(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】電磁カプラ構造
(51)【国際特許分類】
H04B 5/48 20240101AFI20240229BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20240229BHJP
H01Q 7/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H04B5/48
G06K19/077 272
H01Q7/00
(21)【出願番号】P 2022554469
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(86)【国際出願番号】 EP2020056555
(87)【国際公開番号】W WO2021180319
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】フランク,マルクス
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-538707(JP,A)
【文献】特表2013-511098(JP,A)
【文献】特開2011-254413(JP,A)
【文献】特表2018-524963(JP,A)
【文献】特表2013-530574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 5/48
G06K 19/077
H01Q 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁エネルギーにより、任意の幾何学的形状を有するRF終端平面金属配線との相互作用での空間選択性を提供するための無線電磁カプラ構造であって、
反応型近距離場結合によって、前記電磁エネルギーを前記RF終端平面金属配線に結合するための、差動伝送路にシャント接続した連続アレイ状の複数の結合要素と、
前記差動伝送路と前記複数の結合要素のうちの1つとの間の経路に備わった、複数の切替可能な抵抗素子であって、対応するスイッチを制御することにより、前記差動伝送路と各結合要素との電気接続の抵抗値を第1の抵抗値と前記第1の抵抗値より小さい第2の抵抗値とに交互に切り替える抵抗素子と、を備え、
前記無線電磁カプラ構造は、前記各結合要素に対して、
前記差動伝送路から供給されるエネルギーを回収する、対応するハーベスタ素子と、
前記ハーベスタ素子から対応するスイッチにフィードバックを行うための対応するフィードバックループであって、前記ハーベスタ素子で確立したDC電圧に基づいて、各経路に備わった前記抵抗素子を切り替えるフィードバックループと、をさらに備える、電磁カプラ構造。
【請求項2】
前記各ハーベスタ素子と前記差動伝送路との間の電気的接続は、前記差動伝送路と前記各結合要素との間の電気接続と共に、前記第1の抵抗値の電気接続と前記第2の抵抗値の電気接続との間で交互に切り替え可能である、請求項1に記載の電磁カプラ構造。
【請求項3】
前記各ハーベスタ素子が、前記第1の抵抗値の電気接続を介して前記差動伝送路に恒久的に結合される、請求項1に記載の電磁カプラ構造。
【請求項4】
前記RF終端平面金属配線に結合される電磁エネルギーを供給する質問器をさらに備える、請求項1に記載の電磁カプラ構造。
【請求項5】
前記質問器と前記差動伝送路との間に電気的に結合したバランをさらに備え、前記バランは、前記質問器の出力を、振幅が等しく位相が180°ずれた2つの部分に分割することによって差動伝送路を形成する、請求項4に記載の電磁カプラ構造。
【請求項6】
前記質問器は、感知状態において、無変調電磁エネルギーを前記各結合要素に供給するよう構成し、前記無変調電磁エネルギーは、前記複数の結合要素のすべての結合要素に対して最初に前記第1の抵抗値に切り替えられている前記差動伝送路によって誘導されるRF搬送波である、請求項4に記載の電磁カプラ構造。
【請求項7】
前記質問器は、前記感知状態になった後に、前記RF搬送波を前記各結合要素への通信信号として変調するよう構成する、請求項6に記載の電磁カプラ構造。
【請求項8】
前記質問器は、前記無変調電磁エネルギーを供給する前記RF搬送波と前記RF終端平面金属配線との相互作用を考慮して、前記各スイッチの切り替え状態が安定した後に前記通信信号を供給するよう構成する、請求項7に記載の電磁カプラ構造。
【請求項9】
前記差動伝送路が終端されている、請求項1に記載の電磁カプラ構造。
【請求項10】
前記各結合要素は、誘導結合によって前記RF終端平面金属配線と相互作用するための伝送路ループを備え、前記伝送路ループは、前記伝送
路ループの2つの端子が互いに接近して前記差動伝送路を介して差動的に供給されるようにループ状に形成した有限長の連続伝送路である、請求項1に記載の電磁カプラ構造。
【請求項11】
前記伝送路ループは、パラメータを用いた以下の表現に従う超楕円形状の幾何学的形状を有する、請求項10に記載の電磁カプラ構造。
【数1】
xとyは直交座標を示す。
【請求項12】
前記各結合要素は、誘導結合によって前記RF終端平面金属配線と相互作用するための、細長い螺旋平面形状の伝送路パターンを備え、細長い螺旋形状の前記伝送路パターンは、両端に端子を備えた細長い螺旋形状を有する有限長の連続伝送路であり、前記各端子が、その間に前記連続伝送路の少なくとも1つの巻線があるように配置される、請求項1に記載の電磁カプラ構造。
【請求項13】
有限長の前記連続伝送路は、各巻線が互いに平行に配置された直線部分を備えるように、固定中心点の周りに巻回されている、請求項12に記載の電磁カプラ構造。
【請求項14】
前記連続アレイ状の複数の結合要素が一次元幾何学構造を有する、請求項1に記載の電磁カプラ構造。
【請求項15】
前記連続アレイ状の複数の結合要素が二次元幾何学構造を有する、請求項1に記載の電磁カプラ構造。
【請求項16】
前記RF終端平面金属配線がRFIDインレイである、請求項1に記載の電磁カプラ構造。
【請求項17】
電磁力を結合することによって前記RFIDインレイをエンコードするよう構成した、請求項16に記載の電磁カプラ構造。
【請求項18】
前記DC電圧が所定の第1の閾値を超えた場合に、前記差動伝送路と各結合要素との電気接続の抵抗を前記第1の抵抗値に切り替える、請求項1に記載の電磁カプラ構造。
【請求項19】
前記DC電圧が前記第1の閾値より低い所定の第2の閾値を下回ると、前記抵抗を前記第1の抵抗値から前記第2の抵抗値に切り替える、請求項18に記載の電磁カプラ構造。
【請求項20】
前記各フィードバックループが反転演算増幅器を備える、請求項1に記載の電磁カプラ構造。
【請求項21】
請求項1に記載の電磁カプラ構造を備えるRFIDプリンタ/エンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は広く、電磁結合技術に関する。より具体的には、非限定的な実施形態は、プリンタでの使用に適した電磁カプラ構造であって、RFIDインレイのエンコードまたはその他の近距離場でのエンコード用途のためのものに関する。
【背景技術】
【0002】
