(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】刷版搬送装置
(51)【国際特許分類】
B41F 13/00 20060101AFI20240301BHJP
【FI】
B41F13/00 514
(21)【出願番号】P 2020017035
(22)【出願日】2020-02-04
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】594095866
【氏名又は名称】清水製作株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】吉野 智昭
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-130918(JP,A)
【文献】特開平11-217118(JP,A)
【文献】実開平04-012419(JP,U)
【文献】特開2008-056460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側に刷面を有するとともに縁部に
裏面側へ向けて曲げられた曲げ部を有する刷版を
搬送する刷版搬送装置であって、
前記刷版を搬送する搬送方向に沿って設けられ、前記曲げ部を支えて
前記刷版を吊り下げ状態とする引掛部と、
前記引掛部に吊り下げられた前記刷版を、
前記刷版の面に沿った面方向に移動可能に保持する保持部と、
前記刷版の前記曲げ部を有する縁部に直交する縁部に接触する押動部を有し、前記引掛部に吊り下げられるとともに前記保持部により
前記面方向に移動可能に保持されている状態の前記刷版を、
前記押動部により前記引掛部に沿って
前記搬送方向に押して搬出する搬出部と
を備えることを特徴とする刷版搬送装置。
【請求項2】
前記保持部は、前記刷版を非接触状態で保持する
ことを特徴とする請求項1記載の刷版搬送装置。
【請求項3】
前記保持部は、前記刷版の裏面側に対向して非接触状態で保持する非接触吸着パッドを有する
ことを特徴とする請求項2記載の刷版搬送装置。
【請求項4】
前記刷版の表面側が上方に向く姿勢で搬入する搬入部と、
前記引掛部および前記保持部が設けられ、前記搬入部に搬入された前記刷版を前記保持部により
前記面方向に移動可能に保持し、前記刷版の表面側が上方に向く姿勢から前記引掛部により前記刷版を吊り下げる姿勢に変換する姿勢変換部と
をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載の刷版搬送装置。
【請求項5】
前記曲げ部を支えて前記刷版を吊り下げ状態で収納する複数のハンガーを有する貯版部と、
前記搬入部、前記姿勢変換部および前記搬出部が設けられた移動部、および前記刷版を仕分ける前記貯版部の前記ハンガーの位置に対応して前記移動部を移動させる仕分駆動部を有する仕分ユニットと
をさらに備えることを特徴とする請求項4記載の刷版搬送装置
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刷版を吊り下げ状態で取り扱う刷版搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばCTP(Computer To Plate)といわれる製版機で製版された刷版を印刷機に装着し、印刷物の印刷を行っている。製版機で製版された刷版は、印刷機の版胴に装着するための刷版の縁部に曲げ部を形成した後、仕分けて貯版部に収納し、仕分けられた刷版を印刷機の場所に運んで装着している。
【0003】
また、刷版を貯版部に収納するのに用いられる刷版搬送装置がある。この刷版搬送装置では、刷版の曲げ部を支えて吊り下げた状態とし、貯版部側から刷版搬送装置内に移動してくるハンガーに刷版の曲げ部を吊り下げ換えている。そして、刷版搬送装置内から貯版部側に移動するハンガーにより吊り下げ状態の刷版を貯版部に収納している。
【0004】
