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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】抗エリスロポエチン受容体ペプチド
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/08 20060101AFI20240301BHJP
   C12N 15/16 20060101ALI20240301BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20240301BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240301BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240301BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240301BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240301BHJP
   C07K 14/505 20060101ALN20240301BHJP
【FI】
C07K7/08 ZNA
C12N15/16
A61K38/10
A61P3/10
A61P27/02
A61P35/00
A61P35/02
C07K14/505
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020546201
(86)(22)【出願日】2019-09-12
(86)【国際出願番号】 JP2019035949
(87)【国際公開番号】W WO2020054813
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2018172497
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】518330305
【氏名又は名称】エポメッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100118371
【弁理士】
【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
(72)【発明者】
【氏名】小路 弘行
(72)【発明者】
【氏名】安田 佳子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 明良
(72)【発明者】
【氏名】越智 宏
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-201252(JP,A)
【文献】特表平11-507367(JP,A)
【文献】特表2007-529475(JP,A)
【文献】国際公開第2017/014312(WO,A1)
【文献】特表2003-534384(JP,A)
【文献】YASUDA, Y., et al.,Significance of erythropoietin receptor antagonist EMP9 in cancers.,Vitamins and Hormones,2017年,Vol.105,pp.297-310
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
-SCH(A)(A)(A)(A)(A)(A)V(A)(A)-X
[式中、
はペプチドのアミノ末端側であり、Xはペプチドのカルボキシ末端側であり
は、Tyr、p-フルオロフェニルアラニン、またはフェネチルグリシンであり
は、Ala、D-アラニンまたはGlyであり、
は、Pro、ホモプロリンまたはAlaであり、
は、Met、Leu、AlaまたはIleであり、
は、ThrまたはAlaであり、
は、-NH-CH(RA1)-CO-であり、ここで、RA1は、(結合、あるいは直鎖もしくは分枝鎖アルキレン基)-(ハロゲン原子で置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖メトキシル基、ハロゲン原子およびヒドロキシル基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよいアリール基またはヘテロアリール基)の構造を有し、
は、Cys、ホモシステインまたはペニシラミンであり、
は、Lys、Arg、または非存在であり、
ペプチド中の2つの硫黄原子はジスルフィド結合を形成していてもよく、
は、水素、1~3の任意のアミノ酸からなるペプチドまたは-C(=O)Rであり、
は、水素、1~3の任意のアミノ酸からなるペプチドまたは-NR であり、
各Rは、独立に、水素、ヒドロキシル基、Rで置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖C1~10アルキル基、Rで置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖C1~10アルケニル基、Rで置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖C1~10アルキニル基、Rで置換されていてもよい芳香族もしくは非芳香族5~10員環、-ORおよび-NR からなる群から選択されるか、同一の原子に結合した2つのRは一緒になってRで置換されていてもよい芳香族もしくは非芳香族5~10員環を形成し、
各Rは、独立に、水素、ヒドロキシル基、ハロゲン、ハロゲンもしくはヒドロキシル基で置換されていてもよいベンジル基、-CH、-CHCH、-CHCHCH、-NH、-NHCH、-N(CH、=O、-COOH、-OCH、および-OCHCHからなる群から選択される]
の構造を有するか、または
式(II):
-kcvwtl(B)Gfhcs-X
[式中、Xはペプチドのアミノ末端側であり、Xはペプチドのカルボキシ末端側であり
は、GlyまたはD-プロリンであり、k、c、v、w、t、l、G、f、h、c、およびsは、それぞれアミノ酸を示し、大文字はL体または光学異性体がないことを示し、小文字はD体を示し、
ペプチド中の2つの硫黄原子はジスルフィド結合を形成していてもよく、
は、水素、1~3の任意のアミノ酸からなるペプチドまたは-C(=O)Rであり、
は、水素、1~3の任意のアミノ酸からなるペプチドまたは-NR であり、
各Rは、独立に、水素、ヒドロキシル基、Rで置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖C1~10アルキル、Rで置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖C1~10アルケニル基、Rで置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖C1~10アルキニル、Rで置換されていてもよい芳香族もしくは非芳香族5~10員環、-ORおよび-NR からなる群から選択されるか、同一の原子に結合した2つのRは一緒になってRで置換されていてもよい芳香族もしくは非芳香族5~10員環を形成し、
各Rは、独立に、水素、ヒドロキシル基、ハロゲン、ハロゲンもしくはヒドロキシル基で置換されていてもよいベンジル基、-CH、-CHCH、-CHCHCH、-NH、-NHCH、-N(CH、=O、-COOH、-OCH、および-OCHCHからなる群から選択される]
の構造を有する、修飾ペプチドまたその塩。
【請求項2】
がGlyであること、
がPheであること、
がThrであること、
がCysであること、および
がLysであること、
の少なくとも1つの条件を満たす、
請求項に記載の修飾ペプチドまたその塩。
【請求項3】
は、Tyrである、請求項またはに記載の修飾ペプチドまたその塩。
【請求項4】
は、LeuまたはMetである、請求項1~3のいずれか一項に記載の修飾ペプチドまたその塩。
【請求項5】
は、Metである、請求項1~3のいずれか一項に記載の修飾ペプチドまたその塩。
【請求項6】
は、Trp、Met、8-ナフチルアラニン、2-キノリルアラニン、5-クロロ-Trp、または2-ベンゾチアゾリルアラニンである、請求項1~5のいずれか一項に記載の修飾ペプチドまたその塩。
【請求項7】
は、2-ベンゾチアゾリルアラニンである、請求項1~5のいずれか一項に記載の修飾ペプチドまたその塩。
【請求項8】
がGlyであり、
がPheであり、
がThrであり、
がCysであり、
がLysである、
請求項1~7のいずれか一項に記載の修飾ペプチドまたその塩。
【請求項9】
が、-COOH、ベンゾイル基、プロピオニル基またはp-フルオロフェニルアセチル基である、請求項1~8のいずれか一項に記載の修飾ペプチドまたその塩。
【請求項10】
がNHである、請求項1~9のいずれか一項に記載の修飾ペプチドまたその塩。
【請求項11】
増殖性疾患または糖尿病網膜症を処置または予防するための、請求項1~10のいずれか1項に記載の修飾ペプチドまたその塩を含む組成物。
【請求項12】
前記増殖性疾患が、子宮腺筋症、乳がん、前立腺がん、膵臓がん、胃がん、肺がん、大腸がん(結腸がん、直腸がん、肛門がん)、食道がん、十二指腸がん、頭頚部がん(舌がん、咽頭がん、喉頭がん)、脳腫瘍、神経鞘腫、神経芽腫、神経膠腫、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、肝臓がん、腎臓がん、胆管がん、子宮がん(子宮体がん、子宮頸がん)、卵巣がん、膀胱がん、皮膚がん、血管腫、悪性リンパ腫、悪性黒色腫、甲状腺がん、骨腫瘍、血管線維腫、網膜肉腫、陰茎癌、小児固形癌、カポジ肉腫、AIDSに起因するカポジ肉腫、上顎洞腫瘍、線維性組織球腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、子宮筋腫、骨芽細胞腫、骨肉腫、軟骨肉腫、がん性の中皮腫瘍、または白血病である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記増殖性疾患が、乳がん、膵臓がん、肝臓がん、悪性リンパ腫、または白血病である、請求項11に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、新規の抗エリスロポエチン受容体(以下、「EpoR」ともいう)ペプチドおよびこれを含む組成物、その使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エリスロポエチンは、赤血球の分化と増殖に関与し、他のサイトカインとは異なり血球では産生されず、腎臓または肝臓で産生され血液中に放出される。エリスロポエチンは赤血球前駆細胞のうち赤芽球バースト形成細胞(BFU-E)と赤芽球コロニー形成細胞(CFU-E)に作用し、その分化と増殖を促進し、赤血球の産生を誘導していると考えられている(Krantz S.B., Blood, Vol.77, pp419-434(1991))。エリスロポエチンが前駆細胞の細胞膜に存在するエリスロポエチン受容体と結合すると、シグナルが細胞核内に伝達され、赤血球の分化、即ちグロビンmRNAの細胞内集積、ヘモグロビンの産生、赤血球の増殖が起こるとされている(D’Andrea A.D. et al., Cell, Vol.57, pp277-285(1989))。しかし、そのメカニズムの詳細についてはまだ解明されておらず、今後解決すべき点が多い。
【0003】
エリスロポエチンが赤芽球に関する部位以外の組織でその遺伝子を発現している部位として、着床直後の胚体(Yasuda Y. et al., Develop. Growth Differ.,Vol.35, pp711-722(1993))、ヒト、サル、およびマウスの脳(Marti H.H. et al., Eur.J.NeuroSci., Vol.8, pp666-676(1996))およびマウス子宮(Yasuda Y. et al., J. Biol. Chem., Vol.273, pp25381-25387(1998))が知られている。
エリスロポエチンは、エリスロポエチン受容体に結合して作用し得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Krantz S.B., Blood, Vol.77, pp419-434 (1991)
【文献】D’Andrea A.D. et al., Cell, Vol.57, pp277-285 (1989)
【文献】Yasuda Y. et al., Develop. Growth Differ.,Vol.35, pp711-722 (1993)
【文献】Marti H.H. et al., Eur.J.NeuroSci., Vol.8, pp666-676 (1996)
【文献】Yasuda Y. et al., J. Biol. Chem., Vol.273, pp25381-25387 (1998)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下で詳細に記載される本開示のペプチドまたはその塩もしくは溶媒和物、またはそのプロドラッグを提供する。一つの実施形態では、本開示は、これらを含む組成物、製剤またはキットを提供し、別の実施形態では、本開示は、本開示のペプチドまたはその塩もしくは溶媒和物、またはそのプロドラッグの使用または使用するための方法を提供する。特定の実施形態では、本開示のペプチドまたはその塩もしくは溶媒和物、またはそのプロドラッグは、強いEpoR阻害能、高いがん細胞殺傷能、低い正常細胞殺傷能、低い投与頻度におけるがん細胞殺傷能などの薬効の改善、副作用の低減、特定の部位に対する特異的な移行能、改善された吸収・分布・代謝・排泄動態、バイオアベイラビリティーの改善、および高い安定性のうちの1つ以上の特性を有する。一つの実施形態では、本開示のペプチドまたはその塩もしくは溶媒和物、またはそのプロドラッグは、増殖性疾患、子宮腺筋症または糖尿病網膜症の治療または予防に使用され得る。
【0006】
したがって、本開示は以下を提供する。
(項目1)
CH-CO-SCHFGPLTWVCK-NHの構造を有するペプチドより改善された少なくとも1つの特性を有する、-[SCHFGPLTWVCK]-の構造を有するペプチドに基づく修飾ペプチドまたはそのプロドラッグあるいはその塩(アルファベットはアミノ酸の1文字表示を示す)。
(項目2)
式(I):
-SCH(A)(A)(A)(A)(A)(A)V(A)(A)-X
[式中、
はペプチドのアミノ末端側であり、Xはペプチドのカルボキシ末端側であり
は、-NH-CH(RA1)-CO-であり、ここで、RA1は、(結合、あるいは直鎖もしくは分枝鎖アルキレン基)-(ハロゲン原子で置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖メトキシル基、ハロゲン原子およびヒドロキシル基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよいアリール基またはヘテロアリール基)の構造を有し、
は、Ala、D-アラニンまたはGlyであり、
は、Pro、ホモプロリンまたはAlaであり、
は、Met、Leu、AlaまたはIleであり、
は、ThrまたはAlaであり、
は、-NH-CH(RA1)-CO-であり、ここで、RA1は、(結合、あるいは直鎖もしくは分枝鎖アルキレン基)-(ハロゲン原子で置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖メトキシル基、ハロゲン原子およびヒドロキシル基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよいアリール基またはヘテロアリール基)の構造を有し、
は、Cys、ホモシステインまたはペニシラミンであり、
は、Lys、Arg、または非存在であり、
ペプチド中の2つの硫黄原子はジスルフィド結合を形成していてもよく、
は、水素、1~3の任意のアミノ酸からなるペプチドまたは-C(=O)Rであり、
は、水素、1~3の任意のアミノ酸からなるペプチドまたは-NR であり、
各Rは、独立に、水素、ヒドロキシル基、Rで置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖C1~10アルキル基、Rで置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖C1~10アルケニル基、Rで置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖C1~10アルキニル基、Rで置換されていてもよい芳香族もしくは非芳香族5~10員環、-ORおよび-NR からなる群から選択されるか、同一の原子に結合した2つのRは一緒になってRで置換されていてもよい芳香族もしくは非芳香族5~10員環を形成し、
各Rは、独立に、水素、ヒドロキシル基、ハロゲン、ハロゲンもしくはヒドロキシル基で置換されていてもよいベンジル基、-CH、-CHCH、-CHCHCH、-NH、-NHCH、-N(CH、=O、-COOH、-OCH、および-OCHCHからなる群から選択される]
の構造を有するか、または
式(II):
-kcvwtl(B)Gfhcs-X
[式中、Xはペプチドのアミノ末端側であり、Xはペプチドのカルボキシ末端側であり
は、GlyまたはD-プロリンであり、k、c、v、w、t、l、G、f、h、c、およびsは、それぞれアミノ酸を示し、大文字はL体または光学異性体がないことを示し、小文字はD体を示し、
ペプチド中の2つの硫黄原子はジスルフィド結合を形成していてもよく、
は、水素、1~3の任意のアミノ酸からなるペプチドまたは-C(=O)Rであり、
は、水素、1~3の任意のアミノ酸からなるペプチドまたは-NR であり、
各Rは、独立に、水素、ヒドロキシル基、Rで置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖C1~10アルキル、Rで置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖C1~10アルケニル基、Rで置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖C1~10アルキニル、Rで置換されていてもよい芳香族もしくは非芳香族5~10員環、-ORおよび-NR からなる群から選択されるか、同一の原子に結合した2つのRは一緒になってRで置換されていてもよい芳香族もしくは非芳香族5~10員環を形成し、
各Rは、独立に、水素、ヒドロキシル基、ハロゲン、ハロゲンもしくはヒドロキシル基で置換されていてもよいベンジル基、-CH、-CHCH、-CHCHCH、-NH、-NHCH、-N(CH、=O、-COOH、-OCH、および-OCHCHからなる群から選択される]
の構造を有する、修飾ペプチドまたはそのプロドラッグあるいはその塩。
(項目3)
がGlyであること、
がPheであること、
がThrであること、
がCysであること、および
がLysであること、
の少なくとも1つの条件を満たす、
項目2に記載の修飾ペプチドまたはそのプロドラッグあるいはその塩。
(項目4)
は、Tyr、p-フルオロフェニルアラニン、またはフェネチルグリシンである、項目2または3に記載の修飾ペプチドまたはそのプロドラッグあるいはその塩。
(項目5)
は、Tyrである、項目2または3に記載の修飾ペプチドまたはそのプロドラッグあるいはその塩。
(項目6)
は、LeuまたはMetである、項目2~5のいずれか一項に記載の修飾ペプチドまたはそのプロドラッグあるいはその塩。
(項目7)
は、Metである、項目2~5のいずれか一項に記載の修飾ペプチドまたはそのプロドラッグあるいはその塩。
(項目8)
は、Trp、Met、8-ナフチルアラニン、2-キノリルアラニン、5-クロロ-Trp、または2-ベンゾチアゾリルアラニンである、項目2~7のいずれか一項に記載の修飾ペプチドまたはそのプロドラッグあるいはその塩。
(項目9)
は、2-ベンゾチアゾリルアラニンである、項目2~7のいずれか一項に記載の修飾ペプチドまたはそのプロドラッグあるいはその塩。
(項目10)
がGlyであり、
がPheであり、
がThrであり、
がCysであり、
がLysである、
項目2~9のいずれか一項に記載の修飾ペプチドまたはそのプロドラッグあるいはその塩。
(項目11)
が、-COOH、ベンゾイル基、プロピオニル基またはp-フルオロフェニルアセチル基である、項目2~10のいずれか一項に記載の修飾ペプチドまたはそのプロドラッグあるいはその塩。
(項目12)
がNHである、項目2~11のいずれか一項に記載の修飾ペプチドまたはそのプロドラッグあるいはその塩。
(項目13)
増殖性疾患(例えば、子宮腺筋症)または糖尿病網膜症を処置または予防するための、項目1~12のいずれか1項に記載の修飾ペプチドまたはそのプロドラッグあるいはその塩を含む組成物。
(項目14)
