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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】低糖質化もち及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20240301BHJP
【FI】
A23L7/10 102
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019158343
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021036773
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】502281585
【氏名又は名称】フジ日本精糖株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小枝 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 静香
(72)【発明者】
【氏名】石坂 万紀子
(72)【発明者】
【氏名】酒井 啓明
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-121454(JP,A)
【文献】特開2014-168416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
米及び/又は米粉、難消化性でんぷん、水溶性食物繊維、並びに増粘多糖類を含む、もち又はもち状食品であって、
もち及びもち状食品基準で、米及び/又は米粉を10~60質量%、難消化性でんぷんを10~50質量%、水溶性食物繊維を3~45質量%、増粘多糖類を0.1~10質量%、並びに水分を30~60質量%含む、もち又はもち状食品。
【請求項2】
難消化性でんぷんが、RS-3又はRS-4に分類される難消化性でんぷんである、請求項1に記載のもち又はもち状食品。
【請求項3】
水溶性食物繊維が、イヌリン、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、及びイソマルトデキストリンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1又は2に記載のもち又はもち状食品。
【請求項4】
もち又はもち状食品の全量基準で、糖質の量が40質量%以下である、請求項1~3のいずれかに記載のもち又はもち状食品。
【請求項5】
米及び/又は米粉に、難消化性でんぷん、水溶性食物繊維、及び増粘多糖類を添加する工程を含む、
もち及びもち状食品基準で、米及び/又は米粉を10~60質量%、難消化性でんぷんを10~50質量%、水溶性食物繊維を3~45質量%、増粘多糖類を0.1~10質量%、並びに水分を30~60質量%含む、もち又はもち状食品の製造方法。
【請求項6】
水溶性食物繊維及び増粘多糖類を添加することで、もち及びもち状食品基準で、米及び/又は米粉を10~60質量%、難消化性でんぷんを10~50質量%、水溶性食物繊維を3~45質量%、増粘多糖類を0.1~10質量%、並びに水分を30~60質量%となるようにする、低糖質化もち又は低糖質化もち状食品の食感及び風味改良方法。
【請求項7】
請求項1~4のいずれかに記載のもち又はもち状食品を含む、食品組成物。
【請求項8】
請求項1~4のいずれかに記載のもち又はもち状食品を使用することを特徴とする、食品組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な食感及び風味を有する低糖質化したもち又はもち状食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
もちとは一般にもち米に水を加え、蒸すなどの様々な方法で熱を加え、臼などで搗くなどの方法で米粒をつぶし練り上げ、成型した搗き餅のことであるが、搗き餅以外にも、米粉を使用した餅やその他の原料を配合したもち状食品に関しても、もちとして扱われることもある。また製造方法の異なる白玉や団子類や柏餅のようにうるち米を使用した食品も含めもち状食品とされる。
【0003】
もちの一世帯当たりの年間購入量は漸減しているが、各メーカーが年間を通じて販売できる餅製品を開発し、現在では個別包装され長期保存ができるもちが浸透し、スーパーなどで非需要期でも販売されている。これらの包装餅に限っては生産量を維持している。さらに市場を広げるべく、様々な工夫がなされており、例えば、α化させた餅粉とでんぷんを用いてお湯で戻せるもち様食品(特許文献1)やβグルカンを用いて電子レンジで加熱してもち様食品を作るためのミックス粉(特許文献2)などが提案されている。
