(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】TLR2媒介性疾患及び障害の治療法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240301BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240301BHJP
A61P 9/14 20060101ALI20240301BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61K39/395 Y
A61P29/00
A61P9/14
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2020540729
(86)(22)【出願日】2019-01-29
(86)【国際出願番号】 US2019015723
(87)【国際公開番号】W WO2019148204
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2022-01-17
(32)【優先日】2018-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィツタム、ジョセフ、エル
(72)【発明者】
【氏名】ツィミカス、ソティリオス
(72)【発明者】
【氏名】チュエ、シュチュ
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/131034(WO,A1)
【文献】特開2016-025863(JP,A)
【文献】Free Radic. Biol. Med., 2011, Vol.51, No.10, pp.1903-1909
【文献】Eur. J. Immunol., 2016, Vol.46, pp.1818-1825
【文献】Arthritis Research & Therapy, 2012, Vol.14, Article No.R64, pp.1-13
【文献】Iran J. Allergy Asthma Immunol., 2015, Vol.14, No.2, pp.188-197
【文献】Frontiers in Immunology, 2016, Vol.7, Article No.578, pp.1-14
【文献】Eur. J. Immunol., 2015, Vol.45, pp.2683-2693
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化された脂質(OxPL)に特異的に結合する抗体またはその断片を含む、川崎病の治療に使用するための医薬組成物であって、前記抗体またはその断片は、前記OxPLの生物活性を阻害し、かつ前記抗体またはその断片は、配列番号2に示されるVHアミノ酸配列の
3つの相補性決定領域(CDR)を含む可変重鎖ドメイン(VH)、および配列番号2または4に示されるVLアミノ酸配列の
3つのCDRを含む可変軽鎖ドメイン(VL)を含む、医薬組成物。
【請求項2】
静脈内免疫グロブリンおよび/またはサリチル酸塩が被験者に投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記被験者が、5歳未満のヒト被験者である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記OxPLの生物活性が、CD36-TLR2アポトーシス経路の活性化を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記抗体またはその断片が、単鎖可変断片(ScFv)である、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記VHは、配列番号:6、7および8を含むCDRを含み、およびVLは、配列番号:9、10および11、または配列番号:10、11および12を含むCDRを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記抗体またはその断片は、(a)配列番号:6、7、8、9、10および11の相補性決定領域を含む重鎖ドメインおよび軽鎖ドメインを有する抗体またはscFv、および(b)配列番号:6、7、8、10、11および12の相補性決定領域を含む重鎖および軽鎖ドメインを有する抗体またはscFvからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記抗体またはその断片が、血管内に投与される、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記可変重鎖ドメインおよび可変軽鎖ドメインが、FcまたはFC2領域に連結されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記抗体断片が、酸化されたリン脂質のホスホコリン頭部に結合するscFvを含み、および/または前記scFvが、生理条件において可溶である、請求項1~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、米国特許法第35条第119項に基づいて、2018年1月29日に出願された仮出願シリアル番号62/623,276の優先権を主張し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【政府のライセンス権】
【0002】
本発明は、国立衛生研究所により授与された認可番号HL088093の政府援助を受けて行われた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【技術分野】
【0003】
本開示は、酸化されたリン脂質に結合し、その生物活性を阻害する抗体、抗体断片、またはポリペプチドを投与することを含む、TLR2媒介性疾患及び障害の治療方法提供する。
【配列表の参照による組み込み】
【0004】
「Sequence-Listing_ST25.txt」と題する配列表が本願に付随している。これは、2019年1月29日に作成され、34,203バイトのデータを有し、IBM-PCのMS-Windows OSでフォーマットされたものである。該配列表は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景】
【0005】
多不飽和脂肪酸を含有するリン脂質は、活性酸素種による修飾を非常に受けやすい。そのようなリン脂質は、脂質過酸化を受け、酸化されたリン脂質(OxPL)を形成する傾向がある。OxPLは、細胞毒性及びアポトーシスを誘導し、また、炎症において重要な役割を果たす。OxPLは、インターロイキンの転写、平滑筋細胞の表現型の切り替え、及び修飾されたリン脂質のアポトーシスメカニズムに役割を果たすことが示されている。従って、過酸化は、膜脂質二重層の生理化学的特性を大きく変化させ、その結果、膜ドメインまたは分子結合の形成または再編成に応じてシグナル伝達を誘導する。異なるOxPL種は、特定の結合部位や受容体と相互作用して、個々のシグナル伝達経路の活性化につながる可能性がある。
【0006】
ヒト冠状動脈硬化症は、脂質異常が原因で発生する慢性の炎症性疾患である。炎症誘発性の酸化された低密度リポタンパク質(OxLDL)は、血管壁における脂質の蓄積と炎症と関連することが示唆されている。さらに、リン脂質の酸化生成物のレベルが上昇していることが、様々な臓器や病態で検出され、その中、アテローム硬化性血管、炎症を起こした肺、非アルコール性肝疾患、冠状動脈疾患患者の血漿、アポトーシス細胞、ウイルス感染細胞、炎症性アゴニストで刺激された細胞等が含まれる。2つのHDL関連酵素、即ち血清パラオキソナーゼ(PON1)とPAF-アセチルヒドロラーゼ(PAF-AH)に関する研究が行われ、どちらも血漿中酸化されたリン脂質の加水分解の原因であり、それによってアテローム性動脈硬化症におけるそれらの役割の証拠を提供している。酸化ストレスのもう1つの重要なマーカーは、LDLのアポリポタンパク質B-100粒子(OxPLs/apoB)とOxPLsの関連である。OxPLs/apoBレベルの上昇は、冠動脈疾患、頸動脈や大腿動脈硬化の進行、及び心血管イベントの予測に関係している。
【概要】
【0007】
本開示は、酸化されたリン脂質に結合し、その生物活性を阻害する抗体、抗体断片、またはポリペプチドを投与することを含む、TLR2媒介性疾患及び障害の治療方法を提供する。本明細書に提示されている研究に示されているように、EO6抗体のin vivo発現によるOxPLの中和(EO6-scFv遺伝子導入マウスを使用)は、TLR2アゴニズムによって引き起こされたアテローム性動脈硬化の形成を大幅に阻害する。TLR2アゴニストPAM3CSK4をコレステロール摂取Ldlr-/-マウスに注入すると、アテローム性動脈硬化が劇的に促進される。EO6-scFv遺伝子導入マウス(Ldlr-/-バックグラウンド)への同様の一連の注射により、病変形成の有意な阻害がもたらされた。本明細書に提示されている他の研究では、OxPLの中和が川崎病のTLR2駆動マウスモデルにおける疾患の進行を防げることが示された。病原菌Lactobaccilus caseiの投与は、マウスに川崎様疾患を引き起こし、結果としてアテローム性動脈硬化症、冠状動脈動脈炎、腹部動脈瘤を増強することが示されている。L. CaseiをTLR-2欠損マウスに投与しても、疾患の原因となる影響はないため、これはTLR2に依存している。IL-1の発現は、川崎病とも強く関連している。OxPLはまた、IL-1放出及び炎症の強力な誘導物質である。同プロトコルでL. CaseiをEO6遺伝子導入マウス(Ldlr-/-バックグラウンド)に注射すると、Ldlr-/-マウスへの注射と比べて、冠状動脈炎のアテローム性動脈硬化だけでなく、関連性も劇的に減少した。EO6抗体はL. Caseiに直接結合しないため、TLR2を介したアゴニスト作用に関連する炎症作用によって引き起こされるOxPLの炎症作用を中和すると考えられる。
【0008】
冠状動脈炎及びその後の冠状動脈瘤の発生は、川崎病に罹患した子供における致命的な合併症であり、現在の治療にもかかわらず最大25%の子供に発生すると推定されている。これは主に、プールされ精製されたヒト血漿とアスピリンに由来する静脈内免疫グロブリン(IVIg)による治療であり、一般化された非特異的な抗炎症療法である。抗OxPL抗体のIL-1B産生の減少を含む炎症プロセスを減少させる能力、及び川崎病のTLR2を介したマウスモデルにおける予防を与える能力により、生物学的有効性を高めるために改変されたヒト化またはヒト同等の抗OxPL抗体の注射は、川崎病を含むTLR2関連疾患に対する予防をもたらす可能性がある。そのような抗OxPL抗体はヒトのB細胞レパートリーに存在するため、標的化された組換え療法は、免疫抑制または血漿由来療法の副作用なしに、そのような疾患に臨床的利益を与えられるかも知れない。
【0009】
従って、該実験データは、マウスにおけるin vivoでのTLR2を介したアゴニズムによって引き起こされるアテローム性動脈硬化症及び炎症性動脈炎が、OxPLの中和によって予防できることを実証している。TLR2アゴニズムは、もちろん数多くの細菌性疾患に関与しているが、ループス、関節リウマチ等の様々ないわゆる自己免疫媒介性疾患にも関与している。要約すると、OxPLのPCを標的とする抗体、抗体断片、またはその他の結合ドメインを用いてOxPLを中和すると、TLR2を介したシグナル伝達経路の活性化により、強調され、また、進行が悪化する多くの疾患を改善または予防できることは該データから示された。
特定の実施形態では、本開示は、トール様受容体2(TLR2)媒介性疾患または障害を有する被験者を治療する方法を提供する。該方法は、治療的有効量の、酸化されたリン脂質(OxPL)に特異的に結合する抗体、抗体断片、またはポリペプチドを投与することを含み、ここで、該抗体、抗体断片、またはポリペプチドは、OxPLの生物学的活性を阻害する。さらなる実施形態では、該方法は、TLR2媒介性疾患または障害の治療に有用な追加の治療剤を該被験者に投与することをさらに含む。TLR2媒介性疾患または障害の例には、川崎病、2型糖尿病、関節リウマチ、皮膚病、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、グレーブス病、シェーグレン症候群、自己免疫性甲状腺疾患、または血管炎が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、TLR2媒介性の疾患または障害は川崎病である。さらなる実施形態では、該方法は、該被験者に静脈内免疫グロブリン(IVIg)及び/またはサリチル酸塩を投与することをさらに含む。さらに別の実施形態では、該被験者は5歳未満のヒト被験者である。別の実施形態では、該OxPLの生物活性は、CD36-TLR2アポトーシス経路の活性化を含む。さらに別の実施形態では、該抗体、抗体断片、またはポリペプチドは、単鎖可変断片(ScFv)である。特定の実施形態では、該抗体または抗体断片は、酸化されたリン脂質のホスホコリン頭部を認識して結合し、ここで、該抗体または抗体断片は、可変重鎖(VH)ドメイン及び/または可変軽鎖(VL)ドメインを含み、また、ここで、(a)該VHドメインは、配列番号:6及び配列番号:6と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または99.9%同一である配列;配列番号:7及び配列番号:7と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または99.9%同一である配列;及び配列番号:8及び配列番号:8と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または99.9%同一である配列からなる群から選択される1つ、2つ、または3つの相補性決定領域(CDR)を包含するアミノ酸配列を含み;及び、(b)該VLドメインは、配列番号:9または12及び配列番号:9または12と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または99.9%同一である配列;配列番号:10及び配列番号:10と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または99.9%同一である配列;及び配列番号:11及び配列番号:11と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または99.9%同一である配列からなる群から選択される1つ、2つ、または3つの相補性決定領域(CDR)を包含するアミノ酸配列を含む。さらなる実施形態では、該抗体、抗体断片、またはポリペプチドは、血管内に投与される。さらに別の実施形態では、該VHドメインは、配列番号:6、7及び8を含むCDRを包含するアミノ酸配列を含み、及び/または該VLドメインは、配列番号:9、10及び11、または配列番号:10、11及び12を含むCDRを包含するアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、該抗体または抗体断片は、(a)抗体または配列番号:6、7、8、9、10及び11の相補性決定領域を含む重鎖及び軽鎖ドメインを有するscFv、及び(b)抗体または配列番号:6、7、8、10、11及び12の相補性決定領域を含む重鎖及び軽鎖ドメインを有するscFvからなる群から選択される。別の実施形態では、該重鎖及び軽鎖ドメインは、FcまたはFC2領域に連結されている。さらに別の実施形態では、該抗体断片は、酸化されたリン脂質のホスホコリン頭部を認識する単鎖可変断片(「scFv」)を含む。特定の実施形態では、該scFvは、生理条件下で可溶である。OxPLの生物活性を阻害する他のOxPL結合剤を使用することができる(例えば、国際公開番号WO/2013/020995を参照。これは、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れられる)。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A-B】(A)は、単鎖可変断片(「scFv」)を生成するために使用できるプロセス図を提供する。示されるように、部位特異的変異誘発を用いて、二重鎖免疫グロブリン抗体の重鎖(「V
H」)の可変ドメインを変異させ、scFvの溶解度を向上させることができる(左)。scFvのリンカー、リーダー、及びエフェクター領域も示されている(右)。(B)は、scFv EO6抗体断片をコードする遺伝子成分のレイアウトを示す一般化されたマップ(上)、及び遺伝子導入マウスを生成するために使用された他のベクター要素と関連するEO6-scFv抗体断片のコード配列を示す一般化されたベクターマップ(下)を提供する。
【
図2】は、ヌクレオチド(配列番号:1)及びアミノ酸(配列番号:2)配列、及び該scFvの注釈を示す。
【
図3】は、マウスがトール様受容体(TLR2)及びPam3CSK4(PAM3)の外因性アゴニストに曝露されたときの炎症誘発性及び高脂肪コレステロール食餌を与えられたマウスにおける本開示のscFvの機能を研究するためのin vivoマウスモデルを図示する。
【
図4A-C】は、
図3に記載のin vivoモデルを使用したマウスの摂取及び体重への影響を示す。(A)媒体で処理した場合、Ldlr
-/-マウスとLdlr
-/-EO6scFv
+/+マウスの餌摂取量に有意差は観察されなかった。(B)該マウスをPam3で処理した場合、Ldlr
-/-マウスはLdlr
-/-EO6scFv
+/+マウスと比べて餌摂取量が少なかった。(C)12週目に、Ldlr
-/-EO6scFv
+/+マウスの体重はLdlr
