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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】欠陥検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20240301BHJP
【FI】
G01N21/88 J
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020188014
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2022077248
(43)【公開日】2022-05-23
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502178001
【氏名又は名称】学校法人梅村学園
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 毅
(72)【発明者】
【氏名】近藤 考司
(72)【発明者】
【氏名】青木 公也
【審査官】三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-33377(JP,A)
【文献】特開2017-13371(JP,A)
【文献】特開2019-3430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
等間隔で平行に並ぶ凹溝を有する燃料電池用のセパレータを検査対象物とし、撮像部によって前記セパレータを撮像した撮像画像に基づいて同セパレータの欠陥を検査する欠陥検査装置であって、
前記撮像画像を区画して複数の区画領域を設定するとともに同一の区画領域の各部における輝度の平均値を当該区画領域の輝度値として定めて、低解像度の画像を作成する低解像度画像作成部と、
前記区画領域毎に「設定対象の区画領域の輝度値と同区画領域に隣接する区画領域の輝度値とが同等であることを示す第1の値」および「前記設定対象の区画領域の輝度値と前記隣接する区画領域の輝度値とが異なることを示す第2の値」のいずれかが設定された比較画像を作成する比較画像作成部と、
前記低解像度画像作成部による前記低解像度の画像の作成と前記比較画像作成部による前記比較画像の作成とを、前記区画領域の位相およびサイズの少なくとも一方が異なる実行態様で複数回実行する複数回実行部と、
前記複数回実行部によって作成された複数の前記比較画像の間での前記第1の値が設定された前記区画領域の位置関係に基づいて、前記セパレータの欠陥を検査する検査部と、を有し、
前記セパレータの検査対象領域は、前記凹溝の延設方向において並ぶ態様で分割された複数の分割検査領域を有してなり、
前記低解像度画像作成部、および前記比較画像作成部、および前記複数回実行部、および前記検査部による前記欠陥の検査を、前記分割検査領域毎に実行する態様で、複数回に分けて実行する分割実行部を有してなる、欠陥検査装置。
【請求項2】
前記複数回実行部は、前記区画領域の位相およびサイズの少なくとも一方を、隣り合う前記分割検査領域の境界に沿う方向においてのみ変更するものである
請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記撮像部は、前記セパレータの撮像を前記複数の分割検査領域について各別に実行するものである
請求項1または2に記載の欠陥検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用のセパレータの欠陥を検査する欠陥検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型の燃料電池のセルは、イオン交換膜からなる電解質膜を一対の電極で挟む膜電極接合体と、膜電極接合体を挟む一対のセパレータとを備えている。セパレータは薄板状をなすとともに、間隔を置いて平行に延びる多数の凹溝を有している。上記セルの内部にはセパレータの凹溝の内面と膜電極接合体の外面とによって流体流路が区画形成されている。そして、それら流体流路にはガス(燃料ガスや酸化剤ガス)が供給される。
【0003】
近年、セパレータの欠陥(傷、異物の付着など)を検査する装置が求められている。欠陥検査装置としては、検査対象物を撮像した撮像画像を用いて欠陥検査を行うものが知られている。
【0004】
