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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】熱間プレス成型用金型の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 7/00 20060101AFI20240301BHJP
【FI】
B22C7/00 112
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020063072
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021159935
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】590000721
【氏名又は名称】株式会社キーレックス
(73)【特許権者】
【識別番号】597039788
【氏名又は名称】友鉄工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 建興
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 勉
(72)【発明者】
【氏名】高木 哲治
(72)【発明者】
【氏名】角井 洵
(72)【発明者】
【氏名】小林 義雄
【審査官】藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-068256(JP,A)
【文献】特開2018-012115(JP,A)
【文献】特開昭63-295038(JP,A)
【文献】特開昭54-050424(JP,A)
【文献】特開昭63-101066(JP,A)
【文献】米国特許第04865112(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 7/00,7/02
B22C 9/04
B22D 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの曲部を有する金属管を複数鋳込んで金型を製造する熱間プレス成型用金型の製造方法であって、
金型の形状を模した金型形状部材に前記各金属管を配置する金属管配置工程と、
前記金属管配置工程の後、前記金型形状部材の表面に沿ったキャビティ面が形成されるように鋳物砂により鋳型を形成する鋳型形成工程と、
前記鋳型形成工程で形成された前記鋳型内に溶湯を投入する鋳込み工程と、を含み、
前記各金属管の両側端部には、前記鋳型に引っ掛かる形状をなしかつ前記各金属管を前記鋳型に対して固定するための第1ストッパがそれぞれ設けられており、
前記金属管配置工程は、前記第1ストッパが前記金型形状部材の外部に位置するように、前記各金属管を配置する工程であり、
前記鋳型形成工程は、前記第1ストッパが前記鋳型に埋められるように該鋳型を形成する工程であり、
前記第1ストッパは、前記金属管の前記端部における管軸方向と直交する方向に孔軸が延びる孔部を有し、
前記鋳型形成工程において、前記孔部内に前記鋳物砂が充填されることを特徴とする熱間プレス成型用金型の製造方法。
【請求項2】
少なくとも1つの曲部を有する金属管を複数鋳込んで金型を製造する熱間プレス成型用金型の製造方法であって、
金型の形状を模した金型形状部材に前記各金属管を配置する金属管配置工程と、
前記金属管配置工程の後、前記金型形状部材の表面に沿ったキャビティ面が形成されるように鋳物砂により鋳型を形成する鋳型形成工程と、
前記鋳型形成工程で形成された前記鋳型内に溶湯を投入する鋳込み工程と、を含み、
前記各金属管の両側端部には、前記鋳型に引っ掛かる形状をなしかつ前記各金属管を前記鋳型に対して固定するための第1ストッパがそれぞれ設けられており、
前記金属管配置工程は、前記第1ストッパが前記金型形状部材の外部に位置するように、前記各金属管を配置する工程であり、
前記鋳型形成工程は、前記第1ストッパが前記鋳型に埋められるように該鋳型を形成する工程であり、
前記金属管配置工程の前に、前記各金属管内がそれぞれ密閉状態になるように、前記各金属管の両側端部の開口部分に前記第1ストッパをそれぞれ溶接により固定する溶接工程を更に含むことを特徴とする熱間プレス成型用金型の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の熱間プレス成型用金型の製造方法において、
前記金属管配置工程の前に、隣り合う前記金属管同士における前記金型形状部材内に配置される部分を互いに連結するための連結具を前記各金属管に取り付けて、該各金属管同士を連結する金属管連結工程を更に含むことを特徴とする熱間プレス成型用金型の製造方法。
