IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハンオン システムズの特許一覧

特許7445774熱応力を分散するための流量配分タンク構造を有する熱交換器
<>
  • 特許-熱応力を分散するための流量配分タンク構造を有する熱交換器 図1
  • 特許-熱応力を分散するための流量配分タンク構造を有する熱交換器 図2
  • 特許-熱応力を分散するための流量配分タンク構造を有する熱交換器 図3
  • 特許-熱応力を分散するための流量配分タンク構造を有する熱交換器 図4
  • 特許-熱応力を分散するための流量配分タンク構造を有する熱交換器 図5
  • 特許-熱応力を分散するための流量配分タンク構造を有する熱交換器 図6a
  • 特許-熱応力を分散するための流量配分タンク構造を有する熱交換器 図6b
  • 特許-熱応力を分散するための流量配分タンク構造を有する熱交換器 図6c
  • 特許-熱応力を分散するための流量配分タンク構造を有する熱交換器 図6d
  • 特許-熱応力を分散するための流量配分タンク構造を有する熱交換器 図6e
  • 特許-熱応力を分散するための流量配分タンク構造を有する熱交換器 図6f
  • 特許-熱応力を分散するための流量配分タンク構造を有する熱交換器 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】熱応力を分散するための流量配分タンク構造を有する熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/26 20060101AFI20240229BHJP
   F28F 9/02 20060101ALI20240229BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
F28F9/26
F28F9/02 301D
F28D1/053 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022548813
(86)(22)【出願日】2021-02-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(86)【国際出願番号】 KR2021001968
(87)【国際公開番号】W WO2021167320
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】10-2020-0020056
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0019251
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516011246
【氏名又は名称】ハンオン システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ジ フン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジョンボム
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-206078(JP,A)
【文献】特開2017-096591(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0104763(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0306517(US,A1)
【文献】特開2001-215096(JP,A)
【文献】特開平06-300477(JP,A)
【文献】特開2009-074768(JP,A)
【文献】特開2018-100800(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101520282(CN,A)
【文献】特表2016-521842(JP,A)
【文献】実開昭58-185796(JP,U)
【文献】特開昭58-200997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F
F28D
F25B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッダおよびタンクが結合されて形成され、互いに一定距離離れて平行に形成される1対のヘッダタンク、および前記ヘッダタンクに両端が固定され、冷媒の流路を形成する複数のチューブを含む熱交換器であって、
外部空気が吹いて来る方向を前方、吹き出て行く方向を後方、前記ヘッダタンクの延長方向一側を第1方向、他側を第2方向とする時、
前記熱交換器は、前記ヘッダタンクの内部空間が前記第1、2方向に隔離区画され、前記第1、2方向の熱交換部それぞれに平均温度が互いに異なる熱交換媒体が流通し、前記チューブの内部空間が前後に隔離区画され、前後に二重の熱交換部を形成する形態に形成され、
前記チューブの後方側の内部空間に流通する熱交換媒体の流量が、前記チューブの前方側の内部空間に流通する熱交換媒体の流量よりも相対的に少ないように、前記タンクに流量配分構造が形成され、
前記流量配分構造は、
前記タンクの一部が前記ヘッダタンクの高さ方向に前記ヘッダタンクの内側に突出し、突出部末端が前記チューブの後方側の内部空間から離隔配置される流量調節リブ、および
前記ヘッダタンクの高さ方向に延び、一端が前記流量調節リブの内面に固定され、他端が前記チューブの後方側の内部空間から離隔配置される流量調節バッフルを含み、
