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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】ガス栓取付装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 27/00 20060101AFI20240301BHJP
【FI】
F16K27/00 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020073442
(22)【出願日】2020-04-16
(65)【公開番号】P2021169845
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000167325
【氏名又は名称】光陽産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】宮川 成一
(72)【発明者】
【氏名】水内 伸哉
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-173607(JP,A)
【文献】特開2017-160954(JP,A)
【文献】実開平05-010883(JP,U)
【文献】実開平07-012669(JP,U)
【文献】特開平06-193759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/00-27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内に臨む板材にガス栓を取り付ける装置であって、
上記板材を室外側から支持する支持部材に固定されるブラケットと、
上記ブラケットに上記板材に対して接近離間する方向に移動可能に支持され、ガス栓を保持するホルダと、
上記板材に形成される貫通孔を囲むように上記板材の室内側に配置される固定枠と、
この固定枠及び上記ホルダを上記板材の室内面及び室外面にそれぞれ押し付けることにより上記ホルダを上記板材に固定する固定手段とを備え、
上記ブラケットは、上記ホルダの上記板材から離間する方向への移動を規制する第1ストッパ片部を有し、
この第1ストッパ片部は、上記ブラケットから切除可能であることを特徴とするガス栓取付装置。
【請求項2】
上記ブラケットは、上記第1ストッパ片部に対して上記板材とは反対側の位置に、上記板材から離間する方向への上記ホルダの移動を規制する第2ストッパ片部を有することを特徴とする請求項1に記載のガス栓取付装置。
【請求項3】
上記ホルダが上記第2ストッパ片部に当接して上記板材から離間する方向への移動を規制された状態のとき、上記ホルダ及びガス栓が上記板材の室外面より奥側に位置することを特徴とする請求項2に記載のガス栓取付装置。
【請求項4】
上記第2ストッパ片部は、上記ブラケットから切除可能であることを特徴とする請求項2又は3に記載のガス栓取付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、室内に臨む板材にガス栓を取り付けるためのガス栓取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
室内に臨む板材として例えば壁板にガス栓取付装置を用いてガス栓を取り付ける作業は、壁板の施工後にガス栓の取付けを始める場合(後付けの場合)と、壁板の施工前に、あらかじめガス栓を壁板の外側にあたる部分に仮取付けしておく場合(先付けの場合)とがある。
【0003】
後付けの場合には、壁板の施工前に壁板の外側にあたる部分に、フレキシブル管のみを配設する。壁板の施工後に、壁板に貫通孔を形成し、貫通孔からフレキシブル管を室内に引き出してガス栓に接続した後、ガス栓をガス栓取付装置により壁板に取り付けている。
【0004】
先付けの場合には、壁板の施工前に、フレキシブル管に接続したガス栓を、壁板を室外側から支持する部材例えば間柱、桟等に、ガス栓取付装置の室外側の部材により仮取付けしておく。壁板の施工に際して、仮取付けされたガス栓の位置に合わせて壁板に貫通孔を形成して壁板を施工し、その後に、壁板へのガス栓の取付けを完了させている。
【0005】
下記特許文献1に開示のガス栓取付装置は、「先付け」によりガス栓を壁板に取り付けるものであって、装置本体(ブラケット)と、ガス栓を保持するホルダと、取付板(固定枠)とを備えている。
【0006】
装置本体は、端板と底板(ストッパ)により平面視L字形状に形成され、端板は、壁板を室外側から支持する桟(支持部材)に固定される。底板は長方形状をなして、ホルダの後面と対向するようになっている。
【0007】
ホルダは、前部と上側部が開放された箱状に形成され、その前端部が壁板に形成された貫通孔に挿入された状態で装置本体に支持され、壁板に対して接近離間する方向に移動可能である。ホルダの後側部である底板が装置本体の底板に当接することにより、ホルダは、壁板から離間する方向への移動を規制されている。ホルダの底板にガス栓が固定され、ガス栓のプラグ部はホルダの前端部より前方に突出している。
【0008】
取付板は、壁板の貫通孔を囲むように壁板の室内側に配置される。2本の長ボルト(固定手段)が、それぞれ、室内から見て取付板の左上部と右下部にあるねじ挿通孔を貫通し、ホルダの左上部と右下部のねじ挿通孔を貫通して、装置本体のねじ孔に螺合されている。これにより、取付板が壁に押圧固定されている。また、2本の中ボルト(固定手段)が、それぞれ、取付板の左下部と右上部のねじ挿通孔を貫通し、ホルダの左下部と右上部のねじ孔に螺合されることによって、ホルダが取付板に固定されている。
