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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】燃料タンク
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/03 20060101AFI20240229BHJP
   B29C 49/20 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B60K15/03 B
B29C49/20
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023538425
(86)(22)【出願日】2022-07-14
(86)【国際出願番号】 JP2022027651
(87)【国際公開番号】W WO2023008206
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2023-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2021121294
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023917
【氏名又は名称】八千代工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中屋 和成
(72)【発明者】
【氏名】森▲崎▼ 正樹
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/174936(WO,A1)
【文献】特開2009-132297(JP,A)
【文献】特開2019-77382(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0232835(US,A1)
【文献】米国特許第6138859(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/03
B29C 49/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の支柱と、複数の前記支柱間を連結し、平面視において環状を呈するキャリア部と、を備える内蔵部品をタンク本体に内蔵する燃料タンクであって、
キャリア部は、
複数の前記支柱同士を前記環状に連結する複数の外側延設部と、
複数の前記外側延設部の複数の接続部から前記環状の内側に延設する複数の内側延設部と、
複数の前記内側延設部が結合する結合部と、を備えることを特徴とする燃料タンク。
【請求項2】
複数の前記内側延設部は、前記環状の内側かつ上方に延設され、
前記結合部には、前記タンク本体内に貯留される液体の液面の変化、又は、前記タンク本体内の圧力の制御に関連する部品が取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の燃料タンク。
【請求項3】
複数の前記接続部のうち、少なくとも一部の前記接続部は、前記支柱が嵌合される嵌合部を有し、
複数の前記内側延設部のうち、少なくとも一部の前記内側延設部は、前記嵌合部から延設することを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンクの外壁の内面に溶着する複数の柱部材と、複数の柱部材を一体的に接続する梁部材(キャリア部)と、を有し、柱部材の上部にバルブが取り付けられた燃料タンクの内蔵部品が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-168022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した内蔵部品は、複数の柱部材を梁部材(キャリア部)により平面視において環状に接続しているものの、重量のあるバルブを柱部材に取り付けている。そのため、燃料タンクの製造時において、内蔵部品全体が変形しやすく、柱部材を燃料タンク内の所望の位置に溶着するのが困難であるという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、キャリア部の剛性を高めるとともに、内蔵部品の配置精度を高めることができる燃料タンクを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明は、複数の支柱と、複数の前記支柱間を連結し、平面視において環状を呈するキャリア部と、を備える内蔵部品をタンク本体に内蔵する燃料タンクであって、キャリア部は、複数の前記支柱同士を前記環状に連結する複数の外側延設部と、複数の前記外側延設部の複数の接続部から前記環状の内側に延設する複数の内側延設部と、複数の前記内側延設部が結合する結合部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、外側延設部、内側延設部及び結合部により、環状のキャリア部の剛性が向上して変形が抑制される。これにより、キャリア部により連結される複数の支柱を所望の位置に配置することができる。