前記増殖性疾患が、子宮腺筋症、乳がん、前立腺がん、膵臓がん、胃がん、肺がん、大腸がん(結腸がん、直腸がん、肛門がん)、食道がん、十二指腸がん、頭頚部がん(舌がん、咽頭がん、喉頭がん)、脳腫瘍、神経鞘腫、神経芽腫、神経膠腫、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、肝臓がん、腎臓がん、胆管がん、子宮がん(子宮体がん、子宮頸がん)、卵巣がん、膀胱がん、皮膚がん、血管腫、悪性リンパ腫、悪性黒色腫、甲状腺がん、骨腫瘍、血管線維腫、網膜肉腫、陰茎癌、小児固形癌、カポジ肉腫、AIDSに起因するカポジ肉腫、上顎洞腫瘍、線維性組織球腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、子宮筋腫、骨芽細胞腫、骨肉腫、軟骨肉腫、がん性の中皮腫瘍、または白血病である、項目13に記載の組成物。
(項目15)
前記増殖性疾患が、乳がん、膵臓がん、肝臓がん、悪性リンパ腫、または白血病である、項目13に記載の組成物。
(項目16)
増殖性疾患(例えば、子宮腺筋症)または糖尿病網膜症を処置または予防するための、項目1~12のいずれか1項に記載の修飾ペプチドまたはそのプロドラッグあるいはその塩。
(項目17)
前記増殖性疾患が、子宮腺筋症、乳がん、前立腺がん、膵臓がん、胃がん、肺がん、大腸がん(結腸がん、直腸がん、肛門がん)、食道がん、十二指腸がん、頭頚部がん(舌がん、咽頭がん、喉頭がん)、脳腫瘍、神経鞘腫、神経芽腫、神経膠腫、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、肝臓がん、腎臓がん、胆管がん、子宮がん(子宮体がん、子宮頸がん)、卵巣がん、膀胱がん、皮膚がん、血管腫、悪性リンパ腫、悪性黒色腫、甲状腺がん、骨腫瘍、血管線維腫、網膜肉腫、陰茎癌、小児固形癌、カポジ肉腫、AIDSに起因するカポジ肉腫、上顎洞腫瘍、線維性組織球腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、子宮筋腫、骨芽細胞腫、骨肉腫、軟骨肉腫、がん性の中皮腫瘍、または白血病である、項目16に記載の修飾ペプチドまたはそのプロドラッグあるいはその塩。
(項目18)
前記増殖性疾患が、乳がん、膵臓がん、肝臓がん、悪性リンパ腫、または白血病である、項目16に記載の修飾ペプチドまたはそのプロドラッグあるいはその塩。
(項目19)
被験体における増殖性疾患(例えば、子宮腺筋症)または糖尿病網膜症を処置または予防するための方法であって、項目1~12のいずれか1項に記載の修飾ペプチドまたはそのプロドラッグあるいはその塩の有効量を該被験体に投与する工程を含む、方法。
(項目20)
前記増殖性疾患が、子宮腺筋症、乳がん、前立腺がん、膵臓がん、胃がん、肺がん、大腸がん(結腸がん、直腸がん、肛門がん)、食道がん、十二指腸がん、頭頚部がん(舌がん、咽頭がん、喉頭がん)、脳腫瘍、神経鞘腫、神経芽腫、神経膠腫、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、肝臓がん、腎臓がん、胆管がん、子宮がん(子宮体がん、子宮頸がん)、卵巣がん、膀胱がん、皮膚がん、血管腫、悪性リンパ腫、悪性黒色腫、甲状腺がん、骨腫瘍、血管線維腫、網膜肉腫、陰茎癌、小児固形癌、カポジ肉腫、AIDSに起因するカポジ肉腫、上顎洞腫瘍、線維性組織球腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、子宮筋腫、骨芽細胞腫、骨肉腫、軟骨肉腫、がん性の中皮腫瘍、または白血病である、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記増殖性疾患が、乳がん、膵臓がん、肝臓がん、悪性リンパ腫、または白血病である、項目19に記載の方法。
(項目22)
増殖性疾患(例えば、子宮腺筋症)または糖尿病網膜症を処置または予防するための医薬の製造における、項目1~12のいずれか1項に記載の修飾ペプチドまたはそのプロドラッグあるいはその塩の使用。
(項目23)
前記増殖性疾患が、子宮腺筋症、乳がん、前立腺がん、膵臓がん、胃がん、肺がん、大腸がん(結腸がん、直腸がん、肛門がん)、食道がん、十二指腸がん、頭頚部がん(舌がん、咽頭がん、喉頭がん)、脳腫瘍、神経鞘腫、神経芽腫、神経膠腫、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、肝臓がん、腎臓がん、胆管がん、子宮がん(子宮体がん、子宮頸がん)、卵巣がん、膀胱がん、皮膚がん、血管腫、悪性リンパ腫、悪性黒色腫、甲状腺がん、骨腫瘍、血管線維腫、網膜肉腫、陰茎癌、小児固形癌、カポジ肉腫、AIDSに起因するカポジ肉腫、上顎洞腫瘍、線維性組織球腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、子宮筋腫、骨芽細胞腫、骨肉腫、軟骨肉腫、がん性の中皮腫瘍、または白血病である、項目22に記載の使用。
(項目24)
前記増殖性疾患が、乳がん、膵臓がん、肝臓がん、悪性リンパ腫、または白血病である、項目22に記載の使用。
【0007】
本開示において、上記の1つまたは複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供され得ることが意図される。本開示のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
【発明の効果】
【0008】
本開示のペプチドは、強いEpoR阻害能、高いがん細胞殺傷能、低い正常細胞殺傷能、低い投与頻度におけるがん細胞殺傷能などの薬効の改善、副作用の低減、特定の部位に対する特異的な移行能、改善された吸収・分布・代謝・排泄動態、バイオアベイラビリティーの改善、および高い安定性のうちの1つ以上の有利な特性を有し得る。このような特性を有するペプチドを提供することによって、例えば、増殖性疾患、子宮腺筋症または糖尿病網膜症が治療または予防され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】合成ペプチド:(ベンゾイル)-SCHFGPLTWVCK-NH(GT-11255)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図2】合成ペプチド:(p-フルオロフェニルアセチル)-SCHFGPLTWVCK-NH(GT-11256)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図3】合成ペプチド:(プロピオニル)-SCHFGPLTWVCK-NH(GT-11257)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図4】合成ペプチド:Ac-SCH(p-フルオロ-Phe)GPLTWVCK-NH(GT-11258)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図5】合成ペプチド:Ac-SCH(p-クロロ-Phe)GPLTWVCK-NH(GT-11259)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図6】合成ペプチド:Ac-SCH(m-クロロ-Phe)GPLTWVCK-NH(GT-11260)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図7】合成ペプチド:Ac-SCHYGPLTWVCK-NH(GT-11261)(配列番号10)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図8】合成ペプチド:Ac-SCH(フェニルグリシン)GPLTWVCK-NH(GT-11262)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図9】合成ペプチド:Ac-SCH(フェネチルグリシン)GPLTWVCK-NH(GT-11263)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図10】合成ペプチド:Ac-SCHFAPLTWVCK-NH(GT-11264)(配列番号11)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図11】合成ペプチド:Ac-SCHFaPLTWVCK-NH(GT-11265)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図12】合成ペプチド:Ac-SCHFGALTWVCK-NH(GT-11266)(配列番号12)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図13】合成ペプチド:Ac-SCHFG(ホモプロリン)LTWVCK-NH(GT-11267)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図14】合成ペプチド:Ac-SCHFGPATWVCK-NH(GT-11268)(配列番号13)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図15】合成ペプチド:Ac-SCHFGPMTWVCK-NH(GT-11269)(配列番号14)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図16】合成ペプチド:Ac-SCHFGPLTMVCK-NH(GT-11270)(配列番号15)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図17】合成ペプチド:Ac-SCHFGPLT(β-ホモトリプトファン)VCK-NH(GT-11271)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図18】合成ペプチド:Ac-SCHFGPLT(α-ナフチルアラニン)VCK-NH(GT-11272)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図19】合成ペプチド:Ac-SCHFGPLT(β-ナフチルアラニン)VCK-NH(GT-11273)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図20】合成ペプチド:Ac-SCHFGPLT(8-キノリルアラニン)VCK-NH(GT-11274)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図21】合成ペプチド:Ac-SCHFGPLT(6-クロロ-Trp)VCK-NH(GT-11275)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図22】合成ペプチド:Ac-SCHFGPLT(5-クロロ-Trp)VCK-NH(GT-11276)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図23】合成ペプチド:Ac-SCHFGPLTWV(ホモシステイン)K-NH(GT-11277)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図24】合成ペプチド:Ac-SCHFGPLTWV(ペニシラミン)K-NH(GT-11278)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図25】合成ペプチド:Ac-kcvwtlpGfhcs-NH(GT-11279)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図26】合成ペプチド:Ac-kcvwtlGGfhcs-NH(GT-11280)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図27】合成ペプチド:Ac-SCH(3,4-ジフルオロ-Phe)GPLT(8-キノリルアラニン)VCK-NH(GT-11303)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図28】合成ペプチド:Ac-SCH(3,4-ジフルオロ-Phe)GPLT(2-キノリルアラニン)VCK-NH(GT-11304)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図29】合成ペプチド:Ac-SCH(3,4-ジフルオロ-Phe)GPLT(2-ベンゾチアゾリルアラニン)VCK-NH(GT-11305)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図30】合成ペプチド:Ac-SCH(p-フルオロ-Phe)GPLT(2-キノリルアラニン)VCK-NH(GT-11306)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図31】合成ペプチド:Ac-SCH(p-フルオロ-Phe)GPLT(2-ベンゾチアゾリルアラニン)VCK-NH(GT-11307)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図32】合成ペプチド:Ac-SCHYGPLT(2-キノリルアラニン)VCK-NH(GT-11308)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図33】合成ペプチド:Ac-SCHYGPLT(2-ベンゾチアゾリルアラニン)VCK-NH(GT-1309)の質量分析の結果を示す。上段はESI-MS測定値からのデコンボリューション値を示し、下段はESI-MS測定値を示す。
図34】実施例2における各ペプチドの120μMの濃度におけるヒト肝臓がん由来HepG2細胞殺傷効果を示す。横軸は、それぞれ、YS12、GT-11268、GT-11261、GT-11274、GT-11259、GT-11260、GT-11280、GT-11303、GT-11304、GT-11305、GT-11306、GT-11307、GT-11308、GT-11309、PBS(-)処置および無処置を示す。縦軸は、1mmの区画内で観察された死細胞の数の平均および標準偏差(n=3の場合)を示す。
図35】実施例2における各ペプチドの60μMの濃度におけるヒト肝臓がん由来HepG2細胞殺傷効果を示す。横軸は、それぞれ、YS12、GT-11268、GT-11261、GT-11274、GT-11259、GT-11260、GT-11280、GT-11303、GT-11304、GT-11305、GT-11306、GT-11307、GT-11308、GT-11309、PBS(-)処置および無処置を示す。縦軸は、1mmの区画内で観察された死細胞の数の平均および標準偏差(n=3の場合)を示す。
図36】実施例2における各ペプチドの30μMの濃度におけるヒト肝臓がん由来HepG2細胞殺傷効果を示す。横軸は、それぞれ、YS12、GT-11268、GT-11261、GT-11274、GT-11259、GT-11260、GT-11280、GT-11303、GT-11304、GT-11305、GT-11306、GT-11307、GT-11308、GT-11309、PBS(-)処置および無処置を示す。縦軸は、1mmの区画内で観察された死細胞の数の平均および標準偏差(n=3の場合)を示す。
図37】実施例2における各ペプチドの15μMの濃度におけるヒト肝臓がん由来HepG2細胞殺傷効果を示す。横軸は、それぞれ、YS12、GT-11268、GT-11261、GT-11274、GT-11259、GT-11260、GT-11280、GT-11303、GT-11304、GT-11305、GT-11306、GT-11307、GT-11308、GT-11309、PBS(-)処置および無処置を示す。縦軸は、1mmの区画内で観察された死細胞の数の平均および標準偏差(n=3の場合)を示す。
図38】種々の合成ペプチドのヒト膵臓がん由来AsPC-1細胞増殖に対する影響をWST法によって評価した結果を示す。縦軸は、コントロール(被験化合物を含まないウェル)に対する各被験化合物の阻害率を示す。横軸は、試験した薬剤を示す。結果は、3つのウェルの平均±標準誤差で示す。
図39】種々の合成ペプチドのヒト白血病由来ATL-2細胞増殖に対する影響をWST法によって評価した結果を示す。縦軸は、コントロール(被験化合物を含まないウェル)に対する各被験化合物の阻害率を示す。横軸は、試験した薬剤を示す。結果は、3つのウェルの平均±標準誤差で示す。
図40】種々の合成ペプチドのヒト膵臓がん由来AsPC-1担がんマウスに対する影響を評価した結果を示す。各パネルにおいて、縦軸は、試験開始時の腫瘍体積を100%とした場合の各時点における相対腫瘍体積を示し、横軸は、投与開始日からの経過日数を示す。対照は、生理食塩水投与である。結果は、マウス3~5匹の平均±標準誤差で示す。
図41】各化合物のCFU-E形成に対する影響を評価した結果を示す。縦軸は、形成されたCFU-E数を示し、横軸は、それぞれ、(-)Epo:Epo添加なし、Control:Epoのみ添加、GT-11269:Epo+GT-11269(100μM)添加、GT-11309:Epo+GT-11309(100μM)添加を示す。結果は、2つのウェル(10箇所/ウェル)から計測して作成した箱ひげ図で示す。
図42】GT-11309のEpo依存性がん細胞増殖に対する影響をWST法によって評価した結果を示す。左のパネルは、0~10U/mLのEpo存在下におけるヒト白血病由来UT-7細胞の増殖性を示し、縦軸は、450nmにおける吸光度を示す。右のパネルは、1U/mLのEpo存在下における抗Epo抗体(クローンR6)、抗EpoR抗体(クローン713210)もしくはGT-11309(各抗体は1~100μg/mL、GT-11309は10~100μM)の添加によるUT-7細胞増殖に対する阻害率を示す。横軸は、試験した薬剤を示す。結果は、3つのウェルの平均±標準偏差で示す。
図43】GT-11269、GT-11309およびGT-11350のヒト膵臓がん由来AsPC-1細胞増殖に対する影響をWST法によって評価した結果を示す。縦軸は、コントロール(被験化合物を含まないウェル)に対する各被験化合物の阻害率を示す。横軸は、試験した薬剤およびその濃度(μM)を示す。結果は、3つのウェルの平均±標準誤差で示す。
図44】GT-11350のヒト乳がん細胞増殖に対する影響をATP量を指標に評価した結果を示す。それぞれのパネルはHCC1395(左)およびHCC1806(右)の結果を示す。各パネルにおいて、縦軸は、コントロール(被験化合物を含まないウェル)に対する各濃度における阻害率を示し、横軸は、試験した濃度(μM)を示す。結果は、3つのウェルの平均±標準誤差で示す。
図45】合成ペプチドのヒト膵臓がん由来AsPC-1担がんマウスに対する影響を評価した結果を示す。上のパネルにおいて、縦軸は、試験開始時の腫瘍体積を100%とした場合の各時点における相対腫瘍体積を示し、横軸は、投与開始日からの経過日数を示す。下のパネルにおいて、縦軸は、各時点における体重を示し、横軸は、投与開始日からの経過日数を示す。対照は、生理食塩水投与である。結果は、マウス4~5匹の平均±標準誤差で示す。
図46】合成ペプチドのヒト膵臓がん由来AsPC-1担がんマウスに対する影響を評価した結果を示す。縦軸は、腫瘍組織体積あたりのFVIII陽性細胞数を細胞サイズに分けて示し、横軸は、それぞれ、φ(細胞径)>50μm(large)、50μm>φ>10μm(medium)、10μm>φ(capillary)の細胞サイズを示す。結果は、マウス3~4匹の平均±標準誤差で示す。
図47】合成ペプチドのヒト膵臓がん由来AsPC-1担がんマウスに対する影響を評価した結果を示す。縦軸は、ヘマトクリット値(上パネル)および血中ヘモグロビン濃度(下パネル)を示し、横軸は、被験化合物を示す。結果は、マウス3~5匹の平均±標準誤差で示す。
図48】GT-11350のCFU-E形成に対する影響を評価した結果を示す。縦軸は、形成されたCFU-E数を示し、横軸は、被験化合物を示す。結果は、2つのウェル(10箇所/ウェル)から計測して作成した箱ひげ図で示す。
図49】各用量(0.1mg、0.2mgおよび0.4mg/日)のGT-11350のヒト膵臓がん由来AsPC-1担がんマウスに対する影響を評価した結果を示す。上のパネルにおいて、縦軸は、試験開始時の腫瘍体積を100%とした場合の各時点における相対腫瘍体積を示し、横軸は、投与開始日からの経過日数を示す。下のパネルにおいて、縦軸は、各時点における体重を示し、横軸は、投与開始日からの経過日数を示す。対照は、生理食塩水投与である。結果は、マウス6匹の平均±標準誤差で示す。
図50】GT-11350のヒト膵臓がん由来AsPC-1担がんマウスに対する影響を評価した結果を示す。縦軸は、ヘマトクリット値(上パネル)および血中ヘモグロビン濃度(下パネル)を示し、横軸は、被験化合物を示す。結果は、マウス6匹の平均±標準誤差で示す。
