(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】貯湯給湯装置
(51)【国際特許分類】
F24H 1/18 20220101AFI20240301BHJP
F24D 17/00 20220101ALI20240301BHJP
F24H 15/10 20220101ALI20240301BHJP
F24H 15/281 20220101ALI20240301BHJP
F24H 15/355 20220101ALI20240301BHJP
【FI】
F24H1/18 D
F24D17/00 L
F24H15/10
F24H15/281
F24H15/355
(21)【出願番号】P 2020050565
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 由典
(72)【発明者】
【氏名】大西 兼造
(72)【発明者】
【氏名】中塚 悠介
(72)【発明者】
【氏名】丸山 和久
(72)【発明者】
【氏名】田中 博文
(72)【発明者】
【氏名】山本 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】岩本 淳
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-105956(JP,A)
【文献】特開2013-224764(JP,A)
【文献】特開2008-045839(JP,A)
【文献】特開2001-263804(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0004790(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/18
F24D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主熱源機と貯湯タンクと補助熱源機と外部通信手段と制御手段を備え、前記主熱源機を利用して前記貯湯タンクに温水を貯湯する貯湯運転を行い、貯湯された温水又は前記補助熱源機で加熱された温水を給湯する貯湯給湯装置において、
前記制御手段は、ユーザの使用態様に応じて前記貯湯運転を行う通常モードと、非常時に備えて温水を生成して前記貯湯タンクに貯湯する非常時準備モードを備え、
前記通常モードのときに前記外部通信手段を介して気象又はインフラに関する非常時情報を取得した場合に又はユーザの操作によって、前記非常時準備モードに移行して、前記主熱源機又は前記補助熱源機によって加熱された温水を前記貯湯タンクに貯湯
し、
前記制御手段によって前記非常時準備モードに移行するときには、前記主熱源機を利用して温水を生成する場合と前記補助熱源機を利用して温水を生成する場合の何れが前記非常時情報に応じた準備対応に適しているかを判定する判定処理に基づいて前記主熱源機又は前記補助熱源機の一方を選択し、
前記ユーザの操作によって前記非常時準備モードに移行するときには、温水の生成に利用する熱源機について前記主熱源機又は前記補助熱源機の一方をユーザが選択することを特徴する貯湯給湯装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記非常時準備モードのときに、前記貯湯タンクに貯湯された温水、又は前記補助熱源機で加熱された温水を、浴槽に供給することを特徴とする請求項1に記載の貯湯給湯装置。
【請求項3】
温水と上水を混合して給湯設定温度の湯水を生成する混合手段を備え、
前記制御手段は、前記非常時準備モードのときに、前記貯湯タンクの貯湯温度と上水の温度に応じて給湯設定温度の給湯が可能となる状態に前記混合手段を調整することを特徴とする請求項1又は2に記載の貯湯給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯給湯装置に関し、特に災害等の非常時に備えて貯湯する貯湯給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、地震発生時に火災を防ぐために、地震の揺れを検知して燃料ガスの供給を停止するマイコンメータが広く利用されている。地震発生時に燃料ガスが使用できなくなるので、例えば特許文献1のように地震の揺れを検知すると燃焼式熱源機の点火を禁止し、電力で作動するヒートポンプ熱源機で湯水を加熱して貯湯する貯湯給湯装置が知られている。
