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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】ロータリダンパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/14 20060101AFI20240301BHJP
【FI】
F16F9/14 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019210245
(22)【出願日】2019-11-21
(65)【公開番号】P2021081028
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】519184930
【氏名又は名称】株式会社ソミックマネージメントホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】中屋 一正
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-183888(JP,A)
【文献】特開2009-185901(JP,A)
【文献】特開平06-337031(JP,A)
【文献】実開平02-102035(JP,U)
【文献】特開2018-084284(JP,A)
【文献】特開2015-194198(JP,A)
【文献】特開2012-197863(JP,A)
【文献】実開平03-110229(JP,U)
【文献】国際公開第2009/044910(WO,A1)
【文献】特開平08-303513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/14
F16F 9/12
F16F 9/32
F16F 9/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動体を液密的に収容する円筒状の内室を有するとともに同内室内に径方向に沿う壁状に形成されて前記流動体の周方向の流動を妨げる固定ベーンを有したハウジングと、
軸体の内部に貫通または有底の支持筒部が形成されるとともに同支持筒部の外側における前記軸体の外周部に前記内室内を仕切りつつ前記流動体を押しながら回動する可動ベーンを有したロータと、
前記ハウジングに設けられて前記内室を液密的に閉塞する蓋体と、
前記内室内に前記固定ベーンおよび前記可動ベーンによって形成されるとともに前記可動ベーンの回動方向によって容積が増加または減少する少なくとも2つの個室とを備えたロータリダンパにおいて、
前記ハウジングおよび前記蓋体のうちの一方に形成されて前記ロータにおける前記支持筒部の内周面を回動自在に支持する円筒状または軸状の第1ロータ支持部を備え、
前記第1ロータ支持部は、
前記ロータの軸線方向での前記可動ベーンの長さの中央部分で前記支持筒部を支持しており、
前記ハウジングは、
前記内室に隣接する位置に前記内室内の前記流動体の膨張または収縮による体積変化を吸収するアキュムレータを保持するアキュムレータ保持部を備え、
前記アキュムレータ保持部は、
前記ハウジングの内室内に張り出した状態で、かつ前記ハウジングの外周部に前記アキュムレータを出し入れ可能な大きさで開口して設けられていることを特徴とするロータリダンパ。
【請求項2】
請求項1に記載したロータリダンパにおいて、さらに、
前記ハウジングおよび前記蓋体のうちの他方に形成されて前記ロータにおける前記軸体を回動自在に支持する第2ロータ支持部を備え、
前記ロータは、
前記軸体に前記可動ベーンに対して軸線方向に突出する突出軸部が形成されており、
前記第2ロータ支持部は、
前記突出軸部を回動自在に支持する円筒状に形成されていることを特徴とするロータリダンパ。
【請求項3】
請求項2に記載したロータリダンパにおいて、
前記第2ロータ支持部は、
前記突出軸部の外周部を回動自在に支持していることを特徴とするロータリダンパ。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載したロータリダンパにおいて、
前記突出軸部は、
前記支持筒部に連通する貫通孔を有した筒状に形成されていることを特徴とするロータリダンパ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載したロータリダンパにおいて、
前記固定ベーンは、
前記内室内に1つだけ形成されていることを特徴とするロータリダンパ。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載したロータリダンパにおいて、さらに、
前記固定ベーンおよび前記可動ベーンのうちの少なくとも一方に、前記固定ベーンおよび前記可動ベーンのうちの他方に対して弾性的に接触するクッション体を備えることを特徴とするロータリダンパ。
【請求項7】
請求項1ないし請求項のうちのいずれか1つに記載したロータリダンパにおいて、
前記固定ベーンおよび前記可動ベーンのうちの少なくとも一方に、
互いに隣接する個室間で前記流動体を流通させる連通路を備えており、
前記連通路は、
前記流動体内の異物を濾すフィルタを備えることを特徴とするロータリダンパ。
【請求項8】
請求項2ないし請求項のうちのいずれか1つに記載したロータリダンパにおいて、さらに、
前記少なくとも2つの個室を互いに連通させるバイパス通路と、
前記バイパス通路における前記流動体の流量を調節する調整ニードルとを備え、
前記バイパス通路は、
前記ハウジングまたは前記蓋体における前記第2ロータ支持部に隣接して形成されていることを特徴とするロータリダンパ。
【請求項9】
請求項1ないし請求項のうちのいずれか1つに記載したロータリダンパにおいて、
前記支持筒部は、
同支持筒部の内側の空間内に前記第1ロータ支持部のみを収容していることを特徴とするロータリダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多関節ロボットにおける関節などの産業用機械器具における回動機構において運動エネルギの減衰装置として用いられるロータリダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、四輪または二輪の自走式車両または産業用機械器具においては、回動機構において運動エネルギの減衰装置としてロータリダンパが用いられている。例えば、下記特許文献1には、軸体の外周部に羽根状の2つの可動ベーンを有したロータの両端部が円筒状のハウジングに直接またはプラグを介して回動自在な状態で支持されたロータリダンパが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-5883号公報
