(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】棒状化粧料製造装置、及び棒状化粧料製造方法
(51)【国際特許分類】
A45D 40/16 20060101AFI20240301BHJP
【FI】
A45D40/16 B
(21)【出願番号】P 2020024876
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000153926
【氏名又は名称】株式会社ヒダン
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】岡村 敦
(72)【発明者】
【氏名】菊池 孝也
(72)【発明者】
【氏名】河口 邦汎
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-125932(JP,A)
【文献】特開昭57-031808(JP,A)
【文献】特開昭61-020508(JP,A)
【文献】特開2006-280543(JP,A)
【文献】特開2000-300338(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0338731(KR,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0137101(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の化粧料本体と、前記化粧料本体の基部に一体化される中皿と、前記中皿を介して前記化粧料本体を収容保持する化粧料容器と、を備える棒状化粧料の製造装置であって、
一端側が閉じ他端側が開口した円筒形状のラバーモールドを保持した第1保持部材と、前記中皿を保持した第2保持部材とを
、第1、第2保持部材の互いに対向する当接面同士が突き当たる位置決め状態で固定することで、前記ラバーモールドに前記中皿を装着する中皿装着手段と、
加熱により軟化又は液化した前記化粧料本体の材料を前記中皿及び前記ラバーモールドに充填する充填手段と、
前記中皿及び前記ラバーモール
ドに充填された前記化粧料本
体の材料を冷却して固化する冷却手段と、
前記中
皿から前記第2保持部材を外す第2保持部材外し手段と、
前記
第2保持部材が外された中皿の前記ラバーモールド側への移動を規制する移動規制手段と、
固化した前記化粧料本体と一体化された前記中皿を前記化粧料容器に差し込んで嵌着させる嵌着手段と、
前記ラバーモールドを膨張させる膨張手段と、
前記中皿を介して前記化粧料容器に保持された前記化粧料本体を前記ラバーモールドから取り出す取り出し手段と、を備え
、
前記中皿装着手段による第1、第2保持部材同士の固定によるラバーモールドへの中皿の装着は、前記第1、第2保持部材の当接面同士が互いに突き当たる位置決め状態で、中皿がラバーモールドの筒内に嵌入することなく、ラバーモールドの開口端面部に中皿の装着端面部を押し当てする状態での装着であることを特徴とする棒状化粧料製造装置。
【請求項2】
前記中皿は、
前記第2保持部材に対して位置決めされる第1段差部と、
前記ラバーモールドに装着される装着部と、
加熱により軟化又は液化した前記化粧料本体の材料が充填される中空部と、
前記移動規制手段によって移動規制される第2段差部と、
前記化粧料容器に係合状に嵌着される嵌着部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の棒状化粧料製造装置。
【請求項3】
棒状の化粧料本体と、前記化粧料本体の基部に一体化される中皿と、前記中皿を介して前記化粧料本体を収容保持する化粧料容器と、を備える棒状化粧料の製造方法であって、
一端側が閉じ他端側が開口した円筒形状のラバーモールドを保持した第1保持部材と、前記中皿を保持した第2保持部材とを
、第1、第2保持部材の互いに対向する当接面同士が互いに突き当たる位置決め状態で互いに固定することで、前記ラバーモールドに前記中皿を装着する中皿装着工程と、
