IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 福建徳尓科技股▲ふん▼有限公司の特許一覧

特許7445764高凝集エネルギーフッ化物吸着剤の製造方法及び応用
<>
  • 特許-高凝集エネルギーフッ化物吸着剤の製造方法及び応用 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】高凝集エネルギーフッ化物吸着剤の製造方法及び応用
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/30 20060101AFI20240229BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20240229BHJP
   C07C 19/08 20060101ALI20240229BHJP
   C07C 17/389 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B01J20/30
B01J20/20 D
B01J20/20 F
C07C19/08
C07C17/389
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022537439
(86)(22)【出願日】2021-09-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-14
(86)【国際出願番号】 CN2021116483
(87)【国際公開番号】W WO2023010643
(87)【国際公開日】2023-02-09
【審査請求日】2022-06-15
(31)【優先権主張番号】202110903975.5
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522240933
【氏名又は名称】福建徳尓科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】FUJIAN DEER TECHNOLOGY CORP.
【住所又は居所原語表記】No. 6, Gongye Road, Jiaoyang Centralized Industrial Zone, Jiaoyang Town, Shanghang County, Longyan, Fujian 364000, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】李 向如
(72)【発明者】
【氏名】李 紀明
(72)【発明者】
【氏名】陳 施華
(72)【発明者】
【氏名】李 嘉磊
(72)【発明者】
【氏名】闕 祥育
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108176355(CN,A)
【文献】特開2007-229551(JP,A)
【文献】特開2006-130499(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109101728(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1718273(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104529692(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28
B01J 20/30-20/34
C07C 19/08
C07C 17/389
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiCOセラミック粉体にNaHF-NiF・6HO添加剤を加え、310~330℃で18~22h焼結して、以下化学式(1)により示されている化学反応を行って、高空隙率の多孔質構造を形成する工程S1と、
焼成後の物質を2~3mmまで研磨した後、長炭素鎖界面活性剤であるポリアクリロニトリルと混合してポリマーの混合物を形成する工程S2と、
前記ポリマーの混合物を75~85℃で真空ベークにより成形し、さらにボールミル、スクリーニングを経て、NaF-NiFを添加剤とするポリアクリロニトリル複合ポリマー系の非周期構造の高凝集エネルギーフッ化物吸着剤を形成する工程S3と、備えることを特徴とする高凝集エネルギーフッ化物吸着剤の製造方法。
NaHF →NaF+HF,Si+HF+O- →SiF4+H O (化学式1)
【請求項2】
前記SiCOセラミック粉体とNaHF-NiF・6HOの質量比は1:1.2~1.8であることを特徴とする請求項1に記載の高凝集エネルギーフッ化物吸着剤の製造方法。
