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  • 特許-積層造形用の可溶性サポート材料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】積層造形用の可溶性サポート材料
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/40 20170101AFI20240229BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240229BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240229BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20240229BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240229BHJP
   B33Y 40/20 20200101ALI20240229BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20240229BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20240229BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240229BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240229BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20240229BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20240229BHJP
【FI】
B29C64/40
B33Y10/00
B33Y70/00
B29C64/314
B33Y80/00
B33Y40/20
C08L83/04
C08L71/00
C08K3/013
C08K3/36
B29C64/112
B29C64/118
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022540604
(86)(22)【出願日】2019-12-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-09
(86)【国際出願番号】 CN2019130516
(87)【国際公開番号】W WO2021134481
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】516190747
【氏名又は名称】エルケム・シリコーンズ・シャンハイ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ELKEM SILICONES SHANGHAI CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リヤ・ジャ
(72)【発明者】
【氏名】ユアンチー・ユエ
(72)【発明者】
【氏名】スー・チェン
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/215190(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/185135(WO,A1)
【文献】特表2018-509501(JP,A)
【文献】特表2019-500237(JP,A)
【文献】特開平10-292102(JP,A)
【文献】国際公開第2020/127882(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110128833(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出し3Dプリンターおよび3D噴射プリンターから選択される3Dプリンターを使用してシリコーンエラストマー物品を積層造形する方法であって、前記方法は、
1)サポート材料組成物Vの少なくとも一部をプリントする工程であって、サポート材料組成物Vが、
(A)少なくとも1つのポリオルガノシロキサンA;
(B)少なくとも1つのポリエーテルまたはポリエーテル部分Bを含有するポリマー;
(C)シリカC;
を含む、工程:
2)前記シリコーンエラストマー物品の架橋性シリコーン組成物X前駆体であるビルディング材料組成物の少なくとも一部をプリントする工程;
3)任意に、工程1)および/または工程2)を繰り返す工程;および
4)前記シリコーンエラストマー物品の前記架橋性シリコーン組成物X前駆体を、任意に加熱することによって、架橋させて、シリコーンエラストマー物品を得る工程;
5)前記サポート材料を除去する工
を含み、
工程1)と2)は同時にまたは連続して行われ、工程1)と2)が連続して行われる場合、工程1)を工程2)の前に行うことも、工程2)を工程1)の前に行うこともできる、方法。
【請求項2】
前記工程5)において、前記サポート材料は、溶媒に溶解することにより、および/または機械的に行うことにより、除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つのポリオルガノシロキサンAは、少なくとも1つのポリオルガノシロキサンオイルAであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリオルガノシロキサンAが、ビニルポリシロキサン、ヒドロキシポリシロキサンまたはそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリオルガノシロキサンAが、23℃で1~50000000mPa・sの動的粘度を有することを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記シリカCが、処理シリカまたは未処理シリカから選択されることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記サポート材料組成物が、サポート材料組成物の全重量に対して、
1重量%~99重量%のポリオルガノシロキサンA、および/または
0.01~99重量%の成分B、および/または
0.5重量%~60重量%のシリカC、
を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記サポート材料組成物が、2~100のチキソトロピー指数を有することを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
押出し3Dプリンターおよび3D噴射プリンターから選択される3Dプリンターを使用して、シリコーンエラストマー物品およびサポートを積層造形する方法であって、前記方法は、
1)サポートの少なくとも一部をサポート材料組成物Vでプリントする工程であって、サポート材料組成物Vは、
(A)少なくとも1つのポリオルガノシロキサンA;
(B)少なくとも1つのポリエーテルまたはポリエーテル部分を含有するポリマーB;
(C)シリカC;
を含む、工程:
2)前記シリコーンエラストマー物品の架橋性シリコーン組成物X前駆体であるビルディング材料組成物の少なくとも一部をプリントする工程;
3)任意に、工程1)および/または工程2)を繰り返す工程;および
4)前記シリコーンエラストマー物品の前記架橋性シリコーン組成物X前駆体を、任意に加熱することによって、架橋させて、シリコーンエラストマー物品を得る工程
を含み、
工程1)と2)は同時にまたは連続して行われ、工程1)と2)が連続して行われる場合、工程1)を工程2)の前に行うことも、工程2)を工程1)の前に行うこともできる、方法。
【請求項10】
Dプリントにおけるサポート材料組成物Vの使用であって、サポート材料組成物Vが、
(A)少なくとも1つのポリオルガノシロキサンA;
(B)少なくとも1つのポリエーテルまたはポリエーテル部分を含有するポリマーB;
(C)シリカC、
を含む、使用。
【請求項11】
(A)少なくとも1つのポリオルガノシロキサンA;
(B)少なくとも1つのポリエーテルまたはポリエーテル部分を含有するポリマーB;
(C)シリカC、
を含むサポート材料組成物V。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出し3Dプリンターおよび3D噴射プリンターから選択される3Dプリンターを使用してシリコーンエラストマー物品を積層造形する方法であって、可溶性サポート材料組成物Vが使用されるとともに、(A)少なくとも1つのポリオルガノシロキサン、(B)少なくとも1つのポリエーテルまたはポリエーテル部分を含むポリマー、(C)シリカを含む方法に関し;本発明の方法によって得られるシリコーンエラストマー物品に関し;および、サポートを好ましくは押出しによって3Dプリントするための、サポート材料組成物Vの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
積層造形にはさまざまな手法が含まれており、その共通の特徴は成形部品の各層の自動付加ビルドアップである。積層造形手法は、層ごとの方法に基づいてプリントされた3Dモデルで使用される。材料の特性に基づいて、押出、インクジェット、選択的レーザー焼結、電子ビーム溶融、ステレオリソ電子写真法を含むさまざまな製造プロセスが3D物体の構築を実現するために採用される。たとえば、溶融堆積モデリング(FDM)プロセスでは、熱可塑性ポリマーの熱特性を使用して3D物品を築くことができる。さらに、感光性基を持つ一部のポリマーは、ステレオリソグラフィアピアランス(Stereo lithography Appearance(SLA))またはUV-デジタルライトプロセッシング(Digital Light processing(DLP))プロセスによってプリントできる。
【0003】
複雑な形状を有する物体、例えば突出構造またはキャビティを有する物体を積層造形するために、物体の製造中にサポート材料を使用することが必要になる場合がある。どのような製造手法が使用されても、サポート材料は、物品の製造において高精度、高い複雑さを実現する上で重要な役割を果たす。たとえば、サポート材料は、最終的な形状のビルディング材料によって直接サポートされない突出構造をサポートすることができる。サポート材料は、ビルディング材料の反りを減らし、中空構造を作ることもできる。
