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特許7445783調整力計量装置、調整力計量システム、調整力計量方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】調整力計量装置、調整力計量システム、調整力計量方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20240229BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J13/00 301A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022562194
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(86)【国際出願番号】 JP2021041661
(87)【国際公開番号】W WO2022102735
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-02-06
(31)【優先権主張番号】P 2020190376
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】広江 隆治
(72)【発明者】
【氏名】井手 和成
(72)【発明者】
【氏名】佐瀬 遼
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-170151(JP,A)
【文献】特開2019-170152(JP,A)
【文献】特開2020-48386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に含まれる複数の送配電網のうち、管理対象とする第1送配電網に対し提供された電力需給バランスの調整力を計量する調整力計量装置であって、
前記第1送配電網に調整力を提供可能な調整力提供手段との接続点において授受される有効電力を取得する取得部と、
前記第1送配電網を含む電力系統の全体の電力需要又は電力供給を算出する第1算出部と、
前記有効電力と、前記電力系統の電力需要又は電力供給とに基づいて、前記調整力提供手段が前記第1送配電網に提供した第1調整力を計量する計量部と、
を備える調整力計量装置。
【請求項2】
前記計量部は、
前記有効電力と、前記電力系統の電力需要又は電力供給とに基づいて、前記有効電力の変動が前記電力系統の前記電力需要又は電力供給の変動へ与える影響度合いを表す調整力係数を算出し、
算出した前記調整力係数と、前記電力系統の電力需要又は電力供給の変動量とに基づいて、前記第1調整力を計量する、
請求項1に記載の調整力計量装置。
【請求項3】
前記計量部は、符号関数を使用して、前記有効電力の時間的な変化を、前記電力系統の電力需要又は電力供給の時間的変化の向きに応じた正又は負の調整力として計量する、
請求項1に記載の調整力計量装置。
【請求項4】
前記電力系統の電力需要又は電力供給の予測値に基づいて、前記第1送配電網の前記調整力提供手段が需要又は供給する電力の計画値を設定する計画部を更に備え、
前記計量部は、前記計画値に従い電力の需要又は供給を行う前記調整力提供手段について、前記有効電力から前記計画値を引いた値を用いて、前記第1調整力を計量する、
請求項1から3の何れか一項に記載の調整力計量装置。
【請求項5】
前記計量部が計量した前記第1調整力を所定の単位期間で積算してなる調整力積算値を算出する積算部を更に備える、
請求項1から4の何れか一項に記載の調整力計量装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記第1調整力よりも短周期の需給変動に応答する調整力であって、前記接続点における周波数と、前記接続点において授受される前記有効電力とに基づく第2調整力を更に取得し、
前記積算部は、前記計量部が計量した前記第1調整力と、前記取得部が取得した前記第2調整力とに基づいて、前記調整力積算値を算出する、
請求項5に記載の調整力計量装置。
【請求項7】
前記取得部が取得した複数の調整力提供手段の前記有効電力に基づいて、前記第1送配電網の電力需要又は電力供給を算出する第2算出部を更に備え、
前記第1算出部は、前記第2算出部が算出した前記第1送配電網の電力需要又は電力供給と、前記電力系統に含まれる第2送配電網を管理する系統運用者の調整力計量装置から取得した前記第2送配電網の電力需要又は電力供給と、を合計して前記電力系統の全体の電力需要又は電力供給を算出する、
請求項1から6の何れか一項に記載の調整力計量装置。
【請求項8】
前記取得部は、前記接続点における周波数を更に取得し、
前記第1算出部は、前記周波数と、前記第1送配電網に設定された周波数の基準値とに基づいて、前記電力系統の全体の電力需要又は電力供給を算出する、
請求項1から6の何れか一項に記載の調整力計量装置。
【請求項9】
前記取得部は、前記接続点における周波数を更に取得し、
前記第1算出部は、前記周波数と、前記第1送配電網に設定された周波数の基準値とに基づいて、前記電力系統の全体の短周期及び長周期の電力需要の合計値、又は短周期及び長周期の電力供給の合計値を算出し、
前記計量部は、前記電力需要の合計値又は前記電力供給の合計値に基づいて、電力需要又は電力供給の応答の速さに応じた単数又は複数の区分に対応する調整力を計量し、
前記積算部は、単数又は複数の前記区分毎に前記調整力積算値を算出する、
請求項5に記載の調整力計量装置。
【請求項10】
前記第1算出部は、前記調整力提供手段が有する回転体の慣性により生じる有効電力を更に加えて、前記長周期の電力需要の合計値、又は前記短周期の電力供給の合計値を算出する、
請求項9に記載の調整力計量装置。
【請求項11】
前記第1算出部は、外部のサーバから取得した前記電力系統の慣性の総和を示すパラメータに基づいて、前記回転体の慣性により生じる有効電力を計算する、
請求項10に記載の調整力計量装置。
【請求項12】
前記第1算出部は、前記周波数の重みを示す第1伝達関数と、前記周波数の基準値の重みを示す第2伝達関数とを更に用いて、前記電力系統の全体の短周期及び長周期の電力需要の合計値、又は短周期及び長周期の電力供給の合計値を算出する、
請求項9に記載の調整力計量装置。
【請求項13】
電力系統に含まれる複数の送配電網のうち、管理対象とする第1送配電網に対し提供された電力需給バランスの調整力を計量する調整力計量システムであって、
前記第1送配電網に調整力を提供可能な調整力提供手段との接続点において授受される有効電力を取得する取得部と、
前記第1送配電網を含む電力系統の全体の電力需要又は電力供給を算出する第1算出部と、
前記有効電力と、前記電力系統の電力需要又は電力供給とに基づいて、前記調整力提供手段が前記第1送配電網に提供した第1調整力を計量する計量部と、
を備える調整力計量システム。
【請求項14】
前記取得部は、前記接続点における周波数を更に取得し、
前記計量部は、前記第1調整力を計量する第1計量部と、前記有効電力と前記周波数とに基づいて前記第1調整力よりも短周期の需給変動に応答する第2調整力を計量する第2計量部とを有する、
請求項13に記載の調整力計量システム。
【請求項15】
前記取得部は、前記接続点における周波数を更に取得し、
前記第1算出部は、前記周波数と、前記第1送配電網に設定された周波数の基準値とに基づいて、前記電力系統の全体の短周期及び長周期の電力需要の合計値、又は短周期及び長周期の電力供給の合計値を算出し、
前記計量部は、前記電力需要の合計値又は前記電力供給の合計値に基づいて、電力需要又は電力供給の応答の速さに応じた単数又は複数の区分に対応する調整力を計量する、
請求項13に記載の調整力計量システム。
【請求項16】
複数の前記接続点のうち、標本点となる接続点の周波数を入力し、前記標本点を含む地域の代表周波数を出力する代表周波数決定部を更に備え、
前記取得部は、前記接続点における前記周波数として、前記代表周波数を取得する、
請求項15に記載の調整力計量システム。
【請求項17】
電力系統に含まれる複数の送配電網のうち、管理対象とする第1送配電網に対し提供された電力需給バランスの調整力を計量する調整力計量方法であって、
前記第1送配電網に調整力を提供可能な調整力提供手段との接続点において授受される有効電力を取得するステップと、
前記第1送配電網を含む電力系統の全体の電力需要又は電力供給を算出するステップと、
前記有効電力と、前記電力系統の電力需要又は電力供給とに基づいて、前記調整力提供手段が前記第1送配電網に提供した第1調整力を計量するステップと、
を有する調整力計量方法。
【請求項18】
電力系統に含まれる複数の送配電網のうち、管理対象とする第1送配電網に対し提供された電力需給バランスの調整力を計量する調整力計量装置のコンピュータに、
前記第1送配電網に調整力を提供可能な調整力提供手段との接続点において授受される有効電力を取得するステップと、
前記第1送配電網を含む電力系統の全体の電力需要又は電力供給を算出するステップと、
前記有効電力と、前記電力系統の電力需要又は電力供給とに基づいて、前記調整力提供手段が前記第1送配電網に提供した第1調整力を計量するステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、調整力計量装置、調整力計量システム、調整力計量方法、及びプログラムに関する。
本願は、2020年11月16日に、日本に出願された特願2020-190376号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
電力系統は電力需要の変動周期に応じて、(1)ガバナーフリー(GF)、(2)負荷周波数制御(LFC)、(3)経済負荷配分制御(EDC)による発電機の調整力を組み合わせて周波数が維持されている。電力自由化により、系統運用者は調整力も公募か市場で発電事業者から調達する。電力需要は時々刻々変動する。送配電系統の電力需要が電力供給を超過すると送配電系統の周波数は基準値より低下し、逆に電力供給が電力需要を超過すると周波数は基準値より上昇する。調整力とは時々刻々変動する需要と供給をバランスさせるためのものであり、調整力が理想的に働いた場合には周波数は基準値に一致する。
【0003】
調整力の増減は、系統の周波数の変動に基づいて行われる。系統の周波数が基準値に不足した場合、系統運用者は、プラスの調整力を発電事業者から調達する。逆に、周波数が超過した場合には、マイナスの調整力を発電事業者から調達する。調整力調達の実際は、系統運用者からの時々刻々の指令に発電事業者が供給者の出力を調整して応じることにより行われる。
【0004】
電力の安定供給は、発電事業者が指令どおりに調整力を提供することに掛かっている。したがって、発電事業者は指令どおりに調整力を提供することが重用であり、それができない場合には、提供の実績に応じて精算することが検討されている。
【0005】
しかしながら、系統運用者が必要以上の調整力を極短時間に指令した場合など、発電事業者は指令に応じることができずペナルティとしての精算金を課せられることになる。また、周波数は電力系統の場所ごとに違いがある(例えば、日本では北海道と九州の周波数は周期3~5秒の逆位相で搖動する)ので、系統運用者は供給者の場所ごとにきめ細かく調整力を指令することが望ましいが、周期3~5秒の揺動に対してそれを行うことは現実的でなく、供給者で自立的に行われるガバナーフリーにまかせている。ガバナーフリーによる調整力は指令によらず各供給者で自律的に行われるので、供給者が短周期で発生した調整力は計量されず、精算されることもなく、発電事業者は対価を得ることもできない。
【0006】
系統運用者の指令のような人為的なものに頼って調整力の計量するのではなく、周波数や電力のように計測可能な値から自律的に計量する技術は、電力システムの効率化や透明化に大いに貢献する。例えば特許文献1には、供給者の出力のうち、供給者の所在地の周波数に依存する成分を調整力としてカウントする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】日本国特許第6664016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のような従来技術は、電力需給の変動が周波数の変動として現れることを利用していた。例えば、今日では、通信技術により電力系統に接続する需要者や供給者の電力需給を遠隔で知ることが可能となったが、1秒またはそれ以下の周期で速く変動する電力需要の成分をリアルタイムで計ることは困難である。したがって、需要者や供給者と電力系統との接続点の周波数の変動を需給の変動とみなすことは合理的である。
