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特許7445810タイヤ付着抑制剤、舗装用アスファルト乳剤組成物及びその製造方法、並びに舗装体
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  • 特許-タイヤ付着抑制剤、舗装用アスファルト乳剤組成物及びその製造方法、並びに舗装体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】タイヤ付着抑制剤、舗装用アスファルト乳剤組成物及びその製造方法、並びに舗装体
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20240229BHJP
   C08F 220/26 20060101ALI20240229BHJP
   C08F 216/16 20060101ALI20240229BHJP
   C08L 95/00 20060101ALI20240229BHJP
   E01C 7/24 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C09K3/00 R
C08F220/26
C08F216/16
C08L95/00
E01C7/24
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023110777
(22)【出願日】2023-07-05
【審査請求日】2023-09-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390019998
【氏名又は名称】東亜道路工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 亮太
(72)【発明者】
【氏名】永原 篤
(72)【発明者】
【氏名】中村 明彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 花苗
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-031769(JP,A)
【文献】特開2014-218619(JP,A)
【文献】特開2014-125397(JP,A)
【文献】特開2001-323165(JP,A)
【文献】特開2005-320449(JP,A)
【文献】特開2004-091761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C09K 3/00
E01C 7/00-7/36
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される単量体に由来する構成単位(a)、下記一般式(2)で表される単量体に由来する構成単位(b)及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(c)を含む共重合体を含有することを特徴とするタイヤ付着抑制剤。
【化1】

[式中、Rは、炭素原子数2~5のアルケニル基を表し、AOは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、複数の場合は同一または異なっていてもよい。n1は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~100の数を表す。Rは、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。]
【化2】

[式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1~3のアルキル基を表す。mは0~2の数を表す。AOは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、複数の場合は同一または異なっていてもよい。n2は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、~100の数を表す。Xは、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。]
【請求項2】
前記共重合体は、前記構成単位(a)の含有量が5~30質量%、前記構成単位(b)の含有量が15~60質量%及び前記構成単位(c)の含有量が30~80質量%である請求項1に記載のタイヤ付着抑制剤。
【請求項3】
前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載のタイヤ付着抑制剤。
【請求項4】
前記共重合体の重量平均分子量(Mw)が5,000~100,000である請求項1又は2に記載のタイヤ付着抑制剤。
【請求項5】
下記一般式(1)で表される単量体に由来する構成単位(a)、下記一般式(2)で表される単量体に由来する構成単位(b)及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(c)を含む共重合体と、アスファルト、乳化剤及び水を含むアスファルト乳剤とを含み、
前記アスファルト乳剤がカチオン系、アニオン系及びノニオン系からなる群より選ばれる少なくとも1種のアスファルト乳剤である舗装用アスファルト乳剤組成物。
【化3】

[式中、Rは、炭素原子数2~5のアルケニル基を表し、AOは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、複数の場合は同一または異なっていてもよい。n1は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~100の数を表す。Rは、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。]
【化4】

[式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1~3のアルキル基を表す。mは0~2の数を表す。AOは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、複数の場合は同一または異なっていてもよい。n2は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、~100の数を表す。Xは、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。]
【請求項6】
前記共重合体の含有量が、前記アスファルト乳剤100質量部に対し0.2~25質量部である請求項5に記載の舗装用アスファルト乳剤組成物。
【請求項7】
前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項5又は6に記載の舗装用アスファルト乳剤組成物。
【請求項8】
請求項5又は6に記載の舗装用アスファルト乳剤組成物の製造方法であって、
下記工程(i)又は工程(ii)を有する舗装用アスファルト乳剤組成物の製造方法。
工程(i):前記乳化剤及び前記水を含む乳化液に、前記共重合体を混合し、得られた混合液に前記アスファルトを加えて乳化する工程
工程(ii):前記アスファルトと、前記乳化剤及び前記水を含む乳化液とを乳化し、得られたアスファルト乳剤に前記共重合体を混合する工程
【請求項9】
前記工程(ii)を有する請求項8に記載の舗装用アスファルト乳剤組成物の製造方法。
【請求項10】
路盤上に、1層以上の基層と表面層とをこの順に有し、前記路盤-基層間および前記基層-表面層間の少なくともいずれかにアスファルト乳剤層を有する舗装体であって、
前記アスファルト乳剤層が、請求項5又は6に記載の舗装用アスファルト乳剤組成物を用いてなる舗装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ付着抑制剤、舗装用アスファルト乳剤組成物及びその製造方法、並びに舗装体に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルトは一般的には加熱して液状にして使用されるが、加熱することなく、常温で使用できるように、アスファルトを水に乳化させた形態で利用することが知られている。このような乳化物はアスファルト乳剤と呼ばれている。
アスファルト乳剤は、舗装の表面処理、安定処理、タックコート、プライムコートなどに使用されている。
タックコートは、新たに舗設するアスファルト混合物層と、その下のアスファルト混合物層等との接着および継ぎ目部や構造物との付着を改善するために使用される。また、プライムコートは、上層路盤の上に適用され、路盤を安定化させると共に、路盤とその上のアスファルト混合物層とのなじみを改善するために使用される。
【0003】
タックコートに使用するアスファルト乳剤としては、日本工業規格JIS K 2208(2000)で規定された「PK-4」、プライムコートに使用するアスファルト乳剤としては、同規格で規定された「PK-3」等がある。これらのアスファルト乳剤を用いて形成されたアスファルト被膜は、べたつきを有するため、特に、路面温度が高くなる夏場では、施工機械のタイヤなどにアスファルトが付着して、施工面の被膜が剥がれたり、タイヤに付着したアスファルトが施工現場以外の路面を汚すことがある。
【0004】
例えば、特許文献1には、アスファルト乳剤およびコロイダルシリカを特定量含むアスファルト乳剤組成物が開示されており、当該アスファルト乳剤組成物を用いて形成されたアスファルト被膜はべたつきを抑えることができるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-91761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のアスファルト乳剤組成物は、熱安定性が悪く、高温(60℃以上)での貯蔵安定性が十分とは言い難い。また、上記アスファルト乳剤組成物を用いて形成されたアスファルト被膜は、べたつきを抑えることができるものの更なる改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、高温での貯蔵安定性に優れ、かつべたつきが低減されたアスファルト被膜を形成できる舗装用アスファルト乳剤組成物に用いられるタイヤ付着抑制剤、舗装用アスファルト乳剤組成物及びその製造方法、並びに舗装体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を含む共重合体を含有するタイヤ付着抑制剤を用いることにより、上記課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
