(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維/アルギン酸繊維複合材料
(51)【国際特許分類】
D01F 2/00 20060101AFI20240229BHJP
D01F 9/04 20060101ALI20240229BHJP
D04H 5/00 20120101ALI20240229BHJP
D04H 3/015 20120101ALI20240229BHJP
D04H 3/11 20120101ALI20240229BHJP
D06M 15/05 20060101ALI20240229BHJP
D06M 11/44 20060101ALI20240229BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20240229BHJP
A61L 15/28 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
D01F2/00 Z
D01F9/04
D04H5/00
D04H3/015
D04H3/11
D06M15/05
D06M11/44
A61L27/20
A61L15/28 100
(21)【出願番号】P 2022542053
(86)(22)【出願日】2020-01-07
(86)【国際出願番号】 CN2020070587
(87)【国際公開番号】W WO2021138790
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】521476399
【氏名又は名称】ヂョン チュンイェン
(73)【特許権者】
【識別番号】521476403
【氏名又は名称】ヂョン ユーグゥァン
(73)【特許権者】
【識別番号】521476425
【氏名又は名称】ハイナン イェーゴー フーズ シーオー., エルティーディー
(73)【特許権者】
【識別番号】521476414
【氏名又は名称】ハイナン グゥァンユー バイオテクノロジー シーオー., エルティーディー
【住所又は居所原語表記】The First Floor of No. 2 Technical Factory Building No. 26 Jinpan Road Haikou, Hainan 570100 CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522272417
【氏名又は名称】ナンジン イェーゴー フーズ シーオー.,エルティーディー
(73)【特許権者】
【識別番号】522272428
【氏名又は名称】バオディン グゥァンユー フルーツ プロセッシング フード シーオー.,エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヂョン ユーグゥァン
(72)【発明者】
【氏名】ヂョン チュンイェン
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101711887(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104874015(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105418976(CN,A)
【文献】国際公開第2018/030057(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/107247(WO,A1)
【文献】荒川 正文,粒度測定入門,粉体工学会誌,日本,1980年06月10日,Vol. 17, No. 6,pp. 299-307
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F
D04H
D06M
A61L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルギン酸繊維スパンレース不織布にナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維が吸着されてなる複合材料であって、前記ナノ酸化亜鉛は前記バクテリアセルロースマイクロ繊維の表面に均一に分布される、ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維/アルギン酸繊維複合材料。
【請求項2】
前記バクテリアセルロースマイクロ繊維
は結晶度が60%~75%であり、
前記アルギン酸繊維スパンレース不織布のグラム重は40~100g/m2である、
請求項1に記載のナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維/アルギン酸繊維複合材料。
【請求項3】
バクテリアセルロースハイドロゲルを水中で分散開繊処理を行うことにより、均一に分散されたバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を得ることと、
バクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液にアルギン酸ナトリウムと亜鉛塩を入れ、加熱処理を行い、ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を得ることと、
アルギン酸繊維スパンレース不織布を、ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液に浸漬した後、冷凍乾燥によりナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維/アルギン酸繊維複合材料を得ることと、
を含む、請求項1に記載のナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維/アルギン酸繊維複合材料の製造方法。
【請求項4】
前記バクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液において、前記バクテリアセルロースマイクロ繊維と、前記アルギン酸ナトリウムと前記亜鉛塩との質量比は(5~10):(0.5~1):(3~5)である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記亜鉛塩は酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛及び硫酸亜鉛の1種又は複数種の組み合わせを含む、請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
加熱処理を行う温度は40℃~60℃であり、加熱処理の時間は6~12hである、