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたロータリダンパにおいては、ロータが両端の軸部分を介してハウジングにそれぞれ支持されているため、ロータリダンパの小型化が困難であるという問題がある。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、小型化を容易に実現できるロータリダンパを提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、流動体を液密的に収容する円筒状の内室を有するとともに同内室内に径方向に沿う壁状に形成されて流動体の周方向の流動を妨げる固定ベーンを有したハウジングと、軸体の内部に貫通または有底の支持筒部が形成されるとともに同支持筒部の外側における軸体の外周部に内室内を仕切りつつ流動体を押しながら回動する可動ベーンを有したロータと、ハウジングに設けられて内室を液密的に閉塞する蓋体と、内室内に固定ベーンおよび可動ベーンによって形成されるとともに可動ベーンの回動方向によって容積が増加または減少する少なくとも2つの個室とを備えたロータリダンパにおいて、ハウジングおよび蓋体のうちの一方に形成されてロータにおける支持筒部の内周面を回動自在に支持する円筒状または軸状の第1ロータ支持部を備え、第1ロータ支持部は、ロータの軸線方向での可動ベーンの長さの中央部分で支持筒部を支持しており、ハウジングは、内室に隣接する位置に内室内の流動体の膨張または収縮による体積変化を吸収するアキュムレータを保持するアキュムレータ保持部を備え、アキュムレータ保持部は、ハウジングの内室内に張り出した状態で、かつハウジングの外周部にアキュムレータを出し入れ可能な大きさで開口して設けられていることにある。
【0007】
このように構成した本発明の特徴によれば、ロータリダンパは、ハウジングまたは蓋体に支持された第1ロータ支持部がロータの支持筒部内におけるロータの軸線方向での可動ベーンの長さの中央部分を回動自在に支持しているため、ロータの両端部を支持する場合に比べてロータの長さを短くすることでロータリダンパの構成を容易に小型化することができる。
【0008】
また、このように構成した本発明の特徴によれば、ロータリダンパは、ハウジングは、内室に隣接する位置に内室内の流動体の膨張または収縮による体積変化を吸収するアキュムレータを保持するアキュムレータ保持部を備えているため、ロータリダンパの構成を簡単化および小型化することができる。この場合、アキュムレータ保持部は、ハウジングの外周部に張り出した状態で設けることでロータの可動範囲を確保することができる。また、アキュムレータ保持部は、ハウジングの内室内に張り出した状態で設けることでロータリダンパの構成を小型化することができる。
【0009】
また、本発明の他の特徴は、前記ロータリダンパにおいて、さらに、ハウジングおよび蓋体のうちの他方に形成されてロータにおける軸体を回動自在に支持する第2ロータ支持部を備え、ロータは、軸体に可動ベーンに対して軸線方向に突出する突出軸部が形成されており、第2ロータ支持部は、突出軸部を回動自在に支持する円筒状に形成されていることにある。
【0010】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ロータリダンパは、ロータの軸体に可動ベーンに対して軸線方向に突出する突出軸部を回動自在に支持する円筒状の第2ロータ支持部を備えているため、第1ロータ支持部と協働してロータを安定的に支持することができる。
【0011】
また、本発明の他の特徴は、前記ロータリダンパにおいて、第2ロータ支持部は、突出軸部の外周部を回動自在に支持していることにある。
【0012】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ロータリダンパは、第2ロータ支持部が突出軸部の外周部を回動自在に支持しているため、突出軸部の内周部を支持する場合に比べてロータリダンパの構成を簡単化および小型化することができる。
【0013】
また、本発明の他の特徴は、前記ロータリダンパにおいて、突出軸部は、支持筒部に連通する貫通孔を有した筒状に形成されていることにある。
【0014】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ロータリダンパは、突出軸部が支持筒部に連通する貫通孔を有した筒状に形成されているため、ロータの軸体に対して同軸体の両端部のどちらからでもロータリダンパの取付対象物における連結部分を差し込んで取り付けることができ、使い勝手を向上させることができる。
【0015】
また、本発明の他の特徴は、前記ロータリダンパにおいて、固定ベーンは、内室内に1つだけ形成されていることにある。
【0016】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ロータリダンパは、固定ベーンが内室内に1つだけ形成されているため、ロータリダンパの構成を簡単化および小型化しつつロータの可動回動角を大きくすることができる。
【0017】
また、本発明の他の特徴は、前記ロータリダンパにおいて、さらに、固定ベーンおよび可動ベーンのうちの少なくとも一方に、固定ベーンおよび可動ベーンのうちの他方に対して弾性的に接触するクッション体を備えることにある。
【0018】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ロータリダンパは、固定ベーンおよび可動ベーンのうちの少なくとも一方に、固定ベーンおよび可動ベーンのうちの他方に対して弾性的に接触するクッション体を備えているため、可動ベーンの回動時に固定ベーンに衝突することによる衝撃または損傷が生じることを防止することができる。
【0019】
削除
【0020】
また、本発明の他の特徴は、前記ロータリダンパにおいて、固定ベーンおよび可動ベーンのうちの少なくとも一方に、互いに隣接する個室間で流動体を流通させる連通路を備えており、連通路は、流動体内の異物を濾すフィルタを備えることにある。