-/-マウスより有意に高かった。媒体で処理した場合、12週目にLdlr
-/-EO6scFv
+/+マウスとLdlr
-/-マウスの間に体重の有意差は見られなかった。
【
図5A-B】は、EO6scTg Ldlr
-/-(LDLrKO(ノックアウト))マウスとLdlr
-/-マウスの血漿中の(A)コレステロールまたは(B)トリグリセリドに有意差がなかったことを示している。
【
図6A-B】は、Ldlr
-/-EO6scFv
+/+マウスとLdlr
-/-マウスの血漿における(A)リポタンパク質コレステロールプロファイル、または(B)リポタンパク質トリグリセリドプロファイルのレベルに有意差がなかったことを示している。例えば、リポタンパク質のレベルは両方のマウスで類似していた。
【
図7A-E】は、Ldlr
-/-EO6scFv
+/+マウスとLdlr
-/-マウスでは、測定可能なアテローム性動脈硬化が少なかったことを示している。(A)総大動脈硬化の程度は、Ldlr
-/-マウスの方がLdlr
-/-EO6scFv
+/+マウスより大きかった。(B)Ldlr
-/-マウスでは、Ldlr
-/-EO6scFv
+/+マウスより、腹部大動脈(横隔膜の下)に特に大きなアテローム性動脈硬化があった。(C)上記の図(A)と(B)は、アテローム性動脈硬化の程度の面積測定による2次元分析を表している。解剖され洗浄された大動脈の実際の重量は、厚さの寸法を含んでいるため、全アテローム性動脈硬化とより良く一致する。Ldlr
-/-マウスの大動脈の重量は、Ldlr
-/-EO6scFv
+/+マウスの大動脈よりも有意に高かった。(D)体重を制御した場合、Ldlr
-/-マウスの体重あたりの大動脈は、Ldlr
-/-EO6scFv
+/+マウスの体重あたりの大動脈よりも有意に高かった。(E)大動脈起始部のアテローム性動脈硬化の程度は、2つの群の間で相違はなかった。
【
図8A-H】は、Ldlr
-/-EO6scFv
+/+マウスとLdlr
-/-マウスの脂肪組織における炎症性遺伝子発現を調べた定量的PCR(qPCR)の結果を示している。特に、(A)IL1b、(B)IL6、(C)TNFα、(E)MCP1、(F)MIP1α、(G)MIP1β、及び(H)IL10の発現は、全般にLdlr
-/-EO6scFv
+/+マウスの場合がLdlr
-/-マウスより低く、一方、(D)IL12はわずかに高かった。
【
図9A-G】は、Ldlr
-/-EO6scFv
+/+マウスとLdlr
-/-マウスの脂肪組織抽出物について測定されたサイトカインのレベルを調べた酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)の結果を示している。特に、測定された(A)IL1b、(B)IL6、(C)TNFα、(D)MCP1、(E)MIP1α、(F)MIP1β、及び(G)IL10のサイトカインのレベルは
図8に示された遺伝子発現結果を反映した。
【
図10A-H】は、マクロファージM1またはM2細胞に分化させ、PAM3で刺激したときのLdlr
-/-EO6scFv
+/+からの骨髄由来細胞が、Ldlr
-/-マウスの分化したマクロファージと比べ、(A)IL1β、(B)IL6、(C)IL12、(D)TNFα、(E)MCP1、(F)MIP1α、(G)MIP1β、及び(H)RANTESの発現が少なかったことを示している。示されているデータは、Ldlr
-/-EO6scFv
+/+またはLdlr
-/-マウスに由来するM1細胞の比較である。M2細胞から同様のデータが見つかり、例えば、サイトカイン発現の絶対レベルが少なかったことを除いて、Ldlr
-/-と比べて、Ldlr
-/-EO6scFv
+/+のM2細胞からの発現が少ない。
【
図11】は、Ldlr
-/-EO6scFv
+/+マウスに由来する異なる脂肪組織におけるEO6-scFv mRNAの頑強な遺伝子発現である。これは、マクロファージの浸潤によるものである。マクロファージはapoEプロモーターを発現するため、EO6-scFv導入遺伝子を発現する。
【
図12】は、PAM3によるマクロファージ(RAW264.7)の処理がOxPLの産生を誘導したことを示す蛍光顕微鏡の画像を提供する。Ldlr
-/-EO6scFv
+/+マウスからのマクロファージはTLR2刺激に対する反応性が低く、マクロファージが発現し、EO6-scFvを培養物に分泌するため、TLR2に刺激されたマクロファージがOxPLを生成すると仮定され、これは次にオートクリン様式で炎症性遺伝子発現を活性化した。この仮説を検証するために、マクロファージをPAM3で刺激した。左のパネルは媒体による処理;右のパネルは、TLR2アゴニストPAM3による処理。RAW264.7培養物をPam3(1 μg/mL)またはコントロール媒体と共に18時間インキュベートし、OxPLのためEO6 IgM抗体及びヤギ抗ms IgM-FITC抱合体で表面染色した。これは、TLR2で刺激されたマクロファージがOxPLを生成することを示している。
【
図13A-F】は、Ldlr
-/-EO6scFv
+/+RAG1
-/-マウスにおいて測定可能なアテローム性動脈硬化が、Ldlr
-/-RAG1
-/-マウスと比べて、より少ないことを示している。RAG1 KOマウスにはB細胞またはT細胞がないため、免疫細胞に関連するすべてのアテローム性動脈硬化イベントは、マクロファージの作用に直接起因する。特に、Ldlr
-/-RAG1
-/-マウスのアテローム性動脈硬化の絶対レベルは、Ldlr
-/-マウスと比べて半分に減少した。(A)Ldlr
-/-RAG1
-/-マウス(左)及びLdlr
-/-EO6scFv+/+RAG1
-/-マウス(右)から分離された腹部大動脈。Ldlr
-/-EO6scFv
+/+RAG1
-/-マウスの腹部大動脈は、Ldlr
-/-RAG1
-/-マウスよりもアテローム性動脈硬化病変が少ないことが実証された。(B)Ldlr
-/-EO6scFv
+/+RAG1
-/-マウスにおける大動脈洞病変のサイズは、Ldlr
-/-RAG1
-/-マウスと比べて有意に小さかった。(C)Ldlr
-/-RAG1
-/-マウスは、Ldlr
-/-EO6scFv+/+RAG1
-/-マウスと比べて、全身病変の割合が高かった。(D)Ldlr
-/-RAG1
-/-マウスは、Ldlr
-/-EO6scFv
+/+RAG1
-/-マウスと比べて、腹部病変の割合が高かった。(E)Ldlr
-/-RAG1
-/-マウスの大動脈の重量は、Ldlr
-/-EO6scFv
+/+RAG1
-/-マウスの大動脈よりも有意に高かった。(F)体重を制御した場合、Ldlr
-/-RAG1
-/-マウスの体重あたりの大動脈は、Ldlr
-/-EO6scFv
+/+RAG1
-/-マウスの体重あたりの大動脈よりも有意に高かった。RAG1 KOマウスはB細胞とT細胞の両方を欠いているため、これらのマウスにおいてアテローム性動脈硬化を促進する主な免疫学的細胞型がマクロファージである。従って、これらのデータは、このTLR2誘発モデルでマクロファージがアテローム性動脈硬化症に寄与する主要なメカニズムがOxPLの応答によるものであることを示している。
【
図14】は、川崎病、さらには川崎病に関連する冠動脈及び腹部動脈瘤の小児の画像を示す。
【
図15】は、LCWEとHFC食がLdlr
-/-マウス、Ldlr
-/-EO6Tgマウス、Ldlr
-/-IK17Tgマウス、及びTLR2
-/-Ldlr
-/-マウスにおけるアテローム性動脈硬化症に及ぼす影響を研究するためのマウスモデルを示す。
【
図16】は、HFc食が12週間与えられて、LCWEでTLR2活性化されたマウスにおける大動脈病変の正面分析を示す。EO6scFv-Tgは、正面での大動脈病変を有意に減少させた。
【
図17】は、LCWEを注射され、HFC食を12週間与えられた様々なLdlr
-/-マウスにおける腹部大動脈病変領域の分析を提供する。データは、Sudan IV染色で腹部大動脈を測定したアテローム性動脈硬化の百分率として表される。EO6Tg及びIK17Tgは、統計的に有意な保護効果を発揮することが分かった。TLR2は、Ldlr
-/-マウスと比べて統計的にも減少することも分かった。
【
図18】は、Ldlr
-/-マウス及びLCWEで処置されたEO6Tg Ldlr
-/-マウスからの大動脈起始部の断面を示す。EO6scFv-Tgは、大動脈起始部の病変、壊死性コアのサイズ、そして川崎病において最も重要なことに、冠状動脈炎を減少した。矢印は断面中の冠状動脈を指す。広範な動脈炎(大きな細胞塊)がLdlr
-/-マウスに存在したが、EO6-Tg Ldlr
-/-マウスにはなかった。
【
図19】は、Ldlr
-/-マウス及びLCWEで処置されたEO6Tg Ldlr
-/-マウスからの大動脈起始部のさらなる断面を示す。矢印は断面中の冠状動脈を指す。広範な動脈炎(大きな細胞塊)がLdlr
-/-マウスに存在したが、EO6-Tg Ldlr
-/-マウスにはなかった。
【
図20】は、Ldlr
-/-TLR2
-/-マウス及びLCWEで処置されたIK17-Tg
+/+Ldlr
-/-マウスからの大動脈起始部の断面を示す。矢印は断面中の冠状動脈を指す。EO6scFvとIK17scFvの両方が冠動脈炎を減少させた。IK17(抗MDA)ではなく、EO6(抗OxPL)が大動脈起始部の病変を減少させた。
【
図21】は、Ldlr
-/-TLR2
-/-マウス及びLCWEで処置されたIK17-Tg
+/+Ldlr
-/-マウスからの大動脈起始部のさらなる断面を示す。矢印は断面中の冠状動脈を指す。Ldlr
-/-TLR2
-/-マウスにおいて冠動脈に動脈炎がないことは、川崎病のマウスモデルにおけるTLR2活性化の重要性を示している。
【
図22】は、Ldlr
-/-対照マウス及びLCWEで処置され、HFc食を12週間与えられたEO6-Tg Ldlr
-/-マウスの血漿における炎症性サイトカインのレベルを示す。血漿中のサイトカインは、Bio-Plex Proマウスサイトカインアッセイキット(Bio-Rad Laboratories社、USA)を用いたマルチプレックスサイトカインアッセイで測定した。対照マウスと比べて、EO6scFv-Tg LDLr
-/-マウスでは、血清におけるTNFa、RANTES、MCP-1、CXCL1、IL-6、及びIL-12タンパク質レベルの有意な減少(p<0.04)が観察された。
【詳細な説明】
【0011】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、単数形の「1つ」及び「該」は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、複数の参照対象を含む。従って、例えば、「単鎖可変断片」または「scFv」への言及には、複数の単鎖可変断片が含まれ、「酸化されたリン脂質」への言及には、1つまたは複数の酸化されたリン脂質及び当業者に知られているその同等な物への言及が含まれ、他にも同様である。
【0012】
別途定義されない限り、本明細書で用いられるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する当業者に一般に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の方法及び試薬が、開示される方法及び組成物の実施において使用され得るが、例示的な方法及び材料がここで記載される。
【0013】
本明細書で言及されるすべての出版物は、本明細書の説明に関連して使用され得る、出版物に記載される方法論を説明及び開示する目的で、参照により完全に本明細書に組み込まれる。さらに、本開示で明示的に定義されている用語と類似または同一である1つまたは複数の出版物に提示されている任意の用語に関して、本開示で明示的に提供される用語の定義がすべての点で支配する。
【0014】
また、「及び」について、特に明記しない限り、これは「及び/または」を意味する。同様に、「含む」、及び「包含する」は交換可能であり、限定することは意図されない。
【0015】
さらに理解されたいこととして、様々な実施形態の記載には「含む」という用語が用いられる場合、当業者は、いくつかの特定の場合では、実施形態が代替的に「から本質的になる」または「からなる」という表現を用いて記載できることは理解できるであろう。
【0016】
「抗体」及び「免疫グロブリン」という用語は、最も広い意味で互換的に使用され、モノクローナル抗体(例えば、全長または無傷のモノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、多価抗体、多特異性抗体(例えば、それらが所望の生物学的活性を示す限り、二重特異性抗体)を含み、特定の抗体断片を含む場合もある。抗体は、ヒト、ヒト化及び/または親和性成熟したものであり得る。
【0017】
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには5つの主要なクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM、そしてこれらのいくつかはさらにサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2に分類できる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造と三次元配置はよく知られている。
【0018】
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部のみを含み、該部分は、無傷の抗体に存在する場合、その部分に通常関連する機能の少なくとも1つ、より一般的にはほとんどまたはすべてを典型的に保持する。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')2、及びFv断片;二重特異性抗体;線形抗体;単鎖抗体分子;抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれる。一実施形態では、抗体断片は、無傷の抗体の抗原結合部位を含み、従って、抗原に結合する能力を保持する。別の実施形態では、抗体断片、例えば、Fc領域を含むものは、無傷の抗体に存在する場合、Fc領域に通常関連する生物学的機能の少なくとも1つを保持する。例えば、FcRn結合、抗体半減期変調、ADCC機能及び補体結合等。一実施形態では、抗体断片は、無傷の抗体と実質的に同様のin vivo半減期を有する一価抗体である。例えば、そのような抗体断片は、断片にin vivo安定性を与えることができるFc配列に連結された抗原結合アームを含み得る。しかし、認識すべきこととして、特定の適応症(例えば、急性虚血/再灌流治療)には抗体の長い半減期は必要ない。
【0019】
「抗原」は、抗体が選択的に結合できる所定の抗原である。標的抗原は、ポリペプチド、炭水化物、核酸、脂質、ハプテン、または他の天然または合成化合物であり得る。本開示の一実施形態では、抗原はOxPLである。
【0020】
「抗OxPL抗体」または「OxPLに結合する抗体」という用語は、抗体がOxPLの標的化における診断剤及び/または治療剤として有用であるように、十分な親和性でOxPLに結合できる抗体を指す。本開示のいくつかの実施形態では、抗OxPL抗体は、E06抗体またはQX5抗体と同様または類似の結合特異性及びKdを有する。さらに別の実施形態では、抗OxPL抗体は、OxPLのPC頭部に結合する。
【0021】
「遮断」抗体または「拮抗」抗体は、それが結合する抗原の生物学的活性を阻害または低減するものである。特定の遮断抗体または拮抗抗体は、抗原の生物活性を実質的または完全に阻害する。
【0022】
「結合親和性」は一般に、分子の単一の結合部位(例えば、抗体)とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有相互作用の合計の強さを指す。特に明記しない限り、本明細書で使用する「結合親和性」は、結合ペアのメンバー(例えば、抗体と抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのパートナーYに対する親和性は、一般に解離定数(Kd)で表すことができる。親和性は、本明細書に記載されているものを含む、当技術分野で既知の一般的な方法で測定できる。一般に、低親和性抗体はゆっくりと抗原に結合し、容易に解離する傾向があるが、高親和性抗体は一般に抗原に速く結合し、より長く結合したままになる傾向がある。当技術分野において結合親和性を測定する様々な方法が知られており、それらのいずれも本発明の目的に使用できる。
【0023】
「生体試料」は、個体から得られた様々な種類の試料を包含し、診断またはモニタリングアッセイで用いることができる。該定義は、生物由来の血液及び他の液体試料、生検標本または組織培養物またはそれらに由来する細胞等の固形の組織試料、及びそれらの子孫を包含する。該定義には、調達後に何らかの方法で操作された試料も含まれる。例えば、試薬による処理、可溶化、またはタンパク質やポリヌクレオチド等の特定成分の濃縮、またはセクション化の目的で半固体または固体マトリックスへの埋め込み等。「生体試料」という用語は、臨床試料を包含し、培養中の細胞、細胞上清、細胞溶解物、血清、血漿、生体液、及び組織試料も含む。生体試料の供給源は、新鮮な、凍結された、及び/または保存された臓器または組織試料または生検または吸引物からの固形組織;血液または任意の血液成分;脳脊髄液、羊水、腹水、間質液等の体液;妊娠期間中または被験者の進行中の任意の時点の細胞であり得る。いくつかの実施形態では、生体試料は、原発性または転移性腫瘍から得られる。生体試料は、防腐剤、抗凝固剤、緩衝液、固定剤、栄養素、抗生物質等の、自然界にある組織と自然に混合されない化合物を含んでもよい。
【0024】
