(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】加湿装置のための液体格納装置
(51)【国際特許分類】
F24F 6/00 20060101AFI20240301BHJP
F24F 6/04 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
F24F6/00 A
F24F6/04
F24F6/00 B
F24F6/00 F
(21)【出願番号】P 2019221405
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-07-12
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】梶山 賢一
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-270964(JP,A)
【文献】米国特許第05061405(US,A)
【文献】特開2015-187528(JP,A)
【文献】国際公開第2018/026891(WO,A1)
【文献】米国特許第03276754(US,A)
【文献】特表2010-520440(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0305675(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0020858(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 6/00
F24F 6/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加湿装置の本体部に着脱可能に取り付けられる液体格納装置であって、
液体を収容可能な装置本体と、
前記装置本体の壁面を貫通する孔を含み、空気を導入するための第1通気部と、
前記装置本体の壁面を貫通する孔を含み、前記空気を導出するための第2通気部と、
前記装置本体の内部を、液体を収容するための領域である第1領域と、前記第1通気部と前記第2通気部との間において前記空気の流路を形成する領域である第2領域とに分割する仕切部と、
前記第1領域から前記第2領域まで延在するように配された加湿フィルタと、
を備え、
前記仕切部は、前記第1領域と前記第2領域とを連通させ、前記加湿フィルタを挿入する貫通孔と、前記第2領域から前記第1領域に向かって突出し、前記貫通孔を包囲するフィルタ保持部とを有し、前記加湿フィルタは
前記フィルタ保持部に密着するように前記貫通孔に挿入されている、
液体格納装置。
【請求項2】
前記加湿フィルタの一部は、前記第1領域内に配され、
前記加湿フィルタの他部は、前記第2領域内の前記空気の流路上に配される、
請求項1に記載の液体格納装置。
【請求項3】
前記第1通気部及び前記第2通気部は、前記第2領域に連通する、
請求項1又は2に記載の液体格納装置。
【請求項4】
前記仕切部は、前記第1領域に対向する底部を有し、
前記底部は、前記第2領域から前記第1領域に向かって傾斜する、
請求項1から
3のいずれかに記載の液体格納装置。
【請求項5】
前記第1通気部及び前記第2通気部はそれぞれ、前記第2領域に向かって延び、前記孔を包囲する壁部を有する、
請求項1から
4のいずれかに記載の液体格納装置。
【請求項6】
加湿装置の本体部に着脱可能に取り付けられる液体格納装置であって、
液体を収容可能な装置本体と、
前記装置本体の壁面を貫通する孔を含み、空気を導入するための第1通気部と、
前記装置本体の壁面を貫通する孔を含み、前記空気を導出するための第2通気部と、
前記装置本体の内部を、液体を収容するための領域である第1領域と、前記第1通気部と前記第2通気部との間において前記空気の流路を形成する領域である第2領域とに分割する仕切部と、
前記第1領域から前記第2領域まで延在するように配された加湿フィルタと、
前記第1通気部を開閉可能な第1蓋部材と、
前記液体格納装置を前記加湿装置に取り付けたとき前記第1通気部を開放し、前記液体格納装置を前記加湿装置から取り外したとき前記第1通気部を閉鎖する第1開閉機構と、
前記第2通気部を開閉可能な第2蓋部材と、