【0008】
また、複数の前記内側延設部は、前記環状の内側かつ上方に延設され、前記結合部には、前記タンク本体内に貯留される液体の液面の変化、又は、前記タンク本体内の圧力の制御に関連する部品が取り付けられることが好ましい。
【0009】
本発明によれば、例えば、満タン検知バルブ等の部品を燃料タンク内の上部に安定して配置することができる。
【0010】
また、複数の前記接続部のうち、少なくとも一部の前記接続部は、前記支柱が嵌合される嵌合部を有し、複数の前記内側延設部のうち、少なくとも一部の前記内側延設部は、前記嵌合部から延設することが好ましい。
【0011】
本発明によれば、キャリア部の剛性がより向上し、より一層変形を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、キャリア部の剛性を高めるとともに、内蔵部品の配置精度の高い燃料タンクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第一実施形態に係る燃料タンクの外観斜視図である。
図2】第一実施形態に係る内蔵部品による燃料タンクの成形後収縮の吸収を説明する図である。
図3】第一実施形態に係る内蔵部品の外観斜視図である。
図4】第一実施形態に係る内蔵部品の上面図であって支柱を取り外した状態を示す。
図5】第一実施形態に係る支柱の斜視図である。
図6】第一実施形態に係る摺動可能嵌合部に支柱の被嵌合部を嵌合させた状態を示す斜視図である。
図7図6の上面図である。
図8図6の下面図である。
図9】第一実施形態の成形後収縮時における支柱の動きを説明する図である。
図10】第一実施形態に係る摺動可能嵌合部への支柱の組付けを説明する図である。
図11】第一実施形態に係る固定嵌合部の斜視図である。
図12図11の上面図である。
図13】第一実施形態に係る固定嵌合部への支柱の組付けを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第一実施形態]
以下、本発明の第一実施形態(本実施形態)を説明する。ただし、本発明は以下の内容及び図示の内容になんら限定されず、本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意に変形して実施できる。本発明は、異なる実施形態同士を組み合わせて実施できる。以下の記載において、異なる実施形態において同じ部材については同じ符号を付し、重複する説明は省略する。また、同じ機能のものについては同じ名称を使用し、重複する説明は省略する。
【0015】
図1は、第一実施形態に係る燃料タンク1の外観斜視図である。燃料タンク1は、図示の例では、X方向を幅、Y方向を奥行、Z方向を高さとする箱型に構成される。燃料タンク1は、例えば自動車用であり、ガソリン、軽油等の燃料を収容できる。燃料タンク1は、給油ポンプ(図示しない)を設置可能な開口2を備える。給油ポンプにより、燃料タンク1に収容された燃料をエンジン(図示しない)に送液できる。
【0016】
燃料タンク1は、内蔵部品10(後記する)を内部に有する。内蔵部品10は、例えば燃料タンク1のブロー成形時に、燃料タンク1の内部に配置できる。即ち、円筒状のパリソン(図示しない)の内部に、又は、シート状の一対のパリソンの間に内蔵部品10を配置した状態でパリソンを成形及び冷却することで、内蔵部品10を燃料タンク1の内部に配置できる。
【0017】
内蔵部品10は、ブロー成形後の冷却時に生じる燃料タンク1の成形後収縮を吸収したり、使用時に生じる燃料タンク1の内部の正圧又は負圧に起因する膨張又は収縮を吸収したり、波消しを行うものである。成形後収縮について図2及び図3を参照しながら説明する。
【0018】
図2は、第一実施形態に係る内蔵部品10による燃料タンク1の成形後収縮の吸収を説明する図である。図2では、図示の便宜上、燃料タンク1の内部を可視化して示している。内蔵部品10の具体的構成については図3以降を参照しながら後記する。内蔵部品10は、複数の嵌合部15に嵌められた各支柱12の上面12a及び下面(図示しない)によって、燃料タンク1の構成材料であるパリソン(図示しない)に固着される。従って、パリソンの冷却により生じる成形後収縮時、支柱12には燃料タンク1の収縮方向に力が作用する。