【0004】
近年、糖尿病などに代表される生活習慣病の改善・予防は大きな課題である。食事の欧米化が進み、栄養の過剰摂取傾向にあり、炭水化物などの糖質の過剰摂取の防止に努めることが近年「低糖質」として大きな注目を集めている。糖質の過剰摂取は血糖値を上昇させるだけでなく消費しきれなかったブドウ糖が、体内で内臓脂肪や皮下脂肪に変化することが知られ、さまざまな疾患との因果関係が示唆されている。高血糖やインスリンの働きを改善するための極端な糖質制限や、適正な量であれば糖質を摂取してよいという比較的緩やかな糖質制限を行うことなど、様々な方法が提案されている。ダイエット法として糖質の量を気にすれば、タンパク質や油分は気にしなくてよいというわかりやすさから、近年広く受け入れられ、様々な低糖質食品が開発、販売されている。
【0005】
低糖質食品の開発においてはさまざまな方法が提案されている。例えば麺類は、食物繊維(例えば、難消化性でんぷん類)や活性グルテンを含有させることにより、麺内の糖質含量を低下させている(特許文献3)。また、パンでは、大豆粉や、グルテン、小麦ふすまを含み、糖質量を減らすものなどが提案されている(特許文献4)。米においては米中のアミロースを増やし、吸水量を多くすることで低糖質化する商品などが販売されている。しかしながら、もちやもち状食品においてはもち特有の食感として粘りや伸びなどがあり、麺やパンなどの食品の方法を用いることは難しい。
【0006】
これまでの米や米粉の加工は、その物性を変化させることに重点が置かれていた。例えば、米粉と増粘剤と水とから、餅の風味・食感を有しながら、餅特有の硬さ及び粘りを低減させ、咀嚼・嚥下困難者の喫食に適した物性を有する食品の製法が提案されている(特許文献5)。膨潤させたカードランを用いてレトルト加工後に冷蔵保存をしても、溶け崩れが生じにくく食感も低下しにくいもち類又は団子類の製法なども提案されている(特許文献6)。しかしながら、もちの糖質量は100g当たり50gとされ、麺類などに次いで糖質量が高い食品であり、血糖値のコントロールや糖質制限を心掛ける人にとっては気軽に摂取できない食品である。また、もちやもち状食品を、もち様の風味や食感を十分に維持しながら低糖質化された例は確認できなかった。
【0007】
和菓子や菓子類を低糖質化した商品も多く開発されている。それらの多くは低糖質化のために砂糖を減らして甘味をつけるために高甘味度甘味料を使用している。また、小麦粉の一部を大豆粉などに変更して低糖質化を実現しているものもある。しかしながら、もちやもち状食品を含んだ菓子類を低糖質化する試みはなされているが、もちやもち状食品の糖質が高く、十分に満足いくものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開第2009-261298公報
【文献】特開第2011-115114公報
【文献】特開第2017-158446公報
【文献】特開第2016-158608公報
【文献】特開第2016-116450公報
【文献】特開第2000-93102公報
【文献】特許第3611660号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、食感及び風味が良好な、低糖質化したもち又はもち状食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは鋭意研究をした結果、増粘多糖類に加え、難消化性でんぷんと水溶性食物繊維を添加することで、もち本来の味や食感を損なうことなくもちを低糖質化させることができることを発見し、本発明を完成するに至った。本発明は、具体的には以下の通りである。
<1> 米及び/又は米粉、難消化性でんぷん、水溶性食物繊維、並びに増粘多糖類を含む、もち又はもち状食品。
<2>難消化性でんぷんが、RS-3又はRS-4に分類される難消化性でんぷんである、<1>に記載のもち又はもち状食品。
<3>水溶性食物繊維が、イヌリン、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、及びイソマルトデキストリンからなる群から選択される少なくとも1つである、<1>又は<2>に記載のもち又はもち状食品。
<4>もち及びもち状食品基準で、米及び/又は米粉を10~60質量%、難消化性でんぷんを10~50質量%、水溶性食物繊維を3~45質量%、増粘多糖類を0.1~10質量%、並びに水分を30~60質量%含む、<1>~<3>のいずれかに記載のもち又はもち状食品。
<5>もち又はもち状食品の全量基準で、糖質の量が40質量%以下である、<1>~<4>のいずれかに記載のもち又はもち状食品。
