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  • 特許-非水電解質二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0587 20100101AFI20240301BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20240301BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240301BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20240301BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20240301BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M4/485
H01M10/052
H01M50/46
H01M50/489
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021502180
(86)(22)【出願日】2020-02-21
(86)【国際出願番号】 JP2020007018
(87)【国際公開番号】W WO2020175359
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2019035250
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】埜渡 夕有子
(72)【発明者】
【氏名】貝塚 篤史
(72)【発明者】
【氏名】杉井 紀子
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-61819(JP,A)
【文献】特開2012-33268(JP,A)
【文献】特開2003-22794(JP,A)
【文献】国際公開第2003/063269(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0587
H01M 4/485
H01M 10/052
H01M 50/46
H01M 50/489
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極とが、第1のセパレータ及び第2のセパレータを介して巻回された巻回形の電極体と、
前記電極体を収容する電池ケースとを備え、
前記第1のセパレータは前記正極の巻外側に設けられ、
前記第2のセパレータは前記正極の巻内側に設けられ、
前記第2のセパレータの突き刺し強度は前記第1のセパレータの突き刺し強度よりも高い、非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記第1のセパレータは、突き刺し強度が3.0N以上3.9N未満で、巻回軸方向の伸び率が185%以上260%以下であり、
前記第2のセパレータは、突き刺し強度が3.9N以上6.0N以下で、巻回軸方向の伸び率が170%以上240%以下である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記正極は少なくとも一方の表面に正極活物質を含む正極活物質層を有し、
前記正極活物質はリチウム含有複合酸化物である、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、帯状の正極及び負極をセパレータを介して巻回した巻回形の電極体を金属製の電池ケースに収容した非水電解質二次電池が広く利用されている。特許文献1には、所定の引張り破断強度を満たすセパレータを使用することによって、充電状態において外部からの衝撃による電池の熱暴走を抑制した非水電解質二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-139865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、非水電解質二次電池では、正極と負極の間の電気的な絶縁性を確保することは重要な課題である。正極と負極の間の絶縁性は、例えば、電解液が含浸する前の電極体に高電圧を印加し、正極と負極の間に流れる漏れ電流を測定する耐圧試験により評価される。耐圧試験は非水電解質二次電池の製造工程において、正極と負極の間の絶縁性が十分でない不良品を排出するために行われる。したがって、正極と負極の絶縁性の確保は、製造工程における不良率の削減につながる。特許文献1に開示された技術は、このような正極と負極の間の絶縁性ついては考慮しておらず、未だ改良の余地がある。
