IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 公立大学法人山陽小野田市立山口東京理科大学の特許一覧 ▶ 株式会社鳥取再資源化研究所の特許一覧

<>
  • 特許-微生物発電装置及び発電方法 図1
  • 特許-微生物発電装置及び発電方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】微生物発電装置及び発電方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/16 20060101AFI20240301BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20240301BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20240301BHJP
【FI】
H01M8/16
H01M8/02
H01M8/04 Z
H01M8/04 J
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020012767
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2021118159
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】517018101
【氏名又は名称】公立大学法人山陽小野田市立山口東京理科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】510040363
【氏名又は名称】株式会社鳥取再資源化研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】森田 ▲廣▼
(72)【発明者】
【氏名】古屋 直史
(72)【発明者】
【氏名】八塚 淳弘
(72)【発明者】
【氏名】久保 航一
(72)【発明者】
【氏名】中野 惠文
(72)【発明者】
【氏名】田中 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】奥山 佑太
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-287413(JP,A)
【文献】特開2006-114375(JP,A)
【文献】国際公開第2013/073284(WO,A1)
【文献】中国実用新案第210825887(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第110104874(CN,A)
【文献】特表2010-504616(JP,A)
【文献】特開2004-035287(JP,A)
【文献】特開2019-169329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
H01M 8/16
H01M 8/04
C02F 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物及び
当該有機物を分解してプロトンと電子を生成する微生物
を保持する媒体を有し、
その媒体中に少なくとも2つの電極を設けて発電する微生物発電装置において、
多孔質体を、媒体中、かつ、電極間に有し、
多孔質体が、二酸化ケイ素を主成分とする発泡体を含む、微生物発電装置。
【請求項2】
発泡体が、発泡ガラスを含む、請求項に記載の微生物発電装置。
【請求項3】
多孔質体のサイズが、30mm以下である、請求項1又は2に記載の微生物発電装置。
【請求項4】
有機物を供給する手段を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の微生物発電装置。
【請求項5】
有機物を供給する手段は、有機物をそのまま供給する手段、有機物を含む水を供給する手段及び/又は植物を含む、請求項に記載の微生物発電装置。
【請求項6】
有機物及び
当該有機物を分解してプロトンと電子を生成する微生物
を保持する媒体中に少なくとも2つの電極を設けることを含む、微生物発電方法であって、
多孔質体を媒体中、かつ、電極間に設けることを含み、
多孔質体が、二酸化ケイ素を主成分とする発泡体を含む、微生物発電方法。
【請求項7】
粉体ガラスと発泡剤を含む混合物を空気中で600~1150℃に加熱して、発泡体を製造することを含む、請求項に記載の微生物発電方法。
【請求項8】
多孔質体のサイズが30mm以下である、請求項6又は7に記載の微生物発電方法。
【請求項9】
有機物を供給することを含む、請求項のいずれか1項に記載の微生物発電方法。
【請求項10】
