(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】自動計算装置及び自動計算プログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
G01C15/00 104Z
(21)【出願番号】P 2023200647
(22)【出願日】2023-11-28
【審査請求日】2023-11-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599143416
【氏名又は名称】株式会社 三英技研
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 真
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-90044(JP,A)
【文献】特開2007-204932(JP,A)
【文献】特開2022-84484(JP,A)
【文献】市川 新 外2名,都市域における新しい雨水流出シミュレーションモデルの提案 ーメッシュ法ー,水利科学,第28巻第1号,1984年,第23-49頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00-15/14
E03F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現況の地形及び計画を表す3次元モデル上の所定のエリアの雨水流出量を自動計算する自動計算装置であって、
前記3次元モデルを取得する3次元モデル取得部と、
前記3次元モデル取得部によって取得された前記3次元モデルに基づいて、最高点及び最下点を計算する計算部と、
前記計算部によって計算された前記最高点から前記最下点までの間の前記3次元モデルにおける雨水の流域を、ユーザが保有する設計情報に基づいて自動で区分けして複数のエリアを生成するエリア生成部と、
前記エリア生成部によって生成された前記エリア毎に当該エリアの面積を計算し、計算によって得られた当該エリアの面積を出力するとともに、前記計算によって得られた面積を利用して雨水流出量を計算し、出力する出力部とを備えていることを特徴とする自動計算装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動計算装置において、
前記設計情報には、既設流末に関する情報、切盛境界に関する情報、縦排水に関する情報のうち、任意の1つ以上が含まれていることを特徴とする自動計算装置。
【請求項3】
請求項1に記載の自動計算装置において、
前記計算部は、縦断方向の勾配および横断方向の勾配からなる合成勾配に基づいて、前記最高点及び前記最下点を計算することを特徴とする自動計算装置。
【請求項4】
請求項1に記載の自動計算装置において、
前記エリア生成部は、前記3次元モデルにおける雨水の流域を、車道の横断方向に所定の属性で区分けして複数のエリアを生成することを特徴とする自動計算装置。
【請求項5】
請求項1に記載の自動計算装置において、
前記エリア生成部によって生成された前記エリアと、前記出力部から出力された前記面積とを表示する表示部を備えていることを特徴とする自動計算装置。
【請求項6】
請求項5に記載の自動計算装置において、
前記表示部は、前記出力部から出力された前記雨水流出量を表示することを特徴とする自動計算装置。
【請求項7】
請求項5に記載の自動計算装置において、
前記出力部は、前記エリア毎に最高点及び最下点を計算し、前記エリア毎の最高点及び最下点に基づいて当該エリアの相対的に低い方を示すための高低情報を生成して出力し、
前記表示部は、前記出力部から出力された前記高低情報に基づいた矢印表示を前記3次元モデルと共に表示することを特徴とする自動計算装置。
【請求項8】
請求項7に記載の自動計算装置において、
前記表示部は、前記出力部から出力された前記高低情報に基づいて相対的に低い方を示す高低表示を前記3次元モデルと共に表示することを特徴とする自動計算装置。
【請求項9】
請求項5に記載の自動計算装置において、
前記計算部は、前記最高点と前記最下点の両点間の経路延長と勾配を計算し、
前記表示部は、前記最高点と前記最下点の両点間の経路延長と勾配を表示することを特徴とする自動計算装置。
【請求項10】
現況の地形及び計画を表す3次元モデル上の所定のエリアの雨水流出量を自動計算する自動計算プログラムであって、
前記3次元モデルを取得する3次元モデル取得工程と、
前記3次元モデル取得工程で取得した前記3次元モデルに基づいて、最高点及び最下点を計算する計算工程と、
前記計算工程で計算した前記最高点から前記最下点までの間の前記3次元モデルにおける雨水の流域を、ユーザが保有する設計情報に基づいて自動で区分けして複数のエリアを生成するエリア生成工程と、
