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特許7445805無水糖含有量が低減した糖縮合物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】無水糖含有量が低減した糖縮合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12C 5/02 20060101AFI20240229BHJP
   C12G 3/04 20190101ALI20240229BHJP
   A23L 33/21 20160101ALI20240229BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20240229BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20240229BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240229BHJP
   C08B 37/00 20060101ALN20240229BHJP
【FI】
C12C5/02
C12G3/04
A23L33/21
A23L2/52
A23L2/00 G
A23L5/00 K
C08B37/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023082678
(22)【出願日】2023-05-19
【審査請求日】2023-07-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231453
【氏名又は名称】日本食品化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平井 宏和
(72)【発明者】
【氏名】石倉 真以
【審査官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-076044(JP,A)
【文献】特開2017-000019(JP,A)
【文献】日本食品化工株式会社,製品案内 PRODUCTS INFORMATION,2017年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G
C12C
C08B
C07H
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DEが20~75であり、かつ、グルコース含有量が50質量%以下である澱粉分解物を、活性炭を触媒として加熱縮合させる工程を含む糖縮合物又はその食品加工処理物の製造方法を実施し、次いで、得られた糖縮合物又はその食品加工処理物を原料の一部として使用してビールテイスト飲料を製造する、糖質濃度が1.1g/100mL未満のビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項2】
前記澱粉分解物がマルトースを含有し、前記澱粉分解物のマルトース(無水糖を除く)含有量が50質量%以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記糖縮合物の食物繊維含有量が50%以上である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記澱粉分解物のグルコース含有量が10質量%以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記糖縮合物の食物繊維含有量(%)に対する無水糖の含有量(%)(食物繊維測定時)の割合が0.04150以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ビールテイスト飲料の糖質濃度が0.5g/100mL未満である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項7】
前記ビールテイスト飲料が、ビールテイスト発酵飲料である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項8】
前記糖縮合物又はその食品加工処理物を糖化前、糖化後又は発酵前のいずれかのタイミングで仕込み液に添加する、請求項7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖縮合物の製造方法に関し、詳細には加熱縮合反応で生じうる無水糖(アンヒドログルコース等)の含有量が低減した糖縮合物及びその製造方法並びに該糖縮合物の食品への利用に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性食物繊維素材の製法として、糖質を無触媒又は各種触媒存在下で加熱処理することで糖質を縮合反応させ、糖縮合物を製造する方法が報告されている。例えば、澱粉に塩酸を触媒として添加し酸加水分解と加熱縮合を同時に反応させることで焙焼デキストリンを製造し、更に酵素処理し必要に応じてクロマト分画することで難消化性デキストリンを製造できることが知られている(特許文献1)。グルコース及びソルビトールに触媒としてクエン酸を添加し加熱縮合させることでポリデキストロースを製造できることも知られている(特許文献2)。更に、様々な糖質を原料に触媒として活性炭添加し、効率良く着色度の低い糖縮合物を得る手法も報告されている(特許文献3)。
【0003】
糖質原料を加熱して製造される糖縮合物はその反応過程で無水糖(アンヒドログルコース等)の苦味を持つ低分子の糖質が生成すること、また低分子糖質が多少残存することが知られている。例えばポリデキストロースは僅かに苦味や収斂味を有しており、食品へ添加する際に好ましくない味質から使用量が制限されていた。ポリデキストロースの苦味や収斂味はアンヒドログルコースの存在に起因し、色及びアンヒドログルコース含量は有機溶剤及び食品用に認められた漂白剤である過酸化水素、過酸化ベンゾイル、及び亜塩素酸ナトリウムによる処理により低減できることが知られている(特許文献4)。
【0004】
ここで、無水糖は、糖分子内の2個の水酸基の間で脱水反応が起こり、酸素を含む複素環が形成されたアンヒドロ糖である。アンヒドロ糖としては、グルコース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、パノース、マルトトリオースの、それぞれの無水物であるレボグルコサン、マンノサン、ガラクトサン、マルトサン、セロビオサン、パノサン、マルトトリオサン等が挙げられる。例えば無水糖の一つである1,6-アンヒドロ-β-D-グルコピラノースは、レボグルコサンとも称され、ポリデキストロース等の食品素材に広く分布している糖類の一種であり(非特許文献1)、例えば、一般的なポリデキストロースにおける存在量は、4%以下であることが知られている(非特許文献2)。
【0005】
最近の研究ではグルコース、セロビオース、セルロースの熱分解により生じる各種無水糖の形成経路が報告されており、1,6-アンヒドロ-β-D-グルコピラノースが最も生成しやすく、次いで1,6-アンヒドロ-β-D-グルコフラノースが生成しやすいと考えられている(非特許文献3)。これら水酸基が少ない特異的な構造に起因したアンヒドロ糖は苦みや収斂味を有しており、食品への配合時に好ましくないと考えられている(非特許文献4、特許文献5)。また、無水糖は特定の代謝経路を有する微生物にしか資化されないことが知られている(特許文献6)。