有機物を供給することは、有機物をそのまま供給すること、有機物を含む水を供給すること、及び/又は植物を設けることを含む、請求項に記載の微生物発電方法。
【請求項11】
有機物及び
当該有機物を分解してプロトンと電子を生成する微生物
を保持する媒体中に少なくとも2つの電極を設けることを含む、微生物発電装置の製造方法であって、
多孔質体を媒体中、かつ、電極間に設けることを含み、
多孔質体が、二酸化ケイ素を主成分とする発泡体を含む、微生物発電装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物を用いる発電装置及び発電方法に関し、さらに詳しくは、微生物で有機物を分解する発電方法及び発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物による有機物質の分解に伴い電荷が発生し、それを電極で交換させることにより外部回路に電力として取り出せる微生物を用いる発電装置及び発電方法が、新クリーンエネルギー源として可能性があることが、今世紀になり見出された。しかしながら、その発電装置及び発電方法は、(1)発電電力量が不十分であることと、(2)長期間の発電継続性が欠落することから実用化はなされていない。
【0003】
微生物発電装置(「微生物燃料電池」ともいう)の性能等を向上するための、種々の報告がされている。
非特許文献1~3は、林及び田畑に存する種々の微生物の利用、有機物の添加による効率向上、及び純水、淡水及び海水等の種々の水での発電の可能性を報告した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】古屋直史、山内健太郎、合田和矢、森田廣、「土壌微生物による微生物燃料電池の基礎研究」、第79回応用物理学会秋季学術講演会 講演予稿集(2018名古屋)20a-PB1-6
【文献】古屋直史、長嶋哲也、松尾匠剛、森田廣、「有機物添加による微生物燃料電池の効率向上」、第66回応用物理学会春季学術講演会 講演予稿集(2019東京)9a-W371-2
【文献】古屋直史、久保航一、八塚淳弘、森田廣、「微生物燃料電池に使用可能な原水に関する調査」、第80回応用物理学会秋季学術講演会 講演予稿集(2019北海道)19a-E303-6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、(1)発電電力量がより向上し、(2)長期間の発電継続性が向上した、微生物発電装置(微生物燃料電池ともいう)及び発電方法が、学術的にも商業的にも興味深い。
本発明者らは、上述の(1)について、微生物発電装置中に存在する微生物が希薄なので、電力量が小さいと考えた。更に本発明者らは、上述の(2)について、発電に寄与する有機物質の供給が十分に行えていないため、微生物の生存が難しいと考えた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、微生物の生育の場を提供し、有機物を保持できる、多孔質体を、発電装置の媒質中の電極間に設けることによって、微生物をより存在させて、微生物の集積度をより向上させることで、電力を増大させることができることを見出した。
【0007】
本発明者らは、また、微生物の生存を維持するために、有機物を多孔質体の空孔中により存在させる(又は担持させる)ことで、発電装置の中で、有機物が微生物に有効に与えられ、電力を増大させることができ、発電をより継続させることができることを見出した。
【0008】
本明細書は、下記の実施形態を含む。
1.有機物及び
当該有機物を分解してプロトンと電子を生成する微生物
を保持する媒体を有し、
その媒体中に少なくとも2つの電極を設けて発電する微生物発電装置において、
多孔質体を、媒体中、かつ、電極間に有する、微生物発電装置。
2.多孔質体が、無機物を含む、上記1記載の微生物発電装置。
3.多孔質体が、二酸化ケイ素を主成分とする発泡体を含む、上記1又は2に記載の微生物発電装置。
4.発泡体が、発泡ガラスを含む、上記3に記載の微生物発電装置。
5.多孔質体のサイズが、30mm以下である、上記1~4のいずれか1に記載の微生物発電装置。
6.有機物を供給する手段を有する、上記1~5のいずれか1に記載の微生物発電装置。
7.有機物を供給する手段は、有機物をそのまま供給する手段、有機物を含む水を供給する手段及び/又は植物を含む、上記6に記載の微生物発電装置。
8.有機物及び
当該有機物を分解してプロトンと電子を生成する微生物
を保持する媒体中に少なくとも2つの電極を設けることを含む、微生物発電方法であって、
多孔質体を媒体中、かつ、電極間に設けることを含む、微生物発電方法。
9.多孔質体が、無機物を含む、上記8記載の微生物発電方法。
10.多孔質体が、二酸化ケイ素を主成分とする発泡体を含む、上記8又は9に記載の微生物発電方法。