【0004】
一般に、いくつかの熱可塑性ポリマーは、FDM、STL、またはDLPプロセスのサポート材料として使用される。米国特許出願公開第5503785号明細書、欧州特許出願公開第1773560号明細書、国際公開第2010/045147号および米国特許第10259921号明細書によれば、熱可塑性ポリマーはノズルを通して液体として押し出すことができ、周囲温度で一般に固体である。
【0005】
しかしながら、上記のサポート材料は、シリコーン組成物に基づく積層造形プロセスでは使用できない。架橋型シリコーン組成物は、ガラス転移温度が低いなどのシリコーン系の独特の熱特性により、三次元(3D)エラストマーシリコーン物品または部品を製造する積層造形法ですでに使用されている。
【0006】
米国特許出願公開第20180057682号明細書は、有機溶媒およびブロックコポリマーを含む、シリコーン構造の3Dプリントのための有機ミクロゲルシステムを開示している。
【0007】
欧州特許第3227116号明細書は、3Dプリント中にサポートシステムとして使用される相変化材料を開示している。相変化材料は、機械力、光、放射、または電気によって引き起こされる降伏応力の変化によって除去できる。
【0008】
国際公開第2015/107333号には、混合ノズルから架橋性シリコーンゴム組成物を(連続的に)押し出すことによって、シリコーンエラストマーから装具を製造するための3Dプリント法が記載されている。3Dプリントは、プリントされるシリコーンゴム組成物のサポート材料として機能する熱可塑性材料を押し出すための第2の混合ノズルによって任意に補助される。
【0009】
国際公開第2019215190号には、ゾルゲル転移温度に基づいて、20~50℃でゲルを形成し、15℃未満で液体状態になることができる、水とポロクサマーからなるサポート材料が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これらの従来技術文献に開示されるように、この手法にはまだいくつかの欠点があるため、改善された特性を有する3Dプリントシリコーンエラストマー物品を積層造形するための改善された方法を提供する必要がある。
【0011】
したがって、本発明の目的は、複雑な形状を有しおよび/または滑らかな表面を有するシリコーンエラストマー物品を積層造形するための方法を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、ビルディング材料組成物およびサポート材料組成物を使用することにより、シリコーンエラストマー物品を積層造形する方法を提供することであり、サポート材料は、好ましくは、良好な形状を維持し、例えば、溶媒中で、好ましくは水中で溶解によって、および/または機械的に容易に除去することができ、および/または好ましくは、得られたシリコーンエラストマー物品は、複雑な構造を有し、および/または高精度の表面を有する。
【0013】
さらに本発明の別の目的は、シリコーンエラストマー物品およびサポートを積層造形する方法を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、シリコーンエラストマー物品及びサポートを積層造形する方法を提供することであり、この方法は実施が容易であり、及び/又は得られたシリコーンエラストマー物品は複雑な構造を有し、及び/又は高精度の表面を有する。
【0015】
本発明のさらなる目的は、シリコーンエラストマー物品の積層造形に使用できるサポートを提供することである。
【0016】
これらの目的は、とりわけ、押出し3Dプリンターおよび3D噴射プリンターから選択される3Dプリンターを使用してシリコーンエラストマー物品を積層造形する方法に第1に関連する本発明によって達成され、前記方法は、
1)サポート材料組成物Vの少なくとも一部をプリントする工程であって、サポート材料組成物Vが、
(A)少なくとも1つのポリオルガノシロキサンA、好ましくは直鎖ポリオルガノシロキサン;
(B)少なくとも1つのポリエーテルまたはポリエーテル部分を含有するポリマーB;
(C)シリカC、好ましくはヒュームドシリカ、沈降シリカまたはそれらの混合物から選択される;
を含む、工程:
2)前記シリコーンエラストマー物品の架橋性シリコーン組成物X前駆体であるビルディング材料組成物の少なくとも一部をプリントする工程;
3)任意に、工程1)および/または工程2)を繰り返す工程;および
4)前記シリコーンエラストマー物品の前記架橋性シリコーン組成物X前駆体を、任意に加熱することによって、架橋させて、シリコーンエラストマー物品を得る工程;
5)前記サポート材料を除去する工程であって、除去は例えば溶媒、好ましくは水に溶解することにより、および/または機械的に行う、工程
を含み、
工程1)と2)は同時にまたは連続して行われ、工程1)と2)が連続して行われる場合、工程1)を工程2)の前に行うことも、工程2)を工程1)の前に行うこともできる。
【0017】
本発明はまた、押出し3Dプリンターおよび3D噴射プリンターから選択される3Dプリンターを使用して、シリコーンエラストマー物品およびサポートを積層造形する方法に関し、前記方法は、
1)サポートの少なくとも一部をサポート材料組成物Vでプリントする工程であって、サポート材料組成物Vは、
(A)少なくとも1つのポリオルガノシロキサンA、好ましくは直鎖ポリオルガノシロキサン;
(B)少なくとも1つのポリエーテルまたはポリエーテル部分を含有するポリマーB;
(C)シリカC、好ましくはヒュームドシリカ、沈降シリカまたはそれらの混合物から選択される;
を含む、工程:
2)前記シリコーンエラストマー物品の架橋性シリコーン組成物X前駆体であるビルディング材料組成物の少なくとも一部をプリントする工程;
3)任意に、工程1)および/または工程2)を繰り返す工程;および
4)前記シリコーンエラストマー物品の前記架橋性シリコーン組成物X前駆体を、任意に加熱することによって、架橋させて、シリコーンエラストマー物品を得る工程
を含み、
工程1)と2)は同時にまたは連続して行われ、工程1)と2)が連続して行われる場合、工程1)を工程2)の前に行うことも、工程2)を工程1)の前に行うこともできる。
【0018】
成分A~Cを含むサポート材料組成物Vは、良好なチキソトロピー特性を有する。特に、プリントされたシリコーン組成物のくずれまたは変形を回避する。したがって、突出構造のような複雑な形状のシリコーンエラストマー製品は、この方法を使用してプリントできる。さらに、サポート材料組成物Vは、ビルディング材料組成物と反応しないかまたはほとんど反応しない可能性があり、および/またはビルディング材料組成物中の触媒を不活性化しない可能性がある。また、サポート材料は、溶媒または水に良好な溶解性を有し、サポート材料を除去する必要がある場合に容易に除去できる。特に、サポート材料は水溶性であり、したがって環境に優しい。さらに、サポート材料組成物Vは、容易に入手可能な原材料を使用することによって簡単な方法で調製することができる。
【0019】
本発明は、本発明による方法によって得られるシリコーンエラストマー物品にも関する。
【0020】
本発明はさらに、例えば押出し3Dプリンターおよび3D噴射プリンターから選択される3Dプリンターを使用することによる、3Dプリントにおけるサポート材料組成物Vの使用に関し、サポート材料組成物Vが、
(A)少なくとも1つのポリオルガノシロキサンA、好ましくは直鎖ポリオルガノシロキサン;
(B)少なくとも1つのポリエーテルまたはポリエーテル部分を含有するポリマーB;
(C)シリカC、好ましくはヒュームドシリカ、沈降シリカまたはそれらの混合物から選択される、
を含む。
【0021】
本発明はさらに、サポートを、好ましくは押出しによって3Dプリントするためのサポート材料組成物Vの使用に関する。
【0022】
本発明はまた、サポート材料組成物Vに関し、サポート材料組成物Vは
(A)少なくとも1つのポリオルガノシロキサンA、好ましくは直鎖ポリオルガノシロキサン;
(B)少なくとも1つのポリエーテルまたはポリエーテル部分を含有するポリマーB;
(C)シリカC、好ましくはヒュームドシリカ、沈降シリカまたはそれらの混合物から選択される、
を含み、
ここで、サポート材料組成物は、好ましくは、例えば、押出し3Dプリンターおよび3D噴射プリンターから選択される3Dプリンターを使用することによって、3Dプリントに使用される。
【0023】
本発明はまた、本発明によるサポート材料組成物Vを使用することによりシリコーンエラストマー物品を積層造形する方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
積層造形の方法
3Dプリントは、一般に、コンピューターで生成された、例えばコンピューター支援設計(CAD)のデータソースから物理物体を製造するために使用される多くの関連技術に関連付けられている。
【0025】
この開示には、一般に、ASTM名称F2792-12a、「積層造形技術の標準用語(Standard Terminology for Additive Manufacturing Technologies)」が取り込まれる。
【0026】
「3Dプリンター」は「3Dプリントに使用される機械」と定義され、「3Dプリント」は「プリントヘッド、ノズル、または別のプリンター技術を使用した材料の堆積による物体の製造」と定義される。
【0027】
「積層造形(アディティブ・マニュファクチャリング(AM))」は、「サブトラクティブマニュファクチャリング方法論とは対照的に、材料を結合して3Dモデルデータから物体を作製するプロセスであり、通常は層を重ねて製造するプロセス。3Dプリントに関連し、含まれる同義語には、アディティブファブリケーション(additive fabrication)、アディティブプロセス(additive process)、アディティブテクニック(additive technique)、アディティブレイヤーマニュファクチャリング(additive layer manufacturing)、レイヤーマニュファクチャリング(layer manufacturing)、フリーフォームファブリケーション(freeform fabrication)を含む。」と定義される。積層造形(AM)は、ラピッドプロトタイピング(rapid prototyping(RP))とも呼ばれる。本明細書で使用される「3Dプリント(プリンティング)」は、一般に「積層造形」と交換可能であり、その逆も同様である。
