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特許7445890処理装置、処理方法、プログラム、及び、レーダ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】処理装置、処理方法、プログラム、及び、レーダ装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/89 20060101AFI20240301BHJP
【FI】
G01S13/89
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020100800
(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公開番号】P2021196195
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 耕祐
(72)【発明者】
【氏名】野口 浩
(72)【発明者】
【氏名】河合 慶士
(72)【発明者】
【氏名】安木 慎
(72)【発明者】
【氏名】植田 剛央
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-206026(JP,A)
【文献】特開2018-205175(JP,A)
【文献】特開2013-096828(JP,A)
【文献】特開2005-173806(JP,A)
【文献】特開2011-226860(JP,A)
【文献】特開2019-194614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/64
G01S 13/00 - 17/95
G01C 3/00 - 3/32
G06T 1/00 - 1/40
G06T 3/00 - 7/90
G06V 10/00 - 20/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
或る空間に放射した電波の反射波に基づいて得られた点群のデータを受信する受信部と、
前記空間を分割した単位空間毎の前記点群の時間的な相関に基づいて、検出対象に対応する点群を決定する処理部と、
を備える処理装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記単位空間毎に、前記点群の数を規定値によって除算して密度を決定し、閾値未満の前記密度に対応する前記単位空間における前記点群を除去する、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記検出対象に対応する前記単位空間に含まれる過去の点群のデータを除去する、
請求項2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記単位空間のサイズを前記検出対象のサイズに基づいて決定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項5】
前記検出対象が人の場合、前記処理部は、前記単位空間を一辺が人の肩幅の半分の長さに相当するキューブに設定する、
請求項4に記載の処理装置。
【請求項6】
前記受信部は、複数時点の前記点群のデータを受信し、
前記処理部は、前記単位空間毎の前記複数時点の前記点群のデータに基づいて、前記検出対象に対応する点群を決定する、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項7】
処理装置が、
或る空間に放射した電波の反射波に基づいて得られた点群のデータを受信し、
前記空間を分割した単位空間毎の前記点群の時間的な相関に基づいて、検出対象に対応する点群を決定する、
処理方法。
【請求項8】
処理装置に、
或る空間に放射した電波の反射波に基づいて得られた点群のデータを受信し、
前記空間を分割した単位空間毎の前記点群の時間的な相関に基づいて、検出対象に対応する点群を決定する、
処理を実行させるプログラム。
【請求項9】
或る空間に放射した電波の反射波を受信する受信部と、
前期反射波に基づいて、前記空間における点群のデータを決定する決定部と、
前記空間を分割した単位空間毎の前記点群の時間的な相関に基づいて、検出対象に対応する点群を決定する制御部と、
を備えるレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、処理装置、処理方法、プログラム、及び、レーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波帯等の周波数帯のレーダを使用して、或る特定のエリアにおける検出対象(例えば、人)を検出するシステムが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-114261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