【0006】
ところで、近年では健康志向の高まりにより、低糖質又は糖質ゼロのビールテイスト飲料が求められ、糖質含有量が低減されたビールテイスト飲料を目指して様々な技術が開発されてきた。例えば、糖質ゼロのビールテイスト発酵アルコール飲料を安定的に製造する技術として、発酵により資化される資化性単糖類と資化性二糖類を糖源として用いる技術(特許文献7)が知られている。また、資化されない水溶性食物繊維を原材料の一部として用いる技術(特許文献8)が知られている。このビールテイスト飲料は、水溶性食物繊維である難消化性デキストリンやポリデキストロースをビールテイスト飲料の製造工程の発酵工程前に使用し発酵後に残留する糖質を基準以下の低糖質とするか、発酵工程後に低糖質となるよう制限された範囲で添加することで、低カロリーでボディ感を有するように設計された商品が多い。
【0007】
これら低糖質を目的としたビールテイスト飲料は、いずれも糖質含有量を下げるとともにコク味付与と酒税法上必要なエキス分を確保するために、無水糖等の酵母非資化性糖質の少ない水溶性食物繊維(純度の高い水溶性食物繊維)でなければならない。しかし、焙焼デキストリンは、澱粉を原料に塩酸を触媒として加熱を行うと、澱粉から遊離したグルコースがランダムに他の分子の水酸基に転移して、澱粉が本来有する1→4及び1→6グルコシド結合に加え、1→2及び1→3グルコシド結合等が新たに生成するほか、遊離したグルコースの還元末端基が分子内脱水し、レボグルコサンが生成するとともに一部のレボグルコサンは容易に他の分子へ転移する。焙焼デキストリンを酵素処理して得られる難消化性デキストリンは、焙焼デキストリンに含まれるレボグルコサンに加えて酵素処理によって高分子糖に結合していたレボグルコサン等の無水糖が遊離する。また、ポリデキストロースは、グルコース及びソルビトールを原料にクエン酸又はリン酸を触媒として加熱を行うため、焙焼デキストリンと同様にグルコースからレボグルコサンが生成する。また、酵母非資化性単糖であるソルビトールが遊離し、また、グルコ-スとソルビトール、ソルビトール同士が結合した非資化性二糖類が生成する。よって、これら酵母非資化性糖類を効率的に除くために予め樹脂分画や逆浸透膜等を行う方法や、水溶性食物繊維を糖質加水分解酵素によって処理し酵母資化性糖を予め遊離させたのちに酵母発酵に供する方法が知られている(特許文献9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平2-154664号公報
【文献】特開昭50-142699号公報
【文献】特開2013-76044号公報
【文献】米国特許4622233号公報
【文献】特開昭62-210958号公報
【文献】特開2018-139554号公報
【文献】特開2009-131202号公報
【文献】特開2006-6342号公報
【文献】特開2018-57316号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】J. Appl. Glycosci. 2000, Vol. 47, No. 3 & 4, 327-333
【文献】繊維学会誌48巻4号184-189頁(1992)
【文献】Energy Fuels 2017, 31(8): 8291-8299
【文献】Journal of Food Science 1975, 40(4): 784-787
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
糖質原料を加熱して製造される糖縮合物に含まれる無水糖を低減する樹脂分画や逆浸透膜処理は、工業レベルでは大規模な処理設備が必要であり、また、上記方法では、取り除かれた無水糖は全て廃棄若しくは付加価値の低い糖質として処理する必要がある。すなわち、既存の方法は、製造効率、製造コスト、環境負荷等の点で課題を有していた。また、糖縮合物をビールテイスト発酵アルコール飲料の発酵原料として使用すると無水糖は酵母発酵されず糖質として残存するため、低糖質ビールテイスト飲料を提供しようとする場合には、より低い糖質含有量を達成することが難しくなるという課題があった。
【0011】
すなわち、本発明は無水糖含有量が低減した糖縮合物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば以下の発明が提供される。
[1]DEが20~75であり、かつ、グルコース含有量が50質量%以下の澱粉分解物を、活性炭を触媒として加熱縮合させる工程を含む、糖縮合物又はその食品加工処理物の製造方法。
[2]前記澱粉分解物がマルトースを含有し、前記澱粉分解物のマルトース(無水糖を除く)含有量が50質量%以上である、上記[1]に記載の製造方法。
[3]前記糖縮合物の食物繊維含有量が50%以上である、上記[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4]ビールテイスト飲料の原料に用いるための糖質組成物の製造方法である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]上記[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法に従って糖縮合物又はその食品加工処理物を製造し、或いは上記[4]に記載の製造方法に従ってビールテイスト飲料の原料に用いるための糖質組成物を製造し、次いで、得られた糖縮合物又はその食品加工処理物、或いは得られた糖質組成物を原料の一部として使用してビールテイスト飲料を製造する、ビールテイスト飲料の製造方法。
[6]上記[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法により製造された、糖縮合物又はその食品加工処理物。
[7]食物繊維含有量が50%以上であり、かつ、食物繊維の含有量(%)(酵素処理後の食物繊維測定時)に対する無水糖の含有量(%)(食物繊維測定時)の割合が0.04150以下である、上記[6]に記載の糖縮合物又はその食品加工処理物。
[8]上記[6]又は[7]に記載の糖縮合物又はその食品加工処理物を含有する、ビールテイスト飲料の原料に用いるための糖質組成物。
[9]上記[6]又は[7]に記載の糖縮合物又はその食品加工処理物を原料の一部として含む、ビールテイスト飲料。
[10]ビールテイスト飲料の原料としての、上記[6]又は[7]に記載の糖縮合物又はその食品加工処理物の使用。
【0013】
本発明の製造方法によれば飲食品への利用価値の高い糖縮合物を、副生成物である無水糖の含有比率を低く抑えつつ製造できることから、製造効率や製造コストの面で有利である。また、従来では糖質低減を目的としたビールテイスト飲料の添加において、これら糖縮合反応物から酵母により資化されない無水糖を分離・除去しなければならず、その多くが産業廃棄物として処理されていたが、本発明の製造方法によれば糖縮合物の製造過程でこのような無水糖生成量が低減することから、本発明は省資源や環境負荷低減に資する発明であるともいえ、環境面でも有利である。
【発明の具体的説明】