【請求項4】
請求項に記載の熱間プレス成型用金型の製造方法において、
前記金属管配置工程の前に、連結された前記各金属管うちの少なくとも1つの金属管に、当該金属管おける前記金型形状部材内に配置される部分を前記鋳型に対して固定するための第2ストッパを取り付ける中間部固定工程を更に含むことを特徴とする熱間プレス成型用金型の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、熱間プレス成型用金型の製造方法に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、冷却媒体を流通させるための金属管を鋳込んで金型を製造する方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、砂型内の空間に、折り曲げ加工された一本の冷却回路管を保持した状態で、該砂型内に溶湯を充填するとともに、冷却回路管に冷媒を流しながら溶湯を固化させて鋳造金型に冷却回路を設ける、冷却回路を有する鋳造金型の製造方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、直線部と曲り部とを有しかつ蛇行状をなす金属パイプを鋳込んで形成された水冷式コールドプレートにおいて、金属管の直線部はコールドプレート本体の内部に鋳込む一方で、金属管の曲り部はコールドプレート本体の外部に配置する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平03-189061号公報
【文献】特開2011-125893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、熱間プレス成型用の金型では、熱間プレス成型時の成型品及び金型の冷却効率を向上させるために、金属管を金型の形状面の近傍に配置する必要がある。このため、金属管は形状面に沿うような曲部を有する形状となる。曲部を有する金属管は、湾曲部において熱変形による位置ずれが発生しやすい、金属管の位置ずれが発生すると、冷却効率が低下してしまう。
【0007】
特許文献1のように、冷却管に冷媒を流しながら冷却する方法が考えられるが、高温の溶湯に対抗できるような冷媒を流すための装置が別途必要になりコストが大きくなる。特に、冷却効率を向上させるために金属管を複数配置する場合には、複数の金属管のそれぞれに冷媒を流す必要があるため、特別な装置が必要となる。
【0008】
また、特許文献1に記載の方法では、金属管が管軸方向に変形した場合には、位置ずれを抑制しにくい。
【0009】
特許文献2では、湾曲部を金型本体の外側に配置することで、熱変形による位置ずれを抑制している。しかし、プレス成型用金型では、基本的に曲部が金型内に配置されることが避けられないため、適用し難い。
【0010】
ここに開示された技術は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、曲部を有する金属管が複数鋳込まれてなる熱間プレス成型用金型において、低コストで金属管の位置ずれを抑制するとともに、熱間プレス成型時の成型品及び金型の冷却効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、ここに開示された技術の第1の態様は、少なくとも1つの曲部を有する金属管を複数鋳込んで金型を製造する熱間プレス成型用金型の製造方法を対象として、金型の形状を模した金型形状部材に前記各金属管を配置する金属管配置工程と、前記金属管配置工程の後、前記金型形状部材の表面に沿ったキャビティ面が形成されるように鋳物砂により鋳型を形成する鋳型形成工程と、前記鋳型形成工程で形成された前記鋳型内に溶湯を投入する鋳込み工程と、を含み、前記各金属管の両側端部には、前記鋳型に引っ掛かる形状をなしかつ前記各金属管を前記鋳型に対して固定するための第1ストッパがそれぞれ設けられており、前記金属管配置工程は、前記第1ストッパが前記金型形状部材の外部に位置するように、前記各金属管を配置する工程であり、前記鋳型形成工程は、前記第1ストッパが前記鋳型に埋められるように該鋳型を形成する工程である、ことを特徴とする。
【0012】
ここに開示された技術の第2の態様は、第1の態様において、前記第1ストッパは、前記金属管の前記端部における管軸方向と直交する方向に孔軸が延びる孔部を有し、前記鋳型形成工程において、前記孔部内に前記鋳物砂が充填される、ことを特徴とする。
【0013】