加熱により軟化又は液化した前記化粧料本体の材料を前記中皿及び前記ラバーモールドに充填する充填工程と、
前記中皿及び前記ラバーモールドに充填された前記化粧料本体の材料を冷却して固化する冷却工程と、
前記中皿から前記第2保持部材を外す第2保持部材外し工程と、
前記
第2保持部材が外された中皿の前記ラバーモールド側への移動を規制する移動規制工程と、
固化した前記化粧料本体と一体化された前記中皿を前記化粧料容器に差し込んで嵌着させる嵌着工程と、
前記ラバーモールドを膨張させる膨張工程と、
前記中皿を介して前記化粧料容器に保持された前記化粧料本体を前記ラバーモールドから取り出す取り出し工程と、を有し、
前記中皿装着工程における第1、第2保持部材同士の固定によるラバーモールドへの中皿の装着は、前記第1、第2保持部材の当接面同士が互いに突き当たる位置決め状態で、中皿がラバーモールドの筒内に嵌入することなく、ラバーモールドの開口端面部に中皿の装着端面部を押し当てする状態での装着であることを特徴とする棒状化粧料製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状口紅などの棒状化粧料を製造する棒状化粧料製造装置、及び棒状化粧料製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
棒状口紅などの棒状化粧料は、棒状の化粧料本体と、中皿を介して化粧料本体を収容保持する化粧料容器と、を備えており、化粧料容器の中で中皿を上下にスライドさせることで、化粧料容器から化粧料本体を出し入れして使用される。
【0003】
棒状化粧料の化粧料容器には、少なくとも2つの方式がある。一方の方式は、化粧料容器の製造時に中皿が組み込まれるもので、一体中皿方式と称される。一体中皿方式の化粧料容器を用いた棒状化粧料の製造方法としては、化粧料容器の先端部に化粧料本体の型を取り付けた後、化粧料容器の底部に形成される孔から加熱により軟化又は液化した化粧料本体の材料を充填し、これを冷却して固化させる方法(バック充填方式)と、別途型成形した化粧料本体を化粧料容器の中皿部分に差し込む方法(差し方式)と、が知られている。
【0004】
また、他方の方式は、中皿が化粧料容器と別体となっているもので、二体中皿方式と称される。二体中皿方式の化粧料容器を用いた棒状化粧料の製造には、化粧料本体の型に中皿だけを取り付けた状態で、加熱により軟化又は液化した化粧料本体の材料を充填し、これを冷却して固化させた後、中皿付きの化粧料本体を化粧料容器に差し込む方法が用いられる。
【0005】
二体中皿方式の化粧料容器は、化粧料本体と中皿だけを取り出せるので、不良が出たとき、化粧料容器の本体部分を綺麗なまま再利用できるだけでなく、破棄するパーツが中皿という小さなパーツだけで済むという利点があり、また、中皿の中で化粧料本体を固化させるので、化粧料本体の抜けが発生しにくく、柔らかい化粧料本体にも対応できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
化粧料本体の型には、金属で形成された金属モールド、硬質の樹脂で形成された樹脂モールド、弾性変形可能なシリコーンなどで形成されたラバーモールド、などの種類があり、ラバーモールドでは、ロゴ入りや変形形状の化粧料本体を生産できるという利点がある。
【0008】
しかしながら、二体中皿方式の化粧料容器を用いた棒状化粧料の製造は、金属モールドや樹脂モールドでは実用化されているものの、ラバーモールドでは実用化されていない。