【0014】
<<無水糖含有量が低減した糖縮合物及びその製造方法>>
本発明の製造方法では、DEが20~75であり、かつ、グルコース含有量が50質量%以下である澱粉分解物を糖縮合反応の基質として用いることを特徴とする。本発明における澱粉分解物とは澱粉を加水分解することにより得られる糖組成物、すなわち、澱粉の加水分解物を意味する。本発明における澱粉分解物は、その製造方法に特に制限は無く、澱粉を酸分解したものでも、酵素分解したものでも良い。澱粉を酵素分解する際の澱粉分解酵素に特に制限はないが、例えば、α-アミラーゼやβ-アミラーゼ、イソアミラーゼ及びプルラナーゼ等の枝切り酵素を用いることができる。本発明の製造方法ではまた、加水分解に加えて、α-グルコシダーゼ等の糖転移酵素等により分岐構造を導入した澱粉分解物(例えば、分岐デキストリン、イソマルトオリゴ糖等)も使用することができる。
【0015】
本発明における「DE(Dextrose Equivalent)」とは、澱粉分解物の分解度合いの指標であり、試料中の還元糖をブドウ糖として固形分に対する百分率で示した値である。糖縮合物中の食物繊維含量を高め、無水糖含有量の低い糖縮合物を得る観点から、DEの上限値は75以下であることが望ましく、70以下であることが好ましく、65以下であることが更に好ましく、55以下であることが最も好ましい。また、DEの下限値は、20以上であることが望ましく、25以上であることが好ましく、30以上であることがより、好ましく、35以上であることが更に好ましく、45以上であることが最も好ましい。
【0016】
澱粉分解物のグルコース含有量に関しては、糖縮合物中の無水糖含有量が低減された糖縮合物を得る観点から、澱粉分解物中のグルコース含有量を50%以下とすることができ、好ましくは45%以下、25%以下、又は10%以下とすることができる。
【0017】
本発明の製造方法に用いられる澱粉分解物は、DEが20~75であり、かつ、グルコース含有量が50質量%以下であれば、特に制限はなく、2~10個のグルコースが結合したオリゴ糖(マルトース、イソマルトース、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖等)、及びデキストリン等の多糖、並びにこれらの還元物から選択される1種又は2種以上の組合せ等が含まれていてもよい。
【0018】
澱粉分解物のマルトース含有量に関しては、糖縮合物中の無水糖含有量が低減された糖縮合物を得る観点から、澱粉分解物中のマルトース含有量を50%以上とすることができ、好ましくは60%以上、70%以上、又は80%以上とすることができる。
【0019】
また、本発明の製造方法に用いられる澱粉分解物は、その性状も特に制限はなく、結晶化した糖質及び/又は非結晶性の糖質粉末であっても、液状の糖質であってもよい。結晶品(無水マルトース結晶、含水マルトース結晶等)、液状品(液状マルトース、水飴等)、非結晶粉末品(粉飴等)のいずれでもよいが、ハンドリングや製造コストを考慮すると液状品でかつ低水分量であるものが好ましい。
【0020】
本発明の製造方法では、また、澱粉分解物の誘導体を糖縮合反応の基質に利用することができる。澱粉分解物の誘導体としては、糖酸等の酸化物、糖アルコール等の還元物、アミノ糖、エーテル化糖、ハロゲン化糖、リン酸化糖等の修飾物が挙げられるが、製造された糖縮合物を飲食品に利用することを意図している場合には飲食品として利用可能な誘導体を用いることができる。飲食品として利用可能な、澱粉分解物の誘導体の非制限的な例としては、ソルビトール、マルチトール、グルコサミン、グルコース-6-リン酸等が挙げられる。
【0021】
本発明の製造方法に使用する澱粉分解物は、上記の通り澱粉の分解により得ることができ、具体的な製造方法を例示すると、澱粉を耐熱性α-アミラーゼで液化した後、α-アミラーゼ等のα-グルカンを加水分解する酵素及び/又は枝切り酵素で加水分解することにより調製することができる。澱粉分解物の具体的な調製例は以下の通りである。すなわち、澱粉を15~35質量%のスラリー(懸濁液)とした後、例えば、アルカリ性カルシウム塩を用いpH5.0~7.0に調整し、この澱粉スラリーに耐熱性α-アミラーゼを加え、ジェットクッカーやオートクレーブ等の加熱装置を用いて100~130℃に加熱し、30~120分間程度加水分解することによって、DE6~10程度、好ましくは7~9程度の液化液を調製することができる。このときの液化液のDEが低い場合、得られる澱粉分解物に高分子糖が多く残存してしまい、澱粉分解物のDEが低くなる傾向があり、逆に液化液のDEが高い場合、甘味度の高い低分子糖が多く生成され、澱粉分解物のDEが高くなる傾向がある。
【0022】
次に、糖化反応に用いる酵素の反応可能pHとなるよう、液化液のpHを例えば、塩酸又は苛性ソーダ等を用いて調整し、α-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、β-アミラーゼ、及び枝切り酵素等を添加して50~60℃で12~60時間反応させることができる。各酵素添加量及び反応時間は、澱粉分解物の糖組成を確認しながら所望の比率を決定することができる。少量の酵素添加や、短い反応時間等により、加水分解反応が十分に進行しないと、DEが低い高分子糖が多く含まれる澱粉分解物となる傾向にある。一方、多量の酵素添加や、長い反応時間等により、加水分解反応が進行すると、甘味度の高い低分子糖が多く生成され、DEが高い澱粉分解物となる傾向にある。
【0023】
本発明の製造方法に使用する澱粉分解物の調製においては、上記手順の後、澱粉分解物の白濁を防止するため、例えば、80~90℃で1~5時間程度保持し、糖化反応液のヨウ素-澱粉反応の消失を確認することができる。次いで、pHを4とすることで酵素反応を停止させ、その後、必要により、活性炭等による脱色ろ過、イオン交換樹脂等に拠る脱塩処理した後、真空濃縮により濃縮して液状の澱粉分解物とすることができる。
【0024】
本発明において使用するマルトースを主体とした澱粉分解物は、その製造方法に特に制限はないが、糖化反応時にマルトースを生成するβ-アミラーゼを澱粉に作用させて得ることができる。β-アミラーゼ単独ではマルトース含量が55%程度となるが、枝切り酵素であるプルラナーゼ又はイソアミアーゼを共存作用することでマルトース含量を70%以上に高めることができる。具体的には澱粉濃度20~30%、DE2~10程度の液化液にβ-アミラーゼと枝切り酵素を添加し、使用酵素に応じた好適なpH、温度で反応させることで実施することができる。反応pHは5~6、温度は40~70℃の範囲で24~48時間反応させることができるが、目的とする糖組成にするために適宜反応条件を調整することができる。糖化反応後は、必要に応じてろ過、脱塩、脱色等の精製を行い、濃縮又は粉末化及び結晶化の処理を行ってもよい。
【0025】
本発明において使用する分岐構造を導入した澱粉分解物は、その製造方法に特に制限はないが、液化液にα-グルコシダーゼ等の糖転移酵素を作用させることで安価かつ効率的に製造可能である。具体的には、澱粉分解物の5~50%溶液に糖転移酵素を添加し、使用酵素に応じた好適なpH、温度で反応させる。反応は通常、pH4~9の範囲で実施することができ、好適な反応pHはpH5~7の範囲である。反応は通常、70℃付近までの温度範囲で実施することができ、好適な反応温度は40~60℃の範囲である。酵素の種類と使用量、反応時間は密接に関係しており、目的とする酵素反応の進行により適宜反応時間を調節することができ、通常は15~96時間程度反応させる。目的組成物の生成を確認後、酵素反応を停止させ、必要に応じてろ過、脱塩、脱色等の精製を行い、濃縮又は粉末化してもよい。
