(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】収容ユニット及び巻回体
(51)【国際特許分類】
B65H 75/36 20060101AFI20240229BHJP
G02B 6/46 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B65H75/36 F
G02B6/46
(21)【出願番号】P 2022571049
(86)(22)【出願日】2021-09-07
(86)【国際出願番号】 JP2021032855
(87)【国際公開番号】W WO2022137660
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2020215489
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 崇史
(72)【発明者】
【氏名】石岡 優征
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 亮
(72)【発明者】
【氏名】大里 健
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-160984(JP,A)
【文献】実開昭53-073491(JP,U)
【文献】西独国特許出願公開第03901063(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 75/36
G02B 6/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材と、
前記線材を収容する収容体と
を備え、
前記収容体には、前記線材を巻き回した巻回領域が周方向に複数配置されており、
一対の巻回領域で構成された第1領域対に、前記線材が8の字状に巻き回されており、
前記第1領域対とは異なる組み合わせの一対の巻回領域で構成された第2領域対に、前記線材が8の字状に巻き回されている
ことを特徴とする収容ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の収容ユニットであって、
一対の前記巻回領域に8の字状に巻き回された前記線材の交点は、別の前記巻回領域の中に配置されていることを特徴とする収容ユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の収容ユニットであって、
前記第1領域対に8の字状に巻き回された前記線材の交点と、前記第2領域対に8の字状に巻き回された前記線材の交点は、前記周方向にずれていることを特徴とする収容ユニット。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の収容ユニットであって、
前記第1領域対と前記第2領域対は、共通の巻回領域を有することを特徴とする収容ユニット。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の収容ユニットであって、
前記収容体は、前記線材と接触することによって、前記巻回領域に巻き回されている前記線材の姿勢を保持することを特徴とする収容ユニット。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の収容ユニットであって、
前記収容体は、棒状の軸部材を有しており、
複数の前記巻回領域は、前記軸部材の外周に沿って配置されており、
前記軸部材は、複数の巻回領域にそれぞれ巻き回された線材と接触していることを特徴とする収容ユニット。
【請求項7】
請求項6に記載の収容ユニットであって、
前記収容体の内壁面は、多角筒形状に構成されており、
前記巻回領域に巻き回された前記線材は、前記軸部材と、前記収容体の2箇所の内壁面とに接触していることを特徴とする収容ユニット。
【請求項8】
請求項6に記載の収容ユニットであって、
前記収容体の外形は、円筒形状に構成されていることを特徴とする収容ユニット。
【請求項9】
請求項6~8のいずれかに記載の収容ユニットであって、
前記収容体は、棒状の押さえ部材を複数有しており、
複数の前記押さえ部材は、前記収容体の内壁面に沿って周方向に配置されており、
前記巻回領域に巻き回された前記線材は、前記軸部材と、2つの前記押さえ部材とに接触していることを特徴とする収容ユニット。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の収容ユニットであって、
前記収容体の半径をRとし、前記巻回領域に巻き回された前記線材の曲げ半径をrとし、前記巻回領域の数をNとするとき、
の関係となることを特徴とする収容ユニット。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の収容ユニットであって、
前記線材がS方向に8の字状に巻き回された前記領域対と、前記線材がZ方向に8の字状に巻き回された前記領域対とが混在することを特徴とする収容ユニット。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の収容ユニットであって、
前記線材は、前記周方向における所定回りの方向に前記領域対を移行させつつ前記領域対に8の字状に巻き回されているとともに、
前記領域対を前記周方向に移行させる方向を反転させて、前記所定回りの方向とは逆回りの方向に前記領域対を移行させつつ前記領域対に8の字状に巻き回されていることを特徴とする収容ユニット。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の収容ユニットであって、
前記線材は、光ケーブルであることを特徴とする収容ユニット。
【請求項14】
線材を巻き回した巻回体であって、
前記線材を円弧状に巻き回した円弧部を複数備え、
複数の前記円弧部は、周方向に配置されており、
一対の前記円弧部によって前記線材が8の字状に巻き回された第1円弧対が構成され、
前記第1円弧対とは異なる組み合わせの一対の前記円弧部によって前記線材が8の字状に巻き回された第2円弧対が構成される
ことを特徴とする巻回体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容ユニット及び巻回体に関する。