無線自動識別(RFID)は、(RFIDタグまたはRFIDインレイとして知られる)電子タグからデータを転送するために電波を使用する技術である。タグには情報が電子的に保存されている。情報を読み出すには、RFIDリーダから符号化した無線信号を送信し、タグに問い合わせをする。そのため、RFIDタグは、平面金属配線、より具体的には誘導結合に適した電流ループを備える。同じ平面金属配線(電流ループ)を使用して、電磁結合によってRFIDタグをエンコードすることも可能である。
【0003】
平面金属配線を含むRFIDデバイスは、通常、インレイと呼ばれる。特に、インレイは、トランスポンダに接続するフレキシブル基板上に支持された平面金属配線フィルムを備えたRFIDデバイスである。電流ループに含まれるトランスポンダは、インレイに送信され平面金属配線で受信する信号を解読し、また、信号を平面金属配線に送信するための集積回路であり、この信号は、平面金属配線(「アンテナ」とも呼ぶことがある)によってさらに送信される。インレイアンテナは、RFIDインレイおよび質問器と通信するための結合要素を少なくとも含むトランシーバと一定のターゲット周波数で通信するように同調(すなわちサイズ調整)されてもよい。「アンテナ」という用語についてより良く理解するために、本開示の中で「アンテナ」という用語は放射装置を意味すると解釈する。ただし、本開示は、放射型遠距離場に対立する、反応型近距離場での結合に関する。したがって、本開示では、「アンテナ」という用語の使用を避ける。
【0004】
近年、紙などの媒体上にRFIDインレイを配置することができると同時に、印刷中に所望の情報でRFIDインレイのエンコードを可能とする印刷装置が知られるようになった。エンコードは電磁結合によって行われ、好ましくは反応型近距離場で行われる。このため、RFIDプリンタ/エンコーダは、プリンタの空洞部(キャビティ)に嵌合する電磁カプラ構造を備え、媒体が媒体経路に沿ってプリンタ/エンコーダ内へ誘導されると、エンコード情報を担持する電磁力が媒体上に位置するRFIDインレイと結合するようになっている。
【0005】
結合要素が1つだけでなく、複数の結合要素を1次元または2次元のアレイ状にしたカプラ構造も使用可能である。
【0006】
さまざまな形状(形状因子)を持つ異なるインレイを、効率的にかつカプラ構造を実質的に変更することなくエンコードする必要があるために問題が生じる。
【0007】
結合要素は、カプラ全体を構成する単一構成であってもアレイ構成であっても、インレイ形状のバリエーションが膨大であるため、概して最適ではない設計となっている。多くの場合、伝送路(TRL)技術を、さまざまなTRL形状からの漏洩磁場結合に使用する。また、よりアンテナに近い放射型構造を採用する場合もあるが、その場合、無線(RF)分離のための大規模なシールドのコストがかかる。いずれの構成であっても、最適な結合は得られない。そこで、形状に適合するための解決策の1つとして、RF結合場を最適化するために個々の素子の励起を制御したアレイ構成とし、個々の素子の不完全性を克服することが考えられる。
【0008】
しかし、この場合、実際のエンコードを行う前に、エンコードする特定のインレイに結合装置を合わせるよう較正が必要になるという欠点がある。最適な結合のためのインレイの位置がわかっているか、インレイのプロファイルを取得して保存しておく必要がある。
【0009】
前者(「静的」)の場合、各インレイのタイプは独自の必要な配置を有しており、固定カプラを変更することができない。後者(「外部制御適応」)の場合、インレイのプロファイルを知るためにスキャン機能が必要となる。
【0010】
アレイ状の電磁結合要素という特定のケースでは、使用する(活性化する)アレイの1つまたは限定された複数の要素を決定(選択)して特定のインレイタイプに電力を結合させるために、各インレイ形状に対して最初に較正ステップを実行する必要がある。加えてまたは同時に、通信する(特に、エンコードする)インレイとカプラ構造との間の(相対)位置を決定する必要がある。ほとんどの場合、インレイ同士の距離が小さいため、効率的な結合スペース(空間選択性)を制限することがさらに望ましいことに留意されたい。このような制限は、好ましくは、大規模なシールド構造を必要とせずに達成されるべきである。この構造がスペースを消費するので限られたスペースしかないプリンタの環境には適さないことが多いからである。
【発明の概要】
【0011】
第1の態様によれば、電磁エネルギーにより、任意の幾何学的形状を有するRF終端平面金属配線との相互作用での空間選択性を提供するための無線電磁カプラ構造が提供される。この電磁カプラ構造は、反応型近距離場結合によって、電磁エネルギーをRF終端平面金属配線に結合するための、位相補償型差動伝送路にシャント接続した連続アレイ状の結合要素を備える。この電磁カプラ構造はさらに、差動伝送路とアレイを形成する複数の結合要素のうちの1つとの間の経路に備わった、複数の切替可能な抵抗素子であって、対応するスイッチを制御することにより、差動伝送路と各結合要素との電気接続の抵抗値を第1の値と第1の値より小さい第2の値とに交互に切り替える抵抗素子を備える。各結合要素は、差動伝送路から供給されるエネルギーを回収する、対応するハーベスタ素子と、ハーベスタ素子から対応するスイッチにフィードバックを行うための対応するフィードバックループであって、ハーベスタ素子で確立したDC電圧に基づいて、各経路に備わった抵抗素子を切り替えるフィードバックループと、に関連付けられている。
【0012】
非限定的な実施形態の特定のアプローチによれば、自己適応型アレイ状の結合要素の形で無線電磁カプラ構造が提供される。この構造は、アレイを形成する各結合要素の給電経路の抵抗を、各結合要素とその近傍に存在するインレイとの間で感知された相互作用強度に基づいて、高い値と低い値との間で選択的に切り替えることができる。これにより、複数の結合要素のうち、特定のインレイとの高効率な結合を可能にする要素のみが、その抵抗を低い値に切り替えることによって自動的に活性化される。その他の結合要素を不活性化することで、供給した結合エネルギーを最も効率よく結合できる結合要素に集中させることができる。アレイの個々の結合要素の給電経路に接続したハーベスタ素子によってこれを達成する。ハーベスタ素子は、動作の初期感知段階中に決定した結合要素とインレイとの間の結合強度に基づいて、それぞれの抵抗を切り替えるためのフィードバックを提供する。したがって、特定のタグと相互作用するアレイ内の結合要素間で空間選択性が自動的に得られる。現在の状況(すなわち、幾何学的な配置やタグの形状)において、感知状態の間に効率的な相互作用が得られない結合要素を自動的に(少なくともある程度)隔離することによってこれが達成される。
【0013】
概説したアプローチは、上述の第1の態様による無線電磁カプラ構造によって実現することができる。非限定的な実施形態によれば、無線電磁カプラ構造は、連続アレイ状の結合要素と、結合要素それぞれについて、複数の切り替え可能な抵抗素子、ハーベスタ素子、およびフィードバックループを備える。
【0014】
非限定的な実施形態によれば、ハーベスタ素子は、対応する結合要素と共に給電線(差動伝送路)に接続され、接続抵抗は、ハーベスタ素子と結合要素に対してまとめて切り替えられるようになっている。
【0015】
非限定的な別の実施形態によれば、各ハーベスタ素子は、第1の(より大きい)抵抗値との電気的接続を介して差動伝送路に恒久的に結合される。後述するように、この場合、前者の実施形態と比較して、大きい抵抗値と比較して小さい抵抗値の大きさを小さくすることが可能である。