【0026】
本発明において使用する澱粉分解物の調製においてはさらに、クロマト分離装置や膜分画装置を用いて分画処理を行うこともできる。
【0027】
本発明の製造方法に使用する澱粉分解物は、上記のようにして調製したもの以外に、市販品を使用してもよい。本発明の澱粉分解物として利用可能な市販品としては、実施例記載の日本食品化工社製の各種製品等が挙げられる。
【0028】
本発明の糖縮合物とは、澱粉分解物を活性炭触媒の存在下で加熱処理し、縮合反応させることで得られる糖の重合体をいい、重合度が2以上のものであればその構造は特に限定されない。縮合反応により得られる前記糖縮合物は、その糖残基の結合様式がランダムであるため、消化酵素による加水分解を受け難く、水溶性食物繊維としての機能を有する。
【0029】
本発明の糖縮合物の食物繊維含量は、50%以上のものが望ましく、好ましくは食物繊維含量が60%以上、70%以上、80%以上、又は90%以上のものを用いることができる。ここで、食物繊維含量(%)は後述する高速液体クロマトグラフ法(酵素-HPLC法)に準じて測定されたものとする。
【0030】
本発明の製造方法では澱粉分解物又はその誘導体を糖縮合反応させて糖縮合物を製造する。ここで、「糖縮合反応」とは、糖質同士を縮合重合させて糖縮合物を得る反応をいい、典型的には、2分子の糖質から水分子が離脱して糖質が重合するような反応をいう。
【0031】
本発明の製造方法は、糖縮合反応の触媒として活性炭を使用する。活性炭を触媒として使用する糖縮合反応は、例えば、特許文献3の記載に従って実施することができる。
【0032】
本発明の製造方法において糖縮合反応の触媒として使用できる活性炭としては、水蒸気炭、塩化亜鉛炭、スルホン化活性炭、酸化活性炭等が挙げられ、製造された糖縮合物を食品に利用することを考慮すると、厚生労働省による食品添加物リストに記載された素材が好ましい。また、各種触媒を組み合わせて使用してもよい。その形状も粒状、粉末状、繊維状、板状、ハニカム状等特に制限は無い。
【0033】
本発明の製造方法において、活性炭を糖縮合反応の触媒として用いる場合には、糖縮合反応を100℃以上、好ましくは、基質となる澱粉分解物の融点以上の温度で実施することができるが、反応効率の観点から100℃~300℃、好ましくは、100℃~280℃、より好ましくは、170℃~280℃の温度範囲で実施することができる。反応時間は縮合反応の進行度合いに従って調整できるが、反応産物中の食物繊維含量の割合が50%以上となるように調整した場合には、例えば、反応温度160℃で5~180分、反応温度180℃で1~180分、反応温度200℃で1~180分とすることができる。反応機器の構造は常圧方式又は減圧方式により異なるが、100℃~300℃の加熱条件を満たす機械であれば特に制限はない。例えば、棚式熱風乾燥機、薄膜式蒸発器、フラッシュエバポレーター、減圧乾燥機、熱風乾燥機、スチームジャケットスクリューコンベヤー、ドラムドライヤー、エクストルーダー、ウォームシャフト反応機、ニーダー等が挙げられる。また、反応機器は連続化も可能である。
【0034】
本発明の製造方法では、糖縮合反応を常圧条件下或いは減圧条件下で実施することができる。糖縮合反応を減圧条件下で実施した場合には反応生成物の着色度が低下するため有利である。
【0035】
本発明の製造方法では、糖縮合反応により得られた糖縮合物をそのまま飲食品(例えば、ビールテイスト飲料)に供してもよい。添加先の飲食品がビールテイスト飲料である場合には、ビールテイスト飲料中の糖質を低減させる目的から糖縮合物を含む糖質組成物を糖質分解酵素で処理して酵素処理糖質組成物を得て、その酵素処理糖質組成物をビールテイスト飲料製造工程における発酵工程前に添加し、酵母資化性糖を酵母により資化させて、発酵液から除去ないし低減することが望ましい。
【0036】
本発明の製造方法により製造された糖縮合物は、上記手法で得られた糖縮合物をそのまま用いても良く、或いは、食物繊維含量の増加や糖質の低減、着色の低減等を目的として食品加工上許容される処理が施された糖縮合物の各種処理物(本発明において「食品加工処理物」という)を用いても良い。糖縮合物の食品加工処理物としては、例えば、糖縮合物の酵素処理物;糖縮合物又はその酵素処理物の分画処理物;或いは糖縮合物、前記酵素処理物又は前記分画処理物の還元処理物が挙げられる。
【0037】
本発明において「糖縮合物の酵素処理物」は、糖縮合物を糖質分解酵素で酵素処理して得ることができる。当該処理により糖縮合物中の消化性部位を分解することができる。また、糖縮合物から酵母資化性糖を遊離することができる。
【0038】
使用する糖質分解酵素としては特に制限は無いが、例えば、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、アミログルコシダーゼ、α-グルコシダーゼ、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ、β-グルコシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-マンノシダーゼ、β-フルクトシダーゼ、セロビアーゼ、ゲンチオビアーゼ等を挙げることができ食品として利用可能な酵素であれば特段制限は無い。酵母資化性糖を遊離させるという点から、α-アミラーゼ、グルコアミラーゼを用いることが好ましく、また、酵母非資化性糖であるβ結合を含む糖質を分解し酵母資化性糖を遊離させるという点から、β-グルコシダーゼを用いるのが好ましく、さらに好ましくは、これら酵素の市販品が挙げられる。酵素処理時の基質濃度、反応温度、反応時間等は使用する酵素の特性に合わせて適宜調整すればよい。上記酵素処理により、糖縮合物中の酵母資化性糖を遊離させたのちに酵母資化性糖を酵母発酵することで糖縮合物の食物繊維含量を高めることができる。
【0039】
本発明において「分画処理物」は、糖縮合物及び/又はその酵素処理物を、分画処理し、特定重合度(例えば、重合度1~2、1~3、1~4又は1~5)の糖質を除去ないし低減したものをいう。「分画処理」は、固形分当たりの低分子糖含量を規定以下にすることができる処理であれば特に制限はなく、その分離方法は当業者に周知の手段を利用することができる。例えば、膜分離、ゲルろ過クロマトグラフィー、カーボン-セライトカラムクロマトグラフィー、強酸性陽イオン交換カラムクロマトグラフィー、エタノール沈殿、溶媒沈殿等当業者に周知の手段を分画処理に使用することができる。
【0040】