「二重特異性抗体」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片を指し、該断片が、同じポリペプチド鎖(VH-VL)には軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同じ鎖の2つのドメイン間でペアリングするには短すぎるリンカーを用いることにより、該ドメインは別の鎖の相補的ドメインとペアになり、2つの抗原結合部位を作る。二重特異性抗体については、例えば、EP 404,097;WO 93/11161;及びHollinger ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90:6444-6448(1993)により完全に記載されている。三重特異性抗体及び四重特異性抗体についても、Hudsonら、Nat. Med. 9:129-134 (2003)に記載されている。
【0025】
「障害」または「疾患」は、本開示の物質/分子または方法を用いた治療から利益を受ける任意の状態である。これには、川崎病等のTLR2媒介性疾患または障害が含まれる。
【0026】
「有効量」とは、望まれる治療的または予防的結果を達成するために必要な用量及び期間で有効な量を指す。
【0027】
本明細書で用いられる「Fc領域」という用語は、天然配列Fc領域及び変異Fc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を指す。
【0028】
「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域のエフェクター機能を保有する。そのようなエフェクター機能は、一般に、Fc領域がドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)への結合と組み合わされることを必要とし、例えば、本明細書の定義において開示されるような様々なアッセイを用いて評価され得る。
【0029】
「天然配列Fc領域」は、天然に見られるFc領域のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を含む。天然配列のヒトFc領域には、天然配列のヒトIgG1 Fc領域(非A及びAアロタイプ);天然配列のヒトIgG2 Fc領域;天然配列のヒトIgG3 Fc領域、及び天然配列のヒトIgG4 Fc領域、ならびにそれらの天然に存在する変異体が含まれる。
【0030】
「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を表す。いくつかの実施形態では、FcRは天然のヒトFcRである。他の実施形態では、FcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)に結合し、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIサブクラスの受容体(例えば、対立遺伝子変異体及びそれらの受容体の選択的スプライス形態)を含むものである。FcγRII受容体には、FcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害受容体」)が含まれる。それらは、主にその細胞質ドメインが異なる類似のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を含有する。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ(ITIM)を含有する(例えば、Daeron、Annu. Rev. Immunol. 15:203-234(1997)を参照)。FcRに関する総論としては、例えば、RavetchとKinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991); Capelら、Immunomethods 4:25-34 (1994);及びde Haasら、J. Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995)がある。他のFcRは、将来特定されるものも含めて、本明細書の用語「FcR」に含まれる。
【0031】
Fc受容体はまた、新生児受容体であるFcRnを含み、これは、母体IgGの胎児への移行(Guyerら、J. Immunol. 117:587 (1976)及びKimら、J. Immunol. 24:249 (1994))及び免疫グロブリンの恒常性維持の調節に関与している。FcRnへの結合を測定する方法は知られている(例えば、GhetieとWard., Immunol. Today 18(12):592-598 (1997); Ghetieら、Nature Biotechnology, 15(7):637-640 (1997); Hintonら、J. Biol. Chem. 279(8):6213-6216 (2004); WO 2004/92219 (Hintonら)を参照)。
【0032】
in vivoでのヒトFcRnへの結合及びヒトFcRn高親和性結合ポリペプチドの血清半減期は、例えば、ヒトFcRnを発現する遺伝子導入マウスまたは遺伝子導入されたヒト細胞株において、または変異Fc領域を有するポリペプチドが投与される霊長類において測定できる。WO 2000/42072(Presta)は、FcRへの結合が改善または減少した抗体変異体を記載している。例えば、Shieldsら、J. Biol. Chem. 9(2):6591-6604 (2001)も参照されたい。
【0033】
「Fv」は、完全な抗原認識及び結合部位を含む最小の抗体断片である。双鎖Fv種では、この領域は、緊密かつ非共有結合的な関係での1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインからなる2量体で構成される。単鎖Fv種では、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインを柔軟なペプチドリンカーで共有結合させ、軽鎖と重鎖を双鎖Fv種の構造に類似した「二量体の」構造で結合させることができる。この構成では、各可変ドメインの3つのHVRが相互作用して、VH-VL二量体の表面に抗原結合部位を定義する。まとめると、6つのHVRが抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)でさえ、結合部位全体よりも低い親和性ではあるが、抗原を認識して結合する能力を有する。
【0034】
Fab断片はまた、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含む。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの1つまたは複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基が追加されている点でFab断片とは異なる。Fab'-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab'の本明細書における呼称である。F(ab')2抗体断片は元々、その間にヒンジシステインを持つFab'断片のペアとして生成された。抗体断片の他の化学的カップリングも知られている。
【0035】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片を生成する。それぞれに単一の抗原結合部位と、残存する「Fc」断片があり、その名前は容易に結晶化する能力を反映している。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位があり、抗原を架橋できるF(ab')2断片が生成される。
【0036】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書で定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0037】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含有するキメラ抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、該レシピエントのHVRからの残基は、所望の特異性、親和性、及び/または能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)(例えば、マウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類等)のHVRからの残基に置き換えられている。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体には見られない残基を含み得る。抗体の機能をさらに改良するために、これらの修飾を行うことができる。一般に、ヒト化抗体は、超可変ループのすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのループに対応する、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、そして、すべてまたは実質的にすべてのFRは、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、場合により、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものも含む。さらに詳細については、例えば、Jones ら Nature 321:522-525 (1986); Riechmann ら Nature 332:323-329 (1988); 及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照されたい。また、VaswaniとHamilton, Ann. Allergy, Asthma & Immunol. 1:105-115 (1998); Harris, Biochem. Soc. Transactions 23:1035-1038 (1995); HurleとGross, Curr. Op. Biotech, 5:428-433 (1994);及び米国特許第Nos. 6,982,321と7,087,409号も参照されたい。
【0038】
「ヒト抗体」は、ヒトによって産生された抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する、及び/または本明細書に開示されるヒト抗体を作製するための任意の技術を用いて作製されたものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外している。ヒト抗体は、当技術分野で既知の様々な技術(phage-display librariesを含む)を用いて作製することができる(HoogenboomとWinter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991); Marksら、J. Mol. Biol., 222:581 (1991))。また、ヒトモノクローナル抗体の調製については、Coleら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985); Boernerら、J. Immunol., 147(1):86-95 (1991)に記載された方法を参照されたい。また、van Dijkとvan de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol., 5: 368-74 (2001)も参照されたい。ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答してそのような抗体を産生するように改変されているが、内因性遺伝子座が無効になっている遺伝子導入動物(例えば、免疫異種異物)に抗原を投与することによって調製できる(例えば、米国特許第6,075,181及び6,150,584号を参照)。また、ヒトB細胞雑種細胞技術を介して生成されたヒト抗体に関しては、例えば、Liら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:3557-3562 (2006)を参照されたい。重要なこととして留意されたいのは、「ヒト抗体」は、ヒトが産生する天然に存在する抗体を含まず、ヒトの被験者が「外来」と認識しないエピトープまたは抗原性断片を含まない抗体を指している。
【0039】
「ヒトエフェクター細胞」は、1つ以上のFcRを発現し、エフェクター機能を実行する白血球である。特定の実施形態では、該細胞は少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行する。ADCCを媒介したヒト白血球の例には、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞、及び好中球等がある。エフェクター細胞は、天然の供給源、例えば血液から単離され得る。
【0040】
本明細書で用いられる場合、「超可変領域」、「HVR」または「HV」という用語は、配列が超可変である、及び/または構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体には6つのHVRが含まれ、そのうち、VHドメインに3つ(H1、H2、H3)、VLドメインに3つ(L1、L2、L3)がある。天然抗体では、H3とL3は6つのHVRの中で最も多様性を示し、特にH3は抗体に良い特異性を与える上で独特の役割を果たすと考えられている。例えば、Xuら、Immunity 13:37-45 (2000); JohnsonとWu, Methods in Molecular Biology 248:1-25 (Lo, ed., Human Press, Totowa, N.J., 2003)を参照されたい。確かに、重鎖のみからなる天然のラクダ科の抗体は、軽鎖がない場合でも機能的で安定している。例えば、Hamers-Castermanら、Nature 363:446-448 (1993); Sheriffら、Nature Struct. Biol. 3:733-736 (1996)を参照されたい。
【0041】
「個体」、「被験者」、または「患者」は脊椎動物である。特定の実施形態では、脊椎動物は哺乳動物である。哺乳動物には、家畜(牛等)、スポーツ動物、ペット(猫、犬、馬等)、霊長類、マウス及びラットが含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0042】
「単離された」抗体または抗体断片は、その自然環境の成分から同定及び分離及び/または回収されたものである。その自然環境の汚染成分は、抗体の診断または治療への使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性または非タンパク質性溶質が含まれる場合がある。いくつかの実施形態では、抗体は次の程度までに精製される。(1)Lowry法で測定される抗体の重量が95%以上、通常は99%以上;(2)スピニングカップシーケンサーを用いて、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで;または(3)クーマシーブルーまたはシルバー染色を用いて、還元または非還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性を得る。単離された抗体には、抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイツ抗体が含まれる。しかし、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製工程により調製されるであろう。
【0043】
「単離された」核酸分子は、それが抗体核酸の天然の供給源において通常関連している少なくとも1つの汚染核酸分子から同定及び分離された核酸分子である。単離された核酸分子は、それが自然に見られる形態または環境以外のものである。従って、単離された核酸分子は、天然の細胞に存在するような核酸分子とは区別される。しかし、単離された核酸分子は、例えば、核酸分子が天然の細胞のものとは異なる染色体位置にある場合、通常は抗体を発現する細胞に含まれる核酸分子を含む。
【0044】
本明細書で用いられる「標識」という用語は、核酸プローブまたは抗体等の試薬に直接的または間接的に結合または融合され、それが結合または融合される試薬の検出を容易にする化合物または組成物を指す。標識それ自体が検出可能(例えば、放射性同位元素標識または蛍光標識)であってもよく、または酵素標識の場合、検出可能な基質化合物または組成物の化学変化を触媒してもよい。
【0045】
任意の脊椎動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(K)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明らかに異なるタイプのうちの1つに割り当てることができる。
【0046】