【0016】
好ましい非限定的な実施形態によれば、電磁カプラ構造はさらに、平面金属配線に結合されるために電磁エネルギーを供給する質問器を備える。さらに好ましくは、電磁カプラ構造は、質問器と差動伝送路との間に電気的に結合されるバランをさらに備える。バランは、質問器の出力を、振幅が等しく位相が180°ずれた2つの部分に分割することによって差動伝送路を形成する。
【0017】
好ましくは、質問器は、感知状態において、無変調電磁エネルギーを各結合要素に供給するよう構成する。無変調電磁エネルギーは、アレイ状のすべての結合要素の抵抗値が最初に第1の値に切り替えられている差動伝送路によって誘導されるRF搬送波である。これにより、感知状態では、結合要素とその近くに存在する平面金属配線(インレイ)との間の相互作用の強度に応じてハーベスタ素子で特定のDC電圧を確立するために、無変調電磁エネルギーが使用される。
【0018】
好ましくは、質問器はその後、RF搬送波を各結合要素への通信信号として変調するよう構成する。これにより、感知工程での感知結果に基づいて、結合要素それぞれについて安定した切り替え状態が確立された場合に、インレイをエンコードするために変調された通信信号を送信することができる。
【0019】
このために、さらに好ましくは、質問器は、無変調RF搬送波とRF終端平面金属配線との相互作用を考慮して、各スイッチの切り替え状態が安定した後に通信信号を供給するよう構成する。
【0020】
非限定的な好ましい実施形態によれば、差動伝送路は終端される。ただし、差動伝送路の終端は必須の特徴ではない。適切な位相補償によって代わりの構成を実現可能であって、差動伝送路の終端を省略することができる。
【0021】
好ましい非限定的な実施形態によれば、各結合要素は、誘導結合によってRF終端平面金属配線と相互作用するための伝送路ループを備え、伝送路ループは、伝送線ループの2つの端子が互いに接近して差動伝送路を介して差動的に供給されるようにループ状に形成した有限長の連続伝送路である。このような構成を、「差動伝送路ループ」(DTLL)とも呼ぶ。
【0022】
さらに好ましくは、伝送路ループは、パラメータを用いた以下の表現に従う(直交座標xおよびyでの)超楕円形状の幾何学的形状を有する。
【数1】
【0023】
パラメータa(長さ)とb(高さ)によってループの大きさが決まる。パラメータmとnによって曲率が決まる。
【0024】
別の好ましい非限定的な実施形態によれば、各結合要素は、誘導結合によってRF終端平面金属配線と相互作用するための細長い螺旋形状の伝送路パターンを備える。細長い螺旋形状の伝送路パターンは、両端に端子を備えた細長い螺旋形状を有する有限長の連続伝送路であり、各端子は、その間に伝送路の少なくとも1つの巻線があるように配置される。より好ましくは、有限長の連続伝送路は、各巻線が互いに平行に配置された直線部分を備えるように固定中心点の周りに巻回されている。このような結合要素により、順応性が向上しさまざまな形状のインレイとの高効率な結合が得られる。結合要素は、結合器の表面に分布する平行な導体部分それぞれに同じ方向に電流が流れるように配置されているため、単一のループ状の導体の近くだけでなく、結合器の表面全体に分布するよう強い磁場が発生する。同時に、磁界を結合器の表面領域のみに閉じ込めることで、選択性に影響が出ないようにしている。
【0025】
好ましい非限定的な実施形態によれば、連続アレイ状の結合要素が一次元幾何学構造を有する。
【0026】
好ましい非限定的な実施形態によれば、連続アレイ状の結合要素が二次元幾何学構造を有する。
【0027】
好ましい非限定的な実施形態によれば、RF終端平面金属配線がRFIDインレイである。さらに好ましくは、電磁カプラ構造は、電磁力を結合することによってRFIDインレイをエンコードするよう構成する。
【0028】
好ましい非限定的な実施形態によれば、ハーベスタのDC電圧が所定の第1閾値を超えた場合に、抵抗を第1の値に切り替える。以下に詳述するように、ハーベスタにおける高レベルのDC電圧は、結合要素とインレイとの間に非常に効率的な相互作用がない場合を示している。上記のように、その場合、結合要素を結合(エンコード)には使用しない。これは、抵抗を第1の(より高い)値に切り替えることによって達成され、それにより、対応するインレイをエンコードする該当結合要素を非活性化する。
【0029】
非限定的な好ましい実施形態によれば、DC電圧が第1の閾値より低い所定の第2の閾値を下回ると、抵抗を第1の値から第2の値に切り替える。これは、初期の高いDC電圧値から開始する場合、結合要素との非常に効率的な結合を持つインレイが近づくと、低い値の抵抗に切り替えることによってDC電圧値が減少し、該当する結合要素が結合(エンコード)のために活性化されることを意味する。
【0030】
さらに非限定的な好ましい実施形態によれば、各フィードバックループが反転演算増幅器を備える。反転演算増幅器を使用することにより、高いDC電圧は電源が「オフ」の状態に変換され、低いDC電圧は電源が「オン」の状態に変換される。これにより、高DC電圧の場合の切り替え状態を、システムに電力が供給される前の初期切り替え状態と同じ状況にすることができる。これにより、動作の安定化につながる。
【0031】
また好ましくは、カプラ構造がプリンタに使用され、エンコードされるRFIDインレイは、媒体経路に沿ってプリンタ内を誘導される媒体上に配置される。
【0032】
非限定的な実施形態によれば、第1の態様またはその非限定的な実施形態のいずれかによる多層電磁カプラ構造を備えるRFIDプリンタ/エンコーダが提供される。エンコード情報をRFIDインレイに転送するための電磁結合は反応性近距離場で発生するので、多層電磁カプラ構造は、媒体経路に近接したプリンタのキャビティ内に容易に嵌合させておくことができる。
【0033】
開示した非限定的な実施形態は広く、較正または外部制御を必要とせずに、電磁力を任意の形状のインレイに効率的に結合するために適用可能な改良型の電磁カプラ構造を提供することを目的とする。
【0034】
非限定的な実施形態のこれらおよび他の態様および特徴は、添付の図面と併せて特定の非限定的な実施形態の以下の説明により、当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
非限定的な実施形態の追加的特徴および利点は、添付の図面に示される以下の説明から明らかとなるであろう。
【
図1】非限定的な実施形態による電磁カプラ構造のブロック図である。
【
図2】非限定的な一実施形態で使用される切り替え可能な抵抗素子の配置の簡略図である。
【
図3】非限定的な別の実施形態で使用される切り替え可能な抵抗素子の配置の簡略図である。
【
図4】非限定的な実施形態において結合要素として使用する差動伝送路ループの簡略化した機能図である。
【
図5】超楕円方程式に基づく複数の例示的なループ形状を示す図である。
【
図6】細長い螺旋平面形状を有する結合要素の例示的な幾何学形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本明細書全体を通して、「含む(備える)」という言葉またはその変形(含んでいる(備えている)等)は、述べられた要素、整数、または工程、または要素、整数、または工程の集合を含むことを意味するが、他の任意の要素、整数または工程、または要素、整数または工程の集合を除外するものではない。