【0009】
特許文献1のガス栓取付装置を用いた「先付け」によるガス栓の壁板への取付けでは、先ず、壁板の施工前に装置本体を桟に固定する。次に、フレキシブル管に接続されたガス栓を保持させたホルダを装置本体に支持させる。この状態で、2本の長ボルトをそれぞれ、ホルダの左上部と右下部のねじ挿通孔に通し、装置本体のねじ孔に螺合させ、ホルダと装置本体を一時的に固定しておく。このようにして、ガス栓はホルダ及び装置本体を介して桟に仮取付けされる。
【0010】
次に、壁板施工時にガス栓の保護に用いる有底角筒状の保護カバーを、ガス栓を覆うようにホルダに取り付ける。保護カバーをホルダに固定するために、2本の中ボルトをそれぞれ、保護カバーの連結板部(底部)の左下部と右上部に形成されたねじ挿通孔に通し、ホルダの左下部と右上部のねじ孔に螺合させる。保護カバーにより、施工前の壁板における貫通孔の形成位置を確認して、貫通孔を形成する。
【0011】
貫通孔が形成された壁板を施工した後、保護カバーを固定する2本の中ボルトを取り外して保護カバーを取り外し、ホルダと装置本体を一時的に固定している2本の長ボルトを取り外す。その後、貫通孔を囲むように取付板を壁板の室内側に配置する。
【0012】
取り外された2つの長ボルトを、それぞれ、取付板の左上と右下のねじ挿通孔に通し、対応するホルダのねじ挿通孔に通して、装置本体のねじ孔に螺合させ、取付板を壁板に固定する。また、取り外された2つの中ボルトを、それぞれ、取付板の左下と右上のねじ挿通孔に通し、ホルダのねじ孔に螺合させ、ホルダを取付板に固定する。その後、化粧プレートを取付板に固定して、ガス栓の壁板への取付けを完了させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】実開平7-12669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
「先付け」によりガス栓を壁板に取り付ける特許文献1のガス栓取付装置では、壁板を施工するとき、その施工前に壁板に貫通孔を形成している。そのため、壁板の施工業者がガス栓取付けのための貫通孔を形成することになる。これに対し、壁板の施工業者に貫通孔を形成させることなく壁板の施工のみを担当させ、ガス栓の最終的な取付けを行う業者に貫通孔の形成をさせるという要請がある。すなわち、「先付け」の場合において、壁板施工後の異なる時期に貫通孔の形成が可能であることへの要請がある。
【0015】
この要請に関して、特許文献1のガス栓取付装置では、ホルダは、その前端部が壁板の貫通孔に挿入された状態となるよう装置本体(ブラケット)に支持され、ホルダに保持されたガス栓のプラグ部は、ホルダの前端部よりさらに前方に突出している。このとき、ホルダは、装置本体の底板(ストッパ)により、壁板から離間する方向へ移動することができない。つまり、ガス栓を桟(支持部材)に仮取付けしたときには、ホルダの前端部及びガス栓のプラグ部は、壁板の後面(室外面)に相当する位置より前側(室内側)に位置することになる。
【0016】
そのため、特許文献1のガス栓取付装置では、壁板に貫通孔を形成することなく壁板を施工することはできず、基本的に上記要請に応えることができない。
【0017】
上記要請に対応するため、特許文献1のガス栓取付装置の装置本体の桟への固定位置を後側にずらして、ホルダ及びこれに保持されたガス栓のプラグ部を後退させることが考えられる。
【0018】
しかし、長ボルトが装置本体に届かず、取付枠(固定枠)を装置本体に固定できなくなってしまうために、装置本体の桟への固定位置を後側にずらすことには制限がある。この制限は、壁板の厚みが大きいほど大きくなる。
【0019】
また、特許文献1のガス栓取付装置では、壁板より後側に存在する構造物として例えば奥壁の存在により、桟に固定される装置本体の背面がつかえてしまう場合があった。その場合には、ガス栓の取付けが出来なかった。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題の少なくとも1つを解決するためになされたこの発明の一態様に係るガス栓取付装置は、室内に臨む板材にガス栓を取り付ける装置であって、上記板材を室外側から支持する支持部材に固定されるブラケットと、上記ブラケットに上記板材に対して接近離間する方向に移動可能に支持され、ガス栓を保持するホルダと、上記板材に形成される貫通孔を囲むように上記板材の室内側に配置される固定枠と、この固定枠及び上記ホルダを上記板材の室内面及び室外面にそれぞれ押し付けることにより上記ホルダを上記板材に固定する固定手段とを備え、
上記ブラケットは、上記ホルダの上記板材から離間する方向への移動を規制する第1ストッパ片部を有し、この第1ストッパ片部は、上記ブラケットから切除可能であることを特徴とする。
【0021】
上記構成によれば、第1ストッパ片部を切除することにより、ホルダを板材から離間する方向へさらに移動させることができる。これにより、ガス栓の取付け手順やガス栓の取付け環境に対する自由度を高めることができる。
【0022】
好ましくは、上記ブラケットは、上記第1ストッパ片部に対して上記板材とは反対側の位置に、上記板材から離間する方向への上記ホルダの移動を規制する第2ストッパ片部を有する。
上記構成によれば、第1ストッパ片部の切除により板材からさらに離間移動するホルダの行き過ぎを防止できる。すなわち、ホルダの離間移動に二段階の規制を設定できる。
【0023】