上記装置としては、予め作成したマスク画像を用いて検査対象領域を区別しつつ、検査対象物の欠陥検査を実行する装置が提案されている(例えば特許文献1)。この装置をセパレータの検査に用いると、セパレータにおける水平に延びる部分(凹溝の底面や、凹溝に挟まれた部分の頂面など)のみを検査対象領域にするなど、撮像画像の各部の輝度が略同一になる部分を検査対象領域として欠陥検査を実行することが可能になる。これにより、撮像画像に現れる明暗をもとに、セパレータの欠陥を検査することが可能になる。
【0005】
また、マスク画像を用いることなく、検査対象物の欠陥検査を実行する装置も提案されている(例えば特許文献2)。特許文献2の装置では、次のように欠陥検査が実行される。先ず、撮像画像が区画されるとともに同一の区画領域の各部における輝度の平均値が当該区画領域の輝度値として定められて低解像度の画像が作成される。その後、低解像度の画像をもとに、区画領域毎に「同区画領域の輝度値と周囲の区画領域の輝度値とが同等であることを示す第1の値」および「それら輝度値が異なることを示す第2の値」のいずれかが設定された比較画像が作成される。この装置では、低解像度画像の作成と比較画像の作成とが、撮像画像における区画領域の位相やサイズを変更しつつ複数回実行される。そして、このようにして作成された複数の比較画像の間での上記第1の値が設定された区画領域の位置関係に基づいて、セパレータの欠陥が検査される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-21502号公報
【文献】特許第5821708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記セパレータは薄板状をなしているため、「反り」や「うねり」などといった不要な変形が生じ易い。このことから、特許文献1の装置を用いてセパレータの欠陥検査を行う場合には、セパレータにおけるマスク画像によってマスクするべき部分と実際にマスクされる部分との間に、ずれが生じ易いと云える。そして、このずれは欠陥検査の精度を低下させる一因になる。
【0008】
この点、特許文献2に記載の欠陥検査装置によれば、マスク画像を用いることなく、セパレータの欠陥検査を行うことができる。ただし、この装置では、撮像画像をもとに低解像度の画像を作成する処理や、各区画領域の輝度値を比較して比較画像を作成する処理など、セパレータの検査のために実行する処理の数が多いうえに、その処理量が大きい。しかも、そうした低解像度画像や比較画像を作成する処理が繰り返し実行される。そのため、セパレータの欠陥検査にかかる時間が長くなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための欠陥検査装置は、等間隔で平行に並ぶ凹溝を有する燃料電池用のセパレータを検査対象物とし、撮像部によって前記セパレータを撮像した撮像画像に基づいて同セパレータの欠陥を検査する欠陥検査装置であって、前記撮像画像を区画して複数の区画領域を設定するとともに同一の区画領域の各部における輝度の平均値を当該区画領域の輝度値として定めて、低解像度の画像を作成する低解像度画像作成部と、前記区画領域毎に「設定対象の区画領域の輝度値と同区画領域に隣接する区画領域の輝度値とが同等であることを示す第1の値」および「前記設定対象の区画領域の輝度値と前記隣接する区画領域の輝度値とが異なることを示す第2の値」のいずれかが設定された比較画像を作成する比較画像作成部と、前記低解像度画像作成部による前記低解像度の画像の作成と前記比較画像作成部による前記比較画像の作成とを、前記区画領域の位相およびサイズの少なくとも一方が異なる実行態様で複数回実行する複数回実行部と、前記複数回実行部によって作成された複数の前記比較画像の間での前記第1の値が設定された前記区画領域の位置関係に基づいて、前記セパレータの欠陥を検査する検査部と、を有し、前記セパレータの検査対象領域は、前記凹溝の延設方向において並ぶ態様で分割された複数の分割検査領域を有してなり、前記低解像度画像作成部、および前記比較画像作成部、および前記複数回実行部、および前記検査部による前記欠陥の検査を、前記分割検査領域毎に実行する態様で、複数回に分けて実行する分割実行部を有してなる。
【0010】
上記構成によれば、マスク画像を用いることなく、撮像部によってセパレータの検査対象領域を撮像した撮像画像をもとに同セパレータの欠陥検査を実行することができるため、欠陥検査を精度良く実行することができる。
【0011】