【請求項3】
前記焼成後の物質とポリアクリロニトリルの質量比は1:0.4~0.6であることを特徴とする請求項1に記載の高凝集エネルギーフッ化物吸着剤の製造方法。
【請求項4】
前記真空ベークの真空度は90~110Paであることを特徴とする請求項1に記載の高凝集エネルギーフッ化物吸着剤の製造方法。
【請求項5】
前記真空ベークの焼成時間は12~15hであることを特徴とする請求項1に記載の高凝集エネルギーフッ化物吸着剤の製造方法。
【請求項6】
工程S3で得られた前記高凝集エネルギーフッ化物吸着剤の粒径は5~10mmであることを特徴とする請求項1に記載の高凝集エネルギーフッ化物吸着剤の製造方法。
【請求項7】
ヘキサフルオロエタンの精製における高凝集エネルギーフッ化物吸着剤の使用であって、
請求項1~6のいずれかの方法によって得られた高凝集エネルギーフッ化物吸着剤であることを特徴とするヘキサフルオロエタンの精製における高凝集エネルギーフッ化物吸着剤の使用。
【請求項8】
前記の高凝集エネルギーフッ化物吸着剤の吸着の操作条件は、気圧が0.5~2atmであり、温度が20~40℃であることを特徴とする請求項7に記載のヘキサフルオロエタンの精製における高凝集エネルギーフッ化物吸着剤の使用。
【請求項9】
前記の高凝集エネルギーフッ化物吸着剤の吸着ガスの流量は2~10L/minであることを特徴とする請求項7に記載のヘキサフルオロエタンの精製における高凝集エネルギーフッ化物吸着剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高凝集エネルギーフッ化物吸着剤製造方法及び応用に関し、吸着剤製造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
ヘキサフルオロエタンはエッジサイド侵食現象が極めて微小で、高いエッチング率と高い精度の利点を有するため、従来の湿式エッチングでは0.18~0.25/μmのディープサブミクロン集積回路での高精度細線エッチングの問題を満たすことができなかったことを解決し、このような線幅の小さいプロセス要求を極めてよく満たすことができる。このため、電子級ヘキサフルオロエタンは半導体分野においてプラズマエッチング剤や洗浄剤などとして広く用いられているが、不純物であるCHFやCClFの存在がその性能に大きく影響している。
【0003】
現在、C-CHF-CClF混合物系(Cの沸点が-78.09℃であり、CHFとCClFの沸点がそれぞれ-82.06℃及び-81.4℃であり、且つ一定の相互溶解を形成する)をモレキュラーシーブ吸着剤で吸着することで、CHF-CClFを除去している。しかし、通常のモレキュラーシーブ吸着剤(5A、13X及び一般的なメソポーラスモレキュラーシーブ等)の吸着能力は非常に限られており、CHFやCClFの含有量を10ppmv以下に下げることができず、精留の要求に達することができない。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、上記の課題を有効に解決することができる高凝集エネルギーフッ化物吸着剤製造及び応用を提供する。
【0005】
本発明は、以下の態様によって実現される。
【0006】
本発明の一態様に係る高凝集エネルギーフッ化物吸着剤の製造方法は、
SiCOセラミック粉体にNaHF-NiF・6HO添加剤を加え、310~330℃で18~22h焼結して、以下化学式(1)により示されている化学反応を行って、高空隙率の多孔質構造を形成する工程S1と、
焼成後の物質を2~3mmまで研磨した後、長炭素鎖界面活性剤であるポリアクリロニトリルと混合してポリマーの混合物を形成する工程S2と、
前記ポリマーの混合物を75~85℃で真空ベークにより成形し、さらにボールミル、スクリーニングを経て、NaF-NiFを添加剤とするポリアクリロニトリル複合ポリマー系の非周期構造の高凝集エネルギーフッ化物吸着剤を形成する工程S3と、を備える。
NaHF2→NaF+HF,Si+HF+O- →SiF4+H O (化学式1)
【0007】
さらなる改良として、前記SiCOセラミック粉体とNaHF-NiF・6HOの質量比は、1:1.2~1.8である。
【0008】
さらなる改良として、前記焼成後の物質とポリアクリロニトリルの質量比が1:0.4~0.6である。
【0009】
さらなる改良として、前記真空ベークの真空度が90~110Paである。
【0010】
さらなる改良として、前記真空ベークの焼成時間が12~15hである。
【0011】
さらなる改良として、前記フッ化物吸着剤の粒径が5~10mmである。
【0012】
また、本発明の他の態様に係る高凝集エネルギーフッ化物吸着剤は、上記の方法で調製されたものである。