好ましくは、上記ホルダが上記第2ストッパ片部に当接して上記板材から離間する方向への移動を規制された状態のとき、上記ホルダ及びガス栓が上記板材の室外面より奥側に位置することを特徴とする。
上記構成によれば、ガス栓取付装置を用いて先付けによりガス栓を取り付ける場合において、壁板に貫通孔を形成することなく壁板を施工することができる。
【0024】
上記第2ストッパ片部は、上記ブラケットから切除可能である。
上記構成によれば、上記第2ストッパ片部が、板材より室外側にある奥壁等の構造物と干渉する場合に、上記第2ストッパ片部を切除することにより、ガス栓を取り付けることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、多様な、ガス栓の取付け手順やガス栓の取付け環境に適応可能なガス栓取付装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】この発明の第1実施形態に係るガス栓取付装置の分解斜視図である。
図2】同ガス栓取付装置を壁板に取り付けた状態を示す図であって、(A)は平面図、(B)は正面図である。
図3】同ガス栓取付装置を壁板に取り付けた状態を示す斜視図であって、壁板と間柱を省略して示す。
図4】同ガス栓取付装置のブラケットを示す図であり、(A)は正面図、(B)は図3(A)のB矢視図、(C)は図3(A)のC矢視図である。
図5】同ガス栓取付装置のホルダを示す図であり、(A)は正面図、(B)は図5(A)のB矢視図、(C)は図5(A)のC矢視図である。
図6】同ガス栓取付装置によるガス栓の取付けに用いられる保護カバーを示す図であり、(A)は斜視図、(B)は背面図、(C)は図6(B)のC矢視断面図である。
図7】同ガス栓取付装置を用いた先付けによるガス栓取付け手順において、ガス栓を間柱に仮取付けした状態を示す図であって、(A)は平面図、(B)は斜視図であり間柱を省略して示す。
図8】同取付け手順において、保護カバーをホルダとブラケットに固定し、貫通孔を形成した壁板を施工した状態を示す図であって、(A)は平面図、(B)は斜視図であり間柱と壁板を省略して示す。
図9】同取付け手順において、保護カバーを取り外し、ホルダに螺合されていたボルトを退行させて、固定枠を取り付ける途上の状態を示す図であって、(A)は平面図、(B)は斜視図であり間柱と壁板を省略して示す。
図10】この発明の第2実施形態に係るガス栓取付装置のブラケットを示す斜視図である。
図11】同ガス栓取付装置によるガス栓の取付けに用いられる切欠き案内枠を示す斜視図であり、(A)は内枠がある状態を示し、(B)は内枠が切除された状態を示す。
図12】同切欠き案内枠を示す図であり、(A)は正面図、(B)は図12(A)のB矢視図である。
図13】第2実施形態に係るガス栓取付装置を用いた先付けによるガス栓取付け手順において、ガス栓を間柱に仮取付けした状態を示す図であって、(A)は平面図、(B)は斜視図であり間柱を省略して示す。
図14】同取付け手順において、切欠き案内枠をブラケットに固定し、壁板の施工後貫通孔が形成された状態を示す図であって、(A)は平面図、(B)は正面図である。
図15】同取付け手順において、切欠き案内枠をブラケットに固定し、壁板が施工された状態を示す斜視図であって、壁板と間柱を省略して示す。
図16】同取付け手順において、壁板の施工、貫通孔の形成、及び切欠き案内枠の内枠の削除の後、ホルダを壁板まで移動させる途上の状態を示す図であって、(A)は平面図、(B)は斜視図であり壁板と間柱を省略して示す。
図17】この発明の第3実施形態に係るガス栓取付装置のブラケットを示す斜視図である。
図18】第3実施形態に係るガス栓取付装置を用いた先付けによるガス栓取付け手順において、ガス栓を間柱に仮取付けした状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[第1実施形態]
以下、この発明の第1実施形態を図1図9を参照して説明する。この実施形態は、室内に臨む壁板にガス栓を取り付けるガス栓取付装置に、この発明を適用したものである。
尚、以下の説明において、壁板の室内外方向における室内側を前側とし、室外側を後側として説明する。また、左右は、室内から室外側を見たときの左右を意味する。
【0028】
ガス栓取付装置1は、図1図3に示すようにその構成要素として、ブラケット10と、ホルダ20と、固定枠30とを含む。これらブラケット10、ホルダ20及び固定枠30は、金属製の板材をプレス加工、打ち抜き加工することにより形成されている。
【0029】
ブラケット10は、図2(A)に示すように、壁板2a(板材)の後側の面から壁板2aを支持する間柱2b(支持部材)に固定される。ホルダ20はガス栓3を保持し、ブラケット10に支持されて壁板2aに対して接近離間する方向に移動可能である。固定枠30は、壁板2aに形成される貫通孔2c(図2(B)参照)を囲むように壁板2aの前側に配置される。固定枠30及びホルダ20はボルト7(固定手段)により、それぞれ壁板2aの前面及び後面に押し付けられる。これにより、ホルダ20は壁板2aに固定される。
【0030】
ホルダ20について説明する。
ガス栓3を保持するホルダ20は、図1図5に示すように、矩形状の底板21と、底板21の左右の側部から前方に延びる側板22,22を有している。底板21と左右の側板22は直角をなしており、ホルダ20は、前部と上下部が開放された形状をなしている。この上下部の開放により、ホルダ20は、ガス栓3が上からの配管に接続される場合、及び下からの配管に接続される場合に対応することができる。
【0031】