【0003】
また、特許文献2のように、燃料ガスの供給停止を検知すると、電力で作動するヒートポンプ熱源機で湯水を加熱して貯湯する貯湯給湯装置が知られている。一般的に燃焼式熱源機よりも加熱能力が小さいヒートポンプ熱源機は、貯湯に時間を要するので、上記特許文献1,2のように地震発生後に貯湯を開始すると、その後発生し得る停電によって十分な貯湯熱量を確保できない虞がある。
【0004】
一方、特許文献3のように、大規模地震警戒宣言、津波警報等の緊急警報放送を受信する放送受信装置を備え、緊急警報放送を受信すると浴槽に湯水をためる風呂給湯装置が知られている。地震や津波によって断水や停電等が発生する前に浴槽に湯水をためることができる。
【0005】
また、特許文献4のように、外部の通信網を介して干ばつ等による断水情報を取得した場合に、上水を混合できないため高温の給湯となる危険を防止できるように、貯湯を停止する又は貯湯温度を低くする貯湯給湯装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-227401号公報
【文献】特許第5592429号公報
【文献】特許第4611947号公報
【文献】特開2007-232344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、燃料ガスの供給停止や断水、停電は、地震及びそれに伴う津波、干ばつ等によるものだけではなく、ある程度事前に予測可能な台風や豪雨によるものや、インフラ改修等のために計画的に実施される場合もある。このような燃料ガス、上水、電力が使用できないため給湯することができない非常時に備えて、事前に準備対応を行うことが貯湯給湯装置に要求されている。
【0008】
本発明の目的は、非常時に備えて事前に準備対応を行うことができる貯湯給湯装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明の貯湯給湯装置は、主熱源機と貯湯タンクと補助熱源機と外部通信手段と制御手段を備え、前記主熱源機を利用して前記貯湯タンクに温水を貯湯する貯湯運転を行い、貯湯された温水又は前記補助熱源機で加熱された温水を給湯する貯湯給湯装置において、前記制御手段は、ユーザの使用態様に応じて前記貯湯運転を行う通常モードと、非常時に備えて温水を生成して前記貯湯タンクに貯湯する非常時準備モードを備え、前記通常モードのときに前記外部通信手段を介して気象又はインフラに関する非常時情報を取得した場合に又はユーザの操作によって、前記非常時準備モードに移行して、前記主熱源機又は前記補助熱源機によって加熱された温水を前記貯湯タンクに貯湯し、前記制御手段によって前記非常時準備モードに移行するときには、前記主熱源機を利用して温水を生成する場合と前記補助熱源機を利用して温水を生成する場合の何れが前記非常時情報に応じた準備対応に適しているかを判定する判定処理に基づいて前記主熱源機又は前記補助熱源機の一方を選択し、前記ユーザの操作によって前記非常時準備モードに移行するときには、温水の生成に利用する熱源機について前記主熱源機又は前記補助熱源機の一方をユーザが選択することを特徴としている。
【0010】
上記構成によれば、通常モードでは、ユーザの使用態様に応じて貯湯タンクに貯湯する。そして通常モード時に外部通信手段を介して気象又はインフラに関する非常時情報を取得した場合に、非常時準備モードに移行して非常時に備えて生成した温水を貯湯タンクに貯湯する。従って、非常時に備えて、事前に温水の準備対応を行うことができる。
【0011】
