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特許7445855空調ユニット、空調ユニット向け制御装置および空調設備の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】空調ユニット、空調ユニット向け制御装置および空調設備の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/63 20180101AFI20240301BHJP
   F24F 11/47 20180101ALI20240301BHJP
【FI】
F24F11/63
F24F11/47
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022131557
(22)【出願日】2022-08-22
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】391007242
【氏名又は名称】三菱重工冷熱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102738
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】二宮 達
【審査官】沖田 孝裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-023851(JP,A)
【文献】特開2006-200812(JP,A)
【文献】特開2007-263527(JP,A)
【文献】特開2009-216330(JP,A)
【文献】特開昭64-014539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/63
F24F 11/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調対象室内へ空気を流入し、空調対象室内から流出する空気に対して、所定換気比率で外気を導入した空気を戻す空調設備であって、外気を導入した空気を除湿する除湿部と、外気を導入した空気を冷却する冷却部 と、冷却除湿された空気を加熱する加熱部と、加熱された空気を加湿する加湿部と、をこの順に有し、空気の温度および/又は湿度を調整することにより、空調対象室内を空調する空調設備の制御方法であって、
記憶部、演算制御部、入力部、および出力部を有し、該記憶部と該演算制御部との間で信号の送受信可能に接続され、該演算制御部と該入力部、該出力部との間でそれぞれ信号の送信、受信可能に接続されている空調設備制御部により、
数値化すべき、空調設備に対する評価項目の選択と、空調対象室内の目標温度および/又は目標湿度、空調対象室内の熱負荷、および外気温度および/又は外気湿度からなる前提条件と、換気比率、除湿部向け除湿源、冷却部向け冷熱源、加熱部向け加熱源、および加湿部向け加湿源それぞれのエネルギー消費量に対する選択する評価項目への換算係数、換気比率の計算刻み幅からなる計算条件とを設定する段階と、
空調対象室内の除湿の必要性の可否を判定する段階と、除湿の必要性がある場合、除湿源のエネルギー消費量に基づいて、除湿源における評価項目を数値化し、
空調対象室内の冷却の必要性の可否を判定する段階と、冷却の必要性がある場合、冷熱源のエネルギー消費量に基づいて、冷熱源における評価項目を数値化し、
空調対象室内の加熱の必要性の可否を判定する段階と、加熱の必要性がある場合、加熱源のエネルギー消費量に基づいて、加熱源における評価項目を数値化し、
空調対象室内の加湿の必要性の可否を判定する段階と、加湿の必要性がある場合、加湿源のエネルギー消費量に基づいて、加湿源における評価項目を数値化し、
除湿、冷却、加熱および加湿それぞれの可否を判定する段階の判定結果に基づいて、除湿部向け除湿源、冷却部向け冷熱源、加熱部向け加熱源、および加湿部向け加湿源それぞれの評価項目数値の合計を算出する段階と、
換気比率をパラメータとして、前記計算刻み幅に基づいて、前記除湿、前記冷却、前記加熱、および前記加湿それぞれの必要性可否判定段階を繰り返して、前記評価項目合計数値を算出することにより、前記評価項目合計数値を最適化する換気比率を算出する段階とを、実行することを特徴する空調設備の制御方法。
【請求項2】
前記空調設備に対する評価項目は、原油換算量、排出CO2量、空調設備運転コストのいずれか、または組み合わせであり、それに応じて、選択した評価項目を数値化するのに、冷熱源、除湿源、加熱源、および加湿源それぞれに必要なエネルギー消費量ー評価項目数値間の換算係数を用いる、請求項1に記載の空調設備の制御方法。
【請求項3】
前記評価項目合計数値を最適化する換気比率を算出する段階は、前記冷却部向け冷熱源、前記除湿部向け除湿源、前記加熱部向け加熱源、および加湿部向けの加湿源の評価項目合計数値を、換気比率を0%から100%まで、パラメータとして、前記計算刻み幅に基づいてシミュレーションし、評価項目合計数値を最適化する換気比率を算出することにより行う、請求項1に記載の空調設備の制御方法。
【請求項4】
前記除湿可否の判定段階は、空調対象室内の目標温度および目標湿度から算出される露点温度と、所定換気比率で混合した前記空調設備入口の空気の温度および湿度から算出される露点温度とを比較し、前者の露点温度が、後者の露点温度より低い場合には、除湿必要と判定し、高い場合には、除湿不必要と判定する、請求項1に記載の空調設備の制御方法。
【請求項5】
前記除湿部において、空調対象室内の冷却により除湿を行う場合、前記冷熱源と前記除湿源とを共用化する、請求項1に記載の空調設備の制御方法。
【請求項6】
前記冷却可否の判定段階は、空調対象室内の目標温度と、前記除湿部出口の空気の温度とを比較し、前者の温度が、後者の温度より低い場合には、冷却必要と判定し、高い場合には、冷却不必要と判定する、請求項1に記載の空調設備の制御方法。
【請求項7】
前記加熱可否の判定段階は、空調対象室内の目標温度と、前記除湿部または前記冷却部出口の空気の温度とを比較し、前者の温度が、後者の温度より高い場合には、加熱必要と判定し、低い場合には、加熱不必要と判定する、請求項1に記載の空調設備の制御方法。
【請求項8】
前記加湿可否の判定段階は、空調対象室内の目標湿度と、前記加熱部により加熱後の空気湿度とを比較し、前者の目標湿度が、後者の空気湿度より高い場合には、加湿必要と判定し、低い場合には、加湿不必要と判定する、請求項1に記載の空調設備の制御方法。
【請求項9】
前記除湿源および/または前記冷熱源は、蒸気圧縮式冷凍機、吸収式冷凍機、吸着式冷凍機、地下水、海洋深層水のいずれかであり、選択した冷熱源に応じて、エネルギー消費量に基づく評価項目の数値化の際、そのCOPを利用し、および/または前記加熱源は、ボイラ、ヒートポンプ、廃温水、地熱、太陽熱温水器、電気ヒータのいずれかであり、選択した加熱源に応じて、エネルギー消費量に基づく評価項目の数値化の際、そのCOPを利用し、および/または前記加湿源は、ボイラ、蒸気、超音波加湿器、電極式加湿器のいずれかであり、選択した冷熱源に応じて、エネルギー消費量に基づく評価項目の数値化の際、そのCOPを利用する、請求項1に記載の空調設備の制御方法。
【請求項10】
前記空調設備に対する評価項目は、原油換算量、排出CO2量、空調設備運転コストの組み合わせであり、原油換算量、排出CO2量、空調設備運転コストそれぞれに対して、零を含む重み付け係数を設定し、それぞれ重み付け係数を乗じた原油換算量、排出CO2量、および空調設備運転コストの合計が、数値化すべき空調設備に対する評価項目である、請求項2に記載の空調設備の制御方法。
【請求項11】
空調対象室内へ空気を流入し、空調対象室内から流出する空気に対して、所定換気比率で外気を導入した空気を戻す空調設備であって、外気を導入した空気を除湿する除湿部と、外気を導入した空気を冷却する冷却部 と、冷却除湿された空気を加熱する加熱部と、加熱された空気を加湿する加湿部と、をこの順に有し、
該空調設備から空調対象室への往管路と、空調対象室から該空調設備への復管路と、外気の空調設備への導入管路と、該復管路に連通接続される排出管路とがさらに設けられ、
復管路または導入管路に第1電動弁、排出管路に第2電動弁が設けられ、
該第1電動弁および/または該第2電動弁の開度を調整する制御装置が設けられ、
該制御装置は、
数値化すべき、空調設備に対する評価項目の選択と、空調対象室内の目標温度および/又は目標湿度、空調対象室内の熱負荷、および外気温度および/又は外気湿度からなる前提条件と、換気比率、除湿部向け除湿源、冷却部向け冷熱源、加熱部向け加熱源、および加湿部向け加湿源それぞれのエネルギー消費量に対する選択する評価項目への換算係数、換気比率の計算刻み幅からなる計算条件とを設定する段階と、
空調対象室内の除湿の必要性の可否を判定する段階と、除湿の必要性がある場合、除湿源のエネルギー消費量に基づいて、除湿源における評価項目を数値化し、
空調対象室内の冷却の必要性の可否を判定する段階と、冷却の必要性がある場合、冷熱源のエネルギー消費量に基づいて、冷熱源における評価項目を数値化し、