本発明においてはまた、本発明の糖縮合物及びその酵素処理物並びにそれらの分画処理物(以下、「本発明の糖縮合物等」ということがある)をさらに還元処理に付してもよい。すなわち、本発明において「還元処理物」には、本発明の糖縮合物等の還元処理物も含まれるものとする。本発明において「還元処理」は、糖の還元末端のグルコシル基のアルデヒド基を水酸基に還元する処理をいう。還元処理方法は当業者に周知であり、例えば、ヒドリド還元剤を用いる方法、プロトン性溶媒中の金属を用いる方法、電解還元方法、接触水素化反応方法が挙げられる。本発明においては、少量の糖アルコールを調製する場合にはヒドリド還元剤を用いる方法が簡便で、かつ、特殊な装置を必要とせず好都合であり、一方で、工業的に大規模に実施する場合には、経済性に優れ、副生成物も少ないという点から、接触水素化反応を用いる方法が好ましい。「接触水素化反応」とは、触媒の存在下、不飽和有機化合物の二重結合部に水素を添加する反応であり、一般に水添反応ともいわれている。還元処理を実施することにより、本発明の糖縮合物等の着色を低減したり、酸・アルカリに対する安定性を高めたり、加熱による褐変反応やアミノ酸、タンパク質とのメイラード反応を抑制したりすることができる。
【0041】
本発明の糖縮合物又はその食品加工処理物は、必要に応じて活性炭により脱色させたもの、適当なイオン交換樹脂によりイオン性成分を除去したものを濃縮してもよい。保存性やその後の用途においては、脱色、イオン除去したものを微生物の繁殖が問題とならない程度の水分活性となるまで濃縮することが好適である。或いは、用途によっては利用しやすいように、乾燥させて、粉末とすることもできる。乾燥は、通常、凍結乾燥或いは噴霧乾燥やドラム乾燥等の方法が利用できる。乾燥物は、必要により粉砕することが望ましい。すなわち、本発明の糖縮合物又はその食品加工処理物の態様は、その用途に応じて好適な性状を選択することができる。
【0042】
本発明の製造方法ではグルコース含有量を低減させた澱粉分解物を出発原料として利用し、高分子量の糖縮合物を合成することができる。本発明の製造方法により得られる糖縮合物は、糖縮合物と共に、グルコース等の単糖や、マルトース、イソマルトース等の二糖を含有しうる。すなわち、本発明の製造方法は、糖縮合物又はその食品加工処理物を含む糖質組成物の製造方法と言い換えることもできる。
【0043】
本発明の製造方法により製造された糖縮合物は無水糖の含有量が低減されているという特徴を有する。ここで、「無水糖」は無水単糖、無水単糖と糖類とが結合した糖、又は無水単糖同士が結合した糖のことを意味し、具体的には、後記実施例で述べる高速液体クロマトグラフィー条件におけるマルトトリオースのピーク溶出位置を指標とし、マルトトリオース、β結合のグルコオリゴ二糖、α結合のグルコオリゴ二糖の順番の後に、溶出する糖である。本発明において無水単糖としては、グルコースの無水物である1,6-アンヒドログルコフラノース(AGF)及び1,6-アンヒドログルコピラノース(AGP)等が挙げられる。無水糖は、その他にもマルトース、セロビオース、パノース、マルトトリオース等の、それぞれの無水物であるマルトサン、セロビオサン、パノサン、マルトトリオサン等が挙げられ、これらは高速液体クロマトグラフィーによる分析でピークとして現れ、食品表示法上の糖質として算出される。無水単糖を除くこれらは本発明においては総量として「無水糖類」と称する。
【0044】
本発明の糖縮合物の無水糖の含有量は、例えば、食物繊維含有量(%)に対する無水糖の含有量(%)(食物繊維測定時)の割合、つまり、糖縮合物(或いは糖縮合物を含む糖質組成物)中の、食物繊維含有量(%)に対する無水糖の含有割合[無水糖(%)/食物繊維(%)]で表すことができる。本発明の糖縮合物では、この[無水糖(%)/食物繊維(%)]の割合を0.04150以下とすることができ、好ましくは0.04100以下、又は0.04000以下である。ここで無水糖(%)は、糖縮合物(或いは糖縮合物を含む糖質組成物)中の無水糖類、AGF及びAGPのそれぞれの含有量(%)の合計値とすることができる。
【0045】
<<ビールテイスト飲料及びその製造方法>>
本発明の糖縮合物又はその食品加工処理物は、食物繊維含有量が豊富であるとともに、無水糖の含有量が低いため、ビールテイスト飲料の原料用糖質に適している。本発明の糖縮合物又はその食品加工処理物をビールテイスト飲料の原料用糖質として用いる場合、糖縮合物又はその食品加工処理物をそのままビールテイスト飲料に供してもよく、また、ビールテイスト飲料中の糖質をより低減させる目的から糖縮合物又はその食品加工処理物を含む使用原料を糖質分解酵素で処理し、酵素処理した使用原料をビールテイスト飲料製造工程における発酵工程前に発酵前液に添加し、ビール酵母により酵母資化性糖を除去ないし低減する方法で供してもよい。
【0046】
また、本発明による糖縮合物をビールテイスト飲料の原料として配合する際には、酵母発酵により酵母資化性糖が資化され、酵母非資化性糖や食物繊維が必要なエキス分として残存するように配合することが望ましい。その際は糖質となり得る酵母非資化性糖や無水糖が予め低減されているだけでなく、食物繊維含量が高いことが望ましい。
【0047】
本発明のビールテイスト飲料は、ビール様の風味を有する炭酸飲料であり、特に断わりがない場合、酵母による発酵工程の有無やアルコールの有無に拘わらず、ビール風味を有するいずれの炭酸飲料をも包含する。本発明のビールテイスト飲料の種類としては、例えば、日本の酒税法上の名称により発泡酒、ビール、リキュール類、その他雑酒が含まれ、また、低アルコールの発酵飲料(例えばアルコール分1%未満の発酵飲料)、スピリッツ類、ノンアルコールのビールテイスト飲料、ビールテイストの清涼飲料等も含まれる。
【0048】
本発明のビールテイスト飲料のアルコール分は特に限定されないが、好ましくは0~40v/v%、より好ましくは0.5~20v/v%、さらに好ましくは1~15v/v%である。特にビールや、発泡酒といったビールテイスト飲料として消費者に好んで飲用されるアルコールと同程度の濃度、すなわち、1~7v/v%の範囲であることが望ましいが、特に限定されるものではない。
【0049】
本発明の糖縮合物を原料の一部として使用したビールテイスト飲料は、糖質濃度が低減された低糖質のビールテイスト飲料として提供することができる。具体的には、本発明のビールテイスト飲料の糖質濃度は、1.1g/100mL未満とすることができ、好ましくは0.5g/100mL未満とすることができる。
【0050】
本発明のビールテイスト飲料は、本発明の製造方法により製造した糖縮合物又はその食品加工処理物(或いはそれら両方又はいずれかを含む糖質組成物)を、ビールテイスト飲料の原料の一部として配合することにより製造することができる。本発明のビールテイスト飲料がビールテイスト発酵アルコール飲料である場合、前記糖縮合物又はその食品加工処理物の配合は、糖化前、糖化後、発酵前、発酵後、貯蔵中、貯蔵後及び濾過後のいずれの段階においても行うことができる。糖縮合物又はその食品加工処理物に含まれる酵母資化性糖を低減させる観点から、糖縮合物又はその食品加工処理物は糖化前、糖化後及び発酵前のいずれかのタイミングで添加することが好ましい。本発明のビールテイスト飲料が非発酵のビールテイスト飲料(例えば、ビールテイストノンアルコール飲料)である場合には、糖縮合物又はその食品加工処理物の添加は、例えば、原材料の調合の際に行うことができる。
【実施例
【0051】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、本明細書において特に記載の無い場合は「%」は質量%を意味し、また「固形分」当たりの割合(含有量)や「固形分」の含有割合(濃度)に言及した場合には、固形成分の質量に基づいて定められた割合を意味するものとする。