このような、吊り下げ状態の刷版を搬送する場合、刷版の振れや位置ずれなどが発生しやすく、刷版を傷付ける虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
刷版搬送装置では、吊り下げ状態の刷版を傷付けることなく搬送できることが望まれている。
【0007】
本発明は、吊り下げ状態の刷版を傷付けることなく搬送できる刷版搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の刷版搬送装置は、表面側に刷面を有するとともに縁部に裏面側へ向けて曲げられた曲げ部を有する刷版を搬送する刷版搬送装置であって、前記刷版を搬送する搬送方向に沿って設けられ、前記曲げ部を支えて前記刷版を吊り下げ状態とする引掛部と、前記引掛部に吊り下げられた前記刷版を、前記刷版の面に沿った面方向に移動可能に保持する保持部と、前記刷版の前記曲げ部を有する縁部に直交する縁部に接触する押動部を有し、前記引掛部に吊り下げられるとともに前記保持部により前記面方向に移動可能に保持されている状態の前記刷版を、前記押動部により前記引掛部に沿って前記搬送方向に押して搬出する搬出部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の刷版搬送装置によれば、吊り下げ状態の刷版を傷付けることなく搬送できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態を示す刷版搬送装置を用いた刷版仕分装置の斜視図である。
【
図2】同上刷版搬送装置による刷版の搬入動作を示す斜視図である。
【
図3】同上刷版搬送装置による刷版の姿勢変換動作を示す斜視図である。
【
図4】同上刷版搬送装置による刷版の搬出動作を示す斜視図である。
【
図5】同上刷版搬送装置による刷版の搬出動作を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0012】
図1に刷版仕分装置10を示す。刷版仕分装置10は、例えばCTP(Computer To Plate)などの製版機で製版された刷版11(
図2ないし
図5参照)がベンダーによって曲げ加工された後、ベンダー側から搬送されてくる刷版11を受け入れてジョブ毎に自動仕分けして貯版するものである。そして、ジョブ毎に仕分けられた刷版11を印刷機の版胴に装着し、印刷物の印刷が行われる。
【0013】
刷版11は、例えば金属製の薄板で、所定サイズの四角形状に形成されている。刷版11の表面側11aは、製版機により印刷内容が描画されている版面である。刷版11の天側および地側の縁部には、刷版11を印刷機の版胴に装着するための曲げ部12がそれぞれ裏面側11bに向けて所定形状に曲げ加工されている。本実施の形態に示す刷版11は、長方形で、長辺側を天側および地側とし、長辺側の縁部に曲げ部12が曲げ加工されている。
【0014】
そして、刷版仕分装置10は、刷版11をジョブ毎に貯版する貯版部15と、ベンダー側から搬送されてくる刷版11をジョブ毎に仕分けて貯版部15に送り込む仕分装置本体である刷版搬送装置16とを備えている。
【0015】
貯版部15は、台部19、およびこの台部19上に立設された複数のハンガーストッカ20を有している。ハンガーストッカ20は、所定の仕分方向Yに沿って所定の間隔をあけて並設されている。本実施の形態では、第1のジョブ20aおよび第2のジョブ20b毎に、所定数のハンガーストッカ20が並設されている。
【0016】
ハンガーストッカ20は、台部19上に立設されるストッカフレーム21、およびこのストッカフレーム21の上部に設けられたハンガー22を有している。ハンガー22は、鋭角な突起状の断面形状で、ストッカフレーム21における仕分方向Yの一側位置に、仕分方向Yと直交する搬送方向Xに沿って長尺状に形成されている。ハンガー22は、刷版11の曲げ部12の内側(裏面側11b)を引っ掛けた状態に支え、刷版11を吊り下げ状態に収納する。隣り合うハンガーストッカ20の間には、ハンガー22に吊り下げられた刷版11がストッカフレーム21などに接触しない間隔が確保されている。