【0028】
「プリント(プリンティング)」は、プリントヘッド、ノズル、または別のプリンター技術を使用して、材料、ここでは架橋性シリコーン組成物またはサポート材料組成物を堆積することとして定義される。
【0029】
本開示において、「3Dまたは3次元の物品、物体または部品」は、上で開示した積層造形または3Dプリントによって得られる物品、物体または部品を意味する。
【0030】
一般に、すべての3Dプリンティングプロセスには共通の開始点がある。開始点とは、物体を記述するコンピューター生成データソースまたはプログラムである。コンピューター生成データソースまたはプログラムは、実際の物体または仮想の物体に基づくことができる。たとえば、3Dスキャナを使用して実際の物体をスキャンし、スキャンデータを使用して、コンピューター生成データソースまたはプログラムを作製することができる。あるいは、コンピューター生成データソースまたはプログラムをゼロから設計することもできる。
【0031】
コンピューター生成データソースまたはプログラムは、通常、標準テッセレーション言語(standard tessellation language(STL))ファイル形式に変換される。ただし、他のファイル形式も、または追加で使用できる。通常、ファイルは3Dプリンティングソフトウェアに読み込まれ、3Dプリンティングソフトウェアは、ファイルと任意のユーザー入力を取得して、それを数百、数千、さらには数百万の「スライス」に分割する。3Dプリンティングソフトウェアは通常、機械命令を出力する。これは、Gコードの形式である場合があり、3Dプリンターによって読み取られて、サポートの各スライスおよびシリコーンエラストマー物品の前駆体の各スライスが作製される。機械命令は3Dプリンターに転送され、3Dプリンターは、機械命令の形式のこのスライス情報に基づいて、1層ずつ物体(サポートおよびシリコーンエラストマー物品の前駆体)を構築する。これらのスライスの厚さは異なり得る。
【0032】
通常、3Dプリンターは、シリコーンエラストマー物品の架橋性シリコーン組成物X前駆体およびサポート組成物材料Vをプリントするためのディスペンサー、例えばノズルまたはプリントヘッドを利用する。任意に、ディスペンサーは、シリコーンエラストマー物品の架橋性シリコーン組成物X前駆体および/またはサポート組成物材料Vを分配する前、分配する間、および分配した後に加熱することができる。2つ以上のディスペンサーを、各ディスペンサーが独立して選択された特性を有するように利用することができる。
【0033】
押出し3Dプリンターは、積層造形プロセス中にノズル、シリンジ、またはオリフィスから材料が押し出される3Dプリンターである。3Dプリンターは、1つ以上のノズル、シリンジ、またはオリフィスを有することができる。好ましくは、3Dプリンターは、積層造形プロセスのために少なくとも2つのノズル、シリンジ、またはオリフィスを有する。材料の押出しは、一般に、ノズル、シリンジ、またはオリフィスを通して材料を押出し、物体の1つの断面をプリントすることによって機能する。これは、後続の各層に対して繰り返してもよい。押し出された材料は、材料の硬化中にその下の層に結合する。有利には、シリコーンエラストマー物品の架橋性シリコーン組成物X前駆体はノズルを通して押し出され、サポート組成物Vは別のノズルを通して押し出される。ノズルは、シリコーンエラストマー物品の架橋性シリコーン組成物X前駆体またはサポート材料組成物Vの分配を促進するために加熱されてもよい。
【0034】
ノズルの平均直径が層の厚さを定義する。一実施形態では、ノズルの直径は、50から5,000μm、好ましくは100から800μm、最も好ましくは100から500μmである。
【0035】
ノズルと基板の間の距離は、良好な形状を確保するための重要なパラメーターである。好ましくは、それはノズル平均直径の70から200%、より好ましくは80から120%である。
【0036】
ノズルを通して分配される、シリコーンエラストマー物品の架橋性シリコーン組成物X前駆体およびサポート材料組成物Vは、カートリッジ状のシステムから供給されてもよい。カートリッジは、関連付けられた流体リザーバまたは複数の流体リザーバを有するノズルまたは複数のノズルを含むことができる。スタティックミキサーと1つだけのノズルを有する同軸2カートリッジシステムを使用することもできる。これは、シリコーンエラストマー物品の架橋性シリコーン組成物X前駆体がマルチパート組成物である場合に特に有用である。
【0037】
圧力は、分配される流体、関連するノズルの平均直径、およびプリント速度に適応する。
【0038】
ノズル押出し中に発生する高せん断速度のために、シリコーンエラストマー物品の架橋性シリコーン組成物X前駆体の粘度およびサポート材料組成物Vの粘度は大幅に低下され、それにより細かい層のプリントが可能になる。
【0039】
カートリッジ圧力は、1から28バール、好ましくは2から25バール、最も好ましくは4から8バールまで変化し得る。100μm未満のノズル径を使用する場合、良好な材料押出しを得るには、カートリッジ圧力を20バールより高くするだろう。そのような圧力に耐えるために、アルミニウムカートリッジを使用する適合した機器が使用されるだろう。
【0040】
ノズルおよび/またはビルドプラットフォームは、X-Y(水平面)内を移動して物体の断面を完成させ、1つの層が完成するとZ軸(垂直)平面内を移動する。ノズルのXYZ移動精度は10μm前後と高い。各層がX、Y作業面でプリントされた後、ノズルは、次の層がX、Y作業面で塗布できるように十分な距離だけZ方向に移される。このようにして、シリコーンエラストマー物品の前駆体またはサポートとなる物体を、底から上方に向かって一度に1層ずつ構築することができる。
【0041】
前に開示したように、ノズルと先の層との間の距離は、良好な形状を確保するための重要なパラメーターである。好ましくは、ノズル平均直径の70から200%、好ましくは80から120%である。
【0042】
有利には、プリント速度は、良好な精度と製造速度との間の最良の妥協点を得るために、1~100mm/秒、好ましくは3~50mm/秒である。
【0043】
「材料噴射(Material jetting)」は、「ビルド材料の液滴が選択的に堆積される積層造形プロセス」と定義される。その材料は、プリンティングヘッドを使用して、個々の液滴の形で不連続に、作業面の目的の位置に塗布される(噴射)。プリンティングヘッド配列を有する3D構造の段階的製造のための3D装置および方法は、少なくとも1つ、好ましくは2~200個のプリンティングヘッドノズルを備え、複数の材料の適切な部位選択的塗布を可能にする。インクジェットプリントによる材料の塗布は、材料の粘度に特定の要件を課す。
【0044】
3D噴射プリンターでは、1つ以上のリザーバーが圧力を受け、計量ラインを介して計量ノズルに接続される。リザーバーの上流または下流に、多成分シリコーン組成物を均一に混合し、および/または多成分シリコーン組成物が溶解ガスを排出することを可能にする装置があってもよい。サポートおよびシリコーンエラストマー物品の前駆体を構築するために、異なるシリコーン組成物からシリコーンエラストマー物品の前駆体を構築するために、またはより複雑な構造の場合には、複合部品をシリコーンエラストマーおよび他のプラスチックから製造することを可能にするために、互いに独立して動作する1つ以上の噴射装置が存在してもよい。
【0045】
噴射計量手順中に計量バルブで発生する高せん断速度のために、そのようなシリコーン組成物およびサポート材料組成物の粘度は大幅に低くされ、したがって、非常に細かい微小滴の噴射計量が可能になる。微小滴が基板に堆積した後、せん断速度が急激に低下するため、粘度が再び上昇する。このため、堆積した液滴は再び急速に高粘度になり、3次元構造の正確な形状の構築を可能にする。
【0046】
個々の計量ノズルをx、y、およびz方向に正確に配置して、基板上に、またはその後の成形物品の形成の過程で、既に配置されているシリコーンエラストマー物品の前駆体上にまたはサポート上に、架橋性シリコーン組成物の滴およびサポート材料組成物の滴を正確に標的化して堆積させることが可能である。
【0047】
本方法の好ましい実施形態では、三次元シリコーンエラストマー物品を積層造形する方法は、押出し3Dプリンターを使用する。
【0048】
この方法の一実施形態では、三次元シリコーンエラストマー物品を積層造形するための方法は、(i)少なくとも1つのディスペンサー、例えば、シリコーンエラストマー物品の架橋性シリコーン組成物X前駆体をプリントするためのノズルまたはプリントヘッド、および(ii)サポート組成物材料Vをプリントするための少なくとも1つのディスペンサー、を含む押出し3Dプリンターを使用する。
【0049】
本方法の一実施形態では、三次元シリコーンエラストマー物品を積層造形するための方法は、(i)シリコーンエラストマー物品の架橋性シリコーン組成物X前駆体をプリントするための少なくとも1つのノズル、および(ii)サポート組成物材料Vをプリントするための少なくとも1つのノズルを含む押出し3Dプリンターを使用し、各ノズルの直径が50~5,000μm、好ましくは100~800μm、最も好ましくは100~500μmである。
【0050】
本方法の一実施形態では、三次元シリコーンエラストマー物品を積層造形する方法は、(i)ノズルを通して分配されるサポート材料組成物Vを含む少なくとも1つのカートリッジ、および(ii)ノズルを通して分配される、シリコーンエラストマー物品の架橋性シリコーン組成物X前駆体を含む少なくとも1つのカートリッジ、を備える押出し3Dプリンターを用い、各ノズルの直径は50から5,000μm、好ましくは100から800μm、最も好ましくは100から500μmであり、カートリッジ圧力は、好ましくは1から28バールである。
【0051】
他の積層造形法とは対照的に、本発明の方法は、各層がプリントされた後に構造のくずれを回避するための硬化を開始するために、照射環境または加熱環境で実施する必要がない。
【0052】