検出対象とは異なる物体からの電波反射が存在する環境(例えば、特定のエリアあるいは空間)において、検出対象の検出精度の向上には、検討の余地がある。
【0005】
本開示の非限定的な実施例は、電波反射が存在する空間における検出対象の検出精度を向上できる処理装置、処理方法、プログラム、及び、レーダ装置の提供に資する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施例に係る処理装置は、或る空間に放射した電波の反射波に基づいて得られた点群のデータを受信する受信部と、前記空間を分割した単位空間毎の前記点群の時間的な相関に基づいて、検出対象に対応する点群を決定する処理部と、を備える。
【0007】
本開示の一実施例に係る処理方法は、処理装置が、或る空間に放射した電波の反射波に基づいて得られた点群のデータを受信し、前記空間を分割した単位空間毎の前記点群の時間的な相関に基づいて、検出対象に対応する点群を決定する。
【0008】
本開示の一実施例に係るプログラムは、処理装置に、或る空間に放射した電波の反射波に基づいて得られた点群のデータを受信し、前記空間を分割した単位空間毎の前記点群の時間的な相関に基づいて、検出対象に対応する点群を決定する、処理を実行させる。
【0009】
本開示の一実施例に係るレーダ装置は、或る空間に放射した電波の反射波を受信する受信部と、前期反射波に基づいて、前記空間における点群のデータを決定する決定部と、前記空間を分割した単位空間毎の前記点群の時間的な相関に基づいて、検出対象に対応する点群を決定する制御部と、を備える。
【0010】
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、又は、記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一実施例によれば、電波反射が存在する空間における検出対象の検出精度を向上できる。
【0012】
本開示の一実施例における更なる利点及び効果は、明細書及び図面から明らかにされる。かかる利点及び/又は効果は、いくつかの実施形態並びに明細書及び図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つ又はそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施の形態に係るレーダ装置の構成例を示すブロック図
図2】点群データの処理例を示す図
図3】一実施の形態における数密度フィルタリングの第1の例を示す図
図4】一実施の形態における数密度フィルタリングの第2の例を示す図
図5】一実施の形態におけるキューブサイズの一例を示す図
図6】一実施の形態における点群データ加工部の処理の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
(一実施の形態)
ミリ波帯の電波を用いるレーダ(ミリ波レーダ)を使用して、特定のエリア(あるいは空間)の内部に存在する検出対象を検出するシステムが検討されている。以下では、例示的に、特定のエリアが、屋内空間(例えば、壁、天井等によって仕切られた部屋)であり、検出対象が「人」である例を説明する。
【0016】
レーダは、人の検出を行う部屋において、或る周波数帯(例えば、ミリ波帯)の電波(送信波)を送信し、検出対象を含む物体において反射した電波(反射波)を受信する。そして、送信波を送信したタイミングと反射波を受信したタイミングとの間の時間差、反射波を受信した方向、及び、反射波のドップラー周波数といった情報に基づいて、検出対象の位置、検出対象の移動速度等が検出される。
【0017】
例えば、レーダの信号処理では、送信波を送信したタイミングと反射波を受信したタイミングとの間の時間差、反射波を受信した方向、及び、反射波のドップラー周波数等の情報に基づいて、部屋内の反射物の位置に対応する点群データ(以下、単に「点群」と称することがある)が決定される。
【0018】
送信波は、例えば、部屋の内部の人において直接反射する。また、例えば、送信波は、人以外にも、部屋の壁、天井及び床等において多重反射する。また、例えば、送信波は、部屋内に設けられた物体(例えば、机、イス等)において多重反射する。レーダは、人において直接反射した第1の反射波と、人以外の物体において多重反射した第2の反射波とが混在した反射波を受信する。そのため、レーダの信号処理では、第1の反射波から第1の点群を決定し、かつ、第2の反射波から第2の点群を決定する。
【0019】
第1の点群と第2の点群とが混在する場合、点群から検出対象の人を推定する処理(例えば、クラスタリング処理)において、人の検出精度が劣化し得る。
【0020】
そこで、本実施の形態では、多重反射した第2の反射波は継続して得られない傾向にあるという点、別言すれば、第2の点群は第1の点群と比較して反射継続性が低い傾向にあるという点に着目し、第2の点群を適切に除去することによって、人の検出精度の劣化を抑制する。
