(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】手摺ベルトの消毒装置
(51)【国際特許分類】
B66B 31/02 20060101AFI20240301BHJP
【FI】
B66B31/02 A
(21)【出願番号】P 2021020645
(22)【出願日】2021-02-12
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】521065687
【氏名又は名称】宮 浩正
(74)【代理人】
【識別番号】100069073
【氏名又は名称】大貫 和保
(72)【発明者】
【氏名】宮 浩正
【審査官】寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録実用新案第20-0491410(KR,Y1)
【文献】特開2006-193319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレータ、動く歩道等のガイド部に沿って移動する無限軌道手摺を殺菌するための手摺殺菌装置において、
前記無限軌道手摺の立ち上がり部分に沿って所定の長さに延出し、その上端及びその下端に前記無限軌道手摺に接触する固定ローラを有するフレーム部と、
前記無限軌道手摺を覆うように配置される反射鏡部及び前記無限軌道手摺に対峙するように前記反射鏡部に配置される紫外線ランプを具備し、前記フレーム部に沿って複数配置される殺菌部と、
前記フレーム部の固定ローラを固定するための固定機構と、前記フレーム部を覆うカバー部とによって構成されること、
前記固定機構は、一端に前記固定ローラを有し他端にクランクパッドを有するロッドと、前記クランクパッドを前記ガイド部に押しつけ前記固定ローラを前記無限軌道手摺に当接させるレバーと、前記ロッドにテンションを付与するバネとによって構成されること
を特徴とする手摺殺菌装置。
【請求項2】
前記殺菌部において、前記紫外線ランプは、前記フレーム部の反射鏡部内部に固定されるヒートシンクに前記無限軌道手摺の幅方向に沿って少なくとも2つ配置されることを特徴とする請求項
1記載の手摺殺菌装置。
【請求項3】
前記フレーム部の一方の固定ローラは、ベルトを介して、発電機と連結され、該固定ローラの回転によって前記発電機を駆動させ、この発電機による電力によって紫外線ランプを発光させることを特徴とする請求項1
又は2記載の手摺殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の人が触るエスカレータや動く歩道等の手摺ベルトを介してのウィルスの感染を防止するために、移動する手摺ベルトを自動的に消毒殺菌する手摺ベルトの消毒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(実開昭50-138854号公報)に開示されるエスカレータの手摺の清掃消毒装置は、エスカレータの手摺ベルトの表面を摺動して殺菌する帯状化学雑巾と、帯状化学雑巾を手摺ベルトに押しつける押圧板と、帯状化学雑巾を巻き取るモータと、巻き取られる帯状化学雑巾を殺菌する殺菌灯とを少なくとも具備する。
【0003】
特許文献2(実開昭55-27250号広報)に開示されるエスカレータ手摺の消毒装置は、エスカレータ上昇口又は降下口の両手摺の面の下に殺菌灯と消毒器を設置したことを特徴とするものである。
【0004】
特許文献3(特表2007-520402号公報)のエスカレータハンドレール用安全装置は、エスカレータの進入路に位置するハンドレールの一部を収容するように、底面に形成されたガイド溝を具備し、このガイド溝に収容されたハンドレールを殺菌するハンドレール殺菌手段を有し、このハンドレール殺菌手段は、前記ハンドレールに紫外線を照射する紫外線ランプを具備するものである。
【0005】
特許文献4(特開2014-193771号公報)に開示される光ビーム殺菌装置は、ハンドレールを覆う筺体と、筺体内に位置し、ハンドレールに接触する従動システムと、従動システムに接続され、従動システムの回転により発電する発電ユニットと、発電ユニットからの電力を受けて光ビームを照射する光源とを具備する。
【0006】