【0017】
次に、刷版搬送装置16は、貯版部15における搬送方向Xの一側に設置されている。
図1ないし
図4に示すように、刷版搬送装置16は、刷版11を搬送する搬送ユニット25、刷版11を仕分ける貯版部15のハンガー22の位置に対応して搬送ユニット25を仕分方向Yに移動させる仕分ユニット26を備えている。
【0018】
搬送ユニット25は、刷版11を搬入する搬入部29、この搬入部29により搬入された刷版11の姿勢を変換する姿勢変換部30、およびこの姿勢変換部30で姿勢が変換された刷版11を貯版部15に向けて搬出する搬出部31などを備えている。搬送ユニット25は、基台32上に一体的に搭載されている。
【0019】
搬入部29は、ベンダー側から搬送されてくる刷版11を受け入れて搬送方向Xに沿って搬入する。搬入部29は、刷版11を表面側11aが上方に向く略水平の姿勢で搬入する。刷版11の搬入方向は、曲げ部12を有する縁部と直交する縁部の一方つまり天側および地側の曲げ部12が設けられていない縁部を先頭側として搬入する。
【0020】
搬入部29は、刷版11を載せて搬送方向Xに沿って搬入する複数の搬入ローラ35,36を備えている。搬入ローラ35は、搬送方向Xに交差する軸方向に長尺に設けられているが、その軸方向の長さ寸法は刷版11の両曲げ部12の間隔寸法よりも短く、刷版11の裏面側11bを支えて搬入可能とする。搬入ローラ36は、隣り合う搬入ローラ35間に配置されるコロ状ローラであり、主に搬入ローラ35の軸方向の一端側であって刷版11を吊り下げる曲げ部12側の裏面側11bを支えるように配置されている。
【0021】
搬入ローラ35,36は昇降台37に搭載され、昇降台37は基台32上に設置された固定台38に対して複数の昇降ガイド39によって昇降可能に支持されている。昇降台37は、例えば空気圧によって動作するシリンダなどの昇降駆動部(図示せず)により、姿勢変換部30よりも上方に移動してベンダー側から搬送されてくる刷版11を受け入れて搬入する上昇位置と、この上昇位置から下降して刷版11を姿勢変換部30に受け渡す下降位置とに昇降する。
【0022】
搬入部29には、昇降台37上に、搬入される刷版11の先頭側の縁部が当接し、刷版11を所定の位置で停止させるストッパ40が設けられている。
【0023】
また、姿勢変換部30は、刷版11を表面側11aが上方に向く略水平の姿勢から刷版11の一方の曲げ部12を介して吊り下げられた吊り下げ姿勢に変換する。姿勢変換部30は、刷版11の姿勢変換のために回動する回動部43、この回動部43に設けられた引掛部44および保持部45を備えている。
【0024】
回動部43は、基台32上または固定台38上に設けられた一対の軸受46によって回動可能に軸支された回動軸47、この回動軸47に固定されたアーム体48、およびこのアーム体48を回動させる回動駆動部49を有している。回動軸47は、軸方向が搬送方向Xと平行となるように配置されている。
【0025】
アーム体48は、回動軸47に固定された複数の固定部50、これら固定部50の先端側に略直角に設けられた複数のアーム部51、およびこれらアーム部51の先端側を一体に連結する連結部52を有している。アーム体48は、回動軸47と一体に回動する。アーム部51は、回動軸47の軸方向に沿ってつまり搬送方向Xに沿って所定の間隔を開けて配置されている。アーム部51には、刷版11の裏面側11bに対向するガイド面53が設けられている。このガイド面53には、保持部45が配置される溝部54、および搬出動作する搬出部31との干渉を避けるための複数の溝部55が設けられている。これら溝部54,55は、アーム部51の搬送方向Xに開口されている。
【0026】