図51】1日3回および1日1回のGT-11350のヒト膵臓がん由来AsPC-1担がんマウスに対する影響を評価した結果を示す。上のパネルにおいて、縦軸は、試験開始時の腫瘍体積を100%とした場合の各時点における相対腫瘍体積を示し、横軸は、投与開始日からの経過日数を示す。下のパネルにおいて、縦軸は、各時点における体重を示し、横軸は、投与開始日からの経過日数を示す。対照は、生理食塩水投与である。結果は、マウス6匹の平均±標準誤差で示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0011】
(定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義および/または基本的技術内容を適宜説明する。
【0012】
本明細書において「ペプチド」とは、当該技術分野における通常の意味で使用され、複数のアミノ酸がペプチド結合によって連結された重合体およびその修飾体である化合物を指す。本明細書においてペプチドの配列を記載する場合、特に断らない限り、N末端(アミノ末端)を左に、C末端(カルボキシ末端)を右に配置する。例えば、AGTCI(アラニン-グリシン-トレオニン-システイン-イソロイシン)の配列で表されるペプチドにおいて、アラニンのアミノ基は遊離の状態であり、アラニンのカルボキシル基はグリシンのアミノ基とペプチド結合を形成しており、イソロイシンのアミノ基はシステインのカルボキシル基とペプチド結合を形成しており、イソロイシンのカルボキシル基は遊離の状態である。ペプチドの配列の末端に化学基が存在する場合、ペプチド配列の末端アミノ酸のアミノ基またはカルボキシル基とその化学基が結合を形成していることを示し、例えば、CH-CO-SCHFGPLTWVCK-NHの構造において、N末端のセリンのアミノ基はCH-CO-基と結合を形成しており、C末端のリジンのカルボキシル基は-NH基と結合を形成している。修飾としては、例えばアセチル化、アルキル(例えば、メチル)化、ハロゲン(例えば、フルオロ、クロロ)置換アルキル(例えば、フルオロメチル)化、アルコキシル(例えば、メトキシル)化、ヒロドキシル化、ハロゲン化、ベンゾチアゾリル化、二環(例えば、ナフチル)化およびヘテロ環化(例えば、キノリル化)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
本明細書において「エリスロポエチン」とは、当該技術分野における通常の意味で使用され、赤血球系幹細胞(前駆細胞)に作用して分化誘導を刺激し、赤血球産生を促進する分子量34,000~46,000の糖蛋白ホルモンを指す。本明細書においてエリスロポエチンは、EPOまたはEpoとも表記され得る。
【0014】
本明細書において「エリスロポエチン受容体」とは、当該技術分野における通常の意味で使用され、エリスロポエチンが結合する受容体を指し、赤血球の他に、骨髄細胞、白血球、末梢・中枢神経上で発現され、EPOが赤血球上のエリスロポエチン受容体に結合すると、ヤヌスキナーゼ2(JAK2)を活性化する。本明細書においてエリスロポエチン受容体は、EpoRとも表記され得る。
【0015】
本明細書において、単独または別の基の一部としての「アルキル基」は、炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖飽和ヒドロカルビル基を指す。アルキル基は、代表的には、1~10個の炭素原子を有し得、いくつかの実施形態において、1~8個の炭素原子、1~6個の炭素原子、1~4個の炭素原子、または1~3個の炭素原子を有し得る。C1~3アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、およびイソプロピル基が挙げられる。C1~4アルキル基の例としては、前述のC1~3アルキル基、ならびにブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、およびtert-ブチル基が挙げられる。C1~6アルキル基の例としては、前述のC1~4アルキル基、ならびにペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。アルキル基の追加の例としては、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。
【0016】
本明細書において使用される場合、「アルキレン基」は、「アルキル基」からさらに水素を1個取ることにより生じる2価基である。アルキレン基の具体例としては、-CH-、-CHCH-、-(CH-、-CHCH(CH)-、-(CH-、-CHCHCH(CH)-、-CHCH(CH)CH-、-(CH-、-CHCHCHCH(CH)-、-CHCHCH(CH)CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、および-(CH10-などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
本明細書において、単独または別の基の一部としての「アルケニル基」は、炭素原子および1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する直鎖もしくは分枝鎖ヒドロカルビル基を指す。アルケニル基は、代表的には、2~10個の炭素原子を有し得、いくつかの実施形態において、2~8個の炭素原子、2~6個の炭素原子または2~4個の炭素原子を有し得る。1つ以上の炭素-炭素二重結合は、内部(例えば、2-ブテニルにおける二重結合)であっても、末端(例えば、1-ブテニルにおける二重結合)であってもよい。C2~4アルケニル基の例としては、エテニル基(ビニル基)、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、ブタジエニル基等が挙げられる。C2~6アルケニル基の例としては、前述のC2~4アルケニル基、ならびにペンテニル基、ペンタジエニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。アルケニル基の追加の例としては、ヘプテニル基、オクテニル基、オクタトリエニル基等が挙げられる。
【0018】
本明細書において使用される場合、「アルケニレン基」は、「アルケニル基」からさらに水素を1個取ることにより生じる2価基である。アルケニレン基の具体例としては、-CH=CH-、-CH=CH-CH-、-CH=CH-(CH-、-CH-CH=CH-CH-、-CH=C(CH)-CH-、-CH=CH-CH=CH-、-CH=CH-(CH-、-CH=CH-CH=CH-CH-、-CH=CH-(CH-、-CH=CH-(CH-、-CH=CH-(CH-、-CH=CH-(CH-、および-CH=CH-(CH-などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書において使用される場合、「アルコキシル基」は、-O-アルキルの一価基である。アルコキシル基の好ましい例としては、C1~6アルコキシル基(即ち、C1~6アルキル-O-)、C1~4アルコキシル基(即ち、C1~4アルキル-O-)等が挙げられる。C1~4アルコキシル基の具体例としては、メトキシル基(CHO-)、エトキシル基(CHCHO-)、n-プロポキシル基(CH(CHO-)、イソプロポキシル基((CHCHO-)、n-ブトキシル基(CH(CHO-)、イソブトキシル基((CHCHCHO-)、tert-ブトキシル基((CHCO-)、sec-ブトキシル基(CHCHCH(CH)O-)等が挙げられる。C1~6アルコキシル基の具体例としては、C1~4アルコキシル基、n-ペンチルオキシル基(CH(CHO-)、イソペンチルオキシル基((CHCHCHCHO-)、ネオペンチルオキシル基((CHCCHO-)、tert-ペンチルオキシル基(CHCHC(CHO-)、1,2-ジメチルプロポキシル基(CHCH(CH)CH(CH)O-)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
本明細書で使用される場合、「脂肪族基」は、アルキル基、アルケニル基、およびアルキニル基を指し、環状炭化水素基は含まない。
【0021】
本明細書で使用される場合、「ヘテロ脂肪族基」は、脂肪族基中の一部がヘテロ原子(例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子など)に置き換わった基を指す。
【0022】
本明細書で使用される場合、用語「アリール基」は、環の少なくとも1つが芳香族であり、全ての環原子が炭素である、単一芳香環または縮合多環系を指す。例えば、アリール基は、6~26個の炭素原子(6~26員)、6~20個の炭素原子(6~20員)、6~14個の炭素原子(6~14員)、または6~12個の炭素原子(6~12員)を有することができる。アリール基は、フェニル基を含む。またアリール基は、少なくとも1つの環が芳香族であり、他の環は芳香族であっても芳香族でなくてもよい、8~20個の炭素原子を有する縮合多環系(例えば、2、3または4つの環を含む環系)を含む。このような縮合多環系は、縮合多環系の任意の炭素環部分において、1つまたは複数(例えば、1、2または3つ)のオキソ基により任意選択で置換されていてもよい。縮合多環系の環は、価数の要件が許す場合、縮合、スピロおよび架橋結合を介して互いに接続され得る。典型的なアリール基として、フェニル基、インデニル基、ナフチル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル基、アントリル基、ピレニル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
本明細書中で使用される場合、用語「ヘテロアリール基」は、環中に少なくとも1個のヘテロ原子を有する、単一芳香環または縮合多環系を指し、そのヘテロ原子は、酸素、窒素および硫黄からなる群から選択される。ヘテロアリール基は、代表的には、5~26員であり得、いくつかの実施形態において、5~20員、5~14員、5~12員、または5~10員であり得る。ヘテロアリール基は、環中に約1~6個の炭素原子、ならびに酸素、窒素および硫黄からなる群から選択される約1~4個のヘテロ原子を有する単一芳香環を含む。このような環として、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、オキサゾリル基、フリル基等が挙げられるが、これらに限定されない。硫黄および窒素原子はまた、環が芳香族であるならば、酸化形態で存在することができる。ヘテロアリール基はまた、先に定義のヘテロアリール基が、ヘテロアリール(例えばナフチリジニル、例えば1,8-ナフチリジニルを形成する)、複素環(例えば1,2,3,4-テトラヒドロナフチリジニル、例えば1,2,3,4-テトラヒドロ-1,8-ナフチリジニルを形成する)、炭素環(例えば5,6,7,8-テトラヒドロキノリルを形成する)およびアリール(例えばインダゾリルを形成する)から選択される1つまたは複数の環と縮合して、縮合多環系を形成することができる、縮合多環系(例えば、2、3または4つの環を含む環系)を含む。いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基(単一芳香環または縮合多環系)は、ヘテロアリール環中に約1~20個の炭素原子および約1~6個のヘテロ原子を有する。このような縮合多環系は、縮合環の炭素環または複素環部分において、1つまたは複数(例えば、1、2、3または4つ)のオキソ基により置換されていてもよい。縮合多環系の環は、価数の要件が許す場合、縮合、スピロおよび架橋結合を介して互いに結合され得る。縮合多環系の個々の環は、互いに対して任意の順序で結合され得ることを理解されたい。上記縮合多環系の結合点は、縮合多環系のヘテロアリール、複素環、アリールまたは炭素環部分を含めた縮合多環系の任意の位置、ならびに炭素原子およびヘテロ原子(例えば、窒素)を含めた縮合多環系の任意の適切な原子に存在し得ることも理解されたい。例示的なヘテロアリール基として、キノリル基、ベンゾチアゾリル基、ピリジル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラゾリル基、チエニル基、インドリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、フリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、イソキノリル基、ベンゾオキサゾリル基、インダゾリル基、キノキサリル基、キナゾリル基、5,6,7,8-テトラヒドロイソキノリニルベンゾフラニル基、ベンゾイミダゾリル基、チアナフテニル基、ピロロ[2,3-b]ピリジニル基、キナゾリニル-4(3H)-オン基、トリアゾリル基、4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-インダゾール基および3b,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-シクロプロパ[3,4]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
別途指定がない限り、本明細書において使用される場合、単独または別の基の一部としての「ハロ」または「ハロゲン」は、フッ素(フルオロ)、塩素(クロロ)、臭素(ブロモ)、またはヨウ素(ヨード)を指す。
【0025】
別途指定がない限り、本明細書において使用される場合、単独または別の基の一部としての「ハロアルキル基」は、水素原子のうちの1つ以上がそれぞれ独立してハロで置換されているアルキル基を指す。ハロアルキル基の例としては、-CCl、-CFCl、-CFCl、-CClCCl、-CHF、-CHF、-CHCl、-CHBr、-CH(Cl)CHBr、-CHCH(F)CHCl等が挙げられる。「ハロアルケニル基」、「ハロアルキニル基」および「ハロ脂肪族基」なども、前述の「ハロアルキル基」と同様に定義される。
【0026】
本明細書において使用される場合、単独または別の基の一部としての「炭素環」または「炭素環式基」とは、完全に飽和しているかまたは1つ以上の不飽和単位を含むが、芳香族ではない単環式、二環式、三環式またはそれを超える多環式の炭化水素基を指す。一つの実施形態において、炭素環式基は、単環式のC3~9炭化水素基、二環式のC8~12炭化水素基、または三環式のC10~16炭化水素基であり得る。上記炭素環式基における任意の個別の環は、3~7個の環原子を有し得る。炭素環式基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基などのシクロアルキル基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基、シクロノネニル基などのシクロアルケニル基およびシクロプロピニル基、シクロブチニル基、シクロペンチニル基、シクロヘキシニル基、シクロヘプチニル基、シクロオクチニル基、シクロノニル基などのシクロアルキニル基、ならびに、アダマンチル基などが挙げられるが、これらに限定されない。炭素環式基においては、可能である場合、いずれの環原子が分子の残りの部分と結合してもよい。
【0027】
本明細書中で使用される場合、単独または別の基の一部としての「複素環」、「複素環基」または「複素環式基」は、その環系における少なくとも1つの環が、同じかまたは異なる1つ以上のヘテロ原子を含み、完全に飽和しているかまたは1つ以上の不飽和単位を含むが芳香族ではない、単環式、二環式、三環式またはそれを超える多環式の環系を指す。いくつかの実施形態において、「複素環」または「複素環式基」は、3~14個の環原子を有し、ここで、1つ以上の環原子は、酸素、硫黄、窒素またはリンから独立して選択されるヘテロ原子であり、その環系における各環は、3~8個の環原子を含む。
【0028】
複素環式基の例としては、2-テトラヒドロフラニル基、3-テトラヒドロフラニル基、2-テトラヒドロチオフェニル基、3-テトラヒドロチオフェニル基、2-モルホリノ基、3-モルホリノ基、4-モルホリノ基、2-チオモルホリノ基、3-チオモルホリノ基、4-チオモルホリノ基、1-ピロリジニル基、2-ピロリジニル基、3-ピロリジニル基、1-テトラヒドロピペラジニル基、2-テトラヒドロピペラジニル基、3-テトラヒドロピペラジニル基、1-ピペリジニル基、2-ピペリジニル基、3-ピペリジニル基、1-ピラゾリニル基、3-ピラゾリニル基、4-ピラゾリニル基、5-ピラゾリニル基、1-ピペリジニル基、2-ピペリジニル基、3-ピペリジニル基、4-ピペリジニル基、2-チアゾリジニル基、3-チアゾリジニル基、4-チアゾリジニル基、1-イミダゾリジニル基、2-イミダゾリジニル基、4-イミダゾリジニル基、5-イミダゾリジニル基などの単環、ならびに3-1H-ベンゾイミダゾール-2-オン基、3-(1-アルキル)-ベンゾイミダゾール-2-オン基、インドリニル基、テトラヒドロキノリニル基、テトラヒドロイソキノリニル基、ベンゾチオラン基、ベンゾジチアン基および1,3-ジヒドロ-イミダゾール-2-オン基などの二環が挙げられるが、これらに限定されない。複素環式基においては、可能である場合、いずれの環原子が分子の残りの部分と結合してもよい。
【0029】
本明細書中で使用される場合、用語「不飽和」は、ある部分が、1つ以上の不飽和単位を有することを意味する。
【0030】
「ヘテロ脂肪族基」、「複素環」、「複素環式基」、「ヘテロアリール基」、および「アリーレン基」が置換されている場合、置換可能であるならば、ヘテロ原子上に置換基を有していてもよい。
【0031】
ある基が「置換されている」場合、その基は、少なくとも一つの水素が水素以外の基(置換基)で置き換えられており、その置換基の数は、置換可能であれば特に制限はなく、1または複数である。また、特に指示した場合を除き、各々の基の説明はその基が他の基の一部分または置換基である場合にも該当する。なお、例えば、C1~6アルキル基がある置換基で置換されている場合、その置換基の炭素の数は、そのアルキル基の炭素の数に含めない。他の基でも同様である。
【0032】
本明細書において「アミノ酸」とは、当該技術分野における通常の意味で使用され、カルボキシル基およびアミノ基を一つの分子内に有する化合物を指す。代表的には、アミノ酸は、αアミノ酸であるが、本明細書では、βアミノ酸およびγアミノ酸などのカルボキシル基とアミノ基との距離がより離れたアミノ酸であってもよい。さらに、本明細書において、特段示さなければ、アミン酸は、L体の光学異性体を示し、D体である場合には、最初にD(もしくは、d)を付す(例えば、D-Ala(もしくは、d-Ala))か、または小文字のアルファベット(例えば、a)で示す。以下にアミノ酸の代表的な例を示すが、その他のアミノ酸も本明細書において企図される。
【表1】
【0033】
上記表1に記載されるもの以外の例示的アミノ酸として、ホモプロリン、フェニルグリシン、フェネチルグリシン、α-ナフチルアラニン、β-ナフチルアラニン、β-ホモトリプトファン、キノリルアラニン、ホモシステイン、ペニシラミン、サルコシン、オルニチン、シトルリン、ヒドロキシプロリン、ならびに上記天然型アミノ酸の修飾体(修飾アミノ酸)、および非天然型アミノ酸の修飾体(修飾アミノ酸)が挙げられるが、これらに限定されない。
【表2】
【0034】
さらなるアミノ酸として、以下の修飾アミノ酸も挙げられる。
・NH-CH(R’)-COOH[式中、R’は、(結合、あるいは直鎖もしくは分枝鎖アルキレン基またはアルケニレン基(例えば、C1~5))-(ハロゲン原子で置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖アルキル基(例えば、C1~3)、ハロゲン原子で置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖メトキシル基(例えば、C1~3)、ハロゲン原子およびヒドロキシル基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよいアリール基またはヘテロアリール基(例えば、5~18員環、および/または単環、二環もしくは三環式))の構造を有する]
・NH-CH(R’)-COOH[式中、R’は、-(直鎖もしくは分枝鎖アルキル基またはアルケニル基(例えば、C1~5))である]

【化1】

[式中、R’は、直鎖もしくは分枝鎖アルキレン基またはアルケニレン基(例えば、C3~8)である]
・NH-CH(R’)-COOH[式中、R’は、-(直鎖もしくは分枝鎖アルキル基またはアルケニル基(例えば、C1~8))であり、ここで、前記アルキル基またはアルケニル基中のいずれか1つの炭素原子は硫黄原子で置き換えられていてもよく、さらに-SHを有してもよい]
・NH-CH(R’)-COOH[式中、R’は、-(直鎖もしくは分枝鎖アルキル基またはアルケニル基(例えば、C1~10))であり、ここで、任意の1、2または3つの炭素原子は窒素原子で置き換えられていてもよい]
【0035】
本明細書において「保存的置換」とは、ペプチドにおけるアミノ酸を別の性質の類似したアミノ酸に置き換えることを指し、ペプチドの性質は保存的置換の前後で類似であることが予測され得る。
【0036】
一つの実施形態において、保存的置換は、以下のアミノ酸の群におけるアミノ酸を同じ群内のアミノ酸で置き換えることである。
