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特許7445954核酸分解酵素の核酸分解効率を求める方法
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  • 特許-核酸分解酵素の核酸分解効率を求める方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】核酸分解酵素の核酸分解効率を求める方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20180101AFI20240301BHJP
   C12Q 1/34 20060101ALI20240301BHJP
   C12Q 1/6897 20180101ALI20240301BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240301BHJP
   C12N 9/16 20060101ALN20240301BHJP
   C12N 9/22 20060101ALN20240301BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20240301BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240301BHJP
   C12N 15/29 20060101ALN20240301BHJP
   C12N 15/30 20060101ALN20240301BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20240301BHJP
【FI】
C12Q1/68
C12Q1/34
C12Q1/6897 Z
C12P21/02 C
C12N9/16 Z ZNA
C12N9/22
C12N15/11 Z
C12N15/12
C12N15/29
C12N15/30
C12N15/31
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019232639
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021100390
(43)【公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】504194878
【氏名又は名称】国立研究開発法人海洋研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100136249
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 貴光
(72)【発明者】
【氏名】張 翼
(72)【発明者】
【氏名】布浦 拓郎
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】SCIENCE ADVANCES,2019年08月21日,Vol.5, Issue.8, eaav8185,pp.1-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68
C12N 15/12
C12N 15/29
C12N 15/30
C12N 15/31
C12Q 1/34
C12Q 1/6897
C12N 9/16
C12N 9/22
C12N 15/11
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程(1)~(5)を含む、核酸分解酵素の核酸分解効率を求める方法:
工程(1):核酸分解酵素と、下記配列(i)~(iii)を含む基質DNAを含む試料とを反応させる工程、
(i)リポータータンパク質をコードする配列、
(ii)配列(i)の内部又は上流に存在する核酸分解酵素の標的配列、及び
(iii)無細胞タンパク質合成反応に必要な配列;
ここで、
リポータータンパク質が、蛍光タンパク質又は化学発光タンパク質であり、
無細胞タンパク質合成反応に必要な配列が、プロモーター配列、オペレーター配列及びリボソーム結合部位配列から選択される;

工程(2):工程(1)で得られた反応生成物を、Y個の液滴へ分割する工程、
ここで、Yは、下記の工程(X1)~(X4)を含む方法Xを予め実施して決定する:
工程(X1):工程(1)で用いた核酸分解酵素と同じ核酸分解酵素と、工程(1)で用いた試料と同じ試料とを反応させる工程;
工程(X2):工程(X1)で得られた反応生成物を、W total 個の液滴へ分割する工程;
工程(X3):各液滴において無細胞タンパク質合成反応を実施する工程;並びに
工程(X4):下記の式(1)及び(2)を満たす total を、Yと決定する工程、
p/Wtotal<1 …(1)
total≧100 …(2)
(式中、W p は工程(X3)実施後にリポータータンパク質由来のシグナルが検出された液滴の数であり、W total は工程(X2)実施後の液滴の数である。)

工程(3):各液滴において無細胞タンパク質合成反応を実施する工程;

工程(4):式(3)に従い、核酸分解酵素で分解されなかった基質DNAのモル濃度を求める工程、
after={Ppositive/(v×NA)}×DR …(3)
after:試料中の、核酸分解酵素で分解されなかった基質DNAのモル濃度
positive:式(1)のWp/Wtotal
v:液滴1個の体積
A:アボガドロ数;並びに
DR:試料の総希釈倍率

工程(5):式(4)に従い、核酸分解酵素の核酸分解効率を求める工程、
核酸分解効率(%)=(cbefore―cafter)/cbefore×100 …(4)
after:試料中の、核酸分解酵素で分解されなかった基質DNAのモル濃度
before:工程(1)を実施する前の試料中の基質DNAのモル濃度。
【請求項2】
工程(2)において、工程(1)で得られた反応生成物を、式(1-1)を満たすように分割する、請求項1に記載の方法。
p/Wtotal≦0.3 …(1-1)
【請求項3】
工程(2)において、工程(1)で得られた反応生成物を、100~100,000,000個の液滴へ分割する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
核酸分解酵素が制限酵素である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸増幅反応を使用することなく、核酸分解酵素の核酸分解効率を求める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
制限酵素等の核酸分解酵素の核酸分解効率を求める唯一の手段として、電気泳動を利用した方法が用いられている。この方法では、一般的に、核酸分解反応液(核酸分解酵素で分解されなかった基質や分解産物を含む)を電気泳動に供する。電気泳動法としては、スラブゲル電気泳動やキャピラリー電気泳動等が知られている。
核酸増幅反応を利用した核酸の定量方法としてデジタルPCR法が知られている(非特許文献1)。この方法では、核酸を多数の微小液滴へ分配してPCRを行い、液滴毎に増幅の有無を同定した後、ポアソン統計学に基づき解析することで核酸分子の絶対数を推量する。
また、本発明者は、微小液滴中で1本の核酸から無細胞タンパク質合成を行う技術を開発している(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】サーモフィッシャーサイエンティフィック,「次世代の定量技術!デジタルPCRの原理とは?」,[online],2016年3月24日,[令和1年8月13日検索],インターネット<URL:https://www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/digitalpcr1/>
【文献】Yi Zhang, et al., Science Advances, 21 Aug 2019: Vol.5, no.8, eaav8185
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、全ての電気泳動法には検出限界があり、検出限界未満量の核酸は検出できない。したがって、核酸分解酵素との反応後に残留した基質を電気泳動法で測定することにより核酸分解効率を求めようとする場合、基質量が検出限界未満であると、正確な評価はできない。前記の検出限界に加え、電気泳動法には費用と時間がかかるという課題もある。
デジタルPCR法には、PCRの利用に起因する課題(目的物を増幅及び検出するためのプライマーやプローブの設計が必要なこと、PCRでは増幅させにくい配列が存在すること、PCR時に核酸のコンタミネーションが起こりうること等)に加え、コストが高いという課題があり、研究や開発の現場では利用されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を鋭意検討した結果、本発明者は、核酸分解酵素を、その標的配列とリポータータンパク質コード配列とを含む基質DNAと反応させた後、反応後の核酸を微小液滴中で無細胞タンパク質合成反応に供し、リポータータンパク質由来のシグナルを液滴毎に同定した後、ポアソン統計学に基づき解析すると、電気泳動法やPCRを用いる従来方法ではなしえなかった感度で核酸分解酵素の活性(核酸分解効率)を迅速に定量できることを見いだした。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明は、以下の〔1〕~〔5〕に関するものである。
