置換工程を同時に実施することができる。
【0177】
例えば、置換工程を終えたいずれか一つのLNG燃料タンク(T1など)をクールダウンし、この時に発生する蒸発ガスを加熱し、他の一つのLNG燃料タンク(T2など)に置換用ガスとして供給する。
【0178】
また、クールダウン工程を終えたLNG燃料タンク(T1など)にLNGを供給し、LNGを供給しながら発生する蒸発ガスを加熱し、加熱した蒸発ガスを他の一つのLNG燃料タンク(T2など)に置換用ガスとして供給することもできる。
【0179】
図7及び図8を参照して、LNG燃料タンク(T1、T2)のクールダウン工程について説明する。本実施形態では、クールダウンの対象であるLNG燃料タンクとして、第1燃料タンク(T1)をクールダウンする場合を代表例として説明する。
【0180】
本実施形態における船舶は、マニホールド(L)を介してLNGバンカーリング船舶に連結される。LNGバンカーリング船舶から第1燃料タンク(T1)をクールダウンするLNGが、リキッドクロスオーバーライン(LC)、ストリッピングライン(SL)、及び第1ストリッピングライン(SL1)を通じて第1燃料タンク(T1)に噴出し、供給される。
【0181】
第1燃料タンク(T1)にクールダウン用のLNGが供給されると、第1燃料タンク(T1)内では多量の蒸発ガスが発生する。この時、第1燃料タンク(T1)で発生した蒸発ガスを、第1ガスライン(GL1)、ガスライン(GL)及び第2ガスライン(GL2)を通じて第2燃料タンク(T2)に置換用ガスとして供給する。こうすることによって、第1燃料タンク(T1)のクールダウン工程の実施と同時に、第2燃料タンク(T2)の置換工程を実施することができる。
【0182】
また、第1燃料タンク(T1)から排出された蒸発ガスは、圧縮機(100)で圧縮され、加熱器(200)で加熱された後、第2燃料タンク(T2)に置換用ガスとして供給される。
【0183】
置換工程は、例えば173,400m級のLNG運搬船の場合、約6~8MT/hrのガスを利用すると、一つのLNG燃料タンク当たり約6時間がかかる。本実施形態によれば、クールダウン工程を実施する第1燃料タンク(T1)から排出される蒸発ガスを船舶に設置されている基本的な構成の一つである加熱器(200)で加熱し、加熱した蒸発ガスを第2燃料タンク(T2)に置換用ガスとして供給する。
【0184】
すなわち、本実施形態によれば、いずれか一つのクールダウン用のLNG燃料タンク(T1)をクールダウンするのと同時に、クールダウン工程を実施するLNG燃料タンク(T1)に隣接して配置された他のLNG燃料タンク(T2)の置換工程を実施することができる。
【0185】
上述したように、空のLNG燃料タンクには、LNG燃料タンクの建造及び安全上の問題で不活性ガスが満たされているが、第2燃料タンク(T2)に置換用ガスを供給すると、第2燃料タンク(T2)の内部に満たされていた不活性ガスが押し出され、第2リキッドライン(LL2)を通じて排出される。
【0186】
本実施形態によれば、第1燃料タンク(T1)のクールダウン工程と同時に第2燃料タンク(T2)の置換工程を実施する時、第2燃料タンク(T2)から不活性ガスが第2リキッドライン(LL2)を通じて排出される。
【0187】
第2リキッドライン(LL2)を通じて排出される不活性ガスは、リキッドライン(LL)及びコネクトライン(CL)を通じてベントマスト(VM)へ移送される。
【0188】
すなわち、ストリッピングライン(SL)を通じて第1燃料タンク(T1)にクールダウン用のLNGを供給するとともに、第2リキッドライン(LL2)を通じて第2燃料タンク(T2)から排出される不活性ガスをベントマスト(VM)へ移送する。
【0189】
なお、本実施形態では、図7及び図8に示すように、上述した基本構成に追加構成を付加し、LNGバンカーリング船舶から本実施形態における船舶にLNGを供給する際に発生する蒸発ガスをLNGバンカーリング船舶に返送することなく、船舶内で処理することもできる。
【0190】
本実施形態は、追加構成として、リキッドライン(LL)の途中に設置され、リキッドライン(LL)を遮断する隔離バルブ(IV)をさらに備えることができる。
【0191】