本願は、2020年12月24日に、日本に出願された特願2020-215489号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ケーブルやワイヤなどの線材を梱包する技術として、例えば特許文献1~5に記載の技術がある。特許文献1~5には、ケーブルを8の字状に巻き回して収納することが記載されている。なお、8の字状にケーブルを収納することによって、梱包体を回転させずにケーブルを直線的に繰り出したときのケーブルのねじれを抑制することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第10273113号明細書
【文献】特開平01-209284号公報
【文献】特開平05-196822号公報
【文献】特許第2561736号公報
【文献】特公平07-008705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
8の字状に巻き回した線材を単に積層させてしまうと、8の字状に巻き回された線材の交点が同じ位置で重なるため、収納効率が低下してしまう。また、8の字状に巻き回された線材の交点をずらして線材を収容した場合にも、収納効率が低下することがある。
【0005】
本発明は、線材の新規な巻き回し方を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る収容ユニットは、線材と、前記線材を収容する収容体とを備え、前記収容体には、前記線材を巻き回した巻回領域が周方向に複数配置されており、一対の巻回領域で構成された第1領域対に、前記線材が8の字状に巻き回されており、前記第1領域対とは異なる組み合わせの一対の巻回領域で構成された第2領域対に、前記線材が8の字状に巻き回されている。
また、本発明の第2の態様に係る巻回体は、線材を巻き回した巻回体であって、前記線材を円弧状に巻き回した円弧部を複数備え、複数の前記円弧部は、周方向に配置されており、一対の前記円弧部によって前記線材が8の字状に巻き回された第1円弧対が構成され、前記第1円弧対とは異なる組み合わせの一対の前記円弧部によって前記線材が8の字状に巻き回された第2円弧対が構成される。
【0007】
本発明の他の特徴については、後述する明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、線材を効率的に収容しつつ、線材を引き出しても線材のねじれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1Aは、第1実施形態の収容ユニットの説明図である。
図1Bは、収容ユニットから線材を引き出す様子の説明図である。
【
図2】
図2は、一対の巻回領域における線材の巻き回し方の説明図である。
【
図4】
図4Aは、領域対を移行させる方向を継続させる場合の説明図である。
図4Bは、領域対を移行させる方向を反転させた場合の説明図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態の収容ユニットの説明図である。
【
図8】
図8は、収容体の半径と、線材の曲げ半径との関係の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0011】
線材と、前記線材を収容する収容体とを備え、前記収容体には、前記線材を巻き回した巻回領域が周方向に複数配置されており、一対の巻回領域で構成された第1領域対に、前記線材が8の字状に巻き回されており、前記第1領域対とは異なる組み合わせの一対の巻回領域で構成された第2領域対に、前記線材が8の字状に巻き回されていることを特徴とする収容ユニットが明らかとなる。このような収容ユニットによれば、線材を効率的に収容しつつ、線材を引き出しても線材のねじれを抑制することができる。
【0012】
前記収容体は、前記線材と接触することによって、前記巻回領域に巻き回されている前記線材の姿勢を保持することが望ましい。これにより、曲げ剛性によって広がろうとする線材を安定して収容することができる。
【0013】
前記収容体は、棒状の軸部材を有しており、複数の前記巻回領域は、前記軸部材の外周に沿って配置されており、前記軸部材は、複数の巻回領域にそれぞれ巻き回された線材と接触していることが望ましい。これにより、1本の軸部材によって、複数の巻回領域にそれぞれ巻き回された線材の姿勢を安定させることができる。
【0014】
前記収容体の内壁面は、多角筒形状に構成されており、前記巻回領域に巻き回された前記線材は、前記軸部材と、前記収容体の2箇所の内壁面とに接触していることが望ましい。これにより、巻回領域に円弧状(円状)に巻き回された線材が3箇所で押さえられるため、巻回領域に円弧状に巻き回された線材の姿勢を安定させることができる。
【0015】
前前記収容体の外形は、円筒形状に構成されていることが望ましい。これにより、収容ユニットを転がして運搬することが可能になる。
【0016】
前記収容体は、棒状の押さえ部材を複数有しており、複数の前記押さえ部材は、前記収容体の内壁面に沿って周方向に配置されており、前記巻回領域に巻き回された前記線材は、前記軸部材と、2つの前記押さえ部材とに接触していることが望ましい。これにより、巻回領域に円弧状に巻き回された線材が3箇所で押さえられるため、円弧状に巻き回された線材の姿勢を安定させることができる。
【0017】
前記収容体の半径をRとし、前記巻回領域に巻き回された前記線材の曲げ半径をrとし、前記巻回領域の数をNとするとき、
の関係となることが望ましい。これにより、円筒形状の収容体に、N個の巻回領域を配置できる。
【0018】
前記線材がS方向に8の字状に巻き回された前記領域対と、前記線材がZ方向に8の字状に巻き回された前記領域対とが混在することが望ましい。これにより、線材のねじれが蓄積されることを抑制できる。
【0019】
前記線材は、前記周方向における所定回りの方向に前記領域対を移行させつつ前記領域対に8の字状に巻き回されているとともに、前記所定回りの方向とは逆回りの方向に前記領域対を移行させつつ前記領域対に8の字状に巻き回されていることが望ましい。これにより、線材のねじれを抑制することができる。
【0020】
前記線材は、光ケーブルであることが望ましい。これにより、光ケーブルのねじれを抑制することができる。
【0021】
線材を巻き回した巻回体であって、前記線材を円弧状に巻き回した円弧部を複数備え、複数の前記円弧部は、周方向に配置されており、一対の前記円弧部によって前記線材が8の字状に巻き回された第1円弧対が構成され、前記第1円弧対とは異なる組み合わせの一対の前記円弧部によって前記線材が8の字状に巻き回された第2円弧対が構成されることを特徴とする巻回体が明らかとなる。このような巻回体によれば、効率的に収容可能であるとともに、ねじれを抑制して引き出すことができる。