〔1〕下記の工程(1)~(5)を含む、核酸分解酵素の核酸分解効率を求める方法:
工程(1):核酸分解酵素と、下記配列(i)~(iii)を含む基質DNAを含む試料とを反応させる工程、
(i)リポータータンパク質をコードする配列、
(ii)配列(i)の内部又は上流に存在する核酸分解酵素の標的配列、及び
(iii)無細胞タンパク質合成反応に必要な配列;
工程(2):工程(1)で得られた反応生成物を、下記の式(1)及び(2)を満たす数の液滴へ分割する工程、
p/Wtotal<1 …(1)
total≧100 …(2)
(式中、Wpは工程(3)実施後にリポータータンパク質由来のシグナルが検出された液滴の数であり、Wtotalは工程(2)実施後の液滴の数である。);
工程(3):各液滴において無細胞タンパク質合成反応を実施する工程;
工程(4):式(3)に従い、核酸分解酵素で分解されなかった基質DNAのモル濃度を求める工程、
after={Ppositive/(v×NA)}×DR …(3)
after:試料中の、核酸分解酵素で分解されなかった基質DNAのモル濃度
positive:式(1)のWp/Wtotal
v:液滴1個の体積
A:アボガドロ数;並びに
DR:試料の総希釈倍率
工程(5):式(4)に従い、核酸分解酵素の核酸分解効率を求める工程、
核酸分解効率(%)=(cbefore―cafter)/cbefore×100 …(4)
after:試料中の、核酸分解酵素で分解されなかった基質DNAのモル濃度
before:工程(1)を実施する前の試料中の基質DNAのモル濃度。
〔2〕工程(2)において、工程(1)で得られた反応生成物を、式(1-1)を満たすように分配する、前記〔1〕に記載の方法。
p/Wtotal≦0.3 …(1-1)
〔3〕工程(2)において、工程(1)で得られた反応生成物を、100~100,000,000個の液滴へ分割する、前記〔1〕又は〔2〕に記載の方法。
〔4〕核酸分解酵素が制限酵素である、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の方法。
〔5〕リポータータンパク質が蛍光タンパク質又は化学発光タンパク質である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の方法。
【発明の効果】
【0006】
後述の実施例で示されるように、本発明に従うと、核酸分解酵素の核酸分解効率を正確に定量できる。更に、本発明に従うと、核酸分解酵素の核酸分解効率をPCRや電気泳動を用いる従来法よりも少ない費用と時間で実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施例1で使用したプラスミドAのプラスミド地図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係る、核酸分解酵素の核酸分解効率を求める方法を構成する工程(1)~(5)を以下に詳述する。
【0009】
〔工程(1)〕
工程(1)では、核酸分解酵素と基質DNAを含む試料とを反応させる。
【0010】
〔核酸分解酵素〕
核酸分解酵素(「ヌクレアーゼ」とも称される)は、DNAを分解できるものであれば特に制限されない。核酸分解酵素はDNAのみを分解するもの(デオキシリボヌクレアーゼ)であってもよく、DNAとRNAの両方を分解するヌクレアーゼ(例えば、Micrococcal nuclease、Merck社製Benzonase(登録商標) Nuclease)であってもよい。
核酸分解酵素は複合体(例えば、CRISPR/Cas9)の形態であってもよい。
核酸分解酵素はエンドヌクレアーゼでもよく、エキソヌクレアーゼでもよい。
エンドヌクレアーゼとしては、制限酵素やゲノム編集用ヌクレアーゼ、ニッキング酵素やデオキシリボヌクレアーゼIや、S1ヌクレアーゼ等が挙げられる。
制限酵素は、I型、II型及びIII型のいずれも本発明に従い評価できる。制限酵素の具体例としては、XbaI、NdeI、NheI、BmtI、BamHI、XcmI、PflMI、BstEII、NcoI、HpaI、BbsI、BsgI、AfeI、BstXI、StuIやBsrGI等が挙げられる。
ゲノム編集用ヌクレアーゼとしては、CRISPR/Cas9やTALEN等が挙げられる。
エキソヌクレアーゼとしては、Strandase(登録商標)や、エキソヌクレアーゼI、エキソヌクレアーゼII、エキソヌクレアーゼIII、エキソヌクレアーゼIV、エキソヌクレアーゼV、エキソヌクレアーゼVI、エキソヌクレアーゼVIIやエキソヌクレアーゼVIII等が挙げられる。
本発明は、制限酵素の核酸分解効率の評価に特に好適に使用できる。
【0011】
〔基質DNA〕
基質DNAは、(i)リポータータンパク質をコードする配列と、(ii)核酸分解酵素の標的配列と、(iii)無細胞タンパク質合成反応に必要な配列とを含む。
【0012】
〔リポータータンパク質をコードする配列〕
リポータータンパク質は、検出可能なシグナル(フォトン)を当該タンパク質自身で放出できるものでもよく、タンパク質自身ではシグナルを放出しないがシグナル放出反応を媒介できるものであってもよい。
シグナルを放出するリポータータンパク質としては、蛍光タンパク質が挙げられる。蛍光タンパク質としては緑色蛍光タンパク質や青色蛍光タンパク質等が挙げられる。
シグナル放出反応を媒介するリポータータンパク質としては、化学発光タンパク質(例えば、ルシフェラーゼやナノランタン等)(化学発光シグナルを放出する基質:ルシフェリン)や、アルカリホスファターゼ(蛍光シグナルを放出する基質:6,8-difluoro-4-methylumbelliferyl phosphate)や、β-ガラクトシダーゼ(シグナルを放出する基質:Fluorescein Di-β-D-Galactopyranoside)等が挙げられる。
リポータータンパク質としては、蛍光タンパク質が基質の化学反応を介さず直接フォトンを出せる点で好ましい。
リポータータンパク質は野生型でもよく、遺伝子組替え技術等を用いて作成した変異型であってもよい。
本発明で使用するリポータータンパク質は1種類で十分であるが、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)や多色同時検出の場合には2種類以上を組み合わせてもよい。
リポータータンパク質をコードする配列(以下、「リポーター配列」ともいう)は、エキソンのみから構成されていてもよく、更にイントロン(非翻訳領域)を含んでいてもよい。
リポーター配列の情報は、公開データベース(例えば、UniProt(URL: https://www.uniprot.org/))から入手してもよく、また、当該技術分野で利用可能な配列決定法(例えば、質量分析法)により決定してもよい。
リポーター配列の長さは特に制限されないが、100~100,000bp、好ましくは300~4,000bpである。
【0013】
〔核酸分解酵素の標的配列〕
核酸分解酵素の標的配列(以下、「標的配列」ともいう)の配列情報は、公開データベース(例えば、REBASE(URL: http://rebase.neb.com/rebase/rebase.html))や核酸分解酵素の供給者等から入手できる。
なお、デオキシリボヌクレアーゼIやデオキシリボヌクレアーゼIIのように、特定の標的配列を持たず、基質DNAをランダムに分解するものもある。
基質DNA中に存在する標的配列の数は1つで十分であるが、核酸分解酵素がエンドヌクレアーゼである場合、2つ以上でもよい。
基質DNA中に存在する標的配列の種類は1種類でもよく2種類以上でもよい。2種類以上の核酸分解酵素に対応する標的配列を含む基質DNAは、当該複数種類の核酸分解酵素の核酸分解効率の評価に使用できる。
【0014】
〔無細胞タンパク質合成反応に必要な配列〕
基質DNAは、工程(3)の無細胞タンパク質合成反応においてリポータータンパク質を発現させるのに必要な配列(以下、「発現調節配列」ともいう)を含む。
発現調節配列の具体例としては、リポーター配列の転写に関わる配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、ターミネーターやオペレーター等)や、転写されたmRNAの翻訳に関わる配列(例えば、リボソーム結合部位や開始コドン等)等が挙げられる。
基質DNAに含める発現調節配列の種類は、リポータータンパク質の種類、発現量や発現タイミングの制御等に応じて適宜選択できるが、一般的にはプロモーター、オペレーター及びリボソーム結合部位が用いられ、好ましくはプロモーター及びリボソーム結合部位が用いられる。
発現調節配列の配列情報は、公開データベース(例えば、PubMed(URL: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/))や、ライフサイエンス研究用試薬の供給者から入手できる。
プロモーター配列及びリボソーム結合部位に関しては、それぞれ汎用的な配列が知られている。汎用プロモーター配列としてはT7プロモーター(TAATACGACTCACTATAGG(配列番号2))が挙げられ、汎用リボソーム結合部位配列としてはSD配列(AAGGAG)が挙げられる。
【0015】
〔基質DNA〕