【0009】
しかしながら、従来技術では、周波数の変動の値が小さい場合、調整力を過小に評価する傾向がある。例えば、電力需要の一日の変動のように数時間単位の緩やかな変動に対しては過小評価側に誤差が出やすい。従来技術において、周波数の変動の値がゼロに近付くと、供給者が供給する有効電力の周波数の変動への影響の度合いを示す調整力係数もゼロとなり、調整力を正しく算出することができない可能性がある。このため、一日の電力需要変動のような、長周期で持続的な調整力についても適切に計量することができる技術が求められていた。
【0010】
本開示は、このような課題に鑑みてなされたものであって、長周期で持続的な調整力を精度よく計量することができる調整力計量装置、調整力計量システム、調整力計量方法、及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一態様によれば、調整力計量装置(10、50)は、電力系統に含まれる複数の送配電網のうち、管理対象とする第1送配電網に対し提供された電力需給バランスの調整力を計量する調整力計量装置(10、50)であって、前記第1送配電網に調整力を提供可能な調整力提供手段との接続点において授受される有効電力を取得する取得部(1001、5001、5003)と、前記第1送配電網を含む電力系統の全体の電力需要又は電力供給を算出する第1算出部(1002、5004)と、前記有効電力と、前記電力系統の電力需要又は電力供給とに基づいて、前記調整力提供手段が前記第1送配電網に提供した第1調整力を計量する計量部(1004、5005)と、を備える。
【0012】
本開示の一態様によれば、調整力計量システム(1)は、電力系統に含まれる複数の送配電網のうち、管理対象とする第1送配電網に対し提供された電力需給バランスの調整力を計量する調整力計量システム(1)であって、前記第1送配電網に調整力を提供可能な調整力提供手段との接続点において授受される有効電力を取得する取得部(1001、5001、5003)と、前記第1送配電網を含む電力系統の全体の電力需要又は電力供給を算出する第1算出部(1002、5004)と、前記有効電力と、前記電力系統の電力需要又は電力供給とに基づいて、前記調整力提供手段が前記第1送配電網に提供した第1調整力を計量する計量部(1004、5005)と、を備える。
【0013】
本開示の一態様によれば、調整力計量方法は、電力系統に含まれる複数の送配電網のうち、管理対象とする第1送配電網に対し提供された電力需給バランスの調整力を計量する調整力計量方法であって、前記第1送配電網に調整力を提供可能な調整力提供手段との接続点において授受される有効電力を取得するステップと、前記第1送配電網を含む電力系統の全体の電力需要又は電力供給を算出するステップと、前記有効電力と、前記電力系統の電力需要又は電力供給とに基づいて、前記調整力提供手段が前記第1送配電網に提供した第1調整力を計量するステップと、を有する。
【0014】
本開示の一態様によれば、プログラムは、電力系統に含まれる複数の送配電網のうち、管理対象とする第1送配電網に対し提供された電力需給バランスの調整力を計量する調整力計量装置(10、50)のコンピュータに、前記第1送配電網に調整力を提供可能な調整力提供手段との接続点において授受される有効電力を取得するステップと、前記第1送配電網を含む電力系統の全体の電力需要又は電力供給を算出するステップと、前記有効電力と、前記電力系統の電力需要又は電力供給とに基づいて、前記調整力提供手段が前記第1送配電網に提供した第1調整力を計量するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本開示に係る調整力計量装置、調整力計量システム、調整力計量方法、及びプログラムによれば電力の長周期の需給変動を補償する調整力を精度よく計量することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の第1の実施形態に係る調整力計量システムの全体構成を示す図である。
図2】本開示の第1の実施形態に係る調整力計量システムの構成を詳細に示す図である。
図3】本開示の第1の実施形態に係るサーバ及び計測器のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】本開示の第1の実施形態に係る計測器の機能構成を示すブロック図である。
図5】本開示の第1の実施形態に係るサーバの機能構成を示すブロック図である。
図6】本開示の第2の実施形態に係るサーバの機能構成を示すブロック図である。
図7】本開示の第3の実施形態に係るサーバの機能構成を示すブロック図である。
図8】本開示の第4の実施形態に係る計測器の機能構成を示すブロック図である。
図9】本開示の第4の実施形態に係るサーバの機能構成を示すブロック図である。
図10】本開示の第5の実施形態に係る計測器の機能構成を示すブロック図である。
図11】本開示の第6の実施形態に係る計測器の機能構成を示すブロック図である。
図12】本開示の第7の実施形態に係る計測器の機能構成を示すブロック図である。
図13】本開示の第8の実施形態に係る計測器及び仮想化サーバの機能構成を示すブロック図である。
図14】本開示の第9の実施形態に係る計測器及び仮想化サーバの機能構成を示すブロック図である。
図15】本開示の第10の実施形態に係る計測器の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1の実施形態>
以下、本開示の第1の実施形態に係る調整力計量システム1について、図1図5を参照しながら説明する。
【0018】
(調整力計量システムの全体構成)
図1は、本開示の第1の実施形態に係る調整力計量システムの全体構成を示す図である。
図1には、電力系統の一例が示されている。電力系統は、複数の系統運用者T(T1、T2)それぞれが管理する送配電網N(第1送配電網N1、第2送配電網N2)を有している。各送配電網Nには、発電を行って送配電網Nに電力を供給する発電事業者G(G1、G2)と、送配電網Nを介して送配電された電力を消費する需要者C(C1、C2)とが接続されている。また、第1送配電網N1及び第2送配電網N2は互いに接続されており、系統運用者T1及びT2間の契約により電力の送受電を行うことが可能である。
【0019】
なお、図1には、説明を簡略化するため、電力系統が送配電網Nを二つのみ有している例が示されているが、これに限られることはない。他の実施形態では、電力系統は三つ以上の送配電網Nを有しており、各送配電網Nを管理する三つ以上の系統運用者Tが存在してもよい。また、各送配電網Nには、複数の発電事業者G、及び複数の需要者Cが接続されていてもよい。
【0020】
図1に示すように、調整力計量システム1は、サーバ10と、計測器50とを有している。
【0021】
計測器50は、例えば電力計である。計測器50は、送配電網Nと、発電事業者G等が管理する調整力提供手段との接続点に設置され、当該接続点において授受される有効電力を計測する。ここで、「調整力提供手段」とは、発電事業者G等が接続されている送配電網Nに対し電力需給バランスの調整力を提供可能な装置等である。具体的には、第1送配電網N1を例とすると、発電事業者G1が管理する電源(後述)、安定化機器、需要者C1が管理する負荷、及び、他の系統運用者T2により管理される第2送配電網N2を指す。
【0022】
サーバ10は、系統運用者Tにより管理(又は、運用)される。本実施形態では、サーバ10は、各系統運用者Tが管理する送配電網Nに接続される調整力提供手段の調整力を計量する「調整力計量装置」として機能する。
【0023】
(調整力計量システムの構成の詳細)
図2は、本開示の第1の実施形態に係る調整力計量システムの構成を詳細に示す図である。
図2には、発電事業者G1の例が示されている。図2に示すように、発電事業者G1は、複数の電源21、22、23、・・を管理している。なお、図示は略すが、発電事業者G2も同様に複数の電源21、22、23、・・を管理している。
【0024】
以下、発電事業者G1の複数の電源21、22、23、・・のうち、一つの電源21を例に、説明する。なお、他の電源22、23、・・の構成及び機能は、電源21と同様である。
【0025】
電源21は、制御部210と、タービン装置211(例えば、ガスタービン、蒸気タービン等)と、発電機212とを有してなる。
【0026】
制御部210は、タービン装置211及び発電機212の運転制御を行う。特に、制御部210は、発電機212の回転速度(出力の周波数に対応)を常時モニタリングして、当該回転速度が一定に保たれるように、タービン装置211への燃料、又は蒸気の供給量を自動調整する(ガバナーフリー運転)。このような運転制御によれば、例えば、短期間で負荷(電力需要)が増大し、発電機212の回転速度が低下した場合には、制御部210は、直ちに、タービン装置211への燃料等の供給量を上昇させ、回転速度の低下を補償する。発電機212が元の回転速度に復帰する際の出力の増分は、上記負荷(電力需要)の増大に対応して電源21が提供した「調整力」である。このように、短周期(周期3~5秒程度)の電力需要変動に対しては、電源21のガバナーフリー運転により、逐次、調整力が提供される。
【0027】
電源21は、第1送配電網N1に接続されている。電源21と第1送配電網N1との接続点には、計測器50が設置されている。計測器50は、当該電源21から第1送配電網N1へと出力される有効電力の計測値(以下、「有効電力計測値P」とも記載する。)を取得する。計測器50は、所定の通信網(インターネット回線等)を介して、電源21が出力する有効電力計測値Pを、電源21が接続される第1送配電網N1を管理する系統運用者T1のサーバ10に送信する。同様に、他の電源22、23、・・と第1送配電網N1との接続点に設置された計測器50は、当該電源22、23、・・の各々から第1送配電網N1へと出力される有効電力計測値Pを取得し、サーバ10に送信する。
【0028】
(サーバのハードウェア構成)
図3は、本開示の第1の実施形態に係るサーバ及び計測器のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3に示すように、サーバ10は、CPU100と、メモリ101と、通信インタフェース102と、ストレージ103とを備えている。
【0029】
CPU100は、サーバ10の動作全体の制御を司るプロセッサである。
【0030】
メモリ101は、いわゆる主記憶装置であって、CPU100がプログラムに基づいて動作するための命令及びデータが展開される。
【0031】
通信インタフェース102は、外部装置との間で情報をやり取りするためのインタフェース機器である。外部装置とは、計測器50、及び、他の系統運用者Tが管理するサーバ10である。なお、本実施形態においては、通信インタフェース102によって実現される通信手段及び通信方式は、特に限定されない。例えば、通信インタフェース102は、有線通信を実現するための有線接続インタフェースであってもよいし、無線通信を実現するための無線通信モジュールであってもよい。
【0032】
ストレージ103は、いわゆる補助記憶装置であって、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等であってよい。
【0033】
(計測器のハードウェア構成)
図3に示すように、計測器50は、CPU500と、メモリ501と、通信インタフェース502と、ストレージ503と、センサ504とを備えている。
【0034】
CPU500は、計測器50の動作全体の制御を司るプロセッサである。
【0035】
メモリ501は、いわゆる主記憶装置であって、CPU500がプログラムに基づいて動作するための命令及びデータが展開される。
【0036】
通信インタフェース502は、外部装置との間で情報をやり取りするためのインタフェース機器である。外部装置とは、計測器50が接続された送配電網Nを管理する系統運用者Tが管理するサーバ10である。通信インタフェース502によって実現される通信手段及び通信方式は、サーバ10の通信インタフェース102と同様である。
【0037】
ストレージ503は、いわゆる補助記憶装置であって、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等であってよい。
【0038】