請求項3に記載の製造方法。
【請求項7】
前記バクテリアセルロースハイドロゲルは菌株発酵により得られたものであり、前記菌株は、アセトバクターキシリナム、リゾビウム属、スポロサルシナ属、シュードモナス属、アクロモバクター属、アルカリゲネス属、アエロバクター属及びアゾトバクター属の1種又は複数種の組み合わせを含む、請求項3に記載の製造方法。
【請求項8】
発酵により得られたバクテリアセルロースハイドロゲルを精製処理すること、具体的には、70℃~100℃の温度で、バクテリアセルロースハイドロゲルを質量分率0.3%~1%の水酸化ナトリウム水溶液に2~4h浸漬してから、質量分率1%~5%のラウリル硫酸ナトリウム水溶液に2~4h浸漬し、更に、バクテリアセルロース上の菌体蛋白とセルロース膜に粘着された残留培地を除去し、精製後のバクテリアセルロースハイドロゲルを得るように、中性まで蒸留水で繰り返しフラッシングすること、を更に含む、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
バクテリアセルロースハイドロゲルを水中で分散開繊処理を行う方法は、
バクテリアセルロースハイドロゲルを切り身にし、水中に煮沸した後、高速分散機で均質化処理を行うことにより、バクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を得てから、
バクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液の固形分を0.8~2wt%に調整し、その後、高圧ホモジナイザーで均質化処理を行い、
続いて、バクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液の固形分を5~10wt%に調整し、均一に分散されたバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を得ることである、
請求項3に記載の製造方法。
【請求項10】
前記バクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液に、0.2~0.4wt%のカルボキシメチルセルロースも添加されている、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
バクテリアセルロースハイドロゲルを切り取った形態は、立方体、直方体、または球体を含む、請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
辺の長さ0.5~1cmである立方体に切り取る、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
切り身を煮沸する時間は10~30minである、
請求項9に記載の製造方法。
【請求項14】
高速分散機で均質化する回転速度は5000~25000rpmであり、均質化時間は5~10minであり、
高圧ホモジナイザーで均質化する圧力は130~170MPaであり、そのマイクロチューブ通路による均質化処理回数は10~60回である、
請求項9に記載の製造方法。
【請求項15】
前記アルギン酸繊維スパンレース不織布は、アルギン酸繊維がスパンレース法により加工して得られた不織布である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項16】
前記アルギン酸繊維は、アルギン酸ナトリウム水溶液を湿式紡糸した後、塩化カルシウム凝固浴において形成される、繊維直径5~10μmのアルギン酸繊維である、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
アルギン酸繊維スパンレース不織布をナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液に浸漬する時間は12~24hであり、温度は室温である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項18】
前記ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液において、前記ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維の含有量が10~20wt%となるように、浸漬前に、ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を高圧滅菌釜によりナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維の固形分を更に調整する、請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
滅菌温度は121℃であり、時間は15~30minであり、圧力は0.12MPaである、
請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
請求項1に記載のナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維/アルギン酸繊維複合材料の、皮膚修復被覆材、人体修復材料または組織工学材料の製造における応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合セルロース材料の分野に属し、ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維/アルギン酸繊維複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、繊維材料は医用分野において広く応用されてきている。例えば、傷口の治療には被覆材製品がよく使われ、その中、繊維材料をスパンレース法で製造した不織布は、よく使われる被覆材製品の一つである。現在、臨床上よく使用される不織布被覆材繊維材料としては、綿繊維、ビスコース繊維、キトサン繊維、アルギン酸繊維等がある。また、組織修復医学の発展に伴い、ますます多くの繊維材料が組織修復ステントの製造によく用いられている。繊維材料は複雑な多段構造に加工でき、それによって組織の細胞外マトリックスを模擬し、同時に良好な力学性能、組織適合性、細胞浸透性などを具備しているので、組織修復の基本的な要求を満たすことができる。
【0003】