【0022】
線材を収容体に収容した収容ユニットの製造方法であって、前記収容体には、前記線材を巻き回した巻回領域が周方向に複数配置されており、一対の巻回領域で構成された第1領域対に、前記線材を8の字状に巻き回すこと、及び、前記第1領域対とは異なる組み合わせの一対の巻回領域で構成された第2領域対に、前記線材を8の字状に巻き回すことを行うことを特徴とする収容ユニットの製造方法が明らかとなる。このような製造方法によれば、線材を効率的に収容しつつ、線材を引き出しても線材のねじれを抑制することができる。
【0023】
===第1実施形態===
図1Aは、第1実施形態の収容ユニット1の説明図である。
図1Bは、収容ユニット1から線材3を引き出す様子の説明図である。以下では、
図1Bに示すように、収容体10から線材3を引き出す側を「上」とし、逆側を「下」として説明することがある。なお、
図1Aには、線材3の交点での上下関係が示されていない。但し、線材3のそれぞれの交点での上下関係は、後述する巻回方法から明らかとなる。
【0024】
収容ユニット1は、線材3を収容する部材である。収容ユニット1は、収容体10と、線材3とを有する。
【0025】
線材3は、線状の部材である。線材3には、例えば、ケーブル(電線ケーブルや光ケーブルなど)、ワイヤのような線状の部材が含まれる。ここでは、線材3が光ケーブルであるものとして説明する。
【0026】
線材3は、巻き回された状態で収容されている。また、巻き回された線材3は、
図1Aの紙面に垂直な方向に積み重ねられた状態で収容されている。後述するように、線材3は、所定方向(例えば時計回りの方向)に巻き回されるとともに、所定方向とは逆方向(例えば反時計回りの方向)に巻き回された状態で収容されている。以下の説明では、時計回りの方向のことを「順方向」と呼び、反時計回りの方向のことを「逆方向」と呼ぶことがある(但し、反時計回りの方向のことを「順方向」とし、時計回りの方向のことを「逆方向」と定めることも可能である)。
【0027】
なお、巻き回された線材3のことを「巻回体」と呼ぶことがある。収容ユニット1は、巻回体と、収容体10とを有することになる。また、線材3の巻き始め側の端部のことを「基端」と呼び、逆側の端部のことを「先端」と呼ぶことがある。
図1Bに示すように、収容ユニット1(収容体10)から線材3を引き出すとき、線材3の先端から引き出され、基端は最後に引き出されることになる。
【0028】
収容体10は、線材3を収容する部材である。収容体10は、例えば
図1Bに示すように、面材(板材)などによってケース状(容器状)に構成された収容ケースである。但し、収容体10は、収容ケースに限られるものではなく、線材3を収容できる構造であれば良く、例えば、多数のフレームを組み合わせた骨組み構造でも良い。
【0029】
図1Bに示す収容体10は、断面が回転対称に構成されている。このため、収容体10の内壁面で囲まれた空間(収容空間)は回転対称に構成されている。また、収容体10の外径も回転対称に構成されている。ここでは、収容体10正七角筒形状(7回対称の筒形状)に構成されている。なお、収容体10の内壁面の隅(入隅)や外形の角(出隅)は、角張らずに、丸みを帯びても良い。収容体10は、引出口10Aを有する。引出口10Aは、収容体10に設けられた開口である。
図1Bに示すように、引出口10Aから線材3を引き出すことが可能である。本実施形態では、引出口10Aから線材3を引き出したときに、引き出された線材3のねじれが抑制されるように、線材3が収容体10に収容されている。
【0030】
図1Aに示す収容ユニット1には、複数の巻回領域(ここでは巻回領域A~巻回領域Gの7個の巻回領域)が周方向に配置されている。巻回領域は、線材3(ここでは光ケーブル)を巻き回す領域である。それぞれの巻回領域には、
図1Aの紙面に垂直な方向に線材3が積み重ねられた状態で巻き回されている。収容ユニット1に含まれる巻回領域の数は、ここでは7である。但し、巻回領域の数は、3以上であれば、7に限られるものではない。以下の説明では、アルファベットを用いて巻回領域を特定することがある。ここでは、
図1Aにおける12時の位置の巻回領域を基準として、それぞれの巻回領域に対して周方向に沿って順にアルファベットが対応付けられている。
【0031】
それぞれの巻回領域には、線材3が複数周にわたって巻き回されている。また、それぞれの巻回領域には、線材3が順方向又は逆方向に巻き回されている。或る巻回領域において、全て同じ方向(順方向又は逆方向)に線材3が巻き回されていても良いし、順方向と逆方向とを混在させて線材3が巻き回されていても良い。
【0032】
或る巻回領域に円弧状(円状又は弧状)に巻き回された線材3(線材3の一部)のことを「円弧部」と呼ぶことがある。円弧部は、線材3を円弧状に湾曲させた部位(湾曲部)である。円弧部は、線材3を360度の円弧状(サークル状)に巻き回した構成に限らず、線材3を360度未満で円弧状に巻き回した構成でも良いし、線材3を360度よりも大きい角度で円弧状に巻き回した構成でも良い。円弧部は、真円に近づくように線材3を湾曲させるほど、線材3にかかる負荷を軽減できるとともに、線材3の引き出しが滑らかになる。但し、円弧部は、楕円のように歪んだ円弧状に線材3を巻き回した構成でも良い。巻回体(線材3を巻き回して構成した構造体)は、周方向に配置された複数の円弧部を備える。また、或る巻回領域には、複数の円弧部が
図1Aの紙面に垂直な方向に積み重ねられて配置されている。巻回体は、線材3が順方向に巻き回された多数の円弧部と、線材3が逆方向に巻き回された多数の円弧部とを有する。
【0033】
図2は、一対の巻回領域における線材3の巻き回し方の説明図である。
図に示すように、線材3は、一対の巻回領域(ここでは巻回領域X及び巻回領域Y)で8の字状に巻き回されている。つまり、線材3は、対となる2つの巻回領域のうちの一方の巻回領域で順方向(又は逆方向)に巻き回されるとともに、他方の巻回領域で逆方向(又は順方向)に巻き回される。なお、一対の巻回領域(ここでは巻回領域X及び巻回領域Y)で8の字状に巻き回された線材3は、2つの円弧部で構成される。8の字状に巻き回された線材3は、線材3を円状に360度で巻き回した2つの円弧部で構成されたものに限られず、既に説明した通り、線材3を360度未満で円弧状に巻き回した円弧部を含んでいても良い。