【0005】
本開示の目的は、正極と負極の間の絶縁性を高めるとともに、充電状態において外部からの衝撃による電池の熱暴走を抑制することができる非水電解質二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様である非水電解質二次電池は、正極と負極とが、第1のセパレータ及び第2のセパレータを介して巻回された巻回形の電極体を備え、第1のセパレータは正極の巻外側に設けられ、第2のセパレータは正極の巻内側に設けられ、第2のセパレータの突き刺し強度は第1のセパレータの突き刺し強度よりも高いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る非水電解質二次電池によれば、正極と負極の間の絶縁性を高めるとともに、充電状態において外部からの衝撃による電池の熱暴走を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態の一例である非水電解質二次電池の縦方向断面図である。
図2図2は、図1に示した非水電解質二次電池の巻回形の電極体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、図面を参照しながら、本開示に係る非水電解質二次電池の実施形態の一例について詳細に説明する。以下の説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本開示の理解を容易にするための例示であって、非水電解質二次電池の仕様に合わせて適宜変更することができる。また、以下の説明において、複数の実施形態、変形例が含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
【0010】
図1は、実施形態の一例である非水電解質二次電池10の縦方向断面図である。図1に例示するように、非水電解質二次電池10は、電極体14及び非水電解質(図示せず)が電池ケース15に収容されている。非水電解質の非水溶媒(有機溶媒)としては、カーボネート類、ラクトン類、エーテル類、ケトン類、エステル類等を用いることができ、これらの溶媒の2種以上を混合して用いることができる。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネート、環状カーボネートと鎖状カーボネートの混合溶媒等を用いることができる。非水電解質の電解質塩としては、LiPF、LiBF、LiCFSO等及びこれらの混合物を用いることができる。非水溶媒に対する電解質塩の溶解量は、例えば0.5~2.0mol/Lとすることができる。
【0011】
外装体16と封口体17によって、電池ケース15が構成されている。電極体14の上下には、絶縁板18,19がそれぞれ設けられる。正極リード20は絶縁板18の貫通孔を通って封口体17側に延び、封口体17の底板であるフィルタ23の下面に溶接される。非水電解質二次電池10では、フィルタ23と電気的に接続された封口体17の天板であるキャップ27が正極端子となる。他方、負極リード21は絶縁板19の貫通孔を通って、外装体16の底部側に延び、外装体16の底部内面に溶接される。非水電解質二次電池10では、外装体16が負極端子となる。負極リード21が巻外端近傍に設置されている場合は、負極リード21は絶縁板18の外側を通って、電池ケース15の底部側に延び、電池ケース15の底部内面に溶接される。
【0012】
外装体16は、有底円筒形状の金属製容器である。外装体16と封口体17の間にはガスケット28が設けられ、電池ケース内の密閉性が確保されている。外装体16は、例えば側面部を外側からプレスして形成された、封口体17を支持する張り出し部22を有する。張り出し部22は、外装体16の周方向に沿って環状に形成されることが好ましく、その上面で封口体17を支持する。
【0013】
封口体17は、電極体14側から順に積層された、フィルタ23、下弁体24、絶縁部材25、上弁体26、及びキャップ27を有する。封口体17を構成する各部材は、例えば円板形状又はリング形状を有し、絶縁部材25を除く各部材は互いに電気的に接続されている。下弁体24と上弁体26とは各々の中央部で互いに接続され、各々の周縁部の間には絶縁部材25が介在している。異常発熱で電池の内圧が上昇すると、例えば、下弁体24が破断し、これにより上弁体26がキャップ27側に膨れて下弁体24から離れることにより両者の電気的接続が遮断される。さらに内圧が上昇すると、上弁体26が破断し、キャップ27の開口部からガスが排出される。
【0014】