前記エリア生成工程で生成した前記エリア毎に当該エリアの面積を計算し、計算によって得られた当該エリアの面積を出力するとともに、前記計算によって得られた面積を利用して雨水流出量を計算し、出力する出力工程とをコンピュータに実行させることを特徴とする自動計算プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば道路や宅盤、宅地造成、河川、駐車場、港湾施設などの設計に用いられる自動計算装置及び自動計算プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、現況の地形データに基づいて道路及びその周辺の計画設計を行うとともに、各種図面データを生成する道路計画設計支援システムが開示されている。特許文献1の道路計画設計支援システムでは、現況の地形及び計画を表す現況3次元データとして、等高線データを取得し、取得された等高線データに基づいて3次元メッシュデータを生成した後、作成された3次元メッシュデータに基づいて鳥瞰データを生成するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、既存の道路や宅盤、宅地造成、河川、駐車場、港湾施設などの2次元設計では縦断勾配、横断勾配などの勾配情報から、どこが高くどこが低いのかを求めるため非常に手間が掛かり、さらには縦横断勾配の双方が複雑に絡まりあった場合、勾配の方向を間違えてしまう事も多くあった。
【0005】
特に雨の多い日本では用排水の設計は非常に重要であり、雨水流出量を間違えないように計算することが強く望まれている。
【0006】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、雨水流出量を正確にかつ短時間で把握可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の一態様では、現況の地形及び計画を表す3次元モデル上の所定のエリアの雨水流出量を自動計算する自動計算装置を前提とすることができる。自動計算装置は、前記3次元モデルを取得する3次元モデル取得部と、前記3次元モデル取得部によって取得された前記3次元モデルに基づいて、最高点及び最下点を計算する計算部と、前記計算部によって計算された前記最高点から前記最下点までの間の前記3次元モデルにおける雨水の流域を、ユーザが保有する設計情報に基づいて自動で区分けして複数のエリアを生成するエリア生成部と、前記エリア生成部によって生成された前記エリア毎に当該エリアの面積を計算し、計算によって得られた当該エリアの面積を出力するとともに、前記計算によって得られた面積を利用して雨水流出量を計算し、出力する出力部とを備えている。
【0008】
この構成によれば、現況の地形及び計画を表す3次元モデルを3次元モデル取得部が取得すると、取得した3次元モデルには高さ情報が含まれているので、計算部が3次元モデルの高さ情報に基づいて当該3次元モデル上の最高点及び最下点を計算する。高さ情報には、等高線も含まれており、等高線に基づいて3次元モデル上の最高点及び最下点を計算してもよい。
【0009】
また、前記最高点と前記最下点の両点間の経路延長と勾配を計算し、出力、表示することもできる。
【0010】
エリア生成部は、例えば最高点から最下点までの間の3次元モデルにおける雨水の流域を、ユーザが保有する設計情報に基づいて自動で区分けして複数のエリアを生成する。これによって生成された複数のエリアの面積を出力部が計算する。計算によって得られた面積を利用して雨水流出量の計算が可能になる。これにより、ユーザは、3次元モデルの入力、設計情報の入力等を行うだけで、エリアごとに正確な雨水流出量を把握することが可能になる。
【0011】
また、前記設計情報には、既設流末に関する情報、切盛境界に関する情報、縦排水に関する情報のうち、任意の1つ以上が含まれていてもよい。
【0012】
また、前記計算部は、縦断方向の勾配および横断方向の勾配からなる合成勾配に基づいて、前記最高点及び前記最下点を計算することができる。
【0013】
また、前記エリア生成部は、前記3次元モデルにおける雨水の流域を、車道の横断方向に所定の属性で区分けして複数のエリアを生成することができる。
【0014】
自動計算装置は、前記エリア生成部によって生成された前記エリアと、前記出力部から出力された前記面積とを表示する表示部を備えていてもよい。これにより、集水面積をエリア毎に把握可能な形態で表示できる。
【0015】
前記表示部は、前記出力部から出力された前記雨水流出量を表示することもできる。これにより、エリア毎に雨水流出量を把握できる。
【0016】
前記出力部は、前記エリア毎に最高点及び最下点を計算し、前記エリア毎の最高点及び最下点に基づいて当該エリアの相対的に低い方を示すための高低情報を生成して出力することができる。この場合、前記表示部は、前記出力部から出力された前記高低情報に基づいた矢印表示を前記3次元モデルと共に表示できる。また、前記表示部は、前記出力部から出力された前記高低情報に基づいて相対的に低い方を示す高低表示を前記3次元モデルと共に表示することができる。
【0017】
これにより、ユーザである設計技術者が各エリアの勾配の方向を求めなくても、出力部が計算した最高点及び最下点に基づいて正確な高低表示を行うことができるので、設計技術者は、表示部を見ることで、正確な流水方向を簡単にかつ正確に取得することが可能になる。
【0018】
本開示の別の態様では、現況の地形及び計画を表す3次元モデル上の所定のエリアの集水面積を自動計算する集水面積の自動計算プログラムを前提とすることができる。この自動計算プログラムは、前記3次元モデルを取得する3次元モデル取得工程と、前記3次元モデル取得工程で取得した前記3次元モデルに基づいて、最高点及び最下点を計算する計算工程と、前記計算工程で計算した前記最高点から前記最下点までの間の前記3次元モデルにおける雨水の流域を、ユーザが保有する設計情報に基づいて自動で区分けして複数のエリアを生成するエリア生成工程と、前記エリア生成工程で生成した前記エリア毎に当該エリアの面積を計算し、計算によって得られた当該エリアの面積を出力するとともに、前記計算によって得られた面積を利用して雨水流出量を計算して出力する出力工程とをコンピュータに実行させることができる。