【0013】
また、本発明は、上記の高凝集エネルギーフッ化物吸着剤のヘキサフルオロエタンの精製での応用を提供している。
【0014】
さらなる改良として、前記の高凝集エネルギーフッ化物吸着剤の吸着の操作条件は、気圧が0.5~2atmであり、温度が20~40°Cである。
【0015】
さらなる改良として、前記の高凝集エネルギーフッ化物吸着剤の吸着ガスの流量は2~10L/minである。
【0016】
本発明は、以下の有利な効果を奏している。
【0017】
本発明は、凝集エネルギー密度がより高い長炭素鎖界面活性剤であるポリアクリロニトリルをモレキュラーシーブ骨格構造に導入することにより、改質後のモレキュラーシーブ吸着剤は極めて豊富な比表面積、合理的なチャネル構造と孔径を有し、CHF分子とCC1F分子をスムースにチャンネルの内部に入り込ませると共に、Cをチャネルの内部に入り込ませないようにし、C-CHF-CC1F混合物系の吸着分離を実現し、CHFとCC1Fの含有量を10ppmv以下に低下させ、精留の要求を達成したものである。
【0018】
また、本発明の吸着剤の製造プロセスは簡単であり、生産コストが低く、良好な経済効果を有し、工業化生産を行うことができる。
【0019】
また、本発明の吸着剤は使用周期が長く、複数回繰り返して使用することができ、吸着後の粒度が完全に保たれ、粉末が形成されにくく、設備及び配管の詰まりを避ける。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の実施形態の技術的態様をより明確に説明するために、以下では、実施形態において必要とされる図面を簡単に説明するが、以下の図面は、本発明のいくつかの実施例のみを示しているので、範囲の限定と見なすべきではなく、当業者にとって、創造的な労働を払わずに、これらの図面に基づいて他の関連図面を得ることもできる。
【0021】
図1】本発明の実施形態による吸着試験フローの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態の目的、技術的態様及び利点をより明確にするために、以下、本発明の実施形態における図面に合わせて、本発明の実施形態における技術的態様を明確かつ完全に説明する。説明された実施形態は、すべての実施形態ではなく、本発明の一部の実施形態に過ぎないことが明らかである。本発明における実施形態によれば、当業者が創造的な労働を行わずに得た他のすべての実施形態は、何れも本発明の保護範囲に属する。したがって、以下の図面において提供される本発明の実施形態に対する詳細な説明は、保護を求める範囲を限定することを意図するものではなく、本発明の選択された実施形態のみを示すものである。本発明における実施形態によれば、当業者が創造的な労働を行わずに得た他のすべての実施形態は、何れも本発明の保護範囲に属する。
【0023】
本発明の説明において、「第1」、「第2」という用語は、目的を説明するためにのみ使用され、相対的な重要性を示す又は暗示し、または要素の数を暗黙的に指定すると理解してはならない。これにより、「第1」、「第2」と限定された要素は、1つ以上の要素を明示的または暗黙的に含むことができる。本発明の説明において、「複数」は、特に限定されない限り、2つ以上を意味する。
【0024】
本発明の実施形態は、以下の工程を含む高凝集エネルギーフッ化物吸着剤の製造方法を提供する。
【0025】
工程S1では、SiCOセラミック粉体にNaHF-NiF・6HO添加剤を加え、310~330℃で18~22h焼結する。この焼結温度でHFを脱着させることができ、遊離HFはSiCOセラミック粉体におけるC-O-Si構造中のSiからランダムに脱離して、高空隙率の多孔質構造を形成することができる。その化学反応は、以下の通りである。
【0026】
NaHF→NaF+HF,Si+HF+O- →SiF+H2O。
【0027】
工程S2では、焼焼成後の物質を2~3mmまで研磨した後、ポリアクリロニトリルと混合してリマーの混合物を形成する。ポリアクリロニトリルが凝集エネルギー密度の高い長炭素鎖界面活性剤であるので、改質後のモレキュラーシーブ吸着剤は極めて豊富な比表面積を持ち、より強い吸着能力を有する。
【0028】
工程S3では、リマーの混合物を75~85℃で真空ベークにより成形し、真空ベークにより水分、酸素のポリマーの混合物への影響を低減し、極めて大きな比表面積のポリマーに改質し、さらにボールミル、スクリーニングを経て前記高凝集エネルギーフッ化物吸着剤を形成する。
【0029】