前記チューブの後方側の内部空間に流通する熱交換媒体の流量を低減するように形成される前記流量調節リブおよび前記流量調節バッフルの結合体として形成されることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記流量配分構造は、
前記流量調節バッフルにより流量が低減される前記チューブの個数が、前記流量調節リブにより流量が低減される前記チューブの個数よりも少ないか同一に形成されることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記流量配分構造は、
前記タンクの前記第1、2方向の熱交換部の境界地点に前記ヘッダタンクの内部空間を前記第1、2方向に隔離区画する隔離構造が形成され、
前記流量調節バッフルにより流量が低減される前記チューブの個数が、前記流量調節リブにより流量が低減される前記チューブの個数よりも少なく形成され、
前記流量調節バッフルは、前記隔離構造に偏る位置に形成されることを特徴とする請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
ヘッダおよびタンクが結合されて形成され、互いに一定距離離れて平行に形成される1対のヘッダタンク、および前記ヘッダタンクに両端が固定され、冷媒の流路を形成する複数のチューブを含む熱交換器であって、
外部空気が吹いて来る方向を前方、吹き出て行く方向を後方、前記ヘッダタンクの延長方向一側を第1方向、他側を第2方向とする時、
前記熱交換器は、前記ヘッダタンクの内部空間が前記第1、2方向に隔離区画され、前記第1、2方向の熱交換部それぞれに平均温度が互いに異なる熱交換媒体が流通し、前記チューブの内部空間が前後に隔離区画され、前後に二重の熱交換部を形成する形態に形成され、
前記チューブの後方側の内部空間に流通する熱交換媒体の流量が、前記チューブの前方側の内部空間に流通する熱交換媒体の流量よりも相対的に少ないように、前記タンクに流量配分構造が形成され、
前記流量配分構造は、
前記タンクの一部が前記ヘッダタンクの高さ方向に前記ヘッダタンクの内側に突出し、突出部末端が前記チューブの後方側の内部空間から離隔配置され、
前記チューブの後方側の内部空間に流通する熱交換媒体の流量を低減するように形成される流量調節リブであることを特徴とする熱交換器。
【請求項5】
ヘッダおよびタンクが結合されて形成され、互いに一定距離離れて平行に形成される1対のヘッダタンク、および前記ヘッダタンクに両端が固定され、冷媒の流路を形成する複数のチューブを含む熱交換器であって、
外部空気が吹いて来る方向を前方、吹き出て行く方向を後方、前記ヘッダタンクの延長方向一側を第1方向、他側を第2方向とする時、
前記熱交換器は、前記ヘッダタンクの内部空間が前記第1、2方向に隔離区画され、前記第1、2方向の熱交換部それぞれに平均温度が互いに異なる熱交換媒体が流通し、前記チューブの内部空間が前後に隔離区画され、前後に二重の熱交換部を形成する形態に形成され、
前記チューブの後方側の内部空間に流通する熱交換媒体の流量が、前記チューブの前方側の内部空間に流通する熱交換媒体の流量よりも相対的に少ないように、前記タンクに流量配分構造が形成され、
前記流量配分構造は、
前記ヘッダタンクの高さ方向に延び、一端が前記タンクの内面に固定され、他端が前記チューブの後方側の内部空間から離隔配置され、
前記チューブの後方側の内部空間に流通する熱交換媒体の流量を低減するように形成される流量調節バッフルであることを特徴とする熱交換器。
【請求項6】
前記タンクは、
前記第1、2方向の熱交換部の境界地点に前記ヘッダタンクの内部空間を前記第1、2方向に隔離区画する隔離構造が形成され、
前記隔離構造は、
前記タンクの一部が前記ヘッダタンクの高さ方向に前記ヘッダタンクの内側に突出し、突出部末端が前記チューブと接触するように形成される隔離リブであるか、または、
前記ヘッダタンクの高さ方向に延び、一端が前記タンクの内面に固定され、他端が前記チューブと接触するように形成される隔離バッフルであることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記流量配分構造が前記流量調節リブを含み、前記隔離構造が前記隔離リブであり、
前記流量調節リブおよび前記隔離リブが互いに連結形成されることを特徴とする請求項6に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記流量配分構造は、
前記チューブにおいて熱交換媒体が排出される側に形成されることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項9】
前記流量配分構造は、
全ての前記チューブの位置に対して適用形成されるか、または、
前記第1、2方向の熱交換部の境界地点付近の一部の前記チューブの位置に対して適用形成されることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項10】
前記流量配分構造は、
前記第1、2方向の熱交換部の境界地点付近の一部の前記チューブの位置に対して適用形成され、
前記第1、2方向の熱交換部の境界地点付近は、前記熱交換器の前記第1、2方向の熱交換部の境界地点に形成されたダミーチューブを中心に前記第1、2方向に1個~5個の範囲で形成されることを特徴とする請求項9に記載の熱交換器。
【請求項11】
前記チューブは、