11.粉体ガラスと発泡剤を含む混合物を空気中で600~1150℃に加熱して、発泡体を製造することを含む、上記10に記載の微生物発電方法。
12.多孔質体のサイズが30mm以下である、上記8~11のいずれか1に記載の微生物発電方法。
13.有機物を供給することを含む、上記8~12のいずれか1に記載の微生物発電方法。
14.有機物を供給することは、有機物をそのまま供給すること、有機物を含む水を供給すること、及び/又は植物を設けることを含む、上記13に記載の微生物発電方法。
15.有機物及び
当該有機物を分解してプロトンと電子を生成する微生物
を保持する媒体中に少なくとも2つの電極を設けることを含む、微生物発電装置の製造方法であって、
多孔質体を媒体中、かつ、電極間に設けることを含む、微生物発電装置の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態の微生物発電装置は、微生物の生育の場を与えることができる多孔質体を、発電装置の媒体中の電極間に設けることにより、微生物をより多く存在させて、微生物集積度をより増加させて、電力を増大することができる。更に、本発明の実施形態の微生物発電装置は、有機物の供給手段を有することができるので、長期間継続的に発電するために使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一の実施形態の微生物発電装置を模式的に示す。
図2図2は、実施例1、2、7及び比較例1の微生物発電装置に関して、日数に対する飽和電力を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態の微生物発電装置を説明する。
本発明の実施形態の微生物発電装置は、
有機物及び
当該有機物を分解してプロトンと電子を生成する微生物
を保持する媒体を有し、
その媒体中に少なくとも2つの電極を設けて発電する微生物発電装置において、
多孔質体を、媒体中、かつ、電極間に有する、微生物発電装置である。
【0012】
本発明の実施形態において、微生物とは、有機物を分解してプロトンと電子を生成することにより発電することができ、本発明が目的とする微生物発電装置を得ることができれば、特に制限されることはない。微生物として、例えば、通性嫌気性グラム陰性桿菌 シェワネラ菌(Shewanella oneidensis)、ジオバクター菌等を例示することができる。これらの微生物は、有機化合物を分解してエネルギーを得る際に、生じた電子を電極に伝達することが知られている。
【0013】
本発明の実施形態において、有機物とは、微生物が分解してエネルギーを得て、微生物が電子を生じることに貢献する物質であり、本発明が目的とする微生物発電装置を得ることができる限り特に制限されることはない。有機物として、例えば、酢酸、乳酸、グルコース、蔗糖、澱粉、アミノ酸、ペプチド、たんぱく質、セルロース等を例示することができる。
【0014】
本発明の実施形態において、媒体とは、微生物と有機物を保持し、微生物が生育できる環境を提供し、本発明が目的とする微生物発電装置を得ることができる限り、特に制限されることはない。媒体として、例えば、土壌、堆積汚泥、水(例えば、河川の水、農業用水)等を例示することができる。土壌として、例えば、田んぼの土壌、畑の土壌、果樹園の土壌、山林の土壌、川底の土壌、海底の土壌等を例示することができる。
【0015】
本発明の実施形態において、電極とは、通常、発電装置に使用される電極であり、媒体中で腐食、破損等を生じない電極であることが好ましく、本発明が目的とする微生物発電装置を得ることができる限り、特に制限されることはない。電極として、例えば、カーボンフェルト、カーボンシート、金属(例えば、プラチナ)等を使用することができる。
【0016】
電極の形状、大きさ等は、微生物発電装置を考慮して適宜選択することができる。
電極は2つで1組であるが、必要であれば、2組以上の電極を使用することができる。
電極は、上下で組み合わせてよく、左右で組み合わせてよく、くし形で組み合わせてよく、円筒状又は渦巻き状で組み合わせてもよい。
2つの電極の中で、一方の電極が大気に接することが好ましい。一方の電極が大気に接する場合、酸素がより効率的に供給されるので好ましい。本発明の実施形態の微生物発電装置では、電極表面に水素イオンが引き寄せられて、水が生成する反応が生じながら発電すると考えられる。この反応がよりスムーズになるので、一方の電極が大気に接することが好ましい。
【0017】
本発明の実施形態において、多孔質体(多孔質材料)とは、多くの細孔が存在する材料であり、微生物の生育の場を提供し、有機物を保持でき、本発明が目的とする微生物発電装置を得ることができる限り、特に制限されることはない。多孔質体として、例えば、ダイアトマイト、ゼオライト、軽石、れき、シリカゲル、発泡ガラス等の無機物を例示することができる。