【0019】
成形後収縮は、通常、相似変形である。このため、摺動(移動)可能な支柱12(後記する摺動可能嵌合部13に嵌合した支柱12)には、固定された支柱12(後記する固定嵌合部14に嵌合した支柱12)に向かう力が作用する。この力の方向は、図2上図において黒矢印で示す。長さL1の成形後収縮に起因して支柱12に力が作用したとき、摺動可能な支柱12は、固定された一つの支柱12に向かって摺動する。摺動後の内蔵部品10が図2下図である。
【0020】
このように、摺動可能な支柱12が固定された支柱12に向かって摺動することで、相似変形に対応する成形後収縮を吸収でき、成形後収縮に起因する支柱12の燃料タンク1
の内壁からの剥離又は脱離を抑制できる。この結果、成形後収縮後においても燃料タンク1の内部に内蔵部品10を保持でき、内蔵部品10による使用時等の燃料タンク1の変形を抑制できる。
【0021】
図3は、第一実施形態に係る内蔵部品10の外観斜視図である。内蔵部品10は、キャリア部11と、支柱12と、摺動可能嵌合部13と、固定嵌合部14とを備える。例えば、XY平面上において一番大きな変位を有する摺動可能嵌合部13の支柱12と、固定嵌合部14の支柱12との間の距離は長さL2である。なお、支柱12,12の間の距離は、柱状の支柱12の中心P0,P0間の距離をいう。支柱12,12の間の距離は、図示の例では一部同じであり一部異なっているが、全て同じでもよく全て異なってもよい。
【0022】
キャリア部11は、複数の嵌合部15を有する剛体である。嵌合部15は、支柱12の被嵌合部30(図5)が嵌合する部位である。嵌合部15は、複数備えられ、図示の例では7つであるが、2つ以上6つ以下でもよく、8つ以上でもよい。
【0023】
キャリア部11は、図示の例では、X方向及びY方向の双方に延在する枠状に構成される。枠状に構成することで、キャリア部11の剛性を向上できる。キャリア部11は、例えばポリエチレン、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂により構成される。キャリア部11の形状について、図4を参照しながら説明する。
【0024】
図4は、第一実施形態に係る内蔵部品10の上面図であって支柱12を取り外した状態を示す。内蔵部品10、より具体的には嵌合部15は、摺動可能嵌合部13及び固定嵌合部14を備える。摺動可能嵌合部13は、燃料タンク1(図1)の成形後収縮に伴ってキャリア部11の嵌合部15(ここでは摺動可能嵌合部13)に対して支柱12(図3図5)の被嵌合部30(図3図5)が摺動可能に嵌合されるものである。本明細書において、成形後収縮時における支柱12の摺動方向を摺動可能方向と定義する。摺動可能方向は、図4において黒矢印で示す方向である。摺動可能嵌合部13は少なくとも1つ備えられ、図示の例では6つであるが、2つ以上5つ以下でもよく、7つ以上でもよい。
【0025】
固定嵌合部14は、キャリア部11の嵌合部15(ここでは固定嵌合部14)に対して支柱12(図3図5)の被嵌合部30(図3図5)が摺動不能に嵌合されるものである。固定嵌合部14は、図示の例では1つのみ備えられる。図4には、固定嵌合部14に嵌合される支柱12が簡略化して図示される。点Pは支柱12の軸中心である。
【0026】
図4において黒矢印で示すように、少なくとも1つ(1つでもよい)の摺動可能嵌合部13の摺動可能方向が、固定嵌合部14に向かう方向とされる。図示の例では、複数の摺動可能嵌合部13のそれぞれの摺動可能方向は、固定嵌合部14に嵌合された被嵌合部30(図3図5)を備える支柱12(図3図5)における点Pを通る。摺動可能方向を固定嵌合部14に向かう方向にすることで、成形後収縮を吸収できる。
【0027】
摺動可能嵌合部13は、摺動可能方向の一方側又は他方側の少なくとも何れかの側が開放される。開放側には、開放部21が形成される。何れかの側を開放することで、空いている側から支柱12の被嵌合部30(図3図5)を摺動可能嵌合部13に嵌めることができる。図示の例では、摺動可能嵌合部13において固定嵌合部14とは反対側が開放され、開放部21が形成される。このようにすることで、成形後収縮によって図4において黒矢印で示す方向に被嵌合部30が摺動しても、開放部21からの被嵌合部30の脱落を抑制できる。
【0028】