また、前記制御手段によって非常時準備モードに移行するときには、気象又はインフラに関する非常時情報における温水が生成できなくなる非常時までの時間等に応じた非常時準備対応に適している温水の生成に利用する熱源機が主熱源機と補助熱源機の何れかであるかを判定する判定処理に基づいて選択し、前記ユーザの操作によって非常時準備モードに移行するときには、温水の生成に利用する熱源機について主熱源機と補助熱源機の何れかをユーザが選択する。従って、制御手段又はユーザの選択によって状況に応じて温水の準備対応に適した熱源機で温水を生成することができる。
【0012】
請求項2の発明の貯湯給湯装置は、請求項1の発明において、前記制御手段は、前記非常時準備モードのときに、前記貯湯タンクに貯湯された温水、又は前記補助熱源機で加熱された温水を、浴槽に供給することを特徴としている。
上記構成によれば、非常時準備モードのときに貯湯タンクの容量よりも多い温水を事前に準備することができる。
【0013】
請求項3の発明の貯湯給湯装置は、請求項1又は2の発明において、温水と上水を混合して給湯設定温度の湯水を給湯する混合手段を備え、前記制御手段は、前記非常時準備モードのときに、前記貯湯タンクの貯湯温度と上水の温度に応じて給湯設定温度の給湯が可能となる状態に前記混合手段を調整することを特徴としている。
上記構成によれば、非常時準備モードで貯湯タンクに貯湯された温水を、停電時においても給湯設定温度に調整して給湯することができる。従って、貯湯タンクに高温の温水を準備して貯湯熱量を最大化することができ、停電時でも安全に給湯することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の貯湯給湯装置によれば、非常時に備えて事前に準備対応を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る外部通信網に接続された貯湯給湯装置を示す図である。
【
図2】本発明の実施例1に係る通常モード時と非常時準備モード時の制御フローチャートである。
【
図3】本発明の実施例2に係る通常モード時と非常時準備モード時の制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0017】
最初に、貯湯給湯装置1について説明する。
図1に示すように貯湯給湯装置1は、湯水を貯留する貯湯タンク2と主熱源機3と補助熱源機4と制御部5(制御手段)を有する。主熱源機3は、貯湯タンク2の湯水を循環させて加熱する。補助熱源機4は、燃料ガスを燃焼させて貯湯タンク2の湯水又は上水を加熱する燃焼式の熱源機である。制御部5は、主熱源機3、補助熱源機4の作動等を、制御プログラムや設定パラメータに基づき制御する。
【0018】
貯湯タンク2の底部には、主熱源機3に湯水を供給する主熱源機往き通路6が接続され、貯湯タンク2の上部には、主熱源機3で加熱された温水を貯湯タンク2に戻す主熱源機戻り通路7が接続されている。主熱源機往き通路6には、主熱源機3に供給する湯水の温度を検知する主熱源機往き温度センサ6aが配設されている。主熱源機戻り通路7には、主熱源機3で加熱された湯水の温度を検知する主熱源機戻り温度センサ7aが配設されている。
【0019】
主熱源機3は、電力により作動して加熱する例えばヒートポンプ式熱源機である。主熱源機3又は主熱源機往き通路6に装備された図示外の循環ポンプによって貯湯タンク2の湯水を循環させると共に、空気の熱を利用して湯水を加熱して貯湯する貯湯運転を行う。この主熱源機3は、補助熱源機4よりも加熱能力が小さいため温水を迅速に生成することはできないが、加熱効率が高く経済的で環境負荷が低い。尚、主熱源機3が例えば電力によって発熱して湯水を加熱するものであってもよく、燃料ガスを使用して発電する際の排熱を利用して湯水を加熱するものであってもよい。
【0020】
また、貯湯タンク2の底部には、貯湯タンク2に上水を供給するための給水通路8が接続されている。給水通路8には、矢印CWで示すように供給される上水の温度を検知する給水温度センサ8aが配設されている。貯湯タンク2の上部(頂部)には、貯湯タンク2の温水を出湯するための出湯通路9が接続されている。
【0021】