ここに開示された技術の第3の態様は、第1又は第2の態様において、前記金属管配置工程の前に、前記各金属管内がそれぞれ略密閉状態になるように、前記各金属管の両側端部の開口部分に前記第1ストッパをそれぞれ溶接により固定する溶接工程を更に含む、ことを特徴とする。
【0014】
ここに開示された技術の第4の態様は、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、前記金属管配置工程の前に、隣り合う前記金属管同士における前記金型形状部材内に配置される部分を互いに連結するための連結具を前記各金属管に取り付けて、該各金属管同士を連結する金属管連結工程を更に含む、ことを特徴とする。
【0015】
ここに開示された技術の第5の態様は、第4の態様において、前記金属管配置工程の前に、連結された前記各金属管うちの少なくとも1つの金属管に、当該金属管おける前記金型形状部材内に配置される部分を前記鋳型に対して固定するための第2ストッパを取り付ける中間部固定工程を更に含む、ことを特徴とする。
【0016】
ここに開示された技術は、熱間プレス成型用金型も対象とする。具体的には、ここに開示された技術の第6の態様は、少なくとも1つの曲部を有する金属管が複数鋳込まれた熱間プレス成型用金型を対象として、前記複数の金属管のうち隣り合う金属管同士を連結する金属製の連結具を備え、前記連結具は金型内に埋設されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
ここに開示された技術の、第1の態様によると、第1ストッパが鋳型に埋められることにより、第1ストッパが設けられた金属管が移動するのを抑制することができる。特に、第1ストッパは、鋳型に引っ掛かる形状をなすため、金属管が管軸方向に沿って変形しようとしても、第1ストッパが鋳型に引っ掛かることで金属管の移動が抑制される。この結果、熱間プレス成型用金型における金属管の位置ずれが抑制される。これにより、熱間プレス成型時の成型品及び金型の冷却効率を向上させることができる。
【0018】
また、特許文献1に記載のような冷却媒体を流通させる装置等が必要でないため、出来る限り低コストで実現させることができる。
【0019】
ここに開示された技術の第2の態様によると、孔部内に鋳物砂が充填されていることにより、第1ストッパが鋳型に引っ掛かりやすくなる。これにより、熱間プレス成型用金型における金属管の位置ずれをより効果的に抑制することができる。
【0020】
ここに開示された技術の第3の態様によると、金属管内が略密閉状態となることで、金型形状部材に溶湯が投入されたときには、金属管内の空気が、金属管内から流出することなく溶湯から伝わる熱により温められる。金属管内の空気が温められることで、該空気が膨張して金属管内の気圧が高くなる。これにより、金属管が潰れるような変形が抑えられる。この結果、金属管の変形に伴う、該金属管の位置ずれが効果的に抑制される。
【0021】
ここに開示された技術の第4の態様によると、連結具により金属管同士の相対位置がずれることが抑制される。また、連結具を金属で構成すれば、連結具も金型に埋設されることになるが、該連結具がプレス成形品から冷却媒体への熱伝導を補助することができ、熱間プレス成型時の成型品及び金型の冷却効率をより向上させることができる。
【0022】
ここに開示された技術の第5の態様によると、第2ストッパにより、金属管の移動が抑制されるとともに、金属管の変形もある程度抑制される。これにより、熱間プレス成型用金型における金属管の位置ずれがより効果的に抑制される。
【0023】
ここに開示された技術の第6の態様によると、前記のように、金属管同士を連結する金属製の連結具が設けられることで、鋳込み時に金属管同士の相対位置がずれることが抑制される。また、連結具が金型に埋設されることにより、連結具がプレス成形品から冷却媒体への熱伝導を補助することができ、熱間プレス成型時の成型品及び金型の冷却効率をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】例示的な実施形態1に係る熱間プレス成型用金型を示す斜視図である。
図2】金型形状部材を示す側面図である。
図3】第1ストッパ及び連結具が取り付けられた金属管を示す側面図である。
図4】第1ストッパが取り付けられた金属管の端部を管軸方向から見た図である。
図5】金型形状部材に金属管を配置した状態を示す側面図である。
図6図4の状態から鋳型を形成した状態を示す概略図である。
図7図5に示す鋳型を、第1ストッパ及び金属管を通る平面で切断した断面図である。
図8】鋳型内に溶湯が投入された状態における図6相当図である。
図9】例示的な実施形態1の第1変形例を示す図6相当図である。