プリント工程1)および2)は、同時にまたは連続して行うことができる。それらが同時に行われる場合、サポートの部分とシリコーンエラストマー物品の前駆体の部分が同時にプリントされる。それらを連続して行う場合、工程1)は工程2)の前に行うことができ、サポートの一部が最初にプリントされ、次にシリコーンエラストマー物品の前駆体の一部がプリントされる。または、工程2)を工程1)の前に実行して、シリコーンエラストマー物品の前駆体の一部を最初にプリントし、次にサポートの一部をプリントすることができる。
【0053】
工程1)および/または2)は数回繰り返すことができる。これらの工程が繰り返されるたびに、同時にまたは連続して行うことができる。例えば、サポートの最初の部分がプリントされ、次にシリコーンエラストマー物品の前駆体の部分がプリントされ、最後にサポートの部分とシリコーンエラストマー物品の前駆体の部分が同時にプリントされる。
【0054】
架橋工程4)は、室温で、または加熱することによって行うことができる。有利には、架橋工程4)は、室温で、または40℃以下の温度で、好ましくは10分~24時間加熱することによって実施される。この架橋工程は数回行うことができる。一実施形態では、工程4)は、シリコーンエラストマー物品の架橋性シリコーン組成物X前駆体を加熱する工程である。加熱は、硬化を促進するために使用することができる。別の実施形態において、工程4)はシリコーンエラストマー物品の架橋性シリコーン組成物X前駆体を照射する工程であり、照射はUV光で行うことができる。硬化を促進するために、さらなる照射を使用することができる。別の実施形態では、工程4)は、シリコーンエラストマー物品の架橋性シリコーン組成物X前駆体の加熱および照射の両方を含む。
【0055】
この方法は、サポートまたはサポート材料を除去するための工程5)をさらに含んでもよい。サポートまたはサポート材料は、好ましくはサポートまたはサポート材料の粉塵を回収する部屋で、例えばプリント物体をブラッシングするか、プリント物体に乾燥空気を吹き付けることによって、機械的に除去することができる。
【0056】
サポートまたはサポート材料は、溶媒中、好ましくは水中、より好ましくは撹拌水浴(脱塩水、または酸性条件、または分散剤を使用)中に浸漬することによっても除去することができる。
【0057】
サポートまたはサポート材料はまた、機械的に、および溶媒への溶解によって、例えば溶媒と超音波の組み合わせを使用して除去することもできる。
【0058】
除去工程(5)は、架橋工程4)の前および/または後に行うことができる。本方法の一実施形態によれば、第1架橋工程4)は、シリコーンエラストマー物品の架橋性シリコーン組成物X前駆体を室温にすることによって、またはシリコーンエラストマー物品の架橋性シリコーン組成物X前駆体を40℃以下の温度で、好ましくは10分から24時間の間、加熱することによって、行われる。続いて、サポートまたはサポート材料を機械的におよび/または溶媒または水に溶解することによって除去し、次いで別の架橋工程4)を行う。別の架橋工程4)は、架橋を完了するために、シリコーンエラストマー物品の架橋性シリコーン組成物X前駆体を25℃~250℃、好ましくは30℃~200℃の温度で加熱することにより行う。
【0059】
後処理オプション
任意に後処理工程により、プリント物品の表面品質を大幅に向上させることができる。やすりがけ工程は、モデルの目に見えて異なる層を削減または除去する一般的な方法である。シリコーンエラストマー物品の表面に熱またはUV硬化性RTVまたはLSR架橋性シリコーン組成物をスプレーまたはコーティングして、適切な滑らかな表面外観を得ることができる。
【0060】
レーザーによる表面処理も可能である。
【0061】
医療用途の場合、最終エラストマー物品の滅菌は、例えば、乾燥雰囲気中でまたは蒸気を含むオートクレーブ内で加熱すること、例えばガンマ線下で100℃を超える温度で対象物を加熱すること、エチレンオキサイド滅菌、電子線滅菌によって得ることができる。
【0062】
得られたシリコーンエラストマー物品は、単純または複雑な形状を有する任意の物品であり得る。それは、たとえば、心臓、肢、腎臓、前立腺などの解剖学的モデル(機能的または非機能的)、外科医および教育界のモデル、装具(orthotics)、装具(prostheses)、さらには補聴器、ステント、喉頭インプラントなどの長期インプラントなどのさまざまなクラスのインプラントである。
【0063】
得られたシリコーンエラストマー物品は、ロボット工学用のアクチュエーター、ガスケット、自動車/航空用の機械部品、電子デバイス用の部品、コンポーネントのカプセル化用のパッケージ、振動アイソレーター、衝撃アイソレーターまたはノイズアイソレーターでもあり得る。
【0064】
サポート材料組成物V
サポート材料組成物Vは、
(A)少なくとも1つのポリオルガノシロキサンA、好ましくは直鎖ポリオルガノシロキサン;
(B)少なくとも1つのポリエーテルまたはポリエーテル部分を含有するポリマーB;
(C)シリカC、好ましくはヒュームドシリカ、沈降シリカまたはそれらの混合物から選択される;
を含む。
【0065】
前記少なくとも1つのポリオルガノシロキサンAは、好ましくは少なくとも1つのポリオルガノシロキサンオイルA、より好ましくは少なくとも1つの直鎖ポリオルガノシロキサンオイルであり、前記少なくとも1つの直鎖ポリオルガノシロキサンオイルは、直鎖のホモポリマーまたはコポリマーであって、1分子当たり、互いに同一または異なる一価の有機置換基を有し、前記一価の有機置換基は、ケイ素原子に結合するとともに、C1~C6アルキルラジカル、C3~C8シクロアルキルラジカル、C6~C10アリールラジカルおよびC7~C15アルキルアリールラジカルからなる群から選択される。
【0066】
ポリオルガノシロキサンAの粘度は、3Dプリントに適している限り特に限定されない。
【0067】
好ましくは、ポリオルガノシロキサンAは、オイル若しくはゴムまたはそれらの混合物であり得る。好ましくは、ポリオルガノシロキサンAは、23℃で約1から50000000mPa・s、一般に23℃で約10から10000000mPa・s、より好ましくは23℃で約50から1000000mPa・sである。
【0068】
例として、直鎖ポリオルガノシロキサンAは:
- 各鎖に沿って:
・任意に式(R12SiO2/2の単位と組み合わされた、式R12SiO2/2の単位、
・任意に式(R12SiO2/2の単位と組み合わされた、式(R22SiO2/2の単位、
・任意に式(R12SiO2/2の単位と組み合わされた、式R12SiO2/2の単位および式(R22SiO2/2の単位、
から構成され、
- および、各鎖末端で式(R33SiO1/2の単位によりブロックされており、各R3ラジカルは同一または異なり、R1およびR2から選択され;
- ここで、上記のさまざまなシロキシ単位の一価の有機置換基であるR1およびR2ラジカルは、次の定義を有し:
- 各R1ラジカルは、互いに同一または異なり、以下:
◆鎖C1~C6または分岐C1~C6のアルキルラジカル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、
◆C3~C8のシクロアルキルラジカル、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、
◆鎖C2~C8または分岐C3~C8のアルケニルラジカル、たとえばビニル、アリル、および
◆ヒドロキシルラジカル、
から選択され、
- 各R2ラジカルは、互いに同一または異なり、以下:
◆C6~C10のアリールラジカル、例えばフェニル、ナフチル、
◆C7~C15のアルキルアリールラジカル、例えば、トリル、キシリル、および
◆C7~C15のアリールアルキルラジカル、例えばベンジル
から選択される。
【0069】
好ましくは、直鎖ポリオルガノシロキサンAは、メチルポリシロキサン、ビニルポリシロキサン、ヒドロキシポリシロキサンなど、またはそれらの混合物から選択することができる。
【0070】
好ましくは、直鎖ポリオルガノシロキサンAは非反応性直鎖ポリオルガノシロキサンオイルである。本発明の文脈において、「非反応性」とは、組成物の調製および使用条件下で、組成物の構成成分のいずれとも化学的に反応しないオイルを意味することを意図する。好ましくは、非反応性直鎖ポリオルガノシロキサンオイルは非反応性メチルポリシロキサンオイルである。
【0071】
ポリオルガノシロキサンAはまた、ビニルポリシロキサン、ヒドロキシポリシロキサンまたはそれらの混合物であってもよいし、それらを含んでいてもよい。
【0072】
ビニルポリシロキサンオイル中のビニル含有量は、好ましくは0.0001~29重量%、より好ましくは0.01~5重量%である。好ましくは、前記ビニルポリシロキサンオイルは、ビニル末端ポリジメチルシロキサンオイルから選択される。
【0073】
ヒドロキシポリシロキサンオイルのヒドロキシ含量は、好ましくは0.00001~30重量%、より好ましくは0.01~5重量%である。より好ましくは、前記ヒドロキシポリシロキサンオイルは、ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンオイルから選択される。
【0074】
「動的粘度」という用語は、材料内の流速勾配の存在に伴うせん断応力を意味することを意図している。本明細書で参照されるすべての粘度は、ASTM D445に従って、それ自体既知の方法で、23℃で測定される動的粘度の大きさに対応する。粘度は、一般にブルックフィールド粘度計を使用して測定される。
【0075】
組成物中に存在するポリオルガノシロキサンAの量は、組成物の総重量に対して1重量%から99重量%、好ましくは3重量%から95重量%、さらに好ましくは5重量%から85重量%である。
【0076】
成分Bは、少なくとも1つのポリエーテルまたはポリエーテル部分を含むポリマーである。好ましくは、ポリエーテル部分を含むポリマーの主鎖はポリエーテル部分(-R4-O-R5-)nを含み、その末端基または側基は1つ以上の置換基R6を含み、ここで、R4およびR5は、同一または異なり、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基および3,3,3-トリフルオロプロピル基などの1~8個の炭素原子を有するアルキル基、およびキシリル基、トリル基およびフェニル基などのアリール基から選択され、また、各R6は、同一または異なり、H、炭化水素基、シロキサン基、エステル基、およびこれらの混合物を表し、さらにここで、n=1~1000、好ましくはn=2~500、より好ましくはn=2~100である。
【0077】
成分Bは、次の一般式のポリアルキレングリコールであることが好ましく、
