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  • 特許-活性炭成形体の製造方法 図1
  • 特許-活性炭成形体の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】活性炭成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/318 20170101AFI20240301BHJP
   C04B 35/524 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
C01B32/318
C04B35/524
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023065247
(22)【出願日】2023-04-12
【審査請求日】2023-05-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】397029873
【氏名又は名称】株式会社大木工藝
(74)【代理人】
【識別番号】100121337
【弁理士】
【氏名又は名称】藤河 恒生
(72)【発明者】
【氏名】大木 武彦
(72)【発明者】
【氏名】成澤 博
【審査官】宮脇 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-164667(JP,A)
【文献】特開2022-067482(JP,A)
【文献】特開2003-104710(JP,A)
【文献】特開平10-208985(JP,A)
【文献】特開2004-315241(JP,A)
【文献】特開昭61-186209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/30 - 32/39
C04B 35/52 - 32/536
B01J 20/20
H01M 4/583
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂に炭素系導電材(活性炭を除く)の粉末を前記熱可塑性樹脂に対し重量比50%~100%添加して、バインダーは用いずに混合する混合工程と、
該混合工程後の前記熱可塑性樹脂を成形機の中に流し込んで成形する成形工程と、
該成形工程後の前記成形機から取り出した状態の前記熱可塑性樹脂を無酸素状態で加熱して炭化する炭化工程と、
該炭化したものに賦活処理をする賦活処理工程と、
を有する活性炭成形体の製造方法。
【請求項2】
熱可塑性樹脂に炭素系導電材(活性炭を除く)の粉末を前記熱可塑性樹脂に対し重量比50%~100%添加して、バインダーは用いずに混合する混合工程と、
該混合工程後の前記熱可塑性樹脂を成形機の中に流し込んで成形し、前記熱可塑性樹脂を前記成形機の中に保持したまま無酸素状態で加熱して炭化する成形炭化工程と、
該炭化したものに賦活処理をする賦活処理工程と、
を有する活性炭成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂を炭化して得られる活性炭成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
活性炭は、多孔質の炭化物であり、臭いや有害物質などを吸着するように微細に破砕したものを単純に集めた典型的なものの他に、所定の形状に成形したものである活性炭成形体が知られている。活性炭成形体は、例えば、特許文献1に示されているように、電気二重層キャパシタの分極性電極などに用いられている。活性炭は、様々な材料を炭化して得ることが可能であり、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を炭化して得ることも可能である(特許文献1参照)。
【0003】
活性炭成形体は、一般的には、微細に破砕した活性炭をバインダーで結着して成形する(特許文献1参照)ことにより得るが、特許文献2に示されるように、熱硬化性樹脂を所定の形状に成形し、それを炭化することにより得ることも可能である。後者の製造方法は、前者の製造方法に比べ、工程が簡単であり経済的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-269518号公報