図10】例示的な実施形態1の第2変形例を示し、第1ストッパを金属管の端部における管軸方向に直交する平面で切断した断面図である。
図11】例示的な実施形態2に係る熱間プレス成型用金型の製造方法を示す図であって、金属管がモデルに配置された状態を示す。
図12】実施形態2に係る熱間プレス成型用金型の製造方法において、鋳型が形成された状態であって、(a)はモデルが鋳型に埋設された状態を概略的に示し、(b)は(a)のA-A線相当の平面で切断した断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0026】
(実施形態1)
〈熱間プレス成型用金型〉
図1は、本実施形態1に係る製造方法により製造される熱間プレス成型用金型1(以下、金型1という)を示す。尚、以下の説明において、上、下、右、左、前、及び後は、図1の矢印に従う。
【0027】
この金型1は、上型及び下型からなる熱間プレス装置の下型を構成する金型の1つである。金型1は、例えば、自動車の車体部品を成型する際に用いられる。本実施形態1において、金型1は鋳造により製造される。
【0028】
金型1の上側面は、プレス成型品を成型するための形状面1aである。金型1の形状面1aは、下側に凸となるように後側に向かって上側に湾曲する第1湾曲面1bと、上側に凸となるように後側に向かって下側に湾曲する第2湾曲面1cとを有する。
【0029】
金型1内には、冷却媒体を流通させるための複数の金属管10(ここでは、2本の金属管10)が埋設されている。具体的には、2本の金属管10は、2本の金属管10は、上下方向に並んで配置されている。各金属管10は、例えば、機械構造用炭素鋼鋼管が用いられる。各金属管10は、例えば、内径10mm以上でかつ肉厚1.5mm以上のものが用いられる。各金属管10は、金型1に鋳込まれている。各金属管10を金型1に鋳込む方法については後述する。
【0030】
各金属管10は、形状面1aに沿うような曲部をそれぞれ有する。具体的には、各金属管10は、第1湾曲面1bに対応する部分に設けられかつ上側に向かって曲げられた第1湾曲部11と、第2湾曲面1cに対応する部分に設けられかつ下側に向かって曲げられた第2湾曲部12とをそれぞれ有する。第1湾曲部11及び第2湾曲部12は、それぞれ、ストレート状の金属管を機械加工又は手曲げすることで形成されている。
【0031】
2本の金属管10は、上下方向に並んで配置されている。金属管10同士は、複数の連結具13(ここでは、3つの連結具13)により互いに連結されている。各連結具13は金属板で構成されている。各連結具13は、金属管10にそれぞれ溶接されている。各連結具13は、第1及び第2湾曲部11,12のアールの一端部分と、第2湾曲部12の中間部とにそれぞれ配置されている。
【0032】
各連結具13は、各金属管10と共に金型1に鋳込まれている。つまり、各連結具13は金型1に埋設されている。各連結具13が金型1に埋設されることにより、熱間プレス成型の際に、各連結具13がプレス成形品から金属管10内を流れる冷却媒体への熱伝導を補助することができる。これにより、プレス成型品の冷却効率を向上させることができる。尚、各連結具13の材質は、溶湯により溶損しない材質であれば特に限定されないが、金属管10と同じ金属であることが好ましい。
【0033】
〈熱間プレス成型用金型の製造方法〉
次に、金型1を鋳造により製造する方法について説明する。
【0034】
本実施形態1では、鋳造用の鋳型50(図6参照)を形成するために、まず図2に示すような、金型1の形状を模したモデル20を作成する。モデル20は、発泡材を加工して形成されている。図示は省略するが、モデル20は、左右方向に2つに分離するように構成されていて、各半部に金属管10が配置される溝がそれぞれ形成されている。この溝は、各半部が重ね合わされて1つのモデル20となることで、図2に点線で示すような金属管配置孔21を形成する。金属管配置孔21は、配置される金属管10の形状に合わせて形成されている。このため、金属管配置孔21は、基本的にはモデル20における形状面に対応する部分(以下、形状面対応部20aという)に沿うような形状となる。モデル20は、例えば、金型1の3次元データを基に発泡材を機械加工することにより作成される。尚、モデル20の材料は、特に限定されず、加工が容易でかつ溶湯により熔解するものであれば別の材料で作成してもよい。
【0035】