さらなる改良として、前記SiCOセラミック粉体とNaHF-NiF・6HOとの質量比は、1:1.2~1.8であり、前記焼成後の物質とポリアクリロニトリルの質量比が1:0.4~0.6である。上記2種類の質量比範囲内の吸着剤を構築すれば、物質同士が十分に混合され、高いアブレーシヨン率の目的を達成し、NaF-NiFを添加剤とするポリアクリロニトリル複合ポリマー系の非周期構造を形成し、吸着材の凝集エネルギー密度を効果的に高めることができ、吸着剤の分離効果を顕著に改善することができる。
【0030】
さらなる改良として、前記真空ベークの真空度は90~110Paであり、真空ベークの焼成時間は12~15hである。この焼成圧力や焼成温度では、高い変性効率を有するだけでなく、ポリマーの強度を強くして、その使用周期を延ばすこともできる。
【0031】
さらなる改良として、前記高凝集エネルギーフッ化物吸着剤の粒径が5~10mmである。この粒径粒子は吸着塔の装填に寄与し、大きな空隙率を形成することができる。
【0032】
本発明に係る高凝集エネルギーフッ化物吸着剤は、上記の方法により製造されるものである。
【0033】
また、本発明の一態様は、上記の高凝集エネルギーフッ化物吸着剤のヘキサフルオロエタンの精製での応用を提供している。
【0034】
さらなる改良として、前記の高凝集エネルギーフッ化物吸着剤の吸着の操作条件は、気圧が0.5~2atmであり、温度が20~40℃である。
【0035】
さらなる改良として、上記の高凝集エネルギーフッ化物吸着剤の吸着ガス流量は2~10L/minである。
【0036】
<実施例1>
(1)SiCOセラミック粉体をベースフレームとして、NaHF-NiF・6HO添加剤を1:1.5の割合で加え、且つこれを320℃で20時間焼結する。
【0037】
(2)焼成後の多孔質物質を2~3mmまで研磨した後、ポリアクリロニトリルと1:0.5の割合で混合してリマーの混合物を形成し、80℃で真空ベークにて成形し、さらにボールミル、ふるいにかけて粒径がφ8mm程度の吸着剤を形成する。最大膨潤比法で測定したところ、この吸着剤の凝集エネルギー密度は700J/cmに達した。
【0038】
<試験例1>
実施例1で調製した吸着剤を用いて、温度、圧力及び流量の異なる吸着試験を行った。吸着試験のフローを図1に示す。
【0039】
1)1#容器は、主にCHF及びCClFのC(その中、Cが82%であり、CHFが3%であり、CClFが3.5%である)を不純物として含有している。ガス出口には、調圧弁、圧力計、流量調節弁、流量計等が順次配設されている。2#吸着塔について、全部で直列3段、調製した吸着剤が内蔵され、電気加熱コイル及び温度計が外付けられている。3#マイクロ水洗器について、充填材が内蔵され、ヘキサフルオロエタンを吸収する。
【0040】
2)不純物を含むヘキサフルオロエタンが下から上へ、特製の吸着剤が入った直列式三段吸着塔を通った後に、マイクロ水洗器を通る。調圧弁は、ガスが吸着塔に入る圧力を調節できる。流量調節弁の開度は、吸着塔の流量を制御する。電気加熱コイルは、実験毎に吸着塔にヘキサフルオロエタンが入る流量、圧力及び温度が一定値に達するように、吸着剤の吸着温度を制御することができる。各段の吸着塔を経たガスを分析して、C、CHF及びCClFなどの成分の濃度を求めた。
【0041】
3)実験条件が1atm、25℃、5L/minである吸着実験をブランク実験として、温度、圧力、流量のうちの1つを変数としてそれぞれ選択し、残りが変わらずに実験を行った。各グループの実験を30回行い、分析結果を平均値にして、実験結果を得た。
【0042】
実験の結果を表1に示す。その結果、3段階の吸着を経た後、異なるプロセスであるが同じ条件では、各原料ガスのCHF及びCClFは、何れも抽出精留分離が10ppmV以下の入力要求に達したことが明らかとなった。本吸着剤は、様々な状況において、何れも高活性、高吸着性を維持することができ、使用範囲が広いことを表明している。
【0043】
<表1>
【0044】
上記の実験条件が1atm、25℃、5L/minとした吸着実験を30回行った後、さらに70回行い、20回ずつ実験を1グループとして、合計で5つのグループに分け、グループごと結果の平均値を取って対比し、実験結果を表2に示す。この結果は、百回の吸着によっても、この吸着剤は、高い活性と高い吸着性を保つことができる。その原因の1つは、高い安定性を有し、粉末状に形成しにくく、その多孔質構造が変化せず、高い空隙率、大きな比表面積などの特性を保持していることである。
【0045】
<表2>
【0046】
以上は、本発明の好ましい実施形態に過ぎず、本発明を限定するものではない。当業者にとって、様々な改善及び変更が可能である。本発明の精神及び原則において行われたいかなる修正、均等置換及び改善などは、何れも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
図1