基質DNAは、必須配列(リポーター配列、標的配列及び発現調節配列)がそれぞれ意図する機能を発揮できるように設計される。
標的配列は、核酸分解酵素による基質DNAの分解(切断)が起きたときに、無細胞タンパク質合成反応(工程(3))において機能性のリポータータンパク質の発現が妨げられるように配置する。
標的配列は、リポーター配列の内部又は上流に配置する。
標的配列をリポーター配列の内部へ配置した基質DNAでは、核酸分解酵素によるリポーター配列の分解(切断)が起こると、無細胞タンパク質合成反応では、切断型のリポータータンパク質(非機能性のリポータータンパク質)が合成される。
標的配列がリポーター配列の内部に存在する場合、当該標的配列はリポーター配列が元々有している配列であると、リポーター配列をそのまま直接利用できる点で好ましいが、機能性リポータータンパク質の発現が妨げられない限り、リポーター配列の内部へ標的配列を新たに導入してもよい。導入は、リポーター配列のイントロン領域における標的配列の付加又は置換により行うことが好ましい。
標的配列は、リポーター配列の上流に配置してもよい。例えば、リポーター配列の上流(かつプロモーター配列の下流)に標的配列を配置した基質DNAが核酸分解酵素により分解されると、無細胞タンパク質合成反応では、リポータータンパク質のmRNAの翻訳が起こらない。プロモーター配列の内部に標的配列を配置した基質DNAが核酸分解酵素によりそのプロモーター配列の分解が起こると、無細胞タンパク質合成反応では、リポーター配列の転写が起こらない。また、リポーター配列の上流(かつリボソーム結合部位の下流)に標的配列を配置した基質DNAも、核酸分解酵素により分解されると、無細胞タンパク質合成反応では、リポータータンパク質のmRNAの翻訳が起こらない。
【0016】
発現調節配列は、その機能に鑑みて基質DNA内の適切な位置に配置できる。例えば、プロモーターやリボソーム結合部位はリポーター配列の上流へ、ターミネーターや終止コドンはリポーター配列の下流に配置する。
任意配列もその機能に鑑みて基質DNA内の適切な位置に配置できる。
【0017】
基質DNAの構造は核酸分解酵素の反応様式等に応じて適宜設定できる。
例えば、核酸分解酵素が制限酵素やCRISPR/Cas9である場合、基質DNAは2本鎖である。
基質DNAは、核酸分解酵素が認識・切断できる限り直鎖状でも環状でもよいが、調製しやすい点で直鎖状が好ましい。また、環状の基質DNAを鋳型としてPCRを行って得た直鎖状DNA(線状化DNA)を核酸分解酵素との反応に供してもよい。
基質DNAの長さは、無細胞タンパク質合成反応(工程(3))を実施できる限り特に制限されないが、例えば環状2本鎖DNA(プラスミド)又はその線状化DNAである場合、1,000~1,000,000bp、好ましくは2,000~15,000bpである。
【0018】
基質DNAは、当該技術分野で利用可能な技術(例えば、クローニング)を用いて調製できる。例えば、市場で提供されている人工遺伝子合成受託サービスを利用してもよく、市販の遺伝子発現用ベクターを適宜改変して調製してもよい。
【0019】
〔基質DNAを含む試料〕
核酸分解酵素を含む試料は、基質DNAの他、緩衝液や界面活性剤を含んでいてもよい。
工程(1)を実施する前の試料中の基質DNAのモル濃度(cbefore)は特に制限されないが、好ましくは10-10~10-5モル/リットル、より好ましくは10-8~10-7モル/リットルである。基質DNAのモル濃度は分光光度計を用いて測定できる。
【0020】
〔核酸分解酵素と基質DNAとの反応〕
工程(1)の反応条件は、評価対象となる核酸分解酵素に基づき適宜設定できる。
核酸分解酵素の反応条件は、公開データベース(例えば、REBASE)や核酸分解酵素の供給者等から入手できる。
【0021】
〔工程(2)〕
工程(2)では、工程(1)で得られた反応生成物を、下記の式(1)及び(2)を満たす数の液滴へと分割する。
p/Wtotal<1 …(1)
total≧100 …(2)
(式中、Wpは工程(3)実施後にリポータータンパク質由来のシグナルが検出された液滴の数であり、Wtotalは工程(2)実施後の液滴の数である。)
工程(2)に従い得られた各液滴では、基質DNAが1個含まれる(又は全く含まれない)程度まで分割されているので、これを無細胞タンパク質合成反応に供して得られた結果をポアソン統計学基づく式(3)へ適用すると、核酸分解酵素で分解されなかった基質DNAの試料中のモル濃度(cafter)を求めることができる。
【0022】
式(1)について、Wp/Wtotalの上限は1未満、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.1以下である。Wp/Wtotalの下限は特に制限されないが、核酸分解酵素で分解されなかった基質DNAのモル濃度(cafter)の誤差を抑える点から好ましくは10-5以上、より好ましくは10-4以上である。したがって、Wp/Wtotalは、好ましくは10-5以上0.3以下である。
【0023】
式(2)について、工程(2)実施後の液滴の数(換言すれば、分割により生じた液滴の数)であるWtotalの上限は特に制限されないが、後述するマイクロリアクター・アレイのサイズの点から好ましくは108(100,000,000)、より好ましくは106(1,000,000)である。Wtotalの下限は好ましくは104(10,000)である。したがって、Wtotalは、好ましくは100~108、より好ましくは104~106である。
【0024】
式(1)及び(2)を満たす液滴数は、後述の実施例1に示すように、分割によって生じさせる液滴の数(Wtotal)を変化させて複数の試験(各試験とも工程(1)~(3)を含む)を実施してWpを決定し、決定したWpと前記Wtotalとが式(1)及び(2)を満たすか否かを判定することにより容易に決定できる。
【0025】
液滴の体積は特に制限されないが、多数の液滴を一度に処理することを可能する点で好ましくは0.1~10,000fL(フェムトリットル。(10-15リットル))、より好ましくは10~100fLである。
【0026】
反応生成物の液滴への分割手段は特に制限されない。
例えば、液滴数が、市販のプレート(384ウェルプレート等)で収容可能な数以下である場合、プレートの各ウェルへ反応生成物を分注することで分割を達成できる。
液滴数が多い(例えば、1,000,000個)場合、1個の液滴を収容できる容積を有するマイクロリアクターを、1つのチップ上に複数個(好ましくは、液滴の数以上)備えたマイクロリアクター・アレイを用いることが好ましい。この場合、アレイの注入口から反応生成物を注入後、次いでオイルでリアクター上部をフラッシングして、各リアクター内にのみ反応生成物を残すことで、分割を達成できる。
【0027】
式(1)及び(2)を満たす液滴数を達成するために、工程(1)で得られた反応生成物を希釈してマイクロリアクター・アレイへ注入してもよい。
【0028】
工程(1)で得られた反応生成物へ無細胞タンパク質合成反応(工程(3))に必要な試薬を添加した後に分割することで、前記試薬を含む液滴を作成してもよい。
【0029】
フラッシングに使用するオイル(フラッシングオイル)は、(1)マイクロリアクターの表面を構成する材料を溶解せず、(2)前記材料の表面張力よりも小さく、かつ、(3)毒性が低く生体適合性があるものであることが好ましい。
マイクロリアクターの表面を構成する材料がフッ素樹脂である場合、前記(1)~(3)の条件を満たすフラッシングオイルの好ましい例として、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(HFE-347pc-f)が挙げられる。
また、フラッシングオイルの表面張力を更に下げるために界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤の例としては、油溶性のフッ素系界面活性剤(例えば、商品名:SURFLON S-386。供給者:AGC)やTween-20等が挙げられる。
フラッシング後、マイクロリアクター内の反応生成物の蒸発を防ぐために、フラッシングオイルを、シーリングオイルで置き換えることが好ましい。シーリングオイルは、フラッシングオイル及び水と混合せず、かつ、蒸発損失が低いものが好ましい。好ましいシーリングオイルの例としては、パーフルオロポリエーテル系潤滑剤(例えば、商品名:Fomblin オイル。供給者:Solvay)等が挙げられる。
【0030】
マイクロリアクター・アレイは、デジタルPCR用の市販品(例えば、商品名:QuantStudio。供給者:Thermo Fisher Scientific)を使用してもよく、非特許文献2(Yi Zhang, et al., Science Advances, 21 Aug 2019: Vol.5, no.8, eaav8185)に記載の製法で作成したもの(後述の参考例参照)を使用してもよい。
【0031】
マイクロリアクター・アレイ以外の装置を用いて工程(3)を実施する場合、液滴への分割は、例えば油中水型ドロップレット技術やエマルション技術により実施できる。
【0032】
〔工程(3)〕
工程(3)では、工程(2)で得られた各液滴において無細胞タンパク質合成反応を実施する。
無細胞タンパク質合成とは、大腸菌等の細胞を直接使用せずタンパク質を合成する技術をいう。無細胞タンパク質合成は、細胞から精製した転写や翻訳反応に関わるタンパク質(例えば、アミノアシルtRNA合成酵素)、リボソームやtRNA等と、タンパク質構成材料であるアミノ酸と、合成反応のエネルギー源となるATP等とを用いて行われる。