特許文献5(実用新案登録第3215321号公報)に開示される自家動力型ハンドレール殺菌装置は、ハンドレールに締結される開口部を備えるハウジングと、前記ハウジングの内側に設置されて、ハンドレールの駆動による回転運動を電力に変換する電力部と、前記ハウジングの開口部の内面に設置され、前記電力部からの電力によりハンドレールに対して殺菌光を照射する紫外線ランプモジュールとを具備する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実開昭50-138854号公報
【文献】実開昭55-27250号広報
【文献】特表2007-520402号公報
【文献】特開2014-193771号公報
【文献】実用新案登録第3215321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、エスカレータや動く歩道等の手摺ベルトは、多くの人の手が直接接触する部分であることから、人体に有害な各種ウィルス、細菌などが存在することにあるため、非衛生的になることから、殺菌を行うことが望ましい。さらに、現在では、コロナウィルスの感染対策として、人の手が直接接触する部分を殺菌し、ウィルスや細菌などを完全に排除することが要求される。
【0009】
しかしながら、ウィルス、特にコロナウィルスに対して、直接アルコール等によって手摺ベルトを殺菌する方法以外、十分な殺菌を行うことができないが、アルコール殺菌を行う場合には、常にアルコールを含浸させる布を清潔にしておく必要があり、またアルコールを常に貯蔵しておく必要が生じる。
【0010】
特に紫外線等の殺菌光による殺菌の場合、十分に殺菌するためには、殺菌光を手摺ベルトの全体にくまなく照射すると共に、所定時間以上照射することが必要であるが、上述した従来の殺菌装置では、手摺ベルトには照射箇所にむらが有り、照射時間が不足するという問題点がある。
【0011】
また、現在すでに存在する多くにエスカレータ等の手摺ベルトに簡単に装着できる構造を有する必要がある。
【0012】
このため、本発明は、エスカレータ等の手摺ベルトに簡単に装着可能であると共に、手摺ベルトを十分に殺菌できる構造を有する手摺ベルトの殺菌装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、エスカレータ、動く歩道等のガイド部に沿って移動する無限軌道手摺を殺菌するための手摺殺菌装置において、前記無限軌道手摺の立ち上がり部分に沿って所定の長さに延出し、その上端及びその下端に前記無限軌道手摺に接触する固定ローラを有するフレーム部と、前記無限軌道手摺を覆うように配置される反射鏡部及び前記無限軌道手摺に対峙するように前記反射鏡部に配置される紫外線ランプを具備し、前記フレーム部に沿って複数配置される殺菌部と、前記フレーム部の固定ローラを固定するための固定機構と、前記フレーム部を覆うカバー部とによって構成されることにある。
【0014】
これによって、固定機構によって固定ローラを無限軌道手摺に接触固定されるため、紫外線ランプを具備する複数の殺菌部を無限軌道手摺に沿って配置することができることから、簡易な構造で無限軌道手摺を確実に殺菌することができるものである。
【0015】
また、前記固定機構は、一端に前記固定ローラを有し、他端にクランプパッドを有するロッドと、前記クランクパッドを前記ガイド部に押しつけ前記ローラを前記無限軌道手摺に当接させるレバーと、前記ロッドにテンションを付与するバネとによって構成されることが望ましい。
【0016】
この発明によれば、固定ローラを前記無限軌道手摺に確実に接触させることができるため、複数の殺菌部を有するフレーム部を前記無限軌道手摺に簡単に且つ確実に設置できるものである。
【0017】
さらに、前記殺菌部において、前記紫外線ランプは、前記フレーム部の反射鏡部内部に固定されるヒートシンクに前記無限軌道手摺の幅方向に沿って少なくとも2つ配置されることが望ましい。
【0018】
この発明によれば、紫外線ランプが、前記無限軌道手摺の幅方向に沿って少なくとも2つ配置されるので、紫外線ランプが照射される殺菌光線が反射鏡部に沿って反射することから、無限軌道手摺の前面、側面及び裏面に確実に照射できるため、前記無限軌道手摺を確実に殺菌することができるものである。
【0019】
さらにまた、前記フレーム部の一方の固定ローラは、ベルトを介して、発電機と連結され、該固定ローラの回転によって前記発電機を駆動させ、この発電機による電力によって紫外線ランプを発光させることが望ましい。
【0020】
この発明によれば、固定ローラの回転によって発電機を回転させ、その電力で紫外線ランプを発光させるため、配線等が不要となるものである。
【発明の効果】
【0021】
