(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】多角形の端面を有するストッパーを一端に有する医療用糸及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/04 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
A61B17/04
(21)【出願番号】P 2022572549
(86)(22)【出願日】2021-03-24
(86)【国際出願番号】 KR2021003623
(87)【国際公開番号】W WO2021241868
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-01-24
(31)【優先権主張番号】10-2020-0063530
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521274533
【氏名又は名称】サムヤン ホールディングス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】SAMYANG HOLDINGS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】31,Jong-ro 33-gil,Jongno-gu,Seoul,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ,ホスン
(72)【発明者】
【氏名】リュ,デヒィ
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ヒェスン
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-503826(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0079811(US,A1)
【文献】米国特許第05500000(US,A)
【文献】韓国登録特許第10-1855328(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0134483(KR,A)
【文献】特表2013-528418(JP,A)
【文献】特表2018-500057(JP,A)
【文献】特表2013-525081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体、及び前記本体の一端部に連結されたストッパーを含
み、
前記ストッパーが連結された
前記一端部は、円形の端面を有し、
前記本体は、長手方向に延び、
前記ストッパーは、本体と連結された部分で多角形の端面を有し、
前記ストッパーの多角形断面の重心から前記ストッパーの各頂点までの距離の
3つ以上が、前
記一端部の円形断面の半径
の2倍~15倍であり、
前記ストッパーの貫通抵抗が0.2kgf以上である医療用糸。
【請求項2】
前記ストッパーは、隣接する前記本体の長手方向に対して垂直に配置され、多角柱又は多角錐の形状を有する請求項1に記載の医療用糸。
【請求項3】
前記ストッパーの厚さは、0.1mm~5mmである請求項1に記載の医療用糸。
【請求項4】
前記ストッパーが前記本体との連結の部分で有する多角形断面の一辺の長さは、1mm~5mmである請求項1に記載の医療用糸。
【請求項5】
前記ストッパーのエッジが、
前記ストッパーの厚さ方向において、前記本体と連結された端面から次第に拡径するテーパー状に形成されている請求項1に記載の医療用糸。
【請求項6】
前記本体とストッパーのとの付着強度(ストッパー付着強度)が、2kgf以上である請求項1に記載の医療用糸。
【請求項7】
前記本体と前記ストッパーが、それぞれ独立して、ポリジオキサノン(PDO)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリトリメチルカーボネート(PTMC)、ポリプロピレン(PP)、ナイロン(Nylon)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から選ばれる一つ以上の共重合体を含む請求項1に記載の医療用糸。
【請求項8】
前記医療用糸は、前記ストッパーに連結された端部でない本体の他方の端部に縫合用針が結合されたものである請求項1に記載の医療用糸。
【請求項9】
前記本体の表面は、外側に突出する複数の突起を含むものである請求項1に記載の医療用糸。
【請求項10】
長手方向に延びる本体を準備する工程;
前記本体の一端部を加熱して溶融させる工程;
溶融した前
