IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オーシンの特許一覧

<>
  • 特許-加熱器 図1
  • 特許-加熱器 図2
  • 特許-加熱器 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】加熱器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20240301BHJP
【FI】
A47J27/00 107
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020157371
(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公開番号】P2022051096
(43)【公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】511207903
【氏名又は名称】株式会社オーシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 誠
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-195679(JP,A)
【文献】国際公開第2013/146794(WO,A1)
【文献】特開2012-070908(JP,A)
【文献】特開2001-082681(JP,A)
【文献】特開平11-040333(JP,A)
【文献】特開2008-293870(JP,A)
【文献】特開2000-229029(JP,A)
【文献】特開2005-076900(JP,A)
【文献】特開2013-240473(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0487910(KR,Y1)
【文献】韓国登録実用新案第20-0479454(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
A47J 36/00 - 36/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面、下面、および中央開口を有する底壁部、前記底壁部の外縁から立ち上がる側壁部、および前記底壁部の内縁から前記中央開口へ突出する突起を有する耐熱製の本体と、
電磁誘導加熱される材料からなり、前記中央開口を塞ぐように前記底壁部の前記上面に載置される発熱板と、
前記中央開口の中に配置されて、下方から前記突起に支持される不燃素材製の支持板と、
前記中央開口の中に配置されて、下方から支持板に支持される、無機繊維製の断熱材とを備え、
前記発熱板の上面に載置されて前記側壁部に囲繞される調理容器を加熱する、加熱器。
【請求項2】
前記発熱板はカーボンを主成分とする請求項1に記載の加熱器。
【請求項3】
前記支持板にはスリットが形成される請求項1または2に記載の加熱器。
【請求項4】
前記支持板はマイカを主成分とする請求項1~3のいずれかに記載の加熱器。
【請求項5】
前記突起の下部には脚部が形成され、前記脚部は前記底壁部の前記下面まで連続する、請求項1~4のいずれかに記載の加熱器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IH(電磁誘導加熱)では加熱されない調理容器とともに用いられ、当該調理容器を加熱する補助器具に関する。
【背景技術】
【0002】
食材が投入されるプレート皿と、このプレート皿の下方に設置される受け皿を備え、受け皿が電磁誘導加熱されることにより、プレート皿が間接的に加熱される技術として、特開2006-239298号公報(特許文献1)と、特開2007-117101号公報(特許文献2)と、WO2013/146794号公報に記載のものが知られている。これらのプレート皿は、平坦な円形の底板と、底板の全周から上方へ立ち上がる側壁とを有し、上方が開放されて、焼肉等、専らグリル調理に供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-239298号公報
【文献】特開2007-117101号公報
【文献】WO2013/146794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでIHとも称する電磁誘導加熱装置が普及する以前は、ガス火で加熱調理することが常套であった。例えば、ガス火に掛けられた土鍋で白米を炊くと、コメのツヤがよくなり、噛む際の触感が良くなり、大変おいしく炊けることが知られている。また玄米を炊く場合には土鍋を使用すると最もおいしく炊けるとされている。したがってIHが普及した昨今においても、土鍋で調理することを好むユーザーが一定数存在する。
【0005】
土鍋は、上述したグリル調理用のプレート皿とは異なり、底板の半径と比較して側壁が高く立ち上がり、側壁の上縁に円形の蓋部材が被せられる。蓋部材は、本体である土鍋と同じ素材からなり、或る程度の重量があって、本体からみて容易にずれたり開いたりしない。
【0006】
最近、土鍋等の耐熱陶器で調理することを好むユーザーの中には、ガス火に対応する従来の耐熱陶器を使用しつつ、ガス火に代えて電磁誘導加熱装置を用いて調理したいという要望と、このような所謂IH調理であってもガス火と同様のレベルで食材をおいしく調理したいという要望がある。
【0007】
しかしながら、従来の耐熱陶器では、IHによる加熱が不可能である。なお特許文献1~3の受け皿を用いて耐熱陶器を加熱しても、熱が土鍋の底面のみ伝導し、土鍋の側壁には伝導し難い。このため、例えば白米を炊こうとしても、土鍋の底板に接触する米粒が黒焦げになってしまう等、おいしく調理できない。