空調対象室内の加熱の必要性の可否を判定する段階と、加熱の必要性がある場合、加熱源のエネルギー消費量に基づいて、加熱源における評価項目を数値化し、
空調対象室内の加湿の必要性の可否を判定する段階と、加湿の必要性がある場合、加湿源のエネルギー消費量に基づいて、加湿源における評価項目を数値化し、
除湿、冷却、加熱および加湿それぞれの可否を判定する段階の判定結果に基づいて、除湿部向け除湿源、冷却部向け冷熱源、加熱部向け加熱源、および加湿部向け加湿源それぞれの評価項目数値の合計を算出する段階と、
換気比率をパラメータとして、前記計算刻み幅に基づいて、前記除湿、前記冷却、前記加熱、および前記加湿それぞれの必要性可否判定段階を繰り返して、前記評価項目合計数値を算出することにより、前記評価項目合計数値を最適化する換気比率を算出する段階と、を有する制御アルゴリズムを有し、
1電動弁および/または該第2電動弁の開度を調整することにより、前記空調設備への換気比率が調整可能である、ことを特徴とする空調ユニット。
【請求項12】
空気の空調対象室から外部への排出管路は、前記空調対象室から前記空調設備への前記復管路の空調対象室側近傍に接続され、外気の空調設備への導入管路は、前記空調対象室から前記空調設備への前記復管路の前記空調設備側近傍に接続される、請求項11に記載の空調ユニット。
【請求項13】
空調対象室内へ空気を流入し、空調対象室内から流出する空気に対して、所定換気比率で外気を導入した空気を戻す空調設備であって、外気を導入した空気を除湿する除湿部と、外気を導入した空気を冷却する冷却部 と、冷却除湿された空気を加熱する加熱部と、加熱された空気を加湿する加湿部と、をこの順に有する空調設備に対する制御装置であって、
該制御装置は、
数値化すべき、空調設備に対する評価項目の選択と、空調対象室内の目標温度および/又は目標湿度、空調対象室内の熱負荷、および外気温度および/又は外気湿度からなる前提条件と、換気比率、除湿部向け除湿源、冷却部向け冷熱源、加熱部向け加熱源、および加湿部向け加湿源それぞれのエネルギー消費量に対する選択する評価項目への換算係数、換気比率の計算刻み幅からなる計算条件とを設定する段階と、
空調対象室内の除湿の必要性の可否を判定する段階と、除湿の必要性がある場合、除湿源のエネルギー消費量に基づいて、除湿源における評価項目を数値化し、
空調対象室内の冷却の必要性の可否を判定する段階と、冷却の必要性がある場合、冷熱源のエネルギー消費量に基づいて、冷熱源における評価項目を数値化し、
空調対象室内の加熱の必要性の可否を判定する段階と、加熱の必要性がある場合、加熱源のエネルギー消費量に基づいて、加熱源における評価項目を数値化し、
空調対象室内の加湿の必要性の可否を判定する段階と、加湿の必要性がある場合、加湿源のエネルギー消費量に基づいて、加湿源における評価項目を数値化し、
除湿、冷却、加熱および加湿それぞれの可否を判定する段階の判定結果に基づいて、除湿部向け除湿源、冷却部向け冷熱源、加熱部向け加熱源、および加湿部向け加湿源それぞれの評価項目数値の合計を算出する段階と、
換気比率をパラメータとして、前記計算刻み幅に基づいて、前記除湿、前記冷却、前記加熱、および前記加湿それぞれの必要性可否判定段階を繰り返して、前記評価項目合計数値を算出することにより、前記評価項目合計数値を最適化する換気比率を算出する段階と、を有する制御アルゴリズムを有し、
算出された評価項目合計数値を最適化する換気比率に基づいて、該空調対象室から該空調設備への復管路または導入管路に設けられる第1電動弁、および/または空気の空調対象室から外部への排出管路に設けられる第2電動弁の開度を調整することにより、前記空調設備への換気比率が調整可能である、ことを特徴とする空調ユニット向け制御装置。
【請求項14】
前記制御装置は、前記評価項目の選択と、前記前提条件と、前記計算条件とからなる設定条件を入力する入力部と、
設定条件を記憶する設定条件記憶部と、空気線図データベースとを記憶する記憶部と、
前記入力部から入力された設定条件に基づいて、前記評価項目合計数値を最適化する換気比率を算出する演算部と、
該演算部により算出された評価項目合計数値を最適化する換気比率に基づいて、前記第1電動弁および/または前記第2電動弁の開度を制御する制御信号を送信する出力部と、を有する、請求項13に記載の空調ユニット向け制御装置。
【請求項15】
前記評価項目合計数値を最適化する換気比率を算出する段階は、所与の計算刻み幅で換気比率を変動させて、前記評価項目合計数値を最適化する換気比率候補を算出した場合に、該評価項目合計数値を最適化する換気比率候補の前後で所与の計算刻み幅より計算刻み幅を小さくすることにより、より正確な該評価項目合計数値を最適化する換気比率を計算し直す、請求項1に記載の空調設備の制御方法。
【請求項16】
前記評価項目合計数値を最適化する換気比率のもとで、前記空調対象室内へ流入される空気温湿度が前記目標温湿度に一致するように、前記除湿源および/または冷熱源の冷熱媒、および/または前記加熱源の熱媒、および/または前記加湿源の熱媒の流量をフィードバック制御する、請求項1に記載の空調設備の制御方法。
【請求項17】
前記空調対象室内は、エンジンベンチであり、エンジンの試験条件に応じて、前記空調対象室内の負荷条件が変動する、請求項1に記載の空調設備の制御方法。
【請求項18】
予め定められたエンジンの試験条件により、前記空調対象室内の負荷条件の変動スケジュールを設定し、設定した変動スケジュールに応じて、フィードフォワード制御する、請求項17に記載の空調設備の制御方法。
【請求項19】
前記空調対象室内は、恒温恒湿室であり、季節または昼夜に応じて変動する外気温湿度を測定すべきスケジュールを予め設定しておき、設定されるスケジュールにより外気温湿度が測定されるたびに、前記評価項目合計数値を最適化する換気比率を算出する、請求項1に記載の空調設備の制御方法。
【請求項20】
前記空調対象室内の負荷は、前記空調対象室内へ流入される空気の温湿度と、前記空調対象室内から流出される空気の温湿度との差分により、算出する、請求項1に記載の空調設備の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調ユニット、空調ユニット向け制御装置および空調設備の制御方法に関し、より詳細には、運転条件(負荷条件、設定条件、外気条件)に応じて、空調対象室内を設定条件に最適な仕方で制御することが可能な空調ユニット、空調ユニット向け制御装置および空調設備の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、空調機に対する制御方法、システムを利用して、空調機による空調空間の空気の調整が行われている。
特許文献1は、その一例を開示する。
この空調機の制御方法は、空調負荷に応じて、最小から最大まで能力制御する最大能力可変運転と、空調負荷に応じて、最小から定格まで能力制御する定格能力可変運転とに切り替え可能な空気調和措置において、除霜運転に入って以降、最大能力可変運転に固定するものである。
このような制御方法によれば、除霜運転に入って以降、最大能力可変運転に固定するので、除霜運転を必要とする状況下では、空調負荷に応じて最大の暖房能力を発揮することができる。
また、気候条件によっては、外気温が下がっても除霜運転するほどに結露しないことがある場合には、外気温が所定値以下になったことを条件にして、最大能力可変運転することにより、空調負荷に応じて最大の暖房能力を発揮することができる。
具体的には、室温の設定値と検出温度との偏差に応じて、冷媒循環用の圧縮機の運転周波数を変化させる、いわゆるインバータ制御が開示されている。
しかしながら、空調対象室内の温度のみに注目し、空調対象室内の湿度の高低に応じて、制御するものでなく、空調対象室内の温度の高低に応じて、最大能力可変運転か、定格能力可変運転かの二者択一の切り替え制御を行っているに過ぎず、空調機の省エネルギー化の観点から、きめの細かい制御を行うものではない。
【0003】
特許文献2は、空気調和システムとして、別の例を開示する。
この空気調和システムは、空調用空気を空調対象室内に供給して冷房又は暖房する空調機と、空調機を制御して空調用空気を冷房又は暖房に適した空気状態に調整する空調機制御装置と、空調用空気の空気状態の調整のために空調機に供給される循環水の供給水温を調整する熱源機と、空調機制御装置から独立した制御装置であって循環水の供給水温を外気負荷の変動に応じて自動的に可変調整する熱源機制御装置と、を備える。
この空気調和システムによれば、通常、外気負荷である屋外の温度と湿度に比例して空調対象室内の空調負荷は変動するので、外気負荷が少ないと空調対象室内の空調負荷も少ないと予測できる。それを利用して、空調機への循環水の供給水温を、夏期は上げて冬期は下げれば、熱源機の消費エネルギーが減って省エネを図れる。複雑でコストの掛かる中央制御方式を用いずに、制御を空調機側と熱源機側に完全分離し独立させているため、計装工事が簡略化され保守管理が楽となる。
しかしながら、この空気調和システムは、特許文献1とは異なり、空調対象室内の温度のみならず、空調対象室内の湿度にも注目して、省エネルギー化の観点から空調制御を行っているが、外気の変動のみに応じて、空調機に供給される循環水の供給水温を制御量として、制御するに過ぎない。