上記構成では、検査に用いる撮像画像が大きくなると、その増大に連れて画像処理にかかる処理量が指数的に大きくなる。そのため、セパレータの検査対象領域の全体を撮像した画像(全体画像)をもとに、欠陥検査のための画像処理を行うと、その処理量が大きくなってしまう。この点、上記構成では、一枚のセパレータの検査対象領域が複数の分割検査領域に分割されており、それら分割検査領域について各別に欠陥検査にかかる画像処理が実行される。これにより、各分割検査領域についての検査における画像処理の処理量を格段に小さくすることができる。そのため、画像処理を分割検査領域毎に実行する必要があるとはいえ、全体画像を用いて欠陥検査にかかる画像処理を実行する装置と比較して、一枚のセパレータについての画像処理にかかるトータルの処理量を少なく抑えることができる。したがって、セパレータの検査対象領域の全体についての欠陥検査を短い時間で実行することができる。
【0012】
上記欠陥検査装置において、前記複数回実行部は、前記区画領域の位相およびサイズの少なくとも一方を、隣り合う前記分割検査領域の境界に沿う方向においてのみ変更するものであることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、セパレータの検査対象領域における周期的な形状変化(凹凸が交互に並ぶパターン)に合わせて、区画領域の位相やサイズを変更することができる。しかも、区画領域の位相やサイズの変更方向を一方向に限定することができるため、複数方向に変更する場合と比較して、画像処理を簡素にして、その処理量を少なくすることができる。
【0014】
上記欠陥検査装置において、前記撮像部は、前記セパレータの撮像を前記複数の分割検査領域について各別に実行するものであることが好ましい。
上記構成によれば、セパレータの検査対象領域の全体を一枚の画像として撮像する場合と比較して、一回の撮像における撮像範囲が小さくなるため、撮像範囲の各部における撮影条件(撮像角度や、光の当たり方など)のばらつきを抑えることができる。そのため、撮影条件のばらつきに起因する検査誤差を抑えて、セパレータの欠陥検査を精度良く実行することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、セパレータの欠陥検査を短い時間で精度良く実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態の欠陥検査装置の概略構成を示す略図。
図2】セパレータの平面図。
図3】セパレータの図2の3-3線に沿った端面図。
図4】欠陥検査処理の実行手順を示すフローチャート。
図5】複数の分割検査領域を合わせて示すセパレータの平面図。
図6】判定処理の実行手順を示すフローチャート。
図7】(a)~(c)区画領域のサイズを示す略図。
図8】(a)~(c)区画領域の位相を示す略図。
図9】設定対象の区画領域と隣接する区画領域との関係を示す略図。
図10】2つの比較画像データについての各区画領域の値を積算した場合におけるデータを示す略図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、欠陥検査装置の一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の欠陥検査装置は、検査対象物としてのセパレータ20を搬送する搬送部31を有している。搬送部31はベルトコンベアによって構成されている。セパレータ20の検査に際しては、セパレータ20が搬送部31の上に置かれる。そして、セパレータ20は、その状態で搬送部31によって搬送されるようになっている。
【0018】
搬送部31の上方には、セパレータ20を撮像する撮像部32が設けられている。撮像部32は、搬送部31上のセパレータ20の検査対象領域を撮像するカメラ33を有している。撮像部32は、セパレータ20の欠陥検査にかかる処理(欠陥検査処理)を実行する制御装置34を有している。制御装置34は、各種処理を実行する専用のハードウェア回路(本実施形態では、FPGA[Field Programmable Gate Array])を備えて構成されている。
【0019】
搬送部31の上方には、搬送部31上のセパレータ20を照らすための照明装置35が設けられている。照明装置35は、カメラ33によるセパレータ20の撮像に際して、同セパレータ20の検査対象領域およびその周辺を照らすようになっている。
【0020】
搬送部31の近傍には、セパレータ20の欠陥検査の結果を表示する表示装置36が配置されている。表示装置36は上記制御装置34に接続されており、セパレータ20の欠陥検査の結果が入力されている。
【0021】
以下、セパレータ20の構造について説明する。
図2に示すように、セパレータ20は、金属製の薄板状部材にプレス加工によって起伏が付与されたものである。セパレータ20は、略長方形の板状をなしている。セパレータ20の長手方向(図2の左右方向)における両端部分にはそれぞれ、短手方向(図2の上下方向)に並ぶ3つの貫通孔21が設けられている。貫通孔21のうちの2つは冷却水が通過する冷却水流路の一部を構成し、他の2つは燃料ガス(例えば、水素ガス)が通過する燃料ガス流路の一部を構成し、残りの2つは酸化剤ガス(例えば、酸素ガス)が通過する酸化剤ガス流路の一部を構成する。