バクテリアセルロースは、グルコースがβ-1,4-グリコシド結合で繋いでなる高分子化合物であり、優れた生物材料として、独特な物理、化学性能を有するものであり、バクテリアセルロースは、天然な三次元ナノネットワック構造や、高い引っ張り強度と弾性率や、高い親水性、良好な通気、吸水、透水性能、並外れた保水性と高湿強度を具備している。また、多くの研究から示されているように、バクテリアセルロースは良好な体内/体外の生体適合性と生分解性を持つため、バクテリアセルロース自身がバイオメディカル分野に応用できるようになる。海外では、単純なバクテリアセルロースハイドロゲルを被覆材とすることがすでに報告され、かつ、すでに工業化され臨床に使用されている。加えて、バクテリアセルロース材料で製造された各類組織修復ステントが良く報告され、現在、バクテリアセルロース材料は血管、骨、軟骨、尿道、鼓膜等多種の組織器官の修復に応用できることがすでに証明されている。ただし、天然発酵のバクテリアセルロースハイドロゲルはセルロースナノ繊維より形成された緻密な三次元ネットワック構造を具備しているものであり、傷口の修復において傷口滲出液の吸收が遅く、且、細菌が繁殖して傷口に感染しやすく、組織の修復において、緻密な構造が細胞の進入を阻害してしまう。これらの問題はいずれも、バクテリアセルロースの繊維材料としての応用を制限してしまう。
【0004】
そのため、バクテリアセルロースの天然なナノ繊維としての利点をいかに発揮し、それの医用分野における応用を広げることは、バクテリアセルロース材料にとって解決すべき重要な問題である。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一つの目的は、ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維/アルギン酸繊維複合材料を提供することである。本発明のもう一つの目的は、該ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維/アルギン酸繊維複合材料の製造方法を提供することである。本発明の更に一つの目的は、該ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維/アルギン酸繊維複合材料の皮膚修復被覆材、人体修復材料及び組織工学材料における応用を提供することである。
【0006】
本発明の目的は、以下の技術案により実現される。
【0007】
本発明は、アルギン酸繊維スパンレース不織布にナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維が吸着されてなる複合材料であって、前記ナノ酸化亜鉛は前記バクテリアセルロースマイクロ繊維の表面に均一に分布される、ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維/アルギン酸繊維複合材料を提供する。
【0008】
該複合材料において、前記バクテリアセルロースマイクロ繊維の含有量、前記ナノ酸化亜鉛の含有量は必要に応じて調整される。
【0009】
前記複合材料において、好ましくは、前記ナノ酸化亜鉛の粒径は5~20nmであり、前記バクテリアセルロースマイクロ繊維は、平均直径が30~40nmであり、平均長さが10~20μmであり、結晶度が60%~75%であり、前記アルギン酸繊維スパンレース不織布のグラム重は40~100g/m2である。
【0010】
本発明のナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維/アルギン酸繊維複合材料は、巨視的に、不織布のぼくぼくとした構造を持ち、ミクロンレベルのアルギン酸繊維の表面にナノレベルのバクテリアセルロースマイクロ繊維が絡まっている同時に、ナノマイクロ繊維の表面にナノ酸化亜鉛粒子が均一に分布されている。バクテリアセルロースマイクロ繊維の平均長さと直径の分布が集中しており、各類のナノセルロース繊維系医療材料の製造が容易になる。このような特殊構造の繊維複合材料は皮膚修復被覆材、人体修復材料及び組織工学材料等の分野に広く運用できる。
【0011】
また、本発明は、上記ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維/アルギン酸繊維複合材料の製造方法であって、
バクテリアセルロースハイドロゲルを水中で分散開繊処理を行うことにより、均一に分散されたバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を得ることと、
バクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液にアルギン酸ナトリウムと亜鉛塩を入れ、加熱処理を行い、ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を得ることと、
アルギン酸繊維スパンレース不織布を、ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液に浸漬した後、冷凍乾燥によりナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維/アルギン酸繊維複合材料を得ることと、
を含む、ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維/アルギン酸繊維複合材料の製造方法を更に提供する。
【0012】
本発明は分散開繊手段を用いて、本来のバクテリアセルロースの三次元繊維ネットワックを分散して安定で均一なバクテリアセルロースマイクロ繊維とし、その表面で抗菌性能のあるナノ酸化亜鉛をin-situ合成し、更に、アルギン酸スパンレース不織布との複合により、最終的にナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維/アルギン酸繊維複合材料を得る。このような複合材料は良好な生体適合性、力学性能と吸水性能を有し、傷口被覆材、人体修復材料及び組織工学材料等のバイオメディカル分野に大きな応用の見通しがある。
【0013】
上記の製造方法において、アルギン酸繊維スパンレース不織布に吸着される、ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースの量は、不織布自身の吸着飽和を基準とし、実際の必要に応じて調節される。
【0014】
上記の製造方法において、好ましくは、前記バクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液において、前記バクテリアセルロースマイクロ繊維と、前記アルギン酸ナトリウムと前記亜鉛塩との質量比は(5~10):(0.5~1):(3~5)である。
【0015】
上記の製造方法において、好ましくは、前記亜鉛塩は酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛及び硫酸亜鉛の1種又は複数種の組み合わせを含む。
【0016】