その理由は、ラバーモールドが柔らかいため、ラバーモールドと中皿の固定が難しいだけでなく、冷却固化後に中皿と一体となった化粧料本体を化粧料容器に差し込む際にラバーモールドが変形し、確実な差し込みができないからと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、棒状の化粧料本体と、前記化粧料本体の基部に一体化される中皿と、前記中皿を介して前記化粧料本体を収容保持する化粧料容器と、を備える棒状化粧料の製造装置であって、一端側が閉じ他端側が開口した円筒形状のラバーモールドを保持した第1保持部材と、前記中皿を保持した第2保持部材とを、第1、第2保持部材の互いに対向する当接面同士が突き当たる位置決め状態で固定することで、前記ラバーモールドに前記中皿を装着する中皿装着手段と、加熱により軟化又は液化した前記化粧料本体の材料を前記中皿及び前記ラバーモールドに充填する充填手段と、前記中皿及び前記ラバーモールドに充填された前記化粧料本体の材料を冷却して固化する冷却手段と、前記中皿から前記第2保持部材を外す第2保持部材外し手段と、前記第2保持部材が外された中皿の前記ラバーモールド側への移動を規制する移動規制手段と、固化した前記化粧料本体と一体化された前記中皿を前記化粧料容器に差し込んで嵌着させる嵌着手段と、前記ラバーモールドを膨張させる膨張手段と、前記中皿を介して前記化粧料容器に保持された前記化粧料本体を前記ラバーモールドから取り出す取り出し手段と、を備え、前記中皿装着手段による第1、第2保持部材同士の固定によるラバーモールドへの中皿の装着は、前記第1、第2保持部材の当接面同士が互いに突き当たる位置決め状態で、中皿がラバーモールドの筒内に嵌入することなく、ラバーモールドの開口端面部に中皿の装着端面部を押し当てする状態での装着であることを特徴とする棒状化粧料製造装置である。
請求項2の発明は、前記中皿は、前記第2保持部材に対して位置決めされる第1段差部と、前記ラバーモールドに装着される装着部と、加熱により軟化又は液化した前記化粧料本体の材料が充填される中空部と、前記移動規制手段によって移動規制される第2段差部と、前記化粧料容器に係合状に嵌着される嵌着部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の棒状化粧料製造装置である。
請求項3の発明は、棒状の化粧料本体と、前記化粧料本体の基部に一体化される中皿と、前記中皿を介して前記化粧料本体を収容保持する化粧料容器と、を備える棒状化粧料の製造方法であって、一端側が閉じ他端側が開口した円筒形状のラバーモールドを保持した第1保持部材と、前記中皿を保持した第2保持部材とを、第1、第2保持部材の互いに対向する当接面同士が互いに突き当たる位置決め状態で互いに固定することで、前記ラバーモールドに前記中皿を装着する中皿装着工程と、加熱により軟化又は液化した前記化粧料本体の材料を前記中皿及び前記ラバーモールドに充填する充填工程と、前記中皿及び前記ラバーモールドに充填された前記化粧料本体の材料を冷却して固化する冷却工程と、前記中皿から前記第2保持部材を外す第2保持部材外し工程と、前記第2保持部材が外された中皿の前記ラバーモールド側への移動を規制する移動規制工程と、固化した前記化粧料本体と一体化された前記中皿を前記化粧料容器に差し込んで嵌着させる嵌着工程と、前記ラバーモールドを膨張させる膨張工程と、前記中皿を介して前記化粧料容器に保持された前記化粧料本体を前記ラバーモールドから取り出す取り出し工程と、を有し、前記中皿装着工程における第1、第2保持部材同士の固定によるラバーモールドへの中皿の装着は、前記第1、第2保持部材の当接面同士が互いに突き当たる位置決め状態で、中皿がラバーモールドの筒内に嵌入することなく、ラバーモールドの開口端面部に中皿の装着端面部を押し当てする状態での装着であることを特徴とする棒状化粧料製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1、3の発明によれば、ラバーモールドと中皿を別々に保持して保持部材同士を固定させるので、ラバーモールドと中皿を確実に固定できる。また、冷却固化後に中皿と一体となった化粧料本体を化粧料容器に差し込む際、中皿のラバーモールド側への移動を規制するので、ラバーモールドの変形を防止し、確実な差し込みを行うことができる。その結果、二体中皿方式の化粧料容器及びラバーモールドを用いた棒状化粧料の製造が可能となり、二体中皿方式の化粧料容器及びラバーモールドの利点が得られる。