【0019】
本開示のさらに別の態様では、現況の地形及び計画を表す3次元モデル上の所定のエリアの集水面積を自動計算する集水面積の自動計算方法を前提とすることもできる。自動計算方法は、前記3次元モデルを取得する3次元モデル取得工程と、前記3次元モデル取得工程で取得した前記3次元モデルに基づいて、最高点及び最下点を計算する計算工程と、前記計算工程で計算した前記最高点から前記最下点までの間の前記3次元モデルにおける雨水の流域を、ユーザが保有する設計情報に基づいて自動で区分けして複数のエリアを生成するエリア生成工程と、前記エリア生成工程で生成した前記エリア毎に当該エリアの面積を計算し、計算によって得られた当該エリアの面積を出力するとともに、前記計算によって得られた面積を利用して雨水流出量を計算し、出力する出力工程とを備えている。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、3次元モデルに基づいて計算された最高点から最下点までの間をユーザが保有する設計情報に基づいて自動で区分して複数のエリアを生成し、生成したエリアの面積を利用して雨水流出量を計算し、出力することができるので、ユーザは集水面積を正確にかつ短時間で把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る集水面積の自動計算装置の構成図である。
【
図2】集水面積の自動計算装置のブロック図である。
【
図3】集水面積の自動計算手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6】3次元ポリゴン表示形態の例を示す図である。
【
図7】3次元ポリゴン表示形態の拡大表示の例を示す図である。
【
図8】縦断方向に最高点及び最下点が存在する場合を説明する図である。
【
図9】横断方向に最高点及び最下点が存在する場合を説明する図である。
【
図11】流域の区分けが行われた例を示す図である。
【
図13】エリア番号、集水面積及び流出量の表示例を示す図である。
【
図15】設計情報が無い場合の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図17】宅地、造成地、駐車場等の計画3次元モデルの一例を示す図である。
【
図18】計画3次元モデル上に等高線を重畳表示した場合を示す図である。
【
図19】計画3次元モデル上に稜線または谷線を重畳表示した場合を示す図である。
【
図21】計画3次元モデル上に集水面積及び流出量を表示した場合を示す図である。
【
図22】計画3次元モデル上に流水方向を表示した場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る自動計算装置1の構成図であり、
図2は、自動計算装置1のブロック図である。自動計算装置1は、現況の地形及び計画を表す3次元モデル上の所定のエリアの雨水流出量を自動計算するためのものであり、例えば汎用のパーソナルコンピュータや専用のコンピュータ等で構成することができる。
【0024】
自動計算装置1は、本体部10と、表示部11と、操作部12と、記憶装置13とを備えている。本体部10は、制御部10Aと通信モジュール10Bを有している。制御部10Aは、例えばCPU(中央演算処理装置)、ROM及びRAM(メモリ)等で構成されており、プログラムに従って動作する。メモリは、CPUが本発明の実施形態に係る自動計算プログラムを実行する際に当該自動計算プログラムを展開するためのワークメモリや、データを一時的に記憶するためのバッファメモリである。この自動計算プログラムは、現況の地形及び計画を表す3次元モデル上の所定のエリアの雨水流出量を自動計算するためのプログラムであり、詳細は後述するが、雨水流出量を計算するための複数の工程を上記コンピュータに実行させる。
【0025】
また、通信モジュール10Bは、例えばインターネット等を介して外部の端末と通信する部分であり、データの送信、データの受信等が行えるように構成されている。通信モジュール10Bは、必要に応じて設ければよい。
【0026】
図2に示すように、制御部10Aにより、後述する3次元モデル取得部10a、入力部10b、計算部10c、エリア生成部10d、出力部10e等が構成されている。3次元モデル取得部10a、入力部10b、計算部10c、エリア生成部10d及び出力部10eは、制御部10Aを構成しているハードウェアのみで構成されていてもよいし、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで構成されていてもよい。例えば、CPUが自動計算プログラムを実行することで、3次元モデル取得部10a、入力部10b、計算部10c、エリア生成部10d、出力部10eの各機能を制御部10Aが実現可能になる。
【0027】
表示部11は、例えば液晶ディスプレイ装置や有機ELディスプレイ装置等で構成されている。表示部11は、制御部10Aの出力部10eに接続されており、出力部10eによって制御され、各種設定画面、入力画面、設計画面、解析画面、出力画面等の表示が可能になっている。
【0028】
操作部12は、ユーザが自動計算装置1を操作するための機器で構成されている。操作部12には、例えばキーボード12a及びマウス12bが含まれているが、これら以外にも表示部11に組み込まれたタッチ操作パネルや、各種ポインティングデバイス等が含まれていてもよい。操作部12は、制御部10Aに接続されており、ユーザの操作部12による操作が制御部10Aで検出可能になっている。