【0008】
また電磁誘導加熱装置の感度には個々に相違があるため、特許文献1~3の受け皿であってもIHによる加熱ができない場合がある。そこで受け皿の底壁を一層薄くして、受け皿の発熱板を電磁誘導加熱することも考えられるが、熱量が不十分である等、火で加熱される従来の土鍋のように食材をおいしく調理できない。
【0009】
本発明は、耐熱素材からなる土鍋やガラス鍋など、非導電性の絶縁素材からなる調理容器はIHで加熱されないという上述の実情に鑑み、耐熱陶器や耐熱ガラス鍋等、通常よりも底が深めの鍋、あるいはIH加熱不可能な調理容器、においておいしくIH調理することができる技術を提供することを第1の目的とする。
【0010】
また電磁誘導加熱装置の個々の感度に拘わらず、全ての電磁誘導加熱装置でIH加熱可能な加熱器を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のため本発明による加熱器は、耐熱陶器等のIH加熱されない調理容器を加熱するために、上面、下面、および中央開口を有する底壁部、底壁部の外縁から立ち上がる側壁部、および底壁部の内縁から中央開口へ突出する突起を有する耐熱製の本体と、電磁誘導加熱される材料からなり中央開口を塞ぐように底壁部の上面に載置される発熱板と、中央開口の中に配置されて下方から突起に支持される不燃素材製の支持板と、中央開口の中に配置されて、下方から支持板に支持される、無機繊維製の断熱材とを備え、発熱板の上面に載置されて側壁部に囲繞される調理容器を加熱する。
【0012】
かかる本発明によれば、本体の側壁部が調理容器の側壁を囲繞することから、調理容器の側壁が保温され、調理容器の中の食材が調理容器の底壁および側壁によって加熱され、食材がおいしく調理される。また無機繊維製の断熱材は、断熱性能に秀でているので、薄くされる。したがって、電磁誘導加熱装置の感度の大小に拘わらず、断熱材上の発熱板がIH加熱される。さらに無機繊維製の断熱材は、高温に熱した発熱板から下方の電磁誘導加熱装置への熱移動を阻害するので、電磁誘導加熱は保護される。これにより発熱板は強力に加熱され、上方の調理容器に十分な熱量を供給することができる。
【0013】
発熱板は電磁誘導加熱される素材からなる。本発明の好ましい局面として、発熱板はカーボンを主成分とする。かかる局面によれば、発熱板を高温にすることができる。また加熱器が軽量化されて取り扱い易くなる。他の局面として、発熱板は鉄系金属などの電磁誘導される他の素材であってもよい。
【0014】
支持板は下方から断熱材を支持し、断熱材が垂れ下がるように変形することを防止する。好ましくは、支持板は、薄く、耐熱性能および断熱性能を具備する。本発明の好ましい局面として、支持板にはスリットが形成される。かかる局面によれば、支持板を薄くしても、高熱による変形を防止できる。他の局面として支持板は何らスリットがなくてもよい。本発明の好ましい局面として、支持板はマイカを主成分とする。かかる局面によれば、耐熱性能および断熱性能が向上する。
【0015】
本発明の一局面として、突起の下部には脚部が形成され、脚部は底壁部の下面まで連続する。かかる局面によれば、突起が肉厚に形成され、耐久性が向上する。他の局面として、脚部は突起とは異なる位置に設けられる。他の局面として脚部は突起から離隔して設けられる。
【発明の効果】
【0016】
このように本発明によれば、土鍋のような底の深い調理容器であっても土鍋の側壁および底壁を適切に加熱して、調理容器の中の食材をおいしく調理することができる。また電磁誘導加熱装置の感度に拘わらず、加熱器の発熱板が加熱される。本実施形態によれば、IH非対応の土鍋で、プロの料理人が満足する味の米を炊くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態を示す加熱器の断面図である。
図2】同実施形態を示す分解斜視図である。
図3】同実施形態から本体を取り出して示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態になる加熱器を示す断面図であり、この加熱器によって加熱される調理容器が仮想線で表される。図2は、同実施形態を示す分解斜視図である。本実施形態の加熱器10は、本体11と、発熱板21と、断熱材31と、支持板41とを備える。本体11は、上面12、下面13、および中央開口14を有する底壁部15と、底壁部15の外縁15sから立ち上がる側壁部16を有する。側壁部16は具体的には、上方へ向かうほど外側へ広がるように斜めに立ち上がる。これにより市販の一般的な土鍋100が側壁部16の内側に載置されても(図1)、側壁部16は土鍋100の側壁101と干渉しない。下面13から側壁部16上縁までの高さ寸法Hbは、側壁部16上縁の水平方向寸法の15%以上50%以下である。本実施形態における側壁部16上縁の水平方向寸法は、本体11の直径である。
【0019】
本体11は耐熱陶器製の一部品であり、保温性および耐熱性に優れる素材からなる。図2に示すように本体11は円形の枠であり、底壁部15および側壁部16は中央開口14を包囲する。なお、図示しない変形例として、本体は楕円形の枠、四角枠、あるいは多角形の枠体であってもよい。このため本体11は、リング本体ともいう。
【0020】
底壁部15の内縁15tには、中央開口14へ突出する突起17が設けられる。図2に示すように本実施形態の突起17は水平な舌状の突起であり、周方向に間隔をあけて配列される。本実施形態では、120°の等間隔で配列される。
【0021】