また、請求項2の発明によれば、本発明の製造装置及び製造方法に対応可能な中皿が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る棒状化粧料製造装置を用いた棒状化粧料製造方法の第1工程を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る棒状化粧料製造装置を用いた棒状化粧料製造方法の第2工程(中皿装着工程)を示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る棒状化粧料製造装置を用いた棒状化粧料製造方法の第3工程(充填工程)を示す断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る棒状化粧料製造装置を用いた棒状化粧料製造方法の第4工程(冷却工程)を示す断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る棒状化粧料製造装置を用いた棒状化粧料製造方法の第5工程(第2保持部材外し工程)を示す断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る棒状化粧料製造装置を用いた棒状化粧料製造方法の第6工程(移動規制工程)を示す断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る棒状化粧料製造装置を用いた棒状化粧料製造方法の第7工程(嵌着工程)を示す断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る棒状化粧料製造装置を用いた棒状化粧料製造方法の第8工程(膨張工程)を示す断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る棒状化粧料製造装置を用いた棒状化粧料製造方法の第9工程を示す断面図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る棒状化粧料製造装置を用いた棒状化粧料製造方法の第10工程(取り外し工程)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、
図1~
図10に基づいて説明する。
【0013】
[棒状化粧料製造装置]
本実施形態の棒状化粧料製造装置は、棒状口紅、棒状リップクリーム、棒状ファンデーションなどの棒状化粧料1を製造するための装置である。本実施形態の棒状化粧料製造装置で製造される棒状化粧料1は、棒状の化粧料本体2と、化粧料本体2の基部に一体化される中皿3と、中皿3を介して化粧料本体2を収容保持する化粧料容器4と、を備える。
【0014】
化粧料容器4は、中皿3が化粧料容器4と別体となっている二体中皿方式であり、棒状化粧料1の製造に際しては、化粧料本体2の型(例えば、後述するラバーモールド5)に中皿3だけを取り付けた状態で、加熱により軟化又は液化した化粧料本体2の材料を充填し、これを冷却して固化させた後、中皿3付きの化粧料本体2を化粧料容器4に差し込むという製造方法が適用される。
【0015】
本実施形態の棒状化粧料製造装置は、第1保持部材6及び第2保持部材7を用いて、ラバーモールド5に中皿3を装着する中皿装着手段と、加熱により軟化又は液化した化粧料本体2の材料を中皿3及びラバーモールド5に充填する充填手段と、中皿3及びラバーモールド5に充填された化粧料本体2の材料を冷却して固化する冷却手段と、第1開閉爪21及び第2開閉爪22を用いて、中皿3から第2保持部材7を外す第2保持部材外し手段と、第3開閉爪23を用いて、中皿3のラバーモールド5側への移動を規制する移動規制手段と、固化した化粧料本体2と一体化された中皿3を化粧料容器4に差し込んで嵌着させる嵌着手段と、バキュームチャンバー24を用いて、ラバーモールド5を膨張させる膨張手段と、中皿3を介して化粧料容器4に保持された化粧料本体2をラバーモールド5から取り出す取り出し手段と、を備える。
【0016】