10-[(O-CH2-CHR7n(Z)k(O-CH2-CHR8m]-OR9
ここで:
7は水素またはC1~C4炭化水素基、好ましくは水素またはメチルであり、
8はR7と同じ意味を持ち、R7と同一でも異なっていてもよく、
9は、水素、または任意に置換された若しくはモノ若しくはポリ不飽和のC1~C20炭化水素基、アリール基、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、アクリル、メタクリルなどのアシル基、ビニル基、グリシドキシ基、1~50の繰り返し単位を有するポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール基などのポリアルキレングリコール基であり、および
10はR9と同じ意味を持ち、R9と同一でも異なっていてもよく、
Zは、1分子当たり2個を超えるヒドロキシ基、すなわち分岐点を有するモノマーであり、例えば、プロパントリオールなどの三価アルコール、または2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオールなどの四価アルコールであり、ここで、ポリアルキレングリコール中のヒドロキシ基は、アルキレングリコールモノマーでエーテル化され、したがって、好ましくは3つまたは4つの側鎖を有する分岐ポリアルキレングリコールを与え、
kは0または1であり、および
合計n+mが1から1000、好ましくは5から500の整数であるという条件付きで、n、mは0から1000、好ましくは0から500の整数である。
【0078】
ポリアルキレングリコールは、1分子当たり3つまたは4つの側鎖を有する直鎖状または分岐状であることが好ましい。
【0079】
融点が100℃未満、好ましくは50℃未満のポリアルキレングリコールが好ましく、室温(=25℃)で液体であるポリアルキレングリコールが特に好ましい。
【0080】
200g/モルから10,000g/モルまでの数平均モル質量(Mn)を有するポリエチレングリコールが好ましい。
【0081】
200g/モルから10,000g/モルまでのMnを有するポリプロピレングリコールも好ましい。
【0082】
約200g/モル(PEG200)、約400g/モル(PEG400)、約600g/モル(PEG600)、および約1000g/モル(PEG1000)のMnを有するポリエチレングリコールが特に好ましい。約425g/モル、約725g/モル、約1000g/モル、約2000g/モル、約2700g/モルおよび約3500g/モルのMnを有するポリプロピレングリコールが特に好ましい。
【0083】
200g/モルから1000,000g/モルのMn、特に1000g/モルから50,000g/モルのMnを有する直鎖ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールコポリマーが好ましく、これらはランダムまたはブロックコポリマーであり得る。
【0084】
200g/モルから100,000g/モルのMn、特に1000g/モルから50,000g/モルのMnを有する分岐ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールコポリマーが好ましく、これらはランダムまたはブロックコポリマーであり得る。
【0085】
ポリアルキレングリコールモノエーテル、すなわち、Mnが1000g/モルから10,000g/モルであり、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテルなどのアルキルエーテル部分を有する、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリプロピレングリコールモノエーテル、および、エチレングリコール-プロピレングリコールコポリマーモノエーテルが好ましい。
【0086】
ポリアルキレングリコールは、好ましくは、純粋な形態で、または任意の混合物で使用することができる。
【0087】
別の実施形態によれば、成分Bはポリエーテル変性シリコーンオイルである。
【0088】
好ましくは、成分Bは、少なくとも1つのポリエーテルブロック(例えば、ポリエチレングリコールおよび/またはポリプロピレングリコール基を有する)を含むグラフトまたはブロックポリジメチルシロキサンオイルである。
【0089】
さらなる実施形態によれば、成分Bは、ポリジオルガノシロキサン-ポリエーテルコポリマーまたはポリアルキレンオキシド変性ポリオルガノシロキサンとしても知られるオルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーであり、アルキレンオキシド鎖配列を持つシロキシル単位を含有するオルガノポリシロキサンである。好ましくは、オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーは、エチレンオキシド鎖配列および/またはプロピレンオキシド鎖配列を持つシロキシル単位を含有するオルガノポリシロキサンである。
【0090】
好ましい実施形態では、オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーは、式(E-1)
[R11 abSiO(4-a-b)/2n (E-1)
の単位を含むシロキシル含有オルガノポリシロキサンであり:
ここで、
各R11は、1から30個の炭素原子を含む炭化水素系基から独立して選択され、好ましくは、1から8個の炭素原子を含むアルキル基、2から6個の炭素原子を含むアルケニル基、および6から12個の間の炭素原子を含むアリール基によって形成される群から選択され;
各Zは、-R12-(OCp2pq(OCH(CH3)-CH2s-OR13基であり、
ここで、
nは2より大きい整数であり;
aおよびbは独立して0、1、2または3であり、a+b=0、1、2または3であり、
12は炭素数2~20の2価の炭化水素基または直接結合であり;
13は水素原子またはR11で定義した基であり;
pおよびrは独立して1から6までの整数であり;
qとsは独立して0か、l<q+s<400のような整数であり;
オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーの各分子は、少なくとも1つのZ基を含む。
【0091】
好ましい実施形態では、上記の式(E-1)において:
nは2より大きい整数であり;
aおよびbは独立して0、1、2または3であり、a+b=0、1、2または3であり、
11は炭素数1~8のアルキル基であり、R11がメチル基であることが最も好ましい。
12は炭素数2~6の2価の炭化水素基または直接結合であり;
p=2およびr=3、
qは1から40の間、最も好ましくは5から30の間に含まれ、
sは1から40の間、最も好ましくは5から30の間であり、
13は水素原子または1~8個の炭素原子を含むアルキル基であり、最も好ましくはR13は水素原子である。
【0092】
最も好ましい実施形態では、オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーは、1~200、好ましくは50~150からなるシロキシル単位(E-1)の総数と、2~25、好ましくは3~15の間からなるZ基の総数を含むオルガノポリシロキサンである。
【0093】
本発明の方法で使用できるオルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーの例は、式(E-2)
a 3SiO[Ra 2SiO]t[RaSi(Rb-(OCH2CH2x(OCH(CH3)CH2y-OH)O]rSiRa 3 (E-2)
に対応し、
ここで、
各Raは、独立して、1~8個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、好ましくはRaはメチル基であり、
各Rbは炭素数2~6の2価の炭化水素基または直接結合であり、好ましくはRbはプロピル基であり、
xおよびyは、独立して、1から40、好ましくは5から30、最も好ましくは10から30を含む整数であり、
tは1から200、好ましくは25から150であり、
rは2から25、好ましくは3から15である。
【0094】
有利には、一実施形態において、オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーは、
Me3SiO[Me2SiO]75[MeSi((CH23-(OCH2CH222(OCH(CH3)CH222-OH)O]7SiMe3
である。
【0095】
別の実施形態では、オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーは、分岐オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーであり、分岐オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーは、少なくとも1つのTおよび/または1つのQシロキシ単位を含み、Qはシロキシ単位SiO2/2に対応し、Tはシロキシ単位R11SiO3/2に対応する。ここでR11は、独立して、1~30個の炭素原子を含む炭化水素系基から選択され、好ましくは、1~8個の炭素原子を含むアルキル基、2~6個の炭素原子を含むアルケニル基、および6~12個の炭素原子を含むアリール基によって形成される群から選択される。
【0096】
別の実施形態では、オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーは、2~6個の炭素原子を有するアルケニル基、ヒドロキシド、水素、(メタ)アクリレート基、アミノ基、およびアルコキシ基、エノキシ基、アセトキシ基またはオキシム基としての加水分解性基からなる群より選択される他の官能基をさらに含むことができる。
【0097】
一般に、成分Bは、23℃で1~100000000mPa・s、好ましくは23℃で10~500000mPa・s、より好ましくは23℃で50~10000mPa・sの動的粘度を有する。
【0098】
組成物中に存在する成分Bの量は、組成物の全重量に対して0.01から99重量%、好ましくは0.5から90重量%、より優先的には1から85重量%、さらにより優先的には3から80重量%である。
【0099】