【0004】
特許文献3は、空調制御システムとして、さらに別の例を開示する。
この空調制御システムは、多数の制御部品を有する空調機器を備えた事業所に空調機器の制御方法を運転管理会社から提供する空調制御システムであって、事業所の空調負荷を外気条件に依存する負荷と生産計画に基づく負荷とに区別し、外気条件に依存する負荷に対しては少なくとも前日までの外気状態履歴から求めた当日の予測外気状態に基づいて空調機器を構成する各制御部品を制御し、生産計画に基づく負荷に対しては前日と実質的に同じ状態で空調機器を構成する各制御部品を制御する制御方法を運転管理会社が事業所に提供するものである。
運転管理会社は、前日までの外気状態の履歴を記憶する外気状態履歴データベースと空調熱負荷データベースとを有し、気象予報提供手段からネットワークを介して得た当日の予測最高気温と前日までの外気状態履歴データ及び負荷データに基づいて当日の外気条件に依存する負荷を予測する。
より具体的には、半導体製造ラインを覆って設けられたクリーンルームには、外気を導入するためのダクトが取付けられ、ダクトには、外気側から順に送風機、加湿器、冷却コイル、加熱器が取付けられている。
【0005】
空調熱負荷を予測するときは、空調熱負荷データベースには、予め空調対象設備の熱負荷の履歴が記憶され、半導体生産装置、ドライコイル、冷却コイル、純水の冷却負荷と加湿器、加熱器の加熱負荷の大きさが記憶されている。空調熱負荷データベースに記憶されたこれらの熱負荷の情報を、外気状態に依存するものと外気状態に依存しないものとに分離する。冷却コイルと純水が、外気状態に依存する空調熱負荷源であり、これら外気状態に依存する空調熱負荷については、前日の空調熱負荷曲線を、外気状態の当日の推移予測結果と前日の測定結果との差に相当する分だけ補正して求める。
一方、半導体生産装置とドライコイルとは外気状態とは無関係の空調熱負荷源であり、外気状態とは無関係の半導体生産装置の空調負荷は、ほとんどの日において前日の空調熱負荷の大きさと同じであるとみなせる。
当日の空調熱負荷を解析したら、パソコンは空調機器特性データベースから冷凍機の部分負荷特性等の空調機器の特性を読み込み、それとともに、空調機器設定温湿度データベースからクリーンルームの設定温度や設定湿度等の情報を読み込み、読み込んだ空調機器の情報と空調機器の設定温度および湿度と当日の空調熱負荷予測結果とを用いて、空調制御方法分析手段が半導体製造事業所のエネルギー使用量が最小になるように省エネ運転方法を分析する。
【0006】
以上の空調制御システムによれば、特許文献2と同様に、空調対象室内の温度のみならず、湿度にも注目して、予め予測される外気の変動のみならず負荷変動にも応じて、空調機の省エネルギー化の観点から最適制御を達成しようとする。
しかしながら、特許文献3では、具体的に、何を制御量にして制御を行うかすら開示されておらず、ましてや、空調対象室内からの外部への排気と、空調機への還気との比に着目し、空調機に取り入れる空気において、還気をどの程度にするかについて、開示はおろか示唆すらなされていない。
この点、従来の空調機に対する制御方法、システムにおいて、空調対象室内からの外部への排気および空調機への還気については、オール排気か、ほぼオール還気の二者択一で行われてきたに過ぎず、外気条件の変動、空調対象室内における負荷の変動、および空調対象室内の目標温湿度の変動、あるいは、これらの組み合わせによる変動に応じて、たとえば、空調機の省エネルギー化の観点から空調対象室内からの外部への排気および空調機への還気との比に注目して、最適制御を行うものは皆無であった。

【文献】特開平3-117844
【文献】特許第6425750号
【文献】特開2002-89929
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、運転条件(負荷条件、設定条件、外気条件)に応じて、空調対象室内を設定条件に最適な仕方で制御することが可能な空調ユニット、空調ユニット向け制御装置および空調設備の制御方法を提供する。
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、運転条件に応じて、空調機に対する省エネルギーを最適にしながら、空調対象室内を目標温湿度に制御することが可能な空調ユニット、空調ユニット向け制御装置および空調設備の制御方法を提供する。
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、換気比率に着目し、空調設備に対する評価項目を数値化することにより、最適な換気比率をシミレーションすることが可能な空調ユニット、空調ユニット向け制御装置および空調設備の制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、本発明の空調設備の制御方法は、
空調対象室内へ空気を流入し、空調対象室内から流出する空気に対して、所定換気比率で外気を導入した空気を戻す空調設備であって、外気を導入した空気を除湿する除湿部と、外気を導入した空気を冷却する冷却部 と、冷却除湿された空気を加熱する加熱部と、加熱された空気を加湿する加湿部と、をこの順に有し、空気の温度および/又は湿度を調整することにより、空調対象室内を空調する空調設備の制御方法であって、
数値化すべき、空調設備に対する評価項目の選択と、空調対象室内の目標温度および/又は目標湿度、空調対象室内の熱負荷、および外気温度および/又は外気湿度からなる前提条件と、換気比率、除湿部向け除湿源、冷却部向け冷熱源、加熱部向け加熱源、および加湿部向け加湿源それぞれのエネルギー消費量に対する選択する評価項目への換算係数、換気比率の計算刻み幅からなる計算条件とを設定する段階と、
空調対象室内の除湿の必要性の可否を判定する段階と、除湿の必要性がある場合、除湿源のエネルギー消費量に基づいて、除湿源における評価項目を数値化し、
空調対象室内の冷却の必要性の可否を判定する段階と、冷却の必要性がある場合、冷熱源のエネルギー消費量に基づいて、冷熱源における評価項目を数値化し、
空調対象室内の加熱の必要性の可否を判定する段階と、加熱の必要性がある場合、加熱源のエネルギー消費量に基づいて、加熱源における評価項目を数値化し、
空調対象室内の加湿の必要性の可否を判定する段階と、加湿の必要性がある場合、加湿源のエネルギー消費量に基づいて、加湿源における評価項目を数値化し、
除湿、冷却、加熱および加湿それぞれの可否を判定する段階の判定結果に基づいて、除湿部向け除湿源、冷却部向け冷熱源、加熱部向け加熱源、および加湿部向け加湿源それぞれの評価項目数値の合計を算出する段階と、
換気比率をパラメータとして、前記計算刻み幅に基づいて、前記除湿、前記冷却、前記加熱、および前記加湿それぞれの必要性可否判定段階を繰り返して、前記評価項目合計数値を算出することにより、前記評価項目合計数値を最適化する換気比率を算出する段階と、を有する構成としている。
【0009】
以上の構成を有する空調設備の制御方法によれば、たとえば、季節または昼夜に応じて外気温度が変動する場合において、空調対象室内の設定温湿度が室温のもとで、冬季で外気が低温低湿度の場合、換気比率を調整することにより、空調対象室内から環気して空調機に戻す時間当たりの空気量が外部から空調機に取り入れる外気の時間当たりの空気量より多くなるように空気量比を調整する一方、夏季で外気が高温高湿度の場合、換気比率を調整することにより、空調対象室内から環気して空調機に戻す時間当たりの空気量が外部から空調機に取り入れる外気の時間当たりの空気量より少なるように空気量比を調整することにより、季節または昼夜を問わず、常時、空調対象室内から環気して空調機に戻さず、空調対象室内からすべて外部に排気したり、逆に、空調対象室内から外部に排気することなく、空調対象室内からすべて環気して空調機に戻す場合に比し、空調対象室内から流出する空気に対して、所定換気比率で外気を導入した空気、すなわち、空調機入口に供給する空調用空気を調整することにより、空調対象室内を目標温湿度に制御するのに、除湿源、冷熱源、加熱源、および加湿源それぞれに必要なエネルギー消費量 を算出し、原油量、排出CO2量、空調設備運転コスト等空調設備に対する評価項目を選択したうえで、除湿源、冷熱源、加熱源、および加湿源それぞれにおいて、エネルギー消費量ー評価項目数値間の換算係数に基づいて、評価項目数値を最小化する換気比率を算出することにより、空調設備を最適に制御することが可能である。
【0010】
また、前記空調設備に対する評価項目は、原油換算量、排出CO2量、空調設備運転コストのいずれか、または組み合わせであり、それに応じて、選択した評価項目を数値化するのに、冷熱源、除湿源、加熱源、および加湿源それぞれに必要なエネルギー消費量ー評価項目数値間の換算係数を用いるのがよい。
さらに、前記評価項目合計数値を最適化する換気比率を算出する段階は、前記冷却部向け冷熱源、前記除湿部向け除湿源、前記加熱部向け加熱源、および加湿部向けの加湿源の評価項目合計数値を、換気比率を0%から100%まで、パラメータとして、前記計算刻み幅に基づいてシミュレーションし、評価項目合計数値を最適化する換気比率を算出することにより行うのがよい。