底板21の上側部には、2つの突出片23,23が形成され真上に突出している。各突出片23には、ねじ孔23aが形成されている。ねじ孔23a,23aを結ぶ線分の中点は、底板21の左右方向における中心よりわずかに左にずれている。各ねじ孔23aに、ガス栓3のねじ挿通孔3aに挿通されたボルト4が螺合される。これにより、ガス栓3はホルダ20にわずかに左にずれた位置で固定される。
【0032】
左右の側板22,22の上下側部の前部には、それぞれ、係合片24が設けられている。各係合片24は、左右方向の外方向に水平に突出する係合板部24aと、係合板部24aの先端部から後方に延びる抜け止め板部24bを有している。各抜け止め板部24bの後端部は、後方に向かうにつれ上下方向における側板22から遠ざかる方向に傾斜している。
【0033】
図1図5(A)に示すように、右の側板22の前端部には、内側に直角に折り曲げられ底板21と対向する右フランジ部25が設けられ、左の側板22の先端部には、内側に直角に折り曲げられ底板21と対向する左フランジ部26が設けられている。尚、右フランジ部25と左フランジ部26の一方又は双方が外側に折り曲げられてもよい。
【0034】
図5(A),(B)に示すように、左フランジ部26と左の側板22の交差部には、位置決め穴27が形成され、左フランジ部26を厚み方向に貫通しているともに、左の側板22をその前端から後方に向かって切り欠いている。位置決め穴27は、後述する固定枠30の位置決め突部38とともに、ホルダ20に対して固定枠30を位置決めする位置決め手段として提供されるものであって、図2(B)に示すように、上記壁板2aの貫通孔2cの貫通方向から見たとき、貫通孔2c内に位置するように配置されている。
【0035】
右フランジ部25及び左フランジ部26は、それぞれ、側板22,22を超えて上下に延びている。右フランジ部25の長手方向(上下方向)の両端部には、内側へ向かって突出する突出片25a,25aがそれぞれ形成されている。左フランジ部26の長手方向(上下方向)の両端部には、内側へ向かって突出する突出片26a,26aがそれぞれ形成されている。
【0036】
各突出片25aには、ねじ孔25bが形成されている。各突出片26aには、ねじ孔26bが形成されている。これらねじ孔25b,25b及びねじ孔26b,26bは、上記壁板2aの貫通孔2cの貫通方向から見たとき、貫通孔2c内に位置するように配置されている。
【0037】
下側の突出片26aの先端部は、ねじ孔26bに隣接して形成されたねじ挿通孔26cを有している。上側の突出片25aの先端部もまた、ねじ孔25bに隣接して形成されたねじ挿通孔25cを有している。
【0038】
固定枠30について説明する。
固定枠30は、図1図2(B)に示すように、外形が角丸四角形状をなしており、内部に窓孔30aが形成されている。固定枠30の外形寸法は、上記壁板2aの貫通孔2cの内形寸法より一回り大きく形成されており、固定枠30の内形寸法(窓孔30aの寸法)は、貫通孔2cの内形寸法と同等かそれより若干小さく形成されている。固定枠30は、壁板2aの室内側に貫通孔2cを囲むように配置される。
【0039】
固定枠30の右縦枠31の上端部及び下端部には、それぞれ、ねじ挿通孔36,36が形成されている。ねじ挿通孔36,36は、固定枠30の内周縁から右方向に切り欠かれることにより形成されている。
【0040】
固定枠30の左縦枠32の上端部及び下端部には、それぞれねじ挿通孔37,37が形成されている。ねじ挿通孔37,37は、固定枠30の外周縁から右方向に切り欠かれることにより形成されている。
【0041】
左縦枠32は、上下のねじ挿通孔37,37の間の位置に、上述のホルダ20の位置決め穴27とともに位置決め手段をなす位置決め突部38を有している。位置決め突部38は、細長い板状に形成され、左縦枠32の窓孔30a側から後方に突出している。位置決め突部38の後方への突出長さは、上記貫通孔2cの深さ(上記壁板2aの厚み)より大きい。位置決め突部38は、ホルダ20の位置決め穴27に挿通可能なサイズに形成されている。
【0042】
位置決め突部38が、位置決め穴27に差し込まれることにより、固定枠30はホルダ20に対して位置決めされ、右縦枠31のねじ挿通孔36,36と右フランジ部25のねじ孔25b,25bの位置がそれぞれ合致し、左縦枠32のねじ挿通孔37,37と左フランジ部26のねじ孔26b,26bの位置がそれぞれ合致するようになっている。
【0043】
ブラケット10について説明する。
ブラケット10は、図1図4に示すように、固定板部11、連結板部12、支持板部13、前部ストッパ片部14(第1ストッパ片部)及び後部ストッパ片部15(第2ストッパ片部)を有している。
【0044】
固定板部11は、前側が凹んだコ字形状をなしており、前端の凹み部分から連結板部12が直角に折れ曲がり右方に延びている。連結板部12の右端部の下端に前部ストッパ片部14が設けられ、連結板部12の右端に支持板部13が連なり、直角に折れ曲がり後方に延びている。支持板部13の後端から、後部ストッパ片部15が直角に折れ曲がり右方に延びている。
【0045】
連結板部12と支持板部13の交差部には、肉抜き穴16が形成され、連結板部12の左端部まで延びるとともに、支持板部13の前後方向中間部まで延びている。支持板部13と後部ストッパ片部15の交差部には、肉抜き穴17が形成され、支持板部13の肉抜き穴16の後端近くまで延びるとともに、後部ストッパ片部15の右端部まで延びている。
【0046】