シリカCは、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、またはそれらの混合物から選択することができる。好ましくは、シリカは、0.01から800μm、好ましくは0.01から300μm、より好ましくは0.02から100μm、最も好ましくは0.03から30μmの平均粒径(D50)を有する。また好ましくは、シリカは、BET法で測定したBET比表面積が0.5m2/gを超え、好ましくは5~500m2/g、より好ましくは50~400m2/g、最も好ましくは100~300m2/gである。
【0100】
シリカCは、処理されていても未処理であってもよい。すなわち、シリカは、未変性の形態で使用されてもよく、またはこの目的のために通常使用される処理化合物で処理された後に使用されてもよい。これらの処理化合物には、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンなどのメチルポリシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザンなどのメチルポリシラザン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、ジメチルビニルクロロシランなどのクロロシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、トリメチルメトキシシランなどのアルコキシシランがある。
【0101】
組成物中に存在するシリカCの量は、組成物の全重量に対して0.5重量%から60重量%、好ましくは1重量%から40重量%、さらに好ましくは2重量%から30重量%、さらには優先的に5重量%から20重量%である。
【0102】
サポート材料組成物は、組成物の目標特性を妨害または悪影響を及ぼさない限り、1つ以上の他の添加剤を任意に含んでもよい。
【0103】
サポート材料組成物中に存在する他の添加剤の量は、組成物の総重量に対して0重量%から20重量%、好ましくは0.5重量%から10重量%、さらに好ましくは1重量%から5重量%である。
【0104】
組成物は、レオロジー添加剤、着色剤、pH調整剤、抗菌剤、分散剤、老化防止剤、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含んでもよい。
【0105】
本発明による組成物はまた、標準的な半強化またはパッキング充填剤(packing filler)、ヒドロキシル官能性シリコーン樹脂、顔料、または接着促進剤のような他の充填剤を含んでもよい。
【0106】
半強化またはパッキング鉱物充填剤として含まれる非珪質鉱物は、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化アルミニウム、アルミナ水和物、炭酸カルシウム、粉砕石英、珪藻土、酸化亜鉛、雲母、タルク、酸化鉄、硫酸バリウム、消石灰からなる群より選択することができる。
【0107】
本発明によるサポート材料組成物の粘度は、3Dプリントに適している限り特に限定されない。
【0108】
好ましくは、本発明によるサポート材料組成物は、23℃で約100から50000000mPa・s、一般に23℃で約5000から10000000mPa・s、最も好ましくは23℃で50000~5000000mPa・sの動的粘度を有することができる。
【0109】
有利には、サポート材料組成物はチキソトロピー特性を有する。好ましくは、サポート材料組成物は、2~100、好ましくは3~60、より好ましくは4~50、最も好ましくは3.5~50のチキソトロピー指数を有する。
【0110】
本発明によるサポート材料組成物は、当業者に知られている一般的な方法に従って調製することができる。例えば、サポート材料組成物は、様々な成分を混合することによって調製することができる。
【0111】
サポート材料組成物Vの使用
本発明はまた、好ましくは押出しによって、サポートを3Dプリントするためのサポート材料組成物Vの使用に関し、サポート材料組成物Vは、
(A)少なくとも1つのポリオルガノシロキサンA、好ましくは直鎖ポリオルガノシロキサン;
(B)少なくとも1つのポリエーテルまたはポリエーテル部分を含有するポリマーB;
(C)シリカC、好ましくはヒュームドシリカ、沈降シリカまたはそれらの混合物から選択される、
を含む。
【0112】
サポート材料組成物Vは、本明細書に記載のものである。サポートの3Dプリントは、好ましくは、(i)サポート組成物材料Vをプリントするための少なくとも1つのディスペンサーを備える押出し3Dプリンターを使用して行われる。一実施形態では、押出し3Dプリンターは、(i)サポートをプリントするための少なくとも1つのノズルを備え、各ノズルの直径は、50~5,000μm、好ましくは100~800μm、最も好ましくは100~500μmである。
【0113】
本発明はまた、3Dプリンター、好ましくは押出し3Dプリンターを使用して、シリコーンエラストマー物品およびサポートを積層造形するためのサポート材料組成物Vの使用に関し、サポート材料組成物Vは、
(A)少なくとも1つのポリオルガノシロキサンA、好ましくは直鎖ポリオルガノシロキサン;
(B)少なくとも1つのポリエーテルまたはポリエーテル部分を含有するポリマーB;
(C)シリカC、好ましくはヒュームドシリカ、沈降シリカまたはそれらの混合物から選択される、
を含む。
【0114】
一実施形態では、3Dプリンターは、(i)少なくとも1つのディスペンサー、例えば、シリコーンエラストマー物品の架橋性シリコーン組成物X前駆体をプリントするためのノズルまたはプリントヘッド、および(ii)サポート組成物材料Vをプリントするための少なくとも1つのディスペンサーを含む押出し3Dプリンターである。
【0115】
一実施形態では、押出し3Dプリンターは、(i)シリコーンエラストマー物品の架橋性シリコーン組成物X前駆体をプリントするための少なくとも1つのノズル、および(ii)サポート組成物材料Vをプリントするための少なくとも1つのノズルを含み、それぞれの直径はノズルは、50から5,000μm、好ましくは100から800μm、最も好ましくは100から500μmから構成される。
【0116】
この方法の一実施形態では、三次元シリコーンエラストマー物品を積層造形するための方法は、(i)ノズルを通して分配されるサポート材料組成物Vを含む少なくとも1つのカートリッジ、および(ii)ノズルを通して分配されるシリコーンエラストマー物品の架橋性シリコーン組成物X前駆体を含む少なくとも1つのカートリッジを含む押出し3Dプリンターを使用し、各ノズルの直径が50~5,000μm、好ましくは100~800μm、最も好ましくは100~500μmであり、カートリッジ圧力は、好ましくは1から28バールである。
【0117】
架橋性シリコーン組成物X(ビルディング材料組成物)
シリコーンエラストマー物品の架橋性シリコーン組成物X前駆体は、当業者に周知の、3Dプリントに適した、例えば重付加反応または重縮合反応を介して架橋可能な任意のシリコーン組成物であり得る。
【0118】
非限定的な例として、シリコーンエラストマー物品の架橋性シリコーン組成物X前駆体は、重付加により架橋可能なシリコーン組成物であり得る。この実施形態において、組成物Xは、
(A’)1分子あたり、ケイ素原子に結合した少なくとも2つのC2~C6アルケニルラジカルを含む少なくとも1つのオルガノポリシロキサン化合物A’、
(B’)1分子あたり、同一または異なるケイ素原子に結合した少なくとも2つの水素原子を含む少なくとも1つのオルガノハイドロジェノポリシロキサン化合物B’、
(C’)白金族からの少なくとも1つの金属または化合物からなる少なくとも1つの触媒C’、
(D’)任意の少なくとも1つの充填剤D’、
(E’)任意の少なくともチキソトロピー剤E’、および
(F’)必要に応じて、少なくとも1つの架橋抑制剤F’
を含む。
【0119】
特に有利な形態によれば、1分子当たり、少なくとも2つの、ケイ素原子に結合したC2~C6アルケニルラジカルを含むオルガノポリシロキサンA’であって、
(i)少なくとも2つの下記式
【化1】
(A’.1)
を有するシロキシル単位(A’.1)であって、当該各単位は同一でも異なっていてもよく:
ここで:
- a=1または2、b=0、1または2、およびa+b=1、2または3;
- 各記号Wは、同一でも異なっていてもよく、直鎖または分岐C2~C6アルケニル基を表し、
- 各記号Zは、同一でも異なっていてもよく、1~30個の炭素原子を含む一価の炭化水素系基を表し、当該一価の炭化水素系基は、好ましくは1~8個の炭素原子を含むアルキル基および6~12個の炭素原子を含むアリール基によって形成される群から選択され、および、さらに好ましくは、メチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリルおよびフェニルラジカルによって形成される群から選択され、
(ii)および任意に、以下の式
【化2】
(A’.2)
を有する少なくとも1つのシロキシル単位:
ここで:
- a=0、1、2、または3、
- 各記号Z1は、同一であっても異なっていてもよく、1~30個の炭素原子を含む一価の炭化水素系基を表し、当該一価の炭化水素系基は、好ましくは1~8個の炭素原子を含むアルキル基および6~12個の炭素原子を含むアリール基によって形成される群から選択され、およびさらにより好ましくは、メチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリル、およびフェニルラジカルによって形成される群から選択される。
【0120】
有利には、ZおよびZ1はメチルラジカルおよびフェニルラジカルによって形成される群から選択され、Wは以下のリストから選択される:ビニル、プロペニル、3-ブテニル、5-ヘキセニル、9-デセニル、10-ウンデセニル、5,9-デカジエニルおよび6-11-ドデカジエニルであり、好ましくは、Wはビニルである。
【0121】
これらのオルガノポリシロキサンは、直鎖、分岐または環状の構造を有していてもよい。それらの重合度は、好ましくは2~5000である。
【0122】
それらが直鎖ポリマーである場合、それらは本質的に、シロキシル単位”D”およびシロキシル単位”M”から形成され、シロキシル単位”D”は、シロキシル単位W2SiO2/2、WZSiO2/2およびZ1 2SiO2/2によって形成される群から選択され、およびシロキシル単位”M”は、シロキシル単位W3SiO1/2、WZ2SiO1/2、W2ZSiO1/2およびZ1 3SiO1/2によって形成される群から選択される。記号W、ZおよびZ1は、上記の通りである。