<6>米及び/又は米粉に、難消化性でんぷん、水溶性食物繊維、及び増粘多糖類を添加する工程を含む、もち又はもち状食品の製造方法。
<7>水溶性食物繊維及び増粘多糖類を添加する工程
を含む、難消化性でんぷんを含む低糖質化もち又は低糖質化もち状食品の食感及び風味改良方法。
<8><1>~<5>のいずれかに記載のもち又はもち状食品を含む、食品組成物。
<9><1>~<5>のいずれかに記載のもち又はもち状食品を使用することを特徴とする、食品組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、食感及び風味が良好な、低糖質化されたもち又はもち状食品を提供することが可能となる。
【0012】
(もち又はもち状食品)
本明細書において、「もち状食品」とは、米及び/又は米粉に水分、及び必要に応じてその他の原料と熱を加えた後、外力を負荷して成形した食品であり、もちに類する風味及び食感を有するものを意味する。本発明のもち又はもち状食品は、米及び/又は米粉、難消化性でんぷん、水溶性食物繊維、並びに増粘多糖類を含む。
米及び/又は米粉は、加工してあるものでもよい。また、他の穀物又は他の穀物からの抽出物(でんぷんなど)を米及び又は米粉に加えて使用してもよい。
本発明のもち状食品は、製造方法の簡便さ等及び顧客の購買意欲の増大の観点で、好ましくは、もちと同様の物性(弾力、性状、粘りなど)及び外観を有する。
【0013】
(低糖質化)
本明細書において、「低糖質化」とは、もち又はもち状食品において、炭水化物から食物繊維を除いた糖質の含有量を制限することを意味する。なお、日本食品標準成分表2015年版(七訂)では、もちは100g中約50g(50質量%)が糖質であるとされている。
本明細書において「糖質」とは、炭水化物から食物繊維を除いたものを意味し、且つヒトのエネルギー源となる栄養素を意味する。でんぷんは一般的には糖質に該当するが、難消化性でんぷんは、後述のように体内で消化されず、本明細書における「糖質」には含まれない。
【0014】
本発明のもち又はもち状食品は、もち又はもち状食品基準で、糖質の量が40質量%以下であり、35質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下がさらに好ましい。
【0015】
(難消化性でんぷん)
本明細書において、「難消化性でんぷん」とは、ヒトの小腸内での酵素消化作用を逃れるでんぷん及びでんぷん分解物を意味する。難消化性でんぷん(Resistant Starch(RS))は、RS-1~4に分類されている。「RS-1」は粉砕が不十分な穀粒などに含まれるでんぷんであり、物理的に消化酵素が作用できない。「RS-2」は主にアミロース含量が50%を超えるでんぷんであり、通常の調理では糊化せずに残り、消化抵抗性を示す。「RS-3」は老化によりでんぷん分子を再結晶化することで,アミラーゼが作用しにくくなり、消化抵抗性を示すでんぷんである。「RS-4」は老化防止などでんぷんの物性改良を目的に化学的処理されたもので,各種の加工食品の製造に糊料,乳化剤などとして用いられている。
【0016】
本発明において使用される難消化性でんぷんは、食品に利用できるものであればよく、原料としては、粳米、糯米、馬鈴薯、ワキシー馬鈴薯、タピオカ、小麦、トウモロコシ、ワキシートウモロコシ、甘藷、蕨、クズ、サゴなどが使用できる。RS-3やRS-4における加工の方法も食品に利用できるものであればよく、食品用加工でんぷんに使われる化学処理、例えば、エーテル化処理、リン酸架橋処理、エステル化処理、漂白、酸化処理、及び物理処理、例えば湿熱処理などがあげられ、単独あるいは組み合わせ処理した加工処理でんぷんが使用できる。
【0017】
本発明のもち又はもち状食品では、RS-3又はRS-4に分類される難消化性でんぷんを用いることが好ましい。本発明のもち又はもち状食品では、例えば、アミロジェル(RS-3)、パインスターチ(RS-4)、ファイバージムRW(RS-4)等が使用できる。
【0018】
難消化性でんぷんの含有量は、もち又はもち状食品の風味及び低糖質化効果を考慮して、もち又はもち状食品基準で、例えば10~50質量%、15~45質量%、15~40質量%、20~35質量%、又は20~30質量%であることができる。
【0019】
(水溶性食物繊維)
本明細書において、「水溶性食物繊維」とは、ヒトの胃や腸などの消化管では消化・吸収されにくい難消化性の食物繊維のうち水溶性のものであり、且つ増粘多糖類に該当しないものを意味する。食物繊維とは、ヒトの胃や腸などの消化管では消化・吸収されにくい難消化性の糖質とされている。食物繊維は、大きく不溶性食物繊維と水溶性食物繊維に分けられ、不溶性食物繊維の代表としてセルロース、小麦ふすま、キチンなどが例示できる。水溶液が高い粘性を示すペクチンやゲルを形成する寒天など、溶媒に添加することにより粘性やゲル化能を示すものは、増粘多糖類に該当する。水溶性食物繊維として一般的に多く利用されているのは、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、イヌリンなどである。これらの水溶性食物繊維は血糖値の上昇抑制、整腸作用、血中脂質の低下など種々の生理作用を有していることが知られている。