前記液体格納装置を前記加湿装置に取り付けたとき前記第2通気部を開放し、前記液体格納装置を前記加湿装置から取り外したとき前記第2通気部を閉鎖する第2開閉機構と、
を備える、液体格納装置。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれかに記載の液体格納装置と、
前記液体格納装置を取り付け可能な本体部と、
前記本体部に配され、前記空気の流路を通る気流を生成する気流生成部と、
前記本体部に配され、前記空気の流路を通って加湿された空気を排出する排出口と、
を備える、加湿装置。
【請求項8】
前記液体格納装置と前記加湿装置とを連結し、前記第1通気部に連通し前記加湿装置から前記空気を導入する孔と、前記第2通気部に連通し前記空気を導出する孔とを含む連結部を備える、
請求項
7に記載の加湿装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加湿装置のための液体格納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加湿装置や空気清浄機では、空気を加湿するために、水を収容する水格納容器を備える。水格納容器は、給水のため着脱可能なものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
着脱可能な水格納容器は、給水のために取り外したとき、水格納容器から水をこぼしてしまう可能性があった。例えば、航空機内等の環境においては、航空機の移動中に常に振動が発生し、離着陸では水平な状態を維持できない場合がある。このため、水格納容器内の水が波打ったり、飛び跳ねたりすることにより、水格納容器から水が外に漏れ出てしまう可能性があり、周辺の電子機器の漏電・ショート等の危険があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、液体漏れを防ぐのに有効な液体格納装置、及び同液体格納装置を備える加湿装置を提供する。
【0006】
本開示に係る液体格納装置は、液体を収容可能な装置本体と、第1通気部と、第2通気部と、仕切部と、加湿フィルタとを備える。第1通気部は、装置本体の壁面を貫通する孔を含み、空気を導入する。第2通気部は、装置本体の壁面を貫通する孔を含み、空気を導出する。仕切部は、装置本体の内部を、液体を収容するための領域である第1領域と、第1通気部と第2通気部との間において空気の流路を形成する領域である第2領域とに分割する。加湿フィルタは、第1領域から第2領域まで延在するように配される。
【0007】
本開示に係る加湿装置は、上記液体格納装置と、液体格納装置を取り付け可能な本体部と、本体部に配され、空気の流路を通る気流を生成する気流生成部と、本体部に配され、空気の流路を通って加湿された空気を排出する排出口とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態1における静電霧化装置の基本構成を示す。
【
図2】
図2は、実施の形態1におけるダクト部材の平面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1における静電霧化装置に水格納容器が取り付けられた状態を示す。
【
図4】
図4は、
図3の静電霧化装置の別方向から示した断面図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1における静電霧化装置から水格納容器を取り外す状態を示す。
【
図6】
図6は、
図5の静電霧化装置を別の方向から示した断面図である。
【
図7】
図7は、実施の形態2における水格納容器の斜視図を示す。
【
図8】
図8は、実施の形態2における水格納容器の内部構造を概略的に示す。
【
図9】
図9は、実施の形態2の変形例1に係る水格納容器の内部構造を概略的に示す。
【
図10】
図10は、実施の形態2の変形例2に係る水格納容器の平面図である。
【
図11B】
図11Bは、
図10の水格納容器を別方向から示した断面図であり、加湿装置に取り付けられるときの状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0010】
なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために、提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0011】