以下、図2を参照しながら、電極体14について詳しく説明する。図2は、図1に示した非水電解質二次電池10の巻回形の電極体14の斜視図である。電極体14は、正極11と負極12とが、第1のセパレータ13a及び第2のセパレータ13bを介して巻回された巻回形の構造を有する。正極11、負極12、第1のセパレータ13a、及び第2のセパレータ13bはいずれも帯状に形成され、電極体14の巻回中心となる巻回軸の周囲に渦巻状に巻回されることで電極体14の径方向βに交互に積層された状態となる。電極体14において、正極11及び負極12の長手方向が巻き方向γとなり、正極11及び負極12の幅方向が巻回軸方向αとなる。なお、以下において、正極11及び負極12の長手方向を長手方向γという場合がある。また、巻内側とは径方向βにおける巻回軸側を意味し、巻外側とは径方向βにおける電極体14の外側を意味する。
【0015】
正極11は、帯状の正極集電体と、正極集電体の少なくとも一方の表面に形成された正極活物質層とを有する。換言すれば、正極11は少なくとも一方の表面に正極活物質を含む正極活物質層を有する。正極活物質層は、正極集電体の両面に形成されていることが好ましい。正極集電体には、例えば、アルミニウムなどの金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等が用いられる。好適な正極集電体は、アルミニウム又はアルミニウム合金を主成分とする金属の箔である。正極集電体の厚みは、例えば10μm~30μmである。
【0016】
正極活物質層は、正極集電体の両面において、後述の正極露出部を除く全域に形成されることが好適である。正極活物質層は、正極活物質、導電剤、及び結着剤を含むことが好ましい。正極11は、例えば、正極活物質、導電剤、結着剤、及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)等の溶剤を含む正極スラリーを正極集電体の両面に塗布した後、乾燥および圧延することにより作製される。
【0017】
正極活物質としては、Co、Mn、Ni等の遷移金属元素を含有するリチウム含有複合酸化物が例示できる。リチウム含有複合酸化物は、特に限定されないが、一般式Li1+xMO(式中、-0.2<x≦0.2、MはNi、Co、Mn、Alの少なくとも1種を含む)で表される複合酸化物であることが好ましい。
【0018】
導電剤の例としては、カーボンブラック(CB)、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料などが挙げられる。結着剤の例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。また、これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩、ポリエチレンオキシド(PEO)等が併用されてもよい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
正極11には、正極集電体の表面が露出した正極露出部が設けられる。正極露出部は正極リード20が接続される部分であって、正極集電体の表面が正極活物質層に覆われていない部分である。正極リード20は、例えば、超音波溶接によって正極露出部に接合される。正極リード20の構成材料は導電性があれば、特に限定されない。正極リード20はアルミニウムを主成分とする金属によって構成されることが好ましい。
【0020】
正極露出部は、例えば、正極11の長手方向γの中央部に設けることができる。正極露出部は、正極11の長手方向γの端部寄りに形成されてもよいが、集電性の観点から、好ましくは長手方向γの両端から略等距離の位置に設けられるのが好ましい。このような位置に設けられた正極露出部に正極リード20が接続されることで、電極体14として巻回された際に、正極リード20は、図2に示すように電極体14の径方向βの中間位置で巻回軸方向αの端面から突出して配置される。正極露出部は、例えば、正極集電体の一部に正極スラリーを塗布しない間欠塗布により設けられる。
【0021】
負極12は、帯状の負極集電体と、負極集電体の少なくとも一方の表面に形成された負極活物質層とを有する。負極活物質層は、負極集電体の両面に形成されていることが好ましい。負極集電体には、例えば、銅などの金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等が用いられる。好適な負極集電体は、銅又は銅合金を主成分とする金属の箔である。負極集電体の厚みは、例えば5μm~30μmである。
【0022】
負極活物質層は、負極集電体の両面において、後述の負極露出部を除く全域に形成されることが好適である。負極活物質層は、負極活物質及び結着剤を含むことが好ましい。負極12は、例えば、負極活物質、結着剤、及び水等を含む負極スラリーを負極集電体の両面に塗布した後、乾燥および圧延することにより作製される。