【0011】
さらにまた、前記除湿可否の判定段階は、空調対象室内の目標温度および目標湿度から算出される露点温度と、所定換気比率で混合した前記空調設備入口の空気の温度および湿度から算出される露点温度とを比較し、前者の露点温度が、後者の露点温度より低い場合には、除湿必要と判定し、高い場合には、除湿不必要と判定するのがよい。
加えて、前記除湿部において、空調対象室内の冷却により除湿を行う場合、前記冷熱源と前記除湿源とを共用化するのでもよい。
また、前記冷却可否の判定段階は、空調対象室内の目標温度と、前記除湿部出口の空気の温度とを比較し、前者の温度が、後者の温度より低い場合には、冷却必要と判定し、高い場合には、冷却不必要と判定するのがよい。
さらに、前記加熱可否の判定段階は、空調対象室内の目標温度と、前記除湿部または前記冷却部出口の空気の温度とを比較し、前者の温度が、後者の温度より高い場合には、加熱必要と判定し、低い場合には、加熱不必要と判定するのがよい。
さらにまた、前記加湿可否の判定段階は、空調対象室内の目標湿度と、前記加熱部により加熱後の空気湿度とを比較し、前者の目標湿度が、後者の空気湿度より高い場合には、加湿必要と判定し、低い場合には、加湿不必要と判定するのがよい。
さらに、前記除湿源および/または前記冷熱源は、蒸気圧縮式冷凍機、吸収式冷凍機、吸着式冷凍機、地下水、海洋深層水のいずれかであり、選択した冷熱源に応じて、エネルギー消費量に基づく評価項目の数値化の際、そのCOPを利用するのがよい。
【0012】
さらにまた、前記加熱源は、ボイラ、ヒートポンプ、廃温水、地熱、太陽熱温水器、電気ヒータのいずれかであり、選択した加熱源に応じて、エネルギー消費量に基づく評価項目の数値化の際、そのCOPを利用するのがよい。
加えて、前記加湿源は、ボイラ、蒸気、超音波加湿器、電極式加湿器のいずれかであり、選択した冷熱源に応じて、エネルギー消費量に基づく評価項目の数値化の際、そのCOPを利用するのがよい。
また、前記空調設備に対する評価項目は、原油換算量、排出CO2量、空調設備運転コストの組み合わせであり、原油換算量、排出CO2量、空調設備運転コストそれぞれに対して、零を含む重み付け係数を設定し、それぞれ重み付け係数を乗じた原油換算量、排出CO2量、および空調設備運転コストの合計が、数値化すべき空調設備に対する評価項目であるのがよい。
【0013】
上記課題を達成するために、本発明の空調ユニットは、
空調対象室内へ空気を流入し、空調対象室内から流出する空気に対して、所定換気比率で外気を導入した空気を戻す空調設備であって、外気を導入した空気を除湿する除湿部と、外気を導入した空気を冷却する冷却部 と、冷却除湿された空気を加熱する加熱部と、加熱された空気を加湿する加湿部と、をこの順に有し、
該空調設備から空調対象室への往管路と、空調対象室から該空調設備への復管路と、外気の空調設備への導入管路と、該復管路に連通接続される排出管路とがさらに設けられ、
復管路または導入管路に第1電動弁、排出管路に第2電動弁が設けられ、
該第1電動弁および/または該第2電動弁の開度を調整する制御装置が設けられ、
該制御装置は、
数値化すべき、空調設備に対する評価項目の選択と、空調対象室内の目標温度および/又は目標湿度、空調対象室内の熱負荷、および外気温度および/又は外気湿度からなる前提条件と、換気比率、除湿部向け除湿源、冷却部向け冷熱源、加熱部向け加熱源、および加湿部向け加湿源それぞれのエネルギー消費量に対する選択する評価項目への換算係数、換気比率の計算刻み幅からなる計算条件とを設定する段階と、
空調対象室内の除湿の必要性の可否を判定する段階と、除湿の必要性がある場合、除湿源のエネルギー消費量に基づいて、除湿源における評価項目を数値化し、
空調対象室内の冷却の必要性の可否を判定する段階と、冷却の必要性がある場合、冷熱源のエネルギー消費量に基づいて、冷熱源における評価項目を数値化し、
空調対象室内の加熱の必要性の可否を判定する段階と、加熱の必要性がある場合、加熱源のエネルギー消費量に基づいて、加熱源における評価項目を数値化し、
空調対象室内の加湿の必要性の可否を判定する段階と、加湿の必要性がある場合、加湿源のエネルギー消費量に基づいて、加湿源における評価項目を数値化し、
除湿、冷却、加熱および加湿それぞれの可否を判定する段階の判定結果に基づいて、除湿部向け除湿源、冷却部向け冷熱源、加熱部向け加熱源、および加湿部向け加湿源それぞれの評価項目数値の合計を算出する段階と、
換気比率をパラメータとして、前記計算刻み幅に基づいて、前記除湿、前記冷却、前記加熱、および前記加湿それぞれの必要性可否判定段階を繰り返して、前記評価項目合計数値を算出することにより、前記評価項目合計数値を最適化する換気比率を算出する段階と、を有する制御アルゴリズムを有し、
該1電動弁および/または該第2電動弁の開度を調整することにより、前記空調設備への換気比率が調整可能である、構成としている。
【0014】
また、空気の空調対象室から外部への排出管路は、前記空調対象室から前記空調設備への前記復管路の空調対象室側近傍に接続され、外気の空調設備への導入管路は、前記空調対象室から前記空調設備への前記復管路の前記空調設備側近傍に接続されるのがよい。
【0015】
上記課題を達成するために、本発明の空調ユニット向け制御装置は、
空調対象室内へ空気を流入し、空調対象室内から流出する空気に対して、所定換気比率で外気を導入した空気を戻す空調設備であって、外気を導入した空気を除湿する除湿部と、外気を導入した空気を冷却する冷却部 と、冷却除湿された空気を加熱する加熱部と、加熱された空気を加湿する加湿部と、をこの順に有する空調設備に対する制御装置であって、
該制御装置は、
数値化すべき、空調設備に対する評価項目の選択と、空調対象室内の目標温度および/又は目標湿度、空調対象室内の熱負荷、および外気温度および/又は外気湿度からなる前提条件と、換気比率、除湿部向け除湿源、冷却部向け冷熱源、加熱部向け加熱源、および加湿部向け加湿源それぞれのエネルギー消費量に対する選択する評価項目への換算係数、換気比率の計算刻み幅からなる計算条件とを設定する段階と、
空調対象室内の除湿の必要性の可否を判定する段階と、除湿の必要性がある場合、除湿源のエネルギー消費量に基づいて、除湿源における評価項目を数値化し、
空調対象室内の冷却の必要性の可否を判定する段階と、冷却の必要性がある場合、冷熱源のエネルギー消費量に基づいて、冷熱源における評価項目を数値化し、
空調対象室内の加熱の必要性の可否を判定する段階と、加熱の必要性がある場合、加熱源のエネルギー消費量に基づいて、加熱源における評価項目を数値化し、
空調対象室内の加湿の必要性の可否を判定する段階と、加湿の必要性がある場合、加湿源のエネルギー消費量に基づいて、加湿源における評価項目を数値化し、
除湿、冷却、加熱および加湿それぞれの可否を判定する段階の判定結果に基づいて、除湿部向け除湿源、冷却部向け冷熱源、加熱部向け加熱源、および加湿部向け加湿源それぞれの評価項目数値の合計を算出する段階と、
換気比率をパラメータとして、前記計算刻み幅に基づいて、前記除湿、前記冷却、前記加熱、および前記加湿それぞれの必要性可否判定段階を繰り返して、前記評価項目合計数値を算出することにより、前記評価項目合計数値を最適化する換気比率を算出する段階と、を有する制御アルゴリズムを有し、
算出された評価項目合計数値を最適化する換気比率に基づいて、該空調対象室から該空調設備への復管路または導入管路に設けられる第1電動弁、および/または空気の空調対象室から外部への排出管路に設けられる第2電動弁の開度を調整することにより、前記空調設備への換気比率が調整可能である、構成としている。
【0016】
また、前記制御装置は、前記評価項目の選択と、前記前提条件と、前記計算条件とからなる設定条件を入力する入力部と、
設定条件を記憶する設定条件記憶部と、空気線図データベースとを記憶する記憶部と、
前記入力部から入力された設定条件に基づいて、前記評価項目合計数値を最適化する換気比率を算出する演算部と、
該演算部により算出された評価項目合計数値を最適化する換気比率に基づいて、前記第1電動弁および/または前記第2電動弁の開度を制御する制御信号を送信する出力部と、を有するのがよい。
さらに、前記評価項目合計数値を最適化する換気比率を算出する段階は、所与の計算刻み幅で換気比率を変動させて、前記評価項目合計数値を最適化する換気比率候補を算出した場合に、該評価項目合計数値を最適化する換気比率候補の前後で所与の計算刻み幅より計算刻み幅を小さくすることにより、より正確な該評価項目合計数値を最適化する換気比率を計算し直すのがよい。
【0017】
さらにまた、前記評価項目合計数値を最適化する換気比率のもとで、前記空調対象室内へ流入される空気温湿度が前記目標温湿度に一致するように、前記除湿源および/または前記冷熱源の冷熱媒、および/または前記加熱源の熱媒、および/または前記加湿源の熱媒の流量をフィードバック制御するのがよい。
加えて、前記空調対象室内は、エンジンベンチであり、エンジンの試験条件に応じて、前記空調対象室内の負荷条件が変動するのでもよい。