なお、上記の各手段は、棒状化粧料製造装置を構成する各種の装置と、各種の装置を制御する制御部と、制御部に記憶されるプログラムなどの協働により実現される機能的な構成である。棒状化粧料製造装置を構成する各種の装置のうち、公知の装置については、図示及び詳細な説明を省略する場合がある。
【0017】
図1に示すように、中皿3は、全体として略円筒形状の樹脂部材であって、内周側には、加熱により軟化又は液化した化粧料本体2の材料が充填される中空部3aが形成され、外周側には、第2保持部材7に対して位置決めされる第1段差部3bと、第3開閉爪23によって移動規制される第2段差部3cと、が形成され、筒方向の一端側には、ラバーモールド5に押し当て状に装着される
装着端面部3dが形成され、筒方向の他端側には、化粧料容器4に係合状に嵌着される嵌着部3eが形成されて
いる。
【0018】
図2に示すように、ラバーモールド5は、筒方向の一端側が閉じられた円筒形状を有し、シリコーンなどの弾性変形可能な部材で形成されている。ラバーモールド5の内周側には、加熱により軟化又は液化した化粧料本体2の材料が充填される中空部5aが形成され、筒方向の他端側には、中皿3の装着部3dが押し当て状に装着される
開口端面部5bと、
開口端面部5bの周縁部から外径方向に延在するフランジ部5cと、が形成されて
いる。
【0019】
図2に示すように、第1保持部材6は、ラバーモールド5を保持する部材であって、円筒形状又はリング形状を有する。第1保持部材6の内周側には、ラバーモールド5が挿通状に装着される装着孔6aと、ラバーモールド5のフランジ部5cと係合してラバーモールド5の筒方向の一端側への抜けを規制する抜け止め部6bと、が形成され、外周側には、第1開閉爪21が係合する係合溝6cが形成され、筒方向の他端側には、第2保持部材7と当接する当接面6dと、当接面6dに埋め込まれる磁石6eと、が設けられている。
【0020】
図1及び
図2に示すように、第2保持部材7は、中皿3を保持する部材であって、円筒形状又はリング形状を有する。第2保持部材7の内周側には、中皿3が嵌入状態で装着される装着孔7aと、中皿3の第1段差部3bと係合して中皿3を位置決めする段差状の位置決め部7bと、が形成され、外周側には、第2開閉爪22が係合する係合溝7cが形成され、筒方向の一端側には、第1保持部材6に嵌入する嵌入部7dと、第1保持部材6の当接面6dと当接する当接面7eと、当接面7eに埋め込まれる磁石7fと、が設けられている。
【0021】
図1及び
図2に示すように、中皿装着手段は、ラバーモールド5を保持した第1保持部材6と中皿3を保持した第2保持部材7とを互いに固定することで、ラバーモールド5に中皿3を装着する。
【0022】
具体的に説明すると、中皿装着手段は、
図1に示すように、第2保持部材7の装着孔7aに対して筒方向の一端側から中皿3を挿入し、中皿3の第1段差部3bを第2保持部材7の位置決め部7bに係合させた後、
図2に示すように、中皿3を保持した第2保持部材7を、ラバーモールド5を保持した第1保持部材6に載せ、第2保持部材7の嵌入部7dを第1保持部材6に嵌入させる。これにより、両保持部材6、7は、互いに位置決めされた状態で当接面6d、7e同士が当接し、磁石6e、7fの磁力で互いに固定される。それに伴って中皿3は、
図2から明らかなように中皿3の先端部である装着端面部3dが、ラバーモールド5の内周面に嵌入することなくラバーモールド5の
開口端面部5bに突き当て状に押し当てられることで、ラバーモールド5に装着されるとともに、両保持部材6、7によって装着状態が確実に維持される。なお、第2保持部材7に対する中皿3の挿入や、第2保持部材7の第1保持部材6に対する載置は、公知の装置を用いて行われる。
【0023】
図3に示すように、充填手段は、加熱により軟化又は液化した化粧料本体2の材料を中皿3の他端側の開口部から中皿3の中空部3a及びラバーモールド5の中空部5aに充填する。なお、化粧料本体2の材料を加熱する装置や、加熱により軟化又は液化した化粧料本体2の材料を中皿3及びラバーモールド5に適量だけ充填する装置は、公知のものである。
【0024】