【0021】
図1は、本実施の形態に係るレーダ装置1の構成例を示すブロック図である。
【0022】
図1には、レーダ装置1と、レーダ装置1と接続されてレーダ装置1から出力された情報を表示するモニタ装置2とが示される。
【0023】
レーダ装置1は、例えば、電波(送信波)を送信し、送信波の反射波を受信し、受信した反射波に基づいて、検出対象である人を検出する。例えば、レーダ装置1は、レーダ回路(レーダIC(integrated circuit))11と、点群データ生成部12と、点群データ加工部13と、人検出処理部14とを有する。
【0024】
レーダ回路11は、例えば、電波(送信波)を送信し、送信波の反射波を受信し、受信した反射波(以下、レーダ信号と記載)を点群データ生成部12へ出力する。
【0025】
点群データ生成部12は、例えば、レーダ信号から点群データを生成し、生成した点群データを点群データ加工部13へ出力する。点群データ生成部12は、例えば、レーダ信号受信部121と、レーダ信号処理部122と、点群データ出力部123とを有する。
【0026】
レーダ信号受信部121は、例えば、レーダ回路11からレーダ信号を受信し、受信したレーダ信号をレーダ信号処理部122へ出力する。
【0027】
レーダ信号処理部122は、例えば、レーダ信号に信号処理を施し、点群データを生成する。レーダ信号処理部122における信号処理には、例えば、送信した信号とレーダ信号との間の相関処理が含まれてよい。
【0028】
点群データ出力部123は、例えば、レーダ信号処理部122によって生成された点群データを点群データ加工部13へ出力する。
【0029】
点群データ加工部13は、例えば、点群データを加工し、加工後の点群データ(加工点群データ)を人検出処理部14へ出力する。点群データ加工部13における点群データの加工は、例えば、点群データの時間的な相関(例えば、時間的な点群の継続性)に基づいて、検出対象である人に対応する点群を決定する処理を含む。
【0030】
点群データ加工部13は、例えば、点群データ受信部131と、点群データ蓄積部132と、フィルタリング処理部133と、点群データ除去部134と、加工点群データ出力部135と、を有する。
【0031】
点群データ受信部131は、例えば、点群データ生成部12から点群データを受信し、受信した点群データを点群データ蓄積部132へ出力する。
【0032】
点群データ蓄積部132は、例えば、現時点及び現時点よりも過去の時点における点群データを蓄積し、蓄積した点群データを重畳する。
【0033】
フィルタリング処理部133は、例えば、重畳された点群データに対して、点群の数の密度(数密度)に基づくフィルタリング(数密度フィルタリング)処理を実行する。また、フィルタリング処理部133は、フィルタリング処理後の点群データを点群データ除去部134へ出力する。なお、フィルタリング処理の例については後述する。
【0034】
点群データ除去部134は、例えば、過去の時点における点群を除去する。別言すると、点群データ除去部134は、現時点における点群を残す。加工点群データ出力部135は、例えば、除去後の点群データ(加工点群データ)を人検出処理部14へ出力する。
【0035】
人検出処理部14は、例えば、加工点群データに基づいて、人が存在する可能性の高い位置を推定する。また、人検出処理部14は、推定結果、例えば、人が存在する可能性の高い位置を示す情報(例えば、3次元空間の座標の情報)をモニタ装置2へ出力する。なお、人検出処理部14は、人が存在する可能性の高い位置に限らず、人の大きさ、人の移動速度を推定してもよい。
【0036】
人検出処理部14は、例えば、加工点群データ受信部141と、クラスタリング処理部142と、人検出データ出力部143と、を有する。
【0037】
加工点群データ受信部141は、例えば、点群データ加工部13から加工点群データを受信し、受信した加工点群データをクラスタリング処理部142へ出力する。
【0038】
クラスタリング処理部142は、例えば、加工点群データに対して、クラスタリング処理を行う。例えば、クラスタリング処理では、点群それぞれのレーダ装置1からの距離、点群の速度及び方位に基づいて、同一の対象物に対応した点群と推定される点群をグループ化する。例えば、このクラスタリング処理によって、グループ化された点群のサイズ、形状等が人に相当する場合、クラスタリング処理部142は、グループ化された点群を人に対応する点群として検出する。クラスタリング処理部142は、検出した人に対応する点群データ(以下「人検出データ」と称することがある)を決定する。人検出データには、検出された人の位置、形状及び速度に関する情報が含まれてよい。
【0039】
人検出データ出力部143は、例えば、人検出データをモニタ装置2へ出力する。
【0040】