センサ504は、調整力提供手段と送配電網Nとの接続点において授受される有効電力を計測するための計測手段である。例えば、センサ504は、一定周期(例えば、100ms周期)で、発電事業者G1の電源21から第1送配電網N1に送出される有効電力の計測値(以下、「有効電力計測値P」とも記載する。)を取得する。
【0039】
(従来技術における調整力の計量手法について)
ここで、従来技術における調整力の計量手法について説明する。電源の制御部が行うガバナーフリー運転において、発電機の回転速度の変動量(周波数偏移Δf)に応じて電源が追加的に発生させる出力(即ち、調整力ΔP)は、速度調停率δを用いて式(1)のように規定される。
【0040】
【数1】
【0041】
式(1)において、「f」は電力系統の基準周波数[Hz](例えば、50Hz等)、「P」は供給者の定格出力[MW]である。「Δf」は基準周波数から実周波数を差し引いたものであり、実周波数が基準周波数を超過したときには負の値となる。この関係式は、周波数と出力の静的な釣り合い状態を示す名目的なものであり、実際には電源の出力の時間遅れのために誤差がある。遅れの主要なものは、電源の慣性や制御部の動作遅れである。
【0042】
例えば、特許文献1に記載されているような従来の調整力計量装置は、このような出力の時間遅れがあるときにも発電事業者の調整力ΔPの真値を計量するためのものである。従来の技術において、調整力計量装置は、電源と送配電網との接続点に設置された計測器により、電源が送配電網に出力する有効電力計測値Pと、周波数計測値fとを取得する。そうすると、調整力計量装置は、電源が送配電網に供給する有効電力の変動を「ΔP」、電源と送配電網の接続点の周波数の偏移を「Δf」とすると、電源の調整力係数「k」を次式(2)で算出する。次式(2)は、同有効電力の変動のうち同周波数の偏移を打ち消す側に寄与するものを調整力としてカウントするためのものであり、調整力係数の単位は[W/Hz]である。
【0043】
【数2】
【0044】
調整力計量装置では、調整力係数kpを用いて電源の調整力ΔPを次式(3)で計算する。
【0045】
【数3】
【0046】
これを、例えば24時間、1時間、または30分などの一定期間積算したものを電源が発生した調整電力量とする。式(4)は時刻tiniから時刻tterの調整電力量を表している。
【0047】
【数4】
【0048】
有効電力の変動ΔP(t)は、有効電力P(t)の期待値E[・]からの偏差であってもよい。周波数偏移Δf(t)は、周波数Δf(t)の期待値E[・]からの偏差であってもよい。
【0049】
【数5a】
【0050】
【数5b】
【0051】
期待値E[・]は、簡単に前回値としてもよい。このとき、式(5a)及び式(5b)は、式(6a)式及び(6b)のように表される。
【0052】
【数6a】
【0053】
【数6b】
【0054】
調整力の計算は、式(2)、(3)、(4)で述べたもの以外の方法によっても可能である。例えば、式(1)に示す周波数調整の原則に従って、式(7)のように、有効電力の時間的な変化ΔPが、周波数の時間的変化Δfと逆向きであれば、ΔPは正の調整力とみなし、同じ向きであれば負の調整力とみなしてもよい。
【0055】
【数7】
【0056】
これを上式(4)により24時間積算し、一日分の調整電力量としてもよい。
【0057】
上述のように、従来の技術は、周波数の偏移Δfの値が小さい場合、調整力を過小に評価する傾向がある。例えば、定格出力値が「100MW」の電源があり、朝6時に「50MW」で運転し、昼の12時に「100MW」まで出力を上げる場合を考える。計測器による計測の時間間隔が100msであるならば、1ステップ当たりの出力変化ΔPは、「(100MW-50MW)÷6÷3600÷10=231[W]」にすぎない。式(1)において、基準周波数fを「60Hz」、速度調停率δを「0.03」とすると、「Δf=4.2×10-6[Hz]」であり、常識的には計測誤差に埋没する範囲である。
【0058】
例えば、式(8)のように、周波数計測値fや有効電力計測値Pと無相間な雑音が周波数に重畳する悪影響について述べる。
【0059】
【数8】
【0060】
真の周波数の計測値Δfに、平均が「0」で分散が「σΔw 」の正規分布で表される雑音Δwが含まれているとすると、式(2)は、式(9)のように「σΔw」が計測値Δfより大きくなる。即ち、「|Δf|」に対する「σΔw」の比が大きくなるにつれて、調整力係数kは「0」に漸近する。
【0061】
【数9】
【0062】
このように、「|Δf|σΔw -1」が0に近付くと、調整力係数kも「0」になり、調整力を正しく算出することが困難となる。
【0063】
式(7)も同様に、真の周波数fに雑音wが加算されたものが計測されるならば、式(10)のように表される。
【0064】
【数10】
【0065】
これを十分に長く積算すると、式(11)のように値はゼロとなってしまう。このように、周波数の計測値に雑音があるときには、一日の需要変動のように時間的に緩やかに変動する需給調整力の成分は、調整電力量として正しく計量することが困難となる。
【0066】
【数11】
【0067】
一方で、速い需給変動に対しては、周波数変動も速い。このため、前回計測した周波数「f(t-1)+w(t-1)」と今回計測した周波数「f(t)+w(t)」との差「Δf(t)+Δw(t)」は、「|Δf(t)|>>|Δw(t)|」となるので、計測雑音の影響が表面に現れず、前述の問題が発生しない。
【0068】
以上のように、従来技術は、短周期の需給変動に対応する調整力については精度よく計量することが可能であるが、長周期の需給変動に対応する調整力を計量することが困難な場合があった。
【0069】
本実施形態に係る調整力計量システム1は、電力需給の変動の遅い成分を精度よく捉えるためのものであり、電力系統全体の電力需要(又は電力供給)に基づき一つ一つの需要者Cや発電事業者Gの需給調整力を計量可能とする。本実施形態に係る調整力計量システム1は、長周期の需給変動に対応する調整力を計量するため、計測器50及びサーバのそれぞれにおいて、以下に説明するような機能構成を有している。
【0070】
(計測器の機能構成)
図4は、本開示の第1の実施形態に係る計測器の機能構成を示すブロック図である。
図4には、発電事業者G1の電源21と第1送配電網N1との接続点において、電源21が第1送配電網N1へ出力する有効電力を計測する計測器50が例として示されている。
【0071】
計測器50は、センサ504により、調整力提供手段(発電事業者Gの電源、需要者Cの負荷、他の系統運用者T2により管理される第2送配電網N2等)が第1送配電網N1に供給する有効電力Pを計測する。図4の例では、計測器50は、発電事業者Gの電源21が第1送配電網N1に供給する有効電力Pを計測する。
【0072】
詳細は後述するが、サーバ10は、計測器50から取得した有効電力等に基づいて、電力系統全体の電力需要(又は、電力供給)を、所定の時間T毎に算出する。時間Tとしては、例えば1分などが適当である。また、計測器50のセンサ504による計測の頻度は、例えば100msなど、電力系統全体の電力需要を算出する時間間隔Tに対して十分に小さく設定する。
【0073】
また、図4に示すように、計測器50のCPU500は、有効電力取得部5001を有している。有効電力取得部5001は、センサ504から有効電力計測値Pを取得する。また、有効電力取得部5001は、取得した有効電力計測値Pについて、時刻t-Tから時刻tまでの有効電力の平均値P-(「P-」はPに上線を付けたものである。)を計算し、遅くとも時間Tより高頻度で通信網により、系統運用者T1のサーバ10に送出する。有効電力の平均値P-は、時刻t-Tから時刻tまでの有効電力量の増分を時間Tで除した値に等しい。他の調整力提供手段(他の発電事業者Gの電源、需要者Cの負荷、第2送配電網N2等)との接続点に設置された計測器50も、同じ処理を実施する。
【0074】
なお、計測器50は、処理S100において、有効電力の平均値P-に代えて、電力量の平均値(「T-1[t-T,t]」)を算出してもよい。
【0075】
(サーバの機能構成)
図5は、本開示の第1の実施形態に係るサーバの機能構成を示すブロック図である。
図5に示すように、サーバ10(調整力計量装置)のCPU100は、取得部1001と、第1算出部1002と、第2算出部1003と、計量部1004(第1計量部)と、積算部1005とを有している。
【0076】
取得部1001は、調整力提供手段(例えば、発電事業者G1の電源21)と第1送配電網N1との接続点において授受される有効電力を取得する。本実施形態に係る取得部1001は、計測器50から有効電力の平均値P-を取得する。
【0077】
第1算出部1002は、第1送配電網N1を含む電力系統の全体の電力需要又は電力供給を算出する。なお、以下の説明では、第1算出部1002が電力系統の全体の電力需要を算出する例について説明する。
【0078】
第2算出部1003は、取得部1001が取得した有効電力(有効電力の平均値P-)に基づいて、第1送配電網N1の電力需要又は電力供給を算出する。なお、以下の説明では、第2算出部1003が第1送配電網N1の電力需要を算出する例について説明する。これにより、系統運用者T1のサーバ10は、系統運用者T1が管理する地域(第1送配電網N1により電力が送配電される地域)の全体での電力需要が分かる。
【0079】
計量部1004は、有効電力(有効電力の平均値P-)と、電力系統の電力需要又は電力供給とに基づいて、調整力提供手段が第1送配電網N1に提供した調整力ΔPを計量する。なお、本実施形態に係る計量部1004が計量する調整力ΔPは、長周期の需要変動を補償するための調整力(以下、「第1調整力」とも記載する。)である。
【0080】
積算部1005は、計量部1004が計量した調整力を所定の単位期間で積算してなる調整力積算値Wを算出する。所定の単位期間とは、例えば24時間、1時間、30分などである。例えば積算部1005は、単位期間を24時間に設定した場合、各調整力提供手段の一日分の調整力の総計を算出することができる。
【0081】
また、図5を参照しながら、サーバ10の各部において実施される処理の詳細について説明する。電力系統全体は、複数の系統運用者Tからなっている。図5は、全部でm+1個の系統運用者T1、T2、・・、Tm+1があるとして、系統運用者Tm+1のサーバ10における処理を表している。
【0082】
系統運用者Tm+1のサーバ10において、取得部1001は、自身が管理する地域の需要者C及び発電事業者Gそれぞれが有する調整力提供手段との接続点に設置された計測器50から、通信網を経由して、各調整力提供手段の有効電力の平均値P-、P-、・・、P-を取得する。
【0083】
そして、第2算出部1003は、系統運用者Tm+1が管理する地域(第1送配電網N1)の電力需要を算出する。なお、本実施形態では、第2算出部1003は、式(12)のように、予め定めた標本点{Sample}について荷重和したものをその地域の電力需要P―S,m+1とする。「ρ」は標本の荷重係数である。
【0084】
【数12】
【0085】
他の系統運用者T1からTmのサーバ10においても、式(12)の計算によって、各系統運用者が管理する地域の電力需要Pの値が決まる。それらは、通信網を経由して、系統運用者Tのサーバ10間で相互に連絡される。系統運用者Tm+1のサーバ10にも、系統運用者T1からTmそれぞれが管理する地域の電力需要Ps,1、Ps,2、・・、Ps,mが到来する。そして、第1算出部1002で算出される各地域の需要の総和が、電力系統全体の電力需要Pwholeとなる。これは、式(13)で計算する。
【0086】
【数13】
【0087】
電力系統全体の電力需要Pwholeは時間T(例えば1分)毎の周期で更新される。現在の時刻を「t」と記すと、前回値との差分は次式(14)で表される。
【0088】
【数14】
【0089】
本実施形態に係る調整力計量方法を実現するためには、電力系統全体の電力需給を求めるところが最も通信や演算の負荷が高い。しかしながら、上述のように、電力需要を全数調査するのではなく、標本調査で代用すれば、推定は容易になる。あるいは、需要者Cの数より発電事業者G(第2送配電網N2から第1送配電網N1に電力が供給される場合は、第2送配電網N2を含む)の数が少ないので、電力系統全体での電力供給で代用すれば、電力系統全体での電力需要の推定はさらに容易になる。さらに、電力需要や電力供給の標本から数値モデルを用いて電力系統全体での電力需要を推定してもよい。このような推定を利用することにより、電力系統全体での電力需要を、例えば1分毎に推定することは可能である。なお、調整力計量システム1の通信速度、サーバ10の演算速度が十分である場合は、第1送配電網N1に接続される全ての需要者C(第1送配電網N1から第2送配電網N2に電力を送出する場合は、第2送配電網N2を含む)の有効電力を合算して、第1送配電網N1の電力需要を算出してもよい。