【0034】
以下の説明では、線材3を8の字状に巻き回すための一対の巻回領域のことを「領域対」と呼ぶ。また、領域対を構成する一対の巻回領域が「巻回領域X」と「巻回領域Y」で構成される場合には、「領域対XY」又は「領域対YX」、若しくは、単に「XY」又は「YX」と表記する。なお、領域対に線材3を8の字状に巻き回す際の前半の巻回領域が「巻回領域X」であり、後半の巻回領域が「巻回領域Y」である場合には、「領域対XY」又は単に「XY」と表記する。また、領域対に線材3を8の字状に巻き回す際の前半の巻回領域が「巻回領域Y」であり、後半の巻回領域が「巻回領域X」である場合には、「領域対YX」又は単に「YX」と表記する。
【0035】
また、以下の説明では、
図2に示すように、領域対の前半の巻回領域で逆方向(反時計回りの方向)に線材3を巻き回し、後半の巻回領域で順方向(時計回りの方向)に巻き回すことによって8の字状に巻き回すことを「S方向」と呼ぶことがある。また、領域対の前半の巻回領域で順方向に線材3を巻き回し、後半の巻回領域で逆方向に巻き回すことによって8の字状に巻き回すことを「Z方向」と呼ぶことがある。なお、ここでは、領域対における巻き回しの始点や、領域対における巻き回しの終点は、領域対を構成する一対の巻回領域の交点(一対の巻回領域の交点)としている。
【0036】
ところで、8の字状に巻き回された線材3は、順方向に線材3が巻き回された円弧部と、逆方向に線材3が巻き回された円弧部とにより構成されることになる。そこで、以下の説明では、2つの円弧部によって8の字状に巻き回された線材3(2つの円弧部を構成する線材3の一部)のことを「円弧対」と呼ぶことがある。また、「巻回領域X」に配置された円弧部と「巻回領域Y」に配置された円弧部とで構成された円弧対のことを、「円弧対XY」又は「円弧対YX」、若しくは、単に「XY」又は「YX」と表記することがある。また、円弧対を構成する一対の円弧部のうちの基端側の円弧部が「巻回領域X」に配置されており、先端側の円弧部が「巻回領域Y」に配置されている場合には、「円弧対XY」又は単に「XY」と表記することがある。また、順方向又は逆方向のうちの一方に線材3が巻き回された円弧部のことを「第1円弧部」と呼び、他方(第1円弧部とは逆方向)に線材3が巻き回された円弧部のことを「第2円弧部」と呼ぶことがある。円弧対は、第1円弧部と第2円弧部とにより構成されることになる。
【0037】
線材3が領域対で8の字状に巻き回されるため、その領域対から線材3が引き出されたときに、線材3のねじれを相殺させることができる。線材3は、複数の領域対で8の字状に繰り返し巻き回されるため(後述)、線材3のねじれが蓄積されることを抑制できる。
【0038】
N個の巻回領域は、周方向に360°/Nの間隔で配置される。例えば、
図1Aに示すように、巻回領域Aと巻回領域Bは、周方向に360°/7の間隔をあけて配置されている。一方、領域対を構成する一対の巻回領域(例えば、領域対ACを構成する巻回領域Aと巻回領域C)は、周方向に360°/(N/2)の間隔で配置されている。このため、それぞれの巻回領域の中に、8の字状に巻き回された線材3の交点(領域対を構成する一対の巻回領域の接点;円弧対を構成する一対の円弧部の接点)が配置されている。つまり、それぞれの円弧部の中に、8の字状に巻き回された線材3の交点が配置される。これにより、8の字状に巻き回された線材3の交点と、巻回領域に巻き回された線材3(円弧部)とが重なり合うことを抑制でき、線材3を効率的に収容できる(なお、この点については第2実施形態でも同様である)。
【0039】
図3A~
図3Fは、第1実施形態の第1の巻回方法の説明図である。なお、
図3A~
図3Fは、第1実施形態の収容ユニット1の製造方法の説明図でもある。
【0040】
図3Aに示すように、線材3は、領域対ACでS方向に8の字状に巻き回されている。つまり、線材3は、領域対ACの前半の巻回領域Aで逆方向(反時計回りの方向)に巻き回された後、後半の巻回領域Cで順方向(時計回りの方向)に巻き回れている。このように、巻回領域Aに線材3を円弧状に巻き回した円弧部Aと、巻回領域Cに線材3を円弧状に巻き回した円弧部Cと、を備えた円弧対AC(第1円弧対に相当)が形成される。
【0041】
図3Bに示すように、領域対ACで線材3がS方向に8の字状に巻き回された後、線材3は、領域対CEでZ方向に8の字状に巻き回されている。つまり、線材3は、領域対AC(第1領域対)で8の字状に巻き回された後、領域対ACとは異なる組み合わせの一対の巻回領域で構成された領域対CE(第2領域対;領域対ACを構成する巻回領域とは別の巻回領域Eを含む別の領域対)で8の字状に巻き回されている。ここでは、8の字状に線材3を巻き回す領域対は、領域対ACから領域対CEへ周方向に沿って時計回りの方向に移行している。このように、円弧対ACに連続して、巻回領域Cに線材3を円弧状に巻き回した円弧部Cと、巻回領域Eに線材3を円弧状に巻き回した円弧部Eと、を備えた円弧対CE(第2円弧対に相当)が形成される。円弧対CEは、基端側の円弧対ACとは異なる組み合わせの一対の円弧部(円弧部C、円弧部E)で構成される。
【0042】
図3Cに示すように、領域対CEで線材3がZ方向に8の字状に巻き回された後、線材3は、領域対EGでS方向に8の字状に巻き回されている。つまり、線材3は、領域対CEで8の字状に巻き回された後、領域対CEとは異なる組み合わせの一対の巻回領域で構成された領域対EG(領域対CEを構成する巻回領域とは別の巻回領域Gを含む別の領域対)で8の字状に巻き回されている。ここでは、8の字状に線材3を巻き回す領域対は、領域対CEから領域対EGへ周方向に沿って時計回りの方向に移行している。このように、円弧対CEに連続して、巻回領域Eに線材3を円弧状に巻き回した円弧部Eと、巻回領域Gに線材3を円弧状に巻き回した円弧部Gと、を備えた円弧対EGが形成される。円弧対EGは、基端側の円弧対CEとは異なる組み合わせの一対の円弧部(円弧部E、円弧部G)で構成される。領域対EGで線材3を8の字状に巻き回した後においても、
図3D~
図3Fに示すように、或る領域対で線材3を8の字状に巻き回すとともに、別の領域対で線材3を8の字状に巻き回すこと(8の字状に線材3を巻き回す領域対を別の領域対に移行させること)が繰り返し行われることになる。そして、基端側の円弧対と、その円弧対と先端側で連続する円弧対は、それぞれ異なる組み合わせの一対の円弧部で構成されることになる。