次に、金型1に鋳込む金属管10を用意する。まず、図3に示すように、金属管10を金型1の形状面1aに対応する形状に折り曲げ加工する。次に、各金属管10の両側端部10aに第1ストッパ30をそれぞれ取り付ける。第1ストッパ30は、金属管10の変形により、該金属管10の位置ずれが生じるのを抑制するための部材である。第1ストッパ30は、図4に示すように、端部10aの管軸方向から見て、該端部10aの開口を覆う大きさを有する。第1ストッパ30は、各金属管10内がそれぞれ略密閉状態になるように、各金属管10の両側端部の開口を閉じるべく、該開口部分にそれぞれ溶接により固定される。これにより、各金属管10に鍔が取り付けられた状態となる。本実施形態1では、第1ストッパ30は、2つの金属管10を連結するように、各金属管10に溶接されている。尚、各金属管10のそれぞれに独立して第1ストッパ30を取り付けるようにしてもよい。
【0036】
第1ストッパ30を取り付けた後、図3に示すように、隣り合う金属管10同士を連結するように各連結具13を各金属管10に溶接する。ここでは、各連結具13は、モデル20内に配置される予定の部分、特に、第1及び第2湾曲部11,12のアールの一端部分と、第2湾曲部12の中間とにそれぞれ取り付けられる。尚、本実施形態1では、金型1に配置される金属管10が2本であるため、連結具13により全ての金属管10が連結されている。しかし、より多く(つまり3本以上)の金属管10が配置される場合には、金属管10同士の距離が所定距離未満のときのみ連結すればよく、大きく離間した金属管10同士は連結しなくてもよい。
【0037】
次いで、各金属管10をモデル20に配置する。図5に示すように、各金属管10は、モデル20の金属管配置孔21内に配置される。各金属管10は、両側の端部10aと第1ストッパ30とがモデル20の外部に位置するように配置される。尚、図示は省略するが、モデル20の金属管配置孔21の両側端部の開口は、金属管配置孔21内に鋳物砂が入り込まないように蓋がされる。
【0038】
続いて、図6に示すように、各金属管10を含めてモデル20を覆うように鋳物砂により鋳型50が形成される。鋳物砂は、モデル20を金属管10ごと上下に反転させた状態で、すなわち形状面対応部20aが下側に位置するような状態で、該モデル20、各金属管10の端部10a、及び第1ストッパ30を埋めるように充填される。これにより、モデル20の表面に沿ったキャビティ面51aを有するキャビティ51が形成される。図示は省略しているが、鋳型50には、キャビティ51に溶湯を投入するための湯口が形成されている。尚、モデル20を上下に反転させずに鋳型50を形成してもよい。
【0039】
図7に示すように、鋳型50が形成されるときに、第1ストッパ30はその全体が鋳型50に埋められる。これにより、各金属管10が鋳型50に対して固定された状態となる。
【0040】
次に、キャビティ51内に溶湯が投入される。溶湯は、モデル20を熔解させながらキャビティ51内に溜められていく。このとき、モデル20の形状面対応部20aが下側に位置していることにより、キャビティ51における形状面に対応する部分には、溶湯が隙間無く充填される。これにより、金型1の形状面1aを精度良く形成することができる。
【0041】
溶湯をキャビティ51内に投入するとき、各金属管10が、溶湯の熱により変形して、キャビティ51内を移動しようとする。特に、第1及び第2湾曲部11,12は変形しやすく、第1及び第2湾曲部11,12の近傍部分を管軸方向に移動させようとする。しかしながら、第1ストッパ30が鋳型50に埋められていることにより、該第1ストッパ30が鋳型50に引っ掛かるため、金属管10の移動が抑制される。また、隣り合う金属管10同士が連結具13で連結されているため、各金属管10の間のピッチが維持される。これにより、金属管10の変形に伴う該金属管10の移動により、各金属管10が金型1の所望の位置からずれてしまうことが抑制される。
【0042】
また、図8に示すように、溶湯が供給されると各金属管10内の空気が温められて膨張する。各金属管10の両側の開口をそれぞれ塞ぐように第1ストッパ30が溶接されているため、各金属管10内は略密閉状態となっている。このため、各金属管10内の空気が膨張すると、各金属管10内の気圧が上昇する。これにより、金属管10が潰れるような変形が抑えられる。この結果、金属管10の変形に伴う該金属管10の移動が発生しにくくなって、金型1における各金属管10の位置ずれがより効果的に抑制される。
【0043】
続いて、溶湯を冷却して固化させる。溶湯を固化させた後は、鋳型50を砕いて鋳造された金型1を鋳型50から取り出す。その後、各金属管10の端部10aにおける第1ストッパ30の近傍部分を切り落とすとともに、金型1の表面を僅かに削り落とすことで金型1が完成する。
【0044】