【0020】
本発明に使用するために適切な水溶性食物繊維としては、例えば難消化性デキストリン、ポリデキストロース、イヌリン、イソマルトデキストリンなどが例示できる。
【0021】
水溶性食物繊維の含有量は、もち又はもち状食品の食感及び風味を考慮して、もち又はもち状食品基準で、例えば3~45質量%、3~40質量%、3~35質量%、4~30質量%、4~25質量%、又は4~20質量%であることができる。
【0022】
物性及び食感を考慮して、水溶性食物繊維の添加量は、難消化性でんぷんの添加量の10~50%が好ましく、10~40%がより好ましく、10~35%がさらに好ましい。
【0023】
(増粘多糖類)
本明細書において「増粘多糖類」とは、複数の糖からなる高分子の水溶性多糖類で、ゲル化・増粘、タンパク質の安定化、ネットワーク形成、保水などの機能を有し、これらの目的で食品・飲料等に添加される食品添加物を意味する。
本発明において使用できる増粘多糖類は、例えば、ペクチン、プルラン、グアーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、タマリンドガム、カラギーナン、カルボキシルメチルセルロース、グルコマンナン、カードラン、ゼラチン、寒天、アラビアガム、アルギン酸やその塩類、大豆多糖類などが挙げられる。増粘多糖類は、一種類のみを使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
【0024】
増粘多糖類とは一般的に、水に溶解すると粘性を示したり、ゲル化したりする性質を持った水溶性の高分子物質の総称である。食品衛生法上では増粘安定剤や糊料に分類され、「水に溶解又は分散して粘稠性を生じる高分子物質」のこととされる。増粘安定剤は使い方によって、少量で高い粘性を示す場合には「増粘剤」、液体のものをゼリー状に固める作用(ゲル化)を目的として使う場合には「ゲル化剤」、粘性を高めて食品成分を均一に安定させる効果を目的として使う場合は「安定剤」とされる。本明細書における「増粘多糖類」には、増粘剤、ゲル化剤、安定剤のいずれも包含される。
【0025】
本発明のもち又はもち状食品における増粘多糖類の含有量は、もち又はもち状食品の物性及び食感を考慮して、もち又はもち状食品基準で、例えば0.1~10質量%、0.2~8質量%、0.3~6質量%、又は0.4~4.5質量%であることができる。
【0026】
(米及び/又は米粉)
本発明に使用できる米又は米粉は食品に利用できるものであればよく、もち米又はもち米粉が望ましいが、求められる食感に応じてうるち米粉を使用してもよい。米を添加してから粉砕して米粉として使用することもできる。また、でんぷん質、例えば馬鈴薯、ワキシー馬鈴薯、タピオカ、小麦、トウモロコシ、ワキシートウモロコシ、甘藷、蕨、クズ、サゴなどの粉を、米及び/又は米粉に加えて使用してもよい。
【0027】
本発明のもち又はもち状食品における米及び/又は米粉の含有量は、もち又はもち状食品基準で、例えば10~60質量%、10~50質量%、10~45質量%、10~40質量%、又は15~35質量%であることができる。なお、上記含有量は、米及び/又は米粉としての含有量であり、米及び/又は米粉を蒸らすための水は、後述する水分に含有される。
【0028】
本発明のもち又はもち状食品には、その効果を損なわない範囲において、食材、食品添加物等のその他の成分が含まれてもよい。食材としては、例えば、糖類、塩、醤油等の調味料類、ヨモギ、海苔、もち麦等が挙げられる。食品添加物としては、例えば、乳化剤、酸化防止剤、防腐剤、防かび剤等が挙げられる。
【0029】
本発明のもち又はもち状食品における水分の含有量は、もち又はもち状食品基準で、もち又はもち状食品の風味及び物性を考慮して、例えば30~70質量%、30~65質量%、又は30~60質量%であることができる。
【0030】
本発明のもち又はもち状食品は、通常のもちと同様の方法で製造することができ、異なる方法で製造することもできる。米粉などを膨潤したり、糊化するための手段としては、例えば、蒸す、茹でることや電子レンジによる加熱、滅菌機による加熱等が挙げられる。また、用途に応じて、パックに個別包装して加熱することも可能である。