【0052】
実施例中に示される各種測定方法及び分析方法は以下の通り行った。
DE(還元糖量)の測定
DEは、レインエイノン法(澱粉糖関連工業分析法(株式会社食品化学新聞)(平成3年11月1日発行)5~6頁)に従って測定した。
【0053】
食物繊維含量の測定
食品表示基準について(平成27年3月30日消食表第139号)に記載されている高速液体クロマトグラフ法(酵素-HPLC法)において記載されたアミログルコシダーゼ製剤を用い、その他の操作は準じて測定する。具体的には以下のように行った。
【0054】
Bx.5に調整したサンプル水溶液10mLを精密に測り、5mM酢酸塩緩衝液(pH5.0)5mL、及びアミログルコシダーゼ(Sigma社:EC#3.2.1.3 Aspergillus niger由来 A9913)溶液50μLを加え、60±2℃の水浴中で振とうしながら60分間反応させた。以上の酵素処理終了後、直ちに沸騰水浴中で10分間加熱した後、冷却し、水を加えて20mLとし酵素処理液とした。次に、酵素処理液20mLをイオン交換樹脂(OH型:H型=1:1)50mLが充填されたカラム(ガラス管20mm×300mm)に通液速度50mL/時で通液し、さらに水を通して流出液の全量を200mLとした。この溶液をロータリー・エバポレーターで濃縮し、全量を水で10mLとした。孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、検液とした。
【0055】
次に、検液10~20μLにつき、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を行い、検液の糖組成ピーク面積値を測定した。
【0056】
HPLCの分析条件は以下の通りであった。
検出器:示差屈折計
カラム:ULTRON PS-80N.L(φ8.0×500mm、島津ジーエルシー社製)
カラム温度:80℃
移動相:純水
流速:0.5mL/分
【0057】
なお、本特許明細書における食物繊維含量はHPLCのクロマトグラフィーにおけるマルトトリオースのピーク溶出位置を指標とし、マルトトリオースと同じかそれより前に溶出するものを食物繊維画分とし、食物繊維画分のピーク面積比率を食物繊維含量とした。
【0058】
糖質含有量の算出
食品表示基準について(平成27年3月30日消食表第139号)に記載されている方法を用いて測定する。糖質は、当該食品の質量から、たんぱく質(ケルダール法)、脂質(エーテル抽出法)、食物繊維(酵素-HPLC法)、灰分(直接灰化法)及び水分量(加熱乾燥法)を除いて算出した。
【0059】
糖組成の測定
各サンプルを5%(w/v)となるよう純水で溶解し、イオン交換樹脂(製品名:MB4、オルガノ社製)処理後、0.45μmメンブレンフィルターでろ過して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析を行なった。得られたクロマトグラムのピーク面積値より糖組成を算出した。
カラム:ULTRON PS-80N.L(信和化工社製)(単独若しくは二本連結)
【0060】
HPLCの分析条件は以下の通りであった。
カラム温度:80℃
移動相:超純水
流速:0.5mL
検出器:示差屈折率検出器
サンプル注入量:5%溶液、10μL
【0061】
食物繊維測定時の糖組成及び食物繊維含有量(%)に対する無水糖の含有量(%)(食物繊維測定時)の割合の算出
食物繊維測定時の糖組成は、サンプルを上記食物繊維含量の測定の方法のHPLC分析で得られたクロマトグラムのピーク面積値から算出した。また、食物繊維測定時の糖組成において無水糖類、AGF及びAGPのそれぞれの含有量(%)の合計値を無水糖の含有量(%)(食物繊維測定時)とした。
【0062】
食物繊維含有量(%)は、上記食物繊維含量の測定の方法により算出した値を用いた。
【0063】
食物繊維含有量(%)に対する無水糖の含有量(%)(食物繊維測定時)の割合は、上記で算出した食物繊維含有量(%)、無水糖の含有量(%)(食物繊維測定時)を用いて、その割合[無水糖の含有量(%)(食物繊維測定時)/食物繊維含有量(%)]として算出した。
【0064】
実施例1:糖縮合物に含まれる無水糖含有量の観点からのグルコース及びマルトース原料の検討
それぞれ固形分濃度70%に調整したD(+)-グルコース試薬(関東化学株式会社製)、及びマルトース一水和物試薬(関東化学株式会社製)を糖縮合反応の原料とした。糖縮合反応の原料0.71g(固形分換算0.50g)と、触媒として活性炭(フタムラ化学社製、太閤AC、乾燥品)0.015g(糖質固形分重量に対して触媒固形分重量として3.0%の添加率)をステンレスカップへ添加混合後、熱風乾燥機(ADVANTEC社製、DRK633DB)に投入し、加熱温度180℃、所定の時間で加熱反応して糖縮合物を得た。反応後の糖縮合物は室温まで冷却し、純水を用いて糖溶液とした後に濾過処理で活性炭を完全に除去し、活性炭による脱色濾過及びイオン交換樹脂による脱塩を行った後、エバポレーターで濃縮した。
【0065】
得られた各サンプルについて糖組成、食物繊維測定時の糖組成、食物繊維含量、食物繊維含量測定時の無水糖[無水糖類及び無水単糖である1,6-アンヒドログルコフラノース(AGF)及び1,6-アンヒドログルコピラノース(AGP)、以下無水糖類+AGF+AGP]の含有量、並びに食物繊維含有量(%)に対する無水糖(無水糖類+AGF+AGP)の含有量(%)(食物繊維測定時)を算出した。なお、三糖以上を「DP3+」、β結合の二糖とα結合の二糖を合わせて「二糖」、グルコースを「Glc」と表記し、DP3+、二糖、Glc並びに無水糖を除く糖由来の分解物及び酵素由来の物質を「その他」として纏めて算出した。結果は表1に示される通りであった。
【0066】
【表1】
【0067】
表1から明らかなように、グルコースを原料とした場合に比べ、マルトースを原料した場合、食物繊維含有量に対する無水糖の生成割合が低いことが判明した。
【0068】
実施例2:触媒添加量が無水糖含有量に与える影響の検討
マルトース一水和物試薬(関東化学株式会社製)を糖縮合反応の原料とした。糖縮合反応の原料1.0g(固形分換算1.0g)に触媒として水蒸気賦活活性炭(フタムラ化学社製、太閤AC、乾燥品)0.035g又は0.08g(糖質固形分重量に対して触媒固形分重量として3.5%又は8%の添加率)をステンレスカップへ添加混合後、加熱反応機(東京理科社製、真空検体乾燥器VOM-1000A)に投入し、加熱温度155℃、反応時間60分で加熱反応させて糖縮合物を得た。糖縮合物の分析は実施例1と同様に行った。
【0069】
得られた各サンプルについて糖組成、食物繊維測定時の糖組成、食物繊維含量、食物繊維含量測定時の無水糖(無水糖類+AGF+AGP)の含有量、並びに食物繊維含有量(%)に対する無水糖(無水糖類+AGF+AGP)の含有量(%)(食物繊維測定時)を算出した。結果は表2に示される通りであった。
【表2】
【0070】