上記の製造方法において、好ましくは、加熱処理を行う温度は40℃~60℃であり、加熱処理の時間は6~12hである。加熱条件の下で、正に帯電する亜鉛イオンは、まず、バクテリアセルロースナノ繊維表面の負に帯電する水酸基と相互作用し、大量の亜鉛イオンはセルロースナノ繊維表面に均一に吸着されるとともに、加熱条件の下で、亜鉛イオンはアルギン酸ナトリウム分子における水酸基及びエステル基とが相互作用し、ナノ酸化亜鉛を得る。前記のナノ酸化亜鉛は粒子直径5~20nmの球形粒子であり、バクテリアセルロースマイクロ繊維表面に均一に分布される。
【0017】
上記の製造方法において、好ましくは、前記バクテリアセルロースハイドロゲルは菌株発酵により得られたものであり、前記菌株は、アセトバクターキシリナム、リゾビウム属、スポロサルシナ属、シュードモナス属、アクロモバクター属、アルカリゲネス属、アエロバクター属及びアゾトバクター属の1種又は複数種の組み合わせを含む。
【0018】
上記の製造方法において、好ましくは、発酵により得られたバクテリアセルロースハイドロゲルを精製処理すること、具体的には:
70℃~100℃の温度で、バクテリアセルロースハイドロゲルを質量分率0.3%~1%の水酸化ナトリウム水溶液に2~4h浸漬してから、質量分率1%~5%のラウリル硫酸ナトリウム水溶液に2~4h浸漬し、更に、バクテリアセルロース上の菌体蛋白とセルロース膜に粘着された残留培地を除去し、精製後のバクテリアセルロースハイドロゲルを得るように、中性まで蒸留水で繰り返しフラッシングすることを更に含む。
【0019】
上記の製造方法において、好ましくは、バクテリアセルロースハイドロゲルを水中で分散開繊処理を行う方法は、
バクテリアセルロースハイドロゲルを切り身にし、水中に煮沸した後、高速分散機で均質化処理を行うことにより、バクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を得てから、
バクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液の固形分を0.8~2wt%に調整し、その後、高圧ホモジナイザーで均質化処理を行い、
続いて、バクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液の固形分を5~10wt%に調整し、均一に分散されたバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を得ることである。
【0020】
従来技術では、発酵により得られたバクテリアセルロースハイドロゲルは、ナノレベルのセルロース繊維により形成された三次元ネットワック構造であり、バクテリアセルロースのナノ繊維と繊維との間は水素結合作用があるため、セルロース繊維を均一に分散しにくい。本発明において、複数回分散(高速分散、高圧均質化)方法を採用することで、セルロース繊維を水溶液において段階的に均一に分散し、かつ、開繊処理によって繊維の平均長さと直径の分布を集中させる。同時に、セルロース繊維結晶度は、従来の85%~90%に比べて、一定程度の低下が見られるため、処理過程において繊維の非晶質領域が増加し、繊維の吸着性能とその後の加工性能の向上に寄与することが明らかになった。
【0021】
上記の製造方法において、好ましくは、前記バクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液に、更に、カルボキシメチルセルロースを0.2~0.4wt%添加される。一般的に、ナノセルロース繊維の分散溶液は、高圧滅菌の時、高温環境であるため、ナノ繊維の凝集を促進し、その後の加工に影響してしまう。少量なカルボキシメチルセルロースの添加は、安定剤の役割を果たし、体系中のナノセルロース繊維の凝集を防止するとともに、滅菌後のバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液の安定を確保できる。
【0022】
上記の製造方法において、好ましくは、バクテリアセルロースハイドロゲルを切り取った形態は、立方体、直方体、または球体を含むが、これらに限らない。より好ましくは、辺の長さ0.5~1cmである立方体に切り取る。
【0023】
上記の製造方法において、好ましくは、切り身を煮沸する時間は10~30minである。
【0024】
上記の製造方法において、好ましくは、高速分散機で均質化する回転速度が5000~25000rpmであり、均質化時間が5~10minである。
【0025】
上記の製造方法において、好ましくは、高圧ホモジナイザーで均質化する圧力が130~170MPaであり、そのマイクロチューブ通路による均質化処理の回数が10~60回である。
【0026】
本発明はそれぞれ、高速分散機と高圧ホモジナイザーを用いて順次に分散・均質化処理を行う。このような方法では、バクテリアセルロースのナノ繊維を最大限に分散できるとともに、マイクロ繊維の均一性を確保でき、その後の加工に寄与する。
【0027】
上記の製造方法において、好ましくは、前記アルギン酸繊維スパンレース不織布は、アルギン酸繊維が通常のスパンレース法加工により得られた不織布である。
【0028】
上記の製造方法において、好ましくは、前記アルギン酸繊維は、アルギン酸ナトリウム水溶液を通常に湿式紡糸した後、塩化カルシウム凝固浴において形成される、繊維直径5~10μmのアルギン酸繊維である。
【0029】
上記の製造方法において、好ましくは、アルギン酸繊維スパンレース不織布を、ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液に浸漬する時間は12~24hであり、温度は室温である。
【0030】
ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液をアルギン酸繊維スパンレース不織布に吸着させ、それによって得られたナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維/アルギン酸繊維複合材料は多段階構造を持つ。巨視的に、該複合材料はスパンレース不織布のぼくぼくした繊維構造を有し、ミクロンレベルのアルギン酸繊維の表面にナノレベルのバクテリアセルロースマイクロ繊維が絡まっている同時に、更に、ナノマイクロ繊維の表面にナノ酸化亜鉛粒子が均一に分布されている。
【0031】
上記の製造方法において、好ましくは、前記ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液において、前記ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維の含有量が10~20wt%となるように、浸漬前に、ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を高圧滅菌釜によりナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維の固形分を更に調整する。