記一端部が所定の形状を有するモールドに注入して、前記本体の端部にストッパーを形成する工程;及び
前記本体及び前記ストッパーを冷却させた後、前記モールドから分離する工程;
を含み、
前記ストッパーが連結された本体の一端部は、円形の端面を有し、
前記ストッパーは、前記本体との連結の部分で多角形の端面を有し、
前記ストッパーの多角形端面の重心から各頂点までの距離の
3つ以上が、前
記一端部の円形断面の半径
の2倍~15倍であり、
前記ストッパーの貫通抵抗が0.2kgf以上である医療用糸の製造方法。
【請求項11】
前記溶融した
前記一端部に対して、前記ストッパーの相対的位置を調節する位置調節工程をさらに含む請求項
10に記載の医療用糸の製造方法。
【請求項12】
前記本体とストッパーを冷却してモールドから分離する工程において、前記本体とストッパーを、0.01~3mpaの冷却風量で5~120秒間冷却する請求項
10に記載の医療用糸の製造方法。
【請求項13】
前
記一端部を加熱溶融する工程において、加熱温度が50~400℃である請求項
10に記載の医療用糸の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多角形の端面を有するストッパーを一端に有し、ストッパー付着強度及び貫通抵抗に優れた医療用糸及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、医療用糸は、皮膚、筋肉、腱、内臓、骨組織、神経、血管などの組織の損傷部位及び外科手術による切開部位を連結又は縫合する使用又は人体組職の修復、支持、固定などの様々な目的で使用されている。
【0003】
ここで、切開された組織を縫うために通常の医療用糸を使用する場合、結び目を形成する必要がある。しかし、結び方には様々な方法がり、中には非常に複雑なものもあるため、従来の医療用糸を使用するには事前の訓練が必要である。もう1つの問題は、結び目が外科手術の総所要時間のかなりの部分を消費するということである。したがって、結び目を形成せずに使用できる医療用糸を開発する必要性が生じている。
【0004】
結び目のない糸の必要性に対処するために、返しとげのある医療用糸が開発された(特許文献1)。返しとげのある医療用糸(barbed thread)は、両方向に反しとげが形成された双方向タイプと、一方向のみ返しとげが形成された一方向タイプに分類することができる。前者の双方向タイプは、返しとげが両方向に形成されているため、切開部位の中心から開始し、両方向に縫合をして、糸の端を結び目で固定する必要がなかった。しかし、後者の一方向タイプは、組織内では、返しとげが向いている方向とは反対の方向にのみ移動を抑制するため、切開部位の終端では医療用糸を固定する手段が必要である。
【0005】
このような、一方向タイプの返しとげ付き医療用糸の終端を固定するために、端部をループ状に加工し、組織を縫合針で縫合してループを組織に近づけ、もう1度縫って糸を通した後、糸を締めることで固定(anchoring)効果が得られる。従来技術は、固定効果を達成するために、一方向タイプの返しとげのある糸の端に形成された小さなループに糸を通し、結果としてループを締めることである。手順の複雑さと不便さを軽減し、一方向に返しとげのある糸の端を肯定するのに必要な時間を短縮する解決策が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国 公開特許公報 第10-2019-0061944号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前述の従来技術の問題を解決するためのものである。そこで、本発明の目的は、医療用糸の端部を皮膚組織に短時間で固定することができ、優れたストッパー付着強度及び貫通抵抗を同時に発揮できる医療用糸及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によると、本体;及び前記本体の一端部に連結されたストッパー;を含む医療用糸であって、前記ストッパーが連結された本体の一端部は、円形の端面を有し、前記本体は、長手方向に延び、前記ストッパーは、本体と連結された部分で多角形の端面を有し、前記ストッパーの多角形断面の重心から前記ストッパーの各頂点までの距離の2つ以上が、前記本体一端部の円形断面の半径よりも大きい医療用糸が提供される。
【0009】
一実施形態において、前記ストッパーの多角形端面の重心から各頂点までの距離の2つ以上が、前記本体一端部の円形断面の半径の1.5倍以上でであってもよい。
【0010】
一実施形態において、前記ストッパーは、隣接する前記本体の長手方向に対して垂直に配置され、多角柱又は多角錐の形状を有してもよい。
【0011】