本発明では、当該技術分野で確立されている無細胞タンパク質合成を特に制限なく利用できる。具体例としてコムギ胚芽由来の合成系、大腸菌由来の合成系、ウサギ網状赤血球由来の合成系や、昆虫細胞由来の合成系等が挙げられ、これらは無細胞タンパク質合成キットとして市販されている。
無細胞タンパク質合成の反応条件は、使用する合成系の種類に基づき適宜設定できる。反応条件は、無細胞タンパク質合成キットの供給者等から入手できる。
【0033】
〔工程(4)〕
工程(4)では、工程(3)の結果と下記式(3)とから、核酸分解酵素で分解されなかった基質DNAのモル濃度(cafter)を求める。
after={Ppositive/(v×NA)}×DR …(3)
(式中、cafterは核酸分解酵素で分解されなかった基質DNAの試料中におけるモル濃度であり、Ppositiveは前出の式(1)のWp/Wtotalと同様であり、vは液滴1個の体積であり、NAはアボガドロ数であり、DRは試料の総希釈倍率である。)
【0034】
式(3)中の総希釈倍率(DR)は、工程(1)実施後の試料を基準としたときの、工程(3)実施後の試料の希釈倍率である。例えば、工程(1)実施後の試料の100倍希釈液へ工程(3)に必要な試薬を添加して調製した混合液(混合液中、前記100倍希釈液は更に10倍希釈された)について工程(2)を実施後、工程(3)を実施した場合、総希釈倍率(DR)は1000倍(100×10)となる(実施例1参照)。
【0035】
核酸分解酵素で分解されなかった基質DNAを定量するための式(3)は、デジタルPCRと同様、ポアソン統計学に基づいている。
式(3)のWp(工程(3)実施後にリポータータンパク質由来のシグナルが検出された液滴の数)を決定するためシグナル検出手段は、当該技術分野で利用可能なもののなかからシグナルの種類に基づいて適宜選択できる。例えば、リポータータンパク質として蛍光タンパク質を用いる場合、蛍光は蛍光顕微鏡等を用いて検出できる。
【0036】
〔工程(5)〕
工程(5)では、工程(4)の結果と下記式(4)とから、核酸分解酵素の核酸分解効率を求める。
核酸分解効率(%)=(cbefore―cafter)/cbefore×100 …(4)
(式中、cafterは核酸分解酵素で分解されなかった基質DNAの試料中におけるモル濃度であり、cbeforeは、工程(1)を実施する前の試料中の基質DNAのモル濃度である。)
【0037】
〔本発明の方法の用途〕
核酸分解酵素の核酸分解効率を正確に定量できる本発明は、核酸分解酵素の評価や改良等の為に使用できる。
例えば、購入から長期間が経過している核酸分解酵素の使用可否を、保存前後の核酸分解効率を本発明に従い求めて比較することで判定できる。
また、改変された核酸分解酵素の評価を、改変前後の核酸分解効率を本発明に従い求めて比較することで実施できる。
その他、ゲノム編集のリスクマネジメントの一環として、ゲノム編集された試料の編集効率を求めるために、本発明を使用することもできる。
【実施例
【0038】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0039】
〔制限酵素の核酸分解効率の測定〕
〔工程(1)〕
核酸分解酵素として制限酵素XbaI、NdeI、NheI、BmtI、BamHI、XcmI、PflMI、BstEII、NcoI、HpaI、BbsI、BsgI、AfeI、BstXI、StuI及びBsrGI(供給者:NEB)を使用した。
はじめに環状2本鎖構造のプラスミド(pRSET-B発現ベクターにリポーター蛍光タンパク質mNeonGreenの遺伝子を挿入したもの)(以下、「プラスミドA」ともいう)を調製した。プラスミドAを鋳型としてPCRを実施して線状化DNAを調製し、これを制限酵素処理反応の基質DNAとして使用した。プラスミドAのヌクレオチド配列(3564bp)は以下の通りである(配列番号1)。線状化DNAの1位は配列番号1の13位に対応していた。
【0040】
(配列番号1)
GATCTCGATCCCGCGAAATTAATACGACTCACTATAGGGAGACCACAACGGTTTCCCTCTAGAAATAATTTTGTTTAACTTTAAGAAGGAGATATACATATGCGGGGTTCTCATCATCATCATCATCATGGTATGGCTAGCATGACTGGTGGACAGCAAATGGGTCGGGATCTGTACGACGATGACGATAAGGATCCGATGGTGAGCAAGGGCGAGGAGGATAACATGGCCTCTCTCCCAGCGACACATGAGTTACACATCTTTGGCTCCATCAACGGTGTGGACTTTGACATGGTGGGTCAGGGCACCGGCAATCCAAATGATGGTTATGAGGAGTTAAACCTGAAGTCCACCAAGGGTGACCTCCAGTTCTCCCCCTGGATTCTGGTCCCTCATATCGGGTATGGCTTCCATCAGTACCTGCCCTACCCTGACGGGATGTCGCCTTTCCAGGCCGCCATGGTAGATGGCTCCGGATACCAAGTCCATCGCACAATGCAGTTTGAAGATGGTGCCTCCCTTACTGTTAACTACCGCTACACCTACGAGGGAAGCCACATCAAAGGAGAGGCCCAGGTGAAGGGGACTGGTTTCCCTGCTGACGGTCCTGTGATGACCAACTCGCTGACCGCTGCGGACTGGTGCAGGTCGAAGAAGACTTACCCCAACGACAAAACCATCATCAGTACCTTTAAGTGGAGTTACACCACTGGAAATGGCAAGCGCTACCGGAGCACTGCGCGGACCACCTACACCTTTGCCAAGCCAATGGCGGCTAACTATCTGAAGAACCAGCCGATGTACGTGTTCCGTAAGACGGAGCTCAAGCACTCCAAGACCGAGCTCAACTTCAAGGAGTGGCAAAAGGCCTTTACCGATGTGATGGGCATGGACGAGCTGTACAAGTAAAAGCTTGATCCGGCTGCTAACAAAGCCCGAAAGGAAGCTGAGTTGGCTGCTGCCACCGCTGAGCAATAACTAGCATAACCCCTTGGGGCCTCTAAACGGGTCTTGAGGGGTTTTTTGCTGAAAGGAGGAACTATATCCGGATCTGGCGTAATAGCGAAGAGGCCCGCACCGATCGCCCTTCCCAACAGTTGCGCAGCCTGAATGGCGAATGGGACGCGCCCTGTAGCGGCGCATTAAGCGCGGCGGGTGTGGTGGTTACGCGCAGCGTGACCGCTACACTTGCCAGCGCCCTAGCGCCCGCTCCTTTCGCTTTCTTCCCTTCCTTTCTCGCCACGTTCGCCGGCTTTCCCCGTCAAGCTCTAAATCGGGGGCTCCCTTTAGGGTTCCGATTTAGTGCTTTACGGCACCTCGACCCCAAAAAACTTGATTAGGGTGATGGTTCACGTAGTGGGCCATCGCCCTGATAGACGGTTTTTCGCCCTTTGACGTTGGAGTCCACGTTCTTTAATAGTGGACTCTTGTTCCAAACTGGAACAACACTCAACCCTATCTCGGTCTATTCTTTTGATTTATAAGGGATTTTGCCGATTTCGGCCTATTGGTTAAAAAATGAGCTGATTTAACAAAAATTTAACGCGAATTTTAACAAAATATTAACGCTTACAATTTAGGTGGCACTTTTCGGGGAAATGTGCGCGGAACCCCTATTTGTTTATTTTTCTAAATACATTCAAATATGTATCCGCTCATGAGACAATAACCCTGATAAATGCTTCAATAATATTGAAAAAGGAAGAGTATGAGTATTCAACATTTCCGTGTCGCCCTTATTCCCTTTTTTGCGGCATTTTGCCTTCCTGTTTTTGCTCACCCAGAAACGCTGGTGAAAGTAAAAGATGCTGAAGATCAGTTGGGTGCACGAGTGGGTTACATCGAACTGGATCTCAACAGCGGTAAGATCCTTGAGAGTTTTCGCCCCGAAGAACGTTTTCCAATGATGAGCACTTTTAAAGTTCTGCTATGTGGCGCGGTATTATCCCGTATTGACGCCGGGCAAGAGCAACTCGGTCGCCGCATACACTATTCTCAGAATGACTTGGTTGAGTACTCACCAGTCACAGAAAAGCATCTTACGGATGGCATGACAGTAAGAGAATTATGCAGTGCTGCCATAACCATGAGTGATAACACTGCGGCCAACTTACTTCTGACAACGATCGGAGGACCGAAGGAGCTAACCGCTTTTTTGCACAACATGGGGGATCATGTAACTCGCCTTGATCGTTGGGAACCGGAGCTGAATGAAGCCATACCAAACGACGAGCGTGACACCACGATGCCTGTAGCAATGGCAACAACGTTGCGCAAACTATTAACTGGCGAACTACTTACTCTAGCTTCCCGGCAACAATTAATAGACTGGATGGAGGCGGATAAAGTTGCAGGACCACTTCTGCGCTCGGCCCTTCCGGCTGGCTGGTTTATTGCTGATAAATCTGGAGCCGGTGAGCGTGGGTCTCGCGGTATCATTGCAGCACTGGGGCCAGATGGTAAGCCCTCCCGTATCGTAGTTATCTACACGACGGGGAGTCAGGCAACTATGGATGAACGAAATAGACAGATCGCTGAGATAGGTGCCTCACTGATTAAGCATTGGTAACTGTCAGACCAAGTTTACTCATATATACTTTAGATTGATTTAAAACTTCATTTTTAATTTAAAAGGATCTAGGTGAAGATCCTTTTTGATAATCTCATGACCAAAATCCCTTAACGTGAGTTTTCGTTCCACTGAGCGTCAGACCCCGTAGAAAAGATCAAAGGATCTTCTTGAGATCCTTTTTTTCTGCGCGTAATCTGCTGCTTGCAAACAAAAAAACCACCGCTACCAGCGGTGGTTTGTTTGCCGGATCAAGAGCTACCAACTCTTTTTCCGAAGGTAACTGGCTTCAGCAGAGCGCAGATACCAAATACTGTTCTTCTAGTGTAGCCGTAGTTAGGCCACCACTTCAAGAACTCTGTAGCACCGCCTACATACCTCGCTCTGCTAATCCTGTTACCAGTGGCTGCTGCCAGTGGCGATAAGTCGTGTCTTACCGGGTTGGACTCAAGACGATAGTTACCGGATAAGGCGCAGCGGTCGGGCTGAACGGGGGGTTCGTGCACACAGCCCAGCTTGGAGCGAACGACCTACACCGAACTGAGATACCTACAGCGTGAGCTATGAGAAAGCGCCACGCTTCCCGAAGGGAGAAAGGCGGACAGGTATCCGGTAAGCGGCAGGGTCGGAACAGGAGAGCGCACGAGGGAGCTTCCAGGGGGAAACGCCTGGTATCTTTATAGTCCTGTCGGGTTTCGCCACCTCTGACTTGAGCGTCGATTTTTGTGATGCTCGTCAGGGGGGCGGAGCCTATGGAAAAACGCCAGCAACGCGGCCTTTTTACGGTTCCTGGCCTTTTGCTGGCCTTTTGCTCACATGTTCTTTCCTGCGTTATCCCCTGATTCTGTGGATAACCGTATTACCGCCTTTGAGTGAGCTGATACCGCTCGCCGCAGCCGAACGACCGAGCGCAGCGAGTCAGTGAGCGAGGAAGCGGAAGAGCGCCCAATACGCAAACCGCCTCTCCCCGCGCGTTGGCCGATTCATTAATGCAG
【0041】
プラスミドAは、リポーター配列として緑色蛍光タンパク質mNeonGreenのコード配列(711bp)を含んでいた(配列番号1の199~909位。907~909位は終止コドン)。
プラスミドAは、少なくとも16種類の制限酵素(XbaI、NdeI、NheI、BmtI、BamHI、XcmI、PflMI、BstEII、NcoI、HpaI、BbsI、BsgI、AfeI、BstXI、StuI及びBsrGI)の標的配列を含んでいた(表1)。
【0042】
表1
【0043】
プラスミドAは、発現調節配列として汎用リボソーム結合部位配列であるSD配列(配列番号1の86~91位)と、T7プロモーター配列(配列番号2)(配列番号1の20~38位)と、T7ターミネーター配列とを含んでいた。
プラスミドAのプラスミド地図を図1に示す。プラスミドAでは、制限酵素XcmI、PflMI、BstEII、NcoI、HpaI、BbsI、BsgI、AfeI、BstXI、StuI、BsrGIの標的配列はリポーター配列の内部に存在し、制限酵素XbaI、NdeI、NheI、BmtI、BamHIの標的配列はリポーター配列の上流(具体的にはリポーター配列の上流かつプロモーター配列の下流)に存在している。
線状化DNAのモル濃度を予め分光光度計で測定し、線状化DNAと制限酵素のいずれか一つとを含む試料を調製した。各試料中の線状化DNAのモル濃度「cbefore」は3.2×10-8モル/リットル(32ナノモル/リットル)であった。
各試料と対応する制限酵素とを、37℃で15分間反応させて工程(1)を実施した。
【0044】
〔工程(2)〕
式(1):Wp/Wtotal<1と、式(2):Wtotal≧100とを満たす液滴数は、分割によって生じさせる液滴の数(Wtotal)を変化させて複数の試験(各試験とも工程(1)~(3)を含む)を予め実施して決定した。決定した実施例1のWtotalを表2に示す。
【0045】
表2
実施例1のWtotalは式(2)を充足していた。
工程(2)はマイクロリアクター・アレイを用いて実施した。アレイは、非特許文献2(Yi Zhang, et al., Science Advances, 21 Aug 2019: Vol.5, no.8, eaav8185)に記載の製法に従い作成した(後述の参考例1参照)。アレイは、容積38fLのマイクロリアクターを約100万個有していた。
工程(1)で得られた反応生成物の液滴への分割は下記の手順で行った。
個々の制限酵素による反応生成物の100倍希釈液1.5μL、2.7μLの水(供給者:ニッポンジーン)、6μLの溶液A(無細胞タンパク質合成系 PURExpressキット(供給者:NEB)に由来)、0.3μLのRNase阻害剤(供給者:NEB)、及び4.5μLの溶液B(PURExpressキットに由来)をチューブ内で混合して混合液15μLを得た(混合液中、前記100倍希釈液は更に10倍希釈されていた)。この混合液を注入口からマイクロリアクター・アレイへ注入した後、約4℃に冷却したアルミブロックへ移した。冷却によりアレイ内に閉じ込められていた空気が混合液に溶解して各マイクロリアクターに空間が形成し、そこへ混合液(混合液中、工程(1)の反応生成物は1000倍に希釈されている)が特段の操作なしに充填されていった。
次に、アルミブロック上に置いたままのアレイへ、0.1wt%の界面活性剤(商品名:SURFLON S-386。供給者:AGC)を含むフラッシングオイル(HFE-347pc-f。商品名:AE-3000。供給者:AGC)を注入して、マイクロリアクター外の反応溶液を追い出した。
フラッシング後、マイクロリアクター内の反応生成物の蒸発を防ぐために、フラッシングオイルを、シーリングオイル(商品名:Fomblin オイル。供給者:Solvay)で置き換えた。シーリング後の各マイクロリアクターに含まれる液滴1個の体積「v」は38fLであった。
後述する工程(3)実施後のリポータータンパク質由来のシグナルが検出された液滴の数「Wp」及び「Wp/Wtotal」を表3に示す。
【0046】
表3
【0047】
したがって、実施例1の「Wp/Wtotal」は式(1)を充足していた。
【0048】
〔工程(3)〕
大腸菌由来の無細胞タンパク質合成系(商品名:PURExpress。供給者:NEB)を用いて、アレイの各リアクター中で無細胞タンパク質合成反応を実施した。反応は25℃で一晩行った。
【0049】
〔工程(4)〕
工程(3)実施後にリポータータンパク質由来のシグナルが検出された液滴の数「Wp」を蛍光顕微鏡(商品名:Eclipse Ti-E。供給者:Nikon)を用いて検出した。
p、工程(2)実施後の液滴の数「Wtotal」及び「Ppositive(=Wp/Wtotal)」を表4に示す。
【0050】
表4
【0051】
また、液滴1個の体積「v」は38fL(直径4μm、深さ3μmの円柱状のリアクターの体積)であり、試料の総希釈倍率(DR)は1000倍であったので、式(3)に従い計算される、核酸分解酵素で分解されなかった基質DNAの試料中におけるモル濃度「cafter」表5に示されるとおりとなった。
例として、制限酵素XbaIの「cafter」の具体的な計算式を以下に示す。

after={0.0054/(38×10-15×6.02×1023)}×1000×109 = 0.24(ナノモル/リットル)
(式中の109は、モル数をナノモル数(10-9モル=1ナノモル)へ換算するために用いた。)
positive:0.0054
v:38×10-15リットル
A:6.02×1023
DR:1000
【0052】
表5
【0053】
〔工程(5)〕
afterは表5に示されるとおりであり、工程(1)を実施する前の試料中の線状化DNA(基質DNA)のモル濃度「cbefore」は32ナノモル/リットルであったので、各制限酵素の核酸分解効率は以下の通りであった(表6)。
【0054】
表6
【実施例2】
【0055】
〔制限酵素NdeIの核酸分解効率の測定〕
〔工程(1)〕
制限酵素としてNdeI(供給者:NEB)のみを使用した。
はじめに環状2本鎖構造のプラスミド(pET3a発現ベクターに、リポータータンパク質としてのアルカリホスファターゼの遺伝子を挿入したもの)(以下、「プラスミドB」ともいう)を調製した。プラスミドBを鋳型としてPCRを実施して線状化DNAを調製し、これを制限酵素処理反応の基質DNAとして使用した。プラスミドBのヌクレオチド配列(6122bp)は以下の通りである(配列番号3)。線状化DNAの1位は配列番号3の4003位に対応していた。
【0056】
(配列番号3)