【0022】
セパレータ20の長手方向における中央部分には、多数の凹溝22を有する凹溝部23が設けられている。凹溝22は、凹溝部23の長手方向における一方側の端部23Aと他方側の端部23Bとを繋ぐ態様で延びている。
【0023】
図3に示すように、凹溝部23は、基本的には、凹溝22と突条24とが交互に並ぶ態様の起伏を有する形状をなしている。これら凹溝22および突条24には、燃料電池セルの内部に冷却水流路や、燃料ガス流路、酸化剤ガス流路をする役割がある。
【0024】
図2および図3に示すように、凹溝部23の長手方向における中央部分C(図2中に破線で示す)では、凹溝22がセパレータの長手方向において延びている。また、凹溝部23の中央部分Cでは、凹溝22が等間隔で平行に延びている。本実施形態では、こうした凹溝部23の中央部分Cが、セパレータ20の検査対象領域になっている。
【0025】
凹溝部23の中央部分Cは、詳しくは、次のように構成されている。図3に示すように、凹溝部23の中央部分Cは、断面形状がクランク状をなしている。凹溝22の底壁は、長手方向および短手方向に延在する略平板状をなしている。また突条24の頂壁は、長手方向および短手方向に延在する略平板状をなしている。凹溝22の底壁と突条24の頂壁との間の部分である斜壁部25は、斜め方向に延びている。この斜壁部25は、凹溝22の断面形状が底壁に向かうに連れて先細のテーパ形状をなす態様であり、且つ突条24の断面形状が頂壁に向かうに連れて先細のテーパ形状をなす態様で延びている。凹溝22の底壁および突条24の頂壁はそれぞれ、等間隔で平行に、セパレータ20の長手方向において延びている。
【0026】
本実施形態では、カメラ33(図1)によってセパレータ20を撮像した撮像画像に基づいて制御装置34による演算処理(画像処理)を実行するとともに、その演算結果をもとに同セパレータ20の欠陥を検査するといったように、前記欠陥検査処理が実行される。以下、本実施形態の欠陥検査処理について、詳しく説明する。
【0027】
図4は、上記欠陥検査処理の実行手順を示している。図4のフローチャートに示される一連の処理は、所定周期毎の処理として、制御装置34により実行される。
図4に示すように、欠陥検査処理では先ず、カメラ33によってセパレータ20の検査対象領域の一部、詳しくは複数の分割検査領域の一つが撮像されるとともに、その撮像画像データが制御装置34に記憶される(ステップS11)。
【0028】
ここで本実施形態では、図5に示すように、セパレータ20の検査対象領域(図中の破線参照)は、凹溝22の延設方向(図5の上下方向)において並ぶ態様で分割された複数の分割検査領域(A1,A2,A3・・・An)によって構成されている。各分割検査領域は、凹溝22の延設方向と直交する方向、すなわちセパレータ20の短手方向(図5の左右方向)に延びる長尺の帯状をなしている。そして、図4のステップS11の処理では、搬送部31によるセパレータ20の搬送に合わせて、予め定められたタイミングでカメラ33による分割検査領域の撮像が実行されるとともに、その撮像画像データが制御装置34に記憶される。これにより、複数の分割検査領域が、搬送方向における前側の領域から順に(A1→A2→A3、・・・An)、カメラ33によって撮像されるとともにその撮像画像データが制御装置34に記憶されるようになる。
【0029】
ステップS11の処理において、複数の分割検査領域のうちの一つについての撮像および記憶がなされると、このとき記憶された撮像画像データをもとに、同データに対応する分割検査領域についての欠陥を判定する判定処理が実行される(ステップS12)。なお、判定処理の実行態様については後に詳述する。
【0030】
そして、上記判定処理が終了すると、一枚のセパレータ20の検査対象領域の全体(詳しくは、全ての分割検査領域)についての判定処理が完了したか否かが判断される(ステップS13)。そして、検査対象領域の全体の判定処理が未だ完了していない場合には(ステップS13:NO)、他の分割検査領域を撮像および記憶する処理(ステップS11)と判定処理(ステップS12)とが実行される。具体的には、直近の検査対象であった分割検査領域(例えばA1)の上記搬送方向における後ろ側の分割検査領域(例えばA2)を撮像および記憶する処理(ステップS11)と判定処理(ステップS12)とが実行される。このように本実施形態の欠陥検査処理では、搬送方向における最も後ろ側の分割検査領域Anを撮像および記憶する処理と同分割検査領域Anについての判定処理とが完了するまで、ステップS11の処理およびステップS12の処理が繰り返し実行される。本実施形態では、ステップS13の処理が、分割実行部としての制御装置34によって実行される処理に相当する。
