(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】呼吸器合胞体ウイルスGタンパク質中央保存領域の立体構造エピトープ
(51)【国際特許分類】
C07K 14/08 20060101AFI20240301BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20240301BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240301BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240301BHJP
C07K 16/10 20060101ALN20240301BHJP
【FI】
C07K14/08 ZNA
A61K39/12
A61P11/00
C12N15/09 Z
C07K16/10
(21)【出願番号】P 2020520775
(86)(22)【出願日】2018-10-12
(86)【国際出願番号】 US2018055711
(87)【国際公開番号】W WO2019075400
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-10-12
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521055703
【氏名又は名称】トレリス・バイオサイエンス・インコーポレーテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100187540
【氏名又は名称】國枝 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】デュボワ レベッカ
(72)【発明者】
【氏名】フェデクキン スタッス
(72)【発明者】
【氏名】カウヴァー ローレンス エム.
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0009177(US,A1)
【文献】特表2000-512136(JP,A)
【文献】特表2007-505033(JP,A)
【文献】JOURNAL OF VIROLOGY,2010年,84(2),1148-1157
【文献】Vaccines,2015年,3,829-849
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変異体ペプチドまたはそのペプチド模倣体(peptidemimetic)であって、以下:
(a)アミノ酸残基162、164、166、177、187、192、または193に少なくとも1つのアミノ酸置換を有する、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)Gタンパク質のアミノ酸残基161~197(配列番号1);
(b)アミノ酸残基162、164、または166に少なくとも1つのアミノ酸置換を有する、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)Gタンパク質のアミノ酸残基162~172(配列番号2);
(c)アミノ酸残基177、187、192、または193に少なくとも1つのアミノ酸置換を有する、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)Gタンパク質のアミノ酸残基169~198(配列番号3);
(d)アミノ酸残基162、164、166、177、187、192、または193に少なくとも1つのアミノ酸置換を有する、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)Gタンパク質のアミノ酸残基157~197(配列番号4);
(e)アミノ酸残基162、164、166、177、187、192、または193に少なくとも1つのアミノ酸置換を有する、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)Gタンパク質のアミノ酸残基148~197(配列番号5);または
(f)アミノ酸残基162、164、166、177、または187に少なくとも1つのアミノ酸置換を有する、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)Gタンパク質のアミノ酸残基161~191(配列番号6)
を含み、
ここで残基187、192、および193における
いずれの置換
も、リジン置換のためのグルタミン酸を含み、
残基164におけるいずれの置換も、ヒスチジン置換のためのチロシンを含み、
残基166におけるいずれの置換も、グルタミン酸置換のためのリジンを含み、
残基177におけるいずれの置換も、セリン置換のためのトリプトファンまたはアルギニンのいずれかを含み、
そしてここで前記ペプチドの変異体またはペプチド模倣体は、(i)配列番号1~6を含むそれぞれの未改変ペプチドと比較して、CX3CR1(フラクタルカインに応答するケモカイン受容体)の減少した活性を有し、(ii)mAb 3D3および/もしくは2D10および/もしくは3G12と免疫反応性であり、かつ(iii)mAb 3D3および/もしくは2D10および/もしくは3G12への結合時にその天然の立体構造を保持するように化学的に安定化されている、前記変異体ペプチドまたはそのペプチド模倣体。
【請求項2】
前記ウイルスのA株とB株との間で保存されているRSV Gタンパク質のエピトープと免疫反応性のサブnM親和性抗体を誘発する、請求項1に記載の変異体ペプチドまたはそのペプチド模倣体。
【請求項3】
(a)~(f)における置換されたアミノ酸が、未置換のアミノ酸とは異なる電荷を有する、請求項1に記載の変異体ペプチドまたはそのペプチド模倣体。
【請求項4】
(a)~(f)における置換されたアミノ酸が、未置換のアミノ酸とは異なるサイズまたは形状を有する、請求項1に記載の変異体ペプチドまたはそのペプチド模倣体。
【請求項5】
(a)~(f)における置換されたアミノ酸が、未置換のアミノ酸とは異なる側鎖を有する、請求項1に記載の変異体ペプチドまたはそのペプチド模倣体。
【請求項6】
(a)および(c)~(f)において提供される少なくとも1つの置換が、
アミノ酸位置177のセリンについてのトリプトファンを含む、請求項1に記載の変異体ペプチドまたはそのペプチド模倣体。
【請求項7】
(a)および(c)~(f)において提供される少なくとも1つの置換が、
アミノ酸位置177のセリンについてのアルギニンを含む、請求項1に記載の変異体ペプチドまたはそのペプチド模倣体。
【請求項8】
(a)および(c)~(f)において提供される少なくとも1つの置換が、アミノ酸位置192および193のリジンについてのグルタミン酸を含む、請求項1に記載の変異体ペプチドまたはそのペプチド模倣体。
【請求項9】
請求項1に記載の変異体ペプチドまたはそのペプチド模倣体を活性物質として含む、医薬
またはワクチン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年10月13日に出願された米国特許出願第62/572,271号、2017年11月17日に出願された米国特許出願第62/588,022号、および2018年2月22日に出願された米国特許出願第62/633,999号の利益を主張する。上記の特許出願の内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
配列表の参照による援用
本出願は、電子形式の配列表とともに出願されている。配列表は、2018年10月12日に作成され、サイズが17,500バイトで、388512013700SeqListというタイトルのファイルとして提供される。配列表の電子形式の情報は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
一般に、本発明の分野は感染症の治療である。より具体的には、この分野は呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染の予防および治療である。高分解能構造解析によって定義された広域中和モノクローナル抗体のエピトープは、最適化された免疫原の設計および治療法の発見のためのスクリーニング手段を可能にする。さらに、この分野は、呼吸器合胞体ウイルスの模倣による欠陥宿主免疫機能の治療を含む。
【背景技術】
【0003】
RSVは11のタンパク質をコードする10の遺伝子を持つマイナス鎖RNAウイルスであり、一部には感染が強い免疫を与えないため、60年以上にわたって効果的な管理を難しくした{Broadbent,L.et al.Influenza Other Respir Viruses(2015)9:169-78}。これまで、いくつかの実質的な試みにもかかわらず、ワクチンは承認されていない{Jorquera,P.A.and Tripp,R.A.Expert Rev Respir Med(2017)11(8):609-615}。米国では乳児の50%超が生後1年間に感染し、ほぼ5%が入院を必要とする{American Academy of Pediatrics Committee on Infectious Diseases,American Academy of Pediatrics Bronchiolitis Guidelines.Pediatrics(2014)134:e620-38}。乳児期の重度のRSV疾患は、小児喘息様症状の確証された危険因子である{Gelfand,E.W.Curr Opin Immunol(2012)24(6):713-9}。RSV感染に利用可能なのは支持療法のみである。ヒト化マウスmAb(パリビズマブ、Synagis(登録商標)としてMedlmmuneより市販されている)を用いた予防は、早産児(妊娠期間29週未満)が焦点となっており、罹患率を減少させるが死亡率は減少しない高価な治療法である{Meissner,H.C.and Kimberlin,D.W.Pediatrics(2013)132:915-8}。パリビズマブは、感染後の治療には安全および有効であることが示されていない{Malley,R.et al.J Infect Dis(1998)178:1555-61}。幼児におけるRSV感染の世界的な発生率は、米国以外では十分な報告がないが、死亡率が高く、米国の2倍であると考えられている{Nair,H.et al.Lancet(2010)375(9725):1545-1555}。さらに、高齢者で治療された急性呼吸器疾患の最大12%がRSV感染に起因し、これらの症例の6~8%が致命的である。入院は3~6日続き、かなりの割合が集中治療室に入る{Colosia,A.D.,et al.PLoS ONE(2017)12(8):e0182321}。RSV感染症は免疫不全患者にもよく見られ、死亡率が25%を超える{Shah,D.P.,et al.Blood(2014)123(21):3263-3268}。
【0004】