プレートが折り曲げられることで前記チューブの内部空間を前後に隔離区画する隔壁が形成されることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項12】
ヘッダおよびタンクが結合されて形成され、互いに一定距離離れて平行に形成される1対のヘッダタンク、および前記ヘッダタンクに両端が固定され、冷媒の流路を形成する複数のチューブを含む熱交換器であって、
外部空気が吹いて来る方向を前方、吹き出て行く方向を後方、前記ヘッダタンクの延長方向一側を第1方向、他側を第2方向とする時、
前記熱交換器は、前記ヘッダタンクの内部空間が前記第1、2方向に隔離区画され、前記第1、2方向の熱交換部それぞれに平均温度が互いに異なる熱交換媒体が流通し、前記チューブの内部空間が前後に隔離区画され、前後に二重の熱交換部を形成する形態に形成され、
前記チューブの後方側の内部空間に流通する熱交換媒体の流量が、前記チューブの前方側の内部空間に流通する熱交換媒体の流量よりも相対的に少ないように、前記タンクに流量配分構造が形成され、
前記熱交換器は、
高温冷却水および低温冷却水を流通させるラジエータであることを特徴とする熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に係り、より詳しくは、温度がそれぞれ異なる2種の熱交換媒体を冷却する一体型熱交換器であって、温度差により発生する熱応力を効果的に分散できるようにタンク内に流量配分構造を有する熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両のエンジンルーム内には、エンジンなどの駆動のための部品だけでなく、エンジンなどの車両内の各部品を冷却するかまたは車両室内の空気温度を調節するためのラジエータ、インタークーラ、蒸発器、凝縮器などの多様な熱交換器が備えられる。このような熱交換器は、一般的に、内部に熱交換媒体が流通し、熱交換器内部の熱交換媒体と熱交換器外部の空気が互いに熱交換することで、冷却または放熱がなされることになる。
【0003】
多くの場合、熱交換器には1種の熱交換媒体が流通するが、必要に応じて、2種の熱交換媒体が流通する熱交換器が一体に形成される場合もある。例えば、自動車のラジエータおよびオイルクーラの場合、ラジエータにはエンジンを冷却するための冷却水が流通し、オイルクーラにはエンジンオイル、トランスミッションオイルなどのオイルが流通する。勿論、これらがそれぞれ別の装置として形成される場合もあるが、エンジンルームの空間活用性を高めるための目的や、冷却水を用いてオイルを冷却する水冷式オイルクーラ構造が導入されるなどのように、これらが一体型に形成される場合も多い。
【0004】
図1は、従来の2種の熱交換媒体が流通する一体型熱交換器の一実施形態を示している。図1の実施形態に係る一体型熱交換器は、1種の熱交換媒体が流通する熱交換器とほぼ類似した構造で構成される。すなわち、このような熱交換器1000は、互いに一定距離離れて平行に形成される1対のヘッダタンク100と、ヘッダタンク100に両端が固定され、冷媒の流路を形成する複数のチューブ200と、付加的にチューブ200の間に介在する複数のピン300と、を含む。これに、さらに、2種の熱交換媒体が互いに混合されることなく流通できるように、ヘッダタンク100の内部空間を区画および隔離するバッフルが備えられるか、またはヘッダタンク100自体が分割された形態に形成される。図1には、ヘッダタンク100が分割された形態である実施形態を示している。さらに、1種の熱交換媒体を流通させる熱交換器が1個ずつの流入口/排出口を有するのとは異なり、2種の熱交換媒体を流通させる熱交換器は2個ずつの流入口/排出口を有する。
【0005】
一方、このような一体型熱交換器は、言わば、2個の熱交換器を1個の熱交換器に代替することになる。したがって、2個の熱交換器であるときに比べて、熱交換器のコア(core、チューブおよびピンからなり、熱交換が主になされる領域)の面積が減るため、熱交換性能をさらに向上させる必要がある。このような必要に応じて、このような一体型熱交換器の場合、熱交換器のコアが二重に形成されるように、チューブが、中間に隔壁が形成されている形態になるようにする場合もある。図1の下段に示したものが、このように中間に隔壁が形成されたチューブの断面図である。中間に隔壁が形成されたチューブの形状は、押出を用いて作製してもよく、図1の下段に示されたように折り畳み(fold)を用いて作製してもよい。折り畳みチューブ(folded tube)として中間に隔壁が形成されたチューブの一例が韓国特許公開第2013-0023450号によく示されている。
【0006】
すなわち、熱交換器のコアが上下方向に2個に分離され、それぞれ2種の熱交換媒体が流通するが、上下それぞれのコアも前後方向に2個に分離されるものであって、要するに、上下のコアは互いに連通しないが、前後のコアは互いに連通する。
【0007】
このように形成される一体型熱交換器は、冷却水/オイルのように種類が異なる2種の熱交換媒体が流通するか、または低温冷却水/高温冷却水のように温度範囲が異なる2種の熱交換媒体が流通するなどの多様な方式で運用される。如何なる場合でも、2種の熱交換媒体が流通する場合、上下コアの間には相当な温度差が形成される。一方、前後コアの間にも温度差が発生するが、詳細に説明すると次のとおりである。このような熱交換器は、前後方向に外部空気が流通するにつれ、熱交換器内の熱交換媒体が外部空気と熱交換するようになされる。隔壁が形成されたチューブにより前後方向にコアが二重に形成される場合、前方のコアが既に熱交換をした空気が後方のコアと熱交換をすることになる。これにより、前後コアの間にも温度差が発生することになる。