以下の説明において、便宜上、Z軸方向を上下方向、Z軸正側を上、Z軸負側を下とするが、静電霧化装置1の取り付け態様は多様であるため、これに限定されない。特にことわらない限り、Z軸負方向は重力方向を意図しない場合もある。
【0012】
以下の実施の形態において、加湿装置の一例である静電霧化装置に静電霧化は、水印加電極を冷却し、空気中の水分を水印加電極に結露させることにより帯電粒子水を生成する。水印加電極には直接給水が不要な電極冷却タイプの静電霧化方法を用いる。
1.実施の形態1
1-1.構成
1-1-1.静電霧化装置1の構成
図1に示すように、静電霧化装置1(加湿装置の一例)は、本体部1aと、水格納容器10と、第1空気流路210と、第2空気流路220と、ダクト部材30と、静電霧化部70と、制御部80と、ファン90とを備える。静電霧化装置1は更に、後述する容器着脱機構50を備える。
【0013】
本体部1aは、筐体であり、水格納容器10と、第1空気流路210と、第2空気流路220と、静電霧化部70と、制御部80と、ファン90とを収容する。
【0014】
水格納容器10(液体格納装置の一例)は、水を保持する容器本体10aを有する。水格納容器10は、容器本体10aの上面(Z軸正方向側の)に第1通気孔11と第2通気孔12とを有する。第1通気孔11(第1通気部の一例)は、加湿する前の空気を容器本体10a内に取り込むための通路を形成する。第2通気孔12(第2通気部の一例)は、加湿された後の空気を容器本体10aから静電霧化部70に送り出すための通路を形成する。本実施の形態では、これらの通気孔11,12は、容器本体10a内の水Wがこぼれないように、容器本体10aの上部101に位置する。また、容器本体10a内の水Wがこぼれないように、これらの通気孔11,12は十分に小さく形成される。例えば、0.1平方センチメートルから2平方センチメートルである。これらの通気孔11,12はそれぞれ複数の小孔により構成されていてもよい。
【0015】
容器本体10aの上部101は、密閉可能な蓋であってもよい。利用者は、水格納容器10を静電霧化装置1から取り外し、容器本体10a内に水Wを補充する際に、容器本体10aの上部101を開けることができる。
【0016】
なお、本実施の形態では容器内の水Wがこぼれにくいように第1通気孔11と第2通気孔12を容器本体10aの上部に設けたが、この構成は本発明の目的を達成するにあたって必須ではない。水Wがこぼれない場所であれば、容器本体10aの側面に設けられていてもかまわない。
【0017】
水格納容器10は更に、容器本体10a内に加湿フィルタ13を備える。加湿フィルタ13は、第1通気孔11と第2通気孔12の間(X軸方向の中間)に立設される。この配置により、加湿フィルタ13は、外部から取り込んだ低湿度の空気に効率よく水分を供給し、高湿度の空気を生成することができる。
【0018】
加湿フィルタ13は、第1通気孔11から流れてきた低湿度の空気を加湿する。加湿フィルタ13は、例えば、コルゲート方式の加湿フィルタであり、容器本体10aが保持する水分を吸い上げ、加湿フィルタ13が水分保持する。この状態で、加湿フィルタ13内の隙間を低湿度の空気が通過することで、加湿フィルタ13内部の表面から水分が蒸発し、空気が加湿され、高湿度の空気が生成される。なお、加湿フィルタ13は、難燃性の特性を持っており、航空機内に火気がある場合でも、燃焼しにくい。また、加湿フィルタ13は耐腐食性の特性があってもよい。加湿フィルタ13に補充され水Wはゆっくり蒸発するため、長時間のフライトの間、継続して静電霧化が可能となる。
【0019】
第1空気流路210は、空気の吸込口21aである第1端から水格納容器10の第1通気孔11に連結される第2端21bまで延びる。第1空気流路210は、ファン90によって生成される気流の流れに応じて、空気の吸込口21aから空気を取り込み、水格納容器10の第1通気孔11まで空気を通す。この取り込まれる空気は、結露水の生成に不十分な低湿度の空気A1である。
【0020】
第2空気流路220は、水格納容器10の第2通気孔12に連結される第3端22aから空気の排出口22b(排出口の一例)である第4端まで延びる。第2空気流路220は、ファン90によって生成される気流の流れに応じて、水格納容器10で加湿された空気A2を第2通気孔12から静電霧化部70に送る。第2空気流路220は更に、静電霧化部70が生成した帯電微粒子水を含む空気A3を排出口22bまで送り出し、外に放出する。