【0021】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ロータリダンパは、固定ベーンおよび可動ベーンのうちの少なくとも一方に、互いに隣接する個室間で流動体を流通させる連通路を備えているとともにこの連通路に流動体内の異物を濾すフィルタを備えているため、連通路が詰まって可動ベーンが可動しなくなるロック状態に陥ることを防止することができる。
【0022】
ここで、連通路には、互いに隣接する2つの個室間で相互に流動体を流通させる双方向連通路と、2つの個室間で一方から他方にのみ流動体を流通させる片方向連通路とがある。また、これらの場合、連通路は、流動体を流通させる流路の大きさまたは流通を妨げる負荷などによって流動体の流通を制限することができる。
【0023】
また、本発明の他の特徴は、前記ロータリダンパにおいて、さらに、前記少なくとも2つの個室を互いに連通させるバイパス通路と、バイパス通路における流動体の流量を調節する調整ニードルとを備え、バイパス通路は、ハウジングまたは蓋体における前記第2ロータ支持部に隣接して形成されていることにある。
【0024】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ロータリダンパは、突出軸部を支持する第2ロータ支持部が形成されたハウジングまたは蓋体にバイパス通路が第2ロータ支持部に隣接して形成されているため、バイパス通路を第2ロータ支持部とともにハウジングまたは蓋体に対して張り出して形成し易くバイパス通路を第2ロータ支持部とは反対側のハウジングまたは蓋体に形成した場合に比べてロータリダンパを効率的に小型化することができる。
【0025】
また、本発明の他の特徴は、前記ロータリダンパにおいて、支持筒部は、同支持筒部の内側の空間内に第1ロータ支持部のみを収容していることにある。
【0026】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ロータリダンパは、支持筒部が同支持筒部の内側の空間内に第1ロータ支持部のみを収容しているため、ロータリダンパの径方向の大きさの大型化を回避しつつ第1ロータ支持部を筒状に形成した場合であっても中実の柱状に形成した場合であっても第1ロータ支持部の肉厚を十分に確保でき剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係るロータリダンパの全体構成の概略を蓋体側から示す斜視図である。
図2図1に示すロータリダンパの全体構成の概略をハウジング本体側から示す斜視図である。
図3図1に示すロータリダンパの内部構成の概略をロータリダンパの平面視側から示す断面図である。
図4図1に示すロータリダンパを図3に示す4-4線から見た内部構成の概略を示す断面図である。
図5図1に示すロータリダンパを図3に示す5-5線から見た内部構成の概略を示す断面図である。
図6図1に示すロータリダンパ図3に示す6-6線および6-6線からそれぞれ見た内部構成の概略を示す端面図である。
図7図3に示すロータリダンパのロータが反時計回り方向の回動限界まで回動させた状態を示す断面図である。
図8図3に示すロータリダンパのロータが時計回り方向の回動限界まで回動させた状態を示す断面図である。
図9】本発明の変形例に係るロータリダンパの内部構成の概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係るロータリダンパの一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、ロータリダンパ100の全体構成の概略を蓋体140側から示す斜視図である。また、図2は、図1に示すロータリダンパ100の全体構成の概略をハウジング本体102側から示す斜視図である。また、図3は、図1に示すロータリダンパ100の内部構成の概略をロータリダンパ100の平面視側から示す断面図である。図4は、図1に示すロータリダンパ100を図3に示す4-4線から見た内部構成の概略を示す断面図である。図5は、図1に示すロータリダンパ100を図3に示す5-5線から見た内部構成の概略を示す断面図である。図6は、図1に示すロータリダンパ100を図3に示す6-6線および6-6線からそれぞれ見た内部構成の概略を示す端面図である。このロータリダンパ100は、多関節ロボットにおける関節の回動に所定量の負荷を与える機械装置である。
【0029】
(ロータリダンパ100の構成)
ロータリダンパ100は、ハウジング101を備えている。ハウジング101は、ロータ120を回動自在に保持しつつロータリダンパ100の筐体を構成する部品であり、アルミニウム材、鉄材、亜鉛材、またはポリアミド樹脂などの各種樹脂材によって構成されている。具体的には、ハウジング101は、主として、ハウジング本体102と蓋体140とで構成されている。
【0030】
ハウジング本体102は、後述するロータ120の可動ベーン124,125および流動体150を収容するとともにロータ120の軸体121の一方の端部を回動自在に支持する部品であり、筒体における一方端が大きく開口するとともに他方端が小さく開口する有底円筒状に形成されている。
【0031】
より具体的には、ハウジング本体102は、前記筒体における一方端で大きく開口する開口部102a側に円筒状の内室103が形成されるとともに、この内室103の底部103aに第2ロータ支持部111およびバイパス通路114a,114bがそれぞれ形成されている。また、ハウジング本体102は、開口部102aの外側に蓋体140が取り付けられる蓋体取付部102bがフランジ状に張り出して形成されている。
【0032】
内室103は、ロータ120の可動ベーン124,125とともに流動体150を液密的に収容する空間であり、ハウジング本体102内に中央部に配置されたロータ120を介して互いに対向する2つの半円筒の空間で構成されている。これらの内室103内には、固定ベーン104およびアキュムレータ保持部107がハウジング本体102と一体的にそれぞれ形成されている。
【0033】
固定ベーン104は、ロータ120とともに内室103内の一部を仕切って第1個室R1,第2個室R2を形成する壁状の部分であり、ハウジング本体102の軸線方向に沿って内室壁面103bから内側に向かって凸状に張り出して形成されている。この固定ベーン104は、後述する蓋体140およびロータ120の軸体121にそれぞれ対向する先端部分がそれぞれ凹状に凹む溝状に形成されており、この溝内にシール体105が嵌め込まれている。また、固定ベーン104の2つの側面には、それぞれクッション体106が設けられている。