【0008】
このように温度分布が不均衡に形成されると、位置に応じて熱変形する程度が異なり、これにより、熱交換器の特定の部位に熱応力が集中するという問題が発生する。上述したような一体型熱交換器の場合、上下コアおよび前後コアが分けられる部分に熱応力の集中が最も大きく現れる。このような熱変形に応じた熱応力の集中は、熱交換器の損傷や破損の大きな原因になるため、それに対する対処設計が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国特許公開第2013-0023450号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、上記のような従来技術の問題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、温度がそれぞれ異なる2種の熱交換媒体を冷却する一体型熱交換器であって、温度差により発生する熱応力を効果的に分散できるようにタンク内に流量配分構造を有する、熱応力を分散するための流量配分タンク構造を有する熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記のような目的を達成するための本発明に係る熱応力を分散するための流量配分タンク構造を有する熱交換器1000は、ヘッダ110およびタンク120が結合されて形成され、互いに一定距離離れて平行に形成される1対のヘッダタンク100、および前記ヘッダタンク100に両端が固定され、冷媒の流路を形成する複数のチューブ200を含む熱交換器1000であって、外部空気が吹いて来る方向を前方、吹き出て行く方向を後方、前記ヘッダタンク100の延長方向一側を第1方向、他側を第2方向とする時、前記熱交換器1000は、前記ヘッダタンク100の内部空間が前記第1、2方向に隔離区画され、前記第1、2方向の熱交換部それぞれに平均温度が互いに異なる熱交換媒体が流通し、前記チューブ200の内部空間が前後に隔離区画され、前後に二重の熱交換部を形成する形態に形成され、前記チューブ200の後方側の内部空間に流通する熱交換媒体の流量が、前記チューブ200の前方側の内部空間に流通する熱交換媒体の流量よりも相対的に少なく形成されるように、前記タンク120に流量配分構造が形成されることができる。
【0012】
前記流量配分構造は、前記タンク120の一部が前記ヘッダタンク100の高さ方向に前記ヘッダタンク100の内側に突出し、突出部末端が前記チューブ200の後方側の内部空間から離隔配置される流量調節リブ122、および前記ヘッダタンク100の高さ方向に延び、一端が前記流量調節リブ122の内面に固定され、他端が前記チューブ200後方側の内部空間から離隔配置される流量調節バッフル121を含み、前記チューブ200の後方側の内部空間に流通する熱交換媒体の流量を低減するように形成される前記流量調節リブ122および前記流量調節バッフル121の結合体として形成されることができる。
【0013】
また、前記流量配分構造は、前記流量調節バッフル121により流量が低減される前記チューブ200の個数が、前記流量調節リブ122により流量が低減される前記チューブ200の個数よりも少ないか同一に形成されることができる。
【0014】
また、前記流量配分構造は、前記タンク120の前記第1、2方向の熱交換部の境界地点に前記ヘッダタンク100の内部空間を前記第1、2方向に隔離区画する隔離構造が形成され、前記流量調節バッフル121により流量が低減される前記チューブ200の個数が、前記流量調節リブ122により流量が低減される前記チューブ200の個数よりも少なく形成され、前記流量調節バッフル121は、前記隔離構造に偏る位置に形成されることができる。
【0015】
また、前記流量配分構造は、前記タンク120の一部が前記ヘッダタンク100の高さ方向に前記ヘッダタンク100の内側に突出し、突出部末端が前記チューブ200の後方側の内部空間から離隔配置され、前記チューブ200の後方側の内部空間に流通する熱交換媒体の流量を低減するように形成される流量調節リブ122であってもよい。
【0016】
または、前記流量配分構造は、前記ヘッダタンク100の高さ方向に延び、一端が前記タンク120の内面に固定され、他端が前記チューブ200の後方側の内部空間から離隔配置され、前記チューブ200の後方側の内部空間に流通する熱交換媒体の流量を低減するように形成される流量調節バッフル121であってもよい。
【0017】
また、前記タンク120は、前記第1、2方向の熱交換部の境界地点に前記ヘッダタンク100の内部空間を前記第1、2方向に隔離区画する隔離構造が形成され、前記隔離構造は、前記タンク120の一部が前記ヘッダタンク100の高さ方向に前記ヘッダタンク100の内側に突出し、突出部末端が前記チューブ200と接触するように形成される隔離リブであるか、または、前記ヘッダタンク100の高さ方向に延び、一端が前記タンク120の内面に固定され、他端が前記チューブ200と接触するように形成される隔離バッフルであってもよい。
【0018】
また、前記流量配分構造が前記流量調節リブ122を含み、前記隔離構造が前記隔離リブであり、前記流量調節リブ122および前記隔離リブが互いに連結形成されることができる。
また、前記流量配分構造は、前記チューブ200において熱交換媒体が排出される側に形成されることができる。
【0019】
また、前記流量配分構造は、全ての前記チューブ200の位置に対して適用形成されるか、または、前記第1、2方向の熱交換部の境界地点付近の一部の前記チューブ200の位置に対して適用形成されることができる。