【0090】
また、調整力提供手段が電力系統(第1送配電網N1)との間で授受した有効電力について、時刻tと時刻t-Tとの差分は次式(15)のとおりである。図5及び式(15)の「e-Ts」は、時間T前の値を表す伝達関数である。
【0091】
【数15】
【0092】
一つの発電事業者Gに着目すると、電力系統の需要が増えたとき、即ちΔP-wholeの値が負側に大きくなったときに、有効電力の供給を増やすならば、即ちΔP-が正側に大きくなれば、その発電事業者Gは需給調整に貢献している。計量部1004は、両者の関係を次式(16)で評価する。式(16)は、調整力提供手段による有効電力の変動が、電力系統の電力需要の変動へ与える影響度合いを表す調整力係数Kを求めるものである。
【0093】
【数16】
【0094】
そして、計量部1004は、調整力提供手段の調整力ΔPを式(17)で算出する。
【0095】
【数17】
【0096】
これを、時間T毎に、例えば24時間、1時間、または30分などの一定期間積算したものが、発電事業者Gの電源21が発生した需給調整電力である。この演算は積算部1005において、式(18)により実行する。
【0097】
【数18】
【0098】
(作用効果)
以上のように、本実施形態に係る調整力計量装置(サーバ10)は、第1送配電網に接続された調整力提供手段の有効電力と、第1送配電網を含む電力系統の全体の電力需要又は電力供給とに基づいて、調整力提供手段が第1送配電網に提供した調整力(第1調整力)を計量する。
【0099】
上述のように、周波数の偏移Δfを用いて調整力を計量すると、長周期の需給変動では周波数の偏移Δfが小さい値となってしまい、調整力を過小評価してしまう可能性があった。しかしながら、本実施形態に係る調整力計量装置は、周波数の偏移Δfに代えて、電力系統全体の電力需要又は電力供給を用いることにより、電力の長周期の需給変動に対して、調整力提供手段の有効電力がどのように寄与したかを適切に計量することができる。したがって、調整力計量装置は、調整力提供手段による長周期で持続的な調整力を精度よく計量することができる。
【0100】
また、調整力計量装置は、複数の調整力提供手段の有効電力に基づいて第1送配電網N1の電力需要又は電力供給を算出するとともに、他の系統運用者Tの調整力計量装置から取得した第2送配電網N2の電力需要又は電力供給と、算出した第1送配電網N1の電力需要又は電力供給とを合計することにより、電力系統全体の電力需要又は電力供給を算出する。
【0101】
このようにすることで、調整力計量装置は、管理対象である第1送配電網N1と、他の系統運用者T2の管理対象である第2送配電網N2との両方を含む、電力系統全体の電力需要または電力供給を知ることができる。
【0102】
また、調整力計量装置は、第1送配電網N1に接続される複数の調整力提供手段のうち一部の調整力提供手段の有効電力を標本として取得し、標本の有効電力から第1送配電網N1全体の電力需要または電力供給を算出してもよい。
【0103】
このようにすることで、調整力計量装置は、計測器50との間の通信量を削減することができるとともに、調整力計量装置の演算量を削減することが可能となる。
【0104】
また、調整力計量装置は、調整力提供手段の有効電力が電力系統の電力需要又は電力供給の変動へ与える影響度合いを表す調整力係数kを算出し、算出した調整力係数kを用いて調整力を計量してもよい。
【0105】
このようにすることで、調整力計量装置は、調整力を精度よく計量することができる。
【0106】
また、調整力計量装置は、計量した調整力を所定の単位期間で積算した調整力積算値を算出してもよい。
【0107】
このようにすることで、調整力計量装置は、例えば各調整力提供手段の一日の調整力を容易に知ることができる。
【0108】
<第2の実施形態>
次に、本開示の第2の実施形態に係る調整力計量システムについて図6を参照しながら説明する。
第1の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0109】
(サーバの機能構成)
図6は、本開示の第2の実施形態に係るサーバの機能構成を示すブロック図である。
図6に示すように、本実施形態に係るサーバ10(調整力計量装置)において、計量部1004は、上述の式(16)及び式(17)に代えて、以下の式(19)により調整力提供手段の調整力ΔPを算出する。
【0110】
【数19】
【0111】
サーバ10の他の機能、及び、計測器50の機能は、第1の実施形態と同様である。
【0112】
(作用効果)
以上のように、本実施形態に係る調整力計量装置(サーバ10)は、符号関数を使用して、有効電力の時間的な変化ΔP-を、電力系統全体の電力需要又は電力供給の時間的変化ΔP-wholeの向きに応じた正又は負の調整力として計量する。
【0113】
このようにすることで、調整力計量装置は、調整力係数kの算出が不要となるため、演算の負荷を軽減することができる。これにより、例えば調整力計量装置の管理対象となる地域(第1送配電網N1)の家庭などを含む全ての需要者C、発電事業者Gなどに対して、調整力を容易に計算することが可能となる。
【0114】
<第3の実施形態>
次に、本開示の第3の実施形態に係る調整力計量システムについて図7を参照しながら説明する。
第1及び第2の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0115】
(サーバの機能構成)
図7は、本開示の第3の実施形態に係るサーバの機能構成を示すブロック図である。
図7に示すように、本実施形態に係るサーバ10(調整力計量装置)のCPU100は、計画部1006と、精算部1007とを更に有している。
【0116】
計画部1006は、電力系統の電力需要又は電力供給の予測値に基づいて、第1送配電網N1の調整力提供手段が需要又は供給する電力の計画値を設定する。なお、本実施形態では、計画部1006が電力系統全体の電力需要を予測し、各調整力提供手段の電力需給の計画値{r1,r2,・・,rn}を設定する態様を例として説明する。
【0117】
精算部1007は、計画部1006が設定した計画値に基づいて需給調整を行った調整力提供手段の調整力を計量して、調整力に応じた対価を精算する。
【0118】
電力系統全体の電力需要は、時季や曜日などにより時刻歴を予測することは可能である。例えば、系統運用者T1が発電事業者G1に対し一日の電力需要の予想やそれに基づく信号を通知し、発電事業者G1がそれに応じて電力供給することが行われており、系統運用者T1の信号と発電事業者G1が供給した有効電力の実績に基づく需給調整力の計量法は既存である。したがって、計画部1006は、既知の技術を利用して電力需要の予測、及び電力需給の計画値の設定を行う。同様に、精算部1007は、既知の技術を利用して、計画値に基づいて需給調整を行った調整力提供手段の調整力を計量し、調整力に応じた対価を精算する。
【0119】
具体的には、本実施形態に係る調整力計量装置10は、計画に基づく需給調整に参加する調整力提供手段について以下の処理を行う。
【0120】
系統運用者T1の地域において、計画に基づく需給調整に参加する発電事業者G、需要者C等の集合を{Schedule}で表す。調整力計量装置10は、{Schedule}の集合に含まれる、ある発電事業者G1または需要者Cの調整力を、計画した供給電力の時刻歴に基づく需給調整力p-と、電力系統全体での電力需要に基づく需給調整力p-との2つの観点で評価する。
【0121】
まず、調整力計量装置10の計量部1004は、前者の計画に基づく需給調整力p-を、例えば、式(20)のように、計画値rに一致するとみなす。このほかにも、計量部1004は、計画に基づく需給調整力p-を、計画値rと、実際に供給した有効電力P-と、の荷重和で決定してもよい。
【0122】
【数20】
【0123】
一方、計量部1004は、第1及び第2の実施形態で述べた電力系統全体の電力需要に基づく需給調整力p-を、式(21)のように、実際に供給(需要)した有効電力P-から、p-を差し引いたものとして求める。
【0124】
【数21】
【0125】
そして、計量部1004は、調整力提供手段による電力系統全体での電力需要に基づく需給調整力(計画外の調整力)を、式(22)で算出する。
【0126】
【数22】
【0127】
計量部1004は、計画に基づく需給調整に参加しない調整力提供手段{Schedule}に対しては、第2の実施形態と同様に式(19)で調整力を算出する。
【0128】
また、精算部1007は、計画した供給電力の時刻歴に基づく需給調整力p-については、既知の手法を用いて、調整力の計量及び対価の精算を行う。
【0129】
(作用効果)
以上のように、本実施形態に係る調整力計量装置(サーバ10)は、電力需要又は電力供給の予測値に基づいて各調整力提供手段が需要又は供給する電力の計画値を設定し、計画値に従い電力の需要又は供給を行う調整力提供手段については、有効電力から計画値を引いた値を用いて、調整力提供手段による電力系統全体での電力需要に基づく需給調整力(第1調整力)を計量する。
【0130】
従来の技術では、計画値に基づく需給調整力を計量することは行っていたが、計画外の電力系統の需給変動を補償する調整力については計量していなかった。しかしながら、本実施形態に係る調整力計量装置は、上記した特徴を有していることにより、調整力提供手段が計画値以外にも電力系統の需給変動に対して調整力を発揮した場合は、この調整力を適切に計量することができる。
【0131】
また、調整力計量装置は、計画値に基づく需給調整力を計量し、その対価を精算する精算部1007を更に有していてもよい。これにより、調整力計量装置は、計画値に基づく需給調整力と、計画外の需給調整力との両方を適切に計量することができる。
【0132】
なお、本実施形態では、計量部1004が第2の実施形態と同様に符号関数を用いて調整力を計量する態様を例として説明したが、これに限られることはない。計量部1004は、第1の実施形態と同様に、調整力係数kを用いて調整力を計量してもよい。
【0133】
<第4の実施形態>
次に、本開示の第4の実施形態に係る調整力計量システムについて図8図9を参照しながら説明する。
第1~第3の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0134】
(計測器の機能構成)
図8は、本開示の第4の実施形態に係る計測器の機能構成を示すブロック図である。
図8に示すように、本実施形態に係る計測器50のセンサ504は、調整力提供手段と第1送配電網N1との接続点において授受される有効電力Pに加え、接続点における第1送配電網N1の周波数fを更に計測する。計測の頻度は第1の実施形態と同様に、100msなど、サーバ10が電力系統全体の電力需要を算出する時間間隔Tに比して十分に小さく設定する。
【0135】
計測器50の有効電力取得部5001は、第1の実施形態と同様に、有効電力Pについて、時刻t-Tからtまでの有効電力の平均値P-を計算し、遅くとも時刻Tより高頻度で通信回線により、系統運用者T1のサーバ10に送出する。
【0136】
加えて、計測器50のCPU500は、短周期成分計量部5002(第2計量部)を更に有している。短周期成分計量部5002は、例えば100msなど、サーバ10が電力系統全体の電力需要を算出する時間間隔Tに比して十分に小さい周期で、調整力の短周期成分(周期3~5秒程度の短周期の需給変動に対する調整力。以下、「第2調整力」とも記載する。)を計量する。この調整力の短周期成分を計量する方法は、例えば特許文献1に記載の技術を利用する。具体的には、時間差分の間隔を「Δt」であることを陽に表現して、有効電力Pと周波数fの時間差分を、それぞれ式(23)及び(24)で表す。式(23)及び(24)において、「j」は系統運用者T1の地域の需要者Cや発電事業者G等の調整力提供手段の一つ一つを表しており、全部でn個あるとする。
【0137】
【数23】
【0138】
【数24】
【0139】
これを上述の式(7)に当てはめると、各調整力提供手段の調整力の短周期成分は式(25)のように表される。
【0140】
【数25】
【0141】