モニタ装置2は、レーダ装置1から受信した情報を表示する。モニタ装置2は、例えば、人検出データ受信部21と、人検出データ表示処理部22と、モニタ部23と、を有する。
【0041】
人検出データ受信部21は、例えば、レーダ装置1から人検出データを受信し、受信した人検出データを人検出データ表示処理部22へ出力する。
【0042】
人検出データ表示処理部22は、例えば、人検出データに基づき、モニタ部23に表示するデータを生成する。例えば、人検出データ表示処理部22は、人検出データに含まれる人の位置、サイズ、及び、速度に関する情報を文字データに変換してもよい。あるいは、人検出データ表示処理部22は、例えば、人検出データに基づき、部屋の画像データと検出された人の画像とを重畳した画像データを生成してよい。
【0043】
モニタ部23は、例えば、人検出データ表示処理部22において生成されたデータを表示する。
【0044】
なお、図1に示した構成は、一例であり、本開示はこれに限定されない。例えば、図1に示したレーダ装置1の構成は、複数の装置に分割されてもよい。例えば、レーダ装置1は、レーダ回路11及び点群データ生成部12を有する第1のレーダ信号処理装置と、点群データ加工部13を有する第2のレーダ信号処理装置と、人検出処理部14を有する第3のレーダ信号処理装置と、に分けられてよい。
【0045】
上述した第2のレーダ信号処理装置は、部屋に放射した電波の反射波に基づいて得られた点群のデータを受信する受信部(例えば、点群データ受信部131)と、空間を分割した単位空間毎の点群の時間的な相関に基づいて、検出対象に対応する点群を決定する処理部(例えば、点群データ蓄積部132及びフィルタリング処理部133)を備えてよい。
【0046】
次に、点群データ加工部13における点群データの処理の例を説明する。
【0047】
図2は、点群データの処理例を示す図である。図2には、4つの処理段階のそれぞれの例を示す、点群(a)、点群(b)、点群(c)、及び、点群(d)が示される。なお、図2に示す例は、或る部屋において検出された点群の平面視であり、1つの矩形は、或る部屋を区切った単位空間に相当する。
【0048】
図2の点群(a)には、或る時点tにおけるフレーム(現在フレーム)の点群と、時点tよりも前の4フレーム分の点群とが示される。例えば、1フレーム前の点群は、或る時点tよりもT時間前におけるフレームの点群であってよい。つまり、現在フレームが或る時点tにおけるフレームである場合、1フレーム前のフレームは、時点t―Tにおけるフレームであり、4フレーム前のフレームは、時点t-4Tのフレームである。
【0049】
点群(b)は、現在フレームを含む5フレーム分の点群を蓄積し、重畳した結果の例を示す。点群(c)は、点群(b)に対する数密度フィルタリング処理が施された結果を示す。数密度フィルタリングによって、反射継続性の相対的に低い点群が除去され、反射継続性の相対的に高い点群が残される。
【0050】
点群(d)は、点群(c)から過去フレームの点群を除去する処理が施された結果を示す。点群(c)から過去フレームを除去することによって、現在フレームに基づく検出が行われる。
【0051】
点群データ加工部13では、点群(a)に示す複数の時点の点群データから、点群(d)を生成する。点群(d)は、反射継続性が低い点群が除去されているため、点群(d)に基づいて人の検出を行うことによって、検出精度の劣化を抑制できる。
【0052】
次に、数密度フィルタリング処理の例を説明する。数密度フィルタリングでは、例えば、検出を行う部屋の空間が複数の単位空間(例えば、キューブ)に区分又は分割され単位空間毎に点群の数の密度を計算する。
【0053】
図3は、本実施の形態における数密度フィルタリングの第1の例を示す図である。図3は、部屋の平面視であり、1つの矩形は、或る部屋を区切った単位空間(例えば、キューブ)に相当する。
【0054】
図3の左上には、検出可能な点群の位置の例が示され、図3の右上には、各キューブでの検出可能な点群の数(以下、理論値又は規定値と記載される場合がある)が示される。例えば、図3の右上に示す検出可能な点群の数は、1フレームあたりで検出可能な点群の数である。
【0055】
検出可能な点群の位置は、例えば、レーダ装置1(例えば、レーダ回路11)の距離方向(図3における円弧に交わる線分の半径方向)の分解能(距離分解能)と、レーダ装置1の角度方向(図3における円弧の方向)の分解能(角度分解能)とによって規定される。例えば、レーダ装置1の距離分解能が高いほど、円弧の間隔は狭くなってよい。また、例えば、レーダ装置1の角度分解能が高いほど、円弧と交わる線分の間隔は狭くなってよい。例えば、これらの間隔は、一定でなくてもよい。
【0056】
各キューブでの検出可能な点群の数は、各キューブに含まれる検出可能な点群の位置の数に相当してよい。例えば、レーダ装置1に近いキューブほど、検出可能な点群の数が多くなってよい。
【0057】