【0009】
[1] 下記一般式(1)で表される単量体に由来する構成単位(a)、下記一般式(2)で表される単量体に由来する構成単位(b)及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(c)を含む共重合体を含有することを特徴とするタイヤ付着抑制剤。
【0010】
【化1】

[式中、Rは、炭素原子数2~5のアルケニル基を表し、AOは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、複数の場合は同一または異なっていてもよい。n1は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~100の数を表す。Rは、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。]
【0011】
【化2】

[式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1~3のアルキル基を表す。mは0~2の数を表す。AOは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、複数の場合は同一または異なっていてもよい。n2は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~100の数を表す。Xは、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。]
[2] 前記共重合体は、前記構成単位(a)の含有量が5~30質量%、前記構成単位(b)の含有量が15~60質量%及び前記構成単位(c)の含有量が30~80質量%である上記[1]に記載のタイヤ付着抑制剤。
[3] 前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種である上記[1]又は[2]に記載のタイヤ付着抑制剤。
[4] 前記共重合体の重量平均分子量(Mw)が5,000~100,000である上記[1]~[3]のいずれかに記載のタイヤ付着抑制剤。
[5] 下記一般式(1)で表される単量体に由来する構成単位(a)、下記一般式(2)で表される単量体に由来する構成単位(b)及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(c)を含む共重合体と、アスファルト、乳化剤及び水を含むアスファルト乳剤とを含み、
前記アスファルト乳剤がカチオン系、アニオン系及びノニオン系からなる群より選ばれる少なくとも1種のアスファルト乳剤である舗装用アスファルト乳剤組成物。
【0012】
【化3】

[式中、Rは、炭素原子数2~5のアルケニル基を表し、AOは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、複数の場合は同一または異なっていてもよい。n1は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~100の数を表す。Rは、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。]
【0013】
【化4】

[式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1~3のアルキル基を表す。mは0~2の数を表す。AOは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、複数の場合は同一または異なっていてもよい。n2は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~100の数を表す。Xは、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。]
[6] 前記共重合体の含有量が、前記アスファルト乳剤100質量部に対し0.2~25質量部である上記[5]に記載の舗装用アスファルト乳剤組成物。
[7] 前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種である上記[5]又は[6]に記載の舗装用アスファルト乳剤組成物。
[8] 上記[5]~[7]のいずれかに記載の舗装用アスファルト乳剤組成物の製造方法であって、
下記工程(i)又は工程(ii)を有する舗装用アスファルト乳剤組成物の製造方法。
工程(i):前記乳化剤及び前記水を含む乳化液に、前記共重合体を混合し、得られた混合液に前記アスファルトを加えて乳化する工程
工程(ii):前記アスファルトと、前記乳化剤及び前記水を含む乳化液とを乳化し、得られたアスファルト乳剤に前記共重合体を混合する工程
[9] 前記工程(ii)を有する上記[8]に記載の舗装用アスファルト乳剤組成物の製造方法。
[10] 路盤上に、1層以上の基層と表面層とをこの順に有し、前記路盤-基層間および前記基層-表面層間の少なくともいずれかにアスファルト乳剤層を有する舗装体であって、
前記アスファルト乳剤層が、上記[5]~[7]のいずれかに記載の舗装用アスファルト乳剤組成物を用いてなる舗装体。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高温での貯蔵安定性に優れ、かつべたつきが低減されたアスファルト被膜を形成できる舗装用アスファルト乳剤組成物に用いられるタイヤ付着抑制剤、舗装用アスファルト乳剤組成物及びその製造方法、並びに舗装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態の舗装体の断面の一形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書中、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10以上、より好ましくは30以上、更に好ましくは40以上」という下限値の記載と、「好ましくは90以下、より好ましくは80以下、更に好ましくは70以下である」という上限値の記載とから、好適範囲として、例えば、「10以上70以下」、「30以上70以下」、「40以上80以下」といったそれぞれ独立に選択した下限値と上限値とを組み合わせた範囲を選択することもできる。また、同様の記載から、例えば、単に、「40以上」又は「70以下」といった下限値又は上限値の一方を規定した範囲を選択することもできる。
なお、本明細書中、数値範囲の記載において、例えば、「10~90」という記載は「10以上90以下」と同義である。なお、数値範囲の記載に関する「以上」、「以下」、「未満」、「超」の数値もまた、任意に組み合わせることができる。
【0017】
[タイヤ付着抑制剤]
本実施形態のタイヤ付着抑制剤は、下記一般式(1)で表される単量体に由来する構成単位(a)、下記一般式(2)で表される単量体に由来する構成単位(b)及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(c)を含む共重合体を含有する。
【0018】
【化5】
【0019】
[式中、Rは、炭素原子数2~5のアルケニル基を表し、AOは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、複数の場合は同一または異なっていてもよい。n1は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~100の数を表す。Rは、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。]
【0020】
【化6】
【0021】
[式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1~3のアルキル基を表す。mは0~2の数を表す。AOは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、複数の場合は同一または異なっていてもよい。n2は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~100の数を表す。Xは、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。]
【0022】
本実施形態のタイヤ付着抑制剤は、前記共重合体を含むことにより、高温での貯蔵安定性に優れ、かつべたつきが低減されたアスファルト被膜を形成できる舗装用アスファルト乳剤組成物を得ることができる。
前記共重合体において、前記一般式(1)で表される単量体に由来する構成単位(a)及び前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(c)は水になじみやすい性質を有し、前記一般式(2)で表される単量体に由来する構成単位(b)は水になじみにくい性質を有する。そのため、前記共重合体を含むアスファルト乳剤組成物をアスファルトに散布又は塗布した際、当該組成物中の水が蒸発する過程で前記共重合体の水になじみやすい部分がアスファルト表面に配向することにより、得られるアスファルト被膜はべたつきが低減され、タイヤなどに付着し難くなるものと推察される。
【0023】
(一般式(1)で表される単量体)
前記共重合体が含む構成単位(a)を構成する単量体は、下記一般式(1)で表される。
【0024】
【化7】
【0025】