【0023】
負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出できるものであれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛等の炭素材料、Si、Sn等のリチウムと合金化する金属、又はこれらを含む合金、酸化物などを用いることができる。負極活物質層に含まれる結着剤には、例えば、正極11の場合と同様に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが用いられる。水系溶媒で負極スラリーを調製する場合は、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、CMC又はその塩、ポリアクリル酸又はその塩、ポリビニルアルコール等を用いることができる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
負極12には、負極集電体の表面が露出した負極露出部が設けられる。負極露出部は負極リード21が接続される部分であって、負極集電体の表面が正極活物質層に覆われていない部分である。負極リード21は、例えば、超音波溶接によって正極露出部に接合される。負極リード21の構成材料は導電性があれば、特に限定されない。負極リード21はニッケル又は銅を主成分とする金属によって、または、ニッケル及び銅の両方を含む金属によって、構成されることが好ましい。
【0025】
負極露出部は、例えば、負極12の長手方向γの内端部に設けられる。この場合、図2に示すように、負極リード21は電極体14の径方向βの中心部で巻回軸方向αの端面から突出して配置される。ここで、内端部及び外端部とは、正極11及び負極12のそれぞれの巻内側の端部及び巻外側の端部を意味する。負極露出部は、例えば、負極集電体の一部に負極スラリーを塗布しない間欠塗布により設けられる。負極リード21の配置位置は図2に示す例に限定されるものではなく、負極12の外端部に負極リード21を設けてもよい。また、負極リード21を内端部及び外端部の両方に設けてもよい。この場合、集電性が向上する。負極12の終端部の露出部を電池ケース15の内周面に接触させることにより、負極リード21を用いることなく負極12の終端部を電池ケース15に電気的に接続してもよい。
【0026】
図2に示すように、第1のセパレータ13aは正極11の巻外側に設けられ、第2のセパレータ13bは正極11の巻内側に設けられる。第1のセパレータ13a及び第2のセパレータ13bは、正極11と負極12の間に介在することで、正極11と負極12を物理的及び電気的に分離する。また、第1のセパレータ13a及び第2のセパレータ13bは、外部からの衝撃を受けた際には正極11及び負極12を保護する。
【0027】
第1のセパレータ13a及び第2のセパレータ13bには、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布などが挙げられる。第1のセパレータ13a及び第2のセパレータ13bの基材の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂を使用することができる。第1のセパレータ13a及び第2のセパレータ13bの厚みは、例えば10μm~50μmであり、好ましくは9μm~17μmである。第1のセパレータ13a及び第2のセパレータ13bは、例えば130℃~180℃程度の融点を有する。
【0028】
第2のセパレータ13bの突き刺し強度は、第1のセパレータ13aの突き刺し強度よりも高い。これにより、正極11と負極12の間の絶縁性を高めることができる。その理由は次のように考えられる。正極11及び負極12が渦巻状に巻回されると、それぞれの巻内側の活物質層は圧縮応力を受ける。正極11には硬い活物質が含まれているため、正極活物質層が圧縮応力を吸収することができない場合がある。そのため、正極11の巻内側の第2のセパレータ13bは巻外側の第1のセパレータ13aに比べて正極合剤層から応力を受けやすい。したがって、第2のセパレータ13bの突き刺し強度を高めることが正極11と負極12の間の絶縁性を高めるために有効な手段である。突き刺し強度の測定は、JIS規格JIS Z-1707に準拠して行う。固定した突き刺し強度測定試料(セパレータ)に直径1.0mm、先端径0.5mmの半円形の針を50±5mm/minの速度で突き刺し、針が貫通するまでの最大応力を測定する。無作為に抽出した5個の突き刺し強度測定試料について測定を行い、測定結果の平均値を当該セパレータの突き刺し強度の値とする。