RSVには2つの主要な表面糖タンパク質、FとGがある。RSVに対する唯一の市販mAb(Synagis(登録商標)、上に記載)は、未熟児における予防的使用のみが承認されており、Fタンパク質を対象としている。このmAbは、株間でFタンパク質の配列が保存されているため、幅広く有用である。対照的に、Gタンパク質は、配列の中央の領域は高度に保存されているものの、全体的にはかなり可変的である。RSVの2つのサブタイプであるAとBは、約1~2年の間隔で交互に流行し、世界中で同等の発生率を示す。
【0005】
ホルマリン不活化RSVを用いたワクチン接種によるRSVの予防の最初の試みは逆効果であることが判明し、疾患の促進および肺好酸球増多症につながった{Kim,H.W.,et al.Am J Epidemiol(1969)89:422-434}。米国特許第8,173,131号は、RSV感染の予防および治療のための、RSV Gタンパク質のCX3Cケモカインモチーフを含む組成物を開示しており、共に干渉剤として関連する受容体を拘束することでRSV感染を調節し、または免疫を誘導する。このモチーフは、RSVがうまく感染するために必要である{Jeong,K.I.,et al.PLoS One(2015)10(6):e0130517}。米国特許第8,846,056号は、ワクチン成分としてRSV Gタンパク質からの免疫原性ペプチドを開示しており、具体的には残基164~176または155~206を含む。米国特許第9,321,830号は、RSV感染の治療に有用なmAbを開示しており、残基167~176を含む領域におけるRSVのGタンパク質の保存された線形配列に結合する。これらの抗体は天然のヒト免疫レパートリーに由来するため、ヒトの対象に投与した場合、免疫原性は最小であると予想される。細胞質ドメインと膜貫通ドメイン領域の一部を排除するコドン48での選択的翻訳開始部位の使用により、RSV Gタンパク質の約15%が分泌される{Hendricks,D.A.,et al.J Virol(1988)62:2228-33}。この開始部位を削除すると、病原性が大幅に低下する{Stobart,C.C.,et al.Nat Commun(2016)7:13916}、{Arnold,R.,et al.Virology(2004)330:384-397}。可溶性因子を中和するためには抗原に対する高い親和性が必要であるため、これは重要であり{Tabrizi,M.,et al.AAPS J(2010)12:33-43}、それゆえ、米国特許第9,321,830号に開示されている低pMの親和性を有するmAbが有利である。
【0006】
Collarini,E.J.,et al.J Immunol(2009)183:6338-45は、RSV Gタンパク質の中央保存領域(CCR)に結合する高親和性の広域中和mAb、ならびに3D3(1.1pM)、2B11(10pM)、3G12(580pM)、5D8(4.4nM)を含むさまざまな親和性を持つ抗体を記載している。これらのmAbによって定義されるエピトープは特に興味深く、それはヒト抗体が有効性の観点から(健康なドナーからクローン化されている)および安全性の観点から(非特異的な反応性により毒性を生じる可能性が低い)の両方で特に好ましいためである。mAb 3D3は、インビトロおよびげっ歯類モデルの両方で広域中和活性を示した。短い線状ペプチドのレベルで定義された3D3のエピトープは、ほぼすべての出回っている株において高度に保存されている。付加的なmAbである2D10は、線状ペプチドエピトープとしては定義できないものであり、3D3よりは効力が低いものの、インビトロのウイルス中和アッセイで活性を有することから興味深い(米国特許第8,273,354号)。これらの抗体ならびに3G12は、上に記載の有用性を決定する際に使われる。
【0007】
これらの文献および本明細書で引用されたすべての文献の内容は、参照により本明細書に援用される。
【0008】
RSV AおよびBサブタイプの両方のGタンパク質の中央領域(残基131~230)を含む組換え融合タンパク質は、マウスにおいて効果的な免疫原であることが示された{Lee,J.Y.and Chang,J.PLoS One(2017)12:e0175384}。Gタンパク質ペプチド残基148~198は、DMSOおよびPBS中で乳化され、免疫原としてマウスでも試験がなされ、感染を中和し、CX3CR1へのGタンパク質の結合をブロックし、抗体の誘導に効果的であることが分かった{Choi,Y.,et al.Viral Immunol(2012)25(3):193-203}。同様に、Gタンパク質残基169~198を組み込んだナノ粒子によるワクチン接種は、RSVに暴露したマウスで防御を誘導した{Jorquera,P.A.,et al.PLoS One(2013)8:e74905}。この領域からのペプチドの精密な最適化も試みられ、残基182~186のGタンパク質に1つの余分な残基の挿入により、宿主の免疫応答に対するGタンパク質の有害な影響が大幅に減少した{Boyoglu-Barnum,S.,et al.J Virol(2017)91(10)pii:e02059-16}。
【0009】
これらの結果は有望であるが、RSV Gタンパク質ワクチンは承認されていない。他の多くのウイルスとは異なり、このウイルスは一般的に繰り返し感染する。Gタンパク質の免疫抑制的な性質がこの効果の原因である可能性がある。さらなる改善に役立つ免疫原の品質を定義する基準には、多様なヒト集団にわたる応答の均一性(力価および親和性)、安定性(効果的な冷蔵によるサプライチェーンがない国での使用に特に重要)、特異性(すべての出回っている株に対して有効)、安全性(特に、CX3Cケモカイン受容体に対する有害な薬理活性の欠如)、および応答期間が含まれる。改良されたワクチン成分の設計は本発明の態様の1つであり、究極的にはGタンパク質の立体構造エピトープと既知の親和性の抗体との相互作用に基づく。
【0010】
RSV感染および疾患におけるRSV Gタンパク質の重要な役割にもかかわらず、このタンパク質の構造情報はほとんど報告されていない。16アミノ酸のRSVGシステインヌースのNMRの溶液構造のみが決定されている{Sugawara,M.,et al.J Pept Res(2002)60:271-282}。
【発明の概要】
【0011】
mAbs 3D3、2D10、および3G12と複合体を形成したGタンパク質のCCRからのペプチドの構造は、X線結晶解析によって高解像度で決定され、RSVGの重要な機能領域を含むアミノ酸161-197(配列番号1)がG糖タンパク質の頂点に位置し、抗体結合にアクセスできることが確立された。
【0012】
本発明は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)からのGタンパク質上のエピトープに関連した組成物に関し、宿主細胞因子と相互作用することが知られているGタンパク質の保存された中央領域(CCR)に由来するペプチドに結合した高親和性広域中和モノクローナル抗体(mAb)の結晶学的研究により明らかにされた。これらの組成物には、CX3C受容体(CX3CR1)を含む宿主細胞因子と相互作用することが知られている領域をも含むGタンパク質の中央保存領域(CCR)の特異的に一部を模倣するペプチドやその他の結合部分が含まれる。より具体的には、RSV Gタンパク質は、N末端サイトゾル領域、膜貫通領域、および非グリコシル化中央保存領域(CCR)で区切られた2つのムチン様ドメインからなる可変外部ドメインとして構成されている。CCRは、アミノ酸176~182のシスチンループとCX3Cケモカインモチーフ(アミノ酸182~186)をさらに含むアミノ酸173~186の間のジスルフィド結合によって形成されるシステインヌースを形成する4つのシステイン残基を含む。この領域のエピトープに由来する特異的なペプチドまたはペプチド模倣体は、免疫原として、またはRSVを中和することができる結合剤を発見するためのツールとして使用することができる。本発明はまた、薬理活性を最小化しながら免疫原性を強調する、またはその逆のエピトープ模倣体を含む。
【0013】
Gタンパク質ワクチンの有害な薬理活性は、CX3CR1との相互作用であり、炎症などの望ましくない副作用を引き起こす。したがって、機能的なCX3CR1結合部位を含むペプチドベースのワクチンは、この望ましくない結果を刺激する可能性がある。以下に示すように、Gタンパク質と高親和性抗体が相互作用している3次元構造により、CCRの保存された残基が同定でき、CX3CR1結合部位を不活化するように改変して、ワクチンの免疫原性を損なうことなくこの効果を減少または消失させることができる。本明細書中で使用される場合、「改変されたペプチド」および「変異体」は、互換的に使用される。
【0014】
したがって、一態様では、本発明は、免疫原性であるがCX3CR1を活性化する能力を欠く、CCRの全部または一部を含むGタンパク質またはペプチドの変異体に関する。これらの変異体は、Gタンパク質のCCR内に含まれ、高親和性抗体の結合に関与しないアミノ酸を同定することで、およびそれらを形状またはサイズまたは電荷が異なる側鎖を持つアミノ酸に置換することで、したがってペプチドまたはタンパク質の免疫原性を妨げることなくRSVG変異体が受容体に結合するのを阻害することで、設計することができる。特に、本発明は、RSV Gタンパク質の162、164、166、177、187、および/または193位の少なくとも1つのアミノ酸置換を含むペプチド(全長RSV Gタンパク質を含む)、および野生型RSV Gタンパク質と比較して走化性活性が低下したペプチドに関する。
【0015】
別の態様では、本発明は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)Gタンパク質の残基161~197のアミノ酸配列(配列番号1)、または位置162~172の(配列番号2)、または位置169~198の(配列番号3)、または位置157~197の(配列番号4)、または位置148~197の(配列番号5)、または位置161~195の(配列番号6)アミノ酸配列を有し、抗体への結合時に示される立体構造を保持するようにそれぞれ化学的に安定化されたペプチドに関する。
【0016】
代替免疫原は、少なくとも2つの共有結合で連結した成分を含む分子であって、前記成分は、配列番号2のアミノ酸配列および/または配列番号3のアミノ酸配列のペプチドであるか、または前記成分のそれぞれは、配列番号2および/または配列番号3の対応する変異体またはペプチド模倣体である。
【0017】
結合部分である可溶性RSVG抗原またはペプチドを模倣するものなどの本発明のペプチドの実施形態は、組換えにより調製することができる。したがって、抗原を模倣するペプチドが簡単に生成され、免疫原性を低減または強化したり、CX3CR1受容体の活性化または阻害を提供したりできるCCR内のバリアントを同定するための包括的な変異分析を促進する。
【0018】
別の態様では、本発明は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5または配列番号6のペプチドの変異体またはペプチド模倣体を提供し、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5または配列番号6のそれぞれのペプチドと比較して免疫原性が強化されており、前記変異体の立体構造が化学的に安定化されている実施形態を含んでいる。
【0019】