また、予め定められたエンジンの試験条件により、前記空調対象室内の負荷条件の変動スケジュールを設定し、設定した変動スケジュールに応じて、フィードフォワード制御するのでもよい。
さらに、前記空調対象室内は、恒温恒湿室であり、季節または昼夜に応じて変動する外気温湿度を測定すべきスケジュールを予め設定しておき、設定されるスケジュールにより外気温湿度が測定されるたびに、前記評価項目合計数値を最適化する換気比率を算出するのでもよい。
さらにまた、前記空調対象室内の負荷は、前記空調対象室内へ流入される空気の温湿度と、前記空調対象室内から流出される空気の温湿度との差分により、算出するのでもよい。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。
空調対象室14内を空調する空調設備10は、図1に示すように、従来既知のタイプであり、空調対象室14内へ空気を流入し、空調対象室14内から流出する空気に対して、所定換気比率で外気を導入した空気を戻す空調設備10であって、外気を導入した空気を除湿する除湿部24と、外気を導入した空気を冷却する冷却部26 と、冷却除湿された空気を加熱する加熱部28と、加熱された空気を加湿する加湿部32と、をこの順に有し、空気の温度および/又は湿度を調整することにより、空調対象室14内を空調するように概略構成されている。
【0019】
より詳細には、空調設備10は、家屋、ビル、工場、公共施設等の建築物内に含まれる空調対象室14内において、空気調和を実現するシステムである。
空調設備10は、空調対象室14内に対して、空調済みの空気を供給する空調機31と、空調機31に対して、冷水および/または熱水を供給する熱源15とから、概略構成され、空調機31により空調された空気は、給気ダクト12を介して空調対象室14内に供給され、空調対象室14内で空調済みの空気は、負荷を受けた後還気ダクト20を介して空調機31の入口に戻され、空調機31と熱源15とは、熱水および冷水が往来するようにしている。
空調機31は、後に説明するように、空調対象室14内から還流される空気と、外気とを所定割合で取り入れ、冷却/加熱、加湿/除湿したうえで、空調済みの空気を空調対象室14内に供給するように構成している。
【0020】
空調機31には、各種センサー(図示せず)、 例えば、空調機31内に吸入される外気の温度及び湿度を検出する空気温度センサー及び空気湿度センサー23、並びに、空調対象室14内に流入する空気温度センサー及び空気湿度センサー25、空調対象室14内から流出する空気温度センサー及び空気湿度センサー27が配置されている。
空調機31は、空調機31に含まれる各部の動作を制御する空調機制御部(図示せず)を有する。空調機制御部は、CPUやメモリ及び各 種電装品等で構成される。空調機制御部は、空調機31に含まれる各機器と配線を介して接続される。空調機制御部は、室内に配置される各種センサーと電気的に接続され、空調対象室14内に設置されるリモコン(図示せず)と通信可能に接続され、通信線を介して制御装置及びリモコン(図示せず)と電気的に接続されてもよい。
【0021】
例えば、空調機31において加湿部32として気化式加湿器を用いて少換気量で外気を給気している際に空調対象室14内に加湿不足が発生しそうな場合、加湿部32の入口での空気の温度を上昇させるだけで、処理風量を増大させることなく、消費電力を抑制しつつ、加湿量を増加させることができる。
【0022】
空調設備10から空調対象室14への往管路12と、空調対象室14から空調設備10への復管路16と、外気の空調設備10への導入管路21と、復管路16に連通接続される排出管路19とがさらに設けられる。
復管路16に第1電動弁60、排出管路19に第2電動弁62が設けられ、第1電動弁60および第2電動弁62の開度を調整する制御装置68が設けられる。第1電動弁60は、導入管路21の途中に設けるのでもよい。
空気の空調対象室14から外部への排出管路19は、空調対象室14から空調設備10への復管路16の空調対象室14側近傍に接続され、外気の空調設備10への導入管路21は、空調対象室14から空調設備10への復管路16の空調設備10側近傍に接続される。
【0023】
復管路である給気ダクト12は、外気を含む空気の流路を形成する部材である。給気ダクト12は、風量調整部(図示せず)が駆動することで外気が流入するように、一端が空調機31に接続される一方、給気ダクト12の他端は、空調対象室14内に連通する。具体的には、給気ダクト12の他端は、空調対象室14内の天井に形成された給気口に接続される。復管路である還気ダクト20は、同様に、外気の流路を形成する部材であり、還気ダクト20は、一端が空調機31に接続される一方、給気ダクト12の他端は、空調対象室14内に連通する。
【0024】
図1に示すように、空調対象室14内からの還気ダクト20は、途中に第1電動弁60を有し、空調機31への入り口手前で、外気導入ダクト21と連通し、外気導入ダクト21を介して、外気を導入し、第1電動弁60を通過の還気と還気ダクト20に接続する手前で合流するようにしている。
第1電動弁60は、電動モーター64により開閉度が調整可能であり、電動モーター64は、排出管路19に設けられる第2電動弁62の開閉度を調整する電動モーター66と同様に、制御部68に接続され、制御部68により、第1電動弁60および第1電動弁62それぞれの開閉度が制御されるようにしている。これにより、還気ダクト20により空調対象室14内から空調機31へ還流される空気量と、外気導入ダクト21により外部から空調機31へ給気される外気の空気量との比(換気比率)を調整することが可能である。
【0025】
空調機31は、主として、上流から下流に向かって、風量調整部22、熱交換部29、及び加湿部32をこの順に有している。
風量調整部は、外気と還気との混合空気を空調機31内に取り込み、給気ダクト12へ送る送風機である。 送風機の型式については特に限定されないが、例えば、シロッコファン等の給気ファンを用いてもよい。風量調整部は、ファンモーターを含み、ファンモーターがインバータ制御されることによって回転数が調整されるのでもよい。風量調整部は、空調対象室14内へ給気される空気の風量である処理風量を調整する。
熱交換部29は、所定換気比率の空気の冷却器26及び加熱器28からなり、伝熱管及び伝熱フィンを有する。熱交換器29では、伝熱管及び伝熱フィンの周囲を通過する混合気と、伝熱管を通過する熱媒体との間で熱交換が行われる。より詳細には、風量調整部の下流側に隣接する冷却器26は、伝熱管及び伝熱フィンの周囲を通過する風量調整部22からの混合気と、冷水往路50からの伝熱管を通過する冷水との間で熱交換が行われ、混合気が冷却され、加熱された冷水は、冷水復路52を介して熱源15である冷却除湿源38に戻され、一方、冷却器26の下流側に隣接する加熱器28は、伝熱管及び伝熱フィンの周囲を通過する冷却器26からの混合気と、熱水往路54からの伝熱管を通過する熱水との間で熱交換が行われ、混合気が加熱され、冷却された熱水は、熱水復路56を介して熱源15である加熱源40に戻される。以上のように、本実施形態においては、除湿部において、空調対象室内の冷却により除湿を行うことにより、冷熱源と除湿源とを共用化して、冷却除湿源38としている。
加湿部32は、熱交換部を通過した混合気を加湿する。加湿部32の方式や型式は特に限定されないが、例えば、加湿源44から往路58を介して水を噴霧する加湿器を用いてもよい。なお、最下流側に、フィルター32が設置されている。
【0026】
除湿部24および冷却部26への冷却除湿源38は、蒸気圧縮式冷凍機、吸収式冷凍機、吸着式冷凍機、地下水、海洋深層水のいずれかであり、選択した冷熱源に応じて、後に説明するエネルギー消費量に基づく評価項目の数値化の際、そのCOPを利用する。
加熱部28への加熱源40は、ボイラ、ヒートポンプ、廃温水、地熱、太陽熱温水器、電気ヒータのいずれかであり、選択した加熱源に応じて、後に説明するエネルギー消費量に基づく評価項目の数値化の際、そのCOPを利用する。
加湿部32への加湿源44は、ボイラ、蒸気、超音波加湿器、電極式加湿器のいずれかであり、選択した加湿源に応じて、後に説明するエネルギー消費量に基づく評価項目の数値化の際、そのCOPを利用する。
除湿部24と冷却部26とにおいて、除湿部24における除湿の手段として、除湿対象の空気を冷却してもよく、この場合、除湿部24の下流に冷却部26を設けることなく、冷却除湿部24とするのでもよく、除湿後の空気温度の調整は、下流側の加熱部28で調整するのでよい。
【0027】
図2に示すように、空調機制御部68は、記憶部132、演算制御部133 、入力部134、および出力部135を有する。記憶部132と演算制御部133 との間で信号の送受信可能に接続され、演算制御部133と入力部134、出力部135との間でそれぞれ信号の送信、受信可能に接続されている。
入力部134において、後に説明する評価項目の選択と、前提条件と、計算条件とからなる設定条件を入力する。
【0028】