表2から明らかなように、マルトースを糖質とした場合、食物繊維含有量(%)に対する無水糖(無水糖類+AGF+AGP)の含有量(%)(食物繊維測定時)は、活性炭添加量が3.5%のときに0.0366であり、活性炭添加量が8%のときに0.0386であった。すなわち、マルトースを原料とした場合、いずれの触媒含有量でも食物繊維含有量に対する無水糖の生成割合が低い結果となった。つまり、食物繊維含有量に対する無水糖の生成割合は触媒の添加量にはよらないことが確認できた。
【0071】
実施例3:グルコース及びマルトースの含有割合が無水糖含有量に与える影響の検討
それぞれ固形分濃度70%に調整したグルコースを主成分とする澱粉分解物(製品名:ハイグル#8775、DE:87、日本食品化工株式会社製、糖組成は表3の通り)、ハイマルトースシラップ(製品名:日食ハイマルトースシラップMC-70、DE:44、日本食品化工株式会社製、マルトース含量70%、糖組成は表3の通り)、ハイマルトースシラップ(製品名:日食ハイマルトースシラップMC-80、DE:47、日本食品化工株式会社製、マルトース含量81%、糖組成は表3の通り)及びD(+)-グルコース試薬(関東化学株式会社製)とマルトース一水和物試薬(関東化学株式会社製)を所定比率で混合したものを糖縮合反応の原料とした。糖縮合反応の原料0.71g(固形分換算0.5g)と、触媒として活性炭(フタムラ化学社製、太閤AC、乾燥品)0.015g(糖質固形分重量に対して触媒固形分重量として3%の添加率)をステンレスカップへ添加混合後、熱風乾燥機(ADVANTEC社製、DRK633DB)に投入し、加熱温度180℃、所定の時間で加熱反応して糖縮合物を得た。糖縮合物の分析は実施例1と同様に行った。
【0072】
【表3】
【0073】
得られた各サンプルについて糖組成、食物繊維測定時の糖組成、食物繊維含量、食物繊維含量測定時の無水糖(無水糖類+AGF+AGP)の含有量、並びに食物繊維含有量(%)に対する無水糖(無水糖類+AGF+AGP)の含有量(%)(食物繊維測定時)を算出した。結果は表4に示される通りであった。
【0074】
【表4】
【0075】
表4から明らかなように、マルトースを主成分としグルコース含有量が低い原料では、食物繊維含有量(%)に対する無水糖(無水糖類+AGF+AGP)の含有量(%)(食物繊維測定時)が低く、グルコースを主成分とする原料では、食物繊維含有量(%)に対する無水糖(無水糖類+AGF+AGP)の含有量(%)(食物繊維測定時)が高くなることが判明した。また、グルコース:マルトースの割合が5:5の場合、食物繊維含有量(%)に対する無水糖(無水糖類+AGF+AGP)の含有量(%)(食物繊維測定時)は低いが、グルコース:マルトースが7.5:2.5の場合、食物繊維含有量(%)に対する無水糖(無水糖類+AGF+AGP)の含有量(%)(食物繊維測定時)が高くことが判明した。
【0076】
実施例4:減圧条件が無水糖含有量に与える影響の検討
それぞれ固形分濃度65%に調整したマルトース一水和物試薬(関東化学株式会社製)、日食ハイマルトースシラップMC-80(日本食品化工株式会社製)、D(+)-グルコース試薬(関東化学株式会社製)、澱粉分解物(製品名:ハイグル#8775、DE:87、日本食品化工株式会社製)を糖縮合反応の原料とした。糖縮合反応の原料0.77g(固形分換算0.5g)と、触媒として水蒸気賦活活性炭(フタムラ化学社製、太閤AC-W50、水分量50%)0.05g(糖質固形重量に対して触媒固形分重量として5%の添加率)をステンレスカップへ添加混合後、加熱反応機(東京理科社製、真空検体乾燥器VOM-1000A)に投入し、加熱温度180℃、98kPa、26kPa又は2kPaの減圧条件下で及び所定の時間で加熱反応して糖縮合物を得た。糖縮合物の分析は実施例1と同様に行った。
【0077】
得られた各サンプルについて糖組成、食物繊維測定時の糖組成、食物繊維含量、食物繊維含量測定時の無水糖(無水糖類+AGF+AGP)の含有量、並びに食物繊維含有量(%)に対する無水糖(無水糖類+AGF+AGP)の含有量(%)(食物繊維測定時)を算出した。結果は表5に示される通りであった。
【0078】
【表5】
表5から明らかなように、減圧状況下においても、マルトースを主成分としグルコース含有量が低い原料では、食物繊維含有量に対する無水糖の生成割合が低く、グルコースを主成分とする原料では、食物繊維含有量に対する無水糖の生成割合が高くなることが判明した。また、マルトトリオースにおいては、食物繊維含有量は他の原料と比較して上がりにくいが、グルコース含有量が低い他の原料と同様に、食物繊維含有量に対する無水糖の生成割合が低い結果となった。つまり食物繊維含有量に対する無水糖の生成割合は、減圧条件により左右されず、原料の糖組成に起因すると考えられた。
【0079】
実施例5:原料となる澱粉分解物の種類が無水糖含有量に与える影響の検討
表6に示す糖組成である各種糖組成物(日食ハイマルトースシラップMC-45、日食ハイマルトースシラップMC-55、日食ハイマルトースシラップMC-70、フジオリゴ#360、フジオリゴ#450、フジオリゴG67、日食テイストオリゴ、日食パノリッチ、日食ブランチオリゴ、バイオトース#50)及び、液状ブドウ糖#9865(いずれも日本食品化工株式会社製)をそれぞれ固形分濃度70%に調整し、糖縮合反応の原料とした。糖縮合反応の原料1.43g(固形分換算1.0g)と、触媒として水蒸気賦活活性炭(フタムラ化学社製、太閤AC-W50、水分量50%)0.1g(糖質固形重量に対して触媒固形分重量として5.0%の添加率)をステンレスカップへ添加混合後、送風定温乾燥器(東京理科社製、WFO-520型)に投入し、表7の温度、AUTO STOPプログラム設定加熱温度保持10分、COOL空冷60分、排気口を開口条件で加熱反応して糖縮合物を得た。糖縮合物の分析は実施例1と同様に行った。
【0080】
【表6】
【0081】
ここで、使用原料の特徴は以下の通りであった。
MC-45、MC-55、MC-70、フジオリゴ#360、フジオリゴ#450、フジオリゴG67:マルトオリゴ糖を主成分とする糖組成物
日食テイストオリゴ:ニゲロオリゴ糖(ニゲロース、ニゲロシルグルコース、ニゲロシルマルトース等)を主成分とする糖組成物
日食パノリッチ:パノースを主成分とする糖組成物
日食ブランチオリゴ:重合度4以上の長鎖分岐オリゴ糖(α-1,4結合のグルカンの非還元末端にグルコース残基がα-1,6グルコシド結合した糖)を主成分とする糖組成物
バイオトース#50:イソマルトオリゴ糖を主成分とする糖組成物
【0082】
得られた各サンプルについて糖組成、食物繊維測定時の糖組成、食物繊維含量、食物繊維含量測定時の無水糖(無水糖類+AGF+AGP)の含有量、並びに食物繊維含有量(%)に対する無水糖(無水糖類+AGF+AGP)の含有量(%)(食物繊維測定時)を算出した。結果は表7に示される通りであった。
【0083】
【表7】
【0084】
表7から明らかなように、DEが23~72であり、かつ、グルコース含有量が40.59質量%以下のオリゴ糖製品(表6参照)を原料とした場合には、いずれも食物繊維含有量に対する無水糖の生成割合が低くなることが判明した。また、DP3+の含有量が高いオリゴ糖製品であるフジオリゴ#450、フジオリゴG67、日食ブランチオリゴは、食物繊維含有量は他の原料と比較して上がりにくいが、グルコース含有量が低い他の原料と同様に、食物繊維含有量に対する無水糖の生成割合が低い傾向になることが判明した。つまり、食物繊維含有量に対する無水糖の生成割合は、原料のグルコースを構成糖とする糖質の重合度の割合や1,6-結合や1,3-結合など1,4-結合以外を含むことを特徴とする分岐構造の違いには左右されず、原料のDE及びグルコース含有量に起因すると考えられた。