【0032】
上記の製造方法において、好ましくは、滅菌温度は121℃であり、時間は15~30minであり、圧力は0.12MPaである。滅菌処理は、医療材料を最終製品に製造される際に必須となる工程であり、本発明の高圧滅菌は、便利で実行しやすい手段である。
【0033】
さらに、本発明は、上記ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維/アルギン酸繊維複合材料の、皮膚修復被覆材、人体修復材料または組織工学材料の製造における応用を更に提供する。
【0034】
本発明の有利な效果としては、
(1)本発明は分散開繊手段を用いて、本来のバクテリアセルロースの三次元繊維ネットワックを分散して安定で均一なバクテリアセルロースマイクロ繊維とし、その表面で抗菌性能のあるナノ酸化亜鉛をin-situ合成し、更に、アルギン酸スパンレース不織布との複合により、最終的にナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維/アルギン酸繊維複合材料を得る。このような複合材料は良好な生体適合性、力学性能と吸水性能を有し、傷口被覆材、人体修復材料及び組織工学材料等のバイオメディカル分野に大きな応用の見通しがある。
【0035】
(2)本発明の方法では、複数回分散の方法を採用することで、バクテリアセルロース繊維を水溶液において段階的に均一に分散し、かつ、開繊処理によって繊維の平均長さと直径の分布を集中させ、各類のナノセルロース繊維系医療材料の製造に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の技術特徴、目的と有利な效果をより分かりやすくするために、ここで本発明の技術案を以下のように詳しく説明するが、本発明の実施可能な範囲に対する限定だと理解してはならない。
【0037】
以下の実施例に使用される実験方法は、特に断らない限り、いずれも常法である。
【0038】
以下の実施例に用いられる材料、試薬等は、特に断らない限り、いずれも商業的に入手できる。
【0039】
実施例1
本実施例は、以下のステップを含むナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維/アルギン酸繊維複合材料の製造方法を提供した。
【0040】
(1)アセトバクターキシリナムを用いた発酵によって天然バクテリアセルロースハイドロゲルを得、100℃で、バクテリアセルロースハイドロゲルを0.3wt%のNaOH水溶液に4h浸漬した後、1wt%のラウリル硫酸ナトリウム水溶液に4h浸漬し、バクテリアセルロース上の菌体蛋白とセルロース膜に粘着された残留培地を除去し、精製後のバクテリアセルロースハイドロゲルを得るように、中性まで蒸留水で繰り返しフラッシングした。
【0041】
(2)精製により得られたバクテリアセルロースハイドロゲルを辺の長さ0.5cmの立方体に切り取った。切り取られたバクテリアセルロースハイドロゲル立方体を沸騰水中で10min蒸煮した後、高速分散機で5000rpmの回転速度でサンプルを10min均質化し、バクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を得た。
【0042】
バクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液の固形分を0.8wt%に調整した後、高圧ホモジナイザーで170MPa圧力で、マイクロチューブ通路による均質化処理を10回行った。
【0043】
バクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液の固形分を10wt%に調整した後、0.4wt%のカルボキシメチルセルロースを添加し、均一に分散されたバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を得た。精製・開繊処理後のバクテリアセルロースマイクロ繊維は、平均直径が30nmであり、平均長さが20μmであり、結晶度が75%であった。
【0044】
(3)均一に分散されたバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液に、1wt%のアルギン酸ナトリウムと5wt%の酢酸亜鉛をそれぞれ添加し、40℃、6h加熱処理をし、ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を得た。その中、ナノ酸化亜鉛は平均直径10nmの球形粒子であり、バクテリアセルロースマイクロ繊維表面に均一に分布された。
【0045】
(4)アルギン酸ナトリウム水溶液を湿式紡糸した後、塩化カルシウム凝固浴において繊維直径10μmのアルギン酸繊維を形成した。その後、アルギン酸繊維をスパンレース法加工によりグラム重40g/m2のアルギン酸繊維スパンレース不織布を得た。
【0046】
ステップ(3)におけるナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を高圧滅菌釜に入れ、系中のナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維の含有量を10wt%に調節し、高温高圧で滅菌し(滅菌温度は121℃であり、時間は15minであり、圧力は0.12MPaであった。)、滅菌後のナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を得た。
【0047】
アルギン酸繊維スパンレース不織布を滅菌後の、ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液に浸漬し、室温で24h浸漬した。取り出した後、冷凍乾燥して、ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維/アルギン酸繊維複合材料を得た。
【0048】
実施例2
本実施例は、以下のステップを含むナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維/アルギン酸繊維複合材料の製造方法を提供した。
【0049】
(1)リゾビウム属を用いた発酵によって天然バクテリアセルロースハイドロゲルを得、90℃で、バクテリアセルロースハイドロゲルを0.4wt%のNaOH水溶液に4h浸漬した後、2wt%のラウリル硫酸ナトリウム水溶液に4h浸漬し、バクテリアセルロース上の菌体蛋白とセルロース膜に粘着された残留培地を除去し、精製後のバクテリアセルロースハイドロゲルを得るように、中性まで蒸留水で繰り返しフラッシングした。