計測器50は、第1の実施形態と同様に、時間周期T毎に調整力の時間平均値を系統運用者T1のサーバ10に送信する。時間平均値は式(26)で計算する。
【0142】
【数26】
【0143】
なお、計測器50の短周期成分計量部5002は、調整力の短周期成分の計量に長周期成分が混入しないように、式(25)において、式(27)のように、高域通過フィルタを用いて時間差分の持続的成分を除去した後の周波数差分を用いてもよい。
【0144】
【数27】
【0145】
式(27)において、「a」および「b」は高域通過フィルタの通過特性を定める係数である。「z-1」はデジタルフィルタの単位遅延演算子である。当該フィルタを適用した場合、式(25)は式(28)のようになる。
【0146】
【数28】
【0147】
(サーバの機能構成)
図9は、本開示の第4の実施形態に係るサーバの機能構成を示すブロック図である。
図9に示すように、本実施形態に係るサーバ10(調整力計量装置)において、取得部1001は、計測器50において式(26)で算出された調整力の短周期成分を更に取得する。そうすると、サーバ10の積算部1005は、計測器50から取得した調整力の短周期成分(第2調整力)の時間平均値と、計量部1004が計量した調整力の長周期成分(第1調整力)とを、式(29)で積算する。なお、他の実施形態では、式(29)において、短周期成分(第2調整力)の時間平均値と、計量部1004が計量した調整力の長周期成分(第1調整力)とを荷重和したものを積算しても良い。
【0148】
【数29】
【0149】
なお、図9には、計量部1004が第2の実施形態と同様の方法を用いて調整力の長周期成分を計量する例が示されているが、これに限られることはない。他の実施形態では、計量部1004は、第1の実施形態と同様の方法を用いて調整力の長周期成分を計量してもよい。また、計量部1004は、第3の実施形態と同様に、計画部1006が設定した計画値に基づいて、計画外の調整力の長周期成分を計量してもよい。
【0150】
(作用効果)
以上のように、本実施形態に係る調整力計量システム1において、計測器50は、接続点における周波数と、接続点において授受される有効電力とに基づいて、調整力提供手段の調整力の短周期成分(第2調整力)を計量する。また、調整力計量装置(サーバ10)は、計測器50から取得した調整力提供手段の調整力の短周期成分(第2調整力)と、計量部1004が計量した調整力の短周期成分とに基づいて、調整力提供手段の所定の単位期間の調整力積算値を算出する。
【0151】
このようにすることで、調整力計量システム1は、調整力計量装置において各調整力提供手段の調整力の短周期成分と、長周期成分との両方を評価することができる。
【0152】
<第5の実施形態>
次に、本開示の第5の実施形態に係る調整力計量システムについて図10を参照しながら説明する。
第1~第4の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0153】
(計測器の機能構成)
図10は、本開示の第5の実施形態に係る計測器の機能構成を示すブロック図である。
図10に示すように、本実施形態に係る調整力計量システム1において、計測器50は、計測器50が設置された接続点において送配電網Nと接続する調整力提供手段(図10の例では、発電事業者Gの電源21)の調整力を計量する「調整力計量装置」として機能する。また、本実施形態に係る計測器50のセンサ504は、接続点における周波数計測値fと、当該接続点において調整力提供手段と送配電網Nとの間で授受される有効電力計測値Pとを計測する。
【0154】
また、本実施形態に係る計測器50(調整力計量装置)のCPU500は、上述の各実施形態の有効電力取得部5001及び短周期成分計量部5002(第2計量部)に加え、周波数取得部5003と、LFC出力算出部5004(第1算出部)と、長周期成分計量部5005(第1計量部)と、積算部5006とを更に有している。なお、本実施形態において、有効電力取得部5001及び周波数取得部5003は、単に「取得部」とも記載する。また、短周期成分計量部5002及び長周期成分計量部5005を総称して、「計量部」とも記載する。
【0155】
有効電力取得部5001(取得部)は、上述の各実施形態と同様に、センサ504から有効電力計測値Pを取得し、時刻t-Tから時刻tまでの有効電力の平均値P-を計算する。
【0156】
周波数取得部5003(取得部)は、センサ504から周波数計測値fを取得する。また、周波数取得部5003は、取得した周波数計測値fについて、時刻t-Tから時刻tまでの周波数の平均値f-(「f-」はfに上線を付けたものである。)を計算する。
【0157】
LFC出力算出部5004(第1算出部)は、周波数の平均値f-と、第1送配電網N1に設定された周波数の基準値(以下、「基準周波数」とも記載する。)とに基づいて、電力系統の全体の電力需要又は電力供給変動ΔP-LFCを算出する。
【0158】
長周期成分計量部5005(第1計量部)は、有効電力取得部5001が取得した有効電力(有効電力の平均値P-)と、LFC出力算出部5004により算出された電力系統の電力需要又は電力供給とに基づいて、調整力提供手段が第1送配電網N1に提供した調整力の長周期成分(第1調整力)ΔPを計量する。
【0159】
短周期成分計量部5002(第2計量部)は、第4の実施形態と同様に、周波数計測値f及び有効電力計測値Pに基づいて、第1調整力よりも短周期の需給変動に応答する調整力の短周期成分(第2調整力)を計量する。
【0160】
積算部5006は、長周期成分計量部5005が算出した調整力の長周期成分(第1調整力)と、短周期成分計量部5002が算出した調整力の短周期成分(第2調整力)とに基づいて、調整力提供手段が所定の単位期間に提供した調整力積算値Wを算出する。また、積算部5006により算出された調整力積算値Wは、通信網を介して系統運用者T1のサーバに送信される。
【0161】
特許文献1のような従来の調整力計量装置は、ガバナーフリー(GF)のときの周波数と有効電力の関係で調整力を計量している。ガバナーフリーでは、上式(1)のように、周波数の偏移Δfと調整力ΔPが比例する。ガバナーフリーの下では、追加的に大きな有効電力Pを発するには、すなわちΔfの値が大きくなることを要した。このため、上記したように、一日の電力の需要変動のように周期の長いものに対しては、Δfの値が極めて小さくなるので、Δfは需要変動の指標として用いることが困難である。このため、上述の第1及び第2の実施形態では、電力系統全体の電力需要を直接的に計量する技術を述べた。
【0162】
上述の各実施形態に対し、本実施形態では、負荷周波数制御(LFC)に基づいて需要変動に含まれる周期の長い成分を計量することを可能にする技術を述べる。負荷周波数制御は数分から30分程度の長周期成分を対象としていることから、一日の需要変動のように周期の長い変動成分も一部は負荷周波数制御により補償されている。
【0163】
負荷周波数制御には、一般に、比例積分制御器(PI制御器)が用いられる。以下では、周波数計測値fと固定した基準周波数rとが一致する平衡状態を原点として、伝達関数を用いて負荷周波数制御の働きを説明する。負荷周波数制御の制御器は式(30)のような伝達関数で表される。負荷周波数制御に従う発電事業者Gの電源21が発生する有効電力を「PLFC」と記すと、その平衡点における値「PLFC0」からの変動は次式(30)のように表される。
【0164】
【数30】
【0165】
式(30)において、「K」と「T」は比例ゲインと積分時定数であり、負荷周波数制御の調整に用いられる。「s」はラプラス演算子である。一方、ガバナーフリー運転する発電事業者Gの電源21が発する有効電力を「PGF」と記すと、その平衡状態における値「PGF0」からの変動は式(31)のように表される。
【0166】
【数31】
【0167】
電力の需要Pについても平衡状態における値PD0がある。供給者(発電事業者G等)の総和と需要者(需要者C等)との総和は平衡状態では釣り合うから、式(32)が成り立つ。
【0168】
【数32】
【0169】
式(32)において、{Supply}は供給者を、{Demand}は需要者を表している。需要の総和を「PD,whole」で表し、その平衡状態の値を「PD0,whole」で表す。電力系統に接続する多数の発電事業者Gの中には、負荷周波数制御もガバナーフリー運転もせずに、一定出力で運転するものもある。これらの発電事業者Gの電源21についても、「K=0」または「δ-1=0」として,式(30)または式(31)で統一的に取り扱うことにする。
【0170】
すると、周波数の変動「δf=f-r」と、需要の変動「δPD,whole=PD,whole-PD0,whole」について式(33)が成り立つ。式(33)において、左辺のシグマ記号を付した「J」は電力系統の慣性の総和である。右辺分子の第一項のシグマは供給者についての総和を表し、第二項は需要者についての総和を表す。
【0171】
【数33】
【0172】
これを「δf」について解くと式(34)を得る。電力系統全体の周波数変動が、式(34)のような2次のシステムで表される。このような簡略化ができるのは、取り扱う需要変動を持続的なもの、すなわち需要変動が緩やかでありその影響が全系統におよぶもの、に起因する周波数変動に着目するからである。
【0173】
【数34】
【0174】
ここで、式(35)のように、需給不均衡を記号「e」で表す。
【0175】
【数35】
【0176】
式(35)の二行目の導出には、周波数は平衡状態で「rf0」に一致することを使っている。式(35)と式(34)から、需要変動を入力として需給不均衡を出力とする伝達関数が式(36)のように得られる。需要変動とは、式(35)の二行目の右辺第三項、すなわち、需要者の需要変動そのものである。需給不均衡とは、式(35)の二行目の右辺全部であり、需要変動を供給者が負荷周波数制御またはガバナーフリー運転などの調整力で補償した後に残る誤差である。
【0177】
【数36】
【0178】
本実施形態の目的は、一日の需要変動のような長周期の持続的な需要変動に対する調整力を計量することである。以下では、電力系統全体の長周期の持続的な需要変動が、負荷周波数制御の出力PLFCから推定できることを説明する。長周期の持続的な需要変動をランプ関数で模擬して、持続的な需要変動に対する需給不均衡の整定値を計算する。最終値の定理を用いると、持続的な需要変動に対する需給不均衡の整定値を計算すると、式(37)に示すように値は「0」になる。
【0179】
【数37】
【0180】
従って、持続的な需要変動と供給は、式(38)に示すように釣り合う。
【0181】
【数38】
【0182】
この釣合いが負荷周波数制御の働きによることを、以下で示す。需要変動の単位ステップに対する負荷周波数制御の出力の応答を、最終値の定理から計算すると式(39)を得る。
【0183】
【数39】
【0184】
式(39)は、需要変動の総和は負荷周波数制御の出力の総和に一致することを表している。念のため、需要変動の単位ステップに対するガバナーフリーの出力の最終値を計算したものが式(40)である。
【0185】
【数40】
【0186】
このように、需要変動に対するガバナーフリーの出力の最終値は「0」であるので、式(38)と式(39)から、持続的な需要変動は負荷周波数制御の出力と釣り合うことが示された。
【0187】
前述した第1から第4の実施形態では、持続的な需要変動を検出するために、電力系統内の需要の総和を直接計測した。しかし、本実施形態で述べたように、持続的な需要変動の総和は負荷周波数制御の出力に一致する。この性質を利用すれば、電力系統全体の需要の総和の計測を、負荷周波数制御の出力で代用することが可能となる。以下では、本実施形態に係る計測器50が実施する具体的な計量方法について説明する。また、ここでは、計測器50が発電事業者の管理する電源21の調整力を計量する例について説明する。
【0188】
式(30)を時間Tで差分すると、式(41)を得る。シグマ記号を付した「K」や「T」は電力系統全体に対する値であり、予め定めた固定値としてもよいし、通信網を介して時季や時刻あるいは地域などによって変更した値をサーバ10等から得るようにしてもよい。
【0189】
【数41】
【0190】
本実施形態に係る計測器50は、持続的な調整力を、前述の各実施形態と同様に、時間T(例えば、1分)毎に評価する。雑音の影響が除去されるよう、調整力の評価に使う周波数と有効電力は、時刻t-Tから時刻tまでの時間平均値を用いる。
【0191】
周波数取得部5003は、周波数fの時間平均値を式(42)で計算する。
【0192】
【数42】