【0037】
本開示は、結合要素の自己適応型アレイを備える電磁カプラ構造に関し、特にRFIDインレイをエンコードするために、任意の形状の平面金属配線への電磁エネルギーの選択的かつ高効率な結合を可能にする。開示する非限定的な実施形態は、RFIDプリンタ/エンコーダなど、媒体上に提供するインレイをエンコードするのに特に適している。
【0038】
電磁カプラ構造の非限定的な実施形態では、質問器(「RFIDリーダ」とも呼ばれる)を伝送路にバランを介して接続し、これによって等しい振幅と180°ずれた位相で質問器の出力が与えられる2つの部分を有する差動伝送路へとこの伝送路を変換する。結合要素を連続アレイ状に配置したものを、この差動伝送路にシャント接続する。アレイの各要素と伝送路の接続間には位相補償が施され、位相補償型差動伝送路が得られる。
【0039】
位相補償型差動伝送路と各結合要素との間には、複数の切替可能な抵抗素子が想定されており、対応する制御可能なスイッチを操作することにより、差動伝送路と各結合要素との電気接続の抵抗値を第1の(高い)値と第2の(小さい)値とに交互に切り替える。さらに、複数の切り替え可能抵抗素子の出力端子は、それぞれの結合要素にさらに接続可能なハーベスタ素子に接続される。これにより、ハーベスタ素子が、位相補償型差動伝送路から各結合要素に供給されるエネルギーを回収する。
【0040】
ハーベスタ素子は、デバイスに電力が供給されるとエネルギーを回収し、それによってシステムに供給されたRF電力をDC電圧に変換する。ハーベスタ素子は、フィードバックループを介して、複数のスイッチング可能な抵抗素子それぞれの制御可能なスイッチに結合される。
【0041】
ハーベスタ素子(パワーハーベスタ)およびその動作は当技術分野で周知である。したがって、ここではその詳細な説明を省略する。詳細な説明については、たとえば、2017年5月9日~11日に開催されたIEEE RFID ConferenceのPavel Nikitinによる論文「Self-Reconfigurable RFID Reader Antenna」を参照(特許公報US10,096,898 B2も参照)されたい。
【0042】
上記の構造で達成すべき目標は、アレイを形成する複数のカプラの一部と、アレイの近傍に存在するインレイ(トランスポンダ)との間のみで通信を選択的に活性化させることである。具体的には、特定の形状を有する特定のインレイ(トランスポンダ)との非常に効率的な通信を可能にするように、結合要素のうちの1つ(またはいくつか)のみが活性化される。
【0043】
このために、この構造は最初に、アレイのどのカプラが最も効率的な結合を提供するものであって活性化されるべきかを感知するための感知状態に設定される。感知結果に従って、所望のカプラが自動的に(制御可能なスイッチを切り替えて、位相補償型差動伝送路と結合要素との間の抵抗を低減された(第2の)値に設定することによって)活性化される。残りのカプラの抵抗値は依然として高い(第1の)値に切り替えられているため、トランスポンダとの相互作用は最小限に抑えられる。
【0044】
非限定的な実施形態によれば、感知状態は以下のように確立される。最初に、質問器のスイッチを入れると、アレイのすべての抵抗器が第1の(高い)値に切り替えられる。次に、質問器は、差動伝送路に向けて(無変調の電磁波を)供給してシステムに電力を供給する。第1の抵抗値を持つ経路を介して給電される間に、各ハーベスタ素子のDC電圧は徐々に上昇する。ただし、DC電圧の上昇によってスイッチがトリガーされることはない。例えば、フィードバックループが反転演算増幅器を備えることによって、電圧上昇時のスイッチング状態が最初の非通電状態と同じまま、すなわち第1の値に切り替えられたままの状態に維持することでこれを達成することができる。
【0045】
トランスポンダ(インレイ)が結合要素の近傍に存在するようになるとすぐに、結合要素とトランスポンダの間の相互作用が始まり、アレイの対応する要素での不整合つまりインピーダンスの変化が起こる。これによって、ハーベスタ素子のDC電圧が影響される。特に、特定の結合要素とトランスポンダとの間の相互作用の量(効率)が高いほど、ハーベスタでのDC電圧は低くなる。具体的には、ある一定の強さの相互作用があった場合に、DC電圧が所定の閾値(「第2の閾値」)を下回るようにする。つまり、フィードバックループを通じて対応するスイッチに電力が供給され、アレイの該当要素の抵抗値が第2の(低い)値に切り替えられ、その結果、アレイの該当カプラ要素に供給されるエネルギー量が引き上げられる。言い換えれば、トランスポンダと結合要素との間の高効率な相互作用により、対応する結合要素が活性化され、これによりハーベスタでのDC電圧が第2の閾値以下に減少することになる。
【0046】
上述の感知状態において、個々の結合要素が十分に隔離されていることが、本開示による構造の重要な特性である。感知状態での隔離により、すべての結合要素が活性化された場合の破壊的干渉(destructive interference)が回避される。
【0047】
以下、切替可能な抵抗器の構成についての個別の実施形態に応じて、動作の詳細を説明する。特に、活性化状態において、DC電圧をより高い第1の閾値を超えるように再び上昇させ、その結果、抵抗を第1の値に切り替えることによって、該当供給経路を再び非活性化する。好ましくは、各結合要素について、特定のインレイの存在下であるスイッチング状態に到達し、安定した状態を維持するようにこの構造を構成する。
【0048】
しかし、一般的には、アレイの結合要素のうち1つのみまたは数個が(電圧が第2の閾値以下に低下するのに十分な相互作用量を有し)、低い値の抵抗器で自動的に活性化状態に切り替えられる一方、他の要素はそれぞれのスイッチがオフになることにより非活性化状態であると言える。この状態で、書き込み(または読み取り)のための変調信号をシステムに供給することによってインレイとの実際の通信を行う。給電経路の抵抗値が第1の値に設定された他のカプラは、十分な効率で通信を行うことができないので、「活性化」された結合要素に通信が集中する。
【0049】
このように結合要素の自己適応型アレイを提供することにより、個々のトランスポンダの正確な位置を検出したり判断したりする必要なく、さまざまな形状や寸法のトランスポンダ(タグ、インレイ)との非常に効率的な通信を柔軟に行うことができる。
【0050】
以下、非限定的な実施形態の更なる詳細について図面を参照しながら説明する。
【0051】
図1は、非限定的な実施形態による電磁カプラ構造1のシステム概要を表すブロック図である。
【0052】
電磁カプラ構造は、質問器10、バランB、および位相補償型差動伝送路PC TRLの複数の連続結合要素(要素1、…要素n、…要素N)を備える。「連続結合」とは、個々の要素を差動伝送線路に連続して電気的に結合することを意味するが、これは、たとえば1次元または2次元アレイを表す幾何学的形状と区別する必要がある。簡略化のため、図面に明示した各要素の間に配置され、波線間に配置したさらなる要素は省略している。さらに、バランと要素1との間で図が途切れている。各要素には、対応するそれぞれのハーベスタ素子Hと共に結合要素TLLが切り替え可能な抵抗器ISOを介して結合される。抵抗値を切り替えるためのスイッチは、ボックスISOに備わっている。この構造の非限定的な実施形態について、