・群1:グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン
・群2:セリンおよびトレオニン
・群3:フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンおよびホモトリプトファン、フェニルグリシン、フェネチルグリシン、ベンゾチアゾリルアラニン、α-ナフチルアラニン、β-ナフチルアラニン、キノリルアラニン、ピリジルアラニン、ベンゾピラゾリルアラニン、およびその芳香環上の1つまたは2つの水素原子がメチル基、メトキシル基、ヒドロキシル基もしくはハロゲン原子で置き換えられたアミノ酸
・群4:リジン、アルギニン、ヒスチジンおよびオルニチン
・群5:システイン、メチオニン、ホモシステインおよびペニシラミン
・群6:プロリンおよびホモプロリン
・群7:グルタミン酸およびアスパラギン酸
・群8:グルタミンおよびアスパラギン
【0037】
一つの実施形態において、保存的置換は、元のアミノ酸に含まれるいずれか1つの-CH-部分の除去、アミノ酸のいずれか1つの部分に対する-CH-または-CH部分の付加、元のアミノ酸のいずれか1つの水素原子のアルキル基(例えば、メチル基)、アルコキシル基(例えば、メトキシル基)、ヒドロキシル基もしくはハロゲン原子による置換、または元のアミノ酸中の芳香環のいずれかの位置における炭素原子1つの除去または付加による環の縮小または拡大のうちのいずれかの修飾を含むアミノ酸により置き換えることである。
【0038】
保存的置換を含む本開示のペプチドまたはその塩もしくは溶媒和物、またはそのプロドラッグにおいても、EpoR阻害能、がん細胞殺傷能、正常細胞殺傷能の低減、低い投与頻度におけるがん細胞殺傷能などの薬効、副作用、特定の部位に対する移行能、吸収・分布・代謝・排泄動態、バイオアベイラビリティーおよび安定性のうちの1つ以上の特性が元のペプチドと同様に保持され得る。
【0039】
本明細書において、ペプチドについて「ジスルフィド結合」とは、1つのペプチド分子内に形成されるS-S結合を指す。典型的には、ジスルフィド結合は、2つのシステイン残基にそれぞれ存在する硫黄原子同士の間に形成されるが、本明細書では、ペプチド分子内に存在する任意の硫黄原子間の結合がジスルフィド結合と称される。一つの実施形態では、ペプチド分子内のジスルフィド結合は、ペプチドの側鎖に存在する硫黄原子間で形成される。
【0040】
本明細書において「医薬成分」とは、医薬を構成し得る任意の成分を意味し、例えば、有効成分(それ自体が薬効を示すもの)、添加成分(それ自体は、薬効を期待されていないが、医薬として含まれる場合一定の役割(例えば、賦形剤、滑沢剤、界面活性剤等)を果たすことが期待される成分)、アジュバント(有効成分の薬効を増強するもの)等を例示することができる。医薬成分は、単独の物質であってもよく、複数の物質や剤の組み合わせであってもよい。有効成分と添加成分との組み合わせ、アジュバントと有効成分との組み合わせなどの任意の組み合わせも含まれ得る。
【0041】
本明細書では、「有効成分」は、意図される薬効を発揮する成分をいい、単独または複数の成分が該当し得る。
【0042】
本明細書において「添加成分」とは、薬効を期待されていないが、医薬として含まれる場合一定の役割を果たす任意の成分をいい、例えば、薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤、賦形剤、緩衝剤、結合剤、爆破剤、希釈剤、香味料、潤滑剤を挙げることができる。
【0043】
本明細書において、使用される医薬成分は精製されたものでありうる。本明細書中で使用される用語「精製された」は、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、よりさらに好ましくは少なくとも95重量%、そして最も好ましくは少なくとも98重量%の、同型の生物学的因子が存在することを意味する。
【0044】
本明細書において「被験体(者)」とは、本開示の治療等の対象となる対象をいう。
【0045】
本明細書において「薬剤」、「剤」または「因子」(いずれも英語ではagentに相当する)は、広義には、交換可能に使用され、意図する目的を達成することができる限りどのような物質または他の要素(例えば、光、放射能、熱、電気などのエネルギー)でもあってもよい。そのような物質としては、例えば、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、有機低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)など)、これらの複合分子が挙げられるがそれらに限定されない。
【0046】
本明細書において「治療」とは、ある疾患または障害について、そのような状態になった場合に、そのような疾患または障害の悪化を防止、好ましくは、現状維持、より好ましくは、軽減、さらに好ましくは消退させることをいい、患者の疾患、もしくは疾患に伴う1つ以上の症状の、症状改善効果あるいは予防効果を発揮しうることを含む。事前に診断を行って適切な治療を行うことは「コンパニオン治療」といい、そのための診断薬を「コンパニオン診断薬」ということがある。
【0047】
本明細書において「治療薬(剤)」とは、広義には、目的の状態を治療できるあらゆる薬剤をいう。本開示の一実施形態において「治療薬」は、有効成分と、薬理学的に許容される1つもしくはそれ以上の担体とを含む医薬組成物であってもよい。医薬組成物は、例えば有効成分と上記担体とを混合し、製剤学の技術分野において知られる任意の方法により製造することができる。また治療薬は、治療のために用いられる物であれば使用形態は限定されず、有効成分単独であってもよいし、有効成分と任意の成分との混合物であってもよい。また上記担体の形状は特に限定されず、例えば、固体または液体(例えば、緩衝液)であってもよい。
【0048】
本明細書において「予防」とは、ある疾患または障害について、そのような状態になる前に、そのような状態にならないようにすることをいう。本開示の薬剤を用いて、診断を行い、必要に応じて本開示の薬剤を用いて疾患または障害の予防をするか、あるいは予防のための対策を講じることができる。
【0049】
本明細書において「予防薬(剤)」とは、広義には、目的の状態を予防できるあらゆる薬剤をいう。
【0050】
本明細書において「キット」とは、通常2つ以上の区画に分けて、提供されるべき部分(例えば、検査薬、診断薬、治療薬、標識、説明書など)が提供されるユニットをいう。安定性等のため、混合されて提供されるべきでなく、使用直前に混合して使用することが好ましいような組成物の提供を目的とするときに、このキットの形態は好ましい。そのようなキットは、好ましくは、提供される部分(例えば、検査薬、診断薬、治療薬)をどのように使用するか、あるいは、試薬をどのように処理すべきかを記載する指示書または説明書を備えていることが有利である。
【0051】
本明細書において「指示書」は、本開示を使用する方法を医師または他の使用者に対する説明を記載したものである。この指示書は、本開示の医薬などを投与することを指示する文言が記載されている。また、指示書には、投与形態(例えば、経口、注射などに)を指示する文言が記載されていてもよい。この指示書は、本開示が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ、電子メール)のような形態でも提供され得る。
【0052】
本明細書において「診断」とは、被験体における疾患、障害、状態などに関連する種々のパラメータを同定し、そのような疾患、障害、状態の現状または未来を判定することをいう。本明細書において、狭義には、「診断」は、現状を診断することをいうが、広義には「早期診断」、「予測診断」、「事前診断」等を含む。
【0053】
本開示の医薬等としての処方手順は、当該分野において公知であり、例えば、日本薬局方、米国薬局方、他の国の薬局方などに記載されている。従って、当業者は、本明細書の記載があれば、過度な実験を行うことなく、使用すべき量を決定することができる。
【0054】
(好ましい実施形態の説明)
以下に本開示の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本開示のよりよい理解のために提供されるものであり、本開示の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本開示の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。これらの実施形態について、当業者は適宜、任意の実施形態を組み合わせ得る。
【0055】
<抗EpoRペプチドの構造>
1つの局面において、本開示は、抗EpoRペプチドを提供する。特定の実施形態では、本開示のペプチドは、CH-CO-SCHFGPLTWVCK-NH(配列番号9)と比較して1つ以上の改善された特性を有する。このような特性として、例えば、EpoR阻害能、がん細胞殺傷能、正常細胞殺傷能の低減、低い投与頻度におけるがん細胞殺傷能などの薬効、副作用、特定の部位に対する移行能、吸収・分布・代謝・排泄動態、バイオアベイラビリティーおよび安定性などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0056】
本開示は、CH-CO-SCHFGPLTWVCK-NH(配列番号9)に基づく修飾ペプチドに関する。修飾ペプチドは、-[SCHFGPLTWVCK]-という基本構造を有し、その構造を有するペプチドに基づく修飾ペプチドまたはそのプロドラッグあるいはその塩であり得る。例えば、この修飾ペプチドまたはそのプロドラッグあるいはその塩は、CH-CO-SCHFGPLTWVCK-NH(配列番号9)の任意の部分(ペプチドのアミノ末端およびカルボキシ末端を含む)に少なくとも1つの修飾を含み、好ましくは2つの修飾、あるいは3つの修飾または4つの修飾あるいは修飾の修飾を含む。好ましい実施形態では、本開示のペプチドは、CH-CO-SCHFGPLTWVCK-NH(配列番号9)におけるアミノ末端、カルボキシ末端、FおよびWに対応する部分のうちの1つ、2つ、3つまたは全部に修飾を含む。
【0057】
別の局面では、本開示の抗EpoRペプチドは以下の式(I)で表される構造を有する。
式(I):
-SCH(A)(A)(A)(A)(A)(A)V(A)(A)-X(配列番号1)
[式中、Xはペプチドのアミノ末端側であり、Xはペプチドのカルボキシ末端側である]
【0058】
式(I)の1つの実施形態では、Aは、-NH-CH(RA1)-CO-であり、式中、RA1は、(結合、あるいは直鎖もしくは分枝鎖アルキレン基またはアルケニレン基)-(ハロゲン原子で置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖メトキシル基、ハロゲン原子およびヒドロキシル基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよいアリール基またはヘテロアリール基)の構造を有する。式(I)の1つの実施形態では、Aは、-NH-CH(RA1)-CO-であり、式中、RA1は、-(結合、あるいはC1~5の直鎖もしくは分枝鎖アルキレン基またはアルケニレン基)-(ハロゲン原子で置換されていてもよいC1~3の直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1~3の直鎖もしくは分枝鎖アルコキシル基、ハロゲン原子およびヒドロキシル基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい5~18員の単環、二環もしくは三環式アリール基またはヘテロアリール基)であり、ここで、任意の位置で任意の数の前記置換基がアリール基またはヘテロアリール基上に存在してもよい。式(I)の1つの実施形態では、Aは、-NH-CH(RA1)-CO-であり、式中、RA1は、(結合、あるいはC1~3の直鎖もしくは分枝鎖アルキレン基)-(C1~3の直鎖もしくは分枝鎖アルキル基(例えば、メチル基)、C1~3の直鎖もしくは分枝鎖アルコキシル基(例えば、メトキシル基)、ハロゲン原子およびヒドロキシル基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい単環もしくは二環式アリール基またはヘテロアリール基(例えば、ベンゼン、ナフタレン、ピリジン、チオフェンまたはベンゾチオフェン))である。式(I)の1つの実施形態では、Aは、Met、あるいはメチル基、メトキシル基、ハロゲン原子もしくはヒドロキシル基で置換されていてもよいPhe、Tyr、フェニルグリシンまたはフェネチルグリシンであり、ここで、任意の位置かつ任意の数のメチル基、メトキシル基、ハロゲン原子もしくはヒドロキシル基が芳香環上に存在してもよい。式(I)の1つの実施形態では、Aにおける芳香環上のメチル基、メトキシル基、ハロゲン原子もしくはヒドロキシル基は、メタ位(m-)、パラ位(p-)またはこれらの組み合わせ(3,4-)上に存在してもよい。式(I)の1つの実施形態では、Aは、Phe、Tyr、p-フルオロ-Phe、p-クロロ-Phe、m-クロロ-Phe、3,4-ジフルオロ-Phe、フェニルグリシンまたはフェネチルグリシンである。いずれの理論に束縛されることを望むものでもないが、抗EpoRペプチドがEpoRに結合したとき、Aの残基はEpoRの脂溶性ポケットに相当する位置に存在する可能性があると考えられる。抗EpoRペプチドにおいて、Aが、p-フルオロ-Phe、Tyr、フェネチルグリシンまたはクロロ置換Pheである場合に比較的高い活性が観察された。Aの残基とEpoRとの間で水素結合が形成されている可能性も考えられる。Aにおいて上記範囲の構造を有する抗EpoRペプチドは、EpoR阻害能、がん細胞殺傷能、正常細胞殺傷能の低減、低い投与頻度におけるがん細胞殺傷能などの薬効、副作用、特定の部位に対する移行能、吸収・分布・代謝・排泄動態、バイオアベイラビリティーおよび安定性のうちの少なくとも1つの特性が良好に保持されると予測される。
【0059】
式(I)の1つの実施形態では、Aは、-NH-CH(RA2)-CO-であり、式中、RA2は、-(H、あるいはC1~5の直鎖もしくは分枝鎖アルキル基またはアルケニル基)である。式(I)の1つの実施形態では、Aは、Ala、D-AlaまたはGlyである。Aにおいて上記範囲の構造を有する抗EpoRペプチドは、EpoR阻害能、がん細胞殺傷能、正常細胞殺傷能の低減、低い投与頻度におけるがん細胞殺傷能などの薬効、副作用、特定の部位に対する移行能、吸収・分布・代謝・排泄動態、バイオアベイラビリティーおよび安定性のうちの少なくとも1つの特性が良好に保持されると予測される。
【0060】
式(I)の1つの実施形態では、Aは、-NH-CH(RA3)-CO-であり、式中、RA3は、-(H、あるいはC1~5の直鎖もしくは分枝鎖アルキル基またはアルケニル基)である。式(I)の1つの実施形態では、Aは、
【化2】

であり、ここで、のRA3は、C3~8の直鎖もしくは分枝鎖アルキレン基またはアルケニレン基である。式(I)の1つの実施形態では、Aは、Pro、ホモプロリンまたはAlaである。Aにおいて上記範囲の構造を有する抗EpoRペプチドは、EpoR阻害能、がん細胞殺傷能、正常細胞殺傷能の低減、低い投与頻度におけるがん細胞殺傷能などの薬効、副作用、特定の部位に対する移行能、吸収・分布・代謝・排泄動態、バイオアベイラビリティーおよび安定性のうちの少なくとも1つの特性が良好に保持されると予測される。好ましくは、式(I)のペプチドは、CH-CO-SCHFGPLTWVCK-NH(配列番号9)の構造を有するペプチドより改善された少なくとも1つの特性を有する。
【0061】
式(I)の1つの実施形態では、Aは、-NH-CH(RA4)-CO-であり、式中、RA4は、-(H、あるいはC1~5の直鎖もしくは分枝鎖アルキル基またはアルケニル基)であり、ここで、1つの実施形態では、前記アルキル基またはアルケニル基中のいずれか1つの炭素原子は硫黄原子で置き換えられていてもよい。式(I)の1つの実施形態では、Aは、Met、Leu、AlaまたはIleである。式(I)の特定の実施形態では、Aは、MetまたはLeuである。Aにおいて上記範囲の構造を有する抗EpoRペプチドは、EpoR阻害能、がん細胞殺傷能、正常細胞殺傷能の低減、低い投与頻度におけるがん細胞殺傷能などの薬効、副作用、特定の部位に対する移行能、吸収・分布・代謝・排泄動態、バイオアベイラビリティーおよび安定性のうちの少なくとも1つの特性が良好に保持されると予測される。
【0062】
式(I)の1つの実施形態では、Aは、-NH-CH(RA5)-CO-であり、式中、RA5は、-(H、あるいはC1~5の直鎖もしくは分枝鎖アルキル基またはアルケニル基)であり、ここで、1つの実施形態では、前記アルキル基またはアルケニル基中のいずれか1つの水素原子はヒドロキシル基で置き換えられていてもよい。式(I)の1つの実施形態では、Aは、ThrまたはAlaである。Aにおいて上記範囲の構造を有する抗EpoRペプチドは、強いEpoR阻害能、高いがん細胞殺傷能、低い正常細胞殺傷能、低い投与頻度におけるがん細胞殺傷能などの薬効の改善、副作用の低減、特定の部位に対する特異的な移行能、改善された吸収・分布・代謝・排泄動態、バイオアベイラビリティーの改善、および高い安定性のうちの少なくとも1つの特性が良好に保持されると予測される。
【0063】
式(I)の1つの実施形態では、Aは、-NH-CH(RA6)-CO-であり、式中、RA1は、(結合、あるいは直鎖もしくは分枝鎖アルキレン基またはアルケニレン基)-(ハロゲン原子で置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖アルコキシル基(例えば、メトキシル基)、ハロゲン原子およびヒドロキシル基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよいアリール基またはヘテロアリール基)の構造を有する。式(I)の1つの実施形態では、Aは、-NH-CH(RA6)-CO-であり、式中、RA6は、-(結合、あるいはC1~5の直鎖もしくは分枝鎖アルキレン基またはアルケニレン基)-(ハロゲン原子で置換されていてもよいC1~3の直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1~3の直鎖もしくは分枝鎖アルコキシル基、ハロゲン原子およびヒドロキシル基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい5~18員の単環、二環もしくは三環式アリール基またはヘテロアリール基)であり、任意の位置で任意の数の前記置換基がアリール基またはヘテロアリール基上に存在してもよい。式(I)の1つの実施形態では、Aは、-NH-CH(RA6)-CO-であり、式中、RA6は、-(結合、あるいはC1~3の直鎖もしくは分枝鎖アルキレン基)-(C1~3の直鎖もしくは分枝鎖アルキル基(例えば、メチル基)、C1~3の直鎖もしくは分枝鎖アルコキシル基(例えば、メトキシル基)、ハロゲン原子およびヒドロキシル基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい5~18員の単環もしくは二環式アリール基またはヘテロアリール基(例えば、ベンゼン、インドール、ナフタレン、ベンゾチアゾールおよびキノリン))である。式(I)の1つの実施形態では、Aは、Met、あるいはメチル基、メトキシル基、ヒドロキシル基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいTrp、Phe、Tyr、β-ホモトリプトファン、ベンゾチアゾリルアラニン、α-ナフチルアラニン、β-ナフチルアラニンまたはキノリルアラニンであり、ここで、任意の位置かつ任意の数のメチル基、メトキシル基、ヒドロキシル基もしくはハロゲン原子が芳香環上に存在してもよく、ベンゾチアゾリルアラニンは、2-ベンゾチアゾリルアラニン、4-ベンゾチアゾリルアラニン、5-ベンゾチアゾリルアラニン、6-ベンゾチアゾリルアラニン、または7-ベンゾチアゾリルアラニンのいずれであってもよく、キノリルアラニンは、2-キノリルアラニン、3-キノリルアラニン、4-キノリルアラニン、5-キノリルアラニン、6-キノリルアラニン、7-キノリルアラニン、または8-キノリルアラニンのいずれであってもよい。式(I)の1つの実施形態では、Aは、Trp、Met、β-ホモトリプトファン、2-ベンゾチアゾリルアラニン、α-ナフチルアラニン、β-ナフチルアラニン、6-クロロ-Trp、5-クロロ-Trp、2-キノリルアラニンまたは8-キノリルアラニンである。式(I)の特定の実施形態では、Aは、Trp、Met、8-ナフチルアラニン、2-キノリルアラニン、5-クロロ-Trp、または2-ベンゾチアゾリルアラニンであり、より具体的な実施形態では、Aは、2-ベンゾチアゾリルアラニンであり得る。Aにおいて上記範囲の構造を有する抗EpoRペプチドは、EpoR阻害能、がん細胞殺傷能、正常細胞殺傷能の低減、低い投与頻度におけるがん細胞殺傷能などの薬効、副作用、特定の部位に対する移行能、吸収・分布・代謝・排泄動態、バイオアベイラビリティーおよび安定性のうちの少なくとも1つの特性が良好に保持されると予測される。