【0021】
ダクト部材30(連結部の一例)は、
図2に示すように、一体成形品であり、第1ダクト31と第2ダクト32とを有する。第1ダクト31は、本体部1aと水格納容器10の第1通気孔11とを連結し、第1空気流路210の一部を形成する。第2ダクト32は、本体部1aと水格納容器10の第2通気孔12と連結し、第2空気流路220の一部を形成する。第1ダクト31及び第2ダクト32はそれぞれ、
図3及び
図5に示すように、鉤状断面を有する開口端31a、32aを有する。開口端31a、32aはそれぞれ、本体部1aに取り付けられた水格納容器10側を向いた当接面31b,32bを有する。当接面31b,32bは、本体部1aの対応する部分に形成された段部に当接する。つまり、ダクト部材30と本体部1aとは気流方向に交差する方向、又はほぼ直交する方向に面で当接する構成を有する。このため、水格納容器10内の水Wがダクト部材30と本体部1aとの境界部分からもれにくい構造を形成することができる。
【0022】
静電霧化部70は、第2空気流路220上に配される。静電霧化部70は、知られているように、例えば、冷却部と水印加電極と対向電極(いずれも図示省略)とを備える。水印加電極と対向電極は、高電圧が印加され、冷却部は、水印加電極を冷却する。これにより、高湿度の空気A2の水分により電極に結露を生じ、帯電微粒子水が生成される。帯電微粒子水を含む空気A3は、排出口22bより外へ放出される。
【0023】
制御部80は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含む。制御部は、メモリに記憶されているプログラムに従って、静電霧化部70や後述するファン90等の動作を制御する。
【0024】
ファン90(気流生成部の一例)は、空気を第1空気流路210から水格納容器10内を通って第2空気流路220を通過する気流を生成する。ファン90の運転により、空気は、吸込口21a、第1空気流路210、水格納容器10、静電霧化部70、排出口22bへと送られる。なお、ファン90は、
図1に示す位置に配されることに限定されず、吸込口21a付近の位置でもいいし、排出口22bの手前の位置に配してもよい。また、気流生成手段は、ファン90に限定されず、気流を生成するその他の手段又は方法を用いてもよい。
【0025】
1-1-2.容器着脱機構の構成
航空機内では限られた空間に様々な機器が搭載されている。中には、浸水や水没等、水滴の付着が原因で故障に至る電子機器も搭載されている可能性がある。本開示の静電霧化装置1は水を取り扱う機器であり、定期的に水分の補給作業も発生するため、水格納容器10は静電霧化装置1の本体部1aより着脱可能な構造を有する。一方で本開示の静電霧化装置1は航空機内に設置されることから、動作中に様々な方向からの振動にさらされる。この振動により、水格納容器10が意図せず静電霧化装置の本体部1aから外れてしまい、水漏れをおこす可能性がある。
【0026】
本実施の形態に係る静電霧化装置1は、
図3から
図6に示し、以下に説明する容器着脱機構50を設けることにより、水格納容器10が意図せず静電霧化装置の本体部1aから外れることによる水漏れを起きにくくする。
【0027】
容器着脱機構50は、水格納容器10に対してダクト部材30を上下動させるとともに、水格納容器10が本体部1aに取り付けられた時に、ダクト部材30を水格納容器10に対して圧接させた状態をつくる。具体的には、容器着脱機構50は、
図3から
図6に示すように、本体部1aとダクト部材30の間に配されたばね51と、ダクト部材30の下部に形成された凸部35と、容器本体10aの上部101に形成された凹部15とを備える。
【0028】
図3及び
図4は、水格納容器10が本体部1aに装着されている状態、すなわち静電霧化装置1が動作可能な状態を示す。
図4は、
図3の水格納容器10のYZ断面を示す。ばね51は、水格納容器10側、すなわちZ軸負方向に付勢力を有する。凸部35は、
図4に示すように、ダクト部材30の下方(Z軸負側)の面より突出する。凹部15は、容器本体10aの上部101に形成され、Z軸負方向にくぼむ、凸部35と凹部15とは、