【0020】
前記流量配分構造は、前記第1、2方向の熱交換部の境界地点付近の一部の前記チューブ200の位置に対して適用形成され、前記第1、2方向の熱交換部の境界地点付近は、前記熱交換器1000の前記第1、2方向の熱交換部の境界地点に形成されたダミーチューブ210を中心に前記第1、2方向に1個~5個の範囲で形成されることができる。
【0021】
また、前記チューブ200は、プレートが折り曲げられることで前記チューブ200の内部空間を前後に隔離区画する隔壁が形成されることができる。
また、前記熱交換器1000は、高温冷却水および低温冷却水を流通させるラジエータであってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、温度がそれぞれ異なる2種の熱交換媒体を冷却する一体型熱交換器であって、タンク内に流量配分構造が形成されることで、温度差により発生する熱応力を効果的に分散できるという効果がある。より具体的に、本発明に係る熱交換器は、熱交換器のコアが、2種の熱交換媒体を冷却するために第1、2方向に区分され、熱交換性能を向上させるために折り畳みチューブのように中間に隔壁が形成されたチューブを用いて前後にも区分される。第1、2方向および前後の区分地点、中でも後方地点における熱応力の集中が最も激しいことが知られている。本発明においては、チューブ前方側に多くの流量の熱交換媒体が流通し、チューブ後方側に少ない流量の熱交換媒体が流通するようにして熱応力の集中を緩和するが、このような流量配分をタンク内に形成されたバッフルまたはタンク陥没部を用いて実現する。
【0023】
このように流量配分構造が形成されることで、チューブ前方側に流通する多くの流量の熱交換媒体が未だに熱交換していない外部空気と熱交換し、チューブ後方側に流通する少ない流量の熱交換媒体が前方コアにおいて一度熱交換した外部空気と熱交換することになり、温度不均衡の問題を大幅に解消できるという効果がある。勿論、これにより、熱応力が効果的に分散され、窮極的にヘッダとチューブとの間の連結における損傷および破損の問題を大幅に低減できる効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】従来の2種の熱交換媒体が流通する一体型熱交換器の一実施形態を示す図である。
図2】従来の2種の熱交換媒体が流通する一体型熱交換器の分解斜視図である。
図3】熱交換器における温度分布不均衡の例示を示す図である。
図4】本発明に係る熱応力を分散するための流量配分構造の第1実施形態を示す図である。
図5】本発明に係る熱応力を分散するための流量配分構造の第2実施形態を示す図である。
図6a】本発明に係る熱応力を分散するための流量配分構造の第3実施形態を示す図である。
図6b】本発明に係る熱応力を分散するための流量配分構造の第3実施形態を示す図である。
図6c】本発明に係る熱応力を分散するための流量配分構造の第3実施形態を示す図である。
図6d】本発明に係る熱応力を分散するための流量配分構造の第3実施形態を示す図である。
図6e】本発明に係る熱応力を分散するための流量配分構造の第3実施形態を示す図である。
図6f】本発明に係る熱応力を分散するための流量配分構造の第3実施形態を示す図である。
図7】本発明に係る熱応力を分散するための流量配分構造の第3実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る熱応力を分散するための流量配分構造を有する熱交換器について添付図面を参照して詳しく説明する。
本発明が取り扱おうとする熱交換器は、温度が互いに異なる異種の熱交換媒体を別に流通させる一体型熱交換器であって、特にチューブが前方および後方の2列に形成され、コア(core)、すなわち主に熱交換が起こる熱交換部が第1、2方向および前後の全てに二重に形成される熱交換器である。具体的に説明すると、図1により簡略に説明したように、熱交換器1000は、図2に示すヘッダ110およびタンク120が結合されて筺体形態に形成され、互いに一定距離離れて平行に形成される1対のヘッダタンク100と、ヘッダタンク100に両端が固定され、冷媒の流路を形成する複数のチューブ200と、を含み、さらに、チューブ200の間に介在する複数のピン300をさらに含むことができる。熱交換器1000は、ヘッダタンク100の延長方向一側を第1方向、他側を第2方向とする時、ヘッダタンク100の内部空間が第1、2方向に隔離区画され、第1、2方向の熱交換部それぞれに平均温度が互いに異なる熱交換媒体が流通する。図面上、第1、2方向が上下方向であることを示しているが、これに本発明が限定されるものではないことはいうまでもなく、例えば、第1、2方向が左右方向であってもよい。また、熱交換器1000は、外部空気が吹いて来る方向を前方、吹き出て行く方向を後方とする時、チューブ200の内部空間が前後に隔離区画され、前後に二重の熱交換部を形成する。チューブ200は、金型により押出して作製される押出チューブであってもよく、プレートが折り曲げられることでチューブ200の内部空間を前後に隔離区画する隔壁が形成される折り畳みチューブ(folded tube)であってもよい。また、例示的に、熱交換器1000は、高温冷却水/低温冷却水を流通させるラジエータであってもよい。
【0026】