本明細書で用いられる「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す。即ち、集団を構成する個々の抗体は、起こり得る突然変異、例えば、少量で存在し得る天然に存在する突然変異を除いて、同一である。従って、修飾語「モノクローナル」は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。特定の実施形態では、そのようなモノクローナル抗体は、典型的には、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を包含し、標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列からの単一の標的結合ポリペプチド配列の選択を含むプロセスにより得られた。例えば、該選択プロセスは、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、または組換えDNAクローンのプール等複数のクローンからの単一クローンの選択であり得る。理解されるべきこととして、選択した標的結合配列はさらに変更でき、例えば、標的への親和性を改善したり、標的結合配列をヒト化したり、細胞培養におけるその産生を改善したり、生体内での免疫原性を低下させたり、多重特異性抗体を作成したり等、変更された標的結合配列を含む抗体もまた、本開示の目的のためのモノクローナル抗体である。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、それらが典型的に他の免疫グロブリンによって汚染されていないという点で有利である。
【0047】
修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本開示に従って用いられるモノクローナル抗体は、様々な技術によって作製され得る。例えば、ハイブリドーマ法(例えば、KohlerとMilstein, Nature, 256:495-97 (1975); Hongoら、Hybridoma, 14 (3): 253-260 (1995), Harlowら、Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988); Hammerlingら、Monoclonal Antibodies 及びT-Cell Hybridomas 563-681 (Elsevier, N.Y., 1981))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clacksonら、Nature, 352: 624-628 (1991); Marksら、J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1992); Sidhuら、J. Mol. Biol. 338(2): 299-310 (2004); Leeら、J. Mol. Biol. 340(5): 1073-1093 (2004); Fellouse, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(34): 12467-12472 (2004);及びLeeら、J. Immunol. Methods 284(1-2): 119-132 (2004)を参照)、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座またはヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の一部またはすべてを有する動物においてヒトまたはヒト様抗体を産生する技術(例えば、WO 1998/24893; WO 1996/34096; WO 1996/33735; WO 1991/10741; Jakobovitsら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 2551 (1993); Jakobovitsら、Nature 362: 255-258 (1993); Bruggemannら、Year in Immunol. 7:33 (1993); 米国特許第5,545,807; 5,545,806; 5,569,825; 5,625,126; 5,633,425;及び5,661,016号; Marksら Bio/Technology 10: 779-783 (1992); Lonbergら、Nature 368: 856-859 (1994); Morrison, Nature 368: 812-813 (1994); Fishwildら、Nature Biotechnol. 14: 845-851 (1996); Neuberger, Nature Biotechnol. 14: 826 (1996); 及びLonbergとHuszar, Intern. Rev. Immunol. 13: 65-93 (1995)を参照)。
【0048】
本明細書におけるモノクローナル抗体は、特に、重鎖及び/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するかまたは特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同である「キメラ」抗体を含み、一方、鎖の残りの部分は、望ましい生物活性を示す限り、別の種に由来する、または別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体の対応する配列、またはそのような抗体の断片と同一または相同である(例えば、米国特許第4,816,567号、及びMorrisonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984) を参照)。キメラ抗体には、抗体の抗原結合領域が、例えば、対象の抗原でマカクザルを免疫することにより産生された抗体に由来するものが含まれる。
【0049】
本明細書で用いられる「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNA及びRNAが含まれる。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドまたは塩基、及び/またはDNAまたはRNAポリメラーゼによって、または合成反応によってポリマーに組み込むことができるそれらの類似体であり得る。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体等の修飾ヌクレオチドを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリマーの組み立ての前または後に与えられてもよい。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断されていることがある。ポリヌクレオチドは、標識との抱合等により、合成後にさらに修飾することができる。他のタイプの修飾として、例えば次が含まれる。「キャップ」、1つまたは複数の天然に存在するヌクレオチドの類似体による置換、ヌクレオチド間の修飾、例えば、非荷電結合(例えば、ホスホン酸メチル、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメート等)と荷電結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート等)を持つもの、例えば、タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジン等)等のペンダント部分を含むもの、インターカレーターを備えたもの(例えば、アクリジン、ソラレン等)、キレート剤を含むもの(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属等)、アルキル化剤を含むもの、結合が修飾されたもの(例えば、アルファアノマー核酸等)、及びポリヌクレオチドの修飾されていない形のもの。さらに、糖に通常存在する任意のヒドロキシル基は、例えば、ホスホネート基、ホスフェート基によって置換され、標準的な保護基によって保護され、または活性化され、別のヌクレオチドへ追加的な結合を作って、または、固体または半固体の支持体に結合されてもよい。5'及び3'末端OHはリン酸化されか、アミンまたは炭素原子数1~20の有機キャッピング基部分で置換されることができる。他のヒドロキシルも標準的な保護基に誘導体化することができる。ポリヌクレオチドは、当技術分野で一般に知られているリボースまたはデオキシリボース糖の類似の形態を含むこともできる。例えば、2'-O-メチル-、2'-O-アリール、2'-フルオロ-または2'-アジド-リボース、炭素環式糖類似体、アルファ-アノマー糖、アラビノース、キシロース、またはリキソース等のエピマー糖、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体、及びメチルリボシド等の塩基性ヌクレオシド類似体。1つ以上のホスホジエステル結合は、代替の結合基によって置き換えられてもよい。これらの代替の連結基には、リン酸塩がP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、「(O)NR2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR'、COまたはCH2(「ホルムアセタール」)(式中、各RまたはR'は独立してHまたは任意にエーテル(-O-)結合、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニルまたはアラルジルを含む置換または非置換アルキル(1-20 C)である。)で置き換えられている実施形態が含まれるが、これらに限定されない。ポリヌクレオチドのすべての結合が同一である必要はない。前述の説明は、RNA及びDNAを含む、本明細書で参照されるすべてのポリヌクレオチドに適用される。
【0050】
「単鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、抗体のV
H及びV
Lドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖中に存在する。一般に、scFvポリペプチドは、scFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にするV
HドメインとV
Lドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含む。
図1は抗体とscFvの構造を示す。scFvに関する総説については、Pluckthun、モノクローナル抗体の薬理学、vol. 113, RosenburgとMoore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照されたい。
【0051】
本明細書で用いられる「実質的に類似」または「実質的に同じ」という用語は、2つの数値間の十分に高い程度の類似性を示す(例えば、1つは本開示の抗体に関連し、もう1つは参照/比較抗体に関連する)。これにより、当業者は、2つの値の間の差が、該値によって測定される生物学的特徴(例えば、Kd値)の文脈内で生物学的及び/または統計的有意性がほとんどないか、または全くないと考えるであろう。前記2つの値の間の差は、例えば、参照/比較値の関数の約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、及び/または約10%未満である。
【0052】
本明細書で用いられる「実質的に減少した」または「実質的に異なる」という語句は、2つの数値(一般に1つは分子に関連し、もう1つは参照/比較分子に関連する)間の十分に高い程度の差を示す。これにより、当業者が、2つの値の間の差が、該値によって測定された生物学的特性(例えば、Kd値)の文脈内で統計的に有意であると考えるであろう。前記2つの値の間の差は、例えば、参照/比較分子の値の関数の約10%超、約20%超、約30%超、約40%超、及び/または約50%超である。
【0053】
「TLR2関連疾患及び障害」には、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、シェーグレン症候群、乾癬、多発性硬化症、及び自己免疫性糖尿病を含む自己免疫疾患が含まれるが、これらに限定されない。TLR関連の状態(例えば、TLR2等のTLRに直接及び/または間接的に関連)には、糖尿病、肥満、敗血症、炎症性疾患(例えば、クローン病)、免疫障害、代謝性疾患(例えば、メタボリックシンドロームに関連する状態)、内分泌疾患、アテローム性動脈硬化症、喘息、心血管疾患、免疫関連状態、及び/またはその他の適切な状態の1つ以上が含まれることがある。例えば、TLR2媒介性疾患または障害は、川崎病、2型糖尿病、関節リウマチ、皮膚病、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、グレーブス病、シェーグレン症候群、自己免疫性甲状腺疾患、血管炎及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0054】
本明細書で用いられる場合、「治療」は、治療される個体または細胞の自然な経過を変化させる試みにおける臨床的介入を指し、予防のために、または臨床病理の経過中に行うことができる。治療の望ましい効果として、疾患の発生または再発の防止、症状の緩和、疾患の直接的または間接的な病理学的結果の減少、疾患の進行率の低下、疾患状態の改善または緩和、及び寛解または予後の改善が含まれる。いくつかの実施形態では、本開示の抗体(ヒト化または非ヒト化)、抗体断片、またはポリペプチド、または本開示のヒト化抗体は、疾患または障害の発症を遅延させるために用いられる。
【0055】
「可変」という用語は、可変ドメインの特定の部分の配列が抗体間で大きく異なり、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合及び特異性に用いられるという事実を指す。しかし、可変性は抗体の可変ドメイン全体に均一に分布していない。それは、軽鎖及び重鎖可変ドメインの両方における相補性決定領域または超可変領域(本明細書では互換的に用いられるCDRまたはHVR)と呼ばれる3つの区域に集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク(FR)と呼ばれる。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ主に3シート構成をして、3つのHVRで連結される(これは3シート構造をつなげるループを形成し、いくつかの場合では3シート構造の一部を形成する。)4つのFR領域を含む。各鎖のHVRはFR領域によって近接してまとめられ、他の鎖のHVRと一緒に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, National Institute of Health, Bethesda, Md. (1991)を参照)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合には直接関与していないが、抗体依存性細胞毒性への抗体の関与等、様々なエフェクター機能を発揮する。
【0056】
本明細書で用いられる「ベクター」という用語は、それが連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を指すことが意図されている。1種のベクターは「プラスミド」であり、これは、追加のDNAセグメントが連結され得る環状の双鎖DNAループを指す。別の1種のベクターはファージベクターである。もう1種のベクターはウイルスベクターであり、ここで追加のDNAセグメントをウイルスゲノムに連結することができる。特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞において自律複製することができる(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、宿主ゲノムとともに複製することができる。さらに、特定のベクターは、それらが機能的に連結されている遺伝子の発現を指示することができる。このようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」と呼ばれる。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、しばしばプラスミドの形である。
【0057】
「変異体Fc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾、典型的には1つまたは複数のアミノ酸置換により、天然配列Fc領域のものとは異なるアミノ酸配列を含む。典型的には、変異体Fc領域は、天然配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域と比べて、少なくとも1つのアミノ酸置換を有する。例えば、天然配列Fc領域において、または親ポリペプチドのFc領域において、約1~約10のアミノ酸置換、また典型的には約1~約5のアミノ酸置換。本開示の変異体Fc領域は、天然配列Fc領域及び/または親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の相同性、それと少なくとも約90%の相同性、また典型的にはそれと少なくとも約95%の相同性を有する。
【0058】
「酸化されたリン脂質」(OxPL)は、ホスホコリン(PC)頭部を有するリン脂質を指す。OxPLは炎症誘発性が高く、アテローム発生促進性がある。特定のリン脂質の極性頭部であるホスホリルコリンは、心血管疾患に広く関与している。冠状動脈の炎症の過程で生成された活性酸素種は、低密度リポタンパク質(LDL)の酸化を引き起こし、酸化されたLDL(oxLDL)を生成する。実際、アテローム性動脈硬化症、不安定狭心症、または急性冠症候群等の心血管疾患(CVD)は、oxLDLの血漿中レベルの上昇に関連していることが示されている。LDLは、PC極頭基を持つ脂質とタンパク質(apoB100タンパク質)を含む、循環するリポタンパク質粒子である。
【0059】