また、一実施形態において、前記ストッパーの厚さは、0.1mm~5mmであってもよい。
【0012】
さらに、一実施形態において、前記ストッパーが前記本体との連結の部分で有する多角形断面の一辺の長さは、1mm~5mmであってもよい。
また、一実施形態において、前記ストッパーのエッジが、テーパー状に形成されていてもよい。
【0013】
さらに、一実施形態において、前記本体とストッパーのとの付着強度(ストッパー付着強度)が、2kgf以上であってもよい。
また、一実施形態において、前記ストッパーの貫通抵抗が、0.15kgf以上であってもよい。
【0014】
さらに、一実施形態において、前記本体と前記ストッパーが、それぞれ独立して、ポリジオキサノン(PDO)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリトリメチルカーボネート(PTMC)、ポリプロピレン(PP)、ナイロン(Nylon)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から選ばれる一つ以上の共重合体を含むことができる。
【0015】
また、一実施形態において、前記医療用糸は、前記ストッパーに連結された端部でない本体の他方の端部に縫合用針が結合されたものであってもよい。
【0016】
さらに、一実施形態において、前記本体の表面は、外側に突出する複数の突起を含むことができる。
【0017】
本発明の別の態様は、長手方向に延びる本体を準備する工程;前記本体の一端部を加熱して溶融させる工程;溶融した前記本体の一端部が所定の形状を有するモールドに注入して、前記本体の端部にストッパーを形成する工程;及び前記本体及び前記ストッパーを冷却させた後、前記モールドから分離する工程;を含み、前記ストッパーが連結された本体の一端部は、円形の端面を有し、前記ストッパーは、前記本体との連結の部分で多角形の端面を有し、前記ストッパーの多角形端面の重心から各頂点までの距離の2つ以上が、前記本体一端部の円形断面の半径よりも大きい、医療用糸の製造方法が提供される。
【0018】
一実施形態において、前記溶融した本体の一端部に対して、前記ストッパーの相対的位置を調節する位置調節工程をさらに含むことができる。
【0019】
また、一実施形態において、前記本体とストッパーを冷却してモールドから分離する工程において、前記本体とストッパーを、0.01~3mpaの冷却風量で5~120秒間冷却することができる。
【0020】
さらに、一実施形態において、前記本体の一端部を加熱溶融する工程において、加熱温度が50~400℃であってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明による医療用糸は、同じ断面積の円形のストッパーを有する糸と比較して、ストッパー付着強度及び貫通抵抗に優れているため、これを使用することにより、より強固に皮膚組織に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】(a)~(f)は、本発明による医療用糸が有するストッパーの様々な端面を例示的に示す図である(図中の点線は、糸本体の円形の端面を例示的に示したものである)。
【
図2】本発明の実施例において、ストッパー付着強度の測定のために測定用ラバー(rubber)にストッパーを固定する方法を例示的に示す図である。
【
図3】本発明の実施例において、貫通抵抗測定のために測定用皮膚パッド(skin pad)にストッパーを固定する方法を例示的に示す図である。(a)はストッパーの多角形の端面の平面図、(b)はストッパーの側面図である。
【
図4】本体を直径サイズと注入速度でモールドに注入しながら、本体の曲がりの有無による「適合(曲がっていない)」/「不適合(曲がっている)」の判定基準の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の医療用糸は、本体;及び前記本体の一端部に連結されたストッパー;を含み、前記ストッパーが連結された本体の一端部は、円形の端面を有し、前記本体は、長手方向に延び、前記ストッパーは、本体と連結された部分で多角形の端面を有し、前記ストッパーの多角形断面の重心から前記ストッパーの各頂点までの距離の2つ以上が、前記本体一端部の円形断面の半径よりも大きいことを特徴とする。
【0024】
一実施形態において、前記ストッパーの多角形端面の重心から前記ストッパーの各頂点までの距離の2つ以上は、前記本体一端部の円形断面の半径の1.5倍以上であってもよく、より具体的には、2倍以上、2.5倍以上、3倍以上、3.5倍以上、4倍以上、4.5倍以上、又は5倍以上であってもよい。また、前記ストッパーの多角形端面の重心から前記ストッパーの各頂点までの距離の2つ以上が、前記本体一端部の円形断面の半径の15倍以下であってもよく、より具体的には、14.5倍以下、14倍以下、13.5倍以下、13倍以下、12.5倍以下又は12倍以下であってもよい。