【文献】特開2002-234772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂は、それを材料とする商品の廃棄物又は商品生産時の残渣などの廃棄物を再利用できれば、炭化する材料を生成する工程が省略できてコスト削減も可能であり、また、ゴミ削減及び資源のリサイクルにも寄与する。また、世の中の商品の量及びそれに応じた廃棄物の量は、熱可塑性樹脂が熱硬化性樹脂に比べ各段に多い。しかし、熱可塑性樹脂は、それを所定の形状に成形して炭化のために加熱して高温にすると、熱可塑性のために形状を保持し難い。
【0006】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱可塑性樹脂を所定の形状に成形しそれを炭化することにより活性炭成形体を得ることが可能な活性炭成形体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の活性炭成形体の製造方法は、熱可塑性樹脂に炭素系導電材(活性炭を除く)の粉末を前記熱可塑性樹脂に対し重量比50%~100%添加して、バインダーは用いずに混合する混合工程と、該混合工程後の前記熱可塑性樹脂を成形機の中に流し込んで成形する成形工程と、該成形工程後の前記成形機から取り出した状態の前記熱可塑性樹脂を無酸素状態で加熱して炭化する炭化工程と、該炭化したものに賦活処理をする賦活処理工程と、を有する。
【0008】
請求項2に記載の活性炭成形体の製造方法は、熱可塑性樹脂に炭素系導電材(活性炭を除く)の粉末を前記熱可塑性樹脂に対し重量比50%~100%添加して、バインダーは用いずに混合する混合工程と、該混合工程後の前記熱可塑性樹脂を成形機の中に流し込んで成形し、前記熱可塑性樹脂を前記成形機の中に保持したまま無酸素状態で加熱して炭化する成形炭化工程と、該炭化したものに賦活処理をする賦活処理工程と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の活性炭成形体の製造方法によれば、熱可塑性樹脂を所定の形状に成形し炭化することにより活性炭成形体を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る活性炭成形体の製造方法を示す概念図である。
図2】同上の製造方法の変形例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。本発明の実施形態に係る活性炭成形体の製造方法によって製造することができる活性炭成形体1は、所定の形状に成形したものである。活性炭成形体1は、用途に応じて様々な形状にすることが可能であるが、例えば、電気二重層キャパシタの分極性電極、レドックスフロー電池や淡水化CDI装置などの電極、又は建築部材(断熱材、電磁波吸収材、防音材など)等では板形状とすることができる。
【0012】
本発明の実施形態に係る活性炭成形体の製造方法は、図1に示すように、混合工程SAと成形工程SBと炭化工程SCを有する。
【0013】
混合工程SAは、熱可塑性樹脂2に炭素系導電材3の粉末を添加して混合する工程である。
【0014】
熱可塑性樹脂2は、常温の硬化した状態から加熱して行くと軟化し更には流動化し、その後に冷却して行くと再度硬化した状態になるものであり、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、塩化ビニール(PVC)、メタクリル(PMMA)などが含まれる。
【0015】
炭素系導電材3は、炭素原子同士が結合して導電性を示すものであり、例えば、黒鉛、カーボンブラック(アセチレンブラックやファーネスブラックなど)、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェンなどが含まれる。また、炭素系導電材3の粉末は、粉状、粒子状、短繊維状のものなどが含まれる。
【0016】
熱可塑性樹脂2に炭素系導電材3の粉末を添加して混合する際は、常温で、熱可塑性樹脂2の粒状物(例えば、熱可塑性樹脂2の破砕物のペレットなど)の集合体に炭素系導電材の粉末3を添加して万遍なく混合するようにできる。
【0017】
成形工程SBは、混合工程SA後の熱可塑性樹脂2を成形する工程である。
【0018】
具体的には、成形工程SBでは、加熱して流動化した熱可塑性樹脂2を活性炭成形体1の所定の形状に応じた成形機の中に流し込んで成形する。その後、熱可塑性樹脂2を成形機の中から取り出す。熱可塑性樹脂2の温度は、その取り出しの前後で下げるようにする。
【0019】
炭化工程SCは、成形工程SB後の熱可塑性樹脂2の成形体1’を炭化する工程である。
【0020】
熱可塑性樹脂2は、無酸素状態で加熱されて炭化して行き、熱可塑性樹脂2には多数の空孔が発生する。
【0021】