固定板部11は、ブラケット10を間柱2bに固定するために用いられ、固定板部11には、上端部前部と下端部後部にそれぞれ、前後に長い角丸長円形状の取付孔11aが形成されている。取付孔11aには、間柱2bに螺合される木ねじ6が挿通される。
【0047】
連結板部12の左側の上端部と下端部には、それぞれねじ孔12a,12aが形成されている。各ねじ孔12aは、連結板部12の左端から等しい距離に配置されている。ねじ孔12aには、第2実施形態で後述する切欠き案内枠50を固定する際にボルト8が螺合される。連結板部12の右側の上端部と下端部には、それぞれ係合片挿通口12b,12bが形成されている。係合片挿通口12bには、上記ホルダ20をブラケット10に支持させる際に、ホルダ20の係合片24が通される。係合片挿通口12bは、係合片24の抜け止め板部24bを挿通可能な大きさに形成されている。
【0048】
支持板部13は、ホルダ20をブラケット10に移動可能に支持するためのものであって、肉抜き穴16を挟んで支持板部13の上端部と下端部には、それぞれ案内溝13a,13aが前後方向に水平に延びて形成されている。上下の案内溝13a,13aの前端は、それぞれ、上下の係合片挿通口12b,12bの右端に連なっている。各案内溝13aの後端は、肉抜き穴16を越え肉抜き穴17の前端部付近まで延びている。
【0049】
案内溝13aは、ホルダ20の係合片24の係合板部24aを挿通可能な大きさに形成されているが、係合片24の抜け止め板部24bを挿通させることはできない。
【0050】
連結板部12の係合片挿通口12b及び支持板部13の案内溝13aに、前方からぞれぞれ、ホルダ20の左の側板22の抜け止め板部24b及び係合板部24aを挿通させ、案内溝13aに係合板部24aが係合されることにより、ブラケット10はホルダ20を案内溝13aの形成方向である前後方向に移動可能に支持する。
【0051】
前部ストッパ片部14は、ブラケット10に支持されたホルダ20の移動を規制するものであって、ホルダ20の左フランジ部26と平行な板状に形成されクランク形状をなしている。前部ストッパ片部14は、ブラケット10に支持されたホルダ20の左フランジ部26の下部と対向するように配置されている。前部ストッパ片部14には、前方からホルダ20の左フランジ部26が当接することにより、ホルダ20の後方への移動が規制される。
【0052】
前部ストッパ片部14の基端部は、左右両側の切欠き14d,14dにより幅狭に形成されており、連結板部12から破断されやすくなっている。前部ストッパ片部14の基端部の破断により、前部ストッパ片部14を連結板部12から切除することができる。これにより、ブラケット10に支持されたホルダ20を後方へさらに移動させることができるようになる。
【0053】
前部ストッパ片部14の先端部は、仮固定部14aとなっており、ねじ孔14b,14cが形成されている。仮固定部14aは、ガス栓3の壁板2aへの取付けにおいて、ガス栓3をホルダ20とブラケット10を介して間柱2bに仮取付けする際に、ガス栓3を保持するホルダ20をブラケット10に仮固定するためのものである。仮固定時には、ホルダ20の左フランジ部26のねじ挿通孔26cに挿通されたボルト5がねじ孔14bに螺合される。
【0054】
後部ストッパ片部15は、前部ストッパ片部14によるホルダ20の規制位置よりも後方で、ホルダ20の移動を規制するものであって、前部ストッパ片部14と平行な板状に形成されている。後部ストッパ片部15には、前方からホルダ20の底板21が当接することにより、ホルダ20の後方への移動が規制される。すなわち、前部ストッパ片部14の切除によりさらに後方に移動するホルダ20の行き過ぎが防止される。したがって、前部ストッパ片部14と後部ストッパ片部15により、ホルダ20の後方移動に二段階の規制を設定できることになる。
【0055】
後部ストッパ片部15の左端に連なる支持板部13において、上下の各案内溝13aの後端部付近は、支持板部13の上下縁の切欠き13b,13b、肉抜き穴17、及び肉抜き穴17の前端部上下縁の切欠き17a,17aにより、幅狭に形成されている。これにより、支持板部13の後端部が破断されやすくなっている。支持板部13の後端部の切除により、後部ストッパ片部15をブラケット10から切除することができる。
【0056】
尚、ホルダ20の上下を逆にして、ホルダ20の右の側板22の抜け止め板部24b及び係合板部24aを、それぞれ係合片挿通口12b及び案内溝13aに挿通させ、ホルダ20をブラケット10に支持させることも可能である。これにより、図2(A)に示す、間柱2bの右側に取り付けられたブラケット10に、正立させたホルダ20を支持させた場合とは異なり、ホルダ20の上下を逆にした場合や、間柱2bの左側にブラケット10を取り付けた場合にも、ホルダ20をブラケット10に支持させることができる。後者2つの場合には、右フランジ部25のねじ挿通孔25cは前部ストッパ片部14のねじ孔14cと対向する。
【0057】
次に、上記構成のガス栓取付装置1を用いたガス栓3の壁板2aへの取付け方法について、図2図3図6図9を参照して説明する。この取付け方法は、壁板2aの施工前に、あらかじめガス栓3を間柱2bに仮取付けしておく、いわゆる先付けの取付け方法である。
【0058】
この実施形態の取付方法では、仮取付けされたガス栓3の位置に合わせて壁板2aに貫通孔2cを形成した後、壁板2aを施工している。また、壁板2aの後側に奥行空間が十分に存在している。
【0059】
初めに、壁板2aの施工前に、ブラケット10を間柱2bに固定するため、図7(A),に示すように、固定板部11を間柱2bに突き当て固定板部11と間柱2bの前端を面一にし、取付孔11a、11a(図1図4参照)に挿通させた木ねじ6,6を間柱2bにねじ込む。