【0123】
末端単位”M”の例として、トリメチルシロキシ基、ジメチルフェニルシロキシ基、ジメチルビニルシロキシ基またはジメチルヘキセニルシロキシ基を挙げることができる。
【0124】
単位”D”の例として、ジメチルシロキシ基、メチルフェニルシロキシ基、メチルビニルシロキシ基、メチルブテニルシロキシ基、メチルヘキセニルシロキシ基、メチルデセニルシロキシ基またはメチルデカジエニルシロキシ基を挙げることができる。
【0125】
前記オルガノポリシロキサンA’は、23℃で約10から100000mPa・s、一般に23℃で約10から70000mPa・sの動的粘度を有するオイルまたは23℃で約1000000mPa・s以上の動的粘度を有するガムであり得る。
【0126】
好ましくは、オルガノポリシロキサン化合物A’は、0.001~30%、好ましくは0.01~10%のSi-ビニル単位の質量含有率を有する。
【0127】
好ましい実施形態によれば、オルガノハイドロジェノポリシロキサン化合物B’は、1分子当たり、同一または異なるケイ素原子に結合した少なくとも2個の水素原子を含有し、好ましくは、1分子当たり、同一または異なるケイ素原子に直接結合した少なくとも3個の水素原子を含有するオルガノポリシロキサンである。
【0128】
有利には、オルガノハイドロジェノポリシロキサン化合物B’は、下記を含むオルガノポリシロキサンである:
(i)以下の式
【化3】
(B’.1)
を有する少なくとも2つのシロキシル単位、好ましくは少なくとも3つのシロキシル単位:
ここで:
- d=1または2、e=0、1または2、およびd+e=1、2または3、
- 各記号Z3は、同一でも異なっていてもよく、1~30個の炭素原子を含む一価の炭化水素系基を表し、一価の炭化水素系基は、好ましくは、1~8個の炭素原子を含むアルキル基および6~12個の炭素原子を含むアリール基によって形成される群から選択され、さらに好ましくは、メチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリル、およびフェニルラジカルによって形成される群から選択され、
(ii)任意に、以下の式
【化4】
(B’.2)
を有する少なくとも1つのシロキシル単位:
ここで:
- c=0、1、2、または3、
- 各記号Z2は、同一でも異なっていてもよく、1~30個の炭素原子を含む一価の炭化水素系基を表し、当該一価の炭化水素系基は、好ましくは、1~8個の炭素原子を含むアルキル基および6~12個の炭素原子を含むアリール基によって形成される群から選択され、さらに好ましくは、メチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリルおよびフェニルラジカルによって形成される群から選択される。
【0129】
オルガノハイドロジェノポリシロキサン化合物B’は、式(B’.1)のシロキシル単位のみから形成されてもよいし、式(B’.2)の単位を含んでもよい。それは直鎖、分岐または環状の構造を有していてもよい。重合度は、好ましくは2以上である。より一般的には、それは5000未満である。
【0130】
式(B’.1)のシロキシル単位の例は、特に次の単位である:H(CH32SiO1/2、HCH3SiO2/2およびH(C65)SiO2/2
【0131】
それらが直鎖ポリマーである場合、それらは本質的に次のものから形成され、
- 次の式Z2 2SiO2/2またはZ3HSiO2/2を有する単位から選択されるシロキシル単位”D”、および
- 次の式Z2 3SiO1/2またはZ3 2HSiO1/2を有する単位から選択されシロキシル単位”M”、
記号Z2およびZ3は上述の通りである。
【0132】
これらの直鎖オルガノポリシロキサンは、23℃で約1~100000mPa・s、一般に23℃で約10~5000mPa・sの動的粘度を有するオイル、または、23℃で約1000000mPa・s以上の動的粘度を有するガムであり得る。
【0133】
それらが環状オルガノポリシロキサンである場合、それらは、次の式Z2 2SiO2/2およびZ3HSiO2/2を有するシロキシル単位”D”から形成され、これらは、ジアルキルシロキシまたはアルキルアリールシロキシ型または単位Z3HSiO2/2のみから形成され、記号Z2およびZ3は、上記の通りである。それらの粘度は約1~5000mPa・sである。
【0134】
直鎖オルガノハイドロジェノポリシロキサン化合物B’の例は、ハイドロジェノジメチルシリル末端基を有するジメチルポリシロキサン、トリメチルシリル末端基を有するジメチルハイドロジェノメチルポリシロキサン、ハイドロジェノジメチルシリル末端基を有するジメチルハイドロジェノメチルポリシロキサン、トリメチルシリル末端基を有するハイドロジェノメチルポリシロキサン、および環状ハイドロジェノメチルポリシロキサンである。
【0135】
一般式(B’.3)
【化5】
(B’.3)
に対応するオリゴマーおよびポリマーは、オルガノハイドロジェノポリシロキサン化合物B’として特に好ましく:
ここで:
- xとyは、0から200までの範囲の整数であり、
- 各記号R1は、同一でも異なっていてもよく、互いに独立して以下を表し、
・1から8個の炭素原子を含み、任意に少なくとも1個のハロゲン、好ましくはフッ素で置換された直鎖または分岐アルキルラジカルであって、好ましくはメチル、エチル、プロピル、オクチルおよび3,3,3-トリフルオロプロピルであるアルキルラジカル、
・5~8個の環状炭素原子を含むシクロアルキルラジカル、
・6~12個の炭素原子を含むアリールラジカル、または
・5~14個の炭素原子を含むアルキル部分および6~12個の炭素原子を含むアリール部分を有するアラルキルラジカル。
【0136】
以下の化合物
【化6】
は、オルガノハイドロジェノポリシロキサン化合物B’として本発明に特に適している:
a、b、c、d、およびeは以下で定義される。
- 式S1のポリマー:
- 0≦a≦150、好ましくは0≦a≦100、より具体的には0≦a≦20、および
- 1≦b≦90、好ましくは10≦b≦80、より具体的には30≦b≦70、
- 式S2のポリマーにおいて:0≦c≦100、好ましくは0≦c≦15
- 式S3のポリマーにおいて:5≦d≦200、好ましくは20≦d≦100、および
2≦e≦90、好ましくは10≦e≦70。
【0137】
特に、本発明での使用に適したオルガノハイドロジェノポリシロキサン化合物B’は、a=0である式S1の化合物である。
【0138】
好ましくは、オルガノハイドロジェノポリシロキサン化合物B’は、0.2~91%、好ましくは0.2~50%のSiH単位の質量含有率を有する。
【0139】
白金族からの少なくとも1つの金属または化合物からなる触媒C’はよく知られている。白金族の金属は、白金以外に、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、およびイリジウムを組み合わせた、プラチノイドという名前で知られている金属である。白金およびロジウム化合物が好ましく使用される。米国特許第3159601号明細書、米国特許第3159602号明細書、米国特許第3220972号明細書および欧州特許出願公開第0057459号明細書、欧州特許出願公開第0188978号明細書および欧州特許出願公開第0190530号明細書に記載されている白金と有機生成物の錯体、および米国特許第3419593号明細書、米国特許第3715334号明細書、米国特許第3377432号明細書および米国特許第3814730号明細書に記載されている白金およびビニルオルガノシロキサンの錯体を特に使用することができる。具体例としては、白金金属粉末、塩化白金酸、塩化白金酸とβ-ジケトンの錯体、塩化白金酸とオレフィンの錯体、塩化白金酸と1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンの錯体、上記の触媒を含むシリコーン樹脂粉末の錯体、式:RhCl(Ph3P)3、RhCl3[S(C4923などで表されるようなロジウム化合物;テトラキス(トリフェニル)パラジウム、パラジウムブラックとトリフェニルホスフィンの混合物が挙げられる。
【0140】
白金触媒は、好ましくは、室温で十分に迅速な架橋を可能にするために、触媒的に十分な量で使用されるべきである。典型的には、全シリコーン組成物に対して、Pt金属の量に基づいて、1~200重量ppm、好ましくは1~100重量ppm、より好ましくは1~50重量ppmの触媒が使用される。
【0141】
十分に高い機械的強度を可能にするために、付加架橋型シリコーン組成物Xは、強化充填剤D’として例えばシリカ微粒子などの充填剤を含むことができる。沈降シリカ、ヒュームドシリカおよびそれらの混合物を使用することが可能である。これらの活性強化充填剤の比表面積は、BET法によって測定して、少なくとも50m2/g、好ましくは100~400m2/gの範囲にあるべきである。この種の活性強化充填剤は、シリコーンゴムの分野で非常によく知られている材料である。上記のシリカ充填剤は、親水性を有していてもよいし、または既知のプロセスによって疎水化されていてもよい。
【0142】
付加架橋型シリコーン組成物中のシリカ強化充填剤D’の量は、全組成物の5重量%から40重量%、好ましくは10重量%から35重量%の範囲である。この配合量が5重量%未満では十分なエラストマー強度が得られない場合があり、一方、40重量%を超えると実際の配合が困難になる場合がある。
【0143】
本発明によるシリコーン組成物はまた、標準的な半強化充填剤またはパッキング充填剤(packing filler)、ヒドロキシル官能性シリコーン樹脂、顔料、または接着促進剤のような他の充填剤を含んでもよい。
【0144】
半強化充填剤またはパッキング鉱物充填剤として含まれる非珪質鉱物は、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化アルミニウム、アルミナ水和物、炭酸カルシウム、粉砕石英、珪藻土、酸化亜鉛、雲母、タルク、酸化鉄、硫酸バリウム、消石灰からなる群より選択されることができる。
【0145】
架橋性シリコーン組成物Xはまた、せん断減粘およびチキソトロピー特性を調整する働きをするレオロジー剤であるチキソトロピー剤E’を含むことができる。
【0146】