一部の用途では、免疫原性の低下が有利であり、したがって本発明は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5または配列番号6のペプチドの変異体またはペプチド模倣体も含み、それは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5または配列番号6のそれぞれのペプチドと比較して免疫原性が低下しており、前記変異体の立体構造が化学的に安定化されている実施形態を含んでいる。
【0020】
CX3CR1受容体を阻害または活性化するが、免疫原性が低い薬剤は、一般的に免疫応答を増強または抑制する(RSV感染に関係のないものを含む)。したがって、別の態様では、本発明は、配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、または配列番号6のペプチドの変異体またはペプチド模倣体に関するものであり、それはフラクタルカインに応答するケモカイン受容体CX3CR1を刺激または阻害し、特に、この変異体またはペプチド模倣体は、配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5または配列番号6のそれぞれのペプチドと比較して免疫原性が低下している。宿主ケモカイン受容体CX3CR1の候補部分の好適なインビトロ機能分析相互作用も開示されている。
【0021】
また、開示された立体構造エピトープに対するペプチド模倣体および変異体ペプチドバリアントなどの試験化合物の忠実度を評価する方法も開示されている。その方法は、天然タンパク質に対して親和性が異なるmAbに対するペプチド模倣体または変異体の相対的結合強度を測定することを含む。天然タンパク質に対して高い親和性でmAbに優先的に結合する薬剤は、弱い親和性でmAbに優先的に結合する薬剤または最適なmAbに対して弱い親和性を持つ薬剤よりも、そのような抗体を誘導し易い。
【0022】
したがって、本発明の別の態様は、ワクチンに有用な免疫原を同定する方法であり、その方法は候補分子をmAb 3D3、mAb 2D10またはmAb 3G12またはその抗原結合フラグメント、および低親和性でRSV Gタンパク質と結合する少なくとも1つの結合部分と接触させることを含み、それによって3D3、mAb 2D10、またはmAb 3G12と優先的に結合する候補分子が、前記の望ましい特性を有する免疫原として同定される。本発明は、こうして同定された分子も含み、それは小分子またはペプチドのコンビナトリアルライブラリーのアプタマーまたはメンバーであり得る。
【0023】
さらに別の態様では、立体構造エピトープ模倣体は、組換えペプチドであれペプチド模倣体であれ、既知の広域中和mAbと同様な活性を有する非免疫グロブリン結合部分の均質な組成物の発見に有用なツールを提供する。したがって、本発明は、RSV Gタンパク質の保存領域に対する株非依存性で高親和性な特性および中和活性の特性を有する結合部分を同定する方法を含み、その方法は、候補結合部分を立体構造的に拘束された形態の
図2A~Cに示される配列番号1~6のいずれか1つのアミノ酸配列を有するペプチドまたは前記拘束形態のペプチド模倣体と接触させることと、前記候補結合部分と前記ペプチドまたはペプチド模倣体との間の複合体の存在または不在を検出することとを含み、前記ペプチドまたはペプチド模倣体に対する候補結合部分の結合親和性が少なくとも100pM程度の強さを示す前記複合体の存在により前記結合部分が前記特徴を有すると同定される。本発明はまた、このようにして同定された結合部分を含む。
【0024】
本発明はさらに、対象におけるRSV感染に関して予防的または治療的処置を提供する方法を含み、その方法は、本発明の免疫原または結合部分を含む医薬または動物用組成物をそのような処置を必要とする対象に投与することを含む。本発明はまた、免疫介在性炎症性疾患、慢性疼痛および末梢神経障害を治療する方法を含み、その方法は、C3XC受容体と相互作用する本発明のそのような治療化合物を必要とする対象に投与することを含む。これらもまた、医薬または動物用組成物に含まれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】RSV Gタンパク質およびその中央保存領域(CCR)を示す。パネルAは、ヘパリン結合ドメインの前にあり、RSV Gタンパク質の折り返し構造の先端にあるCCRの突出した位置の図である。CCR構造[残基161~190]がパネルBに高解像度で示され、点線が構造内の非共有相互作用を示し、領域のNおよびC末端が示されている。
【
図2】RSV Gタンパク質のCCRにおけるmAb 3D3、2D10、および3G12の接触領域を示す。パネルAは、空間充填モデルとしてのCCRの正面図および背面図を示し、黒色の領域はmAb接触領域である。パネルBは、mAb 3D3および2D10の可変ドメインをリボンモデルとして、RSVGのCCRを空間充填モデルとして示す。パネルCは、mAb 3G12の可変ドメインをリボンモデルとして、RSVGのCCRを空間充填モデルとして示す。パネルBおよびCでは、CCRはシステインヌース残基に整列されている。mAb 3D3と3G12は多くの同じアミノ酸と結合するが、各構造におけるCCRの立体構造が異なるため、3次元エピトープは非常に異なっている。
【
図3】CX3Cケモカイン受容体1の天然リガンドであるフラクタルカインの構造を示す。パネルAは、フラクタルカインが受容体に結合している方向を示す。パネルBは、フラクタルカインを示し、CX3Cモチーフを黒色とした。パネルCは、RSV Gタンパク質[残基161~190]の一部を示し、CX3Cモチーフを黒色とした。
【
図4】RSV GのCCR(161~197、配列番号1)を示す。
図4Aは、CX3CR1の結合と活性化に役割を果たす可能性のある高度に保存されたアミノ酸を示す配列ロゴである(各残基の単一アミノ酸の略語の高さは、保存の程度に比例する)。CX3Cモチーフの位置は下線で示され、その部位は配列において高度に保存されていないことが分かるが、3次元構造の決定において重要な役割を果たす。
図4Bは、mAb 3D3と2D10によって結合された領域の高倍率図である。mAbエピトープの外側の保存されたアミノ酸は、変異誘発のために選択される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
RSV Gタンパク質の保存された中央領域(CCR)に由来する高親和性広域中和モノクローナル抗体(mAb)とペプチドの相互作用について、初めて高解像度の構造データが得られた。これらの結果は、他のウイルスで示されているように、免疫原の合理的なエンジニアリングの基盤を提供する{Sharon,J.,et al.Immunology(2014)142(1):1-23}。新規構造は、ヘリックス、ジスルフィド結合、および不連続なアミノ酸の間の極性および疎水性相互作用を含む、RSVGのCCR上の2つの隣接する立体構造エピトープを定義する。これらの結果は、線状RSVGエピトープペプチドとミスフォールドしたRSVGがなぜ抗原として十分に効果的でない可能性があるのかを明らかにし、例えば、組換えタンパク質ワクチン(BBG2Na)を用いてGタンパク質のCCRを標的とする初期の試みでは、健康な若年成人に中和抗体を誘導する適度な能力しか示さず、組換えGタンパク質を使用した最近の試みでも、高齢者において有効性を確立することができなかった{Rezaee,F.,et al.Curr Opin Virol(2017)24:70-78}。RSVG構造への配列保存のマッピングは、高度に保存されているRSV表面上の大きな3次元領域を明確にする。
【0027】
開示されたペプチドまたは変異体のこれらの立体構造の特徴は、化学的架橋剤または非天然アミノ酸の使用によって安定化することができる{Robinson,J.A.J Pept Sci(2013)19(3):127-40}。
【0028】
実施例5に示されるように、RSVG[162~172](配列番号2)と複合体化したFab 3D3は、2.40Åの分解能で決定された。RSVG[162~172]ペプチドは、短いヘリックスを有し、重鎖相補性決定領域(CDR)1、2、と3と軽鎖CDR1と3によって形成された約700Å2の溝に、Phe163、Phe165、Phe168、Phe170およびPro172を含むいくつかの疎水性残基を突出させる。驚いたことに、拡張重鎖CDR3の遠位の6アミノ酸は、線状エピトープペプチドとの分子接触を形成していなかった。RSVGの大きなフラグメント(RSVG[161~197])(配列番号1)が大腸菌で産生され、その複合体の構造が2.40Åの解像度で決定された。3D3との付加的な相互作用には、重鎖CDR3とRSVGシステインヌース(残基173~186)との接触、および重鎖CDR1および2とRSVG残基189~190の間の付加的な相互作用が含まれた。要するに、3D3はRSVGと不連続に、抗原部位γ1と命名された約1060Å2で構成される立体構造エピトープに結合する。
【0029】
mAb2D10はRSVGにも結合するが、そのエピトープは線形エピトープマッピングでは特徴付けられなかった。2D10の組換え単鎖可変フラグメント(scFv)は、合成RSVGペプチド(RSVG[169-198]配列番号3)と安定した複合体を形成し、実施例5に示すように、複合体の結晶構造は1.56Å解像度で決定された。mAb2D10は、ねじれた重鎖CDR3、重鎖CDR2、および軽鎖CDR3を用いて、RSVGシステインヌースの~550Å2のエピトープに結合する。システインヌースの短いヘリックスを形成するCX3Cケモカインモチーフは、2D10結合によって埋められる。2D10エピトープは主に残基177~188で構成され、したがって技術的には連続しているが、システインヌースは、抗原部位γ2と命名されたこのエピトープに強い立体構造特性を誘導する2つのネストされたジスルフィド結合を構成する。
【0030】
これらの研究に使用される3つのペプチドの3次元立体構造は、ほぼ同じように重なる。RSVG配列の多様なセットを使用して、保存レベルをこのコンセンサスRSVG構造にマッピングした。全長RSVG(サブタイプRSV AとBの間で53%の相同性)の全体的に高い可変性にもかかわらず、37アミノ酸フラグメントRSVG[161~197]は24の不変残基を含む(サブタイプRSV AとBの間で70%の相同性)。特に、CX3Cモチーフでは、3つの「X」アミノ酸の1つであるIle185のみが高度に保存されており、このモチーフだけではCX3CR1結合部位を構成しないが、CX3Cモチーフの不変システインは、全領域にわたって広範な原子相互作用を形成する高度に保存されたアミノ酸の3次元表面を安定化する。本発明の多くの態様は、これらの発見に由来する。
定義
本明細書で別段定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0031】
「タンパク質」、「ペプチド」および「ポリペプチド」は互換的に使用され、鎖の長さに関係なく組換え法によって合成できるようにアミド結合を介して結合された天然アミノ酸の鎖を指す。「ペプチド模倣体」は、DおよびL異性体を含む非天然または合成アミノ酸、ならびにアミド結合または他の結合、例えばエステル、エーテルなど、によって連結されたアミノ酸類似体を含む。「ペプチド模倣体」は、例えばアプタマーを含むペプチドと明らかな類似性のない有機分子も含む。