図3は、本体11を取り出して示す底面図である。舌状の突起17の下面は、底壁部15の下面13から下方へ突出する。かかる突出部は、突起17から外径側へ連続し、外縁15sに至る。かかる突出部は、脚部18を構成する。脚部18はトッププレート(図略)上に載置され、下面13とトッププレートの間に隙間を構成する。この隙間は図1に示す寸法Heで表される。
【0022】
発熱板21からトッププレートまでの距離(Hc+Hd)は、中央開口14の上下方向寸法Hcと、脚部18の上下方向寸法Hdの和になる。Hcは3.0mm~5.0mmの範囲に含まれる所定値である。Hdは0.5mm~1.5mmの範囲に含まれる所定値である。
【0023】
突起17の高さ位置は、下面13の高さ位置と重なり、上面12の高さ位置から離れるよう、中央開口14の下部に偏在して配置される。このため突起17は、中央開口14の中心へ指向するとともに、脚部18によって増肉される。
【0024】
発熱板21は、導電性および電気抵抗を具備する材料からなり、電磁誘導加熱される。本実施形態の発熱板21はカーボン(元素記号C)を主成分とする。カーボン製の発熱板21は、中央開口14よりも大きいが、側壁部16が区画する円形の内側空間よりも小さく、側壁部16の内側で、中央開口14を塞ぐように配置される。そして発熱板21の外縁が底壁部15の上面12に載置、支持される。これに対し中央開口14の中には、断熱材31および支持板41が配置される。発熱板21、断熱材31、および支持板41は、中央開口14に対応する形状である。本実施形態では、中央開口14、発熱板21、断熱材31、および支持板41が円である。図示しない変形例としてこれらの形状は、楕円や、四角形や、多角形であってもよい。
【0025】
支持板41は、加熱器10を構成する各部品(本体11、発熱板21、断熱材31、および支持板41)の中で、最も薄い板材である。支持板41の縁部は、舌状の突起17に係止し、落下を防止される。支持板は不燃素材製であり、例えば主成分をマイカとする。また支持板は自重で撓まない固さを有する。本実施形態の支持板41には、スリット42が形成される。スリット42は例えば、放射状に配列され、支持板41の縁部から中心に向かって径方向に延び、スリット42の内径側端を丸孔状に形成される。スリット42は、支持板41が高熱で変形することを防止する。なおスリット42は、例えば、周方向に6等分で放射状に配列される。これによりスリット42の配列は、周方向に3等分で配列される突起17の整数倍になる。つまり突起17はスリット42を回避して、支持板41は突起17に好適に係合する。図示しない変形例としてスリット42は、例えば、周方向に8等分ないし3等分というように放射状に配列される。
【0026】
支持板41の上面には、支持板41と略同じ寸法形状であり、支持板41よりも大きな厚みの断熱材31が載置される。断熱材31は、無機繊維を主成分として含み、熱に強い高分子化学繊維を副成分として含み、フェルト状に成形されてなる。このため柔らかく、断熱性能に富み、自重で撓む。ただしフェルト状の断熱材31は、支持板41の上面で支持されることから、図1に示すように中央開口14にセットされた状態で撓むことはない。断熱材31および支持板41は、突起17に支持されて、図示しないトッププレートから離隔する。
【0027】
図2に分解して示すように、加熱器10を構成する各部品は、耐熱性を有する。このため加熱器10は、通常の使用状態、例えば発熱板が500℃を超えない範囲で、高温の発熱板21に接しても溶解したり、発煙したりしない。
【0028】
加熱器10の使用方法につき説明する。
【0029】
加熱器10は、図1に示すように組み立てられた状態で、電磁誘導加熱装置のトッププレート(図略)上に載置される。加熱器10の発熱板21の上面には、耐熱陶器製の土鍋100が載置され、土鍋100の側壁101が側壁部16に囲繞される。土鍋100は調理容器であり、米を炊く等、食材を加熱調理する。土鍋100の重量は発熱板21で受け止められる。このため支持板41自身は土鍋100を支持しない。支持板41は、自重では撓まず、下方から断熱材31を支持する。ただし断熱材31の厚みが特に大きい場合、支持板41の中心部が、断熱材31から下向きの押圧力を受けて下方へ僅かに弾性変形し、上向きへ押し返す反力を断熱材31へ付与し、発熱板21と支持板41の間に断熱材31を弾性的に挟み込む。
【0030】
支持板41は、構成部品の中で最も薄く、若干の弾性変形が可能な薄板である。これにより、突起17の上下方向厚み寸法を若干大きくし、突起17の上面と底壁部15の上面12の段差を若干小さくし、当該段差を断熱材31の厚み寸法より小さくしても、断熱材31を発熱板21と支持板41の間に挟み込んで収容することができる。
【0031】
土鍋100の底壁は、IH加熱により高温にされる発熱板21から熱を供給される。図1を参照して、土鍋100の下縁103と、加熱器10の側壁部16の間には、側方空間Sが区画される。側方空間Sの空気は、発熱板21によって高温にされ、土鍋100の外側から側壁101を保温する。これにより土鍋100は、ガス火で炙られるのと同様の受熱効果を享受する。土鍋100は蓋104を被せられ、土鍋100内の食材はおいしく調理される。
【0032】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、調理の分野において有利に利用される。
【符号の説明】
【0034】
10 加熱器、 11 本体、 12 上面、 13 下面、
14 中央開口、 15 底壁部、 15s 外縁、
15t 内縁、 16 側壁部、 17 突起、 18 脚部、
21 発熱板、 31 断熱材、 41 支持板、 42 スリット、
100 土鍋、 S 側方空間。
図1
図2
図3