貯湯タンク2には、その内部の湯水の温度を検知するために、貯湯タンク2の高さ方向に所定の間隔をあけて並ぶように、複数の貯湯温度センサ2a~2eが配設されている。貯湯タンク2は、貯湯温度センサ2a~2eとタンク出湯温度センサを含めて図示外の断熱部材に覆われており、貯湯された温水の放熱を防いでいる。また、断水時にユーザが貯湯タンク2の湯水を取り出して使用できるように、図示外の非常用の排水栓が設けられている。
【0022】
出湯通路9の下流端には混合弁10(混合手段)が接続されている。混合弁10には、給水通路8から分岐された第1分岐通路11と、給湯通路12が接続されている。混合弁10は、出湯通路9から供給される温水と第1分岐通路11から供給される低温の上水の混合比を調整可能に構成されている。混合弁10で混合された湯水は、給湯通路12に供給されて給湯栓13等から給湯される。
【0023】
出湯通路9には、混合弁10に供給される温水の温度を検知する混合弁入口温度センサ9aが配設されている。給湯通路12には、給湯温度を検知する給湯温度センサ12aと、給湯流量を検知する給湯流量センサ12bが配設されている。
【0024】
給水通路8からさらに第2分岐通路14が分岐され、この第2分岐通路14が三方弁15に接続されている。また、出湯通路9から分岐された出湯分岐通路16と、補助熱源機4により湯水を加熱して出湯通路9に供給するための補助熱源機加熱通路17が、三方弁15に接続されている。
【0025】
補助熱源機加熱通路17には、補助熱源機4に湯水を供給するためのポンプ17aと、補助熱源機4に供給される湯水の温度を検知する補助熱源機入口温度センサ17bが配設されている。補助熱源機4に供給する湯水は、三方弁15によって、第2分岐通路14から供給される上水、又は出湯分岐通路16から供給される貯湯タンク2の湯水に切り替えられる。
【0026】
給湯通路12から分岐された湯張り通路18が浴槽19に接続され、湯張り弁18aを開放することによって浴槽19に湯水が供給される。浴槽19の水位は、湯張り通路18に配設された水位センサ18bの検知圧力によって検知される。浴槽19の排水栓19aは、矢印Dで示すように浴槽19の湯水を排水する。この排水栓19aは、制御部5によって開閉制御可能であるが、排水栓19aの開閉はユーザが行うように構成される場合もある。
【0027】
制御部5は、貯湯温度センサ2a等の各部に配設された温度センサの検知温度や、給湯流量センサ12bの検知流量、水位センサ18bの検知水位等に基づいて、各部に配設された弁やポンプ等の機器類を作動させて各種運転制御を行う。また、制御部5は、時計機能やタイマー機能等を備え、ユーザの給湯の使用態様を学習記憶する機能を備えている。
【0028】
通常は屋外に設置される貯湯給湯装置1の運転操作や給湯設定温度等の各種設定操作、モードの変更操作等を室内から行うために、操作端末20(外部通信手段)が、制御部5に通信接続されている。操作端末20は、操作部と表示部と通信部等を有し、後述する無線ホームネットワークを介して外部の通信網であるインターネット30に接続されている。操作端末20は、例えば台所に設置される台所リモコンである。操作端末20の表示部には、貯湯給湯装置1の給湯設定温度や運転状況等の情報が表示される。
【0029】
次に、貯湯運転について説明する。
主熱源機3が電力を使用して湯水を加熱する例えばヒートポンプ熱源機の場合には、制御部5は、学習記憶したユーザの給湯の使用態様に基づいて給湯使用時刻や給湯使用量を予測し、予測した給湯使用の直前に主熱源機3を用いた貯湯運転が完了するように貯湯運転を制御する。そして、予測した給湯使用量に相当する熱量を貯湯すると、貯湯運転を終了する。主熱源機3が燃料ガスを使用して発電する際の排熱を利用して湯水を加熱するものの場合には、ユーザの電力の使用態様に応じた貯湯運転が行われる。
【0030】
次に、給湯運転について説明する。
制御部5は、給湯流量センサ12bが所定値以上の流量を検知すると、給湯設定温度の給湯を行う給湯運転を開始する。給湯運転において制御部5は、混合弁入口温度センサ9aと給水温度センサ8aと給湯温度センサ12aの検知温度に基づいて、混合弁10の混合比を調整することによって給湯設定温度に調整する。このとき、基本的には、貯湯運転によって貯湯タンク2に貯湯された温水が給湯に使用される。給湯流量センサ12bの検知流量が所定値未満になると、制御部5は給湯運転を終了する。