したがって、本実施形態1では、金型1の形状を模したモデル20に各金属管10を配置する金属管配置工程と、金属管配置工程の後、モデル20の表面に沿ったキャビティ面51aが形成されるように鋳物砂により鋳型50を形成する鋳型形成工程と、鋳型形成工程で形成された鋳型50内に溶湯を投入する鋳込み工程と、を含み、各金属管10の両側端部10aには、鋳型50に引っ掛かる形状をなしかつ各金属管10を鋳型50に固定するための第1ストッパ30がそれぞれ取り付けられており、金属管配置工程は、第1ストッパ30がモデル20の外部に位置するように、各金属管10を配置する工程であり、鋳型形成工程は、第1ストッパ30が鋳型50に埋められるように該鋳型50を形成する工程である。第1ストッパ30が鋳型50に引っ掛かるような形状をなすことで、金属管10が管軸方向に沿って変形しようとしても、第1ストッパ30が鋳型50に引っ掛かって金属管10の移動が抑制される。この結果、金型1における金属管10の位置ずれが抑制されて、熱間プレス成型品及び金型1の冷却効率を向上させることができる。また、冷却媒体を流通させる装置等が必要でないため、出来る限り低コストで実現させることができる。
【0045】
また、本実施形態1では、金属管10をモデル20に配置する前に、各金属管10内がそれぞれ略密閉状態になるように、各金属管10の両側端部10aの開口部分に第1ストッパ30をそれぞれ溶接により固定する。これにより、モデル20に溶湯が投入されたときには、金属管10内の空気が、金属管10内から流出することなく溶湯から伝わる熱により温められる。金属管10内の空気が温められることで、該空気が膨張して金属管10内の気圧が高くなる。この結果、金属管10が潰れるような変形が抑えられて、金属管10の変形に伴う、該金属管10の位置ずれが効果的に抑制される。
【0046】
また、本実施形態1では、金属管10をモデル20に配置する前に、隣り合う金属管10同士を連結するための金属製の連結具13を各金属管10に取り付ける。各連結具13により金属管10同士の相対位置がずれることが抑制される。また、各連結具13が金型1に埋設されることで、熱間プレス成型時に、連結具13がプレス成形品から冷却媒体への熱伝導を補助することができ、熱間プレス成型品及び金型1の冷却効率をより向上させることができる。
【0047】
〈第1変形例〉
図9は、本実施形態1の第1変形例を示す。この第1変形例では、前述の実施形態1に対して第1ストッパ30に孔部31を設けたものである。
【0048】
孔部31は、図9に示すように、金属管10の端部10aの管軸方向と直交する方向(ここでは上下方向)に貫通して設けられている。つまり、孔部31の孔軸は、前記管軸方向と直交する方向に延びている。孔部31内は、鋳物砂が充填されている。この鋳物砂は、鋳型50を形成する際に、孔部31内に充填される。
【0049】
この第1変形例のように、孔部31内に鋳物砂が充填されていることにより、第1ストッパ30が鋳型50に引っ掛かりやすくなる。これにより、各金属管10の位置ずれをより効果的に抑制することができる。
【0050】
また、第1変形例のように孔部31の孔軸が上下方向に延びていれば、鋳型を作成する際に鋳物砂を孔部31内に充填するのが容易になる。
【0051】
〈第2変形例〉
図10は、本実施形態1の第2変形例を示す。この第2変形例でも、前述の実施形態1に対して第1ストッパ30に孔部131が設けられているが、前述の第1変形例とは、孔部131の形状が異なる。
【0052】
具体的には、第1ストッパ30は、孔軸が上下方向に向いた1つの第1孔部131aと、孔軸が左右方向に向いた2つの第2孔部131bとを有する。これら第1及び第2孔部131a,131bの内部には鋳物砂が充填されている。鋳物砂は、鋳型50を形成する際に、第1及び第2孔部131a,131b内に充填される。
【0053】
この第2変形例でも、孔部131内に鋳物砂が充填されていることにより、第1ストッパ30が鋳型50に引っ掛かりやすくなる。これにより、各金属管10の位置ずれをより効果的に抑制することができる。
【0054】
(実施形態2)
以下、実施形態2について詳細に説明する。以下の説明において実施形態1と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0055】