以上の構成により、本発明に係る手摺殺菌装置は、前記エレベータ等の無限軌道手摺に簡単に装着することができ、また無限軌道手摺に、所定の長さにわたって、所定の時間紫外線を照射できるため、無限軌道手摺を確実に殺菌することができるものである。この紫外線ランプによる紫外線を所定時間照射できることから、細菌だけでなく、コロナウィルスなどのウィルスの殺菌にも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明に係る手摺殺菌装置の無限軌道手摺への装着状態を示した説明図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る手摺殺菌装置の殺菌部の断面を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る手摺殺菌装置は、エスカレータ、動く歩道等のガイド部に沿って移動する無限軌道手摺を殺菌するためのものである。 以下、本発明の実施例について図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0024】
本発明の実施例に係る手摺殺菌装置1は、例えば
図1に示すもので有り、エスカレータ等2の左右に配置される側壁部30の周縁に配置されるガイド部3(
図2に示す)に沿って移動する無限軌道手摺4の殺菌消毒を行うためのものである。
【0025】
前記手摺殺菌装置1は、前記無限軌道手摺4の立ち上がり部分5に沿って所定の長さに延出し、その上端及びその下端に前記無限軌道手摺4に接触する固定ローラ6,7を有するフレーム部8と、前記無限軌道手摺4を覆うように配置される反射鏡部9及び前記無限軌道手摺4に対峙するように前記反射鏡部9に配置される紫外線ランプ10を具備し、前記フレーム部8に沿って複数配置される殺菌部11と、前記フレーム部8の固定ローラ6,7を固定するための固定機構12と、前記前記フレーム部8を全体的に覆うカバー部13とによって構成されるものである。
【0026】
前記固定機構12は、一端に前記固定ローラ6,7を有し、他端にクランプパッド14を有するロッド15と、前記クランクパッド14を前記ガイド部3に押しつけ前記固定ローラ6,7を前記無限軌道手摺8に当接させるレバー16と、前記ロッド16にテンションを付与するバネ17とによって構成される。尚、クランクパッド14は、前記ガイド部3の端部に当接固定されることが望ましい。
【0027】
前記殺菌部11は、
図2に示されるように、フレーム8に固定される反射鏡部9と、この反射鏡部9内の無限軌道手摺4の上面部4Cに対峙する位置に固定されるヒートシンク18と、このヒートシンク18の前記無限軌道手摺4と対峙する位置に少なくとも2つ配置される紫外線ランプ10とによって構成される。前記反射鏡部9は、内部全体に反射面が形成されており、特に前記無限軌道手摺4の側面部4A,4Aに紫外線を反射させて照射する側部鏡面9A,9Aと、前記無限軌道手摺4の側部下面4B,4Bに紫外線を反射させて照射する下部折返鏡面部9B,9Bとによって構成される。これによって、前記無限軌道手摺4の上面部4Cには、紫外線ランプ10によって直接紫外線が直接照射され、前記無限軌道手摺4の側面部4A,4Aには、紫外線ランプ10の側部鏡面9A,9Aに反射した紫外線が照射され、前記無限軌道手摺4の側部下面4B,4Bには、紫外線ランプ10の側部鏡面9A,9A及び下部折返上面部9B,9Bに反射した紫外線が照射されるものである。さらに、前記殺菌部11は、無限軌道手摺4に沿って、複数、本実施例では5台が設置されることから、無限軌道手摺4の移動に伴って所定時間の紫外線の照射を補償することができるものである。
【0028】
さらに、前記フレーム部8の一方を固定する固定ローラ7は、ベルト20を介して、発電機21と連結される。これによって、前記無限軌道手摺4の固定ローラ7の回転によって前記発電機21を駆動させ、この発電機21による電力によって紫外線ランプ10を発光させることができるため、電力を供給するための配線を排除できるものである。
【0029】
以上の構成による本発明に係る手摺殺菌装置1はエスカレータ2などへの装着が容易であるとともに、無限軌道手摺4に紫外線を所定時間照射することができるため、ウィルスや殺菌などを確実に殺菌することができるものである。
【符号の説明】
【0030】
1 手摺殺菌装置 4 無限軌道手摺 5 立ち上がり部 6,7 固定ローラ 8 フレーム部 9 反射鏡部 10 紫外線ランプ 11 殺菌部 12 固定機構 13 カバー部