多孔質体は、二酸化ケイ素を主成分とする発泡体、例えば、発泡煉石、発泡ガラス等を含むことが好ましく、発泡ガラスを含むことがより好ましい。
【0018】
多孔質体の細孔径は、例えば、0.001~1000μmであり、0.005~500μmであることが好ましく、0.01~100μmであることがより好ましく、0.05~50μmであることが特に好ましい。
【0019】
多孔質体のサイズは、例えば、30mm以下であり、例えば、25mm以下であり、例えば、20mm以下であり、例えば、15mm以下であり、例えば、10mm以下であり、例えば、7mm以下である。多孔質体のサイズは、例えば、30mm以下であり、例えば、25mm以下であり、例えば、20mm以下であり、例えば、0.5mm以上であり、例えば、1mm以上であり、例えば、2mm以上であり、3mm以上である。多孔質体のサイズは、篩の目開きがXmmである篩を通りぬけるか否かで示す。
【0020】
本発明の実施形態の微生物発電装置は、多孔質体を、媒体中、かつ、電極間に有する。
多孔質体は、電極間に存在すればよく、本発明が目的とする微生物発電装置を得ることができれば、その存在形式等は、特に制限されることはない。
【0021】
本発明の実施形態において、発泡ガラスとは、多数の細孔を有するガラスをいい、一例では、粉砕したガラスと発泡剤との混合物を焼成することによって製造することができる。発泡ガラスの製造方法について詳細に説明する。
【0022】
まず、発泡ガラスの原料となるガラス(以下、「原料ガラス」と称する)を粉砕する。本発明の実施形態の微生物発電装置を得られる限り、原料ガラスの種類は特に限定されないが、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラスなどが例示される。原料のガラスには、ブラウン管、液晶、プラズマディスプレイなどに由来する廃ガラスを用いてもよい。原料ガラスの粉砕方法は特に限定されず、市販の振動ミルなどを用いて粉砕することができる。粉砕後のガラス(以下、「粉砕ガラス」と称する)の粒径は、特に限定されないが、粉砕ガラスと後述する発泡剤とが均一に混合されるように小さい方が好ましい。一例では、原料ガラスの粉砕後に目開きが500μm以下である篩を用いて粒度選別を行って、粉砕ガラスの粒径が500μm以下になるようにすることが好ましい。
なお、本明細書において、「粒径がXμm以下である」とは、篩の目開きがXμmである篩を通りぬけることを意味する。
【0023】
次に、粉砕ガラスと発泡剤とを混合する。本発明の実施形態の微生物発電装置を得られる限り、発泡剤の種類は、特に限定されないが、例えば、SiC、SiN,CaCO、及びCaCO3を含む材料(例えば、貝殻)等を用いることができる。このような発泡剤は、ガラスが軟化する温度でガスを発生させるので、その結果、ガラス内部に多数の細孔が形成されて、発泡ガラスが製造される。また、発泡剤の含有量は、特に限定されないが、0.1~5質量%であることが好ましく、0.2~2.0質量%であることが特に好ましい。上述の含有量である場合、発泡がより十分に起こるので、より強度が向上した発泡ガラスが得られるので好ましい。
発泡剤は、炭酸カルシウムを(好ましくは主成分として)含むことが好ましい。
発泡剤は、貝殻を(好ましくは主成分として)含むことが好ましい。
【0024】
次に、粉砕ガラスと発泡剤の混合物を焼成する。本発明の実施形態の微生物発電装置を得られる限り、焼成温度及び焼成時間は、特に限定されることはなく、ガラスが適切に発泡するように、ガラスや発泡剤の種類に応じて適宜設定することができる。焼成温度は、一例では、600~1150℃である。さらに例えば、700~1100℃である。焼成温度は、ソーダ石灰ガラスについては、800~1000℃が好ましい。このような焼成温度の場合、ガラスがより十分に軟化して細孔がより適切に形成され、より好ましい発泡ガラスを製造することができる。また、焼成時間は、一例では、1~60分であり、一例では、3~25分であり、好ましくは、5~20分である。このような焼成時間の場合、発泡がより十分に起こり、より好ましい発泡ガラスを製造することができる。
【0025】
製造された発泡ガラスは、塊状のまま用いてもよいが、粉砕したものを用いてもよい。粉砕後の発泡ガラスの粒径は、特に限定されないが、例えば、30mm以下であり、例えば、25mm以下であり、例えば、20mm以下であり、例えば、15mm以下であり、例えば、10mm以下であり、例えば、7mm以下である。
【0026】