【0025】
より具体的に、前記ストッパーの多角形端面の重心から前記ストッパーの各頂点までの距離の2倍以上(好ましくは3倍以上)が、前記本体一端部の円形の端面半径の1.5倍~15倍であってもよく、より具体的には、2倍~15倍であってもよく、より具体的には5倍~15倍であってもよく、より一層具体的には5倍~12倍であってもよい。
【0026】
一実施形態において、前記ストッパーは、隣接する前記本体の長手方向に対して垂直に配置され、多角柱又は多角錐の形状を有してもよい。
【0027】
一実施形態において、これに限定されるものではないが、前記ストッパーの端面の多角形は、例えば、最も単純に三角形、正方形、五角形又は六角形であってもよく、又は星形、十字形など様々な形態の多角形であってもよい。また、前記ストッパーは、このような多角形の端面に対応する多角柱又は多角錐の形状を有することができる。
【0028】
一実施形態において、前記ストッパーの厚さは、0.1mm~5mmであってもよく、より具体的には0.1mm~3mm,又は0.1mm~1mmであってもよい。ストッパーの厚さが、前記水準よりも薄すぎると、ストッパーが皮膚組織で停止せず、皮膚組織から剥がれる可能性がある。ストッパーの厚さが、前記水準よりも厚すぎると、異物感による痛みが発生する可能性がある。
【0029】
一実施形態において、前記ストッパーが、前記本体との連結の部分における多角形断面の一辺の長さは、1mm~5mmであってもよく、具体的には1mm~4mm又は2mm~4mmであってもよく、より具体的には1mm~3mm又は2mm~3mmであってもよい。
【0030】
一実施形態において、前記本体とストッパーとの間の付着強度(ストッパー付着強度)は、2kgf以上であってもよく、具体的には2.1kgf以上、2.2kgf以上、2.3kgf以上、2.4kgf以上又は2.5kgf以上であってもよい。前記ストッパー付着強度の上限は特に限定されず、例えば、10kgf以下、9kgf以下、8kgf以下又は7kgf以下であってもよいが、これに限定されない。
一実施形態において、前記ストッパーの貫通抵抗は、0.15kgf以上であってもよく、具体的には0.16kgf以上、0.17kgf以上、0.18kgf以上、0.19kgf以上又は0.2kgf以上であってもよい。前記ストッパーの貫通抵抗の上限は特に限定されず、例えば、1kgf以下、0.9kgf以下、0.8kgf以下、0.7kgf以下、0.6kgf以下又は0.5kgf以下であってもよいが、これに限定されない。
【0031】
一実施形態において、医療用糸の本体として米国薬局方(USP)による30サイズ規格の原糸を使用する場合、前記ストッパー付着強度は2.5kgf以上であってもよく、前記貫通抵抗は、0.2kgf以上であってもよく、これは同規格の原糸及び同断面積の円形のストッパーを有する糸に比べて、優れた物性である。
【0032】
一実施形態において、医療用糸の本体としてUSPによる00サイズ規格の原糸を使用する場合、前記ストッパー付着強度は4.5kgf以上であってもよく、前記ストッパーの貫通抵抗は、0.4kgf以上であってもよく、これは、同規格の原糸及び同断面積の円形のストッパーを有する糸に比べて、優れた物性である。
【0033】
一実施形態において、医療用糸の本体としてUSPによる01サイズ規格の原糸を使用する場合、前記ストッパー付着強度は5.2kgf以上であってもよく、前記ストッパーの貫通抵抗は、0.3kgf以上であってもよく、これは同規格の原糸及び同断面積の円形のストッパーを有する糸と比べて、優れた物性である。
【0034】
一実施形態において、医療用糸の本体としてUSPによる02サイズ規格の原糸を使用する場合、前記ストッパー付着強度は5.2kgf以上であってもよく、前記ストッパーの貫通抵抗は、0.3kgf以上であってもよく、これは、同規格の原糸及び同断面積の円形のストッパーを有する糸に比べて、優れた物性である。
【0035】
一実施形態において、前記本体と前記ストッパーは、同じ材料又は異なる材料から形成することができ、それぞれ独立して、ポリジオキサノン(PDO)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリトリメチルカーボネート(PTMC)、ポリプロピレン(PP)、ナイロン(Nylon)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から選ばれる一つ以上の共重合体を含むことができる。ここで、ポリジオキサノン(PDO)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)及びポリトリメチルカーボネート(PTMC)は、生体吸収性高分子材質であり、ポリプロピレン(PP)、ナイロン(Nylon)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、非生体吸収性高分子材料である。