前記一般式(1)中、Rは、炭素原子数2~5のアルケニル基を表し、AOは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、複数の場合は同一または異なっていてもよい。n1は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~100の数を表す。Rは、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。
【0026】
前記Rとしては、炭素原子数3~5のアルケニル基が好ましい。Rの具体例としは、アリル基、メタリル基、3-メチル-3-ブテン-1-オールの残基等が挙げられる。中でも、アリル基が好ましい。
【0027】
前記AOとしては、炭素原子数2~12のオキシアルキレン基が好ましく、炭素原子数2~6のオキシアルキレン基がより好ましく、炭素原子数2~4のオキシアルキレン基が更に好ましい。オキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)、オキシブチレン基(ブチレングリコール単位)が挙げられる。中でも、本発明の効果をより発揮する観点から、オキシエチレン基、オキシプロピレン基が好ましく、オキシエチレン基がより好ましい。
【0028】
前記AOが複数の場合は同一または異なっていてもよい。一般式(1)中にAOが複数含まれる場合の態様としては、例えば、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)及びオキシブチレン基(ブチレングリコール単位)からなる群より選ばれる2種類以上のオキシアルキレン基が混在する態様が挙げられ、オキシエチレン基とオキシプロピレン基とが混在する態様であってもよく、オキシエチレン基とオキシブチレン基とが混在する態様であってもよい。一般式(1)中にAOが複数含まれる態様において、2種類以上のオキシアルキレン基の付加は、ブロック状の付加であってもよく、ランダム状の付加であってもよい。
【0029】
前記n1は、オキシアルキレン基の平均付加モル数である。本明細書において平均付加モル数とは、単量体1モルに付加しているアルキレングリコール単位のモル数の平均値を意味する。n1の下限は、通常、1以上、2以上、3以上、好ましくは4以上、5以上、6以上、より好ましくは7以上、8以上、9以上、さらに好ましくは10以上である。上限は、通常100以下、好ましくは90以下、80以下、60以下、50以下、より好ましくは40以下である。従って、n1は、通常、1~100、2~100、3~100、4~100、5~100、好ましくは6~90、7~80、8~60、9~50、より好ましくは10~40である。n1が前記範囲内であると、前記共重合体を含むアスファルト乳剤組成物の高温での貯蔵安定性がより優れたものとなり、また、得られるアスファルト被膜のべたつきをより低減することができる。
【0030】
前記Rは、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基であり、好ましくは水素原子または炭素原子数1~10の炭化水素基、より好ましくは水素原子または炭素原子数1~5の炭化水素基、更に好ましくは水素原子またはメチル基である。炭化水素基は、飽和および不飽和のいずれでもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。中でも、飽和炭化水素基が好ましく、直鎖状の飽和炭化水素基がより好ましい。
【0031】
前記一般式(1)で表される単量体としては、例えば、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アリルエーテル、(ポリ)エチレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール(メタ)アリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール(メタ)アリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテルが挙げられる。これらの中でも、親水性及び疎水性のバランスの観点から、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アリルエーテル、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アリルエーテル、(ポリ)エチレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテルが好ましく、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アリルエーテルがより好ましい。
前記一般式(1)で表される単量体は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
なお、本明細書において、「(メタ)アリル」とは、アリル及びメタリルの両方を意味する。また、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの両方を意味する。「(ポリ)」は、その直後に記載される構成要素又は原料が、1個又は2個以上結合していることを意味する。
【0033】
前記一般式(1)で表される単量体の製造方法としては、例えば、アリルアルコール、メタリルアルコール、3-メチル-3-ブテン-1-オール等の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを付加する方法が挙げられるが、特に限定されない。
【0034】
(一般式(2)で表される単量体)
前記共重合体が含む構成単位(b)を構成する単量体は、下記一般式(2)で表される。
【0035】
【化8】
【0036】
前記一般式(2)中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1~3のアルキル基を表す。mは0~2の数を表す。AOは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、複数の場合は同一または異なっていてもよい。n2は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~100の数を表す。Xは、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。
【0037】
前記R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1~3のアルキル基を表す。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0038】
前記AOとしては、炭素原子数2~12のオキシアルキレン基が好ましく、炭素原子数2~6のオキシアルキレン基がより好ましく、炭素原子数2~4のオキシアルキレン基が更に好ましい。オキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)、オキシブチレン基(ブチレングリコール単位)が挙げられる。中でも、本発明の効果をより発揮する観点から、オキシエチレン基、オキシプロピレン基が好ましく、オキシエチレン基がより好ましい。
【0039】
前記AOが複数の場合は同一または異なっていてもよい。一般式(2)中にAOが複数含まれる場合の態様としては、例えば、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)及びオキシブチレン基(ブチレングリコール単位)からなる群より選ばれる2種類以上のオキシアルキレン基が混在する態様が挙げられ、オキシエチレン基とオキシプロピレン基とが混在する態様であってもよく、オキシエチレン基とオキシブチレン基とが混在する態様であってもよい。一般式(2)中にAOが複数含まれる態様において、2種類以上のオキシアルキレン基の付加は、ブロック状の付加であってもよく、ランダム状の付加であってもよい。
【0040】
前記mは0~2の数を表し、好ましくは0又は1である。
【0041】
前記n2は、オキシアルキレン基の平均付加モル数である。n2の下限は、通常、1以上、2以上、3以上、好ましくは4以上、5以上、6以上、より好ましくは7以上、8以上、9以上、さらに好ましくは10以上である。上限は、通常100以下、好ましくは90以下、80以下、60以下、50以下、より好ましくは40以下である。従って、n2は、通常、1~100、2~100、3~100、4~100、5~100、好ましくは6~90、7~80、8~60、9~50、より好ましくは10~40である。n2が前記範囲内であると、前記共重合体を含むアスファルト乳剤組成物の高温での貯蔵安定性がより優れたものとなり、また、得られるアスファルト被膜のべたつきをより低減することができる。
【0042】
前記Xは、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基であり、本発明の効果をより発揮する観点から、好ましくは水素原子または炭素原子数1~10の炭化水素基、より好ましくは水素原子または炭素原子数1~5の炭化水素基、更に好ましくは水素原子またはメチル基である。炭化水素基は、飽和および不飽和のいずれでもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。中でも、飽和炭化水素基が好ましく、直鎖状の飽和炭化水素基がより好ましい。
【0043】
前記一般式(2)で表される単量体としては、例えば、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート;メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール(メタ)アクリレート等のメトキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中でも、親水性及び疎水性のバランスの観点から、(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレートが好ましく、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレートがより好ましい。