【0193】
また、LFC出力算出部5004は、周波数の差分を式(43)で計算する。
【0194】
【数43】
【0195】
すると、LFC出力算出部5004により、時刻t-Tから時刻tの間の負荷周波数制御の出力の増分の平均値は式(44)で計算される。本実施形態では、この式(44)で得た値を電力系統の全体の電力需要又は電力供給として用いる。
【0196】
【数44】
【0197】
長周期成分計量部5005は、式(44)で得た値を第2の実施形態で述べた式(19)に適用して、調整力の長周期成分を式(45)で計量する。なお、長周期成分計量部5005は、式(44)で得た値を第1の実施形態の式(16)、(17)に適用して、調整力の長周期成分を計量してもよい。
【0198】
【数45】
【0199】
そして、積算部5006は、式(46)により、短周期成分計量部5002が計量した調整力の短周期成分を加えたものを積算して、電源21の単位期間における調整力を計量する。当該処理は第4の実施形態に係るサーバ10の積算部1005の処理と同様である。なお、他の実施形態では、式(46)において、短周期成分(第2調整力)の時間平均値と、長周期成分計量部5005が計量した調整力の長周期成分(第1調整力)とを荷重和したものを積算しても良い。
【0200】
【数46】
【0201】
(作用効果)
以上のように、本実施形態に係る調整力計量装置(計測器50)は、接続点における周波数と、第1送配電網N1に設定された周波数の基準値とに基づいて、電力系統の全体の電力需要又は電力供給を算出する。
【0202】
このようにすることで、複数の系統運用者Tそれぞれが管理対象である送配電網Nの電力需要又は電力供給を算出して集計することにより、電力系統全体の電力需要又は電力供給を算出する処理が不要となる。このため、各系統運用者Tのサーバ10の演算負荷を低減させることができる。また、各系統運用者Tのサーバ10間で時間T毎の通信が不要となるので、サーバ間のトラフィックを大幅に低減させることができる。さらに、サーバ10間の通信が不要となることにより、各接続点の計測器50が自律的に調整力提供手段の調整力を計量することが可能となる。
【0203】
<第6の実施形態>
次に、本開示の第6の実施形態に係る調整力計量システムについて図11を参照しながら説明する。
第1~第5の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0204】
電力の需要には、変動の速さが異なる成分があり、それに応答する需給調整力の変動にも速さが異なる様々な成分がある。例えば、電力広域的運営推進機関の第18回 需給調整市場検討小委員会(2020年8月7日)の配布資料4の42ページでは、需給調整力を変動の速さに応じて、1次調整力(応動時間10秒以内)、二次調整力1又は2(応動時間5分以内)、三次調整力1(応動時間15分以内)、三次調整力2(応動時間45分以内)の5つの商品に分けて取引することが述べられている。直感的には、応答が早い商品(例えば、一次調整力)は、遅い成分(例えば、三次調整力2)より需給調整には価値があり、取引の単価も高い。本実施形態では、このような調整力の速さに応じて単価が異なるケースに対応すべく、応答の速さによる区分に対応した調整力を積算し、応答の速さの区分毎に設定された単価で取引することを可能とする。
【0205】
上記した第5の実施形態では、式(46)にあるように、最終的に求める調整力の積算値は1つであり、応答の速さ毎に区分されていない。このため、速さの違いを単価に反映することが難しい。これに対し、本実施形態では、応答の速さによる単数又は複数の区分を設定し、区分毎に積算値を求める。
【0206】
(計測器の機能構成)
図11は、本開示の第6の実施形態に係る計測器の機能構成を示すブロック図である。
図11に示すように、本実施形態に係る計測器50(調整力計量装置)のCPU500は、所定の調整力計量処理プログラムを実行することにより、有効電力取得部5001(取得部)と、周波数取得部5003(取得部)と、有効電力合計算出部5007(第1算出部)と、成分別計量部5008(計量部)と、積算部5006としての機能を発揮する。
【0207】
有効電力取得部5001は、センサ504から、計測器50が設けられた接続点における有効電力計測値Pを取得する。周波数取得部5003は、センサ504から、計測器50が設けられた接続点における周波数計測値fを取得する。
【0208】
有効電力合計算出部5007(第1算出部)は、接続点で計測した周波数fと、第1送配電網N1に設定された基準周波数とに基づいて、電力系統の全体の短周期及び長周期の電力需要の合計変動値ΔPtotal、又は短周期及び長周期の電力供給の合計変動値ΔPtotalを算出する。
【0209】
成分別計量部5008(計量部)は、電力需要又は電力供給の合計変動値ΔPtotalに基づいて、電力需要又は電力供給の応答の速さに応じた単数又は複数の区分それぞれに対応する調整力を計量する。本実施形態では、成分別計量部5008が、遅い応答を示す第1の区分に対応する第1調整力、速い応答を示す第2の区分に対応する第2調整力、及び、第1の区分と第2の区分の中間の速さの応答を示す第3調整力を個別に計量する例について説明する。なお、他の実施形態では、区分は1つのみ(例えば、第1の区分、第2の区分、第3の区分の何れかのみ)であってもよいし、4つ以上であってもよい。区分を4つ以上に分ける場合、例えば、第3の区分を2つ以上の区分に更に分割してもよい。
【0210】
積算部5006は、複数の区分毎に調整力積算値を算出する。本実施形態では、積算部5006は、第1調整力を積算した第1調整力積算値と、第2調整力を積算した第2調整力積算値と、第3調整力を積算した第3調整力積算値とをそれぞれ算出する。
【0211】
第5の実施形態では、調整力の短周期成分は式(26)で計算し、調整力の長周期成分は式(44)で計算していた。長周期と短周期の2分割であれば、周期が互いに離隔しているのでこのように取り扱うことができた。しかし、分割数を増やした場合、分割毎に計算式を変えるのは面倒である。そこで、本実施形態では、例えば、次に説明するように計算式を一本化する。
【0212】
まず、本実施形態に係る有効電力合計算出部5007における、有効電力の計算方法について説明する。第5の実施形態では、需要者Cや発電事業者Gから成る調整力供給手段と送配電網で授受される長周期の有効電力の時間T毎の増分を式(44)で計算した。本実施形態では、これを、以下の式(47)のように、1タイムステップの増分に書き直す。総和Σは、調整力供給手段についての総和であり、周波数の時刻歴がfのときの長周期の有効電力の総和の増分である。
【0213】
【数47】
【0214】
同様に、系統全体の短周期の有効電力の総和の増分は次式(48)で表される。
【0215】
【数48】
【0216】
系統全体の有効電力の増分は、式(49)で表すように、短周期成分ΔPGFと長周期成分ΔPLFCの和ΔPtotalである。
【0217】
【数49】
【0218】
調整力供給手段の調整力は、式(50)によって、有効電力の増分ΔPがΔPtotalと同方向であるか否かで判定する。
【0219】
【数50】
【0220】
次に、成分別計量部5008が調整力を応答の速さに応じて分割する仕方について説明する。例えば、速い成分(第2の区分)、中間成分(第3の区分)、遅い成分(第1の区分)の3分割する場合について述べる。例えば、速い成分は応答の時定数が10秒以下、中間成分は応答の時定数が10秒から300秒、遅い成分は300秒から2700秒とする。
【0221】
調整力の速い成分ΔPRl,aは、式(51)で計算した有効電力の総和の増分ΔPtotalの速い成分ΔPtotal,aと、式(52)で計算した有効電力の増分ΔPの速い成分ΔP1,aから、式(53)で計算する。sはラプラス演算子であり、10s/(10s+1)は、速い成分を抽出する伝達関数の一例である。伝達関数は、FIR(Finite Impulse Response)フィルタまたは、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタなどのデジタルフィルタに等価変換して数値演算する。もちろん、デジタルフィルタを直接指定しても良い。中間成分や遅い成分の伝達関数についても同様である。
【0222】
【数51】
【0223】
【数52】
【0224】
【数53】
【0225】
調整力の中間成分ΔPRl,bは、式(54)で計算した有効電力の総和の増分ΔPtotalの中間成分ΔPtotal,bと、式(55)で計算した有効電力の増分ΔPの中間成分ΔP1,bから、式(56)で計算することができる。式(54)の処理は、中間成分を選択的に通過させる帯域通過フィルタ(バンドパスフィルタ)の処理の一例を示すためのものであり、処理方法はこれに限定されない。
【0226】
【数54】
【0227】
【数55】
【0228】
【数56】
【0229】
調整力の遅い成分ΔPRl,cは,式(57)で計算した有効電力の総和の増分ΔPtotalの遅い成分ΔPtotal,cと、式(58)で計算した有効電力の増分ΔPの遅い成分ΔP1,cから、式(59)で計算する。
【0230】
【数57】
【0231】
【数58】
【0232】
【数59】
【0233】
次に、積算部5006では、式(60)を使い、速い成分、中間成分、遅い成分に分けて、電源21の単位期間における調整力を計算する。
【0234】
【数60】
【0235】
(作用効果)
以上のように、本実施形態に係る調整力計量装置(計測器50)は、接続点で計測された周波数と、第1送配電網N1に設定された周波数の基準値とに基づいて、電力系統の全体の長周期及び短周期の有効電力の合計値を算出する有効電力合計算出部5007(第1算出部)と、有効電力の合計値に基づいて、電力需要又は電力供給の応答の速さに応じた複数の区分それぞれに対応する調整力を計量する成分別計量部5008(計量部)と、複数の区分毎に調整力積算値を算出する積算部5006と、を備える。
【0236】
このようにすることで、電力需給の応答の速さ毎に分割して調整力を計量することができる。これにより、例えば、応答の速さに応じて調整力の単価を変えるなどして、調整力の対価をより適正に計算することができる。
【0237】
<第7の実施形態>
次に、本開示の第7の実施形態に係る調整力計量システムについて図12を参照しながら説明する。
第1~第6の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0238】
(計測器の機能構成)
図12は、本開示の第7の実施形態に係る計測器の機能構成を示すブロック図である。
図12に示すように、本実施形態に係る計測器50において、有効電力合計算出部5007(第1算出部)は、調整力提供手段が有する回転体の慣性エネルギーを更に用いて、電力系統の全体の長周期及び短周期の電力需要の合計変動値ΔPtotal、又は長周期及び短周期の電力供給の合計変動値ΔPtotalを算出する。
【0239】
電力の需給調整について、最近、電源21のタービン装置211や発電機212が有する慣性も注目されている。発電機212やタービン装置211などの回転体は、回転速度の二乗に比例する慣性エネルギーを有する。これらの回転速度は系統の周波数に同期するので、需給変動で系統の周波数が増加するときには、回転体は暗黙のうちに系統から慣性エネルギー相当を奪っている。回転の慣性が大きければそれだけ多くの慣性エネルギーを奪うことになるから、需給変動は相殺され、結果として現れる周波数変動が小さくなる。したがって、需給調整の観点では慣性が大きいことが望ましい。
【0240】
本実施形態は、慣性エネルギーの授受も計量が可能になる。以下で説明する。式(61)は電気角速度ωで系統全体の慣性エネルギーを表したものである。
【0241】
【数61】
【0242】
慣性エネルギーを基準角速度ωのまわりで時間微分すると、慣性が電力系統に供給する有効電力Pとなる。慣性エネルギーの低下した分が系統に供給されるので、慣性エネルギーの時間変化率はマイナス符号をつけている。
【0243】
【数62】
【0244】
の計算には周波数の時間微分が要る。微分は時間差分により原理的には計算できるが、周波数fの観測値の誤差の影響を回避するため、微分を疑似微分に置き換えたものが式(63)である。τは疑似微分の時定数であり、例えば0.2秒などの値に設定する。
【0245】
【数63】
【0246】
第6の実施形態と同様に、式(63)をΔtで時間差分したものが式(64)である。
【0247】
【数64】
【0248】