本実施形態2では、熱間プレス成型用金型の製造途中における構成が、前記実施形態1とは異なる。具体的には、図11に示すように、本実施形態2では、金属管10に、該金属管10におけるモデル220に埋設される部分を鋳型50に対して固定する第2ストッパ230が取り付けられる。第2ストッパ230は、図11及び図12に示すように、例えば金属棒で構成される。第2ストッパ230は、金属管10の管軸方向及び上下方向と直交する方向に延びるように配置される。第2ストッパ230は、連結具13で連結された2本の金属管10のうち、モデル220の形状面対応部220aから遠い側の金属管10に溶接されている。第2ストッパ230は、該金属管10の湾曲部の途中部分に溶接されている。第2ストッパ230は、両側端部230aがモデル220の表面(側面)から突出する長さを有している。モデル220を製造するときには、第2ストッパ230が挿通する孔も含めて製造される。尚、図11では、第1ストッパ30については記載を省略している。
【0056】
図12(b)に示すように、鋳型50を形成するときには、端部230aが鋳型50に埋められる。これにより、キャビティ51内に溶湯が投入されて、該溶湯の熱で金属管10が前後方向や上下方向に変形したり移動したりしようとしても、第2ストッパ230が鋳型50に引っ掛かってその変形や移動が抑制される。この結果、第1ストッパ30に加えて、第2ストッパ230を設けることで、各金属管10が金型1の所望の位置からずれてしまうことが効果的に抑制される。尚、第2ストッパ230の両側端部230aは、金型1の製造後に、該金型1の表面から突出しないように切り落とされる。
【0057】
したがって、本実施形態2でも、金型1における金属管10の位置ずれが抑制されて、熱間プレス成型品及び金型1の冷却効率を向上させることができる。
【0058】
(その他の実施形態)
ここに開示された技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0059】
例えば、前述の実施形態1及び2では、金属管10とは別部材の第1ストッパ30を、金属管10に取り付けていた。これに限らず、予め金属管10の端部10aを拡径させておき、その拡径部分を第1ストッパとしてもよい。また、逆に、端部10aの中間部分を縮径させておき、該縮径部分に鋳物砂を充填させることで第1ストッパとしてもよい。
【0060】
また、前述の実施形態1及び2では、第1ストッパ30を金属管10の端部10aに溶接した後に、金属管10同士を連結具13で連結していた。これに限らず、金属管10同士を連結具13で連結した後に、第1ストッパ30を金属管10の端部10aに溶接してもよい。
【0061】
また、前述の実施形態1及び2では、連結具13は板状をなしていた。これに限らず、パイプ状をなしていたり、ブロック状をなしていたりしてもよい。連結具13の形状は、溶湯の熱により容易に変形しないような形状であれば、任意の形状を採用することができる。
【0062】
特に、前述の実施形態2において、連結具13の形状を工夫して、連結具13を第2ストッパ230としてもよい。このときには、例えば、連結具13をL字状やT字状にして、一端部をモデル220の側面から突出させるようにする。これにより、連結具13の一端部が鋳型50に埋められて、ストッパとして機能するようになる。
【0063】
また、前述の実施形態1及び2では、連結具13は、第1及び第2湾曲部11,12のアールの一端部分と、第2湾曲部12の中間部とにそれぞれ設けられていた。これに限らず、連結具13は、第1及び第2湾曲部11,12のアールの一端部分にのみそれぞれ設けられていてもよい。
【0064】
また、前述の実施形態1及び2では、直線状の各金属管10を曲げ加工して、金属管10に曲部を形成していた。これに限らず、最初から(金属管10の製造段階から)曲部を有する金属管10を用いてもよい。
【0065】
また、前述の実施形態2では、第2ストッパ230としての金属棒の端部230aには、何も取り付けられていなかった。これに限らず、第2ストッパ230の端部230aに、第1ストッパ30のようなブロック体を取り付けてもよい。このときは、該ブロック体は、第2ストッパ230の軸方向から見たときに、端部230a全体が覆われるような大きさを有することが好ましい。
【0066】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0067】
ここに開示された技術は、少なくとも1つの曲部を有する金属管を複数鋳込んで熱間プレス成型用金型を製造する際に有用である。
【符号の説明】
【0068】
1 熱間プレス成型用金型
10 金属管
10a 端部
11 第1湾曲部(曲部)
12 第2湾曲部(曲部)
13 連結具
20 モデル(金型形状部)
30 第1ストッパ
31 孔部
50 鋳型
51a キャビティ面
131 孔部
131a 第1孔部
132b 第2孔部
230 第2ストッパ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12