図4に示すように、冷却手段は、中皿3及びラバーモールド5に充填された化粧料本体2の材料を冷却して固化する。例えば、公知の空冷式冷却装置を用い、冷却風を所定時間供給することで、化粧料本体2の材料を所定の温度まで冷却して固化する。化粧料本体2の材料が固化されると、中皿3が化粧料本体2と一体化される。
【0025】
図5に示すように、第2保持部材外し手段は、中皿3から第2保持部材7を外すために、第1開閉爪21及び第2開閉爪22を用いる。一方の第1開閉爪21は、爪部の閉じ動作によって第1保持部材6の係合溝6cに係合して第1保持部材6の筒方向の移動を規制する。他方の第2開閉爪22は、爪部の閉じ動作によって第2保持部材7の係合溝7cに係合した後、筒方向の他方側へ移動することにより、第2保持部材7を中皿3及び第1保持部材6から分離させる。
【0026】
図6に示すように、移動規制手段は、中皿3のラバーモールド5側への移動を規制するために、第3開閉爪23を用いる。第3開閉爪23は、筒方向のスライド動作及び爪部の閉じ動作によって中皿3の第2段差部3cに係合することで、中皿3のラバーモールド5側への移動を規制する。
【0027】
図7に示すように、嵌着手段は、固化した化粧料本体2と一体化された中皿3を化粧料容器4に差し込んで嵌着させる。例えば、公知の把持装置を用いて化粧料容器4を下向き姿勢で把持するとともに、化粧料容器4を下方にスライドさせて化粧料容器4の中に中皿3を挿入させる。このとき、中皿3には、嵌着部3eを化粧料容器4に嵌着させるのに必要な力が作用するが、中皿3は、第3開閉爪23によってラバーモールド5側への移動が規制されているので、ラバーモールド5の変形を防止しつつ、化粧料容器4に確実に嵌着される。
【0028】
図8に示すように、膨張手段は、ラバーモールド5を膨張させるために、バキュームチャンバー24を用いる。バキュームチャンバー24は、ラバーモールド5の周囲を気密的に覆うバキュームチャンバー24本体の他に、吸引孔25を介してバキュームチャンバー24内の空気を吸引してラバーモールド5の外圧を低下させる吸引ポンプ(図示せず)を備えて構成されている。ラバーモールド5は、外圧が低下に伴う内圧の相対的な上昇により膨張し、内周面が化粧料本体2の表面から離間する。
【0029】
図9及び
図10に示すように、取り出し手段は、第3開閉爪23を中皿3から外した後、中皿3を介して化粧料容器4に保持された化粧料本体2をラバーモールド5から取り出す。例えば、前述した把持装置で化粧料容器4を上方にスライドさせる。このとき、ラバーモールド5は、バキュームチャンバー24によって膨張状態が維持されているので、化粧料本体2の表面に擦れなどの不良を生じさせることがない。
【0030】
[棒状化粧料製造方法]
つぎに、本実施形態の棒状化粧料製造装置を用いた棒状化粧料製造方法について、
図1~
図10を参照して説明する。なお、棒状化粧料製造装置の説明と重複する部分は、説明を省略する場合がある。
【0031】
本実施形態の棒状化粧料製造方法には、10の工程が含まれる。
【0032】
図1に示すように、第1工程では、第2保持部材7の装着孔7aに対して筒方向の一端側から中皿3を挿入する。
【0033】
図2に示すように、第2工程(中皿装着工程)では、中皿3を保持した第2保持部材7を、ラバーモールド5を保持した第1保持部材6に固定することで、
中皿3がラバーモールド5に嵌入することなく、中皿3の装着端面部3dが、ラバーモールド5の開口端面部5bに突き当て状に押し当たる状態となって中皿3をラバーモールド5に装着する。保持部材6、7同士は、磁石6e、7fの磁力で互いに固定され、ラバーモールド5に対する中皿3の装着状態を確実に維持する。
【0034】
図3に示すように、第3工程(充填工程)では、加熱により軟化又は液化した化粧料本体2の材料を中皿3の中空部3a及びラバーモールド5の中空部5aに充填する。
【0035】
図4に示すように、第4工程(冷却工程)では、中皿3及びラバーモールド5に充填された化粧料本体2の材料を冷却して固化する。これにより、中皿3が化粧料本体2と一体化される。
【0036】