前記一般式(2)で表される単量体は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記一般式(2)で表される単量体の製造方法としては、例えば、不飽和モノカルボン酸で(ポリ)アルキレングリコールをエステル化する方法が挙げられる。不飽和カルボン酸としては、例えば(メタ)アクリル酸が挙げられる。(ポリ)アルキレングリコールとしては、例えば、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール、メトキシ(ポリ)エチレングリコール、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールが挙げられる。
【0045】
(ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート)
前記共重合体が含む構成単位(c)を構成するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイルオキシ基とヒドロキシ基で置換されたアルキル基とを有する化合物である。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにおけるアルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~6であり、より好ましくは1~4である。前記アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、例えば、炭素原子数1~4の直鎖状のアルキル基であってもよい。
【0046】
前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。中でも、親水性及び疎水性のバランスの観点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
(その他の単量体)
前記共重合体は、さらに、前記一般式(1)で表される単量体、前記一般式(2)で表される単量体および前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な単量体に由来する構成単位(d)を含んでもよい。
前記構成単位(d)を構成する単量体としては、例えば、下記一般式(3)で表される単量体が挙げられる。
【0048】
【化9】
【0049】
一般式(3)中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基または-(CHCOOMを表す。M及びMは、それぞれ独立して、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基または置換アルキルアンモニウム基を表す。rは0~2の整数である。ここで、-(CHCOOMは、-COOMまたは他の-(CHCOOMと無水物を形成する場合、当該無水物にM及びMは存在しない。
【0050】
前記R、R及びRとしての炭素原子数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0051】
前記M及びMは、それぞれ独立して、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基または置換アルキルアンモニウム基である。中でも、本発明の効果をより発揮する観点から、水素原子、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0052】
前記rは0~2の整数であり、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
【0053】
前記一般式(3)で表される単量体としては、例えば、不飽和モノカルボン酸系単量体、不飽和ジカルボン酸系単量体が挙げられる。不飽和モノカルボン酸系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、及びクロトン酸、並びにこれらの塩(例、一価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩)が挙げられる。不飽和ジカルボン酸系単量体としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、及びフマル酸、並びにこれらの塩(例、一価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩)、並びにそれらの無水物が挙げられる。前記一般式(3)で表される単量体は、本発明の効果をより発揮する観点から、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸およびこれらの塩が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの塩がより好ましい。
前記一般式(3)で表される単量体は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
前記共重合体は前記構成単位(d)を含む場合、共重合体の塩であってもよい。共重合体の塩としては、例えば、前記共重合体の一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩が挙げられる。
【0055】
(構成単位の比率)
前記共重合体又はその塩に含まれる全構成単位を100質量%とした場合の、各構成単位の質量比率は、例えば、下記のとおりである。下記の質量比率は、通常、共重合体又はその塩の製造時の単量体の配合量と一致する。
【0056】
前記共重合体に含まれる前記一般式(1)で表される単量体に由来する構成単位(a)の含有量は、好ましくは5~30質量%であり、より好ましくは6~25質量%であり、更に好ましくは8~20質量%である。前記構成単位(a)の含有量が5質量%以上であると、得られるアスファルト被膜のべたつきをより低減することができ、30質量%以下であると、共重合体を含むアスファルト乳剤組成物の高温での貯蔵安定性がより優れたものとなる。
【0057】
前記共重合体に含まれる前記一般式(2)で表される単量体に由来する構成単位(b)の含有量は、好ましくは15~60質量%であり、より好ましくは20~55質量%であり、更に好ましくは25~50質量%である。前記構成単位(b)の含有量が15質量%以上であると、共重合体を含むアスファルト乳剤組成物の高温での貯蔵安定性がより優れたものとなり、60質量%以下であると、得られるアスファルト被膜のべたつきをより低減することができる。
【0058】
前記共重合体に含まれる前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(c)の含有量は、好ましくは30~80質量%であり、より好ましくは35~70質量%であり、更に好ましくは40~60質量%である。前記構成単位(c)の含有量が30質量%以上であると、得られるアスファルト被膜のべたつきをより低減することができ、80質量%以下であると、共重合体を含むアスファルト乳剤組成物の高温での貯蔵安定性がより優れたものとなる。
【0059】
前記共重合体が前記構成単位(d)を含む場合、その含有量は、好ましくは1~10質量%であり、より好ましくは2~8質量%であり、更に好ましくは3~8質量%である。前記構成単位(d)の含有量が1質量%以上であると、得られるアスファルト被膜のべたつきをより低減することができ、10質量%以下であると、共重合体を含むアスファルト乳剤組成物の高温での貯蔵安定性がより優れたものとなる。
【0060】
(共重合体の物性)
前記共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5,000~100,000であり、より好ましくは6,000~95,000であり、更に好ましくは8,000~90,000であり、より更に好ましくは10,000~80,000であり、より更に好ましくは10,000~50,000である。前記Mwが5,000以上であると、共重合体の凝集を抑制でき、当該共重合体を含むアスファルト乳剤組成物の高温での貯蔵安定性がより優れたものとなる。また、前記Mwが100,000以下であると、アスファルト乳剤の安定性に影響を与えずに使用することができる。
前記共重合体の重量平均分子量(Mw)は、実施例に記載の方法でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用し、分子量が既知の標準ポリエチレングリコール試料を用いて検量線を作成して測定したポリエチレングリコール換算分子量である。
【0061】
前記共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.01~10.0であり、より好ましくは1.3~9.0であり、更に好ましくは1.5~8.0であり、より更に好ましくは1.8~6.0であり、より更に好ましくは2.0~4.0である。Mw/Mnが前記範囲内であると、共重合体を含むアスファルト乳剤組成物の高温での貯蔵安定性がより優れたものとなり、また、べたつきがより低減されたアスファルト被膜が得られる。
前記共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、GPCの測定により求めた標準ポリエチレングリコール換算の重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比を意味する。
【0062】
(共重合体の製造方法)
前記共重合体は、各構成単位の由来となる単量体を公知の方法によって共重合させて製造することができる。共重合の方法としては、例えば、溶媒中での重合、塊状重合などの重合方法が挙げられる。
【0063】