回動駆動部49には、例えば空気圧によって動作するシリンダ56が用いられている。シリンダ56のシリンダ本体が基台32上に回動可能に連結され、シリンダ本体から突出するロッドが回動軸47に固定された固定部50の先端側に回動可能に連結されている。そして、シリンダ56の動作により、姿勢変換部30は、アーム体48が搬入部29側に回動してアーム部51のガイド面53が上方に向いて略水平となる原点位置(
図1参照)と、この原点位置から回動軸47を中心に略90°回動してアーム部51が鉛直方向に立ち上がる姿勢変換位置(
図3および
図4参照)とに回動される。なお、回動駆動部49は、シリンダに限らず、モータなどを用いてもよい。
【0027】
原点位置と姿勢変換位置に回動する姿勢変換部30は、アーム部51が搬入ローラ35,36間に通じて回動し、連結部52が搬入ローラ35,36の軸方向の外側を通じて回動し、搬入部29と干渉しないように構成されている。姿勢変換部30の原点位置では、搬入ローラ35,36が上昇位置に位置する場合に搬入ローラ35,36の搬送面よりも下側に位置され、搬入ローラ35,36が下降位置に下降した場合に搬入ローラ35,36の搬送面よりも上側に位置される。
【0028】
引掛部44は、アーム部51の先端側であって連結部52に設けられている。引掛部44は、鋭角な突起状の断面形状で、搬送方向Xに沿って長尺状に形成されている。引掛部44は、アーム部51のガイド面53と同じ側の連結部52の面に設けられている。姿勢変換部30が原点位置に回動している状態では、搬入部29により搬入される刷版11の曲げ部12が引掛部44よりも外側を移動する。
【0029】
保持部45は、引掛部44に吊り下げられた刷版11を面方向に移動可能に保持する。保持部45は、例えば空気圧を利用して刷版11を非接触で保持する非接触保持部である非接触吸着パッド57を有している。非接触吸着パッド57は、アーム部51の溝部54内に配置されている。非接触吸着パッド57は、アーム部51のガイド面53よりも溝部54内に少し引っ込んだ位置に配置され、刷版11の裏面側11bに非接触で対向され、空気の吸引圧により刷版11の裏面側11bに吸引し、刷版11の裏面側11bをアーム部51のガイド面53に引き付けて保持するように構成されている。
【0030】
また、搬出部31は、基台32上に立設された搬出フレーム60、この搬出フレーム60によって搬送方向Xに移動可能に設けられた搬出体61、およびこの搬出体61を搬送方向Xに移動させる搬出駆動部62を有している。
【0031】
搬出フレーム60には、複数のガイド軸63が搬送方向Xに沿って取り付けられている。
【0032】
搬出体61は、複数のガイド軸63に沿って搬送方向Xに移動可能に設けられたスライド部64、およびこのスライド部64に設けられた複数の押動部65を有している。押動部65は、上下方向に所定の間隔を開けて配置され、刷版11の曲げ部12を有する縁部に直交する縁部に当接して貯版部15に向けた搬出方向に押し出す。
【0033】
搬出駆動部62は、例えば空気圧によって動作するシリンダ66が用いられている。シリンダ66のシリンダ本体が搬出フレーム60に搬送方向Xに沿って取り付けられ、シリンダ本体に沿って搬送方向Xにスライドするスライダに搬出体61のスライド部64が取り付けられている。なお、搬出駆動部62は、空気圧によって動作するシリンダ66に限らず、電動シリンダやモータなどを用いてもよい。
【0034】
また、仕分ユニット26は、仕分フレーム68、この仕分フレーム68に沿って仕分方向Yに移動する移動部69、およびこの移動部69を仕分方向Yに移動させる仕分駆動部70を備えている。
【0035】
仕分フレーム68は、貯版部15の側部に仕分方向Yに沿って設置される。仕分フレーム68上には、移動部69を支えるガイド板71、および移動部69を仕分方向Yに沿って平行状に移動させるガイドレール72が、それぞれ仕分方向Yに沿って設けられている。
【0036】
移動部69は、搬送ユニット25を搭載した基台32、この基台32の下面に取り付けられた複数の車輪73および複数のガイドローラ74(それぞれ