データ記憶部131には、実運転データ記憶部132a、設定条件記憶部132b、および空気線図データベース132cが設けられる。なお、実運転用データ記憶部132 は、必要に応じて設けられるものであり、例えば、評価項目合計数値を最適化する換気比率をシミュレーション計算する前提条件を、実運転データ記憶部132aに必要なデータを記憶させるようにしてもよい。
空気線図データベース132cは、湿り空気の熱的性質を1気圧のもとで表した線図であり、(1)乾球温度、(2)湿球温度、(3)露点温度、(4)相対湿度、(5)絶対湿度、(6)比エンタルピ、および(7)顕熱比 のうち、2項目を特定することにより、他の項目の数値の読み取り可能なデータベースであり、演算制御部133において、評価項目合計数値を最適化する換気比率をシミュレーション計算する途中段階において、利用される。
運転データは、それぞれ入力部134及び演算制御部133を介して、それぞれ対応する記憶部に格納される。また、運転データ記憶部132aには、実運転データの実測値が格納されるようになっている。
評価項目合計数値を最適化する換気比率をシミュレーション計算する場合、演算制御部133が、測定温度131aおよび測定湿度131bに基づき、データ記憶部132aに格納されているデータを用いて、換気比率を算出し、その過程で算出される冷却除湿源38、加熱源40、および加湿源44における評価項目の数値化データ(後に説明)を記憶部132に格納する。
【0029】
演算部133において、入力部134から入力された設定条件に基づいて、換気比率をパラメータとして、空気線図データベース132cも利用して、評価項目合計数値をシミュレーション計算し、評価項目合計数値を最適化する換気比率を算出する。
より詳細には、制御装置68の演算制御部133は、数値化すべき空調設備10に対する評価項目の選択と、空調対象室14内の目標温度および/または目標湿度、空調対象室14内の熱負荷、および外気温度および/または外気湿度からなる前提条件と、換気比率、除湿部24および冷却部26向け冷却除湿源38、加熱部28向け加熱源40、および加湿部32向け加湿源44それぞれのエネルギー消費量に対する選択する評価項目への換算係数、換気比率の計算刻み幅からなる計算条件とを設定する段階と、
空調対象室14内の除湿の必要性の可否を判定する段階と、除湿の必要性の可の場合、除湿源のエネルギー消費量に基づいて、冷却除湿源38における評価項目を数値化し、
空調対象室14内の冷却の必要性の可否を判定する段階と、冷却の必要性がある場合、冷却除湿源38のエネルギー消費量に基づいて、冷却除湿源38における評価項目を数値化し、
空調対象室14内の加熱の必要性の可否を判定する段階と、加熱の必要性の可の場合、加熱源40のエネルギー消費量に基づいて、加熱源40における評価項目を数値化し、
空調対象室14内の加湿の必要性の可否を判定する段階と、加湿の必要性の可の場合、加湿源44のエネルギー消費量に基づいて、加湿源44における評価項目を数値化し、
除湿、冷却、加熱および加湿それぞれの可否を判定する段階の判定結果に基づいて、除湿部24および冷却部26向け冷却除湿源38、加熱部28向け加熱源40、および加湿部32向け加湿源44それぞれの評価項目数値の合計を算出する段階と、
換気比率をパラメータとして、除湿、加熱、および加湿それぞれの必要性可否判定段階を繰り返して、評価項目合計数値を算出することにより、評価項目合計数値を最適化する換気比率を算出する段階と、を有する制御アルゴリズムを具備する。
出力部135において、演算部133により算出された評価項目合計数値を最適化する換気比率に基づいて、第1電動弁60および/または第2電動弁62の開度を制御する制御信号を送信する。
【0030】
以上、外気温湿度および空調機の取込空気の温湿度に基づく、評価項目合計数値を最適化する換気比率の算出は、演算制御部133 によって、以下の制御アルゴリズムによって実行される。なお、制御部68に含まれる上記の機能は、通常のパーソナルコンピュータなどを用いることにより実現することができる
【0031】
図3に示すように、ステップ0において、評価項目の選定、前提条件、計算条件について、条件設定を行う。評価項目の選定は、原油量、CO2量、および運転コストのうちいずれかを選択し、外気導入比率rの決定の基礎とする。前提条件は、空調室内目標温湿度、および外気温湿度であり、空調室の使用目的に応じて、空調室内目標温湿度を設定し、季節、昼夜に応じて、外気温湿度を設定する。計算条件は、冷却除湿源38、加熱源40、加湿源44のCOP、加湿源44のエネルギー消費量―評価値の換算係数、外気導入比率rの計算刻み幅Δrである。
空調設備10に対する評価項目は、原油換算量、排出CO2量、空調設備運転コストのいずれか、または組み合わせであり、それに応じて、選択した評価項目を数値化するのに、冷却除湿源38、加熱源40、および加湿源44それぞれに必要なエネルギー消費量ー評価項目数値間の換算係数を用いる。
空調設備10に対する評価項目は、原油換算量、排出CO2量、空調設備運転コストの組み合わせであり、原油換算量、排出CO2量、空調設備運転コストそれぞれに対して、零を含む重み付け係数を設定し、それぞれ重み付け係数を乗じた原油換算量、排出CO2量、および空調設備運転コストの合計が、数値化すべき空調設備10に対する評価項目でもよい。
この場合、各重み付け係数も予め設定しておく。
【0032】
次いで、ステップ1において、外気導入比率rの初期値0を設定する。
次いで、ステップ2において、空調対象室出口空気の温湿度、外気の温湿度および外気導入比率rより空調機入口温湿度を算出する。この時、風量調整部22の温度上昇を考慮して除湿部入口温湿度を算出してもよい。
【0033】
次いで、ステップ3において、空調対象室14内の除湿の必要性を判定する。
より具体的には、空調対象室14内の除湿の必要性の可否を判定する段階と、除湿の必要性の可の場合、冷却除湿源38のエネルギー消費量に基づいて(ステップ4)、冷却除湿源38における評価項目を数値化する(ステップ5)。
この場合、除湿可否の判定段階は、空調対象室14内の目標温度および目標湿度から算出される露点温度と、所定換気比率で混合した空調設備10入口の空気の温度および湿度から算出される露点温度とを比較し、前者の露点温度が、後者の露点温度より低い場合には、除湿必要と判定し、高い場合には、除湿不必要と判定する。
【0034】
次いで、ステップ6において、空調対象室14内の冷却の必要性の可否を判定し、冷却の必要性がある場合、冷却除湿源38のエネルギー消費量に基づいて(ステップ7)、冷熱源における評価項目を数値化する(ステップ8)。
次いで、ステップ9において、空調対象室14内の加熱の必要性を判定する。
より具体的には、空調対象室14内の加熱の必要性の可否を判定する段階と、加熱の必要性の可の場合、加熱源40のエネルギー消費量に基づいて(ステップ10)、加熱源40における評価項目を数値化する(ステップ11)。
この場合、加熱可否の判定段階は、空調対象室14内の目標温度と、除湿部24または冷却部26出口の空気の温度とを比較し、前者の温度が、後者の温度より高い場合には、加熱必要と判定し、低い場合には、加熱不必要と判定する。
【0035】
次いで、ステップ12において、空調対象室14内の加湿の必要性を判定する。
より具体的には、空調対象室14内の加湿の必要性の可否を判定する段階と、加湿の必要性の可の場合、加湿源44のエネルギー消費量に基づいて(ステップ13)、加湿源44における評価項目を数値化する(ステップ14)。
この場合、加湿可否の判定段階は、空調対象室14内の目標湿度と、加熱部28により加熱後の空気湿度とを比較し、前者の目標湿度が、後者の空気湿度より高い場合には、加湿必要と判定し、低い場合には、加湿不必要と判定する。
【0036】
次いで、ステップ15において、除湿、冷却、加熱および加湿それぞれの可否を判定する段階の判定結果に基づいて、除湿部24および冷却部26向け冷却除湿源38、加熱部28向け加熱源40、および加湿部32向け加湿源44それぞれの評価項目数値(ステップ5、ステップ8、ステップ11およびステップ14)の合計を算出する。
次いで、ステップ16において、外気導入比率rが100%以上であるかを判定し、100%未満であれば、ステップ17に進み、100%以上であれば、ステップ18に進む。
次いで、ステップ17において、外気導入比率rをr+Δrとして、ステップ3に進む。
【0037】
次いで、ステップ18において、評価項目数値を最小化するrを決定する。より詳細には、換気比率rをパラメータとして、除湿、冷却、加熱、および加湿それぞれの必要性可否判定段階を繰り返して、評価項目合計数値を算出することにより、評価項目合計数値を最適化する換気比率rを算出する。
評価項目合計数値を最適化する換気比率を算出する段階は、冷却部26向け冷却除湿源38、除湿部24向け冷却除湿源38、加熱部28向け加熱源40、および加湿部32向けの加湿源44の評価項目合計数値を、換気比率を0%から100%まで、パラメータとして、計算刻み幅に基づいてシミュレーションし、評価項目合計数値を最適化する換気比率を算出することにより行う。