【0043】
図3A~
図3Fに示すように、8の字状に線材3を巻き回す領域対は、AC→CE→EG→GB→BD→DF→・・・と移行している。つまり、
図3A~
図3Fに示す巻回方法では、8の字状に線材3を巻き回す領域対は、周方向に沿って時計回りの方向に移行している。言い換えると、
図3A~
図3Fに示すように、AC→CE→EG→GB→BD→DF→・・・の順に円弧対が周方向に沿って時計回りの順に連続して形成されることになる。但し、領域対を移行させる方向は、時計回りの方向に限られるものではなく、反時計回りの方向でも良い。
【0044】
或る領域対(例えば領域対AC;第1領域対)において線材3が8の字状に巻き回されるとともに、別の領域対(或る領域対を構成する巻回領域とは別の巻回領域を含む一対の巻回領域で構成された領域対;例えば領域対CE;第2領域対)において線材3が8の字状に巻き回されることになる。つまり、一対の巻回領域で構成された第1領域対(例えば領域対AC)に線材3が8の字状に巻き回されるとともに、第1領域対とは異なる組み合わせの一対の巻回領域で構成された第2領域対(例えば領域対CE)に線材3が8の字状に巻き回されている。言い換えると、巻回体は、周方向に配置された複数の円弧部を備えており、一対の円弧部によって線材3が8の字状に巻き回された第1円弧対(例えば円弧対AC)と、第1円弧対とは異なる組み合わせの一対の円弧部によって線材3が8の字状に巻き回された第2円弧対(例えば円弧対CE)とを備えることになる。このように、線材3が異なる領域対で8の字状に巻き回されることによって、線材3の交点をずらして線材3を収容することができる。加えて、複数の巻回領域が周方向に配置されており、線材3を8の字状に巻き回す領域対が周方向に沿って移行するため、仮に8の字状に巻き回された線材3の交点を直線方向(例えば2つの巻回領域の中心を結ぶ線に垂直な方向)にずらして線材3を収容した場合と比べると、線材3を効率的に収容することができる(なお、この点については第2実施形態でも同様である)。
【0045】
図3A~
図3Fに示すように、領域対を移行させる前後において、共通の巻回領域が存在する(言い換えると、連続する円弧対は、共通の円弧部を有する。)。例えば、
図3A及び
図3Bに示すように、8の字状に線材3を巻き回す領域対を領域対ACから領域対CEへ移行させる際に、どちらの領域対にも巻回領域Cに共通して線材3が巻き回されている(言い換えると、連続する2つの円弧対AC及び円弧対CEは、共通する円弧部Cを有する)。このように、共通の巻回領域を含むように領域対を移行させることによって、領域対を移行させる前後で共通の巻回領域に線材3が重ねて巻き回されるため、線材3を安定して収容することが可能である。但し、AC→EG→BD→FA→・・・のように、領域対を移行させる前後で共通の巻回領域を存在させずに線材3を巻き回すことも可能である(なお、この点については第2実施形態でも同様である)。
【0046】
なお、
図3A~
図3Fに示す第1の巻回方法では、領域対を移行させる前の領域対の後半の巻回領域(例えば
図3Aの領域対ACの巻回領域C)と、領域対を移行させた後の領域対の前半の巻回領域(例えば
図3Bの領域対CEの巻回領域C)とが共通になる。言い換えると、円弧対ACの先端側の円弧部と、円弧対CEの基端側の円弧部は、共通の巻回領域Cに配置される。但し、領域対を移行させる前後で共通する巻回領域は、これに限られるものではない(後述;第2の巻回方法参照)。また、移行させる前後の領域対に共通する巻回領域が無くても良い。
【0047】
図4Aは、領域対を移行させる方向を継続させる場合の説明図である。
図3Fに示すように領域対DFで線材3を8の字状に巻き回した後、
図4Aに示すように、8の字状に線材3を巻き回す領域対をDF→FA→AC→・・・と移行させ、
図3A~
図3Fに示すように領域対を周方向に沿って時計回りの方向に移行させ続けることも可能である。
【0048】
ところで、線材3を巻き回す領域対を移行させる際に、移行前の領域対での巻き回しの終点から、移行後の領域対での巻き回しの始点までの間に、線材3を巻き回す必要がある。以下の説明では、移行前の領域対の巻き回しの終点から移行後の領域対の巻き回しの始点までの間の区間のことを「調整区間」と呼ぶことがある。
【0049】
8の字状に線材3を巻き回す領域対が領域対ACから領域対CEに移行するときの調整区間は、
図3Bの太線が二重になっている区間であり、この調整区間では、線材3は、順方向(時計回りの方向)に巻き回されている。一方、8の字状に線材3を巻き回す領域対が領域対CEから領域対EGに移行するときの調整区間は、
図3Cの太線が二重になっている区間であり、この調整区間では、線材3は、逆方向(反時計回りの方向)に巻き回されている。このように、或る調整区間において線材3が巻き回される方向と、別の調整区間で巻き回される方向とが互いに逆方向であることによって、調整区間で生じる線材3のねじれを相殺させることができる。
【0050】
一方、8の字状に線材3を巻き回す領域対が領域対ACから領域対CEに移行するときの調整区間は、巻回領域Cの「外側」の円弧状の区間となる(
図3Bの二重の太線参照)。一方、8の字状に線材3を巻き回す領域対が領域対CEから領域対EGに移行するときの調整区間は、巻回領域Cの「内側」の円弧状の区間となる(
図3Cの二重の太線参照)。このように、S方向に線材3を巻き回す領域対からZ方向に線材3を巻き回す領域対に移行するときの調整区間は巻回領域の「外側」の円弧状の区間となり(
図3B、
図3D及び
図3Fの太線が二重の区間)、Z方向に線材3を巻き回す領域対からS方向に線材3を巻き回す領域対に移行するときの調整区間は巻回領域の「内側」の円弧状の区間となる(
図3C、
図3Eの太線が二重の区間)。巻回領域の「外側」の調整区間(
図3B、
図3D及び
図3Fの太線が二重の区間)は、巻回領域の「内側」の調整区間(
図3C、
図3Eの太線が二重の区間)と比べて長い。このため、
図3A~
図3F及び
図4Aに示すように、領域対を周方向に沿って時計回りの方向に移行させ続ける場合、順方向の調整区間と逆方向の調整区間の長さの差の分だけ、線材3にねじれが蓄積されるおそれがある。
【0051】
図4Bは、領域対を移行させる方向を反転させた場合の説明図である。
図3Fに示すように領域対DFで線材3を8の字状に巻き回した後、
図4Bに示すように、8の字状に線材3を巻き回す領域対をDF→FA→AF→FD→・・・と移行させ、その後、