また、図3の左下には、各キューブで観測された(または、検出された)点群数の例が示される。観測点群数は、レーダ装置1が受信した反射波によって決定される。観測された点群には、例えば、人において反射した反射波に基づく点群と、人以外の物体において反射した反射波に基づく点群とが含まれ得る。図3の左下に示す各キューブで観測された点群数の例は、複数のフレーム(例えば、Nフレーム(Nは2以上の整数))の点群データを蓄積し、点群の数をキューブ毎にカウントし、カウントした点群の数をフレーム数Nで除算した結果である。別言すると、図3の左下に示す例は、1フレームあたりの観測点群数の平均値に対応する。
【0058】
図3の右下には、各キューブにおいて観測点群数を検出可能な点群数(理論値)によって除算した結果(数密度)が示される。また、除算結果の値が閾値(図3では0.5)以上を示すキューブが、斜線によって表される。
【0059】
例えば、数密度フィルタリングでは、図3に示すように、理論値と観測点群数とに基づいて、数密度を決定し、決定した数密度と閾値とを比較することによって、フィルタリングを実行する。例えば、各キューブを識別する#1~#M(Mは、キューブの数)の識別子を付した場合、キューブ#m(mは1以上M以下の整数)の数密度は、キューブ#mの数密度={(Nフレーム分蓄積したキューブ#mにおける観測点群数)/N}/(キューブ#mにおける検出可能な点群数)によって表される。
【0060】
例えば、数密度が閾値未満を示すキューブに含まれる点群は、削除されてよい。
【0061】
次に、数密度に基づくフィルタリング処理と、点群の数に基づくフィルタリングとの違いについて説明する。
【0062】
図4は、本実施の形態における数密度フィルタリングの第2の例を示す図である。図4は、部屋の平面視であり、1つの矩形は、或る部屋を区切った単位空間(例えば、キューブ)に相当する。
【0063】
図4の(a)には、観測された点群の位置の例が示され、図4の(b)には、1フレームあたりの、各キューブで観測された点群数の平均値の例が示される。また、図4の(c)には、検出可能な点群数の例が示される。
【0064】
例えば、各キューブで観測された点群数と閾値とを比較し、閾値以上のキューブと閾値未満のキューブとを分類する場合、結果1に示すような分類結果が得られる。結果1が、点群の数に基づくフィルタリングの例に相当する。
【0065】
また、図4の(d)には、各キューブにおける観測点群数を各キューブに含まれる検出可能な点群数によって除算した結果が示される。そして、除算結果の値と閾値(図4では0.5)とを比較し、閾値以上のキューブと閾値未満のキューブとを分類する場合、結果2に示す分類結果が得られる。結果2が、点群の数密度に基づくフィルタリング処理の例に相当する。
【0066】
結果1では、キューブ群xの点群が除去されないため、人を検出する精度に劣化が生じる場合がある。一方、結果2では、キューブ群xの点群が除去されるため、人検出の精度の劣化を抑制できる。
【0067】
本実施の形態では、数密度フィルタリングを行うことによって、キューブ毎の検出可能な点群数の違いを考慮した点群の除去ができる。そのため、例えば、結果2に示すように、人が存在しない範囲の点群が除去され、人を検出する精度の劣化を抑制できる。
【0068】
次に、キューブ(単位空間)のサイズの例について説明する。
【0069】
図5は、本実施の形態におけるキューブサイズの一例を示す図である。図5には、3つのキューブサイズの例が示される。第1のキューブサイズは、1辺の長さdが人の幅(例えば、平均的な人の肩幅)より大きい例に対応し、第2のキューブサイズは、dが人の幅程度の例に対応し、第3のキューブサイズは、dが人の幅の2分の1程度の例に対応する。
【0070】
数密度フィルタリングによって点群が除去された後に、点群が存在する範囲は、例えば、人の幅程度であってよい。例えば、点群が存在する範囲を人の幅程度にするためには、dが人の幅の2分の1以下であることが好ましい。
【0071】
一方で、dが小さいほど、キューブ毎の取得可能な点群の数が小さくなり、キューブ毎の数密度の差が小さくなる。そのため、数密度フィルタリング処理によって、除去しない方がよい点群が除去される可能性がある。
【0072】
そのため、例示的に、dを人の幅の2分の1程度に設定することによって、人を検出する精度の劣化を抑制できる。
【0073】
なお、図5では、人の幅(例えば、平均的な人の肩幅)を例に、キューブサイズを説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、検出対象によってキューブサイズが設定されてよい。例えば、検出対象が子供である場合、キューブサイズは平均的な子供の肩幅を基に設定されてよい。
【0074】
また、キューブサイズは、1つのサイズに限定されなくてよい。例えば、複数のキューブサイズが動的に切り替えられて数密度フィルタリングが実行されてよいし、複数のキューブサイズのそれぞれを用いた数密度フィルタリングが実行されてよい。或いは、検出を行う空間に複数のキューブサイズが含まれるように、部屋が分割されてもよい。例えば、部屋の中に、子供が存在するエリアと、大人が存在するエリアが含まれる場合、それぞれのエリア適したキューブサイズが使用されてよい。