評価項目合計数値を最適化する換気比率を算出する段階は、所与の計算刻み幅で換気比率を変動させて、評価項目合計数値を最適化する換気比率候補を算出した場合に、評価項目合計数値を最適化する換気比率候補の前後で所与の計算刻み幅より計算刻み幅を小さくすることにより、より正確な評価項目合計数値を最適化する換気比率を計算し直すのでもよい。
なお、空調対象室14内の負荷は、空調対象室14内へ流入される空気の温湿度と、空調対象室14内から流出される空気の温湿度との差分により、算出する。
【0038】
次いで、ステップ19において、評価項目合計数値を最適化する換気比率rに基づいて、第1電動弁60および/または第2電動弁62の開度を調整し、終了する。なお、第1電動弁60、第2電動弁62により、予め計算された所定換気率に設定されたら、設定された所定換気率に基づいて、熱源15側において、空調対象室14内が目標温度、目標温度に達するように、たとえば、通常のフィードバック制御を行えばよい。
【0039】
変形例として、評価項目合計数値を最適化する換気比率のもとで、空調対象室14内へ流入される空気温湿度が目標温湿度に一致するように、冷却除湿源38の冷媒および/または加熱源40の熱媒および/または加湿源44の熱媒の流量をフィードバック制御するのでもよい。
【0040】
空調対象室14内は、エンジンベンチでもよく、エンジンの試験条件に応じて、空調対象室14内の負荷条件が変動することから、予め定められたエンジンの試験条件により、空調対象室14内の負荷条件の変動スケジュールを設定し、設定した変動スケジュールに応じて、フィードフォワード制御するのでもよい。
空調対象室14内は、恒温恒湿室でもよく、季節または昼夜に応じて変動する外気温湿度を測定すべきスケジュールを予め設定しておき、設定されるスケジュールにより外気温湿度が測定されるたびに、評価項目合計数値を最適化する換気比率を算出するのでもよい。
【0041】
以上の構成を有する空調設備10の制御方法によれば、たとえば、季節または昼夜に応じて外気温度が変動する場合において、空調対象室14内の設定温湿度が室温のもとで、冬季で外気が低温低湿度の場合、換気比率を調整することにより、空調対象室14内から環気して空調機31に戻す時間当たりの空気量が外部から空調機31に取り入れる外気の時間当たりの空気量より多くなるように空気量比を調整する一方、夏季で外気が高温高湿度の場合、換気比率を調整することにより、空調対象室14内から環気して空調機31に戻す時間当たりの空気量が外部から空調機31に取り入れる外気の時間当たりの空気量より少なるように空気量比を調整することにより、季節または昼夜を問わず、常時、空調対象室14内から環気して空調機31に戻さず、空調対象室14内からすべて外部に排気したり、逆に、空調対象室14内から外部に排気することなく、空調対象室14内からすべて環気して空調機31に戻す場合に比し、空調対象室14内から流出する空気に対して、所定換気比率で外気を導入した空気、すなわち、空調機31入口に供給する空調用空気を調整することにより、空調対象室14内を目標温湿度に制御するのに、冷却除湿源38、加熱源40、および加湿源44それぞれに必要なエネルギー消費量 を算出し、原油量、排出CO2量、空調設備運転コスト等空調設備10に対する評価項目を選択したうえで、冷却除湿源38、加熱源40、および加湿源44それぞれにおいて、エネルギー消費量ー評価項目数値間の換算係数に基づいて、評価項目数値を最小化する換気比率を算出することにより、空調設備10を最適に制御することが可能である。
【0042】
以下に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、第1実施形態と同様な構成要素については、同様な参照番号を付することによりその説明は省略し、以下では、本実施形態の特徴部分について詳細に説明する。
本発明の第2実施形態の特徴は、熱源にヒートポンプユニットを用いる点にあり、原油量、排出CO2量、空調設備運転コスト等空調設備10に対する評価項目を選択したうえで、冷却除湿源、加熱源40、および加湿源44それぞれにおいて、エネルギー消費量ー評価項目数値間の換算係数に基づいて、評価項目数値を最小化する換気比率を算出する点においては、第1実施形態と同様であるが、第1実施形態においては、冷却除湿源、加熱源40、および加湿源44それぞれを別個独立に設けているのに対して、本実施形態においては、加熱源40と冷却除湿源38について、ヒートポンプユニットを共用化している点にある。
【0043】
ヒートポンプユニット40は、従来既知のタイプである。
図7および図8において、ヒートポンプユニット40は、概略的には、圧縮機104の吐出側に一端が接続された冷媒往管102の他端が、凝縮器108、電子膨張弁110を介して蒸発器106の1次側流路入口に接続され、1次側流路出口に一端が接続された冷媒復管103の他端が、アキュムレータ112を介して、圧縮機104の吸入側に接続され、冷媒回路を構成している。冷媒については、たとえば、フロン系として、R134aおよびR32、非フロン系として、アンモニア冷媒および二酸化炭素冷媒を用いてもよい。
【0044】
蒸発器106 は、乾式の蒸発器として構成され、蒸発器106 の内部に冷媒回路と接続された熱交換管( 図示せず) が配設され、胴側に冷媒ガスが充満するようにして、冷水の熱回収をすることにより、冷媒を加熱している。
より詳細には、冷媒と管外の冷水とが熱交換し、冷媒液または気液混合冷媒が冷水を冷却することにより、蒸発器106の出口で冷媒が乾きガスとなって圧縮機104に吸引され、一方冷却された冷水が、冷水往路46、50それぞれを介して、空調機31の除湿部24および冷却部26に供給され、除湿部24および冷却部26で加熱された冷水が冷水復路48、52それぞれを介して蒸発器106に戻されるようにしている。
一方、凝縮器108は、水冷式がよい。
より詳細には、冷媒ガスと管外の熱水とが熱交換し、冷媒ガスが熱水を加熱することにより、凝縮して液化され、一方加熱された熱水が、熱水往路54を介して空調機31の加熱部28に供給され、加熱部28で冷却された熱水が冷水復路56を介して凝縮器108に戻されるようにしている。
【0045】
圧縮機104 は、たとえば、容量制御式の往復圧縮機または回転あるいは遠心圧縮機が用いられる。特に、往復式圧縮機であれば、潤滑剤をクランク室等の低圧チャンバーに戻し、スクリュー圧縮機であれば、圧縮機ケーシングの低圧域又は中間圧域に戻すようにする。
冷媒回路における圧縮機104の駆動用モーター122 には、インバータ装置124 を設けて駆動用モーター122 を回転数制御できるようにしてある。
【0046】
インバータ装置124には、制御部126が接続され、圧縮機104の容量制御を行うようにしている。
制御部126は、たとえば、冷媒吐出圧力が高圧カット値より低い第1閾値より高い場合には、圧縮機の容量を低減させ、冷媒吐出圧力が第1閾値より小さい第2閾値より低い場合には、圧縮機の容量を増大させ、冷媒吐出圧力が第2閾値と第1閾値との間の場合には、圧縮機の容量を維持するようにしている。
【0047】
圧縮機104の下流側には油分離器114が設けられ、油分離器114で分離された潤滑剤は圧縮機104に戻される。油分離器114の下流側には、順に凝縮器108及び受液器(図示せず)が設けられ、受液器の下流側には、運転の開始時又は停止時に冷媒回路の開閉を行なう電磁弁(図示せず)と、たとえば、膨張弁として電子膨張弁110が設けられている。圧縮機104の上流側の冷媒往管103には、冷媒ガス温度を検出する温度センサー(図示せず)と冷媒ガス圧力を検出する圧力センサー116,118が設けられている。
電子膨張弁110には、従来既知の過熱度コントローラ(図示せず)が付設され、運転中に検出される検出過熱度が、過熱度設定値(目標過熱度)となるように、過熱度コントローラが、たとえばPID制御により、電子膨張弁110の開度を調整するようにしてある。
【0048】
以上の構成を有する空調設備10の制御方法によれば、たとえば、季節または昼夜に応じて外気温度が変動する場合において、空調対象室14内の設定温度が室温のもとで、冬季で外気が低温の場合、空調対象室14内から環気して空調機31に戻す時間当たりの空気量が外部から空調機31に取り入れる外気の時間当たりの空気量より多くなるように空気量比を調整する一方、夏季で外気が高温の場合、空調対象室14内から環気して空調機31に戻す時間当たりの空気量が外部から空調機31に取り入れる外気の時間当たりの空気量より少なるように空気量比を調整することにより、季節または昼夜を問わず、常時、空調対象室14内から環気して空調機31に戻さず、空調対象室14内からすべて外部に排気したり、逆に、空調対象室14内から外部に排気することなく、空調対象室14内からすべて環気して空調機31に戻す場合に比し、空調機31の入口に供給する空調用空気を調整することにより、空調対象室14内を設定条件に制御するのに、空調機31を構成する機器のCOP等を考慮しつつ、熱源としてヒートポンプを用い、冷熱源および/または除湿源と加熱源の熱源機を共用化しつつ、省エネルギー化等最適な仕方で制御することが可能である。
【0049】