LDLの酸化中に、未修飾LDL上に存在しないネオエピトープを含むPCが生成される。oxLDLで新しく露出されたPCは、CD36等のマクロファージのスカベンジャー受容体によって認識され、生成したマクロファージに包まれたoxLDLは、血管壁における炎症性泡沫細胞の形成に進む。酸化されたLDLは、内皮細胞表面の受容体によっても認識され、内皮機能障害、アポトーシス、及び折り畳まれていないタンパク質応答を含む様々な応答を刺激すると報告されている。PCネオエピトープはまた、ホスホリパーゼA2または糖反応性タンパク質の酸化から生成されるアルデヒド等のアミン反応性疾患代謝産物による修飾に続いて、LDLに暴露される。これらの交互に修飾されたLDL粒子は、CVDの炎症誘発性因子でもある。ホスホリルコリン(PC)に対する抗体は、酸化またはその他の方法で修飾されたLDLに結合し、in vivoモデルまたはin vitro研究でoxLDLの炎症促進活性を遮断することが示されている。
【0060】
グリセロリン脂質は、細胞膜の完全性にとって重要な脂質の一般的なクラスを表す。エステル化不飽和脂肪酸の酸化は、リン脂質の生物活性を劇的に変化させる。それらの構造的機能の障害とは別に、酸化は、「改変自己」型の酸化されたリン脂質(OxPL)マーカーを作成する。これは、スカベンジャー受容体、天然(生殖系列コード)抗体、及びC反応性タンパク質を含む自然免疫の可溶性及び細胞関連受容体によって認識され、老化及びアポトーシス細胞または酸化されたリポタンパク質の除去を指示する。さらに、OxPLは、自然免疫及び適応免疫応答を調節する能力等、酸化されていない前駆体に特徴的ではない新しい生物学的活動を獲得する。in vitro及びin vivoで説明されているOxPLの影響は、アテローム性動脈硬化症、急性炎症、肺損傷、及び他の多くの状態を含む様々な病態におけるそれらの潜在的な関連性を示唆している。
【0061】
グリセロリン脂質は、グリセロール骨格、リン酸含有極性頭部及び2つの脂肪酸残基からなる豊富な種類の脂質を含む。PL結合多価不飽和脂肪酸(PUFAs)は、代謝エネルギーの生成に連結されていない非酵素的または酵素的酸化の主要な標的を表している。PL分子の酸化的断片化は、いくつかの生物学的に活性生成物を生成する。該生成物には、非エステル化の酸化された脂肪酸(例えば、ヒドロペルオキシドやイソプロスタン)のようなPUFAの小さな化学反応性断片及びリゾリン脂質等が含まれる。これらの生成物は、複数の生物活性を示する。得られた証拠から、PL-PUFAの非酵素的酸化が、遊離(非エステル化)PUFAの酸化と同じ基本メカニズムに従って進行することが示唆されている。この仮定は、本明細書に記載されている遊離及びPL結合PUFAの酸化によって生成された分子種の同様なクラスの同定によってサポートされている。非酵素的酸化とは対照的に、酵素によるPL-PUFAの酸化は、非エステル化PUFAの酸化とは大きく異なりる。遊離PUFAは、様々なタンパク質ファミリーに属し、様々な酸化グループを導入する複数の酵素によって酸化されるが、リポキシゲナーゼ(12/15リポキシゲナーゼ)の1つのグループのみが、PL-ヒドロペルオキシドを生成する基質としてPL-PUFAを受け入れる。酵素の関与なしに、さらなる酸化と再配列が続くため、酵素的メカニズムと非酵素的メカニズムによって開始される酸化により、多くの類似した高度なPL酸化生成物が生成される。
【0062】
TLR2としても知られるトール様受容体2は、ヒトにおいてTLR2遺伝子によりコードされるタンパク質である。TLR2はCD282(分化クラスター282)としても指定されている。TLR2は免疫システムで役割を果たす。TLR2は膜タンパク質受容体であり、特定の細胞の表面に発現し、異物を認識し、適切なシグナルを免疫系の細胞に伝える。TLR2は、病原体の認識と自然免疫の活性化に基本的な役割を果たす。トール様受容体(TLR)は、ショウジョウバエからヒトまで高度に保存されており、構造的及び機能的な類似点を共有している。これらは、感染性病原体に発現する病原体関連分子パターン(PAMP)を認識し、効果的な免疫の発達に必要なサイトカインの産生を仲介する。様々なTLRは、異なる発現パターンを示す。この遺伝子は、末梢血白血球に最も多く発現し、NF-κBの刺激を介してグラム陽性菌と酵母菌に対する宿主の応答を仲介する。TLR2は、グラム陽性由来のリポテイコ酸、細菌性リポタンパク質、ザイモサン等、広範囲の微生物成分を検出する。11の特徴付けられたTLRのうち、TLR2は、TLR1またはTLR6とヘテロ二量体化する能力により独特であり、比較的幅広いリガンド特異性をもたらす。
【0063】
CD36は、TLR2の共受容体であることにより、内因的に誘導された脂質と自然免疫の活性化との間に炎症性経路が存在することを示唆している。研究はさらに、大動脈樹と心臓内の病変偏好性の領域等、血流の乱れた領域で発生する内皮TLR2発現と活性化の強化を発見した。従って、TLR2発現は、内皮細胞等のBM起源ではない細胞でアテローム性動脈硬化を促進する可能性があり、これにより、活性化された内皮細胞の炎症性表現型に寄与する可能性がある。
【0064】
アテローム性動脈硬化症にかかりやすい低密度リポタンパク質受容体欠損(Ldlr-/-)マウスでは、TLR2が完全に欠損するとアテローム性動脈硬化症が減少した。しかし、BM由来細胞からのTLR2発現の喪失は、疾患の進行に影響を与えなかった。該データは、未知の内因性TLR2アゴニストが、BM細胞起源ではない細胞でTLR2を活性化することにより病変の進行に影響を与えたことを示唆している。本明細書に示されたように、合成TLR2/TLR1アゴニストであるPam3CSK4の腹腔内投与は、Ldlr-/-マウスでの疾患負荷が劇的に増加した。Ldlr-/-マウスにおけるTLR2の完全な欠損、及びLdlr-/-マウスにおけるBM由来の細胞のみのTLR2の欠損は、Pam3CSK4を介したアテローム性動脈硬化を減弱させ、BM由来のTLR2の細胞発現の役割を示唆している外因性TLR2アゴニストの効果を伝達する。
【0065】
OxPLは、TLR2媒介経路を介して細胞シグナル伝達を活性化して、炎症誘発性細胞シグナル伝達をもたらすことができる。さらに、ERストレスを促進するシグナル伝達経路と関連して行われる場合、TLR2のOxPL媒介活性化はアポトーシスと細胞死を引き起こす可能性がある。OxPLは、内皮細胞からのIL-8シグナル伝達を誘導し、TLR2依存性シグナル伝達経路を介して、マクロファージにおけるIL-1β及びTNFαシグナル伝達を誘導する。本明細書でさらに実証されるように、合成TLR2アゴニストであるPAM3CSK4を介したマクロファージの活性化は、マクロファージを直接刺激してOxPLを生成する。LPS等のアゴニストを介したTLR4の活性化もマクロファージを誘導してOxPLを生成することが報告されている(Popatら、JCI. 2017)。まとめると、ここに提示されたデータは、OxPLがTLR2(またはTLR4)を介してマクロファージを直接活性化し、炎症誘発性シグナル伝達及び/またはアポトーシスを誘導できることを示している。逆に、TLR2またはTLR4シグナル伝達を介したマクロファージの活性化により、マクロファージはOxPLを生成する。後者の状況では、マクロファージがTLR2/4アゴニストによって刺激されると、ローカルで生成されたOxPLが、オートパラクリン効果によって炎症経路を増幅及び増強する可能性がある。従って、本明細書に提示する研究は、OxPLがTLR2経路を直接刺激するだけでなく、傍分泌様式で作用して炎症性TLR2/4アゴニストのシグナル伝達を増幅できることを示唆している。これらの洞察は、in vivoでOxPLに対する抗体でOxPLを中和することで、様々な炎症環境において、疾患の進行の減少に現れるような著明な抗炎症効果をもたらす理由を説明している。
【0066】
該データは、OxPLに結合する抗体またはその断片(EO6、またはPC含有酸化されたリン脂質(OxPL)のホスホコリン(PC)頭部に結合するように設計されたその他のものを含む)が、多種多様な疾患に存在するTLR2アゴニズムの有害な影響を改善するのに有用であり得ることを示唆している。これらには、アテローム性動脈硬化症、自己免疫疾患、特に川崎病が含まれる。川崎病は、原因不明の小児の疾患であり、TLR2を介したアゴニズムが冠動脈瘤、重度の冠動脈石灰化、無秩序な冠血流、急性血栓症、主要な罹病及び死亡につながる冠動脈炎を促進すると考えられている。無症候性の冠動脈瘤が急性血栓症に移行して急性心筋梗塞を引き起こすと、該疾患は若い成人にも影響を及ぼす。川崎病はまた、心筋炎、心不全、及び心臓移植の必要性と関連している可能性がある。
【0067】
先天性天然抗体(NAb)は、内因性ネオエピトープ(OxLDL及びアポトーシス細胞)上の共通の酸化特異的エピトープ(OSE)及び病原体の外因性エピトープに対する宿主防御の第一線を提供し、宿主のホメオスタシスを維持する。OSEは偏在的であり、アテローム性動脈硬化病変を含む多くの炎症組織に形成され、IgM NAbの主要な標的である。原型のIgM NAb EO6は、酸化されたリン脂質(OxPL)のホスホコリン(PC)頭部に結合し、マクロファージによるOxLDLの取り込みを遮断する。OxPLのホスホリルコリン(「PC」)頭部には結合するが、天然の非酸化リン脂質(「PL」)には結合しない、OxPLに対するマウスIgM天然抗体がクローン化され、特徴付けられている。ただし、IgM Nab EO6のような抗体は溶解度が限られており、簡単に合成できない。
【0068】
親EO6抗体は、クローン化及び特徴付けされたマウスIgM抗体であり、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,225,070号の主題である。米国特許公開第20150376268A1号は、OxPLに結合する完全に機能的な単鎖抗体及びヒト化抗体を記載している。親抗体フレームワーク領域のDNA配列、重鎖及び軽鎖、及び実験の繰り返しにより決定されたリンカー配列の多数のユニークな分子変化について説明し、完全に機能するEO6-scFvの開発をもたらした。この配列が適切なベクターに挿入された場合、結果として得られるscFcは可溶型で発現され、その識別された標的抗原に対する親のすべての免疫学的結合特性(そのエピトープが親抗体の重鎖と軽鎖の両方からなるユニークな抗イディオタイプ抗体AB1-2に結合する能力を含む)を保持する。本願の開示はまた、酸化されたリン脂質に選択的に結合する単鎖可変抗体断片(「scFv」)、VH、VL及び相補性決定領域を提供する。本開示のscFvは可溶性であり、容易に合成することができる。米国特許公開第20150376268A1号は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0069】
本明細書に提示される研究において、(EO6-scFv遺伝子導入マウスを使用した)EO6抗体のin vivo内因性発現によるOxPLの中和は、TLR2アゴニズムによって引き起こされるアテローム性動脈硬化の形成を大いに阻害した。特に、コレステロールを与えられたLdlr-/-マウスへのTLR2アゴニストPAM3CSK4の注射は、アテローム性動脈硬化の劇的な増強をもたらす。EO6-scFv遺伝子導入マウス(Ldlr-/-バックグラウンド)への同様の一連の注射により、病変形成の有意な阻害が生じた。
【0070】
本明細書に提示される他の研究において、OxPLの中和は、マウスモデルの川崎病予防ができる。病原菌Lactobaccilus caseiの投与は、マウスに川崎様疾患を引き起こし、結果としてアテローム性動脈硬化症、冠状動脈動脈炎、腹部動脈瘤を増強することが示されている。L. CaseiをTLR2欠損マウスに投与しても疾患の原因となる影響はなかったため、これはTLR2に依存している。重要なのは、IL-1が関与していることが示されていること、そして前述のように、OxPLはIL-1放出の強力な誘導物質でもあることである。同じプロトコルでL. CaseiをEO6遺伝子導入マウス(Ldlr-/-バックグラウンド)に注射すると、Ldlr-/-マウスへの注射と比べて、冠状動脈炎のアテローム性動脈硬化だけでなく、関連性も劇的に減少した。EO6抗体はL. Caseiに直接結合しないため、TLR2を介したアゴニズムに関連する炎症作用によって引き起こされるOxPLを中和する。冠動脈炎及びその後の冠動脈瘤の発症は、川崎病を発症している子供が主に恐れている合併症であり、現在の治療にもかかわらず、最大25%の子供に発生すると推定されている。通常、川崎病は、プールされ精製されたヒト血漿に由来する静脈内免疫グロブリン(IVIG)とアスピリン(一般化された非特異的な抗炎症療法)で治療される。その生物学的有効性を高めるために改変された、力価の高いヒト化またはヒト同等の抗OxPL抗体の注射は、そのような抗OxPL抗体がヒトB細胞レパートリーに存在するため、予期される副作用なしに保護をもたらす可能性がある。
【0071】
従って、該実験データは、マウスにおけるin vivoでのTLR2を介したアゴニズムによって引き起こされるアテローム性動脈硬化症及び炎症性動脈炎が、OxPLの中和によって予防できることを示している。TLR2アゴニズムは、もちろん数多くの細菌性疾患に関与しているが、ループス、関節リウマチ等の様々ないわゆる自己免疫媒介性疾患にも関与している。該データは、OxPLのPCを標的とする抗体の使用によるOxPLの中和が、TLR2を介したシグナル伝達経路の活性化によって強調または影響を受ける多くの疾患を改善または予防できることを示している。
【0072】
本開示は、OxPLに結合し、場合によってはEO6抗体と同じまたは同様の結合特異性を有する抗体、抗体断片及びヒト化抗体の使用を提供する。抗体断片は、酵素消化等の従来の手段によって、または組換え技術によって生成することができる。特定の状況では、抗体全体ではなく、抗体断片を使用する利点がある。断片のサイズが小さいと、迅速なクリアランスが可能になり、組織へのアクセスが改善される。急性の状況では、抗体断片の半減期は重要ではない。特定の抗体断片に関する総説については、Hudsonら、(2003)Nat. Med 9:129-134を参照されたい。
【0073】
本開示は、生物学的活性を有する特定の抗体配列及び抗体配列断片を提供するが、これらの配列を用いて改善された変異体を生成できることをさらに開示する。従って、いくつかの例では、抗体または抗体断片は、本開示の配列に対してパーセント同一性を有し得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体のアミノ酸配列修飾が企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な変化を導入することにより、またはペプチド合成により調製することができる。そのような修飾は、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/または挿入及び/または置換を含む。最終の構築物が所望の特性を有することを条件として、削除、挿入、及び置換の任意の組み合わせを行って、最終の構築物に到達することができる。アミノ酸改変は、配列が作成されるときに対象の抗体アミノ酸配列に導入され得る。
【0075】
本開示は、OxPLまたはホスホリルコリン及び/またはホスホリルコリン抱合体に結合できる抗体または抗体断片を提供し、ここで、該抗体または抗体断片は、可変重鎖(VH)ドメイン及び/または可変軽鎖(VL)ドメインを含み、また、
(a)該VHドメインは、
配列番号:6及び配列番号:6と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または99.9%同一である配列;
配列番号:7及び配列番号:7と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または99.9%同一である配列;及び
配列番号:8及び配列番号:8と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または99.9%同一である配列
からなる群から選択される1つ、2つ、または3つの相補性決定領域(CDR)を含むアミノ酸配列を含み;
(b)該VLドメインは、
配列番号:9または12、及び配列番号:9または12と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または99.9%同一である配列;
配列番号:10及び配列番号:10と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または99.9%同一である配列;及び
配列番号:11及び配列番号:11と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または99.9%同一である配列
からなる群から選択される1つ、2つ、または3つの相補性決定領域(CDR)を含むアミノ酸配列を含む。
【0076】
一実施形態では、該抗体または抗体断片は、配列番号:6、7及び8を含むCDRを包含するアミノ酸配列を含むVHドメインを含み、及び/または該VLドメインは、配列番号:9、10及び11、または配列番号:10、11及び12を含むCDRを包含するアミノ酸配列を含む。
【0077】
一実施形態では、本開示は、(a)配列番号:6、7、8、9、10及び11の相補性決定領域を含む重鎖及び軽鎖ドメインを有する抗体またはscFv;及び(b)配列番号:6、7、8、9、10、11及び12の相補性決定領域を含む重鎖及び軽鎖ドメインを有する抗体またはscFvからなる群から選択される抗体またはscFvを提供する。一実施形態では、(a)または(b)のいずれかがFc領域に連結される。
【0078】