図5参照)を有している。車輪73は、ガイド板71上に載り、基台32を支えるとともにガイド板71に沿って仕分方向Yに走行する。ガイドローラ74は、ガイドレール72の両側で仕分方向Yの少なくとも2箇所にそれぞれ回動可能に係合し、仕分方向Yに沿って基台32が平行状に移動するようにガイドする。
【0037】
仕分駆動部70は、例えば、リニアアクチュエータ、作動流体によって動作するシリンダ、電動シリンダなどのいずれを用いてもよい。
【0038】
そして、仕分駆動部70は、仕分方向Yの一端側の位置であって、ベンダー側から搬送されてくる刷版11を搬入部29に受け入れて搬入する搬入位置と、貯版部15の刷版11を仕分けるハンガー22の位置に対応した仕分位置とに、移動部69を移動させる。仕分駆動部70は、移動部69の移動時に、基台32上に設けられセンサ75により貯版部15のハンガーストッカ20の位置を検知し、仕分対象のハンガーストッカ20に対応した仕分位置で移動部69を停止させる。
【0039】
次に、刷版仕分装置10の動作を説明する。
【0040】
図1に示すように、仕分待機時(仕分初期時)には、仕分ユニット26の移動部69が刷版11を受け入れる搬入位置に位置する。姿勢変換部30のアーム体48が搬入部29側に回動してアーム部51のガイド面53が上方に向いて略水平となる原点位置に位置する。搬入部29の搬入ローラ35,36が姿勢変換部30のアーム体48よりも上方の上昇位置に位置する。
【0041】
そして、
図2に示すように、表面側11aが上方に向く略水平の姿勢でベンダー側から搬送されてくる刷版11を、搬入部29に受け入れて搬送方向Xに沿って搬入する。すなわち、ベンダー側から搬送されてくる刷版11の裏面側11bを搬入ローラ35,36上に受け入れて搬送方向Xに沿って搬入する。搬入部29により搬入する刷版11の先頭側の縁部がストッパ40に当接し、刷版11を所定の位置で停止させる。
【0042】
搬入部29の搬入ローラ35,36が姿勢変換部30のアーム体48よりも下方の下降位置に移動し、刷版11の裏面側11bを搬入ローラ35,36上から姿勢変換部30のアーム体48上に載せ換える。
【0043】
アーム体48の各アーム部51に設けられた非接触吸着パッド57により刷版11の裏面側11bを吸引し、刷版11の裏面側11bをアーム部51のガイド面53に引き付けて保持する。このとき、非接触吸着パッド57では、刷版11を面方向に移動可能とする吸引力によって保持する。
【0044】
図3に示すように、非接触吸着パッド57により刷版11の裏面側11bを吸引しながら、回動駆動部49によりアーム体48を原点位置から回動軸47を中心に略90°回動してアーム部51が鉛直方向に立ち上がる姿勢変換位置に回動させる。
【0045】
アーム体48が原点位置から姿勢変換位置に回動する際に、刷版11が自重よりアーム体48に対して下降し、姿勢変換に伴って上側に移動する刷版11の曲げ部12が引掛部44に引っ掛かる。このとき、非接触吸着パッド57により刷版11を面方向に移動可能に保持しているため、刷版11がアーム体48から浮き上がって曲げ部12が引掛部44に引っ掛からないといったことがなく、刷版11の曲げ部12が引掛部44に確実に引っ掛かる。
【0046】
アーム体48の姿勢変換位置への回動により、引掛部44で曲げ部12を支えて刷版11を吊り下げ状態とし、さらに、非接触吸着パッド57で刷版11をアーム部51のガイド面53に引き付けて面方向に移動可能に保持する。さらに、アーム体48の姿勢変換位置への回動により、吊り下げ姿勢となった刷版11の縁部が搬出部31の各押動部65に対向する。
【0047】
仕分駆動部70により刷版11を搭載した移動部69が貯版部15の刷版11を仕分けるハンガー22の位置に対応した所定の仕分位置に移動する。なお、刷版11を吊り下げ状態に姿勢変換する前に、非接触吸着パッド57により刷版11を保持した状態で移動部69が仕分位置に移動し、仕分位置に移動した後に刷版11を吊り下げ状態に姿勢変換してもよい。