【0029】
記憶装置13は、各種データやプログラム等を記憶可能なハードディスクドライブやソリッドステートドライブ等で構成されている。記憶装置13は制御部10Aに接続されており、制御部10Aからの指示に従い、送られてきたデータの記憶、及び記憶されているデータの読み出しを実行する。記憶装置13は、本体部10に内蔵されていてもよいし、本体部10の外部に設けられていてもよい。また、記憶装置13は、外部のサーバや、いわゆるクラウド型のストレージシステムであってもよい。また、記憶装置13の一部のみ本体部10に内蔵し、他を外部に設けてもよい。
【0030】
記憶装置13には、後述する各工程をコンピュータに実行させる自動計算プログラムが記憶されている。この自動計算プログラムのユーザへの提供形態は特に限定されるものではなく、例えば
図1に示すようにCD-ROMやDVD-ROMなどのような記録媒体Aに記録された状態でユーザに提供されてもよいし、インターネット等を介して外部サーバからダウンロード可能な形態でユーザに提供されてもよい。提供された流水方向表示プログラムを汎用のパーソナルコンピュータ等にインストールすることで、当該パーソナルコンピュータ等を自動計算装置1として使用することが可能になる。
【0031】
尚、汎用のパーソナルコンピュータ等に自動計算プログラムをインストールする際には記憶装置13にインストールすればよい。また、汎用のパーソナルコンピュータ等を、自動計算プログラムがインストールされた外部サーバにアクセスさせることで、自動計算装置1として使用することも可能であり、自動計算プログラムのインストール場所は特に限定されるものではない。
【0032】
自動計算装置1は、例えば道路や宅盤、宅地造成、河川、駐車場、港湾施設などの各種現況の地形及び計画を表す3次元モデル上の所定のエリアの雨水流出量を自動計算してユーザに提供するとともに、当該エリアにおける水の流れる方向や量を視覚的に確認可能にする装置である。自動計算装置1は、例えば、雨水流出量(流出量Q)を求めるにあたり、例えば路面、法面、平地等の最高点、最下点を計算して3次元モデルをユーザが保有している設計情報に基づいて自動で区分けする。そして、自動計算装置1は、区分けしたエリア毎に面積を計算し、計算した面積及び雨水流出量を表示可能にしてユーザに提示する。自動計算装置1は、さらに区分けした各エリアに対して水の流れる方向を例えば矢印等で表示することができる。
【0033】
また、自動計算プログラムは、コンピュータを以下のように動作させることにより、現況の地形及び計画を表す3次元モデル上の所定のエリアの雨水流出量を自動計算することが可能なプログラムである。自動計算装置1を使用することで、現況の地形及び計画を表す3次元モデル上の所定のエリアの雨水流出量を自動計算する方法を実行することもできる。
【0034】
自動計算装置1の各部の構成について、
図1、
図2及び
図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。
図2に示す3次元モデル取得部10aは、現況の地形及び計画を表す3次元モデルを取得する部分であり、この3次元モデルには道路モデルが含まれていてもよい。入力部10bは、例えばユーザによる設定値や設計情報の入力等を受け付ける部分である。計算部10cは、3次元モデル取得部10aによって取得された3次元モデルに基づいて、3次元モデル上の最高点及び最下点を計算する部分である。エリア生成部10dは、計算部10cによって計算された最高点から最下点までの間の3次元モデルにおける雨水の流域を、ユーザが保有する設計情報に基づいて自動で区分けして複数のエリアを生成する部分である。これにより、雨水の流域面積が区分けされることになる。
【0035】
また、計算部10cは、最高点と最下点の両点間の経路延長を計算するとともに、最高点と最下点の両点間の勾配も計算し、出力することができる。計算部10cから出力された最高点と最下点の両点間の経路延長と、最高点と最下点の両点間の勾配は、表示部11に表示される。
【0036】
出力部10eは、エリア生成部10dによって生成されたエリア毎に当該エリアの面積を計算し、計算によって得られた当該エリアの面積を出力するとともに、計算によって得られた面積を利用して雨水流出量を計算し、出力する部分である。
【0037】
3次元モデル取得部10aで取得可能な3次元モデルは、任意の形式のデータとして、例えば記憶装置13、外部サーバ、CD-ROMやDVD-ROMなどのような記録媒体等(以下、これらをまとめて記憶装置13等という)に保存されている。自動計算装置1のユーザは、操作部12を操作して所望の3次元モデルのデータを記憶装置13等から読み込む操作を行うことで、3次元モデル取得部10aが3次元モデルを取得する。記憶装置13等に複数の3次元モデルのデータが保存されている場合には、ユーザが所望の3次元モデルのデータを選択する操作を操作部12で行った後、読み込む操作を行えばよい。3次元モデルを取得する工程は、
図3に示すフローチャートのステップSA1で実行される3次元モデル取得工程である。
【0038】
ステップSA1で取得された3次元モデルのデータは、自動計算装置1の内部に一時的に保存される。
図2に示す出力部10eは、一時的に保存されている3次元モデルのデータを読み込んで、
図4に示す3次元表示形態、
図5に示す平面表示形態、
図6に示す3次元ポリゴン表示形態に変換して表示部11に表示させる。3次元表示形態で表示させるか、平面表示形態で表示させるか、それとも3次元ポリゴン表示形態で表示させるかについては、ユーザが操作部12を操作することで選択可能である。尚、