【0050】
(2)精製により得られたバクテリアセルロースハイドロゲルを辺の長さ0.6cmの立方体に切り取った。切り取られたバクテリアセルロースハイドロゲル立方体を沸騰水中で10min蒸煮した後、高速分散機で10000rpmの回転速度でサンプルを10min均質化し、バクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を得た。
【0051】
バクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液の固形分を1.0wt%に調整した後、高圧ホモジナイザーで160MPa圧力で、マイクロチューブ通路による均質化処理を20回行った。
【0052】
バクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液の固形分を9wt%に調整した後、0.4wt%のカルボキシメチルセルロースを添加し、均一に分散されたバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を得た。精製・開繊処理後のバクテリアセルロースマイクロ繊維は、平均直径が30nmであり、平均長さが20μmであり、結晶度が70%であった。
【0053】
(3)均一に分散されたバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液に、0.9wt%のアルギン酸ナトリウムと5wt%の酢酸亜鉛をそれぞれ添加し、60℃、7h加熱処理をし、ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を得た。その中、ナノ酸化亜鉛は平均直径20nmの球形粒子であり、バクテリアセルロースマイクロ繊維表面に均一に分布された。
【0054】
(4)アルギン酸ナトリウム水溶液を湿式紡糸した後、塩化カルシウム凝固浴において繊維直径9μmのアルギン酸繊維を形成した。その後、アルギン酸繊維をスパンレース法加工によりグラム重80g/m2のアルギン酸繊維スパンレース不織布を得た。
【0055】
ステップ(3)におけるナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を高圧滅菌釜に入れ、系中のナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維の含有量を12wt%に調節し、高温高圧で滅菌し(滅菌温度は121℃であり、時間は15minであり、圧力は0.12MPaであった。)、滅菌後のナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を得た。
【0056】
アルギン酸繊維スパンレース不織布を滅菌後の、ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液に浸漬し、室温で24h浸漬した。取り出した後、冷凍乾燥して、ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維/アルギン酸繊維複合材料を得た。
【0057】
実施例3
本実施例は、以下のステップを含むナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維/アルギン酸繊維複合材料の製造方法を提供した。
【0058】
(1)スポロサルシナ属を用いた発酵によって天然バクテリアセルロースハイドロゲルを得、80℃で、バクテリアセルロースハイドロゲルを0.5wt%のNaOH水溶液に3h浸漬した後、3wt%のラウリル硫酸ナトリウム水溶液に3h浸漬し、バクテリアセルロース上の菌体蛋白とセルロース膜に粘着された残留培地を除去し、精製後のバクテリアセルロースハイドロゲルを得るように、中性まで蒸留水で繰り返しフラッシングした。
【0059】
(2)精製により得られたバクテリアセルロースハイドロゲルを辺の長さ0.7cmの立方体に切り取った。切り取られたバクテリアセルロースハイドロゲル立方体を沸騰水中で15min蒸煮した後、高速分散機で15000rpmの回転速度でサンプルを8min均質化し、バクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を得た。
【0060】
バクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液の固形分を1.2wt%に調整した後、高圧ホモジナイザーで150MPa圧力で、マイクロチューブ通路による均質化処理を30回行った。
【0061】
バクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液の固形分を8wt%に調整した後、0.3wt%のカルボキシメチルセルロースを添加し、均一に分散されたバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を得た。精製・開繊処理後のバクテリアセルロースマイクロ繊維は、平均直径が30nmであり、平均長さが15μmであり、結晶度が70%であった。
【0062】
(3)均一に分散されたバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液に、0.8wt%のアルギン酸ナトリウムと4wt%の酢酸亜鉛をそれぞれ添加し、50℃、8h加熱処理をし、ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を得た。その中、ナノ酸化亜鉛は平均直径15nmの球形粒子であり、バクテリアセルロースマイクロ繊維表面に均一に分布された。
【0063】
(4)アルギン酸ナトリウム水溶液を湿式紡糸した後、塩化カルシウム凝固浴において繊維直径7μmのアルギン酸繊維を形成した。その後、アルギン酸繊維をスパンレース法加工によりグラム重60g/m2のアルギン酸繊維スパンレース不織布を得た。
【0064】
ステップ(3)におけるナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を高圧滅菌釜に入れ、系中のナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維の含有量を14wt%に調節し、高温高圧で滅菌し(滅菌温度は121℃であり、時間は20minであり、圧力は0.12MPaであった。)、滅菌後のナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を得た。
【0065】