【0060】
次に、ホルダ20にガス栓3を固定するため、ガス栓3のねじ挿通孔3a(図1参照)に挿通させたボルト4を、ホルダ20の突出片23のねじ孔23a(図1参照)に螺合する。このとき、ガス栓3は、プラグ部3bを前方に向け、接続部3cをホルダ20の開放された上部に向けている。また、プラグ部3bはホルダ20の前端より前方に突出している。接続部3cには、図示しないフレキシブル管が接続される。
【0061】
また、固定枠30とホルダ20の連結に用いる4つのボルト7(固定手段)を、ホルダ20の右フランジ部25のねじ孔25b,25b及び左フランジ部26のねじ孔26b,26bに螺合させた状態でホルダ20に係止させておく。
【0062】
次に、ホルダ20をブラケット10に支持させるため、ホルダ20の左の側板22の上下の係合片24を、前方から、ブラケット10の連結板部12の上下の係合片挿通口12bにそれぞれ通し、各係合板部24aを支持板部13の各案内溝14aに挿通させる。
【0063】
図7に示すように、後方へ移動するホルダ20の左フランジ部26が、ブラケット10の前部ストッパ片部14に前方から当接することにより、ホルダ20は、後方への移動が規制される。このとき、ガス栓3のプラグ部3bは間柱2aの前端面より前方に突出している。
【0064】
次に、壁板2aを施工する時のガス栓3の保護と、壁板2aに形成する貫通孔2cの位置の確認のために、図8に示すように、有底角筒状に形成された保護カバー40によりガス栓3を覆う。
【0065】
保護カバー40は樹脂製であって、図6に示すように、正面視角丸長方形状の角筒部41と、この角筒部41の一方の開口に偏倚した位置の内周面に形成された底部42とを有している。底部42には、角筒部41の他方の開口に向かって延びる円筒部43が設けられている。また、底部42の対角線上の一組の隅角部の近傍には、それぞれスリーブ部44,44が設けられており、円筒部43と同方向に延びている。各スリーブ部44の内部はねじ挿通孔44aとなっており、底部42を貫通している。角筒部41の双方の長辺部には、当接部41aが形成され、当接部41aの内側に当接部41aより突出する突出部41bが形成されている。角筒部41の一方の短辺部には、逃げ部41cが形成されている。
【0066】
上記構成の保護カバー40をガス栓取付装置1に取り付ける場合には、円筒部43にガス栓3のプラグ部3bを挿通させ、図8(B)に示すように、逃げ部41cにガス栓3の接続部3cを受け入れさせるようにして、突出部41b,41bをそれぞれホルダ20の右フランジ部25と左フランジ部26の内側に通し、当接部41a,41aをそれぞれ右フランジ部25と左フランジ部26に当接させる。
【0067】
このとき、スリーブ44,44はそれぞれ、右フランジ部25のねじ挿通孔25c及び
左フランジ部26のねじ挿通孔26cと対向している。ねじ挿通孔26cと対向するスリーブ44のねじ挿通孔44aにボルト5を挿通し、ブラケット10の仮固定部14aのねじ孔14bに螺合させる。これにより、保護カバー40、ホルダ20及びブラケット10は一体に固定されており、保護カバー40のガス栓取付装置1への取付けと、ホルダ20とブラケット10の仮固定が同時に行われる。
【0068】
図8(A)に示すように、ホルダ20を介してブラケット10に取り付けられた保護カバー40の前端は、壁板2aの後面(室外面)にあたる位置よりも前側(室内側)に突出している。そのため、保護カバー40は壁板2aの施工前に、形成予定の貫通孔2cの位置確認に使用され、また貫通孔2cを形成するためのテンプレートとしても使用される。
【0069】
貫通孔2cが形成された壁板2aを施工した後、保護カバー40を固定するボルト5を取り外して、保護カバー40を取り外す。さらに、図9に示すように、ホルダ20のフランジ部25,26に螺合された4つのボルト7を退行させ、各ボルト7の頭部を、貫通孔2cを越えて壁板2aの前方に突出させる。
【0070】
次に、固定枠30をホルダ20に連結するため、図9(B)に示すように、右縦枠31の内側に右フランジ部25から延びるボルト7,7が位置し、左縦枠32の外側に左フランジ部26から延びるボルト7,7が位置するように、固定枠30を配置する。このとき、右の各ねじ挿通孔36と左の各ねじ挿通孔37の開放された一端を、各ボルト7の軸部に近づけるとともに、位置決め突部38の先端を位置決め穴27に差し入れる。
【0071】
固定枠30が壁板2aに当接するまで位置決め突部38を位置決め穴27に差し込むことにより、各ボルト7は、右縦枠31の各ねじ挿通孔36及び左縦枠32の各ねじ挿通孔37の右端側に入り込んだ状態となり、固定枠30は、取り付け位置に配置される。
【0072】
図2に示すように、各ボルト7を締め付けることにより、固定枠30及びホルダ20は、それぞれ、壁板2aの室内面及び室外面に押し付けられる。これにより、ホルダ20は壁板2aに固定される。その後、化粧板P(図1参照)を固定枠30に取り付けることにより、ガス栓3の壁板2aへの取り付けは完了する。
【0073】
次に、この発明の他の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態については、上記実施形態と異なる構成だけを説明することとし、同様な構成部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0074】
[第2実施形態]