TTCTTGAAGACGAAAGGGCCTCGTGATACGCCTATTTTTATAGGTTAATGTCATGATAATAATGGTTTCTTAGACGTCAGGTGGCACTTTTCGGGGAAATGTGCGCGGAACCCCTATTTGTTTATTTTTCTAAATACATTCAAATATGTATCCGCTCATGAGACAATAACCCTGATAAATGCTTCAATAATATTGAAAAAGGAAGAGTATGAGTATTCAACATTTCCGTGTCGCCCTTATTCCCTTTTTTGCGGCATTTTGCCTTCCTGTTTTTGCTCACCCAGAAACGCTGGTGAAAGTAAAAGATGCTGAAGATCAGTTGGGTGCACGAGTGGGTTACATCGAACTGGATCTCAACAGCGGTAAGATCCTTGAGAGTTTTCGCCCCGAAGAACGTTTTCCAATGATGAGCACTTTTAAAGTTCTGCTATGTGGCGCGGTATTATCCCGTGTTGACGCCGGGCAAGAGCAACTCGGTCGCCGCATACACTATTCTCAGAATGACTTGGTTGAGTACTCACCAGTCACAGAAAAGCATCTTACGGATGGCATGACAGTAAGAGAATTATGCAGTGCTGCCATAACCATGAGTGATAACACTGCGGCCAACTTACTTCTGACAACGATCGGAGGACCGAAGGAGCTAACCGCTTTTTTGCACAACATGGGGGATCATGTAACTCGCCTTGATCGTTGGGAACCGGAGCTGAATGAAGCCATACCAAACGACGAGCGTGACACCACGATGCCTGCAGCAATGGCAACAACGTTGCGCAAACTATTAACTGGCGAACTACTTACTCTAGCTTCCCGGCAACAATTAATAGACTGGATGGAGGCGGATAAAGTTGCAGGACCACTTCTGCGCTCGGCCCTTCCGGCTGGCTGGTTTATTGCTGATAAATCTGGAGCCGGTGAGCGTGGGTCTCGCGGTATCATTGCAGCACTGGGGCCAGATGGTAAGCCCTCCCGTATCGTAGTTATCTACACGACGGGGAGTCAGGCAACTATGGATGAACGAAATAGACAGATCGCTGAGATAGGTGCCTCACTGATTAAGCATTGGTAACTGTCAGACCAAGTTTACTCATATATACTTTAGATTGATTTAAAACTTCATTTTTAATTTAAAAGGATCTAGGTGAAGATCCTTTTTGATAATCTCATGACCAAAATCCCTTAACGTGAGTTTTCGTTCCACTGAGCGTCAGACCCCGTAGAAAAGATCAAAGGATCTTCTTGAGATCCTTTTTTTCTGCGCGTAATCTGCTGCTTGCAAACAAAAAAACCACCGCTACCAGCGGTGGTTTGTTTGCCGGATCAAGAGCTACCAACTCTTTTTCCGAAGGTAACTGGCTTCAGCAGAGCGCAGATACCAAATACTGTCCTTCTAGTGTAGCCGTAGTTAGGCCACCACTTCAAGAACTCTGTAGCACCGCCTACATACCTCGCTCTGCTAATCCTGTTACCAGTGGCTGCTGCCAGTGGCGATAAGTCGTGTCTTACCGGGTTGGACTCAAGACGATAGTTACCGGATAAGGCGCAGCGGTCGGGCTGAACGGGGGGTTCGTGCACACAGCCCAGCTTGGAGCGAACGACCTACACCGAACTGAGATACCTACAGCGTGAGCTATGAGAAAGCGCCACGCTTCCCGAAGGGAGAAAGGCGGACAGGTATCCGGTAAGCGGCAGGGTCGGAACAGGAGAGCGCACGAGGGAGCTTCCAGGGGGAAACGCCTGGTATCTTTATAGTCCTGTCGGGTTTCGCCACCTCTGACTTGAGCGTCGATTTTTGTGATGCTCGTCAGGGGGGCGGAGCCTATGGAAAAACGCCAGCAACGCGGCCTTTTTACGGTTCCTGGCCTTTTGCTGGCCTTTTGCTCACATGTTCTTTCCTGCGTTATCCCCTGATTCTGTGGATAACCGTATTACCGCCTTTGAGTGAGCTGATACCGCTCGCCGCAGCCGAACGACCGAGCGCAGCGAGTCAGTGAGCGAGGAAGCGGAAGAGCGCCTGATGCGGTATTTTCTCCTTACGCATCTGTGCGGTATTTCACACCGCATATATGGTGCACTCTCAGTACAATCTGCTCTGATGCCGCATAGTTAAGCCAGTATACACTCCGCTATCGCTACGTGACTGGGTCATGGCTGCGCCCCGACACCCGCCAACACCCGCTGACGCGCCCTGACGGGCTTGTCTGCTCCCGGCATCCGCTTACAGACAAGCTGTGACCGTCTCCGGGAGCTGCATGTGTCAGAGGTTTTCACCGTCATCACCGAAACGCGCGAGGCAGCTGCGGTAAAGCTCATCAGCGTGGTCGTGAAGCGATTCACAGATGTCTGCCTGTTCATCCGCGTCCAGCTCGTTGAGTTTCTCCAGAAGCGTTAATGTCTGGCTTCTGATAAAGCGGGCCATGTTAAGGGCGGTTTTTTCCTGTTTGGTCACTGATGCCTCCGTGTAAGGGGGATTTCTGTTCATGGGGGTAATGATACCGATGAAACGAGAGAGGATGCTCACGATACGGGTTACTGATGATGAACATGCCCGGTTACTGGAACGTTGTGAGGGTAAACAACTGGCGGTATGGATGCGGCGGGACCAGAGAAAAATCACTCAGGGTCAATGCCAGCGCTTCGTTAATACAGATGTAGGTGTTCCACAGGGTAGCCAGCAGCATCCTGCGATGCAGATCCGGAACATAATGGTGCAGGGCGCTGACTTCCGCGTTTCCAGACTTTACGAAACACGGAAACCGAAGACCATTCATGTTGTTGCTCAGGTCGCAGACGTTTTGCAGCAGCAGTCGCTTCACGTTCGCTCGCGTATCGGTGATTCATTCTGCTAACCAGTAAGGCAACCCCGCCAGCCTAGCCGGGTCCTCAACGACAGGAGCACGATCATGCGCACCCGTGGCCAGGACCCAACGCTGCCCGAGATGCGCCGCGTGCGGCTGCTGGAGATGGCGGACGCGATGGATATGTTCTGCCAAGGGTTGGTTTGCGCATTCACAGTTCTCCGCAAGAATTGATTGGCTCCAATTCTTGGAGTGGTGAATCCGTTAGCGAGGTGCCGCCGGCTTCCATTCAGGTCGAGGTGGCCCGGCTCCATGCACCGCGACGCAACGCGGGGAGGCAGACAAGGTATAGGGCGGCGCCTACAATCCATGCCAACCCGTTCCATGTGCTCGCCGAGGCGGCATAAATCGCCGTGACGATCAGCGGTCCAGTGATCGAAGTTAGGCTGGTAAGAGCCGCGAGCGATCCTTGAAGCTGTCCCTGATGGTCGTCATCTACCTGCCTGGACAGCATGGCCTGCAACGCGGGCATCCCGATGCCGCCGGAAGCGAGAAGAATCATAATGGGGAAGGCCATCCAGCCTCGCGTCGCGAACGCCAGCAAGACGTAGCCCAGCGCGTCGGCCGCCATGCCGGCGATAATGGCCTGCTTCTCGCCGAAACGTTTGGTGGCGGGACCAGTGACGAAGGCTTGAGCGAGGGCGTGCAAGATTCCGAATACCGCAAGCGACAGGCCGATCATCGTCGCGCTCCAGCGAAAGCGGTCCTCGCCGAAAATGACCCAGAGCGCTGCCGGCACCTGTCCTACGAGTTGCATGATAAAGAAGACAGTCATAAGTGCGGCGACGATAGTCATGCCCCGCGCCCACCGGAAGGAGCTGACTGGGTTGAAGGCTCTCAAGGGCATCGGTCGACGCTCTCCCTTATGCGACTCCTGCATTAGGAAGCAGCCCAGTAGTAGGTTGAGGCCGTTGAGCACCGCCGCCGCAAGGAATGGTGCATGCAAGGAGATGGCGCCCAACAGTCCCCCGGCCACGGGGCCTGCCACCATACCCACGCCGAAACAAGCGCTCATGAGCCCGAAGTGGCGAGCCCGATCTTCCCCATCGGTGATGTCGGCGATATAGGCGCCAGCAACCGCACCTGTGGCGCCGGTGATGCCGGCCACGATGCGTCCGGCGTAGAGGATCGAGATCTCGATCCCGCGAAATTAATACGACTCACTATAGGGAGACCACAACGGTTTCCCTCTAGAAATAATTTTGTTTAACTTTAAGAAGGAGATATACATATGGCAGAAATCAAGAACGTCATTCTGATGATCGGTGATGGGATGGGTCCGCAGCAAGTCGGCATGCTGGAAACCTACGCTAATCGTGCCCCTGATAGCATCTACCAGGGTCGGAGTACCGCATTGTACCAACTTGCGAAAGAGGGTGTAGTAGGCGCTAGCCTGACTCACCCAGAAGATGCAGTGGTGGTGGATTCCGCGTGTAGCGCCACCCAGCTGTCAACCGGTATTTTCACGGGTGGCGAAGTGATTGGTATTGATAGCGAAGGGAATCGCGTGGAGACAGTACTCGAACTGGCCAAACGCGTAGGCAAAGCCACTGGCCTGGTGAGCGATACGCGCTTAACTCATGCAACGCCTGCCGCGTTTGCCGCGCATCAGCCGCATCGCTCGCTTGAAAACGCGATTGCCGAGGATATGTTGATGACGGGACCTGATGTGATGCTGTCTGGCGGTCTGCGGCACTTTGTCCCGTATTCGGTTTCTGAACCCGGCGAATCAGCGGGTTCGGTTGAAACCTTGATGCAGGGTGCATGGTCGCCGACCTCCAAGCGCAAAGACGAACGCAATCTGCTGCAGGAAGCGGCCGATCAAGGCTATGGGTTGGCCTTTACGCGCGACCAGATGGCAGCGTTAAACGGCACGAAAGTTCTCGGCTTATTCGCCAACAGTGGCATGGCGGATGGTATTTCCTTTCGCGATTCTCACGACGATCCACAACGCCAGCAACCCACTCTGCATGAGATGACCCAGAAAGCACTCTCAATGCTTGAGCAGGATGACGATGGCTTCTTTCTGATGGTGGAAGGTGGTCAGATTGATTGGGCTGCGCATTCGAACGATGCGGGGACCATGCTGAATGAGTTAATCAAATTCGACGAAGCTGTACAGGGTGTTTTCGACTGGGCGCGTGATCGTGACGACACCATCATTCTGGTGACAGCGGATCACGAAACAGGGGCATTCGGATTTTCCTACTCGAGTGCGAACCTCCCAGCAGCGCAGAAGAAAAGTGGCCCGGCTTTTGCCGATCAGGATTATGCCCCGAATTTCAACTTTGGCGACTTTTCAATTCTGGATAGCCTGTATGAGCAGAAACAGACCTACTATGAACTGCTGAGCGACTTCGAAGCGTTACCACAAGGCGAGCGTACACCGGCTCGTCTTATGGCTGCTGTCAACGGAAACAGTGACTTTCAGATCACTGAAGCTCAGGCGGCAGAAGTTCTGGCGAACAAACCGAATCCGTATCACGTCGACGGGCATAGCTATCTGGGTGTGAGTGAAGTCCCTGCGGTTCACGACTTTGATGCCTTCTTTCCGTATAATGATCGCGGCAATCTGTTGGCACGTGCGTTGGCTACCCAACAGAACACGGTCTGGGGCACCGGAACGCATACCCATACCCCGGTTAACGTGTTTGCGTGGGGTCCGGCCAATGACATTCTGCCAGTTAGCTCCATCCTGCACCATTCTGAGATCGGCCAATACCTCAAGACTGTGGTGGCCAAAtaataaGGATCCGGCTGCTAACAAAGCCCGAAAGGAAGCTGAGTTGGCTGCTGCCACCGCTGAGCAATAACTAGCATAACCCCTTGGGGCCTCTAAACGGGTCTTGAGGGGTTTTTTGCTGAAAGGAGGAACTATATCCGGATATCCACAGGACGGGTGTGGTCGCCATGATCGCGTAGTCGATAGTGGCTCCAAGTAGCGAAGCGAGCAGGACTGGGCGGCGGCCAAAGCGGTCGGACAGTGCTCCGAGAACGGGTGCGCATAGAAATTGCATCAACGCATATAGCGCTAGCAGCACGCCATAGTGACTGGCGATGCTGTCGGAATGGACGATATCCCGCAAGAGGCCCGGCAGTACCGGCATAACCAAGCCTATGCCTACAGCATCCAGGGTGACGGTGCCGAGGATGACGATGAGCGCATTGTTAGATTTCATACACGGTGCCTGACTGCGTTAGCAATTTAACTGTGATAAACTACCGCATTAAAGCTTATCGATGATAAGCTGTCAAACATGAGAA
【0057】
プラスミドBは、リポーター配列としてアルカリホスファターゼのコード配列(1515bp)を含んでいた(配列番号3の4090~5604位)。
プラスミドBは、標的配列として制限酵素NdeIの標的配列CATATGを含んでいた。
【0058】
プラスミドBは、発現調節配列として汎用リボソーム結合部位配列であるSD配列(配列番号3の4076~4081位)と、T7プロモーター配列(配列番号2)(配列番号3の4010~4028位)と、T7ターミネーター配列とを含んでいた。
プラスミドBでは、制限酵素NdeIの標的配列はリポーター配列の上流(具体的にはリポーター配列の上流かつプロモーター配列の下流)に存在している。
線状化DNAと制限酵素NdeIとを含む試料を調製した。分光光度計で測定した、試料中の線状化DNAのモル濃度「cbefore」は1.9×10-8モル/リットル(19ナノモル/リットル)であった。
試料と対応する制限酵素NdeIとを、37℃で15分間反応させて工程(1)を実施した。
〔工程(2)〕
totalは43299であった。
工程(2)は、蛍光基質6,8-Difluoro-4-Methylumbelliferyl Phosphate(供給者:Thermo Fisher Scientific)を、反応生成物を含む混合液へ添加したことを除いて、実施例1と同じ手順に従い実施した。この蛍光基質は、アルカリホスファターゼ(リポータータンパク質)により分解されると蛍光を発する。リポータータンパク質をコードする基質DNAが制限酵素により分解されると、蛍光基質が分解されることはなく、蛍光は発生しない。
後述する工程(3)実施後のリポータータンパク質由来のシグナルが検出された液滴の数「Wp」は5897であったので、「Wp/Wtotal」は0.136であった。
【0059】
〔工程(3)〕
大腸菌由来の無細胞タンパク質合成系(商品名:PURExpress。供給者:NEB)を用いて、アレイの各リアクター中で無細胞タンパク質合成反応を実施した。反応は25℃で行った。
【0060】
〔工程(4)〕
工程(3)の無細胞タンパク質合成反応溶液をマイクロリアクター・アレイに封入した後、直ちに蛍光顕微鏡(商品名:Eclipse Ti-E。供給者名:Nikon)を用いてリアクターを一定時間ごとに撮影した。リポータータンパク質由来のシグナルが検出された液滴の数「Wp」を、蛍光顕微鏡を用いて検出した。
撮影開始から2時間経った後、Wpは5897であり、工程(2)実施後の液滴の数「Wtotal」は43299であったので、Ppositive(=Wp/Wtotal)は0.136であった。
また、液滴1個の体積「v」は38fLであり、試料の総希釈倍率(DR)は1000倍であったので、核酸分解酵素で分解されなかった基質DNAの試料中におけるモル濃度「cafter」は5.9(ナノモル/リットル)であった。
【0061】
〔工程(5)〕
afterは5.9(ナノモル/リットル)であり、工程(1)を実施する前の試料中の線状化DNA(基質DNA)のモル濃度「cbefore」は19ナノモル/リットルであったので、制限酵素NdeIの核酸分解効率は69%であった。
【実施例3】
【0062】
〔制限酵素NcoI、NcoI-HF及びBtgIの核酸分解効率の測定〕
実施例1では、いずれの制限酵素も理想的な分解効率(100%)を示さなかった。そこで、実施例3では異なる供給者から入手した制限酵素NcoI、NcoI-HF(NcoIのスター活性を改変させた酵素。NcoIと同じ標的配列を認識する)及びBtgIの核酸分解効率を測定した。使用した制限酵素は、NcoI(供給者:NEB)、NcoI(供給者:ニッポンジーン)、NcoI-HF(供給者:NEB)及びBtgI(供給者:NEB)であった。これらは同一の標的配列(CCATGG)を認識する制限酵素であった。
各制限酵素の核酸分解効率は、基本的に実施例1と同じ手順に従い測定した。ただし、制限酵素処理時間(工程(1))は、NcoI及びNcoI-HFでは1時間、BtgIでは24時間であった。結果を表7に示す。
【0063】
表7
【実施例4】
【0064】
〔制限酵素NdeIの核酸分解効率の測定〕
実施例1で示したように、制限酵素NdeIは特に低い核酸分解効率(67%)を示した。そこで、NdeIの核酸分解効率が処理時間に依存するか否かを検討した。
制限酵素と基質DNAとの反応時間を1時間及び16時間としたことを除き、実施例1と同じ手順に従い制限酵素の核酸分解効率を測定した。結果を表8に示す。
【0065】
表8
【実施例5】
【0066】
〔制限酵素HpaI及びAfeIの核酸分解効率の測定〕
長期間冷凍保存(-30℃)した制限酵素の核酸分解効率を検討した。2001年製造のHpaI(NEB社)と2003年製造のAfeI(NEB社)の核酸分解効率を、実施例1と同じ手順にしたがい測定した。HpaIの核酸分解効率は96%であったが、AfeIの核酸分解効率は0%であり、酵素活性を完全に喪失していた。なお、実施例1で評価したHpaIは2001年製造であり、AfeIは2018年製造であった。実施例5のAfeIが失活していたのは、AfeIの安定性が比較的に低いためであると考えられる。