アルギン酸繊維スパンレース不織布を滅菌後の、ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液に浸漬し、室温で18h浸漬した。取り出した後、冷凍乾燥して、ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維/アルギン酸繊維複合材料を得た。
【0066】
実施例4
本実施例は、以下のステップを含むナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維/アルギン酸繊維複合材料の製造方法を提供した。
【0067】
(1)シュードモナス属を用いた発酵によって天然バクテリアセルロースハイドロゲルを得、70℃で、バクテリアセルロースハイドロゲルを0.6wt%のNaOH水溶液に3h浸漬した後、4wt%のラウリル硫酸ナトリウム水溶液に3h浸漬し、バクテリアセルロース上の菌体蛋白とセルロース膜に粘着された残留培地を除去し、精製後のバクテリアセルロースハイドロゲルを得るように、中性まで蒸留水で繰り返しフラッシングした。
【0068】
(2)精製により得られたバクテリアセルロースハイドロゲルを辺の長さ0.8cmの立方体に切り取った。切り取られたバクテリアセルロースハイドロゲル立方体を沸騰水中で20min蒸煮した後、高速分散機で20000rpmの回転速度でサンプルを7min均質化し、バクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を得た。
【0069】
バクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液の固形分を1.4wt%に調整した後、高圧ホモジナイザーで150MPa圧力で、マイクロチューブ通路による均質化処理を40回行った。
【0070】
バクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液の固形分を7wt%に調整した後、0.3wt%のカルボキシメチルセルロースを添加し、均一に分散されたバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を得た。精製・開繊処理後のバクテリアセルロースマイクロ繊維は、平均直径が40nmであり、平均長さが15μmであり、結晶度が65%であった。
【0071】
(3)均一に分散されたバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液に、0.7wt%のアルギン酸ナトリウムと4wt%の酢酸亜鉛をそれぞれ添加し、50℃、9h加熱処理をし、ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を得た。その中、ナノ酸化亜鉛は平均直径10nmの球形粒子であり、バクテリアセルロースマイクロ繊維表面に均一に分布された。
【0072】
(4)アルギン酸ナトリウム水溶液を湿式紡糸した後、塩化カルシウム凝固浴において繊維直径6μmのアルギン酸繊維を形成した。その後、アルギン酸繊維をスパンレース法加工によりグラム重40g/m2のアルギン酸繊維スパンレース不織布を得た。
【0073】
ステップ(3)におけるナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を高圧滅菌釜に入れ、系中のナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維の含有量を16wt%に調節し、高温高圧で滅菌し(滅菌温度は121℃であり、時間は20minであり、圧力は0.12MPaであった。)、滅菌後のナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を得た。
【0074】
アルギン酸繊維スパンレース不織布を滅菌後の、ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液に浸漬し、室温で18h浸漬した。取り出した後、冷凍乾燥して、ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維/アルギン酸繊維複合材料を得た。
【0075】
実施例5
本実施例は、以下のステップを含むナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊
維/アルギン酸繊維複合材料の製造方法を提供した。
【0076】
(1)アセトバクターキシリナム、アクロモバクター属とアルカリゲネス属を用いた発酵によって天然バクテリアセルロースハイドロゲルを得、100℃で、バクテリアセルロースハイドロゲルを0.7wt%のNaOH水溶液に2h浸漬した後、5wt%のラウリル硫酸ナトリウム水溶液に2h浸漬し、バクテリアセルロース上の菌体蛋白とセルロース膜に粘着された残留培地を除去し、精製後のバクテリアセルロースハイドロゲルを得るように、中性まで蒸留水で繰り返しフラッシングした。
【0077】
(2)精製により得られたバクテリアセルロースハイドロゲルを辺の長さ0.9cmの立方体に切り取った。切り取られたバクテリアセルロースハイドロゲル立方体を沸騰水中で25min蒸煮した後、高速分散機で25000rpmの回転速度でサンプルを5min均質化し、バクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を得た。
【0078】
バクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液の固形分を1.8wt%に調整した後、高圧ホモジナイザーで130MPa圧力で、マイクロチューブ通路による均質化処理を50回行った。
【0079】
バクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液の固形分を6wt%に調整した後、0.2wt%のカルボキシメチルセルロースを添加し、均一に分散されたバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を得た。精製・開繊処理後のバクテリアセルロースマイクロ繊維は、平均直径が40nmであり、平均長さが10μmであり、結晶度が60%であった。
【0080】
(3)均一に分散されたバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液に、0.6wt%のアルギン酸ナトリウムと3wt%の酢酸亜鉛をそれぞれ添加し、40℃、10h加熱処理をし、ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を得た。その中、ナノ酸化亜鉛は平均直径10nmの球形粒子であり、バクテリアセルロースマイクロ繊維表面に均一に分布された。
【0081】