溶媒中での重合において使用される溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコール;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;シクロヘキサン、n-ヘキサンなどの脂環式又は脂肪族炭化水素;酢酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類などが挙げられる。原料単量体および得られる共重合体の溶解性の面から、水および低級アルコールからなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましく、その中でも水を用いることがより好ましい。
【0064】
溶媒中で共重合を行う場合は、各単量体と重合開始剤とを各々反応容器に連続滴下してもよいし、各単量体の混合物と重合開始剤とを各々反応容器に連続滴下してもよい。また、反応容器に溶媒を仕込み、単量体及び溶媒の混合物と、重合開始剤溶液とを各々反応容器に連続滴下してもよいし、単量体の一部または全部を反応容器に仕込み、重合開始剤を連続滴下してもよい。
【0065】
共重合に使用し得る重合開始剤は、特に限定されないが、水溶媒中で共重合を行う際には、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;t-ブチルハイドロパーオキサイドなどの水溶性有機過酸化物が挙げられる。この際、亜硫酸水素ナトリウム、モール塩などの促進剤を併用してもよい。また、低級アルコール、芳香族炭化水素、脂環式又は脂肪族炭化水素、エステル類あるいはケトン類等の溶媒中で共重合を行う際には、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイドなどのパーオキサイド;クメンパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;アゾビスイソブチロニトリルなどの芳香族アゾ化合物などが重合開始剤として使用できる。この際、アミン化合物などの促進剤を併用してもよい。さらに、水-低級アルコール混合溶剤中で共重合を行う場合には、例えば、前述の重合開始剤又は重合開始剤と促進剤との組合せの中から適宜選択して使用することができる。重合温度は、用いる溶媒、重合開始剤の種類など重合条件によって適宜異なるが、通常50~120℃の範囲で行われる。
【0066】
共重合においては、必要に応じて連鎖移動剤を用いて分子量を調整してもよい。使用される連鎖移動剤としては、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル及び2-メルカプトエタンスルホン酸などの既知のチオール系化合物;亜リン酸、次亜リン酸、及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、及びその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)の低級酸化物及びその塩;等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。さらに、共重合体の分子量調整のために、共重合体を得るための単量体として、上記した単量体以外に、さらに連鎖移動性の高い別の単量体を用いてもよい。連鎖移動性の高い単量体としては、例えば(メタ)アリルスルホン酸(塩)系単量体が挙げられる。このような単量体の配合率は、共重合体において、通常は20質量%以下であり、10質量%以下であることが好ましい。
【0067】
共重合体を得る際に水溶媒中で共重合する場合、重合時のpHは通常不飽和結合を有する単量体の影響で強酸性となるが、これを適当なpHに調整してもよい。重合の際にpHの調整が必要な場合は、リン酸、硫酸、硝酸、アルキルリン酸、アルキル硫酸、アルキルスルホン酸、(アルキル)ベンゼンスルホン酸などの酸性物質を用いてpHの調整を行うことができる。これら酸性物質の中では、pH緩衝作用がある点等から、リン酸を用いることが好ましい。しかし、エステル系の単量体が有するエステル結合の不安定さを解消するためには、pH2~7で重合を行うことが好ましい。また、pHの調整に用い得るアルカリ性物質に特に限定はないが、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ性物質が一般的である。pH調整は、重合前の単量体を含む溶液に対して行ってもよいし、重合後の共重合体を含む溶液に対して行ってもよい。また、これらは重合前に一部のアルカリ性物質を添加して重合を行った後、さらに共重合体を含む溶液に対してpH調整を行ってもよい。
【0068】
[舗装用アスファルト乳剤組成物]
本実施形態の舗装用アスファルト乳剤組成物(以下、単にアスファルト乳剤組成物ともいう)は、上述の共重合体と、アスファルト、乳化剤及び水を含むアスファルト乳剤とを含み、前記アスファルト乳剤がカチオン系、アニオン系及びノニオン系からなる群より選ばれる少なくとも1種のアスファルト乳剤である。
本実施形態の舗装用アスファルト乳剤組成物は、上述の共重合体を含むことにより、高温での貯蔵安定性に優れ、かつべたつきが低減されたアスファルト被膜を形成することができる。
【0069】
(共重合体)
本実施形態で用いられる共重合体は、[タイヤ付着抑制剤]の項で説明したものが用いられる。
前記共重合体の含有量は、アスファルト乳剤100質量部に対し、好ましくは0.2~25質量部であり、より好ましくは1~20質量部であり、更に好ましくは3~20質量部であり、より更に好ましくは5~18質量部であり、より更に好ましくは8~18質量部である。共重合体の含有量が0.2質量部以上であると、べたつきがより低減されたアスファルト被膜を得ることができ、25質量部以下であると、共重合体の凝集を抑制でき、アスファルト乳剤組成物の高温での貯蔵安定性がより優れたものとなる。
【0070】
(アスファルト乳剤)
本実施形態で用いられるアスファルト乳剤は、アスファルト、乳化剤及び水を含む。前記アスファルト乳剤は、カチオン系、アニオン系及びノニオン系からなる群より選ばれる少なくとも1種のアスファルト乳剤であり、本発明の効果をより発揮する観点から、カチオン系アスファルト乳剤が好ましい。なお、アスファルト乳剤は、乳化剤の種類により、カチオン系、アニオン系又はノニオン系のアスファルト乳剤に分類される。
アスファルト乳剤としては特に限定されないが、例えば、日本工業規格JIS K 2208(2000)で規定されている「PK-1」、「PK-2」、「PK-3」、「PK-4」、「MK-1」、「MK-2」、「MK-3」;一般社団法人日本アスファルト乳剤協会規格JEAAS-2006で規定されている「PK-P」、「PK-H」、「MK-C」、「PKR-T」、「PKR-S-1」、「PKR-S-2」等が挙げられる。
【0071】
アスファルト乳剤の固形分含有量は、アスファルト乳剤の規格の観点から、好ましくは40~65質量%であり、より好ましくは40~62質量%であり、更に好ましくは45~62質量%である。
【0072】
アスファルト乳剤に含まれるアスファルトとしては特に限定されないが、例えば、レーキアスファルト、ロックアスファルト、アスファルトタイト等の天然アスファルト;ストレートアスファルト、ブローンアスファルト等の石油アスファルト;セミブローンアスファルト、硬質アスファルトが挙げられる。また、これらのアスファルトに、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、ゴム等を配合して改質した改質アスファルトであってもよい。
【0073】
アスファルトの含有量は、アスファルト乳剤の総質量に対して、好ましくは25~65質量%であり、より好ましくは30~65質量%であり、更に好ましくは30~60質量%である。
【0074】
アスファルト乳剤に含まれる乳化剤としては、カチオン系、アニオン系及びノニオン系のいずれも用いることができる。中でも、本発明の効果をより発揮する観点から、カチオン系乳化剤が好ましい。
カチオン系乳化剤としては、例えば、1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アンモニウム塩又はポリアミン、あるいはこれらの混合アミンが挙げられる。
アニオン系乳化剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタリンスルホン酸塩、ロジン酸塩が挙げられる。
ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミンが挙げられる。
【0075】
乳化剤の含有量は、アスファルト乳剤の総質量に対して、好ましくは0.1~10.0質量%であり、より好ましくは0.1~8.0質量%であり、更に好ましくは0.1~5.0質量%である。乳化剤の含有量が前記範囲内であると、アスファルト乳剤の凝集を抑制でき、アスファルト乳剤組成物の高温での貯蔵安定性がより優れたものとなり、また、機械的安定性および凍結安定性が優れたものとなる。
【0076】
本実施形態のアスファルト乳剤組成物は、上記各成分以外にその他の添加剤を必要に応じて含んでもよい。その他の添加剤としては、例えば、3級アミン又はポリアミンを酸で中和した塩、4級アンモニウム塩等の凝集防止剤;脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素等の有機溶剤;流動化剤;可塑剤、塩化カルシウム等の電解質;コロイダルシリカ等の付着防止剤が挙げられる。これらの各添加剤はいずれも1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、凝集防止剤として例示する3級アミン又はポリアミンを酸で中和した塩、4級アンモニウム塩は、カチオン系乳化剤としても機能し得るが、乳化後のアスファルト乳剤を含むアスファルト乳剤組成物に添加する場合には、凝集防止剤として取り扱うものとする。
【0077】
その他の添加剤の合計含有量は、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されないが、アスファルト乳剤100質量部に対し、好ましくは0.1~100質量部であり、より好ましくは0.1~80質量部であり、更に好ましくは0.2~50質量部である。
【0078】