【0085】
実施例6:ノンアルコールビール及びビールテイスト発酵アルコール飲料に供する糖縮合物の製造
日食ハイマルトースシラップMC-80(日本食品化工株式会社製)を固形分濃度70%に調整し、糖縮合反応の原料とした。糖縮合反応の原料12.9gと、触媒として水蒸気賦活活性炭(フタムラ化学社製、太閤AC、水分量50%)1.0g(糖質固形重量に対して触媒固形分重量として10%の添加率)をステンレスカップへ添加混合後、加熱反応機(東京理科社製、真空検体乾燥器VOM-1000A)に投入し、加熱温度200℃、減圧度-26kPaで糖組成DP3+が85%及び90%となるまで加熱反応して糖縮合物を得た。
【0086】
糖縮合物をBx.30に溶解後、苛性を用いてpHを調整し、αアミラーゼ製剤及びグルコアミラーゼ製剤を添加し、60℃温水浴中で酵素による加水分解反応を24時間行った。酵素反応は煮沸により反応停止したのちに、実施例1と同様に精製した。上記操作を繰り返して実施例7及び8以降に必要な量を調製し、実施例A及びBとした。
【0087】
比較例は以下のように実施した。すなわち、液状ブドウ糖#9865(日本食品化工株式会社製)を固形分濃度70%に調整し、糖縮合反応の原料とした。糖縮合反応の原料34.7gと、触媒として水蒸気賦活活性炭(フタムラ化学社製、太閤AC、水分量50%)3.9g(糖質固形重量に対して触媒固形分重量として3%の添加率)をステンレスバットへ添加混合後、送風定温乾燥器(東京理科社製、WFO-520型)に投入し、加熱温度180℃、糖組成DP3+が85%及び90%となるまで加熱して糖縮合物を得た。糖縮合物は実施例1と同様に精製し、比較例C及びDとした。更に糖縮合物をBx.30に溶解後、苛性を用いてpHを調整し、αアミラーゼ製剤及びグルコアミラーゼ製剤、βグルコシダーゼ製剤を添加し、60℃温水浴中で酵素による加水分解反応を24時間行った。酵素反応は煮沸により反応停止したのちに、実施例1と同様に精製し、比較例E及びFとした。
【0088】
得られた各サンプルについて糖組成、食物繊維測定時の糖組成、食物繊維含量、食物繊維含量測定時の無水糖(無水糖類+AGF+AGP)の含有量、並びに食物繊維含有量(%)に対する無水糖(無水糖類+AGF+AGP)の含有量(%)(食物繊維測定時)を算出した。結果は表8に示される通りであった。
【0089】
【表8】
【0090】
実施例7:ノンアルコールビールの製造
酸味料、酸化防止剤、甘味料、モルトコンパウンド、香料、カラメル色素、水及び炭酸水に、実施例B、比較例D又は比較例Eの糖縮合物(実施例6参照)、或いはグルコースシラップ(グルコース含量67%以上、DE86)を糖縮合反応の原料として活性炭共存下で加熱して得られる水溶性食物繊維素材であるフィットファイバー#80(日本食品化工株式会社製、組成は表9参照)を配合してノンアルコールビールを調製した。具体的には、表10に従って原料を混合し、ノンアルコールビールを調製した。
【0091】
【表9】
【0092】
【表10】
【0093】
調製したノンアルコールビールについて官能評価を行った。ノンアルコールビールについて4人のパネリストによる官能検査を行った結果、No.1(糖縮合物無し)と比較してNo.2~9は何れもボディ感が明確に増強され、飲み応えがあるとの評価であった。また、実施例Bの糖縮合物を含むNo.2及びNo.6は他の試験区と比較して、ビール特有の苦みや酸味はするもののエグ味や収斂味はより感じ難く、すっきりとした飲みやすい風味を有していた。
【0094】
実施例8:ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造
仕込鍋に粉砕ピルスナー麦芽と仕込み水を投入し、常法に従って麦汁糖化液を製造した。得られた麦汁糖化液は濾過槽を用いて濾過し、得られた麦汁に対してグルコアミラーゼ製剤(ノボザイム社製、製品名:デキストロザイムDXJ peak)を添加し、追糖化を実施した。追糖化は高速液体クロマトグラフィーによる分析値として単糖、二糖、三糖の合計値が90%を超えた時点で完了と見なし、酵素処理麦汁を得た。単糖、二糖、三糖の高速液体クロマトグラフィーでの測定条件は次の通りであった。
検出機:RI(示差屈折)
カラム:Ultron PS-80N.L(8mm×500mm、10μm、信和化工製)
カラム温度:50℃、流速0.9mL/分
移動相:純水。
【0095】
酵素処理麦汁に対して表11の配合に従い大豆ペプチド(不二製油社製、製品名:ハイニュートHKB)、ホップ及び水を添加した後、1時間煮沸した。次いで、スクロース(三井製糖社製、製品名:グラニュー糖)と、実施例6で調製した実施例A、実施例B、比較例C、比較例D、比較例E又は比較例Fの糖縮合物、或いはフィットファイバー#80(日本食品化工株式会社製)を酵母発酵後のビールテイスト飲料に含まれるエキス分が2.0g程度となるように表11の配合に従って添加し、よく混合した。
【0096】
当該麦汁をワールプールにて沈殿物を分離、除去した後、約10℃に冷却した。当該冷麦汁をそれぞれ異なる発酵槽に導入し、ビール酵母(Fermentis社製、製品名:SafLager W-34/70)を冷麦汁2Lに対して1g接種し、約10℃で7日間発酵させた。7日後、500mL容の瓶内に移液し、瓶内二次発酵させてビールテイスト飲料(アルコール含有量:4容量%以上、エキス分:2容量%以上)を得た。
【0097】
【表11】
【0098】
得られたビールテイスト飲料をアルコライザー(アントンパール社製)を用いてアルコール及び真正エキスを分析した。固形分及び灰分、タンパク含量、脂質含量、食物繊維含量を分析し、糖質含有量を算出した。結果は表12に示される通りであった。表12から明らかなように、無水糖の生成が少ない糖縮合物を添加したビールテイスト飲料(No.11及びNo.12)は糖質含有量が低くなった。
【0099】
【表12】
【0100】
得られたビールテイスト飲料について6人のパネリストによる官能検査を行った結果、No.11及びNo.12は他の試験区と比べて、よりドライ感が強く、味の厚みと後切れが良く、酸味の角が低減され、後に残る苦味は軽減しするものの後味のスッキリ感があり飲みやすい評価であった。また、アルコール感の複雑な味及び香りが強く、ビールとして好ましい評価であった。
【0101】
実施例7及び8の通り、無水糖の生成が抑制された本発明の糖縮合物は、低糖質を目的としたビールテイスト飲料において優れた味質を発揮し、ドライ感、アルコール感、炭酸感、キレ、高甘味度甘味料の味質、香辛料感、塩味、コク等を向上することが明らかとなった。
【要約】
【課題】無水糖の含有量が低減した糖縮合物の製造方法の提供。
【解決手段】本発明によれば、DEが20~75であり、かつ、グルコース含有量が50質量%以下の澱粉分解物を、活性炭を触媒として加熱縮合させる工程を含む、糖縮合物又はその食品加工処理物の製造方法が提供される。前記澱粉分解物は、好ましくはマルトースを含有し、前記澱粉分解物のマルトース(無水糖を除く)含有量は例えば50質量%以上とすることができる。
【選択図】なし