【0032】
本明細書で使用される場合、「結合部分」は、以下に記載されるような抗体および代替の非免疫グロブリン結合部分を含む。「抗体」には、従来の抗体の免疫反応性フラグメント、およびFab、F(abab2、Fvフラグメント、一部またはすべての定常領域を有さず重鎖と軽鎖の可変領域が直接結合された単鎖抗体など、免疫特異性を依然として保持するさまざまな断片化された形態を含む。「抗体」には、1つの抗体源に由来する重鎖と軽鎖のペア、および異なる抗体源に由来する重鎖と軽鎖のペアを含む二重特異性抗体も含まれる。同様に、軽鎖はしばしば特異性を破壊することなく交換可能であるため、抗体の特異性を決定する重鎖可変領域から構成される抗体は、異種軽鎖可変領域と組み合わせることができる。例えば、異なる種に由来する定常領域および可変領域を有するキメラ抗体も含まれる。
【0033】
mAbの可変領域の場合、よく知られているように、重要なアミノ酸配列はフレームワーク上に配置されたCDR配列であり、そのフレームワークは特異性に影響を与えたり、親和性を許容できないレベルに低下させたりすることなく変えられる。これらのCDR領域の定義は、当該技術分野で既知の方法により達成される。具体的には、関連するCDR領域を同定するのに最も一般的に使用される方法は、Wu,T.T.,et al.,J Exp Med(1970)132:211-250、および書籍ではKabat,E.A.,et al.(1983)Sequence of Proteins of Immunological Interest,Bethesda,National Institute of Health,323pagesの方法である。別の同様の一般的に使用されている方法はChothiaの方法であり、Chothia,C., et al.,J Mol Biol(1987)196:901-917およびChothia,C.,et al.,Nature(1989)342:877-883において発表されている。追加の改変は、Abhinandan,K.R.,et al.,Mol Immunol(2008)45:3832-3839によって提案されている。本明細書に記載されるmAbは、これらのシステムまたは当技術分野で知られている他の認められたシステムのいずれかによって定義されるCDR領域を含む。
【0034】
mAbの結合の特異性は、記載されているように、主に重鎖のCDR領域によって定義されるが、軽鎖の特異性によっても補完される(軽鎖はいくらか交換可能である)。したがって、本発明のmAbは、重鎖の3つのCDR領域、および任意選択的にそれに適合する軽鎖の3つのCDRを含み得る。結合親和性は、CDRがフレームワーク上に配置される方法によっても決定されるため、mAbには、3つの関連するCDRを含む重鎖の完全な可変領域と、場合により、当の重鎖を補完する軽鎖に関連した3つのCDRを含む完全な軽鎖可変領域が含まれ得る。これは、単一のエピトープに対して免疫特異的であるmAb、ならびに2つの別々のエピトープに結合できる二重特異性抗体または結合部分に対して当てはまる。
【0035】
本発明はまた、mAbの結合特性を模倣する結合部分も含む。mAb模倣体には、アプタマー{Yu,Y.,et al.Int J Mol Sci(2016)17(3):358}およびキャメリド、アンチカリン、アンキリン反復タンパク質のような抗体またはそのフラグメント(代替足場)のタンパク質模倣体が含まれる{Azhar,A.,et al.Int J Biol Macromol(2017)102:630-641}。
【0036】
二重特異性結合部分は、異なる特異性を有する2つの異なる結合部分を共有結合で架橋することによって形成され得る。現在、2つの別個の抗体(二重特異性抗体)からの抗原特異性ドメインを組み込んだ単一の抗体様分子を作製するための複数の技術が存在する。好適な技術は、MacroGenics(メリーランド州、ロックビル)、Micromet(メリーランド州、ベセスダ)およびMerrimac(マサチューセッツ州、ケンブリッジ)によって記載されている。(例えば、Orcutt,K.D.,et al.,Protein Eng Des Sel(2010)23:221-228、Fitzgerald,J.,et al.,MAbs(2011)1:3、Baeuerle,P.A.,et al.,Cancer Res(2009)69:4941-4944を参照).例えば、1つの単一特異性mAbに由来する重鎖および任意選択的に軽鎖のCDR領域は、任意の好適な連結手段を介して、重鎖配列のおよび任意選択的に第2のmAbの軽鎖のCDR領域を含むペプチドに架橋され得る。架橋がアミノ酸配列を介する場合、二重特異性結合部分を組換えにより生成することができ、二重特異性実体全体をコードする核酸が組換えにより発現される。単一の特異性を有する結合部分の場合と同様に、本発明は、二重特異性抗体またはCDR領域を実際に含む結合エンティティ/結合部分と同じエピトープの一方または両方に結合する結合部分の可能性も含む。本発明はさらに、完全な重鎖および軽鎖配列または完全な重鎖配列および少なくとも軽鎖のCDRまたは重鎖のCDRおよび軽鎖の完全な配列を含む二重特異性構築物を含む。
【0037】
特に、本発明は、変異体またはペプチド模倣体に関するものであり、そのペプチドは呼吸器合胞体ウイルス(RSV)Gタンパク質の残基161~197(配列番号1)のアミノ酸配列、または位置169~198の(配列番号3)、もしくは位置157~197の(配列番号4)、もしくは位置148~197の(配列番号5)、もしくは位置161~195の(配列番号6)アミノ酸配列であり、配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5または配列番号6のそれぞれのペプチドと比較して、フラクタルカインに応答するケモカイン受容体の活性化に関して活性が減少したものであり、mAb 3D3、および/もしくは2D10および/もしくは3G12と結合し、ならびに/または前記変異体またはペプチド模倣体がRSV Gタンパク質に対して免疫反応性の抗体を誘発する。いくつかの実施形態では、誘発された抗体は、ウイルスのA株とB株の間で保存されているRSV Gタンパク質のエピトープに対してnM未満の親和性を有する。
【0038】
いくつかの実施形態では、ペプチド模倣体またはペプチドは、抗体への結合時に示される立体構造を保持するために化学的に安定化され、および/またはRSV Gタンパク質のアミノ酸162、164、166、177、187、192および/または193の少なくとも1つの置換を含む。
【0039】
別の実施形態では、本発明は、配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、または配列番号6のペプチドの変異体またはペプチド模倣体を含み、それは配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、または配列番号6のそれぞれのペプチドと比較して、フラクタルカインに対するケモカイン受容体応答性を刺激または阻害する。いくつかの実施形態では、変異体またはペプチド模倣体は、配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、または配列番号6のそれぞれのペプチドと比較して、免疫原性が低下している。
組換えの態様
本発明の任意のタンパク質またはペプチドは、既知の技術を使用して組換えにより生成され得る。本発明はまた、それらをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子、ならびにこれらのヌクレオチド配列を含むベクターまたは発現システム、これらのヌクレオチド配列の発現のための発現システムまたはベクターを含む細胞、ならびにこれらの細胞を培養することおよび産生された結合部分を回収することによりペプチドを生成する方法を含む。原核生物、酵母、哺乳動物細胞、昆虫細胞および植物細胞を含む、組換え法で典型的に使用される任意のタイプの細胞を使用することができる。関連するペプチドをコードする1つ以上の組換え分子で形質転換されたヒト細胞(例えば、筋細胞またはリンパ球)も含まれる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「a」または「an」は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味する。
CX3Cケモカインモチーフに基づく活性
全体として可変であるが、RSVG(298残基)には、グリコシル化されない高度に保存された約40アミノ酸の中央保存領域(CCR)が含まれており、ウイルス感染とウイルス病原性の両方で重要な役割を果たすことが示されている。具体的には、RSVGのCCRには、CX3Cケモカインモチーフが含まれ、これがヒトケモカイン受容体CX3CR1への結合を促進し、ヒト気道上皮細胞でのRSV感染を促進するだけでなく、CX3CR1+免疫細胞の輸送に影響するシグナル伝達を調節して気道の鬱血を引き起こす。例えば、RSV Gタンパク質のCCDに対するmAbによる治療は、接種5日後のアイソタイプのコントロール処理マウスと比較して、肺白血球の総数の減少と関連していたが、抗F mAb(Synagis)による治療はBAL細胞の総数を減少しなかった{Caidi,H.,et al.Antiviral Research(2018)154:149-157}。
【0041】
図3に示すように、CX3Cモチーフとその2つのジスルフィド結合の存在を除けば、RSVGとCX3CR1の唯一の既知のリガンドであるフラクタルカイン/CX3CL1との間に構造または配列における類似性はない。本発明の別の態様では、同様の機能にもかかわらず、この構造的相違は、この相互作用を選択的に遮断する治療法を開発する機会を提供するものであり、HIV共受容体CCR5のアンタゴニストにつながった戦略である{Lieberman-Blum,S.S.,et al.Clinical Therapeutics(2008)30:1228-1250}。CX3CR1の選択的調節が有益である疾患の例には、関節リウマチ{Szekanecz,Z.,et al.Neth J Med(2011)69(9):356-66}および変形性関節症{Wojdasiewicz,P.,et al.Arch Immunol Ther Exp(Warsz)(2014)62(5):395-403}などの免疫介在性炎症性疾患を含む。現在、アテローム性動脈硬化症も炎症性疾患であると考えられており、動物モデルでは、CX3CR1の遮断により疾患の重症度が改善される{Apostolakis,S.and Spandidos,D.Acta Pharmacol Sin.(2013)34(10):1251-6}。ケモカイン一般、特に天然のCX3CR1リガンド(フラクタルカイン)は、慢性疼痛の根底にあると考えられている末梢神経障害にも関与している{Montague,K.and Malcangio,M.J Neurochem(2017)141(4):520-531}。そのモチーフを薬剤として使用するには、反復投与を可能にする低い免疫原性が重要である。したがって、2つの別個の抗体エピトープの脱免疫化は、薬理活性に必要な部位の決定に補完的な有用性を提供する。