一方、炭素系導電材3は、導電性を示すほどによく炭素原子同士が全体にわたって結合できるため、熱可塑性樹脂2が加熱され炭化の温度になっても、炭素原子同士の結合状態を保つことができる。また、炭素系導電材3は、炭化した熱可塑性樹脂2と同じ炭素原子からなるものなので、炭化した熱可塑性樹脂2との親和性もよく、接触部分近傍で見れば比重もほぼ変わらない。
【0022】
こうして、混合工程SAで炭素系導電材3の粉末が混合され成形工程SBで成形された熱可塑性樹脂2は、成形時の所定の形状をほぼ保って炭化され、活性炭成形体1となる。
【0023】
炭化工程SC後は、活性炭成形体1に一般的な賦活処理をすることができる。
【0024】
次に、本発明の実施形態に係る活性炭成形体の製造方法の変形例を説明する。ここでは、上記混合工程SA後に成形炭化工程SDを行う。成形炭化工程SDは、上記混合工程SA後の熱可塑性樹脂2を成形し炭化する工程である。
【0025】
具体的には、成形炭化工程SDでは、加熱して流動化した熱可塑性樹脂2を活性炭成形体1の所定の形状に応じた成形機の中に流し込んで成形し、熱可塑性樹脂2を成形機の中に保持したまま、上記炭化工程SCと同様にして炭化する。こうして、混合工程SAで炭素系導電材3の粉末が混合され成形炭化工程SDで成形されて炭化され、活性炭成形体1となる。
【0026】
成形炭化工程SD後は、活性炭成形体1に一般的な賦活処理をすることができる。
【0027】
次に、本願発明者の行った実験について説明する。熱可塑性樹脂2をポリエチレンテレフタレート(PET)とし、炭素系導電材3を黒鉛とした。成形機として押出器を用いてスパゲッティ状のもの(ストランド)を作製し、それを炭化して試料とした。以下の表1において、試料Aは炭素系導電材3の粉末を熱可塑性樹脂2に対し重量比100%(つまり、同じ重量)で添加したもの、試料Bは炭素系導電材3の粉末を熱可塑性樹脂2に対し重量比50%で添加したもの、試料Cは炭素系導電材3の粉末を熱可塑性樹脂2に対し重量比10%で添加したもの、試料Dは炭素系導電材3を添加しなかったものである。
【0028】
【表1】
【0029】
表1のように、試料C、Dでは活性炭成形体1の形状が保持できていないが、試料A、Bでは活性炭成形体1の形状が保持できている。
【0030】
このように、熱可塑性樹脂2に適正量の炭素系導電材3の粉末を添加することにより、熱可塑性樹脂2を所定の形状に成形して炭化することにより活性炭成形体1を得ることが可能になる。また、熱可塑性樹脂2に廃棄物を用いると、コスト削減も可能であり、また、ゴミ削減及び資源のリサイクルにも寄与する。
【0031】
また、活性炭成形体1は、上記バインダーを用いずに炭素系導電材3を含むために、優れた導電性を有するように容易にできる。活性炭成形体1は、電気二重層キャパシタの分極性電極には、優れた導電性を利用してそのまま用いることができる。また、活性炭成形体1は、レドックスフロー電池や淡水化CDI装置などの電極には、優れた導電性を利用してそのまま用いることができる。
【0032】
また、活性炭成形体1は、導電性が必要でない場合でも、建築部材(断熱材、電磁波吸収材、防音材など)又はその他の部材に用いることができる。炭素系導電材3を含むと一般的に熱伝導性を高くすることができるため、その特性を建築部材又はその他の部材で利用することも可能である。
【0033】
以上、本発明の実施形態に係る活性炭成形体の製造方法について説明したが、本発明は、実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。例えば、上記成形工程SB時又は上記成形炭化工程SD時に、補強繊維などの補強材と組み入れて成形することも可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 活性炭成形体
1’ 熱可塑性樹脂の成形体
2 熱可塑性樹脂
3 炭素系導電材
SA 混合工程
SB 成形工程
SC 炭化工程
SD 成形炭化工程
【要約】
【課題】熱可塑性樹脂を所定の形状に成形し炭化することにより活性炭成形体を得ることが可能な活性炭成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】この活性炭成形体1の製造方法は、PET、PP、PE、PS、PVC、PMMAなどの熱可塑性樹脂2に黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェンなどの炭素系導電材3の粉末を添加して混合する混合工程SAと、混合工程SA後の熱可塑性樹脂2を成形する成形工程SBと、成形工程SB後の熱可塑性樹脂2を炭化する炭化工程SCと、を有する。
【選択図】図1
図1
図2