コネクトライン(CL)は、リキッドライン(LL)にではなく、第1及び第2リキッド分岐ライン(LL1、LL2)に連結してベントマスト(VM)に連結することもできる。この時、コネクトライン(CL)長さの合計は、173km級の船舶を基準にし、200A規格の配管を用いると、最大50mである。
【0192】
図7に示す実施形態では、隔離バルブ(IV)は、リキッドライン(LL)において、リキッドクロスオーバーライン(LC)の連結箇所と、第2リキッドライン(LL2)の分岐箇所との間に設置されている。
【0193】
また、図8に示す実施形態では、隔離バルブ(IV)は、リキッドクロスオーバーライン(LC)がリキッドライン(LL)に連結される連結箇所に設けられている。
【0194】
いずれの実施形態においても、ストリッピングライン(SL)を通じて第1燃料タンク(T1)にLNGを供給するのと同時に、リキッドライン(LL)を通じて不活性ガスがベントマスト(VM)へ移送される。この時、隔離バルブ(IV)を閉鎖状態にしてリキッドライン(LL)を遮断し、不活性ガスが第1燃料タンク(T1)に流れ込まないように制御する。
【0195】
さらに、図8に示す実施形態では、隔離バルブ(IV)には、3方向バルブを採用することができる。
【0196】
この場合、上述したように、第1燃料タンク(T1)のクールダウン工程を実施するとともに、第2燃料タンク(T2)の置換工程を実施する時、隔離バルブ(IV)において、第2燃料タンク(T2)とベントマスト(VM)が連通する側が開放され、リキッドクロスオーバーライン(LC)と連通する側は閉鎖される。
【0197】
このように、第1燃料タンク(T1)のクールダウン工程の実施と同時に、第2燃料タンク(T2)の置換工程を実施する時、隔離バルブ(IV)を制御し、クロスオーバーライン(LC)とストリッピングライン(SL)は連通させる一方、クロスオーバーライン(LC)とリキッドライン(LL)を非連通にする。
【0198】
次に、図9及び図10を参照して、本実施形態における船舶にLNGを供給する場合を説明する。本実施形態については、第1燃料タンク(T1)にLNGを供給する場合を代表例に挙げて説明する。
【0199】
例えば、クールダウン工程と置換工程を終えてLNGを供給する準備が整ったいずれか一つのLNG燃料タンク(T1、T2など)にLNGを供給し、LNGを供給しながらLNG燃料タンク(T1、T2など)から発生する蒸発ガスを加熱し、他の一つのLNG燃料タンク(T1、T2など)に加熱した蒸発ガスを置換用ガスとして供給することもできる。
【0200】
第1燃料タンク(T1)のクールダウン工程を実施する時に発生する蒸発ガスの量は約120ton/hrであり、この量は第2燃料タンク(T2)の置換工程を完了するのに十分な量である。また、第2燃料タンク(T2)の置換工程を終えた後、続いてさらに他のLNG燃料タンク又は貨物タンクの置換工程を実施することができる量でもある。
【0201】
本実施形態については、第1燃料タンク(T1)にLNGを供給する時、第1燃料タンク(T1)で発生する蒸発ガスを用いて第2燃料タンク(T2)の置換工程を実施する場合を説明するが、前述の通り、第1燃料タンク(T1)のクールダウン工程の実施時に隣接して配置された第2燃料タンク(T2)の置換工程が終了する。その後、クールダウン工程が完了した第1燃料タンク(T1)にLNGを供給する時、第1燃料タンク(T1)で発生する蒸発ガスは、第1燃料タンク(T1)のクールダウン工程時に置換工程が実施された第2LNG燃料タンク(T2)以外のさらに他のLNG燃料タンクやLNG貯蔵タンクなど液化ガスタンクの置換工程を実施するために使用される。
【0202】
本実施形態における隔離バルブ(IV)は、クールダウン工程が完了した第1燃料タンク(T1)にLNGを供給する時、第1燃料タンク(T1)から排出される蒸発ガスを第2燃料タンク(T2)又はさらに他のLNG燃料タンクなどに置換用ガスとして供給するために、LNGが流通する方向と置換用ガスが流通する方向とを互い遮断する。
【0203】
本実施形態における船舶は、マニホールド(L)を介してLNGバンカーリング船舶に連結される。LNGバンカーリング船舶から第1燃料タンク(T1)に供給するLNGがリキッドクロスオーバーライン(LC)、リキッドライン(LL)及び第1リキッドライン(LL1)を通じて第1燃料タンク(T1)に供給される。
【0204】