本発明の効果が得られる限りにおいて、米及び/又は米粉、難消化性でんぷん、水溶性食物繊維、及び増粘多糖類を添加する順序は特に限定されない。また、予めプレミックスを作製してから添加してもよい。
【0031】
本発明のもち又はもち状食品は、もちと同様の物性を有することができ、したがって、本発明のもち又はもち状食品を使用し、常法によりおかきやせんべいなどの低糖質米菓を製造することもできる。また、高甘味度甘味料を使用することで、甘味を付与した低糖質化もち状食品を製造することもできる。
その他にも、当業者に公知の方法を用いて、例えば雑煮、ぜんざい、みそ汁、吸い物、スープ、サラダ、グラタン、ピザ、おやき、パン、お茶漬け、かきもち、あられ、ケーキ、煎餅、羊羹、プリン、ゼリー、どら焼き、アイスクリームなどを本発明のもち又はもち状食品を使用して製造することができる。これらの食品を製造する場合、これらの食品の製造会社が本発明のもち又はもち状食品を自ら調製することもでき、あるいは他社から購入して、食品を製造するために使用することもできる。
【実施例
【0032】
以下に実施例を記載し、本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。なお、%の表示は特に説明のない限り質量%を示す。
【0033】
試験例1~4の試験(比較例1~7、及び実施例1~13)については各処方に従って水以外の原材料を計量し、よく混合した。水を少しずつ加えながら練り上げ、15分間蒸し、一度攪拌し、再度15分間蒸した。蒸しあげた生地を均一になるまで練り上げたのち、伸展、成型し放冷した。十分に熱がとれたのち、密閉容器に入れ、各評価まで冷蔵保管を行った。なお、加水量は生地の状態を確認しながら添加量を調整した。試験例1~4において使用している増粘多糖類は、カラギナン、グルコマンナン、キサンタンガムの混合製剤を43.5%、カードラン8.7%、メチルセルロース34.8%、グルコマンナン13.0%を混合したものを使用している。
【0034】
試験例5~8(比較例8~16、及び実施例14~22)については増粘多糖類の量が異なるため、各処方に従って水以外の原材料を計量し、よく混合した。水を加えて練った後、電子レンジを用いて加熱し、さらに均一になるまで練り上げた。生地状態を確認しながら、必要に応じてさらに過熱・混錬後、伸展、成型し放冷した。十分に熱がとれたのち、密閉容器に入れ、各評価まで冷蔵保管を行った。
【0035】
生地状態、食感、伸び、風味及び色のそれぞれに関して、パネラー3~5人が評価し、比較例8のもちと比較した。生地状態は、手で触れた際の感触及び目視の状態であり、物性の評価項目である。生地状態を生地の加熱前、生地の加熱後成型前、及び放冷後固化時(流通時を想定)の3ポイントで評価した。食感及び伸びは、焼き餅を提供することを想定し、固化した各試料をオーブントースターで再加熱して、パネラーが食した際の食感及び伸びを評価した。糖質量は計算値を示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
試験例1の配合を表1に、結果を表2にまとめた。比較例1~5では難消化性でんぷんにより最適な加水量が大きく異なった。また、難消化性でんぷんと増粘多糖類を使用した低糖質もち状食品には、物性、食感及び風味においてさまざまな問題があることが確認された。また比較例5より米粉及び水溶性食物繊維のみではもち状の性質を形成することができなかったことが分かる。
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
試験例2の配合を表3に、結果を表4にまとめた。実施例1~6ではもち又はもち状食品として十分に利用、喫食できる範囲の物が得られた。実施例2及び3では、若干の雑味が確認できたが水溶性食物繊維によりマスキングされており、もちとして十分利用可能と判断した。水溶性食物繊維として難消化性デキストリンやイソマルトデキストリンを使用したものは、若干黄色みやクリーム色を呈するがきな粉などと食べる場合には十分実用に耐えるものであった。また、ポリデキストロースを使用したものは甘味があるが、黒糖を混ぜた寒もちなどのもちに砂糖を加えるもち状食品として利用する場合には十分実用に耐えうるものであった。中でもイヌリンを用いたものは色味ともによく、もちとしての風味や物性を有するものであった。
しかしながら、難消化性でんぷんを用いず不溶性食物繊維を使用した比較例6においてはもち状の食感及び物性を形成することができなかった。したがって、難消化性でんぷん及び水溶性食物繊維を組み合わせることで、もちにふさわしい物性(弾力及びまとまり)が得られると考えられた。
試験例2の結果により、米及び/又は米粉、難消化性でんぷん、水溶性食物繊維、並びに増粘多糖類を含む実施例1~6は、良好な物性、食感、及び風味を示すことが示された。