キャリア部11は、図3及び図4に示すように、支柱12同士を環状に連結する外側延設部11A,11B,11C,11D,11E,11Fと、複数の外側延設部11A~111Fの複数の接続部から環状の内側に延設する複数の内側延設部11L~11Nと、複数の内側延設部11L~11Nが結合する結合部201と、を備えている。
【0029】
外側延設部11A~11Fは、図4に示すように、平面視においてキャリア部11の外側を環状に連結する部材である。より詳しくは、外側延設部11A~11Fは、隣り合う嵌合部15同士をそれぞれ連結することで環状部を構成している。外側延設部11A~11Fは、直線状又は曲線状を呈する板状部材であって、補強用のリブが設けられている。外側延設部は、本実施形態では6本設けているが、嵌合部15(支柱12)の個数に合わせて適宜設定すればよい。
【0030】
結合部201は、図4に示すように、平面視においてキャリア部11の内側に設けられる。結合部201には、平坦な台座が設けられている。結合部201は、本実施形態では平面視円形となっているが、他の形状であってもよい。結合部201は、例えば、タンク本体内に貯留される液体(燃料)の液面の変化、又は、タンク本体内の圧力(燃料の蒸気圧)の制御に関連する部品(例えば、燃料の満タン液面を検知するカットバルブ等)が配置される部位である。
【0031】
内側延設部11L~11Nは、結合部201と複数の嵌合部15とを連結する部材である。内側延設部11L~11Nは、直線状又は曲線状を呈する板状部材であって、補強用のリブが設けられている。内側延設部11L~11Nは、結合部201の外周縁から概ね放射状に延設されている。なお、内側延設部11L~11Nの端部は、本実施形態では嵌合部15に接続されているが、支柱12や外側延設部に接続されていてもよい。請求項における「接続部」とは、キャリア部11の環状部の一部と内側延設部とが接続されている部位を意味する。
【0032】
また、図3に示すように、内側延設部11L~11Nは、キャリア部11の内側において、上方に向けて延設されている。これにより、結合部201は、環状のキャリア部11の内側かつ上方に位置することとなる。換言すると、結合部201は、タンク本体の上部に位置することとなる。また、内側延設部11L~11Nは、本実施形態では、3本設けたが、2本以上で適宜設定すればよい。
【0033】
なお、図4に示すように、外側延設部11A~11F、内側延設部11L~11N及び嵌合部15のいずれかに、Z方向に貫通する貫通孔Qを設けてもよい。貫通孔Qを設けることで、外側延設部11A~11F、内側延設部11L~11N及び嵌合部15内に燃料が貯まるのを防ぐことができる。また、外側延設部11A~11F及び内側延設部11L~11Nは、本実施形態では、嵌合部15を介して間接的に支柱12と連結されているが、支柱12と直接的に連結させてもよい。
【0034】
図5は、第一実施形態に係る支柱12の斜視図である。図示の例では、支柱12は、摺動可能嵌合部13及び固定嵌合部14の全ての嵌合部15に嵌合可能であるが、例えば、摺動可能嵌合部13に嵌合する支柱12の形状と、固定嵌合部14に嵌合する支柱12の形状とが異なってもよい。
【0035】
支柱12は、円柱状に構成された支持柱17と、被嵌合部30とを備える。被嵌合部30は、キャリア部11の複数の嵌合部15それぞれに嵌合されるものである。被嵌合部30の+Z方向及び-Z方向には、それぞれ同じ形状の支持柱17が延在する。被嵌合部30は、四隅に切り欠き部36を備える矩形又は略矩形の平板31を有する。被嵌合部30は、四辺のうちの対向する二辺に切り欠き部32(一方の辺の形成された切り欠き部32のみを図示)を備える矩形又は略矩形の平板33を有する。ここでいう略矩形とは、厳密な矩形ではないものの、上面視で概ね矩形の形状をいう。具体的には例えば、角を直角とせずに、例えば面取りによってR形状にした形状である。
【0036】
被嵌合部30は、挟持部35を備える。挟持部35は、対向して配置された一対の平板31,33を含む平板群34による挟持によって嵌合部15(図2)に嵌合するものである。挟持部35は、一対の平板31,33間に、いずれも図6に示すように、開放部21のX方向の長さL3及びZ方向の長さL4と同じ寸法を有する角柱18を備える。
【0037】
図6は、第一実施形態に係る摺動可能嵌合部13に支柱12の被嵌合部30を嵌合させた状態を示す斜視図である。開放部21のX方向の長さ(幅)は長さL3である。摺動可能嵌合部13のX方向の長さ(挟持部35が挟持される部分)は、摺動可能嵌合部13のY方向全域において長さL3である。開放部21のZ方向の長さ(高さ)は長さL4である。摺動可能嵌合部13のZ方向の長さ(挟持部35が挟持される部分)も、長さL4である。従って、開放部21を通じて被嵌合部30を摺動可能嵌合部13に挿入することで、被嵌合部30を摺動可能嵌合部13に嵌合できる。