図2に示すように、容器本体10aの長手方向に沿ってX軸方向に長く形成される。水格納容器10が本体部1aに装着された状態において、凸部35は凹部15内に収容され、係合する。このとき、ばね51は、付勢力に反してZ軸正方向に圧縮された状態になる。ばね51の付勢力により、ダクト部材30と水格納容器10とが密着し、且つ凸部35は凹部15と係合する。このため、多少の振動においても水格納容器10の位置がずれにくい。よって、水格納容器10がダクト部材30から外れる等して水漏れすることを防ぐことができる。
【0029】
なお、ダクト部材30に凹部を設け、水格納容器10側に凸部を設けてもよい。
【0030】
ダクト部材30と水格納容器10との間には、クッション材39が配される。クッション材39は、第1ダクト31と第1通気孔11の周辺部との間と、第2ダクト32と第2通気孔12の周辺部との間に配される。クッション材39により、水格納容器10とダクト部材30との密着性が向上するため、水漏れを効果的に防ぐことができる。
【0031】
1-2.動作
1-2-1.静電霧化装置の動作
実施の形態1に係る静電霧化装置1による静電霧化方法では、
図1に示すように、ファン90により生成される気流によって、吸込口21aから取り込まれた空気A1は、第1空気流路210を通って、水Wを収容した水格納容器10内に取り込む。空気A1は、水格納容器10内を通過することにより加湿される。加湿された空気A2は、水格納容器10から排出される。加湿され空気A2中の水分を、静電霧化部70で電圧が印加された電極に結露させることにより、帯電微粒水が生成される。帯電微粒子を含む空気A3が排出口22bから排出される。
【0032】
1-2-2.容器着脱機構の着脱動作
図5及び
図6は、水格納容器10を本体部1aから取り外すときの状態、すなわち静電霧化装置1が動作していない状態を示す。
図6において、水格納容器10は、Y軸正方向に引き出されると、ダクト部材30の凸部35が容器本体10aの上面の凹部15から離脱し、同上面の凹部でない平坦部分に乗り上げる。この結果、ダクト部材30はZ軸正方向に押され、ばね51を押し上げるため、ばね51は付勢力に反して更に圧縮される。更に、水格納容器10は、Y軸正方向に引き出されると、水格納容器10はダクト部材30から離脱し、本体部1aより取り外すことができる。水格納容器10が取り外されると、ダクト部材30は、ばね51の付勢力又はダクト部材30の自重により、Z軸負方向に移動する。取り外された水格納容器10内に水Wが補充されると、水格納容器10を本体部1aに取り付ける。このとき、
図6に示すように、水格納容器10をY軸負方向に押し込むと、ダクト部材30が押し上げられ、ばね51の付勢力に抗して容器本体10aの上面に乗り上げる。更に水格納容器10をY軸負方向に押し込むと、凸部35が凹部15に嵌合する。この結果、
図3及び
図4に示すように、水格納容器10は本体部1aに取り付けられる。
【0033】
1-3.特徴
従来、高高度の上空を飛行する航空機内等の低湿度環境では、結露水を生成するために必要な湿度に到達しておらず結露水が得られなかった。或いは、吸熱面の強い冷却により結露水が氷結し、やはり結露水が得られないこともあった。その結果、静電霧化を実施できないといった課題があった。
【0034】
実施の形態1に係る静電霧化装置1又は静電霧化方法は、空気の吸込口21aから取り込んだ低湿度の空気A1を、水格納容器10内を通過させて加湿し、加湿した空気A2を静電霧化部70を通過させて、帯電微粒子水を含む空気A3を排出する。このため、取り込まれる外気が低湿度であっても、静電霧化部70には、常時加湿された空気が送られることが可能である。よって、静電霧化に必要な結露水を生成することができ、低湿度の環境においても静電霧化を行うことができる。
【0035】
実施の形態1に係る静電霧化装置1は、ダクト部材30と容器着脱機構50とを備える。ダクト部材30は、第1通気孔11と連結し第1空気流路210の一部を形成する第1ダクト31と、第2通気孔12と連結し第2空気流路220の一部を形成する第2ダクト32と、を有する。容器着脱機構50は、本体部1aに取り付けられた水格納容器10に対してダクト部材30を圧接させる。このため、静電霧化装置1の運転中に、振動が発生した場合、航空機が離着陸等で水平を維持できない場合等においても、水格納容器10からの水漏れを防ぐことができる。また、ダクト部材30は上下動可能なため、水格納容器10の着脱も容易になる。