図2~
図3を参照して以下でより詳細に説明する。各ハーベスタ素子から対応するスイッチへのフィードバックループ3が破線で示されている。
【0053】
具体的には、質問器10は、システムに電力を供給するために、(信号を表す非変調波または変調波の形態で)電磁エネルギーを供給するよう構成し、質問器10からバランBまで延びる単一の線によってこれを示す。バランによって、電磁波(信号)を振幅が等しく位相が180°ずれた2つの波(信号)に分割する。これにより、バランBは、質問器から延びる伝送路を差動伝送路に変換する。差動伝送路を形成する2つの平行な線路によってこの様子が示されており、差動伝送路には、結合要素TLLとハーベスタHとが切り替え可能な抵抗器ISOを介してシャント接続される。差動伝送路の2つの要素の間で電気長の位相補償を行うことで、差動伝送路を位相補償型差動伝送路PC TRLに変換している。これは、図の「PC TRL」というラベル付きのボックスによって示す。好ましく使用される銅伝送路では、高周波(無線周波数RFまたは超高周波UHF)損失が非常に小さい。
【0054】
非限定的な実施形態によれば、動作周波数範囲は約860~960MHz(メガヘルツ)である。
【0055】
図1において、位相補償型差動伝送路は、終端インピーダンスZ
termによって要素Nの後ろ側(図面の右側)で終端される。終端インピーダンスは、差動伝送路に沿った不整合を補償する役割を果たす。ただし、この終端の存在は任意であり、システムパラメータに応じて、終端されていない差動伝送路も本開示の範囲内である。例えば、単一のバランBに連続して結合する32個のスイッチング素子の例示的なケースでは、終端インピーダンスを設けることなく良好な整合が達成され得る。
【0056】
一般的に、切り替え可能な抵抗器ISOは、結合要素をPC TRLのRF経路に、より強くまたはより弱く交互に接続させる。インレイ・トランスポンダのインピーダンスは、インレイが結合要素と電磁気的に相互作用するときの負荷として作用する。相互作用するインレイがない場合、結合要素の抵抗は高くなる。結合要素と相互作用するインレイ(図示せず)があり、結合要素が強く接続されている場合、結合要素は負荷状態にあり、結合要素が弱く接続されている場合、結合要素は隔離状態にある。隔離状態がデフォルト状態である。隔離状態から負荷状態への変化のトリガーは、インレイが存在する場合にはインレイとそれぞれの結合要素との間の電磁相互作用によって達成される。結合要素がインレイに十分に近い場合、強い電磁相互作用が発生し、結合要素がトリガーされる。トリガーは、インレイが存在している限り、それぞれの結合要素(複数の結合要素)を負荷状態にロックする。内部ハーベスタを用いた制御フィードバックループ3は外部から干渉できず、結合要素がトリガーされたかどうかについて、結合要素の外部で監視されない。
【0057】
幾何学的な寸法については、個々のラベルの大きさは、結合要素の自己適応型アレイの幾何学的サイズより一般的に小さい。つまり、アレイを形成する結合要素の1つまたは一部のみを活性化する処理(サブアレイ活性化)は、短いピッチの用途が想定されている。
【0058】
アレイの大きさ(カプラ構造の結合要素の数)は、一般に制限されない。代表的な値としては、8、16、32であるが、これらに限定されない。アレイの結合要素のうち、特定のインレイ形状および配置(位置および向き)用の自己適応型感知手順において、単一またはいくつか(2つまたは3つなど)の結合要素を活性化させる。ただし、活性化する結合要素の数は、上記の非限定的な例にも限定されず、さらに、特定の状況において予見することさえできない。つまり、各結合要素との特定のインレイの相互作用パラメータに依存するものであり、外部から制御されず、外部に伝達されないからである。
【0059】
以下、
図2および
図3に示す、
図1のISOとラベル付けされたボックス内の回路の非限定的な例示的構成を参照して、カプラ構造の動作をより詳細に説明する。
【0060】
図2は、非限定的な実施形態によるボックス「ISO」内の回路の例示的な配置を示す図である。
【0061】
図によれば、電気入力経路は、異なる抵抗器R1およびR2の形で示され、異なる抵抗を有することを特徴とする2つの並列経路に分割される。本明細書では、第1抵抗R1の抵抗値は、第2抵抗R2の抵抗値よりも大きい。ボックスの出力側に配置したスイッチ2は、2つの並列経路間の切り替えを可能にする。共通出力は2つの端子に分かれ、一方はハーベスタ、もう一方は結合要素を接続する。スイッチの動作は、ハーベスタ素子Hからフィードバックループ3を介して提供される信号によって制御される。図面ではこの信号を破線によって示している。
【0062】
当業者が認識するように、図示した構成の自明な変更が可能であり、動作には影響しない。自明な変形によれば、スイッチ2は、2つの抵抗器R
1およびR
2による並列回路の出力側ではなく、入力側に配置される。さらに、ハーベスタと結合要素との差動伝送路への接続について、
図1に示し、
図2にその詳細を示すような2つの同じ構造ISOが、位相補償型差動伝送路の各セクション(要素)に接続されている。
【0063】
以下、特定のインレイの存在下で個々の結合要素を安定した活性化状態に自動的に到達させるための動作について説明する。
【0064】
まず、質問器10からのエネルギー供給が開始する前に、システムはデフォルト状態にあって、すべての電気経路の抵抗は(より大きい)第1の値R1に切り替えられている。好ましくは、スイッチ2の非通電状態に対応するような構造である。その後、無変調電磁波の供給が始まる(感知状態)。この状態では、結合要素TLLの近傍にインレイが存在しない限り、結合要素TLLはそれ自体かなり高い抵抗を持つため、大きな値R1で切り替え可能な抵抗にもかかわらず、ハーベスタ素子Hは高レベルのDC電圧となるようにエネルギーを回収する。これにより、スイッチング状態が変化することはない。好ましい実施形態では、フィードバックループ3が反転演算増幅器を含み、高DC電圧が低レベルのフィードバック信号に変換されるので、スイッチ2は非給電のままである。
【0065】
インレイが近づくと、このインレイと結合要素TLLとの間の電磁相互作用により、上記で一般的に説明したように、ハーベスタ素子HのDC電圧が低下する。DC電圧の低下は,電磁気相互作用が強い(効率が高い)ほど顕著である(つまり、結果として得られるDC電圧は小さくなる)。それに従って、特定のタイプのインレイとアレイの結合要素TLLのうちの特定の1つとの間に非常に効率的な相互作用がある場合、そのDC電圧が所定の閾値(第2の、より低い閾値)未満に減少すると、スイッチ2がトリガーされる。反転演算増幅器を備えた特に好ましい実施形態では、低レベルのDC電圧が高レベルのフィードバック信号に変換され、スイッチ2に電力が供給される。したがって、切り替え可能な抵抗素子を通るそれぞれの電気経路が、より低い値の抵抗R2に切り替えられる。これは、対応する結合要素TLLの活性化に対応し、その特定の結合要素とインレイとの非常に効率的な相互作用を可能にする。一方、インレイと別の結合要素TLLとの間の相互作用の効率が低い場合(例えば、相対的な幾何学的構成が異なるため)、ハーベスタDC電圧の低下が少なく(すなわちDC電圧レベルが高いままであり)、所定の(第2の)閾値以下にならず、スイッチ2がトリガーされることはない。したがってこのような場合、差動伝送路PC TRLと結合要素TLLとの間の電気経路の抵抗は大きいままであり(R1)、結合要素TLLは非アクティブ状態にあり、結合要素TLLとインレイとの効率的な相互作用は不可能である。