【0031】
そして、一枚のセパレータ20の検査対象領域の全体についての判定処理が完了すると(ステップS13:YES)、全ての分割検査領域についての判定処理の結果をもとに、セパレータ20の欠陥の有無が判定される(ステップS14)。なお本実施形態では、ステップS14の処理における判定結果が制御装置34(図1参照)から表示装置36に出力されて、同表示装置36に表示される。
【0032】
このように本実施形態では、一枚のセパレータ20の欠陥を判定するための処理が、分割検査領域毎に実行される態様で複数回に分けて実行される。
以下、前記判定処理について、詳しく説明する。図6は、判定処理の実行手順を示している。図6のフローチャートに示される一連の処理は、所定周期毎の処理として、制御装置34により実行される。
【0033】
図6に示すように、判定処理では先ず、カメラ33によって撮像されて制御装置34に記憶された撮像画像データに対して複数の区画領域が定められる(ステップS21)。具体的には、図7および図8に示すように、撮像画像に対して格子状に境界を設定することによって複数の区画領域が定められる。なお本実施形態では、区画領域の境界が長手方向と短手方向とに直線状に延びるように定められる。
【0034】
本実施形態では、図7(a)、図7(b)、および図7(c)に示すように、ステップS21の処理において定められる区画領域のサイズ(詳しくは、区画領域の境界を構成する格子のサイズ)として、複数のサイズが予め定められている。詳しくは、凹溝22の延設方向における区画領域の長さ(Y)が同一であり、且つ、延設方向と直交する方向における区画領域の長さ(X1,X2,X3)が異なる複数サイズの区画領域が予め定められている。本実施形態では、区画領域のサイズが、隣り合う分割検査領域の境界に沿う方向、すなわち凹溝22の延設方向と直交する方向においてのみ変更される。
【0035】
また、図8(a)、図8(b)、および図8(c)に示すように、ステップS21の処理において定められる区画領域の位置(位相)としては、複数の位相が予め定められている。詳しくは、凹溝22の延設方向における区画領域の位相が同一であり、且つ、延設方向と直交する方向における区画領域の基準位相BSEからのずれ量(0,B1,B2)が異なる複数の区画領域が予め定められている。本実施形態では、区画領域の位相が、凹溝22の延設方向と直交する方向においてのみ変更される。
【0036】
そして、図6のステップS21の処理では、具体的には、区画領域についての複数のサイズ(図7参照)のうちの一つが選ばれるとともに複数の位相(図8参照)のうちの一つが選ばれて、複数の区画領域が定められる。
【0037】
その後、撮像画像データと複数の区画領域とに基づいて、撮像画像の解像度よりも低い解像度の画像(低解像度画像データ)が作成される(ステップS22)。詳しくは、同一の区画領域の各部(カメラ33の1画素に相当する各部分)における輝度の平均値が算出されるとともに、その平均値が当該区画領域の輝度値として定められる。なお本実施形態では、ステップS21,S22の処理が、低解像度画像作成部としての制御装置34によって実行される処理に相当する。また本実施形態では、検査対象のセパレータ20に欠陥が無い場合において低解像度画像データの各区画領域における輝度値の差が適度に小さくなるように、区画領域のサイズが定められている。
【0038】
その後、上記低解像度画像データに基づいて、隣接する区画領域の輝度値との比較結果を示す値が区画領域毎に設定された画像データ(比較画像データ)が作成される(ステップS23)。
【0039】
図9に一例を示すように、ステップS23の処理では、設定対象の区画領域の輝度値Jと同区画領域に隣接する4つの区画領域の輝度値Jt,Jb,Jl,Jrとの差ΔLが所定レベル未満である場合には、その旨を示す第1の値(本実施形態では「0」)が定められる。一方、設定対象の区画領域の輝度値Jと隣接する4つの区画領域の輝度値Jt,Jb,Jl,Jrとの差ΔLが所定レベル以上である場合には、その旨を示す第2の値(本実施形態では「1」)が定められる。比較画像データでは、隣接する区画領域と輝度値が同等である区画領域には「0」が設定されるとともに、隣接する区画領域よりも所定レベル以上輝度値が小さい区画領域や所定レベル以上輝度値が大きい区画領域には「1」が設定される。なお本実施形態では、ステップS23の処理が、比較画像作成部としての制御装置34によって実行される処理に相当する。