一実施形態では、本開示は、配列番号:2アミノ酸1~約146に示される軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。別の実施形態では、本開示は、配列番号:4アミノ酸1~約135の配列を含むヒト化軽鎖可変領域を有する抗体を提供する。別の実施形態では、本開示は、配列番号:2約162~約269の配列を含む重鎖可変領域を含む抗体を提供する。別の実施形態では、本開示は、配列番号:4約152~約258の配列を含むヒト化重鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0079】
別の実施形態では、本開示は、例えば、マウスVH及び/またはVLならびにヒトFc領域を含むキメラ抗体を提供する。例えば、配列番号:14は、本開示のキメラ抗体の配列を提供する。配列番号:14において、アミノ酸1~33は、抗体分泌のためのIgカッパ鎖リーダー配列を含み;アミノ酸34~146はEO6軽鎖可変領域を含み;アミノ酸147~161は柔軟なリンカー配列を提供し;アミノ酸162~284は、野生型尿EO6抗体と比べ、P201A、S224A、及びA225Dの三重変異を持つEO6重鎖可変領域を提供し;アミノ酸285~517はFc領域を含み、配列番号:14では、該Fc領域はADCC活性を高めるためにC290S及びH294Yが修飾されたヒトIgG1-Fcである。配列番号:14はまた、当業者が任意であるさらなるリンカー及びHisタグ配列を提供する(例えば、配列番号:14アミノ酸518~528)。本開示はまた、配列番号:13を含む配列番号:14のコード配列を企図し、提供する。当業者は、上で同定された様々なドメインに対応する核酸配列を容易に同定することができる。本開示はまた、異なる免疫グロブリン(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM、または任意のサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)からののFc領域に連結された配列番号:14アミノ酸1~284と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または99.9%同一であるキメラ抗体配列を包含する。
【0080】
一実施形態では、本開示は、軽鎖可変領域と重鎖可変領域との間にリンカーを含むscFvを提供する。該リンカーは、任意の数の一般に用いられるペプチドリンカーであり得る。一実施形態では、該リンカーは、GGGS(配列番号:5)の繰り返し単位を含む。該GGGS(配列番号:5)の繰り返しは、2、3、4回またはそれ以上であり得る。
【0081】
別の実施形態では、本開示は、ペプチドリンカーによって配列番号:2アミノ酸162~269の重鎖可変領域に連結された配列番号:2アミノ酸1~146の軽鎖可変領域を含むscFvを含む。特定の実施形態では、該scFvは、配列番号:2アミノ酸1~269の配列を含む。別の実施形態では、本開示は、配列番号:2アミノ酸1~約269または1~約303のポリペプチド配列を有するscFvを提供する。さらなる実施形態では、本開示は、配列番号:2アミノ酸1~約303に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するポリペプチド配列を有し、酸化されたリン脂質に選択的に結合するscFvを提供する。
【0082】
さらなる実施形態では、配列番号:2アミノ酸1~約269または1~約303を含む第1ドメインまたはその変異体を含む融合構築物は、(i)検出可能な標識または(ii)目的のポリペプチドを含む第2ドメインに機能的に連結される。当業者は、そのような融合構築物が、配列番号:1の配列を含むコード配列またはその変異体を、例えば、ポリペプチドのコード配列と連結する化学または分子生物学技術を用いて生成できることを認識するであろう。該コード配列及びドメインは、リンカーによって分離されるか、または直接に連結され得る。
【0083】
さらに別の実施形態では、本開示は、ペプチドリンカーによって配列番号:4アミノ酸152~約258の重鎖可変領域に連結された配列番号:4アミノ酸1~135の軽鎖可変領域を含むscFvを含む。特定の実施形態では、該scFvは、配列番号:4アミノ酸1~258の配列を含む。別の実施形態では、本開示は、配列番号:4アミノ酸1~約258または1~約263のポリペプチド配列を有するscFvを提供する。さらなる実施形態では、本開示は、配列番号:4アミノ酸1~約258に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するポリペプチド配列を有し、酸化されたリン脂質に選択的に結合するscFvを提供する。
【0084】
さらなる実施形態では、配列番号:4アミノ酸1~約258または1~約264を含む第1ドメインまたはその変異体を含む融合構築物は、(i)検出可能な標識または(ii)目的のポリペプチドを含む第2ドメインに機能的に連結される。当業者は、そのような融合構築物が、配列番号:3またはその変異体の配列を含むコード配列を、例えば、目的のポリペプチドのコード配列と連結する化学または分子生物学技術を用いて生成できることを認識するであろう。該コード配列及びドメインは、リンカーで分離されるか、または直接に連結され得る。
【0085】
抗体、抗体断片及び抗体の変異体のアミノ酸配列をコードする核酸分子は、当技術分野で公知の様々な方法によって調製される。変異体を調製する方法としては、これらに限定されないが、天然源からの分離(天然アミノ酸配列変異体の場合)、またはオリゴヌクレオチド媒介(または部位特異的)変異誘発による調製、PCR変異誘発、そして、以前に調製された変異体または非変異体バージョンの抗体のカセット変異誘発が含まれる。
【0086】
特定の実施形態では、本開示は、配列番号:1のポリヌクレオチド配列でコードされるマウスscFvを提供する。さらなる実施形態では、本開示は、配列番号:1に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列でコードされ、酸化されたリン脂質に選択的に結合するポリペプチドを生成するマウスscFvを提供する。
【0087】
別の実施形態では、本開示は、軽鎖可変領域と重鎖可変領域との間にリンカーを含むscFvを提供する。該リンカーは、任意の数の一般に用いられるペプチドリンカーであり得る。一実施形態では、該リンカーは、GGGS(配列番号:5)の繰り返し単位を含む。該GGGS(配列番号:5)の繰り返しは、2、3、4回またはそれ以上であり得る。
【0088】
本開示はまた、ヒト化抗体を包含する。非ヒト抗体をヒト化するための様々な方法が当技術分野で知られている。例えば、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源からそれに導入された1つまたは複数のアミノ酸残基を有することができる。これらの非ヒトアミノ酸残基は、「移入」残基と呼ばれることが多く、通常、「移入」可変ドメインから取得される。ヒト化は、本質的にWinter法(Jonesら、(1986) Nature 321:522-525; Riechmannら、(1988) Nature 332:323-327; Verhoeyenら、(1988) Science 239:1534-1536)に従ってヒト抗体の対応する配列を超可変領域配列に置き換えることにより実施できる。従って、このような「ヒト化」抗体はキメラ抗体であり(米国特許第4,816,567号)、無傷のヒト可変ドメインよりも実質的に少ないものが非ヒト種由来の対応する配列によって置換されている。実際には、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかの超可変領域残基及びおそらくいくつかのFR残基が齧歯類抗体の類似の部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
【0089】
ヒト化抗体を作製する際に用いられるヒト可変ドメイン(軽鎖及び重鎖の両方)の選択は、抗原性を低下させるために重要であり得る。いわゆる「ベストフィット」法によれば、齧歯類抗体の可変ドメインの配列は、既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリ全体に対してスクリーニングされる。げっ歯類の配列に最も近いヒト配列は、ヒト化抗体のヒトフレームワークとして受け入れられる。例えば、Simsら、(1993) J. Immunol. 151:2296; Chothiaら、(1987) J. Mol. Biol. 196:901を参照されたい。別の方法は、軽鎖または重鎖の特定のサブグループのすべてのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークをいくつかの異なるヒト化抗体に使用することができる。例えば、Carterら、(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285; Prestaら、(1993) J. Immunol., 151:2623を参照されたい。
【0090】
抗体は、抗原に対する高い親和性及び他の好ましい生物学的特性を保持してヒト化されることがさらに一般的に望ましい。この目標を達成するために、ある方法によれば、ヒト化抗体は、親配列及びヒト化配列の三次元モデルを用いて、親配列及び様々な概念的ヒト化製品の分析のプロセスによって調製される。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者によく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の可能な三次元立体構造を例示及び表示するコンピュータープログラムが利用可能である。これらの表示を検査することにより、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の可能な役割の分析、即ち、候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を与える残基の分析が可能になる。このようにして、FR残基を選択し、レシピエント配列及び移入配列から組み合わせて、標的抗原に対する親和性の増加等の所望の抗体特性を達成する。一般に、超可変領域残基は、抗原結合への影響に直接かつ最も実質的に関与している。
【0091】
特定の実施形態では、本開示は、配列番号:3のポリヌクレオチド配列によってコードされるヒト化scFvを提供する。さらなる実施形態では、本開示は、配列番号:3に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列によってコードされ、酸化されたリン脂質に選択的に結合するポリペプチドを生成するヒト化scFvを提供する。
【0092】
本開示は、抗体の断片結晶化可能領域(「Fc」)をさらに含む、本明細書に開示されるscFvをさらに提供する。特定の実施形態では、該Fc領域は、ヒトまたはヒト化抗体に由来する。該Fc領域は、Fc受容体と呼ばれる細胞表面受容体及び補体系のいくつかのタンパク質と相互作用する抗体の尾部領域である。この特性により、抗体は免疫系を活性化できる。IgG、IgA及びIgD抗体のアイソタイプでは、該Fc領域は、抗体の2つの重鎖の2番目と3番目の定常ドメインに由来する2つの同一のタンパク質断片で構成され;IgM及びIgE Fc領域は、各ポリペプチド鎖に3つの重鎖定常ドメイン(CHドメイン2~4)を含みる。IgGのFc領域には、高度に保存されたNグリコシル化部位がある。Fc断片のグリコシル化は、Fc受容体を介した活性に不可欠である。この部位に接続されているN型糖鎖は、主に複合型のコアフコシル化二分岐構造である。さらに、これらのN-グリカンの少量は、二分するGlcNAcとα-2,6結合シアル酸残基を持っている。Fab領域と呼ばれる抗体の他の部分には、抗体が結合できる特定の標的を定義する可変セクションが含まれている。本開示のscFvは、Fab領域からの要素から構成される。対照的に、クラス内のすべての抗体のFc領域は、各種で同じであり、可変ではなく定常である。そのため、Fc領域は「断片定常領域」と呼ばれることもある。従って、無数の種のFc領域をコードするポリヌクレオチド及びポリペプチド配列は既に決定されており、当業者に知られているであろう。特定の実施形態では、本開示は、IgG抗体(例えば、ヒトIgG抗体)からのFc領域をコードするポリヌクレオチド配列をさらに含む、本明細書に開示のscFvポリヌクレオチド配列を提供する。さらなる実施形態では、本開示は、IgG抗体からのFc領域のポリペプチド配列をさらに含む、本明細書に開示のscFvポリペプチド配列を提供する。
【0093】
特定の実施形態では、本開示は、IgG抗体(例えば、ヒトIgG抗体)からのFc領域をコードするポリヌクレオチド配列をさらに含む、本明細書に開示のscFvポリヌクレオチド配列を提供する。さらなる実施形態では、本開示は、IgG抗体からのFc領域のポリペプチド配列をさらに含む、本明細書に開示のscFvポリペプチド配列を提供する。一実施形態では、Fc領域のコード配列は、配列番号:3ヌクレオチド約790~約1518に示される配列を含む。
【0094】
さらなる実施形態では、本開示は、上記に示されるような配列番号:1及び3を参照してscFvをコードするポリヌクレオチド配列、または配列番号:1または配列番号:3と少なくとも99%、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%または少なくとも70%の配列同一性を有する配列を含むベクターを提供する。
【0095】
本開示はまた、EO6抗体の結合特異性を有するヒト化抗体を提供する。該ヒト化抗体は、(i)配列番号:4アミノ酸1~約506に示されるの配列、または(ii)配列番号:4アミノ酸1~約506と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.8%同一の配列を含む。
【0096】
本開示はまた、本開示のヒト化抗体をコードするポリヌクレオチドを提供する。該ポリヌクレオチドは、(i)配列番号:4をコードするポリヌクレオチド、(ii)厳密な条件下で配列番号:3からなるポリヌクレオチドにハイブリッド形成し、EO6抗体と実質的に同様の特異性でOxPLに結合するヒト化抗体をコードするポリヌクレオチド、(iii)配列番号:3と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.8%同一であり、EO6抗体と実質的に同様の特異性でOxPLに結合する抗体をコードするポリヌクレオチド、(iv)配列番号:3に示されたポリヌクレオチド、(v)(i)~(iv)のいずれかのポリヌクレオチド(ここで、該ポリヌクレオチドがRNAを含む)からなる群から選択される配列を含む。
【0097】
標準的な組換え技術を用いて、本開示の抗体または抗体断片のポリペプチド成分をコードするポリヌクレオチド配列を得ることができる。所望のポリヌクレオチド配列は、ハイブリドーマ細胞等の抗体産生細胞から単離及び配列決定することができる。あるいは、ヌクレオチドシンセサイザーまたはPCR技術を用いて、ポリヌクレオチドを合成することができる。一旦得られると、ポリペプチドをコードする配列は、原核生物宿主において異種ポリヌクレオチドを複製及び発現することができる組換えベクターに挿入される。利用可能な、当技術分野で知られている多くのベクターを、本発明の目的のために使用できる。適切なベクターの選択は、主にベクターに挿入される核酸のサイズ、及びベクターで形質転換される特定の宿主細胞に依存する。各ベクターは、その機能(異種ポリヌクレオチドの増幅または発現、あるいはその両方)と、それが存在する特定の宿主細胞との適合性に応じて、様々な構成要素を含んでいる。ベクターの構成要素には、一般に、複製起点、選択マーカー遺伝子、プロモーター、リボソーム結合部位(RBS)、シグナル配列、異種核酸挿入、及び転写終結配列が含まれるが、これらに限定されない。
【0098】
一般に、宿主細胞と適合性のある種に由来するレプリコン及び制御配列を含むプラスミドベクターは、これらの宿主に関連して用いられる。該ベクターは通常、複製部位、ならびに形質転換細胞において表現型選択を提供することができるマーキング配列を保有する。
例えば、大腸菌は通常、大腸菌種に由来するプラスミドであるpBR322を用いて形質転換される。pBR322には、アンピシリン(Amp)及びテトラサイクリン(Tet)耐性をコードする遺伝子が含まれているため、形質転換細胞を簡単に特定できる。pBR322、その誘導体、または他の微生物プラスミドまたはバクテリオファージはまた、内因性タンパク質の発現のために微生物によって使用され得るプロモーターを含み得るか、または含むように改変され得る。特定の抗体の発現に用いられるpBR322誘導体の例は、Carterら、米国特許第5,648,237号に詳細に記載されている。
【0099】
さらに、宿主微生物と適合性のあるレプリコン及び制御配列を含むファージベクターは、これらの宿主と関連して形質転換ベクターとして用いることができる。例えば、バクテリオファージベクターは、大腸菌LE392等の感受性宿主細胞を形質転換するために用いられる組換えベクターを作製する際に利用することができる。
【0100】
本開示の発現ベクターは、ポリペプチド成分のそれぞれをコードする2つ以上のプロモーター-シストロン対を含み得る。プロモーターは、その発現を調節するシストロンの上流(5')にある非翻訳調節配列である。原核生物のプロモーターは通常、誘導型と構成型の2つのクラスに分類される。誘導型プロモーターは、培養条件の変化(例えば、栄養素の有無または温度の変化)に応答して、その制御下でシストロンの転写レベルの増加を開始するプロモーターである。
【0101】