図4~
図6において、符号101で示す部分は道路である。
【0039】
図2に示す出力部10eは、ユーザにより3次元表示形態が選択された場合には、表示部11を制御して
図4に示す3次元表示形態で3次元モデルを表示させるので、ユーザは地形を立体的に把握できる。また、出力部10eは、ユーザにより平面表示形態が選択された場合には、表示部11を制御して
図5に示す平面表示形態で3次元モデルを表示させるので、ユーザは地形を平面的に把握できる。また、出力部10eは、ユーザにより3次元ポリゴン表示形態が選択された場合には、表示部11を制御して
図6に示す3次元ポリゴン表示形態で3次元モデルを表示させるので、ユーザは地形を3次元ポリゴンの集合体として把握できる。3次元モデルを表示部11に表示させる工程は3次元モデル表示工程である。
【0040】
3次元モデル表示工程では、表示部11に表示されている3次元モデルの一部を拡大表示させることもできる。例えば
図7に示すように、3次元ポリゴン表示形態で表示されている3次元データを拡大表示させることで、細部を詳細に確認することができる。ユーザが操作部12を操作することで、拡大したい部分の選択、拡大率の選択が行えるようになっており、任意の部分を任意の拡大率で拡大できる。拡大後の縮小も可能である。また、3次元モデルを表示部11上でスクロールして表示させることも可能である。
【0041】
図7に示すように、道路101には道路中心線形101aが設定されている。この例では、道路101の両側には盛土102と、切土103とがある。
図7における道路101よりも下の盛土102の間には、小段104がある。このように、盛土102、切土103及び小段104を3次元モデル上で把握することはできるが、各部の勾配の方向及び勾配の度合いについては2次元計画図面では無論のこと3次元モデル上であっても正確に把握するのが困難であった。特に、縦断勾配(縦断方向の勾配)と横断勾配(横断方向の勾配)の双方が複雑に絡まりあった地点の勾配は誤って把握してしまうおそれがあった。本実施形態では、以下の工程を経ることで、
図7に示すような3次元モデル上であっても、雨水流出量や流水方向をユーザに対して正確に把握させることができるものである。尚、縦断方向とは、道路の中心線に沿った方向であり、また、横断方向とは、道路の中心線に対して直交する方向である。
【0042】
図3に示すフローチャートのステップSA2では、3次元モデル取得部10aが、ステップSA1で取得した3次元モデルに設計情報があるか否かを判定する。設計情報には、例えば、地表面の各地点における高さ情報、道路中心線形(平面線形)情報、縦断勾配情報、横断勾配情報、道路幅員情報、すりつけ情報、既設流末に関する情報、切盛境界に関する情報、縦排水に関する情報、隣接地に関する情報、近傍河川に関する情報、下水道に関する情報、既設の集水桝に関する情報等のうち、任意の1つ以上が含まれている。既設流末とは、既に設置されている流路の端部である。切盛境界とは、切土と盛土の境界である。縦排水とは、法面の縦方向に延びる排水路のことである。
【0043】
ステップSA2でYESと判定されて3次元モデルに設計情報がある場合にはステップSA3に進み、一方、ステップSA2でNOと判定されて3次元モデルに設計情報がない場合には、後述する別のフローチャート(
図15に示す)に進む。
【0044】
ステップSA3では、計算部10cが設計情報の中から、平面線形、縦断勾配及び横断勾配を取得する。これにより、3次元モデルの各地点の高さを取得できる。また、ステップSA4では、計算部10cが設計情報の中から、道路幅員情報及びすりつけ情報を取得する。これにより、道路に関する情報を取得できる。
【0045】
その後、ステップSA5及びSA6では、計算部10cが、縦断方向の勾配および横断方向の勾配からなる合成勾配を計算し、取得する。例えば
図8に示すように、縦断方向における最高点となり得る点として、第1最高点、第2最高点等が存在している場合がある。また、縦断方向における最下点となり得る点として、最高点と対となるように、第1最下点、第2最下点等が存在している場合がある。
【0046】
3次元モデルの縦断方向における最高点及び最下点を計算する際には、ステップSA3、SA4で取得した複数の情報から各地点の高さ情報を算出し、算出した高さ情報に基づいて最高点位置及び最下点位置(測点)を計算することができる。ステップSA5、SA6は、3次元モデル取得工程で取得した3次元モデルに基づいて、最高点及び最下点を計算する計算工程である。
【0047】
尚、3次元モデルに基づいて最高点及び最下点を計算する際には、等高線を利用することもできる。計算部10cは、例えば、3次元モデルの各地点の高さ情報を取得し、同じ高さの地点同士を連結する線、即ち等高線を計算する。計算部10cは、入力部10bにより入力された等高線間隔で複数の等高線を計算する。各等高線には、高さ情報が付与されており、この高さ情報に基づいて計算部10cが縦断方向における最高点及び最下点を計算する。
【0048】
ステップSA6では、計算部10cが、ステップSA3、SA4で取得した複数の情報に基づいて、3次元モデルの横断方向における最高点及び最下点を計算する。
図9のFIG.9Aでは、横断面に車道とセンターライン(「CL」で示す。以下同様。)と両路肩が存在している場合を示しており、最高点が右側の路肩の端に位置し、最下点が左側の路肩の端に位置している。FIG.9Bでは、横断面に車道とセンターラインと両路肩が存在している場合を示しており、最高点がセンターライン上に位置しており、第1最下点が左側の路肩の端に位置し、第2最下点が右側の路肩の端に位置している。FIG.9Bに示す例では、1つの最高点に対して2つの最下点が存在することになる。