【0040】
本実施形態の判定処理では、セパレータ20に欠陥がなければ各区画領域の輝度値が同等になる低解像度画像データが作成されるとともに、同低解像度画像データをもとに、輝度値が周囲と異なる区画領域にのみ「1」が設定された比較画像データが作成される。これにより、比較画像データにおける「1」が設定された区画領域を、周辺と輝度値が異なる部分、言い換えれば欠陥が有る可能性のある部分(欠陥候補)として抽出することができる。
【0041】
図6に示すように、比較画像データの作成が終了すると、複数のサイズ(図7参照)と複数の位相(図8参照)との全ての組み合わせについての比較画像データの作成が完了したか否かが判断される(ステップS24)。
【0042】
全ての組み合わせに対応する比較画像データの作成が完了していない場合には(ステップS24:NO)、他の組み合わせパターンに対応する低解像度画像データの作成(ステップS22)と比較画像データの作成(ステップS23)とが実行される。具体的には、区画領域のサイズおよび位相の少なくとも一方を変更する処理(ステップS21)と、複数の区画領域をもとに低解像度画像データを作成する処理(ステップS22)と、比較画像データを作成する処理(ステップS23)とが実行される。このように本実施形態の判定処理では、複数のサイズと複数の位相との全ての組み合わせに対応する比較画像データの作成が完了するまで、ステップS21~ステップS23の処理が繰り返し実行される。なお本実施形態では、ステップS24の処理が、複数回実行部としての制御装置34によって実行される処理に相当する。
【0043】
そして、全ての組み合わせに対応する比較画像データの作成が完了すると(ステップS24:YES)、全ての比較画像データに基づいて投票画像データが作成される(ステップS25)。具体的には、全ての比較画像データを重ね合わせる態様で比較画像データにおける各区画領域の値を積算するといったように、投票画像データは作成される。
【0044】
図10は、仮に2つの比較画像データについての各区画領域の値を積算した場合におけるデータDTを示している。図10に示す例では、2つの比較画像データは区画領域のサイズが異なる。図10に示すように、データDTでは、2つの比較画像データを重ねた場合において「1」が設定されている区画領域R1,R2が重なる領域(図中に濃いハッチングで示す領域)には「2」が設定される。またデータDTでは、2つの比較画像データを重ねた場合において「0」が設定されている区画領域(R1,R2以外の区画領域)と「1」が設定されている区画領域(R1またはR2)とが重なる領域(図中に薄いハッチングで示す領域)には「1」が設定される。データDTでは、2つの比較画像データを重ねた場合において「0」が設定されている区画領域が重なる領域(図中におけるハッチング無しの領域)には「0」が設定される。
【0045】
このように、複数の比較画像データについての各区画領域の値を積算することにより、各比較画像データにおいて「1」が設定された区画領域R1,R2、すなわち欠陥が有る可能性のある区画領域が重なる領域(欠陥候補領域)の値が大きくなる。したがって、この欠陥候補領域を、セパレータ20に欠陥がある可能性が高い部分として抽出することができる。本実施形態の判定処理では、図6のステップS25の処理において、全ての比較画像データの各区画領域の値を積算することによって投票画像データが形成される。そのため、この投票画像データにおける設定値が大きい領域を、セパレータ20に欠陥がある可能性が高い欠陥候補領域として精度良く抽出することができる。
【0046】
図6に示すように、上記投票画像データが作成されると、同投票画像データの各領域に設定された値に基づいてセパレータ20における欠陥の有無が判定される(ステップS26)。この処理では、例えば投票画像データにおいて設定値が所定値以上の領域が有る場合にはセパレータ20に欠陥が有ると判定される一方、投票画像データにおいて各領域の設定値がいずれも所定値未満の場合にはセパレータ20に欠陥が無いと判定される。なお本実施形態では、ステップS25,S26の処理が、検査部としての制御装置34によって実行される処理に相当する。
【0047】
このように本実施形態では、ステップS21~S24の処理を通じて作成された複数の比較画像データの間での「1」が設定された区画領域の位置関係(具体的には、投票画像データの各領域の設定値)に基づいて、セパレータ20の欠陥が検査される。
【0048】
以下、本実施形態の欠陥検査装置による作用効果について説明する。