第1燃料タンク(T1)にLNGが供給されると、第1燃料タンク(T1)内では多量の蒸発ガスが発生する。この時、第1燃料タンク(T1)で発生した蒸発ガスは、第1ガスライン(GL1)、ガスライン(GL)及び第2ガスライン(GL2)を通じて第2燃料タンク(T2)に置換用ガスとして供給される。こうすることによって、第1燃料タンク(T1)にLNGを供給する工程を実施するのと同時に、第2燃料タンク(T2)の置換工程を実施することができる。
【0205】
また、第1燃料タンク(T1)から排出された蒸発ガスは、圧縮機(100)で圧縮され、加熱器(200)で加熱された後、加熱された蒸発ガスは第2燃料タンク(T2)に置換用ガスとして供給される。
【0206】
すなわち、本実施形態によれば、第1燃料タンク(T1)にLNGを供給するのと同時に、第1燃料タンク(T1)の供給工程前にクールダウン工程を実施する時、置換工程が既に完了したLNG燃料タンク(T1)以外の第2燃料タンク(T2)の置換工程を同時に実施することができる。
【0207】
上述したように、空のLNG燃料タンクには、LNG燃料タンクの建造や安全上の問題で不活性ガスが満たされているが、第2燃料タンク(T2)に置換用ガスを供給すると、内部で満たされていた不活性ガスは押し出され、第2リキッドライン(LL2)を通じて排出される。
【0208】
本実施形態によれば、第1燃料タンク(T1)にLNGを供給するのと同時に、第2燃料タンク(T2)の置換工程を実施する時、第2燃料タンク(T2)から不活性ガスが第2リキッドライン(LL2)を通じて排出される。
【0209】
第2リキッドライン(LL2)を通じて排出される不活性ガスは、リキッドライン(LL)及びコネクトライン(CL)を通じてベントマスト(VM)へ移送される。
【0210】
例えば、リキッドライン(LL)を通じて船尾部側に位置する第1燃料タンク(T1)にLNGを供給するのと同時に、隔離バルブ(IV)を挟んで船首部側に位置するリキッドライン(LL)の部分では不活性ガスがベントマスト(VM)へ移送される。
【0211】
この時、隔離バルブ(IV)を閉鎖状態にし、隔離バルブ(IV)を挟んで船尾部側に位置するリキッドライン(LL)の部分と、船首部側に位置するリキッドライン(LL)の部分とを互いに遮断する。
【0212】
一方、図10に示す実施形態では、隔離バルブ(IV)には、リキッドクロスオーバーライン(LC)がリキッドライン(LL)に連結される連結箇所に設けられる3方向バルブが採用されている。
【0213】
隔離バルブ(IV)が3方向バルブである場合、上述したように、第1燃料タンク(T1)にLNGを供給し、第2燃料タンク(T2)の置換工程を実施する時、隔離バルブ(IV)は、リキッドクロスオーバーライン(LC)と、第1リキッドライン(LL1)が分岐する側に位置するリキッドライン(LL)の部分とは連通させ、第2リキッドライン(LL2)が分岐する側に位置するリキッドライン(LL)の部分とは非連通にするように制御される。
【0214】
このような隔離バルブ(IV)の制御によって、リキッドクロスオーバーライン(LC)は、第1燃料タンク(T1)側に位置するリキッドライン(LL)の部分とのみ連通し、第2燃料タンク(T2)側に位置するリキッドライン(LL)の部分とは非連通になる。
【0215】
こうして、第1燃料タンク(T1)にLNGを供給するのと同時に、第2燃料タンク(T2)の置換工程を実施する時、第1燃料タンク(T1)へのLNGの供給と、第2燃料タンク(T2)からの不活性ガスの排出とが全てリキッドライン(LL)を通じて行われるが、隔離バルブ(IV)は、隔離バルブ(IV)を挟んでLNGがマニホールド(L)から第1燃料タンク(T1)に流通する経路と、不活性ガスが第2燃料タンク(T2)からベントマスト(VM)に流通する経路とを遮断し、互いに隔離させる。
【0216】
以上、本発明に係る実施形態を説明したが、前述の実施形態以外にも、本発明は、その趣旨又はカテゴリを逸脱することなく、他の特定の形態で具体的に実施することができることは、当該技術における通常の知識を有する者にとって自明である。したがって、前述した実施形態は、限定的なものではなく、例示的なものである。すなわち、本発明は、前述の実施形態に限定されず、添付した請求項の範囲とその均等範囲内で適宜変更することができる。

図1
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図10