本実施形態のアスファルト乳剤組成物は、JIS K 2208(2000)「貯蔵安定度」試験法に基づき測定した貯蔵安定度が、好ましくは1.0質量%未満であり、より好ましくは0.8質量%以下であり、更に好ましくは0.5質量%以下である。
前記貯蔵安定度は、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
【0079】
[舗装用アスファルト乳剤組成物の製造方法]
本実施形態の舗装用アスファルト乳剤組成物の製造方法は、下記工程(i)又は工程(ii)を有する。
工程(i):前記乳化剤及び前記水を含む乳化液に、前記共重合体を混合し、得られた混合液に前記アスファルトを加えて乳化する工程
工程(ii):前記アスファルトと、前記乳化剤及び前記水を含む乳化液とを乳化し、得られたアスファルト乳剤に前記共重合体を混合する工程
【0080】
〔工程(i)〕
本工程では、まず乳化剤及び水を含む乳化液に、共重合体を混合し、混合液を得る。
前記共重合体は、[タイヤ付着抑制剤]の項で説明したものが用いられる。また、前記乳化剤は、[舗装用アスファルト乳剤組成物]の項で説明したものが用いられる。
乳化液は、乳化剤を好ましくは加温した水に溶解させて調製する。
【0081】
カチオン系アスファルト乳剤組成物を製造する場合、前記乳化液に、酸を加え、40℃におけるpHを1~6に調整することが好ましい。酸としては、例えば、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸、酢酸、グリコール酸が挙げられるが、好ましくは塩酸、リン酸である。
【0082】
前記混合は、撹拌機を用いて行う。撹拌機としては、例えば、ディスパー、ホモミキサー等の高速撹拌混合装置;ペイントシェーカー、ビーズミル等のメディア式分散機;アンカー翼等の混合撹拌装置が挙げられる。
【0083】
前記混合は、温度40~80℃で、0.1~3時間行うことが好ましく、温度50~75℃で、0.1~1時間行うことがより好ましい。
【0084】
共重合体の含有量は、乳化液の質量を基準にして、好ましくは0.5~10.0質量%であり、より好ましくは1.0~8.5質量%であり、更に好ましくは1.0~5.0質量%である。混合液とアスファルトとの混合比率を調整することにより、アスファルト乳剤100質量部に対する共重合体の含有量を上述の範囲内とすることができる。
【0085】
次に、得られた混合液にアスファルトを加え、乳化機を用いて乳化し、アスファルト乳剤組成物を得る。
前記アスファルトは、[舗装用アスファルト乳剤組成物]の項で説明したものが用いられる。乳化機としては、例えば、コロイドミル、ホモジナイザー、ラインミキサーが挙げられる。
アスファルトは加熱溶融状態にして乳化を行う。加熱温度は、130~180℃が好ましく、140~160℃がより好ましい。
【0086】
〔工程(ii)〕
本工程では、まず、アスファルトと、乳化剤及び水を含む乳化液とを乳化し、アスファルト乳剤を得る。
前記アスファルト及び乳化剤は、[舗装用アスファルト乳剤組成物]の項で説明したものが用いられる。
前記乳剤としてカチオン系乳剤を用いる場合、乳化液に酸を加え、40℃におけるpHを1~6に調整することが好ましい。酸は〔工程(i)〕の項で説明したものが用いられる。
前記乳化は、乳化機を用いて行う。乳化機は、〔工程(i)〕の項で説明したものが用いられる。また、前記乳化は、アスファルトを加熱溶融状態にして行う。加熱温度は、130~180℃が好ましく、140~160℃がより好ましい。
【0087】
得られるアスファルト乳剤の固形分含有量は、アスファルト乳剤の規格の観点から、好ましくは40~65質量%であり、より好ましくは40~62質量%であり、更に好ましくは45~62質量%である。
【0088】
アスファルトの含有量は、アスファルト乳剤の総質量に対して、好ましくは25~65質量%であり、より好ましくは30~65質量%であり、更に好ましくは30~60質量%である。
【0089】
乳化剤の含有量は、アスファルト乳剤の総質量に対して、好ましくは0.1~10.0質量%であり、より好ましくは0.1~8.0質量%であり、更に好ましくは0.1~5.0質量%である。乳化剤の含有量が前記範囲内であると、アスファルト乳剤の凝集を抑制でき、アスファルト乳剤組成物の高温での貯蔵安定性がより優れたものとなり、また、機械的安定性および凍結安定性が優れたものとなる。
【0090】
次に、得られたアスファルト乳剤に共重合体を混合し、アスファルト乳剤組成物を得る。
前記共重合体は、[タイヤ付着抑制剤]の項で説明したものが用いられる。
前記混合は、撹拌機又は乳化機を用いて行う。撹拌機及び乳化機は〔工程(i)〕の項で説明したものが用いられる。
【0091】
前記共重合体の含有量は、アスファルト乳剤100質量部に対し、好ましくは0.2~25質量部であり、より好ましくは1~20質量部であり、更に好ましくは3~20質量部であり、より更に好ましくは5~18質量部であり、より更に好ましくは8~18質量部である。共重合体の含有量が0.2質量部以上であると、べたつきがより低減されたアスファルト被膜を得ることができ、25質量部以下であると、共重合体の凝集を抑制でき、アスファルト乳剤組成物の高温での貯蔵安定性がより優れたものとなる。
【0092】
本実施形態の舗装用アスファルト乳剤組成物の製造方法は、本発明の効果をより発揮する観点から、前記工程(ii)を有することが好ましい。
【0093】
このようにして得られるアスファルト乳剤組成物は、高温での貯蔵安定性に優れ、かつべたつきが低減されたアスファルト被膜を形成することができるため、道路舗装におけるプライムコート及びセメント安定処理路盤などのコンクリート舗装の養生用、タックコート用などとして好適に使用することができる。また、フォグシール、チップシール、スラリーシールなどの表面処理工法用の散布材料に好適に使用することができる。
【0094】
[舗装体]
本実施形態の舗装体は、路盤上に、1層以上の基層と表面層とをこの順に有し、前記路盤-基層間および前記基層-表面層間の少なくともいずれかにアスファルト乳剤層を有する舗装体であって、前記アスファルト乳剤層が、上述の舗装用アスファルト乳剤組成物を用いてなる舗装体である。
前記アスファルト乳剤層は、上述の舗装用アスファルト乳剤組成物を用いて形成されるため、べたつきが低減される。したがって、舗装体の施工時に、前記アスファルト乳剤層上を施工機械が走行しても当該施工機械のタイヤなどにアスファルトを付着し難くすることができる。
【0095】
図1は、本実施形態の舗装体の断面の一形態を示す模式図である。
舗装体10は、路盤1上に基層2が設けられており、当該基層2上に表面層3が設けられている。また、前記路盤1-基層2間および前記基層2-表面層3間の少なくともいずれかに、上述の舗装用アスファルト乳剤組成物で形成されたアスファルト乳剤層4が設けられている。なお、路盤1と基層2との間に形成されるアスファルト乳剤層4は、プライムコート4aともいい、基層2と表面層3との間に形成されるアスファルト乳剤層4は、タックコート4bともいう。
【0096】
路盤1は、上層路盤と下層路盤とから構成され、下層路盤は、路床上に砕石を用いて形成され、上層路盤は、下層路盤上に粒度が調整された砕石を用いて形成される。一般に、上層路盤に用いられる砕石は、粒径が25mm程度のものが採用される。
基層2は、表層3からの荷重を均等に路盤1に伝達する役割をもつ層であり、例えば、密粒度アスファルト混合物、細粒度アスファルト混合物、ポーラスアスファルト混合物、改質アスファルト混合物、グースアスファルト混合物から形成される。
表層3は、舗装体の表面に露出する層であり、例えば、開粒度アスファルト混合物、密粒度アスファルト混合物から形成される。
【0097】
アスファルト乳剤層4は、路盤1の上面又は基層2の上面に、上述の舗装用アスファルト乳剤組成物を、散布又は塗布することにより形成される。散布又は塗布の方法としては特に限定されず、公知の方法を採用することができる。例えば、ディストリビューター(アスファルト乳剤散布用車輛)、エンジンスプレイヤー等の散布機を用いた散布、ローラー刷毛、ゴムレーキ等を用いた塗布が挙げられる。
【0098】
アスファルト乳剤組成物の散布又は塗布量は特に限定されない。アスファルト乳剤組成物中のアスファルト濃度にもよるが、タックコートの場合、例えば、0.3~0.6L/m程度であることが好ましく、プライムコートの場合、例えば、1.0~2.0L/m程度であることが好ましい。
【0099】
また、散布又は塗布をした後、常法により養生することが好ましい。養生時間は特に限定されないが、通常、30分間から数時間程度である。
【0100】
アスファルト乳剤組成物を散布又は塗布し、養生することで、アスファルトを主成分とするアスファルト乳剤層4が形成される。アスファルト乳剤層4の厚みは特に限定されず、性能を考慮して適宜決定すればよいが、通常、0.1~10mmの範囲内である。アスファルト乳剤層4は、タックコート又はプライムコートであることが好ましく、特に、プライムコートであることが好ましい。
【実施例
【0101】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の「部」は、特に明記しない場合は質量部を意味する。
【0102】
(製造例1:共重合体(A-1)の製造)
温度計、撹拌装置、還流装置及び滴下装置を備えたガラス反応容器に、水90部、及び一般式(1)で表される単量体として(ポリ)エチレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数10)22部を投入し、撹拌しながら100℃に昇温した後、一般式(3)で表される単量体としてメタクリル酸11部、一般式(2)で表される単量体としてメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数25)66部、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとして2-ヒドロキシプロピルアクリレート108部、及び水51部を混合したモノマー水溶液と、過硫酸ナトリウム4部及び水16部の混合液と、3-メルカプトプロピオン酸2部及び水42部の混合液とを、それぞれ2時間で、100℃に保持した反応容器に連続滴下した。滴下終了後、温度を100℃に保持した状態でさらに1時間反応させることにより共重合体(A-1)を得た。この液を30質量%水酸化ナトリウム水溶液でpH4に調整し、共重合体(A-1)の水溶液とした。液中の共重合体(A-1)はMw=21,000、Mw/Mn=2.6であった。