本実施形態の欠陥検査処理では、検査対象領域の一部をマスクするマスク画像を用いることなく、カメラ33によってセパレータ20の検査対象領域を撮像した撮像画像をもとに、同セパレータ20の欠陥検査を実行することができる。これにより、マスク画像を用いることに起因する検査精度の低下を回避することができるため、セパレータ20の欠陥検査を高い精度で実行することが可能になる。
【0049】
ここで、撮像画像をもとに欠陥検査を実行する場合には、撮像画像のデータ量が大きくなると、その増大に連れて同撮像画像データについての画像処理にかかる処理量が指数的に大きくなる。このことから、仮にセパレータ20の検査対象領域の全体を撮像した撮像画像(以下、全体画像)をもとにセパレータ20の欠陥検査を実行すると、全体画像についての画像処理にかかる処理量が大きくなってしまう。そして、この場合には、セパレータ20の検査にかかる時間が長くなる。
【0050】
本実施形態では、一枚のセパレータ20の検査対象領域が複数の分割検査領域(A1,A2,A3・・・An)に分割されている。そして、セパレータ20の欠陥検査に際しては、分割検査領域毎に、撮像部32によってセパレータ20を撮像してその撮像画像データを記憶する処理や同撮像画像データについての画像処理が実行される。そのため、画像処理の対象となる撮像画像のデータ量を小さく抑えることができ、撮像画像データについての画像処理の処理量を格段に小さくすることができる。
【0051】
本実施形態では、撮像画像データについての画像処理を、複数の分割検査領域に対応する撮像画像データについて各別に実行する必要がある。とはいえ、前記全体画像を用いて欠陥検査にかかる画像処理を実行する装置と比較して、一枚のセパレータ20についての画像処理にかかるトータルの処理量を少なく抑えることができる。したがって、セパレータ20の検査対象領域の全体についての欠陥検査を短い時間で実行することができる。これにより、セパレータ20の検査時間、ひいてはセパレータ20の製造にかかる時間を短縮することができる。
【0052】
本実施形態では、一枚の撮像画像データについての画像処理が、区画領域のサイズや位相を変更しつつ繰り返し実行される。そのため、一枚の撮像画像データについての画像処理の処理数が、どうしても多くなってしまう。この点、本実施形態では、制御装置34が上記「FPGA」を備えて構成されている。この「FPGA」は、パーソナルコンピュータ(PC)等の処理装置と比較して、多数の処理を並列(同時)に実行することができるといった特徴を有する。本実施形態によれば、そうした制御装置34(詳しくは、FPGA)による並列処理を通じて、多数の処理からなる撮像画像データについての画像処理を速やかに実行することができるため、同画像処理にかかる時間を短縮することができる。
【0053】
通常、データ量の大きい画像(例えば全体画像)の処理を実行するためには、制御装置34に大きい容量のメモリを搭載する必要がある。本実施形態では、検査対象領域を複数の分割検査領域に分割することにより、画像処理に用いる撮像画像のデータ量が小さく抑えられている。そのため、制御装置34に搭載するメモリを小さくすることができ、同制御装置34の小型化を図ることができる。これにより、撮像部32をカメラ33および制御装置34が一体構造のものにすることができるため、カメラと制御装置とが別体の構造のものと比較して、欠陥検査装置を小型化することができる。
【0054】
本実施形態では、撮像画像データについての画像処理に際して、区画領域の位相やサイズが、凹溝22の延設方向と直交する方向においてのみ変更される。これにより、セパレータ20の検査対象領域における周期的な形状変化(詳しくは、凹溝22と突条24とが交互に並ぶパターン)に合わせて区画領域の位相やサイズを変更することができる。しかも、区画領域の位相やサイズの変更方向を一方向に限定することができるため、区画領域の位相やサイズを複数方向に変更する場合と比較して、撮像画像データについての画像処理を簡素な処理にして、その処理量を少なくすることができる。
【0055】