本出願人は、以上の空調設備10に基づいて、換気比率による原油換算値の変化のシミュレーション計算を行い、空調機31の入口に供給する空調用空気を調整することにより、空調対象室14内を設定条件に制御するのに、空調機31を構成する機器のCOP等を考慮しつつ、省エネルギー化等最適な仕方で制御することが可能である点を確認している。
具体的には、本発明の実施形態に係る空調設備10において、室内目標温湿度、室内負荷、空調機31の循環風量が一定の場合、外気条件の変動に基づく、換気比率をパラメータとして、原油換算値の変化のシミュレーション計算を行った。
【0050】
シミュレーション計算の前提条件として、外気条件、負荷条件、目標条件について、図4に示す。より具体的には、外気条件としては、各月における気温、および湿度、負荷条件としては、各月共通に、室内負荷として、顕熱および潜熱、目標条件として、各月共通に、室内吹き出し温度、室内吹き出し湿度を示し、各月共通に、空調風量を設定している。また、電力―原油換算係数、および産業用以外の蒸気―原油換算係数、並びに、冷熱供給COPおよび電気加熱器COPを設定している。
4月の場合におけるシミュレーション計算結果を図5に、11月の場合におけるシミュレーション計算結果を図6に示す。
図5および図6によれば、外気温度が高い4月においては、蒸気加熱、電気加熱問わず、換気比率が30%までは、原油換算値が下降し、換気比率を30%近傍で最小となり、換気比率が30%超えると100%まで上昇し、一方、外気温度が低い11月においては、蒸気加熱、電気加熱問わず、換気比率が80%までは、原油換算値が下降し、換気比率を80%近傍で最小となり、換気比率が80%超えると100%まで上昇する点が示されている。
【0051】
以上、加熱、冷却、除湿、加湿それぞれを実行する機器の種類に応じて、空調設備10のきめ細やかな最適な運転が可能となり、特に、ユーザーの重視するファクター(省エネ性、環境負荷、およびランニングコスト、またはこれらの組み合わせ)に応じて、空調設備10のきめ細やかな最適な運転が可能となる点を確認した。
なお、季節に応じた最適値、日に応じた最適値、昼夜に応じた最適値がシミュレーション可能であり、評価項目合計数値を最適化する換気比率を算出するシミュレーションのタイミングを、たとえば、タイマーにより、予め設定しておいてもよいし、または、予期せぬ室内の負荷変動に対応可能なように、監視状態のもとにおいて、所定の変動がある場合には、シミュレーションを自動的にスタートするようにしてもよい。
前者については、夏と冬、昼夜では、外気条件が大きく変動することから、予めシミュレーションのタイミングを設定しておくのに好都合であり、後者については、住居用室内でなく、たとえば、エンジンベンチのように、室内の目標温湿度または負荷変動が大きい場合に、好都合である。
フィードバック制御、ディファレンシャルを伴うオン・オフ制御が基本だが、所定の変動の時期および変動値が予めわかっている場合には、フィードフォワード制御でもよい。
記憶部において、オフライン運転を前提に、実運転データ記憶部132aを設けるものとして説明したが、オンライン運転をする場合、運転しながら、シミュレーション計算により最適運転を模索する場合には、実運転データ記憶部132aを省略してもよい。
【0052】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者であれば、種々の修正あるいは変更が可能である。
たとえば、本実施形態において、空調設備10における加熱部28および冷却部26について、原油換算値が最小になる換気比率を算出するものとして説明したが、それに限定されることなく、冷却部26の冷媒、および加熱部28の熱媒が、ヒートポンプユニットにより供給され、ヒートポンプユニットのCOPを含め、空気量比を設定するのでもよい。
【0053】
たとえば、本実施形態において、空調対象室14内に空調用空気を供給する空調設備10の制御方法として、運転条件に応じて、外部から空調機31に取り入れる外気の時間当たりの空気量と、空調対象室14内から環気して空調機31に戻す時間当たりの空気量との空気量比を設定する場合、運転条件は、空調機31に取り入れる外気の外気条件が、たとえば、季節または昼夜に応じて変動する場合を説明したが、それに限定されることなく、運転条件は、空調対象室14内における負荷条件、および/または空調対象室14内の目標温度および/または湿度、および/または空調機31に取り入れる外気の外気条件であってもよく、たとえば、負荷条件、設定条件および外気条件すべてが変動する場合であってもよい。
【0054】
たとえば、本実施形態において、冷却部26は、伝熱管および伝熱フィンの周囲を通過する空気と、伝熱管内を流れる冷媒との間の熱交換器であり、熱交換部は、伝熱管および伝熱フィンの周囲を通過する空気と、伝熱管内を流れる熱媒との間の熱交換器であり、冷却部26の駆動エネルギーの原油換算値と、熱交換部の駆動エネルギーの原油換算値との合計が最小となるように、外部から空調機31に取り入れる外気の時間当たりの空気量と、空調対象室14内から環気して空調機31に戻す時間当たりの空気量との空気量比を設定し、空気量比を設定したら、ヒートポンプユニットにおける冷媒および/または熱媒の流量は、そのままで、成り行きとするものとして説明したが、それに限定されることなく、空調対象室14内の測定温度が設定温度に一致するように、設定した空気量比に応じて、熱源側において、冷媒および/または熱媒の流量をフィードバック制御するのでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】本発明の第1実施形態に係る空調設備10の概略全体図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る空調設備10の制御ユニットの概略図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る空調設備10の制御ユニットにおける制御フローを示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る空調設備10において、各月による、換気比率による原油換算値の変化のシミュレーション計算の前提条件を示す表である。
図5】本発明の実施形態に係る空調設備10において、4月の実測値に基づいて、換気比率による原油換算値の変化のシミュレーション計算結果を示すグラフである。
図6】本発明の実施形態に係る空調設備10において、11月の実測値に基づいて、換気比率による原油換算値の変化のシミュレーション計算結果を示すグラフである。
図7】本発明の第2実施形態に係る空調設備10の図1と同様な図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る空調設備10において、ヒートポンプユニットの詳細を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
10 空調設備
12 空気往路ダクト
14 空調対象室
15 熱源
16 空気復路ダクト
18 戻しダクト
19 排出管路
21 外気導入管路
22 風量調整部
23 温湿度センサー
24 除湿部
25 温湿度センサー
26 冷却部
27 温湿度センサー
28 加熱部
29 温湿度センサー
30 加熱部
32 加湿部
34 フィルター
36 空気流出口
38 冷却除湿源
40 加熱源
42 第2加熱源
44 加湿源
46 冷水往路
48 冷水復路
50 冷水往路
52 冷水復路
54 熱水往路
56 熱水復路
58 加湿媒体供給路
60 第1電動弁
62 第2電動弁
64 第1電動弁用駆動モーター
66 第2電動弁用駆動モーター
68 制御部
70 流入口
71 室内負荷
72 流出口
106 蒸発器
104 圧縮機
108 凝縮器
110 電子膨張弁
114 油分離器
112 アキュムレータ
116 圧力センサー
118 圧力センサー
120 温度センサー
122 電動機
124 インバータ装置
126 制御装置
127 電動弁の入出力
130 冷凍制御装置
132 データ記憶部
132a 実運転データ記憶部
132b 設定条件記憶部
132c 空気線図データベース
133 演算制御部
134 入力部
135 出力部
【要約】      (修正有)
【課題】本発明の目的は、運転条件に応じて、空調対象室内を設定条件に最適な仕方で制御することが可能な空調機の制御システムおよび制御方法を提供する。
【解決手段】空調対象室内へ空気を流入し、空調対象室内から流出する空気に対して、所定換気比率で外気を導入した空気を戻す空調設備であって、外気を導入した空気を除湿する除湿部と、外気を導入した空気を冷却する冷却部と、冷却除湿された空気を加熱する加熱部と、加熱された空気を加湿する加湿部を有し、空気の温度および/又は湿度を調整することにより、空調対象室内を空調する空調設備の制御方法であって、換気比率をパラメータとして、計算刻み幅に基づいて、除湿、冷却、加熱、および加湿それぞれの必要性可否判定段階を繰り返して、評価項目合計数値を算出することにより、評価項目合計数値を最適化する換気比率を算出する段階と、を有する構成としている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8