【0038】
摺動可能嵌合部13は、開放部21が形成された開放側への被嵌合部30の摺動を規制する摺動規制部材41を備える。摺動規制部材41を備えることで、摺動可能嵌合部13に嵌められた被嵌合部30が開放部21から脱落することを抑制できる。
【0039】
摺動規制部材41は、開放部21が形成された開放側(-Y方向)から奥側(+Y方向)に向かって上る傾斜面42aを備える爪42である。爪42の前辺以外の3辺が切り欠かれることにより、爪42の後端が自由端となり、爪42が弾性変形可能である。爪42を備えることで、開放部21から被嵌合部30を挿入したときに傾斜面42aを-Z方向に押し込むようにして被嵌合部30を+Y方向に摺動できる。そして、爪42の奥側の端部42bを乗り越えることで、反力により傾斜面42aが+Z方向に持ち上がり、被嵌合部30を摺動可能嵌合部13に係止できる。
【0040】
図7は、図6の上面図である。図7は、図6において+Z方向から-Z方向を視る図である。摺動可能嵌合部13への被嵌合部30の係止は、開放部21側の2つの切り欠き部36の端面36aが爪42の端部42bに接触することで行われる。爪42による切り欠き部36の係止時、爪42の端部42bのY方向位置と、角柱18の前側の端部18aのY方向位置とはほぼ一致する。
【0041】
摺動可能嵌合部13において、開放部21から視て奥側(開放部21とは反対側)に存在する端面43と爪42の端部42bとの間の距離は長さL5である。支柱12において、角柱18の+Y方向の端面18bと切り欠き部36の-Y方向の端面36aとの間の距離は長さL6である。長さL5は長さL6よりも長い。このため、支柱12は、端面43
と端部42bとの間に形成される摺動可能領域において摺動する。摺動可能領域での摺動時の摺動量は、長さL5から長さL6を引いた長さである。
【0042】
平板31のX方向の長さは長さL7である。摺動規制部材41,41の間隔は長さL8である。長さL7は長さL8よりも長い。このため、平板31は、開放部21側に摺動しようとしても平板31が摺動規制部材41,41に引っ掛かり、支柱12を摺動可能嵌合部13の端面43と爪42の端部42bとの間に配置できる。
【0043】
図8は、図6の下面図である。図8は、図6において-Z方向から+Z方向を視る図である。図8は、開放部21側の2つの切り欠き部36(図7)の端面36a(図7)が爪42の端部42b(図7)に接触している状態を示す。
【0044】
上記のように、平板33は、四辺のうちの対向する二辺に切り欠き部32を備える。摺動可能嵌合部13は、切り欠き部32と対向する位置に、被嵌合部30が摺動可能嵌合部13に嵌合した仮状態で係止する係止部45を備える。ここでいう仮状態は、成形後収縮前の状態であり、具体的には例えば、内蔵部品10を配置した状態でのブロー成型後パリソンの冷却前の状態をいう。従って、摺動可能嵌合部13は、係止部45により構成される摺動可能方向(Y方向)への位置決め機構を備える。係止部45は、例えば、応力が作用していないときに切り欠き部32に屈曲部45aが嵌るように構成された板ばねである。係止部45を備えることで、被嵌合部30が摺動可能嵌合部13に嵌合した仮状態で支柱12を係止できる。これにより、支柱12を係止した状態で内蔵部品10を燃料タンク1に配置できる。
【0045】
係止部45は、支柱12を挟むように一対備えられる。一対の係止部45,45同士のX方向の長さは長さL9である。なお、対向する二辺に備えられる切り欠き部32,32同士のX方向の長さも長さL9である。また、平板33のX方向の長さは長さL10である。長さL10は長さL9よりも長い。このため、係止部45によって平板33を有する支柱12を係止できる。
【0046】
図9は、第一実施形態の成形後収縮時における支柱12の動きを説明する図である。図9の上図(図8と同じ状態)に示すように、仮状態では、切り欠き部32は係止部45によって係止される。このとき、係止部45,45同士のX方向の間隔は、切り欠き部32,32同士のX方向の間隔と等しく、長さL9(図8)である。
【0047】
係止部45により係止された状態での燃料タンク1(図1)の成形後収縮時、図2を参照して説明したように、嵌合部15の位置(XY位置)が維持された状態、即ち、キャリア部11の位置が維持された状態で、支柱12が移動する。この結果、係止部45による係止が解除され、支柱12は摺動可能領域において固定嵌合部14に向かって摺動する。支柱12が成形後収縮時に係止を解除して固定嵌合部14に向かって摺動することで、支柱12を係止した状態で配置した内蔵部品10により、上記図2のように、相似変形に対応する成形後収縮を吸収できる。