図10図15は、この発明の第2実施形態を示す。この実施形態におけるガス栓取付装置1を用いたガス栓3の壁板2aへの取付け方法では、ガス栓3の仮取付けの後、上記第1実施形態とは異なり、壁板2aを施工した後に壁板2aに貫通孔2cを形成している。
【0075】
上記第1実施形態では(図7参照)、ホルダ20は、ブラケット10の前部ストッパ片部14により後方への移動を規制され、仮取付けされたガス栓3のプラグ部3bは間柱2aの前端面より前方に突出している。そのため、貫通孔2cを形成せずに壁板2aを施工できない。そのため、この実施形態では、図10に示すように、前部ストッパ片部14の基端部を破断して、ブラケット10の連結板部12から前部ストッパ片部14が切除されている。
【0076】
前部ストッパ片部14を切除したブラケット10を有するガス栓取付装置1を用いたガス栓3の壁板2aへの取付け方法について説明する。
図13に示すように、ガス栓3を保持するホルダ20を、間柱2bに固定されたブラケット10に支持させ、後方へ移動させると、ホルダ20の底板21が、ブラケット10の後部ストッパ片部15に前方から当接する。これにより、ホルダ20は、後方への移動が規制される。このとき、ガス栓3のプラグ部3bは間柱2aの前端面より後方に位置している。
【0077】
次に、壁板2aを施工する時のガス栓3の前方への突出防止と、壁板2aの施工後に貫通孔2cを切り欠いて形成するために、図11図12に示す切欠き案内枠50を、図14図15に示すように、ブラケット10に固定する。
【0078】
切欠き案内枠50は樹脂製であって、図11図12に示すように、正面視略矩形状の外枠部51と、この外枠部51の左右の縦枠51a,51bの内側にそれぞれ設けられこれら縦枠と平行に延びる内枠部52,52とを有している。外枠部51の上下枠と内枠部52,52により囲まれた部分が窓孔53となっており、壁板2aに形成される貫通孔2cの大きさに対応している。
【0079】
外枠部51の左縦枠51aの上下方向中間部には、外側に張り出す固定片部54が設けられ、切欠き案内枠50のブラケット10への固定に用いられる。固定板部54の上端部と下端部には、それぞれねじ挿通孔54a,54bが形成されている。ねじ挿通孔54aはねじ挿通孔54bに対して外側にわずかにずれた位置にある。
【0080】
各内枠部52の上端部及び下端部には、切欠き案内枠50の裏面側にスペーサ部55が設けられている。各スペーサ部55は、正面視長方形状の角筒部55aと、角筒部55aの一方の長辺から上下方向に突出する突出片55bとを有している。突出片55bは、内枠部52上端部のスペーサ部55では上方に突出し、下端部のスペーサ部55では下方に突出している。角筒部55aの他方の長辺は内枠部52の裏面に連なっている。
【0081】
各内枠部52の上端部及び下端部は、一側面と裏面に形成された切欠き52aにより肉薄になっており、外枠部51から破断されやすくなっている。
また、各内枠部52の上下方向中間部には、架橋部56が設けられ、左縦枠51a及び右縦枠51bのうちの近い距離にある一方まで延びている。架橋部56の先端部は、裏面側に形成された切欠き56aにより肉薄になっており、外枠部51から破断されやすくなっている。
【0082】
よって、内枠部52の上端部と下端部、及び架橋部56の先端部の破断により、図11(B)に示すように、内枠部52、スペーサ部55及び架橋部56を、外枠部51から切除することができる。外枠部51は、ホルダ20の前端部を挿通可能な大きさに形成されている。
【0083】
上記構成の切欠き案内枠50をガス栓取付装置1のブラケット10に固定する場合には、図14図15に示すように、右の内枠部52の各スペーサ55を右フランジ部25に当接させ、左の内枠部52の各スペーサ55を左フランジ部26に当接させる。このとき、右フランジ部25及び左フランジ部26に螺合により係止された4つのボルト7のそれぞれが、対応するスペーサ55における突出片55b及びこの突出片55bに隣接する角筒部55aの短辺の外側に位置するようにする。
【0084】
このとき、切欠き案内枠50の固定板部54の下端部のねじ挿通孔54bは、ブラケット10の連結板部12に形成された下側のねじ孔12a(図10参照)と対向している。ねじ挿通孔54bにボルト8を挿通し、ねじ孔12aに螺合させる。これにより、切欠き案内枠50とブラケット10の後部ストッパ片部15とがホルダ20を挟持した状態で、切欠き案内枠50はブラケット10に固定されている。
【0085】
尚、ホルダ20の上下を逆にして、ホルダ20の右の側板22の係合片24によりホルダ20をブラケット10に支持させたときに、切欠き案内枠50をブラケット10に固定しようとする場合には、固定板部54の上端部のねじ挿通孔54aが、ブラケット10の連結板部12の上側のねじ孔12aと対向している。すなわち、切欠き案内枠50は、わずかに右にずれることになり、ガス栓3の位置に合わせて貫通孔2cを形成できるようになっている。
【0086】
ボルト8の締め付けにより、切欠き案内枠50、ホルダ20及びブラケット10は一体に固定され、切欠き案内枠50のガス栓取付装置1への取付けと、ホルダ20とブラケット10の仮固定が同時に行われる。このとき、切欠き案内枠50の前端面は、間柱2aの前端面と同じか後方に位置している。
【0087】
この状態で、貫通孔2cが形成されていない壁板2aが施工される。その後、壁板2aに貫通孔2cを形成するために、室内側から、壁板2aにおける切欠き案内枠50の窓孔53内側に相当する位置に、グリップオーガー等の工具で穴を開ける。この穴に挿入させたのこぎり又はカッター等の工具を、切欠き案内枠50の外枠部51の上下枠と内枠部52,52に沿わせて、窓枠53の形状に壁板2aを切り欠いて切除する。これにより、図14に示すように、貫通孔2cが形成される。