【0031】
主熱源機3が例えばヒートポンプ熱源機の場合には、制御部5は、給湯運転において、例えば給湯使用時間や給湯流量センサ12bが検知した給湯流量、給湯使用時間と給湯流量と混合弁10の混合比から求められる出湯量等を含む給湯に関するユーザの使用態様を学習記憶する。
【0032】
給湯運転中に貯湯された温水を使い切ってしまった場合等、貯湯タンク2に給湯に使用できる温度の湯水がない場合には、制御部5は、ポンプ17aを駆動し、給水通路8から供給される上水を補助熱源機4で加熱した温水を使用して給湯運転を行う。また、例えば貯湯後に給湯設定温度が変更され、貯湯された温水では給湯できない高温の給湯を行う場合には、上水又は貯湯された温水を補助熱源機4で加熱して給湯に使用する。
【0033】
次に、湯張り運転について説明する。
制御部5は、操作端末20の操作によって、又はタイマー機能で設定された湯張り時刻に浴槽19の湯張りが完了するように、湯張り運転を開始する。例えば、排水栓19aを閉止し、湯張り弁18aを開放して、貯湯タンク2に貯湯された温水又は補助熱源機4で加熱された温水を使用して、所定の水位まで浴槽設定温度の湯張り運転を行う。
【0034】
次に、無線ホームネットワークについて説明する。
無線ホームネットワークには、図示を省略するが、家庭内のパソコンやスマートフォン等の情報端末、テレビやエアコン等の家電製品が通信接続され、
図1に示すように操作端末20も通信接続されている。この無線ホームネットワークは、インターネット30に接続するための回線終端装置31が有する無線ルータ機能によって、又は回線終端装置31に接続された無線ルータ装置によって構築される。これにより、無線ホームネットワークに接続された機器は、インターネット30を介した様々なサービスを利用することができる。尚、貯湯給湯装置1が携帯電話回線を介して直接的にインターネット30に接続するように構成することもできる。
【0035】
次に、外部サーバ32について説明する。
外部サーバ32は、例えば貯湯給湯装置1の提供者(製造メーカー)によって、インターネット30を介して接続された貯湯給湯装置1の適切な状態を維持できるように設置され、貯湯給湯装置1に関する情報を管理する。この外部サーバ32は、貯湯給湯装置1の設置地域に応じた気象情報や、燃料ガス、水道、電力等のインフラに関する情報、又は気象情報やインフラに関する情報を提供する提供元に接続するための情報を、貯湯給湯装置1に提供する。
【0036】
次に、制御部5が有する通常モードと非常時準備モードについて、
図2のフローチャートに基づいて実施例1を説明し、
図3のフローチャートに基づいて実施例2を説明する。図中のSi(i=1,2,・・・)はステップを表す。通常モードは、上記のように、給湯使用に応じて貯湯するために学習記憶した給湯使用履歴に基づいて貯湯運転を行う運転モードである。非常時準備モードは、非常時に備えて給湯可能な温水の事前準備を行う運転モードである。
【実施例1】
【0037】
図2のS1において、制御部5は外部通信手段である操作端末20を介して外部サーバ30に接続し、気象、インフラに関する情報を収集してS2に進む。そしてS2において、貯湯給湯装置1の設置地域の気象又はインフラに関する非常時情報として、所定時間以内(例えば6時間以内)の台風の接近、豪雨や竜巻の予測、燃料ガスや電力や上水の一時供給停止予定等の情報を取得した場合(S2の判定がYesの場合)には、S6に進む。気象又はインフラに関する非常時情報を取得しなかった場合(S2の判定がNoの場合)には、S3に進む。
【0038】
S3において、現在が通常モードであるか否か判定する。S3の判定がYesの場合はS5に進み、S3の判定がNoの場合はS4に進んで通常モードに移行後S5に進む。そしてS5において、貯湯運転や給湯運転等に備えて通常モードで待機し、リターンする。通常モードでは、ユーザの安全のために、給湯運転を行っていないときには混合弁10を出湯通路9側が閉じた状態に調整し、例えば突然の停電によって混合弁10が調整不能になっても、貯湯タンク2に貯湯された温水が給湯されないようにしている。