本実施形態では、カメラ33によってセパレータ20を撮像する処理と撮像画像データを制御装置34に記憶する処理とが、複数の分割検査領域について各別に実行される。これにより、セパレータ20の検査対象領域の全体を一枚の画像(前記全体画像)として撮像する場合と比較して、一回の撮像における撮像範囲が小さくなる。そのため、撮像範囲の各部とカメラ33との位置関係のばらつきや、撮像範囲の各部と照明装置35との位置関係のばらつきを抑えることができる。これにより、撮像範囲の各部における撮影条件(カメラ33による撮像角度や、照明装置35による照射の度合い等)のばらつきを抑えることができるため、そのばらつきに起因する検査誤差を抑えてセパレータ20の欠陥検査を精度良く実行することができる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(1)検査対象領域の一部をマスクするマスク画像を用いることなく、カメラ33によってセパレータ20の検査対象領域を撮像した撮像画像をもとに、同セパレータ20の欠陥検査を実行することができる。そのため、セパレータ20の欠陥検査を高い精度で実行することが可能になる。また、一枚のセパレータ20の検査対象領域が複数の分割検査領域に分割されている。そして、セパレータ20の欠陥検査に際しては、分割検査領域毎に、撮像部32によってセパレータ20を撮像してその撮像画像データを記憶する処理や同撮像画像データについての画像処理が実行される。そのため、セパレータ20の検査対象領域の全体についての欠陥検査を短い時間で実行することができ、同セパレータ20の検査時間を短縮することができる。
【0057】
(2)撮像画像データについての画像処理に際して、区画領域の位相やサイズを、凹溝22の延設方向と直交する方向においてのみ変更するようにした。これにより、セパレータ20の検査対象領域における周期的な形状変化に合わせて、区画領域の位相やサイズを変更することができる。しかも、区画領域の位相やサイズを複数方向に変更する場合と比較して、撮像画像データについての画像処理を簡素な処理にして、その処理量を少なくすることもできる。
【0058】
(3)カメラ33によってセパレータ20を撮像する処理と撮像画像データを制御装置34に記憶する処理とが、複数の分割検査領域について各別に実行される。これにより、撮像範囲の各部における撮影条件のばらつきに起因する検査誤差を抑えて、セパレータ20の欠陥検査を精度良く実行することができる。
【0059】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0060】
・撮像画像データにおける区画領域のサイズや位相を変更する方向は任意に設定することができる。例えば撮像画像データにおける区画領域のサイズや位相を、凹溝22の延設方向と直交する方向に変更することに加えて、延設方向に変更するようにしてもよい。その他、撮像画像データにおける区画領域のサイズや位相を、凹溝22の延設方向においてのみ変更するようにしてもよい。
【0061】
・セパレータ20の検査対象領域を複数の分割検査領域に分割する分割方向は、複数の分割検査領域が凹溝22の延設方向において並ぶように分割されるのであれば、任意に変更することができる。要は、隣り合う分割検査領域の境界が凹溝22の延設方向と交差する方向に延びる態様で、セパレータ20の検査対象領域を分割するようにすればよい。
【0062】
・欠陥検査処理(図4)において、カメラ33によってセパレータ20の検査対象領域の全体を撮像するとともに、その撮像画像(全体画像)を制御装置34に記憶させるようにしてもよい。この場合には、複数の分割検査領域のうちの一つに対応する部分を全体画像から切り分けた画像を撮像画像データにするとともに、同撮像画像データを判定処理(図4のステップS12の処理)における画像処理に用いるようにすればよい。
【0063】
・搬送部31によるセパレータ20の搬送態様は任意に設定することができる。例えば、一定速度でセパレータ20を搬送するようにしてもよい。その他、セパレータ20の撮像のために撮像位置で一時停止させるとともに撮像完了後において次の撮像位置まで移動させるといったように、間欠的にセパレータ20を搬送することも可能である。
【0064】
・照明装置35や表示装置36を省略することができる。
・カメラ33と制御装置34とを別体に構成してもよい。
・制御装置34としては、「FPGA」を備えるものに限らず、特定用途向け集積回路(ASIC[Application Specific Integrated Circuit])を備えるものや、パーソナルコンピュータ(PC)を備えるもの等、任意の構成のものを採用することができる。
【0065】
・上記実施形態にかかる欠陥検査装置は、等間隔で平行に並ぶ凹溝を有するセパレータであれば、任意の構造のセパレータに適用することができる。そうしたセパレータとしては、例えば7つ以上の貫通孔21を有するセパレータや、3つ以上の貫通孔21が冷却水流路の一部や、燃料ガス流路の一部、酸化剤ガス流路の一部を構成する構造のセパレータなどを挙げることができる。
【符号の説明】
【0066】
20…セパレータ
22…凹溝
32…撮像部
33…カメラ
34…制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10