(4)アルギン酸ナトリウム水溶液を湿式紡糸した後、塩化カルシウム凝固浴において繊維直径5μmのアルギン酸繊維を形成した。その後、アルギン酸繊維をスパンレース法加工によりグラム重45g/m2のアルギン酸繊維スパンレース不織布を得た。
【0082】
ステップ(3)におけるナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を高圧滅菌釜に入れ、体系中のナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維の含有量を18wt%に調節し、高温高圧で滅菌し(滅菌温度は121℃であり、時間は30minであり、圧力は0.12MPaであった。)、滅菌後のナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を得た。
【0083】
アルギン酸繊維スパンレース不織布を滅菌後の、ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液に浸漬し、室温で12h浸漬した。取り出した後、冷凍乾燥して、ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維/アルギン酸繊維複合材料を得た。
【0084】
実施例6
本実施例は、以下のステップを含むナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維/アルギン酸繊維複合材料の製造方法を提供した。
【0085】
(1)アエロバクター属とアゾトバクター属を用いた発酵によって天然バクテリアセルロースハイドロゲルを得、100℃で、バクテリアセルロースハイドロゲルを1wt%のNaOH水溶液に2h浸漬した後、6wt%のラウリル硫酸ナトリウム水溶液に2h浸漬し、バクテリアセルロース上の菌体蛋白とセルロース膜に粘着された残留培地を除去し、精製後のバクテリアセルロースハイドロゲルを得るように、中性まで蒸留水で繰り返しフラッシングした。
【0086】
(2)精製により得られたバクテリアセルロースハイドロゲルを辺の長さ1cmの立方体に切り取った。切り取られたバクテリアセルロースハイドロゲル立方体を沸騰水中で30min蒸煮した後、高速分散機で15000rpmの回転速度でサンプルを5min均質化し、バクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を得た。
【0087】
バクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液の固形分を2wt%に調整した後、高圧ホモジナイザーで130MPa圧力で、マイクロチューブ通路による均質化処理を60回行った。
【0088】
バクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液の固形分を5wt%に調整した後、0.2wt%のカルボキシメチルセルロースを添加し、均一に分散されたバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を得た。精製・開繊処理後のバクテリアセルロースマイクロ繊維は、平均直径が40nmであり、平均長さが15μmであり、結晶度が65%であった。
【0089】
(3)均一に分散されたバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液に、0.5wt%のアルギン酸ナトリウムと3wt%の酢酸亜鉛をそれぞれ添加し、40℃、12h加熱処理をし、ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を得た。その中、ナノ酸化亜鉛は平均直径5nmの球形粒子であり、バクテリアセルロースマイクロ繊維表面に均一に分布された。
【0090】
(4)アルギン酸ナトリウム水溶液を湿式紡糸した後、塩化カルシウム凝固浴において繊維直径10μmのアルギン酸繊維を形成した。その後、アルギン酸繊維をスパンレース法加工によりグラム重55g/m2のアルギン酸繊維スパンレース不織布を得た。
【0091】
ステップ(3)におけるナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を高圧滅菌釜に入れ、体系中のナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維の含有量を20wt%に調節し、高温高圧で滅菌し(滅菌温度は121℃であり、時間は30minであり、圧力は0.12MPaであった。)、滅菌後のナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液を得た。
【0092】
アルギン酸繊維スパンレース不織布を滅菌後の、ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維水溶液に浸漬し、室温で12h浸漬した。取り出した後、冷凍乾燥して、ナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維/アルギン酸繊維複合材料を得た。
【0093】
性能テスト実験:
実施例1で製造されたナノ酸化亜鉛を担持したバクテリアセルロースマイクロ繊維/アルギン酸繊維複合材料について、以下の性能テストを行った。
【0094】
生体適合性テスト実験:GB/T 16886医療器械のバイオ学評価に参照し、複合材料(実施例1)に対して、細胞毒性、モルモット遅延型接触過敏接触性感作、皮膚刺激等をそれぞれ評価した。
【0095】
細胞内毒性試験は、GB/T 16886-5<医療器械バイオ学評価第5部:体外細胞毒性試験>に準じてテストを行った。モルモット遅延型接触性感作試験は、GB/T 16886-10<医療器械バイオ学評価第10部:刺激と遅延型感作反応試験>に準じてテストを行った。皮膚刺激試験は、GB/T 16886-10<医療器械バイオ学評価第10部:刺激と遅延型感作反応試験>に準じてテストを行った。
【0096】
その結果、複合材料(実施例1)では、細胞毒性が2級未満であり、皮膚アレルギー反応や皮内刺激反応がなく、良好な生体安全性を有することが明らかになった。
【0097】
抗菌性能テスト実験:
本複合材料(実施例1)は、GB/T 20944.1-2007<織物の抗菌性能の評価 第1部:寒天プレート拡散法>に参照し、基準によれば、実験サンプルの抗菌帯の幅が1mm超であると、サンプルが良好な抗菌效果を有すると示した。実験結果から、本発明複合材料(実施例1)は大腸菌(Escherichia coli ATCC 8739)と黄色ブドウ球菌(Staphylicoccus aureus ATCC 6538)に対する抗菌帯の幅がそれぞれ、9mmと12mmであったため、サンプルが良好な抗菌效果を有することが明らかになった。