【0039】
一方、S2の判定がYesの場合にS6において、現在が非常時準備モードであるか否か判定する。S6の判定がYesの場合はS15に進み、S15において給湯運転等に備えて非常時準備モードで待機してリターンする。S6の判定がNoの場合はS7に進み、S7において非常時準備モードに移行してS8に進む。非常時準備モードでは、停電によって混合弁10が調整不能になっても給湯設定温度で給湯可能なように、給湯運転をしていないときにも、貯湯タンク2に貯湯された温水の温度と上水の温度に基づいて混合弁10の混合比を調整している。
【0040】
S8において、主熱源機3を利用して貯湯タンク2に温水を貯湯可能か否か判定する。取得した非常時情報に含まれる台風接近予測時刻や一時供給停止予定時刻等に対して、主熱源機3を利用して十分な熱量を貯湯可能か否か判定するものである。貯湯タンク2の容量や熱源機の加熱能力等にもよるが、一般的には主熱源機3を利用した場合には2~3時間程度で貯湯タンク2が温水で満たされ、補助熱源機4を利用した場合には15~30分程度で貯湯タンク2が温水で満たされる。
【0041】
S8の判定がYesの場合はS9に進み、S9において利用する熱源機として主熱源機3を選択してS11に進む。S8の判定がNoの場合にはS10に進み、S10において利用する熱源機として補助熱源機4を選択してS11に進む。そしてS11において、選択した熱源機を利用して生成した温水を貯湯タンク2に貯湯し、S12に進む。
【0042】
このとき貯湯タンク2に貯湯する温水の温度は、貯湯熱量が最大となるように、熱源機の種類に応じて設定され、例えば主熱源機3では75℃に、補助熱源機4では85℃に設定される。尚、断水の場合には、貯湯タンク2の非常用の排水栓から温水を安全に取り出せるように、例えば給湯設定温度にして貯湯するようにしてもよい。
【0043】
S12において、貯湯タンク2に貯湯した温水によって浴槽19に湯張り運転が可能か否か判定する。具体的には、水位センサ18bの検知圧力、排水弁19aの開閉状態による浴槽19の湯水の有無の判定が行われる。また、貯湯温度センサ2a~2eの検知温度に基づき貯湯された熱量を算出し、湯張りに必要な熱量が貯湯されたか否かの判定が行われる。さらに、補助熱源機4を利用して加熱した温水を浴槽19に湯張り可能か否かの判定が行われる。
【0044】
浴槽19に湯水がなく、湯張りに必要な熱量が貯湯された場合、又は補助熱源機4を利用して湯張り可能な状態である場合、即ちS12の判定がYesの場合はS13に進む。そしてS13において、貯湯タンク2に貯湯された温水を使用して、又は補助熱源機4で加熱された温水を使用して、浴槽19の湯張りを行ってS14に進む。
【0045】
このときの湯張り温度は、ユーザが入浴するために設定した浴槽設定温度であるが、ユーザが用途に合わせて非常時準備モードにおける槽設定温度を設定してもよい。一方、S12の判定がNoの場合はS14に進む。尚、排水弁19aの開閉をユーザが行うものは、浴槽19への湯張りを行わないように設定される。
【0046】
S14において、貯湯タンク2に貯湯完了したか否か判定する。このとき、貯湯温度センサ2a~2eの検知温度に対応する貯湯された温水の量によって判定してもよく、主熱源機往き温度センサ6a又は、補助熱源機入口温度センサ17bの検知温度によって貯湯タンク2に温水が満たされたことを判定してもよい。
【0047】
S14の判定がNoの場合は、S11に戻って貯湯を継続し、S14の判定がYesの場合はS15に進む。そして、S15において、非常時準備モードで待機してリターンする。尚、上記S4の他に、ユーザの操作端末20等からの操作によっても、非常時準備モードから通常モードに移行される。
【0048】
現状では地震の予測が困難なので、非常時準備モードの対象としていない。地震によって燃料ガスの供給が停止された場合には、制御部5は燃料ガス供給停止を検知して、又はインターネット30を介して燃料ガス供給停止情報を取得して、非常時モードに移行し、燃料ガスを使用する機器の使用を禁止する。この非常時モードでは、主熱源機3による貯湯運転が可能であれば貯湯運転を行い、貯湯した湯水を使用して給湯運転が可能であれば、給湯要求に応じて給湯する。