図2は、従来の2種の熱交換媒体が流通する一体型熱交換器の分解斜視図である。図2は、第1、2方向(図2を基準に見る際に上下方向)に熱交換部が区画されることを詳細に示すための図であり、便宜上、ダミーチューブ210を除いたチューブ200やピン300などは省略して示した。ダミーチューブ(dummy tube)とは、一般的なチューブと同一の外形を持ってヘッダのチューブ挿入ホールに円滑に挿入できるように形成されるが、一般的なチューブとは異なり、内部に熱交換媒体が流通できる流通路が形成されずに塞がっている形態のチューブである。チューブ200は、1対のヘッダタンク100の間に熱交換媒体を流通させる役割をするため、ダミーチューブ210が形成された地点においては、1対のヘッダタンク100の間に熱交換媒体が流通しない。したがって、第1、2方向の熱交換部が形成されるためには、ダミーチューブ210が形成された地点で、ヘッダタンク100の内部空間が第1、2方向に隔離区画されさえすればよい。結果的に、第1、2方向の熱交換部の境界地点は、ダミーチューブ210が形成された地点と定義することができる。
【0027】
このように、熱交換器1000においては、ヘッダタンク100の内部空間が第1、2方向に隔離区画されるが、このために、タンク120には、第1、2方向の熱交換部の境界地点にヘッダタンク100の内部空間を第1、2方向に隔離区画する隔離構造が形成されることができる。前記隔離構造は、一端がタンク120の内面に固定され、他端がダミーチューブ210と接触するように形成される隔離バッフルであってもよく、または、図2に示したように、タンク120の一部がヘッダタンク100の内側に突出し、突出部末端がダミーチューブ210と接触するように形成される隔離リブであってもよい。
【0028】
図3は、熱交換器1000における温度分布不均衡の例示を詳しく示している。
例示的に、図3の上側に示したように、熱交換器1000の上側熱交換部は、高温領域(hot zone)を形成し、熱交換器1000の下側熱交換部は、低温領域(cold zone)を形成することができる。このように第1、2方向の熱交換部の間に温度差が発生すると、第1、2方向の熱交換部における熱変形量の差により、第1、2方向の熱交換部の境界地点に熱応力が集中することになる。
【0029】
図3の中間には、熱交換器1000の断面図および温度分布グラフを示している。温度分布グラフには、熱交換媒体がチューブ200の入口(inlet)から出口(outlet)に流れるにつれ、外部空気と熱交換しつつ次第に温度が低下する現象をよく示している。ところで、ここでも分かるように、チューブ200前方側に比べて後方側が全般的に高い温度を示す。すなわち、チューブ200前方側の内部空間に流通する熱交換媒体が、チューブ200後方側の内部空間に流通する熱交換媒体よりもよく冷却されることが分かる。図3の下側には、チューブ200の入口部分における、さらに詳しく表示した温度分布グラフを示しているが、ここでも前方側に比べて後方側が全般的に高い温度を示しており、熱交換媒体の冷却が十分になされていないことを確認することができる。
【0030】
このような温度分布不均衡現象についてより詳細に説明すると次のとおりである。チューブ200前方側の内部空間に流通する熱交換媒体が空気と先に熱交換をする。前述したように、熱交換器1000がラジエータであれば、熱交換媒体よりも空気の温度が低いため、熱交換媒体の熱が空気に捨てられることで空気の温度が上がることになる。チューブ200後方側の内部空間に流通する熱交換媒体は、このように前方側において既に温度が若干上がった空気と熱交換をすることになる。したがって、前方側に比べて後方側においては、熱交換媒体の熱が空気に円滑に捨てられることができず、よって、熱交換媒体がより少なく冷却されるため、チューブ200前方側に比べて後方側が全般的に高い温度を示すことになる。
【0031】
このようにチューブ200後方側の温度が高くなると、当該部分における熱変形量が多くなることは当然である。図3の下側には、このような温度分布不均衡により、チューブ200後方側に結合されているヘッダ110後方側が前方側よりもさらに多くの熱変形を起こしている状態を点線で示している。一般的に、チューブ200は、ヘッダ110のチューブ挿入ホールに嵌められてからブレージング接合されるが、点線で示しているようにヘッダ110後方側が熱変形により相対的に過度に伸びると、この接合部位に熱応力が過度に集中し、その結果、破損することになる。
【0032】
すなわち、要するに、第1、2方向および前後の全てに二重に形成されている熱交換器の場合、第1、2方向においては第1、2方向の熱交換部の境界地点付近に熱応力が集中し、前後方向においては後方側のヘッダ-チューブ接合部位に熱応力が集中する。総合的に見ると、第1、2方向の熱交換部の境界地点付近にある後方側のヘッダ-チューブ接合部位に最も熱応力が集中することが分かる。
【0033】
本発明においては、このような問題を解消するために、チューブ200後方側の内部空間に流通する熱交換媒体の流量が、チューブ200前方側の内部空間に流通する熱交換媒体の流量よりも相対的に少なく形成されるようにする。前述したように、このような不均衡的な熱変形が起こる大きな原因は、チューブ200前方側の内部空間に流通する熱交換媒体が空気と熱交換を先にすることで空気の温度が上がり、このように温度が上がった空気がチューブ200後方側の内部空間に流通する熱交換媒体から十分に熱を吸収することができないためである。チューブ200後方側の内部空間に流通する熱交換媒体の流量が減るのであれば、後方側において空気が熱交換媒体から吸収しなければならない熱量自体が減ることになる。すなわち、チューブ200後方側の内部空間に流通する熱交換媒体の流量を減らすと、空気が前方側程度の熱を吸収できないとしても、後方側の熱交換媒体の温度を十分に低くする程度の熱は吸収することができる。本発明は、まさにこのような原理を利用したものであり、本発明においては、このように後方側が前方側よりも熱交換媒体の流量が少なく形成されるようにするために、タンク120に流量配分構造が形成されるようにする。