【0048】
図9の下図に示すように、支柱12は摺動量L11だけ摺動する。支柱12の摺動量L11は、摺動可能嵌合部13と固定嵌合部14との間の距離、及び、内蔵部品10を収容するパリソン(燃料タンク1において成形後収縮する部材)の構成材料の収縮率から決定できる。摺動可能嵌合部13と固定嵌合部14との間の距離は、摺動量L11を決定する支柱12毎に決定され、例えば上記図3の例でいえば、XY平面上において一番大きな変位を有する摺動可能嵌合部13の支柱12の摺動量は、固定嵌合部14の支柱12との間のXY平面上の距離である長さL2に基づき決定できる。また、内蔵部品10を収容するパリソンの構成材料の収縮率は、構成材料に応じて既知の値から選択してもよく、実験等
によって決定してもよい。
【0049】
成形後収縮前と成形後収縮後との収縮率が把握できれば、上記距離に上記収縮率を乗じることで、成形後収縮の大きさ、即ち支柱12の摺動量L11を算出できる。支柱12は、摺動可能嵌合部13の端面43と爪42の端部42bとの間に形成されるY方向の長さL5(図7)の摺動可能領域において摺動する。また、長さL6(図7参照)は、上記のように、角柱18の+Y方向の端面18bと切り欠き部36の-Y方向の端面36aとの間の距離である。従って、摺動部分である長さL5から長さL6を引いた値が摺動量L11以上であれば、成形後収縮時の摺動可能嵌合部13による移動の規制を抑制できる。
【0050】
このように、摺動可能領域の摺動可能方向の長さ(長さL5)は、摺動可能嵌合部13と固定嵌合部14との間の距離(図3の例では長さL2)、及び、前記内蔵部品を収容するパリソンの構成材料の収縮率に基づき、決定された値であることが好ましい。これにより、成形後収縮時の摺動量を推測し、十分な摺動可能領域を設けることができる。
【0051】
図10は、第一実施形態に係る摺動可能嵌合部13への支柱12の組付けを説明する図である。黒矢印で示すように支柱12を開放部21に挿入することで、摺動可能嵌合部13への支柱12の組付けが行われる。支柱12は、摺動規制部材41,41の配置方向(X方向)と、長さL5を有する平板31の長手方向とが同一方向になるように、開放部21に挿入される。これにより、図6図8に示したように摺動可能嵌合部13に支柱12が組付けられる。
【0052】
図11は、第一実施形態に係る固定嵌合部14の斜視図である。固定嵌合部14は、摺動可能嵌合部13と同様に、支柱12の挟持部35の摺動を規制する摺動規制部材41を備える。ただし、固定嵌合部14は、摺動可能嵌合部13とは異なり、リブ51を備える。リブ51と摺動規制部材41との間には支柱12の挟持部35が配置される。
【0053】
図12は、図11の上面図である。リブ51は、平板31を挟むようにして対称に一対設けられる。リブ51は、平板31のY方向の位置を規制することが可能な形状を有していればよく、例えば、L字形状を有し、開放部21の方向(Y方向)とともに開放部21に平行な方向(X方向)の二方向に延在する。図示の例では、リブ51は、X方向に延在するリブ51cと、Y方向に延在するリブ51bとを含む。これらのうち、リブ51cにより、支柱12の固定時に支柱12のX方向への位置決めを行うことができる。リブ51bにより、開放部21からの支柱12の挿入時、+Y方向への挿入を案内できる。
【0054】
一方のリブ51における-X方向の端部51aと、他方のリブ51における+X方向の端部51aとの間の距離は長さL14である。長さL14は、X方向に延在する平板31の端面のうちの切り欠き部36を除いた部分の端面31aの長さL15よりもわずかに長い。従って、端部51a,51aの間には、平板31の一部が配置される。これにより、平板31を備える支柱12のX方向への位置決めが行われる。
【0055】
リブ51b,51bの間の距離は長さL16である。長さL16は、平板31のX方向の長さである長さL7より長い。従って、平板31は、リブ51b,51bの間に配置される。リブ51のうちY方向に延在するリブ51bは、摺動可能方向と同方向(Y方向)に延在する平板31の端面31bのそれぞれと対向する。また、リブ51cは、開放部21から遠い側に配置される2つの切り欠き部36におけるY方向の端面36aのそれぞれと対向する。リブ51cは、端面36aから視て開放部21とは反対側に配置される。
【0056】