一実施形態では、チキソトロピー剤E’は極性基を含む。好ましくは、チキソトロピー剤E’は、少なくとも1つのエポキシ基を有する有機化合物または有機ケイ素化合物、少なくとも1つの(ポリ)エーテル基を有する有機化合物またはオルガノポリシロキサン化合物、少なくとも(ポリ)エステル基を有する有機化合物、少なくとも1つのアリール基を有するオルガノポリシロキサン、およびそれらの任意の組み合わせ、からなる群から選択することができる。
【0147】
架橋抑制剤F’は、周囲温度での組成物の硬化を遅らせるために、シリコーン組成物を架橋するのに加えて一般に使用される。架橋抑制剤F’は、以下の化合物から選択することができる:
- アセチレンアルコール;
- 任意に環状形態であってもよい少なくとも1つのアルケニルで置換されたオルガノポリシロキサンであり、テトラメチルビニルテトラシロキサンが特に好ましい;
- ピリジン;
- 有機ホスフィンおよびホスファイト;
- 不飽和アミド、および
- マレイン酸アルキルおよびアリル。
【0148】
これらのアセチレンアルコール(Cf.仏国特許発明第1528464号明細書および仏国特許出願公開第2372874号明細書、参照)は、好ましいヒドロシリル化反応熱ブロッカーの1つであり、次の式を有する。
(R’)(R”)(OH)C-C≡CH
ここで:
- R’は、直鎖または分岐アルキルラジカル、またはフェニルラジカルであり;および
- R”は、Hまたは直鎖または分岐アルキルラジカル、またはフェニルラジカルであり;ラジカルR’およびR”と炭素原子αが三重結合に対して環を形成し得る。
【0149】
R’およびR’’に含まれる炭素原子の総数は、少なくとも5個、好ましくは9~20個である。前記アセチレンアルコールについて、挙げることができる例には以下が含まれる:
- 1-エチニル-1-シクロヘキサノール;
- 3-メチル-1-ドデシン-3-オール;
- 3,7,11-トリメチル-1-ドデシン-3-オール;
- 1,1-ジフェニル-2-プロピン-1-オール;
- 3-エチル-6-エチル-1-ノニン-3-オール;
- 2-メチル-3-ブチン-2-オール;
- 3-メチル-1-ペンタデシン-3-オール;および
- マレイン酸ジアリルまたはマレイン酸ジアリル誘導体。
【図面の簡単な説明】
【0150】
図1図1は、サポート材料を除去する前のビルディング材料によって形成されたシリコーンエラストマー物品を示す写真である。
図2図2は、サポート材料を取り除いた後のビルディング材料によって形成されたシリコーンエラストマー物品を示す写真である。
【0151】
本発明の範囲および関心については、本発明の特定の実施形態を説明することを意図し、非限定的である以下の実施例に基づいて、よりよく理解されるであろう。
【実施例
【0152】
実施例で使用されたサポート材料の原料は、以下の表1に列挙され、サポート材料の配合および試験結果は、表2-1および2-2に見出すことができる。
【0153】
【表1】
【0154】
【表2】
【0155】
【表3】
【0156】
実験
実施例1では、すべての原料を表2-1に示す重量比に従って混合した。具体的には、5部のA-3、80部のB-1を15部のシリカC-1と十分に混合し、実施例1のサポート材料組成物を得る。実施例2~9および比較例1~3も表2-1および2-2に示す重量比に従って、同様のプロセスで調製する。
【0157】
特性評価
本発明によれば、各サンプルの評価結果を表2-1および表2-2に列挙する。
【0158】
レオロジー試験:回転レオメーター(Haake Rehometer)を使用して、実施例1~9に基づくサンプルのレオロジー挙動を定義する。サンプルのせん断速度を一定に保つために、コーンプレート(35mm、1°、ギャップ=52μm)を使用して、25℃で2つの部分でチキソトロピー試験を行う。第1の部分は、3Dプリント条件(5s-1で3秒)のように、材料の微細構造を破壊するための予備せん断試験である。第2の部分は、サンプルのチキソトロピー性能を定義するためのタイムスイープ試験である。ユーザーが3Dプリントにおける材料の性能を評価できるようにする「粘度比」を定義するために、等価せん断減粘試験を実施した。「比」は、低せん断速度および高せん断速度(それぞれ0.5および25s-1)での動的粘度を使用して計算される。「粘度比」の高い値は、材料が高品質の3D物体を製造できることを意味する。
【0159】
この方法では、本実施例のサポート材料は、硬化が完了する前に室温でのシリコーンエラストマー物品のくずれまたは変形を回避するのに必要な適切なレオロジー特性を示す。好ましくは、サポート材料組成物の「チキソトロピー指数」は、低剪断速度(0.5s-1)および高剪断速度(25s-1)における動的粘度の比として定義される。チキソトロピー指数が高いほど、サポート材料のチキソトロピー性能が優れていることを意味する。一般に、チキソトロピー指数が2以上であると、サポート材料に適している。
【0160】
粘度試験:ASTM D445に従って、比較例1~3に基づくサンプルの粘度を23℃で試験する。試験条件の詳細を表2-2に示す。
【0161】
上記の試験方法は、サンプルがサポート材料として使用できるかどうかを示すために採用される。一般に、粘度計によって決定される「チキソトロピー」の状態は、サポート材料の良好な成形の前提条件である。粘度計による「流動性」の状態は、比較例のサンプルが良好な形状を維持できないことを証明している。
【0162】
溶解試験:3gのサポート材料のサンプルを30gの水に入れ、サンプルが完全に溶解するまで放置する(溶液中に明らかな凝集は見られなかった)。溶解時間は表2-1に見ることができる。
【0163】
本発明者らはまた、イソプロパノールおよびシクロヘキサンなどの有機溶媒中でのサポート材料サンプルの溶解時間も試験する。同様の方法で、例えば、実施例2のサポート材料のサンプル3gをイソプロパノール30gおよびヘキサン30gにそれぞれ入れ、サンプルが完全に溶解するまで放置する(溶液中に明らかな凝集が見られなかった)。イソプロパノールおよびヘキサンでの溶解時間はすべて0.5時間である。
【0164】
有機溶剤や水などの溶剤への溶解性は、サポート材を除去する上で重要なパラメーターである。適切なサポート材料は完全に取り除くことができ、ビルディング材料に悪影響を与えることがない。上記の試験から、本発明によるサポート材料が水、イソプロパノールおよびヘキサン中で適度な溶解時間を有し、本発明のサポート材料が溶媒、特に水によって容易に除去できることがわかる。
【0165】
サポート材は、プリント時に適度なチキソトロピー性が要求される一方、水や有機溶剤に素早く溶解するなど、容易に除去することができることが求められる。目標を達成するためには、成分A、B、Cの組み合わせがサポート材で重要な役割を果たす。実施例において、成分A、BおよびCの組み合わせは、良好なチキソトロピーおよび水または有機溶媒への速い溶解速度などの理想的な効果を示す。比較例のサポート材料は、成分AまたはBが存在しないため、良好なチキソトロピーを示すことができない。
【0166】
3Dプリンティングプロセス
3Dプリンティングプロセスは、押出しプロセスに基づく3Dプリンターを使用して実行される。プリンターには、2つの押出しシステムと2つのノズルが装備されている。1つの押出しシステムはビルディング材料用で、もう1つはサポート材料用である。
【0167】
ビルディング材料は以下のように調製される。ビルディング材料の原料を重量比で混合する。57.28部のビニル末端ポリジメチルシロキサン(粘度:1500mPa・s、ビニル含有量:0.26重量%)および7.05部のビニル末端ポリジメチルシロキサン(粘度:600mPa・s、ビニル含有量:0.38重量%)を、24.59部の処理シリカ(CAS NO:68988-89-6)と混合する。0.36部の2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン(CAS NO.:2554-06-5)を加えて十分に混合する。2.16部の鎖内および鎖末端にSiH基を有するポリ(メチルハイドロジェノ)(ジメチル)シロキサン(α/ω)(粘度:300mPa・s、SiH含有量:4.75重量%)、1.72部の鎖内及び末端鎖にSiH基を有するポリ(メチルハイドロジェノ)(ジメチル)シロキサン(α/ω)(粘度:25mPa・s、SiH含量:20重量%)及び1.72部の鎖内及び末端鎖にSiH基を有するポリ(メチルハイドロジェノ)(ジメチル)シロキサン(α/ω)(粘度:8.5mPa・s、SiH含有量:5.5重量%)を添加し、撹拌し、続いて0.017部の触媒白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(Pt含有量:10重量%)と2部のビニル末端メチルフェニルポリシロキサン(粘度:800mPa・s、フェニル含有量:15重量%、屈折率:1.46)を添加し、重付加ビルド材料を得る。ビルド材料の粘度は790000mPa・s(7#、2rpm、23℃)および161400mPa・s(7#、20rpm、23℃)である。異なるせん断力での粘度の比率は4.9であり、ビルド材料がプリンターノズルを介して押し出され、形状を非常に良好に保つことができることを示している。
【0168】
サポート材料は、表2-1の実施例2に基づいて調製する。
【0169】
プリント工程は以下の通りである。
I.ビルディング材料とサポート材料をそれぞれ押出しシステムに装填する工程。使用ノズル径は0.4mmである。ノズルと基板の間の距離は約0.4mmである;
II.プリントプラットフォームのレベル調整とプリントパラメーターの設定する工程;
III.次のようにシリコーンエラストマー物品をプリントする工程:
1)表2-1から実施例2で定義されたサポート材料組成物の少なくとも一部をプリントする工程、
2)上記で定義したビルディング材料組成物の少なくとも一部をプリントする工程であって、工程1)および2)を連続して実施し、そして工程2)を工程1)の前に実施する工程、
3)最終物品の所望の形状に従って、工程1)および工程2)をそれぞれ複数回繰り返す工程;
4)ビルディング材料組成物を室温で24時間架橋させる工程;
5)超音波装置で水に溶解させてサポートを除去する工程。
【0170】
得られた製品は、例えば図1、2に示される。上に示したように、図1はサポート材料を除去する前のシリコーンエラストマー物品を示し、図2はサポート材料を除去した後のシリコーンエラストマー物品を示す。
【0171】
得られたシリコーンエラストマー物品は良好に形成され、サポート材料は容易かつ迅速に除去することができる。
図1
図2