【0066】
活性化した場合、電気抵抗R2が小さくなるため、ハーベスタHのDC電圧は再び上昇する。所定の(より高い)第1閾値を超えると、スイッチ2がトリガーされて、より高い電気抵抗R1に戻るように切り替わる。
【0067】
ただし、上記の挙動によって、スイッチ2が2つのスイッチング状態の間で短時間に永続的なスイッチングを行う状況は回避されるべきであることに留意されたい。つまり、これは不安定な状況であり、効率的なエンコードができない。そうではなく、「活性化された」スイッチング状態は、その後インレイをエンコードするための変調信号を供給し処理するために少なくとも十分に長い期間維持される必要がある。これを実現するには、R1とR2の2つの抵抗値の差が大きすぎないことが重要である。具体的には、スイッチ2がトリガーされた後(インレイが存在する場合)、TLLとハーベスタの並列組み合わせの抵抗値と、R2とTLLとハーベスタの並列組み合わせの抵抗値の合計との比は、インレイが存在する前の、R1とTLLとハーベスタの並列の組み合わせの抵抗値の合計に対するTLLとハーベスタの並列の組み合わせの抵抗値の比率より厳密に小さくする必要がある。一方、この場合、非活性化スイッチング状態(R1)の場合であっても、何らかの相互作用が可能であることを意味し、「非活性化」結合要素TLLであっても通信に寄与する可能性がある。実用的な実装では、可能な桁数は、例えば、R1=1000Ω(オーム)、R2=600Ωである。もちろん、これらの特定の値は純粋に例示的なものであって説明を目的としたものであり、本開示はこれらのまたは同様の値に限定されない。
【0068】
図3は、非限定的な実施形態によるボックス「ISO」内の回路の例示的な配置を示す図である。
【0069】
この実施形態では、
図2の実施形態と同様に、電気経路が抵抗値R
1およびR
2を有する2つの並列経路に分割される。ただし、ハーベスタ素子Hの接続の仕方が異なる。具体的には、ハーベスタ素子Hは、より高い抵抗R
1がある電気経路に恒久的に接続されたままである。位相補償型差動伝送路PC TRLから結合要素TLLに向かう電流の流れにおいて、ハーベスタ素子Hが接続された端子の後ろ側の位置にスイッチ2を配置することによってこれが達成される。これにより、差動伝送路PC TRLと結合要素TLLとの間の接続のみが切り替えられ、ハーベスタ素子Hへの接続は切り替えの影響を受けない。フィードバックループ3をここでも破線で示す。図面から分かるように、スイッチ2が抵抗器R
1の側にあるとき、ハーベスタ素子Hと結合要素TLLとの間が短絡接続される。ただし、スイッチ2が抵抗器R
2側に切り替えられると、ハーベスタHと結合要素TLLの間のガルバニック接続が中断される。
【0070】
この実施形態の動作は、
図2の動作と概ね同様である。上記と同じ方法で、初期(非通電)状態では、切り替え位置は(より大きな)第1抵抗値R
1方向である。したがって、感知状態において、無変調波の電気エネルギーが供給されると、
図2の実施形態と同様に、ハーベスタ素子Hに高レベルのDC電圧が確立される。
【0071】
インレイが結合要素TLLのアレイの近くに存在するようになると、相互作用の強さ(効率)に応じて、DC電圧のレベルが再び低下する。高効率の相互作用の場合、DC電圧レベルは第2の(低い)閾値よりも低下する。この時点までは、電気接続が同じであるため、動作は
図2の実施形態と同じである。
【0072】
具体的には、スイッチ2がより高い抵抗値R
1に接続された切り替え位置にある限り、結合要素TLLとハーベスタ素子Hとの間に短絡接続が存在する。結果として、(主に誘導性の)結合要素と(主に容量性の)ハーベスタ素子とを含む回路部分において、インレイが存在することなく、良好な整合状態(共振状態)が確立され得る。インレイが存在するようになると、
図2の実施形態と同じ状況になる。差動伝送路PC TRLと結合要素TLLとの間の電気経路がここでも低い値R
2に切り替えられ、対応する結合要素TLLが活性化される。ただし、スイッチ2がトリガーされた後の状況は
図2の実施形態とは異なる。
図3の実施形態の場合、共振状態がトリガーされたスイッチ2によって中断される。ハーベスタ素子は共振回路から外れたままである。その結果、ハーベスタ要素HにおけるDC電圧の急速な上昇は期待されず、またはDC電圧がさらに低下する可能性がある。
【0073】
その結果、第2抵抗値R2が非常に小さい場合(R1より1桁、あるいは数桁小さい)でも活性化状態が安定し、実用上は差動伝送路PC TRLと結合要素TLL間の電気経路はほぼ短絡していると考えることができる。
【0074】
インレイと結合要素TLLとの間の相互作用の強度(効率)が不十分な場合、ハーベスタ素子HのDC電圧レベルが所定の(第2)閾値以下にならなければスイッチ2がトリガーされることはなく、状況は
図2の実施形態と同じであり、すなわち各結合要素TLLは活性化されない。
【0075】
したがって、
図3の実施形態によれば、(R
2がR
1よりはるかに小さくなるような)異なる大きさの抵抗値を使用する場合、選択性が良くなり安定性が改善される。一方、選択されていない(活性化されていない)結合要素TLLの結合への寄与は、その場合無視できる。
【0076】
繰り返し述べるが、
図3に示す構造または機能的に等価な構造を持つISOとラベル付けした2つの各ボックスが、位相補償型差動伝送路PC TRLのセクション(要素)ごとに配置され、差動伝送路にシャント接続された対応する結合要素TLLに対する供給接続が確立される。
【0077】
差動給電結合要素TLLの幾何学的配置、形状等は、様々な配置、形状のうちの1つである。いくつかの例示的かつ非限定的な実施形態について、
図4~
図6の図面を参照してより詳細に以下に説明する。
【0078】
好適な非限定的実施形態によれば、以下に説明する構造は、本開示による電磁カプラ構造において結合要素TLLとして機能し、給電層、金属接地面層、および終端平面金属配線(エンコードされるインレイ)に最も近く配置される上面層からなる多層構造に(周知のマイクロストリップまたはストリップライン技術の1つを使用して)通常埋め込まれる。上面層が結合要素を含むが、その例について以下により詳細に説明する。参照ラベル「TLL」(「伝送路ループ(transmission line loop)」の略)が、本開示全体を通して結合要素に一般的に使用されているが、これは、原則として、適切な結合要素構造のいかなる限定も示唆しないことに留意されたい。
【0079】
通常の構成では、上面層(結合要素)と結合される平面金属配線(インレイ)の間の距離は、約1mmのオーダー、すなわち0.5mmから1.5mmの間のわずかな距離である(この範囲に限定しない)。
【0080】