【0036】
実施の形態1に係る静電霧化装置1又は静電霧化方法では、24時間程度のフライトであれば100ml以下の水分量で静電霧化が可能になる。これは必要な水分に対して、空気に含まれる湿度から不足分だけ補充しているためである。よって、特許第4877410号公報に開示された直接給水方式の静電霧化に比べて水分量が少なくて済む。
【0037】
実施の形態1に係る静電霧化装置1では、静電霧化部70、制御部80、ファン90等各電子機器は、水格納容器10よりも上方に配置することも可能である。これにより万が一、水漏れが発生した時にも静電霧化装置1の内部へ水が入り込みにくく、漏電・ショート等のリスクを抑制することが可能である。
【0038】
2.実施の形態2
実施の形態2においては、静電霧化装置1に着脱可能な水格納容器2が、内部の空間を仕切る壁を形成する仕切部121を有する点において、実施の形態1の水格納容器10と異なる。以下、
図7~
図11を参照して、実施の形態1と異なる水格納容器2の構造及び機能を中心に説明する。なお、実施の形態1と同様の構造及び機能を有する部分については、同一の符号を付す。また、図中に示す矢印Gは、重力方向を示す。
【0039】
2-1.構成
図7及び
図8に示すように、水格納容器2(液体格納装置の一例)は、水Wを保持する容器本体2aを有する。容器本体2a(装置本体の一例)は、実施の形態1と同様に、上部101と、底部102と、上部101と底部102とを連結する左右の容器側部103,104とを有する。容器本体2aの上部101は、取り外し可能な一つ又は複数の蓋を含んでいてもよい。蓋は、容器内部から水が漏れないようにパッキン部材(図示省略)を介して取り付けられていてもよい。
【0040】
水格納容器2は、容器本体2aの上部101の壁面を貫通する孔をそれぞれ含む第1通気孔11(第1通気部の一例)と第2通気孔12(第2通気部の一例)とを備える。第1通気孔11と第2通気孔12とは、X軸方向に並列して配される。第1通気孔11は空気を容器本体2a内に導入する。第2通気孔12は、容器本体2aから空気を導出する。
【0041】
図7に示すように、水格納容器2は、仕切部121を備える。
図8に示すように、水格納容器2の内部は、仕切部121により、水格納領域122(第1領域の一例)と、気流通過領域123(第2領域の一例)とに、上下に分割される。上部101を貫通する第1通気孔11と第2通気孔12は、気流通過領域123に連通する。仕切部121は、水格納領域122にZ軸方向に対向する底部121bを有する。底部121bは、水格納領域122と気流通過領域123とを連通させ、後述する加湿フィルタ13を挿入する貫通孔121cを有する。仕切部121は、気流通過領域123から水格納領域122に向かって下方に突出し、貫通孔121cを包囲する側面部121a(フィルタ保持部の一例)を有する。
【0042】
水格納容器2は、加湿フィルタ13を備える。加湿フィルタ13は、気流通過領域123内にある第1通気孔11と第2通気孔12の間に配される。加湿フィルタ13はまた、水格納領域122から気流通過領域123まで延在するように配される。加湿フィルタ13の下部は、水格納領域122内に配され、上部は、気流通過領域123内の空気の流路上に配される。加湿フィルタ13は、仕切部121の側面部121aに密着させて貫通孔121cに挿入され、隙間無く貫通孔121cを充填する。水格納領域122において加湿フィルタ13の下部に吸収された水は、毛細管現象により上昇する。これにより、気流通過領域123内の加湿フィルタ13の上部は水分を保持する。
【0043】
加湿フィルタ13は、ボンド等を使用して側面部121aに密着させてもよい。或いは、加湿フィルタ13と側面部121aとの間に、パッキン部材等を圧縮させて充填させてもよい。
【0044】
本実施の形態における水格納容器2においては、第1通気孔11及び第2通気孔12は、容器本体2aの上部101に設けたが、これに限定されない。気流通過領域123と連通する孔であれば、容器本体2aの上部101以外の壁面(例えば、側部103,104の壁面)に設けられてもよい。
【0045】