【0075】
また、空間を分割する単位空間は、キューブ(立方体)に限定されない。例えば、単位空間は、直方体、球形状、等のキューブと異なる形状であってもよい。例えば、2通り以上の形状が、単位空間に用いられてよい。
【0076】
次に、レーダ装置1の点群データ加工部13における処理の流れを説明する。図6は、本実施の形態にかかる点群データ加工部13の処理の一例を示すフローチャートを示す。
【0077】
点群データ加工部13は、例えば、点群データ生成部12から点群データを受信する(S101)。
【0078】
点群データ加工部13は、受信した点群データを内部バッファに追加する(S102)。
【0079】
点群データ加工部13は、内部バッファに含まれる点群データの数を確認する(S103)。点群データは、フレーム単位で管理されるため、点群データの数は、フレーム数に相当してよい。
【0080】
点群データ加工部13は、データ数がNフレーム(Nは、2以上の整数)以下か否かを判定する(S104)。
【0081】
データ数がNフレーム以下ではない場合(S104にてNO)、例えば、データ数がN+1の場合、点群データ加工部13は、最古の1フレーム(受信した時点が最も古い1フレーム)を内部バッファから削除する(S105)。そして、S103の処理が実行される。
【0082】
データ数がNフレーム以下である場合(S104にてYES)、点群データ加工部13は、内部バッファから点群データを取得する(S106)。
【0083】
点群データ加工部13は、キューブ毎に点群の数と理論値とを比較する(S107)。なお、点群の数は、内部バッファから取得した点群データを蓄積してカウントした、キューブ毎の点群の数を点群データの数(フレーム数)で除算した結果であってよい。
【0084】
点群データ加工部13は、キューブ毎に、点群の数が理論値のX%(Xは、0より大きく100より小さい値)以上か否かを判定する(S108)。判定結果は、キューブ毎に異なってよい。
【0085】
点群の数が理論値のX%以上ではない場合(S108にてNO)、点群データ加工部13は、当該キューブ内の点群を削除する(S109)。
【0086】
点群の数が理論値のX%以上の場合(S108にてYES)、処理フローはS110へ移行する。
【0087】
そして、点群データ加工部13は、S101にて受信した点群データよりも過去のフレームの点群を削除する(S110)。
【0088】
点群データ加工部13は、S110までにおいて加工された点群データを人検出処理部14へ出力する(S111)。そして、処理フローは終了する。
【0089】
なお、図6に示すS104のフレーム数Nが大きいほど、数密度フィルタリングにおける数密度の差が大きくなる可能性が高い。一方で、フレーム数Nが大きいほど、数密度フィルタリングにおいて参照する時間が長くなるため、検出対象が移動している場合には、検出精度が劣化する可能性がある。そのため、フレーム数Nは、検出対象の移動速度に応じて設定されてよい。例えば、フレーム数Nは、検出対象の移動速度が大きいほど、小さく設定されてよい。
【0090】
以上、本実施の形態では、レーダによって検出を行う空間を複数の単位空間に区切り、単位空間毎の、点群の時間的な相関に基づいて、検出対象に対応する点群を決定する。これにより、反射継続性が低い点群を適切に除去できるため、人の検出精度の劣化を抑制できる。
【0091】
なお、上述した実施の形態では、屋内空間において人物を検出する例を示したが、本開示はこれに限定されない。例えば、検出を行う空間は屋外空間であってもよい。また、検出対象は、人物に限られず、他の移動物体(例えば、ロボット、車両、動物)であってもよい。
【0092】
また、上述した実施の形態では、フィルタリング処理部133が、数密度のフィルタリング処理を行う例を示したが、本開示はこれに限定されない。フィルタリング処理部133は、点群の数と閾値とを比較することによって、除去する点群(あるいは、残す点群)を決定してもよい。
【0093】
また、上述した実施の形態では、点群データ除去部135が、過去の点群データを除去する例を示したが、本開示はこれに限定されない。点群データ除去部135は、過去の点群データを除去しなくてもよい。別言すると、点群データ加工部13に点群データ除去部135が含まれなくてもよい。例えば、過去の点群データが検出精度を劣化させない場合(例えば、検出対象の移動速度が小さい場合(所定速度以下である場合))、過去の点群データは除去されなくてよい。あるいは、点群データ除去部135は、過去の点群データの一部を除去してよく、残りの一部を除去しなくてよい。
【0094】
なお、上記各実施の形態におけるレーダ装置1、または、レーダ装置1に含まれる構成は、プロセッサ、メモリ、ストレージ、通信装置、入力装置、出力装置、バスなどを含むコンピュータ装置として構成されてもよい。