様々な潜在的な宿主細胞によって認識される多数のプロモーターがよく知られている。選択されたプロモーターは、制限酵素消化によりDNA供給源からプロモーターを除去し、単離されたプロモーター配列を本発明のベクターに挿入することにより、軽鎖または重鎖をコードするシストロンDNAに機能的に連結することができる。天然プロモーター配列及び多くの異種プロモーターの両方を用いて、標的遺伝子の増幅及び/または発現を指示することができる。いくつかの実施形態では、異種プロモーターは、それらが一般に、天然の標的ポリペプチドプロモーターと比べてより大きな転写及び発現された標的遺伝子のより高い収量を可能にするので、利用される。
【0102】
原核生物宿主での使用に適したプロモーターには、PhoAプロモーター、3-ガラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系及びtacまたはtrcプロモーター等のハイブリッドプロモーターが含まれる。しかし、細菌で機能する他のプロモーター(他の既知の細菌またはファージプロモーター等)も同様に適している。それらのヌクレオチド配列は公開されており、それにより熟練労働者がリンカーまたはアダプターを用いて標的軽鎖及び重鎖をコードするシストロンに操作可能にそれらを連結して、必要な制限部位を供給することができる(Siebenlistら、(1980) Cell 20: 269)。
【0103】
別の実施形態では、本開示による免疫グロブリンの産生は、宿主細胞の細胞質で起こり得る。従って、各シストロン内の分泌シグナル配列の存在を必要としない。その点において、免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖は、発現され、折り畳まれ、構築られ、細胞質内で機能的な免疫グロブリンを形成する。特定の宿主株(例えば、大腸菌trxB株)は、ジスルフィド結合形成に好ましい細胞質条件を提供し、それにより、発現されたタンパク質サブユニットの適切な折り畳みと構築を可能する。ProbaとPluckthun Gene, 159:203 (1995)を参照されたい。
【0104】
本発明の抗体を発現するのに適した原核宿主細胞には、グラム陰性またはグラム陽性生物等の古細菌及び真正細菌が含まれる。有用な細菌の例としては、Escherichia (例えば、E. Coli)、Bacilli (例えば、B. subtilis)、Enterobacteria、Pseudomonas species(例えば、P. aeruginosa)、Salmonella typhimurium、Serratia marcescans、Klebsiella、Proteus、Shigella、Rhizobia、Vitreoscilla、またはParacoccusが含まれる。一実施形態では、グラム陰性細胞が用いられる。一実施形態では、大腸菌細胞は、本開示の宿主として用いられる。大腸菌株の例としては、W3110株(Bachmann, Cellular and Molecular Biology, vol. 2 (Washington, D.C.: American Society for Microbiology, 1987), pp. 1190-1219; ATCC Deposit No. 27,325)及び33D3株(米国特許第5,639,635号)のようなその類縁体が含まれる。その他の株及びその類縁体、例えば、E. Coli 294 (ATCC 31,446)、E. Coli B, E. ColiX 1776 (ATCC 31,537)及びE. Coli RV308も適用できる。これらの例は、制限ではなく例示である。定義された遺伝子型を有する上記の細菌のいずれかの誘導体を構築する方法は、当技術分野で知られており、例えば、Bassら、Proteins、8:309-314(1990)に記載されている。細菌の細胞におけるレプリコンの複製可能性を考慮して適切な細菌を選択することが一般的に必要である。例えば、pBR322、pBR325、pACYC177、またはpKN410等の周知のプラスミドを用いてレプリコンを供給する場合、大腸菌、セラチア、またはサルモネラ種を宿主として適切に用いることができる。典型的には、宿主細胞は最小量のタンパク質分解酵素を分泌するはずであり、追加のプロテアーゼ阻害剤が細胞培養物に組み込まれることが望ましい場合がある。
【0105】
宿主細胞は、上記の発現ベクターで形質転換され、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、または所望の配列をコードする遺伝子の増幅に適するように改変された汎用の栄養培地で培養される。
【0106】
形質転換は、原核生物宿主にDNAを導入し、その結果、DNAは、染色体外要素として、または染色体組込み体によって複製可能であることを意味する。用いられる宿主細胞に応じて、形質転換はそのような細胞に適した標準的な技術を用いて行われる。塩化カルシウムを用いるカルシウム処理では、一般に、実質的な細胞壁の障壁を含む細菌細胞に用いられる。形質転換のための別の方法は、ポリエチレングリコール/DMSOを用いる。さらに、用いられる別の技術は、電気穿孔法である。
【0107】
本開示のポリペプチドを生成するために用いられる原核細胞は、当技術分野で公知であり、選択された宿主細胞の培養に適した培地で増殖される。適切な培地の例には、ルリアブロス(LB)と必要な栄養素サプリメントが含まれる。いくつかの実施形態では、該培地はまた、発現ベクターを含む原核細胞の増殖を選択的に可能にするために、発現ベクターの構築に基づいて選択された選択剤を含む。例えば、アンピシリンは、アンピシリン耐性遺伝子を発現する細胞の増殖のための培地に添加される。
【0108】
炭素、窒素、及び無機リン酸塩源以外の必要なサプリメントも、単独で、または複雑な窒素源等の別のサプリメントまたは媒体との混合物として導入される適切な濃度で含まれ得る。必要に応じて、培養用培地は、グルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコレート、ジチオエリスリトール及びジチオスレイトールからなる群から選択される1つ以上の還元剤を含み得る。原核宿主細胞は適切な温度で培養される。
【0109】
一実施形態では、発現されたポリペプチドは、宿主細胞のペリプラズムに分泌され、そこから回収される。タンパク質の回収には通常、一般に浸透圧ショック、超音波処理または溶解等の手段によって微生物を破壊することが含まれる。細胞が破壊されると、細胞破片または細胞全体が遠心分離または濾過によって除去される。タンパク質は、例えば、アフィニティー樹脂クロマトグラフィーによりさらに精製することができる。あるいは、タンパク質を培養用培地に移し、その中で単離することができる。生産されたタンパク質をさらに精製するために、培養物から細胞を除去し、培養上清を濾過及び濃縮してもよい。発現されたポリペプチドは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)やウエスタンブロットアッセイ等の一般的に知られている方法を用いて、さらに分離及び同定できる。大規模または小規模な発酵を用いることができ、当技術分野で周知のスキルを用いて最適化することができる。
【0110】
当技術分野で既知の標準的なタンパク質精製法を採用することができる。以下の手順は適切な精製手順の例である:免疫親和性またはイオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカまたはDEAE等のカチオン交換樹脂でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、硫酸アンモニウム沈殿、及びゲル濾過。
【0111】
本開示はさらに、適切な宿主生物に移入される、本明細書に開示される抗体、抗体断片またはポリペプチドをコードする発現ベクターを提供する。適切な宿主生物は、微生物、酵母または哺乳動物細胞系である。典型的には、哺乳動物細胞系は、単球由来(例えば、マクロファージ、単球、及び好中球)、リンパ球由来(例えば、骨髄腫、ハイブリドーマ、及び正常な不死化B細胞)、実質細胞(例えば、肝細胞)及び非実質細胞である(例えば、星状細胞)。
【0112】
本開示はまた、治療的有効量の本開示の抗体、抗体断片またはポリペプチドを含む医薬組成物または製剤を提供する。該医薬組成物または製剤は、さらに担体、賦形剤、希釈剤、可溶化剤、安定剤、緩衝液、張度調整剤、増量剤、増粘剤/還元剤、界面活性剤、キレート剤、及び免疫賦活剤を含み得る。
【0113】
本開示の物質/分子、アゴニストまたはアンタゴニストの「治療的有効量」は、個人の病状、年齢、性別、体重、及び物質/分子、アゴニストまたはアンタゴニストが個人に所望の反応を誘発する能力等の要因に応じて変動し得る。また、治療的有効量は、物質/分子、アゴニストまたはアンタゴニストの毒性または有害な効果が治療的に有益な効果により勝る量でもある。
【0114】
「予防的有効量」とは、必要な投薬量及び期間において所望の予防的結果を達成するために有効な量を指す。典型的には、しかし必ずしもそうではないが、予防的用量は疾患の前または初期段階で被験者に用いられるので、予防的有効量は治療的有効量より少ないであろう。
【0115】
本開示の抗体またはその断片を含む治療剤は、所望の程度の純度を有する抗体または断片を、任意の生理学的に許容される担体、賦形剤または安定剤と、水溶液、凍結乾燥または他の形態で混合することにより保存用に調製される(Remington:薬学の科学と実践、第20版)(2000))。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、用いられる用量及び濃度で受給者に無害であり、それには、リン酸塩、クエン酸塩、ヒスチジン及びその他の有機酸等の緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール; 3-ペンタノール;及びm-クレゾール)、低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリン等のタンパク質、ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リジン等のアミノ酸、グルコース、マンノース、デキストリンを含む単糖、二糖、及び他の炭水化物、EDTA等のキレート剤、ショ糖、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール等の糖、ナトリウム等の塩を形成する対イオン、金属錯体(例:Zn-タンパク質錯体);及び/または非イオン性界面活性剤またはポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。
【0116】
本明細書に開示される医薬組成物は、局所または全身投与のため、注射、注入、または埋め込みにより非経口的に投与され得る。本明細書で用いられる非経口投与には、静脈内、動脈内、腹腔内、くも膜下腔内、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、滑膜内、及び皮下投与が含まれる。
【0117】
本明細書に開示される医薬組成物は、非経口投与に適した任意の剤形に製剤化されてもよい。それには、溶液、懸濁液、乳濁液、及び注射前の液体の溶液や懸濁液に適した固体形態が含まれる。そのような剤形は、製薬科学の当業者に知られている汎用の方法に従って調製できる(Remington:薬学の科学と実践、supraを参照)。
【0118】
非経口投与を目的とする医薬組成物は、1つまたは複数の医薬的に許容される担体及び賦形剤を含んでもよい。それには、水溶性媒体、水混和性媒体、非水溶性媒体、抗菌剤または抗微生物成長の防腐剤、安定剤、溶解促進剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、局所麻酔剤、懸濁剤及び分散剤、湿潤剤または乳化剤、錯化剤、金属イオン封鎖剤またはキレート剤、抗凍結剤、凍結保護剤、増粘剤、pH調整剤、及び不活性ガスが含まれるが、これらに限定されない。
【0119】
適切な水溶性媒体には、水、生理食塩水、生理食塩水またはリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)、塩化ナトリウム注射液、リンガー注射液、等張性ブドウ糖注射液、滅菌水注射液、ブドウ糖及び乳酸加リンガー注射液が含まれるが、これらに限定されない。非水溶性媒体には、植物性固体油、ひまし油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、ピーナッツ油、ペパーミント油、ベニバナ油、ゴマ油、大豆油、水素化植物油、水素化大豆油、ココナッツ油の中鎖トリグリセリド、及びパームシードオイルが含まれるが、これらに限定されない。水混和性媒体には、エタノール、1,3-ブタンジオール、液体ポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール300及びポリエチレングリコール400等)、プロピレングリコール、グリセリン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセトアミド、及びジメチルスルホキシドが含まれるが、これらに限定されない。
【0120】
一実施形態では、本明細書に開示の医薬組成物は、すぐに使用できる滅菌溶液として製剤化される。別の実施形態では、本明細書に開示の医薬組成物は、粉末及び皮下錠剤を含む無菌乾燥可溶性製品として製剤化され、必要に応じて使用前に媒体で再構成することができる。さらに別の実施形態では、該医薬組成物は、すぐに使用できる滅菌懸濁液として開示される。さらに別の実施形態では、該医薬組成物は、使用前に媒体で再構成される無菌の乾燥不溶性製品として開示される。さらに別の実施形態では、該医薬組成物は、すぐに使用できる滅菌乳剤として開示される。
【0121】
該医薬組成物は、埋め込まれたデポーとして投与するため、懸濁液、固体、半固体、またはチキソトロピー液体として製剤化されてもよい。一実施形態では、本明細書に開示の医薬組成物は、体液に不溶であるが医薬組成物中の活性成分の拡散を可能にする外部ポリマー膜に囲まれる固体の内部マトリックスに分散される。
【0122】
適切な内部マトリックスには、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、可塑化または非可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレン-ビニルアセテートコポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、シリコーンカーボネートコポリマー、アクリル及びメタクリル酸のエステルのヒドロゲル等の親水性ポリマー、コラーゲン、架橋ポリビニルアルコール、及び架橋部分加水分解ポリビニル酢酸塩が含まれる。
【0123】
適切な外部ポリマー膜には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/エチルアクリレートコポリマー、エチレン/ビニルアセテートコポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、ネオプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニルとの塩化ビニルコポリマー、塩化ビニリデン、エチレンとプロピレン、アイオノマーポリエチレンテレフタレート、ブチルゴムエピクロロヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、エチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコールターポリマー、及びエチレン/ビニルオキシエタノールコポリマーが含まれる。
【0124】
また、本明細書の製剤は、治療される特定の適応症に必要な場合に複数の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものを含んでもよい。そのような分子は、意図された目的に有効な量で組み合わせて適切に存在する。
【0125】
また、活性成分は、例えば、コアセルベーション技術、または界面重合によって調製された、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルのマイクロカプセルに、コロイド薬物送達システムに(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)、またはマクロエマルションに封入してもよい。このような技術は、Remington:薬学の科学と実践、第20版(2000)に開示されている。
【0126】
in vivo投与に用いられる製剤は、無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜による濾過によって容易に達成される。
【0127】
徐放性調製物を調製することができる。徐放性調製物の適切な例には、本発明の免疫グロブリンを含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、そのマトリックスは、例えばフィルムまたはマイクロカプセル等の成形品の形態である。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とγ-エチル-L-グルタミン酸のコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、LUPRON DEPOT(乳酸-グリコール酸コポリマーと酢酸ロイプロリドから構成される注射用ミクロスフェア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が含まれる。エチレン-酢酸ビニルや乳酸-グリコール酸等のポリマーは100日間以上分子の放出を可能にするが、特定のヒドロゲルはタンパク質をより短時間放出する。カプセル化された免疫グロブリンが体内に長期間留まると、37℃の湿気にさらされた結果、変性または凝集して、生物活性が失われ、免疫原性が変化する可能性がある。関与するメカニズムに応じて、安定化のための合理的な戦略を考案できる。例えば、凝集メカニズムがチオジスルフィド交換による分子間S--S結合形成であることが発見した場合、スルフヒドリル残基を修飾したり、酸性溶液から凍結乾燥したり、水分量を制御したり、適切な添加剤を用いたり、特定のポリマーマトリックス組成物を開発したりすることで安定化を達成できる。