【実施例6】
【0067】
〔ゲノム編集用ヌクレアーゼCRISPR/Cas9の核酸分解効率の測定〕
CRISPR/Cas9は、基質DNA中の人為的に指定した標的配列を認識して切断する核酸分解酵素である。
タカラバイオ社の「Guide-it sgRNA in vitro transcription and screening systemキット」の取扱説明書(https://www.takarabio.com/assets/documents/User%20Manual/Guide-it%20sgRNA%20In%20Vitro%20Transcription%20and%20Screening%20Systems%20User%20Manual_040618.pdf)に従って、sgRNAを作製した。50ngのsgRNAと250ngのGuide-it recombinant Cas9ヌクレアーゼ(Guide-it sgRNA in vitro transcription and screening systemキットに由来)とを混ぜて、37℃で5分間インキュベートして、Cas9/sgRNA溶液を得た。
150ngの線状化DNA(実施例1で作製した基質DNA)と、Cas9反応緩衝液(Guide-it sgRNA in vitro transcription and screening systemキットに由来)と、ウシ血清アルブミン(Guide-it sgRNA in vitro transcription and screening systemキットに由来)と、上記のCas9/sgRNA溶液とを混合し(合計15μL。混合液中のcbeforeは16ナノモル/リットル)、37℃で1時間反応させた後、80℃で5分間、CRISPR/Cas9を失活させた。次いで、実施例1の工程(2)~(5)と同じ手順を実施した。核酸分解効率は98%であった。
【実施例7】
【0068】
〔Strandaseの核酸分解効率の測定〕
Strandase(登録商標)は、2種類のエキソヌクレアーゼ(Mix A及びMix B)から構成される製品である。Mix A(タカラバイオ社のGuide-it Long ssDNA Strandase Kitに由来)は、二本鎖DNAのうち5'末端がリン酸化された一本鎖DNAのみを分解し、Mix B(タカラバイオ社のGuide-it Long ssDNA Strandase Kitに由来)は二本鎖DNAのうち3'末端がヒドロキシル化された一本鎖DNAのみを分解する。したがって、5'末端がリン酸化されかつ3'末端がヒドロキシル化された一本鎖DNA(修飾一本鎖DNA)を含む二本鎖DNAをMix A及びMix Bの順番で処理すると、二本鎖DNAのうち修飾一本鎖DNAのみが分解されて、一本鎖DNAが生成する。
実施例7で使用した基質DNAの配列は、実施例1で作成した線状化二本鎖DNAの配列と同じであった。但し、Strandaseで分解されるよう、一方のDNA鎖(センス鎖又はアンチセンス鎖)の5'末端にリン酸基を導入する修飾を施した。修飾は、Strandaseの取扱説明書(https://www.takarabio.com/assets/documents/User%20Manual/Guide-it%20Long%20ssDNA%20Production%20System%20Protocol-At-A-Glance_051818.pdf)に従い、5’末端リン酸基を有するプライマーを用いたPCRにより実施した。PCR反応で調製した二本鎖DNAの2つの3’末端は、特段の操作なしにヒドロキシル化されていた。
無細胞タンパク質合成系で利用されるT7 RNAポリメラーゼは、二本鎖状態のT7プロモーター配列のみを認識・結合して機能するので、Strandaseが作用して生成した一本鎖DNAからリポータータンパク質は合成されない。
センス鎖が修飾された基質DNAを含む試料A、及びアンチセンス鎖が修飾された基質DNAを含む試料Bのcbeforeは、いずれも80ナノモル/リットルであった。
前記取扱説明書に記載の条件に従い基質DNAをStrandaseで処理した。次いで、実施例1の工程(2)~工程(5)と同じ手順(ただし、Strandase処理で得られた反応生成物を希釈しないまま無細胞タンパク質合成反応用の混合液を調製したため、DR=10)を実施した。測定されたStrandaseの核酸分解効率は、試料A及び試料Bともに99.99%であった。
【実施例8】
【0069】
〔デオキシリボヌクレアーゼIの核酸分解効率の測定〕
デオキシリボヌクレアーゼIは特異的な標的配列を持たないので、DNAをランダムに分解する。デオキシリボヌクレアーゼIによる基質DNAの切断は複数箇所で起こり得るので、基質DNAが分解される確率は、切断箇所が限定されている制限酵素よりも高くなると予想される。
20ng/μLの線状化DNA(実施例1で作製した基質DNA)をデオキシリボヌクレアーゼI(タカラバイオ)で、37℃で30分間反応させた後、80℃で2分間処理して酵素を失活させた。
次いで、実施例1の工程(2)~工程(5)と同じ手順(ただし、酵素処理で得られた反応生成物を希釈しないまま無細胞タンパク質合成反応用の混合液を調製したため、DR=10)を実施した。測定された核酸分解効率は100%であった。
【0070】
〔比較例:電気泳動法を用いた核酸分解効率の測定〕
実施例1で評価した制限酵素のうちXbaI、XcmI、PflMI及びAfeIの核酸分解効率を、電気泳動法を用いて測定した。測定には、Agilent 2100 Bioanalyzer装置(以下、「装置」という)と装置付属のAgilent High Sensitivity DNAキットを用いた。各制限酵素を用いた分解反応は、実施例1と同じ基質DNA及び条件を用いて実施した。水で33倍に希釈した各反応生成物1μLを、High Sensitivity DNAチップに入れた。このチップを装置にセットし、付属のDNA分子量マーカーと共に電気泳動を行った。装置の制御ソフトウェアを用いて、各反応生成物中のDNAバンドの分子量及びモル濃度を算出した。装置のDNA検出限界は約5pgであるため、制限酵素で分解されなかった基質DNAの量が検出限界未満であるとき、核酸分解効率は100%となる。装置から出力された結果に基づいて算出した核酸分解効率を、実施例1の結果と共に表9に示す。
【0071】
表9
【0072】
〔参考例1:マイクロリアクター・アレイの作成〕
作成は、相対湿度を40%~60%に設定した微細加工室で行った。
カバーガラスを8mol/Lの水酸化ナトリウムで15分間超音波洗浄した後、更に超純水で洗浄し、エアガンで水を飛ばして乾燥させた。洗浄済のカバーガラスを、0.05vol%の(3-aminopropyl)triethoxysilane溶液(エタノール溶媒)に1時間浸し、超純水で洗浄し、エアガンで水を飛ばして乾燥させて、カバーガラスをシラン化処理した。シラン化処理したカバーガラスを80℃で5分間程度ベークした。スピンコーターを用いて、フッ素樹脂(商品名:CYTOP CTL-816AP。供給者:AGC)をカバーガラス上に塗布(3400rpm、30秒、1回塗布)し、80℃で30分間ベークし、更に200℃で1時間ベークして、フッ素樹脂層(厚さ3μm)を形成した。
スピンコーターを用いて、フッ素樹脂の上にフォトレジスト(商品名:AZ P4903。供給者:Merck)を塗布した。塗布は、フォトレジストの厚みがフッ素樹脂の厚みの1.5~3倍になるように行った。フォトレジストを110℃で5分間ベークし、室温へ戻した後、30分間静置して、フォトレジストを空気中で再水和させた。
フォトマスク(1cm2あたり約100万個のマイクロリアクターのパターンを有する)とマスクアライナーを用いて、フォトレジストを露光した。フォトマスクは電子線描画装置を用いて作成した。露光された部分を、現像液(商品名:AZ 300MIF。供給者:Merck)を用いて選択的に除去して、パターン化されたレジストを作成し、これをフッ素樹脂のドライエッチング用マスクとして用いた。
レジストで被覆されていないフッ素樹脂を、酸素プラズマを用いたドライエッチング(50sccmの酸素。10Paの圧力。50Wのパワー(電力)、27分間のプラズマ処理時間)に供して選択的に除去して、ガラス底を露出させた。一方、レジストで被覆されたフッ素樹脂はカバーガラス上に残った。
残りのレジストを、アセトンでの洗浄、2-プロパノールでの洗浄、及び超純水での洗浄に供して除去し、エアガンで乾燥させて、親水性の底と撥水性の壁とを有するマイクロリアクターのアレイを得た。各マイクロリアクターの直径は4μm、厚みは3μm、体積は約38fLであった。マイクロリアクター体積の変動は3%以下であった。
マイクロリアクター・アレイが形成されたカバーガラスの上に、流路を掘ったシリコーンゴムを敷いた。流路の各末端には、反応溶液の流通を可能にする孔が予め設けられていた。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、核酸分解酵素が用いられるあらゆる分野(例えば、ライフサイエンス分野)で利用可能である。
【0074】
〔配列表フリーテキスト〕
配列番号1:実施例1で使用したプラスミドA
配列番号2:T7プロモーター
配列番号3:実施例2で使用したプラスミドB
配列番号4:制限酵素XcmIの標的配列
配列番号5:制限酵素PflMIの標的配列
配列番号6:制限酵素BstXIの標的配列
図1
【配列表】
0007445954000001.app