本発明の実施形態の微生物発電装置は、有機物を供給する手段を有することが好ましい。有機物を供給する手段とは、有機物を微生物発電装置(好ましくは媒体)に供給して、微生物の生存及び生存継続を向上することができ、本発明が目的とする微生物発電装置を得ることができる限り、特に制限されることはない。有機物を供給する手段として、例えば、有機物をそのまま供給する手段、有機物を含む水を供給する手段及び植物(又は植栽)等を例示することができる。
【0027】
有機物をそのまま供給する手段とは、有機物をそのままの形態で微生物発電装置に供給して、微生物の生存及び生存継続を向上することができ、本発明が目的とする微生物発電装置を得ることができる限り、特に制限されることはない。有機物をそのまま供給する手段として、微生物発電装置に、例えば、糖、でんぷん等をそのまま(粉体又は液状のまま)直接供給する装置を例示することができる。そのような有機物供給装置は、具体的には、例えば、管、アンプル等の注射剤等を例示することができる。
【0028】
有機物を含む水を供給する手段とは、有機物を含む水を微生物発電装置、好ましくは媒体に供給して、微生物の生存及び生存継続を向上することができ、本発明が目的とする微生物発電装置を得ることができる限り、特に制限されることはない。有機物を含む水を供給する手段として、有機物が混入している農業用水(又は廃水)発電装置に供給する装置、有機物が混入している農業用水(又は廃水)、工業用水(又は廃水)等に微生物発電装置を浸漬するための装置等を例示できる。
【0029】
植物(又は植栽)とは、それが微生物発電装置に存在して生育することで、有機物を微生物発電装置中に供給できる、光合成可能な植物(又は草木)をいい、微生物発電装置に存在して、微生物の生存及び生存継続を向上することができ、本発明が目的とする微生物発電装置を得ることができる限り、特に制限されることはない。そのような植物として、例えば、沈水性の水草、浮葉性の水草、浮遊性の植物及び抽水性の植物などを例示することができる。
沈水性の水草とは、一般に植物体が完全に水中にある水草をいい、例えば、イバラモ科、ヒルムシロ科、マツモ科及びアリノトウグサ科などが含まれる。
浮葉性の水草とは、一般に根が水底についていて葉を水面に浮かべる水草をいい、例えば、スイレンなどを含むスイレン科、アサザなどを含むミツガシワ科、ヒルムシロなどを含むヒルムシロ科などが含まれる。
浮遊性の植物とは、一般に水面に植物体が浮かんでいて、根が水底についていない浮遊性の植物をいい、例えば、ホテイアオイ及びボタンウキクサ等のウキクサ科、アカウキクサ及びサンショウモ等の水生シダ類、イチョウウキゴケ等のコケ植物などが含まれる。
抽水性の植物とは、一般に根が水中にあり、茎や葉を伸ばして水面上に出る植物をいい、例えば、コウホネ類、スイレン類、ハス科、カヤツリグサ科及びイネ科などが含まれる。
【0030】
本発明の一の実施形態の微生物発電装置を図1に模式的に示す。微生物発電装置(10)は、容器(8)中に、2つの電極(1)及び(2)を有する。電極(1)と電極(2)は、上下に配置されている。電極(1)と電極(2)の間は、媒体(4)で満たされている。媒体(4)の中で、電極(1)と電極(2)の間に、多孔質体(6)が配置されている。容器(8)の上は、カバー(9)で覆われており、微生物発電装置(10)の内部が保護されている。電極(1)には導線(12)が取り付けられており、電極(2)には導線(22)が取り付けられており、これらの導線(12)と(22)で、発電された電力が取り出される。
【0031】
本発明は他の要旨において、
有機物及び
当該有機物を分解してプロトンと電子を生成する微生物
を保持する媒体中に少なくとも2つの電極を設けることを含む、微生物発電方法であって、
微生物及び/又は有機物を担持することのできる多孔質体を媒体中、かつ、電極間に設けることを含む、微生物発電方法を提供する。
【0032】
本発明は、更なる要旨において、
有機物及び
当該有機物を分解してプロトンと電子を生成する微生物
を保持する媒体中に少なくとも2つの電極を設けることを含む、微生物発電装置の製造方法であって、
多孔質体を媒体中、かつ、電極間に設けることを含む、微生物発電装置の製造方法を提供する。
【0033】
本発明の実施形態の微生物発電方法及び微生物発電装置の製造方法において、有機物、微生物、媒体、電極、多孔質体などについて、上述の記載を参照することができる。
【0034】
本発明者らは、微生物発電装置の発電効率を向上させるためには、(i)「微生物の集積度をあげること」が、重要であると考える。更に、本発明者らは、発電継続性の確保については、(ii)「微生物の生存及び活動継続のための有機物(養分)補給」が重要であると考える。