【0128】
本明細書に開示の抗体、抗体断片及びポリペプチドは、OxPLに結合し、それらの炎症促進効果を遮断する。多くの異なる状況でOxPLの生物学的効果を遮断するため、本開示の抗体、抗体断片またはポリペプチドをin vivoで使用することが予想される。例えば、OxPLはTLR2を介したメカニズムでマクロファージ及びその他の細胞によって生成されることが示されている。これらの放出されたOxPLは、患者の全身に有害な血管作用をもたらす可能性がある。従って、本開示の抗体、抗体断片またはポリペプチドの急性及び/または慢性注射/注入は、これらの有害作用を遮断し、及び/またはTLR2活性化に起因する同様の炎症事象を遮断または減弱し得る。同様に、本開示の抗体、抗体断片、またはポリペプチドはまた、ウイルスまたは細菌感染、または自己免疫障害等の様々な病的状態から生じるOxPLによって媒介される炎症誘発効果を遮断するために被験者に注入され得る。従って、本開示の抗体、抗体断片、またはポリペプチドは、関節リウマチ等のTLR2活性化によって媒介される他の全身性炎症の状況における抗炎症剤として有効であろう。従って、本開示の抗体、抗体断片、またはポリペプチドは、抗炎症剤及び/または抗アテローム性動脈硬化剤を一時的及び/または長期的に投与する必要がある多くの臨床用途または状況で使用することができる。
【0129】
本開示は、本開示の抗体、抗体断片、及びポリペプチドを用いて、TLR2媒介性疾患または障害を有する被験者を治療するための治療方法を提供する。特定の実施形態では、本開示は、本開示の抗体、抗体断片、またはポリペプチドの治療的有効量でTLR2媒介性疾患または障害を治療することを提供する。TLR2媒介性疾患または障害の例には、川崎病(Kangら、Korean J Pediatr 60(7):208-215 (2017))、2型糖尿病(Sepehriら、Cell Mol Biol Lett 21:2 (2016))、関節リウマチ(McGarryら、Arthritis Res Ther 17:153 (2015))、皮膚病(Kangら、Journal of American Academy of Dermatology, 54(6):951-983 (2006))、多発性硬化症(Hossainら、Oncotarget 6(34):35131-35132 (2015))、全身性エリテマトーデス(Liuら、European Journal of Immunology, 45(9):2683-2693 (2015))、潰瘍性大腸炎(Folovaら、Journal of Histochemistry & Cytochemistry 56(3):267-274 (2008)、グレーブス病(Pengら、Front Immunol, 7:578 (2016))、シェーグレン症候群(Sistoら、Clin Exp Med 17(3):341-350 (2017)、自己免疫甲状腺疾患(Pengら、Front Immunol 7:547 (2016)、及び血管炎(Summersら、Arthritis Rheum 63(4):1124-35 (2011))が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、本開示は、治療有効量の本開示の抗体、抗体断片、またはポリペプチドで川崎病の被験者を治療することを提供する。
【0130】
本明細書に記載の治療用途で使用するために、本明細書にキット及び製品も記載されている。そのようなキットは、担体、パッケージ、または容器を含むことができ、バイアル、チューブ等の1つまたは複数の容器を受け入れるように区画化される。各容器は、記載された方法で用いられる別々の要素の1つを含む。適切な容器には、例えば、瓶、バイアル、シリンジ、及び試験管が含まれる。該容器は、ガラスまたはプラスチック等の様々な材料から形成することができる。
【0131】
例えば、該容器は、本明細書に記載の1つまたは複数の抗体、抗体断片、またはポリペプチドを、任意選択で組成物中に、または本明細書に開示される別の薬剤と組み合わせて含むことができる。該容器は、任意で無菌のアクセスポートを有する(例えば、該容器は、静脈内溶液バッグまたは皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有するバイアルであり得る)。そのようなキットは、本明細書の記載方法におけるその使用に関する識別説明、ラベル、取り扱い説明書を任意に含む。
【0132】
キットは、典型的には、1つまたは複数の追加の容器を含み、それぞれが、記載された化合物の使用について商業的及びユーザーの観点から望ましい1つまたは複数の様々な材料(試薬、任意で濃縮形態、及び/または装置等)を含む。そのような材料の例には、緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ; キャリア、パッケージ、容器、バイアル及び/または内容物を例示するチューブラベル、及び/または使用説明書、及び使用説明の添付文書が含まれるが、これらに限定されない。通常、使用説明書の一式も含まれる。
【0133】
ラベルは、容器上にあるか、または容器に関連付けられることができる。ラベルを形成する文字、数字、またはその他の文字が容器自体に取り付けられたり、成形されたり、食刻されたりする場合、ラベルを容器に関連付けることができる。容器を保持するレセプタクルまたはキャリア内に存在する場合、ラベルを容器に関連付けることができる(例えば、添付文書として)。ラベルは、内容物が特定の治療用途に用いられることを示すために使用できる。該ラベルはまた、本明細書に記載されている方法等における、内容物の使用に関する指示を示すことができる。これらの他の治療薬は、例えば、医師用卓上参考書(PDR)に示されている量で、または当業者によって他の方法で決定されるように使用することができる。
【0134】
以下の実施例は、本開示を例示することを意図されたものであり、それを限定することを意図されたものではない。それらは使用され得るものの典型であるが、当業者に知られている他の手順が代わりに使用されてもよい。
【実施例】
【0135】
材料 合成級の1,2-ジノナノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DNPC)、1-パルミトイル-2-(5-オキソバレロイル)-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POVPC)、1-パルミトイル-2-グルタロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(PGPC)、1-パルミトイル-2-アゼラオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(PAzPC)、1-パルミトイル-2-(9-オキソ)ノナノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン((PONPC)、及びLPSを含まないIgMマウス天然抗体EO6は、Avanti Polar Lipids社(Alabaster, AL)から入手した。1-(パルミトイル)-2-(5-ケト-6-オクテン-ジオイル)-3-ホスホコリン(KOdiAPC)及び1-パルミトイル-2-(4-ケト-ドデシ-3-エン-ジオイル)-sn-グリセロ-3-ホスホコリン((KDdiAPC)は、Cayman Chemicals社(Ann Arbor、MI)から購入した。すべての溶媒はHPLC級であった。
【0136】
EO6-scFv遺伝子導入マウスの生成及び特徴付け T15/EO6イディオタイプをEO6-scFv-Tgと称される単鎖可変抗体断片として発現する遺伝子導入C57BL/6マウスの生成。簡単に言えば、重鎖と軽鎖のEO6可変領域をコードするcDNAは、オーバーラップPCRによって15-アミノ酸ペプチドと連結され、分泌用のマウスIgκ鎖リーダー配列及びエピトープタグとしてのc-myc及びpolyHisを含有する発現ベクターpSecTag2A(Invitrogen)にクローン化された。HEK293細胞に遺伝子導入し、培養上清に分泌されたEO6-scFvの結合特性は、無傷のEO6の結合特性を模倣することが示された。次に、同じ構築物が肝臓特異的発現ベクターpLiv7にクローン化され、apoEプロモーターによって駆動されるEO6-scFv導入遺伝子を発現するC57BL/6バックグラウンドで遺伝子導入(Tg)マウスを生成するために使用された。子孫は、血漿EO6-scFv力価と、尾DNAのPCR増幅による導入遺伝子の組込みの両方についてスクリーニングされた。遺伝子導入EO6-scFvファウンダーラインを互いに繁殖させて「ホモ接合」遺伝子導入マウスを生成し、次に、これらをC57BL/6バックグラウンドのLdl-/-マウスに交配した。すべての動物をそれぞれEO6-scFv及びLdlr-/-について遺伝子型分類し、血漿アッセイを行って、イムノアッセイによってEO6-scFvの発現を確認した。EO6-scFv mRNAは、肝臓、及び腹腔マクロファージ、脾臓で強く発現し、心臓ではそれほど発現しなかった。これらの研究では、EO6-scFvの血漿中レベルは平均で20~30 μg/mlであった。
【0137】
OxPLの質量分析 PC含有リン脂質をNNCMから抽出した。細胞培地を除去し、細胞をPBSで洗浄した。各ウェルを、0.01%BHTを含有する1 mLのメタノール/酢酸(3% v/v)の溶液にかき取り、10 mLのガラス製コニカルチューブに移し、N2ガス中で蓋をした。定量のため、各試料に10 ngのDNPCを内部標準として加えた。チューブにBHTを含有するヘキサンを2 mL加え、N2ガス中で蓋をし、5秒間ボルテックスした後、4℃、3500 rpmで5分間遠心分離した。次に、ガラスのパスツールピペットを用いて上層のヘキサン層を吸い上げ、廃棄した。該ヘキサン/BHT洗浄を3回繰り返し、毎回洗浄の後に、N2ガス中で蓋をし、5秒間ボルテックスし、遠心分離した。最終回のヘキサン/BHT洗浄の後、BHTを含有するクロロホルム2 mLとPBS 750 μLをチューブに加え、上記のようにボルテックスし、遠心分離した。ガラスのパスツールピペットを用いて下の有機層を除去し、清潔な15 mLガラスコニカルチューブに移し、窒素エバポレーターを用いて溶液を吸引し、-80℃で保管するため300 μLのクロロホルム/メタノール(2:1 v/v)に再構成した。
【0138】
逆相(RP)クロマトグラフィーを用いてOxPLの分離を行った。抽出した心臓を、注入直前に、60:40のアセトニトリル:水、10 mMギ酸アンモニウム及び0.1%ギ酸からなるRP溶離液に再構成した。30 μLの試料をAscentis Express C18 HPLCカラム(15 cm×2.1 mm、2.7 μm、Supelco Analytical社、Bellefonte、Pennsylvania、USA)に注入し、島津製作所(Canby、Oregon、USA)のProminence UFLCシステムで分離した。溶出は、溶媒A(アセトニトリル/水、60:40、v/v)と溶媒B(イソプロパノール/アセトニトリル、90:10、v/v)(両方の溶媒は、10 mMギ酸アンモニウムと0.1%ギ酸を含有)の線形勾配を用いて行った。用いた移動相の組成は次のとおりである。初期は溶媒Bが32%であり、4.00分に45%Bに切り替えた。5.00分52%B;8.00分58%B;11.00分66%B;14.00分70%B;18.00分75%B;21.00分97%B;25.00分97%B;25.10分32%B。分析には260 μl/分の流速を用いて、試料トレイとカラムオーブンをそれぞれ4℃と45℃に保持した。
【0139】
正極性モードでの質量分析でOxPLの検出を行った。MRMスキャンは、切断されたホスホコリン部分に対応する184.3 m/zの生成イオンを用いて、6つの遷移で行った。PONPC、POVPC、PGPC、PAzPC、KOdiAPC、及びKDdiAPCの6つの市販標準品を注入し、正確なピーク割り当ては、保持時間と質量遷移に基づいた。質量分析の設定は次のとおりである。カーテンガス、26 psi;衝突ガス、中;イオンスプレー電圧、5500 V;温度、500.0℃;イオン源ガス1、40.0 psi;イオン源ガス2、30.0 psi;脱クラスター化電位、125 V、入口電位、10 V; 衝突エネルギー、53 V; 衝突セル出口電位、9 V;滞留時間、50ミリ秒である。外部質量キャリブレーションは定期的に実行した。定量のために、6つの市販OxPL標準品のそれぞれについて複数の反応モニタリング(MRM)検量線を作成し、それらの相対応答に基づいてピークを正規化した。抽出中にすべての試料に10 ngの内部標準を加えた。AB Sciex社(Framingham、Massachusetts、USA)のTurbo Vエレクトロスプレーイオン源を備えた4000QTRAP(登録商標)トリプル四重極質量分析計システムを液体クロマトグラフィーシステムに接続した。
【0140】
LCWE誘発KD血管炎マウスモデルにおける腹部大動脈瘤の発生及び拡張。川崎病は幼児に永続的な冠状動脈炎(CA)を引き起こし、今日の先進国の子供における後天性心疾患の主要な原因として認識されている。動物モデルでは、Lactobacillus casei細胞壁の抽出物(LCWE)がマウスに誘発したCAは、ヒトのKDの病因を正確に模倣している。B L.casei群(ATCC 11578)は、Lactobacillus MRS培養液中で成長させ、指数増殖期に遠心分離により採取し、pH 7.40のPBSで洗浄した。採取後、細胞を4%SDSで一晩処理し、250 μg/ml RNase、DNaseI、及びトリプシンで順次インキュベートした。次に、最終ペレット(15 mlのPBS中のパック湿重量5g)を、20kHz周波数で9秒パルス/5秒休止のパルス設定(Vibra Cell、Sonics&Materials Inc.社、Newtown、CT)で2時間超音波処理した。20,000 xgでの1時間遠心分離の後、上澄みの濃度は、フェノール-硫酸比色アッセイ(Duboisら、1956)で、ラムノース含有量に基づいて測定した。この調製物のエンドトキシン濃度は、リムルス変形細胞可溶化アッセイ(Associates of Cape Cod Inc.社、East Falmouth、MA)で測定したところ、<1.5 pg/μgであった。
【0141】
4週齢のC57/BL6マウスに、250 μgのLCWE(PBS中)または生理食塩水のみを注射した。7、14、21及び28日の4時点でマウスを屠殺した。腹部及び冠状動脈は、連続切片(7 μm)で識別し、ホルマリンで固定し、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。免疫組織化学分析のために、切片を0.3%過酸化水素(PBS中)で30分間前処理した。炎症性マーカー抗体またはアイソタイプ対照抗体を、0.5%ウシ血清アルブミン(PBS中)に1:100で1時間付加した。次にスライドを洗浄し、ビオチン化ホースラディッシュペルオキシダーゼで複合化された二次抗体(Vector Lab社、Burlingame, CA)を1:500で30分間付加し、ストレプトアビジンで複合化されたホースラディッシュペルオキシダーゼを用いて1:1,000で30分間染色した。免疫組織化学染色は、SK-4100 DABキットを用いて製造元(Vector Lab社)の指示に従って検出した。そのデータが示したように、EO6-TgマウスにおけるLCWEで誘発されたAAAフォーメーションと激烈な炎症組織が、対照マウスと比べて大幅に減少した(
図17~
図21)。
【0142】
血清炎症性サイトカインアッセイ Bio-Plex Proマウスサイトカイン23-Plexイムノアッセイキット(Bio-Rad Laboratories Inc.社)を用いて、LCWEで処理し、HFC食を12週間行ったLdlr
-/-またはLdlr
-/-/EO6scFv-Tgマウスの血漿中の異なるサイトカインを同時に検出した。すべてのアッセイの測定とデータ分析は、Bio-Plex Managerソフトウェアと組み合わせたBio-Plexシステムのプロトコルに基づいて行った。その結果を
図10に示す。マルチプレックスBio-Plex(Bio-Rad)アッセイにより、Ldlr
-/-マウス(n = 7~10)と比べて、Ldlr
-/-EO6-scFv-Tgマウス(n = 7~10)の方は、特定の炎症誘発性サイトカイン/ケモカイン(TNF-α、CCL2、CCL5、CXCL1、IL6及びIL12)の血漿レベルが有意に減少し、EO6scFv-TG Ldlr
-/-マウスにおける全身性炎症の全般的な減少を示している。
【0143】
いくつかの実施形態を本明細書に説明した。しかし、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な改変を行うことができることが理解されよう。従って、他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内にある。
【配列表】