本実施の形態における水格納容器2は、容器内部を上下分離して上側に気流通過領域123、下側に水格納領域122を配しているが、これに限定されない。例えば、容器内部の上側に水格納領域122、下側に気流通過領域123を配してもよい。この場合、第1通気孔11及び第2通気孔12は、気流通過領域123に連通するように、側部103,104の下方壁面にそれぞれ設けられてもよい。或いは、容器内部の左右一方に水格納領域122、容器内部に左右の他方を気流通過領域123に配してもよい。この場合、第1通気孔11及び第2通気孔12は、気流通過領域123に連通するように、上部101の壁面と、側部103,104のいずれか一方の壁面にそれぞれ設けられてもよい。
【0046】
上記水格納容器2は、実施の形態1の静電霧化装置1の本体部1aに着脱可能に取り付けられて使用される。水格納容器2は、静電霧化装置1の本体部1aに対し、実施の形態1の、例えばダクト部材30(
図3及び
図5)等の連結部を介して取り付けられてもよい。
【0047】
図1に示すファン90により生成された気流は、第1通気孔11を介して気流通過領域123に導入される。気流通過領域123に導入された空気は、水分を保持する加湿フィルタ13の上部を通過する。加湿フィルタ13を通過して加湿された空気は、気流により、第2通気孔12から導出される。
【0048】
なお、本実施の形態、後述する変形例1及び2、及びその他実施の形態に係る水格納容器2は、静電霧化装置1に適用されることに限定されず、加湿装置に適用されてもよい。この場合、第2通気孔12からの加湿された空気は、
図1に示す排出口22bと同様の排出口から排出される。
【0049】
2-2.特徴
航空機等においては、移動中に常に振動が発生し、離着陸では水平な状態を維持できない場合がある。このため、静電霧化装置1又は加湿装置に取り付けられた水格納容器2は傾き、或いは水Wが波打ったり、飛び跳ねたりする。この結果、収容された水Wの水面が変化し、水格納容器2の第1通気孔11及び第2通気孔12から水Wが外に漏れ出てしまう可能性がある。これは、静電霧化装置1又は加湿装置内の漏電・ショート等の原因となる。更に、水格納容器2を静電霧化装置1又は加湿装置から取り外して単体で取り扱う場合、容器の落下、取り扱いにより生じる振動による水Wの外部漏れ出しへの配慮はしなければならない。一方で、水格納容器2の第1通気孔11及び第2通気孔12は、実施の形態1で説明したように、気流の通路であるため、静電霧化装置1又は加湿装置の運転中は開放しておく必要がある。
【0050】
実施の形態2に係る水格納容器2は、容器内部の仕切部121があり、水格納領域122と気流通過領域123とを繋ぐ加湿フィルタ13が仕切部121に密着して配されている。よって、水格納領域122に水が充填されていても、水Wが水格納領域122から上部にある気流通過領域123に多量に浸入することはできない。よって、静電霧化装置1又は加湿装置内の漏電・ショート等のリスクを抑制することができる。一方で、水格納容器2は、第1通気孔11及び第2通気孔12が開口しているため、静電霧化又は加湿のための気流の流路を確保する。
【0051】
実施の形態2に係る水格納容器2は、水漏れが発生しにくい構造を有するため、隣接したエリアに電気機器が複数存在する航空機環境において、水漏れによる漏電・ショート等の発生リスクを抑制し、安全性を高められる。
【0052】
更に、実施の形態2に係る水格納容器2は、単体で、加湿された空気を生成し送ることができる。
【0053】
2-3.変形例
2-3-1.変形例1
図9は、変形例1に係る水格納容器2を示す。水格納容器2は、第1通気孔11及び第2通気孔12から下方に延び、それぞれの孔を包囲する筒形状の壁部11a、12aを備える。壁部11a、12aは、止水の働きをする弁構造を構成する。このため、気流通過領域123に水が浸入した状態で、静電霧化装置1から取り外された水格納容器2がひっくり返されて置かれても、第1通気孔11及び第2通気孔12から水が漏れ出すことを防ぐことができる。
【0054】
水格納容器2はまた、仕切部121の底部121bが、気流通過領域123から水格納領域122に向かって、すなわち下方に傾斜する。これにより、気流通過領域123へ水が浸入しても、水格納容器2が
図9のように上下正しく配置された状態(例えば、静電霧化装置1内に水格納容器2が取り付けられている状態)であれば、加湿フィルタ13方向に水が流れる。このため、加湿フィルタ13に効率よく集めることが可能であり、外に漏れ出す水の量も抑制できる。