【0034】
シール体105は、内室103内に形成される第1個室R1と第2個室R2の液密性を確保するための部品であり、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムまたはフッ素ゴムなどの各種ゴム材などの弾性材料を側面視でL字状に形成して構成されている。このシール体105は、蓋体140の内側面およびロータ120の軸体121の外周面にそれぞれ摺動自在な状態で密着するように固定ベーン104の先端部から張り出して取り付けられている。
【0035】
クッション体106は、可動ベーン124,125が固定ベーン104に直接衝突することを防止するとともに、可動ベーン124,125がアキュムレータ保持部107に衝突することを防止するための部品であり、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムまたはフッ素ゴムなどの各種ゴム材などの弾性材料を平面視で略三角形状に形成して構成されている。これらのクッション体106は、固定ベーン104の両側面にそれぞれ形成された溝部に嵌め込まれて固定ベーン104の両側面から張り出すように取り付けられている。
【0036】
アキュムレータ保持部107は、アキュムレータ110を収容するための部分であり、ハウジング本体102の内室壁面103bが内室103側に円筒状に張り出して形成されている。この場合、アキュムレータ保持部107は、ハウジング本体102の底部103a側が同底部103aの外周部に開口するとともに蓋体140側が連通孔107aを有した円板状の仕切り部107bによって閉じられている。
【0037】
連通孔107aは、内室103とアキュムレータ保持部107内とを連通させて流動体150を流通させるための貫通孔である。したがって、仕切り部107bは、アキュムレータ保持部107において蓋体140との間に流動体150を流通させるための隙間Sが形成可能な位置に形成されている。本実施形態においては、隙間Sは、0.5mmに設定されている。
【0038】
アキュムレータ110は、内室103内の流動体150の温度変化による膨張または収縮による体積変化を補償するための機具である。具体的には、アキュムレータ110は、主として、ピストン110a、押圧弾性体110b、プラグ110cおよびアキュムレータ保持部107によって構成されている。
【0039】
ピストン110aは、内室103に連通するアキュムレータ保持部107内の容積を増減させつつ規定する部品であり、アキュムレータ保持部107内において軸線方向に延びる棒体の先端部にアキュムレータ保持部107内に摺動自在に嵌合する円板体が形成されて構成されている。したがって、アキュムレータ保持部107は、アキュムレータ110を収容する部分であるとともに、アキュムレータ110を構成する一部品となっている。この場合、アキュムレータ110は、ピストン110aが摺動自在に嵌合してアキュムレータ保持部107内に嵌合する円筒状のシリンダを別途用意して構成することもできる。
【0040】
押圧弾性体110bは、ピストン110aとプラグ110cとの間に設けられてピストン110aを連通孔107a側に弾性的に押圧するコイルスプリングである。プラグ110cは、押圧弾性体110bの反力を受け止める部品であり、アキュムレータ保持部107の開口する端部にネジ嵌合している。すなわち、アキュムレータ110は、ハウジング本体102に一体的に組み付けられている。
【0041】
第2ロータ支持部111は、ロータ120における突出軸部123を回動自在な状態で支持する部分であり、ハウジング本体102の底部103aの中心部分から軸線方向外側に円筒状に突出して形成されている。これにより、ハウジング本体102の底部103aは、中心部分が第2ロータ支持部111を介して開口している。この第2ロータ支持部111の内周部には、シール体112および軸受け113がそれぞれ設けられている。
【0042】
シール体112は、内室103内の流動体150の漏出を防止するための部品であり、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムまたはフッ素ゴムなどの各種ゴム材などの弾性材料を円環状に形成して構成されている。このシール体112は、第2ロータ支持部111の内周部に形成された円環状の凹部に嵌め込まれた状態で取り付けられている。
【0043】
軸受け113は、ロータ120における突出軸部123を回動自在な状態で支持する部品であり、円環状のベアリングで構成されている。この軸受け113は、第2ロータ支持部111の先端部に形成された円環状の凹部に嵌め込まれた状態で取り付けられている。なお、軸受け113は、ベアリングに代えて金属材またはセラミック材を円筒状に形成したブッシュで構成することもできる。
【0044】
バイパス通路114aは、内室103内における第1個室R1と後述する第3個室R3とを互いに連通させて流動体150を互いに流通させるとともに第1個室R1および第3個室R3をそれぞれ外部に連通させる通路である。バイパス通路114bは、内室103内における第2個室R2と第3個室R3とを連通させて流動体150を互いに流通させるとともに第2個室R2および第3個室R3をそれぞれ外部に連通させる通路である。
【0045】
これらのバイパス通路114a,114bは、ハウジング101の底部103aに第2ロータ支持部111に隣接した位置に同第2ロータ支持部111とともにハウジング101の外表面から突出した状態で形成されている。これにより、ロータリダンパ100は、バイパス通路114a,114bを第2ロータ支持部111とは反対側の蓋体140に設けた場合に比べて厚さを薄くして小型化することができる。これらのバイパス通路114a,114bには、調整ニードル115a,115bがそれぞれ設けられている。
【0046】
調整ニードル115a,115bは、バイパス通路114a,114b内をそれぞれ外部に対して密閉するとともに流通する流動体150の流量を調整するための部品であり、ドライバなどの工具(図示せず)を使って回動させることにより流動体150の流通量を増減することができる。
【0047】
ロータ120は、ハウジング101の内室103内に配置されて固定ベーン104とともに内室103内を3つの空間である第1個室R1、第2個室R2および第3個室R3にそれぞれ仕切るとともに、この内室103内で回動することによりこれらの第1個室R1および第2個室R2の各個室の容積をそれぞれ増減させるための部品であり、主として、軸体121と可動ベーン124,125とで構成されている。