【0029】
また、第1のセパレータ13aを正極11の巻外側に設け、第2のセパレータ13bを正極11の巻内側に設けることで、非水電解質二次電池10が外部から衝撃を受けた場合のセパレータの破断が抑制される。そのため、充電状態の非水電解質二次電池10に外部からの衝撃が加わっても、熱暴走を抑制することができる。突き刺し強度の低い第1のセパレータ13aは第2のセパレータ13bに比べて巻回軸方向αの伸び率が高い傾向にある。そのため、第1のセパレータ13aと第2のセパレータ13bの伸び率の相違が熱暴走の抑制に寄与していることが推察される。したがって、正極11の巻外側に突刺し強度が低い第1のセパレータ13aを配置し、正極11の巻内側に突き刺し強度が高い第2のセパレータ13bを配置することで、正極11と負極12の間の絶縁性が高められ、外部からの衝撃に強い非水電解質二次電池10を得ることができる。
【0030】
第1のセパレータ13aは、突き刺し強度が3.0N以上3.9N未満で、巻回軸方向αの伸び率が185%以上260%以下であることが好ましく、より好ましくは突き刺し強度が3.0N以上3.7N以下で、巻回軸方向αの伸び率が185%以上220%以下である。第2のセパレータ13bは、突き刺し強度が3.9N以上6.0N以下で、巻回軸方向αの伸び率が170%以上240%以下であることが好ましく、より好ましくは突き刺し強度が3.9N以上5.0N以下で、巻回軸方向αの伸び率が170%以上200%以下である。
【0031】
巻回軸方向αの伸び率の測定は、JIS規格JIS K-7127に準拠して行う。第1のセパレータ13a及び第2のセパレータ13bをそれぞれ幅10mm~25mmで、長さ150mm以上に切断して伸び率測定試料を作製する。試験機の軸に当該伸び率測定試料の長手方向が一致するようにつかみ具に取り付け、当該伸び率測定試料を一定速度で引っ張った時の引張力と伸びを測定して巻回軸方向αの伸び率を測定する。
【0032】
また、負極リード21が負極12の長手方向γの内端部に設けられた場合には、負極リード21の巻外側の部位において、正極11と負極12の間の絶縁性が低下する場合がある。したがって、負極リード21を負極12の長手方向γの内端部に設けた場合には、正極11と負極12の間の絶縁性を向上させる本実施形態の効果が顕著となる。
【0033】
第1のセパレータ13a及び第2のセパレータ13bは、ポリオレフィン系樹脂を押し出しでシート状に成形した後に、流れ方向(MD:Machine Direction)と流れ方向に垂直な方向(TD:Transverse Direction)とに同時又は逐次で延伸して薄膜化して作製する。延伸することでポリオレフィン系樹脂の分子が配向し、結晶化することで突き刺し強度を向上させることができる。一方、ポリオレフィン系樹脂は予め延伸できる量が決まっており、薄膜化の際に延伸を行うと、薄膜化後の第1のセパレータ13a及び第2のセパレータ13bの伸び率が小さくなってしまう。つまり、第1のセパレータ13a及び第2のセパレータ13bの伸び率と突き刺し強度はトレードオフの関係となっている。
【実施例
【0034】
以下、実施例により本開示をさらに説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
<実施例>
[正極の作製]
正極活物質として、LiNi0.88Co0.09Al0.03で表されるアルミニウム含有ニッケルコバルト酸リチウムを用いた。100質量部のLiNi0.88Co0.09Al0.03と、1.0質量部のアセチレンブラックと、0.9質量部のポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを混合し、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を適量加えて、正極スラリーを調製した。次に、当該正極スラリーを厚み15μmのアルミニウム箔からなる長尺状の正極集電体の両面に塗布し、塗膜を100℃~150℃に加熱して乾燥させた。ロールを用いて乾燥した塗膜を圧縮して厚みを0.144mmとした後に、幅62.6mm、長さ861mmに切断して、正極集電体の両面に正極活物質層が形成された正極を作製した。
【0036】
[負極の作製]
95質量部の黒鉛と、5質量部のSi酸化物と、1質量部のカルボキシメチルセルロース(CMC)と、1質量部のスチレン-ブタジエンゴムとを混合し、水を適量加えて、負極スラリーを調製した。次に、当該負極スラリーを厚み8μmの銅箔からなる長尺状の負極集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた。ロールを用いて乾燥した塗膜を圧縮して厚みを0.160mmとした後に、幅64.2mm、長さ959mmに切断し、負極集電体の両面に負極活物質層が形成された負極を作製した。