【0064】
式(I)の1つの実施形態では、Aは、-NH-CH(RA7)-CO-であり、式中、RA7は、-(H、あるいはC1~8の直鎖もしくは分枝鎖アルキル基またはアルケニル基)であり、ここで、1つの実施形態では、前記アルキル基またはアルケニル基中のいずれか1つの炭素原子は硫黄原子で置き換えられていてもよく、1つの実施形態では、-SH基を有する。式(I)の1つの実施形態では、Aは、Cys、ホモシステインまたはペニシラミンである。Aにおいて上記範囲の構造を有する抗EpoRペプチドは、EpoR阻害能、がん細胞殺傷能、正常細胞殺傷能の低減、低い投与頻度におけるがん細胞殺傷能などの薬効、副作用、特定の部位に対する移行能、吸収・分布・代謝・排泄動態、バイオアベイラビリティーおよび安定性のうちの少なくとも1つの特性が良好に保持されると予測される。
【0065】
式(I)の1つの実施形態では、Aは、-NH-CH(RA8)-CO-であり、式中、RA8は、-(C1~10の直鎖もしくは分枝鎖アルキル基またはアルケニル基[式中、任意の1、2または3つの炭素原子は窒素原子で置き換えられていてもよい])である。式(I)の1つの実施形態では、Aは、Lys、Argまたは非存在である。Aにおいて上記範囲の構造を有する抗EpoRペプチドは、EpoR阻害能、がん細胞殺傷能、正常細胞殺傷能の低減、低い投与頻度におけるがん細胞殺傷能などの薬効、副作用、特定の部位に対する移行能、吸収・分布・代謝・排泄動態、バイオアベイラビリティーおよび安定性のうちの少なくとも1つの特性が良好に保持されると予測される。
【0066】
式(I)の1つの実施形態では、Xは、水素、1~3の任意のアミノ酸からなるペプチドまたは-C(=O)Rであり、ここで、Rは、水素、ヒドロキシル基、Rで置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖C1~10アルキル基、Rで置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖C1~10アルケニル基、Rで置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖C1~10アルキニル基、Rで置換されていてもよい芳香族もしくは非芳香族5~10員環、-ORおよび-NR からなる群から選択され、ここで、各Rは、独立に、水素、ヒドロキシル基、ハロゲン、ハロゲンもしくはヒドロキシル基で置換されていてもよいベンジル基、-CH、-CHCH、-CHCHCH、-NH、-NHCH、-N(CH、=O、-COOH、-OCH、および-OCHCHからなる群から選択される。1つの実施形態では、Xは、-COOH、プロピオニル基、またはハロゲンで置換されていてもよいベンゾイル基もしくはフェニルアセチル基である。1つの実施形態では、Xは、Gly-Thr-Tyr、Thr-Tyr、Tyr、Phe、Ala、Trpまたはこれらのアミノ末端が直鎖もしくは分枝鎖C1~5アシル基で置換された部分である。1つの実施形態では、Xは、ベンゾイル基またはp-フルオロフェニルアセチル基である。Xにおいて上記範囲の構造を有する抗EpoRペプチドは、EpoR阻害能、がん細胞殺傷能、正常細胞殺傷能の低減、低い投与頻度におけるがん細胞殺傷能などの薬効、副作用、特定の部位に対する移行能、吸収・分布・代謝・排泄動態、バイオアベイラビリティーおよび安定性のうちの少なくとも1つの特性が良好に保持されると予測される。
【0067】
式(I)の1つの実施形態では、Xは、水素、1~3の任意のアミノ酸からなるペプチドまたは-NR であり、ここで、各Rは、水素、ヒドロキシル基、Rで置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖C1~10アルキル基、Rで置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖C1~10アルケニル基、Rで置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖C1~10アルキニル、Rで置換されていてもよい芳香族もしくは非芳香族5~10員環、-ORおよび-NR からなる群から選択されるか、同一の原子に結合した2つのRは一緒になってRで置換されていてもよい芳香族もしくは非芳香族5~10員環を形成し、各Rは、独立に、水素、ヒドロキシル基、ハロゲン、ハロゲンもしくはヒドロキシル基で置換されていてもよいベンジル基、-CH、-CHCH、-CHCHCH、-NH、-NHCH、-N(CH、=O、-COOH、-OCH、および-OCHCHからなる群から選択される。1つの実施形態では、Xは、Pro-Gln-Gly、Pro-Gln、Proまたはこれらのカルボキシ末端がアミドに置換された部分である。1つの実施形態では、Xは、NHである。Xにおいて上記範囲の構造を有する抗EpoRペプチドは、EpoR阻害能、がん細胞殺傷能、正常細胞殺傷能の低減、低い投与頻度におけるがん細胞殺傷能などの薬効、副作用、特定の部位に対する移行能、吸収・分布・代謝・排泄動態、バイオアベイラビリティーおよび安定性のうちの少なくとも1つの特性が良好に保持されると予測される。
【0068】
式(I)の実施形態において、ペプチド中の任意の2つの硫黄原子はジスルフィド結合を形成していてもよい。1つの実施形態では、A中の硫黄原子が他の硫黄原子(例えば、アミノ末端から2番目のCys中の硫黄原子)とジスルフィド結合を形成している。
【0069】
式(I)の実施形態では、A~A、XおよびXの任意の組み合わせで表される化合物が企図される。
【0070】
1つの実施形態では、式(I)におけるSCH(A)(A)(A)(A)(A)(A)V(A)(A)(配列番号1)の部分は、SCHFGPLTWVCK(配列番号2)の構造から1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つまたは8つのアミノ酸だけ置き換わった構造を有し、より具体的な実施形態では、SCHFGPLTWVCK(配列番号2)の構造から1つ、2つまたは3つのアミノ酸だけ置き換わった構造を有する。1つの実施形態では、式(I)におけるSCH(A)(A)(A)(A)(A)(A)V(A)(A)の部分は、SCHFGPLTWVCK(配列番号2)の構造からA、Aまたはこれらの組み合わせだけが置き換わった構造を有する。1つの実施形態では、式(I)におけるSCH(A)(A)(A)(A)(A)(A)V(A)(A)の部分は、SCHFGPLTWVCK(配列番号2)ではない。
【0071】
1つの実施形態では、本開示の抗EpoRペプチドは、Ac-SCHFGPLTWVCK-NH(配列番号9)の構造における-Ac、-NH、FおよびWのうちの1つ、2つ、3つまたは全部に修飾を含む。1つの実施形態では、当該Fおよび/またはWにおける修飾を含む本開示の抗EpoRペプチドは、Ac-SCHFGPLTWVCK-NH(配列番号9)のペプチドより改善された活性(例えば、EpoR阻害能、がん細胞殺傷能)を有し得る。1つの実施形態では、当該-Acおよび/または-NHにおける修飾を含む本開示の抗EpoRペプチドは、当該修飾を含まないペプチドの活性(例えば、EpoR阻害能、がん細胞殺傷能)を保持し得る。1つの実施形態では、本開示の抗EpoRペプチドは、前記-Ac、-NH、FおよびWの修飾とは独立して、Ac-SCHFGPLTWVCK-NH(配列番号9)の構造における-Ac、-NH、FおよびW以外のアミノ酸に修飾を含み、これらの修飾は、当該修飾を含まないペプチドの活性(例えば、EpoR阻害能、がん細胞殺傷能)を保持したまま可能であり得、例えば、配列番号9におけるLをAに変更するように修飾するとペプチドの親水性が向上し得る。
【0072】
1つの実施形態では、本開示の抗EpoRペプチドは、上記式(I)におけるSCH(A)(A)(A)(A)(A)(A)V(A)(A)(配列番号1)の部分の各アミノ酸が、全てD-アミノ酸に置き換わっており、かつアミノ酸の順序が逆になった構造を有し、XおよびXは上記と同じ定義であるペプチドである。このようなペプチドは、例えば、代謝において異なる挙動を示し得る。
【0073】
一つの具体的な式(I)の実施形態では、AはGlyであり、AはPheであり、AはThrであり、AはCysであり、かつ/またはAはLysであり得る。一つの具体的な式(I)の実施形態では、Aは、Tyr、p-フルオロフェニルアラニン、またはフェネチルグリシンであり得、より具体的な実施形態では、Tyrであり得る。一つの具体的な式(I)の実施形態では、Aは、LeuまたはMetであり得、より具体的な実施形態では、Metであり得る。一つの具体的な式(I)の実施形態では、Aは、Trp、Met、8-ナフチルアラニン、2-キノリルアラニン、5-クロロ-Trp、または2-ベンゾチアゾリルアラニンであり得る。一つのより具体的な式(I)の実施形態では、Aは、2-ベンゾチアゾリルアラニンであり得る。
【0074】
1つの実施形態では、本開示の抗EpoRペプチドは以下の式(II)で表される構造を有する。
式(II):
-kcvwtl(B)Gfhcs-X
[式中、Xはペプチドのアミノ末端側であり、Xはペプチドのカルボキシ末端側である]
【0075】
式(II)の1つの実施形態では、Bは、GlyまたはD-プロリンである。Bにおいて上記範囲の構造を有する抗EpoRペプチドは、EpoR阻害能、がん細胞殺傷能、正常細胞殺傷能の低減、低い投与頻度におけるがん細胞殺傷能などの薬効、副作用、特定の部位に対する移行能、吸収・分布・代謝・排泄動態、バイオアベイラビリティーおよび安定性のうちの少なくとも1つの特性が良好に保持されると予測される。
【0076】
式(II)の1つの実施形態では、Xは、水素、1~3の任意のアミノ酸からなるペプチドまたは-C(=O)Rであり、ここで、Rは、水素、ヒドロキシル基、Rで置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖C1~10アルキル基、Rで置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖C1~10アルケニル基、Rで置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖C1~10アルキニル基、Rで置換されていてもよい芳香族もしくは非芳香族5~10員環、-ORおよび-NR からなる群から選択され、ここで、各Rは、独立に、水素、ヒドロキシル基、ハロゲン、ハロゲンもしくはヒドロキシル基で置換されていてもよいベンジル基、-CH、-CHCH、-CHCHCH、-NH、-NHCH、-N(CH、=O、-COOH、-OCH、および-OCHCHからなる群から選択される。1つの実施形態では、Xは、-COOH、プロピオニル基、またはハロゲンで置換されていてもよいベンゾイル基もしくはフェニルアセチル基である。1つの実施形態では、Xは、Gly-Thr-Tyr、Thr-Tyr、Tyr、Phe、Ala、Trpまたはこれらのアミノ末端が直鎖もしくは分枝鎖C1~5アシル基で置換された部分である。1つの実施形態では、Xは、ベンゾイル基またはp-フルオロフェニルアセチル基である。Xにおいて上記範囲の構造を有する抗EpoRペプチドは、EpoR阻害能、がん細胞殺傷能、正常細胞殺傷能の低減、低い投与頻度におけるがん細胞殺傷能などの薬効、副作用、特定の部位に対する移行能、吸収・分布・代謝・排泄動態、バイオアベイラビリティーおよび安定性のうちの少なくとも1つの特性が良好に保持されると予測される。
【0077】
式(II)の1つの実施形態では、Xは、水素、1~3の任意のアミノ酸からなるペプチドまたは-NR であり、ここで、各Rは、水素、ヒドロキシル基、Rで置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖C1~10アルキル基、Rで置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖C1~10アルケニル基、Rで置換されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖C1~10アルキニル基、Rで置換されていてもよい芳香族もしくは非芳香族5~10員環、-ORおよび-NR からなる群から選択されるか、同一の原子に結合した2つのRは一緒になってRで置換されていてもよい芳香族もしくは非芳香族5~10員環を形成し、各Rは、独立に、水素、ヒドロキシル基、ハロゲン、ハロゲンもしくはヒドロキシル基で置換されていてもよいベンジル、-CH、-CHCH、-CHCHCH、-NH、-NHCH、-N(CH、=O、-COOH、-OCH、および-OCHCHからなる群から選択される。1つの実施形態では、Xは、Pro-Gln-Gly、Pro-Gln、Proまたはこれらのカルボキシ末端がアミドに置換された部分である。1つの実施形態では、Xは、NHである。Xにおいて上記範囲の構造を有する抗EpoRペプチドは、EpoR阻害能、がん細胞殺傷能、正常細胞殺傷能の低減、低い投与頻度におけるがん細胞殺傷能などの薬効、副作用、特定の部位に対する移行能、吸収・分布・代謝・排泄動態、バイオアベイラビリティーおよび安定性のうちの少なくとも1つの特性が良好に保持されると予測される。
【0078】
1つの実施形態では、本開示の抗EpoRペプチドは、上記で特定される構造を有するペプチドにおける任意の数(例えば、1、2、3、4、5または6個)のアミノ酸がL体からD体に置き換えられたペプチドである。1つの実施形態では、Ac-SCHFGPLTWVCK-NH(配列番号9)におけるFおよびW以外に対応するアミノ酸がD体である。いずれの理論に束縛されることを望むものではないが、一部のアミノ酸をL体からD体に置き換えることによりペプチドが形成するシート構造が変わる場合もあり得るので、D体アミノ酸はこのシート構造を保持するように導入され得る。このようなL体がD体に置き換えられたペプチドも、EpoR阻害能、がん細胞殺傷能、正常細胞殺傷能の低減、低い投与頻度におけるがん細胞殺傷能、特定の部位に対する移行能、吸収・分布・代謝・排泄動態、および安定性のうちの1つ以上の特性が元のペプチドと同様に保持され得る。1つの実施形態では、Ac-SCHFGPLTWVCK-NH(配列番号9)におけるFおよびWに対応するアミノ酸がD体であり得、この実施形態においては、ペプチドの活性が変化し得る。
【0079】
1つの実施形態では、本開示の抗EpoRペプチドは、上記で特定される構造を有するペプチドにおける任意の数(例えば、1、2、3、4、5または6個)のアミノ酸が保存的置換されたペプチドである。このような保存的置換を含むペプチドも、EpoR阻害能、がん細胞殺傷能、正常細胞殺傷能の低減、低い投与頻度におけるがん細胞殺傷能などの薬効、副作用、特定の部位に対する移行能、吸収・分布・代謝・排泄動態、バイオアベイラビリティーおよび安定性のうちの1つ以上の特性が元のペプチドと同様に保持され得る。
【0080】
1つの実施形態では、本開示の抗EpoRペプチドは以下の構造のいずれかを有する化合物である(式中、XおよびXは上記定義と同じである)。
-SCHFGPLTWVCK-X[配列番号2]
-SCH(p-フルオロ-Phe)GPLTWVCK-X
-SCH(p-クロロ-Phe)GPLTWVCK-X
-SCH(m-クロロ-Phe)GPLTWVCK-X
-SCH(3,4-ジフルオロ-Phe)GPLTWVCK-X
-SCHYGPLTWVCK-X[配列番号3]
-SCH(フェニルグリシン)GPLTWVCK-X
-SCH(フェネチルグリシン)GPLTWVCK-X
-SCHFAPLTWVCK-X[配列番号4]
-SCHFaPLTWVCK-X
-SCHFGALTWVCK-X[配列番号5]
-SCHFG(ホモプロリン)LTWVCK-X
-SCHFGPATWVCK-X[配列番号6]
-SCHFGPMTWVCK-X[配列番号7]
-SCHFGPLTMVCK-X[配列番号8]
-SCHFGPLT(6-クロロ-Trp)VCK-X
-SCHFGPLT(5-クロロ-Trp)VCK-X
-SCHFGPLT(β-ホモトリプトファン)VCK-X
-SCHFGPLT(α-ナフチルアラニン)VCK-X
-SCHFGPLT(β-ナフチルアラニン)VCK-X
-SCHFGPLT(8-キノリルアラニン)VCK-X
-SCHFGPLT(2-キノリルアラニン)VCK-X
-SCHFGPLT(2-ベンゾチアゾリルアラニン)VCK-X
-SCHFGPLTWV(ホモシステイン)K-X
-SCHFGPLTWV(ペニシラミン)K-X
-SCH(3,4-ジフルオロ-Phe)GPLT(2-ベンゾチアゾリルアラニン)VCK-X
-SCH(p-フルオロ-Phe)GPLT(2-ベンゾチアゾリルアラニン)VCK-X
-SCHYGPLT(2-ベンゾチアゾリルアラニン)VCK-X
-SCH(3,4-ジフルオロ-Phe)GPLT(2-キノリルアラニン)VCK-X
-SCH(p-フルオロ-Phe)GPLT(2-キノリルアラニン)VCK-X-SCHYGPLT(2-キノリルアラニン)VCK-X
-SCH(3,4-ジフルオロ-Phe)GPLT(8-キノリルアラニン)VCK-X
-SCH(p-フルオロ-Phe)GPLT(8-キノリルアラニン)VCK-X-SCHYGPLT(8-キノリルアラニン)VCK-X
-kcvwtlpGfhcs-X
-kcvwtlGGfhcs-X
-SCH(4-ピリジルアラニン)GPLTWVCK-X
-SCH(3-ピリジルアラニン)GPLTWVCK-X
-SCH(p-メトキシ-Phe)GPLTWVCK-X
-SCH(m-メトキシ-Phe)GPLTWVCK-X
-SCH(m-ヒドロキシ-Phe)GPLTWVCK-X
-SCH(1-ナフチルアラニン)GPLTWVCK-X
-SCH(2-ナフチルアラニン)GPLTWVCK-X
-SCHFGPLT(2-ベンゾチアゾリルアラニン)VCK-X
-SCHFGPLT(3-ベンゾチアゾリルアラニン)VCK-X
-SCHYGPMT(2-ベンゾチアゾリルアラニン)VCK-X
【0081】
1つの実施形態では、本開示の抗EpoRペプチドは以下の構造のいずれかを有する化合物である(式中、Acはアセチル基である)。
Ac-SCHFGPLTWVCK-NH[配列番号9]
(ベンゾイル)-SCHFGPLTWVCK-NH
(p-フルオロフェニルアセチル)-SCHFGPLTWVCK-NH
(プロピオニル)-SCHFGPLTWVCK-NH
Ac-SCH(p-フルオロ-Phe)GPLTWVCK-NH
Ac-SCH(p-クロロ-Phe)GPLTWVCK-NH
Ac-SCH(m-クロロ-Phe)GPLTWVCK-NH
Ac-SCH(3,4-ジフルオロ-Phe)GPLTWVCK-NH
Ac-SCHYGPLTWVCK-NH[配列番号10]
Ac-SCH(フェニルグリシン)GPLTWVCK-NH
Ac-SCH(フェネチルグリシン)GPLTWVCK-NH
Ac-SCHFAPLTWVCK-NH[配列番号11]
Ac-SCHFaPLTWVCK-NH
Ac-SCHFGALTWVCK-NH[配列番号12]
Ac-SCHFG(ホモプロリン)LTWVCK-NH
Ac-SCHFGPATWVCK-NH[配列番号13]
Ac-SCHFGPMTWVCK-NH[配列番号14]
Ac-SCHFGPLTMVCK-NH[配列番号15]
Ac-SCHFGPLT(6-クロロ-Trp)VCK-NH
Ac-SCHFGPLT(5-クロロ-Trp)VCK-NH
Ac-SCHFGPLT(β-ホモトリプトファン)VCK-NH
Ac-SCHFGPLT(α-ナフチルアラニン)VCK-NH
Ac-SCHFGPLT(β-ナフチルアラニン)VCK-NH
Ac-SCHFGPLT(8-キノリルアラニン)VCK-NH
Ac-SCHFGPLT(2-キノリルアラニン)VCK-NH
Ac-SCHFGPLT(2-ベンゾチアゾリルアラニン)VCK-NH
Ac-SCHFGPLTWV(ホモシステイン)K-NH
Ac-SCHFGPLTWV(ペニシラミン)K-NH
Ac-SCH(3,4-ジフルオロ-Phe)GPLT(2-ベンゾチアゾリルアラニン)VCK-NH
Ac-SCH(p-フルオロ-Phe)GPLT(2-ベンゾチアゾリルアラニン)VCK-NH
Ac-SCHYGPLT(2-ベンゾチアゾリルアラニン)VCK-NH
Ac-SCH(3,4-ジフルオロ-Phe)GPLT(2-キノリルアラニン)VCK-NH
Ac-SCH(p-フルオロ-Phe)GPLT(2-キノリルアラニン)VCK-NH
Ac-SCHYGPLT(2-キノリルアラニン)VCK-NH
Ac-SCH(3,4-ジフルオロ-Phe)GPLT(8-キノリルアラニン)VCK-NH
Ac-SCH(p-フルオロ-Phe)GPLT(8-キノリルアラニン)VCK-NH
Ac-SCHYGPLT(8-キノリルアラニン)VCK-NH
Ac-kcvwtlpGfhcs-NH
Ac-kcvwtlGGfhcs-NH
Ac-SCH(4-ピリジルアラニン)GPLTWVCK-NH
Ac-SCH(3-ピリジルアラニン)GPLTWVCK-NH
Ac-SCH(p-メトキシ-Phe)GPLTWVCK-NH
Ac-SCH(m-メトキシ-Phe)GPLTWVCK-NH