【0048】
その後、
図4および
図5に示すように、非接触吸着パッド57により刷版11の裏面側11bを吸引し続けながら、搬出部31の搬出駆動部62により搬出体61を搬送方向Xに移動させ、搬出体61の複数の押動部65により刷版11を引掛部44に沿って搬送方向Xに押し出す。押動部65は、刷版11の曲げ部12を有する縁部に直交する縁部に接触して刷版11を搬出方向である搬送方向Xに押し出す。押動部65は、アーム体48のアーム部51と交差するが、アーム部51の溝部55内を通過し、刷版11の押し出しを継続する。
【0049】
搬出部31により押し出される刷版11は、非接触吸着パッド57により保持され、振れや位置ずれが防止されているため、貯版部15のハンガーストッカ20のストッカフレーム21などに当接することなく、隣り合うハンガーストッカ20の間の位置に向かって正確に移動する。
【0050】
搬出部31により押し出される刷版11は、曲げ部12が姿勢変換部30の引掛部44からハンガーストッカ20のハンガー22に引っ掛かり、ハンガー22に沿って移動し、ハンガーストッカ20に吊り下げ状態で収納される。
【0051】
そして、刷版11の搬出後は、上述した仕分待機時(仕分初期時)の状態に復帰し、次の刷版11の仕分動作に移行する。
【0052】
このように構成された刷版仕分装置10の刷版搬送装置16によれば、引掛部44に吊り下げられて保持部45により面方向に移動可能に保持されている状態の刷版11を引掛部44に沿って面方向に搬出するため、吊り下げ状態の刷版11の振れや位置ずれを防止しながら、吊り下げ状態の刷版11を傷付けることなく搬送できる。
【0053】
しかも、保持部45は、刷版11を非接触で保持するため、刷版11を傷付けることなく、刷版11を面方向に移動可能に保持できる。さらに、保持部45は、刷版11の面に対向して非接触で保持する非接触吸着パッド57であるため、刷版11の表面側11aを傷付けることなく、刷版11を面方向に移動可能に保持できる。
【0054】
さらに、姿勢変換部30に保持部45が設けられているため、搬入部29に搬入された刷版11を保持部45で保持した状態で、刷版11の表面側11aが上方に向く姿勢から引掛部44により刷版11を吊り下げる姿勢に変換することができ、刷版11の曲げ部12を引掛部44に確実に引っ掛けることができる。
【0055】
さらに、搬出部31により、刷版11の曲げ部12を有する縁部に直交する縁部を搬出方向である搬送方向Xに向けて押し出すため、吊り下げ状態の刷版11を傷付けることなく搬出できる。
【0056】
また、刷版仕分装置10によれば、搬入部29、姿勢変換部30および搬出部31などが設けられた移動部69を、刷版11を仕分ける貯版部15のハンガー22の位置に対応して移動させるため、貯版部15の複数のハンガー22のうちの所定のハンガー22に吊り下げ状態で収納することができ、刷版11を傷付けることなく仕分けることができる。
【0057】
なお、保持部45は、刷版11の表面側11aから空気を吹き付けて刷版11をアーム体48に押し付けることにより刷版11を非接触状態で面方向に移動可能に保持するようにしてもよい。あるいは、保持部45は、ベルヌーイ効果を利用した非接触チャックを用い、刷版11をアーム体48にも非接触状態で面方向に移動可能に保持するようにしてもよい。
【0058】
以上、本発明の実施の形態およびその変形例について説明したが、種々の構成の組み合わせ、一部の省略、置き換えおよび変更も可能である。
【符号の説明】
【0059】
11 刷版
11a 表面側
11b 裏面側
12 曲げ部
15 貯版部
16 刷版搬送装置
22 ハンガー
26 仕分ユニット
29 搬入部
30 姿勢変換部
31 搬出部
44 引掛部
45 保持部
57 非接触吸着バッド
65 押動部
69 移動部
70 仕分駆動部