【0037】
[セパレータ]
セパレータは、ポリオレフィン系樹脂製の2種類を用意した。第1のセパレータとしては、厚みが15μm、突き刺し強度が3.8Nで、巻回軸方向の伸び率が247%のセパレータAを使用した。また、第2のセパレータとしては、厚みが15μm、突き刺し強度が3.9Nで、巻回軸方向の伸び率が178%のセパレータBを使用した。
【0038】
[電解液の調製]
エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルメチルカーボネート(DMC)とからなる混合溶媒(体積比でEC:DMC=1:3)の100質量部に、ビニレンカーボネート(VC)を5質量部添加した。当該混合溶媒に1.5モル/Lの濃度になるようにLiPFを溶解させて、電解液を調製した。
【0039】
[耐圧試験]
巻内側から第2のセパレータ、正極、第1のセパレータ、負極の順となるように重ねてから巻回して巻回形の電極体を10個作製した。当該電極体のそれぞれに45℃雰囲気で1200Vの交流電圧をかけ、100mA以上の電流が流れるかどうかを確認した。100mA以上の電流が流れた電極体を不良とし、それ以外を良として、不良率を算出した。
【0040】
[衝撃試験]
巻内側から第2のセパレータ、正極、第1のセパレータ、負極の順となるように重ねてから巻回して巻回形の電極体を2個作製した。当該電極体の上と下とに絶縁板をそれぞれ配置し、電極体を電池ケースに収容した。次いで、負極リードを電池ケースの底部に溶接するとともに、正極リードを内圧作動型の安全弁を有する封口体に溶接した。その後、電池ケースの内部に電解液を減圧方式により注入した後、電池ケースの開口端部を、ガスケットを介して封口体にかしめるように電池ケースの開口端部を封口して、円筒形二次電池を2個作製した。作製した電池を25℃雰囲気において1410mA(0.3時間率)の定電流充電にて3.75Vまで充電した後、3.75Vで終止電流を94mAとした定電圧充電を行った。その後、一方の電池には、UN輸送試験条件のT6衝突試験の項目(電池中央に直径15.8mmの金属製の丸棒を置き、9.1kgの重りを61cmの高さから落下)に準じて試験を行った。他方の電池には9.1kgの重りを80cmの高さから落下させた以外は一方の電池と同様にして試験を行った。試験後6時間以内に、それぞれの電池からの発火及び電池の破裂がないかを確認した。発火・破裂がない場合を良とし、それ以外の場合を不良とした。
【0041】
<比較例1>
第1のセパレータ及び第2のセパレータにセパレータAを使用したこと以外は、実施例1と同様にして巻回形の電極体を作製した。
【0042】
<比較例2>
第1のセパレータ及び第2のセパレータにセパレータBを使用したこと以外は、実施例1と同様にして巻回形の電極体を作製した。
【0043】
<比較例3>
第1のセパレータにセパレータBを、第2のセパレータにセパレータAを使用したこと以外は、実施例1と同様にして巻回形の電極体を作製した。
【0044】
実施例及び比較例についての評価結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
第1のセパレータと第2のセパレータにそれぞれセパレータAとセパレータBを使用した実施例1は、耐圧試験で不良が発生せず、重りの落下高さが80cmの衝撃試験でも良となった。また、重りの落下高さが61cmの衝撃試験においては実施例及び比較例の全てで良となったが、重りの落下高さが80cmの衝撃試験においては、突き刺し強度は高いが巻回軸方向の伸び率があまり高くないセパレータBを正極の巻内側及び巻外側に使用した比較例2が不良となった。円筒形二次電池が衝撃を受けた際にセパレータが十分に伸びなかったために、比較例2では不良が発生したと考えられる。また、耐圧試験については、比較例1~3で不良が発生し、特に正極の巻内側に突き刺し強度が低いセパレータAを設置した比較例1、3での不良の発生が顕著であった。このように、2種類のセパレータを正極の巻内側及び巻き外側にバランス良く配置することで耐圧試験及び衝撃試験で良好な結果を得られることが確認された。
【符号の説明】
【0047】
10 非水電解質二次電池、11 正極、12 負極、13a 第1のセパレータ、13b 第2のセパレータ、14 電極体、15 電池ケース、16 外装体、17 封口体、18,19 絶縁板、20 正極リード、21 負極リード、22 張り出し部、23 フィルタ、24 下弁体、25 絶縁部材、26 上弁体、27 キャップ、28 ガスケット
図1
図2