Ac-SCH(m-ヒドロキシ-Phe)GPLTWVCK-NH
Ac-SCH(1-ナフチルアラニン)GPLTWVCK-NH
Ac-SCH(2-ナフチルアラニン)GPLTWVCK-NH
Ac-SCHFGPLT(2-ベンゾチアゾリルアラニン)VCK-NH
Ac-SCHFGPLT(3-ベンゾチアゾリルアラニン)VCK-NH
Ac-SCHYGPMT(2-ベンゾチアゾリルアラニン)VCK-NH
【0082】
1つの実施形態では、本開示のペプチドは、保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1-6アシル基など)で保護されており、例えば、保護基は、分子内のアミノ酸の側鎖上のOH、NH、SHなどに導入されている。1つの実施形態では、本開示のペプチドには、糖鎖またはPEG鎖が結合していてもよい。
【0083】
本開示のペプチドは、塩の形態で提供されてもよい。塩としては、塩基付加塩および酸付加塩のいずれであってもよいが、好ましくは生理学的に許容される酸付加塩である。酸付加塩として、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸など)との塩などが挙げられる。塩基付加塩として、例えば、無機塩基(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、アンモニウムなど)との塩、有機塩基(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6-ルチジン、エタノ-ルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、リシン、アルギニン、ヒスチジンなど)との塩が挙げられる。
【0084】
本開示のペプチドは溶媒和物の形態であってもよい。溶媒は、薬学的に許容されるものであれば特に限定されず、例えば水、エタノール、グリセロール、酢酸等が挙げられる。
【0085】
本開示のペプチドは、プロドラッグ化されていてもよい。プロドラッグとしては、生体内の生理条件下で酵素的反応(酸化、還元、加水分解など)、または胃酸等との反応を起こして本開示のペプチドに変換される化合物などが用いられる。一つの実施形態では、本開示のプロドラッグの例として、本開示のペプチドのアミノ基がアシル化、アルキル化、リン酸化された化合物(例えば、エイコサノイル化、アラニル化、ペンチルアミノカルボニル化、(5ーメチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メトキシカルボニル化、テトラヒドロフラニル化、ピロリジルメチル化、ピバロイルオキシメチル化、tert-ブチル化された化合物等);および本開示のペプチドの水酸基がアシル化、アルキル化、リン酸化、ホウ酸化された化合物(例えば、アセチル化、パルミトイル化、プロパノイル化、ピバロイル化、スクシニル化、フマリル化、アラニル化、ジメチルアミノメチルカルボニル化された化合物等)等が挙げられる。これらの化合物は公知の方法によって本開示のペプチドから製造することができる。
【0086】
本開示のペプチドは、公知のペプチドの合成法に従って製造することができる。ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによってもよい。すなわち、本開示のペプチドを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としては、例えば、以下の(1)~(3)に記載された方法が挙げられる。
(1) 泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、丸善(株) (1985年)
(2) 実験化学講座第5版、高分子化学、26巻、丸善(株) (2007年)
(3) 野上靖純著 パートナー薬品製造学、第2版、南江堂(2012年)
【0087】
より具体的には、本開示のペプチドの合成には、通常市販のペプチド合成用樹脂を用いることができる。例えばポリスチレンを基材とした樹脂を用いることができる。C末端がアミド化されているペプチドを得るには出発原料の樹脂として、Fmoc-NH-SAL樹脂(Rink amide樹脂)、MBHA樹脂、Sieber amide樹脂、PAL樹脂、Ramage amide樹脂ならびにそれらのアミノ官能基とポリスチレンとの間にポリエチレングリコールなどの膨潤剤やリンカーを導入した樹脂等を用いることができる。このような樹脂と、α-アミノ基と側鎖官能基を適当な保護基(例えば、Boc、Fmoc)で保護したアミノ酸を原料として用い、目的とするペプチドの配列通りに、公知の各種縮合方法に従い樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂からペプチドを切り出すと同時に各種保護基を除去し、必要に応じてさらに高希釈溶液中で分子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、目的のペプチドを取得する。保護基の除去(脱離)や樹脂からのペプチドの切り離しは、公知の方法(例えば、トリフルオロ酢酸による酸処理)により行うことができる。なお、N末端がアシル化されているペプチドは、無水酢酸などと反応させることで調製することができる。樹脂から切り離された粗ペプチドは公知の各種精製手段を使用して精製することができる。
【0088】
ペプチド合成に使用するアミノ酸
ペプチド合成に使用するアミノ酸(天然アミノ酸および非天然アミノ酸)は、任意の好適な供給源(例えば、メルク、渡辺化学、Enamine Ltd.、Bienta、ChemSpace、Sundia MediTech Company,Ltd.、Combi-Blocks.Inc、AnalytiCon Discovery GmbH、PharmaBlock(Nanjing) R&D Co.,Ltd、Chemexpress Co.,Ltd.、J&W Pharmlab,LLC、SAI Life Sciences Ltd、AstaTech、UkrOrgSyntez、Selleck Chemicals、WuXi AppTec、Vitas-M Laboratory,LTD.、Bepharm、Life Chemicals Inc、Accela ChemBio Co.,Ltd.、Apollo Scientific Ltd、NovoChemy Ltd、Key Organics Ltd(Bionet Research)、Matrix Scientific、Toronto Reserch chemicals Inc.、MAYBRIDGE、Chem-Impex International,Inc.、Allychem、Pharmeks Ltd.、Biorelevant、AOBChem、ACRO Biosystems、Maison Chemical、Advanced ChemBlocks,Inc.、Bellen、Microsource Discovery Systems,Inc.、Taros Chemicals GmbH&Co.KG、Senn Chemicals AG、Sinocompound Catalysts Co.,Ltd.、Syngene International Ltd.、BroadPharm、EDASA Scientific、Hi-tech chemistry corp.等)から入手可能である。また、ペプチド合成に使用するアミノ酸(天然アミノ酸および非天然アミノ酸)は、当業者であれば任意の公知の合成法(例えば、ストレッカー反応(Strecker,A.(1850年). Ueber die kunstliche Bildung der Milchsaure und einen neuen,dem Glycocoll homologen Korper”.Ann.75:27-45.、Strecker,A.(1854年).“Ueber einen neuen aus Aldehyd-Ammoniak und Blausaure entstehenden Korper”.Ann.91:349-351.))を使用して容易に合成することができる。また、ペプチド合成のために、所与のアミノ酸に保護基(例えば、BocまたはFmoc)および/または標識(例えば、放射性原子またはビオチン)を導入する方法も公知であり、当業者であればこのようなアミノ酸の修飾を容易に実施することができる。
【0089】
<抗EpoRペプチドの性能>
本開示のペプチドの性質
一つの実施形態では、本開示のペプチドまたはその塩もしくは溶媒和物、またはそのプロドラッグは、CH-CO-SCHFGPLTWVCK-NH(配列番号9)と比較して1つ以上の改善された特性を有する。このような特性として、例えば、ヒトEpoRに対するより低いIC50、がん細胞(例えば、HepG2などのがん細胞株)をより低濃度で殺傷する能力、正常細胞の殺傷により高濃度が必要となる能力、がん細胞をより低い投与頻度で殺傷する能力、特定の部位(例えば、がん組織)により多く移行する能力、改善された吸収・分布・代謝・排泄動態、保管時のより高い安定性などが挙げられる。
【0090】
上記の性質の確認のための試験は、本明細書の記載を参考にして、培養細胞との接触試験、動物モデルにおける投与試験、血中動態の試験、毒性評価など当業者が容易に実施することができるものである。また、当業者は、上記の構造を有する任意のペプチドを作製して、作製したペプチドについてこの試験を実施することで、上で記載されるような特性の少なくともいずれかを有する本開示の抗EpoRペプチドを特定することができる。
【0091】
1つの実施形態では、本開示の抗EpoRペプチドは、120μM、60μM、30μMまたは15μMの当該ペプチドを含む溶液400μL中で1.0~1.5x10個のHepG2細胞を24時間反応させた場合に、1mmの区画内のTB(Trypan blue)染色陽性細胞数の平均(例えば、10区画の平均。必要に応じて、n=2、3またはより多くのレプリケート間の平均)が、CH-CO-SCHFGPLTWVCK-NH(配列番号9)のペプチドにおける結果と同等か、またはこれを上回るHepG2細胞殺傷能力を有する。
【0092】
1つの実施形態では、本開示の抗EpoRペプチドは、WST法によって評価した場合に、少なくとも1種のヒトがん細胞株(例えば、肝臓がん、膵臓がん、白血病の細胞株)をCH-CO-SCHFGPLTWVCK-NH(配列番号9)のペプチドより強力に阻害(例えば、殺傷)する能力を有することができ、例えば、ヒトがん細胞株と150μMで72時間接触させ、WST法によって評価した場合に、CH-CO-SCHFGPLTWVCK-NH(配列番号9)のペプチドより強力に阻害効果を示す。
【0093】
1つの実施形態では、本開示の抗EpoRペプチドは、ATP量を指標に細胞増殖能を評価した場合に、少なくとも1種のヒトがん細胞株(例えば、乳がんの細胞株)をCH-CO-SCHFGPLTWVCK-NH(配列番号9)のペプチドより強力に阻害(例えば、殺傷)する能力を有することができ、例えば、ヒトがん細胞株と30または100μMで72時間接触させ、ATP量を指標に細胞増殖能を評価した場合に、CH-CO-SCHFGPLTWVCK-NH(配列番号9)のペプチドより強力に阻害効果を示す。
【0094】
1つの実施形態では、本開示の抗EpoRペプチドは、プレートに播種した骨髄細胞(例えば、マウス)を終濃度100μMの抗EpoRペプチドおよび組換えヒトエリスロポエチン(1U/mL)と72時間接触させた場合に、組換えヒトエリスロポエチン(1U/mL)のみの対照の結果と比較して、CFU-E(Erythroid Colony Forming Unit)の数が有意に異ならないという能力を有し得る。
【0095】
1つの実施形態では、本開示の抗EpoRペプチドは、約5x10細胞のヒト膵臓がん由来AsPC-1細胞(ECACC、96020930)を右背部皮下に移植した6週齢の雄性ヌードマウス(BALB/cSlc-nu/nu)が、腫瘍体積(V)=腫瘍の長径(L)x腫瘍の短径(W)/2=約150~200mmに達した時にこの抗EpoRペプチドを腹腔内に0.2mg/日で週2あるいは3回のレジメンで2あるいは4週間投与した場合に、以下:
・非処置対照と比較して腫瘍体積減少が観察される時期が、CH-CO-SCHFGPLTWVCK-NH(配列番号9)のペプチド投与時より(例えば、1日以上、2日以上、3日以上、4日以上、5日以上、6日以上、または7日以上)早い、
・投与開始21日目の腫瘍体積が、CH-CO-SCHFGPLTWVCK-NH(配列番号9)のペプチド投与時より(例えば、約10%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、または約50%以上)小さい、
・投与開始21日目のマウス体重が、非処置対照と比較して異ならない(例えば、対照との差が、10%未満、7%未満、5%未満、3%未満、2%未満または1%未満)、
・投与開始21日目のヘマトクリット値が、非処置対照と比較して異ならない(例えば、対照との差が、30%未満、20%未満、15%未満、10%未満、または5%未満)、
・投与開始21日目の血中ヘモグロビン濃度が、非処置対照と比較して異ならない(例えば、対照との差が、30%未満、20%未満、15%未満、10%未満、または5%未満)、
のうちの少なくとも1つを達成する能力を有し得る。
【0096】
実施例において具体的に記載するように、本開示のペプチドは、腫瘍細胞殺傷効果が確認され、これら以外の知見も含め考察した結果、種々の疾患(例えば、増殖性疾患、子宮腺筋症または糖尿病網膜症)に有用に使用できることが予測される。
【0097】
<組成物>
1つの局面において、本開示は、本開示のペプチドもしくはその塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグを含む組成物を提供する。特定の実施形態では、本開示の組成物は、強いEpoR阻害能、高いがん細胞殺傷能、低い正常細胞殺傷能、低い投与頻度におけるがん細胞殺傷能などの薬効の改善、副作用の低減、特定の部位に対する特異的な移行能、改善された吸収・分布・代謝・排泄動態、バイオアベイラビリティーの改善、および高い安定性のうちの1つ以上の特性を有する。一つの実施形態では、本開示の組成物は、増殖性疾患、子宮腺筋症または糖尿病網膜症の治療または予防に使用され得る。
【0098】
本開示のペプチドもしくはその塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグを含む組成物には、任意の添加成分が含まれていてもよい。添加成分の例として、例えば、キャリア、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、香味料、吸着剤、湿潤剤が挙げられる。
【0099】
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、D-マンニトール、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸などが挙げられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカ等が挙げられる。結合剤としては、例えば、結晶セルロース、白糖、D-マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デンプン、ショ糖、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリワム等が挙げられる。崩壊剤としては、例えばデンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、L-ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0100】
溶剤としては、例えば、注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油等が挙げられる。溶解補助剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、Dーマンニト-ル、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。懸濁化剤としては、例えば、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン、等の界面活性剤;例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等が挙げられる。等張化剤としては、例えば、ブドウ糖、D-ソルビトール、塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトール等が挙げられる。緩衝剤としては、例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液等が挙げられる。無痛化剤としては、例えば、ベンジルアルコール等が挙げられる。防腐剤としては、例えば、パラヒドロキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられる。抗酸化剤としては、例えば、亜硫酸塩、アスコルビン酸、α-トコフェロール等が挙げられる。
【0101】
調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。投与の際には、注射用組成物を慣用の水性希釈剤中に溶解し、液剤として用いることができる。水性希釈剤としてはブドウ糖水溶液、生理食塩水、リンゲル液、栄養補給剤液などが挙げられる。
【0102】
注射剤にリン酸またはその塩が含まれる場合、その注射剤中のリン酸ナトリウムあるいはリン酸カリウムの濃度は約0.1mM~500mMであり、好ましくは約1mM~100mMであり得る。無菌製剤にするために使用できる方法として、製造全工程を無菌にする方法、ガンマ線で滅菌する方法、防腐剤を添加する方法等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
一つの実施形態では、本開示のペプチドもしくはその塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグまたはこれを含む組成物は、キットとして提供され得る。一つの具体的な実施形態では、キットは、(a)本開示のペプチドもしくはその塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグまたはこれを含む組成物を溶液形状または凍結乾燥形状で含む容器と、任意選択で、(b)希釈剤または再構成液を含む第2の容器と、任意選択で、(c)説明書とを有する。一つの実施形態では、キットは、(iii)緩衝剤、(iv)希釈剤、(v)フィルター、(vi)針、および(v)シリンジのうちの1つもしくはそれより多くを含んでもよい。
【0104】
一つの実施形態では、本開示のキットは、本開示のキットを使用するための説明書を含む。適切な容器として、例えば、瓶、バイアル瓶(例えばデュアルチャンババイアル)、シリンジ(デュアルチャンパシリンジなど)、および試験管が挙げられる。この容器は、ガラスまたはプラスチックのような様々な材料から形成することができる。一つの実施形態では、本開示のキットは、本開示のペプチドもしくはその塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグとは異なる構成要素を含む別の容器を含むことができる。
【0105】
<用途>
本開示のペプチドもしくはその塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグまたはこれを含む組成物は、任意の好適な用途に使用することができる。一つの実施形態では、この用途は、増殖性疾患(例えば、子宮腺筋症)、リウマチ、ケロイドまたは糖尿病網膜症の予防または治療であり得る。一つの実施形態では、増殖性疾患は、子宮腺筋症、悪性腫瘍や良性腫瘍(例えば、原発性、転移性または再発性、乳がん、前立腺がん、膵臓がん、胃がん、肺がん、大腸がん(結腸がん、直腸がん、肛門がん)、食道がん、十二指腸がん、頭頚部がん(舌がん、咽頭がん、喉頭がん、甲状腺がん)、脳腫瘍、神経鞘腫、神経芽腫、神経膠腫、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、肝臓がん、腎臓がん、胆管がん、子宮がん(子宮体がん、子宮頚がん)、卵巣がん、膀胱がん、皮膚がん、血管腫、悪性リンパ腫、悪性黒色腫、骨腫瘍、血管線維腫、網膜肉腫、陰茎がん、小児固形がん、カポジ肉腫、AIDSに起因するカポジ肉腫、上顎洞腫瘍、線維性組織球腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、子宮筋腫、骨芽細胞腫、骨肉腫、軟骨肉腫、がん性の中皮腫瘍、白血病などの腫瘍など)であり得る。一つの実施形態では、増殖性疾患は、肺がん、肝臓がん、卵巣がん、膵臓がん、腎臓がん、大腸がん、黒色腫、脳腫瘍、胃がん、および乳がんであり得る。一つの具体的な実施形態では、増殖性疾患は、乳がん、膵臓がん、肝臓がん、悪性リンパ腫、または白血病(または、その任意の選択肢からなる下位集団)であり得る。