【0048】
軸体121は、回動する可動ベーン124,125の中心軸となる部分であり、アルミニウム材、鉄材、亜鉛材、またはポリアミド樹脂などの各種樹脂材を円筒状に形成して構成されている。この軸体121は、主として、支持筒部122と突出軸部123とで構成されている。
【0049】
支持筒部122は、可動ベーン124,125をそれぞれ支持するとともに蓋体140における第1ロータ支持部141によって支持される部分であり、円筒状に形成されている。この場合、支持筒部122は、内周面が後述する第1ロータ支持部141が嵌合しない状態で軸体121の軸心に対して露出した円筒状に形成されており、支持筒部122の内側の全体が第1ロータ支持部141を収容する空間に形成されている。また、支持筒部122の外周部には、可動ベーン124,125がそれぞれ形成されている。この支持筒部122は、軸線方向の長さが可動ベーン124,125の軸体121の軸線方向の長さ(シール体126を含む長さ)と略同じ長さに形成されている。
【0050】
突出軸部123は、第2ロータ支持部111に支持されてロータリダンパ100の取付対象物(図示せず)(本実施形態においては多関節ロボット)が連結される部分であり、可動ベーン124,125に対して軸体121の軸線方向に突出して延びて形成されている。本実施形態においては、突出軸部123は、筒状に形成されている。この場合、突出軸部123の外周部は、第2ロータ支持部111に嵌合する断面形状が円形に形成されている。
【0051】
また、突出軸部123の内周部に外部連結部123aが形成されている。外部連結部123aは、ロータリダンパ100の取付対象物が連結される部分である。本実施形態においては、外部連結部123aは、支持筒部122よりも小径でかつ第1ロータ支持部141の内径よりも小径の円が内接する断面形状が六角形状の筒状に形成されている。したがって、外部連結部123aには、ロータリダンパ100の取付対象物に設けられた断面形状が六角形状に形成されて軸状に延びた部分が挿し込まれて連結される。
【0052】
可動ベーン124,125は、図5に示すように、内室103内を複数の空間に仕切りつつこれらの各空間の容積を液密的にそれぞれ増減させるための部品であり、軸体121(内室103)の径方向に延びる板状体によってそれぞれ構成されている。この場合、これら2つの可動ベーン124,125は、軸体121を介して互いに反対方向(換言すれば仮想の同一平面上)に延びて形成されている。これらの可動ベーン124,125は、底部103a、内室壁面103bおよび蓋体140の内側面にそれぞれ対向するC字状(またはコ字状)の先端部分がそれぞれ凹状に凹む溝状に形成されており、これらの各溝内にシール体126が嵌め込まれている。
【0053】
シール体126は、前記シール体105と同様に、内室103内に形成される第1個室R1と第3個室R3との間および第2個室R2と第3個室R3との間の液密性を確保するための部品であり、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムまたはフッ素ゴムなどの各種ゴム材などの弾性材料を側面視でC字状(またはコ字状)に形成して構成されている。このシール体126は、底部103a、内室壁面103bおよび蓋体140の内側面にそれぞれ摺動自在な状態で密着するように可動ベーン124,125の各先端部から張り出して取り付けられている。
【0054】
これらにより、可動ベーン124,125は、前記固定ベーン104と協働して内室103内に互いに3つの空間である第1個室R1、第2個室R2および第3個室R3を互いに液密的に形成する。より具体的には、内室103内には、固定ベーン104と可動ベーン124とで第1個室R1が形成され、固定ベーン104と可動ベーン125とで第2個室R2が形成され、可動ベーン124と可動ベーン125とで第3個室R3が形成される。すなわち、第1個室R1、第2個室R2および第3個室R3は、内室103内において周方向に沿って隣接して形成されている。
【0055】
これらの可動ベーン124,125には、双方向連通路131,132および片方向連通路134,135がそれぞれ形成されている。双方向連通路131,132は、互いに隣接する第1個室R1と第3個室R3との間および第2個室R2と第3個室R3との間で流動体150を制限しつつ双方向に流通させるように構成されている。具体的には、双方向連通路131,132は、絞り弁で構成されている。この場合、双方向連通路131,132における流動体150の流れを制限しつつとは、双方向連通路131,132における流動体150の流れ易さに対して同一条件(例えば、圧力および作動液の粘度など)下において流動体150が流れ難いことを意味する。
【0056】
これらの双方向連通路131,132には、流動体150が流入または流出する両端の開口部にフィルタ133がそれぞれ設けられている。フィルタ133は、流動体150内に含まれる異物が双方向連通路131,132内に流入することを防止するための部品であり、金属製または樹脂製の網目状の板状態を有底筒状に形成して構成されている。なお、フィルタ133は、スポンジのような多孔質体で構成することもできる。
【0057】
片方向連通路134,135は、互いに隣接する第1個室R1と第3個室R3との間および第2個室R2と第3個室R3との間で流動体150を一方から他方にのみ流通させるように構成されている。具体的には、片方向連通路134,135は、第3個室R3から第1個室R1および第2個室R2にのみ流動体150を流通させる一方向弁で構成されている。
【0058】
これらの片方向連通路134,135には、流動体150が流入または流出する両端の開口部にフィルタ136がそれぞれ設けられている。フィルタ136は、フィルタ133と同様に、流動体150内に含まれる異物が片方向連通路134,135内に流入することを防止するための部品であり、金属製または樹脂製の網目状の板状態を有底筒状に形成して構成されている。なお、フィルタ136は、スポンジのような多孔質体で構成することもできる。
【0059】
これらの双方向連通路131,132および片方向連通路134,135によってロータリダンパ100は、第1個室R1ないし第3個室R3間における流動体150の流動が制限されることでロータ120の回動に際して減衰力が発生する。