【0103】
(製造例2:共重合体(A-2)の製造)
温度計、撹拌装置、還流装置及び滴下装置を備えたガラス反応容器に、水90部、及び一般式(1)で表される単量体として(ポリ)エチレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数10)22部を投入し、撹拌しながら100℃に昇温した後、一般式(3)で表される単量体としてメタクリル酸12部、一般式(2)で表される単量体としてメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数25)66部、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとして2-ヒドロキシエチルアクリレート96部、及び水84部を混合したモノマー水溶液と、過硫酸アンモニウム3部及び水16部の混合液と、3-メルカプトプロピオン酸2部及び水42部の混合液とを、それぞれ2時間で、100℃に保持した反応容器に連続滴下した。滴下終了後、温度を100℃に保持した状態でさらに1時間反応させることにより共重合体(A-2)を得た。この液を30質量%水酸化ナトリウム水溶液でpH4に調整し、共重合体(A-2)の水溶液とした。液中の共重合体(A-2)はMw=30,200、Mw/Mn=2.7であった。
【0104】
(製造例3:共重合体(a-1)の製造)
温度計、撹拌装置、還流装置及び滴下装置を備えたガラス反応容器に、水164部を投入し、撹拌しながら100℃に昇温した後、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとして2-ヒドロキシプロピルアクリレート169部及び水112部を混合したモノマー水溶液と、過硫酸アンモニウム1部及び水41部の混合液とを、各々2時間で、100℃に保持した反応容器に連続滴下した。滴下終了後、温度を100℃に保持した状態でさらに1時間反応させることにより共重合体(a-1)を得た。液中の共重合体(a-1)はMw=11,300、Mw/Mn=2.9であった。
【0105】
(製造例4:共重合体(a-2)の製造)
温度計、撹拌装置、還流装置及び滴下装置を備えたガラス反応容器に、水190部及び一般式(1)で表される単量体として(ポリ)エチレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数35)50部を投入し、撹拌しながら100℃に昇温した後、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとして2-ヒドロキシプロピルアクリレート117部、及び水78部を混合したモノマー水溶液と、過硫酸ナトリウム1部、及び水44部の混合液とを、各々30分間で、100℃に保持した反応容器に連続滴下した。滴下終了後、温度を100℃に保持した状態でさらに1時間反応させることにより共重合体(a-2)を得た。液中の共重合体(a-2)はMw=40,100、Mw/Mn=4.2であった。
【0106】
得られた共重合体(A-1)、(A-2)、(a-1)及び(a-2)について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0107】
[共重合体の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)]
共重合体のMw及びMw/Mnは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により標準ポリエチレングリコール換算で求めた。測定装置及び条件は、以下のとおりである。
・測定装置;東ソー株式会社製
・使用カラム;Shodex Column OH-pak SB-806HQ、SB-804HQ、SB-802.5HQ
・溶離液;0.05mM硝酸ナトリウム/アセトニトリル 8/2(v/v)
・標準物質;ポリエチレングリコール(東ソー株式会社製、GLサイエンス株式会社製)
・検出器;示差屈折計(東ソー株式会社製)
・検量線;ポリエチレングリコール基準
【0108】
【表1】
【0109】
(比較例1:アスファルト乳剤組成物(1)(アスファルト乳剤-1)の製造)
混合アミン(1級アミン、2級アミン、3級アミンの混合物)0.4質量部を、70℃の温水60質量部に加え、酢酸を0.4質量部添加し、アミン塩とした。その後、電解質である塩化カルシウムを0.4質量部加え、乳化液を製造した。この乳化液に水38.8質量部を加え、50℃程度まで乳化液温度を下げた後、ホモジナイザー(型番:アサヒホモジナイザーLL型(研究タイプ)、有限会社エス・シー・テクノ製)を用いて、乳化液50質量部と150℃程度の熱可塑性樹脂で改質したアスファルト50質量部とを乳化し、アスファルト含有率50質量%のカチオン系アスファルト乳剤-1を製造した。
【0110】
(実施例1:アスファルト乳剤組成物(2)の製造)
混合アミン(1級アミン、2級アミン、3級アミンの混合物)0.4質量部を、70℃の温水60質量部に加え、酢酸を0.4質量部添加し、アミン塩とした。その後、電解質である塩化カルシウムを0.4質量部加え、乳化液を製造した。この乳化液61.2質量部に、製造例1で得られた共重合体(A-1)を1質量部加え、ホモディスパー(型番:DH-2.5、株式会社プライミクス製)を用いて混合した。得られた混合液に水37.8質量部を加え、50℃程度まで乳化液温度を下げた後、混合液50質量部と150℃程度の熱可塑性樹脂で改質したアスファルト50質量部とをホモジナイザー(型番:アサヒホモジナイザーLL型(研究タイプ)、有限会社エス・シー・テクノ製)を用いて乳化し、アスファルト含有率50質量%のアスファルト乳剤組成物(2)を得た。
【0111】
(実施例2:アスファルト乳剤組成物(3)の製造)
共重合体(A-1)の含有量を3質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にしてアスファルト含有率50質量%のアスファルト乳剤組成物(3)を得た。
【0112】
(実施例3:アスファルト乳剤組成物(4)の製造)
共重合体(A-1)の含有量を5質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にしてアスファルト含有率50質量%のアスファルト乳剤組成物(4)を得た。
【0113】
(実施例4:アスファルト乳剤組成物(5)の製造)
混合アミン(1級アミン、2級アミン、3級アミンの混合物)0.4質量部を、70℃の温水60質量部に加え、酢酸を0.4質量部添加し、アミン塩とした。その後、電解質である塩化カルシウムを0.4質量部加え、乳化液を製造した。この乳化液に水38.8質量部を加え、50℃程度まで乳化液温度を下げた後、ホモジナイザー(型番:アサヒホモジナイザーLL型(研究タイプ)、有限会社エス・シー・テクノ製)を用いて、乳化液50質量部と150℃程度の熱可塑性樹脂で改質したアスファルト50質量部とを乳化し、アスファルト含有率50質量%のカチオン系アスファルト乳剤-1を製造した。
得られたカチオン系アスファルト乳剤-1 100質量部に対し製造例1で得られた共重合体(A-1)が3質量部となるように加え、ホモディスパー(型番:DH-2.5、株式会社プライミクス製)を用いて混合し、アスファルト含有率49質量%のアスファルト乳剤組成物(5)を得た。
【0114】
(実施例5:アスファルト乳剤組成物(6)の製造)
カチオン系アスファルト乳剤-1 100質量部に対する共重合体(A-1)の含有量を5質量部に変更したこと以外は実施例4と同様にしてアスファルト含有率48質量%のアスファルト乳剤組成物(6)を得た。
【0115】
(実施例6:アスファルト乳剤組成物(7)の製造)
カチオン系アスファルト乳剤-1 100質量部に対する共重合体(A-1)の含有量を10質量部に変更したこと以外は実施例4と同様にしてアスファルト含有率45質量%のアスファルト乳剤組成物(7)を得た。
【0116】
(実施例7:アスファルト乳剤組成物(8)の製造)
カチオン系アスファルト乳剤-1 100質量部に対する共重合体(A-1)の含有量を18質量部に変更したこと以外は実施例4と同様にしてアスファルト含有率42質量%のアスファルト乳剤組成物(8)を得た。
【0117】
(実施例8:アスファルト乳剤組成物(9)の製造)
混合アミン(1級アミン、2級アミン、3級アミンの混合物)0.4質量部を、70℃の温水60質量部に加え、酢酸を0.4質量部添加し、アミン塩とした。その後、電解質である塩化カルシウムを0.4質量部加え、乳化液を製造した。この乳化液に水38.8質量部を加え、50℃程度まで乳化液温度を下げた後、ホモジナイザー(型番:アサヒホモジナイザーLL型(研究タイプ)、有限会社エス・シー・テクノ製)を用いて、乳化液50質量部と150℃程度の熱可塑性樹脂で改質したアスファルト50質量部とを乳化し、アスファルト含有率50質量%のカチオン系アスファルト乳剤-1を製造した。
得られたカチオン系アスファルト乳剤-1 100質量部に対し凝集防止剤として3級アミンを塩酸で中和した塩を5質量部加え、ホモディスパー(型番:DH-2.5、株式会社プライミクス製)を用いて混合した後、さらに、上記アスファルト乳剤-1 100質量部に対し製造例1で得られた共重合体(A-1)が20質量部となるように加えて混合し、アスファルト含有率40質量%のアスファルト乳剤組成物(9)を得た。
【0118】
(実施例9:アスファルト乳剤組成物(10)の製造)
共重合体(A-1)を製造例2で得られた共重合体(A-2)に変更したこと以外は実施例6と同様にしてアスファルト含有率45質量%のアスファルト乳剤組成物(10)を得た。
【0119】
(比較例2:アスファルト乳剤組成物(11)(PK-3))