図3A~
図3Fとは逆向きに、すなわち、領域対を周方向に沿って反時計回りの方向に移行させることになる。つまり、8の字状に線材3を巻き回す領域対は、AC→CE→EG→GB→BD→DF→FAのように時計回りの方向に移行した後(
図3A~
図3F及び
図4B左図参照)、AF→FD→DB→BG→GE→EC→CAのように反時計回りの方向に移行させることになる。この場合、領域対を周方向に沿って時計回りの方向に移行させている間に蓄積された線材3のねじれを、領域対を周方向に沿って反時計回りの方向に移行させることによって相殺させることができる。つまり、時計回りの方向(所定回りの方向)に領域対を移行させつつ線材3が領域対に8の字状に巻き回されるとともに、反時計回りの方向(所定回りの方向とは逆回りの方向)に領域対を移行させつつ線材3が領域対に8の字状に巻き回されることによって、線材3のねじれを抑制することができる。このため、領域対を周方向に移行させる方向は、時計回りの方向と反時計回りの方向とを交互に繰り返すことが望ましい。言い換えると、領域対を周方向に移行させる方向は、途中で反転させることが望ましい。但し、線材3のねじれの蓄積が許容できる場合には、領域対を周方向に移行させる方向を途中で反転させなくても良い。
【0052】
なお、8の字状に線材3を巻き回す領域対を別の領域対に移行させることが繰り返し行われることによって、線材3の全てが巻き回されている。言い換えると、巻回体は、上記の巻回方法によって巻き回された線材3から構成されている。但し、線材3の全てがこの巻回方法によって巻き回されていなくても良く、線材3の一部が上記の巻回方法によって巻き回されていれば良い。つまり、巻回体を構成する複数の層の全ての層が、上記の巻回方法によって巻き回された線材3で構成されていなくても良く、一部の層が上記の巻回方法によって巻き回された線材3で構成されていれば良い。線材3の一部が上記の巻回方法ように巻き回されていれば、線材3を効率的に収容しつつ、線材3を引き出したときに線材3のねじれを抑制することができる(この点については、他の形態の巻回方法についても同様である)。
【0053】
図5A~
図5Fは、第1実施形態の第2の巻回方法の説明図である。
【0054】
第2の巻回方法では、8の字状に線材3を巻き回す領域対は、CA→EC→GE→BG→DB→FD→・・・と移行している。言い換えると、第2の巻回方法では、CA→EC→GE→BG→DB→FD→・・・の順に円弧対が連続して形成されることになる。第2の巻回方法においても、第1の巻回方法と同様に、領域対を移行させる前後において、共通の巻回領域が存在する。例えば、
図5A及び
図5Bに示すように、8の字状に線材3を巻き回す領域対を領域対CAから領域対ECへ移行させる際に、どちらの領域対にも巻回領域Cに共通して線材3が巻き回されている。このため、第2の巻回方法においても、領域対を移行させる前後で共通の巻回領域に線材3が重ねて巻き回されるため、線材3を安定して収容することが可能である。
【0055】
一方、第2の巻回方法では、領域対を移行させる前の領域対の前半の巻回領域(例えば
図5Aの領域対CAの巻回領域C)と、領域対を移行させた後の領域対の後半の巻回領域(例えば
図5Bの領域対ECの巻回領域C)とが共通になる。このように、領域対を移行させる前後で巻回領域を共通化させる方法は、第1の巻回方法のように、移行前の後半の巻回領域と、移行後の前半の巻回領域とを共通化させるものに限られるものではない。
【0056】
第1の巻回方法及び第2の巻回方法では、領域対が移行するごとに、領域対で線材3を8の字状に巻き回す方向は、S方向とZ方向とが交互に移行している(言い換えると、円弧対を連続的に形成する際に、円弧対の基端側の円弧部の線材3の巻き回す方向を交互に移行させている)。例えば、第1の巻回方法では、領域対で線材3を8の字状に巻き回す方向は、
図3A~
図3Fに示すように、S方向(AC)→Z方向(CE)→S方向(EG)→Z方向(GB)→S方向(BD)→Z方向(DF)→・・・と交互に移行している。また、第2の巻回方法では、領域対で線材3を8の字状に巻き回す方向は、
図5A~
図5Fに示すように、S方向(CA)→Z方向(EC)→S方向(GE)→Z方向(BG)→S方向(DB)→Z方向(FD)→・・・と交互に移行している。このように、線材3がS方向に8の字状に巻き回された領域対と、線材3がZ方向に8の字状に巻き回された領域対とを混在させることによって、線材3のねじれが蓄積されることを抑制できる。但し、線材3のねじれの蓄積が許容できる場合には、線材3がS方向に8の字状に巻き回された領域対と、線材3がZ方向に8の字状に巻き回された領域対とを混在させなくても良い。また、領域対が移行するごとに線材3を8の字状に巻き回す方向を交互に移行させることによって、線材3のねじれが蓄積されることを更に抑制できる。但し、領域対で線材3を8の字状に巻き回す方向は、これに限られるものではない(次述)。
【0057】
図6A~
図6Fは、第1実施形態の第3の巻回方法の説明図である。
【0058】
第3の巻回方法では、領域対で線材3を8の字状に巻き回す方向は、
図6A~
図6Fに示すように、S方向(AC)→S方向(EC)→S方向(EG)→S方向(BG)→S方向(BD)→S方向(FD)→・・・であり、いずれの領域対においても線材3はS方向に8の字状に巻き回されている。このように、領域対で線材3を8の字状に巻き回す方向は、S方向とZ方向とを交互に移行させるものに限られるものではなく、いずれの領域対においてもS方向のみでも良いし、Z方向のみでも良いし、若しくは、S方向とZ方向とが交互では無い状態で混在しても良い(例えば、連続してS方向に線材3を8の字状に巻き回した後に、連続してZ方向に線材3を8の字状に巻き回しても良い)。
【0059】
なお、第2の巻回方法及び第3の巻回方法においても、調整区間で線材3のねじれが蓄積されるおそれがある。このため、第2の巻回方法及び第3の巻回方法においても、領域対を周方向に移行させる方向は、時計回りの方向と反時計回りの方向とを交互に繰り返すことが望ましい。言い換えると、第2の巻回方法及び第3の巻回方法においても、領域対を周方向に移行させる方向は、途中で反転させることが望ましい。
【0060】