【0060】
蓋体140は、ハウジング本体102に形成されている内室103を液密的に塞ぐための部品であり、円筒状に形成された第1ロータ支持部141の一方の端部がフランジ状に張り出した平板円環状に形成されている。第1ロータ支持部141は、ロータ120の軸体121における支持筒部122を回動自在な状態で支持する円筒状の部分である。この第1ロータ支持部141は、突出軸部123の貫通孔の大きさよりも大きい内径に形成された貫通孔で構成されている。また、第1ロータ支持部141の外周部には、シール体142および軸受け143がそれぞれ設けられている。
【0061】
シール体142は、シール体112と同様に、内室103内の流動体150の漏出を防止するための部品であり、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムまたはフッ素ゴムなどの各種ゴム材などの弾性材料を円環状に形成して構成されている。このシール体142は、第1ロータ支持部141の外周部に形成された円環状の凹部に嵌め込まれた状態で取り付けられている。
【0062】
軸受け143は、軸受け113と同様に、ロータ120における支持筒部122を回動自在な状態で支持する部品であり、円環状のベアリングで構成されている。この軸受け143は、第1ロータ支持部141の先端部に形成された円環状の凹部に嵌め込まれた状態で取り付けられている。この場合、軸受け143は、ロータ120の軸線方向での可動ベーン124,125の長さの中央部分で支持筒部122を支持している。より具体的には、軸受け143は、ロータ120の軸線方向での可動ベーン124,125の長さの中央位置CLを含む範囲で同中央位置CLに対して突出軸部123側にずれた位置で支持筒部122に嵌合して支持している。

【0063】
すなわち、第1ロータ支持部141は、軸線方向の長さがロータ120の軸線方向での可動ベーン124,125の長さの中央部分で支持筒部122を支持可能な長さに形成されている。この場合、可動ベーン124,125のロータ120の軸線方向の長さの中央部分で支持筒部122を支持するとは、厳密な中央位置CLで支持筒部122を支持することのみを意味するものではなく、同中央位置CLを含んで支持筒部122を支持することのほか、同中央位置CLから外れていても同中央位置CLに接するほど隣接する位置で支持筒部122を支持するなど、実質的に同中央位置CLで支持筒部122を支持すると見做せる支持を含むものである。また、軸受け143は、軸受け113と同様に、ベアリングに代えて金属材またはセラミック材を円筒状に形成したブッシュで構成することもできる。
【0064】
この蓋体140は、外縁部がハウジング本体102の蓋体取付部102b上に円環状のシール材を介して6つのボルト144によって取り付けられている。これにより、第1ロータ支持部141は、蓋体140を介してハウジング本体102に支持されている。また、ロータリダンパ100は、開口部102aが閉塞されて内室103内が液密的に封止される。
【0065】
流動体150は、内室103を回動する可動ベーン124,125に対して抵抗を付与することによりロータリダンパ100にダンパー機能を作用させるための物質であり、内室103内に満たされている。この流動体150は、ロータリダンパ100の仕様に応じた粘性を有する流動性を有する液状、ジェル状または半固体状の物質で構成されている。この場合、流動体150の粘度は、ロータリダンパ100の仕様に応じて適宜選定される。本実施形態においては、流動体150は、油、例えば、鉱物油またはシリコーンオイルなどによって構成されている。なお、流動体150は、図3、後述する図7および図8における破線円で囲んだハッチング領域でのみ示している。
【0066】
このロータリダンパ100は、本実施形態においては、ハウジング101の外径が90mm、ハウジング101の厚さが23mmである。また、可動ベーン124,125の軸体121の軸方向の長さが12mmである。このロータリダンパ100の大きさは、ロータリダンパ100の使用用途に応じて適宜設定されることは当然である。
【0067】
(ロータリダンパ100の作動)
次に、このように構成されたロータリダンパ100の作動について説明する。このロータリダンパ100は、多関節ロボット(図示せず)におけるアームとアームとを相対回転可能に連結する関節としての軸部分に取り付けられて同軸部分の回動に対して所定量の負荷を与える。この場合、2つのアームにおける一方のアームは、他方のアームに対して軸部分を中心として同軸周りに揺動する。そして、ロータリダンパ100は、外部連結部123aに対して第1ロータ支持部141側または第2ロータ支持部111側から多関節ロボットにおける関節の軸部分を挿し込んで連結することができる。なお、この場合、ロータリダンパ100におけるハウジング101は、多関節ロボットにおける前記関節の軸部分が相対回転する部品に対して固定される。
【0068】
まず、多関節ロボットにおける前記一方のアームが揺動方向における一方の揺動限界位置まで回動した状態においては、ロータリダンパ100は、図7に示すように、可動ベーン124が固定ベーン104に最接近するとともに可動ベーン125がアキュムレータ保持部107に最接近した状態にある。すなわち、ロータリダンパ100は、第1個室R1の容積が最小の状態であるとともに、第2個室R2の容積が最大の状態になる。この場合、可動ベーン124,125は、可動ベーン124がクッション体106に接触することで可動ベーン124の固定ベーン104への衝突および可動ベーン125のアキュムレータ保持部107への衝突をそれぞれ防止することができる。
【0069】
この状態から多関節ロボットにおける前記一方のアームが揺動方向における他方の揺動限界側(図7における破線矢印参照)に回動した場合(図3参照)には、ロータ120が図示時計回りに回動する。すなわち、ロータリダンパ100は、可動ベーン124がアキュムレータ保持部107に向かって回動するとともに可動ベーン125が固定ベーン104に向かって回動する。これにより、ロータリダンパ100は、第1個室R1の容積が増加するとともに第2個室R2の容積が減少する。
【0070】