【0049】
FIG.9Cでは、横断面に車道及び中分と、センターラインと両路肩が存在している場合を示しており、第1最高点が中分におけるセンターラインよりも左側に位置し、第1最高点と対になる第1最下点が左側の路肩の端に位置している。また、第2最下点が中分におけるセンターラインよりも右側に位置している。さらに、第2最高点が右側の路肩の車道寄りに位置し、第3最下点が右側の路肩の端に位置している。
【0050】
FIG.9Dでは、第1最高点が中分におけるセンターラインよりも左側に位置し、第1最高点と対になる第1最下点が左側の路肩の端に位置している。また、第2最高点が中分におけるセンターラインよりも右側に位置し、第2最高点と対になる第2最下点が右側の路肩の端に位置している。第1最高点と第2最高点とは同じ高さである。
【0051】
FIG.9Eでは、第1最高点が中分におけるセンターラインよりも左側に位置し、第1最高点と対になる第1最下点が左側の路肩の端に位置している。また、第2最高点が右側の路肩の端に位置し、第2最高点と対になる第2最下点が中分におけるセンターラインよりも右側に位置している。第2最高点は第1最高点よりも高く設定され、また、第1最高点と第2最下点とは同じ高さである。
【0052】
FIG.9Fでは、第1最高点が中分におけるセンターラインよりも左側に位置し、第1最高点と対になる第1最下点が左側の路肩の端に位置している。また、第2最高点が右側の路肩の端に位置し、第2最高点と対になる第2最下点が中分におけるセンターラインよりも右側に位置している。第2最高点は第1最高点よりも高く設定され、また、第2最下点は第1最高点よりも低く設定されている。
【0053】
3次元モデルの横断方向における最高点及び最下点を計算する際には、縦断方向の場合と同様に、ステップSA3、SA4で取得した複数の情報から各地点の高さ情報を算出し、算出した高さ情報に基づいて最高点位置及び最下点位置(測点)を計算することができる。尚、横断方向における最高点及び最下点を計算する際には、縦断方向の場合と同様に、等高線を利用することもできる。すなわち、各等高線には、高さ情報が付与されており、この高さ情報に基づいて計算部10cが横断方向における最高点及び最下点を計算する。
【0054】
計算部10cは、ステップSA5及びSA6を経るとともに、縦断方向の勾配および横断方向の勾配からなる合成勾配を算出することができる。具体的には、計算部10cが縦断勾配と横断勾配を合成することで合成勾配を算出する。道路の路面には、縦断勾配と横断勾配とがついており、最急勾配は、縦断勾配及び横断勾配のいずれよりも大きくなり、それを合成勾配という。合成勾配の方向は流水線の方向となる。合成勾配の算出式は一般に知られているので、本明細書では記載を省略する。
【0055】
ステップSA7では、エリア生成部10dが、計算部10cによって計算された最高点から最下点までの間の3次元モデルにおける雨水の流域を、ユーザが保有する設計情報に基づいて自動で区分けして複数のエリアを生成する。このとき、計算部10cは合成勾配に基づいて計算した最高点及び最下点を用いる。
【0056】
具体的には、
図10に示すように、制御部10Aは、設計情報として縦排水に関する情報及び切盛境界に関する情報を3次元モデル上に表示させることができる。
図11は、合成勾配の最高点を起点に既設流末や切盛境界、縦排水などの設計情報を基に流域の区分けを最下点まで行った状態を表示部11に表示した例である。
図11では、流域を区分けする線L1、L2、L3、L4、L5が
図11の上下方向に延びている。線L1は既設流末に対応する部分に位置している。線L2、L4、L5は切盛境界に対応する部分に位置している。線L3は縦排水に対応する部分に位置している。複数のエリア200、201、202、203、204、205は、流域を線L1、L2、L3、L4、L5によって区分けされることでできている。この例では、複数のエリア200、201、202、203、204、205が縦断方向に区分けされた場合を示している。
【0057】
ステップSA8では、ステップSA7で縦断方向に区分けされて生成された各エリアに対して、エリア生成部10dが横断方向(車道の横断方向)に所定の属性で区分けを行い、さらに小さなエリアを複数生成する。ステップSA8で生成された各エリアには、識別情報が付与され、エリア特定情報と関連付けられて記憶装置13等に一時的に記憶される。
【0058】
エリア生成部10dが横断方向の区分けを行う際には、縦断方向に区分けされた複数のエリアに対して道路の幅員属性による区分けを行うことができる。幅員属性は、ステップSA4で取得することができ、例えば中分(中央分離帯)、車道、路肩等の情報を含んでいる。具体的には、
図11に示すように左右方向(横断方向)を定義した場合、左右両側にそれぞれ盛土102、切土103が位置し、その間に左右の路肩120及び左右の車道121が位置している場合を想定する。路肩120の幅及び車道121の幅、センターラインの位置が幅員属性に含まれている。この場合、縦断方向の区分けによって生成された縦断方向の区分け線130がエリア生成部10dによって複数生成される。区分け線130は、道路中心線の法線であり、横断方向に延びている。ステップSA7、SA8は、計算工程で計算した最高点から最下点までの間の3次元モデルをユーザが保有する設計情報に基づいて自動で区分けして複数のエリアを生成するエリア生成工程である。