図5に示すように、第5工程(第2保持部材外し工程)では、第1開閉爪21及び第2開閉爪22を用いて、中皿3から第2保持部材7を外す。
【0037】
図6に示すように、第6工程(移動規制工程)では、第3開閉爪23を用いて、中皿3のラバーモールド5側への移動を規制する。
【0038】
図7に示すように、第7工程(嵌着工程)では、固化した化粧料本体2と一体化された中皿3を化粧料容器4に差し込んで嵌着させる。このとき、中皿3には、化粧料容器4から嵌着させるのに必要な力を受けるが、中皿3は、第3開閉爪23によってラバーモールド5側への移動が規制されているので、ラバーモールド5の変形を防止しつつ、化粧料容器4に確実に嵌着される。
【0039】
図8に示すように、第8工程(膨張工程)では、バキュームチャンバー24を用いて、ラバーモールド5を膨張させる。
【0040】
図9に示すように、第9工程では、第3開閉爪23を中皿3から外す。
【0041】
図10に示すように、第10工程(取り外し工程)では、中皿3を介して化粧料容器4に保持された化粧料本体2をラバーモールド5から取り出す。
【0042】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、棒状の化粧料本体2と、化粧料本体2の基部に一体化される中皿3と、中皿3を介して化粧料本体2を収容保持する化粧料容器4と、を備える棒状化粧料1の製造装置及び製造方法であって、ラバーモールド5を保持した第1保持部材6と中皿3を保持した第2保持部材7とを互いに固定することで、ラバーモールド5に中皿3を、中皿3がラバーモールド5に嵌入しない端面部同士の押し当て状態で装着し、加熱により軟化又は液化した化粧料本体2の材料を中皿3及びラバーモールド5に充填し、中皿3及びラバーモールド5に充填された化粧料本体2の材料を冷却して固化し、中皿3から第2保持部材7を外し、中皿3のラバーモールド5側への移動を規制しつつ、固化した化粧料本体2と一体化された中皿3を化粧料容器4に差し込んで嵌着し、ラバーモールド5を膨張させつつ、中皿3を介して化粧料容器4に保持された化粧料本体2をラバーモールド5から取り出すことで、棒状化粧料1が製造される。
【0043】
このような製造装置及び製造方法によれば、ラバーモールド5と中皿3を別々に保持した保持部材6、7同士を位置決め状態で固定させるので、ラバーモールド5と中皿3を確実に固定できる。また、冷却固化後に中皿3と一体となった化粧料本体2を化粧料容器に差し込む際、中皿3のラバーモールド5側への移動を規制するので、ラバーモールド5の変形を防止し、確実な差し込みを行うことができる。その結果、二体中皿方式の化粧料容器4及びラバーモールド5を用いた棒状化粧料1の製造が可能となり、二体中皿方式の化粧料容器4及びラバーモールド5の利点が得られる。
【0044】
また、中皿3は、前記第2保持部材7に対して位置決めされる第1段差部3bと、ラバーモールド5に装着される装着端面部3dと、加熱により軟化又は液化した化粧料本体2の材料が充填される中空部3aと、第3開閉爪23によって移動規制される第2段差部3cと、化粧料容器4に係合状に嵌着される嵌着部3eと、を備えるので、本実施形態の製造装置及び製造方法に対応可能な中皿3が得られる。
【0045】
また、第1保持部材6と第2保持部材7は、磁石6e、7fによって互いに固定されるので、磁力を利用してラバーモールド5と中皿3を確実に固定できるだけでなく、保持部材6、7同士の固定及び分離が容易になる。
【符号の説明】
【0046】
1 棒状化粧料
2 化粧料本体
3 中皿
3a 中空部
3b 第1段差部
3c 第2段差部
3d 装着端面部
3e 嵌着部
4 化粧料容器
5 ラバーモールド
5a 中空部
5b 開口端面部
5c フランジ部
6 第1保持部材
6a 装着孔
6b 抜け止め部
6c 係合溝
6d 当接面
6e 磁石
7 第2保持部材
7a 装着孔
7b 位置決め部
7c 係合溝
7d 嵌入部
7e 当接面
7f 磁石
21 第1開閉爪
22 第2開閉爪
23 第3開閉爪
24 バキュームチャンバー
25 吸引孔