【0106】
本開示のペプチドもしくはその塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグまたはこれを含む組成物は、任意の対象に使用することができ、例えば、鳥類、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、ブタ、サル、ヒトなど)に使用することができる。
【0107】
<使用>
一つの実施形態では、本開示は、本開示のペプチドもしくはその塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグまたはこれを含む組成物もしくはキットの使用または任意の好適な用途における使用の方法を提供する。特定の実施形態では、本開示のペプチドもしくはその塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグまたはこれを含む組成物もしくはキットは、強いEpoR阻害能、高いがん細胞殺傷能、低い正常細胞殺傷能、低い投与頻度におけるがん細胞殺傷能などの薬効の改善、副作用の低減、特定の部位に対する特異的な移行能、改善された吸収・分布・代謝・排泄動態、バイオアベイラビリティーの改善、および高い安定性のうちの1つ以上の特性を有し得るため、増殖性疾患(例えば、子宮腺筋症)または糖尿病網膜症の治療または予防に使用され得る。したがって、一つの実施形態では、本開示は、被験体における増殖性疾患(例えば、子宮腺筋症)または糖尿病網膜症を処置または予防するための方法であって、本開示のペプチドもしくはその塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグの有効量を該被験体に投与する工程を含む、方法を提供する。また、別の実施形態では、本開示は、増殖性疾患(例えば、子宮腺筋症)または糖尿病網膜症を処置または予防するための医薬の製造における、本開示のペプチドもしくはその塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグの使用を提供する。
【0108】
含有量
本開示のペプチドもしくはその塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグを含む組成物において、本開示のペプチドもしくはその塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグの含有量は、組成物の形態によって相違し得るが、例えば、組成物全体に対して約0.1~100重量%、約0.5~50重量%、約1~30重量%、約5~20重量%、約10~99.9重量%、約20~90重量%、約0.1重量%、約0.2重量%、約0.5重量%、約1重量%、約2重量%、約5重量%、約10重量%、約20重量%、約50重量%であり得る。本開示の組成物において、本開示のペプチドもしくはその塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグ以外の成分の含有量は、組成物の形態によって相違し得るが、例えば、組成物全体に対して約10~99.9重量%、または約20~90重量%であり得る。
【0109】
投与レジメン
本開示のペプチドもしくはその塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグ、あるいはそれを含む組成物は、例えば、1日当たり体重1kgあたりの本開示のペプチドとして約0.005~50mg、約0.05~10mg、または約0.2~4mgの用量において単回または複数回で投与することができる。本開示のペプチドもしくはその塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグ、あるいはそれを含む組成物は、任意の好適な投与頻度で投与することができ、例えば、1日3回、1日2回、1日1回、隔日、3日に1回、4日に1回、5日に1回、隔週、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、2カ月に1回、3カ月に1回、4カ月に1回、5カ月に1回、6カ月に1回、または1年に1回の頻度で投与することができる。
【0110】
投与経路
本開示のペプチドもしくはその塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグを含む組成物は、任意の好適な投与経路で投与することができ、例えば、静脈内、局所、筋肉内、皮下、皮内、経皮、直腸、経膣、経口腔粘膜、経肺粘膜、経鼻、経眼または経口(経腸)などの経路によって投与することができる。
【0111】
剤形
本開示のペプチドもしくはその塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグを含む組成物は、任意の好適な剤形に製剤化することができ、例えば液剤、注射剤、パッチ剤、マイクロニードル、坐剤、徐放剤、錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、散剤、顆粒剤、カプセル剤(ソフトカプセルを含む)などの剤型にすることができる。
【0112】
組み合わせ
本開示のペプチドもしくはその塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグは、任意の好適な薬剤と組み合わせて使用され得る。このような薬剤の例として、例えば、内分泌療法薬、化学療法剤、免疫療法剤(BRM)、細胞増殖因子、細胞増殖因子の作用を阻害する薬剤などが挙げられる。
【0113】
内分泌療法薬としては、例えば、ホスフェストロール、ジエチルスチルベストロール、クロロトリアニセリン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、酢酸クロルマジノン、酢酸シプロテロン、ダナゾール、アリルエストレノール、ゲストリノン、メパルトリシン、ラロキシフェン、オルメロキフェン、レボルメロキシフェン、抗エストロゲン(例、クエン酸タモキシフェン、クエン酸トレミフェンなど)、ピル製剤、メピチオスタン、テストロラクトン、アミノグルテチイミド、LH-RHアゴニスト(例、酢酸ゴセレリン、ブセレリン、リュープロレリンなど)、ドロロキシフェン、エピチオスタノール、スルホン酸エチニルエストラジオール、アロマターゼ阻害薬(例、塩酸ファドロゾール、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、ボロゾール、フォルメスタンなど)、抗アンドロゲン(例、フルタミド、ビカルタミド、ニルタミドなど)、5α-レダクターゼ阻害薬(例、フィナステリド、エプリステリドなど)、副腎皮質ホルモン系薬剤(例、デキサメタゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、トリアムシノロンなど)、アンドロゲン合成阻害薬(例、アビラテロンなど)、レチノイドおよびレチノイドの代謝を遅らせる薬剤(例、リアロゾールなど)などが挙げられる。
【0114】
化学療法剤としては、例えば、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗癌性抗生物質、植物由来抗癌剤などが挙げられる。
【0115】
アルキル化剤としては、例えば、ナイトロジェンマスタード、塩酸ナイトロジェンマスタード-N-オキシド、クロラムブチル、シクロフォスファミド、イホスファミド、チオテパ、カルボコン、トシル酸インプロスルファン、ブスルファン、塩酸ニムスチン、ミトブロニトール、メルファラン、ダカルバジン、ラニムスチン、リン酸エストラムスチンナトリウム、トリエチレンメラミン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ピポブロマン、エトグルシド、カルボプラチン、シスプラチン、ミボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、アルトレタミン、アンバムスチン、塩酸ジブロスピジウム、フォテムスチン、プレドニムスチン、プミテパ、リボムスチン、テモゾロミド、トレオスルファン、トロフォスファミド、ジノスタチンスチマラマー、カルボコン、アドゼレシン、システムスチン、ビゼレシンなどが挙げられる。
【0116】
代謝拮抗剤としては、例えば、メルカプトプリン、6-メルカプトプリンリボシド、チオイノシン、メトトレキサート、エノシタビン、シタラビン、シタラビンオクフォスファート、塩酸アンシタビン、5-FU系薬剤(例、フルオロウラシル、テガフール、UFT、ドキシフルリジン、カルモフール、ガロシタビン、エミテフールなど)、アミノプテリン、ロイコボリンカルシウム、タブロイド、ブトシン、フォリネイトカルシウム、レボフォリネイトカルシウム、クラドリビン、エミテフール、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシカルバミド、ペントスタチン、ピリトレキシム、イドキシウリジン、ミトグアゾン、チアゾフリン、アンバムスチンなどが挙げられる。
【0117】
抗癌性抗生物質としては、例えば、アクチノマイシンD、アクチノマイシンC、マイトマイシンC、クロモマイシンA3、塩酸ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、硫酸ペプロマイシン、塩酸ダウノルビシン、塩酸ドキソルビシン、塩酸アクラルビシン、塩酸ピラルビシン、塩酸エピルビシン、ネオカルチノスタチン、ミスラマイシン、ザルコマイシン、カルチノフィリン、ミトタン、塩酸ゾルビシン、塩酸ミトキサントロン、塩酸イダルビシンなどが挙げられる。
【0118】
植物由来抗癌剤としては、例えば、エトポシド、リン酸エトポシド、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンデシン、テニポシド、パクリタキセル、ドセタキセル、ビノレルビンなどが挙げられる。
【0119】
免疫療法剤(BRM)としては、例えば、ピシバニール、クレスチン、シゾフィラン、レンチナン、ウベニメクス、インターフェロン、インターロイキン、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、リンホトキシン、BCGワクチン、コリネバクテリウムパルブム、レバミゾール、ポリサッカライドK、プロコダゾールなどが挙げられる。
【0120】
細胞増殖因子としては、代表的には、分子量が20,000以下のペプチドで、受容体との結合により低濃度で作用が発揮される因子が挙げられ、例えば、(1)EGFまたはそれと実質的に同一の活性を有する物質(例、EGF(上皮増殖因子)、ヘレグリン(HER3およびHER4リガンド)など)、(2)インスリンまたはそれと実質的に同一の活性を有する物質(例、インスリン、IGF(インスリン様増殖因子)-1、IGF-2など〕、(3)FGF(線維芽細胞増殖因子)またはそれと実質的に同一の活性を有する物質(例、酸性FGF、塩基性FGF、KGF(ケラチノサイト増殖因子)、FGF-10など〕、(4)その他の細胞増殖因子(例、CSF(コロニー刺激因子)、IL-2、NGF(神経成長因子)、PDGF(血小板由来成長因子)、TGF-β(トランスフォーミング増殖因子β)、HGF(肝細胞増殖因子)、VEGF(血管内皮増殖因子)など)などが挙げられる。
【0121】
細胞増殖因子の作用を阻害する薬剤としては、ハーセプチン(HER2レセプター抗体)などが挙げられる。
【0122】
本開示のペプチドもしくはその塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグと組み合わせて使用され得る他の薬剤の例として、例えば、L-アスパラギナーゼ、アセグラトン、塩酸プロカルバジン、プロトポルフィリン・コバルト錯塩、水銀ヘマトポルフィリン・ナトリウム、トポイソメラーゼI阻害薬(例、イリノテカン、トポテカンなど)、トポイソメラーゼII阻害薬(例えば、ソブゾキサンなど)、リアーゼ阻害薬、エンドセリン拮抗薬(例、ABT-627など)、分化誘導剤(例、レチノイド、ビタミンD類など)、血管新生阻害薬、α-ブロッカー(例、塩酸タムスロシンなど)、インスリン抵抗性改善薬(例、塩酸ピオグリタゾン、(マレイン酸)ロシグリタゾン、GI-262570、JTT-501、MCC-555、YM-440、KRP-297、CS-011、FK-614、(E)-4-[4-(5-メチル-2-フェニル-4-オキサゾリルメトキシ)ベンジルオキシイミノ]-4-フェニル酪酸、アンジオテンシンII拮抗薬(例、ロサルタン、エプロサルタン、カンデサルタン、シレキセチル、バルサルタン、テルミサルタン、イルベサルタン、タソサルタン、オルメサルタンおよびこれらの活性代謝物(カンデサルタンなど)など)、がん抗原、DNA、レクチン、糖質、脂質などが挙げられる。
【0123】
本開示のペプチドもしくはその塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグと、組み合わせて使用される薬剤との使用に際しては、それらの投与時期は限定されず、対象に対し、同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。本開示のペプチドまたはその塩もしくはプロドラッグの投薬量は、投与対象、投与ルート、疾患、組み合わせ等により適宜選択することができる。
【0124】
本開示のペプチドもしくはその塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグと、組み合わせて使用される薬剤との投与形態は、特に限定されず、例えば、共に製剤化して得られる単一の製剤の投与、別々に製剤化して得られる2種以上の製剤の同一または異なる投与経路での同時または時間差をおいての投与などが挙げられる。
【0125】
本明細書において「または」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つの値」の「範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。
【0126】
(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法、バイオインフォマティクスは、当該分野において公知であり、周知でありまたは慣用される任意のものが使用され得る。
【0127】
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0128】
以上、本開示を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本開示を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本開示を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例
【0129】
以下に実施例を記載する。試薬類は具体的には実施例中に記載した製品を使用したが、他メーカー(Sigma-Aldrich、富士フイルム和光純薬、ナカライ、R&D Systems、USCN Life Science Inc.等)の同等品でも代用可能である。
【0130】
(実施例1:ペプチドの合成)
以下のペプチドを合成した。(括弧内は各化合物の呼称を示す)
Ac-SCHFGPLTWVCK-NH(YS12)[配列番号9]
(ベンゾイル)-SCHFGPLTWVCK-NH(GT11255)
(p-フルオロフェニルアセチル)-SCHFGPLTWVCK-NH(GT-11256)
(プロピオニル)-SCHFGPLTWVCK-NH(GT-11257)
Ac-SCH(p-フルオロ-Phe)GPLTWVCK-NH(GT-11258)
Ac-SCH(p-クロロ-Phe)GPLTWVCK-NH(GT-11259)
Ac-SCH(m-クロロ-Phe)GPLTWVCK-NH(GT-11260)
Ac-SCHYGPLTWVCK-NH(GT11261)[配列番号10]
Ac-SCH(フェニルグリシン)GPLTWVCK-NH(GT-11262)
Ac-SCH(フェネチルグリシン)GPLTWVCK-NH(GT-11263)
Ac-SCHFAPLTWVCK-NH(GT-11264)[配列番号11]
Ac-SCHFaPLTWVCK-NH(GT-11265)
Ac-SCHFGALTWVCK-NH(GT-11266)[配列番号12]
Ac-SCHFG(ホモプロリン)LTWVCK-NH(GT-11267)
Ac-SCHFGPATWVCK-NH(GT-11268)[配列番号13]
Ac-SCHFGPMTWVCK-NH(GT-11269)[配列番号14]
Ac-SCHFGPLTMVCK-NH(GT-11270)[配列番号15]
Ac-SCHFGPLT(β-ホモトリプトファン)VCK-NH(GT-11271)
Ac-SCHFGPLT(α-ナフチルアラニン)VCK-NH(GT-11272)
Ac-SCHFGPLT(β-ナフチルアラニン)VCK-NH(GT-11273)
Ac-SCHFGPLT(8-キノリルアラニン)VCK-NH(GT-11274)
Ac-SCHFGPLT(6-クロロ-Trp)VCK-NH(GT-11275)
Ac-SCHFGPLT(5-クロロ-Trp)VCK-NH(GT-11276)
Ac-SCHFGPLTWV(ホモシステイン)K-NH(GT-11277)
Ac-SCHFGPLTWV(ペニシラミン)K-NH(GT-11278)
Ac-kcvwtlpGfhcs-NH(GT-11279)
Ac-kcvwtlGGfhcs-NH(GT-11280)
Ac-SCH(3,4-ジフルオロ-Phe)GPLT(8-キノリルアラニン)VCK-NH(GT-11303)
Ac-SCH(3,4-ジフルオロ-Phe)GPLT(2-キノリルアラニン)VCK-NH(GT-11304)
Ac-SCH(3,4-ジフルオロ-Phe)GPLT(2-ベンゾチアゾリルアラニン)VCK-NH(GT-11305)
Ac-SCH(p-フルオロ-Phe)GPLT(2-キノリルアラニン)VCK-NH(GT-11306)
Ac-SCH(p-フルオロ-Phe)GPLT(2-ベンゾチアゾリルアラニン)VCK-NH(GT-11307)
Ac-SCHYGPLT(2-キノリルアラニン)VCK-NH(GT-11308)
Ac-SCHYGPLT(2-ベンゾチアゾリルアラニン)VCK-NH(GT-11309)
【0131】
上記ペプチドの合成、精製および確認は、糖鎖工学研究所(大阪)に依頼した。天然アミノ酸はメルク(ドイツ)(Novabiochem(登録商標))等から購入し、非天然アミノ酸は渡辺化学等から購入した。上記ペプチド合成のためのアミノ酸(非天然アミノ酸を含む)およびその保護アミノ酸は任意の適当な供給源から入手することができる。Rink Amide ChemMatrix(Biotage、スウェーデン)を出発原料として使用し、ペプチド自動合成機(Prelude(Gyros Protein Technologies))によってプログラムに従って、この樹脂から上記配列に従ってアミノ酸を縮合反応により順次延長して、目的の保護ペプチド樹脂を合成した。樹脂上へのペプチドの構築が終了した後、保護ペプチド樹脂を乾燥した。得られた保護ペプチドをトリフルオロ酢酸で処理して、保護基および樹脂担体を切り離した。樹脂担体から分離して得られた粗ペプチドをHPLCシステム;Prominence UFLC(島津製作所、京都)もしくはLaChrom Elite(日立ハイテクノロジーズ、東京)により精製した。このとき、移動相A:0.1%TFA水溶液、移動相B:0.09%TFA/10%HO/90%MeCNでA/Bグラジエントの溶媒条件を使用した。精製ペプチド(還元型)はヨウ素処理により粗ペプチド(酸化型)に変換しジスルフィド結合を形成させた。
【0132】
合成した各ペプチドについて質量分析測定を行い、所望の構造が得られていることを確認した(図1~33)。MSによる質量分析測定は、Synapt HDMS(Waters、米国)を使用してインフュージョンで実施した。
【0133】
上記で合成したペプチドをヒト肝臓がんHepG2細胞に接触させ、顕微鏡観察下で顆粒の漏出を確認したところ、GT-11259およびGT-11260では比較的低度の顆粒漏出が観察された一方、GT-11258、GT-11261およびGT-11274では多くの顆粒漏出が観察された。このことから、GT-11258、GT-11261およびGT-11274のペプチドは、比較的に活性が強いことが期待された。
【0134】
(実施例2:ヒト肝臓がん細胞におけるインビトロ性能評価)
合成したペプチドの性能を以下の方法で測定した。
【0135】
ヒト肝臓がん由来HepG2細胞を用いた合成ペプチドによる致死効果
以下の被験化合物について試験を行った;YS12、GT-11268、GT-11261、GT-11274、GT-11259、GT-11260、GT-11280、GT-11303、GT-11304、GT-11305、GT-11306、GT-11307、GT-11308およびGT-11309。