インレイの通常の大きさは、4”(インチ)、すなわち約100mm(ミリメートル)程度であって、バーコードプリンタで使用される4インチ幅のメディアに適合する。より狭いメディア幅に対応するため、30~50mm程度のより小型のインレイデザインも存在する。
【0081】
図4は、「差動型伝送路ループ」(DTLL)と呼ぶことにする結合要素の第1実施例の簡略化した機能説明図である。結合要素は、(例えば、マイクロストリップ技術で製造することができる)連続伝送路で構成され、(概ね)閉じたループ6の形となるよう形成されている。ループ6の各開放端は端子21、22を構成し、互いに180°の位相差を有する信号7、8(破線で図示)が供給される。
図1を参照して説明したように、信号7および8は、バランによって出力され、入力信号を等振幅かつ逆位相の2つの信号に分割した結果であって、
図1~
図3を参照して上で詳しく説明したように位相補償型差動伝送路PC TRLおよびシャント接続を介して供給される。
【0082】
差動給電の結果、ループ内の矢印で示されるように、ループ6を流れる電流の方向は、ループ全体(所定の時間で)で同じとなり得る。
【0083】
結合要素は、分布した場における理論コンポーネントを表す連続伝送路ループとし、整合を考慮せずに設計可能である。逆に、入力整合のためにループ構造の中間位置に離散成分を含めると、場の理論に基づく結合の最適化と成分値の最適化との間で不必要な繰り返しが必要になってしまうであろう。そのため、連続的な伝送路ループによれば、結合構造の内部において分布成分と離散成分とが混在している場合と比較してかなりの設計上の利点が得られる。適切に機能させるには、DTLLを接地面(図示せず)に対向するように配置する必要がある。非限定的な実施形態によれば、すべての離散成分は、構造の給電側すなわちバラン側、つまり、結合要素を基準にして接地面の反対側に配置される。
【0084】
したがって、非限定的な実施形態は、まず伝送路ループの形状を(独立して)最適化し、伝送路ループの形状が最適化された後、次にバラン側で適切な電気部品を選択することによってインピーダンス整合を行えるようにする。バランには3つの機能的特性がある。第1の特性は、同一の振幅の2つの部分に入力信号を分割することである。第2の特性は、この2つの部分の位相を180°ずらすことである。第3の特性は、ループの入力で見られるように、例えば50Ωの外部給電システムインターフェースの非差動インピーダンスから、差動インピーダンスレベルへとインピーダンスを変換することである。言い換えれば、インピーダンス変換の第3の機能を果たすことから、本発明の非限定的な実施形態のバランが変換器を備えるものとしてみなしてもよく、「バラン変換器」と呼んでもよい。インピーダンス変換は一般に、インピーダンス伝達比kによって特徴付けられる。非差動インピーダンスが差動インピーダンスに変換される非限定的な実施形態に関連する場合、kは、(DTLLの入力における)差動インピーダンス値と(外部給電システムインターフェースの)非差動インピーダンス値の比率の2倍に等しい。50Ωの外部給電システムの場合、ループの入力における差動インピーダンスレベルが500Ωであると想定すると、インピーダンス伝達比はk=5である。
【0085】
一般的に、バランはその出力に高い無効インピーダンス(または高いQ値)を「認識」するが、これは、伝送路ループの誘導特性と接地面の存在によるものである。各電気部品を含めることにより、このインピーダンスは給電側のインピーダンスと整合する。
【0086】
Qファクターは一般に回路の共振周波数と帯域幅(半値電力帯域)の関係を表すため、Q値が高い(Qファクターの値が高い)ことは高効率な誘導結合に相当するが、帯域幅は狭くなる。このことは、高効率で電力の伝達を可能とする周波数の幅が限定されていることを意味する。したがって、整合は好ましくは、Q値をある許容可能な程度まで減少させる方法で行われる。これは、例えば、バランの出力に内部抵抗を含ませることによって行える。これが可能となるのは、差動的に供給される伝送路ループと単一周波数におけるインレイの誘導ループの間で達成可能な、潜在的に非常に高い結合係数を考慮すると、トランスポンダチップに伝達される電力の多少の低下が受け入れられる場合であり、所望の帯域幅でDTLLが示す結合係数は全体的に高いままである。
【0087】
カプラループ形状の具体例として、パラメータの異なる超楕円形状を有する複数のカプラループを
図5に示す。非限定的な実施形態に適した超楕円形状は、以下の式に従い、直交座標xおよびyでパラメータにより定義される。
【数2】
【0088】
これらの式において、パラメータa(長さ)とb(高さ)は長さの次元であり、それぞれx座標とy座標の超楕円の大きさを定義する(したがって、通常の楕円の半軸を一般化している)のに対し、パラメータnとmは曲率、すなわち通常の楕円(n=m=2)から矩形(for n,m>2)に向かう偏差であって、θは曲線をパラメータで表現する際の変数パラメータである。
【0089】
図5では、aについて、a=7.5mm(ミリメートル)(上の例)とa=15.5mm(下の例)のパラメータ値が示されている。bはすべての例でb=4.6mmに固定される。nとmについては、n=m=2(左側の例)とn=m=20(右側の例)の値を使用した。破線は対称軸を示す。2つの対称軸は、超楕円形に共通である。
【0090】
電気的な観点から見ると、電磁場が強く制約されているため、端子でのカプラループの入力は、ループの長さと軌道幅のみに依存し、形状には依存しない関数によってうまく近似される。したがって、この特定の幾何学的形状ではカバーされない他の多くの非対称形状があり、これらは効率的な反応型近距離場結合の候補である。ループは
図5に示す特定の幾何学的形状に限定されない。
【0091】
シミュレーションが示すように、ループの長さ(
図5のx軸)が非常に大きくなって、カプラの伝送路ループがカプラに接近したRFIDタグのインレイアンテナ(放射体)を覆うようになると、インレイの電流ループとの結合に加えて、インレイアンテナとの結合も重要になる。これにより、破壊的干渉が発生する可能性がある。
【0092】
図6は、結合要素の別の幾何学形状を示す図である。
図6に示す結合要素の形状は、先に述べたDTLLの形状とは異なり、実際の結合要素が単一のループからなるだけではなく、より複雑な形状をしており、固定中心20に伝送路16が数回巻かれており、2つの差動給電端子間に伝送路の少なくとも1つの巻線が存在する。この形状は「細長い螺旋形状」と呼べる。
【0093】
具体的には、
図6の例で結合要素として使用される細長いらせん形状の伝送路は、両端に端子21および22を有する有限長の連続伝送路16であり、固定中心20に巻きつけて平面形状に形成したものである。各巻線は、互いに平行に配置された直線部分を備え、端子の間に少なくとも1本の伝送線路の巻線が存在するように各端子が配置されている。このように、図示した形状は「螺旋」に似ているが、実際の螺旋の幾何学図形(中心点からの距離が曲線の長さに応じて連続的に増加することを特徴とする)とは異なり、(略)平行に「平坦化」、すなわち(略)直線の部分を有している。以下でより詳細に説明するように、結合効率の向上に特に寄与するのはこれらの部分である。図示の例では、略直線で略平行な部分が湾曲部分によって接続されている。2つの端子21および22は、伝送路16が端子21および22から離れる方向に垂直な線に沿って配置される。
【0094】