【0034】
図4は、本発明に係る熱応力を分散するための流量配分構造の第1実施形態を示している。第1実施形態においては、前記流量配分構造は、ヘッダタンク100の高さ方向に延び、一端がタンク120の内面に固定され、他端がチューブ200後方側の内部空間から離隔配置され、チューブ200後方側の内部空間に流通する熱交換媒体の流量を低減するように形成される流量調節バッフル121として形成される。図4は、断面図として、流量調節バッフル121の他端がチューブ200後方側末端から所定距離離れた形態に示しているが、これに本発明が限定されるものではないことはいうまでもない。例えば、流量調節バッフル121の他端がチューブ200の内部空間まで延長形成されてもよく、この場合、流量調節バッフル121の他端の外径がチューブ200の内径よりも若干小さく形成されるようにしてもよい。すなわち、この場合、流量調節バッフル121の他端がチューブ200の内部空間に若干の間隙をもって嵌められている形態になり、このように流路面積自体を減らすことで流量を低減してもよい。
【0035】
図5は、本発明に係る熱応力を分散するための流量配分構造の第2実施形態を示している。第2実施形態においては、前記流量配分構造は、タンク120の一部がヘッダタンク100の高さ方向にヘッダタンク100の内側に突出し、突出部末端がチューブ200後方側の内部空間から離隔配置され、チューブ200後方側の内部空間に流通する熱交換媒体の流量を低減するように形成される流量調節リブ122として形成される。流量調節リブ122の実際の形状は、例えば、図2に示した隔離リブと類似した形態に形成されることができる。ただし、前記隔離リブは、チューブ200前後方側を全て閉鎖する形態に形成されるのに対し、流量調節リブ122は、チューブ200後方側にだけ形成される。また、前記隔離リブは、熱交換媒体の流通を完全に防ぐのに対し、流量調節リブ122は、流路面積を減らすが、熱交換媒体が流通できる若干の間隙は残すことで、流量を低減するだけである。
【0036】
図6a~図7は、本発明に係る熱応力を分散するための流量配分構造の第3実施形態を示している。第3実施形態を簡単に要約すると、前述した第1実施形態の流量調節バッフル121および第2実施形態の流量調節リブ122が結合された形態に形成されると見ればよい。すなわち、第3実施形態においては、前記流量配分構造は、タンク120の一部がヘッダタンク100の高さ方向にヘッダタンク100の内側に突出し、突出部末端がチューブ200後方側の内部空間から離隔配置される流量調節リブ122、およびヘッダタンク100の高さ方向に延び、一端が流量調節リブ122の内面に固定され、他端がチューブ200後方側の内部空間から離隔配置される流量調節バッフル121を含み、チューブ200後方側の内部空間に流通する熱交換媒体の流量を低減するように形成される流量調節リブ122および流量調節バッフル121の結合体として形成される。
【0037】
図6aの斜視図は、ヘッダ110はそのまま示されているが、タンク120は前記流量配分構造が形成される部分で切断された形態を示したものであり、チューブ200も前記流量配分構造が形成される範囲にだけ示している。図6bの斜視図は、ヘッダ110およびチューブ200の結合体の前方半分が切断された形態を示したものであり、図6cの断面図に該当する。図6cは、図4および図5のような断面図として、流量調節リブ122がチューブ200後方側の入口付近まで突出しており、流量調節リブ122の内面から流量調節バッフル121がさらに延び、チューブ200後方側の入口とほぼ接触する程度の位置まで突出している形態を示している。このように前記流量配分構造が形成されていることで、チューブ200後方側の内部空間に流通する熱交換媒体の流量を非常に効果的に低減することができる。
【0038】
第3実施形態において、前記流量配分構造は、流量調節リブ122および流量調節バッフル121を全て含み、流量調節バッフル121により流量が低減されるチューブ200の個数が、流量調節リブ122により流量が低減されるチューブ200の個数よりも少ないか同一に形成されることができる。一方、図6aなどには、流量調節バッフル121により流量が低減されるチューブ200の個数が、流量調節リブ122により流量が低減されるチューブ200の個数よりも少なく形成される例示を示している。この場合、流量調節バッフル121が前記隔離構造から遠い側に形成されるのであれば、流量調節バッフル121と前記隔離構造との間の空いた空間は、実質的に熱交換媒体が多くは流通せずに溜まるデッドゾーン(dead zone)を形成することになり、これは、熱交換器の空間浪費をもたらす。したがって、流量調節バッフル121は、図示したように、前記隔離構造に偏る位置に形成されることが好ましい。
【0039】