【0055】
2-3-2.変形例2
水格納容器2が単体で扱われたとき、つまり静電霧化装置1の本体部1aに取り付けられていない場合、僅かであっても、気流通過領域123内に漏れ出た水が、第1通気孔11及び第2通気孔12から漏れてしまうおそれがある。
【0056】
これを防ぐため、
図10に示すように、水格納容器2は、より水漏れを抑制させるための機構として、第1通気孔11及び第2通気孔12を開閉可能な第1蓋部材17及び第2蓋部材18を備える。更に、水格納容器2は、静電霧化装置1の本体部1aに取り付けたとき第1通気孔11を開放し、静電霧化装置1の本体部1aから取り外したとき第1通気孔11を閉鎖する開閉機構を備える。同様に、水格納容器2は、静電霧化装置1の本体部1aに取り付けたとき第2通気孔12を開放し、静電霧化装置1の本体部1aから取り外したとき第2通気孔12を閉鎖する開閉機構を備える。開閉機構は、例えば、次の構成により実現される。
【0057】
水格納容器2が静電霧化装置1の本体部1aから取り外されているとき、第1蓋部材17及び第2蓋部材18は、バネ23、24によって押し上げられて閉じる構造を有する。なお、バネはコイルバネでもよいし、ねじりバネ、板バネ等他のバネ構造でもよい。第1蓋部材17及び第2蓋部材18と容器本体2aの上部101との間は、クッション材等でより隙間を埋めてもよい。
【0058】
図11A及び
図11Bは、水格納容器2のY方向の断面を示す。第1蓋部材17は、上方向に延びる突起17aおよび支点17bを備え、支点17bを中心に回動可能である。
図11Aは、静電霧化装置1の本体部1aに取り付けられていないときの第1蓋部材17の状態を示す。ここでY軸負方向は静電霧化装置1の本体部1aの取り付け方向とする。静電霧化装置1の本体部1aには突起20が設けられる。水格納容器2が静電霧化装置1の本体部1aに取り付けられるとき、
図11Bに示すように、第1蓋部材17の突起17aは、突起20によりY軸正方向に押される。これにより、第1蓋部材17は、支点17bを中心に、第1通気孔11を開く方向へ回転する。なお、第2蓋部材18についても、同じ構成を備え、同様の回動により第2通気孔12を開閉する。
【0059】
本変形例によれば、水格納容器2が静電霧化装置1の本体部1aに取り付けられたとき、静電霧化のための空気の流路が確保される。一方、水格納容器2が静電霧化装置1の本体部1aから取り外されたとき、第1通気孔11及び第2通気孔12は閉鎖される。このため、水格納容器2が単体で扱われたときであっても、激しい振動、落下にも充分耐えうる止水性能が可能となる。
【0060】
3.その他実施の形態
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、上記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略等を行った実施形態にも適用可能である。また、上記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0061】
上記実施の形態においては、水格納容器10,2は水を収容しているが、他の液体であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 :静電霧化装置
1a :本体部
2,10 :水格納容器
2a,10a:容器本体
11 :第1通気孔
11a :壁部
12 :第2通気孔
12a :壁部
13 :加湿フィルタ
15 :凹部
17 :第1蓋部材
17a :突起
17b :支点
18 :第2蓋部材
20 :突起
21a :吸込口
21b :第2端
22a :第3端
22b :排出口
23,24 :バネ
30 :ダクト部材
31 :第1ダクト
31a :開口端
31b :当接面
32 :第2ダクト
32a :開口端
32b :当接面
35 :凸部
39 :クッション材
50 :容器着脱機構
51 :ばね
70 :静電霧化部
80 :制御部
90 :ファン
101 :上部
102 :底部
103,104:側部
121 :仕切部
121a :側面部
121b :底部
121c :貫通孔
122 :水格納領域
123 :気流通過領域
210 :第1空気流路
220 :第2空気流路