線材3が光ケーブルの場合、線材3を湾曲させると、光ケーブルの曲げ剛性の働きによって、湾曲が戻ろうとする。このため、線材3が光ケーブルの場合、線材3が巻回領域で円弧状に巻き回されると、線材3が広がろうとする。これに対し、収容体10と線材3(光ケーブル)とを接触させることによって、巻回領域に巻き回されている線材3の姿勢を保持させることができる。これにより、曲げ剛性によって広がろうとする線材3(光ケーブル)を安定して収容することができる。このため、収容体10と線材3(光ケーブル)とを接触させることは、線材3が光ケーブルの場合に特に有効である。
【0061】
図1Aに示す収容体10は、軸部材11を有する。軸部材11は、棒状の部材である。収容体10は断面が回転対称に構成されており、軸部材11は、収容体10の中心に設けられている。軸部材11は、
図1Aの紙面垂直方向を軸方向として、収容体10の中心に配置されている(
図1B参照)。巻回領域に巻き回された線材3(円弧部)は、軸部材11と接触している。これにより、線材3の姿勢が安定し、線材3を安定して収容することができる。軸部材11は、交換可能に設けられている。軸部材11の径を変更することによって、様々な太さの線材3に対応させることが可能になる。
【0062】
軸部材11の外周に沿って複数の巻回領域が配置されている。軸部材11は、複数の巻回領域にそれぞれ巻き回された線材3(周方向に配置された複数の円弧部)と接触している。これにより、1本の軸部材11によって、複数の巻回領域にそれぞれ巻き回された線材3(円弧部)の姿勢を安定させることができる。
【0063】
また、円弧部(巻回領域に巻き回された線材3)は、軸部材11と、収容体10の2箇所の内壁面とに接触していることが望ましい。これにより、円弧部(巻回領域に円弧状に巻き回された線材3)が3箇所で押さえられるため、円弧部の姿勢を安定させることができる。なお、円弧部が他の部材に接触する箇所の数は、3に限られるものではなく、3以上でも良い(後述)。
【0064】
また、収容体10の内壁面は、複数の平面状の側面で構成されており、多角筒形状に構成されていることが望ましい。これにより、円弧部(巻回領域に巻き回された線材3)は、収容体10の2箇所の内壁面と接触することが可能である。但し、後述するように、収容体10は円筒形状に構成されても良い。
【0065】
円弧部(巻回領域に巻き回された線材3)は3箇所で押さえられていることが望ましい(詳しくは軸部材11と収容体10の2箇所の内壁面の3箇所で押さえられていることが望ましい)。これにより、円弧状に巻き回された線材3が広がることが制限されるため、曲げ剛性によって広がろうとする線材3の姿勢を保持することができる。このように、巻回領域に巻き回された線材3が3箇所(軸部材11と収容体10の2箇所の内壁面)で押さえることは、線材3が光ケーブルの場合に特に有効となる。なお、光ケーブルの許容曲げ半径は予め定められているため、線材3が光ケーブルの場合には、許容曲げ半径よりも大きい半径で巻回領域に巻き回されることが望ましい。
【0066】
===第2実施形態===
図7は、第2実施形態の収容ユニット1の説明図である。第2実施形態においても、収容ユニット1は、収容体10と、線材3とを有する。
【0067】
第2実施形態においても、収容体10は、軸部材11を有する。第2実施形態においても、円弧部(巻回領域に巻き回された線材3)が軸部材11と接触している。これにより、線材3の姿勢が安定し、線材3を安定して収容することができる。
【0068】
第2実施形態では、収容体10の外形は、円筒形状に構成されている。これにより、収容ユニット1を転がして運搬することが可能になる。なお、第2実施形態では、収容体10の内壁面が円筒形状に構成されているため、円弧部は、第1実施形態のように収容体10の2箇所の内壁面で接触することはできず、収容体10の内壁面とは1箇所で接触している。
【0069】
第2実施形態では、収容体10は、複数本の押さえ部材12を有する。押さえ部材12は、巻回領域に巻き回された線材3(円弧部)と接触させる部材である。押さえ部材12は、棒状の部材であり、
図7の紙面に垂直な方向を軸方向として、収容体10の内壁面の近傍に設けられている。つまり、押さえ部材12は、軸部材11と平行に配置されている。複数本の押さえ部材12は、内壁面の周方向に沿ってほぼ均等な間隔で配置されている。押さえ部材12は、軸部材11と同様に、交換可能に設けられている。押さえ部材12の径を変更することによって、様々な太さの線材3に対応させることが可能になる。なお、収容体10が第1実施形態のように多角筒形状で構成されている場合にも、収容体10が複数本の押さえ部材12を有していても良い。収容体10が押さえ部材12を有することによって、円弧部(巻回領域に巻き回された線材3)の接触箇所が増えるため、線材3の姿勢が安定し、線材3を安定して収容することができる。
【0070】
図7に示すように、円弧部(巻回領域に巻き回された線材3)は、軸部材11と、2本の押さえ部材12とに接触している。これにより、円弧部(巻回領域に円弧状に巻き回された線材3)が3箇所で押さえられるため、円弧部の姿勢を安定させることができる。
【0071】
第2実施形態では、円弧部(巻回領域に巻き回された線材3)は、軸部材11及び2本の押さえ部材12に接触するとともに、収容体10の内壁面にも接触している。つまり、第2実施形態では、円弧部(巻回領域に巻き回された線材3)は、合計4箇所において他の部材に接触している。このように、円弧部が他の部材に接触する箇所の数は、3に限られるものではない。なお、円弧部は、収容体10の内壁面に接していなくても良い。この場合においても、円弧部が3箇所(軸部材11と2本の押さえ部材12)で押さえられるため、巻円弧部の姿勢を安定させることができる。
【0072】
図8は、収容体10の半径と、線材3の曲げ半径との関係の説明図である。ここでは、収容体10の中心をO1、線材3の曲げ中心をO2、8の字に巻き回された線材3の交点(2つの円の接点)をSとする。また、収容体10の半径をRとし、線材3の曲げ半径をrとする。
三角形O1-O2-Sに着目すると、∠Sは直角である(三角形O1-O2-Sは直角三角形である)。また、三角形O1-O2-Sにおける∠O1=θとすると、sinθ=r/(R-r)となる。巻回領域の数がNの場合、θ=360°/Nになるため、収容体10の半径Rと、線材3の曲げ半径rとの関係は、次式に示す通りになる。
【0073】
【0074】
なお、実際には線材3には太さがあるため、線材3の太さを考慮すると、収容体10の半径Rと、線材3の曲げ半径rとの関係は、次式に示す通りになる。
【0075】
【0076】