第6の実施形態では、系統の有効電力の増分ΔPtоtalをΔPGFとΔPLFCの和として、式(49)により算出した。本実施形態では、さらに慣性が産み出す有効電力ΔPを考慮して、式(65)により系統の有効電力の増分ΔPtоtalを評価する。
【0249】
【数65】
【0250】
以降の処理(成分別計量部5008及び積算部5006の処理)は、第6の実施形態と同一である。
【0251】
なお、電力系統の慣性の総和ΣJの値は、予め定めた固定値でもよいし、図12に示すように通信網を介して時期や時刻あるいは地域などによって変更した値をサーバ10等から得るようにしてもよい。ΣJと同じく、以下の値もサーバ10等から通信網を介して得るようにしても良い。
【0252】
【数66】
【0253】
(作用効果)
以上のように、本実施形態に係る調整力計量装置(計測器50)において、有効電力合計算出部5007(第1算出部)は、調整力提供手段が有する回転体の慣性により生じる有効電力を更に加えて、電力系統の全体の長周期の電力需要の合計変動値ΔPtotal、又は短周期の電力供給の合計変動値ΔPtotalを算出する。
【0254】
このようにすることで、調整力提供手段の回転体の慣性が生み出す有効電力を加味した、より精密な調整力を計量することができる。
【0255】
また、有効電力合計算出部5007(第1算出部)は、サーバ10から取得した、日時又は地域に応じた電力系統の慣性の総和を示すパラメータに基づいて、調整力提供手段の回転体の慣性が生み出す有効電力を計算してもよい。
【0256】
このようにすることで、サーバ10がパラメータを更新した場合であっても、複数の調整力計量装置それぞれが、常に最新のパラメータを用いて有効電力を計算することができる。また、サーバ10は、時期、時間、送配電網が設けられた地域毎にパラメータを変更してもよい。これにより、慣性が生み出す有効電力をより正確に計算することができる。
【0257】
<第8の実施形態>
次に、本開示の第8の実施形態に係る調整力計量システムについて図13を参照しながら説明する。
第1~第7の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0258】
(計測器及び仮想化サーバの機能構成)
図13は、本開示の第8の実施形態に係る計測器及び仮想化サーバの機能構成を示すブロック図である。
第6の実施形態では、図11に示すように、電源21に近接して配置される計測器50を調整力計量装置として使用した。しかし、図13のように、計測器50のCPU500の機能を、例えば、電源21の遠隔地に配置した仮想化サーバ11に実装しても良い。つまり、本実施形態に係る調整力計量システム1は、計測器50、及び仮想化サーバ11からなる仮想化した調整力計量装置12を備える。このときには、計測器50のセンサ504が出力する周波数fと有効電力Pとは、通信網により仮想化サーバ11に伝送され、仮想化サーバ11のCPU110が調整力提供手段の調整力を演算する。
【0259】
具体的には、本実施形態に係る仮想化サーバ11のCPU110は、所定の調整力計量処理プログラムを実行することにより、取得部1101と、有効電力合計算出部1102(第1算出部)と、成分別計量部1103(計量部)と、積算部1104としての機能を発揮する。有効電力合計算出部1102、成分別計量部1103、及び積算部1104の機能は、それぞれ第6の実施形態又は第7の実施形態に係る有効電力合計算出部5007、成分別計量部5008、及び積算部5006の機能と同一である。また、仮想化サーバ11のストレージ113には、複数の電源又は負荷それぞれに対応する、複数の調整力計量処理プログラムが記憶されている。CPU110は、各調整力計量処理プログラムを順番に、又は、同時に実行して、複数の電源又は負荷それぞれの調整力を計量する。仮想化サーバ11が演算した各電源又は負荷それぞれの調整力は、サーバ10で集計されて、その対価が精算される。
【0260】
(作用効果)
以上のように、本実施形態に係る調整力計量装置は、計測器50と、計測器50通信可能に接続された仮想化サーバ11とからなる。仮想化サーバ11は、接続点で計測された周波数と、第1送配電網N1に設定された周波数の基準値とに基づいて、電力系統の全体の長周期及び短周期の有効電力の合計値を算出する有効電力合計算出部1102(第1算出部)と、有効電力の合計値に基づいて、電力需要又は電力供給の応答の速さに応じた複数の区分それぞれに対応する調整力を計量する成分別計量部1103(計量部)と、を備える。
【0261】
このようにすることで、従来の計測器に仮想化サーバ11を接続するのみで、応答の速さ毎に分割して、各調整力提供手段の調整力を計量することができる。
【0262】
<第9の実施形態>
次に、本開示の第9の実施形態に係る調整力計量システムについて図14を参照しながら説明する。
第1~第8の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0263】
(計測器及び仮想化サーバの機能構成)
図14は、本開示の第9の実施形態に係る計測器及び仮想化サーバの機能構成を示すブロック図である。
第8の実施形態では、仮想化した調整力計量装置12の計測器50は、一つの電源又は負荷の周波数fと有効電力Pの二つの計測値を仮想化サーバ11に伝送することが必要であった。しかし、仮想化サーバ11が、系統運用者が管理する地域全部の電源又は負荷の調整力計量装置を仮想化しようとすると、計測器50と仮想化サーバ11との間の通信量が課題となる。
【0264】
そこで、本実施形態に係る計測器50は、個々の電源又は負荷から有効電力Pだけを伝送して、通信量を減らす。周波数は代表周波数に置き換える。
【0265】
代表周波数について説明する。代表周波数f^は、標本点とする電源または負荷から周波数fを取得し、例えば式(67)のように、標本点についての加重平均から代表周波数f^を定める。γは荷重係数である。γの値は、LASSO(Least Absolute Shrinkage And Selection Operator)回帰の手法で決定することができる。
【0266】
【数67】
【0267】
標本点の集合を「Sample」と記す。「Sample」は、式(12)と同じもの、すなわち「Sample」であっても良いし、違うものを別に定めても良い。標本点の数は、系統運用者が管理する地域の電源または負荷の総数より減らすことが通信量の軽減のためには望ましい。例えば、ある場所(例えば、熊本市役所)の周波数がある地域(例えば九州地域)の代表周波数と同じ動きをすることが分かっているならば、「Sample」の要素として熊本市役所だけ選定すればよい。このようにすれば、ごく少数のサンプルで代表周波数を定めることができ、通信負荷が軽減できる。
【0268】
図14に示すように、標本点の要素である電源又は負荷の計測器50Aは、センサ504で計測した周波数fを、通信網を介して仮想化サーバ11に伝送する。仮想化サーバ11のCPU110は、所定の代表周波数決定処理プログラムを実行することにより、標本点の周波数を入力し、代表周波数を出力する代表周波数決定部1105としての機能を更に発揮する。代表周波数決定部1105は、標本点の周波数fに基づいて、この標本点が属する地域の代表周波数f^を得る。また、標本点以外の電源又は負荷の計測器50Bは、有効電力の計測値Pのみを仮想化サーバ11に伝送して通信量を抑える。
【0269】
有効電力合計算出部1102は、周波数fの代わりに代表周波数f^を用いて、電力系統の全体の長周期及び短周期の電力需要又は電力供給の合計変動値ΔPtotalを算出する。成分別計量部1103及び積算部1104の機能は、第8の実施形態と同じである。
【0270】
(作用効果)
以上のように、本実施形態に係る仮想化サーバ11は、複数の接続点のうち、標本点となる接続点の周波数を入力し、標本点を含む地域の代表周波数f^を出力する代表周波数決定部115を更に備える。
【0271】
このようにすることで、複数の計測器50のうち、標本点の計測器50Aのみから周波数を取得すればよいので、計測器50及び仮想化サーバ11間の通信量を低減させることができる。
【0272】
<第10の実施形態>
次に、本開示の第10の実施形態に係る調整力計量システムについて図15を参照しながら説明する。
第1~第9の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0273】
(計測器の機能構成)
図15は、本開示の第10の実施形態に係る計測器の機能構成を示すブロック図である。
図15に示す計測器50は、第4、第5、及び第7の実施形態を総括したものである。
第4の実施形態では、ΔP、及びΔfから調整力を計算した。
第5の実施形態では、ΔP、Δf、f、及び基準周波数rfから調整力を計算した。
第7の実施形態では、ΔP、Δf、f、rf、及びΔfの疑似微分値から調整力を計算した。
ここで、ΔPはPに時間差分を表す伝達関数を掛けた値である。同様にΔfはfに時間差分を表す伝達関数を掛けた値である。
【0274】
本実施形態に係る計測器50(調整力計量装置)は、P、f、及びrfを入力し、これらを伝達関数で重み付けした荷重和に基づき調整力を産出する装置である。
【0275】
例えば、本実施形態に係る計測器50において、有効電力合計算出部5007は、第7の実施形態(図12)の処理に代えて、電力系統の全体の長周期及び短周期の電力需要の合計変動値、又は長周期及び短周期の電力供給の合計変動値を以下のように算出する。
【0276】
周波数の重みとなる伝達関数をG(第1伝達関数)、周波数基準値の重みとなる伝達関数をG(第2伝達関数)で表すと、例えば式(65)は式(68)のように表すことができる。NfとNrは重みとなる伝達関数の数である。
【0277】
【数68】
【0278】
具体的に表すと、N=3、N=1として、伝達関数を式(69)のように設定すればよい。
【0279】
【数69】
【0280】
基準周波数rは、事実上50Hzまたは60Hzの固定値であるので、通信網をつかって受信せず、固定値として扱ってもよい。
【0281】
成分別計量部5008、及び積算部5006の機能は、第7の実施形態と同じである。
【0282】
(作用効果)
以上のように、本実施形態に係る計測器50(調整力計量装置)は、接続点の周波数f、及び周波数基準値rに加えて、周波数の重みを示す第1伝達関数と、周波数基準値の重みを示す第2伝達関数とを更に用いて、電力系統の全体の短周期及び長周期の電力需要の合計変動値ΔPtotal、又は短周期及び長周期の電力供給の合計変動値ΔPtotalを算出する。
【0283】
このようにすることで、計測器50における調整力の演算にかかる処理時間を短縮することができる。
【0284】
なお、上述の各実施形態においては、上述した調整力計量装置(サーバ10、計測器50)の各種処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータ(CPU100、CPU500)が読み出して実行することによって上記各種処理が行われる。また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0285】
上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。更に、上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0286】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、これらに限定されることはなく、多少の設計変更等も可能である。
【0287】
例えば、第1から第3の実施形態において、系統運用者Tのサーバ10が調整力計量装置として機能する態様について説明したが、これに限られることはない。他の実施形態では、計測器50が各系統運用者Tのサーバ10から各送配電網Nの電力需要又は電力供給を集計することが可能である場合は、サーバ10のCPU100の各機能部を計測器50のCPU500に組み込んで、計測器50を調整力計量装置として機能させてもよい。
【0288】
<付記>
上述の実施形態に記載の調整力計量装置、調整力計量システム、調整力計量方法、及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0289】