【実施例2】
【0049】
図3のS21において、例えば貯湯給湯装置1よりも早く気象、インフラに関する情報を取得したユーザによるモード切り替え操作が行われると、S22に進む。ユーザは、気象、インフラに関する非常時情報の有無を判断して、貯湯給湯装置1の制御部5のモードを操作端末20によって確認し、必要があればモード切り替え操作を行う。
【0050】
S22において、現在が通常モードであるか否か判定する。S22の判定がNoの場合にはS23に進み、S23において通常モードに移行してS24に進む。そしてS24において通常モードで待機してリターンする。
【0051】
一方、S22の判定がYesの場合には、S7に進む。そしてS7において非常時準備モードに移行する。S7~S15において温水の準備動作を行うが、実施例1と同様なので説明を省略する。尚、S8の主熱源機3で貯湯可能か否かの判定は、インターネット30から気象、インフラに関する非常時情報を取得した制御部5が行うが、当該非常時情報を取得したユーザが行って、操作端末20の操作によって貯湯に利用する熱源機を選択してもよい。
【0052】
上記実施形態の貯湯給湯装置1の作用、効果について説明する。
貯湯給湯装置1は、通常モードでは、給湯使用に応じて貯湯タンク2に貯湯する。そして、通常モード時に操作端末20(外部通信手段)を介して気象又はインフラに関する非常時情報を取得した場合に又はユーザの操作によって、非常時準備モードに移行して非常時に備えて生成した温水を貯湯タンク2に貯湯する。従って、非常時に備えて、事前に温水の準備対応を行うことができる。
【0053】
制御部5が非常時準備モードに移行するときには、気象又はインフラに関する非常時情報に基づいて、非常時までの時間等によって、温水の生成に利用する熱源機として、主熱源機3又は補助熱源機4の一方を選択する。従って、状況に応じて温水の準備対応に適した熱源機によって温水を生成することができる。
【0054】
制御部5は、非常時準備モードのときに、貯湯タンク2に貯湯された温水又は補助熱源機4で加熱された温水を使用して浴槽19に湯張り可能な場合には、浴槽19に湯張りする。従って、非常時準備モードのときに貯湯タンク2の容量よりも多い温水を事前に準備することができる。
【0055】
制御部5は、非常時準備モードのときに、貯湯タンク2の貯湯温度と上水の温度に応じて給湯設定温度の給湯が可能となる状態に混合弁15(混合手段)を調整する。それ故、非常時準備モードで貯湯タンク2に貯湯された温水を、停電時においても給湯設定温度に調整して安全に給湯することができる。従って、貯湯タンク2に高温の温水を準備して貯湯熱量を最大化することができ、停電時でも安全に給湯することができる。
【0056】
その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく上記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はその種の変更形態をも包含するものである。
【符号の説明】
【0057】
1 :貯湯給湯装置
2 :貯湯タンク
2a~2e :貯湯温度センサ
3 :主熱源機
4 :補助熱源機
5 :制御部(制御手段)
6 :主熱源機往き通路
6a :主熱源機往き温度センサ
7 :主熱源機戻り通路
7b :主熱源機戻り温度センサ
8 :給水通路
8a :給水温度センサ
9 :出湯通路
9a :混合弁入り口温度センサ
10 :混合弁(混合手段)
11 :第1分岐通路
12 :給湯通路
12a :給湯温度センサ
12b :給湯流量センサ
13 :給湯栓
14 :第2分岐通路
15 :三方弁
16 :出湯分岐通路
17 :補助熱源機加熱通路
17a :ポンプ
17b :補助熱源機入口温度センサ
18 :湯張り通路
18a :湯張り弁
18b :水位センサ
19 :浴槽
19a :排水弁
20 :操作端末(外部通信手段)
30 :インターネット
31 :回線終端装置
32 :外部サーバ