【0095】
なお、上記各実施の形態における「・・・部」という表記は、「・・・回路(circuitry)」、「・・・デバイス」、「・・・ユニット」、又は、「・・・モジュール」といった他の表記に置換されてもよい。
【0096】
また、上記実施の形態における「周波数帯」という表記は、「周波数」、「周波数チャネル」、「帯域」、「バンド」、「キャリア」、「サブキャリア」、又は、「(周波数)リソース」といった他の表記に置換されてもよい。
【0097】
本開示はソフトウェア、ハードウェア、又は、ハードウェアと連携したソフトウェアで実現することが可能である。
【0098】
上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、部分的に又は全体的に、集積回路であるLSIとして実現され、上記実施の形態で説明した各プロセスは、部分的に又は全体的に、一つのLSI又はLSIの組み合わせによって制御されてもよい。LSIは個々のチップから構成されてもよいし、機能ブロックの一部又は全てを含むように一つのチップから構成されてもよい。LSIはデータの入力と出力を備えてもよい。LSIは、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0099】
集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路、汎用プロセッサ又は専用プロセッサで実現してもよい。また、LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。本開示は、デジタル処理又はアナログ処理として実現されてもよい。
【0100】
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【0101】
本開示は、通信機能を持つあらゆる種類の装置、デバイス、システム(通信装置と総称)において実施可能である。通信装置の、非限定的な例としては、電話機(携帯電話、スマートフォン等)、タブレット、パーソナル・コンピューター(PC)(ラップトップ、デスクトップ、ノートブック等)、カメラ(デジタル・スチル/ビデオ・カメラ等)、デジタル・プレーヤー(デジタル・オーディオ/ビデオ・プレーヤー等)、着用可能なデバイス(ウェアラブル・カメラ、スマートウオッチ、トラッキングデバイス等)、ゲーム・コンソール、デジタル・ブック・リーダー、テレヘルス・テレメディシン(遠隔ヘルスケア・メディシン処方)デバイス、通信機能付きの乗り物又は移動輸送機関(自動車、飛行機、船等)、及び上述の各種装置の組み合わせがあげられる。
【0102】
通信装置は、持ち運び可能又は移動可能なものに限定されず、持ち運びできない又は固定されている、あらゆる種類の装置、デバイス、システム、例えば、スマート・ホーム・デバイス(家電機器、照明機器、スマートメーター又は計測機器、コントロール・パネル等)、自動販売機、その他IoT(Internet of Things)ネットワーク上に存在し得るあらゆる「モノ(Things)」をも含む。
【0103】
通信には、セルラーシステム、無線LANシステム、通信衛星システム等によるデータ通信に加え、これらの組み合わせによるデータ通信も含まれる。
【0104】
また、通信装置には、本開示に記載される通信機能を実行する通信デバイスに接続又は連結される、コントローラやセンサー等のデバイスも含まれる。例えば、通信装置の通信機能を実行する通信デバイスが使用する制御信号やデータ信号を生成するような、コントローラやセンサーが含まれる。
【0105】
また、通信装置には、上記の非限定的な各種装置と通信を行う、あるいはこれら各種装置を制御する、インフラストラクチャ設備、例えば、基地局、アクセスポイント、その他あらゆる装置、デバイス、システムが含まれる。
【0106】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0107】
以上、本開示の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本開示は、レーダシステムに好適である。
【符号の説明】
【0109】
1 レーダ装置
2 モニタ装置
11 レーダ回路
12 点群データ生成部
13 点群データ加工部
14 人検出処理部
21 人検出データ受信部
22 人検出データ表示処理部
23 モニタ部
121 レーダ信号受信部
122 レーダ信号処理部
123 点群データ出力部
131 点群データ受信部
132 点群データ蓄積部
133 フィルタリング処理部
134 点群データ除去部
135 加工点群データ出力部
141 加工点群データ受信部
142 クラスタリング処理部
143 人検出データ出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6