この場合、最小容積にあった第1個室R1には、第3個室R3内の流動体150が片方向連通路134を介して流入する。また、最大容積にあった第2個室R2内の流動体150は、双方向連通路132を介して第3個室R3内に移動する。すなわち、ロータリダンパ100は、ロータ120が図示時計回りに回動する場合においては、第2個室R2内の流動体150が双方向連通路132を流通することで抵抗力が発生する。これにより、多関節ロボットは、前記一方のアームが揺動方向における他方の揺動限界側に回動する際においては、ロータリダンパ100が発生させた前記抵抗力を負荷として受け回動力が減衰する。
【0071】
次に、多関節ロボットにおける前記一方のアームが揺動方向における他方の揺動限界位置まで回動した状態においては、ロータリダンパ100は、図8に示すように、可動ベーン124がアキュムレータ保持部107に最接近するとともに可動ベーン125が固定ベーン104に最接近した状態にある。すなわち、ロータリダンパ100は、第1個室R1の容積が最大の状態であるとともに、第2個室R2の容積が最小の状態になる。この場合、可動ベーン124,125は、可動ベーン125がクッション体106に接触することで可動ベーン125の固定ベーン104への衝突および可動ベーン124のアキュムレータ保持部107への衝突をそれぞれ防止することができる。
【0072】
この状態から多関節ロボットにおける前記一方のアームが揺動方向における一方の揺動限界側(図8における破線矢印参照)に回動した場合(図3参照)には、ロータ120が図示反時計回りに回動する。すなわち、ロータリダンパ100は、可動ベーン124が固定ベーン104に向かって回動するとともに可動ベーン125がアキュムレータ保持部107に向かって回動する。これにより、ロータリダンパ100は、第1個室R1の容積が減少するとともに第2個室R2の容積が増加する。
【0073】
この場合、最小容積にあった第2個室R2には、第3個室R3内の流動体150が片方向連通路135を介して流入する。また、最大容積にあった第1個室R1内の流動体150は、双方向連通路131を介して第3個室R3内に移動する。すなわち、ロータリダンパ100は、ロータ120が図示反時計回りに回動する場合においては、第1個室R1内の流動体150が双方向連通路131を流通することで抵抗力が発生する。これにより、多関節ロボットは、前記一方のアームが揺動方向における一方の揺動限界側に回動する際においては、ロータリダンパ100が発生させた前記抵抗力を負荷として受け回動力が減衰する。
【0074】
このようなロータ120の図示時計回りまたは反時計回りの揺動時およびロータ120の静止時においてロータ120は、支持筒部122が第1ロータ支持部141に支持されているとともに突出軸部123が第2ロータ支持部111に支持されているため、内室103内にて安定的に回動または静止することができる。なお、図7および図8においては、ロータ120の回動方向を破線矢印で示している。
【0075】
上記作動方法の説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、ロータリダンパ100は、ハウジング101に支持された第1ロータ支持部141がロータ120の支持筒部122内におけるロータ120の軸線方向での可動ベーン124,125の長さの中央部分を回動自在に支持しているため、ロータ120の両端部を支持する場合に比べてロータ120の長さを短くすることでロータリダンパ100の構成を容易に小型化することができる。
【0076】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、各変形例の説明においては、上記実施形態と同様の部分については同じ符号を付して重複する説明は省略する。
【0077】
例えば、上記実施形態においては、ロータリダンパ100は、1つの固定ベーン104および2つの可動ベーン124,125をそれぞれ備えて構成した。しかし、ロータリダンパ100は、少なくとも1つずつの固定ベーンおよび可動ベーンを備えていればよい。したがって、ロータリダンパ100は、例えば、2つまたは3以上の固定ベーンを備えて構成することができる。また、ロータリダンパ100は、例えば、1つまたは3つ以上の可動ベーンを備えて構成することができる。なお、可動ベーンは、軸体121における支持筒部122の径方向外側に形成されている必要がある。
【0078】
また、上記実施形態においては、ロータ120における支持筒部122は、突出軸部123の外部連結部123aに連通する貫通孔で構成した。しかし、支持筒部122は、例えば、図9に示すように、突出軸部123の外部連結部123aに連通しない有底の穴で構成することもできる。
【0079】
また、上記実施形態においては、支持筒部122は、同支持筒部122の内側の空間内に第1ロータ支持部141のみを収容するように構成した。これにより、ロータリダンパ100は、ロータリダンパ100の径方向の大きさの大型化を回避しつつ第1ロータ支持部141を筒状に形成した場合であっても中実の柱状に形成した場合であっても第1ロータ支持部141の肉厚を十分に確保でき剛性を高めることができる。しかし、支持筒部122は、第1ロータ支持部141以外の構成部品が配置されるように構成することもできる。
【0080】
また、上記実施形態においては、第1ロータ支持部141は、軸受け143を介して支持筒部122を回動自在に支持している。しかし、第1ロータ支持部141は、軸受け143を省略して支持筒部122を直接回動自在に支持することもできる。
【0081】
また、第1ロータ支持部141は、上記実施形態においては、筒状に形成した。これにより、第1ロータ支持部141は、支持筒部122との間で生じた熱を効率的に放熱することができる。しかし、第1ロータ支持部141は、図9に示すように、筒状に代えて中実の柱状に形成することで第1ロータ支持部141の剛性を高めることもできる。なお、第2ロータ支持部111についても、第1ロータ支持部141と同様に、軸受け113を省略して突出軸部123を直接回動自在に支持することもできる。
【0082】
また、上記実施形態においては、第1ロータ支持部141における支持筒部122を支持する部分(軸受け143)の長さを、可動ベーン124,125における軸体121の軸方向の長さ(シール体126を含む長さ)よりも短い長さに形成した。しかし、第1ロータ支持部141における支持筒部122を支持する部分の長さは、可動ベーン124,125における軸体121の軸方向の長さと同じまたは同長さを超える長さに形成することができる。これにより、第1ロータ支持部141は、ロータ120を安定的に支持することができる。また、第1ロータ支持部141における支持筒部122を支持する部分の長さは、図9に示すように、可動ベーン124,125における軸体121の軸方向の長さ以下でかつ同長さの半分以上に形成することでロータ120を安定的に支持することができる。図9においては、第1ロータ支持部141は、2つの軸受け143によって支持筒部122を支持している。