一方、タンク120には、第1、2方向の熱交換部の境界地点にヘッダタンク100の内部空間を第1、2方向に隔離区画する隔離構造が形成され、このような隔離構造は、隔離リブまたは隔離バッフルであってもよいと説明した。図6dは、タンク120の外側から前記流量配分構造を眺めたものであり、図6eは、タンク120の内側から前記流量配分構造を眺めたものである。また、図6fは、タンク120の内側から前記流量配分構造を眺めた斜視図である。図6aから図6fまでには、前記流量配分構造が流量調節リブ122を含み、前記隔離構造が前記隔離リブである例示を示している。この場合、流量調節リブ122および前記隔離リブが互いに独立に形成されるのであれば、これらの間の空間がデッドゾーンになるだけでなく、これらの間の空間でタンク120の変形が過度に急激に起こることになり、作製過程で破損するなどの不良が発生する危険性がある。したがって、前記流量配分構造が流量調節リブ122を含み、前記隔離構造が前記隔離リブであり、図6a~図6fに示したように、流量調節リブ122および前記隔離リブが互いに連結形成されることが好ましい。
【0040】
一方、前記流量配分構造は、チューブ200において、熱交換媒体が流入する入口(inlet)側、または熱交換媒体が排出される出口(outlet)側のいずれに形成されてもよい。ただし、前記流量配分構造がチューブ200の入口側に形成される場合、ヘッダタンク100内に収容している高温の熱交換媒体がチューブ200へ円滑に抜け出ないことがあり得る。これは、ヘッダタンク100内の圧力を不要に増加させるか、またはチューブ200へ円滑に熱交換媒体が流れないことで、熱交換性能を低下させる原因になり得る。したがって、図4および図5の全てに「出口」と表示されているように、前記流量配分構造は、チューブ200において熱交換媒体が排出される側に形成されることが好ましい。このようにすることで、チューブ200中間部分における熱交換媒体の流動性を十分に確保するとともに、熱応力の集中が発生するチューブ200後方側末端部の破損地点(crack point)においては効果的に熱応力を分散させることができる。
【0041】
また、前記流量配分構造は、全てのチューブ200の位置に対して適用形成されてもよい。チューブ200が前後2列からなる以上、前述したようなヘッダ-チューブ後方側の接合部位への熱応力の集中は、全てのチューブ200に発生し得る。したがって、前記流量配分構造が全てのチューブ200に適用されてもよい。
【0042】
しかしながら、このように前記流量配分構造が全てのチューブ200に適用されると、実質的にチューブ200から排出側のヘッダタンク100への熱交換媒体の流通が円滑でなくなり得、これは、熱交換器1000の熱交換性能の低下につながる恐れがある。この際にも前述したように、熱応力の集中が起こる他の部分は、まさに第1、2方向の熱交換部の境界地点である。このことを考慮し、前記流量配分構造は、第1、2方向の熱交換部の境界地点付近の一部のチューブ200の位置に対して適用形成されるようにすることができる。前記第1、2方向の熱交換部の境界地点付近は、熱交換器200の第1、2方向の熱交換部の境界地点に形成されたダミーチューブ210を中心に第1、2方向に1個~5個の範囲で形成されることができる。図7は、このように第1、2方向の熱交換部の境界地点付近の一部のチューブ200の位置に対し、図6a~図6fに示したような第3実施形態の前記流量配分構造が形成された例示を示している。このようにする場合、熱交換器1000全体の熱交換性能の低下を適切に防止するとともに、熱応力の集中が最も大きく起こる地点における熱応力の分散を効果的に実現することができる。これに本発明が限定されるものではないことはいうまでもなく、実際の熱交換器の運用中に特に熱応力の集中が起こる地点が発見されると、当該部位に前記流量配分構造を局部的に適用してもよい。
【0043】
このように、本発明においては、チューブ後方側の内部空間に流通する熱交換媒体の流量を低減し、よって、前方側において既に一度熱交換をした空気が後方側において(十分に熱交換媒体を冷却させるために)吸収しなければならない熱量自体を低減する。これにより、空気が前方側程度の熱量を吸収できないとしても、後方側の熱交換媒体が十分に適切に冷却されることができる。換言すると、前方側の熱交換媒体の温度と、後方側の熱交換媒体の温度が均一になることになる。このように前後方間の温度分布を均一化することで、ヘッダ-チューブ後方側の接合部位における熱応力の集中による破損危険性を大幅に低くすることができる。
【0044】
さらに、第1、2方向の熱交換部の境界地点にも熱応力の集中が起こることが知られている。したがって、このような流量配分構造が第1、2方向の熱交換部の境界地点付近に局部的に適用されると、熱交換器の全体的な熱交換性能を適切に維持しながらも、熱応力の集中による破損危険性も十分に低くすることができる。
【0045】
本発明は、上記の実施形態に限定されず、適用範囲が多様であることはいうまでもなく、請求範囲で請求する本発明の要旨を逸脱することなく、当該発明が属する分野における通常の知識を有する者であれば誰でも多様な変形実施が可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によると、温度がそれぞれ異なる2種の熱交換媒体を冷却する一体型熱交換器であって、タンク内に流量配分構造が形成されることで、温度差により発生する熱応力を効果的に分散できるという効果がある。これにより、結果的に熱応力が効果的に分散され、窮極的にヘッダとチューブとの間の連結における損傷および破損の問題を大幅に低減できる効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0047】
100 ヘッダタンク
110 ヘッダ
120 タンク
121 流量調節バッフル
122 流量調節リブ
200 チューブ
210 ダミーチューブ
300 ピン
1000 熱交換器

図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図6f
図7