【0059】
エリア生成部10dが幅員属性に基づいて横断方向に区分けすることで、横断方向の区分け線131を複数生成する。
図12に示す例では、横断方向の区分け線130が路肩120と車道121の境界、センターラインCL上にそれぞれ位置付けられている。
図12における車道上の矢印は横断勾配の方向を示している。このように、各エリアの横断勾配を示すことが可能である。尚、エリア生成部10dは、縦断方向に区分けされた複数のエリアを、横断方向の最高点から横断方向の最下点まで区分けすることにより、更に小さなエリアを生成してもよい。
【0060】
ステップSA9では、出力部10eが、ステップSA8によって区分けされたエリア特定情報と、エリア番号とを取得する。また、出力部10eは、エリア特定情報で特定されたエリアの面積を計算する。エリアの面積は、従来の3次元CADソフト等が有する面積算出機能を利用して計算できる。つまり、エリア生成部10dで生成された各エリアを雨水が流れる時の集水面積をエリア毎に自動で取得できる。計算によって得られた面積を当該エリアの集水面積として出力部10eが表示部11に出力する。これが、計算によって得られたエリアの面積を当該エリアの集水面積として出力する出力工程である。表示部11は、集水面積以外にも、エリア生成部10dによって生成されたエリアの形状と、雨水流出量も表示する。
【0061】
雨水流出量は、出力部10eが集水面積を利用して計算する。雨水流出量(Q)の計算式は周知であり、流出係数、流達時間(t)内の平均降雨強度(mm/時)、集水面積(ha)を利用して計算できる。流出係数は、工種別基礎流出係数の標準値を用いればよい。また、平均降雨強度は、地域別に設定されている降雨強度式を用いて算出できる。また、流達時間は、流入時間(分)と流下時間(分)とを合わせた時間とすることができる。流下時間は、流達距離(m)、平均流速(m/秒)を用いて算出できる。
【0062】
出力部10eは、エリア特定情報、エリア番号、集水面積及び流出量を取得した後、表示部11に表示可能なCADデータもしくは画像データを生成し、当該表示部11に出力する(ステップSA11)。表示部11は、
図13に示すように、各エリア内にエリア番号と、当該エリア番号で特定されるエリアの集水面積及び流出量を表示する。一例を示すと、エリアは白線で区分け表示されており、エリア毎に付されているエリア番号は、「100j2」、「99j2」、「97j2」、「98j2」であり、例えばエリア番号「100j2」の集水面積は15.036m
2、流出量(Q)は0.00025m
3/sである。このように、エリア毎に集水面積と流出量を表示できるので、ユーザは集水面積と流出量を正確に把握できる。
【0063】
ステップSA9の後、ステップSA11に進むことなく、ステップSA10に進んでもよい。ステップSA9の後、ステップSA11とステップSA10のどちらに進むかは、ユーザが選択できる。ステップSA10に進むと、エリア毎の流水方向を計算する。具体的には、出力部10eは、ステップSA8で生成したエリア毎に最高点及び最下点を計算する。これは3次元モデルが有する高さ情報に基づいて計算できる。出力部10eは、エリア毎に最高点及び最下点を計算した後、エリア毎の最高点及び最下点に基づいて、当該エリアの相対的に低い方を示すための高低情報を生成する。高低情報としては、例えば相対的に高い方から低い方に向かう矢印等を一例として挙げることができるが、矢印に限られるものではない。
【0064】
出力部10eは、高低情報を取得した後、表示部11に表示可能なCADデータもしくは画像データを生成し、当該表示部11に出力する(ステップSA11)。表示部11は、
図14に示すように、各エリア内に相対的に高い方から低い方に向かう矢印を表示させる。一例を示すと、エリアは白線で区分け表示されており、エリア内に1つの矢印が表示される。これにより、エリア毎に流水方向を表示することができる。
【0065】
ステップSA2でNOと判定された場合には、3次元モデルに設計情報が無いということであり、そのような3次元モデルには、例えば宅地、造成地、駐車場等が含まれる。ステップSA2でNOと判定されると、
図15に示すフローチャートのステップSB1に進む。ステップSB1では、計算部10cが等高線を作成する。具体的には、まず、計算部10cは、3次元モデル取得部10aが取得した3次元モデルを読み込む。3次元モデルは、当該モデル内の各地点の高さ情報を含んでいるので、計算部10cは、各地点の高さ情報を取得し、同じ高さの地点同士を連結する線、即ち等高線を計算する。このとき、入力部10bにより等高線の作成間隔が入力されている場合には、計算部10cが、入力部10bにより入力された間隔で等高線を計算する。等高線は、所定間隔で計算されるので、複数本計算される。各等高線には、高さ情報が付与されている。表示部11は、等高線に付与されている高さ情報を等高線の高さとして、当該等高線と共に、表示部11の3次元モデル上に数値で表示させることができる。
【0066】
図16は、3次元ポリゴン表示形態で表示されている3次元モデル上に、計算部10cが計算した複数本の等高線125を重畳表示した例を示している。この図に示しているのは一例であり、実際の等高線の形状は複雑になることがあるとともに、勾配が急になれば等高線125の密度が高くなったり、勾配が緩ければ等高線125の密度が低くなったりする。等高線125の密度は、単位面積あたりの等高線125の本数で表すことができる。