固定嵌合部14では、摺動可能嵌合部13とは異なり、平板31を備える支柱12が固定される。このため、固定嵌合部14は、一方側は開放されて開放部21が形成されるとともに、他端側は端面43(閉塞端面)が形成されて構成される。固定嵌合部14は、開放部21と端面43との間に、挟持部35の摺動を規制する摺動規制部材41を備える。挟持部35は、摺動規制部材41と端面43とに係止される。図示の例では、挟持部35を構成する角柱18の端面18bのY方向位置は、固定嵌合部14の端面43のY方向位置とほぼ一致する。即ち、端面18bは端面43に接触する。また、開放部21側の2つの切り欠き部36の端面36aのY方向位置は、摺動規制部材41を構成する爪42の端部42bのY方向位置とほぼ一致する。即ち、端部42bは端面36aに接触する。このようにすることで、支柱12を固定嵌合部14に固定できる。
【0057】
リブ51cと摺動規制部材41の端部42bとの間の距離は長さL17である。また、Y方向に延在する平板31の端面のうちの切り欠き部36を除いた部分の端面31bの長さは長さL18である。長さL17は長さL18よりも長い。従って、平板31は、摺動規制部材41の端部42bとリブ51cとの間に配置される。
【0058】
図13は、第一実施形態に係る固定嵌合部14への支柱12の組付けを説明する図である。黒矢印で示すように支柱12を開放部21に挿入することで、固定嵌合部14への支柱12の組付けが行われる。支柱12は、摺動規制部材41,41の配置方向(X方向)と、長さL5を有する平板31の長手方向とが同一方向になるように、開放部21に挿入される。このとき、上記のように、支柱12の+Y方向への挿入はリブ51bによって案内される。これにより、図11及び図12に示したように固定嵌合部14に支柱12が組付けられる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態に係る燃料タンク1によれば、キャリア部11を剛体で構成することで、内蔵部品10を燃料タンク1内に配置するとき、キャリア部11の変形を抑制できるため、内蔵部品10を精度良く燃料タンク1の内部に配置できる。
【0060】
より詳しくは、環状の外側延設部11A~11Fに加え、内側延設部11L~11N及び結合部201によりキャリア部11の内側でも連結することで、キャリア部11の剛性が向上して変形が抑制される。これにより、キャリア部11により連結される複数の支柱12をタンク本体の所望の位置に配置することができる。
【0061】
また、複数の内側延設部11L~11Nは、キャリア部11の内側かつ上方に延設され、結合部201には、例えば、カットバルブが配置される。これにより、満タン検知バルブ等の部品を燃料タンク内の上部に(所望の位置に)安定して配置することができる。
【0062】
また、結合部201をキャリア部11の環状部の内側に設けつつ、結合部201と嵌合部15とを概ね放射状に内側延設部11L~11Nで連結することにより、バランス良く剛性を高めることができる。
【0063】
また、内側延設部11L~11Nは、支柱12に直接延設されていてもよいが、本実施形態のように複数の嵌合部15から延設されていることが好ましい。これにより、キャリア部11の剛性がより向上し、より一層変形を抑制することができる。なお、本実施形態では、複数の接続部は、支柱12が嵌合される嵌合部15を有し、内側延設部11L~11Nの各端部を全て各嵌合部15に接続したが、少なくとも一つの内側延設部と嵌合部15とを接続する形態であってもよい。
【0064】
また、複数の摺動可能嵌合部13の摺動可能方向が固定嵌合部14に向かう方向とされる。このため、複雑な燃料タンク1の成型後収縮による変位を従来よりも吸収できる。これにより、成形後収縮に伴う支柱12の燃料タンク1からの剥離やキャリア部11の変形を抑制でき、燃料タンク1の信頼性を向上できる。
【0065】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、前記した実施形態では、いずれも成形後収縮が発生した際に、支柱が摺動する構成としたが、キャリア部に対して全ての支柱が摺動しない構成において本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 燃料タンク
10 内蔵部品
11 キャリア部
11A~11F 外側延設部
11L~11N 内側延設部
12 支柱
13 摺動可能嵌合部
14 固定嵌合部
15 嵌合部
30 被嵌合部
32 切り欠き部
33 平板
35 挟持部
36 切り欠き部
41 摺動規制部材
42 爪
42a 傾斜面
42b 端部
43 端面(閉塞端面)
45 係止部
201 結合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13