収容体10の半径Rと線材3の曲げ半径rとを上式の関係にすることによって、円筒形状の収容体10に、N個の巻回領域を配置できる。収容体10の半径Rと線材3の曲げ半径rとを上式の関係にすることは、第2実施形態の収容ユニット1に限らず、第1実施形態や他の形態の収容ユニット1でも有効である。なお、線材3が光ケーブルの場合には、線材3の曲げ半径rは、光ケーブルの許容曲げ半径よりも大きいことが望ましい。
【0077】
図9A~
図9Fは、第2実施形態の巻回方法の一例の説明図である。
【0078】
図9Aに示すように、線材3は、領域対ACでS方向に8の字状に巻き回されている。また、
図9Bに示すように、線材3は、領域対ACで線材3がS方向に8の字状に巻き回された後、領域対CEでZ方向に8の字状に巻き回されている。領域対ACや領域対CEでの線材3の巻回方法は、第1実施形態の第1の巻回方法と同様のため、ここでは説明を省略する(
図3A及び
図3B参照)。
【0079】
図9A及び
図9Bに示すように、線材3が領域対AC及び領域対CEに巻き回すことによって、線材3が巻回領域A、巻回領域C及び巻回領域Eに巻き回され、これにより、周方向に1つおきの巻回領域に線材3が巻き回されることになる。第1実施形態の第1の巻回方法と同様に、
図9A及び
図9Bに示す巻回方法をそのまま継続させただけの場合、巻回領域が6個(偶数)であるため、線材3は、巻回領域A、巻回領域C及び巻回領域Eだけに巻き回されてしまい、線材3が巻回領域B、巻回領域D及び巻回領域Fに巻回されないおそれがある。このように巻回領域の数が偶数の場合、前述の第1実施形態のように8の字状に線材3を巻き回す領域対を移行させると、周方向に1つおきの巻回領域に線材3が巻き回されてしまい、奇数番目(又は偶数番目)の巻回領域に線材3が巻き回されないおそれがある。そこで、第2実施形態では、次のように線材3を巻き回している。
【0080】
図9Cに示すように、領域対CEで線材3がZ方向に8の字状に巻き回された後、線材3は、領域対EBでS方向に8の字状に巻き回されている。巻回領域Eと巻回領域Bは、周方向に間に2個の巻回領域(巻回領域F、巻回領域A)を挟むように離れている。第2実施形態では、周方向に2つ離れた巻回領域E及び巻回領域Bを領域対とし、線材3が領域対ESに8の字状に巻き回される。
【0081】
なお、
図9Cの太線で示された区間は、8の字状に線材3を巻き回す領域対が領域対CEから領域対BD(次述;
図9D参照)に移行するときの調整区間でもある。第2実施形態では、
図9Cに示すように、周方向に奇数番目の巻回領域と偶数番目の巻回領域との間(巻回領域Eと巻回領域Dとの間)で線材3を巻き回す調整区間が存在することになる。そして、第2実施形態では、
図9Cに示すように、周方向に奇数番目の巻回領域と偶数番目の巻回領域との間(巻回領域Eと巻回領域Dとの間)で線材3を巻き回す調整区間において、線材3が8の字状に巻き回されている。このため、この調整区間から線材3が引き出されたときに、線材3のねじれを相殺させることができる。
【0082】
線材3は、領域対EBで線材3がS方向に8の字状に巻き回された後、
図9Dに示すように、領域対BDでZ方向に8の字状に巻き回される。また、線材3は、領域対BDで線材3がZ方向に8の字状に巻き回された後、
図9Eに示すように、領域対DFでS方向に8の字状に巻き回されている。
【0083】
図9D及び
図9Eに示す巻回方法をそのまま継続させただけの場合、前述の
図9A及び
図9Bに示す巻回方法をそのまま継続させただけの場合と同様に、巻回領域が6個(偶数)であるため、線材3は、巻回領域B、巻回領域D及び巻回領域Fだけに巻き回されてしまい、線材3が巻回領域A、巻回領域C及び巻回領域Eに巻回されないことになる。
そこで、
図9Fに示すように、領域対DFで線材3がS方向に8の字状に巻き回された後、線材3は、領域対FCでZ方向に8の字状に巻き回される。巻回領域Fと巻回領域Cは、周方向に間に2個の巻回領域(巻回領域A、巻回領域B)を挟むように離れている。第2実施形態では、周方向に2つ離れた巻回領域F及び巻回領域Cを領域対とし、線材3が領域対FCに8の字状に巻き回される。
【0084】
なお、
図9Fの太線で示された区間は、
図9Cの太線で示された区間と同様に、調整区間でもある。つまり、
図9Fの太線で示された区間は、8の字状に線材3を巻き回す領域対が領域対DFから領域対CEに移行するための調整区間でもある。この調整区間においても、線材3が8の字状に巻き回されているため、この調整区間から線材3が引き出されたときに、線材3のねじれを相殺させることができる。
【0085】
上記の第2実施形態では、或る領域対を構成する一対の巻回領域(例えば領域対ACの巻回領域Aと巻回領域C)の周方向の間隔と、別の領域対を構成する一対の巻回領域(例えば領域対EBの巻回領域Eと巻回領域B)の周方向の間隔とが異なっている。これにより、巻回領域の数が偶数の場合であっても、周方向に配置された複数の巻回領域の全てに線材3を巻き回すことが可能である。なお、巻回領域の数が奇数の場合であっても、或る領域対を構成する一対の巻回領域の周方向の間隔と、別の領域対を構成する一対の巻回領域の周方向の間隔とを異ならせても良い。
【0086】
第2実施形態においても、8の字状に線材3を巻き回す領域対は、周方向に沿って時計回りの方向に移行している。但し、領域対を移行させる方向は、時計回りの方向に限られるものではなく、反時計回りの方向でも良い。また、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に(
図4B参照)、領域対を周方向に移行させる方向は、時計回りの方向と反時計回りの方向とを交互に繰り返すことが望ましい(領域対を周方向に移行させる方向は、途中で反転させることが望ましい)。
また、第2実施形態においても、第1実施形態の第2の巻回方法と同様に(
図5A~
図5F参照)、領域対を移行させる前の領域対の前半の巻回領域と、領域対を移行させた後の領域対の後半の巻回領域とを共通化させても良い。また、第2実施形態においても、第1実施形態の第3の巻回方法と同様に(
図6A~
図6F参照)、いずれの領域対においてもS方向のみでも良いし、Z方向のみでも良いし、若しくは、S方向とZ方向とが交互では無い状態で混在しても良い。
【0087】
===その他===
上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0088】
1 収容ユニット、3 線材、
10 収容体、10A 引出口、
11 軸部材、12 押さえ部材