【0036】
一実施形態において、前記本体と前記ストッパーは、同じ材料から形成することができる。例えば、ストッパーは、本体を先に形成した後、本体を溶融させた材料で形成することができる。
【0037】
一実施形態において、前記医療用糸は、前記ストッパーに連結された端部ではない本体の他方の端部に結合された縫合用針を有することができる。
【0038】
前記縫合用針は、皮膚組織に挿入され、皮膚組織を貫通できるものであれば、その種類は問わない。
【0039】
一実施形態において、前記医療用糸のストッパー連結端部でない他方の端部に縫合用針が結合された場合、前記ストッパーの多角形端面の重心から前記ストッパーの各頂点までの距離の2つ以上(より具体的には3つ以上)が、前記縫合用針外径(すなわち、針の円形の端面)の半径の1.5倍以上であってもよく、具体的には2倍以上、より具体的には2.5倍以上であってもよい。また、前記ストッパーの多角形端面の重心から前記ストッパーの各頂点までの距離の2つ以上が前記縫合用針の外径の半径の7倍以下であってもよく、具体的には6倍以下であってもよく、より具体的には5.5倍以下であってもよい。
【0040】
より具体的には、前記ストッパーの多角形端面の重心から前記ストッパーの各頂点までの距離の2つ以上(好ましくは3つ以上)が、前記縫合用針の外径の半径の1.5倍~7倍であってもよく、具体的には2倍~6倍であってもよく、より具体的には2.5倍~5.5倍であってもよい。
【0041】
一実施形態において、前記本体の表面は、外側に突出する複数の突起を含むことができる。
【0042】
前記本体は、長手方向に沿って細長く延びる形状に形成することができ、外力によって変形できるように柔軟な性質を有することができる。ここで、長手方向とは、本体の中心軸が延びる方向と理解することができる。
【0043】
前記本体の外側には、長手方向(または斜め方向)に複数の突起を提供することができ、複数の突起は本体の長手方向に対して既設定された角度を有し、本体の表面に形成することができる。例えば、複数の突起は、本体の長手方向に対して10°~45°の角度を有することができる。このように、本体の表面に所定の角度を有する突起を形成することにより、複数の突起が皮膚組織に絡ませやすくすることができる。ここで、突起は、一方向に沿って複数形成することができる。したがって、一実施形態によれば、本発明の医療用糸は、一方向タイプの返しとげのある医療用糸であってもよい。
【0044】
具体的には、第1突起は、本体の一方の表面に配置することができ、本体の他方の面に第2突起及び第3突起は、第1突起から円周方向に離間して配置することができる。そして、第1突起、第2突起及び第3突起は、複数形成され、それぞれが本体の長手方向に沿って一列に整列(又は配置)することができる。また、第1突起、第2突起及び第3突起は、互いに対して異なる角度を有するように配置することができる。
【0045】
本発明による医療用糸は、手術及び外傷により損傷した組織の一部を縫合するために使用される糸、又は皮膚組織に挿入され、皮膚の引き締めのために使用される糸である。
【0046】
一実施形態において、ストッパーのエッジは、テーパー状に形成することができ、この場合、ストッパーのエッジによって皮膚組織にかかる圧力を分散させることができ、その結果、患者の痛みを減少させることができる。
【0047】
また、ストッパーは、本体の長手方向に対して垂直に配置することができる。すなわち、ストッパーの端面と本体に対して垂直にすることができるので、医療用糸を皮膚組織に絡ませやすくすることができる。
【0048】
また、ストッパーの中心は、本体の長手方向の中心と合わせることができる。この場合、本体をストッパーの中心に配置することができるので、医療用糸がバランスよく皮膚組織に絡ませることができる。
【0049】
また、前述の突起は、本体の一方向に沿って形成され、医療用糸の一方向の移動を抑制することができ、本体の一端部にストッパーが提供されることにより、医療用糸の他方向への移動をさらに抑制することができる。すなわち、医療用糸は、突起とストッパーにより、対象組織に固定することができる。
【0050】