本発明の実施形態の微生物発電装置は、多孔質体を媒体中で、電極間に設けることで、上述の(i)及び(ii)に関する有利な効果を奏すると考える。それは、多孔質体が、微生物に生育の場を提供し、微生物が多孔質体に好ましくは担持され、より好ましくは固定され得るからと考えられる。更に、微生物の生存に必要な有機物も、多孔質体に保持され、好ましくは担持されるからと考えられる。本発明は、このような理由によって優れた効果を奏すると考えられるが、このような理由によって、本発明は、何ら制限されることはない。
【実施例
【0035】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様にすぎず、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0036】
本実施例で使用した材料等を以下に示す。
容器としてΦ9.5cm×14.1cmの円筒状のプラスチック製容器、電極として各々に導線を有する2つのカーボンフェルト(7cm×5cm×0.5cm)、媒体として田んぼ(農薬を使用していない)の土壌、及びΦ10.5cm×1.7cmのプラスチック製のカバーを準備した。土壌中には、通性嫌気性グラム陰性桿菌 シェワネラ菌(Shewanella oneidensis)及び/又はジオバクター菌が存在している。有機化合物を分解してエネルギーを得る際に、生じた電子を電極に伝達することが知られている。更に、多孔質体として、下記表1に示す発泡ガラスを準備した。
【0037】
【表1】
【0038】
発泡ガラスの製造
発泡ガラスの製造は、具体的には、下記のように行った。
発泡ガラス1について記載する。まず、ソーダ石灰ガラスを、粒径が0.5mm以下になるように粉砕した。1.2質量%の発泡剤CaCO3を添加して、十分に混合した。その混合物を、900℃の温度で8分間焼成することによって発泡ガラスを得た。この発泡ガラスを粒径が1~3mmになるように粉砕して、発泡ガラス1を得た。
表1に記載した発泡剤及び焼成条件等に変えた他、発泡ガラス1の製造方法と同様の方法を使用して、発泡ガラス2~7を製造した。
【0039】
発泡ガラス1~7の各々を、水切りネットに入れて、土壌と発泡ガラスが分離した状態で、前処理として事前に、5週間土壌中に埋めて保管した。この保管期間に、発泡ガラス中に、微生物が入り、好ましくは集積されると考えられる。
【0040】
実施例1の微生物発電装置の製造
円筒状の容器に120gの土壌を入れた。その上に、1つのカーボンフェルトを配置して、下部電極とした。その上に75gの土壌を入れた。その上に、上述の土壌に5週間埋めて保管した、30gの発泡ガラス1を入れた。更に、その上に、190gの土壌を入れた。その上に、1つのカーボンフェルトを配置して、上部電極とした。カバーをかぶせて、実施例1の微生物発電装置を得た。
【0041】
実施例2~7及び比較例1の微生物発電装置の製造
実施例1の微生物発電装置の製造方法において、発泡ガラス1の代わりに、発泡ガラス2~7を使用したこと又は発泡ガラスを使用しなかったことを除いて、同様の方法を用いて、実施例2~7又は比較例1の微生物発電装置を製造した。
【0042】
微生物発電装置の評価
微生物発電装置を電源として、電流計を用いて、短絡電流を測定して、日ごとの最大電力(Pmax:mW)及び飽和電力(Psat:mW)を測定した。
測定を開始後、9日、21日、31日、42日、50日及び59日目の飽和電力(Psat:mW)を、表2に示した。
更に、実施例1、2、7及び比較例1の微生物発電装置の飽和電力(mW)を、図2に示した。図2は、上から順に、実施例7、実施例1、実施例2、比較例1の微生物発電装置の日数に対して飽和電力をプロットして示す。
【0043】
【表2】
【0044】
実施例1~7の微生物発電装置では、いずれも、飽和電力は、測定期間中に1.0mWを超えた。特に、実施例1、2、4、7の微生物発電装置では、2.0mWを超えた。基本的に測定期間後半に向かって、飽和電力は増加している。多孔質体を電極間に存在させることで、微生物発電装置の効率向上と発電継続性を改善することができた。
一方、多孔質体を電極間に含まない比較例1の微生物発電装置では、飽和電力は、測定期間全体を通して、高々0.8mWであり、測定期間後半では、飽和電力は低下した。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の実施形態の微生物発電装置は、微生物の生育の場を与えることができる多孔質体を、発電装置の媒体中の電極間に設けることにより、微生物をより多く存在させて、微生物集積度をより増加させて、電力を増大することができる。更に、本発明の実施形態の微生物発電装置は、有機物の供給手段を有することができるので、長期間継続的に発電するために使用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 電極
12 導線
2 電極
22 導線
4 媒体
6 多孔質体
8 容器
9 カバー
10 微生物発電装置
図1
図2