【0042】
あるいは、CX3CR1結合モチーフの活性の増強を用いると、この受容体の新規な刺激剤を作ることができる。これは、潰瘍性大腸炎などの疾患の治療に役立つ。マウスでは、CX3CR1は、腸間膜リンパ節への共生細菌の疾患関連移行の予防に関与する。CX3CR1ノックアウトマウスとフラクタルカイン欠損マウスの両方が、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性大腸炎のモデルにおいて細菌の移行の増加と疾患重症度の著しい増加を示した{Medina-Contreras,O.,et al.J Clin Invest(2011)121(12):4787-95}。さらに、CX3CR1は、ベータ細胞機能とインスリン分泌の重要な調節因子であることが示されており{Lee,Y.S.,et al.Cell(2013)153(2):413-425}、したがって、RSV Gタンパク質の薬理学的モチーフの模倣は、糖尿病を治療するための治療薬として開発することも可能である。
【0043】
配列番号1~6の安定化形態またはその変異体もしくはペプチド模倣体およびそれらの特別に拘束された形態の能力は、例えば、以下の実施例4に示される走化性アッセイを使用して、CX3C受容体を活性化または阻害する能力について試験することができる。しかしながら、アッセイに好適な任意の方法を使用することもできる。治療に使用する場合、これらの実体が比較的低い免疫原性を有することが有利であり、これも、例えば実施例3に記載のアッセイを使用して試験することができるが、任意の好適な試験を使用することができる。
免疫原
3つの設計目標は、Gタンパク質免疫原の最適化を支配し、それぞれが新しい構造情報によって大幅に促進される。
【0044】
第1に、Gタンパク質の薬理活性は、RSV感染の状況では有害であり、したがって、免疫原における活性を最小限にすることが好ましい。上記のように、この活性はCX3C受容体を中心とし、成功した変異体またはペプチド模倣体は、他のアッセイの中でも、走化性アッセイを使用して評価できる。本発明に記載される結晶学的研究により、ワクチンの第2の望ましい特性である免疫原性特性を保持しながら、その置換がC3XC受容体との相互作用を減少させるのに有用であるアミノ酸の同定が可能になる。具体的には、残基162、164、166、177、および187が、RSV Gタンパク質のCCR領域および/またはC3XCモチーフの一部または隣接のいずれかに存在し、本明細書に記載されている高親和性抗体と特異的に結合する残基の中にはないことが分かった。したがって、これらの残基の1つ以上を、電荷または側鎖のサイズと形状を変える代替物で置き換えると、C3XC受容体との相互作用を妨げるであろう。
【0045】
第二に、高親和性抗体は、ウイルス感染細胞によって産生される有害な可溶性Gタンパク質を中和するために必要であり、ゆえに免疫原によって生成される抗体はこれらの特性を持つ必要がある。親和性は、実施例2に記載されるELISAアッセイを使用して、または当該分野で既知の多くの代替方法の1つを使用して、容易に試験され得る。望ましい親和性と中和特性を持つ抗体を生成する免疫原を試験するために、そのような望ましい特性を示すヒトmAbへの結合が評価される。Collariniら(上記)で開示されているように、低pMから低nMまでの3桁にわたって親和性が異なるmAb:3D3(1.1pM)、2B11(10pM)、3G12(580pM)、5D8(4.4nM)は、このようなアッセイに利用できる。3D3もしくは2B11などの高親和性mAbに十分に結合しない、またはGタンパク質の自然な立体構造に対して低い親和性でmAbによく結合する候補免疫原は、望ましい高親和性mAbの生成を誘導できない可能性が高く、その逆も同じである。
【0046】
第3に、RSVは、ワクチンの配送のための冷蔵サプライチェーンを欠く国を含み世界中で重要な病原体であるため、室温(またはそれ以上)での輸送と保管を可能にする免疫原の安定化も望ましい。他のワクチンで有効な生ウイルスのホルマリン不活化は、最初のそのようなワクチンが後の自然感染時に疾患の悪化を引き起こしたため、RSVでは許容されない{Kim,H.W.,et al.Am J Epidemiol(1969)89:422-34}。
【0047】
この第3の態様、立体構造の安定性に関して、RSVFタンパク質で示されたように、抗体-抗原の高解像度構造データに基づいて選択された変異による構造の安定化の結果、親ウイルスに対してよりも高力価でより均一に広く免疫された対象が得られる{McClellan,J.S.,et al.Science(2013)340(6136):1113-1117}。Gタンパク質のCCRは、合成または組換えのいずれかで作製することができるため、当技術分野で周知の方法を使用して、このペプチドを体系的に変異させることができる。そのような多数のバリアントの評価を容易にするために、インビトロのアッセイが必要である。mAb結合、熱安定性の評価、およびCX3CR1受容体の活性化のための、好適なアッセイが当技術分野で知られている。
【0048】
冷蔵が必要であるという欠点に加えて、免疫原として柔軟なペプチドを使用すると、しばしば折りたたまれたタンパク質の立体構造エピトープに弱く結合する抗体(KDがμM以上)を誘発する。その理由で、立体構造的に拘束された合成エピトープ模倣体は、免疫原の設計において特に興味深く、HIV、C型肝炎、インフルエンザおよびその他への対処を含む例がある{Robinson,J.A.J Pept Sci(2013)19(3):127-40}。
【0049】
非天然モチーフを組み込んだペプチドは、しばしばタンパク質分解に対して非常に耐性があり、これは模倣自体とは無関係な有利な特徴である。小分子(「ハプテン」)の欠点は、それら自体が免疫原性でないことが多く、しかしながら、ウイルスのような粒子に埋め込んで免疫系に提示すると、効果的な免疫原になり得る{Buonaguro,L.,et al.Exp.Rev.Vaccines(2011)10:1569-1583}。
【0050】
特に、RSVのFタンパク質はそのような模倣を受ける。この例では、効果的な模倣体を作るには2つの「ステープル」(架橋)が必要であり、インビトロのHep-2細胞においてRSV感染を阻害するnM効力を示した{Gaillard,V.,et al.Antimicrob Agents Chemother(2017)61(4)pii:e02241-16}。
【0051】
さらに、免疫原の3次元構造を拘束して3D3との高親和性相互作用を保持することは有利であり、簡便なアッセイはELISA結合による。文献で知られている熱安定性のアッセイには、タンパク質がアンフォールドして露出された疎水性部位に結合したときの色素の蛍光増加の観察{Biggar,K.K.,et al.BioTechniques(2012)53:231-238}や円二色性による二次構造特性の観察{Kelly,S.M.and Price,N.C.Biochim Biophys Acta(1997)1338(2):161-185}が含まれる。
【0052】
上記のように、当技術分野では、親和性の異なる抗体を使用した結合活性および中和能力の評価を含む、適した生理活性について候補変異体およびペプチド模倣体を評価する方法が利用可能である。候補変異体およびペプチド模倣体を構築することに関して、本発明により提供される詳細な構造情報は、標的変異誘発により、免疫原性(または候補免疫原を設計するための上記の宿主CX3CR1受容体における薬理活性)に必要な主要な残基を同定することを可能にする。機能を分離するためのそのような「分子解剖」は、製品候補を同定するために非常に有利である。「脱免疫化」(免疫原性の低下)は、外来タンパク質の反復投与を可能にする目的で達成された{Mazor,R.,et al.Oncotarget(2016)7(21):29916-26}。各残基を順番に変異させ、結果を評価し、そのような変異の組み合わることを含む純粋に経験的な方法は、免疫原性に寄与する可能性が最も高い残基および免疫原性を低下させる可能性が最も高い置換を同定するためのコンピュータ解析によって拡張することができる{He,L.and Zhu,J.Curr Opin Virol(2015)11:103-12}。CX3CR1モチーフ内に1つの追加のアミノ酸を挿入すると、薬理活性が低下することが既に知られている{Boyoglu-Barnum,S.,et al.J Virol(2017)91(10)pii:e02059-16}。不活化部位のさらなる決定は、ウイルスの中和につながる免疫原性を保持しながら、この有害な活性の低減を可能にする。
【0053】
本明細書に記載の結晶構造により、RSV Gタンパク質CCRとのmAb境界面の表面形状と相補性が明らかになったが、エネルギー的に重要な相互作用は、構造から直接読み取ることができない。タンパク質-タンパク質境界面の他の例では、特定の残基が「ホットスポット」を構成し、結合エネルギーに不釣り合いに大きく貢献する。これらの特権的な部位は、アラニンスキャニング変異誘発(すなわち、一度に1つの残基をアラニンで置換したバリアントの作製){Robinson,J.A.J Pept Sci(2013)19(3):127-40}で同定することができるが、高解像度構造に基づくと、特定の部位はアラニンではなく異なるアミノ酸で置換されるメリットある。
【0054】
図2に示すように、mAb 3D3、2D10、および3G12は同じ領域に全く異なった結合をする。したがって、各部位の脱免疫化は独立に行うことができる。同じプロセスを使用して、免疫原性を高めることもできる。各部位の免疫原性を最適化すると、3D3部位に最適な免疫原、2D10部位に最適な免疫原、および3G12部位に最適な免疫原を示すものの中の、2つまたは3つのペプチドの融合を含むワクチンが可能になる。そのような免疫原は、単一の免疫原性部位と比較して、ウイルスエスケープに対する耐性の増加を提供しながら、高親和性mAbを誘発することができる。CCRへの2つのmAbの結合(ウイルス表面での同じまたは異なるコピーの分子で)によるアビディティブーストは、多様なヒト集団にわたって、より高い中和能に寄与する。このような複数の抗原ワクチンの前例には、融合前および融合後の立体構造的に安定化された抗原を組み込んだRSVFタンパク質ワクチン{Cimica,V.,et al.Clin Vaccine Immunol(2016)23(6):451-9}およびRSVのA株とB株の両方からの残基131~230を含むGタンパク質ワクチン{Lee,J.Y.and Chang,J.PLoS One(2017)12:e0175384}が含まれる。B細胞応答に加えて、T細胞応答を維持することも新規構造データによって促進され、主要なT細胞エピトープは、残基185~193にマッピングされている{Varga,S.M.,et al.J Immunol(2000)165(11):6487-95}。
【0055】