本発明の別の態様は、長手方向に延びる本体を準備する工程;前記本体の一端部を加熱して溶融させる工程;溶融した前記本体の一端部が所定の形状を有するモールドに注入して、前記本体の端部にストッパーを形成する工程;及び前記本体及び前記ストッパーを冷却させた後、前記モールドから分離する工程;を含み、前記ストッパーが連結された本体の一端部は、円形の端面を有し、前記ストッパーは、前記本体との連結の部分で多角形の端面を有し、前記ストッパーの多角形端面の重心から各頂点までの距離の2つ以上が、前記本体一端部の円形断面の半径よりも大きい、医療用糸の製造方法が提供される。
【0051】
一実施形態によれば、まず、本体が準備され、本体の一端部を加熱して溶融させる。具体的に、本体の一端部を溶融させるとき、本体を移送できる移送ユニットに本体が配置された後、移送ユニットの移動により、本体が加熱されたモールドに注入され、本体の一端部が加熱され溶融することができる。
【0052】
一実施形態によれば、前記本体を準備する工程は、本体表面に複数の突起を形成する工程をさらに含むことができる。
【0053】
一実施形態において、移送ユニットによってモールドに本体が注入される注入速度は、0.1~2mm/秒であってもよい。ここで、注入速度が0.1mm/秒未満であると、生産性が低下するおそれがあり、2mm/秒を超えると、本体が溶解して溶融する速度よりも注入速度が速くなり、本体が曲がったり、注入できなかったりするおそれがある。好ましくは、移送ユニットによって本体がモールドに注入される注入速度は、0.1~1mm/秒、又は0.1~0.7mm/秒であってもよい。
【0054】
一実施形態において、本体の原料と大きさに応じて適切な注入速度を確認し、その関係をする表1に示した。
図4に示すように、本体の直径サイズに応じて、注入速度を0.4mm/s~1.1mm/s範囲に調節してモールドに注入した後、本体が曲がる程度を肉眼で検査した。原糸が曲がっていたら「不適合」と判定し、本体が曲がっていなければ「適合」と判定した。前記本体の直径サイズは、バーブのない原糸の直径サイズを意味する。
【0055】
【0056】
本発明の一実施形態によれば、また、ヒータを利用してモールドを加熱することができ、加熱されるモールドの温度は50~400℃であってもよい。モールドの温度が50℃未満であると、本体が溶融せず、400℃を超えると、本体がモールドに溶解して冷却が低下されたり、本体が焦げてモールドにくっついたりする問題が発生する可能性がある。好ましくは、加熱されるモールドの温度は150~250℃であってもよい。
【0057】
その後、溶融した本体の一端部が所定形状のモールドに注入して、前記本体の一端部にストッパーを形成することができる。
【0058】
一実施形態において、所定形状を有するモールドは、前述のように多角柱又は多角錐の形状であってもよい。
【0059】
その後、本体の一端部に対するストッパーの相対的位置を調節する工程の後、本体の中心がストッパーの中心に位置するように形成することができる。
【0060】
一実施形態において、本体とストッパーとの間の相対的位置の調節は、本体を移動させる移送ユニット又はモールドの位置を調節することによって行うことができる。
【0061】
その後、本体とストッパーを冷却させた後、モールドから分離する工程を経て、本体の一端部にストッパーが形成された医療用糸を製造することができる。
【0062】
一実施形態において、前記冷却工程において、冷却風量は、0.01~4.5mpa、0.01~4mpa、0.01~3.5mpa、0.01~3mpa、0.01~2mpa、0.01~1mpa、0.01~0.5mpa、0.01~0.3mpa、又は0.01~0.2mpaであってもよい。冷却風量が0.01mpa未満のとき、冷却が不充分で成形された製品が排出されない場合があり、冷却風量が4.5mpaを超えると、冷却が過剰になり、本体とストッパーとの付着力が低下する問題が発生する可能性がある。
【0063】
より具体的に、前記冷却風量は、0.01mpa以上、0.02mpa以上、0.03mpa以上、0.04mpa以上、0.05mpa以上、0.06mpa以上、0.07mpa以上、0.08mpa以上、又は0.09mpa以上であってもよく、4.5mpa以下、4.0mpa以下、3.5mpa以下、3.0mpa以下、2.5mpa以下、2.0mpa以下、1.5mpa以下、1.0mpa以下、0.5mpa以下、0.4mpa以下、0.3mpa以下、0.2mpa以下又は0.1mpa以下であってもよい。
【0064】
一実施形態において、前記冷却工程において、冷却時間は、5~120秒であってもよく、より具体的には、5~100秒、5~80秒、5~60秒、5~50秒、10~100秒、15~80秒、20~60秒、25~50秒、30~50秒、25~45秒、30~45秒、又は35~45秒であってもよい。冷却時間が5秒未満のとき、成形不良が発生する場合があり、120秒を超えると、生産速度が低下する場合がある。本発明の一実施形態によれば、冷却風量は、0.1mpa以下であり、冷却時間は35~45秒であってもよい。