アスファルト乳剤組成物として、日本工業規格JIS K 2208(2000)で規定された「PK-3」を用いた。
【0120】
(実施例10:アスファルト乳剤組成物(12)の製造)
混合アミン(1級アミン、2級アミン、3級アミンの混合物)0.4質量部を、70℃の温水60質量部に加え、酢酸を0.4質量部添加し、アミン塩とした。その後、電解質である塩化カルシウムを0.4質量部加え、乳化液を製造した。この乳化液61.2質量部に、製造例1で得られた共重合体(A-1)を3質量部加え、ホモディスパー(型番:DH-2.5、株式会社プライミクス製)を用いて混合した。得られた混合液に水35.8質量部を加え、50℃程度まで乳化液温度を下げた後、ホモジナイザー(型番:アサヒホモジナイザーLL型(研究タイプ)、有限会社エス・シー・テクノ製)を用いて、乳化液50質量部と150℃程度のストレートアスファルト50質量部とを乳化し、アスファルト含有率50質量%のアスファルト乳剤組成物(12)を得た。
【0121】
(実施例11:アスファルト乳剤組成物(13)の製造)
アスファルト乳剤として、「PK-3」100質量部に対し製造例1で得られた共重合体(A-1)が10質量部となるように加え、ホモディスパー(型番:DH-2.5、株式会社プライミクス製)を用いて混合し、アスファルト含有率45質量%のアスファルト乳剤組成物(13)を得た。
【0122】
(比較例3:アスファルト乳剤組成物(14)(アスファルト乳剤-2)の製造)
混合アミン(1級アミン、2級アミン、3級アミンの混合物)0.4質量部を、70℃の温水60質量部に加え、酢酸を0.4質量部添加し、アミン塩とした。その後、電解質である塩化カルシウムを0.4質量部加え、乳化液を製造した。この乳化液に水38.8質量部を加え、50℃程度まで乳化液温度を下げた後、ホモジナイザー(型番:アサヒホモジナイザーLL型(研究タイプ)、有限会社エス・シー・テクノ製)を用いて、乳化液40質量部と150℃程度の熱可塑性樹脂及びワックスで改質したアスファルト60質量部とを乳化し、アスファルト含有率60質量%のカチオン系アスファルト乳剤-2を製造した。
【0123】
(実施例12:アスファルト乳剤組成物(15)の製造)
アスファルト乳剤として、カチオン系アスファルト乳剤-2を用いたこと以外は実施例6と同様にしてアスファルト含有率55質量%のアスファルト乳剤組成物(15)を得た。
【0124】
(実施例13:アスファルト乳剤組成物(16)の製造)
アスファルト乳剤として、カチオン系アスファルト乳剤-2を用いたこと以外は実施例8と同様にしてアスファルト含有率48質量%のアスファルト乳剤組成物(16)を得た。
【0125】
(比較例4:アスファルト乳剤組成物(17)の製造)
アスファルト乳剤としてのカチオン系アスファルト乳剤-2 100質量部に対し塩酸を3質量部添加したコロイダルシリカ(BESIL(登録商標)-30S、A-GREEN CO., LTD.製)20質量部を加え、ホモディスパー(型番:DH-2.5、株式会社プライミクス製)を用いて混合し、アスファルト含有率50質量%のアスファルト乳剤組成物(17)を得た。
【0126】
(比較例5:アスファルト乳剤組成物(18)の製造)
共重合体(A-1)を製造例3で得られた共重合体(a-1)に変更したこと以外は実施例6と同様にしてアスファルト含有率45質量%のアスファルト乳剤組成物(18)を得た。
【0127】
(比較例6:アスファルト乳剤組成物(19)の製造)
共重合体(A-1)を製造例4で得られた共重合体(a-2)に変更したこと以外は実施例6と同様にしてアスファルト含有率45質量%のアスファルト乳剤組成物(19)を得た。
【0128】
実施例1~13及び比較例1~6で得られたアスファルト乳剤組成物について、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0129】
[タイヤ付着率(40℃、50℃、60℃)]
日本アスファルト乳剤協会規格(JEAAS)(2020)に準拠して、ホイールトラッキング試験機(型番:AI-1100-3ST、株式会社岩田工業所製)を用いて、40℃、50℃及び60℃におけるゴムシートへの付着率を測定した。
縦300mm×横300mm、厚さ3mmのスレートボード(JIS A 5430(2013)繊維強化セメント板で軟質板に分類されるもの)に、アスファルト乳剤組成物を、固形分換算で300g/mとなるようにゴムベラを用いて表面が均一になるように塗布し、室温(20℃)でアスファルト乳剤組成物が完全に分解するまで養生し、供試体を作製した。
材質が天然ゴムであり、ゴム硬度がJIS硬度にて20℃で84±4、60℃で78±2の厚み1mmのゴムシートを短冊状(長さ300±10mm、幅60±3mm)に成形し、下記手順(1)~(7)に従いホイールトラッキング試験によって、タイヤ付着率を測定した。
(1)作製した供試体、及び成形したゴムシートを、所定温度(40±1℃、50±1℃又は60±1℃)に調整した恒温槽にて4時間以上養生する。
(2)試験直前にゴムシートの質量を測定する。
(3)ゴムシートを供試体のタイヤ走行箇所に載せ、624±10Nの荷重でタイヤを1往復させる。
(4)タイヤ走行後、ゴムシートを垂直方向に一定の力で2秒以内に剥がす。
(5)ゴムシートの質量を速やかに測定し、付着したアスファルト被膜質量を求める。
(6)上記(1)~(5)の作業を1供試体あたり3カ所以上で実施する。
(7)タイヤ付着率は次式によって求める。
なお、表2における実施例2~9及び比較例5~6の値は、比較例1の値を100とした際の相対値、実施例10~11の値は、比較例2の値を100とした際の相対値、実施例12~13及び比較例4の値は、比較例3の値を100とした際の相対値である。
タイヤ付着率(質量%)=[試験後ゴムシート質量(g)-試験前ゴムシート質量(g)]/[タイヤ走行面積(m)×アスファルト乳剤組成物固形分塗布量(g/m)]×100
【0130】
【表2】
【0131】
本実施形態のタイヤ付着抑制剤(特定の構造を含む共重合体)を含む実施例1~13のアスファルト乳剤組成物は、得られたアスファルト被膜のタイヤ付着率がいずれも低減しており、べたつきを低減する効果が認められた。
【0132】
(実施例14~20及び比較例7~12)
上記で得られたアスファルト乳剤組成物(1)、(5)~(11)、(14)、(15)及び(17)~(19)について、以下の評価を行った。結果を表3に示す。
【0133】
[貯蔵安定度(20℃、60℃)]
JIS K 2208(2000)「貯蔵安定度」試験法に基づき、室温(20℃)で24時間静置後のアスファルト乳剤組成物の貯蔵安定度を測定した。また、アスファルト乳剤組成物(15)及び(17)については、温度60℃で24時間静置後の貯蔵安定度を測定した。
なお、数値が低いほど、アスファルト乳剤組成物の分離が少ないことを表し、1質量%未満であれば実用上問題ない。
【0134】
【表3】
【0135】
本実施形態のタイヤ付着抑制剤(特定の構造を含む共重合体)を含む実施例14~20のアスファルト乳剤組成物は、いずれも貯蔵安定性に優れることが分かる。
シリカを含む比較例10のアスファルト乳剤組成物は、60℃で24時間静置後の貯蔵安定度が1.0質量%以上であり、高温での貯蔵安定性に劣る。これに対し、実施例20のアスファルト乳剤組成物は、60℃で24時間静置後の貯蔵安定度が0.5質量%であり、高温での貯蔵安定性に優れることが分かる。
【0136】
(実施例21及び比較例13)
上記で得られたアスファルト乳剤組成物(11)及び(13)を用いて、以下の評価を行った。結果を表4に示す。
【0137】
[せん断強度試験(23℃、-10℃)]
縦300mm×幅300mmの型枠に、最大粒径が13mmの骨材と、ポリマー改質アスファルトII型とを含む密粒度アスファルト混合物を所定量敷き均し、ローラーで所定の密度まで転圧し、基層(アスファルト混合物層)を形成した。
前記基層の表面に、散布器を用いてアスファルト乳剤組成物を塗布量0.6L/mで塗布し、室温(20℃)で24時間養生し、アスファルト乳剤層を形成した。
前記アスファルト乳剤層上に、最大粒径が13mmの骨材と、ポリマー改質アスファルトII型とを含む密粒度アスファルト混合物を所定量敷き均し、ローラーで所定の密度まで転圧し、基層(アスファルト混合物層)を形成し、基層1/アスファルト乳剤層/基層2からなる供試体(舗装体)を作製した。
型枠から取り出した供試体の基層1を、測定温度に設定した荷重測定装置(型番:AG-100kNX、株式会社島津製作所製)に固定し、基層2(固定していない基層)において、アスファルト乳剤層を形成した面に平行な方向のせん断力(載荷速度:1mm/分)を加え、せん断強度(MPa)及び最大強度時の変位量(mm)を測定した。
なお、23℃における、せん断強度が0.15MPa以上、最大強度時の変位量が1mm以上であるとアスファルト乳剤層は接着性に優れるといえる。また、-10℃における、せん断強度が0.8MPa以上、最大強度時の変位量が0.5mm以上であるとアスファルト乳剤層は接着性に優れるといえる。
【0138】
【表4】
【0139】
実施例21の舗装体は、23℃におけるせん断強度及び-10℃におけるせん断強度が高く、また、いずれの温度においても最大強度時の変位量が大きいことから、接着性に優れることが分かる。
【符号の説明】
【0140】
10 舗装体
1 路盤
2 基層
3 表面層
4 アスファルト乳剤層
4a プライムコート
4b タックコート
【要約】
【課題】高温での貯蔵安定性に優れ、かつべたつきが低減されたアスファルト被膜を形成できる舗装用アスファルト乳剤組成物に用いられるタイヤ付着抑制剤、舗装用アスファルト乳剤組成物及びその製造方法、並びに舗装体を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表される単量体に由来する構成単位(a)、一般式(2)で表される単量体に由来する構成単位(b)及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(c)を含む共重合体を含有することを特徴とするタイヤ付着抑制剤。
【選択図】なし
図1