【0042】
【表5】
【0043】
【表6】
【0044】
試験例3の配合を表5に、結果を表6にまとめた。難消化性でんぷんと水溶性食物繊維の量を検証したところ、比較例7において水溶性食物繊維がない場合には糊っぽく、もち状の弾力にかけるものであった。さらには難消化性でんぷんの味が餅としての風味を損なうものであった。実施例7及び8では、若干の雑味が確認できたがマスキングされており、もちとして十分利用可能と判断した。実施例9では、やや甘みが感じられ、食感としては少し伸びが弱かったが、もちとして十分利用可能と判断した。また、実施例9では、工程中にべたつきが感じられたが、もちとして十分利用可能と判断した。
試験例3の結果により、米及び/又は米粉、難消化性でんぷん、水溶性食物繊維、並びに増粘多糖類を含む実施例7~9は、良好な物性、食感、及び風味を示すことが示された。
【0045】
【表7】
【0046】
【表8】
【0047】
試験例4の配合を表7に、結果を表8にまとめた。増粘多糖類の配合を変更したものの、大きな差は確認できなかった。
また、試験例4の結果により、米及び/又は米粉、難消化性でんぷん、水溶性食物繊維、並びに増粘多糖類を含む実施例10~13は、良好な物性、食感、及び風味を示すことが示された。
【0048】
【表9】
【0049】
【表10】
【0050】
試験例5の配合を表9に、結果を表10にまとめた。比較例8は一般的な餅の物性、食感及び風味を示し、試験方法に問題がないことを確認できた。また、比較例8の物性、風味、食感、及び色を基準として、全ての実施例及び比較例を評価した。比較例9~11より特許文献7にあるようなカードランを含む増粘多糖類を増量し、そして加水を増やすことにより低糖質化を試みたが、もち状の物性、食感、及び風味を示さなかった。
【0051】
【表11】
【0052】
【表12】
【0053】
試験例6の配合を表11に、結果を表12にまとめた。実施例14は、比較例8と同様の物性、食感、風味、及び色を示した。比較例12は、加熱前に液状となり、緩く、付着性が高く、べたつきもあり、食感が非常に悪い結果となった。
また、試験例6の結果により、米及び/又は米粉、難消化性でんぷん、水溶性食物繊維、並びに増粘多糖類を含む実施例14は、良好な物性、食感、及び風味を示すことが示された。
【0054】
【表13】
【0055】
【表14】
【0056】
試験例7の配合を表13に、結果を表14にまとめた。水溶性食物繊維を添加せず、難消化性でんぷん及び増粘多糖類のみを添加すると、でんぷん様の糊状食感が生じるなど、もちとは異なる風味が強く出てしまった。
【0057】
【表15】
【0058】
【表16】
【0059】
増粘多糖類を一種類又は二種類のみ使用した場合でも、実施例15~22のもち状食品は良好な食感及び風味を示した。
試験例8の結果により、米及び/又は米粉、難消化性でんぷん、水溶性食物繊維、並びに増粘多糖類を含む実施例15~22は、良好な食感、及び風味を示すことが示された。
【0060】
〔製造例1:低糖質化あんこ餅の製造〕
本発明のもち又はもち状食品を使用して、従来技術では製造することが困難であった、低糖質化した甘味を製造することができる。
【0061】
低糖質化したもちは実施例1と同じ配合及び調製方法で得た。
【0062】
低糖質あんは以下の方法で製造した。
まずは、小豆を定法によってゆで小豆とした。具体的には水洗い後、水で煮て蒸らし、ざるにとって、お湯を切って渋きりした。再度茹で上げ、適切な状態になったらところで湯切りし水に短時間浸漬して十分に水切りを行った。
【0063】
別の鍋にグラニュー糖7.4g、上白糖7.4g、イヌリン16.4gを測り取り、約40gの水を加えて加熱溶解し、低糖質化糖液を得た。
【0064】
ゆで小豆32.8gと低糖質化糖液をまぜ、火にかけて適切な硬さになるまであん錬し、粗熱をとり、低糖質あんを得た。
【0065】
低糖質もち42gに低糖質あんを18gのせることで、市販のあんこ餅と比較して糖質を70%低減したあんこ餅を作製することができた。
【0066】
〔製造例2:低糖質化あられの製造〕
本発明のもち又はもち状食品を使用して、従来技術では製造することが困難であった、低糖質化した米菓を製造することができる。
【0067】
低糖質化したもちは実施例1と同じ配合及び調製方法で得た。
【0068】
低糖質もちを薄く切り、50℃に設定した乾燥機で乾燥させ、その後170℃~180℃で油調することで、市販のあられと比較して糖質を50%低減したあられを作製することができた。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によれば、物性、食感及び風味が良好である低糖質化したもち又はもち状食品を提供することができる。