結合要素(TLL)の大きさは、TLLを形成する伝送路の電気長に大きく依存する。多層構造の上面に閉じ込める伝送路(TL)部分の電気長は、電流のゼロ交差を避けるため、180°(半波長)を超えないようにする。参考までに,厚さ1mmのFR4基板に幅1mmの直線状のTLを配置した場合に、180°の電気長は、約92mmの物理長に相当する。したがって、どのTLLもこのTL長に対応した表面サイズの制約を受けることになる。TLLの任意の幾何学的形状について、ループの小区分同士が非常に接近している場合、電磁気的に相互作用することに注意する必要がある。このように、TLLの実際のサイズは、形状の影響を受ける場合がある。例えば、超楕円形状は、基準直線TLにかなり近いTL長さを有し得る。一方、螺旋形状の小区分は、互いに近接している場合がある。どのようなDTLLを実現する場合でも、電気長が180°に相当する差動入力インピーダンスは実数値を持つ。
【0095】
端子21および22における差動給電の結果、各時において、伝送路パターン16の細長い平行部分の電流方向は同じになる。これは、より均一に分布した電流密度に対応し、単一のループ形状の導体の近くだけではなく、上面層の拡張領域(実際にはカプラの表面全体)にわたって磁場が生成される。この結果、順応性が向上し、さまざまな形状のRFIDタグとの高効率な結合が得られる。一方、前述の伝送路ループ構造と同様に、伝送路の領域外では電界強度が急速に減少するため、磁界はカプラ表面領域のみに限定され、高い空間選択性には影響しない。
【0096】
完全を期すために、(厳密な数学的な意味で、すなわち偏平な細長い部分がない)単純な螺旋形状が、本開示による結合要素の幾何学的形状として適切であろうことに留意されたい。ただし、様々なRFIDタグの形状に関して順応性を向上させるために、上面全体に均一な電流分布を与えるという特定の利点はこの場合達成されない。
【0097】
上記の例示的な幾何学的配置は、例示を目的とした単なる例であり、本開示はこれらの例に限定されないことをさらに強調しておく。そうではなく、当業者が認識しているまたは将来認識するようになる結合要素構造への適切な差動給電は、本開示の範囲内であると理解される。
【0098】
さらなる非限定的な実施形態によれば、反応型近距離場結合によって電磁力を任意の幾何学的形状のRFIDタグの電流ループに結合させるための多層電磁カプラ構造が提供される。電磁カプラ構造は、電磁力の結合対象となるRFIDタグに最も近接して配置される電磁カプラ構造の上面を形成する上面層を備える。上面層はさらに、RFIDタグの電流ループとの誘導性結合により電磁結合を達成する螺旋形状または細長い螺旋形状の伝送路(伝送路ループ)を備える。螺旋状または細長い螺旋状の伝送路ループは、両端に端子を有する螺旋状または細長い螺旋状の有限長の連続伝送路である。各端子は、その間に少なくとも1本の伝送路の巻線が存在するよう配置する。電磁カプラ構造はさらに、金属の接地面層と、2つの端子に給電するための給電層とを備える。
【0099】
さらなる非限定的な実施形態の非限定的で好ましい実施形態によれば、各端子は、振幅が等しく、180°位相がずれた信号を差動的に給電されるのに適している。
【0100】
好ましくは、伝送路は、細長い螺旋状の有限長の連続伝送線路であり、各巻線が互いに平行に配置された直線部分を備えるように固定中心点の周りに巻回されている。さらに好ましくは、2つの端子は、伝送線路が端子から離れる方向に対して垂直に延びる直線上に配置される。好ましい非限定的な実施形態によれば、細長い螺旋形状は平面形状である。
【0101】
なお、上述した記載は、より適切ないくつかの非限定的な実施形態の概要を述べたものである。開示した非限定的な実施形態に対する変形が、その精神および範囲から逸脱することなく達成され得ることは、当業者には明らかであろう。したがって、記載した非限定的な実施形態は、より顕著な特徴および用途のいくつかを単に例示するものと見なされるべきである。他の有益な結果は、非限定的な実施形態を異なる方法で適用するか、当業者に知られている方法でそれらを修正することによって実現可能である。これには以下のことを含む。すなわち、様々な非限定的な各実施形態の間の特徴、要素、および/または、機能の組合せと整合とが本明細書において想定されており、1つの実施形態の特徴、要素、および/または、機能が、上での別段の記載がない限り、他の実施形態に適宜組み込まれてもよいことを、当業者であれば理解されるであろう。この記述は、特定の構造および方法に対してなされたものであるが、その意図および概念は、他の構造および応用に対しても好適であり、適用可能である。
【0102】
例えば、本明細書に記載の非限定的な実施形態の動作全体を通して、すべての結合要素の接続が最初に(すなわち感知状態で印加される無変調電磁波の供給が開始されたときに)非活性化状態にある場合、つまり、位相補償型差動伝送路から結合要素までの経路が第1の(高)抵抗値に切り替えられている状態について述べた。しかしながら、本開示の枠組み内で逆の場合も可能である。その場合、ハーベスタ素子のDC電圧は速やかに(第1の閾値を超えて)高レベルに達し、これがスイッチのトリガーとなって接続が第2の(低)抵抗値から第1の(高)抵抗値に切り替わり、その後、上述のように動作に進む。
【0103】
完全を期すために、前者の代替案は、
図3に示すような構造とともに動作しない可能性があることに留意されたい。その場合、ハーベスタ素子が常に抵抗の高い経路に接続されているため、スイッチングを十分迅速にトリガーできない可能性がある。
【0104】
あるいは、本開示の枠組みの中で、インレイが既に存在し、初期のスイッチング状態が高抵抗に向かうときに、感知状態の準備をしてもよい。その場合、ハーベスタ素子のDC電圧は、最初に上昇した後、インレイとの強い相互作用を確立する1つまたはいくつかの結合要素によって下降して、スイッチがトリガーされる。
【0105】
図2に示すような構造の場合に、一度活性化された結合要素が、信頼できるエンコード手順には不十分である短い期間後に再び非活性化されるという安定性の問題が存在する可能性があることを説明した。これを回避するための解決策として、互いにあまり差のない抵抗値R
1、R
2を選択することを提案した。別の解決策として、意図した結合手順(特にエンコード手順)に十分な時間だけ、高抵抗状態への切り替えを遅らせる時間遅延素子について考慮してもよい。
【0106】
要約すると、本開示は、幾何学的に一次元または二次元的に配置した連続アレイ状の結合要素を備える、反応型近距離場結合用の無線電磁カプラ構造に関する。電磁エネルギーの無変調波を各結合要素および関連付けられているハーベスタ素子に供給することによって、初期感知状態において、インレイと特に強力かつ効率的な相互作用を確立する単一の結合要素または複数の結合要素が自動選択される。それぞれのフィードバックループにより、切り替え可能なアレイ状の抵抗器を使用して、ループとの情報の結合のために選択された結合要素を活性化し、残りの結合要素を非活性化状態とする。本開示による結合要素の自己適応型アレイは、特定の較正または配置手順を必要とせず、任意の幾何学的形状の平面金属配線(特にRFIDインレイ)への結合に柔軟に適用可能である。インレイの形状をスキャンしたり(インレイプロファイリング)、外部から制御したりする必要もない。