本開示の第1の態様によれば、調整力計量装置は、電力系統に含まれる複数の送配電網のうち、管理対象とする第1送配電網に対し提供された電力需給バランスの調整力を計量する調整力計量装置であって、前記第1送配電網に調整力を提供可能な調整力提供手段との接続点において授受される有効電力を取得する取得部と、前記第1送配電網を含む電力系統の全体の電力需要又は電力供給を算出する第1算出部と、前記有効電力と、前記電力系統の電力需要又は電力供給とに基づいて、前記調整力提供手段が前記第1送配電網に提供した第1調整力を計量する計量部と、を備える。
【0290】
このようにすることで、調整力計量装置は、電力の長周期の需給変動に対して、調整力提供手段の有効電力がどのように寄与したかを適切に計量することができる。したがって、調整力計量装置は、調整力提供手段による長周期で持続的な調整力を精度よく計量することができる。
【0291】
本開示の第2の態様によれば、第1の態様に係る調整力計量装置において、前記計量部は、前記有効電力と、前記電力系統の電力需要又は電力供給とに基づいて、前記有効電力の変動が前記電力系統の前記電力需要又は電力供給の変動へ与える影響度合いを表す調整力係数を算出し、算出した前記調整力係数と、前記電力系統の電力需要又は電力供給の変動量とに基づいて、前記第1調整力を計量する。
【0292】
このようにすることで、調整力計量装置は、調整力を精度よく計量することができる。
【0293】
本開示の第3の態様によれば、第1の態様に係る調整力計量装置において、前記計量部は、符号関数を使用して、前記有効電力の時間的な変化を、前記電力系統の電力需要又は電力供給の時間的変化の向きに応じた正又は負の調整力として計量する。
【0294】
このようにすることで、調整力計量装置は、演算の負荷を軽減することができる。これにより、例えば調整力計量装置の管理対象となる地域(第1送配電網)の家庭などを含む全ての需要者、発電事業者などに対して、調整力を容易に計算することが可能となる。
【0295】
本開示の第4の態様によれば、第1から第3の何れか一の態様に係る調整力計量装置は、前記電力系統の電力需要又は電力供給の予測値に基づいて、前記第1送配電網の前記調整力提供手段が需要又は供給する電力の計画値を設定する計画部を更に備える。前記計量部は、前記計画値に従い電力の需要又は供給を行う前記調整力提供手段について、前記有効電力から前記計画値を引いた値を用いて、前記第1調整力を計量する。
【0296】
このようにすることで、調整力計量装置は、調整力提供手段が計画値以外にも電力系統の需給変動に対して調整力を発揮した場合は、この調整力を適切に計量することができる。
【0297】
本開示の第5の態様によれば、第1から第4の何れか一の態様に係る調整力計量装置は、前記計量部が計量した前記第1調整力を所定の単位期間で積算してなる調整力積算値を算出する積算部を更に備える。
【0298】
このようにすることで、調整力計量装置は、例えば各調整力提供手段の一日の調整力を容易に知ることができる。
【0299】
本開示の第6の態様によれば、第5の態様に係る調整力計量装置において、前記取得部は、前記第1調整力よりも短周期の需給変動に応答する調整力であって、前記接続点における周波数と、前記接続点において授受される前記有効電力とに基づく第2調整力を更に取得し、前記積算部は、前記計量部が計量した前記第1調整力と、前記取得部が取得した前記第2調整力とに基づいて、前記調整力積算値を算出する。
【0300】
このようにすることで、調整力計量装置は、各調整力提供手段の調整力の短周期成分と、長周期成分との両方を評価することができる。
【0301】
本開示の第7の態様によれば、第1から第6の何れか一の態様に係る調整力計量装置は、前記取得部が取得した複数の調整力提供手段の前記有効電力に基づいて、前記第1送配電網の電力需要又は電力供給を算出する第2算出部を更に備える。前記第1算出部は、前記第2算出部が算出した前記第1送配電網の電力需要又は電力供給と、前記電力系統に含まれる第2送配電網を管理する系統運用者の調整力計量装置から取得した前記第2送配電網の電力需要又は電力供給と、を合計して前記電力系統の全体の電力需要又は電力供給を算出する。
【0302】
このようにすることで、調整力計量装置は、管理対象である第1送配電網と、他の系統運用者の管理対象である第2送配電網との両方を含む、電力系統全体の電力需要または電力供給を知ることができる。
【0303】
本開示の第8の態様によれば、第1から第6の何れか一の態様に係る調整力計量装置において、前記取得部は、前記接続点における周波数を更に取得し、前記第1算出部は、前記周波数と、前記第1送配電網に設定された周波数の基準値とに基づいて、前記電力系統の全体の電力需要又は電力供給を算出する。
【0304】
このようにすることで、複数の系統運用者それぞれが管理対象である送配電網の電力需要又は電力供給を算出して集計することにより、電力系統全体の電力需要又は電力供給を算出する処理が不要となる。このため、調整力計量装置は、各系統運用者のサーバの演算負荷を低減させることができる。また、各系統運用者のサーバ間で所定時間毎の通信が不要となるので、サーバ間のトラフィックを大幅に低減させることができる。
【0305】
本開示の第9の態様によれば、第5の態様に係る調整力計量装置において、前記取得部は、前記接続点における周波数を更に取得し、前記第1算出部は、前記周波数と、前記第1送配電網に設定された周波数の基準値とに基づいて、前記電力系統の全体の短周期及び長周期の電力需要の合計値、又は短周期及び長周期の電力供給の合計値を算出し、前記計量部は、前記電力需要の合計値又は前記電力供給の合計値に基づいて、電力需要又は電力供給の応答の速さに応じた単数又は複数の区分に対応する調整力を計量し、前記積算部は、単数又は複数の前記区分毎に前記調整力積算値を算出する。
【0306】
このようにすることで、電力需給の応答の速さ毎に分割して調整力を計量することができる。これにより、例えば、応答の速さに応じて調整力の単価を変えるなどして、調整力の対価をより適正に計算することができる。
【0307】
本開示の第10の態様によれば、第9の態様に係る調整力計量装置において、前記第1算出部は、前記調整力提供手段が有する回転体の慣性により生じる有効電力を更に加えて、前記長周期の電力需要の合計値、又は前記短周期の電力供給の合計値を算出する。
【0308】
このようにすることで、調整力提供手段の回転体の慣性が生み出す有効電力を加味した、より精密な調整力を計量することができる。
【0309】
本開示の第11の態様によれば、第10の態様に係る調整力計量装置において、前記第1算出部は、外部のサーバから取得した前記電力系統の慣性の総和を示すパラメータに基づいて、前記回転体の慣性により生じる有効電力を計算する。
【0310】
このようにすることで、サーバがパラメータを更新した場合であっても、複数の調整力計量装置それぞれが、常に最新のパラメータを用いて有効電力を計算することができる。
【0311】
本開示の第12の態様によれば、第9の態様に係る調整力計量装置において、前記第1算出部は、前記周波数の重みを示す第1伝達関数と、前記周波数の基準値の重みを示す第2伝達関数とを更に用いて、前記電力系統の全体の短周期及び長周期の電力需要の合計値、又は短周期及び長周期の電力供給の合計値を算出する。
【0312】
このようにすることで、調整力計量装置における調整力の演算にかかる処理時間を短縮することができる。
【0313】
本開示の第13の態様によれば、調整力計量システムは、電力系統に含まれる複数の送配電網のうち、管理対象とする第1送配電網に対し提供された電力需給バランスの調整力を計量する調整力計量システムであって、前記第1送配電網に調整力を提供可能な調整力提供手段との接続点において授受される有効電力を取得する取得部と、前記第1送配電網を含む電力系統の全体の電力需要又は電力供給を算出する第1算出部と、前記有効電力と、前記電力系統の電力需要又は電力供給とに基づいて、前記調整力提供手段が前記第1送配電網に提供した第1調整力を計量する計量部と、を備える。
【0314】
このようにすることで、調整力計量システムは、調整力提供手段による長周期で持続的な調整力を精度よく計量することができる。
【0315】
本開示の第14の態様によれば、第13の態様に係る調整力計量システムにおいて、前記取得部は、前記接続点における周波数を更に取得し、前記計量部は、前記第1調整力を計量する第1計量部と、前記有効電力と前記周波数とに基づいて前記第1調整力よりも短周期の需給変動に応答する第2調整力を計量する第2計量部とを有する。
【0316】
このようにすることで、調整力計量システムは、各調整力提供手段の調整力の短周期成分と、長周期成分との両方を評価することができる。
【0317】
本開示の第15の態様によれば、第13の態様に係る調整力計量システムにおいて、前記取得部は、前記接続点における周波数を更に取得し、前記第1算出部は、前記周波数と、前記第1送配電網に設定された周波数の基準値とに基づいて、前記電力系統の全体の短周期及び長周期の電力需要の合計値、又は短周期及び長周期の電力供給の合計値を算出し、前記計量部は、前記電力需要の合計値又は前記電力供給の合計値に基づいて、電力需要又は電力供給の応答の速さに応じた単数又は複数の区分に対応する調整力を計量する。
【0318】
このようにすることで、電力需給の応答の速さ毎に分割して調整力を計量することができる。これにより、例えば、応答の速さに応じて調整力の単価を変えるなどして、調整力の対価をより適正に計算することができる。
【0319】
本開示の第16の態様によれば、第15の態様に係る調整力計量システムは、複数の前記接続点のうち、標本点となる接続点の周波数を入力し、前記標本点を含む地域の代表周波数を出力する代表周波数決定部を更に備え、前記取得部は、前記接続点における前記周波数として、前記代表周波数を取得する。
【0320】
このようにすることで、複数の接続点のうち、標本点となる接続点のみから周波数を取得すればよいので、周波数の伝送に要する通信量を低減させることができる。
【0321】
本開示の第17の態様によれば、調整力計量方法は、電力系統に含まれる複数の送配電網のうち、管理対象とする第1送配電網に対し提供された電力需給バランスの調整力を計量する調整力計量方法であって、前記第1送配電網に調整力を提供可能な調整力提供手段との接続点において授受される有効電力を取得するステップと、前記第1送配電網を含む電力系統の全体の電力需要又は電力供給を算出するステップと、前記有効電力と、前記電力系統の電力需要又は電力供給とに基づいて、前記調整力提供手段が前記第1送配電網に提供した第1調整力を計量するステップと、を有する。
【0322】
本開示の第18の態様によれば、プログラムは、電力系統に含まれる複数の送配電網のうち、管理対象とする第1送配電網に対し提供された電力需給バランスの調整力を計量する調整力計量装置のコンピュータに、前記第1送配電網に調整力を提供可能な調整力提供手段との接続点において授受される有効電力を取得するステップと、前記第1送配電網を含む電力系統の全体の電力需要又は電力供給を算出するステップと、前記有効電力と、前記電力系統の電力需要又は電力供給とに基づいて、前記調整力提供手段が前記第1送配電網に提供した第1調整力を計量するステップと、を実行させる。
【産業上の利用可能性】
【0323】
本開示に係る調整力計量装置、調整力計量システム、調整力計量方法、及びプログラムによれば電力の長周期の需給変動を補償する調整力を精度よく計量することができる。
【符号の説明】
【0324】
1 調整力計量システム
10 サーバ(調整力計量装置)
100 CPU
1001 取得部
1002 第1算出部
1003 第2算出部
1004 計量部(第1計量部)
1005 積算部
1006 計画部
1007 精算部
101 メモリ
102 通信インタフェース
103 ストレージ
11 仮想化サーバ
110 CPU
1101 取得部1101
1102 有効電力合計算出部(第1算出部)
1103 成分別計量部(計量部)
1104 積算部
113 ストレージ
12 調整力計量装置
21、22、23 電源
210 制御部
211 タービン装置
212 発電機
50 計測器(調整力計量装置)
500 CPU
5001 有効電力取得部(取得部)
5002 短周期成分計量部(第2計量部)
5003 周波数取得部(取得部)
5004 LFC出力算出部(第1算出部)
5005 長周期成分計量部(第1計量部)
5006 積算部
5007 有効電力合計算出部(第1算出部)
5008 成分別計量部(計量部)
501 メモリ
502 通信インタフェース
503 ストレージ
504 センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15