【0067】
図17は、宅地、造成地、駐車場等の計画3次元モデルを示しており、
図18は、
図17の計画3次元モデル上に等高線を重畳表示している。
【0068】
ステップSB2では、計算部10cが、隣り合う等高線の高さを比較して最高点及び最下点を検出する。すなわち、計算部10cは、複数本の等高線125のうち、隣合う等高線125の高低関係を判別する部分であり、まず、隣合う2本の等高線125を任意に特定する。計算部10cは、特定した2本の等高線125にそれぞれ付与されている高さ情報に基づいて、2本の等高線125のうち、どちらが高いか、またはどちらが低いかを判別する。1つのペアの判別が終わると、別の隣り合う等高線125の高低関係を同様にして判別する。これを繰り返すことにより、
図18に示す全ての等高線125の高低関係を判別できる。高低関係の判別結果は、記憶装置13に一時的に保存される。上述した判別方法は一例であり、他の方法を用いて隣合う等高線125の高低関係を判別してもよい。計算部10cは、全ての等高線125の高低関係を判別した後、最も高い等高線125上の点を最高点とし、最も低い等高線125上の点を最下点とする。
図18では第1最下点と第2最下点が検出された例を示している。
【0069】
ステップSB3に進むと、エリア生成部10dが、各等高線の折れ点を検出し、折れ点を結ぶ線(稜線または谷線)を計算する(
図19参照)。計算された稜線または谷線はエリアを区分けする際の分割線となる。
【0070】
ステップSB4では、エリア生成部10dが、ステップSB3で計算された稜線または谷線を分割線として、計画3次元モデルを複数のエリアに区分けする(
図20参照)。エリア番号(エリア1、エリア2等)は、エリア特定情報と関連付けられて記憶装置13等に一時的に記憶される。区分けの際、ユーザが手入力して複数のエリアに区分けしてもよい。
【0071】
ステップSB5では、出力部10eが、各エリアの集水面積、高低差、流出量(Q)を取得する。各エリアの高低差は、等高線の情報に基づいて取得できる。出力部10eは、エリア特定情報、エリア番号、集水面積及び流出量を取得した後、表示部11に表示可能な画像データを生成し、当該表示部11に出力する(ステップSB7)。表示部11は、
図21に示すように、各エリア内にエリア番号と、当該エリア番号で特定されるエリアの集水面積及び流出量を表示する。
【0072】
ステップSB5の後、ステップSB7に進むことなく、ステップSB6に進んでもよい。ステップSB5の後、ステップSB7とステップSB6のどちらに進むかは、ユーザが選択できる。ステップSB6に進むと、エリア毎の流水方向を計算する。具体的には、出力部10eは、ステップSB4で区分けしたエリア毎に最高点及び最下点を計算する。これは等高線の情報に基づいて計算できる。出力部10eは、エリア毎に最高点及び最下点を計算した後、エリア毎の最高点及び最下点に基づいて、当該エリアの相対的に低い方を示すための高低情報を生成する。高低情報としては、例えば相対的に高い方から低い方に向かう矢印を一例として挙げることができる。
【0073】
出力部10eは、高低情報を取得した後、表示部11に表示可能な画像データを生成し、当該表示部11に出力する(ステップSB7)。表示部11は、
図22に示すように、各エリア内に相対的に高い方から低い方に向かう矢印を表示させる。
【0074】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、現況の地形及び計画を表す3次元モデルを3次元モデル取得部10aが取得すると、取得した3次元モデルには高さ情報が含まれているので、計算部10cが3次元モデルの高さ情報に基づいて当該3次元モデル上の最高点及び最下点を計算することができる。エリア生成部10dは、3次元モデル上の最高点を起点とし、最下点までの範囲内で、3次元モデルにおける雨水の流域をユーザが保有する設計情報に基づいて自動で区分けして複数のエリアを生成する。
【0075】
これによって生成された複数のエリアの面積をエリアごとに出力部10eが計算する。計算によって得られた面積が当該エリアの集水面積として出力される。また、集水面積に基づいて雨水流出量を計算して取得できるので、ユーザは、3次元モデルの入力、設計情報の入力等を行うだけで、エリアごとに集水面積及び流水量を正確にかつ短時間で把握できる。
【0076】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上説明したように、本発明に係る自動計算装置及び自動計算プログラムは、例えば道路や宅盤、宅地造成、河川、駐車場、港湾施設などの各種設計に用いることができる。
【符号の説明】
【0078】
1 集水面積の自動計算装置
10a 3次元モデル取得部
10b 入力部
10c 計算部
10d エリア生成部
10e 出力部
11 表示部
【要約】
【課題】雨水流出量を正確にかつ短時間で把握可能にする。
【解決手段】自動計算装置1は、3次元モデルを取得する3次元モデル取得部10aと、3次元モデルに基づいて最高点及び最下点を計算する計算部10cと、計算部10cによって計算された最高点から最下点までの間の3次元モデルにおける雨水の流域をユーザが保有する設計情報に基づいて自動で区分けして複数のエリアを生成するエリア生成部10dと、エリア生成部10dによって生成されたエリア毎にエリアの面積を計算し、計算によって得られたエリアの面積を出力するとともに、計算によって得られた面積を利用して雨水流出量を計算し、出力する出力部10eとを備えている。
【選択図】
図2