【0065】
一方、ストッパーを形成するために、本体をモールドに注入する速度は、モールドの大きさと本体の原料に応じて異なる。
【0066】
一実施形態において、PDOの場合は0.8mm/s、PGCLの場合は0.6mm/s、冷却風量の場合は0.5mpa、待機時間としては5秒など一定の条件で、ストッパー製造時における形状及び付着強度を測定した。その結果を下記表2に示す。下記表3に示す基準に従って、ストッパー付着強度の優良/不適合と評価した。すなわち、測定されたストッパーの付着強度が表3の許基準より高かった場合「優良」、測定値が基準を下回った場合「不適合」と判断した。下記表3の本体の直径は、バーブのない原糸の直径サイズを意味する。
【0067】
【0068】
【0069】
以下、実施例及び比較例を通じて本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0070】
以下の実施例及び比較例で使用された原糸は、下記表4に示される。
【0071】
【0072】
サンプルの作製
医療用糸本体として前記表4に示す原糸の端部を加熱し、正三角形断面のストッパーを有する実施例の医療用糸を製造した(0.5mpa冷却風量条件)。
【0073】
実施例1、2及び4のストッパーの正三角形断面の一辺の長さは3mmであり、実施例3及び5のストッパーの正三角形断面の一辺の長さは2mmであった。
【0074】
また、前記表4に示す原糸の端部を加熱して、実施例のストッパーとほぼ同じ面積の円形の端面のストッパーを有する比較例の医療用糸を製造した(0.5mpa冷却風量条件)。
【0075】
比較例1、2及び4のストッパーの円形断面の直径は2.38mmであり、比較例3及び5のストッパーの円形断面の直径は1.62mmであった。
【0076】
実施例1において、ストッパーの端面である正三角形の重心から各頂点までの距離は、ストッパーが連結された本体一端部の円形断面の半径の5.7倍~7倍であった。
【0077】
実施例2で、ストッパーの端面である正三角形の重心から各頂点までの距離は、ストッパーに連結された本体一端部の円形断面の半径の8.6倍~9.9倍であった。
【0078】
実施例3において、ストッパーの端面である正三角形の重心から各頂点までの距離は、ストッパーに連結された本体一端部の円形断面の半径の9.2倍~11.6倍であった。
【0079】
実施例4において、ストッパーの端面である正三角形の重心から各頂点までの距離は、ストッパーに連結された本体一端部の円形断面の半径の8.6倍~7倍であった。
【0080】
実施例5において、ストッパーの端面である正三角形の重心から各頂点までの距離は、ストッパーに連結された本体一端部の円形断面の半径の9.2倍~11.6倍であった。
【0081】
試験項目及び方法
実施例及び比較例の各医療用糸について、以下の方法でストッパー付着強度及び貫通抵抗を測定した。
(1)ストッパー付着強度
ストッパーが医療用糸の本体と切れる力を測定する試験
1)機器測定条件
-ロードセル:50kgf
-伸展範囲:200mm
-速度:300mm/分
-長さ:130mm
-試験回数:各6回
【0082】
2)試験方法
テスト用サンプルを準備し、Tissue Drag測定用ゴム(rubber)に針を通し、針をゆっくり引っ張ってストッパーをゴムに固定した(
図2参照)。針が付着している部分を引張強度機の上側グリップに固定して測定した。
【0083】
(2)貫通抵抗
ストッパーをスキンパッドに固定した後、ストッパーが皮膚を貫通する際のストッパーの強さを測定する試験
1)機器測定条件
-ロードセル:50kgf
-伸展範囲:200mm
-速度:300mm/分
-長さ:130mm
-試験回数:各5回
【0084】
2)試験方法
テスト用サンプルを準備し、スキンパッドにストッパーを固定し(
図3参照)、スキンパッドを引張試験機の下部に固定し、他方を上側グリップに固定した後、測定した。
【0085】
試験結果
1)ストッパー付着強力(最大荷重)
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
2)貫通抵抗(最大荷重)
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
前記試験結果から分かるように、本発明による医療用糸は、同じ断面積の円形のストッパーを有する糸と比較して、各段に優れたストッパー端部付着強度及び貫通抵抗を示すので、これを使用することにより、端部をよりしっかりと皮膚組織に固定することができる。