本発明の重要な態様は、CX3CR1とのGタンパク質の相互作用を遮断するmAbを誘導するための効果的な免疫原であり、その免疫原自体は受容体への結合を欠く。CX3CR1の結合に必要な残基の同定は、主要な免疫原性エピトープの同定に関してバリアントの同じライブラリーを使用して行われるが、実施例4で記載するように、CX3CR1活性化の細胞ベースのアッセイで機能を検定する。mAbエピトープの外側にあるが保存され、CX3CR1結合を低減または排除すると予測されているものなどの追加のバリアントも、この点で有用である。CX3Cモチーフへの余分な残基の挿入などの追加のバリアントも候補となり得る。
代替結合部分の開発
立体構造エピトープ模倣体は、それが組換えペプチドであれ、ペプチド模倣体であれ、アプタマーまたは代替足場などの既知の広域中和mAbと同様の活性を持つ非免疫グロブリン結合部分の均一な組成物の効率的な発見を可能にする。そのような模倣体は、優れた安定性、より低い製造コスト(例えば、哺乳動物細胞ではなく細菌での発現による)、およびより単純な吸入送達のための製剤を提供することができる。(エピトープ模倣体は、追加のmAbの同定にも使用できる)ヒトRSVのエピトープ模倣体のホモロジーモデリングを使用して、ウシRSV感染症の治療など、獣医学の適応症に役立つmAbを生成するための類似したエピトープ模倣体を開発することができる。ウシとヒトのRSV Gタンパク質の間のアミノ酸の相同性は30%しかないが、両方のウイルスのGタンパク質は、高度にグリコシル化された2つの可変ドメインが隣接する中央の保存されたシステインヌース領域を持っているという点で類似した特徴を共有する{Guzman,E.and Taylor,G.Mol Immunol(2015)66(1):48-56}。
【0056】
そのような抗体模倣体のライブラリーは、拮抗実験により評価され、模倣体を使用して、3D3、2D10、または3G12のようなmAbと競合させて、RSV Gタンパク質自体または好ましくは安定した形で立体構造特性を提示するエピトープ模倣体に結合させる。エピトープに対してmAbとうまく競合するそれらの候補は、好適な結合剤として選択される。最適な立体構造への忠実度が異なるエピトープ模倣体への結合に関して候補をランク付けすることにより、さらなる最適化が達成される。エピトープ模倣体の安定化に関して上述したように、エピトープ模倣体の忠実度は、RSV Gタンパク質の同じ一般的な領域に低い親和性で結合する3D3またはmAbなどのmAbの相対的親和性を測定することによって決定することができる。結合剤は、エピトープ模倣体に対してより強い親和性を示し、広域中和活性を持つ既知のmAbへの高い親和性結合を示す場合、優れているとみなされる。
用途
本発明はまた、本発明の結合部分、変異体または他のペプチドまたはペプチド模倣体を活性成分として含む医薬および動物用組成物に関する。組成物は、緩衝液などの生理学的に適合する好適な賦形剤および他の単純な賦形剤を含む。組成物は、追加の活性成分、特に免疫原の場合はワクチンアジュバントとしての免疫系刺激剤も含み得る。医薬または動物用組成物はまた、米国特許第9,718,875号に記載されているmAbの鼻腔内または吸入送達用の製剤を含む、他の製剤賦形剤を含み得る。
【0057】
本発明の結合部分はまた、診断において使用され得る。
【0058】
免疫原は、RSVに対する免疫応答を生じさせる方法で使用され、それらを含む製剤を、妊婦、幼児、高齢者、または免疫不全の対象などのヒトの対象を含む対象に投与することを含む。本発明の結合部分はまた、治療または予防のために使用され得る。RSVに関連する他の動物種における感染症も、本発明の免疫原または結合部分によって予防的または治療的に処置され得る。
【0059】
C3XC受容体を調節する変異体またはペプチド模倣体は、関節リウマチ、変形性関節症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、末梢神経障害に起因する慢性疼痛、潰瘍性大腸炎および炎症性腸疾患などの他の状態を治療する方法で使用される。
実施例1:タンパク質の生成
A.Fab 3D3およびScFv 2D10の生成
組換えmAb 3D3および2D10は、CHO細胞での一過性トランスフェクションおよび固定化プロテインAによる精製によって生成された。これらのmAbのCDRは、米国特許第8,273,354号の
図5Aに開示されており、単鎖Fv配列は、それぞれ配列番号9および10として組換え体生成に使用されるものに含まれる。
【0060】
ただし、Fab 3D3は、組換えによって生成された3D3から、固定化パパインとインキュベーションすることによって生成され、Fcフラグメントを固定化プロテインAで除去した。Fab 3D3は、10mM Tris-HCl pH8.0と150mM NaCl中で、Superdex 200サイズ排除クロマトグラフィーにより精製された。
【0061】
配列番号10に含まれる組換えscFv 2D10の場合、2D10重鎖可変領域、(GGGGS)3GGGリンカー、および2D10軽鎖可変領域をコードするキイロショウジョウバエ用にコドン最適化された合成遺伝子が、pMT-puroにインフレームでクローニングされ、N末端のBiPシグナル配列とC末端のトロンビン切断部位、次いでTwin-Strep精製タグを有する。得られたscFv 2D10発現プラスミドを使用して、安定的にトランスフェクトされたSchneider 2(S2)昆虫細胞を得た。分泌されたscFv 2D10をStrepTrapカラムでアフィニティー精製し、トロンビンプロテアーゼで消化して精製タグを取り除き、10mM Tris-HCl pH8.0と150mM NaCl中、Superdex 200サイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。
B.エピトープの生成
RSVG外部ドメイン(G[ecto])P03423)をコードする合成遺伝子を、N末端TPAシグナル配列とC末端タンデム6ヒスチジンおよびTwin-Strep精製タグを有するpCFにインフレームでクローニングした(残基64~298を含む配列番号7、UniProtKBエントリー)。G[ecto]はCHO細胞における一過性トランスフェクションによって産生され、分泌されたG[ecto]はStrepTrapカラムでアフィニティー精製された。
【0062】
RSVGの残基161~197(G[161-197])(配列番号1、UniProtKBエントリー P03423)をコードする大腸菌用にコドン最適化された合成遺伝子を、C末端6ヒスチジン精製タグ(配列番号8)とともに、pET52bにクローニングした。ペプチドを、大腸菌BL21(DE3)中、18℃で一晩発現させた。次に、細胞を、2μM MgCl2、ベンゾナーゼ、およびプロテアーゼ阻害剤を含む20mM Tris-HCl pH8.0、150mM NaCl、および25mMイミダゾール(緩衝液A)中で、超音波処理によって溶解した。RSVG[161-197]は、HisTrap FFアフィニティークロマトグラフィーによって可溶性溶解物から精製され、緩衝液B(500mMイミダゾールを含む緩衝液A)への勾配で溶出された。類似の方法を使用して、関連ペプチド(G[162-172](配列番号2)およびG[169-198](配列番号3))を生成した。
実施例2:ELISAアッセイ
濃度5μg/mL(合計150μL)の精製mAbを、96ウェルELISAマイクロタイタープレート中、室温で一晩インキュベートした。次に、プレートを、0.05%Tween20を含むPBS(PBST)で3回洗浄した。5%BSAのPBSを150μL加え、室温で1時間インキュベートした後、PBSTで3回洗浄して、ウェルをブロックした。1%BSAのPBS中で、5μg/mLの組換えRSVG[ecto]または20μg/mLのRSVG[161-197]を、1%BSAのPBSで1:3に段階希釈した。ウェルを150μLのRSV Gタンパク質と一緒に室温で1時間インキュベートし、プレートをPBSTで3回洗浄した。次いで、プレートを、1%BSAのPBSで1:5000に希釈した150μLのHRP結合HisProbe(ThermoFisher Scientific)と一緒に室温で1時間インキュベートした。プレートをPBSTで3回洗浄し、ペルオキシダーゼ基質o-フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)を0.05Mリン酸-クエン酸緩衝液pH5.0および1.5%過酸化水素に加えて室温で10分間現像した。反応を、2N硫酸と室温で10分間インキュベーションして停止させ、490nmで吸光度を測定した。ELISA実験は、生物学的トリプリケートで行った。
実施例3:免疫原性の試験
本発明のペプチド、変異体およびペプチド模倣体は、以下の基準を使用してマウスモデルで評価される。
【0063】
【0064】
実施例4:走化性アッセイ
CX3CR1のRSVG調節のためのインビトロアッセイは、ヒト単球THP-1細胞の受容体を介した走化性を測定する{Tripp,R.A.et al.Nature Immunology(2001)2:732-738}。このアッセイでは、組換えRSVG[161-197]は、RSVG外部ドメイン全体と同等のレベルで走化性を誘導し、3D3または2D10または3G12とのプレインキュベーションにより、抗CX3CR1ポリクローナル血清によって提供されるものと同等なレベルで、活性が遮断された。表2は、3D3および2D10に関するこの分析の結果を示す。
【0065】
【0066】
より詳細には、孔径8μmのトランスウェルインサートプレートを使用してアッセイを実施した。約200万対数期のTHP-1細胞(ヒト白血病単球細胞株)を2回洗浄し、無血清RPMI1640培地に懸濁し、インサートプレートの上部チャンバーに加えた。ネガティブコントロールは無血清培地のみで、25nM mAbを含む無血清培地を下部チャンバーに加えた。ポジティブコントロールとして、10%FBSを含む培地を下部チャンバーに加えた。RSVG[ecto]またはRSVG[161-197]サンプルを、無血清培地中、5nMの最終濃度で下部チャンバーに加えた。RSVG[161-197]とmAbを含むサンプルの場合、RSVG[161-197]を5モル濃度過剰のmAbと一緒に室温で20分間プレインキュベートし、下部チャンバーの無血清培地に加え、最終濃度を5nMのRSVG[161-197]および25nMのmAbとした。抗CX3CR1抗体を含むサンプルの場合、2μLの1mg/mL抗CX3CR1ウサギポリクローナル抗体(ThermoFisher Scientific Cat#PA5-19910)を上部チャンバーでTHP-1細胞と30分間インキュベートした後、ウェルに移した。組み立てられたプレートを、CO2インキュベーター内で37℃で5時間インキュベートした。下部チャンバーに遊走した細胞をカウントし、無血清培地のみに向かう細胞遊走に対する化学誘引物質に向かう細胞遊走の倍率増加を比較することにより、走化性指標を決定した。実験は少なくとも4回の生物学的反復で行われた。
実施例5:結晶解析による抗体-エピトープ境界面の決定