【0088】
次に、切欠き案内枠50における内枠部52、スペーサ部55及び架橋部56を、外枠部51から切除する。この切除のためには、室内側から貫通孔2cを介して、ドライバー等の工具をスペーサ部55の角筒部55a内に挿通して手前側にこじる。これにより、切欠き52a,56aの部分を破断させ、内枠部52、スペーサ部55及び架橋部56が切除される。
【0089】
次に、図16に示すように、ホルダ20を前方に移動させ、切欠き案内枠50の外枠部51内に挿通させて、右フランジ部25及び左フランジ部26を壁面2aの室外面に当接させる。さらに、右フランジ部25及び左フランジ部26に螺合された4つのボルト7を退行させ、各ボルト7の頭部を、貫通孔2cを越えて壁板2aの前方に突出させる。以下、上記第1実施形態と同様の手順により、固定枠30及び化粧板Pが取り付けられ、ガス栓取付装置1によるガス栓3の壁板2aへの取付けが完了する。
【0090】
[第3実施形態]
図17図18は、この発明の第3実施形態を示す。この実施形態は、壁板2aの後側の奥行空間が狭い点で、上記第1実施形態とは異なっている。
【0091】
図18に示すにように、壁板2aの後側に奥壁2dが存在する場合には、上記第1実施形態のガス栓取付装置1のブラケット10(図1参照)では後部ストッパ片部15が奥壁2dに干渉してしまうため、ブラケット10を間柱2bに固定することができない。
【0092】
そのため、この実施形態では、図17に示すように、支持板部13の後端部における切欠き13b,13bの部分を破断させ、後部ストッパ片部15がブラケット10から切除されている。
【0093】
この実施形態の取付方法では、図18に示すように、ブラケット10は、奥壁2dと干渉することなく間柱2bに固定される。ブラケット10の間柱2bへの固定後、上記第1実施形態と同様に、ブラケット10に、ガス栓3を保持させたホルダ20を支持させるが、次の2点が上記第1実施形態とは異なっている。
【0094】
一つ目は、固定枠30との連結に用いられる4つのボルト7を、その先端がホルダ20の底板21の後面と面一となるようにホルダ20に係止させておく点である。これにより、ボルト7の先端が奥壁2dにつかえ、ひいてはホルダ20がつかえることを防止している。二つ目は、奥壁2dがブラケット10に支持されたホルダ20の後方への移動を規制する役割を果たしてもよい点である。
【0095】
図18に示す、ブラケット10によるホルダ20の支持の後、上記第1実施形態と同様の手順により、保護カバー40の取付け、壁板2aの施工、固定枠30の取付け、及び化粧板Pの取付けが行われ、ガス栓取付装置1によるガス栓3の壁板2aへの取付けが完了する。
【0096】
上記構成のガス栓取付装置1によれば、ガス栓の取付け手順やガス栓の取付け環境に対する自由度を高めることができる。特に、先付けによるガス栓の壁板への取付けにおいて、貫通孔を壁板の施工前に形成する場合だけでなく壁板の施工後に形成する場合にも対応することができる。また、壁板2aの後側に奥行空間が十分に存在している場合だけでなく、奥行空間が狭い場合にも対応することができる。
【0097】
なお、この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
上記実施形態では、ブラケット10を壁板2a(板材)を室外側から支持する支持部材として間柱2bに固定させているが、柱、桟等に固定させてもよい。
ガス栓3の取付対象は、床板であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0098】
この発明は、室内に臨む板材にガス栓を取り付けるためのガス栓取付装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 ガス栓取付装置
2a 壁板(板材)
2b 間柱(支持部材)
2c 貫通孔
2d 奥壁
3 ガス栓
3a ねじ挿通孔
3b プラグ部
3c 接続部
4,5 ボルト
6 木ねじ
7 ボルト(固定手段)
8 ボルト
P 化粧板
10 ブラケット
11 固定板部
11a 取付板
12 連結板部
12a ねじ孔
12b 係合片挿通口
13 支持板部
13a 案内溝
13b 切欠き
14 前部ストッパ片部(第1ストッパ片部)
14a 仮固定部
14b ねじ孔
14c ねじ孔
14d 切欠き
15 後部ストッパ片部(第2ストッパ片部)
16 肉抜き穴
17 肉抜き穴
17a 切欠き
20 ホルダ
21 底板
22 側板
23 突出片
23a ねじ孔
24 係合片
24a 係合板部
24b 抜け止め板部
25 右フランジ部
26 左フランジ部
25a,26a 突出片
25b,26b ねじ孔
25c,26c ねじ挿通孔
27 位置決め穴
30 固定枠
30a 窓孔
31 右縦枠
32 左縦枠
36,37 ねじ挿通孔
38 位置決め突部
40 保護カバー
41 角筒部
41a 当接部
41b 突出部
42 底部
43 円筒部
44 スリーブ部
44a ねじ挿通孔
50 切欠き案内枠
51 外枠部
51a 左縦枠
51b 右縦枠
52 内枠部
52a 切欠き
53 窓孔
54 固定片部
54a ねじ挿通孔
54b ねじ挿通孔
55 スペーサ
55a 角筒部
55b 突出片
56 架橋部
56a 切欠き
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18