【0083】
また、上記実施形態においては、第1ロータ支持部141は、蓋体140に形成した。しかし、第1ロータ支持部141は、第2ロータ支持部111のように、ハウジング本体102に形成することもできる。この場合、第1ロータ支持部141は、ハウジング本体102の底部103aの中心部分が支持筒部122側に入り込んで形成されることになる。また、この場合、ロータリダンパ100は、第2ロータ支持部111を省略して構成してもよいし、突出軸部123を支持筒部122に対して蓋体140側に形成することで第2ロータ支持部111を蓋体140に形成することができる。
【0084】
また、上記実施形態においては、ハウジング101は、第2ロータ支持部111を備えて構成した。これにより、ハウジング101は、ロータ120を安定的に支持することができる。しかし、ハウジング101は、図9に示すように、第2ロータ支持部111を省略して構成することもできる。特に、ハウジング101は、第1ロータ支持部141における支持筒部122を支持する部分の長さを可動ベーン124,125における軸体121の軸方向の長さの半分以上に形成することで第2ロータ支持部111を省略することができる。
【0085】
このように、第2ロータ支持部111を省略した場合には、ハウジング101は、内室103内の液密性を確保するためにシール体112のみを保持する第2ロータ支持部111に相当する円筒状の突出部を設けて突出軸部123との間で嵌合させることができる。
【0086】
また、上記実施形態においては、外部連結部123aは、突出軸部123の内周部に形成した。しかし、外部連結部123aは、図9に示すように、突出軸部123の外周部に形成することもできる。すなわち、外部連結部123aは、中空または中実の突出軸部123の外周部を断面形状が六角形状の棒状に形成して構成することができる。また、外部連結部123aは、突出軸部123に代えて支持筒部122の一部に形成することもできる。
【0087】
また、上記実施形態においては、双方向連通路131,132および片方向連通路134,135は、可動ベーン124,125にそれぞれ設けた。すなわち、双方向連通路131,132および片方向連通路134,135が、本発明に係る連通路に相当する。しかし、双方向連通路131,132および片方向連通路134,135は、可動ベーン124,125に代えてまたは加えて固定ベーン104に設けることもできる。
【0088】
また、上記実施形態においては、ハウジング本体102は、バイパス通路114a,114bおよび調整ニードル115a,115bをそれぞれ設けた。しかし、ハウジング本体102は、バイパス通路114a,114bおよび調整ニードル115a,115bをそれぞれ省略して構成することができる。また、バイパス通路114a,114bおよび調整ニードル115a,115bは、ハウジング本体102に代えてまたは加えて蓋体140に形成することもできる。
【0089】
また、上記実施形態においては、ハウジング本体102は、アキュムレータ保持部107およびアキュムレータ110をそれぞれ備えて構成した。この場合、アキュムレータ保持部107は、ハウジング本体102の内部である内室103内に張り出した状態で形成されている。しかし、アキュムレータ保持部107は、ハウジング本体102の外側に張り出して形成することもできる。また、ハウジング本体102は、アキュムレータ保持部107およびアキュムレータ110をそれぞれ省略して構成することもできる。
【0090】
また、上記実施形態においては、ハウジング本体102は、クッション体106を備えて構成した。これによりロータリダンパ100は、可動ベーン124,125の回動時に固定ベーン104に衝突することによる衝撃または損傷が生じることを防止することができる。しかし、ハウジング本体102は、クッション体106を省略して構成することもできる。
【0091】
また、上記実施形態においては、ロータリダンパ100は、ハウジング101を固定側としロータ120を可動側とした。しかし、ロータリダンパ100におけるハウジング101に対するロータ120の回動は相対的なものである。したがって、ロータリダンパ100は、ハウジング101を可動側としロータ120を固定側とすることもできることは当然である。
【0092】
また、上記実施形態においては、ロータリダンパ100は、多関節ロボットにおける関節に用いた。しかし、ロータリダンパ100は、互いに可動的に連結される2つの部品間に設けことができる。したがって、ロータリダンパ100は、多関節ロボットのほかにも、パワーアシストスーツの関節、運動機具の関節、二輪自走式車両における可動部分(例えば、スイングアームまたはシートの開閉機構)、二輪自走式車両以外の車両における可動部分(例えば、四輪自走式車両におけるサスペンション機構、シート機構または開閉扉)または自走式車両以外の機械装置、電機装置または器具における各可動部分に取り付けて用いることができる。
【符号の説明】
【0093】
R1…第1個室、R2…第2個室、R3…第3個室、S…隙間、CL…可動ベーンにおける軸体の軸線方向の長さの中央位置、
100…ロータリダンパ、101…ハウジング、102…ハウジング本体、102a…開口部、102b…蓋体取付部、103…内室、103a…底部、103b…内室壁面、104…固定ベーン、105…シール体、106…クッション体、107…アキュムレータ保持部、107a…連通孔、107b…仕切り部、
110…アキュムレータ、110a…ピストン、110b…押圧弾性体、110c…プラグ、111…第2ロータ支持部、112…シール体、113…軸受け、114a,114b…バイパス通路、115a,115b…調整ニードル、
120…ロータ、121…軸体、122…支持筒部、123…突出軸部、123a…外部連結部、124,125…可動ベーン、126…シール体、
131,132…双方向連通路、133…フィルタ、134,135…片方向連通路、136…フィルタ、
140…蓋体、141…第1ロータ支持部、142…シール体、143…軸受け、144…ボルト、150…流動体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9