Fab 3D3-RSVG[162-172]複合体の形成および構造決定RSVGアミノ酸162~172をコードする実施例1Bの合成ペプチド(UniProtKBエントリーP03423)(配列番号2)を、10mM Tris-HCl pH8.0および150mM NaCl中で17.5mg/mlの実施例1Aの精製Fab 3D3と5モル濃度過剰で混合した。結晶は、23%PEG3350および0.05M酢酸亜鉛のウェル溶液で、4℃でハンギングドロップ蒸気拡散によって成長させた。結晶を、26%PEG3350、0.05M酢酸亜鉛、および25%エチレングリコールの凍結保護溶液に移し、液体窒素で瞬間凍結した。回折データは、Advanced Light Sourceのビームライン8.3.1において、1.11503Åの波長を使用して、極低温で収集された。単結晶の回折データは、iMosflmとAimlessで処理された。Fab 3D3-RSVG[162-172]複合体の構造は、Fabホモロジーモデルとの分子置換およびプログラムPHASERによって解析され、PHENIXとCootをそれぞれ使用して構造が精密化され手動により再構築された。最終的なFab 3D3-RSVG[162-172]複合体の構造(PDBコード5WNB)は、次のラマチャンドラン統計値を有した:96.5%favored,3.5%allowed,0%outliers。
【0067】
Fab 3D3-RSVG[161-197]複合体の形成および構造決定。精製RSVG[161-197]を2モル濃度過剰で精製Fab 3D3と混合し、10mM Tris-HCl pH8.0および150mM NaClで透析し、15mg/mLに濃縮した。結晶は、21%PEG3350および0.2Mクエン酸アンモニウムpH7.0のウェル溶液で、22℃でハンギングドロップ蒸気拡散によって成長させた。結晶を、25%PEG3350、0.2Mクエン酸アンモニウムpH7.0、および25%グリセロールの凍結保護溶液に移し、液体窒素で瞬間凍結した。回折データは、Advanced Light Sourceのビームライン8.3.1において、1.11582Åの波長を使用して、極低温で収集された。回折データは、Advanced Light Sourceのビームライン8.3.1で、1.11503Åの波長を使用して、極低温で収集された。単結晶の回折データは、iMosflmとAimlessで処理された。Fab 3D3-RSVG[161-197]複合体の構造は、Fab 3D3との分子置換およびプログラムPHASERによって解析され、PHENIXとCootをそれぞれ使用して構造が精密化され手動で再構築された。最終的なFab 3D3-RSVG[161-197]複合体の構造(PDBコード5WNA)は、次のラマチャンドラン統計値を有した:97.6%favored,2.4%allowed,0%outliers。
【0068】
scFv 2D10-RSVG[169-198]複合体の形成および構造決定。RSVGアミノ酸169から198(配列番号3)をコードする合成ペプチド(UniProtKBエントリーP03423)を、60mM Tris-HCl pH8.0および230mM NaCl中、2モル濃度過剰で精製scFvと混合し、15.0mg/mLに濃縮した。結晶は、24%PEG4000、0.17M硫酸アンモニウム、0.085Mクエン酸ナトリウム pH5.6、および15%グリセロールのウェル溶液を使用して、22℃でハンギングドロップ蒸気拡散により成長させた。結晶を、28%PEG4000、0.17M硫酸アンモニウム、0.085Mクエン酸ナトリウムpH5.6、および15%グリセロール、および25%グリセロールの凍結保護溶液に移し、液体窒素で瞬間凍結した。回折データは、Advanced Photon Sourceのビームライン23-ID-Dにおいて、1.033Åの波長を使用して、極低温で収集された。単結晶の回折データはHKL2000で処理された。scFv 2D10-RSVG[169-198]複合体の構造は、scFvホモロジーモデルとの分子置換とプログラムPHASERによって解析され、PHENIXとCootをそれぞれ使用して、構造が精密化され手動で再構築された。最終的なscFv 2D10-RSVG[169-198]複合体の構造(PDBコード5WN9)には、次のラマチャンドラン統計値を有した:99.2%favored,0.8%allowed,0%outliers。
【0069】
Fab3G12-RSVG[157-197]複合体の形成および構造決定。精製RSVG[157-197]を2モル濃度過剰で精製Fab3G12と混合し、複合体を10mM Tris-HCl pH8.0および150mM NaCl中、Superdex200サイズ排除カラムで精製した。複合体を15.0mg/mLに濃縮した。結晶は、1.8M硫酸アンモニウムと100mM酢酸ナトリウム三水和物pH4.4のウェル溶液で、22℃でハンギングドロップ蒸気拡散により成長させた。結晶を、2.0M硫酸アンモニウム、100mM酢酸ナトリウム三水和物pH4.4、および25%グリセロールの凍結保護溶液に移し、液体窒素で瞬間凍結した。回折データは、Advanced Light Sourceのビームライン8.3.1において、1.11582Åの波長を使用して、極低温で収集された。単結晶の回折データは、iMosflmとAimlessで処理された。Fab3G12+RSVG157-197 複合体の構造は、分子置換プログラムPHASERによって解析され、PHENIXとCootをそれぞれ使用して、構造が精密化され手動で再構築された。最終的なFab3G12-RSVG[157-197]複合体の構造(PDBコード6MKC)は、次のラマチャンドラン統計値を有した:95.7%favored,4.3%allowed,0%outliers。
【0070】
表3に結晶学的データをまとめる(Protein Data Bankに寄託された構造:www.pdb.org)。
【0071】
【0072】
実施例6:副作用が軽減されたワクチン
図4に示す高親和性抗体2D10および3D3と複合体化したRSVGのCCRタンパク質の構造の決定は、高親和性mAbエピトープを生成する能力を損なうことなく、CX3CR1結合を無効にするRSVG免疫原を設計するためのロードマップを提供する。具体的には、6つの高度に保存されたアミノ酸が同定されており、その側鎖はmAb 3D3および2D10と分子接触しないため、これらのmAbと同様の高親和性mAbの生成に影響を与えることなく置換することができる。したがって、これらの残基は、CX3CR1への結合を妨害するための置換の候補である。一般に、電荷の変化(電荷スイッチ)および/またはサイズまたは形状の変化を与えると、立体障害(立体衝突)が起こり、そのような結合に悪影響が生じると予想される。表4は、RSVGのCCRタンパク質のこれらの残基の代表的な置換の結果を示す。実施例4に記載された走化性アッセイにより測定されるように、6つの代表的な変異体によるCX3CR1機能への影響について試験がなされた。表4は、表示された残基のアミノ酸の標準的な1文字略語を用いて重複アッセイ(標準偏差を使用)の結果をまとめたものである。
【0073】
【0074】
示されるように、これらの変異のそれぞれは、走化性活性の低下を示し、最も効果的であったのは位置177におけるセリンからアルギニンへの置換である。これらの突然変異の組み合わせは、本発明の範囲内に含まれる。
実施例7:エピトープ模倣体の安定化
合成とアッセイのためコンビナトリアルケミストリー手法を活用した化学合成ペプチドテクノロジーは、DNAタグと次世代シーケンシングを用いたヒットの逆畳み込みによって非常に大規模なライブラリー(数十億の化合物)の構築とスクリーニングを可能にする進展とともに、エピトープ模倣体を作製する成熟したテクノロジーとなっている{Chan,A.I.,et al.Curr Opin Chem Biol(2015)26:55-61}。例えば、らせん状立体構造は、α-メチル化アミノ酸(例えば、Aib)などの立体構造空間が制限されたアミノ酸の挿入により、せん状エピトープを安定化する側鎖の架橋または「ステープル」により、およびヘリックスキャップと水素結合代替物の使用により、安定化し得る。例としては、水素結合代替物としてのヒドラゾン架橋、Freidinger様ラクタム、ターンを安定させるための偽プロリンなどがある{Estieu-Gionnet,K.and Guichard,G.Exp.Opin.Drug Discov(2011)6:937-963}。
【0075】
さらに、インビトロでmRNAをタンパク質に翻訳するための当該技術分野で既知の技術は、非標準アミノ酸のタンパク質およびペプチドへの導入を可能にし、架橋されたペプチドの形成を促進する{Hartman,M.C.,et al.PLoS One(2007)2(10):e972}。
実施例8:非免疫グロブリン結合剤の同定
本発明のペプチド、変異体およびペプチド模倣体は、有効な非免疫グロブリン結合剤を同定するために使用できる。
【0076】
さまざまな非免疫グロブリンタンパク質足場が当技術分野で知られており、従来のmAbによって結合されたものと類似したエピトープへの高親和性、高特異性結合から生じる同等な薬理活性を提供する{Sha、F et al.Protein Sci(2017)26(5):910-924}。例としては、フィブロネクチン、リポカリン、水晶体クリスタリン、テトラネクチン、アンキリン、プロテインA(Ig結合ドメイン)に基づく足場を含む。小さなペプチドファミリーはまた、抗体のような親和性およぶ特異性を有する可能性があり、トリ膵ペプチドおよびコノトキシンが含まれる{Josephson,K.,et al.,J Am Chem Soc(2005)127:11727-11725}。同様に、架橋ペプチドは、明確な特異性を備えた高親和性結合剤を生成する能力を提供する。さらに、核酸アプタマーなどの非タンパク質ベースの薬剤も同等の結合を提供する{Sun,H.and Zu,Y.Molecules(2015)20(7):11959-80}。
開示された配列の概要
以下の表で、記載事項に「と付加物」を含むリストの配列は、目的のコード配列に、開始コドン、グリシンスペーサー、ヒスチジンタグなどの発現および/または精製の補助剤、またはTwin-Strepなどの他の精製補助剤が補充されているものを指す{Schmidt,T.G.,et al.Protein Expr Purif(2013)92(1):54-61}。これらを、以下の配列表で詳しく説明する。
【0077】
【0078】
配列表
配列番号1
長さ:37アミノ酸
型:PRT
生物名:人工配列
特徴:mAb 3D3、2D10および3G12によって認識される免疫原
他の情報:RSV Gタンパク質[残基161~197]
配列
【0079】
【0080】
配列番号2
長さ:11アミノ酸
型:PRT
生物名:人工配列
特徴:mAb 3D3によって認識されるがmAb2D10では認識されない免疫原
他の情報:RSV Gタンパク質[残基162~172]
配列
【0081】
【0082】
配列番号3
長さ:30アミノ酸
型:PRT
生物名:人工配列
特徴:mAb2D10によって認識されるがmAb 3D3では認識されない免疫原
他の情報:RSV Gタンパク質[残基169~198]
配列
【0083】
【0084】
配列番号4
長さ:50アミノ酸
型:PRT
生物名:人工配列
特徴:mAb 3D3、2D10、および3G12によって認識される免疫原
他の情報:RSV Gタンパク質[残基157~197]
配列
【0085】