HepG2細胞(ATCC、HB-8065)を8ウェルチャンバースライド(Nunc))に撒き、被験化合物の4つの濃度において致死効果を調べた。
培養条件;10%牛胎児血清を含むD-MEM培地(富士フイルム和光純薬、045-30285)を用いて、37℃、5%CO-95%空気条件下で培養した。
試験濃度;120μM、60μM、30μMおよび15μMの被験化合物、さらに対照としてPBS(-)を使用した。
細胞数;350μL/wellの培地中に1.0~1.5x10の細胞数を播種した。
培養開始16~24時間後に各被験化合物(50μL/well)を添加し、24時間反応させた。
【0136】
致死効果は、0.1% Trypan blue溶液(TB溶液)によって陽性染色を示した細胞数を計数し、面積当たりの値に変換することで試験した。具体的には、以下の手順1~7の通りに行った。
1.wellから培養液を除去した。
2.TB溶液100uLをwell内に注入して、3分間反応させた。
3.2のTB溶液を除去した。
4.Bouin液(ピクリン酸飽和溶液15mL、ホルマリン原液5mL、氷酢酸1mL)10uLを注ぎ、ミキサー上で、10分間反応させた。
5.PBS(-)100uLで4の反応を弱め、Bouin液を除去した。
6.PBS(-)を、各wellに100uL入れた。
7.顕微鏡(倒立位相差顕微鏡、Nikon)で1区画(1mm)内のTB陽性細胞を計数し、10区画の平均を求めた。
【0137】
その結果、図34~37に示すような結果が得られた。GT-11268、GT-11261、GT-11274、GT-11259、GT-11260、GT-11280、GT-11303、GT-11304、GT-11305、GT-11306、GT-11307、GT-11308およびGT-11309のペプチドは、いずれもYS12と同等かまたはこれを上回るHepG2細胞殺傷効果を示した。特に、GT-11261、GT-11259、GT-11303~GT-11308のペプチドの効果は、強力であった。このことから、これらのペプチドは、例えば、増殖性疾患(例えば、がん、子宮腺筋症)および糖尿病網膜症の治療用途において有利に使用され得ると期待される。
【0138】
(実施例3:ヒト膵臓がん細胞におけるインビトロ性能評価)
合成したペプチドのヒト膵臓がん細胞に対するインビトロ性能を以下の方法で評価した。
【0139】
ヒト膵臓がん由来AsPC-1細胞(ECACC、96020930)は、10%牛胎児血清(biowest,S182H-500)及び1mMピルビン酸ナトリウム(gibco,11360-070)を含むRPMI-1640培地(Sigma,R8758-500ML)を用いて、37℃、5% CO-95%空気条件下で継代培養した(2回/週)。このAsPC-1細胞を0.05%トリプシン-0.02%EDTA溶液(Sigma,T4174-100ML)を用いて培養ディッシュより回収し、上記培地に懸濁後、96ウェルマイクロプレートに播種した(3x10/0.05mL/ウェル)。一晩培養した後、被験化合物(計43化合物、終濃度150μM)を含む培地を添加した(0.05mL/ウェル、3ウェル/被験化合物)。72時間後、各ウェルの細胞増殖能をWST法(同仁化学研究所、Cell Counting Kit-8)により測定し、コントロール(被験化合物を含まないウェル)に対する各被験化合物の阻害率を算出した。
【0140】
WST法は、水溶性テトラゾリウム塩WST-8を発色試薬として使用する生細胞数測定法であり、WST-8の還元により生じる水溶性ホルマザンを生細胞数の指標とする。細胞中の脱水素酵素により生産されるNADHがWST-8を水溶性ホルマザンに変換する。生じた水溶性ホルマザンは、約450nmに極大吸収を有するので、この波長領域における吸収を測定することで生細胞数が示される。WST法において、450nmの吸収を観察した。
【0141】
また、ここでは、実施例1と同様の方法で合成したさらなる候補化合物GT-11332~GT-11340(以下にそれぞれの構造を示す)を調製し、これらの化合物の活性も評価した。
Ac-SCH(4-ピリジルアラニン)GPLTWVCK-NH(GT-11332)
Ac-SCH(3-ピリジルアラニン)GPLTWVCK-NH(GT-11333)
Ac-SCH(p-メトキシ-Phe)GPLTWVCK-NH(GT-11334)
Ac-SCH(m-メトキシ-Phe)GPLTWVCK-NH(GT-11335)
Ac-SCH(m-ヒドロキシ-Phe)GPLTWVCK-NH(GT-11336)
Ac-SCH(1-ナフチルアラニン)GPLTWVCK-NH(GT-11337)
Ac-SCH(2-ナフチルアラニン)GPLTWVCK-NH(GT-11338)
Ac-SCHFGPLT(2-ベンゾチアゾリルアラニン)VCK-NH(GT-11339)
Ac-SCHFGPLT(3-ベンゾチアゾリルアラニン)VCK-NH(GT-11340)
【0142】
その結果、図38に示すような結果が得られた。GT-11257を含む計12個の被験化合物が、AsPC-1細胞に対して強い増殖阻害作用を示した。
【0143】
(実施例4:ヒト白血病細胞におけるインビトロ性能評価)
合成したペプチドのヒト白血病細胞に対するインビトロ性能を以下の方法で評価した。
【0144】
ヒトT細胞白血病由来ATL-2細胞(京都大学前田博士から供与)は、10%牛胎児血清(biowest,S182H-500)を含むRPMI-1640培地(Sigma,R8758-500mL)を用いて、37℃、5% CO-95%空気条件下で継代培養した(2回/週)。このATL-2細胞を培養フラスコより回収し、上記培地に懸濁後、96ウェルマイクロプレートに播種した(3x10/0.05mL/ウェル)。一晩培養した後、被験化合物(計32化合物、終濃度150μM)を含む培地を添加した(0.05mL/ウェル、3ウェル/被験化合物)。72時間後、各ウェルの細胞増殖能をWST法(同仁化学研究所、Cell Counting Kit-8)により測定し、コントロール(被験化合物を含まないウェル)に対する各被験化合物の阻害率を算出した。
【0145】
その結果、図39に示すような結果が得られた。特に、GT-11269、GT-11308およびGT-11309などが、ATL-2細胞に対して強い増殖阻害作用を示した。
【0146】
(実施例5:インビボにおけるペプチド性能評価)
合成したペプチドのインビボ性能をマウス担がんモデルにおいて評価した。
【0147】
ヒト膵臓がん由来AsPC-1細胞(ECACC、96020930)を、実施例3と同様に培養および回収し、10%マトリゲル(BD Bioscience,354234)を含む上記RPMI-1640培地に懸濁させ、6週齢の雄性ヌードマウス(エスエルシー、BALB/cSlc-nu/nu)の右背部皮下に移植した(5x10/0.1mL/匹)。デジタルキャリパーを用いて腫瘍の長径(L)及び短径(W)を計測し、V=LxW/2の式で求めた腫瘍体積(V)が150~200mm前後に達した時、群分けして被験化合物(GT-11263を含む計8化合物)を投与した。コントロール群は、生理食塩水を投与した。投与は腹腔内(0.1mL/匹、3~5匹/被験化合物)とし、1日3回(1時間間隔、計0.2mg/日)、週3回として2週間投与した。腫瘍径と体重を週2回計測して腫瘍増殖の状態と被験化合物投与に対する影響をモニターした。
【0148】
その結果、図40に示すような結果が得られた。GT-11263を含む計3種の被験化合物は、マウス担がんモデルにおいて強い抗腫瘍効果を示した。また、いずれの被験化合物も体重には影響を及ぼさなかった。特に、GT-11269およびGT-11309は、効果の発現が早く、強力であった。
【0149】
(実施例6:候補化合物のCFU-E形成に対する影響)
GT-11269、GT-11309が特に有用であることが期待されたので、これらの化合物のCFU-E形成に対する影響を試験した。
【0150】
マウス(エスエルシー、BALB/cSlc-nu/nu)の大腿骨から骨髄細胞を採取し、1.2%メチルセルロース(Sigma,M0512)、30%牛胎児血清(biowest,S182H-500)、1%ウシ血清アルブミン(富士フイルム和光純薬、017-25771)、0.1mM 2-メルカプトエタノール(富士フイルム和光純薬、131-14572)、L-グルタミン(Sigma、G7513)、ペニシリン/ストレプトマイシン(富士フイルム和光純薬、168-23191)を含むα-MEM培地(富士フイルム和光純薬、130-18621)に懸濁後、6ウェルマイクロプレートに播種した(3.2x10/2mL/ウェル、2ウェル/被験化合物)。被験化合物(GT-11269またはGT-11309、終濃度100μM)および組換えヒトエリスロポエチン(Epo、1U/mL)を添加して72時間インキュベーションした。DAB(diaminobenzidine tetrahydrochrolide、同仁化学研究所、D006)染色後、ヘモグロビン陽性細胞をCFU-E(Erythroid Colony Forming Unit)として顕微鏡下に計測した。
【0151】
結果を図41に示す。組換えヒトエリスロポエチンにより、CFU-E形成が促進された。この条件下において、被験化合物(GT-11269およびGT-11309)はいずれもCFU-E形成に影響を及ぼさないことが確認された。
【0152】
(実施例7:候補化合物のEpo依存性がん細胞増殖に対する影響)
有効であることが予測されたGT-11309について、Epo依存性がん細胞増殖に対する影響を以下の方法で評価した。
【0153】
ヒト白血病由来UT-7細胞(北海道大学藤田博士から供与)は、組換えヒトエリスロポエチン(Epo、2U/mL)および10%牛胎児血清(biowest,S182-H-500)を含むD-MEM培地(Sigma,D5796-500ML)を用いて、37℃、5% CO-95%空気条件下で継代培養し(2回/週)、計9週間培養した。このEpo処置UT-7細胞を3回洗浄し、96ウェルマイクロプレートに播種した(1x10/ウェル)。Epo(0~10U/mL)またはEpo(1U/mL)存在下における抗Epoモノクローナル抗体(クローンR6、京都大学増田博士から供与、1~100μg/mL)、抗EpoRモノクローナル抗体(クローン713210、R&D Systems,MAB3073、1~100μg/mL)もしくはGT-11309(1~100μM)を添加した。4日間培養した後、各ウェルの細胞増殖能をWST法(同仁化学研究所、Cell Counting Kit-8)において450nmの吸収を測定した。
【0154】
結果を図42に示す。GT-11309は、抗Epo抗体および抗EpoR抗体と同様にEpo依存性がん細胞増殖を抑制した。
【0155】
以上の知見から、式(I)
-SCH(A)(A)(A)(A)(A)(A)V(A)(A)-X
の構造において、Aの変異(例えば、Tyr)、Aの変異(例えば、Met)、Aの変異(例えば、2-ベンゾチアゾリルアラニン)が、特に有用であり得ることが見出された。
【0156】
(実施例8:さらなる候補化合物)
GT-11269およびGT-11309が特に有用であることが予測されたので、これらの変異を組み合わせて実施例1と同様の手法で以下の構造を有するGT-11350を作製した。
Ac-SCHYGPMT(2-ベンゾチアゾリルアラニン)VCK-NH(GT11350)
【0157】
(実施例8-1:各用量におけるペプチドのインビトロ性能)
GT-11269、GT-11309およびGT-11350について、濃度を変えてインビトロ性能を試験した。
【0158】
実施例3と同様に、ヒト膵臓がん由来AsPC-1細胞(ECACC、96020930)を培養および回収し、96ウェルマイクロプレートに播種した(3x10/0.05mL/ウェル)。一晩培養した後、被験化合物(10、30または100μM)を含む培地を添加した(0.05mL/ウェル、3ウェル/被験化合物)。72時間後、各ウェルの細胞増殖能をWST法(同仁化学研究所、Cell Counting Kit-8)により測定し、コントロール(被験化合物を含まないウェル)に対する各被験化合物の阻害率を算出した。
【0159】
結果を図43に示す。GT-11269、GT-11309およびGT-11350は、AsPC-1細胞に対して強い増殖阻害作用を示した。
【0160】
さらに、GT-11350の乳がん細胞株に対する増殖抑制能も試験した。
【0161】
ヒト乳がん由来HCC1395細胞(ATCC,CRL-2327)およびHCC1806(ATCC,CRL-2335)を培養および回収し、384ウェルマイクロプレートに播種した(1x10および3x10/0.04mL/ウェル)。一晩培養した後、GT-11350(0~100μM)を含む培地を添加した(0.01mL/ウェル)。72時間後、各ウェルの細胞増殖能をCellTiter-Glo 2.0(Promega,G9242)を用いて測定したATP量を指標に、コントロール(被験化合物を含まないウェル)に対する細胞増殖能を算出した。
【0162】
結果を図44に示す。GT-11350は、乳がん細胞株に対しても増殖抑制能を示した。
【0163】
(実施例8-2:インビボ性能)
合成ペプチドのインビボ性能をマウス担がんモデルにおいて評価した。
【0164】
実施例5と同様に、ヒト膵臓がん由来AsPC-1細胞を6週齢の雄性ヌードマウス(エスエルシー、BALB/cSlc-nu/nu)の右背部皮下に移植した(5x10/0.1mL/匹)。デジタルキャリパーを用いて腫瘍の長径(L)及び短径(W)を計測し、V=LxW/2の式で求めた腫瘍体積(V)が150~200mm前後に達した時、群分けして被験化合物(GT-11269、GT-11309およびGT-11350)を投与した。コントロール群は、生理食塩水を投与した。投与は腹腔内(0.1mL/匹、5匹/被験化合物)とし、1日3回(1時間間隔、計0.5mg/日)、週2回として4週間投与した。腫瘍径と体重を週2回計測して被験化合物投与の影響をモニターした(図45)。
【0165】
同様のプロトコルでGT-11309またはGT-11350を投与したAsPC-1担がんマウスについて、最終投与6日目に腫瘍組織を摘出し、その一部をZamboni液で固定後、凍結切片を作製した。抗第VIII因子(FVIII)関連抗原抗体を用いた免疫組織化学法にて陽性細胞数を測定し、腫瘍組織内の血管形成に対する被験化合物の作用を検討した(図46)。
【0166】
同様のプロトコルでGT-11269、GT-11309またはGT-11350を投与したAsPC-1担がんマウスについて、最終投与6日目に採血し、高速遠心機による毛細管法にてヘマトクリット値を測定した。また、血中ヘモグロビン濃度を市販の測定キット(BioAssay Systems、DIHB-250)を用いて測定した(図47)。
【0167】
さらに、CFU-E形成について評価した。GT-11350を1日3回(1時間間隔、計0.4mg/日)、週2回として4週間投与したAsPC-1担癌マウスの大腿骨から骨髄細胞を採取した。コントロール群は、生理食塩水を投与した。実施例6と同様に、マウスから採取した骨髄細胞を懸濁させ、6ウェルマイクロプレートに播種した(3.2x10/2mL/ウェル)。プレートに組換えヒトエリスロポエチン(Epo、1U/mL)を添加して2日間インキュベーションした。DAB(diaminobenzidine tetrahydrochrolide、同仁化学研究所、D006)染色後、ヘモグロビン陽性細胞をCFU-E(Erythroid Colony forming Unit)として顕微鏡下に計測した(図48)。
【0168】
図45について、いずれの被験化合物も、マウス担がんモデルにおいて抗腫瘍効果を示したが、体重には影響を及ぼさなかった。図46について、被験化合物投与群のFVIII陽性細胞数はいずれもコントロール群のFVIII陽性細胞数に比較して減少しており、被験化合物はいずれも血管形成抑制作用を示した。図47について、いずれの被験化合物もヘマトクリット値及び血中ヘモグロビン濃度に影響を及ぼさなかった。図48について、GT-11350を投与したマウスにおいてCFU-E形成は阻害されていなかった。
【0169】
(実施例9:用法・用量検討)
GT-11350の用法・用量を検討した。
【0170】
実施例5と同様に、ヒト膵臓がん由来AsPC-1細胞を6週齢の雄性ヌードマウス(エスエルシー、BALB/cSlc-nu/nu)の右背部皮下に移植し、腫瘍体積(V)が150~200 mm前後に達した時、群分けして被験化合物(GT-11350)を投与した。コントロール群は、生理食塩水を投与した。投与は腹腔内(0.1mL/匹)とし、1日3回(1時間間隔、計0.1mg、0.2mg、0.4mg/日)、週2回として4週間投与した。腫瘍径と体重を週2回計測して被験化合物投与の用量による影響をモニターした(図49)。
【0171】
同様のプロトコルでGT-11350を投与したAsPC-1担がんマウスについて、最終投与4日後に採血し、高速遠心機による毛細管法にてヘマトクリット値を測定した。また、血中ヘモグロビン濃度を市販の測定キット(BioAssay Systems、DIHB-250)を用いて測定した(図50)。
【0172】
図49について、GT-11350は、用量依存的な抗腫瘍効果を示したが、体重には影響を及ぼさなかった。図50について、いずれの用量においてもヘマトクリット値及び血中ヘモグロビン濃度に対する影響はなかった。
【0173】
実施例5と同様に、ヒト膵臓がん由来AsPC-1細胞を6週齢の雄性ヌードマウス(エスエルシー、BALB/cSlc-nu/nu)の右背部皮下に移植し、腫瘍体積(V)が150~200 mm前後に達した時、群分けして被験化合物(GT-11350)を投与した。コントロール群は、生理食塩水を投与した。投与は腹腔内(0.1mL/匹)とし、1日3回(1時間間隔、計0.2mg/日)または1日1回(0.2mg/日)、週2回として4週間投与した。腫瘍径と体重を週2回計測して被験化合物投与の用法による影響をモニターした。
【0174】
結果を図51に示す。GT-11350は、1日3回および1日1回のいずれの投与法においても同様の抗腫瘍効果を示した。
【0175】
(実施例10:さらなるペプチド)
以下のペプチドを合成する。
Ac-SCH(A)GPLT(A)VCK-NH
式中、AおよびAは、それぞれ独立に以下の表3から選択される。
【表3】

上記修飾アミノ酸は、例えば、アルデヒドを出発材料としたストレッカー反応などの公知の方法を使用して合成することができる。
【0176】
合成したペプチドを精製して純粋な光学異性体を取得し、これを性能試験に使用する。
【0177】
実施例1と同様に、質量分析測定によりこれらのペプチドの合成・精製を確認する。
【0178】
(実施例11:さらなる試験)
合成したペプチドについて実施例3と同様の試験を行う。
その結果、表3に示す1つ以上の化合物が、AsPC-1細胞殺傷効果を示すと期待される。表3の中にも特に強力にAsPC-1細胞殺傷効果を発揮するものがありうることが理解される。このことから、これらのペプチドは、例えば、増殖性疾患(例えば、がん)、子宮腺筋症および糖尿病網膜症の治療用途において有利に使用され得ると期待される。
【0179】
(注釈)
以上のように、本開示の好ましい実施形態を用いて本開示を例示してきたが、上述の説明および実施例は、例示の目的のみに提供され、本開示を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。本出願は、日本国特許庁に2018年9月14日に出願された特願2018-172479に対して優先権主張を行うものであり、その内容はその全体が本出願において参考として援用される。
【産業上の利用可能性】
【0180】
本開示のペプチドは、顕著な抗がん活性が見いだされ、医薬品としての用途を有することから、製薬業やその原薬メーカーに属する産業において有用性が見いだされる。
【配列表フリーテキスト】
【0181】
配列番号1:SCH(A)(A)(A)(A)(A)(A)V(A)(A
配列番号2:SCHFGPLTWVCK
配列番号3:X-SCHYGPLTWVCK-X
配列番号4:X-SCHFAPLTWVCK-X
配列番号5:X-SCHFGALTWVCK-X
配列番号6:X-SCHFGPATWVCK-X
配列番号7:X-SCHFGPMTWVCK-X
配列番号8:X-SCHFGPLTMVCK-X
配列番号9:Ac-SCHFGPLTWVCK-NH(YS12)
配列番号10:Ac-SCHYGPLTWVCK-NH(GT-11261)
配列番号11:Ac-SCHFAPLTWVCK-NH(GT-11264)
配列番号12:Ac-SCHFGALTWVCK-NH(GT-11266)
配列番号13:Ac-SCHFGPATWVCK-NH(GT-11268)
配列番号14:Ac-SCHFGPMTWVCK-NH(GT-11269)
配列番号15:Ac-SCHFGPLTMVCK-NH(GT-11270)
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【配列表】
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