【0086】
配列番号5
長さ:45アミノ酸
型:PRT
生物名:人工配列
特徴:mAbsによって認識される免疫原
他の情報:RSV Gタンパク質[残基148~197]
配列
【0087】
【0088】
配列番号6
長さ:39アミノ酸
型:PRT
生物名:人工配列
特徴:mAbsによって認識される免疫原
他の情報:RSV Gタンパク質[残基161~195]
配列
【0089】
【0090】
配列番号7
長さ:295アミノ酸
型:PRT
生物名:人工配列
特徴:免疫原
その他の情報:RSV Gタンパク質外部ドメイン[RSV A2株の残基64~298、GenBank KT992094.1、2つの同義変異(下線)] N末端TPA分泌シグナルおよびC末端6His-2Strepタグを含む
配列
【0091】
【0092】
配列番号14
DNA配列:
【0093】
【0094】
配列番号8
長さ:45アミノ酸
型:PRT
生物名:人工配列
特徴:免疫原を含む
他の情報:RSV Gタンパク質[残基161~197] N末端開始コドンとスペーサーグリシンおよびC末端6Hisタグを含む
配列
【0095】
【0096】
配列番号15
DNA配列:
【0097】
【0098】
配列番号9
長さ:54アミノ酸
型:PRT
生物名:人工配列
特徴:免疫原を含む
他の情報:RSV Gタンパク質[残基157~197] N末端開始コドンとスペーサーグリシンおよびC末端6Hisタグを含む
配列
【0099】
【0100】
配列番号16
DNA配列:
【0101】
【0102】
配列番号10
長さ:45アミノ酸
型:PRT
生物名:人工配列
特徴:免疫原を含む
他の情報:RSV Gタンパク質[残基148~197] N末端開始コドンとスペーサーグリシンおよびC末端6Hisタグを含む
配列
【0103】
【0104】
配列番号17
DNA配列:
【0105】
【0106】
配列番号11
長さ:39アミノ酸
型:PRT
生物名:人工配列
特徴:免疫原
他の情報:RSV Gタンパク質[残基161~195] N末端開始コドンとスペーサーグリシンおよびC末端6Hisタグを含む
配列
【0107】
【0108】
配列番号18
DNA配列:
【0109】
【0110】
配列番号12
長さ:308アミノ酸
型:PRT
生物名:人工配列
特徴:単鎖抗体
他の情報:mAb 3D3単鎖Fv(scFv3D3) N末端Bipシグナルシーケンス、内部フレキシブルリンカー、C末端トロンビンプロテアーゼ切断部位、続いて6His-2Strepタグを含む
配列
【0111】
【0112】
配列番号19
DNA配列:
【0113】
【0114】
配列番号13
長さ:315アミノ酸
型:PRT
生物名:人工配列
特徴:単鎖抗体
他の情報:mAb2D10単鎖Fv(scFv 2D10) N末端Bipシグナルシーケンス、内部フレキシブルリンカー、およびC末端トロンビンプロテアーゼ切断部位、続いて6His-2Strepタグを含む
配列
【0115】
【0116】
配列番号20
DNA配列:
【0117】
【0118】
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
【0119】
1.呼吸器合胞体ウイルス(RSV)Gタンパク質の残基161~197(配列番号1)のアミノ酸配列を有するペプチド、または位置162~172(配列番号2)、もしくは位置169~198(配列番号3)、もしくは位置157~197(配列番号4)、もしくは位置148~197(配列番号5)、もしくは位置161~195(配列番号6)のアミノ酸配列を有するペプチドであって、それぞれが抗体との結合時に示される立体構造を保持するように化学的に安定化されたペプチド。
【0120】
2.前記化学的安定化が共有結合架橋を提供することを含む、上記のペプチド。
【0121】
3.配列番号1~6のいずれか1つのペプチドの変異体またはペプチド模倣体であって、いずれか1つの配列番号1~6のいずれか1つのそれぞれのペプチドと比較して増強した免疫原性を有する、変異体またはペプチド模倣体。
【0122】
4.5つ以下のアミノ酸置換および/または欠失および/または付加を含む変異体である、上記の変異体またはペプチド模倣体。
【0123】
5.前記変異体の立体構造が化学的に安定化されている、実施形態3または4に記載の変異体。
【0124】
6.配列番号1~6のいずれか1つのペプチドの変異体またはペプチド模倣体であって、配列番号1~6のそれぞれのペプチドと比較して低下した免疫原性を有する、変異体またはペプチド模倣体。
【0125】
7.5つ以下のアミノ酸置換および/または欠失および/または付加を含む変異体であり、フラクタルカインに応答するケモカイン受容体の活性化に関して変化した薬理活性を有する、上記の変異体またはペプチド模倣体。
【0126】
8.前記変異体の立体構造が化学的に安定化されている、実施形態6または7に上に記載の変異体。
【0127】
9.免疫原として望ましい特性を有する分子であって、前記特性がRSV Gタンパク質の保存領域に対して株非依存性の高親和性を有するおよび中和活性を有する抗体の誘導を含み、候補分子をmAb 3D3、2D10または3G12またはその抗原結合フラグメントとおよびRSV Gタンパク質に低親和性で結合する少なくとも1つの結合部分と接触させることによって同定され、それによって3D3、2D10、3G12またはフラグメントに優先的に結合する候補分子が前記望ましい特性を有する免疫原として同定される、分子。
【0128】
10.候補分子がアプタマーまたは小分子またはペプチドのコンビナトリアルライブラリーのメンバーである、上に記載の分子。
【0129】
11.共有結合で連結された構成要素を含む分子であって、前記構成要素が配列番号2のアミノ酸配列および配列番号3のアミノ酸配列のペプチドであるか、またはそれぞれの前記構成要素が、実施形態3~8に記載の、配列番号2および/または配列番号3の対応する変異体またはペプチド模倣体である、分子。
【0130】
12.配列番号1または配列番号3~6のペプチドの変異体またはペプチド模倣体であって、フラクタルカインに応答するケモカイン受容体を刺激または阻害する、変異体またはペプチド模倣体。
【0131】
13.配列番号1または配列番号3~6のそれぞれのペプチドと比較して減少した免疫原性を有する、上記の変異体またはペプチド模倣体。
【0132】
14.配列番号1または配列番号3~6のアミノ酸配列を含む変異体ペプチドであって、RSV Gタンパク質のアミノ酸162、164、166、177、187、192および/または193の少なくとも1つの置換を含み、野生型RSV Gタンパク質と比較して減少した走化性活性を示す、変異体ペプチド。
【0133】
15.RSVに対するワクチンとして使用するための変異体ペプチドを設計する方法であって、高親和性抗体の結合に関与しないGタンパク質のCCR内に含まれるアミノ酸を同定することと、それらを異なる形状またはサイズまたは電荷の側鎖を有するアミノ酸で置換することと、よってペプチドまたはタンパク質の免疫原性を妨げることなく受容体(CX3CR1)への変異体の結合を阻害することと、を含む、方法。
【0134】
16.実施形態15にある上記の方法により設計された変異体。
【0135】
17.先行の実施形態のいずれかに記載のペプチドまたは変異体ペプチドであって、前記ペプチドまたは変異体のアッセイにおける使用のための部分、または前記ペプチドまたは変異体の精製における使用のための部分に結合されている、ペプチドまたは変異体ペプチド。
【0136】
18.医薬または動物用組成物であって、上に記載の任意のペプチド、ペプチド模倣体、変異体または分子のうちの少なくとも1つを活性成分として含む、医薬または動物用組成物。
【0137】
19.対象におけるRSV感染に関して予防的または治療的処置を提供する方法であって、そのような処置を必要とする対象に有効量の直前に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【0138】
20.免疫介在性炎症性疾患、慢性疼痛および末梢神経障害を治療する方法であって、そのような治療を必要とする対象に、有効量の医薬または動物用組成物を投与することを含み、活性物質が実施形態12または13に記載されたものである、方法。
【0139】
21.症状が関節リウマチ、変形性関節症またはアテローム性動脈硬化症である、上記の方法。
【0140】
22.上に記載の任意のペプチドまたは変異体の生成のための組換え発現システムであって、その発現のための制御配列に作動可能に連結された前記ペプチドまたは変異体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸である、組換え発現システム。
【0141】
23.上記の実施形態に記載のいずれかのペプチドまたは変異体を生成するように改変された、組換え宿主細胞。
【0142】
24.RSVのGタンパク質またはその保存領域と免疫反応性の抗体に結合する、またはフラクタルカインに結合する受容体に関して変化した活性を有するペプチドまたは変異体を生成する方法であって、前記ペプチドまたは変異体が生成される条件下でこれらの細胞を培養することと、任意選択的に前記培養から前記ペプチドまたは変異体を回収することとを含む、方法。
【0143】
25.免疫原として望ましい特性を有する分子を同定する方法であって、前記特性は、RSV Gタンパク質の保存領域に対して株非依存性で高親和性を有する抗体および中和活性を有する抗体の誘導を含み、その方法は、候補分子をmAb 3D3、2D10、または3G12、またはその抗原結合フラグメントと、およびRSV Gタンパク質に低親和性で結合する少なくとも1つの結合部分と接触させることを含み、それによって3D3、2D10、または3G12に優先的に結合する候補分子が上記の望ましい特性を有する免疫原として同定される、方法。
【0144】
26.候補分子がアプタマーまたは小分子またはペプチドのコンビナトリアルライブラリーのメンバーである、上記の方法。
【0145】
27.RSV Gタンパク質の保存領域に対する株非依存性で高親和性の特性および中和活性の特性を有する結合部分を同定する方法であって、その方法は、候補結合部分を立体構造的に拘束された形態の
図2A、2B、または2Cに示された形状を有するペプチドまたはそのペプチド模倣体と接触させることと、前記候補結合部分と前記ペプチドまたはペプチド模倣体との間の複合体の存在または不在を検出することとを含み、候補結合部分の前記ペプチドまたはペプチド模倣体に対する結合親和性が少なくとも100pM程度の強さを示す前記複合体の存在により前記結合部分が前記特性を有していると同定される、方法。
【0146】
28.候補結合部分がアプタマーまたは代替足場のコンビナトリアルライブラリーのメンバーであるか、または抗体もしくはそのフラグメントである、上記の方法。
【0147】
29.この方法で同定された結合部分。
【0148】
30.医薬または動物用組成物であって、活性成分として上記の結合部分を含む、医薬または動物用組成物。
【0149】
31.対象におけるRSV感染に関して予防的または治療的処置を提供する方法であって、そのような処置を必要とする対象に有効量のこの医薬または動物用組成物を投与することを含む、方法。
【配列表】